1: 2017/06/06(火) 23:40:49.39 ID:FZH1ypkL.net
「第12回ラブライブ! 優勝は――、」
理亞「……」ギュッ
聖良「……」グッ
「――……ですッ!」
理亞「っ!?」
聖良「……、ふーっ」ガクッ
理亞「ぅ、……くぅ、ぅ」グスッ
聖良「理亞……」
理亞「う、うぅぅぅ、ひぐっ、ぅぅぅっ」
聖良「……」ギュッ ナデナデ
聖良「……今日まで私に付いて来てくれて有難う。よく頑張りましたね、理亞」
理亞「……」ギュッ
聖良「……」グッ
「――……ですッ!」
理亞「っ!?」
聖良「……、ふーっ」ガクッ
理亞「ぅ、……くぅ、ぅ」グスッ
聖良「理亞……」
理亞「う、うぅぅぅ、ひぐっ、ぅぅぅっ」
聖良「……」ギュッ ナデナデ
聖良「……今日まで私に付いて来てくれて有難う。よく頑張りましたね、理亞」
2: 2017/06/06(火) 23:41:38.06 ID:FZH1ypkL.net
理亞「っ、」
理亞「く、う、あ、……あああぁぁああっ! ああぁああぁあ!」
理亞「うあああああああああん!」
聖良「……」ナデナデ
聖良(高校3年。冬季ラブライブ。私の青春はその日、終わりを告げた)
――――
――
理亞「く、う、あ、……あああぁぁああっ! ああぁああぁあ!」
理亞「うあああああああああん!」
聖良「……」ナデナデ
聖良(高校3年。冬季ラブライブ。私の青春はその日、終わりを告げた)
――――
――
3: 2017/06/06(火) 23:42:26.99 ID:FZH1ypkL.net
ジリリリリリ! ジリリリリリリン!
ジリリリ、パシン
理亞「……ふぁ」
理亞「んー……」グシグシ
理亞「……起きよ。運動着……」
モゾモゾ、シュル、パサッ
ギュ、グッグッ、グィッ
理亞「よし。行こうかな」
理亞「姉様は……休みたいよね。もうスクールアイドルも、終わったんだし」
理亞「じゃあ、行ってきま――、」
聖良「理亞?」
理亞「え……姉様?」
聖良「おはよう。今から走るの? 少しくらい休んでいいと思うけど、理亞は真面目ね」
理亞「姉様こそ、その格好……」
聖良「日課だったから、急にやめてしまうのも落ち着かなくて。一緒に走らせてもらってもいい?」
理亞「……うん」
ジリリリ、パシン
理亞「……ふぁ」
理亞「んー……」グシグシ
理亞「……起きよ。運動着……」
モゾモゾ、シュル、パサッ
ギュ、グッグッ、グィッ
理亞「よし。行こうかな」
理亞「姉様は……休みたいよね。もうスクールアイドルも、終わったんだし」
理亞「じゃあ、行ってきま――、」
聖良「理亞?」
理亞「え……姉様?」
聖良「おはよう。今から走るの? 少しくらい休んでいいと思うけど、理亞は真面目ね」
理亞「姉様こそ、その格好……」
聖良「日課だったから、急にやめてしまうのも落ち着かなくて。一緒に走らせてもらってもいい?」
理亞「……うん」
4: 2017/06/06(火) 23:43:24.31 ID:FZH1ypkL.net
タッタッタッタッタ…
聖良「……」
理亞「……」
タッタッタッタッタ…
聖良「理亞と、こうして走れるのもあと何回かしらね」
理亞「……うん」
聖良「はーあ。もうすぐ私も東京都民か、怖いわ。大学選び、失敗したでしょうか」
理亞「だったら地元の大学にすれば良かったしょや」
聖良「これからのこともありますから、ね……。こればっかりは」
タッタッタッタッタ…
聖良「……」
理亞「……」
タッタッタッタッタ…
聖良「理亞と、こうして走れるのもあと何回かしらね」
理亞「……うん」
聖良「はーあ。もうすぐ私も東京都民か、怖いわ。大学選び、失敗したでしょうか」
理亞「だったら地元の大学にすれば良かったしょや」
聖良「これからのこともありますから、ね……。こればっかりは」
タッタッタッタッタ…
5: 2017/06/06(火) 23:44:20.25 ID:FZH1ypkL.net
聖良「これからと言えば、理亞はこれからどうするの? さしあたって、スクールアイドルは」
理亞「スクールアイドル部の活動は続けるよ。ただ……」
聖良「ただ?」
理亞「スクールアイドルとしては、もう活動しないと思う」
理亞「ラブライブ本選出場の経験を活かして、部のみんなのサポートに回るつもり」
聖良「……理亞は、それでいいの?」
理亞「私はSaintSnowの鹿角理亞だから」
聖良「……そう」
タッタッタッタッタ…
理亞「スクールアイドル部の活動は続けるよ。ただ……」
聖良「ただ?」
理亞「スクールアイドルとしては、もう活動しないと思う」
理亞「ラブライブ本選出場の経験を活かして、部のみんなのサポートに回るつもり」
聖良「……理亞は、それでいいの?」
理亞「私はSaintSnowの鹿角理亞だから」
聖良「……そう」
タッタッタッタッタ…
6: 2017/06/06(火) 23:45:37.60 ID:FZH1ypkL.net
理亞「……LINE、するからね。絶対返事してよ、姉様」
聖良「もちろん。私も、理亞が一人で泣いていないか気が気じゃありませんし」
理亞「泣いたりしないよ、もうっ!」
聖良「あら。どうでしょうね」
理亞「姉様こそ、東京で一人で寂しく泣いてるんじゃないの」
聖良「……そうかも。だから、電話もたくさんしましょうね」
理亞「……姉様はずるい」
タッタッタッタッタ…
聖良「もちろん。私も、理亞が一人で泣いていないか気が気じゃありませんし」
理亞「泣いたりしないよ、もうっ!」
聖良「あら。どうでしょうね」
理亞「姉様こそ、東京で一人で寂しく泣いてるんじゃないの」
聖良「……そうかも。だから、電話もたくさんしましょうね」
理亞「……姉様はずるい」
タッタッタッタッタ…
7: 2017/06/06(火) 23:46:40.97 ID:FZH1ypkL.net
理亞「姉様は、東京へ行ってどうするの?」
聖良「どうって、勉強よ。そのための大学ですもの」
理亞「分かってるけど。そうじゃなくて」
聖良「……どうしようかしらね。今までがスクールアイドル漬けだったから」
聖良「こうして落ち着いてみると、私、他に何もないのよ。ラブライブ以外なにも」
聖良「まあ自分で他のものを捨ててきたから、というのもあるのだけれど」
理亞「……姉様は姉様だよ。スクールアイドルでなくたって」
聖良「有難う」
聖良「でも、理亞も自分の好きなものをちゃんと見つけなさい? 今までは私に付き合わせてしまったけど」
理亞「そんなことない。私だってあのステージに憧れた」
理亞「私の憧れは、私だけのものだよ。姉様に付き合ったわけじゃない」
聖良「……救われるわ」
タッタッタッタッタ…
聖良「どうって、勉強よ。そのための大学ですもの」
理亞「分かってるけど。そうじゃなくて」
聖良「……どうしようかしらね。今までがスクールアイドル漬けだったから」
聖良「こうして落ち着いてみると、私、他に何もないのよ。ラブライブ以外なにも」
聖良「まあ自分で他のものを捨ててきたから、というのもあるのだけれど」
理亞「……姉様は姉様だよ。スクールアイドルでなくたって」
聖良「有難う」
聖良「でも、理亞も自分の好きなものをちゃんと見つけなさい? 今までは私に付き合わせてしまったけど」
理亞「そんなことない。私だってあのステージに憧れた」
理亞「私の憧れは、私だけのものだよ。姉様に付き合ったわけじゃない」
聖良「……救われるわ」
タッタッタッタッタ…
8: 2017/06/06(火) 23:48:43.11 ID:FZH1ypkL.net
理亞「姉様は、どうして今日も走ろうと思ったの? ラブライブはもう終わったのに」
聖良「言ったでしょう。日課だったから、癖になっているの」
理亞「じゃあ、東京でも走るの」
聖良「……どうでしょう。走ることが目的ではないから」
理亞「でも今は、目的もなく走ってるんだよね」
聖良「そうね。そういうことになってしまうかな。自分でも不思議です」
理亞「……」
理亞「姉様。もしかして」
聖良「どうかした?」
理亞「……本当に、何の目的もないの? 本当はあるんじゃない?」
聖良「何を言うの。ラブライブはもう終わってしまった。他に、走る理由なんてなかった筈だよ」
理亞「うん、そうだよ。私達には、それしかないんだよ、姉様……」
聖良「……? 変な理亞。分かり切ったことを」
タッタッタッタッタ…
聖良「言ったでしょう。日課だったから、癖になっているの」
理亞「じゃあ、東京でも走るの」
聖良「……どうでしょう。走ることが目的ではないから」
理亞「でも今は、目的もなく走ってるんだよね」
聖良「そうね。そういうことになってしまうかな。自分でも不思議です」
理亞「……」
理亞「姉様。もしかして」
聖良「どうかした?」
理亞「……本当に、何の目的もないの? 本当はあるんじゃない?」
聖良「何を言うの。ラブライブはもう終わってしまった。他に、走る理由なんてなかった筈だよ」
理亞「うん、そうだよ。私達には、それしかないんだよ、姉様……」
聖良「……? 変な理亞。分かり切ったことを」
タッタッタッタッタ…
9: 2017/06/06(火) 23:50:22.26 ID:FZH1ypkL.net
――――
――
聖良「……」
チョット、聖良先輩ドコイッタノ!?
ワカンナイ、ドッカイッター
アノ人イナインジャ始マラナイジャナイ
ラブライブ本選出場ノ偉業ダカラネ
盛大ニオ見送リシナキャ!
聖良「……ふぅ」
聖良(学校の屋上から眺める景色は、今日は少しだけ違っている)
聖良(校門に大きく立てかけられた、装飾を施した看板。力強く書き込まれた卒業式の文字)
聖良(至る所で卒業生と在校生が入り交り、最後の思い出を築き合っている)
聖良(この学び舎に、自分達の青春に、決して悔いを残さぬように)
聖良(……私の、青春は)
――
聖良「……」
チョット、聖良先輩ドコイッタノ!?
ワカンナイ、ドッカイッター
アノ人イナインジャ始マラナイジャナイ
ラブライブ本選出場ノ偉業ダカラネ
盛大ニオ見送リシナキャ!
聖良「……ふぅ」
聖良(学校の屋上から眺める景色は、今日は少しだけ違っている)
聖良(校門に大きく立てかけられた、装飾を施した看板。力強く書き込まれた卒業式の文字)
聖良(至る所で卒業生と在校生が入り交り、最後の思い出を築き合っている)
聖良(この学び舎に、自分達の青春に、決して悔いを残さぬように)
聖良(……私の、青春は)
10: 2017/06/06(火) 23:51:46.62 ID:FZH1ypkL.net
聖良「――誓うよ キミを すごいーばーしょーへーとー、連れてくよー……なんてね」
聖良(叶わなかった、か……)
聖良(ラブライブ本選出場だけでも十分すごい場所、なのだろうけれど)
聖良「頂点の景色は、きっともっと、想像できないくらい凄いんでしょうね……」
聖良(私の青春を、そこへ置いてくるつもりだったのだけれども)
理亞「――見つけた。こんな所にいたんだ。風邪ひいちゃうよ、姉様」
聖良「……理亞」
聖良(叶わなかった、か……)
聖良(ラブライブ本選出場だけでも十分すごい場所、なのだろうけれど)
聖良「頂点の景色は、きっともっと、想像できないくらい凄いんでしょうね……」
聖良(私の青春を、そこへ置いてくるつもりだったのだけれども)
理亞「――見つけた。こんな所にいたんだ。風邪ひいちゃうよ、姉様」
聖良「……理亞」
11: 2017/06/06(火) 23:53:05.70 ID:FZH1ypkL.net
理亞「みんな探してるよ。姉様がいないと激励会にならないって」
聖良「見送られるのは、むずがゆいわ」
理亞「一度きりなんだから我慢してよ。ほら、部室行こう?」
聖良「……ごめんなさい。もう少しだけここにいさせて」
理亞「じゃあ、私もしばらくここにいようかな」
聖良「……」
理亞「……」
聖良「見送られるのは、むずがゆいわ」
理亞「一度きりなんだから我慢してよ。ほら、部室行こう?」
聖良「……ごめんなさい。もう少しだけここにいさせて」
理亞「じゃあ、私もしばらくここにいようかな」
聖良「……」
理亞「……」
12: 2017/06/06(火) 23:57:48.98 ID:FZH1ypkL.net
聖良「これから頑張りなさいね、理亞」
理亞「頑張るのは姉様の方だよ。一人で東京なんだから」
聖良「……そうね。そう、なのよね」
理亞「実感、湧いてないでしょ」
聖良「……その通りよ。ずっと、何と言うのか。こう、夢を見ているような心地なの」
理亞「ラブライブからずっと?」
聖良「よく分かるね」
理亞「分かるよ。だって私達は、SaintSnowだから」
聖良「理亞も、こんな感覚だったりするの?」
理亞「……きっと違う。私のラブライブはもう、終わったもん。姉様だけが終わってない」
聖良「? 終わったでしょう。私達は優勝できなかった、その結果が、確かにある」
聖良「むしろ、あなたの方こそ終わってはいないよ、理亞。来年があるのですから」
理亞「頑張るのは姉様の方だよ。一人で東京なんだから」
聖良「……そうね。そう、なのよね」
理亞「実感、湧いてないでしょ」
聖良「……その通りよ。ずっと、何と言うのか。こう、夢を見ているような心地なの」
理亞「ラブライブからずっと?」
聖良「よく分かるね」
理亞「分かるよ。だって私達は、SaintSnowだから」
聖良「理亞も、こんな感覚だったりするの?」
理亞「……きっと違う。私のラブライブはもう、終わったもん。姉様だけが終わってない」
聖良「? 終わったでしょう。私達は優勝できなかった、その結果が、確かにある」
聖良「むしろ、あなたの方こそ終わってはいないよ、理亞。来年があるのですから」
13: 2017/06/06(火) 23:59:32.57 ID:FZH1ypkL.net
理亞「そうじゃないよ。そうじゃ、ないんだよ。姉様」
聖良「……分からない」
理亞「……そろそろ行こうよ。みんな待ってる」
聖良「そう、ね。いい加減に行かないと駄目ですね」
理亞「……」
理亞「ねえ、姉様」
聖良「何かしら、理亞」
理亞「ちゃんと卒業してね。泣いても笑ってもいいから、ちゃんと」
理亞「私は、姉様をちゃんとした形で見送りたいから」
聖良「? 変な理亞。もちろん卒業はします。時間は待ってはくれないのだから」
聖良「……分からない」
理亞「……そろそろ行こうよ。みんな待ってる」
聖良「そう、ね。いい加減に行かないと駄目ですね」
理亞「……」
理亞「ねえ、姉様」
聖良「何かしら、理亞」
理亞「ちゃんと卒業してね。泣いても笑ってもいいから、ちゃんと」
理亞「私は、姉様をちゃんとした形で見送りたいから」
聖良「? 変な理亞。もちろん卒業はします。時間は待ってはくれないのだから」
14: 2017/06/07(水) 00:01:43.61 ID:PU22H5iy.net
モブX「聖良先輩! どこ行ってたんですか、探したんですよ!」
聖良「ごめんなさい。少し、気持ちの整理をしていまして」
モブY「聖良お姉様ぁっ! お願いです、私を置いていかないでください~!」
聖良「いえあの、大学も決まっていますので、さすがに留年は」
モブZ「先輩、東京でも変わらず頑張ってください」
聖良「ええ。部のことはあなたに任せましたよ」
モブY「聖良お姉様、最後におっOい揉ませてくださいっ!」
聖良「最後に警察の厄介になりたいのでしたら、お好きに」
キャーキャー
理亞「……」
聖良「ごめんなさい。少し、気持ちの整理をしていまして」
モブY「聖良お姉様ぁっ! お願いです、私を置いていかないでください~!」
聖良「いえあの、大学も決まっていますので、さすがに留年は」
モブZ「先輩、東京でも変わらず頑張ってください」
聖良「ええ。部のことはあなたに任せましたよ」
モブY「聖良お姉様、最後におっOい揉ませてくださいっ!」
聖良「最後に警察の厄介になりたいのでしたら、お好きに」
キャーキャー
理亞「……」
15: 2017/06/07(水) 00:04:30.13 ID:PU22H5iy.net
――――
――
理亞「……」
理亞「姉様、入っていい?」コンコン
聖良「理亞? ええ、どうぞ」
理亞「お邪魔します」
理亞「……姉様の部屋、広いね」
聖良「大半の荷物は引っ越し業者に預けてしまいましたから。少し落ち着かないくらい」
理亞「ついに明日だね」
聖良「そうね。明日、新千歳から東京の便よ」
――
理亞「……」
理亞「姉様、入っていい?」コンコン
聖良「理亞? ええ、どうぞ」
理亞「お邪魔します」
理亞「……姉様の部屋、広いね」
聖良「大半の荷物は引っ越し業者に預けてしまいましたから。少し落ち着かないくらい」
理亞「ついに明日だね」
聖良「そうね。明日、新千歳から東京の便よ」
17: 2017/06/07(水) 00:05:49.03 ID:PU22H5iy.net
理亞「……姉様は、ここに思い残すことはない?」
聖良「悔いはある。優勝できなかったのですから」
聖良「でも、前へ進まなくてはいけない。いつまでもラブライブを引きずってはいられない」
聖良「だから、思い残すことはない。私は東京で次の夢を見つけ、掴んでみせる」
理亞「……嘘だよ」
聖良「……理亞?」
理亞「ねえ、姉様。私達のラブライブはもう終わったんだよ」
聖良「ええ。そうね」
理亞「ねえ、姉様。私達はもう、スクールアイドルじゃないんだよ」
聖良「ええ。分かり切ったことだわ」
聖良「悔いはある。優勝できなかったのですから」
聖良「でも、前へ進まなくてはいけない。いつまでもラブライブを引きずってはいられない」
聖良「だから、思い残すことはない。私は東京で次の夢を見つけ、掴んでみせる」
理亞「……嘘だよ」
聖良「……理亞?」
理亞「ねえ、姉様。私達のラブライブはもう終わったんだよ」
聖良「ええ。そうね」
理亞「ねえ、姉様。私達はもう、スクールアイドルじゃないんだよ」
聖良「ええ。分かり切ったことだわ」
18: 2017/06/07(水) 00:07:31.60 ID:PU22H5iy.net
理亞「――分かってない! 姉様は全然分かってない!」
聖良「り、理亞?」
理亞「姉様の馬鹿! 鈍感! おっOいおばけ! ひとのことばっかり世話焼く癖に、何で自分が分からないんだ!?」
理亞「本当は自分で気付いて欲しかったけど、もういい、限界!」
聖良「ちょっと、理亞。何をそんなに怒って――、」
理亞「姉様は気付いてない、ラブライブが終わってから、一度だって泣いてないこと!」
理亞「気付いてない、ラブライブが終わってから、一度だって笑ってもないこと!」
理亞「怒ることだってない! 何かに集中してるところも全然見てない! 今の姉様は、何もない!」
聖良「――っ!」
聖良「り、理亞?」
理亞「姉様の馬鹿! 鈍感! おっOいおばけ! ひとのことばっかり世話焼く癖に、何で自分が分からないんだ!?」
理亞「本当は自分で気付いて欲しかったけど、もういい、限界!」
聖良「ちょっと、理亞。何をそんなに怒って――、」
理亞「姉様は気付いてない、ラブライブが終わってから、一度だって泣いてないこと!」
理亞「気付いてない、ラブライブが終わってから、一度だって笑ってもないこと!」
理亞「怒ることだってない! 何かに集中してるところも全然見てない! 今の姉様は、何もない!」
聖良「――っ!」
19: 2017/06/07(水) 00:08:24.92 ID:PU22H5iy.net
理亞「……ねえ、姉様。練習、大変だったよね。苦しいことも耐えてきたよね。でも私達、勝てなかったんだよ」
聖良「……」
理亞「ねえ、姉様。この一年、全然遊んだりしなかったよね。土日なんかなかったよ。それでも私達、勝てなかったんだよ」
聖良「……やめて」
理亞「ねえ、姉様。雪の中で練習するの辛かったよね。暖かい部屋で遊んでる人達を羨ましがって、それでも私達は練習したよ」
理亞「でもやっぱり、私達は勝てなかったんだよ」
聖良「やめなさいと言っているでしょう……!」ガシッ
理亞「……負け犬」
聖良「なっ……!」
聖良「……」
理亞「ねえ、姉様。この一年、全然遊んだりしなかったよね。土日なんかなかったよ。それでも私達、勝てなかったんだよ」
聖良「……やめて」
理亞「ねえ、姉様。雪の中で練習するの辛かったよね。暖かい部屋で遊んでる人達を羨ましがって、それでも私達は練習したよ」
理亞「でもやっぱり、私達は勝てなかったんだよ」
聖良「やめなさいと言っているでしょう……!」ガシッ
理亞「……負け犬」
聖良「なっ……!」
20: 2017/06/07(水) 00:09:51.10 ID:PU22H5iy.net
理亞「ううん、負け犬以下だよ。自分が負けたことすら認められないで、うじうじうじうじ、格好ばっかりつけて!」
理亞「そんなに自分が弱いって認めるのが嫌!? くだらない、情けない! そんなハリボテのプライドにしがみついて、みっともない!」
理亞「お前なんか、負け犬以下のクズ野郎だ、聖良ッ!」
聖良「っ、理亞……ッ!」グッ
理亞「……っ」
聖良「――!? ……理亞、あなた、泣いて……」
理亞「……泣いて、何が悪いんだ」
理亞「大好きな人と喧嘩しなきゃいけないんだ。辛くて泣くことの、何が悪いんだ……」
理亞「たった一年でも、青春かけて打ち込んだ夢が果たせなかったんだ。悔しくて泣くことの、いったい何が悪いんだ……!」
理亞「SaintSnowを馬鹿にしないで! 私達は本気だったんだ、負けて終わって涙も出ないなんて、そんないい加減な気持ちでやって来たんじゃない!」
聖良「……!」
理亞「そんなに自分が弱いって認めるのが嫌!? くだらない、情けない! そんなハリボテのプライドにしがみついて、みっともない!」
理亞「お前なんか、負け犬以下のクズ野郎だ、聖良ッ!」
聖良「っ、理亞……ッ!」グッ
理亞「……っ」
聖良「――!? ……理亞、あなた、泣いて……」
理亞「……泣いて、何が悪いんだ」
理亞「大好きな人と喧嘩しなきゃいけないんだ。辛くて泣くことの、何が悪いんだ……」
理亞「たった一年でも、青春かけて打ち込んだ夢が果たせなかったんだ。悔しくて泣くことの、いったい何が悪いんだ……!」
理亞「SaintSnowを馬鹿にしないで! 私達は本気だったんだ、負けて終わって涙も出ないなんて、そんないい加減な気持ちでやって来たんじゃない!」
聖良「……!」
21: 2017/06/07(水) 00:11:47.92 ID:PU22H5iy.net
理亞「……姉様。終わらせようよ、私達のラブライブを」
理亞「でないと姉様、東京に行っても新しい夢なんて見つからないよ。いつまで経っても笑えないよ」
聖良「……」
理亞「……」
聖良「……そう。私達は、負けたのよね」
聖良「ラブライブはもう、終わってしまったのよね」
理亞「……うん。そうだよ、姉様」
聖良「理亞。抱きしめさせてもらっても、いい……?」
理亞「いいよ、姉様」
聖良「有難う」ギュッ
理亞「でないと姉様、東京に行っても新しい夢なんて見つからないよ。いつまで経っても笑えないよ」
聖良「……」
理亞「……」
聖良「……そう。私達は、負けたのよね」
聖良「ラブライブはもう、終わってしまったのよね」
理亞「……うん。そうだよ、姉様」
聖良「理亞。抱きしめさせてもらっても、いい……?」
理亞「いいよ、姉様」
聖良「有難う」ギュッ
22: 2017/06/07(水) 00:13:13.22 ID:PU22H5iy.net
聖良「……」
聖良「……嫌だよ」
聖良「終わりたくないよ。このままなんて悔しいよ……。ひぐっ、うっ、ぐすっ……っく、ぅう」
聖良「私達の何が足りなかったんかなあ……? やり直せるなら、やり直したい……!」
聖良「理亞と二人で、あの場所で。勝って終わりにしたかったよ……!」
聖良「う、ぅうう、――あ、」
理亞「……」ギュッ
聖良「あ、あぁあああああああ! うああああああああ! ああぁあぁあああああ!」
理亞「ぐすっ、……うぁああああああああぁん!」
聖良(ラブライブからおよそ一か月。私の終わってしまった青春に、私はその日、ようやくピリオドを打った……)
聖良「……嫌だよ」
聖良「終わりたくないよ。このままなんて悔しいよ……。ひぐっ、うっ、ぐすっ……っく、ぅう」
聖良「私達の何が足りなかったんかなあ……? やり直せるなら、やり直したい……!」
聖良「理亞と二人で、あの場所で。勝って終わりにしたかったよ……!」
聖良「う、ぅうう、――あ、」
理亞「……」ギュッ
聖良「あ、あぁあああああああ! うああああああああ! ああぁあぁあああああ!」
理亞「ぐすっ、……うぁああああああああぁん!」
聖良(ラブライブからおよそ一か月。私の終わってしまった青春に、私はその日、ようやくピリオドを打った……)
23: 2017/06/07(水) 00:15:20.37 ID:PU22H5iy.net
――――
――
聖良(えっと、入学式の会場は……こっちか)
聖良(東京の建物はどこも狭いけど、さすがに大学は大きいな。だいぶ迂回してしまったみたい)
聖良(――あ。あれ、受付)
聖良「すみません。新入生の鹿角と申しますが。はい。あ、この部屋で座っていれば? はい。分かりました、はい」
聖良(早めに来たつもりだったけど、少し迷ったせいかもう一杯いるわね)
聖良(みんな同級生、ってことよね。友達、出来るといいけれど)
聖良(えぇと。――あの席が空いているわね。黒髪の女の子の隣)
聖良「――あの。こちら、よろしいですか」
「あ、ええ。どうぞ、ご自由に――って、」
聖良「有難うござい――、ううん?」
「あなた、もしかしてSaintSnowの……!」
聖良「あなたは、Aqoursの!」
ダイヤ「鹿角聖良さん!?」 聖良「黒澤ダイヤ!?」
――
聖良(えっと、入学式の会場は……こっちか)
聖良(東京の建物はどこも狭いけど、さすがに大学は大きいな。だいぶ迂回してしまったみたい)
聖良(――あ。あれ、受付)
聖良「すみません。新入生の鹿角と申しますが。はい。あ、この部屋で座っていれば? はい。分かりました、はい」
聖良(早めに来たつもりだったけど、少し迷ったせいかもう一杯いるわね)
聖良(みんな同級生、ってことよね。友達、出来るといいけれど)
聖良(えぇと。――あの席が空いているわね。黒髪の女の子の隣)
聖良「――あの。こちら、よろしいですか」
「あ、ええ。どうぞ、ご自由に――って、」
聖良「有難うござい――、ううん?」
「あなた、もしかしてSaintSnowの……!」
聖良「あなたは、Aqoursの!」
ダイヤ「鹿角聖良さん!?」 聖良「黒澤ダイヤ!?」
24: 2017/06/07(水) 00:16:52.39 ID:PU22H5iy.net
第一部、完
29: 2017/06/07(水) 05:43:34.73 ID:PU22H5iy.net
ダイヤ「ただいま戻りましたわ――、うっ、お酒臭い……」
聖良「ああ、ダイヤ。お帰りなさい。遅かったですね。一緒に飲みましょうよ」フラフラ
ダイヤ「……聖良さん。あなたまたこんなに飲んで。へべれけではないですか」
聖良「えー。いえいえ、まだまだ全然。ほら、こんなに元気です」ヘロヘロ
ダイヤ「酔っ払いはみんなそう言うんですのよ!」
ダイヤ「私もあなたも成人した訳ですから飲むなとまでは言いませんが、程度を知りなさいな」
ダイヤ「若いうちから酒浸りでは、いずれ身体に障りますわよ」
聖良「大丈夫ですよ、これくらいは」
ダイヤ「それも酔っ払いの常套句です」
聖良「ああ、ダイヤ。お帰りなさい。遅かったですね。一緒に飲みましょうよ」フラフラ
ダイヤ「……聖良さん。あなたまたこんなに飲んで。へべれけではないですか」
聖良「えー。いえいえ、まだまだ全然。ほら、こんなに元気です」ヘロヘロ
ダイヤ「酔っ払いはみんなそう言うんですのよ!」
ダイヤ「私もあなたも成人した訳ですから飲むなとまでは言いませんが、程度を知りなさいな」
ダイヤ「若いうちから酒浸りでは、いずれ身体に障りますわよ」
聖良「大丈夫ですよ、これくらいは」
ダイヤ「それも酔っ払いの常套句です」
30: 2017/06/07(水) 05:44:56.54 ID:PU22H5iy.net
ダイヤ「まったく。真面目なあなたとならと思いルームシェアの提案に乗りましたが……まさか成人して数か月で、ここまで飲んだくれるとは思いませんでしたわ」
聖良「外で飲むよりはいいでしょう? 経済的だし、他人に迷惑もかけない」
ダイヤ「私に迷惑がかかっているのですが?」
聖良「私とダイヤの仲ではないですか」
ダイヤ「何が。……と言いますか、そういう言い方はやめてください。おかげで大学でも妙な噂が立っているようですし」
聖良「ああ。私とダイヤが爛れた生活をしている、というヤツですね」
聖良「みんなの中では私がタチでダイヤがネコだとか。ふふっ、面白い」
ダイヤ「何も面白くありませんわよっ!」
ダイヤ「と言うかあなた、この噂を聞いた時、否定しなかったそうですね! 勘弁して頂けませんか!?」
聖良「元スクールアイドルとして、みんなの夢を壊すのも如何かと思って。百合営業というヤツです」クスクス
ダイヤ「頭が痛くなってきましたわ……」
聖良「外で飲むよりはいいでしょう? 経済的だし、他人に迷惑もかけない」
ダイヤ「私に迷惑がかかっているのですが?」
聖良「私とダイヤの仲ではないですか」
ダイヤ「何が。……と言いますか、そういう言い方はやめてください。おかげで大学でも妙な噂が立っているようですし」
聖良「ああ。私とダイヤが爛れた生活をしている、というヤツですね」
聖良「みんなの中では私がタチでダイヤがネコだとか。ふふっ、面白い」
ダイヤ「何も面白くありませんわよっ!」
ダイヤ「と言うかあなた、この噂を聞いた時、否定しなかったそうですね! 勘弁して頂けませんか!?」
聖良「元スクールアイドルとして、みんなの夢を壊すのも如何かと思って。百合営業というヤツです」クスクス
ダイヤ「頭が痛くなってきましたわ……」
31: 2017/06/07(水) 05:46:55.10 ID:PU22H5iy.net
聖良「それはいけません。そういう時はお酒を飲めばすっきりしますよ、いかがです?」
ダイヤ「結構です! あなたのお酒も没収ですわ!」
聖良「ああっ、酷い!?」
ダイヤ「まったく。大学で単位を取ってバイトするだけの生活だから、お酒なんかにハマってしまうのです」
ダイヤ「何か他にこう、趣味とか、もっと打ち込めるものを見つけてはどうですか」
聖良「打ち込めるもの、ですか」
聖良「……」
聖良「どうでしょう、ね。楽しくないのよ、何をやっても。本当はお酒を飲んだって満たされない」
聖良「あるいは、噂のとおりにあなたを抱けば、あなたに溺れられるでしょうか……」
ダイヤ「……酔っ払いの妄言と、受け止めておきますわ」
聖良「……ごめんなさい。そうしてもらえると助かります」
ダイヤ「結構です! あなたのお酒も没収ですわ!」
聖良「ああっ、酷い!?」
ダイヤ「まったく。大学で単位を取ってバイトするだけの生活だから、お酒なんかにハマってしまうのです」
ダイヤ「何か他にこう、趣味とか、もっと打ち込めるものを見つけてはどうですか」
聖良「打ち込めるもの、ですか」
聖良「……」
聖良「どうでしょう、ね。楽しくないのよ、何をやっても。本当はお酒を飲んだって満たされない」
聖良「あるいは、噂のとおりにあなたを抱けば、あなたに溺れられるでしょうか……」
ダイヤ「……酔っ払いの妄言と、受け止めておきますわ」
聖良「……ごめんなさい。そうしてもらえると助かります」
32: 2017/06/07(水) 05:48:44.42 ID:PU22H5iy.net
ダイヤ「まずは水でも飲みましょう。それから、お酒はお断りしますが愚痴にくらいは付き合いますわ」
聖良「有難う」
聖良「……ダイヤ。あなたは今、楽しいですか。あの頃と比べて、今に満足していますか」
ダイヤ「……あの頃、ね」
ダイヤ「質問に質問を返すようですが。あなたは、あの頃に戻りたいのですか」
聖良「どうでしょう。……思い返せば、あまり良い思い出はないですね」
聖良「誇張でも何でもなく、汗と涙と反吐にまみれた生活でした。朝に走って、昼に歌って、夜は踊って。合間合間に嘔吐して、無理やり食事をねじ込んで、それもまた吐く」
聖良「およそ女子高生の日常とは思えません。戻りたいかと問われれば、答えに窮しますね」
ダイヤ「しかしあなたは、あの頃と比べて今に不満を感じている」
聖良「そう、みたいですね。充実した日々ではあったのかもしれません。少なくとも、退屈なんて感じる暇もありませんでしたし」
ダイヤ「……前から気にはなっていました。あなたは。あなた達SaintSnowは、どうしてそこまで厳しい練習を?」
聖良「有難う」
聖良「……ダイヤ。あなたは今、楽しいですか。あの頃と比べて、今に満足していますか」
ダイヤ「……あの頃、ね」
ダイヤ「質問に質問を返すようですが。あなたは、あの頃に戻りたいのですか」
聖良「どうでしょう。……思い返せば、あまり良い思い出はないですね」
聖良「誇張でも何でもなく、汗と涙と反吐にまみれた生活でした。朝に走って、昼に歌って、夜は踊って。合間合間に嘔吐して、無理やり食事をねじ込んで、それもまた吐く」
聖良「およそ女子高生の日常とは思えません。戻りたいかと問われれば、答えに窮しますね」
ダイヤ「しかしあなたは、あの頃と比べて今に不満を感じている」
聖良「そう、みたいですね。充実した日々ではあったのかもしれません。少なくとも、退屈なんて感じる暇もありませんでしたし」
ダイヤ「……前から気にはなっていました。あなたは。あなた達SaintSnowは、どうしてそこまで厳しい練習を?」
33: 2017/06/07(水) 05:51:06.18 ID:PU22H5iy.net
ダイヤ「私の知る限り、歴代スクールアイドルの中でもあなた達の練習量は群を抜いています。はっきり言って異常なレベルですわ」
聖良「あなた、私の質問に答える気ないでしょう。まあ、いいですけど」
聖良「別段、特別なものはありません。ただ、頂点を目指した。そのための努力を惜しまなかった。それだけよ」
ダイヤ「それは表層的なものでしょう。私はあなたがその頂点を――いいえ。あなたがスクールアイドルであった理由を尋ねています」
聖良「……それこそ、有り触れたもの」
聖良「輝いて見えた。自分もそうなりたいと思った。どこまでも強く、あのスクールアイドルの王者のように」
ダイヤ「……」
ダイヤ「え。そ、それだけ? それだけで、それほどまでに厳しい練習に耐えたの? ただただ、目指したもののためだけに……?」
聖良「それだけよ。それだけしかなかった。それだけで十分だった」
聖良「あの輝きを追うことだけが私達のすべて。輝きの正体が、身を焼く灼熱の太陽と知っても、躊躇わなかった」
ダイヤ「……本当なのだとしたら、理解に苦しみます」
聖良「……」
聖良「あなた、私の質問に答える気ないでしょう。まあ、いいですけど」
聖良「別段、特別なものはありません。ただ、頂点を目指した。そのための努力を惜しまなかった。それだけよ」
ダイヤ「それは表層的なものでしょう。私はあなたがその頂点を――いいえ。あなたがスクールアイドルであった理由を尋ねています」
聖良「……それこそ、有り触れたもの」
聖良「輝いて見えた。自分もそうなりたいと思った。どこまでも強く、あのスクールアイドルの王者のように」
ダイヤ「……」
ダイヤ「え。そ、それだけ? それだけで、それほどまでに厳しい練習に耐えたの? ただただ、目指したもののためだけに……?」
聖良「それだけよ。それだけしかなかった。それだけで十分だった」
聖良「あの輝きを追うことだけが私達のすべて。輝きの正体が、身を焼く灼熱の太陽と知っても、躊躇わなかった」
ダイヤ「……本当なのだとしたら、理解に苦しみます」
聖良「……」
34: 2017/06/07(水) 05:53:17.42 ID:PU22H5iy.net
ダイヤ「それではあなたは、追いかけるためだけにスクールアイドルをやっていたことになります」
ダイヤ「苦しい思い出しかない。走り抜けた記憶しかない。その最中のあなたの想いはどこにあるの? それではまるで」
ダイヤ「憧れを燃料のようにくべて消費して、ただ頂点を。その輝きを追い求める機械のような……!」
聖良「そう。それこそが私達の理想でした」
聖良「頂点しかいらない、他には何も。そのためなら幼い憧憬なんていくらでも燃やせた、灰になるまでっ!」
ダイヤ「……っ」
ダイヤ「……私の知っているスクールアイドルの輝きは、若い憧れを焼き尽くすような、灼熱の太陽などではありません」
ダイヤ「あれは青春の輝きです。短い高校3年間の、ともすればたった1年しかない仲間との絆、その想いのすべてを歌に込めるからこそ、多くを惹きつける光になる。誰もが憧れる希望になる」
ダイヤ「だって、そうでしょう。私達の憧れたスクールアイドルがそんな、あなたの言うような地獄の釜の底な訳が、ないではないですか」
聖良「……そうですね。私が勝手に太陽に憧れて手を伸ばし、勝手に堕ちただけのこと。凡人が女神になろうとした代償、と言ったところでしょうか」
聖良「ふふ。まるであなたのお仲間のような、いささか格好をつけすぎた表現ですが」
ダイヤ「苦しい思い出しかない。走り抜けた記憶しかない。その最中のあなたの想いはどこにあるの? それではまるで」
ダイヤ「憧れを燃料のようにくべて消費して、ただ頂点を。その輝きを追い求める機械のような……!」
聖良「そう。それこそが私達の理想でした」
聖良「頂点しかいらない、他には何も。そのためなら幼い憧憬なんていくらでも燃やせた、灰になるまでっ!」
ダイヤ「……っ」
ダイヤ「……私の知っているスクールアイドルの輝きは、若い憧れを焼き尽くすような、灼熱の太陽などではありません」
ダイヤ「あれは青春の輝きです。短い高校3年間の、ともすればたった1年しかない仲間との絆、その想いのすべてを歌に込めるからこそ、多くを惹きつける光になる。誰もが憧れる希望になる」
ダイヤ「だって、そうでしょう。私達の憧れたスクールアイドルがそんな、あなたの言うような地獄の釜の底な訳が、ないではないですか」
聖良「……そうですね。私が勝手に太陽に憧れて手を伸ばし、勝手に堕ちただけのこと。凡人が女神になろうとした代償、と言ったところでしょうか」
聖良「ふふ。まるであなたのお仲間のような、いささか格好をつけすぎた表現ですが」
35: 2017/06/07(水) 05:54:45.80 ID:PU22H5iy.net
ダイヤ「……理解できません。あなたの心が分からない」
聖良「心なんて。あるいは、焼き尽くしてしまったのかもしれませんね。ラブライブが終わって、あの――、」
聖良(理亞と共に抱き合い、大声を上げて泣きじゃくったあの夜に。燃え落ち、灰になってしまったのだろう……)
聖良「ああ。そうか」
聖良「だから私は、満たされないのね。再び燃え上がらせる心が、もう、私にはないから――」
聖良「有難う、ダイヤ。すっきりしました。解決はしそうにありませんが、自分の状況を理解できたのは前進です」
聖良「自分の中でどこか、折り合いをつけられるよう努力してみることとします」
ダイヤ「……」
聖良「そろそろ眠りましょうか。明日もあることですし」
聖良「心なんて。あるいは、焼き尽くしてしまったのかもしれませんね。ラブライブが終わって、あの――、」
聖良(理亞と共に抱き合い、大声を上げて泣きじゃくったあの夜に。燃え落ち、灰になってしまったのだろう……)
聖良「ああ。そうか」
聖良「だから私は、満たされないのね。再び燃え上がらせる心が、もう、私にはないから――」
聖良「有難う、ダイヤ。すっきりしました。解決はしそうにありませんが、自分の状況を理解できたのは前進です」
聖良「自分の中でどこか、折り合いをつけられるよう努力してみることとします」
ダイヤ「……」
聖良「そろそろ眠りましょうか。明日もあることですし」
46: 2017/06/07(水) 18:53:21.88 ID:PU22H5iy.net
ダイヤ「……私は、認めません。自分の心を消費して歌うスクールアイドルがいたなんて」
ダイヤ「あなただって、本当は……!」
聖良「あなたは優しいのですね、ダイヤ。いいえ、それとも。元スクールアイドルとしての意地ですか」
聖良「あなたのスクールアイドル像とかつての私は、よほど相容れないもののようです」
ダイヤ「……」
聖良「ああ、そう言えば。まだ私の問いの答えを聞いていませんでしたね。もうあまり意味のない問答ですが、いちおう、聞かせてもらっても?」
聖良「あなたは、今の生活に満足している?」
ダイヤ「……一抹の退屈を抱えていることは、否定しません」
ダイヤ「しかしその退屈もまた、私の駆け抜けた青春の価値と、そう思っています。それほどまでに充実した青春だったのだと」
ダイヤ「それは惜しむのではなく誇るべき過去です。あの日々を想う退屈ですら、私の胸を熱くさせてくれる……」
聖良「いい答えね。眼が眩むほどまぶしくて、いつか見た輝きを思い出します」
聖良「私、あなたのこと、好きよ。不器用だけど真面目で真っ直ぐで。とてもいい女だなって、同性の私でもそう思います」
ダイヤ「あなただって、本当は……!」
聖良「あなたは優しいのですね、ダイヤ。いいえ、それとも。元スクールアイドルとしての意地ですか」
聖良「あなたのスクールアイドル像とかつての私は、よほど相容れないもののようです」
ダイヤ「……」
聖良「ああ、そう言えば。まだ私の問いの答えを聞いていませんでしたね。もうあまり意味のない問答ですが、いちおう、聞かせてもらっても?」
聖良「あなたは、今の生活に満足している?」
ダイヤ「……一抹の退屈を抱えていることは、否定しません」
ダイヤ「しかしその退屈もまた、私の駆け抜けた青春の価値と、そう思っています。それほどまでに充実した青春だったのだと」
ダイヤ「それは惜しむのではなく誇るべき過去です。あの日々を想う退屈ですら、私の胸を熱くさせてくれる……」
聖良「いい答えね。眼が眩むほどまぶしくて、いつか見た輝きを思い出します」
聖良「私、あなたのこと、好きよ。不器用だけど真面目で真っ直ぐで。とてもいい女だなって、同性の私でもそう思います」
47: 2017/06/07(水) 18:54:38.34 ID:PU22H5iy.net
ダイヤ「……今さらですか。私は品行方正、超絶美少女、究極の大和撫子である黒澤ダイヤ様ですのよ」
聖良「ふふっ。成人した女が美少女、ねぇ……。まあ、いいけれど」
聖良「さあ。いい加減に、本当に眠るとしましょう。これ以上の夜更かしは毒です」
ダイヤ「……聖良さん」
聖良「なんでしょうか」
ダイヤ「あなたはどうして、スクールアイドルだったのですか」
聖良「……その質問には答えたはずですよ。おやすみなさい、ダイヤ。とても有意義な時間だったわ」
ダイヤ「……おやすみなさい。良い夜を」
ダイヤ「……」
ダイヤ「あなたには言われたくありませんわ。真面目すぎて不器用すぎて、だから真っ直ぐでいられなかった、ちょっと性格の悪い人」
聖良「ふふっ。成人した女が美少女、ねぇ……。まあ、いいけれど」
聖良「さあ。いい加減に、本当に眠るとしましょう。これ以上の夜更かしは毒です」
ダイヤ「……聖良さん」
聖良「なんでしょうか」
ダイヤ「あなたはどうして、スクールアイドルだったのですか」
聖良「……その質問には答えたはずですよ。おやすみなさい、ダイヤ。とても有意義な時間だったわ」
ダイヤ「……おやすみなさい。良い夜を」
ダイヤ「……」
ダイヤ「あなたには言われたくありませんわ。真面目すぎて不器用すぎて、だから真っ直ぐでいられなかった、ちょっと性格の悪い人」
48: 2017/06/07(水) 18:58:31.74 ID:PU22H5iy.net
――――
――
聖良「いらっしゃいませー」
聖良「ありがとうございましたー」
聖良「いらっしゃいませー」
聖良「ありがとうございましたー」
モブ「鹿角さん、時間。交代だから、上がっていいよ」
聖良「あ、はい。では、お先に失礼します」
聖良「はーっ、なまら疲れたぁ……。景気づけにお酒でも買って帰ろうか」
聖良「って、昨日の今日で飲酒していては駄目ね。ダイヤに怒られてしまうわ」
――
聖良「いらっしゃいませー」
聖良「ありがとうございましたー」
聖良「いらっしゃいませー」
聖良「ありがとうございましたー」
モブ「鹿角さん、時間。交代だから、上がっていいよ」
聖良「あ、はい。では、お先に失礼します」
聖良「はーっ、なまら疲れたぁ……。景気づけにお酒でも買って帰ろうか」
聖良「って、昨日の今日で飲酒していては駄目ね。ダイヤに怒られてしまうわ」
49: 2017/06/07(水) 19:01:21.89 ID:PU22H5iy.net
聖良「……自分の中で折り合いを、か」
聖良(楽しくない。満たされない。どんな想いに対する折り合いとは何なのか)
聖良(人生とはこんなもの、大人になるとはこういうこと……。そんな風に諦めろということだろうか)
聖良(それは、違う気がする。私はそんな風に生きたくはない。もっと何か、出来ることがあるはずだ)
聖良「私にも趣味が必要なんかなあ。とは言っても、趣味なんて作るものでもないと思うし」
聖良「あるいは恋でもしてみるとか。……いや、無理。まったくピンとこない」
聖良「……難しい。これじゃあ本当に、ダイヤに溺れるって選択肢が一番濃厚になってしまう」
聖良(楽しくない。満たされない。どんな想いに対する折り合いとは何なのか)
聖良(人生とはこんなもの、大人になるとはこういうこと……。そんな風に諦めろということだろうか)
聖良(それは、違う気がする。私はそんな風に生きたくはない。もっと何か、出来ることがあるはずだ)
聖良「私にも趣味が必要なんかなあ。とは言っても、趣味なんて作るものでもないと思うし」
聖良「あるいは恋でもしてみるとか。……いや、無理。まったくピンとこない」
聖良「……難しい。これじゃあ本当に、ダイヤに溺れるって選択肢が一番濃厚になってしまう」
50: 2017/06/07(水) 19:03:36.45 ID:PU22H5iy.net
聖良「いっそ本当に襲ってみようか。ダイヤ綺麗だし、性的だし」
聖良「ダイヤはどんな反応するかな……。まず恨まれるか。彼女の信頼を裏切るわけだし」
聖良「あの切れ長の碧眼が、憎悪を込めて私を睨む。私はなおダイヤの身体をむさぼり、憎悪に濁った瞳に徐々に恥辱が混ざっていって――」
聖良(……おかしい。ちょっとゾクゾクしてきた。私、そんな趣味なかったと思うけど)
聖良「ちょっと、ストップ。これ以上はまずい。同性相手に何を考えてるの、私は」
聖良「もっと別の。何か楽しいと思えることを」
聖良「楽しいこと。楽しい……」
~♪
聖良「――歌、……?」
聖良「ダイヤはどんな反応するかな……。まず恨まれるか。彼女の信頼を裏切るわけだし」
聖良「あの切れ長の碧眼が、憎悪を込めて私を睨む。私はなおダイヤの身体をむさぼり、憎悪に濁った瞳に徐々に恥辱が混ざっていって――」
聖良(……おかしい。ちょっとゾクゾクしてきた。私、そんな趣味なかったと思うけど)
聖良「ちょっと、ストップ。これ以上はまずい。同性相手に何を考えてるの、私は」
聖良「もっと別の。何か楽しいと思えることを」
聖良「楽しいこと。楽しい……」
~♪
聖良「――歌、……?」
51: 2017/06/07(水) 19:05:40.52 ID:PU22H5iy.net
聖良(どこかから聞こえる、綺麗な、女性の声。そこまで卓越した技術は感じないけれど、弾んだ声色がなぜか胸を打つ)
聖良「それにこの歌声、どこかで聴いた、ような……」
聖良「声がするのは、向こうから。――あ、あの人だ」
聖良(セミロングの、明るいブラウンの髪。サングラスをかけていて顔はよく見えないけれど、二十代半ばくらい、だろうか)
女性「――♪」ニコッ
聖良(! 明らかにこっちを見て笑った。サングラス越しだけれど、間違いなく)
聖良(……とても、楽しそうに歌う人だ。何がそんなに楽しいのだろう。歌うことがそんなに好き?)
聖良(歌なんて特別なものでもない。歌おうと思えばいつだって歌える。そもそも、そう楽しいものでもない。スクールアイドル時代には喉を潰すくらい歌った)
聖良(私にとっては歌なんて、……苦痛の日々の、象徴みたいなものなのに)
聖良「……」
女性「~~♪」
聖良「……」
・
・
・
聖良「それにこの歌声、どこかで聴いた、ような……」
聖良「声がするのは、向こうから。――あ、あの人だ」
聖良(セミロングの、明るいブラウンの髪。サングラスをかけていて顔はよく見えないけれど、二十代半ばくらい、だろうか)
女性「――♪」ニコッ
聖良(! 明らかにこっちを見て笑った。サングラス越しだけれど、間違いなく)
聖良(……とても、楽しそうに歌う人だ。何がそんなに楽しいのだろう。歌うことがそんなに好き?)
聖良(歌なんて特別なものでもない。歌おうと思えばいつだって歌える。そもそも、そう楽しいものでもない。スクールアイドル時代には喉を潰すくらい歌った)
聖良(私にとっては歌なんて、……苦痛の日々の、象徴みたいなものなのに)
聖良「……」
女性「~~♪」
聖良「……」
・
・
・
52: 2017/06/07(水) 19:09:35.99 ID:PU22H5iy.net
女性「ありがとうございましたー!」
聖良「っ!? ……あ、終わったの」
聖良(ずいぶんボーっとしていたみたい。終わったことにも気づかないなんて、疲れてるのかも)
聖良(帰ろう。帰って、ダイヤをからかって寝よう)
女性「いやー。ありがとうね、お姉さん!」
聖良「……」
聖良「え、私?」
女性「そうそうお姉さん。あんなに聞き入ってくれるなんて、嬉しかったなぁ」
女性「大半は通り過ぎるだけだし、三十分以上も聴いてくれる人なんて、なかなかいないからさ」
聖良「三十分? ――えっ、もうこんな時間!?」
女性「あはは。なに、時間も忘れてくれてたの? 私の歌も捨てたものじゃないね!」
聖良「そういう訳では……」
聖良「っ!? ……あ、終わったの」
聖良(ずいぶんボーっとしていたみたい。終わったことにも気づかないなんて、疲れてるのかも)
聖良(帰ろう。帰って、ダイヤをからかって寝よう)
女性「いやー。ありがとうね、お姉さん!」
聖良「……」
聖良「え、私?」
女性「そうそうお姉さん。あんなに聞き入ってくれるなんて、嬉しかったなぁ」
女性「大半は通り過ぎるだけだし、三十分以上も聴いてくれる人なんて、なかなかいないからさ」
聖良「三十分? ――えっ、もうこんな時間!?」
女性「あはは。なに、時間も忘れてくれてたの? 私の歌も捨てたものじゃないね!」
聖良「そういう訳では……」
53: 2017/06/07(水) 19:11:23.63 ID:PU22H5iy.net
聖良「……いえ。どうなんでしょう。圧倒的に上手い歌だったわけでも、ない筈なんですが」
女性「うぐっ!? い、言うねお姉さん。そりゃまあ、私の歌がそこまででもないって知ってるけどさあ」
聖良「あ。すみません。思ったことがつい、そのまま」
女性「それ何にもフォローになってないからね?」
聖良「……ただなぜか、あなたの歌がどこか、懐かしかったんです。それで聴き入ったのだと」
女性「懐かしい、か」
女性「お姉さん、もしかしてスクールアイドルとか好きだったりする?」
女性「うぐっ!? い、言うねお姉さん。そりゃまあ、私の歌がそこまででもないって知ってるけどさあ」
聖良「あ。すみません。思ったことがつい、そのまま」
女性「それ何にもフォローになってないからね?」
聖良「……ただなぜか、あなたの歌がどこか、懐かしかったんです。それで聴き入ったのだと」
女性「懐かしい、か」
女性「お姉さん、もしかしてスクールアイドルとか好きだったりする?」
54: 2017/06/07(水) 19:14:29.80 ID:PU22H5iy.net
聖良「元スクールアイドルではあります」
女性「あ、そうなんだ! 実は私も元スクールアイドルなんだよ」
聖良「高校でも歌って、大人になっても歌っている訳ですか。よほど歌がお好きなんですね」
女性「うん。そりゃあ、スクールアイドルやってて歌が嫌いな人はいないよ」
女性「あなただって、そうなんじゃないの?」
聖良「……どうでしょうか。あまり楽しく歌った思い出はないので」
女性「えぇーっ!? 嘘でしょ、スクールアイドルなのに!?」
女性「あ、そうなんだ! 実は私も元スクールアイドルなんだよ」
聖良「高校でも歌って、大人になっても歌っている訳ですか。よほど歌がお好きなんですね」
女性「うん。そりゃあ、スクールアイドルやってて歌が嫌いな人はいないよ」
女性「あなただって、そうなんじゃないの?」
聖良「……どうでしょうか。あまり楽しく歌った思い出はないので」
女性「えぇーっ!? 嘘でしょ、スクールアイドルなのに!?」
55: 2017/06/07(水) 19:16:17.00 ID:PU22H5iy.net
聖良「嘘なんてついても、ね。そもそも、スクールアイドルの活動自体、楽しいと思ったことはないので」
女性「……嫌いなのに、スクールアイドルやってたの?」
聖良「いいえ。好きでしたよ。好きで好きで仕方がなくて、だからどんな苦しい練習にも耐えられた」
聖良「ただ好きなだけでいられれば、どれだけ楽だったことか。私は狂おしいほど愛してしまったんだと思います」
聖良「スクールアイドルを。A-RISEを。そしてμ'sを」
聖良「あの、まぶしく輝く太陽を」
女性「……」
女性「歌っている時にね、あなたを見て思ったんだ」
女性「こんなに目を輝かせて歌を聴いてくれるこの人は、きっと私と同じで、歌が大好きな人なんだ、って」
女性「……嫌いなのに、スクールアイドルやってたの?」
聖良「いいえ。好きでしたよ。好きで好きで仕方がなくて、だからどんな苦しい練習にも耐えられた」
聖良「ただ好きなだけでいられれば、どれだけ楽だったことか。私は狂おしいほど愛してしまったんだと思います」
聖良「スクールアイドルを。A-RISEを。そしてμ'sを」
聖良「あの、まぶしく輝く太陽を」
女性「……」
女性「歌っている時にね、あなたを見て思ったんだ」
女性「こんなに目を輝かせて歌を聴いてくれるこの人は、きっと私と同じで、歌が大好きな人なんだ、って」
56: 2017/06/07(水) 19:19:46.11 ID:PU22H5iy.net
聖良「……私が? 目、を?」
女性「でも、今話をしているあなたはまるで別人みたい。なんだろうね。夢から醒めた、って感じなのかな」
聖良「自分では、普通だと思ってるんですが」
女性「――うん。気が変わった。今日は終わりのつもりだったけど、もう1曲やっていくよ」
女性「ほい。お姉さん、これ持って」
聖良「……え。マ、マイク?」
女性「さ。なに歌う? やっぱりスクールアイドルの曲がいいかな」
聖良「ま、まさか、私に歌えと!?」
女性「でも、今話をしているあなたはまるで別人みたい。なんだろうね。夢から醒めた、って感じなのかな」
聖良「自分では、普通だと思ってるんですが」
女性「――うん。気が変わった。今日は終わりのつもりだったけど、もう1曲やっていくよ」
女性「ほい。お姉さん、これ持って」
聖良「……え。マ、マイク?」
女性「さ。なに歌う? やっぱりスクールアイドルの曲がいいかな」
聖良「ま、まさか、私に歌えと!?」
57: 2017/06/07(水) 19:21:28.11 ID:PU22H5iy.net
女性「大丈夫大丈夫。元スクールアイドルでしょ、人前で歌うなんて慣れっこじゃん」
聖良「そうではなくて! どうして私が……」
女性「いいからいいから。何か曲、リクエストして?」
聖良「ああ、もう、強引な人! 何なんですか、いったい!?」
女性「……大切にしたいじゃん。そんなにも真剣にスクールアイドルだった人くらい。先輩としてさ」
聖良「……」
女性「さ。何を歌おうか」
聖良「……はあ。1曲だけです。あなたくらいの年代なら、μ'sの代表曲はさすがに知っていますよね。なら――」
聖良「僕らは今のなかで」
女性「……得意だよ。その曲」ニコッ
聖良「そうではなくて! どうして私が……」
女性「いいからいいから。何か曲、リクエストして?」
聖良「ああ、もう、強引な人! 何なんですか、いったい!?」
女性「……大切にしたいじゃん。そんなにも真剣にスクールアイドルだった人くらい。先輩としてさ」
聖良「……」
女性「さ。何を歌おうか」
聖良「……はあ。1曲だけです。あなたくらいの年代なら、μ'sの代表曲はさすがに知っていますよね。なら――」
聖良「僕らは今のなかで」
女性「……得意だよ。その曲」ニコッ
58: 2017/06/07(水) 19:25:35.86 ID:PU22H5iy.net
女性「じゃあ、いくよ……」スゥ
女性「――真っ直ぐな想いが みんなを結ぶ♪」
聖良「……」
女性「♪」
聖良(やっぱり楽しそうに歌うな……。そんなに歌が好き? 歌ってそんなにいいもの?)
聖良(……よく、分からない)
女性「ここにあるよ 始まったばかり♪」
女性「」パチッ
聖良(! アイコンタクト……。そろそろ歌えってことね)
女性「――真っ直ぐな想いが みんなを結ぶ♪」
聖良「……」
女性「♪」
聖良(やっぱり楽しそうに歌うな……。そんなに歌が好き? 歌ってそんなにいいもの?)
聖良(……よく、分からない)
女性「ここにあるよ 始まったばかり♪」
女性「」パチッ
聖良(! アイコンタクト……。そろそろ歌えってことね)
59: 2017/06/07(水) 19:28:51.17 ID:PU22H5iy.net
女性「わかってるー♪」
聖良(……歌うの。何年ぶりだろう。そういえばカラオケとか断ってきたし)
聖良「す、ぅ」
聖良「――楽しいだけじゃない 試されるだろう♪」
女性「わかってるー♪」
聖良「だってその苦しさも ミライ♪」
聖良(ん……っ!? 声が通らない。私、下手になってるなぁ……!)
聖良「集まったら強い 自分になっていくよ♪」
聖良(μ'sの曲なら覚えてる。ここのステップは、こう!)
女性「きっとね♪」 聖良「変わり続けて♪」
「「We'll be star♪」」
聖良(ああ、もうっ。まだ始まったばかりなのに、何でもう息が上がってるんだ、私!?)
聖良(……歌うの。何年ぶりだろう。そういえばカラオケとか断ってきたし)
聖良「す、ぅ」
聖良「――楽しいだけじゃない 試されるだろう♪」
女性「わかってるー♪」
聖良「だってその苦しさも ミライ♪」
聖良(ん……っ!? 声が通らない。私、下手になってるなぁ……!)
聖良「集まったら強い 自分になっていくよ♪」
聖良(μ'sの曲なら覚えてる。ここのステップは、こう!)
女性「きっとね♪」 聖良「変わり続けて♪」
「「We'll be star♪」」
聖良(ああ、もうっ。まだ始まったばかりなのに、何でもう息が上がってるんだ、私!?)
60: 2017/06/07(水) 19:40:33.57 ID:PU22H5iy.net
聖良「それぞれが好きなことで 頑張れるなら♪」
女性「新しい♪」 聖良「場所が♪」
「「ゴールだね♪」」
聖良「」チラッ
女性「♪」
聖良(ああ――本当に、楽しそうに歌う人。まるでいつか見た輝き……憧れた太陽のような)
聖良(ずっとずっと、私はそんな太陽のようになりたいって、思ってた)
聖良(A-RISEやμ'sのように――……)
聖良(……)
聖良(……あれ? 私は彼女達の、何に憧れたんだっけ)
女性「新しい♪」 聖良「場所が♪」
「「ゴールだね♪」」
聖良「」チラッ
女性「♪」
聖良(ああ――本当に、楽しそうに歌う人。まるでいつか見た輝き……憧れた太陽のような)
聖良(ずっとずっと、私はそんな太陽のようになりたいって、思ってた)
聖良(A-RISEやμ'sのように――……)
聖良(……)
聖良(……あれ? 私は彼女達の、何に憧れたんだっけ)
61: 2017/06/07(水) 19:54:44.90 ID:PU22H5iy.net
聖良(歌もダンスも、完成されたプロの歌手やダンサーにはもちろん劣る。取り立てて、熱心に入れ込む要素なんてないはずだ)
聖良(それなのに私は。私は、彼女達の、何を――)
聖良「それぞれの好きなことを 信じていれば♪」
聖良(好きな……こと?)
聖良(私の好きなことって。……何だっけ)
聖良(私は――、)
聖良『悔しい、悔しいよ! 勝てなかったなんて……、これでもう終わりだなんて……!』
聖良『うぁああああああっ……!』
聖良(それなのに私は。私は、彼女達の、何を――)
聖良「それぞれの好きなことを 信じていれば♪」
聖良(好きな……こと?)
聖良(私の好きなことって。……何だっけ)
聖良(私は――、)
聖良『悔しい、悔しいよ! 勝てなかったなんて……、これでもう終わりだなんて……!』
聖良『うぁああああああっ……!』
62: 2017/06/07(水) 19:55:53.51 ID:PU22H5iy.net
女性「ときめきを♪」 聖良「抱いて♪」
『第12回ラブライブ、優勝は――、』
「「進めるだろう♪」」
聖良『ああ……震えが止まらない。心が裂けてしまいそう』
聖良『勝ちたくて勝ちたくて。どうにかなってしまいそうなんです』
聖良『だって私達、そのためだけに練習してきたじゃないですか』
聖良『その努力が報われないかもしれないなんて、そんなこと、あまりにも惨めで』
聖良『……怖い』
『第12回ラブライブ、優勝は――、』
「「進めるだろう♪」」
聖良『ああ……震えが止まらない。心が裂けてしまいそう』
聖良『勝ちたくて勝ちたくて。どうにかなってしまいそうなんです』
聖良『だって私達、そのためだけに練習してきたじゃないですか』
聖良『その努力が報われないかもしれないなんて、そんなこと、あまりにも惨めで』
聖良『……怖い』
63: 2017/06/07(水) 19:56:48.05 ID:PU22H5iy.net
聖良「怖がる癖は捨てちゃえ♪」
女性「飛び切りの 笑顔で♪」
聖良『う、ぶっ。お、ぅぇ……、げ、かはっ……』
聖良『はっ、はぁ、は……っ! すみません、見苦しい所を。もう一回、曲を流して……!』
モブ『いや、聖良先輩……さすがに休んだ方がいいですよ、限界ですって……!』
聖良『限界……? そんなもの知らない。この程度で壊れるくらいなら、いっそ壊れた方がまだ!」
聖良『さあ、曲を流して。流しなさい!』
モブ『……おかしいですよ、先輩。どうしてそこまでするんですか……』
女性「飛び切りの 笑顔で♪」
聖良『う、ぶっ。お、ぅぇ……、げ、かはっ……』
聖良『はっ、はぁ、は……っ! すみません、見苦しい所を。もう一回、曲を流して……!』
モブ『いや、聖良先輩……さすがに休んだ方がいいですよ、限界ですって……!』
聖良『限界……? そんなもの知らない。この程度で壊れるくらいなら、いっそ壊れた方がまだ!」
聖良『さあ、曲を流して。流しなさい!』
モブ『……おかしいですよ、先輩。どうしてそこまでするんですか……』
64: 2017/06/07(水) 19:57:49.63 ID:PU22H5iy.net
聖良「跳んで 跳んで 高く♪」
女性「僕らは今のなかで♪」
『第11回ラブライブ、優勝は――、』
聖良『……理亞。次が私のラストチャンス』
聖良『勝つよ。何を犠牲にしてもいい。どんな責め苦があってもいい』
聖良『次こそ。絶対に……!』
理亞『うん。勝とう、姉様。次こそ』
千歌『勝ちたいですか……?』
理亞『姉様。この子、バカ?』
聖良『勝ちたくなければ、なぜラブライブに出るのです』
理亞『9位、だったね。姉様……』
聖良『思うところはあります。けれど、結果は受け入れるしかない』
聖良『そしてこの結果に対して私達に出来ることは、努力することだけ。ただその道を、愚直に進むことだけです』
聖良『理亞。付いて来てくれますか……?』
女性「僕らは今のなかで♪」
『第11回ラブライブ、優勝は――、』
聖良『……理亞。次が私のラストチャンス』
聖良『勝つよ。何を犠牲にしてもいい。どんな責め苦があってもいい』
聖良『次こそ。絶対に……!』
理亞『うん。勝とう、姉様。次こそ』
千歌『勝ちたいですか……?』
理亞『姉様。この子、バカ?』
聖良『勝ちたくなければ、なぜラブライブに出るのです』
理亞『9位、だったね。姉様……』
聖良『思うところはあります。けれど、結果は受け入れるしかない』
聖良『そしてこの結果に対して私達に出来ることは、努力することだけ。ただその道を、愚直に進むことだけです』
聖良『理亞。付いて来てくれますか……?』
66: 2017/06/07(水) 20:01:55.36 ID:PU22H5iy.net
聖良「夢が大きくなるほど♪」
女性「試されるだろう♪」
聖良『入学おめでとう、理亞。待っていましたよ』
理亞『うん。ようやく、二人でスクールアイドルが出来るね』
聖良『ええ。憧れのA-RISEやμ'sのようになれるよう、精一杯、頑張りましょう?』
女性「試されるだろう♪」
聖良『入学おめでとう、理亞。待っていましたよ』
理亞『うん。ようやく、二人でスクールアイドルが出来るね』
聖良『ええ。憧れのA-RISEやμ'sのようになれるよう、精一杯、頑張りましょう?』
67: 2017/06/07(水) 20:03:05.84 ID:PU22H5iy.net
女性「胸の熱さで乗り切れ♪」
聖良「僕の温度は♪」 女性「熱いから♪」 聖良「熱すぎて♪」
「「止まらない♪」」
聖良『理亞、大ニュースです! A-RISEがプロデビューして初の札幌ドームライブ決定ですよ!』
理亞『ウソ!? 行かなきゃ! チケット取れる!?』
聖良『取れるとか取れないじゃなくて、取るしかねえべや!?』
聖良『ああ、今からなまら楽しみ。数日眠れそうにないよ!』
理亞『姉様。なに見てるの?』
聖良『ああ、理亞。スクールアイドルのライブ映像ですよ』
理亞『スクールアイドル?』
聖良『ほら、見て! このA-RISEって人達、格好いい!』
理亞『わあ……。ホントだ、格好いい……』
聖良『私も高校に入学したら、こんな人達みたいになりたい! 歌で、踊りで、思いのままに輝いて!』
聖良『こんな風に、格好よく歌えたら……!』
聖良「僕の温度は♪」 女性「熱いから♪」 聖良「熱すぎて♪」
「「止まらない♪」」
聖良『理亞、大ニュースです! A-RISEがプロデビューして初の札幌ドームライブ決定ですよ!』
理亞『ウソ!? 行かなきゃ! チケット取れる!?』
聖良『取れるとか取れないじゃなくて、取るしかねえべや!?』
聖良『ああ、今からなまら楽しみ。数日眠れそうにないよ!』
理亞『姉様。なに見てるの?』
聖良『ああ、理亞。スクールアイドルのライブ映像ですよ』
理亞『スクールアイドル?』
聖良『ほら、見て! このA-RISEって人達、格好いい!』
理亞『わあ……。ホントだ、格好いい……』
聖良『私も高校に入学したら、こんな人達みたいになりたい! 歌で、踊りで、思いのままに輝いて!』
聖良『こんな風に、格好よく歌えたら……!』
68: 2017/06/07(水) 20:04:39.38 ID:PU22H5iy.net
女性「無謀な賭け?」
聖良「勝ちに――行こう!」
理亞『姉さまー』
聖良『どうしたの、理亞?』
理亞『姉さまの歌が聞きたい。歌ってー』
聖良『ふふ。理亞はそんなに私の歌が好き?』
理亞『うん。だって歌ってる時の姉さま、すっごく――、』
聖良「――あ、」
女性「……?」
理亞『――すっごく、楽しそうだから』
聖良『くす。……うん。私、歌うの好きだよ。それで理亞が喜んでくれるなら、私も嬉しい』
聖良『一緒に歌いましょうか。理亞』
理亞『うんっ!』
聖良「勝ちに――行こう!」
理亞『姉さまー』
聖良『どうしたの、理亞?』
理亞『姉さまの歌が聞きたい。歌ってー』
聖良『ふふ。理亞はそんなに私の歌が好き?』
理亞『うん。だって歌ってる時の姉さま、すっごく――、』
聖良「――あ、」
女性「……?」
理亞『――すっごく、楽しそうだから』
聖良『くす。……うん。私、歌うの好きだよ。それで理亞が喜んでくれるなら、私も嬉しい』
聖良『一緒に歌いましょうか。理亞』
理亞『うんっ!』
69: 2017/06/07(水) 20:12:16.21 ID:PU22H5iy.net
聖良(――ああ。そうか。そうだったんだ。何でこんなこと、忘れてたんだ、私は)
聖良(私が憧れたものは。目指したものは。最初にあったものは、ただ……)
聖良(私はバカだ。そんなことに、今気づいたのか。青春もすべてふいにして、理亞まで巻き込んで、ようやくか)
聖良(どうしようもない。救いようがないほど、愚かな――)
女性「――大丈夫だよ」
聖良「あ、……サングラス」
聖良(サングラスを外して、真っ直ぐこちらに微笑みを向けている。スカイブルーの、とても綺麗な澄んだ瞳は)
聖良(いつの日にか映像で見た、あの憧れの――)
聖良(私が憧れたものは。目指したものは。最初にあったものは、ただ……)
聖良(私はバカだ。そんなことに、今気づいたのか。青春もすべてふいにして、理亞まで巻き込んで、ようやくか)
聖良(どうしようもない。救いようがないほど、愚かな――)
女性「――大丈夫だよ」
聖良「あ、……サングラス」
聖良(サングラスを外して、真っ直ぐこちらに微笑みを向けている。スカイブルーの、とても綺麗な澄んだ瞳は)
聖良(いつの日にか映像で見た、あの憧れの――)
70: 2017/06/07(水) 20:13:50.68 ID:PU22H5iy.net
女性「歌おう。歌うことは怖いことじゃない。音楽は辛いものじゃない」
女性「あなたの想いを、夢を。きっともう一度教えてくれる。未来をへの道を、照らしてくれる」
女性「さあ、歌おう。あなたの歌は、まだ始まったばかりだよ」
女性「あなたの歌は、とっても楽しいものなんだから」
聖良「……ふ、あはは」
聖良(本当にバカだ。あれだけ焦がれた太陽を前にして気付かないほど、私の心は曇っていたか)
聖良(ダメだな、私。本当にダメダメで。――だから、もう)
聖良(この人に、この太陽に、これ以上みっともないところは見せられない。スクールアイドルとしての意地くらい、私にもある……!)
女性「あなたの想いを、夢を。きっともう一度教えてくれる。未来をへの道を、照らしてくれる」
女性「さあ、歌おう。あなたの歌は、まだ始まったばかりだよ」
女性「あなたの歌は、とっても楽しいものなんだから」
聖良「……ふ、あはは」
聖良(本当にバカだ。あれだけ焦がれた太陽を前にして気付かないほど、私の心は曇っていたか)
聖良(ダメだな、私。本当にダメダメで。――だから、もう)
聖良(この人に、この太陽に、これ以上みっともないところは見せられない。スクールアイドルとしての意地くらい、私にもある……!)
71: 2017/06/07(水) 20:15:00.85 ID:PU22H5iy.net
聖良「す、ぅ……」
聖良「――それぞれが好きなことで 頑張れるなら♪」
女性「」ニコ
女性「――新しい♪」 聖良「場所が♪」
女性「ゴールだね♪」
聖良(もっと。もっと強く、もっと大きく! もっと高らかにっ!)
聖良(まだ歌える! まだ踊れる! まだまだ私は、私の積み重ねた努力は、こんなものじゃない……!)
聖良「それぞれの好きなことを 信じていれば♪」
女性「ときめきを♪」 聖良「抱いて♪」
「「進めるだろう♪」」
聖良(全部出すんだ、スクールアイドルだった私のすべてを! 想いも、魂も全部!)
聖良(だって――)
聖良「――それぞれが好きなことで 頑張れるなら♪」
女性「」ニコ
女性「――新しい♪」 聖良「場所が♪」
女性「ゴールだね♪」
聖良(もっと。もっと強く、もっと大きく! もっと高らかにっ!)
聖良(まだ歌える! まだ踊れる! まだまだ私は、私の積み重ねた努力は、こんなものじゃない……!)
聖良「それぞれの好きなことを 信じていれば♪」
女性「ときめきを♪」 聖良「抱いて♪」
「「進めるだろう♪」」
聖良(全部出すんだ、スクールアイドルだった私のすべてを! 想いも、魂も全部!)
聖良(だって――)
72: 2017/06/07(水) 20:16:01.77 ID:PU22H5iy.net
女性「怖がる癖は捨てちゃえ♪」 聖良「飛び切りの笑顔で♪」
女性「跳んで跳んで高く♪」 聖良「僕らと今を♪」
聖良(さあ、出し切ろう。私のぜんぶを、今ここで!)
聖良(だって、だって……!)
聖良「弱気な僕にさよなら♪」 女性「消さないで笑顔で♪」
聖良「跳んで跳んで高く♪」 女性「僕らは今のなかで♪」
聖良(だってこんなにも――楽しいんだ)
聖良(全部出し切らないなんて、そんなこと、できないよ)
「「輝きを待ってた――!」」
女性「跳んで跳んで高く♪」 聖良「僕らと今を♪」
聖良(さあ、出し切ろう。私のぜんぶを、今ここで!)
聖良(だって、だって……!)
聖良「弱気な僕にさよなら♪」 女性「消さないで笑顔で♪」
聖良「跳んで跳んで高く♪」 女性「僕らは今のなかで♪」
聖良(だってこんなにも――楽しいんだ)
聖良(全部出し切らないなんて、そんなこと、できないよ)
「「輝きを待ってた――!」」
73: 2017/06/07(水) 20:17:09.78 ID:PU22H5iy.net
聖良「――はっ、はっ、はっ、はぁっ……!」
女性「あっははは。あなた、すっごい上手いね! まさかステップまでこなして来るとは思わなかったよ」
女性「ラブライブ、相当いいところまで行ったんじゃない?」
聖良「……第11回と12回で、本選出場です。どちらも優勝はなりませんでしたが」
女性「ほへぇ。ここ数年ってレベル高いんでしょ? 大したもんだ」
聖良「優勝者には叶いませんよ……」
女性「そう? 私の歌なんて、圧倒的に上手い訳でもないんでしょ?」
聖良「うっ、それは……」
女性「えへへへ、冗談」
女性「……ねえ。楽しかった?」
女性「あっははは。あなた、すっごい上手いね! まさかステップまでこなして来るとは思わなかったよ」
女性「ラブライブ、相当いいところまで行ったんじゃない?」
聖良「……第11回と12回で、本選出場です。どちらも優勝はなりませんでしたが」
女性「ほへぇ。ここ数年ってレベル高いんでしょ? 大したもんだ」
聖良「優勝者には叶いませんよ……」
女性「そう? 私の歌なんて、圧倒的に上手い訳でもないんでしょ?」
聖良「うっ、それは……」
女性「えへへへ、冗談」
女性「……ねえ。楽しかった?」
74: 2017/06/07(水) 20:19:29.30 ID:PU22H5iy.net
聖良「……はい。私、歌は好きですから」
女性「そっか。良きかな良きかな」
女性「私も楽しかったよ。やっぱりさ、歌はいいもんだよ。学生の頃も、大人になっても、きっとこれからも」
女性「あなたにとっても、きっとそうだと思うよ。あなたがいくつになっても、音楽はあなたの道を照らしてくれる」
女性「だって。あなたが心から楽しいと思えることなんだからさ」
聖良「そうであってくれると、有り難いですね」
女性「大丈夫。私が言ったことって本当になるから。雨だって、やめって言ったらやむ! やるったらやる!」
聖良「ふふ。あのμ's伝説、本当だったんですか?」
女性「あはは。まあほとんどが大げさになっちゃってるけどね」
女性「そっか。良きかな良きかな」
女性「私も楽しかったよ。やっぱりさ、歌はいいもんだよ。学生の頃も、大人になっても、きっとこれからも」
女性「あなたにとっても、きっとそうだと思うよ。あなたがいくつになっても、音楽はあなたの道を照らしてくれる」
女性「だって。あなたが心から楽しいと思えることなんだからさ」
聖良「そうであってくれると、有り難いですね」
女性「大丈夫。私が言ったことって本当になるから。雨だって、やめって言ったらやむ! やるったらやる!」
聖良「ふふ。あのμ's伝説、本当だったんですか?」
女性「あはは。まあほとんどが大げさになっちゃってるけどね」
75: 2017/06/07(水) 20:21:19.70 ID:PU22H5iy.net
女性「……じゃあね。いいセッションだった。機会があれば、また歌おう」
女性「ファイトだよ」スタスタ
聖良「ありがとう、ございました……!」ペコッ
聖良「……」
聖良「……ふぅ。まさか、あの伝説に会うなんて、ね。さらにマイク強引に渡されて一緒に歌うなんて、分からないもの――ん?」
聖良「マイク……まだ、手元にある……」
聖良「ああ――っ!? ちょ、待ってください! ちょっと……ちょっとーぉ!?」
女性「ファイトだよ」スタスタ
聖良「ありがとう、ございました……!」ペコッ
聖良「……」
聖良「……ふぅ。まさか、あの伝説に会うなんて、ね。さらにマイク強引に渡されて一緒に歌うなんて、分からないもの――ん?」
聖良「マイク……まだ、手元にある……」
聖良「ああ――っ!? ちょ、待ってください! ちょっと……ちょっとーぉ!?」
77: 2017/06/07(水) 20:23:00.39 ID:PU22H5iy.net
聖良(結局。それから彼女に追いつくことは出来なかった)
聖良(強引に渡されたマイクは、私が借りたまま長期で預かることになる)
聖良(もっとも。実家の和菓子屋はファンの間では有名だし、返すつもりならそちらへ持って行けばいい)
聖良(でも――もう少しだけ預からせてください)
聖良(私の夢を、今の私なりに輝かせられた時。胸を張って、あなたにこのマイクを返したいと思います)
聖良(憧れた姿に追いついて。追い越して。あなたに救われたんです――って。そう、お礼を言わせてください)
聖良(強引に渡されたマイクは、私が借りたまま長期で預かることになる)
聖良(もっとも。実家の和菓子屋はファンの間では有名だし、返すつもりならそちらへ持って行けばいい)
聖良(でも――もう少しだけ預からせてください)
聖良(私の夢を、今の私なりに輝かせられた時。胸を張って、あなたにこのマイクを返したいと思います)
聖良(憧れた姿に追いついて。追い越して。あなたに救われたんです――って。そう、お礼を言わせてください)
78: 2017/06/07(水) 20:24:26.21 ID:PU22H5iy.net
聖良「ただいま戻りましたー」
ダイヤ「……随分と遅かったですわね。まさか飲み歩いていたのではないでしょうね」
聖良「まさか。歩き疲れてヘトヘトですよ。歌も歌うしステップは踏むしで、衰えた身体ではもう限界です」
ダイヤ「歌? ステップ?」
聖良「ダイヤ」
ダイヤ「は、はあ。何でしょうか」
聖良「あなたの質問、間違って答えていました。改めて、返答をさせてください」
聖良「スクールアイドルは楽しかったわ。ただその想いは降り積もる雪に圧されて、いつしか凍りついてしまっていた」
聖良「私は歌が好きよ。――だからスクールアイドルだったんです。本当は」ニコ
おしまい
ダイヤ「……随分と遅かったですわね。まさか飲み歩いていたのではないでしょうね」
聖良「まさか。歩き疲れてヘトヘトですよ。歌も歌うしステップは踏むしで、衰えた身体ではもう限界です」
ダイヤ「歌? ステップ?」
聖良「ダイヤ」
ダイヤ「は、はあ。何でしょうか」
聖良「あなたの質問、間違って答えていました。改めて、返答をさせてください」
聖良「スクールアイドルは楽しかったわ。ただその想いは降り積もる雪に圧されて、いつしか凍りついてしまっていた」
聖良「私は歌が好きよ。――だからスクールアイドルだったんです。本当は」ニコ
おしまい
79: 2017/06/07(水) 20:25:49.39 ID:PU22H5iy.net
これにておしまいです
読んで頂いた方、レス頂いた方、ありがとうございました
読んで頂いた方、レス頂いた方、ありがとうございました
80: 2017/06/07(水) 20:31:51.96 ID:2Zbx3EKs.net
乙
聖雪のこういうSS待ってた
聖雪のこういうSS待ってた
81: 2017/06/07(水) 20:41:50.26 ID:OKsfDj2Z.net
やばい。神スレだったか。
引用元: 聖良「降りやんだ雪。氷原に射す陽の光」
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