1: 2011/02/16(水) 20:13:58.00 ID:Rc2S0cv50
女「ん、これのことかい?」

男「そんなもんかばんに入れてちゃ重いだろ。かさばりそうだし」

女「まぁこれは小さい方のカメラだからな。気張らずにスナップを撮るくらいならこいつで十分だよ」

男(微妙に質問と咬み合ってない気が…)

男「いやいや、小さいってそれ一眼レフってやつだろ?どうすればそれが小さいと呼べるんだよ」

女「ふふ、一眼とはいえこれは入門機だからね。もう一回り大きいカメラも持っているよ」

男「そうなのか…それにしたって邪魔じゃないか?」

女「カメラはすでに私の一部だよ。君だって、重いからといって腕を置いていこうとは思わないだろう?」

男「…腕を重いと感じることなんて無いけどな」

女「つまりはそういう事だよ、君」

4: 2011/02/16(水) 20:20:57.14 ID:Rc2S0cv50
女「カメラの話題になったのも何かの縁だ。君の写真を撮らせてくれたまえ」

男「えー」

女「何だ、一枚撮らせてもらうだけだぞ」

男「いや、あんまり写真に撮られるの好きじゃないんだよね」

女「何を女々しいことを……今さら写真写りを気にするようなツラでもないだろうに」

男「自分の顔がずっと残るって何か嫌なんだよな。それにほら、物より思い出って言うじゃん?写真なんかより記憶に残しておくって方が…カッコよくね?」

5: 2011/02/16(水) 20:25:46.65 ID:Rc2S0cv50
女「写真なんか………貴様、それは私に対する宣戦布告ととって間違いないな?」

男「ちょ、待て、何マジでキレてんだよ。俺のこと撮ったってしょうがないだろ?それとも何だ、そんなに俺の写真が欲しいのか?wwww」



女「は」

男「は?」

女「はは…はははは……。そんな戯言をよくもまぁ言えたものだな貴様の写真なぞ誰が欲しがるというのだ自惚れもそこまで行くと大したものだよ君。シネクソバカさようならだ二度と話しかけるな氏ね」

6: 2011/02/16(水) 20:33:43.16 ID:Rc2S0cv50
男「氏ねって言った!それも2回も氏ねって言った!」

女(スタスタスタ・・・)

男「あ、待ってちょっと待って」

女(スタスタ)

男「ごめんなさい許してください謝りますからほんとごめん」

女(スタ。)

男「あ、許してくれます…?」

女「…明日」

男「明日?」

女「明日朝10時、駅北の公園に来い」


8: 2011/02/16(水) 20:41:41.04 ID:Rc2S0cv50
男「え?それってデーt」
        女「私が満足するまで写真を撮らせてもらうからな」

男「…ハイ」

女「ふふ、遅刻しないよう今日は早く寝ることだ、君はいつも授業に遅れてきているようだからな」

男「よく知ってるなー」

女「まぁな。私もレンズ磨きに精を出しすぎないよう気をつけるよ」

9: 2011/02/16(水) 20:51:06.09 ID:Rc2S0cv50
―翌日


男「結局ギリギリの時間に来てしまった」

男「公園としか言われなかったが、ここって池があったり林があったり、結構広いよな。どこにいるんだ…?」

カシャ、、、、カシャ、、、、、

男「ん?」

カシャ、、、

男「よう、ここにいたか」

カシャ、、、カシャ、、、

男(シカトですかそうですかー。しかし何ていうか…カメラを構えた女さんて…うん…キレイだよな…いや、かっこいいって感じかな)

カシャ


男「女さーん」

カシャ

男「ぅぉーい…」

11: 2011/02/16(水) 21:01:44.77 ID:Rc2S0cv50
女「ん……君か。なんだ、もうそんな時間かね」

男「えらく集中してたな、さすがというかなんというか…」

女「ああ、いい機会と思って早くから来ていたんだ。風景写真の練習にね」

男「へえ、いい写真とれた?」

女「いや…、君に見せられるような写真は撮れてないよ。実は風景写真というやつは苦手なんだよ、私は」

男「そうなんだ。写真なら何でも好きなのかと思ってた」

女「別に嫌いというわけではない。ただ、苦手なんだ。どうも上手く撮ることができない」

男「撮る物によって得手不得手があるんだ?」

12: 2011/02/16(水) 21:08:35.59 ID:Rc2S0cv50

女「ああ…。だから練習していたんだが、やはりよくわからないな。一言に風景と言っても、その中に人だとか動物だとか…花でもいいな、何か主役を据えられればまだいいんだが。ただそこにある風景を撮れと言われても、何をとればいいのかわからず戸惑ってしまう」

男「そんなもん、あるまんまとればいいってものじゃないのか?」

女「そんな事で写真をやっているだなんて自称することはできないんだよ、君。厳密に言うなら、空の割合だとか画角の選択だとか、構図のポイントは色いろあるんだが…それが上手く決められない。その辺りのセンスが無いんだろうな、私には」

男「写真も大変なんだな」

女「だが今日はもう心配ない。なにせ主役がちゃんといるのだからな」

男「あー。」

女「諦めろ、今日の君に拒否権は無いのだよ。行くぞ」

14: 2011/02/16(水) 21:17:24.42 ID:Rc2S0cv50
男「んで、どこで撮るんだ?」

女「んむ?」

男「写真だよ。どこかでポーズを決めさせられるわけだろ?恥ずかしいよなー」

女「何を言っているんだ、君は」

男「やだなー、休日で人の目もあるし、モデルの撮影かと思われたら困っちゃうよなー」

女「」

女「ああ、本当に恥ずかしいな、君という奴は」

男「え?え?」

16: 2011/02/16(水) 21:23:14.25 ID:Rc2S0cv50
女「たしかに写真は撮らせてもらうが、別に特殊なポーズを決めろだとか格好つけろだとか注文するつもりは無いよ。そういう事をして様になるような容姿だと、まさか自分で思っているわけでもあるまい?」

男「Oh...」

女「いや、衆目の中変なポーズで羞恥に悶える君の写真というのもそれはそれで画になるかもしれんな…」

男「ヤメテ」

17: 2011/02/16(水) 21:29:57.56 ID:Rc2S0cv50
女「ふふ。まぁ私は、いかにも写真をとりますといった感じの物よりは、自然な姿を写すほうが好きなのでね。まぁいかに自然な表情を引き出すかも撮影者の腕の見せ所と言われればそれまでなのだが…」

男「引き出すって、どういう事?」

女「ふむ。例えばある写真家が、離島の島民の生活を写して写真集を作るとする」

男「うんうん」

女「いきなり訪ねて、島を回って写真を撮らせてもらって、はいさよなら、ということはまず無い」

男「というと?」

女「少なくとも数日、場合によっては数ヶ月、数年、その島に逗留し、島の人々と親交を深めた上で写真を作り上げていくんだ」

19: 2011/02/16(水) 21:40:00.36 ID:Rc2S0cv50
男「数年とはまた、えらい長期間だな」

女「ああ。その中でまず、自分の存在を島民に知ってもらい、自然なものとして受け入れられるよう努力する。いきなり知らない奴がやってきて写真をとって回っていたら警戒されるのは道理だろう?」

男「そりゃそうだ」

女「それに加えて写真家自身も、島の人間ひとりひとりについて、よく知ることが大切なんだ」

男「へぇ?」

女「頑固なおじいちゃんがいる、気のいいおばちゃんがいる、見かける度にカンチョーを仕掛けてくる少年がいる。
  いい写真を撮るためには、そんな個性を惜しみなく出してもらえるくらい写真家が受け入れられ、その個性を写し出せるくらいひとりひとりを写真家は理解している必要がある。そうやって作り上げられた写真というのはそれはそれは美しいものだよ」

20: 2011/02/16(水) 21:50:21.38 ID:Rc2S0cv50
男「うぅん、なるほど凄いな。しかし語るねぇ、女さんも立派な写真家になれるよ」

女「ふふ、私は大二病をこじらせただけのつまらない素人だよ。だがそうだな……一生をかけてたった一人を撮り続けるというのも悪くないかもしれないな」

男「おお、何か言いようのないロマンを感じるね」

女「それを君に手伝ってもらいたいと………いや、何でもないよ、君」

21: 2011/02/16(水) 22:04:42.53 ID:Rc2S0cv50
女「さあ、あそこでソフトクリームを食べようじゃないか」

男「いいね」

女「私はストロベリーだ」

男「ん?」

女「よろしく頼んだよ」

男「あのー」

女「よろしく」

男「ハイ」


22: 2011/02/16(水) 22:09:15.74 ID:Rc2S0cv50

店員「シャーセー」

男「ストロベリーひとつとー」

カシャ…カシャ・・・

男(なんか撮ってるし…)

男「あとバニラひとつでー」

店員「アリガトウゴザイマース、オフタツデニセンエンニナリマース」

男「!?」

23: 2011/02/16(水) 22:18:47.11 ID:Rc2S0cv50
男「ほら……買ってきたよ……」

女「何だ、私のぶんしか買わなかったのかね」

男「あのぅ…ソフトクリームにしてはずいぶんと破格のおねだんだったのですが」

女「うむ。食べたいと思いつつも手が出なくてね。いい機会だったよ」

男「ちくせう」

女「モグ…ん!美味しいな!さすが千円!」

男「」

女「ほら、君も食べてみたまえ、ほら」

男「あ、いいのか?それじゃちょっとお借りして……うん。美味し…」

カシャ

男「て、撮ってるし。もの食ってるとこ撮るなよな」

女「ああ、実に間抜けた良い顔」

24: 2011/02/16(水) 22:27:20.93 ID:Rc2S0cv50
男「くそう…。ん?そういや昨日のカメラと違うな、それ」

女「お、やっと気づいたか。これが昨日言った大きい方のカメラだよ。私の愛機、D300だ」

男「へー。名前は知らないけど、何か高級そうだな」

女「高級なのだよ。まぁ高級とは言ってもまだまだの部類だがね。上を見れば切りがないよ」

男「でも高いんだろ?」

女「まぁ、昨日の入門機…D40というのだが、あれとは比較にならないね。学生の身分でこんな物を買うなど、バカにも程があると思うよ。お金を払うときには失神しそうだった」

男「おいおい…」

27: 2011/02/16(水) 22:38:19.06 ID:Rc2S0cv50
女「だが、後悔はしていないよ。高級機はやはり良い…」

男「そんなもんか。でもさ、弘法は筆を選ばずって言うじゃん。高いカメラなんて必要なのか?」

女「君、私は自分を弘法と並べるほど高慢では無いよ。あれは才能のある人間だからこその言葉であって、私のような凡才非才が掲げていいようなものじゃない」

男「でもさ、何が違うんだ?入門機とやらとは」

女「そうだな、私に言わせれば入門機は余計な機能が多すぎる」

28: 2011/02/16(水) 22:51:35.09 ID:Rc2S0cv50
男「機能が少ないんじゃなくて?」

女「ああ。実際には機能面でも性能面でも高級機に劣っているのだが、それを隠すためなのかかわりにいらない機能を付け加えているんだな。シーン撮影モードなんてのはその最たるものだ」

男「シーン撮影?」

女「カメラ本体の上部にダイヤルが付いていてな、スポーツとか、風景とか、人物とか、まぁその状況によってカメラのモードを簡単に切り替えられるようになっているんだ」

男「便利そうじゃん」

女「うむ。これはカメラに詳しくない人間でも簡単に撮れるようにという配慮だとは思う。だがね、一言にスポーツだとか言っても状況は様々だろう?
 そりゃあスポーツモードで上手く撮れる時もあるだろうが必ずその状況に適合するとはとても言えない」

男「それは確かに」

29: 2011/02/16(水) 23:07:44.08 ID:Rc2S0cv50
女「じゃあどういう状況に適しているか、というのは説明書をよく読めば、モードごとにどんな設定がされているかは書かれているのだが、知識がなければ理解出来ない。
 逆にこれが正確に理解できるような人間はモードなどに頼らずともより良い設定に自分で変えることができる」

男「ははぁ」

女「つまりね、詳しくなくても簡単キレイに写真が撮れるよ、という、素人にとっつきやすくさせるためのエサでしか無いんだよ」

男「でもいらないなら使わなければいいだけじゃない?」

女「それはそうなのだが…このダイヤルがなかなかどうして簡単に動いてしまってね。意図せずシーン撮影モードになっていてチャンスを逃し泣かされたことが幾度あっただろうか」

男「あー、ちょっと悔しいかも」

女「それにあれだ、私のカメラに、そんな無粋な機能が付いているというのが気に食わない」

男「それが本音なのね」

30: 2011/02/16(水) 23:19:49.22 ID:Rc2S0cv50
女「さて、美味いソフトクリームも食べたし、ちょっと歩こうか」

男「えっ、これだけ?1000円出したのになんの伏線もなくソフトクリームの扱いこれだけですか?」

女「何を言うかね、高級なソフトクリームを食べながら高級なカメラについて語ったではないか」

男「どちらかというと入門機への愚痴って感じだったけどね」

女「そう言うな。文句ばかり言ってしまったが、実際入門機も捨てたものではないよ。入門とはいえ一眼レフには他ならないからね。そのへんのコンパクトデジカメとは比較にならないくらい綺麗に映るよ」

男「うん、確かに大きいんだからそれだけ綺麗に写りそうな気はする」

31: 2011/02/16(水) 23:28:20.22 ID:Rc2S0cv50
女「また曖昧な認識だな…」

男「でもさ、フツーの人はコンパクトデジカメで十分だって思うじゃん。ちゃんと写るし、プリントアウトもできるよ?」

女「君って奴は……。これはコンデジと一眼レフの違いをレクチャーしなければいけないようだな」

男「え?ああ、うん。」

32: 2011/02/16(水) 23:44:52.17 ID:Rc2S0cv50

女「まず挙げられる大きな利点は、オートフォーカスの速度にある。一眼レフのピント合わせはコンパクトカメラとは比較にならないくらい早い。これは使用されている技術が根本的に違うことによるものなのだが…まぁその説明はやめておこう」

男「シャッターチャンスを逃さないってことかな」

女「ああ。そして瞬時にピントを合わせつつ連写することができる。これはコンデジにはできない大きなアドバンテージだ」

男「なるほど」

34: 2011/02/16(水) 23:56:25.35 ID:Rc2S0cv50
女「被写界深度を生かした表現ができるのも一眼レフの魅力だな、つまりはボケ味だ。背景のボケた写真をよく見るだろう?」

男「あー、正面の人がくっきり写ってて後ろがボケボケな奴ね」

女「そうそう、ああいう写真は画像素子、フィルムカメラでいうフィルムに当たる部分だな、これが小さいコンデジにはどうしても難しい表現方法なんだ」

男「どういう事?」

女「それを私に説明させるのかい?君がどうしても聞きたいというのなら説明するに吝かではないが、長くなるし言葉だけで理解するのは難しいぞ?」

男「うん、まぁ、とにかくコンパクトデジカメでは背景ぼかしはできませんよ、と」

女「それでいい」

36: 2011/02/17(木) 00:06:39.71 ID:X9642x1w0

女「それに一眼レフといえばレンズ交換!シチュエーションや被写体によって適切なレンズに交換できるのだ!カメラひとつにつきひとつのレンズしか無いコンデジには真似できない芸当だろう?」

男「お、そう考えると経済的?」

女「いや、レンズ一本で下手なコンデジなら余裕で買えてしまう」

男「…」

女「それでも人はレンズを買い集め続ける…そこにレンズがある限り。俗にレンズ沼と言われるな」

37: 2011/02/17(木) 00:08:11.17 ID:X9642x1w0

女「ああ…もう日付が変わったのか」

男「いや、まだお昼にもなってないんですけど」

女「今日は腹筋スレには行かないほうが良さそうだぞ、君」

男「ごめん意味がよくわからないよ」

女「それでもかまわないさ」

39: 2011/02/17(木) 00:16:28.88 ID:X9642x1w0
男「あー、じゃあ、女さん的にはコンパクトデジカメは邪道な感じ?」

女「いや、そんなことはないぞ?例えば料理店でふと写真を撮りたくなったとする。料理だけじゃなくてもいい、店の雰囲気がいいとか、一緒に来ている人間を撮りたいとか。」

男「うんうん」

女「そんな時、一眼レフはよくも悪くも仰々しすぎるんだ」

男「あ、なんとなくわかる」

女「うむ、店内で一眼レフを取り出すと目立つし怪しいからな。どうしても雰囲気を壊してしまう。そういう時にはコンデジも悪くないよ」

41: 2011/02/17(木) 00:28:25.01 ID:X9642x1w0
男「じゃあ女さんも持ってるんだ、コンデジ」

女「ああ。基本的にいつも持ち歩いているよ。だが今日のように外で撮るときにはやはり一眼に限るな。ファインダーを覗いたときの程よい緊張感がたまらない」

男「カメラ狂い…」

女「褒めているのかい?さあ、また君を撮らせてくれ。さあ」

男「こんな近くで顔を撮るな!恥ずかしいわ!」

女「いいじゃないか。となりを歩く君を撮るような、そんな他愛もない写真も好きだよ、私は」

女(それにファインダー越しなら臆面も無く君を見つめられるからな……ふふ)



42: 2011/02/17(木) 00:38:30.65 ID:X9642x1w0
男「さすがにちょっと疲れてきたな。女さんの話もいいけどそろそろ休もうよ」

女「なんだ、私はまだまだ語り足りないぞ」

男「いいじゃない、そろそろお昼だし、どこかでご飯にしよう」

女「むぅ、まあそれもいいだろう。近くにオムライスの大きい店があるんだ、君にも教えてあげよう」

男「いいね!おむらいす!」



43: 2011/02/17(木) 01:04:44.29 ID:X9642x1w0
女「ここだよ」

男「おー、オムライスだけでやたらと種類豊富だな」

女「なかなか良いだろう?私もまだ全種類は食べたことがないよ」

男「へえ」

店員「ゴチュウモンオキマリデスカー」

男「じゃあこのじっくり煮込んだビーフシチューのオムライス、Lサイズで!」

女「ふふ、ずいぶんと大見得を切ったじゃないか、君。私はベーコンと野菜サラダのオムライスを頼もうか。Sサイズだ」

店員「カシコマリマシタショウショウオマチクダサーイ」

44: 2011/02/17(木) 01:18:11.89 ID:X9642x1w0
男「なんかあの店員妙な笑顔してたな…。てか大見得って、なんだよ」

女「ふふ…この店はサイズがSSからLまであってね」

男「うん?」

女「私はこの見せに来るたびにつねづね思うのだが、このLサイズというのは少々見えを張ってしまう愚かな君のような男のために、
 Sサイズは私のような少女が少食を気取りつつも普通に食べたい時のためにあるとおもうのだよ」

男「??」

女「注意書きを見なかったのかね?この店はSサイズで普通の店のMサイズに相当する。LということはLLサイズだな」

男「…」

女「ご飯だけで1キロはあると聞くが、食べ物は粗末にできないよなあ、君」

男「」

45: 2011/02/17(木) 01:27:53.07 ID:X9642x1w0

店員「ゴユックリドウゾー」

女「うむ、実物を見るのは初めてだが、山だな、それは」

男「ニゲチャダメダニゲチャダメダ…」

女「これは一枚撮っておくべきだろう」

男「タベマス!ボクガタベマス!」

女「ここで登場するのが、さっき言ったコンデジなのだよ、君」

男「オトコクン!イマハスプーンヲクチニハコブコトダケヲカンガエテ!」

ピッ、カシー

女「おお、そういえばコンデジの利点のもう一つにシャッター音が小さいというのがあるな」

男「タベルッ!」

女「一眼レフのシャッター音というのは、それはもう耳に心地よい物なのだがね、やはり店内であの音がすると他人の目を引く」

男「オトコクン!シッカリシテ!ハヤク、ハヤクタベルノヨ!」

46: 2011/02/17(木) 01:38:37.50 ID:X9642x1w0
女「ところでこのカメラ、コンデジにしては黒くて無骨で、なかなか良いだろう?P5100というのだがね、コンデジながら実にニコンらしいデザインで気に入っているのだよ」

男「イブクロノボウギョシステムハ?」

女「少し古い機種でね、オートフォーカスも遅いし癖があって使いにくいのだが、これがどうしてかわいいやつで」

男「ショクドウソンショウ!」

女「何を隠そう、私を写真の道に導く原因となったカメラだからな、愛着があるのだよ」

男「イブクロガモウモタナイ!」

女「うん、大味だがやはり美味いな、オムライスは」

男「知らないカメラだ…」

女「第弐話 見知らぬ、フィルム」

47: 2011/02/17(木) 01:49:53.04 ID:X9642x1w0
男「そういやさっきからコンパクトデジカメの話とかしてるし、そのカメラもデジタルだよね?フィルムカメラは使わないの?」

女「ああ…フィルムか。持ってはいるんだがね、本気で画作りをしようと思うと素人には難しいよ、フィルムは」

男「そうなの?」

女「デジタルならプリントアウトするときに納得のいく色や陰影が出るまで何回も補正ができるからね。
 フィルムはその点、写真屋頼みだ。現像する人間の好みによるだろうし今は完全に機械任せな店がほとんどだ」

男「さすがに自分で現像はしない、と」

49: 2011/02/17(木) 01:57:55.39 ID:X9642x1w0
女「ラボ送りという方法もあるそうだが…私は試したことが無いな」

男「ラボ送り…プロフェッショナルな響きだね」

女「ま、私のような未熟者には不要なものだろう。それにフィルムには枚数が限られるという欠点もあ

る」

男「限られた枚数で最高の一枚を撮るのが腕の見せどころなのでは」

女「…そう言ってくれるな。私もそうは思うのだが、フィルムカメラを使うたびに己の軟弱さを痛感す

るよ」

男「人生日々精進也」

50: 2011/02/17(木) 02:10:06.67 ID:X9642x1w0
女「ageか…私のような若輩が果たして使っていいものかと思っているのだが」

男「また何か言い出したよこの御方…」

女「だがこのまま人目に触れず落ちて行くのは少々悲しいな」

男「しかも何か悲観的だし…」

女「そうしてしまうには少し語りすぎたようだよ、君」

男「なんかよくわからないけど元気出して」

女「そんな私だが少し勇気づけられる言葉をもらったのでね。今からではどれだけの意味があるかはわからないが、許されるならageていこうかと思うのだよ」

男「うん、いいんじゃないかな」

女「ああ、慣れ合いだと蔑まれてもいい。今しばらく私に語る時間をくれないか…」

男「age」

52: 2011/02/17(木) 02:18:30.79 ID:X9642x1w0
男「そういえばさ、フィルムにも何か種類があるよね」

女「おお、男にしてはよく知っているな。ネガフィルムとポジフィルムの違いだな」

男「昔フィルムカメラを使ったとき、高いフィルムのほうが写りもよかろうと思って高価な奴を買った

ら、現像費もやたら高くとられてさ、おまけに厚紙の枠にはいった小さい写真をたくさん渡されて扱い

に困ったよ」

女「ふふ、己の浅知恵を恨むんだな。ネガフィルムというのは一般的によく使われているもので、現像

したときに出てくるフィルムが色調の反転した物になる」

男「ああ、よく見る茶色いやつね」

女「そうだ。しかしネガでは描写可能な光量の範囲が狭く、ちょっとカメラの設定を誤ると簡単に真っ

白な写真や真っ黒な写真が出来上がってしまう」

53: 2011/02/17(木) 02:29:40.52 ID:X9642x1w0
男「あれ、じゃあネガフィルムのほうが難しいってこと?」

女「極論を言えばそうだな。ただしカメラのオート機能に任せていればそうそう間違いは起こらないので心配ない」

男「そっか。じゃあもうひとつの方は?」

女「ああ。ポジフィルムはどちらかというと玄人向けだ。これは現像するとフィルムが普通の写真と同じようにカラーで出てくる。
 君が扱いに困ったという写真はその現像されたフィルムの事だな。一枚一枚枠に綴じてもらえたりするのだが現像費だけでネガの3倍以上する」

男「高くつくわけだ」

女「そのかわり写りに関しては申し分ない。ネガよりも表現できる色合いが広いから鮮やかな写真が撮れるし、あえて露出、光の量だな、
 これを変えて明るい白い画を作ったり逆に暗い中に対象が見えるような表現をすることもできる」

男「それは面白そうだ。玄人向けの画作り、ってことなのかな?」

女「ま、そんなところだね。ポジについては店によっては出来上がったフィルムを見てから一つ一つに味付けの注文をしてプリントできるところもあるようだよ」

男「へえ」

54: 2011/02/17(木) 02:41:07.16 ID:X9642x1w0
女「ただね、このポジフィルムに関してはあえてフィルムカメラを使う必要はないと、私は考えているよ」

男「どういう事?」

女「うむ、このポジの特性というのはデジタルカメラの写りと似ていてね。高画質で大きくプリントアウトすることを考えなければデジタルで十分なのだよ」

男「つまりネガフィルムにはそれなりの利点があるってこと?」

女「鋭いね、そのとおりだよ。ネガフィルムの少し褪せたような色合いや機械的なプリントの結果がね、ときに自分で意図した以上の味わいを出すこともあるのだよ。これがネガのおもしろいところさ」

男「へぇ、そういう作品作りもありなんだ」

女「ああ。ただ、これは私自身の意図とは離れたところにあるから、それを自信を持って私の作品として出すことはしないよ。ま、完全に趣味の範疇といったところだね」

男「おおー、プロっぽいこだわり」

女「単なる自己満足だよ」

55: 2011/02/17(木) 02:48:36.23 ID:X9642x1w0
女「しかし今日は実にいい天気だな。天気がいい日の屋外というのは、写真が最高に美しく映るよ」

男「まぁ天気が良いと景色も綺麗だよね」

女「む、本当に君は写真の知識が無いのだな」

男「そりゃま、デジカメのひとつも持ってないし」

女「それでもISO感度くらいは知っておいて損はないぞ。コンデジなんかでも重要なファクターだからな」

56: 2011/02/17(木) 02:54:06.35 ID:X9642x1w0
男「感度?」

女「ああ。簡単に言うなら、一定の時間でどれだけの量の光を写せるか、という数値だな」

男「んー?」

女「写真は主に、シャッタースピード・絞り・感度の三点で決まる。シャッタースピードは露出とも言うな。まぁここでは簡単に露出と感度の二点で説明しよう」

男「ふむ」

女「露出はそのままシャッターが開いている時間を指す。だから露出が長いほど撮れる写真は明るくなり短ければ逆に黒くなる。これはわかるね?」

男「つまり、暗いところで写真を取るためには露出を長くしなきゃいけないってこと?」

女「そのとおりだよ。しかしそうすると、手ぶれの問題が出てくる。露出が長い分、その間にぶれた映像もそのまま記録されてしまうため、出来上がる写真もブレブレの物になってしまう」

男「失敗写真の例によくあるね」

女「暗いところで撮りたい、でも手ぶれ怖い、そんなジレンマを解決するのが感度設定なのだよ」

57: 2011/02/17(木) 02:59:58.75 ID:X9642x1w0
男「出ました感度」

女「この感度は、大抵のデジカメでだいたいISO100前後がデフォルトで設定されている。これを200、400、800と上げていくごとにそれに比例して感度が上がっていく。つまりその分露出を短くできるわけだな」

男「それだけ手ぶれの心配も減ると。でもさ、だったらいつも感度を高く設定しておいたほうが良くない?」

女「それが感度の落とし穴でな、この数値を高く設定するほど得られる画質は落ちて行くのだよ。解像度が下がるわけではないがノイズが酷くなってね」

男「諸刃の剣か」

女「最近はISO6400とかでもノイズの少ない高画質で撮ることのできる機種もあるが、それは超高級機の話でね。コンデジに関して言えばたかが知れている。だからあらかじめ自分の許容できる画質の感度を知っておく必要がある」

男「じゃあ普段はISO100にしといて状況に応じてあげていけばいいのかな?」

女「いや、カメラによって最高の画質を得られる感度は微妙に違うからね。ISO100とは限らない。まぁただ、基本的に最高の画質を得られる感度がデフォルトで設定されてるから、悩む必要はないと思うよ」

58: 2011/02/17(木) 03:01:15.89 ID:X9642x1w0

女「ああ、もうすっかり暗くなってしまったな。私のカメラではこの暗さで満足のいく写真を撮るのは難しそうだ」

男「時の流れはジェットスピードだぜ」

女「ということで今日はこのくらいにして私たちも引き上げよう。人っ子ひとりいないじゃないか」

男「ま、僕もそろそろ聴き疲れて限界かもしれない」

女「なに、心配することは無い。君が望むならいつだって好きなだけレクチャーしてあげるさ」

男「イエ、モウジュウブンデス」

女「そうかい?じゃあこのへんでお開きにしようか。機会があれば、またいつか」


おわる

61: 2011/02/17(木) 04:16:31.38 ID:fzj6wsyg0
終わっちゃダメ

69: 2011/02/17(木) 12:55:29.47 ID:X9642x1w0

男「女さーん」

女「む、君か」

男「女さん!実は女さんに影響されてカメラを買ってみたんだよ。だからまたいろいろ教えてもらおうと思って」

女「ほう。それはなかなか殊勝な心がけじゃないか、君。で、なんという機種を買ったんだね?」

男「機種?え、えーっと、、、き、キスって奴なんだけど///」




70: 2011/02/17(木) 13:05:02.19 ID:X9642x1w0
女「驚いたことに残っていたのでね。こんな時間だが少し語ろうと思うよ」

男「女さんて時々変なひとりごと言うよね」

女「書きためなんてものは無いがね、どうとでもなるだろうさ」

男「何?何か書いてるの?」

女「私の愛だよ、君」

72: 2011/02/17(木) 13:22:39.91 ID:X9642x1w0
女「なっ……EOS Kiss だと……」

男「うん!値段は割と安いけどさ、画素数?も大きいし動画も撮れるんだって!」

女「はっ、貴様、ついにキヤノンに魂を売ってしまったというのか!」

男「あーそういえば女さんのカメラはニコンだっけ。同じカメラなんだし違いはないでしょ?」

女「ああ、くそ、買う前に私に一言いってくれればこんな戯けた真似はさせなかったというのに…っ」

75: 2011/02/17(木) 13:43:41.50 ID:X9642x1w0
男「何?キャノンってもしかしてダメな子?」

女「ああ……いや、決してそういうわけでは無いのだが…うん…」

男「珍しく歯切れが悪いなぁ」

女「うむ…言ってしまえばこれは宗教上の理由でね。残念ながら私はニコンに魅せられてしまった女なのだよ、君」

男「左様ですか。んで、ニコンとキャノンは何か違いがあるの?」

女「正直なところ大して差はない。少なくとも画質面については、まぁキャノンのほうがいいという話も聞くが…発色の違いで好みが分かれるとかその程度でね。
 余程のこだわりが無ければ気にする必要の無い部分だと思うよ」

76: 2011/02/17(木) 13:50:20.43 ID:X9642x1w0

男「なんだ、やっぱりどっちでもいいんじゃん」

女「まあな。だが性能云々という点以外で、決定的な違いがひとつあるのだよ」

男「うん?」

女「君、買ったものにレンズはいくつ付いてきたね?」

男「ああ、それならひとつしか付いてこなかったよ。ダブルズームキットとかいうのもあったけど、まぁレンズ交換は女さんに貸してもらえばいいかなと思ってさ」

77: 2011/02/17(木) 14:03:36.68 ID:X9642x1w0
女「そういう事だろうと思ったさ。本当に愚かだね、君は」

男「えーと……何かまずかったでしょうか」

女「全く、私のレンズを借りようなどという君の浅はかな思惑だがね、残念ながらそれは不可能なのだよ」

男「Oh...」

女「レンズとカメラ本体を繋ぐ部分、マウントというのだがね、これはメーカーによって違う形状をしているのだよ」

男「つまり他社のレンズは付けられないと…?」

女「そうだ。ニコンFマウント、キヤノンEFマウント、ソニーαマウントなんかがある。フォーサーズという規格もあって、これについてはオリンパスとパナソニックで共用が可能となっているがね。基本的にはマウント間の互換性は一切ないよ」

79: 2011/02/17(木) 14:13:20.19 ID:X9642x1w0

男「そっか…じゃあ新しいレンズが欲しくなったら自腹を切るしか無いのか。ま、しばらくはこの一本だけで我慢しようと思うよ」

女「ふふ、そうするがいいさ。わたしの話を聞いてレンズ欲を押さえていられればの話だがね」

男「なんか怖いなあ」

女「まあ買ってしまった物は仕方がない。君、説明書は持ってきているかね?わたしはキヤノンのカメラはよく知らないんだ。一緒に仕様を見ていこうじゃないか」

男「よろしくおねがいします」

81: 2011/02/17(木) 14:28:22.31 ID:X9642x1w0

女「ふむ、これはKiss X4というのか。本体を見るにキヤノンデジタル一眼の入門機のようだな」

男「Kissって名前が付いてるのはみんな入門機みたいだよ」

女「そうなのか。む、1800万画素もあるのか。入門機にしてはなかなかやるな…」

男「うん、それを決め手に買ったんだよね。ちなみに女さんのは?」

女「わたしのD300は1230万画素だよ」

男「おおっ、てことはあれかな、女さんのより高性能なカメラ買っちゃったってことなのかな」

82: 2011/02/17(木) 14:44:53.55 ID:X9642x1w0
女「数値的にはそうなるな。ただ、画素数が高いからと言って高画質かといえば一概にそうとも言い切れない」

男「でも画素数って記録される画像のサイズのことだよね、大きいほうがいいんじゃないの?」

女「画素数に比例して画像素子も大きくなるならそれでいいのだがね」

男「画像素子って…カメラのフィルムに当たる部分だっけ」

女「ああ。一般的なデジタル一眼レフではAPS-Cと呼ばれるサイズが採用されており、35mmフィルムより一回り小さいサイズになっている。君のカメラも、わたしのカメラも、微妙な差はあるが同じサイズの画像素子を持っているのだよ」

86: 2011/02/17(木) 15:07:28.67 ID:X9642x1w0
女「画素数というのはつまり何ピクセルで、一枚の写真をいくつの点を使って表現できるか、ということを表している。画像素子には、その画素数に応じた非常に細かいタイルが敷き詰められているようなものだ。タイル一つにつき、1ピクセルを表現できる。」

男「わかるようなわからないような」

女「だからね、同じ画像素子のサイズで考えると画素数が大きくなるほどタイル一つあたりのサイズが小さくなってしまう」

男「確かに。でもそれだど何か問題があるの?」

女「大問題さ。それだけ受けられる光の量が少なくなってしまうからね、拡大して見たときにどうしても精細さが失われてしまいがちだ。だから安易に画素数を高くするというのはあまり褒められたことではないんだ」

89: 2011/02/17(木) 15:20:48.45 ID:X9642x1w0
男「ははあ」

女「もちろんそれを技術力でカバーするのだろうがね。高感度撮影なんかをしようと思うとどうしたってピクセルごとのサイズの小ささがデメリットになってしまう」

男「じゃあ画素数はどれくらいあればいいのかな」

女「そうだな、大きなポスターをつくるとかの特殊な用途を考えなければ、1000万画素でも十分すぎるくらいだと思うよ。最近のカメラは一眼でもコンデジでもたいていそのくらいの画素数は備えているからね、何か理由がなければ気にする必要はほとんど無くなっている」

男「しかしそう聞くとこのカメラは失敗だったかなー」

女「なに、大した問題では無いさ。普通に使っているぶんには気づかない程度のものだよ」

91: 2011/02/17(木) 15:28:31.73 ID:X9642x1w0

女「さて、もう少しカメラのスペックについて考えていきたいと思ったのだがね、天の声が聞こえたよ」

男「どうかしたの?」

女「うむ。カメラ本体より先に、写真の写りを決めるシャッタースピード・絞り・感度の関係について改めて詳しく説明する必要がありそうだ」

男「ISO感度のところでも少しはなしてたよね」

女「ああ。ここでひとつ訂正なのだが、わたしがシャッタースピード=露出と説明したのは、あれは間違いだ。忘れてくれたまえ」

男「えー」

女「シャッタースピードは露光時間と呼ばれるな。露出は写真の明るさのことを指している」


93: 2011/02/17(木) 15:41:38.99 ID:X9642x1w0

男「写真の明るさ?」

女「ああ。できるだけ目で見ているのと同じように写真に映るよう、カメラが正しい明るさに調整してくれるんだ。ただ露出には、これで間違いない、と言えるような数値などはないからな。デフォルトの設定もメーカーやカメラの種類によって微妙に異なる」

男「デフォルトの設定、ってことは自分でも調節できるのかな?」

女「コンデジでも一眼でも、この機能は必ず付いている。露出補正と呼ばれていて、0をデフォルトにプラスに補正すれば明るく、マイナスなら暗く写る」

96: 2011/02/17(木) 16:01:45.25 ID:X9642x1w0
男「なるほど」

女「そして、この露出にシャッタースピードと絞りと感度が大きく関わってくるんだ。ひとつひとつ説明していこう」

男「うんうん」

女「まずはシャッタースピードだ。これは名前のとおり、シャッターの開閉速度だな。フィルムや画像素子に光が当たり続ける時間と考えてもいい。手ぶれの話でも言ったように、これが長いとその間の動きもすべて記録されてしまう。
 スポーツなんかも気をつける必要があって、この場合にもシャッターが開いている間に対象が動いてしまうため結果として写真はぶれてしまう。だからこういう時にはできるだけシャッタースピードを早く設定するのが懸命だ」

男「じゃあ、いつもシャッタースピードは早くしておいたほうがいいのかな。手ぶれの防止になるし」

女「いや、そうとも限らない。対象の動きを表現するためにあえ遅くするというのも一般的な技術だからね、ケースバイケースさ」

98: 2011/02/17(木) 16:14:41.23 ID:X9642x1w0
女「絞り、これは被写界深度表現を決定する数値だな」

男「背景のボケ味だね」

女「レンズの中に、円形の穴が拡大縮小するようなシャッターが付いていてね、カメラの中に入ってくる光を制限しているんだ。
 それを絞りと呼ぶのだが、絞りが開いている状態ではピントを合わせた以外のところはボケたように写り、逆に絞って光を制限するほど画面全体がくっきり見えるようになる」

男「光を制限したほうがくっきり写るようになるんだ?」

女「目の悪い人がまぶたを細めて見たりするだろう?実際あれで多少よく見えるようになるのだが、実はカメラの絞りと同じ理屈なのだよ」

男「あー、やるやる。なるほどね」

99: 2011/02/17(木) 16:30:17.17 ID:X9642x1w0
女「絞りの値ははF値なんても言って、F値が大きいほど光が絞られている事を示す。これも自分で設定することができるが、コンデジでは背景をぼかした写真を撮るのは難しいためこの設定が省かれているものも多い」

男「一眼レフだったら、撮りたい写真に応じて気軽にF値を設定すればいいってことかな」

女「うむ。ただし絞りは絞るほど光を制限する。つまりF値の大きくして撮ろうと思うと写真は暗くなってしまうのだ」

男「確かにそうなりそうだけど、どうすればいいのかな」



100: 2011/02/17(木) 16:38:33.55 ID:X9642x1w0

女「シャッタースピード、絞り、以前説明したISO感度、この三つの特性をまとめてみよう」

男「うん」

女「シャッタースピードは、遅くすると明るく、早くすると暗く写る」

男「光に触れる時間が長いほうが明るくなるってことだね」

女「絞りは、F値を小さくすると明るく、大きくすると暗く写る」

男「背景がぼけるような写真のほうが明るく撮りやすいってことか」

女「ISO感度は、高くすると明るく、低くすると暗く写る」

男「ただし高く設定すると画質が落ちるんだよね」

103: 2011/02/17(木) 16:48:01.99 ID:X9642x1w0
女「だから完全にカメラ任せのフルオートで撮った場合、デフォルトの露出の明るさで撮れるように、カメラ側でこの三つの値が自動で調整される」

男「普通はそうやって撮ってるよね」

女「以前の君のように、カメラに興味のない人間なら、そうだろうな。しかし、こういう写真に仕上げたい、という目標を持って撮った場合、カメラ任せではうまくいかないのだよ」

105: 2011/02/17(木) 17:05:20.48 ID:X9642x1w0

女「ではここでいくつか例を作ってみよう」

男「だんだん本格的になってきたな…」

女「まずはボケを生かした写真をとってみよう」

女「今回はカメラの絞り優先モードを使った。F値を撮影者が任意に固定し、それ以外をカメラに任せるモードだな」

男「確かにぼけてるね」

女「わかると思うがピンクのぞうさんにピントを合わせて撮った。今回はF4.5に固定。カメラ側でシャッタースピード1/30秒、ISO1000に設定された。露出はデフォルトで撮っている」

107: 2011/02/17(木) 17:16:02.43 ID:X9642x1w0
女「次は、ボケが少ない写真を撮ってみた」



女「同じ絞り優先モードで、F値を10に固定。露出補正もデフォルト。するとカメラ側でシャッタースピード1/8秒、ISO1600に設定されている」

男「シャッタースピードもISOも明るくなるように変化したね」

女「そう。結果として得られた写真の明るさは変わらないが、絞りを大きくしたために入る光の量が減ったため、それを補うためにシャッタースピードが遅く、ISOが高く設定されたんだ」

109: 2011/02/17(木) 17:36:45.91 ID:X9642x1w0

男「その分画質が落ちて、手ぶれがしやすくなってしまう、と」

女「ああ。画質に関しては僅差だが、手ぶれは少ししてしまっている。わたしの技術では、1/30秒くらいが手ぶれを起こさず撮れる限界だな」

男「つまり、自分の技術や撮りたい対象、表現方法なんかでどの設定を優先し、犠牲にするかを考えなくちゃいけないってことかな」

女「その通りだ。今回は絞りを優先させたが、例えば子供の写真を撮るときなどは対象が動くのでシャッタースピードは早くしたほうが無難だ。そうなると画質や絞りをそれに合わせなければならない。どの値をどう変化させるかは、カメラによって可能な設定が変わるがね」

111: 2011/02/17(木) 17:44:56.21 ID:X9642x1w0
男「ちなみに女さんは普段どんな設定にしてるの?」

女「わたしの場合、絞り優先で撮ることが多い。その時二番目に優先されるのがシャッタースピードで、わたしの腕の限界を考えて最長でも1/30秒より遅くはならないようにしてある。
 指定したF値と最長の1/30秒でも望んだ露出が得られない場合は、画質を犠牲にしてISOの値を順次上げていくようになっている。
 ただし、ISO1600以上にあげると許容できない画質になるため、シャッタースピードを1/30秒よりも遅くするようにしてある」

男「複雑すぎるだろ…jk」

女「だから写真を撮るときは常にシャッタースピード・絞り・ISO感度が今どんな値をとっているかに気を使いながら撮っているよ」

男「難しいな…てか無理ッス」

女「なに、基本的に明るいところなら難しい撮影にはならないし、頻繁にこの三つと露出補正をいじりまわしていれば自然と身につく技術だよ。何事も慣れさ」

112: 2011/02/17(木) 17:53:16.02 ID:X9642x1w0

女「ところで君、ゲームは好きかね」

男「また唐突だな…まあ嫌いではないけどさ」

女「わたしはカメラを愛しているがね、同時にゲームも同じくらい好きなのだよ」

男「??」

女「Amazonは偉大だよ」

男「嫌な予感が…」

女「キャサリンが今しがた届いたんだ。とても楽しみにしていたものでね、早速プレイしてこようと思うよ」

男「待って、デジタル一眼初心者を放って帰らないでっ!」

女「習うより慣れろ。いい言葉だと思わないかね、君」

138: 2011/02/18(金) 12:39:18.81 ID:Z9asA3mW0
男「あ、女さん。今日も写真とカメラについていろいろ話を聞かせてくれるのかな」

女「また君かね……」

男「女さん…なんだか眠そうというか不機嫌?」

女「ああ、眠いし不機嫌なのだよ。全くそのとおりさ」

男「なに、寝不足?」

女「徹夜でゲームの上に夢のなかでもパズルをさせられたよ。全く酷いゲームだ、あれは」

男「ああ、昨日言ってたキャサリンてやつ?」

女「夢のなかでパズルを解いて進んでいくというゲームなのだがね、まさか自分でもそれを体験するとは思わなかったよ」

男「うなされて今起きてきたところ、と」

女「恥ずかしい限りだ」

男「ま、ま、気をとりなおしてさ。早速レクチャーをひとつ頼むよ」


139: 2011/02/18(金) 12:53:26.21 ID:Z9asA3mW0
女「それなのだがね、君」

男「うん?」

女「わたしはこの後出かける用事があってね。今日はもう帰ってこないよ」

男「そんな…」

女「それにね、わたし程度の未熟者のひとり語りを聞くよりも、ほれ、ほかの人間の話を聞いてみるのも悪く無いのではないかね」

男「でも誰に聞いたらいいのかな」

女「おや、まだ気づいていなかったのかね。ここはSSスレの皮を被った写真カメラ布教スレなのだよ」

男「な…なんてことだ……っ!」

女「だからね、そろそろ私は用済みになっても良いと思うよ」

男「女さんがそう言うなら…わかったよ。ここまでありがとう…」

女「なに、心配することは無いさ。ここにはほかの人間もわずかながらにいるようだ」

男「う、うん…」



女「ここにいる男という奴に、わたしに代わって写真とカメラを教えてやってはくれないかね、君」


おわり

140: 2011/02/18(金) 15:05:37.26 ID:8xO1xeTdO
カシャ

141: 2011/02/18(金) 15:55:07.24 ID:YAIAbAMBO
いいセンスだ。

引用元: 男「女っていつもカメラ持ち歩いてるよな」