126: 2013/06/18(火) 22:20:10.23 ID:JQpbK7yDo

第二十一夜 おしゃべり


茄子「さて、それでは、そろそろアイドル百物語へと参りましょうか。今日は猫特集三回目ですね」

ほたる「えっと、そういえば、猫特集なのに……猫が出てきてませんよね?」

茄子「たしかに。猫のふりをしているお話が二つでしたね」

小梅「こ、今回はちゃんと猫の……お話にゃ」スッ

茄子「あら、猫耳かわいいですね……え?」スッ

ほたる「はい?……私もですか?」スッ

小梅にゃん「今日お話してくれる……前川みくさんから、もらったにゃん」

茄子にゃん「みくさんと言えば、猫系アイドルとして有名ですにゃ」

ほたるにゃん「え? 語尾それ固定ですか……にゃん?」


白坂小梅のラジオ百物語シリーズ

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127: 2013/06/18(火) 22:20:53.62 ID:JQpbK7yDo


小梅にゃん「二人とも……かわいいにゃん」

茄子にゃん「なんだか楽しくなってきましたにゃん」

小梅にゃん「ねこしっぽもある……。これは猫又バージョン……」

ほたるにゃん「二叉しっぽです……にゃん」

小梅にゃん「う、うん」

茄子にゃん「さて、猫系アイドルを広めているらしい前川みくさんですが、はたしてどんなお話なのでしょうか」

ほたるにゃん「どうぞお聞きください……にゃん♪」

128: 2013/06/18(火) 22:21:25.48 ID:JQpbK7yDo

前川みく(15)

○一言質問
小梅「生まれ変わったら……何になりたい?」
みく「猫チャン!……と言いたいところだけど、そうすると、猫チャンをかわいがれないから、やっぱり人間かにゃあ」

129: 2013/06/18(火) 22:22:45.46 ID:JQpbK7yDo

 にゃはっ、こんにちは、小梅チャン!

 あ、これ、ねこみみにゃ。
 茄子チャンとほたるチャンの分もあるから、持って行って!

 え?
 どうしてこれをって?

 うん……。
 みく、最近、気づいたにゃ。

 これだけ猫系アイドルが増えてきたなら、いっそみんな猫チャンになるべきだって。

 みんなかわいい猫チャンになるといいにゃ!
 にゃははっ!

 そんなわけで、もらってね。
 うん。

 えっと、怪談だったよね。
 やっぱりね、みくがするにゃら、猫チャンのお話だと思うんだ!

 ただ、みく、猫チャンの怖いお話は知らなかったの。
 だから、猫チャンに関するお話をいろいろ調べてみたけど、なんだか猫チャンが可愛そうなことになっちゃう話が多いんだにゃ。
 その手のお話じゃ、化け猫は退治されちゃうものだし……。

 それで困ってたんだけど、この間おばあちゃんとお電話してる時に、とっておきのお話を教えてもらったにゃ!

130: 2013/06/18(火) 22:23:54.24 ID:JQpbK7yDo

 だから、今日はそのお話を披露するよ。

 これは、おばあちゃんのお母さん……つまりはみくのひいおばあちゃんのお話になるのにゃ。

 ひいおばあちゃんがおばあちゃんを産んで少しした頃、体の調子を崩して寝込んでしまったことがあったらしいんだにゃ。

 その頃、ひいおばあちゃんのお家では、雪っていう名前の猫チャンを飼ってたんだって。
 真っ黒な毛皮に、足だけが真っ白で……。

 昔はこういう猫チャンは白足袋をはいてるって言って福を呼ぶ猫って言われてたんだよ。
 いまだったら、白靴下って言われちゃうかにゃ?

 ともかく、寝込んでいるところに、その雪チャンはたまにやってきて、心配そうにひいおばあちゃんの顔をなめたりしてたらしいにゃ。

 それで、とある晩……たしか満月の夜だったってひいおばあちゃんは言ってたらしいよ。
 その夜、ひいおばあちゃんはお手洗いに行って、そして戻ろうとしたところで、体がふらついちゃったんだにゃ。

 だから、無理せずにお手洗いを出たところでうずくまってたんだって。

131: 2013/06/18(火) 22:25:25.85 ID:JQpbK7yDo

 しばらくすれば、廊下を戻る気力も出てくるだろうって、そう思って。

 ひいおばあちゃんがうずくまっているところからは、ずっと続く廊下が見えてたらしいにゃ。
 板戸が閉まってるけど、開ければ庭に続く場所だったんじゃないかな?

 ふとなにか音が聞こえて顔をあげると、たふたふ、と板戸が鳴っていたにゃ。

 こんな時分に一体誰が、しかも、なにか柔らかそうなもので板戸を叩いているのだろう?
 ひいおばあちゃんはそう疑問に思いながら、おっくうで動けなかったらしいんだにゃ。

 そうしたら、闇の中を、白いものが動くのが見えた。

 そう、雪チャンが奥の部屋から出てきたにゃ。
 暗い中を真っ白な足が動いていくのが見えて、ふっと雪チャンが止まったと思ったら……なんと!


 雪チャンが二本足で立ち上がったにゃ!


 しかも、そのまま歩いて、器用にするすると板戸を開けたんだって!

 ひいおばあちゃんはびっくりして、声もなく見守ってた。
 そうしたら、板戸の向こうから、同じように立ち上がった猫チャンが顔を出したらしいんだにゃ。

132: 2013/06/18(火) 22:26:33.41 ID:JQpbK7yDo

 近くを縄張りにしているぶちの野良猫だった、ってひいおばあちゃんは言ってたらしいにゃ。

『雪よ。そろそろ行こう。みな集まっているぞ』

 たぶん、さっきまで板戸を叩いていた猫チャンは、そう低い声で言ったそうにゃ。

『そうもいかん。おかあさんが寝込んでいる。離れとうないわ』

 驚いたことに、雪チャンまで人間の声でそう答える。
 ひいおばあさんはもうなにがなんだかわからなかったらしいにゃ。

『そうか。それは残念。こんなにいい月の夜に』
『うん。こんなにいい月の夜だけど』

 猫チャンたちはそう言い合って、するすると板戸を閉めたそうにゃ。
 その後、雪チャンは何事もなかったように四つ足に戻って、どっかへ行こうとしてたらしいにゃ。

 でも、ひいおばあさんはそこでなんとか動き出したらしいんだにゃ。

133: 2013/06/18(火) 22:27:39.91 ID:JQpbK7yDo

『雪』

 そう呼び止めると、雪チャンは寄ってきた。
 その頭をなでながら、ひいおばあちゃんは言ったにゃ。

『せっかくのお誘いなんだから、行ってきていいんだよ。私は大丈夫だから』

 雪チャンはしばらくじーっとひいおばあちゃんの顔を見上げていたらしいにゃ。
 それから、一声悲しそうな声で鳴くと、ひいおばあちゃんが開けてあげた板戸の隙間から出て行って……。


 そして、二度と戻ってこなかったんだって。


 猫チャンは本当は人間の言葉を話せたり、二本足で立って歩けたりするんだけど、それを見られちゃうと、姿を消さなきゃいけないんだろう。
 ひいおばあちゃんは、おばあちゃんにそう言ってたらしいよ。

 自分は余計なことをしてしまったのかもしれないね、って。

134: 2013/06/18(火) 22:28:26.35 ID:JQpbK7yDo

 でも、そんなことないと思うにゃ。

 ひいおばあちゃんが雪チャンのことを思って言ってくれたのは、雪チャンも重々わかってたと思うにゃ。

 ただ、たまたま間が悪かっただけで……。
 うん。


 え?
 猫が人の言葉を話せるなら、みくがにゃんにゃん言う必要はない?

 そ、それとこれとは話が別にゃ!

135: 2013/06/18(火) 22:29:24.91 ID:JQpbK7yDo


茄子「なるほど、今回は猫のお話でしたね」

ほたる「……私たちが見ていないところで、猫だけで話してたりするんでしょうか」

小梅「ひ、人の言葉がわかっているんじゃないか……っていうのはよく聞く」

茄子「そうですね。たしかに、ただの動物と言うには賢すぎるように見えることはありますよね」

ほたる「でも……姿を消しちゃうのは……残念ですね」

小梅「……あやかしの類が、人に正体を知られたらその場を去らなければならない、というのは一つの決まり事として……あるから」

茄子「雪女や恩返しの鶴などに顕著ですよね」

ほたる「……なるほど。結局の所は人ではないから……ということでしょうか」

小梅「見て見ぬ振り……という手も、ある」

茄子「ふむ。猫がなにかぼろを出しそうになっても、知らんぷりしておくのがよさそうです」

ほたる「……それはそれでちょっと怖いところもありますが……」

小梅「ふふっ」

茄子「さて、次のコーナーは猫特集も終わりということで、氏んでもなお自分の怨みを晴らした猫のお話をいくつか……」



 第二十一夜 終

136: 2013/06/18(火) 22:29:56.50 ID:JQpbK7yDo
本日は以上です。
にゃあにゃあねこみみどうぞ。

137: 2013/06/18(火) 22:34:35.30 ID:9iP56KRU0
おつにゃあ

139: 2013/06/18(火) 23:14:41.36 ID:OXt+s3GD0
乙 ←こ、これは乙じゃなくて猫のしっぽなんだからんrty!

引用元: 小梅「白坂小梅のラジオ百物語」 Season 2