689:クワズイモ ◆mwvVwApsXE 04/06/28 12:59 ID:8YJquAg/
忌み辻
-序-

 地名は伏せさせていただくがまたも千葉の実家での話。
その四つ辻は見通しもいいのに事故多発の悪い意味での名所だ。
これまでに何件も大小さまざまな事故が起こっている。
電柱などはもう何本も取り替えられている曰く付きの交差点。
その交差点は古くから存在し、周囲の人は「忌み辻」と呼んで
その交差点を渡るときも、そこを通過しなければ行けないときも
みな慎重になると言う。
アンテン様の腹の中 5 (ジャンプコミックスDIGITAL)

690: 04/06/28 13:00 ID:8YJquAg/
-1-

 俺が去年の盆に帰省したときの話をしようと思う。
車で帰省した時、丁度その交差点を通らなくてはいけないはめになった。
他の道が混んでいてそこしか選択肢がなかったのだ。
当然、母も父もその交差点の話は知っていたし、俺も知っていた。
運転を父に変わり(俺はへぼドライバーです)気をつけながらその交差点に
道を進めた。
非常に蒸し暑く、車内はクーラーをがんがんに効かせていたので涼しかったが
急に母が「寒いからクーラー消して」と言い始めた。
「なんで?めっちゃ暑いよ外は。ほれ」
と俺はウインドウを下げた。
夏の熱気と蝉の声が飛び込んでくる。
「あ、そうね。K(俺)急いで閉めて。暑い」
車内は元通りに涼しくなったが、母はしきりに寒い寒いと言っていた。
まぁ母は冷え性だから。でその場は済まして実家へ到着。
スイカやら麦茶やらで一服して仏壇に線香を上げて墓参りに行く準備に忙しかった。

691: 04/06/28 13:01 ID:8YJquAg/
-2-

 盆の供養も終わって、親戚一同寺でお茶なんかを飲んでさて帰りましょうか
と言う塩梅になった。
空は夕立でも来そうなぐらいでかい入道雲の頭が潰れ始めていた。
「あ、こりゃ一雨くるな。K、お前先に歩いて戻っとけ。」
「へ?」
「父さんS叔母さんを家まで送るから。」
と無茶なことを言う父。
まぁ確かに実家は寺からそんなに離れてはいない。
歩いて2~30分だ。
俺は愚痴垂れながらも渋々歩いて実家に帰るはめになった。
空はいまにも泣き出しそうだったので、少し歩みを早めて実家へと急いだ。
黒い喪服が暑さを倍増させ、服自体が重く感じた。
蝉の声は雨を察知したのか聞こえなくなっていた。

692: 04/06/28 13:01 ID:8YJquAg/
-3-

 熱気を吐き出すアスファルトの上をせかせかと歩く俺。
もう日の光は無く、厚い雲に覆われていた。
もういまにも泣き出しそうな空模様は不安と焦燥感を加速させるには充分だった。
それにしても喪服は重い。
扇子を取り出してはたはたとあおぎながら足を速める。
「そういえばこの道って、忌み辻に入る道だよな。やだなぁ。」
確かにその道は忌み辻から延びる一本道だった。
本当はその隣の道を歩けば近道なのは知っていたが何故かこの道を選んでしまったようだ。
「なにか起こりそうな希ガス」
とか思いながら歩いていると突然雨が降ってきた。
バケツをひっくり返したような大粒の雨。
あっという間に服を濡らし、道を濡らしちょっとした水の流れができるくらいの大雨。
俺は慌ててコンビニに入った。
もう中には同じような目にあったと思う人でコンビニは混んでいた。

694: 04/06/28 13:04 ID:8YJquAg/
-4-

 稲光がして、腹の底から突き上げるような大音響のする中で雑誌を立ち読みしながら俺は
外を眺めていた。
空は真っ暗。稲光がする度に赤紫色に雲の端が輝く。
地面に目を落としてみればもうびしゃびしゃで川のように雨水が流れている。
「親父~・・・ノロイマース!!」
とつぶやいて雑誌に目を戻そうとした。
その時、妙なものが目に入った。
子供だろうか?
赤い浴衣を着た子供が辻のある方から走ってくる。
傘はさしてない。
濡れるがままに子供は走ってくる。
そして、そのままコンビニの前を通り過ぎた。
印象に残るのは赤い浴衣とその走るスピードだった。
顔とかの印象は薄い。
とにかく走るのがその子は速かった。
大人並みのスピードでその子は走り去った。

695: 04/06/28 13:05 ID:8YJquAg/
-5-

 しばらくして、雨も小やみになったのでフライング気味にコンビニを出て小走りで実家へ
戻ろうとした。
その時だった。
ダーンッ!!と落雷のような音が前からした。
落雷ではない。事故だ!
そう確信して俺は野次馬根性丸出しで音のした方向へ小走りに走って行った。
案の定、事故があった。
見通しの良い交差点での衝突事故。
両方とも前面がひしゃげていて、片方はさらに街灯を曲げて止まっていた。
「やっぱり、ここは忌み辻だわ。」
幸い、両方の運転手は息があるらしいので救急車とパトカーをケータイで手配して俺は実家へ
戻った。
お盆、赤い浴衣の子供、忌み辻での事故。
嫌な共通点が心に引っかかった。
 実家に帰ると盆提灯が飾られ、お供えが山のように仏壇に供えられていた。
父は「降られたろ!迎えに行こうと思ってたんだけどなんか嫌な感じがして行かなかった。」
忌み辻での出来事をかいつまんで話すと実家に遊びにきていた伯父、叔母、従姉妹が口を揃えて
「あそこは何とかならないかなぁ。坊さんに来てもらおうか?」
と口々に喋っていた。
あえて、赤い浴衣の子供のことは言わなかった。
これはタブーだ。あの忌み辻にまつわるタブーだ。と確信していたからだ。

 今年もお盆がやってきて俺は実家へ帰省する。
そしてできれば通りたくないが忌み辻も通るだろう。
赤い浴衣の子供は見たくはない。

-了-

729: 04/06/28 20:14 ID:8YJquAg/
肝試しの話が出たので俺も厨房のときの肝試し話。
-1-

 厨房の頃、俺はDQNだったw
いわゆるヤンキーの下っ端って言う感じだった。
で、先輩が肝試し(というか根性試し)する。と言う話になって
下っ端は嫌でも行かなければいけなかった。
先輩の言うことは絶対で、無視すれば殴られるからだ。

 場所は近所にある古い寺。
雑誌にも載ったことがある曰く付きの場所だった。
ルールはDQN風味で大雑把。
・墓地を一周
・幽霊に会ったら根性見せるw
・何か適当に持って帰ってくる(すげー罰当たり)
だった。

730: 04/06/28 20:16 ID:8YJquAg/
-2-

 勿論、行くときは一人だ。
まず、龍の裏地がお洒落ポイントのH先輩が先陣を切って墓地に入って行った。
「なんじゃこるぁ!」
とH先輩の凄みの聞いた声が聞こえる。
10分ぐらいでH先輩は帰ってきた。
左手に墓を洗う桶をぶら下げていた。
次はK先輩だ。
スクーターでこけたときの傷が顎の下に残る寡黙だが怒らせると怖い人だ。
黙々とK先輩は懐中電灯も付けずに墓地に入って行った。
持って帰ってきたのは「卒塔婆」だった。
古い「卒塔婆」を前に俺たちは先輩も含め完全にびびっていた。
無論、顔には出さずK先輩の男気を下っ端の俺たちは褒めた。
先輩たちも根性を褒めていた。
K先輩はまんざらでもない様子だった。

731: 04/06/28 20:17 ID:8YJquAg/
-3-

 下っ端のうち俺より先に1年坊主が行かされることになった。
ここで根性見せないと後の三年間はへたれで終わってしまうので彼は必氏
だった。
途中、短い悲鳴が上がったが無事戻ってきた。
そいつは石の玉のようなものを戦利品で持ってきた。
苔の生えた相当古いものだというのが分かった。
俺の番になってさぁ行くぞという時に寺の住職に見つかり幸いにも俺は墓場
に入ること無く男を見せる根性試しは終わった。
逃げる時にH先輩がこけて出血した。
足首も捻ったようだったが、男気で乗り切ったらしい。

732: 04/06/28 20:19 ID:8YJquAg/
-4-

 ここまで語ればあとはお決まりの怪現象に俺たちは悩まされる。
そもそも罰当たりなヤンキーに下ったばちは相当なものだった。
4日後。
まず、H先輩は高熱を出した。
出血した所がひどく化膿してぐずぐずになった。
捻っただけと思われた足首は腫れ上がり骨折していた。
お見舞いに行ったがあの凄みのある先輩はすっかりやつれていた。
持って行ったプリンに手も付けず、先輩は俺たちに帰れと言った。
何かを恐れているようだった。
K先輩はといえば次の日急に足から力が抜けてホームに転落したらしい。
ひざかっくんを喰らった。とK先輩は割れた額に絆創膏を貼った顔で
そう力説した。
スクーターも別のヤンキーにぼこぼこにされて持ち主の兄貴にもぼこぼこに
されたそうだ。
いまでも急にひざかっくん状態になるんだ。と嫌そうな顔で語ってくれた。


733: 04/06/28 20:20 ID:8YJquAg/
-5-

 1年坊主はと言えば一番悲惨だったのではと思う。
バイクにはねられ、全治3か月の大けが。
入院中の病院でも夜中に自分のベッドの横に誰かが立ったり、悲鳴が夜中に
聞こえたりとすごいハードな入院生活を送っているようだった。
肉付きのよかった体は傷だらけの痩せっぽちになり、髪のつやもなく皮膚も
ガサガサになって退院してきた彼はまず最初に軍団を抜けさせて下さい。と
願い出た。
いつもならそんなよわっちい奴には蹴りが入るのだが先輩たちは素直に認め
彼はヤンキーをやめた。
そして、彼は転校した。
俺はと言えば、墓地に入らなかったのが幸いしたのか何も起こらなかった。
代わりに住職に詫びを入れに行く。と言う大役を仰せつかった。
卒塔婆と桶と石の玉を住職に返し、もう肝試しはしない。と誓わさせられた。
卒塔婆は元の墓に納まり、桶は水場に置かれた。
石の玉はどうなるんだろう?と思っていたら古い墓の上に乗せられた。
くぼみがありそこに乗っていたものだった。
俺は墓に一軒一軒詫びを入れて特に卒塔婆を取られた墓と玉を取られた墓には
厳重に詫びを入れた。

734: 04/06/28 20:21 ID:8YJquAg/
-終わりに-

 肝試しはやるなとは言いません。
節度を持って、そこの住人(生きていようが氏んでいようが)に敬意を払い
失礼の無いようにやりましょう。
墓地からなにか持ってくるなんてとんでもないことです。
住職や神主に一声かけて許可を貰うとグッドです。
いずれにせよ、そこは神聖にして生者不可侵の場所です。
なにがあっても自己責任です。

元DQNより心を込めて

759: 04/06/28 22:50 ID:8YJquAg/
「颱風のおっちゃん」

 俺の近所に颱風になると必ず現れる不思議なおっちゃんがいる。
上下を濃いグリーンの雨合羽を来て暴風雨の中、住人に警鐘を鳴らすのだ。
「川の水量が増してきたぞ~~気を付けろー!」
「風がひどいぞ~!屋根飛ばされんようにしろよ~!!」
などなどアドバイスをしながら町内を歩き回るのだ。
毎年毎年現れるので、近所の住人は気にもせず逆にもてなそうともしてたようだ。
事実うちでも麦茶とお菓子ぐらいは。と思い用意をしたのだがいつも
「自分は忙しいですから。また呼ばれます。」
と言って暴風雨の中警鐘を鳴らしに行くのだ。

 そんなおっちゃんの秘密を知ってしまったのは去年のことだった。
台風一過の晴天の中、おっちゃんが俺の前を歩いていた。
こんなに天気がいいのに雨合羽脱ぎゃいいのに思った。
そう、おっちゃんは快晴の天候にも関わらす、やっぱり濃いグリーンの雨合羽なのだ。
知らない人でもないので声をかけてみようと思い少し近づいた。
だが、そこで俺の勘みたいなものがブレーキをかけた。
「そういえば毎年くるけどおっちゃんの顔を知らないな。」
「普段は何してるんだろう?」
「なんで颱風の時になると現れるんだ?」
「自治会の人かな?」
ブレーキかけつつ、おっちゃんに近づく俺。
近づくにつれ、むっと獣の匂いがした。
外飼いの大型犬のような匂いを湿っぽくしたような匂い。
何だこの匂い?
きょろきょろ辺りを見回すが犬を飼ってるうちは見当たらないし、そんな匂いの元に
なるものは無かった。

760: 04/06/28 22:52 ID:8YJquAg/
「颱風のおっちゃん」続き

やっとおっちゃんに追いつき、
「こんにちわ!いい天気になりましたね!」
と声をかけるとこちらを振り向かずに手を挙げて「そうですね」と答えてくれた。

俺はくるりと踵を返すとダッシュでその場を離れた。
おっちゃんの手には茶色い毛が生えていて、指の間に水かきがあった。爪も獣の爪だった。

今年の颱風の時もおっちゃんは現れた。
だが俺はあえて無視した。
母親にお茶も出すな。と釘をさしておいた。
おっちゃんの正体が分かって、もてなせるか?
そんな剛毅な人に俺は会いたい。

696: 04/06/28 13:09 ID:8YJquAg/
すみません。
実家シリーズになっちゃいました。
エディタに書いてコピペしたら連投規制に引っかかってしまった。
作文臭いのは色気出し過ぎでそういう文体になっちゃいました。
回想なので冷静に文章にできたのもあります。
お嫌いでしたら読み飛ばして下さい。
スレ汚し失礼しました。
蒸し暑いので飯食って昼寝します。

698: 04/06/28 13:17 ID:IkjNiZjH
クワズイモさん、乙です
今回も良かったですよ

引用元: 死ぬ程洒落にならない怖い話しを集めてみない?76