17: 2013/06/24(月) 07:33:19.42 ID:izQj6oqp0
冒険者「百年生きればドワーフは男女関係なく髭が生えると聞いてたものですから、その」

ドワーフ姫「期待に添えなくて悪かったな、気に入らないならとっとと出て行け」

冒険者「いえ、そういう訳じゃあ……ただ噂と違って女性らしいな、と」

ドワーフ姫「取って付けたような世辞は好かん、やはり人間というのはウソつきの集まりだ」

冒険者「ギョロ目というよりはパッチリとした瞳、筋肉だるまというよりはしなやか、蛙の姿勢というよりは単に小柄で」

ドワーフ姫「それがどうした、見た目など何の役にも立たん。鍛治一般の出来ないドワーフは何年経とうと半人前だ」

冒険者「こちらの金細工は姫お手製と聞きました、立派なものじゃないですか」

ドワーフ姫「こんな物はワシの半分も生きていない幼子でも作れる、長の娘が作っていい物じゃない」

冒険者「そうですか……ところで、その長殿、王様はどちらに?」

ドワーフ姫「エルフの所へ和平交渉に出ている、故にワシがこうして代理を務めているのだ」

冒険者「……もしや、先程から帰そう帰そうとしているのは御身に長としての自信がないから、ですか?」

ドワーフ姫「ふざけたことを抜かすな! 不愉快だ、即刻立ち去れ!!」

冒険者「失礼しました。よろしければ、餞別代わりにこちらの金細工を……」

ドワーフ姫「勝手に持って行け! 二度とこの国に近づくな!」

冒険者「また来ます、お元気で」

21: 2013/06/24(月) 07:48:36.00 ID:izQj6oqp0
冒険者「お久しぶりです、姫様。手土産と言っては何ですが、北国の葡萄酒を」

ドワーフ姫「二度と近づくなと言ったはずだ。その酒に免じて見逃してやる、そこに置いて消えろ」

冒険者「いえ、例の金細工なんですが行く先々でお偉い方々の目に留まりまして」

ドワーフ姫「ウソつきの人間、三度目はないぞ。消えろ」

冒険者「ドワーフ族の中では拙い作品かも知れませんが、他種族にとっては見事な逸品なのです。もし新しい作品などあれば……」

ドワーフ姫「ない。あった所でお前に見せてやる義理もない、お前が消えないなら私が消えよう」

冒険者「姫様、どうかお待ちを。この度はご相談に参ったのです、少々出過ぎたのは謝りますから、せめて話だけでもっ」

ドワーフ姫「ならさっさと話せ、そしてとっとと出て行け」

冒険者「ええ、先の金細工の話ですが本当に行く先々で言われたのです、言い値で買いたい、是非に、と」

ドワーフ姫「ふんっ」

冒険者「種族のことに口を挟み申し訳ないですが、この技術を持って他種族他国と交流を持ってはいかがでしょうか」

ドワーフ姫「? ……何を」

冒険者「見た所、この国で作った物はこの国の中だけにしか流通していない。他の国からすればこの装飾は珍しく、羨ましいのです」

ドワーフ姫「それで?」

23: 2013/06/24(月) 08:00:58.00 ID:izQj6oqp0
冒険者「移民を出しましょう、多種族を知り、多種族に知られることで姫様の王としての力を示すのです」

ドワーフ姫「何かと思えば……つまらん。上手く言いくるめて安銭で馬車馬の様に働かせるつもりだったか? 当てが外れたな」

冒険者「そんな! こちらの首飾りに感動したのは本当です、しかも熟練の職人なら更に優れた物を作り出すという!」

ドワーフ姫「欲しくなったから奪う訳か、この盗人め」

冒険者「違います、話を聞いて下さい。エルフの織物を見たことはありますか? シルフの音楽は? ハーピーの舞はどうです?」

ドワーフ姫「……」

冒険者「これを見たエルフは似合いの見事なドレスを仕立て上げました、シルフは良い歌が作れそうだと喜んでいました」

ドワーフ姫「口先だけなら、なんとでも言える」

冒険者「っ、人間もコカトリスもセイレーンやハーピーだって驚いていたんですよ、そうして自分達の文化に取り込もうとしていた!」

ドワーフ姫「盗人は人間だけではなかったか、付き合い方を考え直さねばならないな」

冒険者「ならばドワーフの職人も、多様な文化に触れることで新たな着想を得られるはず! 互いの更なる発展を望めるのです!」

ドワーフ姫「興味がない、失せろ」

冒険者「……今日はこれで失礼、します。また来ます」

ドワーフ姫「来るな、三度目はない」

24: 2013/06/24(月) 08:10:39.11 ID:izQj6oqp0
冒険者「お久しぶりです」

ドワーフ姫「誰か、こいつをつまみ出せ」

冒険者「また、酒を持って来ました。前回の葡萄酒に加え更に北の火の様な酒もあります。どうかお話だけでも」

ドワーフ姫「ふん、勝手に喚いていろ。独り言なら咎めん」

冒険者「では失礼して。移民の話、考えて頂けましたか?」

ドワーフ姫「……これは独り言だが、あれ以来そこここの国から民の入れ替えを持ちかけられて迷惑している」

冒険者「お考えは変わりませんか……ああ、その酒を飲む時は、こちらの香草で煮込んだ肉をつまみにするとより一層」

ドワーフ姫「……あぐ、もぐ、ゴクリゴクリ」

冒険者「如何です?」

ドワーフ姫「ふふ、珍妙だ。はぐ、もぐもぐ」

冒険者「左様で……ではまたいずれ、何か手土産の用意が出来ましたらその時は移民の話、ご一考を」

ドワーフ姫「ふんっ、さっさと消えろ。飯が不味くなる」

冒険者「また来ます、ご機嫌よう」

26: 2013/06/24(月) 08:22:27.52 ID:izQj6oqp0
ドワーフ姫「……駄目だ、また失敗作が出来上がってしまった。今夜はまるで集中出来ん、あの程度の酒で酔うはずはないのに……」

ドワーフ姫「はあ、やけに蒸すな……夏でもないというのに、また乳の下に汗疹が出来てしまう」

ドワーフ姫「んっ、ふ……一枚脱いだぐらいではあまり涼しくならんな、どうにも、内側から火照るというか」

ドワーフ姫「水浴び……いや、もう今日は寝てしまおう。なんだか、体も気怠い」

ドワーフ姫「……」

ドワーフ姫「……」

ドワーフ姫「……眠れん、やけに目が冴える。それにさっきからどんどん暑くなっている気がする」

ドワーフ姫「ごく、ごくり……ぷはぁ! はぁ、はぁ……ごく、ごく、ごく……」

ドワーフ姫「っ、もう、水がない……持ってこさせないと、干からびてしまう……くっ」

ドワーフ姫「なんだ、これは……? 身体が、まるで言うことを、一体……はぁ、はぁ……」

ドワーフ姫「寝てしまえば、治る、か……もういい、早く……はぁ、寝なければ……はぁ、はぁ」

ドワーフ姫「ええい……布団も、暑苦しい……うう、ろくに脱げない服め、この……!」

ドワーフ姫「はぁ、はぁ……! 暑、い……なんだ、これ……!?」

冒険者「こんばんは、窓から失礼しますよ。気分はどうですか?」

ドワーフ姫「だ、れだ……はぁ、くっ……お前、何故、ここに……? いや、それより、これ……は、お前が」

31: 2013/06/24(月) 08:39:15.96 ID:izQj6oqp0
冒険者「例の金細工を淫魔の一族に見せたら、竜も発情するような強烈なモノを作ってくれたんですよ。それを少々」

ドワーフ姫「はぁ、はぁ……くそっ、毒を、盛ったか……!」

冒険者「彼女らはあの装飾から、現実への不満と自尊心、自由を望む本性を見出したとかで……それを薬で表現したとか」

ドワーフ姫「ふっ……ふふ、ははは……はぁ、はぁ、なんてことない、ぁ……少し、暑いだけだ……」

冒険者「分かりますか? 異文化との交流が、姫様の金細工がこの成果を上げたんです。素晴らしいでしょう?」

ドワーフ姫「こんな、下卑たものしか、ん、作れない……奴らと、つるむ義理、ふぅ、など……はぁ、ん……」

冒険者「……そうですか? では、力ずくでも分かってもらいます。本当はもっと先の予定だったんですが」

ドワーフ姫「!? さ、わるな……! 離せ、この……う、く」

冒険者「華奢な様に見えて力強い、けれど今はまともに動きませんよ。危なかった、来るのが早かったら握り潰されていましたね」

ドワーフ姫「こ、んの……下衆、が……!」

冒険者「こんな薄着じゃ、そちらから誘ってるような物でしょう。さ、異文化交流と
行きましょう」

ドワーフ姫「ひぃん!? ゃ、触、るなぁ! ぁ……はぁ、ん……! 誰、か……賊だ、誰かぁ……!」

冒険者「魔道の一族からこういう物をもらいました……可愛らしいお香でしょう? この煙で満たされた中では外に音が漏れないそうです」

ドワーフ姫「ふぅ、ふぅ……うぁ! くぅ、こ、の……っ、やめろ……! そんな、とこ、ぐっ……」

冒険者「ちゅ……可愛らしいですよ、一目見た時からそう思っていました。まだまだ先は長いです、ゆっくり楽しみましょう?」

37: 2013/06/24(月) 08:54:45.23 ID:izQj6oqp0
ドワーフ王女「そんなわけで私はこいつの妻となって、お前を授かったんだ」

ドワーフ姫「へぇ~、母様はそんなにガンコだったの?」

元冒険者「頑固だったなぁ、話を聞いてくれなかった。異文化交流の良さを分かってもらった上で、ちゃんと告白しようと思ってたのに」

ドワーフ王女「だからといって襲う方も襲う方だ、他にいくらもやりようはあっただろう」

ドワーフ姫「ニンゲンは知恵が武器、なんだよね! 異文化交流って不思議~、何でもありなんだね」

元冒険者「夜這いも文化だ。それより驚いたのは、現場を見た義父さんがそのまま婿入りしろって言ったことだよ……」

ドワーフ王女「関係が出来てしまったんだから仕方ないだろう、なんだかんだとお前のことは気に入っていたし丁度良かった」

元冒険者「なら最初からそう言ってくれれば、もうちょっとこう、ロマンチックに……」

ドワーフ姫「母様のその指輪、父様が作ったんでしょ? それってすっごくロマンチックだよ!」

元冒険者「不細工だし、何度も割れたり玉が外れたりしてるんだぞ? 無茶苦茶かっこ悪いよ」

ドワーフ王女「その度に直してくれてるじゃないか、十分ロマンチックだ」

元冒険者「……まとめると、あー、お前も大人になったわけだし、そんな風に仲が割れたりしても一緒に直し合える男を見つけなさい」

ドワーフ姫「うん! それでね、実は私……夜魔族のインキュバス王子に片思いしてて」

元冒険者「認めないぞ! 他の種族の奴と結婚なんて絶対駄目だ! せめてドワーフの国の中から選びなさい!!」

おわり

引用元: ドワーフ姫「ふんっ、大方髭面に筋骨隆々の親父を想像してたのだろ」