女「すっかり忘れていました」

男「まあ、あんまり盛り上がる行事でもないからな」

女「七夕は乙姫と織姫どっちだったかも今思いだしましたよ」

男「乙姫ってなんだっけ」

女「なんでしたっけ」

男「なんか小さい頃は短冊に願い事とか書いたよな」

女「あー、書いたかもしれないです」

男「なんて書いてた？」

女「天の川が見たかったから晴れますようにって」

男「その日限定じゃん……」

女「そちらは？」

男「不老不氏とか、世界征服とか」

女「ふふ、子どもっぽいですね」

男「ぽいというか、子どもだったんだ」

女「今でも不老不氏になりたいですか？」

男「いや、ずっと生き続けるのなんか怖いじゃん」

女「じゃあ世界征服は？」

男「征服なんかしてどうするんだっていう」

女「夢がなくなりましたね」

男「確か七夕って物語があったよな」

女「はい。彦星と織姫の」

男「どんな話だったっけ」

女「織姫っていう可愛い人が彦星っていうカッコいい人と結ばれるんですが」

男「うわ、そんなにリア充臭かったっけ」

女「織姫は彦星と遊んでばかりで仕事をしなくなるんです」

男「これだからリア充は」

女「これだからリア充は」

男「それで？」

女「神さまが怒って二人を天の川の東と西に別れて暮らせって言うんです」

男「唐突な理不尽」

女「リア充への制裁ですね」

女「でも一年に一度会ってもいいと言われて、その日を楽しみに二人は仕事を頑張るんです」

男「それが七夕か」

女「でも」

男「でも？」

女「遠距離恋愛も素敵ですよね」

男「うーむ」

女「どうしますか、一年に一度しか好きな人に会っちゃダメって言われたら」

男「そうだなあ」

女「別れて暮らせって言われたら」

男「神を頃すかなあ」

女「発想が世界征服並みですね」

男「不老不氏なら、あるいは」

女「ただし神には勝てない」

男「うーむ」

女「一年に一度しか会えないなら、私なら日々の仕事も頑張れませんね」

男「好きな人と一緒のほうが頑張れるてきな」

女「てきな」

女「七夕って日本以外にもやるところがいくつかあるんですが」

男「へえ」

女「短冊を飾るのは日本だけらしいですよ」

男「へえー」

女「せっかくなんで短冊かきましょうか」

女「この先の神社に短冊をかけるところがあって、結構叶うって評判らしいです」

男「へえ」

女「行きましょう」

男「行くのか」

女「え、嫌ですか」

男「いや、いいけど」

男「七夕の歌みたいなのあったよな」

女「ああ、ありましたね」

男「歌ってみて」

女「えっ」

男「歌ってみてよ」

女「え、は、はい」

男「……」

女「さーさーのー葉ー、さーらさらー……」

男「……」

女「とても恥ずかしいんですけど」

男「それから？」

女「続きは覚えてない、です」

男「あ、神社ついた」

女「ちょっと、なんで歌わせたんですか！」

男「ああ、あそこか。ささの葉が出てるよ」

女「さらさらなんですかね」

男「あんまり歌は上手くないんだね」

女「怒りますよ」

女「他の人の短冊がたくさん飾ってありますね」

男「若い人が多いなー」

女「ここ有名ですからね」

男「『彼氏ができますように』『彼女ができますように』……こんなのばっかだな」

女「お願いする前に自分で努力しろって話ですよね」

男「そんなこといったらなんでもそうだよ」

女「そうですけど」

男「ひとつの短冊にいくつも願いが書いてあるのもある」

女「そんな強欲な人の願いは叶いませんよ」

男「～がほしいみたいなものも多い」

女「欲望に直球ですね」

男「クリスマスじゃないんだから」

女「短冊は『～になりますように』みたいな感じだからいいんですよね」

男「『～だったらいいなあ』くらいの感じだよね」

女「なんというか、やわらかい願い方ですよね」

男「わからないけど、わかるような」

男「さて、なにをかいたものか」

女「うーん……」

男「彼女ができますように」

女「……！？」

男「ってのだけはやだな」

女「で、ですよね」

男「負けた感じがする」

男「そういえば」

女「はい？」

男「お前って彼氏とかいるの？」

女「……はい？」

女「……」

男「……」

女「……気になりますか？」

男「…………いや、そこまでは」

女「私に彼氏がいると思いますか」

男「だよな」

女「むー、失礼ですね。じゃあ秘密です」

男「じゃあってなんだよ」

女「彼氏がいたら、こうしてあなたと会ったりできませんよ」

男「それもそうか……」

女「私に彼氏がいたら、嫌ですか･･･…？」

男「さあ、秘密」

女「なんですかそれは」

男「でも、こうして会えなくなるのは嫌かな」

女「そ、そうですか」

男「……あ、雨が降ってきた」

女「ほんとですね、あそこで雨宿りしましょう」

男「雨、嫌だなあ」

男「そんなに強くないからすぐに止むかな」

女「七夕の日に降る雨は催涙雨って言うんですよ」

男「詳しいな」

女「織姫と彦星が流す涙なんですって」

男「やっぱり年に一度は悲しいのかな」

女「七夕の日に会えたから嬉し涙なんじゃないですか」

女「韓国では織姫と彦星が嬉し涙を流すから、七夕の日は絶対に雨が降るといわれているんですよ」

男「本当に詳しいな、凄い」

女「えへへ」

男「じゃあ嬉し涙か」

女「その日の晩に降れば嬉し涙。それが二日続けば別れを惜しむ涙だそうです」

男「どのみち泣くのか」

女「だって、そりゃ、泣くでしょう」

女「韓国では七夕のことをチルォルチルソッって言うんですよ」

男「言いにくい」

女「言ってみてください」

男「チルォルチルソッ」

女「チルォルチルショッ」

男「あ、噛んだ」

女「噛んでません」

男「やたらと詳しいな」

女「まあ、いろいろ調べましたから」

男「七夕について？」

女「いや、向こうの文化とか」

男「ん？」

女「いや、はい。まあ、七夕について調べたんです」

男「今日が七夕だって忘れていたのに」

男「……短冊、なにかこうか」

女「そうですね、今のうちに決めておきましょうか」

男「けどあれだな、彼女ができますようにってのは嫌だけど、織姫みたいな存在は羨ましいよな」

女「私が織姫だったらどうしますか？」

男「うーん」

女「……」

男「お前が織姫ってのはちょっと嫌だな」

女「……そうですか」

男「一年に一度しか会えないってのは、ちょっと嫌だな」

女「……そうですか･･･…困りましたね」

>>46
些細だが…が統一されてなかった
再投下する

男「うーん」

女「……」

男「お前が織姫ってのはちょっと嫌だな」

女「……そうですか」

男「一年に一度しか会えないってのは、ちょっと嫌だな」

女「……そうですか……困りましたね」

男「……」

女「……」

男「……そういえば、そっちは短冊になにかもうかいたのか？」

女「はい」

男「なんて？」

女「向こうでも、頑張れますようにって」

男「向こう……？」

女「私、海外に行くんです」

男「えっ！？」

女「留学です」

男「どこに！？」

女「韓国です」

男「えっ！？」

男「なんで！？」

女「将来の夢のために、ですかねえ」

男「だからいろいろと詳しかったのか……」

女「自分でも努力しないと願いは叶いませんからね」

男「……」

男「しばらく会えなくなるわけか……」

女「でも、アメリカとかよりは日本に近いですよ韓国」

男「……そういう問題かよ」

女「……」

男「……」

女「雨、やみましたね」

女「結局、なんてかいたんですか？」

男「んー」

女「教えてくださいよ」

男「お前が歌上手くなりますように」

女「あ、ひどい」

男「冗談」

女「本当は？」

男「一年に一度くらいは会えますように」

女「……誰に？」

男「織姫に」

女「……誰に？」

男「織姫は織姫」

女「不老不氏や世界征服と比べるとずいぶん控えめなお願いですね」

男「このくらいやわらかい願いのほうが叶う気がするからな」

女「それ、私が言いました」

男「いつ韓国に行くんだ？」

女「もうすぐですかね」

男「こんな時期に行くのか」

女「はい、こんな時期ですが仕方ないんです」

男「向こうでも、頑張って」

女「はい」

女「それじゃあ、また」

男「おう」

女「……」

男「じゃあな、織姫」

女「……はい、彦星さん」

おわり

ここまで読んでくれた人がいればありがとう
作者は久しぶりにSSを書いた星秋でした

前回が不評だったのでしばらくお休みしていたけれど
七夕ネタで書きたいなあと思ったんですが、間にあいませんでした……

よければ過去作も読んでくれ

男「あぁ、死にてえ……」 女「死にましょう！」
男「金を出せ！」 女「そんなことより誘拐してください！」
女「こんばんはー！」 男「夜の11時だぞ」
男「冥土の土産に教えてやろう」 女「いや、いいです！」
女「今日は節分だね」 男「痛い、痛いって！」
女「愛してます」 男「知ってる」
男「明日はバレンタインデーだね」 女「気づかなかった」
女「ひな祭りだ、うぇーい」 男「うぇーい」
女「昨日どんな夢見た？」 男「美女が出てきた」
男「好きだ！」 女「エイプリルフールですね」
男「黙ってついてこい」 女「誘拐ならおすすめしません」
男「バカ野郎、死にてえのか！」 女「はい！」