1: 2010/12/31(金) 22:06:07.27
紬「今日のおやつはガレットデロワよ」

唯「がれっとでろわ?」

律「何だそれ?」

紬「フランスの伝統的なパイでね、とっても甘くておいしいの」

唯「へー、食べてみたい! 早く!」

紬「待っててね、今五等分するから」

ナイフで切れ目を入れていく紬。

紬「じゃあ、各自好きなのを取っていって」

2: 2010/12/31(金) 22:07:52.82
唯「私この大きいのねー!」

律「あー、ずるいぞ唯! それ私が食べようとしていたやつなのに!」

唯「早い者勝ちだよ!」

律「あ、梓二番目に大きいの取りやがって!」

梓「早い者勝ちです」

律「あー! 一番小さいのしか残ってない…………ちぇー」

唯「いただきまーす!」

3: 2010/12/31(金) 22:08:46.94
紬「あ、唯ちゃん! まだ食べないで!」

唯「え? う、うん。何で?」

紬「この五個に分けられたガレットデロワのどれか一つにだけ、フェーブと言うものが入っているの」

唯「ふぇーぶ?」

紬「ええ。トンちゃんの八分の一サイズくらいある人形よ」

唯「そのふぇーぶがどうかしたの?」

紬「フェーブが入っているガレットデロワを食べた人はね、その日限りの王様になれるの」

4: 2010/12/31(金) 22:09:37.76
律「あれか、要するに王様ゲームみたいなものか」

紬「ええ。そしてね、そのフェーブを当てた人は、……自分の好きな人を選んで、その人とキス出来るの!」

唯「き、キス!?」

紬「そう! キス!」

律「へぇ、面白そうだな。じゃあ食べようぜ!」

5: 2010/12/31(金) 22:10:43.07
紬「ほら、梓ちゃんも食べて食べて」

梓「あ、はい……」

唯「うーん、私のには入ってないよー」

律「私も入ってなかったぞ? 誰だ? フェーブが入ってるのを食べてるのは」

紬「あ、残念。私のにもなかったわ」

律「すると……澪か梓か」

6: 2010/12/31(金) 22:11:38.37
澪「…………あ」

律「どうした? 澪」

澪「フェーブって……これ?」

紬「あ、それ! 澪ちゃんおめでとう~」

澪「何か……あまり嬉しくない」

紬「澪ちゃん、じゃあ誰とキスする?」

7: 2010/12/31(金) 22:12:42.05
澪「……え? 本当にするのか?」

紬「当たり前じゃない」

澪「え、えぇ!?」

紬「ほら、澪ちゃん早く」

澪「うーん…………」

澪(誰を選んでも、あとで気まずくなりそうだよなぁ……)

9: 2010/12/31(金) 22:13:29.45
律「…………………………」(無言で目をそらす)

唯「…………………………」(無言で目をそらす)

梓「…………………………」(無言で目をそらす)

紬「誰にする? 誰にする?」

澪「…………じゃあ、りt  和「練習中悪いんだけど、講堂の使用申請書、まだ出ていないわよ」

10: 2010/12/31(金) 22:14:14.08
律「おぉ、和」

和「律。また申請書出し忘れてたわね。はやく書いて」

律「あー、悪い悪い」

澪(和なら……キスしても平然と受け流してくれそうだよな)

澪(…………律より、和のほうがいいんじゃないかな)

澪「…………なあ、ムギ」

紬「なぁに? 澪ちゃん」

11: 2010/12/31(金) 22:15:34.86
澪「相手は別に、軽音部のメンバーじゃなくてもいいんだよな?」

紬「ええ、いいわよ」

澪「なぁ、和」

和「なに? 澪」

澪「キスしないか?」

和「……え?」

12: 2010/12/31(金) 22:16:30.95
澪「いや、ほら、ちょっと罰ゲームみたいのでさ、誰かとキスしなきゃいけなくなったんだ」

和「…………いいけど」

澪「そうか! 引き受けてくれるか! ありがとう」

和「じゃあ……早く済ませてね」

澪「ああ。わかった」

和は目をつぶった。

13: 2010/12/31(金) 22:17:28.13
澪(…………和、こうして見ると綺麗だな……)

和「…………澪、早く」

澪「ああ、うん」

澪「じゃあ、行くぞ?」

和「ええ」

澪も目をつぶる。そして、顔と顔を近づけていく――。

そして二人はふれ合うような、短いキスをした。

14: 2010/12/31(金) 22:18:30.07
和「……………………」

澪「……………………」

和「……………………」

澪「……………………」

律「ほーら、いつまで顔寄せ合ってんの。和、書いたぞ。これでいいか?」

15: 2010/12/31(金) 22:19:16.39
和「あ、ええ。今度はちゃんと出し忘れないようにしてね」

律「わかってるって」

和はすたすたと去って行く。

ふと、音楽室のドアの前で立ち止まった。それから、律達の方を振り向く。

澪と眼が合う。

和は頬を赤くした。

澪「!」

和は視線を外し、音楽室の外へと出た。

唯「和ちゃんのファーストキスは澪ちゃんだね!」

唯が余計なことを言った。

17: 2010/12/31(金) 22:20:09.38
****************************************

翌日  放課後

紬「今日もガレットデロワよ~」

澪「きょ、今日もキスするのか?」

紬「今日はちょっとルール変えようと思うの」

澪「キスはやめてくれよ?」

18: 2010/12/31(金) 22:20:51.02
紬「ええ。今回は……フェーブを当てた人が、軽音部のメンバー全員に一つずつ命令が出来るってルールにするわ」

律「例えば?」

紬「私がフェーブを当ててね、りっちゃんは明日猫耳を付けて学校に来ることって言ったら、りっちゃんはその通りにしなくてはいけないの」

律(……ムギにだけはフェーブが当たりませんように)

紬「じゃあ、はい。五等分したガレットデロワを持っていって」

19: 2010/12/31(金) 22:21:54.10
唯「じゃあ、私この一番小さいの選ぶね」

律「あ、唯ずるい! 昨日みたいに大きいの取って行けよ!」

唯「えー、フェーブが入っていたら困るもん」

律「だからってずるいぞ! あー! 梓も二番目に小さいの取って行きやがって!」

梓「早い者勝ちです」

律「くぅー、あ、一番大きいのしか残って無いじゃん!」

21: 2010/12/31(金) 22:23:00.02
唯「いただきまーす!」

律「まあ、甘くて最高に美味しいんだけどなあ……」

梓「緊張感があって、味なんかどうでもよくなっちゃうんですよね……」

澪「あ、よかった……私のにはなかった」

紬「あら。残念、私のにもなかったわ」

律「おー、私もセーフ。唯か梓のどちらかにあるんだな」

22: 2010/12/31(金) 22:24:02.05
梓「……あ、私もなかったです」

唯「あれ? 私の中にこんなのがあったよー」

紬「それがフェーブよ」

唯「えぇー、私?」

紬「唯ちゃんね。王様は」

唯「ちぇー、一番小さい奴選んだのに……」

紬「じゃあ唯ちゃん、誰に何を命令する?」

24: 2010/12/31(金) 22:26:09.32
唯「一人ずつに命令するの?」

紬「ええ」

唯「そんじゃーねー、ムギちゃんに命令! 明日からはシュークリームとかを持ってきて! ガレットデロワじゃなくて」

紬「そう……惜しいけど、命令は絶対だものね。わかったわ、そうする」

唯「明日はシュークリームがいいな~。あ、これは命令じゃないよ? 願望だよ」

紬「そうね、うん。じゃあシュークリーム用意しておくわ」

唯「本当? やったー!」

25: 2010/12/31(金) 22:27:00.55
唯「澪ちゃんは、えーと、あ、和ちゃんにデートの申し込みしてきて!」

澪「え!? わ、私が和に?」

唯「うん! だって昨日、二人ともとっても仲よさそうだったよ? 恋人みたいだったもん。ラブラブで」

澪「え、唯! それはないだろ!」

紬「駄目よ、澪ちゃん、王様の命令は絶対よ」

澪「で、でも」

紬「澪ちゃんが守らないなら、私明日からもガレットデロワ、持ってくるわよ?」

澪「……分かった、和にデートを申し込むよ……」

26: 2010/12/31(金) 22:27:46.57
唯「えーと、りっちゃんは……」

律「なあ唯、私たちって友達だろ?」

唯「え? う、うん」

律「友達にさ、ひどい命令なんてするものじゃないと思うんだ」

唯「うん……そうかも」

27: 2010/12/31(金) 22:28:32.09
律「だからさ、『りっちゃんには特に命令することはないよー』って、言ってくれないか?」

唯「そうだね……りっちゃんはじゃあ、おでこに『肉』って書いて」

律「……唯?」

唯「なに? りっちゃん」

律「あとで覚えておけよ?」

29: 2010/12/31(金) 22:29:32.87
唯「じゃあ、あずにゃんにはねえ……」

梓(律先輩をスルーした!)

唯「あずにゃんは、えーと、好きな人を選んでキスして!」

律(ネタが切れたな……)

梓「え、私が選ぶんですか?」

30: 2010/12/31(金) 22:30:30.70
唯「うん。誰がいい?」

梓(……誰にしよう……?)

梓(あとで余計ないざこざが生まれたら嫌だし)

梓は唯達を見やる。

紬「…………………………」(さっと目をそらした)

澪「…………………………」(さっと目をそらした)

律「…………………………」(さっと目をそらした)

31: 2010/12/31(金) 22:31:32.53
唯「誰を選ぶ? あずにゃん?」

梓「…………じゃあ、唯先輩で」

梓の答えに、唯は驚く様子も見せず。

唯「え? 私? しょうがないなー、あずにゃんは」

梓は唯の肩を掴む。

梓「じゃあ、いきますよ」

32: 2010/12/31(金) 22:32:33.35
唯「うん。いつでもオーケーだよ」

梓「…………じゃあ、いきますよ」

唯「わかったから早く」

梓「……………………じゃあ、いきますよ」

唯「もう、あずにゃん。じらさないでよ」

梓「……はい」

33: 2010/12/31(金) 22:33:21.48
ゆっくりと、梓は唯に顔に詰め寄る。

唯の吐息を感じられるくらい近くなり、やがて唇が重なり合った。

梓(唯先輩の唇……少し湿ってて温かい…………)

唇が離れる。

唯「えへへ、あずにゃんに唇奪われちゃった」

梓「唯先輩がやれって言ったんじゃないですか」

唯「でも、選んだのはあずにゃんでしょ?」

梓「まあ、そうですけど」

34: 2010/12/31(金) 22:34:07.37
紬「こっちも終わったわよ~」

唯「え? 何が?」

紬「りっちゃんのおでこに『肉』って書くの」

唯「えー、本当? 見せて見せて!」

律「………………もう、お嫁にいけない」

36: 2010/12/31(金) 22:35:33.54
唯「……ぷっ! 筋肉マンだよ! あずにゃん、見てほら!」

律「どうとでもいってくれ…………」

梓「り、律先輩、そ、そんなに変じゃな、ないですよ」

律「フォローは笑いをこらえながらしても意味がないぞー…………」

澪「ここまで消沈している律を久しぶりに見た…………」

37: 2010/12/31(金) 22:36:34.02
律「…………私はもう、駄目かもしれない」

澪「あ、あれだぞ? 意外と格好良く見えるぞ? 律」

律「うるせー、フォローになってねぇよぉ……うぅ」

澪「突っ込みにも覇気がない……」

紬「あ、澪ちゃん?」

澪「なんだ? ムギ」

38: 2010/12/31(金) 22:37:35.50
紬「澪ちゃんも忘れないでね? 和ちゃんにデートを申し込むの」

唯「澪ちゃん、付いていってあげようか?」

澪「ひ、一人で出来る! そ、それにまだ和も生徒会で忙しいだろ? だから、部活終わってからの方がいいと思うんだ」

唯「まあ、いいけど。和ちゃんにデートのお誘いするの忘れないでよ?」

澪「ああ……わかってるよ」

39: 2010/12/31(金) 22:38:28.05
部活終了後   生徒会室前

和「あら……澪」

澪「……あの、さ。唐突で悪いんだけど……デートしないか?」

和「………………え?」

澪「い、いやさ、あの、ゲームでさ、和にデートを申し込むことになっちゃって」

和「………………そう」

40: 2010/12/31(金) 22:40:00.33
澪「断ってもいいんだぞ? 罰ゲームの内容は、飽くまで申し込むだけだからさ。デートする必要はないし」

和「…………いえ、せっかく頼まれているのにそれを反故にするのは気がひけるわ」

澪「…………へ?」

和「いいわよ。デートしましょう」

澪「…………本気?」

和はこくりと頷いた。

和「もちろん、本気よ」

41: 2010/12/31(金) 22:40:59.38


和「それで、どこに行くの?」

澪「え、どこって――、普通に一緒に帰るだけじゃ駄目か?」

和「デートというのは夜景の見えるレストランで食事したり、二人で観覧車に乗ったりすることなのよ」

澪「そ、そうなのか」

和「ええ。だから、どこかに行きましょ」

42: 2010/12/31(金) 22:41:45.08
澪「でも……私、そんなにお金ないんだけど……。夜景が見えるレストランなんてどこにあるか知らないし……」

和「……そう。じゃあ、夜の街を散歩するってのはどうかしら」

澪「まぁ……それくらいなら」

和「なら、手を繋ぎましょ」

澪「え、な、何で?」

和「デートするってことは恋人同士ってことよ。恋人同士なら、手を繋ぐのが普通よ」

44: 2010/12/31(金) 22:42:33.45
澪「そ、そうか。なら……繋ぐか」

和「ええ」

和が差し出した手を、澪は静かに握った。

澪(…………何だか、こうしていると本当に恋人みたいだな)

澪(……って、私は何を考えているんだ!)

澪(……唯のやつ、何考えてるんだ。和をデートに誘えなんて。まったく)

45: 2010/12/31(金) 22:43:25.42
和「澪」

澪「え? な、何?」

和「何かお話しながら歩いたほうが、自然じゃない?」

澪「ま、まぁ……そうかな」

和「じゃあ、澪。ひとつ訊いていい?」

澪「ああ、何だ?」

47: 2010/12/31(金) 22:44:14.79
和「澪って、好きな人とかいたりするのかしら?」

澪「え、な、何でそんな、え、え?」

和「答えて。澪」

澪「え、うーん。いない……かな」

和「……………………そう」

澪「あれ、ちょっと和? 私の手を握る力が強くなっていってないか?」

50: 2010/12/31(金) 22:45:15.33
和「気のせいよ」

澪「気のせいって…………痛い痛い痛い痛い! 和、ストップ! ストォップ!」

和「澪、もうひとつ訊くわね」

澪「あ、あぁ」

和「昨日、私にキスをしたのは何で? 本当に、そういうゲームだったの?」

53: 2010/12/31(金) 22:47:25.94
澪「ああ、……自分の好きな人を選んで、キスをしなきゃいけないっていうゲーム、かな?」

和「…………好きな人、と?」

夜の中でもわかるほどはっきりと、和が顔を赤くした。

澪「あ、ああ。そう、だ…………あ」

澪(うわー! 言い方が悪かった! これじゃ私の好きな人が和っていう解釈に!)

56: 2010/12/31(金) 22:48:13.00
和「…………そう」

澪「…………ああ」

和「……………………」

澪「……………………」

気恥ずかしくて、双方黙り込む。

それでも手だけは、繋いでいた。

57: 2010/12/31(金) 22:48:59.62
****************************************

翌日  放課後

澪「…………絶対和に誤解された…………」

律「…………油性ペンで肉って書きやがって…………消せねえじゃねえか……」

唯「なんでりっちゃんと澪ちゃんはいつもより元気がないの?」

梓「…………そっとしておいてあげましょうよ」

58: 2010/12/31(金) 22:49:45.31
紬「みんな~、お菓子よ」

唯「今日はガレットデロワじゃないよね!?」

紬「ええ。シュークリーム5つにしたわ」

唯「シュークリーム! やったー!」

紬「ただし、この5つの中に1つだけ、フェーブが入っているのよ」

唯「え」

59: 2010/12/31(金) 22:50:31.09
梓「きょ、今日もやるんですか? 王様ゲームみたいなこと」

紬「ええ」

唯「今日は、フェーブをあてないようにしよう……」

梓「じゃあ私はこの真ん中の奴にします」

唯「私は右端―」

梓「律先輩たちはどれにしますか?」

60: 2010/12/31(金) 22:51:34.62
律「…………どれでもいい」

澪「…………私もどれでもいい」

唯「じゃあ澪ちゃんは一番焦げ目が多いやつ、りっちゃんは左端のね」

全員の元にシュークリームが置かれる。

唯「いただきまーす!」

紬「……あら、また私のにはなかったわ」

梓「……よかった。私のにもありませんでした」

唯「私のにもなかった! りっちゃんか澪ちゃんかのどちらかだね」

63: 2010/12/31(金) 22:52:26.40
律「え、マジで!?」

澪「…………誰かに命令したりするのは嫌だな……仲が険悪になりそうで」

律「私もだ…………。まあ、いいや。食べようか」

澪「…………」ムグムグ「あ、私のにはなかった」

律「…………フェーブって、これか?」

紬「あ、りっちゃんおめでとう!」

律「何か……全然喜べねえ」

65: 2010/12/31(金) 22:53:20.94
紬「ほら、何か命令して? みんなに一つずつ」

律「えーと、じゃあムギ! 明日からは普通のお菓子を持ってきてくれ。フェーブ入りとかじゃないやつ」

紬「……王様の命令だからしょうがないわよね。わかったわ」

律「それから……唯には昨日ひどいこと命令されたしなー、どうしようかなー」

唯「りっちゃん! 私たち友達だよね?」

律「うるせー! おでこに肉って書かせるような奴は友達でも何でもねー!」

唯「りっちゃんひどい!」

66: 2010/12/31(金) 22:54:16.54
律「唯は……、えーと、ああ、ほっぺたに渦巻き書いてくれ」

唯「ええー、そんなぁ」

律「はい次ー。梓は、じゃあ……。なにも思いつかないから、梓も頬に渦巻きで」

梓「え、唯先輩と同じですか?」

律「そう。おそろい」

67: 2010/12/31(金) 22:55:10.61
唯「えへへ。あずにゃんと一緒だねー」

梓「ほっぺたに渦巻きなんて……今時の小学生すらやらなそうなことを」

律「えー最後に澪は…………。和に好きだと告白すること」

澪「は?」

律「いや、だから和に告白」

澪「な、何で私だけそんなんなんだ!?」

68: 2010/12/31(金) 22:55:58.22
律「いや、面白い命令が浮かばなかったから」

澪「そ、そんな……」

律「それはそうと、ムギ、油性ペン貸して」

紬「はい、りっちゃん。油性ペン」

律「サンキュー」

梓「え」

69: 2010/12/31(金) 22:56:48.77
梓「ちょ、ちょっと! 油性ペンで渦巻き書く気ですか?」

律「私のおでこの肉も、油性ペンで書かれたからな。恨むんなら唯を恨め」

唯「いいじゃんあずにゃん。いつかは消えるだろうからさ」

梓「いやですよ! 頬にぐるぐるマークがあったら外に出れなくなりますよ!?」

律「さーて、そろそろ書くぞ」

梓「いやだー! バカボンみたいになるのは嫌です!」

70: 2010/12/31(金) 22:57:47.20
律「観念しろ! 梓!」

律は梓を抑え込むと、両頬に渦を描いていった。

律「はーい、完成」

紬「はい、梓ちゃん。鏡」

梓「…………本当に書かれている…………ご丁寧に太いほうのマジックで……」

71: 2010/12/31(金) 22:58:31.46
律「次は唯な」

唯「うん。綺麗に書いてよ!」

律「はいはい」

数十秒かけて、渦を唯の頬にも描く。

紬「はい、唯ちゃん。鏡」

唯「おー、あずにゃんと同じになった!」

梓「…………明日から外出れない…………。その前に家に帰れない……」

73: 2010/12/31(金) 22:59:46.48
唯「一緒だね、あーずにゃん!」

梓「一緒でも嬉しくないです……」

唯「えへへ、私は嬉しいよ~?」

その言葉を聞いた梓は、不思議と悪い気分ではなくなった。

澪「………………和に告白………………」

紬「頑張って、澪ちゃん! 私応援してるから!」

澪「………………和に告白………………」

律「澪、私が付いていってやろうか?」

澪「いい………………一人で出来る」

74: 2010/12/31(金) 23:00:42.17
****************************************

部活終了後 生徒会室前

和「あら……今日もどうしたの? 澪」

澪「い、いや、あの……律にしろって言われたんだけどさ」

和「ええ」

澪「これは、あのさ、私も仕方なくやっていることだから、本気で受け取らないでほしいんだけど……」

和「わかったわ。それでなに?」

76: 2010/12/31(金) 23:01:27.50
澪「……和、好きだ」

和「………………え?」

澪「いや、律に告白しろって言われてさ、いやー、あいつには困ったもんだよ」

茶化すように言う澪。

澪「うん。まぁ、告白は終わったからさ。突然変なこと言ってごめん」

78: 2010/12/31(金) 23:02:22.95
和「……私も好きよ、澪」

澪「…………は?」

澪が頓狂な声を出すと、和は笑って。

和「冗談よ。――少なくとも、今はね」

その笑顔に一瞬、澪は見とれてしまう。

79: 2010/12/31(金) 23:03:07.67
澪「あ、あはは、冗談だよな。うん、わかってたよ」

動揺を隠すように澪は笑う。

和「そうだ、澪。せっかくだから一緒に帰らない?」

澪「あ、あぁ。いいかもな」

そして、二人は足並みをそろえて校舎の外へと向かった。

ゆっくりと、ゆっくりと。
                            終わり

80: 2010/12/31(金) 23:05:44.08

引用元: 唯「がれっとでろわ?」