332: 2011/05/29(日) 11:52:00.92 ID:4hzUanmJ0

タッタッタ

少女「ど、どうしていつまで歩いても森を抜けられないの」

少女「おかしいなぁ、いつもの道だよね?」

少女「さっきも通った気がする」

少女「木に…印つけてみよう」 ガリガリ

少女「これでよし…かな」

狐娘「しめしめ、化かされてる化かされてる」



少女「はぁ、どこまで歩いても、木、木、…もういや」

少女「ん……これさっきつけた印だ」

少女「…はぁ疲れちゃった、ちょっと休もう」

狐娘「座り込んでしまった…風邪引くかな?大丈夫かな?」

少女「なんだか‥眠い」 スゥ

狐娘「寝ちゃった…どうしよう、どうしよう…」
ゆるキャン△ 15巻 (まんがタイムKRコミックス)
335: 2011/05/29(日) 12:10:32.31 ID:4hzUanmJ0

狐娘「小さい子だけど、結構重いなぁ…」

少女「むにゃ…」



狐母「おかえり」

狐娘「ただいま、お母さん」

少女「ぐぅ…」

狐母「おや、その人間はなんだい?鍋にでもするのかい?」

狐娘「食べないよ、私が拾ったんだよ」

狐母「はぁ、人間なんて飼えないからおよしよ」

狐娘「そんなことない」

337: 2011/05/29(日) 12:15:59.30 ID:4hzUanmJ0

少女「ん…ここは…」

少女「確か私、森の中で眠っちゃって…」

カラカラッ

狐娘「起きたか」

少女「あなたが助けてくれたの?」

狐娘「…ここまで連れてきたのは私だよ」

少女「そっか、ありがとう」 にっこり

狐娘「っ…これご飯だから」

少女「…いいの?」

狐娘「お揚げと米しかないけど、お腹すいてないかい?」

少女「…」 ぐぅ

少女「空いてる」

339: 2011/05/29(日) 12:20:04.01 ID:4hzUanmJ0

少女「はふはふっ」

狐娘「…」

少女「もぐ…」

狐娘「ん、食べないのか?」

少女「じぃっと見られていると、食べにくいわ」

狐娘「失礼した、後ろを向いているから」 クルッ

少女「ごめんね」

341: 2011/05/29(日) 12:39:04.54 ID:4hzUanmJ0

狐娘「…」 ぐぅ

少女「…お腹空いてるの?」

狐娘「大丈夫だ」

少女「一緒に食べよう?」

狐娘「…うん」


少女「お揚げが好きなのね」

狐娘「好物なんだ」

少女「はむはむ」

狐「甘くてジューシーで」

少女「うんうん、分かるよ」

342: 2011/05/29(日) 12:42:39.22 ID:4hzUanmJ0

少女「ごちそうさま、美味しかったよ」

狐娘「うん、美味しかった」

少女「…お母さん、心配してるだろうな」

狐娘「夜は、危ないから今日は泊まっていったほうがいいよ」

少女「…うん」

狐娘「布団は…1つしかないけど」

少女「うん、平気」


狐娘「お前は暖かいな」 ぎゅっ

少女「あなたもとっても暖かいよ」

狐娘「明日になったら、森の出口まで案内するよ」

少女「ごめんね、ありがとう」

狐娘「…」

346: 2011/05/29(日) 13:03:17.77 ID:4hzUanmJ0

少女「送ってくれて、ありがとう」

狐娘「…うん」

少女「…また遊びにくるからね?」

狐娘「あっ、ああ!待ってる!」

少女「ふふっ、またね」


狐娘「お母さん、あの子またくるって」

狐母「そうかい、でも、あんまり肩入れするのはおよしよ」

狐娘「どうして?」

狐娘「私達物の怪と人間じゃ生きる時が違いすぎるからね」

狐娘「よく分からないよ」

347: 2011/05/29(日) 13:08:07.72 ID:4hzUanmJ0
最後から2行目は狐母で頼みます


少女「てんてんてんまり てん手まり てんてん手まりの~♪」

狐娘「…」 ジィ

少女「~とんでった♪っと、はい次狐娘ちゃんの番だよ」

狐娘「うん…てん、てん…てんまり」

少女「そうそう、上手上手!」

狐娘「そ、そうか!」

ポンポン



狐娘「少女は色々遊びを知ってるんだな」

少女「そうかな、村じゃみんなやってるよ?」

狐娘「私は、ずっと森にいるから」

少女「そっか…ごめんね」

狐娘「…てんてんてんまり」

349: 2011/05/29(日) 13:14:03.84 ID:4hzUanmJ0

――3年後


少女「遊びにきたよ、狐娘ちゃん」

狐娘「よくきてくれたね」

少女「…狐娘ちゃんは変わらないね?」

狐娘「…いつか言おうと思ってたんだ、実は」

少女「言わなくてもいいよ」

狐娘「えっ?」

少女「狐の妖怪…だよね?」

狐娘「知っていたのか」

350: 2011/05/29(日) 13:19:37.37 ID:4hzUanmJ0

少女「村じゃ皆言ってるよ、東の森には化け狐がいる、って」

狐娘「…」

少女「人間を化かして、食べてしまうんだって」

狐娘「…そうか」

少女「狐娘ちゃんは、悪い妖怪?」

狐娘「私は!その…悪い…妖怪かもしれない」

少女「ほんとに?」

狐娘「始めて会ったとき、お前が森で迷ったのは私が化かしたからなんだ」

少女「…」

狐娘「毎日森を行くお前を見てるうちに、どうしても化かしたくなって」

少女「他には?」

352: 2011/05/29(日) 13:27:51.70 ID:4hzUanmJ0

狐娘「私が化かしたのは、お前が最初で、最後だ」

少女「ふふっ、そっかぁ」

狐娘「…怒ってないのか?」

少女「それじゃ、狐娘ちゃんは悪い妖怪じゃないね?」

狐娘「でも、お前をずっと騙して」

少女「あのね、ずーっと言いたかった事あってね」

狐娘「うん?」

少女「しっぽ、隠れてないよ?」

狐娘「えっ…あ、ほんとだ」

少女「そうだなー、黙ってた罰として、そのしっぽをもふもふさせてもらうよ」

狐娘「そんなことでいいのか?」

少女「この3年間ずーっとしたかったことだからね…もふもふ」

狐娘「んっ…くすぐったい」

少女「モコモコで、さらさらで…いいしっぽ」 もふもふ

354: 2011/05/29(日) 13:38:18.26 ID:4hzUanmJ0

狐娘「少女はすぐ大きくなるな」

少女「人間だからね、もう狐娘ちゃんと同じくらいかな?」 もふもふ

狐娘「始めて会ったときは、腕の中にすっぽり収まっていた」

少女「なつかしいね。」 もふもふ

狐娘「…お前も妖怪になれば、歳を取ることもなくなる」

少女「そんな事ができるの?」 ぎゅっ

狐娘「んっ…ちょっと痛い…山の天狗なら、何か知ってると思う」

357: 2011/05/29(日) 13:57:49.90 ID:4hzUanmJ0

少女「そっか、それも楽しそうだね」

狐娘「うん、皆でずっと一緒に…」

少女「でもごめんね。里にはお母さんがもいるし」

狐娘「…」

少女「私は今の体が気に入ってるんだ」

狐娘「それなら、しょうがない…な」

少女「大丈夫、いつまでだって遊びにくるから。ね?」

狐娘「…うん」

少女「暗い顔しないで?」 もふもふ

狐娘「んっ…分かった」

359: 2011/05/29(日) 14:18:30.03 ID:4hzUanmJ0

狐娘「少女は妖怪になりたくないんだって」

狐母「そうだろうね」

狐娘「お母さんは分かってたの?」

狐母「どうしてもね、結局は違う生き物だから」

狐娘「そっか…しょうがないのかな」

狐母「…あんたは妖狐と人のハーフだから情が深いのかもしれないね」

狐娘「えっ?」

狐母「人の心はね、本当に見えないものだよ」

361: 2011/05/29(日) 14:28:25.46 ID:4hzUanmJ0

―――数ヵ月後


少女「…お、お母さんが急に体調おかしくなって…グスッ」

狐娘「お医者さんには見せたのか?」

少女「うん…でも、よく分からないって…」

狐娘「…」

少女「お薬も利いた風じゃないし…お母さん氏んじゃったらどうしよう…うぅ…」

狐娘「そしたら…私と…」

少女「うん?」

狐娘「いや、私がなんとかするよ。少女は家に帰ってお母さんに付いててあげて」

少女「うん、分かった…ありがとう!」



狐娘「お母さん、天狗の住処はどこにあるのかな」

狐母「はぁ…天狗に頼みごとなんてしたら何とられるか分かったもんじゃないよ」

狐娘「いい、あの子は私のたった一人の友達だから」

362: 2011/05/29(日) 14:36:08.29 ID:4hzUanmJ0

狐娘「ここが天狗の山か…」

狐娘「…」

???「山に何の用だ」

狐娘「ん、あなたが天狗殿か?」

天狗「ああ」

狐娘「人の体を癒す霊薬が欲しい、お持ちか?」

天狗「ある」

狐娘「それを譲ってはいただけないか」

天狗「あれは貴重なものだからな、そうだな……お前は、とても美しいな」

狐娘「何?」

370: 2011/05/29(日) 14:48:36.55 ID:4hzUanmJ0

トントン

少女「はい」

狐娘「…」

少女「狐娘ちゃん」

狐娘「これを、お母さんに飲ませればたちどころに病が失せるはずだ」

少女「ほ、ほんとに?」

狐娘「ああ、万病を癒す霊薬だ」

少女「ありがとう…私、どうやってお礼したらいいか…」

狐娘「少女…お前とはもう会えない」

少女「えっ?」

狐娘「今日まで…仲良くしてくれてありがとう、さようなら」

少女「待って!狐娘ちゃん!」

373: 2011/05/29(日) 15:00:41.27 ID:4hzUanmJ0

狐母「あの子は来るなって言ってなかったかい?」

少女「…」

狐母「私は、あんまりあんたの顔見たくないんだけどね」

少女「…お母さんの病気。治りました」

狐母「そうかい」

少女「ありがとうございます」

狐母「…」

少女「狐娘ちゃんはどこですか?」

狐母「…」

少女「どうして、急にもう会えないだなんて」

狐母「…」

少女「お願いします!狐娘ちゃんに…会わせて!」

375: 2011/05/29(日) 15:04:58.59 ID:4hzUanmJ0

ザアァァァァァ


狐母「降ってきたね、濡れてしまうよ、軒にお入り」

少女「…はい」

狐母「今日はとても晴れてるのにね」

少女「…」

狐母「こんな天気をなんていうか、知ってるかい?」

少女「まさか…!」

狐母「馬鹿な子だよ、本当に」

少女「狐娘ちゃんはどこにいるの!?」

狐母「…山の天狗のところに行ったよ」

少女「道、教えてください!」

379: 2011/05/29(日) 15:17:26.93 ID:4hzUanmJ0

ザァァァァァァ


少女「はぁっ…はぁっ…ここが天狗の山」


シャン シャン シャン

狐面の男達「…」

少女「これがきっと…嫁入り行列だ…」

少女「この列の中に…狐娘ちゃんが」



狐娘「…」

天狗「花嫁なら少しは楽しそうにしたらどうだ?」

狐娘「…そうだな」

天狗「こうも泣いてばかりではまるで興が乗らんな…ん」

狐娘「…」

天狗「おい、面白いものが見えるぞ」

383: 2011/05/29(日) 15:31:57.12 ID:4hzUanmJ0

「止まって!」

狐娘「…この声!」

少女「ごめんなさい!お願い!狐娘ちゃんに会わせて!」


天狗「だとよ、どうした?声かけてやらんのか?」

狐娘「…」 ギリッ

天狗「ひどい奴だな、お友達が雨の中参列してくれたというのに」

狐娘「…行けない」

天狗「やっと表情を見れたかと思ったら怒りとはな」


天狗「おい、小娘」

少女「は、はい!」

天狗「お前の想い人はここにいるぞ」 チョイチョイ

少女「い、今行きます!」

天狗「ああ、足元がゆるいから転ばんようにな」

384: 2011/05/29(日) 15:43:54.40 ID:4hzUanmJ0

狐娘「…どういうつもりだ」

天狗「あの人間が絡むとお前はすぐ顔に出るな」

狐娘「…」

天狗「表情のない人形を嫁にしてもつまらん、あの人間はずいぶんと使えそうだ」

狐娘「もしあの子に手をだしてみろ、貴様のその首食いちぎってやるぞ!」



少女「はぁっ…はぁっ…狐娘ちゃん!」

狐娘「…」

天狗「よう人の足でここまでこれたな」

少女「え、ええ。それより、狐娘ちゃん…結婚するの?」

狐娘「…そうだ」

385: 2011/05/29(日) 15:57:07.97 ID:4hzUanmJ0

少女「でも、望んでない結婚だよね?」

狐娘「…」

天狗「酷い言われ様だな、狐娘は俺の妻になりたいそうだが」

少女「嘘ですよ」

天狗「どうしてだ?こいつがそう言ったのか?」

狐娘「…」

少女「分かりますよ、とっても悲しそうな顔してますから」

天狗「そうか?俺には無表情にしか見えんがな」

少女「この3年間ずっと一緒だったから、分かります」

天狗「そんなもんかな、おい顔を上げてみろ」 グイッ

狐娘「…」

少女「嫌がってます」

388: 2011/05/29(日) 16:14:00.51 ID:4hzUanmJ0

少女「この結婚、あの霊薬の代償なの?」

狐娘「…」

天狗「おぉー、聡いな」

狐娘「…っ!」

天狗「そう睨むな、俺が答えずとも確信した顔をしているし結果は分からんだろう」

少女「天狗さん」

天狗「なんだ」

少女「この結婚、取りやめてください」

天狗「契約もしたんだがな、なぁ狐娘」

狐娘「…ああ」

少女「なんでも、私にできることならなんでもしますから!」

天狗「なんでもと言われてもな、お前に何ができる?」

少女「…私が代わりに貴方のお嫁さんになります」

狐娘「やめろ少女!もう帰るんだ!」

392: 2011/05/29(日) 16:27:06.62 ID:4hzUanmJ0

天狗「お前も中々の器量だがな、この妖狐の美しさには到底及ばん」

少女「…」

狐娘「少女、もう帰るんだ。帰ってお母さんと暮らせ。」

少女「嫌だよそんなの!狐娘ちゃんも一緒に!」

狐娘「頼む、私の思いを無下にしてくれるな」

少女「そんな…何か、何か代わりになるものは!」

天狗「ない」

少女「だったら…天狗さんを…」

天狗「面白い、人の身で私をどうこうする気か」

狐娘「よせ!性格はこんなんだが、天狗は本来山神。お前と私では例え束になっても敵わない」

少女「…だったら、どうすれば」

天狗「諦めろ、良い余興だったぞ」

狐娘「すまんな、嬉しかったよ」

393: 2011/05/29(日) 16:32:49.58 ID:4hzUanmJ0

少女「…」


シャン シャン シャン


天狗「お前があんなに優しい顔をするとは知らなかった」

狐娘「…」

天狗「…まるで氏人の顔だな」

狐娘「…」

天狗「あの娘に会わせたのは失敗だったか」

狐娘「…」

天狗「はぁ…もういい」

398: 2011/05/29(日) 16:36:21.30 ID:4hzUanmJ0
シャン …

少女「行列が…止まった」


天狗「おい小娘」

少女「…なんですか」

天狗「連れていけ」

少女「えっ!?」

狐娘「少女!」

がばっ

少女「狐娘ちゃん!ど、どうして?」

402: 2011/05/29(日) 16:43:33.55 ID:4hzUanmJ0

狐娘「暫しの猶予をもらった」

少女「…どのくらい?」

狐娘「お前の命が尽き、私が…」

少女「うん」

狐娘「あの天狗ににっこり笑えるようになるまで。だそうだ」

少女「…それって」

狐娘「事実上の婚約破棄、といったところか」

少女「そっかぁ!良かった…!でもどうして…」



狐面の男「良かったんですか?」

天狗「あんな顔を見たらな、どうしても自分にそれを向けて欲しくなってしまった」

狐面の男「ははぁ、惚れちまいましたか」

天狗「そうかもな…氏人の顔をしているあいつにはまるで魅力を感じなくなった」

狐面の男「難しい男心ですねぇ」

408: 2011/05/29(日) 16:47:57.67 ID:4hzUanmJ0

天狗「はぁ…しかし勿体無いことをしたか…」


「おい」

天狗「なんだ、まだ行ってなかったのか」

狐娘「その面、外してもらおう」

天狗「…これでいいか」

狐娘「頬を出せ」

天狗「好きにしろ」

狐娘「そうさせてもらおう…ちゅっ」

天狗「…」

狐娘「約束、守れなくてすまない。
       こんなものでは代わりにはならんだろうが…」

天狗「…猶予を与えただけだ」

狐娘「そうだったな、…そうだお前」

天狗「なんだ」

狐娘「面を外したほうが男前だぞ、ではな」

411: 2011/05/29(日) 16:55:20.78 ID:4hzUanmJ0

少女「ねぇ、天狗さんって悪い人じゃなかったね」

狐娘「ああ、言ったように奴はあれでも山神の一員だから、
         …どちらかと言えば騙した私のほうが悪いな」

少女「そうかもしれないね」

狐娘「・・・ありがとう」

少女「こちらこそありがとう、狐娘ちゃん」

狐娘「またこうして、お前と二人で歩けるだなんて思ってもみなかったよ」

少女「うん…ね、狐娘ちゃん」

狐娘「なんだ?」

少女「ずっと先にね、私が氏んじゃったら。天狗さんのところに行くの?」

狐娘「どうだろうな…悪くない気もするが、ずいぶんと先の話だから」

少女「私は。そうなると思うな」

狐娘「どうして?」

少女「だって、狐娘ちゃんが化かすのは、大事な人だけだもんね」


狐と少女 おわり

412: 2011/05/29(日) 16:56:24.98 ID:n+9RY+R10
あら、終わった

413: 2011/05/29(日) 16:57:06.69 ID:Ckdd5l/f0
おつ
ほのぼのよいよい

414: 2011/05/29(日) 16:57:36.37 ID:4hzUanmJ0
一方的に婚約破棄はどうかなぁと思ってこんな感じに

物語はこれで終わりです。天狗さんもハッピーハッピーでええと思います。

引用元: 人外娘「ずっと一緒にいようね…」少女「離してよお!」