1: 2013/02/03(日) 21:00:51.11 ID:cl/Kmlgr0
P「え?やよいが倒れた?」

伊織『ええ。今朝弟君から連絡あってね。今、新堂と一緒に様子を見に来てるんだけど…』

伊織『かなりの高熱で、思ってたより良くないわね』

P「わ、わかった…俺もすぐにいくよ」

伊織『待ちなさい』


伊織『やよい、あの様子じゃ、きっと今週いっぱいの仕事は無理よ。先に仕事の調整して頂戴』

伊織『それは、あんたにしかできない事でしょ?』

伊織『あんたがこっちに来ても何の役にも立たないんだから。どうせ来るなら全部片付いてからにして』

P「でも…」

伊織『しつこいわね!こっちは私に任せてって言ってるの!』


P「…わかった。すまん、そっちを頼む、伊織」

伊織『ええ。…律子、そこにいる?ちょっと電話代わって』

2: 2013/02/03(日) 21:04:38.51 ID:cl/Kmlgr0
P「みんな。ちょっと集まってくれ」


P「やよいが体調不良で倒れたそうだ。かなり症状が重いらしい…」

亜美「兄ちゃん…やよいっち、大丈夫なの?」

P「まだわからん…。伊織がとりあえず手をまわしてくれている」

響「プロデューサー。やよいのところに行ったほうがいいんじゃないか?」

P「そうしたいのは山々だが…」


P「まずは、やよいの抜けた穴を、俺たちがしっかりフォローしよう」

P「みんなの協力が必要なんだ。助けてくれるか?」


「「はい!」」



P「各自、営業、レッスンについては、悪いが今日は俺無しで対応してくれ」

P「先方から今日の仕事以外の話があった場合は、各自で判断せず、俺にまず連絡を」

P「電話がつながらなければ、メールでもいい。こういう時こそ、連携を密にしよう」

5: 2013/02/03(日) 21:08:32.03 ID:cl/Kmlgr0
小鳥「プロデューサーさん…」


社長「音無君。」

社長「やよい君のもとへは、私が先に向かうよ」

小鳥「わかりました。プロデューサーさんにお伝えしておきます」


社長「正念場だね…。しかし、この類のアクシデントは常に起こり得るものだ」

社長「そんな時こそ、みんなの真価が発揮される。」

社長「やよい君も、頑張っていることだろう。私たちも踏ん張ろうではないか」

小鳥「はい…そうですね…」

8: 2013/02/03(日) 21:12:11.91 ID:cl/Kmlgr0
P「よし、みんなはとりあえず仕事に向かったな…」

P「次はやよいと関係のあるクライアントへ連絡だ」


小鳥「プロデューサーさん。お手伝いします」

P「ありがとうございます。小鳥さんは、今、やよいが関わっているクライアントの洗い出しをお願いします」

小鳥「わかりました。…無理、しないでくださいね?」

P「今、無理せずに、いつ無理するんですか。大丈夫です。俺なら全然余裕ですから!」

小鳥「…わかりました。すぐにまとめます!」

P「お願いします。俺は今日明日で仕事の予定がある関係先と連絡をとりますので」


TLLL...

小鳥「はい、765プロです」

11: 2013/02/03(日) 21:16:36.69 ID:cl/Kmlgr0
??『つ、繋がった!よかった~』

小鳥「えっと…どちら様でしょうか?」

??『はうっ、す、すいません…』

小鳥(どこかで聞いたことのあるような声…?)


??『あの!助けてもらえませんか!?』

小鳥「え!?た、助けるって…?どうすれば…」


??『もしかして、事務所って、たるき亭ビルのほうですか?』

小鳥「え、ええ…」

??『今からそっちに行きますので、お願いします!』

小鳥「い、今から…!?あの、お名前は…」


??『やよいです、高槻やよいです!』

14: 2013/02/03(日) 21:20:21.91 ID:cl/Kmlgr0
P「え?やよいから電話!?」


小鳥「ええ、今さっき…」

小鳥「すごく元気そうでしたけど…」

P「どういうことだ…?何かあれば伊織や社長が連絡をくれるはず…」

小鳥「事務所に向かっているそうなんですけど、様子がどうも…」

P「う~ん…どういうことだ…」


P「と、とりあえず。事務所、任せてもらっていいですか?音無さん」

小鳥「え、ええ。私は大丈夫です」

P「俺、先方へ向かいます。そのあと、伊織が教えてくれた病院に行く予定ですが…」

P「状況が変わってたら、教えてください。メールでいいですので。それじゃ行ってきます!」

小鳥「あ、はい。気を付けて…」


ヴヴヴ…

P「ん、電話…春香か。もしもし春香?どうかしたか?………」

17: 2013/02/03(日) 21:24:21.13 ID:cl/Kmlgr0
小鳥「…では、こちらから改めて折り返しいたしますので。…はい。失礼いたします」

小鳥(今のところ、事務所への問い合わせは少ないわね)


コンコン…

小鳥「ん?」


??「し、しつれいしますー…」

小鳥「はいー」

??「あ…あー!!小鳥さん!お久しぶりですー!」

??「すごいですね!全然お変わりなく…」

小鳥「!?…え、えっと…どちら様…でしょうか?」


??「あ…。そ、そうですよね…。すいません…」

小鳥「??」

??「あの!信じてもらえないかもしれませんけど…」


??「私、やよいなんです!高槻やよいです!」

19: 2013/02/03(日) 21:28:49.69 ID:cl/Kmlgr0
小鳥「えっと、とりあえずお茶をどうぞ…」

高槻「ありがとうございますー」


小鳥(この人が…やよいちゃん??)

小鳥(律子さんみたいな、高そうなスーツ着てるし…)

小鳥(私の知ってるやよいちゃんより明らかに背が高いし…見た目がとても14歳には…)

小鳥(でも、声は似てるし、面影も、ないこともない…)


高槻「あの、小鳥さん!テレビつけてもいいですか?」

高槻「あと新聞があったりするとありがたいです!」


小鳥「あ、はい…テレビは自由に使ってもらって…。新聞は、社長の机にあったかな…」

高槻「……」

22: 2013/02/03(日) 21:32:57.06 ID:cl/Kmlgr0
高槻「小鳥さん。今日の日付って、やっぱり…」

小鳥「2月3日ですけど…?」


高槻「いえ、年のほうです。」

小鳥「2013年…」

高槻「やっぱり…2013年…。」


小鳥「あの…あなたのこと、疑っているわけではないんですけど…」

小鳥「本当に、やよいちゃんなの?」

高槻「はい、高槻やよいです。…でも」

小鳥「でも?」

高槻「今の小鳥さんの知っているやよいとは、別のやよいなのかもしれません…」


高槻「私、今、22歳なんです。昨日の日付は2021年2月2日だったんです」

24: 2013/02/03(日) 21:36:22.25 ID:cl/Kmlgr0
小鳥(み、未来人!?どどどどういうことだってばよ…!)

小鳥(未来人なんて、私の妄想ではレギュラー設定だけれども)


高槻「あ、名刺!名刺あればいいですか?」

ゴソゴソ

高槻「はい!お世話になります!リツコプロの高槻やよいです!」

小鳥「え、律子、ぷろ…?」


小鳥「ま、まさかそれって、もしかしなくても」

高槻「はい!秋月律子さんが社長です!」


小鳥「その未来は予想できた」

25: 2013/02/03(日) 21:41:00.62 ID:cl/Kmlgr0
小鳥「じゃ、じゃあ、今のやよ…高槻さんは、765プロを辞めているの…?」

高槻「えっと、所属として変わってはいますけど…」

高槻「765プロとうちは、『ぎょうむてーけー』という形でつながっているんです!」


高槻「うちの会社の偉い人リストに、高木さんもいらっしゃいますよ!」

高槻「あ…今の私なら高木社長とお呼びしたほうがいいですか?」


小鳥(律子さんが社長という時点で、なぜか現実味を帯びてきているわね…)

小鳥(ドッキリにしても、この名刺よく出来ている…)


小鳥「ん?」



小鳥「『副社長 兼 営業課 高槻やよい』…」


小鳥「!!!???」

27: 2013/02/03(日) 21:44:25.73 ID:cl/Kmlgr0
小鳥「やよいちゃ…高槻さんって、副社長なの!?」

高槻「小鳥さん。そんないいですよー、昔の通りやよいちゃんで!」


小鳥「そ、それはともかく、この肩書は…」

高槻「はい!でも、副社長と言っても別に難しいことなんてやってませんよ?」

高槻「律子さんがものすごく多忙なので、何かと代理で動けるのが便利かなーって」

小鳥(あ、今の語尾は、ちょっとやよいちゃんっぽい)


小鳥「営業まで…」

高槻「えっと、私、かれこれ4年くらいプロデューサーもやっているんです。」

小鳥「ええええ!あのやよいちゃんが?プロデューサー!!?」

高槻「はい!名刺もそのために用意しているんです!」


高槻「アイドルも楽しいんですけど、なんとなくみんなのお世話もしているうちに…」

高槻「律子さんから『やよいもプロデュース業やってみない?』って言われたんです!」


小鳥(…その未来は想定外だった)

28: 2013/02/03(日) 21:48:35.65 ID:cl/Kmlgr0
小鳥「そっか…元気なアイドルやよいちゃんは、未来にはいないのね…ちょっと残念かな。」

高槻「えっと、私、一応芸能活動もしてますよ?」

小鳥「え」


高槻「ほら、律子さんって昔、事務員しながらアイドルもしていたじゃないですか」

高槻「それを見習って…ってのもありますし。それに、ありがたいことに、ご指名でお仕事ももらえるので」

高槻「その際は、タレントとしても頑張っているんです!」


小鳥「…なんだか、目の前のやよいちゃんが、私の想像を超えてどんどんビッグになっていく…」

小鳥「つまり、アイドル兼プロデュース兼副社長を務めている、と」

高槻「はい!そんな感じです!」


小鳥(とんだ大器がいたもんだわ…めまいがする)

31: 2013/02/03(日) 21:52:24.68 ID:cl/Kmlgr0
小鳥「えっと、やよいちゃんの話に興味は尽きないけど…」

小鳥「そもそもどうして、やよいちゃんはここにいるの?」


高槻「それがわからないんです…」


高槻「順を追って説明しますね?」


高槻「いつもの通り、仕事で大阪のお客さん先のところに行くために、新幹線に乗ってたんです」

高槻「最近ちょっと忙しかったから、うとうととしてて…」

高槻「深く眠っていたのか、車掌さんに起されて目が覚めて」


高槻「でも、大阪に向かっていたはずなのに、なぜか東京に戻されていて」

高槻「新幹線のチケットも無効だし、クレジットカードも使えないし、電話も通じないし…」

高槻「よくよくみたら、なんだか微妙に私の知ってる東京と違っていて…」

高槻「ところどころに見る西暦が2013って書いてあって…」


高槻「…そんな感じです」

小鳥(超現象すぎるわね…)

33: 2013/02/03(日) 21:56:29.16 ID:cl/Kmlgr0
真「たっだいま戻りましたー!」

雪歩「あの…お疲れ様ですぅ~」


小鳥「あ、真ちゃん、雪歩ちゃん!お疲れ様ー」


真「小鳥さん、やよいのこと何か変わりありました?なんだったら、ボクらも病院に行きますけど?」


高槻「え?病院?」

雪歩「きゃあ!!ど、どちら様ですか…?」オロオロ


高槻「あー真さん!雪歩さん!」

高槻「わー!二人とも懐かしい姿ですー!」


真「え?」

雪歩「???」オロオロ

35: 2013/02/03(日) 22:01:02.66 ID:cl/Kmlgr0
真「未来の、やよい?」

雪歩「そういわれれば、やよいちゃんに似てなくもないけど…」


真「にしても、すっごい背が伸びたなー!ボクと同じくらいの高さになってるじゃないか!」

高槻「『たいきばんせー』といいますか、17歳くらいのころから一気に背が伸びたんです!」

雪歩「う、受け入れてるんだ、真ちゃん…」

真「よくわからないけど、面白いからね!」


雪歩(やよいちゃん…。私にはわかる…背だけじゃなくて…胸も…)


真「ああ、でも。肝心の、ボクらが知ってるやよいは?」

高槻「あの!そのことで私も…。病院って…?」


小鳥「あ、こっちのやよいちゃんには話してなかったわね」

小鳥「私たちの知ってるやよいちゃん、今朝から高熱を患ってて、今病院で治療しているのよ」

高槻「……!」

39: 2013/02/03(日) 22:04:33.73 ID:cl/Kmlgr0
真「ボクと雪歩、夕方まで時間空くから、どうせならお見舞いに行こうかって話してたんだ」

雪歩「う、うん…」

真「プロデューサーからまだ連絡ないの?小鳥さん」

小鳥「やよいちゃんの元へは、社長が先に行っているんだけど、まだ連絡はないわね…」


TLLLL...


小鳥「あ、電話。もしかして社長かも」

ガチャッ

高槻「はい!お電話ありがとうございます!リツコプロ、高槻やよいです!」

小鳥「え」

高槻「はい!…はい?…あ、うあーーー!」


高槻「ご、ごめんなさい小鳥さん!いつもの癖でついつい電話取っちゃいましたー!」

小鳥「い、いいのよやよいちゃん、ありがとう。えっと、誰から?」

高槻「高木さん…じゃなくって、高木社長からですよ!」

41: 2013/02/03(日) 22:08:12.10 ID:cl/Kmlgr0
雪歩「ま、真ちゃん…いま、『律子プロ』って…」

真「そ、そういうことなのかな…」


小鳥「やよいちゃん、インフルエンザかもって…社長から」

小鳥「気管支炎か肺炎も併発しているみたいだから、症状が重くなっているみたいだけど」

小鳥「伊織ちゃんお墨付きの病院だから、あとはもう大丈夫だそうよ!」

小鳥「ただ、インフルエンザだし、今日明日のお見舞いは厳しいかな」


高槻(もしかして、あの頃の…)


真「そっか…」

雪歩「でも、伊織ちゃんの病院なら安心だよね!落ち着いたらお見舞い、行こうよ、真ちゃん!」

真「うん!もちろん!」

42: 2013/02/03(日) 22:12:11.70 ID:cl/Kmlgr0
雪歩「そ、それはそうとして、大きなやよいちゃんは…」

高槻「あ、はい!なんでしょう?」


真「未来から来たってことは、ボクたちの未来も知ってるってことだよね?」ニヤリ

雪歩「ま、真ちゃん…そんなこと聞いちゃって大丈夫なの…?確かに気になるけど…」オロオロ

真「ちょっと的中率の高い占いだと思えばいいんじゃないかな!」

雪歩「あ、なるほど!それはちょっと面白そうかも~」


小鳥「ま、真ちゃんに雪歩ちゃん…ほどほどにね…?」


真「それで、大きなやよい!ボクって未来だとどんな感じ?」

真「ボクもだいぶ女らしくなったし、きっとこの先可愛い路線でブレイク間違いなしだよ!」

45: 2013/02/03(日) 22:16:18.07 ID:cl/Kmlgr0
高槻「え、えっと…真さんは、方向性的にはあんまり変わらないかなーって…」

真「がーーーん」


高槻「あ!でも、確かに今はすごく髪が長くてきれいで、カッコいい大人の女性です!大人気です!」

真「がんばろう、もっと女らしくなれるように、がんばろう…」トボトボ…

高槻「…あれ~?」


雪歩「こ、怖くて訊きたくないけど、でも訊きたい…っ!」

雪歩「あ、あの…やよ…高槻さん!私って…私ってまだ生きてますか!?」

高槻「やよいでいいですよ、雪歩さん!もちろん雪歩さんも大人気です!」

高槻「ある日どこからか見つかった雪歩さんの詩集が大好評で、現在売れっ子の作詞家としても活躍しています!」

雪歩「」ガーーン

雪歩「厳重に、南京錠で閉じておこう…」トボトボ…


高槻「…あれ~~?」

48: 2013/02/03(日) 22:20:29.50 ID:cl/Kmlgr0
小鳥「あはは…。」

高槻「ちなみに小鳥さんはー」

小鳥「い、いやっ!止めてっ!訊かない!訊かないわよ!」

小鳥「8年後の私なんて、知りたくない知りたくない、あーあーあー」

高槻「……」


TLLL...

小鳥「はい、765プロ…あ、春香ちゃん」

小鳥「…プロデューサーさん?まだ特に連絡は…。そのまま病院に直行するって言ってたけど」

小鳥「どうしたの?私から言伝する?」


小鳥「え!?千早ちゃんが激怒!?か、帰るって言ってる!?」

小鳥「そ、そんなこと言っても…一体どうして…」

小鳥「な、なんとか時間稼げない?状況がよくわからないけど、プロデューサーさんに連絡するから…?」


トントン

小鳥「え?」

49: 2013/02/03(日) 22:24:18.33 ID:cl/Kmlgr0
高槻「小鳥さん!ちょっと電話、代わっていただけますか?」

小鳥「え…ええ…」


高槻「お疲れ様です!」

春香『お疲れ様です…って、誰?』

高槻「やよいです!高槻やよいです!」

春香『え?やよい!?だって今朝病気で倒れたって…』

高槻「あ…。えっと…違います、間違えました!」


高槻「実は色々あって助けに駆け付けた、お助けプロデューサーです!」

春香『お助け…プロデューサーさん??』

高槻「はい!それで、どうしたんですか、春香さん?」


春香『あ、あのね、お助けプロデューサーさん。……』

51: 2013/02/03(日) 22:28:35.21 ID:cl/Kmlgr0
高槻「そうですか。お笑い芸人さんがMCの歌番組で、無茶な振りばかりされて…」

高槻「千早さんが怒られているってことですね?」

高槻「二人とも、その番組出るの、初めてなんですか?」

春香『番組自体は知ってたけど…出演は今日が初めてかな…』

高槻「もう少し、状況訊いていいですか?収録場所はどこですか?………」





高槻「じゃあ、ちょっと待っててくださいね!私が行きますから!お疲れ様です!!」

ガチャン

小鳥「や、やよいちゃん…?」

53: 2013/02/03(日) 22:32:49.73 ID:cl/Kmlgr0
高槻「小鳥さん!私、ちょっと現場に行ってきます!」

小鳥「え、ええ~!?そんなことして大丈夫なの?」


高槻「大丈夫です!私がまずは状況を把握してきます!」

高槻「今のままだと、こちら側の都合はわかりましたけど、番組側の話も聞いて…」

高槻「いわゆる『おとしどころ』を探ってきます!」

高槻「行ってきますねー!」


高槻「あ、本物のプロデューサーさんも“至急”現場に駆けつけるように連絡してください!」


小鳥「な…」

小鳥「なんという行動力…。さすが、3足の草鞋を履いているだけあるわ…」






真「…女らしく、おんならしく…」ブツブツ…

雪歩「…厳重に管理、げんじゅうにかんり…」ブツブツ…

54: 2013/02/03(日) 22:36:35.93 ID:cl/Kmlgr0
<問題の現場>

高槻「失礼します!お疲れ様です!」

春香「え?えっと…誰?」

高槻「お助けプロデューサーです!」

春香「ああ、あなたがさっきの…。よろしくお願いします」


高槻「あれ?千早さんが見当たりませんね」

春香「あ、ちょっとお手洗い。帰ったわけじゃないよ?」

高槻「そうですか。じゃあ先に番組ディレクターさんにお話し訊きます!もうちょっと待っててくださいね!」

春香「あ、はい」


春香(初対面のはずなのに、なんだか既視感というか、妙な安心感というか…なんだろ?)

60: 2013/02/03(日) 22:40:43.79 ID:cl/Kmlgr0
千早(そもそも歌番組にお笑いの人なんて入れるべきではないわ…)

千早(私たちは歌を歌いに来ているのに)

千早(歌や音楽に興味のない人に、歌番組なんてやってほしくない…)


高槻「時代が変わっても、こうして動き回ると仕事してるって気分で楽しいなー」

高槻「よーし、頑張るぞー…!」

高槻「うっうー!!」


千早(高槻さん!?)ピクッ

千早(病気で休んでいるはずじゃ…?)


千早「…空耳?でも、今、確かに…」

61: 2013/02/03(日) 22:44:55.32 ID:cl/Kmlgr0
高槻「お疲れ様です!お邪魔します!」

番組D「…。えーっと、どちらさん?ここ、関係者以外立ち入り禁止なんだけど?」

高槻「765プロのプロデューサー代理です!よろしくお願いします!」


番組D「…あー、天海さんと如月さんの。困るんだよね、765さん」

番組D「今、収録が完全に止まっちゃってるんだよ。お宅のアイドルさんがご機嫌損ねて…」

番組D「最近勢いに乗っているのはいいんですけど、こういう勢いの乗り方は受け入れられないな」

高槻「はい!そのことについて、ちょっとお時間頂けますか?状況を確認したいです!」


高槻「収録した映像も用意いただけますか?番組プロデューサーもいらっしゃったらご同席を。」

番組D「…まー別に良いですけど。あまり時間取らせないでくれるかな。こっちだって暇じゃない」

高槻「お手数おかけします!あと、お電話お借りします!」

番組D「どうぞご勝手に」


ピピピ…

高槻「もしもし、お疲れ様です!高槻やよいです!」

高槻「音無さん。可能だったら、ちょっと調べてほしいんですけど。………」

63: 2013/02/03(日) 22:48:34.85 ID:cl/Kmlgr0
千早「もう帰ろう、春香」

千早「ここにいても無意味よ」

春香「千早ちゃん…。でも、そんなことしたら」

千早「私たちは正当よ。プロデューサーも、話せば、きっとわかってくれる」

春香「でも…」


コンコン

高槻「失礼します!お疲れ様です!」

春香「あ。お助けプロデューサーさん」

千早「お助けプロデューサー…?」


高槻「番組プロデューサーさんとディレクターさんに話をつけました!」

高槻「もう大丈夫です。なので、もう一度、スタジオに戻って頂けますか?」

66: 2013/02/03(日) 22:52:30.85 ID:cl/Kmlgr0
千早「え?でも…」

高槻「お願いします、千早さん」


千早「…?」

高槻「仕事をしていたら、面白くないことや辛いことだってあります…」

高槻「心無い行動や言動をする人も、いたりします」


高槻「でも忘れないでください。千早さんが向き合っている相手は…」

高槻「目の前の仕事相手ではなく、その先で見守ってくれている、ファンの皆さんなんです」

高槻「千早さんの姿や歌声を楽しみにしている人が沢山いるんです!」

千早「……」


高槻「仕事が沢山あるときは忘れがちになりますけど…」

高槻「限られた時間、限られた枠で、自分の姿を披露できる機会を…」

高槻「是非、ひとつひとつ、大事にして下さい!」

高槻「千早さんも、かつて、叶えたくても叶えられなかったという思い、忘れていないはずです!」

69: 2013/02/03(日) 22:56:54.03 ID:cl/Kmlgr0
千早「で、でも!そのために私個人の気持ちを犠牲にするべきではないわ!」

高槻「大事なのは、対話です、千早さん」

千早「……!」


高槻「何かが歪んでいるときは、ちゃんと話し合って、歪みを互いで修正しましょう」

高槻「一方的に自分の主張を押し付けるだけでは、ルール違反です」

千早「……」

高槻「ごめんなさい…千早さんを責めているわけではありません」

高槻「今回の件は、そもそも、向こうがずっと悪い感じだったので…」

高槻「だから、もう大丈夫なんです。安心してスタジオに戻ってください。…どうか、私を信じて。」


春香「千早ちゃん。もう一回、いこうよ?私だってこのまま帰りたくないし」

春香「きっと大丈夫だって。ね?」

千早「……。わかったわ。私もちょっと大人げなかった。行きましょう、春香」

春香「うん!」

71: 2013/02/03(日) 23:00:26.90 ID:cl/Kmlgr0
高槻「ふぅ…何とかなった、かな…」


番組D「…おいあんた」

高槻「はい!何ですか?」


番組D「あんた…何者だ?」

高槻「お助けプロデューサーです!」

番組D「なんだよそりゃ」


高槻「さっきは厳しいことを言ってごめんなさい」

高槻「でも、そもそもルール違反を犯したのは、そちらです」


番組D「はっ、ルール、ねえ。よくもまあ、この世界にいながら『ルール』なんて語れるな。あんた、この世界長いんだろ?」

高槻「だからこそです」

高槻「こんな世界だからこそ、守るべきルールがあるんです。なければ作り上げるべきです」


高槻「私たちや…アイドルのみんなは、お人形さんじゃないんです」

高槻「心を持った、感受性豊かで繊細な、一人の人間なんですから」

73: 2013/02/03(日) 23:05:10.13 ID:cl/Kmlgr0
番組D「まったくもって正論だ。だが、その考えは絶望的に甘い」

番組D「あんた一人が生真面目にルールを主張しても、ほかの連中はそうとは限らない」

番組D「守られたサラリーマンじゃねえんだ。そんな生ぬるいことで、この世界じゃ一発逆転は生まれない」


高槻「一発逆転じゃダメなんです。」

高槻「私達は、彼女たちの人生を預かっているんですよ?」

高槻「彼女たちのやりたいことを、こちらの都合でつぶすことの無いように」

高槻「彼女たちのなりたい未来を支えて、組み立ててあげることが、私たちの、本当の仕事です」

高槻「かりそめの人気やお金が目当てで動いていたら、私やあなたにも、明日はないですよ?」


番組D「…平行線だな。あんたと俺は違うってことだ」

番組D「だが、面白いな、あんた。見た目若いってのに」


番組D「またどっかでお会いしましょうや。んじゃー」

高槻「………。」


高槻(あの人…こんな頃から同じようなことを繰り返してたんだ…。)

75: 2013/02/03(日) 23:08:33.53 ID:cl/Kmlgr0
P「ゼェゼェ…」

P「す、すいません!765プロのものです!あの、ウチの天海と如月の件ですが…」

高槻「あの二人なら、大丈夫ですよ!ほら!」

P「え?」


春香「あ、プロデューサーさ~ん!」

P「おお、春香、千早。小鳥さんから、なんかトラブったって訊いてたけど。大丈夫か?」

春香「ええ!MCの芸人さんが、しつこくってさっきまで酷かったんですけど…」

春香「今度はすんなり!」

P「そうか…この仕事、俺も警戒していたんだ…悪い。余計な気苦労させたな」


千早「…それはいいんですが、プロデューサー。さっきの『お助けプロデューサー』って…」

P「お助けプロデューサー…?なんだそれ?」

春香「ほら、そこにいる…」


春香「あれ?いなくなった」

P「??」

77: 2013/02/03(日) 23:12:29.26 ID:cl/Kmlgr0
高槻「お疲れ様です、高槻です!小鳥さんですか?」

高槻「先ほどはありがとうございました!無事、円満に進みました!」

小鳥『そ、そう…よかったわ。』


小鳥『でも、今日の仕事の話はともかくとして』

小鳥『どうして来年公開の映画の件なんて…?』

高槻「えっと…、話せば長くなるので、また今度です!」


高槻「それよりも…」

高槻「私のいる病院の場所、教えてもらえませんか?」


小鳥『え?やよいちゃんのいる病院…!?』

小鳥『い、いいけど…いや、いいのかな??』

小鳥『バック・トゥ・ザ・フューチャーでドク博士が確か……』


高槻「大丈夫です!ちょっと様子を見たらすぐ戻るつもりですから!」

小鳥『そ、そう…?それじゃあ、…』

79: 2013/02/03(日) 23:16:38.80 ID:cl/Kmlgr0
高槻「えっと、中野の方面…地図、地図…」

高槻「って、端末使えないんだった」

高槻「もとの時代に戻れたら、私もオンプレミスの地図アプリにしよう…律子さんが便利だーって言ってたし」


・・・

高槻「困った時のコンビニー♪いつの時代も、紙の地図は大事かなーって」


『そう、俺だ!ジュピター、天ヶ瀬冬馬だ!』

『俺たちの新曲、もう聴いてくれたよな?まだの奴はショップへ急げ!』

『ジュピター「恋を始めよう」。In Store Now...』


高槻「ジュピター…」

高槻「このころの冬馬君は、随分尖ってたなぁ。」

高槻「短い間だったけど、すごい人気だったこと、今でも覚えてる」




高槻「なんで落語の道に進むことにしたんだろう…?」

82: 2013/02/03(日) 23:20:36.43 ID:cl/Kmlgr0
高槻「あ、もしかしてあの後姿…」

高槻「お疲れ様ですー!貴音さー…。」

高槻(あ、でも今の貴音さんは私ってわからないか…)


貴音「…やよい?」

貴音「その声は、やよいではありませんか?なぜこんなところへ?」

高槻「た、貴音さん、私ってわかるんですか!?」

貴音「しかし、確か今朝、やよいは病に臥せっていると…」

貴音「それに…」


貴音「随分と背が縮んでしまったのではありませんか?」

高槻「え」

貴音「いつのまにこんなに小さく…前から思っていましたが、これではまるで本物の子供ではありませんか…」


子供「…おねえちゃんだれー?」

貴音「面妖な」

高槻「………」

85: 2013/02/03(日) 23:24:21.54 ID:cl/Kmlgr0
高槻「あの!貴音さん!私はこっちです!」

貴音「はて…?」

高槻「あ、いえ…私ともまた違うというか…」

貴音「……?」


貴音「しかし、随分と回復が速いのですね、やよい」

貴音「プロデューサーの話しぶりだと、もっと重篤な状態かと思っていたのですが」

高槻「え、えっと…」


貴音「今日は、来月から始まるドラマの台本読み合わせがあって」

貴音「目がすっかり疲れていたといいますか、今も周りが、かなりぼんやりしており…」

貴音「まさか、やよいのことを見間違えるとは、恥ずかしい限りです」

87: 2013/02/03(日) 23:28:41.30 ID:cl/Kmlgr0
高槻「貴音さん…。あの、私のことなんですけど」

高槻「今ここにいる私と、貴音さんの知ってるやよいは、ほんのちょっと違うんです…」

高槻「どちらかというと、私のほうが偽物…ってわけでもないですけど」

高槻「本来、ここにいちゃいけない、高槻やよいなんです」


貴音「…なるほど。」

貴音「ここにいるのは、確かにやよいですが、妙な違和感があったのはそのせいですね」


貴音「それで…あてはあるのですか?」

高槻「え?」

貴音「いつまでも、ここにいるわけにはいかないのでは?」


高槻「あ!貴音さん、まだこれからお仕事あるんですか?引き留めてごめんなさい!」

貴音「ふふ、私は、今日はこのまま事務所に戻るだけですよ?」


貴音「そういうわけではなく。やよい。あなた自身のことです」

88: 2013/02/03(日) 23:32:18.40 ID:cl/Kmlgr0
高槻「そ、それって…?」


貴音「…奇怪な事件に巻き込まれた様子ですね」

貴音「しかし、焦りは禁物です。」

貴音「事象は、一回限りでその後二度と起こらない、ということはあり得ないのです」

貴音「どこかでまた再び同じような機会が、必ず訪れる」


貴音「いまのやよいは、心落ち着かせ、時を見定め…」

貴音「必ずや自分本来の居場所へ戻るという気構えと心積りが必要です」

貴音「今のやよいの力を、求めている人たちはたくさんいるのでしょう?」


高槻「……そうですね、そうです。」


高槻「でも、どうすればいいのか、見当がつかなくて…」


貴音「私も、心当たりは探りますが、やよいはやよいで、焦らず。」

貴音「しかし心のどこかで常に可能性を探ってほしいのです」

貴音「大事なのは、願い続けること。そうすれば、必ず次につながるのですから」

91: 2013/02/03(日) 23:36:32.44 ID:cl/Kmlgr0
貴音「せっかくですし、今のこの状況を楽しむということも、良いかもしれません」

貴音「…などと、私から敢えて言うまでもなく、やよいは既に実践するでしょうけど」

高槻「貴音さん…」


貴音「では、また。」


高槻(…。出会った時から、貴音さんって不思議な人だと思っていたけど)

高槻(付き合う時間が長くなればなるほど、より不思議な感覚に陥る人だな…)


高槻(私の知ってるみんなは、多少なりとも今のこの時代と違う部分がいくつかあるのに)

高槻(貴音さんだけ、私の知ってる時代の貴音さんとまったく変わっていない……)

高槻(振る舞いや考え方だけじゃない、見た目そのものも)


高槻(…。まさか、ね)

92: 2013/02/03(日) 23:40:35.45 ID:cl/Kmlgr0
高槻「ここがその病院…」

高槻(うん、なんとなく、見覚えがある。)


高槻「すいません」

看護師「はい?」

高槻「あの、今朝こちらに入院した高槻やよいって方は…」

看護師「…すいません。私のほうからはちょっと」

高槻(そっか…アイドルだし、一応秘密なんだろうな…)


高槻「えっと…あ、そうだ。私も高槻なんです!親戚関係です!」

高槻「免許証ならありますよ??」


看護師「…確かに、高槻さん。あら?名前が…」

高槻「あ、もういいですよね?いいですよね!ありがとうございます!」


高槻「よろしければ、病室を教えていただきたいのですが…」

看護師「…わかりました。受付のほうで、お待ちいただけますか?」

93: 2013/02/03(日) 23:44:25.06 ID:cl/Kmlgr0
高槻「……」


社長「…あちらの方かね?」

看護師「ええ」


社長「やよい君?」

高槻「あ…。お久しぶりです、高木さん!」

高槻「…じゃなくて、高木社長、ですね」


社長「さきほど音無君から詳しい連絡があったものの、にわかには信じ難かったが…」

社長「しかし、今ここで、私は確信したよ」


社長「まぎれもなく、君は高槻やよい君だね。目を見てピンときた!」

社長「大きくなったね、やよい君!」

96: 2013/02/03(日) 23:48:11.25 ID:cl/Kmlgr0
社長「いやはや、まさかこの台詞を口にするのがこんなに早くなるとは、まったく想定外だったよ」

高槻「はい!ありがとうございます!ところで、私の様子は…」


社長「点滴を受けて、今は静かに眠っているよ。熱はまだ高いようだが…」

社長「なにせ、元気で出来ているようなやよい君だ。ウイルスなんてすぐにやっつけてしまうに決まっている」

社長「そうだろう?」

高槻「ええ、そうです!病気なんかに負けないです!」


社長「未来のやよい君は、今以上に活躍の場が広がっているそうだね」

社長「どうだね。未来のやよい君は、今の仕事を楽しんでいるかね?」

高槻「はい、えっと…」


社長「ああ待った。その質問よりも、今、私が訊きたいとすれば…」


社長「この時代のやよい君は、仕事を楽しんでいただろうか?」

高槻「…え?」

97: 2013/02/03(日) 23:53:05.95 ID:cl/Kmlgr0
社長「アイドルたちのことは、私は毎日見ているし、理解しているつもりではある」

社長「だが、彼女たちが思っている以上に、彼女たちは世間から注目され、期待されている今だ。」

社長「私は、そこが少し心配なのだよ」

高槻「……」


社長「アイドルは、その姿、生き様こそ美しく、そして充実しているものであってほしい」

社長「妙なプレッシャーや意味のない使命感で、心に負担をかけさせるつもりはないのだよ」

社長「そんなことがあれば、もちろん、私やスタッフがしっかりと支えねばならんからね」


社長「だが、やよい君はもちろん、みな気丈だ。気丈で真面目で、決して弱みを見せない」

社長「私は、真意を知りたいのだよ」

社長「君のことは他言しないし、きっと言っても信じてもらえないだろう。」


社長「だから、率直に、訊かせてはくれないか。」

99: 2013/02/03(日) 23:57:03.67 ID:cl/Kmlgr0
高槻「…高木社長。いえ、私の立場から、高木さんと呼ばせてください」

高木「…。ああ、いいとも」


高槻「それはお答え致しかねます、高木さん。ごめんなさい」

高木「そうか。理由を教えてくれるかね?」


高槻「はい!なぜなら、高木さんが感じている、そのままだからです!私が答える必要は、無いからです!」

高木「…?どういうことかね?」

高槻「私たちは、高木さんの思っている以上に、いえ…思っているほどに複雑な人柄じゃないです」


高槻「辛い時は、辛いって言います。口に言わなくても、顔に出します」

高槻「それに、社長が質問していただければ、素直に思ったまま、答えます。隠したりなんか、しません」


高槻「私たちは、仲間…いえ、家族です。助け合いますし、助けてあげたいです」


高槻「逆に高木さんに問いますが…」

高槻「高木さんの思いと、アイドルたちの気持ちに相違があったことは、これまでありましたか?」

高木「…!なるほど…ね」

102: 2013/02/04(月) 00:00:43.15 ID:nFVpCRXt0
高槻「…というのも、私、プロデュースとか副社長業務を始めたころは」


高槻「何と言いましょうか、『しゃこーじれい』とか『あんもくのりょーかい』みたいなものが全然わからなくて」

高槻「すごく苦労したんです。大人の世界は難しいんだなーって」


高槻「アイドルのころは、そんなこと気付かなかったし、気にしてなかった」

高槻「必要な場面があったとしたら、きっとプロデューサーが、そういう難しいことを全部背負ってくれていたんだと思います」

高槻「だからこそ、私たちはありのままで、のびのびとアイドル活動に専念できているんです!」


高木「そうか…そうだね。いやはや、私としたことが。やよい君に一本取られてしまったよ」

高木「その返事で、私はすごく身に染みた。」


高木「アイドルたちの躍進ぶりに不安を抱いていたのは、アイドルたちではなく私自身だったのだね」

高木「もっと彼女たちを…彼女たちの実力を、信じてあげるべきだな」

105: 2013/02/04(月) 00:05:26.33 ID:JJ4UH9EL0
高槻「あと、高木さん!私、今の仕事はとても楽しいです!」


高槻「…もちろん、いいことばかりじゃないです。難しいこと、面倒なこと、辛いこと。たくさんあります」

高槻「でも、それをぜーんぶひっくるめて、結果、楽しいんです!」


高槻「雨の日でどんよりしたり、雪の日が寒かったりしても」

高槻「また必ず晴れの日が来ます。そんな晴れの日の空気は最高に気持ちいいんです!」


高槻「それに」

高槻「雨上がりの虹はきれいだし、綿あめのように雪が絡んだ樹木は美しいです!」

高槻「今、何かに辛くても、それが巡り巡って、晴れの日に気持ちの良い姿で現してくれるんです!」


高木「…。今のやよい君は、さまざまな経験を乗り越えて今に至るんだね。」

高木「もっともっと、話を聞きたいし、アイドルたちにも聞かせてあげたいが…」



伊織「…ちょっとー!社長ー?まだ立ち話してるの?そろそろ行かないといけないんじゃないのー?」

106: 2013/02/04(月) 00:09:51.54 ID:JJ4UH9EL0
高木「…だが、先に答えを知ってしまうのも、味気ないね」

高木「誰かの模範解答ではなく、自分自身で理解し、答えを見つけてこその、人生の糧だ」

高槻「はい!そうですね!私も、みんなも。大丈夫です!」


高木「水瀬君~!今行くよ!」

高木「じゃあ、私は失礼するよ。病院には、なんとなく話を付けておいた。」

高木「今の境遇も色々と大変だとは思うが、しばらくはうちの事務所を頼りにするといい。皆、力になるだろう」


高木「なんだったら、プロデューサーもそろそろ人員追加が必要と思っていたことだし、このまま765にいてもらっても…」


伊織「ほら社長行くわよ!長話すると本当に止まらないんだから!まるで女の子ね!」

110: 2013/02/04(月) 00:15:29.13 ID:JJ4UH9EL0
伊織「あら、ごめんなさい。もしかしてやよいのお見舞いですか?」

伊織「今はちょっと眠ってしまってますが、私、水瀬伊織の自慢のかかりつけ医ですので、安心してくださいね」

高槻「うん。ありがとう、伊織ちゃん!」


伊織「え…!?」

高木「待たせたね、水瀬君。それじゃ行こうか」

伊織「ちょ、ちょっと待ちなさいよ社長!あの人って…!?」


高槻「またね~伊織ちゃん!」


高槻(このころの伊織ちゃんは、かわいいなぁ…)

高槻(ちょっと背伸びしてる感じが、いじらしいかなーって)


高槻(今じゃもう見た目も中身もすっかり貫禄がついて…)

高槻(伊織ちゃんにとって、向かうところ敵なしなのは、今も昔も同じかな)

113: 2013/02/04(月) 00:20:15.63 ID:JJ4UH9EL0
高槻「病室は、ここかな」

高槻「失礼しまーす…」


やよい「スー…スー…」

高槻(眠ってる)


高槻(昔の自分と対面するなんて、不思議な気分)

高槻(このころの私も、頑張ってたな…)


高槻(さっき、高木さんには難しいこと言っちゃったけど)


高槻(このころの私なんて、ただひたすら、楽しいことだらけだった)

高槻(毎日毎日が、新鮮で、明るく輝いていて…)


高槻(いつも、あっという間に時間が過ぎていったなー…懐かしい)

115: 2013/02/04(月) 00:24:23.50 ID:JJ4UH9EL0
高槻(もちろん、今は今で楽しいことに変わりない)

高槻(でも)

高槻(『楽しい』の定義は、時とともに、環境と共に移り行く)

高槻(今、楽しいことは、今“だから”、楽しいことなんだよ?)


高槻「だから、頑張ってね、やよい」

高槻「あなたの頑張りは必ず、未来に繋がっていくから…」


やよい「う、う~ん…」

高槻「!?」

116: 2013/02/04(月) 00:28:21.32 ID:JJ4UH9EL0
やよい「こ、ここは…」

高槻(目、覚めちゃった?)


やよい「あなたは…だれですか…?」

高槻「……」


高槻「看護婦さんです!シフトが終わって、今から帰るんですけど」

高槻「帰る前に、やよいちゃんの様子はどうかなーって!」

やよい「かんごふさん…ありがとう…ございます…」


やよい「スー…スー…」


高槻(ほっ…びっくりした)

117: 2013/02/04(月) 00:32:19.35 ID:JJ4UH9EL0
高槻(はー、ちょっと疲れちゃったなー。なんだかんだでお仕事こなした気分だし)

高槻(…なんだか急に眠くなってきちゃった)

高槻(ちょっとだけ、仮眠しよう、ちょっとだけ……)


高槻「すー…すー…」



ガチャ…

貴音「………。」

120: 2013/02/04(月) 00:36:12.88 ID:JJ4UH9EL0
??「…さん!お客さん!」

高槻「むにゃ…」

??「お客さん、終点ですよ、新大阪!」

高槻「え?あれ…?おおさか…?」

車掌「どうしました?体調でも悪いんですか?」

高槻「えっと…いえ、大丈夫です…ちょっと寝入っちゃったみたいで」


高槻(あれ…?私何をして…)

高槻「…大阪!?」

高槻「あの!すいません!」

高槻「今日の日付っていつですか?」

車掌「今日?2月3日ですよ」

高槻「西暦からでお願いします!」

車掌「はあ…2020年…あれ?もう21年だっけ?」


高槻「…!ありがとうございます!!」

122: 2013/02/04(月) 00:40:17.91 ID:JJ4UH9EL0
高槻「電話も…」

TLLL...

高槻「やった!繋がった!」


律子『はい律子ー。どしたーやよい。今日は確か大阪よね。なんかアクシデント?』

高槻「律子さん!律子さんですね!」

律子『そ、そうだけど…いきなり、どうしたのよ、やよい』


高槻「今の律子さんの所属って、どこです?」

律子『所属?おかしなこと訊くわね。』

律子『所属も何も、今はリツコプロの社長よ、社長。忘れちゃったの?』

高槻「う……」


高槻「うっうー!!元に戻ってくれましたー!!」

律子『ちょ、やよい!?』

123: 2013/02/04(月) 00:44:23.31 ID:JJ4UH9EL0
<そのころの、2013年の765プロ>

P「みんな!やよいの熱も微熱くらいまで下がったそうだぞ!」


美希「よかったね、プロデューサー!じゃあ、やよいは明日から馬車馬のように働くの?」

P「美希お前…。やよいは、熱が下がってもしばらく安静だ。」

P「多少の疲労もあったようだし、あと3日ほど入院して、それから徐々に慣らしていくつもりだ」


あずさ「やよいちゃんがいない事務所って、ちょっと寂しかったですからね~。早く元気な姿を見たいです」

真美「やよいっちが抜けた穴は伊達じゃなかったZe…。真美も、日本全国走り回って頭を下げる毎日だったよ~」


P「真美のその設定はなんなんだ…。それはそれとして。」

P「やよいも寂しがっているようだから、お見舞いにもぜひ行ってくれ。きっと喜ぶと思う」

P「…病み上がりだから、あまり無理させない程度でな?」

124: 2013/02/04(月) 00:48:18.91 ID:JJ4UH9EL0
真「プロデューサー!」

P「お、どうした、まこ…と…」

真「きゃるるーーん♪まこまこりんだぞぉ!」

P「……」

真「どうですプロデューサー!この服、可愛いでしょう!」


P「真は一定周期で、その持病が発生するなぁ」

真「ち、違うんですよプロデューサー!ボク、もうそろそろこの路線で固めたいんですよ!」

真「間に合わなくなっても知りませんよ!?」

P「はいはい。ほら、このあと営業に行くんだから、早く着替えてな」


真「ちょっとぉ!プロデューサー!!ボク、今度の今度こそ、本気なんですってばぁ!」

128: 2013/02/04(月) 00:52:15.67 ID:JJ4UH9EL0
雪歩「」コソコソ…


春香「雪歩~?何やってるの?」

雪歩「!!」


雪歩「はわわわ…何でもないですぅ…」

雪歩「」スタスタ…


春香(雪歩って、いつも何を持ち歩いてるんだろう…何かの本?)

春香(何か隠しているようで、逆にやたら目立って、すごく気になる)


春香(…すんごーく、気になる。)


春香(場合によっては、○○してでも奪い取る)

130: 2013/02/04(月) 00:57:07.50 ID:JJ4UH9EL0
<一方、2020年…>

高槻「あの!律子さん。お忙しいところ訊きたいんですけど」

律子『いいわよ。今はちょうど空き時間だし。やよいと私の仲なんだから何でもどうぞ』

高槻「えっと、あのですね…」


高槻「真さんって、今どんな感じですか?」

律子『真?どんな感じって?』

高槻「ほら、すごーくキャピキャピした、可愛い系のアイドルだったり…」


律子『あはは、まさか!』


律子『でも、あの娘は昔からそんなこと言ってたわね。今でも言っているらしいけど。』

律子『あんたも知っての通りよ。今度はエリートのキャリアウーマンという役どころで主演らしいじゃない』


律子『いい加減、あの路線なら日本一の女優だって自覚、持ってほしいんだけどねー』

134: 2013/02/04(月) 01:01:14.95 ID:JJ4UH9EL0
高槻「ほっ…。」


高槻「あ、あともう一つ!雪歩さんって、作詞家やってます…?」

律子『また当たり前のこと訊くのね。』


律子『ああ、さっき訊いた速報値だけど、雪歩の詩集第2弾は30万部売れて再重版も決まった』

律子『最初はアイドルの副業的な批判もあったけど、今では文芸界からも注目されるくらいの評判だし』

律子『意外な才能、まさに掘り当てたって感じよね。』


律子『当の雪歩はまだ実感がないらしいけど、仕事はかなり来てるそうよ。まったく、羨ましいわ』


高槻「わーい!うっうー!!やっぱり帰ってこれたんだ!」

律子『こらやよい!もういい年なんだから『うっうー』は封印しなさいって…』


律子『…いいたいところだけど、ずいぶんご機嫌なのね。やよい。どうしたのよ?何かあった?』

高槻「はい!えっと……。」

高槻「………」

137: 2013/02/04(月) 01:05:04.31 ID:JJ4UH9EL0
高槻「ちょっと、ぐっすり眠ってて、おかしな夢をみていたのかなって…」


律子『あー、最近ずっと忙しいからね。』

律子『ごめんねやよい。そろそろあんたにも部下をつけなきゃって思っているんだけど』

高槻「律子さん、大丈夫です!私なら全然余裕ですから!」


律子『違うのよ。実のところ、あんた指名の仕事も結構入ってきててね、今は整理しているところなの』

律子『プロデュース業は、実際のところ誠実さと、体力、ちょっとの経験があれば誰でもできるわ』

律子『でも、やよいの人柄、キャラクター。そういうのはやよいにしかできない』

律子『それなら、お金をかけてでも、やよいのバックアップを作って仕事の幅を増やす。それが私の仕事よ』

高槻「そうですかー…。」


律子『んん?タレント業はもう懲りた?』

高槻「まさか!タレントも、プロデュースも、どっちももっと、たくさんやりたいです!」

律子『そうね、そう言うと思ってたわ。でも、無理だけはしないでね?それじゃ、引き続きそっちお願い!』


高槻「…。よーし、頑張っちゃいましょー!」

138: 2013/02/04(月) 01:09:16.68 ID:JJ4UH9EL0
高槻(結局あれは、夢だったんだろうな…すごくリアルな夢だったけど)

高槻(私の知っている未来も特に変わってないし、タイムスリップなんて非現実的かなって…)


ピロリーン

高槻「メールだ。誰かな…」



高槻「え!?」



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件名:よかったですね

やよい、
無事、事が運んだようでよかったです。
そちらでも、どうかご達者で。
くれぐれもお体、ご自愛くださいませ。


四条貴音
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<おしまい>

139: 2013/02/04(月) 01:10:12.95 ID:jGOcLFjF0
貴音は一体何者なんだ…

145: 2013/02/04(月) 01:16:26.39 ID:clPC0YBO0
未来の765プロがどうなっているのか見たいような見たくないような

146: 2013/02/04(月) 01:28:35.06 ID:Ah2XvADv0
おつ!

引用元: 高槻「高槻やよい、22歳です。」