1: 2013/03/26(火) 10:12:57.76 ID:hWk25c9f0
「魔王城」

ゴブリン「失礼します、突然のお呼びたて、どの様な用件でしょうか?」

魔王「よく来たな魔勇者ゴブリンよ!」

ゴブリン「えっ?魔勇者?」

魔王「昨今、人間どもがちょっと精霊の加護あったりちょっと伝説の武具使えるだけの奴を勇者と祭り上げこちらへ送り込んでくるのは知っているな?」

ゴブリン「はい」


魔王「人間だけそんなイイ感じの戦士を持つのズルくない?」

ゴブリン「そ、そうでしょうかね」


魔王「そこでわが魔軍も勇者をたてる事にした。第一号が貴様だ!伝説の棍棒に選ばれし魔勇者ゴブリン!」

2: 2013/03/26(火) 10:17:47.75 ID:hWk25c9f0
ゴブリン「伝説の棍棒・・・っていうかただの金属バットじゃないですか?」

魔王「いやいや。これは伝説の棍棒であるぞ?貴様はこれで憎き人間の王を倒してくるのだ!」

ゴブリン「えぇ~・・・」


魔王「成功したら時期魔王に指名してやる。失敗したら貴様に「伝説のバット使って負けた」姓をおくろう」

ゴブリン「やっぱりバットなんですね」

魔王「いいから行くのか行かないのか決めろ!」

ゴブリン(あ、行かないって手もあるのかな「行かない場合は一族郎党に至るまでまとめて精肉店おくりだ!」いってきます!!」

6: 2013/03/26(火) 10:22:59.97 ID:hWk25c9f0
魔王「良い返事だ魔勇者よ!とりあえずは仲間を探すため酒場に行くと良いだろう。これは旅の資金だ、装備等整えるのに使え」

ゴブリン「ありがとうございます」

魔王「ほれ、現金で99999Gか黄金での受け渡しか選べ」

ゴブリン「太っ腹ですね」

魔王「人間みたいにケチでは無いのだ」

ゴブリン「じゃあ、いちいち現金化するのも手間なので現金でお願いします」

魔王「うむ。ではゆけ!魔勇者よ!多分人間は王より側近とかの方が強いぞ!」


ゴブリン「そういう点だと魔王様は自己防衛できる分人間より優れているのかも知れませんね、いってきます」

魔王「魔王が王より優れているのは当然!いってらっしゃい」

7: 2013/03/26(火) 10:27:29.50 ID:hWk25c9f0
「魔城下町」

ゴブリン「とりあえず装備から整えようかな。おーい、親父!」

武具屋「へい!なんだ、ゴブリンの坊主じゃねぇか。どうした?包丁でも買いにきたか?」

ゴブリン「いや、これから旅に出るから装備整えようかと思って」

武具屋「旅だと?辞めとけ辞めとけ!最近は勇者も出るって噂だし、命無駄にするだけだ」

ゴブリン「でも魔王様の勅命だし仕方ないんだ。頼むよ、いい装備売ってくれないか?」

武具屋「うーむ魔王様の命なら仕方あるまい。だがくれぐれも気をつけて行くんだぞ!とりあえずこの初心者セット装備がお買い得だ」

8: 2013/03/26(火) 10:32:01.16 ID:hWk25c9f0
ゴブリン「あ、お金の事なら気にしないでくれ。この通り、軍資金貰ったから」

武具屋「おっと!こりゃあたまげた!そんな大金見たのは始めてだ!」

ゴブリン「うん、僕も始めて見た。じゃあとりあえず、武器はこの金属バッ・・・棍棒固定みたいだから鎧を頼むよ」

武具屋「良しきた!じゃあこのとっておきの鎧をやろう!お値段なんと50000G!兜と盾もついてお買い得!」

ゴブリン「ただの鉄の鎧のような」

武具屋「いいからいいから!安全性だけは保証するぜ!」

9: 2013/03/26(火) 10:38:05.53 ID:hWk25c9f0
「酒場」

客A「ヒソヒソ」
客B「クスクス」


ゴブリン「・・・」
ゴブリン(やっぱり笑われてる・・・そりゃそうだよな、サイズデカすぎるんだもんこの鎧)


店主「いらっしゃい、噂の魔勇者だね?話は聞いてるよ、どんな仲間をお望みだ?」


ゴブリン「えっとじゃあ、まず回復魔法使える人を」

店主「はいはい、回復魔法ね。えーと・・・ありゃ、今一人しかいないな」

ゴブリン「どんな人ですか?」


店主「『突如現れた謎の覆面僧侶!魔王娘ちゃん』だけだ」

ゴブリン「どうみても魔王様ですよね。それにその前口上これから毎回読み上げるつもりですか?」


店主「いやこれぜんぶ名前だ」


ゴブリン「長い!」

10: 2013/03/26(火) 10:40:33.98 ID:hWk25c9f0
ゴブリン「えーと、じゃあ僧侶はおいといて攻撃役の魔物を紹介してもらえますか?」

店主「こっちも一人しかいないみたいだ」


ゴブリン「嫌な予感」

店主「『彗星のごとく現れた謎の戦士!魔王ウーマン!』だな」


ゴブリン「この店魔王様以外雇ってないんじゃないか」


店主「バレたか」

13: 2013/03/26(火) 10:43:20.90 ID:hWk25c9f0
店主「そして何を隠そうこの私こそ!」

ゴブリン「ま、まさか!」


魔王「そう!店主に化けた魔王だったのだ!」


ゴブリン「やっぱりか」

魔王「さあ、とりあえず私を連れて冒険の旅に出るのだ!」

ゴブリン「拒否権は?」

魔王「無い!」

ゴブリン「さあ出発だ」

15: 2013/03/26(火) 10:48:41.20 ID:hWk25c9f0
「沼地」

ゴブリン「魔王様、とりあえず旅に出たは良いモノの」

魔王「何だ?」

ゴブリン「二人だけというのは心もとないといいますか」

魔王「私は回復魔法も攻撃魔法も完璧だし攻撃はデフォルトで全体攻撃だが?」

ゴブリン「とは言いましても」

魔王「わがままなゴブリンだなお前は!逆に考えるんだ!この私を独占できるのだと!」

ゴブリン「したくないです」

魔王「ぐぬっ」

ゴブリン「だいたい仕事はどうしたんですか?忙しいんじゃ?」

魔王「ふははははは!その点は抜かりないぞ!側近の机に全部置いてきた」


ゴブリン「職務怠慢も甚だしい」


魔王「ええい!とにかく仲間が増えればぐちぐち言わないのだな!?ちょっと待ってろ!」

17: 2013/03/26(火) 10:51:00.57 ID:hWk25c9f0
ゴブリン「分身とかは無しですよ」

魔王「うぐっ」

ゴブリン「一人でもうっとお・・・大変なのに二人の魔王様とかもう手に負えません」


魔王「くそぅ」


ゴブリン「もういいです。とりあえず進みましょうか」

19: 2013/03/26(火) 10:54:41.16 ID:hWk25c9f0
ゴブリン「そういえば僕はどうやってレベルをあげればいいのでしょうか?まさか同胞を頃すわけにも・・・」


魔王「え?レベルとか上げなくて良くね?私居るし」


ゴブリン「えっと、戦いになったらまさか魔王様一人で?」


魔王「余裕余裕」


ゴブリン「ぼく要らないんじゃ無いですか?魔王様一人で人間滅ぼしちゃえばいいと思います」


魔王「えー、一人旅ってなんか寂しーじゃん!」


ゴブリン「旅する必要自体無いんじゃないかなぁ」


魔王「まあ転移魔法使えるし」

20: 2013/03/26(火) 10:56:52.53 ID:hWk25c9f0
ゴブリン「じゃあちゃちゃっと人間の城に転移しちゃいましょうよ。上手く行けば今日中に帰れますよ」


魔王「えー・・・それはちょっとな~」


ゴブリン「何か問題が?」


魔王「早く帰ったら仕事しなきゃいけないし」


ゴブリン「それが本音か」

23: 2013/03/26(火) 11:00:32.37 ID:hWk25c9f0
魔王「まあまあ!とりあえず人間の国へ向かおう!人間界の入り口までは転移してあげるから!」


ゴブリン「入り口までかぁ」


魔王「ほら、若いうちの苦労だ!買え!」


ゴブリン「また適当なことを」

24: 2013/03/26(火) 11:03:42.13 ID:hWk25c9f0
「王国からちょっと離れた平原」


魔王「さて、ついたぞー」

ゴブリン「あー、遠くに城が見えますね」

魔王「ふははは!ここから巨大魔法で叩き潰してくれるわ」

ゴブリン「ダメですよ。善良な人間まで氏んじゃいます。制服後の労働力ですよ!」

魔王「魔界で人口爆発してるし今更人間とかいらなくねー?」

ゴブリン「そんなにさっさと終わらせて仕事がしたいとは。なら止める必要はありませんね、やっちゃって下さい」

魔王「さあ、歩くぞ~!」

26: 2013/03/26(火) 11:07:51.05 ID:hWk25c9f0
ゴブリン「あ!魔王様!あれ!」

魔王「ん~?」



子どもA「オラぁ!このクソスライムがぁ!」

子どもB「突つくぞオラぁ!」プニプニ

子どもC「抱きつくぞオラぁ!」プニーン

スライム「や、辞めるでござる!痛いでござる!」




ゴブリン「スライムが人間にイジメられてますよ!助けなきゃ!」


魔王「遊んでるだけじゃない?」


ゴブリン「あれはイジメですって!ほら!」


子どもA「牛乳拭いた雑巾頭の上で絞るぞオラぁ!」


スライム「辞めるでござる!拙者、生臭くなっちゃうでござる!」

27: 2013/03/26(火) 11:11:10.24 ID:hWk25c9f0
魔王「たしかにアレはやりすぎかもしれんね。牛乳雑巾は臭いのだ」


ゴブリン「経験あるんですか」


魔王「小学校あがりたての時、ガキ大将にイジメられてね。まあ次の日にはパパ上が成敗してくれたけど」


ゴブリン「そんなこと話してる間に雑巾が用意されてしまいました!急がないと!」

28: 2013/03/26(火) 11:14:50.80 ID:hWk25c9f0
魔王「聞いといて『そんなこと』はないだろ・・・傷付いた」

ゴブリン「後で謝りますから!こらー!」


子どもB「うわぁ!なんだあれ!鎧が金属バット持って走ってくる!」

子どもA「うわあああああ!こわいよおおおお!」

子どもC「後ろには不審者もいるぞーー!」


スライム「た、助かったでござる」


ゴブリン「大丈夫でしたか?」


スライム「おかげさまで。まことにかたじけない」


魔王「不審者って誰のことだーー!待て~!」

子どもたち「追いかけてきたーーー!」

29: 2013/03/26(火) 11:17:28.71 ID:hWk25c9f0
スライム「いやはや。昼寝してたらいきなり子どもたちに囲まれ困っていたのでござる。ゴブリン殿たちが来て下さらなんだら今ごろ拙者は・・・」


魔王「牛乳スライム雑巾フレーバーだったな」


スライム「お、恐ろしい」ガタガタ

31: 2013/03/26(火) 11:19:43.68 ID:hWk25c9f0
ゴブリン「まあまあ、せっかく助かったんだから脅かすのは辞めて下さい」

スライム「拙者からもお頼み申す」


魔王「仕方ないなぁ特別だぞっ☆」


スライム(このちょっとウザい御仁はどちら様にござる?)

ゴブリン(一応魔王様にござる)



魔王「一応ってなんだ一応って」

32: 2013/03/26(火) 11:25:13.61 ID:hWk25c9f0
スライム「魔王様とな!何故魔王様がこのようなところに!」


ゴブリン「かくかくしかじかで」


スライム「要はサボりでござるか」


魔王「違うもん!上司自ら現場へ出るホワイト体制なだけだもん!」


スライム「して、その旅、拙者も同行したくござるのだが、良うござるか?」


ゴブリン「大歓迎ですよ!二人だけで心もとなかったところです!」


魔王「このやろう!私を独占出来なくなるんだぞぅ!」


ゴブリン「とりあえずあそこのキャンプで旅の準備を整えましょうか。装備しか買わずにきてしまったので」

スライム「それが良かろうござるな」

魔王「無視すんなおい」

34: 2013/03/26(火) 11:29:06.67 ID:hWk25c9f0
「キャンプ」

商人「さーあよってらっしゃい見てらっしゃい。様々な道具が定価のはんがくだよ!うちは魔物も人間も区別ナシ!お金持ってりゃ皆お客様だよ!」


ゴブリン「すいません」


商人「うわあ!出た!」

ゴブリン「区別ナシって言ってたじゃないですか」

商人「まさか本当に買いにくるとは。ちょっと驚いてるよ」


ゴブリン「まあ珍しい事なんでしょうね。とりあえず薬草を1000G分。あと今夜の宿も貰えますか?」


商人「あいよ!テントかし出しは大人200G、子ども100Gだけど大丈夫かい?」


ゴブリン「はい」

35: 2013/03/26(火) 11:31:46.42 ID:hWk25c9f0
「キャンプ・夜」


ゴブリン「はーい、じゃあ、今からテントを組み立てます。と言っても魔力注ぐだけなんですが」


魔王「まかせろー」バリバリ


ボフン!


ゴブリン「・・・豪邸が現れた」

魔王「やだ・・・私の魔力高すぎ!?」


スライム「さすがにござる。腐っても魔王様」


魔王「腐っとらんわい」

ゴブリン「さあ、入りましょう」

37: 2013/03/26(火) 11:36:37.84 ID:hWk25c9f0
「テント内部」

魔王「うわー広い。魔王城くらいあるね、これは」

ゴブリン「食事も出てますよ!最近のテントは便利になりましたね」

スライム「拙者用の流動食もござるよ!これは嬉しい!」


コンコン


ゴブリン「あれ?ノック?」

魔王「誰か来たんじゃないのー?」

ゴブリン「そりゃノックしてるんだからそうでしょうが」


?「すいませーん。どなたかいらっしゃいませんかー」

40: 2013/03/26(火) 11:45:01.25 ID:hWk25c9f0
ゴブリン「魔王様、一応変装しといて貰えますか。念のために」


魔王「あいよっと」

サキュバス(魔王)「これでいいかい!?」

ゴブリン「スライム殿も魔王様については極力触れないで下さいね・・・はーい!」


バサッ


男「すみません、一晩の宿を頂けませんか?お金がそこをついてしまって・・・ってうわぁ!魔物!」

ゴブリン「いらっしゃいませ、おっと、私が魔物だから脅かしてしまいましたね。私も家族で旅をしているのです。
我々と一緒で良ければ部屋も空いている事ですしどうぞお泊り下さい」


男「そ、そうですか、あなた方も旅を・・・ではお願いします」

女「お、お願いします」

41: 2013/03/26(火) 11:48:59.33 ID:hWk25c9f0
サキュバス(魔王)「いらっしゃいませ、ちょうど晩御飯だったんですけど召し上がりますか?」

男「そこまでお世話になっては・・・」グウゥ

男「あ」

スライム「ははは、お腹は正直ですな」

女「すみません、私も、その、」クゥゥ


ゴブリン「どうぞどうぞ。お口に合えばよいが」

42: 2013/03/26(火) 11:53:34.28 ID:hWk25c9f0
ゴブリン「ほお、お二人で旅を?」

男「ええ、いろいろ事情がありまして・・・」

ゴブリン「いえいえ、深くは追及しませんよ。事情があるのはお互いさまです」

男「すみません。いや、それにしても美味しい!何のお肉ですか!?」パクパクガツガツ


ゴブリン「いやぁ、テントを作るともう出来ていたので材料まではわからないんです」

女「でも、本当に美味しいですね!こっちのスープも!」


サキュバス(魔王)「では、今日はもう遅いし食べ終わったら寝ましょうか」

スライム「ですな」

43: 2013/03/26(火) 11:57:01.42 ID:hWk25c9f0
「翌朝」

男「昨晩は本当にお世話になりました。ご馳走までしていただいて」

女「本当にありがとうございました」

ゴブリン「いえ、こちらこそ楽しいひと時をすごせました」

男「では僕たちはこれで」

ゴブリン「また何処かでお会い出来るといいですね」


ゴブリン「そうですね。お互いの無事を祈りましょう。では!」

44: 2013/03/26(火) 12:00:37.91 ID:hWk25c9f0
「テントの外」

男「・・・よし、じゃあまた出発だ」

女「いい人たち、いえ、いい魔物さんたちでしたね。優しくて、純粋で」

男「そうだね。魔物がみんなあんな感じなら争わなくて住むのに」

女「でも、悪い魔物が多いのも事実です、勇者様」


勇者「そうなんだ。いつか平和になるのを願って今日も一日頑張ろうか、賢者」


賢者「はい!」

45: 2013/03/26(火) 12:02:46.53 ID:hWk25c9f0
「テントの中」


ゴブリン「さて、じゃあ出発しましょうか。もう変装は解いても大丈夫ですよ魔王様」


魔王「あー、キツかった。慣れない事はするもんじゃないな」

スライム「拙者は特に何もしておらなんだので疲れてはおらぬ」

魔王「知ってる」


ゴブリン「テントを商人に返してきますから準備しといてくださいね」

46: 2013/03/26(火) 12:08:27.52 ID:hWk25c9f0
その後なんやかんやあって王を倒しました
めでたしめでたし

50: 2013/03/26(火) 12:14:59.01 ID:E7yyKviS0
おつかれ、お前はよく頑張ったよ

51: 2013/03/26(火) 12:23:06.82 ID:cJEsvasq0
>>1の次回作にご期待ください!

引用元: 魔王「よく来たな魔勇者ゴブリンよ」