1: 2015/04/08(水) 14:23:07.34 ID:Fxpubhq+0
無課金Pによる総選挙応援SS、緊張の第2弾。
前作:モバP「小悪魔夕美とハロウィン」(貼れてるかな)
注意として、筆者は男性ですが今回のPは女性にしました。

2: 2015/04/08(水) 14:24:09.16 ID:Fxpubhq+0
ーレッスン場ー

(女性モバP、以下P)「よし、そこまでにしておこっか」

加蓮「えぇ~、まだやれるってば、ほら…っとと…」ふらっ

P「無理しないの。詰め込んだって体調崩したら大変なんだから」だきっ

加蓮「あ…ありがと…」

北条加蓮。私の、初めての担当アイドル。

ここ数月、ずっと一緒にレッスンやライブをこなしてきたけど…。

いまだに危なっかしさが抜けない。
THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 028北条加蓮
北条加蓮(CV: 渕上舞)
日本コロムビア
2014-04-30


3: 2015/04/08(水) 14:24:59.14 ID:Fxpubhq+0
…ううん、別に上手いとか下手とか、そういうことを言ってるんじゃなくて。

加蓮「う…っ…! けほっ! はぁ…はぁ…」

P「だ、大丈夫⁉︎ …ほら、ゆっくり息を吐いて…深呼吸」さすさす

加蓮「はあ…すう…っ…はぁ、はぁ…っ…はあ…」

加蓮「ダメだなあ…頭では…わかってるのに…」

加蓮「身体、ついていかなくて…ごめんね…」

P「ゆっくりで、いいんだよ。 落ち着いたら、今日はもうお終いにしよ。…ね」

そう。彼女は、身体が弱い。

こんな風に、ちょっと無理をしただけで倒れてしまいそうになるくらいに。


ーーーー

4: 2015/04/08(水) 14:25:33.69 ID:Fxpubhq+0
ー数ヶ月前、2回目のレッスンー

P「ちょっと休憩にしよっか。 …ねえ、北条さん」

加蓮「なに…? 」ギ口リ

P「うっ…そんな睨まなくても…あの、随分きつそうだけど…」

加蓮「…ちゃんといるだけいいっしょ? サボってるわけじゃないんだし」

P「いや、それはそう…なんだけどさ、えっと…」

加蓮「基礎体力に問題があるのなんて、見たらわかるでしょ…?」

加蓮「アイドルのレッスンなんて、ついていける身体じゃないって」

P「……うん、それは…昨日のレッスンでなんとなく、そうじゃないかなとは、思ってたけど」

5: 2015/04/08(水) 14:26:11.47 ID:Fxpubhq+0
加蓮「まあ…言わなかった私も悪いんだけど…」

加蓮「私だって、自分の身体がここまでポンコツなんて思ってなかったしね…」

P「ポンコツって、そんな言い方…」

加蓮「他に例えようがないし。…体育の授業とか、いつも見学だったしね…」

P「そ、そんなに…?」

P「じゃあ、会った時に言ってた、特訓とか下積みとかキャラじゃない、って言うのは…」

加蓮「まあ…そういうこと、かな…体力ないの。昔、入院してたから」

P(これは…いきなりハードな子を受け持っちゃったかな…?)

P(これで本人にやる気がないのなら…最悪、再選考しないと…)

6: 2015/04/08(水) 14:26:50.16 ID:Fxpubhq+0
加蓮「…よし、だいぶ落ち着いてきた…ねえ」

P「えっ、な、何かな」

加蓮「…………」じっ

P「……?」

加蓮「まぁ…仕方ない、か」ぼそっ

P「北条さん…?」

加蓮「なんでもない。ね、走り込み、付き合ってくれない?」

P「走り込みって…北条さん、身体は…」

加蓮「楽になってきたし、ヘーキ。 それより…」

7: 2015/04/08(水) 14:27:22.39 ID:Fxpubhq+0
加蓮「せっかく振り付けもらえる、とかなった時にさ、踊れないんじゃ悔しいじゃない」

加蓮「だから、体力付けないと。」

P「それで…走り込み?」

加蓮「アンタも付いてきてよ。…アイドルが道でぶっ倒れたら、困るでしょ?」にこっ

P「……あ…。」

P(すごく、かわいい笑顔…こんな表情もできるんだ…)

加蓮「ねえ、どうなの? ついてきてくれる?」

8: 2015/04/08(水) 14:27:57.36 ID:Fxpubhq+0
P(この子…本当はもしかすると……)

P「…ふふっ、あはははははっ」

加蓮「…?」

P「ううん、なんでもない。いいよ、一緒にいこっか、走り込み。」

加蓮「ん。 じゃあちょっと準備してくるから、待ってて」たたた…

なんとなく、だけど確信があった。この子、

きっとすごいアイドルになるんじゃないか、って。

それと…実は案外、根は優しい、いい子なんじゃないかなぁって。

9: 2015/04/08(水) 14:28:52.04 ID:Fxpubhq+0
ーーーーー

それからしばらくして。

彼女と一緒にレッスンを重ねて、

じゃあオーディション出てみよっか、と私の提案もあり、試しにと受けたオーディション。

手元にあるのは、不合格の通知。私は今から、その結果を伝えなきゃいけないんだけど。

P「気が、重いなあ…」

言い出したのは私だし、きっと合格できるだろう。

贔屓目抜きで、そう考えていたんだけど…

不合格。

P「はあ…」

ため息が漏れる。 どうやって伝えよ。 帰ったら…ダメだよね、うん。

10: 2015/04/08(水) 14:29:21.92 ID:Fxpubhq+0
加蓮「おはよ。オーディション、落ちたんだってね。」

P「おはよ…って、ええ⁉︎」

なんで知ってるの、と聞くと、ちひろさんがさっき話してくれたんだよ、と北条さん。

鬼か、あの人は。

加蓮「プロデューサーさんは加蓮ちゃんが合格するって本気で信じてたんだから、

辛いだろうけど責めないであげてくださいね、だって。

別にそんなつもりなかったけどね。」

天使か、あの人は。

11: 2015/04/08(水) 14:29:54.99 ID:Fxpubhq+0
P「その…北条さんは…」

加蓮「悔しいよ、正直ムカつくし。」

P「う…それは…その…ごめんね」

加蓮「アンタじゃないよ。…ムカつくのは、私自身」

P「え…」

加蓮「次は負けないから。 それだけ。 …じゃ、レッスンしよっか。今日もよろしくね」

P「…うん、よろしくね」ぎゅっ

12: 2015/04/08(水) 14:30:26.05 ID:Fxpubhq+0
加蓮「え…、手…」

P「へ? あ、わわ、ごめんなさい、つい」ぱっ

気づくと私は彼女の手を両手で握りしめていたらしく。

慌てて手を離したら、別にいいのに、と笑われてしまった。

うう…なんか私ばっかり恥ずかしいような…気のせいかな…?



ーーーーー

13: 2015/04/08(水) 14:31:11.46 ID:Fxpubhq+0
加蓮「あーあーあーあーあー…」

基礎を固める、という方針でレッスンを組んでいるので、

ボイトレはほぼ毎回やるようにしている。

今日はボーカルレッスンなので、特に重点的に。

加蓮「あーあーあーあー…うっ」

P「大丈夫?」たたっ

加蓮「だ…大丈夫、ちょっと酸欠気味なだけだから…」

P「でも…」

加蓮「本当に、大丈夫だから」

P「北条さん…」

ーーーーー

14: 2015/04/08(水) 14:31:42.50 ID:Fxpubhq+0
加蓮「ちゃんと声を出すのって、こんなにハードなんだね…知らなかったよ」

P「無理はしないでいいからね…焦らず行こう、ね」

レッスン場の隅に二人して腰を下ろす。

とりあえず落ち着くまで、話でもしよっか、と提案してみたんだけど。

意外とすんなり「わかった」って言ってくれて、ちょっとびっくりしてたり。

加蓮「無理すると、うるさいから。無理しないでやっていくよ、親にも言われてるし」

あはは…北条さんらしいというか。

加蓮「ねえ、アンタからは…」

P「ん?」

加蓮「…プロデューサーからは、何か感想とか、ないの?」

15: 2015/04/08(水) 14:32:30.45 ID:Fxpubhq+0
P「あ……」

加蓮「ここを、こうしたら…とかさ…プロデューサー?」

P「…う、ううん、えっと、感想、感想ね…えっと」

加蓮「……?………ああ」

P(今、プロ、プロデューサーって…)

P「えっと…その、北条さんはさ、その」

加蓮「加蓮」

P「え…?」

加蓮「名前で呼んでよ。その方がやりやすいし。」

加蓮「…じゃないと、私だけだとなんか…はずいし」

P「北条さん…」

加蓮「ほら、なんかないの、感想とかさ」

16: 2015/04/08(水) 14:33:09.67 ID:Fxpubhq+0
P「う、うん…えっと、加蓮ちゃん…
加蓮ちゃんはね、もっと笑顔を意識してみたらいいんじゃないかな」

加蓮「笑顔? 私が?」

P「うん。せっかくかわいい顔なんだから…笑わなくっちゃもったいないよ?」

加蓮「かわっ…⁉︎」

北条さん…加蓮ちゃんは目を白黒させて驚いてる。

言われ慣れてないのかな。すごくかわいいと思うんだけど。

加蓮「えっと…その、そもそも私、そんな笑顔とかって苦手っていうかさ…」

P「…? どうして?」

とてもそうは思えないんだけどなぁ…

加蓮「なんて言うのかな…私ってほら、無愛想だし」

17: 2015/04/08(水) 14:34:04.68 ID:Fxpubhq+0
P「そうかなぁ? そんなことないと思うんだけど…」

加蓮「それは…ほら、プロデューサーには取り繕う必要とかないっていうか…」

加蓮「私って、基本人前では感情を表に出さないようにしてるんだよね…
目立ってもいいことないし」

P「……?」

加蓮「いじられたりとか、嫌でしょ? よく知りもしない相手にさ。
だから、なるべくそういうの…見せたくないっていうか」

P「よく知らないって言ったって、クラスメイトとか友達とか、知ってる人だってたくさん…」

加蓮「それが、いないんだよね~…どっちかっていうと病院の方が長いし、
学校行っても保健室で過ごすことがほとんどだからさ、うまくいかないっていうか」

P「あ…ごめん…」

加蓮「いいって、別にプロデューサーが悪いわけじゃないじゃん。
聞いてほしいから喋ってるんだし」

P「加蓮ちゃん…」

ーーーーーーーー

18: 2015/04/08(水) 14:34:49.68 ID:Fxpubhq+0
ー数週間後、レッスン場ー

加蓮「あ、そういえば…この前トレーナーさんのレッスンでね、褒められたんだよ」

P「トレーナーさんに? なんて?」

加蓮「声が綺麗ですねって。別に褒められたくてやってるわけじゃないけどさ。
こういうの…なんか、嬉しいね」

P「声かぁ…私も、加蓮ちゃんの歌声、好きだな、なんて言うか、うん、
透き通ってる感じで。」

加蓮「無理に持ち上げないでいいって。課題だって見つかったし、これからだからさ」

P「課題?」

加蓮「体力無いから声が安定しないんだって。」

P「ああ…」

P(そう、声質自体はすごくいいものを持ってる。
けど、振れ幅が大きすぎて、正直、まだまだな部分が大きいんだよね…)

19: 2015/04/08(水) 14:35:21.68 ID:Fxpubhq+0
加蓮「プロデューサー、それで引っかかってたんでしょ、顔に出てたよ」

P「う…マジですか」

加蓮「あーあ、ウケるよね、
ちゃんと生きるのサボってたツケがこんなところでくるなんてさー」

P「加蓮ちゃん!」

加蓮「えっ…」

P「そんな…自分の事、投げ出したように言うのは…よくないよ」

加蓮「………」

P「ごめん…私が言えたクチじゃないのは、わかってるけどさ…」

P「寂しいじゃない。そんな風に言われると…」

加蓮「あ…」

20: 2015/04/08(水) 14:35:52.48 ID:Fxpubhq+0
加蓮「………プロデューサー」

P「……うん」

加蓮「ありがと…その、怒ってくれるんだね、プロデューサーは」

P「当たり前じゃない、仲間だよ、私たち」

加蓮「仲間…」

P「アイドルとプロデューサー、ってだけじゃないの。

私はあなたをトップアイドルにするって決めてるんだから。

だったら、仲間だよ。
仲間の心配するのは…当たり前じゃないのかな」

21: 2015/04/08(水) 14:36:24.60 ID:Fxpubhq+0
加蓮「そんな風に、言ってくれるんだ…」

加蓮「…ふふ、そっか…仲間、なんだ。…初めてかも、そういうのって」

P「…これからもっとたくさん、そういう『初めて』が増えていくよ。
私、加蓮ちゃんとなら、きっとトップまで行けるって信じてるから。」

加蓮「そっか…。 じゃあ、それまでエスコート、お願いしても…いいかな」

P「おう、どんとこーい!…って、私、女なんだけどな…」

加蓮「あはは、そういえばそうだったね。 プロデューサー、
なんかたまーに男らしいから、つい」

P「うう…胸か、胸がないのがいかんのか…」

毎日牛乳飲んでるのに。 どーせ身長も胸も小さいですよ…うう…。

22: 2015/04/08(水) 14:37:00.97 ID:Fxpubhq+0
ーさらに数週間後、レッスン場ー

P「わあっ、すごいすごい! 加蓮ちゃん、バッチリ言われた通りにできてるよ!」

加蓮「もう、子供じゃないんだから…大丈夫だよ、ふふっ」

P「もう笑顔も完璧じゃない? って言うか、他の表情も…思わず見入っちゃったもん」

加蓮「なんか面白いね、表現のレッスン。 アイドルって色々なことやるんだなぁ…」

P「その様子だと、ヴィジュアルレッスンはもうバッチリって感じかな?」

加蓮「うん…わりと得意…てゆーか、得意だね、うん」

23: 2015/04/08(水) 14:37:34.69 ID:Fxpubhq+0

P「おっ、言い切ったね?」

加蓮「こういうの、色々見てきたからかな、それが生きてる気がする、って言うか」

P「色々?」

加蓮「あー…まあ、その話は長くなりそうだし……あ」

加蓮「ねえ、おなかすかない? 帰りに何か食べていきたいんだけど、
プロデューサー、どう?」

P「いいね~。 で、何にする? あんまり高くなければお姉さんおごっちゃるぞ~」

加蓮「ぷっ、なんかジジむさいよプロデューサー」

P「で、何にしますかい? お財布に優しいとこだと嬉しいんだけどなー」

加蓮「んー…お財布には優しいんじゃないかな、軽く食べるだけだし」

24: 2015/04/08(水) 14:38:16.22 ID:Fxpubhq+0
P「軽く? ラーメンとか?」

加蓮「女の人でラーメンを軽く…なんてプロデューサー、ますます男っぽいよ」

P「そうかなぁ? 普通に女の子来てるけどなあ…」

P(そう言えばこの前すっごい綺麗な髪の子が来てたなあ…どこかで見た気がするんだけど)

ーーーーーー

ー某所ー

銀髪の女性「くしゅん!」

銀髪の女性「…はて…誰か噂でもしているのでしょうか…」

ーーーーーー

25: 2015/04/08(水) 14:38:46.46 ID:Fxpubhq+0
ー少しして、ファーストフード店ー

「「いらっしゃいませー」」

P「意外…加蓮ちゃんこういうお店とか来るんだ…」

加蓮「別に、そう不思議がることもないと思うけどね」

加蓮「あ、これとこれください、ポテトとシェーク付きで。 プロデューサーは?」

P「んー…どれも美味しそうで…悩む」

加蓮「なら、私の半分食べれば? そのかわり、そっちのも半分もらうの。どう?」

P「その案採用! じゃ、私はこれとこれとこれとー♪」

加蓮「ちょ、食べ過ぎじゃない⁉︎」

P「ダメぇ?」←加蓮初期台詞風

加蓮「うっわー、それやられると結構腹たつんだね、知らなかった」

26: 2015/04/08(水) 14:39:17.32 ID:Fxpubhq+0
P「じゃ、このへんで勘弁しといてやるか♪」

加蓮「私と違ってプロデューサーはレッスンもないんだし、気をつけないと太るよ?」

P「美味しいから大丈夫だよ!」

加蓮「な、何それ」

P「なんか最近ウチで流行ってるんだって、これ」

加蓮(何が大丈夫なんだろう…)

ーーーーーー

27: 2015/04/08(水) 14:39:49.93 ID:Fxpubhq+0
P「さて、席にもついて、注文も全部揃ったことですし」

加蓮「じゃ、食べよっか。はい半分」

P「うむ、くるしゅうないぞよ」

加蓮「なにキャラなの、プロデューサー」

P「さあ? 自分でもわかんない♪ うん、美味しい!
こういうの、なんかテンション上がっちゃうんだー」

加蓮「テキトーだなあ…」

P「ところが、ちゃんと大事なとこは覚えてるんですね、これが」

加蓮「あー…話さなきゃ、ダメ。 やっぱり。」

P「…言いにくい話なら、無理に聞いたりしないけどね」

28: 2015/04/08(水) 14:40:20.92 ID:Fxpubhq+0
加蓮「言いにくくないけど…引かないでね?」

P「うん、引かない引かない」もぐもぐ

加蓮「…ふふ、本当、いい意味でテキトーって言うか、なんか力抜けるね」

加蓮「簡単な話だよ。入院してる間、ずーっと暇だったからさ」

加蓮「それこそぷち引きこもり? …まあそんな感じで。
テレビが友達、って感じだったんだよね」

P「テレビが?」

加蓮「うん。映画とかドラマとか…アニメとかバラエティとか。」

加蓮「どんな番組も見てたから、表情豊かな人って面白いなーって思ってたんだ。」

29: 2015/04/08(水) 14:41:00.38 ID:Fxpubhq+0
加蓮「それが今、生きてるのかな、って。怪我の功名、っていうのかな」

加蓮「って、これじゃブラックジョークだよね、あははっ!」

P「加蓮ちゃん…」

加蓮「平気だよ、これが私のスタンダードだから」

加蓮「話しておいてなんだけどさ、あんまり重く考えられるとこっちも困るっていうか…
アレ、私すごい自分勝手言ってる?」

P「言ってる言ってる」もぐもぐ

加蓮「…ごめんね、こうしないと、もたないからさ」

加蓮「…ありがと、そんな風におちゃらけてくれて」

P「………」よしよし

加蓮「ちょ、ここお店っ! 頭、恥ずかしいってば…」

P「美味しいから大丈夫だよ」

加蓮「私は全然大丈夫じゃない⁉︎」

P(強がりさんめ。大人しく私に撫でられるといい)

30: 2015/04/08(水) 14:41:37.32 ID:Fxpubhq+0
ー帰りの車内ー

P「美味しかったね、結構久しぶりに食べたなぁ、ああいうの」

加蓮「そうなんだ? 私、結構よく食べるんだよね、ファーストフードとかスナック菓子とか」

P「太るよー」

加蓮「う…しょうがないでしょ、定期的に食べたくなるんだから」

加蓮「一応、最近はレッスンもしてるし…それに、ああいうの、憧れだったからさ」

31: 2015/04/08(水) 14:42:14.71 ID:Fxpubhq+0
P「憧れ? ハンバーガーが?」

加蓮「病院食ばかりだったからさ、薄味だし、味気ないし…
テレビのCMとかでああいうの見ると、いいなーって思ってたよ」

加蓮「身体がそれなりに丈夫になってから、お小遣い握りしめて…買って食べたっけ」

加蓮「なんていうのかな、感動しちゃって。
ハンバーガーとかでいちいち感動しちゃうんだもん、
周りの話とか、付いていけるわけもなくってさ」

加蓮「甘えても…優しくしてくれるのは最初だけ…だから」

加蓮「おかげで、この顔に貼り付いた無愛想は…なかなか剥がれ落ちてくれないみたい」

32: 2015/04/08(水) 14:43:06.93 ID:Fxpubhq+0
P「私の前だと、加蓮ちゃん笑顔だと思うけどなぁ」

加蓮「アンタの…プロデューサーの前では、ね。 気が抜けるっていうか…
変に気を使ったりとか、ないからじゃないかな」

P「そっか…。 って、なんか微妙に失礼じゃなかったかい」

加蓮「そうだっけ? あ、次の角、左ね」

P「へいへーい」

ーーーーーーー

ーそれからしばらくして、学校で加蓮ちゃんが倒れた、と連絡が入った。ー

33: 2015/04/08(水) 14:43:36.12 ID:Fxpubhq+0
ー加蓮宅ー

P「加蓮ちゃんは…」

加蓮母「ぐっすり眠ってます。…あなたが、加蓮のプロデューサーの方?」

P「え、ええ、まあ」

加蓮母「そうかしこまらないでいいのよ。そうね…せっかくだし、少しお話しましょうか」

加蓮母「加蓮ね、今までは授業とか、休みがちだったの。
だから、色々な面で遅れが出ていて…」

P「…………」

34: 2015/04/08(水) 14:44:08.88 ID:Fxpubhq+0
加蓮母「それ自体はね、私は気にしてないの。
あの子、勉強なんてやる必要感じない、とか言ってきかないし…
成績より、もっと大切なことってあると思うから」

P「けど…私もそれはそう、思いますけど、やっぱり…」

加蓮母「それが、この前までの話。」

P「……へ?」

加蓮母「最近、あの子すごいのよ。 アイドルのレッスンだってあるはずなのに、授業もしっかり出て…見学続きだった体育にも、自分から出してくださいって頼んだんですって」

P「加蓮ちゃんが…」

加蓮「誰かさんのせいでね…逃げてる自分がバカらしくなってさ」ふら…

35: 2015/04/08(水) 14:44:47.34 ID:Fxpubhq+0
P「加蓮ちゃん! ダメでしょ起きてきちゃ…」

加蓮「お母さんペラペラしゃべりすぎるから…けほ、けほっ」

加蓮母「アンタに任せてたらいつまで経っても話さないでしょ。
いいから、大人しくして、寝てなさい」

加蓮「うう…あとでひどいからね…」ふらふら…

加蓮母「まったく、あの子ったら…昔からああなんですよ。
素直過ぎると言いますか…」

P「素直? 加蓮ちゃんが?」

加蓮母「ええ、わりと顔や行動に出ちゃうんですよ。
本人は隠してるつもりなんでしょうけどね。」

P「へえ…加蓮ちゃんが、ねえ」

P(なんか、イマイチピンとこないなあ…)

P「あ、そうだ…お見舞いに、ゼリーとかプリン、買って来たんだった…車に置きっぱだ」

加蓮母「あら…それでしたら」

ーーーーーーー

36: 2015/04/08(水) 14:45:18.47 ID:Fxpubhq+0
ー加蓮の部屋ー

加蓮「はあ…お母さん…変なこととか喋ってないといいけど…」

加蓮「…こんな風に倒れるの、どれくらいぶりだろ」

加蓮「ちょっとは丈夫になったと思ったんだけどな…あーあ」

P「入るよー」がちゃっ

加蓮「ちょ、プロデューサー⁉︎」

P「ん?」

加蓮「ノックくらいしようよ…」

P「あ、ごめん、寝てるかなって思って…」

加蓮「もう…っていうか、その袋…」

P「これ? 私からのプレゼントフォーユー…っと」どさっ!

37: 2015/04/08(水) 14:45:46.82 ID:Fxpubhq+0
加蓮「そ、それはわかるんだけど…」

P「えーっと、ゼリーとかプリンとか…あと、バナナでしょ、栄養ドリンクに…」

加蓮「ぷっ…」

P「なにさ、なんかおかしい?」

加蓮「だって、バナナに栄養ドリンクはないでしょ~、
女の子のお見舞いでさ、ふふ、あはは!」

P「ふむ…普通に美味しいよ、バナナ」もぐもぐ

加蓮「アンタが食べるんかい…」

P「加蓮ちゃんの分もあるってば。お見舞いなんだしさ」

加蓮「そういう問題じゃ…はあ…なんか余計疲れたかも」

38: 2015/04/08(水) 14:46:15.56 ID:Fxpubhq+0
P「加蓮ちゃんもいる?バナナ」

加蓮「さすがにそこまで重いのは無理かな…あ、プリンもらってもいい?」

P「プリンね。 はい、ジャンボサイズ」ことっ

加蓮「プロデューサー…?」じろー

P「冗談だって、睨むな睨むな。 ほら、普通サイズ」

加蓮「うん…あのさ」

P「うん?」

加蓮「プロデューサー…いままでレッスン休んだことなかったのに…ごめんね」

P「!」

39: 2015/04/08(水) 14:47:11.27 ID:Fxpubhq+0
加蓮「みっともないよね…まだ、まともなステージだって立ててないってのにさ。
逃げない、って決めた途端、これなんだもん」

P「…逃げる?」

加蓮「そ。 自分から、夢から、親から、周りから…プロデューサーからも。
結局私って、逃げてばっかりだったからさ」

加蓮「だから、逃げないって決めたの。
もう一度、夢だったアイドル、目指したいって思ったから」

P「加蓮ちゃん…うん、頑張ろ。一緒に、頑張ろうね」

加蓮「プロデューサー…ううん、プロデューサーさん。」

加蓮「…見ててね、きっと、私…あなたの期待に応えてみせるから」

ーーーーー

40: 2015/04/08(水) 14:47:48.03 ID:Fxpubhq+0
ーそれから一月ほど経ったある日。

加蓮「…えっ、ラジオ…? 私が?」

P「うん。うちのアイドルはみんなデビューする時にやるんだけどね。
そろそろ加蓮ちゃんも挑戦してみないかなって。…どう?」

加蓮「やりたい! せっかくプロデューサーさんがくれたチャンスなんだもん…
絶対私、完璧にやってみせるから!」

P「あはは…うん、その意気。よし、じゃあ今日は特別レッスンね。
話し方の基本とか、みっちり仕込んであげる」

加蓮「…! うん! よろしくお願いします、プロデューサーさん♪」

P「おうよ、どんとこーい!」

ーーーーー

41: 2015/04/08(水) 14:48:16.48 ID:Fxpubhq+0
ーそんなこんなで紆余曲折あってラジオの収録も無事に終わった。

途中、加蓮ちゃんが倒れそうになるアクシデントもあったんだけど。

加蓮『大丈夫…! これくらいで、諦めたりしないんだから…』

加蓮『もう一度、頭からお願いします!』

強くなったね。本当に…。

ーーーーーー

42: 2015/04/08(水) 14:48:56.03 ID:Fxpubhq+0
そして。
とうとうその時が来た。

ーLIVE会場ー舞台袖ー

加蓮「………」

P(緊張してるのかな…ほぐしたげないと…)

加蓮「プロデューサーさん。」

P「なんだい」

加蓮「さっき、ここからお客さん、見たんだけどさ」

加蓮「私を応援してくれる人…いるんだね」

P「…当たり前でしょ。 …私も、そうなんだから」

加蓮「……! うん!」

43: 2015/04/08(水) 14:49:35.78 ID:Fxpubhq+0
「お待たせいたしました。それでは大きな拍手でお迎えください。」

アナウンス。始まろうとしている。

一世一代、二人の初めてのステージ。

P「…加蓮ちゃん…」

加蓮「大丈夫。」にこっ

P「え…」

加蓮「あなたの育てたアイドルだよ?プロデューサーさん」

P「………!」じわっ

加蓮「行ってくるね…夢を、叶えてくるから」たたたっ

P「行ってらっしゃい! ここから、見てるからね…!」

加蓮「………」こくん

「歌い手は、北条加蓮さん。曲のタイトルはー」

加蓮「…薄荷-ハッカ-」

ーーーーー

44: 2015/04/08(水) 14:50:03.12 ID:Fxpubhq+0
ーLIVE後、公園のブランコー

P「…終わったね」

加蓮「うん、始まったね」

P「…神様がくれたー時間はー溢れる…♪」

加蓮「…なに、突然。」

P「あと…どれくらいかな」

加蓮「…ずっと一緒だよ。 諦めるにはまだ早いって、
神様のワガママに振り回されてきたんだもん」

加蓮「それくらいは、大目に見てもらわなくちゃ」

45: 2015/04/08(水) 14:50:31.68 ID:Fxpubhq+0
P「そっか…ふふ…嬉しいな」

加蓮「私さ。プロデューサーさんに出会わなかったら…きっと変われなかった。」

加蓮「だから、これからはさ、いっぱい恩返し、しなくちゃいけないし。」

P「うん、どんどん返してくれていいよ」

加蓮「ふふっ、じゃあ今度、ネイルやったげよっか。私、そういうの得意だからさ」

P「へえ…じゃあ、そのネイルも自分でやったの?」

加蓮「うん、って言っても、今日のはライブもあったから抑えめなんだけど。
それしかやることなかったからねー病院。私って健気~♪」

P「健気…? 健気ってなんだっけ」

加蓮「うわー、そんな事言う人にはやってあげたくなくなっちゃうかもよー?」

P「嘘ですごめんなさい、加蓮ちゃんは大変健気でいい子だと思いますですはい」

加蓮「よろしい♪」

46: 2015/04/08(水) 14:51:27.09 ID:Fxpubhq+0
P「ふう…なんか、変わんないね、私たちって。」

加蓮「案外、ちょっとずつ変わってるかもしれないけどね。
でも…うん。 これぐらいが、私たちらしいかも、ね。」

P「いこっか。次のステージが、私たちを待ってるよ」すくっ

加蓮「きっとすぐそこで、だよね。…じゃあ、プロデューサーさん」

差し出された手。私はそれを強く握りしめた。

加蓮「ぎゅっ…ふふ、あったかい」

彼女の夢が遠くへ行ってしまわないように。

P「よし、走るよ、全速力!」

加蓮「わわ、早いって、もう、プロデューサーさんってば」にこにこ

彼女と、これから先もずっと一緒にいられるように。

ーおしまいー

48: 2015/04/08(水) 14:56:38.86 ID:Fxpubhq+0
はい、ここまでになります。
思えばモバマスを始めたきっかけは、彼女だったりします、僕の場合。
とある方のSSモバP「加蓮の親愛度がMAXになった」を読んで、ですね。
無課金ですけど。おまけに浮気性で…
夕美ちゃんも加蓮もいい位置にいますよね。それがすごく嬉しくて…
それでは、前回言い忘れていた言葉を添えまして依頼とさせていただきます。
どうもありがとうございました!

引用元: 北条加蓮「もう一度だけ、夢を見て」