67: 2013/10/18(金) 00:28:39.64 ID:4LWdgMnCo

第四十三夜 奈落


茄子「さて、それでは本日もアイドル百物語へと参りましょうか」

ほたる「はい……。ええと、今日はどんなお話なのでしょう?」

小梅「今日は……なんだろう。芸能界のお話、かな」

ほたる「芸能界の、ですか。正直、その……。私たちにとっては、身近な分、怖いですよね」

茄子「リスナーの皆さんには、なかなかわかりにくい部分もあるでしょうけどね」

小梅「でも……今日の話は、しきたりとかそういうのとはちょっと違うし……。わかりやすい、かも」

ほたる「……そう、なんですか。それで、今日はどなたのところへ?」

小梅「今日は……日下部若葉さん」

茄子「若葉さんですかー。かわいらしい方ですよね。私、同い年なんで、仲良くさせてもらってるんですけど」

小梅「……うん。あの人は……なんだか楽しい」

ほたる「ただ……怪談とかとは、縁遠そうですよね」

小梅「それは……そうかも」

茄子「さて、怪談が身近とはとても思えない若葉さんが語る話とはどんなものなのでしょうか」

小梅「どうぞ……お聞きください」


白坂小梅のラジオ百物語シリーズ

アイドルマスター シンデレラガールズ 白坂小梅 ハロウィンナイトメアVer. 1/7スケール ABS&PVC製 塗装済み完成品フィギュア
68: 2013/10/18(金) 00:29:09.19 ID:4LWdgMnCo

日下部若葉(20)

○一言質問
小梅「人間が……怖いって思った経験、ある?」
若葉「いくら私が大人だって言っても、どうしても子供として扱おうとする人たちとかですかね~。話聞いてくれないのは怖いですよ、実際」

69: 2013/10/18(金) 00:30:56.02 ID:4LWdgMnCo

 小梅ちゃん、こんばんは。

 今日は怪談でしたよね。
 ええ、もう任せてください。
 なにしろおねえさんはオトナですから。

 怖い話だって平気なんです。
 平気だったら平気なんです~。

 え? 別に疑ってない?
 そ、そうですか。
 なんていうか……つい、くせで。

 じゃあ、早速はじめましょうか~。

 アイドルをしていると、いろんなところへお仕事に行きますよね?
 これは、とある地方の劇場で聞いたお話です。

 その劇場は、かなり立派な、広いステージのあるところでした。
 ただ、舞台袖……それも下手の袖のちょうどよく人が通るところに、急に狭くなってる場所があったんです。

 こう、壁がせり出しているっていうか……。
 太い柱……あるいは小部屋みたいなものが、そこにあるみたいな。

70: 2013/10/18(金) 00:32:12.20 ID:4LWdgMnCo

 イメージ的にはいきなり用具入れのロッカーがあって道をふさいでる感じですかね~。
 もちろん、実際にはなにかの板で組まれてるんですけど……。

 私自身、長い間使うわけでもないのに、ここ広くなってればいいのになって思うくらいでしたね。

 不思議に思う人も多いらしくて、打ち上げでも、当然のようにその場所の話になってました。
 あそこの通りを良くすれば、スムーズにみんな移動できるのにって。

 ところが、その劇場に長く勤めてる人がそれは無理だって言うんです。

 なぜかと聞いてもなかなか教えてくれなかったんですけど……。
 お酒が入ってきたら、話してくれました。

 まあ……私たちがアイドルで、そう何度もその劇場に呼ばれるわけではないって考えたから教えてくれたのかもしれません。
 長いことそこで公演をするような人たちだと気にしちゃうでしょうし。

71: 2013/10/18(金) 00:33:31.35 ID:4LWdgMnCo

 ともあれ、そこで聞いた話は、こうです。

 この劇場が出来た頃、奈落への転落事故が、続けて何度も起きました。

 あ、奈落って知ってますよね?
 そうそう、ステージ下の部分ですよね。
 舞台装置とかあるところです~。

 奈落への転落事故ってのは、稽古やリハーサルの間とかにはよく……というほどではなくても、あることです。

 でも、それは、舞台で色んな仕掛けを使うために、口が開かれてる場合だけですよね?
 ところが、その劇場の事故は、口が開いてないはずの時にも起きました。

 しかも、そのとき舞台にはいないはずの人まで、落ちてたんです。

 稽古が行われていて、舞台には役者さんたちがいるはずの時に大道具の製作の人が落ちていたり、逆に点検の時間に、演者の人が落ちてたり。

 ありえないですよね?


 でも、起きたんです。

72: 2013/10/18(金) 00:34:28.35 ID:4LWdgMnCo

 しかも、みんなの証言を集めると、舞台袖にいたはずの人が急にかき消えて、奈落に落ちてたってことになったとか。

 ええ、ここまで話したらわかりますよね。

 舞台袖の板に囲まれた小部屋。
 その場所から、時に人が奈落に落ちる。

 再現性もないし、いつ起きるかもわからない。
 けれど、それが起きるのなら、そこを覆って人が入れないようにすればいい。

 結果、人の行き来が多少わるくなっても……。

 たしかに怪我するよりはましですよね~。

73: 2013/10/18(金) 00:36:12.25 ID:4LWdgMnCo

 ただ……。

 その話をしてくれた人が最後に言ってたんですよね。

『俺の親戚は解体屋をやってて、古い家とかを壊すんだけど、たまに、見るらしいんだ』

 なにをと問えば、こう答えてくれました。

『さっきの場所と同じような……。なんの意味もないはずの空間をさ』

 そこの劇場だけではなく……。
 昔のおうちにも時折あったんですかね~。


 そういう場所。

74: 2013/10/18(金) 00:37:04.33 ID:4LWdgMnCo


茄子「なるほど……そんな落とし穴が……」

ほたる「文字通りの見えない落とし穴ですね……」

小梅「しかも……いつもあるわけでもない、らしい」

茄子「やっかいですねぇ」

ほたる「板で覆うだけで対策できているなら、それはそれで……いいんですけど……」

茄子「その場所がいつの間にか移動したりしたら……」

小梅「見えないし……。どうなんだろう」

ほたる「……といってそれを恐れて使わないっていうのも……」

茄子「難しいところですね」

小梅「……最後の部分も興味深い……。あ、開かずの間とか……」

75: 2013/10/18(金) 00:37:54.33 ID:4LWdgMnCo

ほたる「あ、よく聞きますが……。なにがあるかはよくわからないですよね……」

小梅「うん……。その家の人もどうしてそれがあるのか知らなかったり……。そういうの、楽しい」

茄子「ふふ。たしかに不思議な感じはありますよね。でも、そういうところを開放すると、たいていはよくないことがありますしね」

小梅「うん……」

ほたる「まずはその手の場所に出くわせるかどうかもありますが……。さて、次のコーナーでは、各地の古い家屋、蔵などにまつわるお話を……」


 第四十三夜 終

76: 2013/10/18(金) 00:38:22.95 ID:4LWdgMnCo
 本日は以上です。
 オトナっぽく振る舞おうとしても、ホラー映画に震えちゃいそうな若葉さんかわいい。

77: 2013/10/18(金) 01:04:59.07 ID:uYbFCKpjo
乙した
これって移動した先が奈落でなければ、瞬間移動みたいな演出が出来る劇場になりえたと思うと、どうにも惜しい

78: 2013/10/18(金) 09:04:19.08 ID:iFa4/QLPo
>>77のポジティブさに驚愕
おまえはパッションだな……

79: 2013/10/19(土) 08:02:53.04 ID:tmvk+oSQo
乙 >>77はハゲてるのか…

80: 2013/10/19(土) 21:52:19.52 ID:/30pgg7LO
>>77 つ【育毛剤】

引用元: 小梅「白坂小梅のラジオ百物語」Season4