62: 2019/08/19(月) 15:40:11.89 ID:H/mBruJ2o

63: 2019/08/19(月) 15:45:44.19 ID:H/mBruJ2o
蘭子「灼熱の業火降り注ぐ今! その時は来た!」

武内P「――夏で、そういった番組が多いから、でしょうか?」

蘭子「我が友である、氏者の王女も轡を並べんと欲している!」

武内P「――白坂さんが、一緒に何かをしよう、と?」


飛鳥「……いやはや、驚いたね」

飛鳥「キミが、蘭子のセカイをそこまで理解しているとは思わなかったよ」


蘭子「フッフッフ! 我が友の瞳は、全てを見通す魔眼!」ニコニコ!

武内P「……何とかわかる、といった感じですね」

64: 2019/08/19(月) 15:55:17.51 ID:H/mBruJ2o
蘭子「……夜毎誘われる、恐怖の宴」

武内P「――毎晩……ホラー映画を見ようと誘われる、と?」

蘭子「だが! この身は氏者の国に於いては、あまりに無力……!」

武内P「ですが……誰にでも、苦手なものはあるものです」


飛鳥「夏の思い出に、一回は一緒に見たいと思ったらしいんだ」

飛鳥「友情と優しさで、恐怖に立ち向かう……」

飛鳥「……どうだい? まるで、おとぎ話の勇者じゃないか」


蘭子「あ……アーハッハッハ!///」

蘭子「内なる己を奮い立たせ、断罪の剣を以て恐怖を切り裂かん!///」


武内P「神崎さん……」ジーン…!

65: 2019/08/19(月) 16:00:42.55 ID:H/mBruJ2o
武内P「……お話はわかりました」

武内P「それで……私に頼みたい事とは、一体?」


蘭子「片翼の担い手、飛鳥による儀式の立ち会いを!」ビシィッ!


飛鳥「ボクが、蘭子に怖い話を聞かせる」

飛鳥「その時に、少しばかりキミの背中を貸して欲しいんだ」

飛鳥「魔法使いでも、お姫様を背にして立つ事は出来るだろう?」


武内P「あの……それに、何の意味が?」


蘭子「きょ……恐怖の前では、結界は魔力を失ってしまう……」

飛鳥「怖くなったらしがみつける。ただ、それだけさ」

蘭子「飛鳥ぁ!?/// なんで言うのー!?///」


武内P「は、はあ……」

66: 2019/08/19(月) 16:06:21.20 ID:H/mBruJ2o
武内P「その程度でしたら……はい、勿論構いません」

蘭子「――♪」パアッ!

武内P「では……私は、座った方が良いでしょうか?」

飛鳥「そうだね。ホラーを立ち話というのは、あまりに無粋だ」


武内P「ならば……私が、ソファーの端寄りに座り」

…ボスンッ

武内P「その隣の端に……どうぞ、神崎さん」

蘭子「うむ!」

…ポスンッ


飛鳥「なら、ボクは同じソファーの反対側に位置しようか」

…ポスンッ

飛鳥「……良いね。横並びの対談の様だが、条件は満たされている」

67: 2019/08/19(月) 16:15:54.26 ID:H/mBruJ2o
蘭子「……我が友よ、その勇猛さを発揮する時」

武内P「もう少し中央に移動しろ、と?」

蘭子「……守護者の後ろに居るばかりは、戦いの場に参じているとは言い難い」

武内P「成る程。靴を脱いで、膝立ちの状態で聞く、と」

蘭子「……その双肩に、我が掌より魔力を注ぐ!」

武内P「ええ、肩に手を置いた方が安定するでしょうから」


蘭子「――いざ! 我と我が友の魂を一つに!」

…ぽんっ

蘭子「ククク……! 漆黒の魔力が、傷付いた其の身を癒やす……!」ニコニコ!

もみもみ…

武内P「いえ、あの……肩を揉まなくても、大丈夫ですから」


飛鳥「良いじゃないか、蘭子なりのお礼のつもりだろう」

飛鳥「素直に受け取っておくのが最善の選択肢さ」

68: 2019/08/19(月) 16:20:47.67 ID:H/mBruJ2o
飛鳥「さて、それじゃあ――」

飛鳥「――準備は良いかな?」


蘭子「う、うむ……!」ビクッ!

武内P「神崎さん」

蘭子「わ、わがまえには、しゅごしゃがいる!」ビクビク…!

武内P「神崎さん」

蘭子「な、なに……?」


武内P「――笑顔です」

武内P「笑顔の力――パワー・オブ・スマイルがあれば」

武内P「……どんな困難も、必ず乗り越えられます」


蘭子「……!」

蘭子「はいっ!」ニコッ!


飛鳥「フフッ……良い笑顔だね」

69: 2019/08/19(月) 16:28:01.71 ID:H/mBruJ2o
飛鳥「その笑顔を恐怖で歪められるかは、ボク次第という訳だ」

飛鳥「……正直、うまく出来るかはわからないが」

飛鳥「乗り越える最初の壁としては、適当な高さになるかな」


武内P「そう、なのですか?」


飛鳥「だから、蘭子はボクに頼んだんじゃないかな」

飛鳥「専門家達の話を聞いては、克服どころの話じゃなくなるからね」

飛鳥「乗り越える壁が高く、こちらに倒れ込んでくるんだから」


武内P「……確かに、その通りですね」

武内P「では、二宮さんも……怖い話、頑張って下さい」

蘭子「ぷっ、プロデューサー!?」


飛鳥「ハハハ、魔法使いにそう言われてしまっては仕方ないね!」

飛鳥「……良いだろう」


飛鳥「ボクの持てる力、セカイの全てで蘭子の顔を歪めてみせよう……!」

70: 2019/08/19(月) 16:34:21.56 ID:H/mBruJ2o
飛鳥「……これは、ある少女の物語」


蘭子「……」ゴクリ!

武内P「……」


飛鳥「自分の心の内を表現するには、素直すぎる少女の話さ」

飛鳥「少女の素直すぎる言葉は、他人に届きにくい言葉だった」

飛鳥「……だから、少女は描き出した」

飛鳥「自分のセカイを……一冊のスケッチブックに、ね」


蘭子「それって……」

ぐっ…

武内P「……」

武内P(……成る程)

武内P(登場人物と神崎さんを重ね合わせて、一気に話に引き込んだ……と)

71: 2019/08/19(月) 16:40:19.03 ID:H/mBruJ2o
飛鳥「……そんな少女の元へ、魔法使いが現れた」

飛鳥「しかし、魔法使いもコミュニケーションが得意じゃなかったんだ」

飛鳥「……二人の意思は、紙一重の所ですれ違うばかり」


蘭子「……!」コクコク!

ぎゅっ!

武内P「……」


飛鳥「その紙一重を埋めたのが、彼女の想いを描いた――」


蘭子「――グリモワール!」パアッ!

武内P「……」


飛鳥「蘭子、今話しているのはボクだよ?」

飛鳥「合いの手は嬉しいが、少し落ち着いた方が良いんじゃないかな」


蘭子「す、すまない……」

72: 2019/08/19(月) 16:49:49.23 ID:H/mBruJ2o
飛鳥「すれ違う二人を繋いだのは、一冊のスケッチブックだった」

飛鳥「そして……少女と魔法使いは手を携え」

飛鳥「――新しいセカイへと、踏み出していったんだ」


蘭子「……!」ウンウン!

武内P「……」

武内P(ここから……どう、ホラーに繋がるのだろうか?)


飛鳥「……だが、少女は己の全てを魔法使いには伝えていなかった」

飛鳥「その隠された禁断の果実は……もう一冊に」


飛鳥「――夜闇を思わせる、黒いスケッチブックに描いていたんだ」


蘭子「禁忌!!!!!」

ブベチッ!

武内P「痛っ……な、何故……私の耳を塞いで……?」

74: 2019/08/19(月) 16:59:26.08 ID:H/mBruJ2o
蘭子「あっ、あすっ、あ、おおあっ……!?///」ワナワナ!

武内P「神崎さん? あの……神崎さん?」


飛鳥「禁断の果実は……とても甘い」

飛鳥「少女の、魔法使いへの想いだった」


蘭子「きっ、きき、きんききんき!/// ほんときんきっ!!///」アワアワ!

武内P「……?」

武内P(まさか……神崎さんは、これからの話を予想して……?)


飛鳥「黒衣に包まれた魔法使いの姿を想像した絵も」

飛鳥「何度も描き直されたそれは、何も纏わぬ姿だった」


蘭子「ひょわ――っ、きんき!/// きんきあすかきんききんきぃっ!///」ワタワタ!

武内P「……」

武内P(何も聞こえないが……話が、盛り上がっているようだ)

75: 2019/08/19(月) 17:08:53.68 ID:H/mBruJ2o
蘭子「なんで!?/// なんでしっとると!?///」


飛鳥「……けれど、ある日」

飛鳥「少女の元へと現れた、もう一人の少女に見つかってしまった」

飛鳥「……寝ていると思って、油断したんだろう」

飛鳥「毎夜繰り返されているだろう、儀式を見られてしまっていたんだ」


蘭子「このまえとまったとき!?/// おきてたと!?///」


飛鳥「スケッチブックに描かれた、魔法使い」

飛鳥「その写し身に愛を語り、口づけをする姿を」


蘭子「むああああっ!?/// むうううあああぁぁっ!?///」ブルブル!

ガクガクッ!

武内P「あ、あの……頭を揺らさないでください……」

76: 2019/08/19(月) 17:19:17.95 ID:H/mBruJ2o
飛鳥「その儀式が頻繁に行われているのは、すぐにわかった」


蘭子「あすか――っ!?/// ほらーちがう!/// ほらーちがう!///」


飛鳥「スケッチブックに描かれた、魔法使いの顔」

飛鳥「その口元の色が変わっていたから、ね」


蘭子「ぴいいいいいぃっ!/// もうやめてほんとやめてえええっ!///」

ガックガクガク!

武内P「か、神崎さん!? あの、揺らさな……神崎さん!?」


飛鳥「蘭子、キミならわかるだろう?」

飛鳥「その少女が、黒いスケッチブックの内容を誰にも知られたくない気持ちが」


蘭子「わたしのことだもん!/// わたしのことだもん、それぇ!///」ピー!

ググッ…!

武内P「あ、頭が……う、おお……!?」

77: 2019/08/19(月) 17:29:11.58 ID:H/mBruJ2o
飛鳥「誰にも知られてはいけない……少女の秘密」

飛鳥「そう……少女は、恐れていたんだ」

飛鳥「秘密を知られることで、魔法使いとの関係が変わってしまう事を」

飛鳥「心地良い今が、どうなってしまうか理解らないから……」


蘭子「だからぁっ!/// それ、ほらーちがう!/// ただのきんきぃっ!///」


飛鳥「――しかし、少女のそんな姿を見て」ビシッ!

飛鳥「もう一人の少女は、考えていたんだ」ビシィッ!

飛鳥「……いつか、その恐怖を乗り越えなければいけない時が来る、と」ビッシィッ!


蘭子「ちがうちがういまちがう!/// ばか!/// あすか、ばか!///」


飛鳥「フッ……例え罵られようとも、ね」シャキーン!


武内P「……」

武内P(これは……二宮さんも、自分の世界に入っているようだ)

78: 2019/08/19(月) 17:40:11.75 ID:H/mBruJ2o
飛鳥「――今こそ、解き明かそう」

飛鳥「恐怖を乗り越えたセカイの、その先の姿を……!」

スッ…!


武内P「……?」

武内P「背中から……黒いスケッチブッk」


蘭子「グリモワァァァ――ルッ!///」

ダダダダッ、ガシイッ!

飛鳥「こ、こら! 離すんだ蘭子! 恐怖に負けちゃいけない!」

蘭子「きょうふちがう! んむふぃいいいいいっ!」

飛鳥「今こそ、虚構を現実にするチャンスじゃないか!」

蘭子「チャンスじゃないチャンスじゃない! ピンチピンチピンチぃっ!」


武内P「い、一体……何が……?」

79: 2019/08/19(月) 17:45:23.88 ID:H/mBruJ2o
武内P「あの……神崎さん、二宮さん?」

武内P「そのスケッチブックは……」


蘭子「きんき!/// きんきだからだめぇ!///」

飛鳥「ちょっとした、工口イムエッサイ」

蘭子「むううううぅぅっ!?///」

スパシィッ!

飛鳥「むぐっ!?」

蘭子「ぷろでゅーさーは、きにしないでいい!/// ほんと!!///」


武内P「は、はあ……」

80: 2019/08/19(月) 17:55:11.56 ID:H/mBruJ2o
  ・  ・  ・

小梅「ほ……本当に、良いの……?」ワクワク!


蘭子「う、うむ……! 約束が、果たされる時……!」


小梅「……!」パアッ!

小梅「えへへ……う、嬉しい……な」ニコッ!

小梅「一緒にホラー映画見たい、って……ずっと思ってた、から」ニコニコッ!


蘭子「我が友よ……」

蘭子(……あああ! でもやっぱり怖い怖い怖いいいいっ!)

蘭子(でも、こんな笑顔を向けられたら今更嫌って言えないよ~!)

蘭子(飛鳥との特訓なんて、全然役に立たなかったし!)

蘭子(馬鹿! ほんと馬鹿! 飛鳥の馬鹿ぁっ!)

81: 2019/08/19(月) 18:06:23.75 ID:H/mBruJ2o
小梅「と、特訓……してくれたんだよ、ね……?」

小梅「嬉しい……す、凄く……楽しみ……♪」ニコニコ!

小梅「黒いスケッチブックも使ってくれたなんて……えへへ♪」ニッコニコ!


蘭子「……えっ?」

蘭子「なんで……知って……?」


小梅「あ、あの子が教えてくれた……よ?」

小梅「中身は、その……え、エOチだから内緒って……///」モジモジ!


蘭子「っ!?///」パプッ!

82: 2019/08/19(月) 18:13:56.70 ID:H/mBruJ2o
蘭子「き、禁忌に触れたというのか……!?///」

小梅「内緒だった……の……?」

蘭子「其の封印は解いてはならない!///」

小梅「でも……か、かっこよく描けてた……って」

蘭子「誰が!?///」

小梅「えっ?」

蘭子「っ……!///」


小梅「……皆が」


蘭子「皆って、お化けの方だよね!?」


蘭子「お願い! ホラーな方であって!」




おわり

83: 2019/08/19(月) 19:44:14.72 ID:wUMcawQNO
ホラーかと思ったら恋バナだった

引用元: 武内P「キスします」