836: 2013/09/23(月) 14:22:11 ID:mjfumOvE
連作短編15 楓「楓の葉が落ちる頃」

P「あの女優さん、話はどうなったんだか。担がれただけかなあ……」

ありす「何をぶつぶつと言ってるんですか」

P「ありすか。ドラマもうすぐだな。放送は来週だったな」

ありす「もう撮影は終わりましたから、次の仕事に集中するだけです」

P「少し、仕事は間を空けるぞ」

ありす「何か問題が?」

P「働き過ぎだ、今月の拘束時間が事務所の中で八番目なんだぞ」

ありす「そんな順位に意味なんてありませんよ」

P「あるに決まってんだろ、少し休め。焦る必要なんてない」

ありす「そういう訳じゃありません」

P「一週間は仕事に関する予定は何も入れないから、それまで好きにしてていい」
アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(8) (電撃コミックスEX)
アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(8) (電撃コミックスEX)

このSSはアイドルマスターシンデレラガールズの世界観を元にしたお話です。
複数のPが存在し、かつオリジナルの設定がいくつか入っています。
連作短編の形をとっており、
前のスレを読まないと話が分からない事もあるかと思います。

検索タグ:ありす「心に咲く花」

その為、最初に投下するお話は事前情報なしでも理解できる構成としました。
こんな雰囲気が好きだなと少しでも感じて頂けた方は前スレも目を通して頂ければ 嬉しく思います。
それでは、投下を開始します。
837: 2013/09/23(月) 14:22:59 ID:mjfumOvE
ありす「一週間」

P「何で不服そうなんだよ、一週間も休みもらえたら俺なら諸手を挙げて喜ぶところだぞ」

ありす「Pさんは?」

P「仕事、ほら見てみろ俺のスケジュール帳」

ありす「……Pさんこそ働き過ぎでは?」

P「いいんだよ、この中できついのはこの日だけ。後は顔見知りが多いから」

ありす「高垣さんとの仕事って大変なんですか?」

P「俺の担当してるアイドルの中では一番人気だから、仕事も自然と大きくなる。どんな仕事でもこなす人だから」

ありす「じゃあこの仕事が終わる頃に事務所に来ます」

P「何しに?」

ありす「いいんです、黙って楽しみにしてればいいんですよ。お疲れ様でした」

838: 2013/09/23(月) 14:23:53 ID:mjfumOvE
P「何か企んでるな……変な事するなよ」

楓「何をです?」

P「……神出鬼没にも程がありますよ。今日は直帰の予定でしょう?」

楓「ジャンケン」

P「グー」

楓「パーです、勝ちました」

P「そこは直帰とチョキを掛けるなりしましょうよ!」

楓「勝ちましたからご飯を食べましょう」

P「それが狙いですか、分かりましたちょっと待ってて下さい」

楓「プロデューサーは日本酒ですか?」

P「分かって聞いてますよね、飲みません」

楓「むす」

P「はい天むすですね、すみませーん」

839: 2013/09/23(月) 14:25:19 ID:mjfumOvE
楓「梅きゅうも一つ」

P「しかし、未成年で居酒屋の雰囲気に慣れるってのもどうなんだろう」

楓「本番への練習です」

P「どれだけ飲まされるのか今から怖いんですが」

楓「大丈夫ですよ、何があっても」

P「あってからでは遅いですって、今日はモデルでしたっけ? 今年の流行は何です?」

楓「チェックをチェックです」

P「本当ですか?」

楓「本当ですよ、どうぞ」

P「……おお、本当だ。ただ読者の参考にはなりませんね、他にここまで似合う人いませんよ」

楓「そんなお世辞を言われても嬉しくありません」

840: 2013/09/23(月) 14:26:00 ID:mjfumOvE
P「楓さんにお世辞を言って何になるんですか、本心ですよ」

楓「……じゃあ、喜びます」

P「その方が言った甲斐があるってもんです。唯でさえ感情が読みにくいんですから、言葉にしてもらわないと不安になりますって」

楓「不安ですか?」

P「年下の俺にも丁寧な口調を崩しませんから」

楓「他に、話し方を知りませんから」

P「窮屈でなければそれでも構いませんが、まあ堅苦しい話は止めましょうか」

楓「そういえば、この前ホテルでイベントがありましたよね?」

P「ああ、知ってますよ。楓さんはいたんですよね」

楓「神谷さんとお会いしました」

P「……そうですか」

楓「難しいですね」

P「近づき難いだけでしょう、色々とある年頃でしょうから」

841: 2013/09/23(月) 14:26:33 ID:mjfumOvE
楓「私だって色々あります」

P「知ってますよ、ああもう拗ねた」

楓「いいです、大人ですから」

P「頑張ってるのは知ってますから、あんまり飲み過ぎないで下さいね」

楓「今度の仕事は……大きいです」

P[ゴールデンの歌番組、楓さんは常連ですもんね」

楓「いいんでしょうか、私がいても」

P「楓さんの為の場です、二週連続一位なんて記録は事務所でも僅か。他のアイドルが泣きますよ」

楓「プロデューサーは……」

P「何でしょう?」

楓「いえ、次も宜しくお願いします」

842: 2013/09/23(月) 14:28:38 ID:mjfumOvE
ルキトレ「戻ってきた」

P「いつからいたんだよ、明日も学校だろ?」

ルキトレ「仕事が終わって戻ってきたら楓さんと出ていくの見たから」

P「それがどうしたんだよ? 珍しい事じゃないだろ」

ルキトレ「今日は加蓮や奈緒も事務所にいた」

P「それを言うならあいさんやありすとだって話してる、そもそもまだ何も動いてない時点でいきなりそんな事したら怪しまれる」

ルキトレ「そこまでは思ってない、けど見てたらどう思うとか考えない?」

P「大きい仕事を控えてるんだ、それこそそんな事に気を使う余裕もないくらい緊張してるとは考えられないか?」

ルキトレ「合理的だね、凄く」

P「感情で動くには俺にはまだ力が足りない」

ルキトレ「楓さんはその為の力?」

P「ふざけた事を言うな」

ルキトレ「……ごめん」

843: 2013/09/23(月) 14:30:53 ID:mjfumOvE
P「あの三人をお前が気にするのは分かるが、アイドルはその三人だけじゃないんだ」

ルキトレ「分かってる」

P「そもそも奈緒に関してはなあ……」

ルキトレ「何かあったの?」

P「ホテルの一室で一晩を」

ルキトレ「はあ!?」

P「まあそんな反応になるよな」

ルキトレ「ちょ、ちょっと待って!? いつ!?」

P「この前のホテルのイベントの時」

ルキトレ「え、えっと何!? 約束してたの!?」

P「そんな訳ないだろ、事故みたいなもんだったけどな」

ルキトレ「何もないよね?」

P「あると思うか?」

844: 2013/09/23(月) 14:31:25 ID:mjfumOvE
ルキトレ「そんな心配はしてないけど……よくばれなかったね」

P「ばれない為にやった様なもんだからなあ。とまあ、そんな訳でこれが知れた方が影響は大きいだろ」

ルキトレ「加蓮が凄い事になるね、うん」

P「そもそもそれを言うなら女のアイドルしかいない事務所に俺が必要なのかって所にも繋がってくる、スキャンダルの可能性を考慮すれば尚更な」

ルキトレ「まあ、ね……」

P「皆、それは分かってる。それこそ、楓さんや千枝は特に」

ルキトレ「それでも、心の中で納得させるしかないんだよね」

P「さて、送ろうか?」

ルキトレ「いいよ、寄る所もあるから」

P「そっか……気を付けろよ」

ルキトレ「大丈夫だって。それじゃ、久しぶりに言っておくね」

P「どうした? 何か引継ぎでもあるのか?」

ルキトレ「好きだよ、またね」

845: 2013/09/23(月) 14:31:59 ID:mjfumOvE
P「……言いたいだけ言って帰りやがった」

聖來「本当にね」

P「ううぉ!?」

聖來「いやー、青春だね」

P「何で出てこないんですか!?」

聖來「いや、事務所に誰かいるのかなって覗いてみたらP君とルキちゃんが話してたから」

P「……聖來さんでよかった」

聖來「それはどうかな?」

P「え、他に誰か」

846: 2013/09/23(月) 14:34:32 ID:mjfumOvE
聖來「いないいない、いたとしても聞かれたら不味い子は限られてるでしょ?」

P「我ながら情けない状況ですよ」

聖來「P君も言ってたけど、これだけいる中に若い男がいたらこうなるのは当たり前。気にしたら仕事できなくなるよ」

P「そこまで達観できません」

聖來「難しいよね、世界が広いようで狭いから」

P「それはこの前ちょっと痛感しました」

聖來「明日は?」

P「営業と挨拶と事務仕事と、夜に千枝を送って……くらいです」

聖來「ああ、なら安心。多分、ばれるから素直に吐いといた方がいいよ」

P「そんな簡単にばれませんよ」

847: 2013/09/23(月) 14:35:04 ID:mjfumOvE
千枝「何かありましたよね?」

P「エスパーでも使えるようになったのか?」

千枝「千枝は裕子さんみたいにはなれませんよ」

P「この仕事は難しいなって思っただけだよ」

千枝「大変なのは明日ですよね?」

P「俺のスケジュール、話したっけ?」

千枝「聖來さんから聞きました」

P「……なるほど」

千枝「高垣さんは凄いです、あんなに綺麗な歌が歌えるなんて尊敬しちゃいます」

P「一種の完成形だよ、俺も聞いてて凄いって素直に思う」

千枝「……夏休みにお家に帰ろうかなって思ってたんです」

P「思ってた?」

千枝「はい、やめました」

848: 2013/09/23(月) 14:35:57 ID:mjfumOvE
P「いや、別に休みなら言ってくれたらいくらでも調整するって」

千枝「代わりに、お父さん達がこっちに来る事になりました」

P「そういう事か、ホテルとかこっちで手配しようか?」

千枝「それはもう済んだって言ってました」

P「いつこっちに?」

千枝「来週の月曜日です」

P「来週の月曜……確かその日は」

千枝「はい、去年のと同じあの仕事です」

P「それは、千枝が決めた事なのか?」

千枝「見て欲しいんです。お父さんにもお母さんにも、Pさんにも。私が去年からこれだけ成長できたんだよって」

P「そうか、楽しみにしてるよ」

千枝「はい、いっぱいいっぱーい練習しましたから。喜んでくれるといいな」

849: 2013/09/23(月) 14:37:28 ID:mjfumOvE
P「喜ぶさ、絶対に」

千枝「Pさんもです」

P「俺は喜ぶにきまってるだろ」

千枝「いいんですよ。元気な時も、落ち込んでる時もPさんはPさんなんですから」

P「時々、千枝が俺より大人に見える」

千枝「Pさんの隣にいるんですから、背伸びくらいします」

P「追い抜かれそうだな」

千枝「Pさんはもっともっと大きいですから、まだまだ足りません」

P「なら、千枝を信じてもう一頑張りするかな」

千枝「はい、信じてますから」

P「戻りました、ってまたか」

ルキトレ「別に待ってた訳じゃないよ、レッスンの曲をどうしようかって考えてただけ」

850: 2013/09/23(月) 14:38:05 ID:mjfumOvE
P「こんな遅くまで?」

ルキトレ「考えてたら何かこんな時間になっちゃってて」

P「大変だな」

ルキトレ「そうでもないよ、楽しくてやってる事だから」

P「天職だな」

ルキトレ「Pはもう終わり?」

P「事務処理が……一時間くらいかな」

ルキトレ「じゃあ、それまで残ってようかな」

P「お好きにどうぞ」

ルキトレ「……明日だね、高垣さん」

P「本番は夜、だけど昼の早い内に現地に行ってリハーサルやらで忙しい」

ルキトレ「今日、初めて聞いた。高垣さんのアイドルとしての歌」

851: 2013/09/23(月) 14:38:40 ID:mjfumOvE
P「初めて?」

ルキトレ「それくらい察してよ」

P「何も言わないって、それで?」

ルキトレ「奇麗だなって思った、引き込まれる」

P「余計な飾りがあの人の歌にはないから、その声そのものが人を惹きつける」

ルキトレ「でも、最初に聞いた時とは違う」

P「……それは」

ルキトレ「聞いてて寂しくなった、引き込まれるのが怖くなるくらいに」

P「元々、人見知りな方ではあったらしい」

ルキトレ「あんまり、話しかけたりするタイプじゃないもんね」

P「一気に上へ行ったから他のアイドルとの交流の場も失って。孤高なんて呼ばれてるけど、あの人にそんな言葉は似合わない」

ルキトレ「うん」

P「それでも志乃さんとか気にかけてくれる人がいるから何とかなってるけど、あまり良い状況じゃない」

852: 2013/09/23(月) 14:40:13 ID:mjfumOvE
ルキトレ「私が言える立場じゃない事は分かってるけど、どうすればいいと思う?」

P「邪魔かもな、俺」

ルキトレ「邪魔? 反対でしょ?」

P「俺がいるから大丈夫だって周りは思ってる。けど、それじゃ何も解決しない」

ルキトレ「P、それはいくらなんでも」

P「担当を降りるのも手だよ、それこそ統括でもいい」

ルキトレ「それは…駄目だよ」

P「まあ、これは言い過ぎだとしても――こんな時間に誰だ?」

ルキトレ「どうぞ!」

P「まさか」

ルキトレ「行ってくる!」

P「……」

853: 2013/09/23(月) 14:41:04 ID:mjfumOvE
ルキトレ「まだ遠くまで行ってないはず!」

楓「……」

ルキトレ「見つけましたよ」

楓「……」

ルキトレ「聞いてたんですか?」

楓「いいんです、分かっていた事ですから」

ルキトレ「分かってたって」

楓「立場は理解しているつもりです、北条さんや神谷さんが私にどんな感情を抱いているかも含めて」

ルキトレ「それは……否定しません」

楓「だから別にいいんです」

ルキトレ「その、それは本心ですか?」

楓「私は、何の覚悟も持たずにこの世界に入りました。モデルの仕事をしている内にこういう事務所があると
  紹介されて、人見知りが少しは治ったらいいな。なんて思って軽い気持ちでその話を受けたんです」

854: 2013/09/23(月) 14:41:40 ID:mjfumOvE
ルキトレ「じゃあ何で今――」

楓「上手くいかなかったら元の世界に戻ればいい。そんな気持ちで始めて、これだけの時間が経ちました」

ルキトレ「彼、何も言わなかったんですか?」

楓「……何も言いませんでしたから聞いてみたんです。私をどう思っていますか、と」

ルキトレ「何て答えたんですか?」

楓「貴方をトップアイドルに出来ないようでは、プロデューサー失格ですから」

ルキトレ「質問とは少しずれた答えです」

楓「それでもほっとしたんです、嫌いだと言われたらきっとこの世界にはいなかったでしょうから」

ルキトレ「高垣さん」

楓「居場所を作ってくれましたから。彼の傍にいれば、私はどこまでも飛べるんです。だから彼をどこへでも連れて行きます。
  彼の望む所へ、望むままに」

ルキトレ「高垣さん……」

楓「それが私ができる、ただ一つの恩返しです」

855: 2013/09/23(月) 14:43:40 ID:mjfumOvE
ルキトレ「はあ……」

瑞樹「暗い顔してどうしたの?」

ルキトレ「え? そんな顔してました?」

瑞樹「この世の終わりみたいな顔してる」

ルキトレ「うう……」

瑞樹「何、言いにくい話なの?」

ルキトレ「あの、個人名とか出せない相談なんですけど」

瑞樹「構わないわ、事務所の端っこでいつまでも体育座りされても困っちゃうし」

ルキトレ「あの……酷い事を言ってしまった時ってどうすればいいんでしょうか?」

瑞樹「酷い事?」

ルキトレ「はい、凄く酷い事です」

856: 2013/09/23(月) 14:44:11 ID:mjfumOvE
瑞樹「相手は、それで怒ってるの?」

ルキトレ「怒ってくれたら楽なんですけど、そのまま真面目に受け止めてしまったみたいで」

瑞樹「そう……真面目な人なのね」

ルキトレ「真面目っていうか、全て自分で背負い込むんです。何でも一人で出来る訳じゃないのに、
     勝手に首を突っ込んで一人で傷ついて」

瑞樹「Pくんも色々とあるから」

ルキトレ「え、えっと。別にあいつの事じゃ」

瑞樹「分かるわ、その気持ち」

ルキトレ「何か、それはそれで恥ずかしいんですけど」

瑞樹「この前、浅草で花火大会があってそこで撮影があったの」

ルキトレ「はい、日菜子ちゃんや紗枝ちゃんから聞きました」

瑞樹「ほたるちゃんも一緒でね、Pくんこの事務所はまだ慣れてないだろうからってずっと付いてたん
   だけど」

ルキトレ「何かあったんですか?」

857: 2013/09/23(月) 14:45:50 ID:mjfumOvE
瑞樹「てっきり色々とアドバイスとかするのかなって思ってたら彼、何も言わなくて」

ルキトレ「放置してたんですか?」

瑞樹「私達も心配になって、時間が空く度に様子を見に行ってたんだけどね」

ルキトレ「大丈夫だったんですか?」

瑞樹「楽しそうにお話してた、雰囲気が一気に変わってたから驚いちゃって」

ルキトレ「つまりあいつが何かしたって事ですか」

瑞樹「前の事務所で怒られる事が多かったそうなの、あの子。それで自分の色を全く出せなくなってた
   みたいでね。カメラ向けられて、どんなポーズを取ればいいですかって一枚ごとに聞いてたみたいなの」

ルキトレ「事務所に問題があるんじゃ」

瑞樹「そうね、だからPくんはまず自分で動くようにって言ってスタッフにも徹底させたの。
   最初のうちは何も指示しないで下さいって」

ルキトレ「……何でそんな簡単に分かるんだろ」

858: 2013/09/23(月) 14:46:30 ID:mjfumOvE
瑞樹「誰よりも見てる、それはアイドルをしていて本当に感じる。対応できる人数は限られちゃうけど、
   やっぱり嬉しいのよ。見せる為に私達も頑張ってるから、それを素直に褒めて伸ばそうとしてくれる人がいればそれだけ頑張れる」

ルキトレ「そうですね、レッスンと本番でまるで違う子もいます」

瑞樹「ステージの上では年齢も経験も関係ない、ファンへ何を見せられるかが全てだって。そう彼が
   本気で言うから、私達も頑張ろうって思える」

ルキトレ「凄いな、何か遠い」

瑞樹「でも一人だけじゃやっぱり駄目、どこかで限界が来る。だから同じ目線で立てる誰かが必要なの」

ルキトレ「……同じ目線」

瑞樹「ゆっくりと自分の言った事を振り返って、何が駄目だったか。どう言えばよかったか、自分は
   どうしたいか。ゆっくりと考えて話してみるしかない。大丈夫、彼なら分かってくれる」

ルキトレ「悩んだって何も動きませんよね……分かりました! ありがとうございます!」

瑞樹「頑張って、幸運を祈ってる」

ルキトレ「はい!」

瑞樹「……若いわ」

859: 2013/09/23(月) 14:47:22 ID:mjfumOvE
P「さて、行きましょうか」

楓「はい、今日も宜しくお願いします」

ルキトレ「待って」

P「ルキトレ」

ルキトレ「お願いがあるの」

P「関係者用のパスは用意してくれるそうだ、俺の力じゃなくてマストレさんの力だけどな」

ルキトレ「やっぱりそうなっちゃうか」

P「帰ったら説教だろうな、覚悟しとけ」

ルキトレ「うん」

P「すみません楓さん、急に増えてしまいましたけど」

楓「いえ、大丈夫です」

P「本当に大物ばかり来るから勉強にはなるが、俺か楓さんの近くにはいるようにしろよ」

ルキトレ「そんなに凄いの?」

860: 2013/09/23(月) 14:47:59 ID:mjfumOvE
P「ニュージェネレーションや楓さんはいるが、十時さんや蘭子が枠の関係で弾かれてる」

ルキトレ「え」

P「二組までって制限を付けられたからな。だから直近のランキングで一位の楓さんと、全国ツアー中のニュージェネレーションを出そうって会議で決まったんだ」

ルキトレ「二人とも出たら数字が3%は上がるって言われてるのに」

P「その数字に頼る必要のない規模の番組って事は理解しとけ、俺も関わってから思い知ったよ」

ルキトレ「やっぱり、楓さん凄いんだ」

P「事務所の中でも上位だよ、順位を付けるのは嫌いだけどこれも事実」

ルキトレ「うん、理解した」

P「やっぱり凄いな、知ってる人ばっかり……一方的にってのが悲しいが」

ルキトレ「うわ、凄い! あれ魔王エンジェル!?」

P「はしゃぐなって、ちょっと数少ない知り合いに挨拶してくるから待ってろ」

ルキトレ「高垣さんはやっぱり慣れてるんですよね? って、あれ?……いない」

861: 2013/09/23(月) 14:48:33 ID:mjfumOvE
ルキトレ「どうしよどうしよどうしよう、こんな所で誰も知らない知る訳もわっ!」

「きゃっ!」

ルキトレ「ご、ごめんなさい! 大丈夫ですか?」

卯月「いえ、こちらこそすみません」

ルキトレ「って、島村卯月!?」

卯月「はい、私を知ってるんですか? ありがとうございます! 今日も頑張りますから宜しかったら見て下さいね!それでは失礼しました」

ルキトレ「うん、応援してるから!……ってちょっと待って!!」

卯月「高垣楓さんですか?」

ルキトレ「そう、一緒にいたんだけどいつの間にかいなくなっちゃってて」

卯月「失礼ですが、事務所の方ですか?」

ルキトレ「ああそっか、初対面だね。えっとマストレの妹って言えば分かるかな?」

卯月「すみません! 気付きませんでした!」

862: 2013/09/23(月) 14:49:04 ID:mjfumOvE
ルキトレ「知らなくて当たり前だよ。でも良かった、これで何とかなる」

卯月「他にスタッフさんとか来てないんですか? 高垣さんならプロデューサーの誰かが来ていてもおかしくありません」

ルキトレ「ああ、えっと……私は何も知らされずに来たから。あはははは」

卯月「待ってて下さいね、統括に聞いてきますから」

ルキトレ「うん、お願い。って、あいついるんだ……」

卯月「お待たせしました!」

ルキトレ「早いね」

卯月「統括と一緒に何かお話してました」

ルキトレ「そっか、じゃあ楓さんの控室の場所だけ教えてくれないかな? そこで待機してるから」

卯月「うーん、でも折角ですから私達の部屋にどうぞ!」

ルキトレ「へ?」

863: 2013/09/23(月) 14:49:51 ID:mjfumOvE
未央「へー、マストレさんの妹かあ!」

凛「未央、年上だよ。初めまして、渋谷凜です」

卯月「可愛いよね、アイドルしないんですか?」

ルキトレ「私には向いてないかなって、あははははは」

卯月「何かインタビューみたいですね、今は誰のレッスンを担当してるんですか?」

ルキトレ「あんまり決まってないけど、奈緒や加蓮はよく見てるよ」

凛「へえ、あの二人。あんまり事務所の話題とか出さないから」

未央「凄く真面目、仕事は全力投球って感じだし」

凛「分かってるなら見習おうね、未央」

卯月「いつか私達も見て下さい、頑張りますから」

凛「他の人に見てもらう機会もあまりないから、今日はリハーサルも見るんですか?」

ルキトレ「そのつもり、時間はいつから?」

未央「何と私達が最後です!」

凛「質問に答えなよ、30分後後くらいかな。楓さんは……これからだね」

864: 2013/09/23(月) 14:50:26 ID:mjfumOvE
ルキトレ「今から?」

卯月「案内しますよ、私達も見たいですから」

未央「よし、敵情視察といきますか」

凛「敵って、まあ間違ってないけど」

未央「おお! やってるやってる」

凛「静かに。うん……やっぱり凄いね。力がある、歌が終わっても足跡が残ってるみたい」

卯月「凜ちゃんの理想だもんね」

ルキトレ「案外……普通だなこの子達。聞いても大して情報を得られなかったりして」

卯月「じゃあ私達、スタンバイしてきますから」

ルキトレ「うん、頑張って」

865: 2013/09/23(月) 14:51:11 ID:mjfumOvE
統括「何故お前がここにいる?」

ルキトレ「いたらいけませんか?」

統括「誰の力で入った?」

ルキトレ「関係ありません、失礼します」

P「あ、いた」

ルキトレ「やっと見つけた!」

P「やっとって、それはこっちの台詞だ」

ルキトレ「心細かったんだから! 高垣さんは急にいなくなるし」

P「お前の携帯は何のためにあるんだよ」

ルキトレ「あ」

866: 2013/09/23(月) 14:51:42 ID:mjfumOvE
P「楓さんと統括で打ち合わせ、ねえ」

ルキトレ「何だと思う?」

P「うーん、あんまり大きい声で話せないんだが」

ルキトレ「うん」

P「事務所で大きなライブをやろうかって話が出てる」

ルキトレ「全員でやるの?」

P「まさか、でも過去最大の規模になることは間違いない。実現すればだけどな」

ルキトレ「それに楓さんも出るんだ」

P「まあ、そういう事だろうな。各アイドルと打ち合わせてるって事は、実現も近いのかもな」

ルキトレ「何だ、てっきり」

P「てっきり?」

ルキトレ「何でもない、高垣さんは?」

P「控え室、出番までする事もないから」

867: 2013/09/23(月) 14:52:17 ID:mjfumOvE
ルキトレ「Pは?」

P「他のアイドルのチェック、トップ層が出てくるから参考になる」

ルキトレ「ニュージェネレーションもだよね」

P「生で見るのは初めてだからな、楽しみだ」

ルキトレ「話さなくていいの?」

P「加蓮と奈緒に黙って何かするのも悪いし、何より今は仕事中だ」

ルキトレ「楓さんとは話さなくていいの?」

P「昨日と言っていることがまるで違うが」

ルキトレ「その……本当に正直な話、どう思ってる?」

P「楓さんについて?」

ルキトレ「そう」

P「この前、何か言われたのか?」

ルキトレ「あの人が何のためにアイドルしてるか知ってる?」

868: 2013/09/23(月) 14:52:52 ID:mjfumOvE
P「聞いたのか?」

ルキトレ「何も知らずに避けてた自分が恥ずかしい、考えなしに言いたい放題して。それで瑞樹さんに相談したんだけど」

P「けど?」

ルキトレ「いつの間にかPの話になってて」

P「はあ……で、楓さんは何て答えた?」

ルキトレ「聞いてきなよ、それが一番いいから」

P「まあ、誤解は解いておいた方がいいんだろうな」

ルキトレ「誤解?」

P「だって楓さん、俺があの三人と離れて自分がプロデュースされてる事に負い目感じてるだろ」

ルキトレ「だってそうでしょ? あんな形になって」

869: 2013/09/23(月) 14:53:30 ID:mjfumOvE
P「実は、ちょっと違う」

ルキトレ「どこが?」

P「これを言うと、今度は幸子達が変な事を考えかねないから黙ってたんだけど」

ルキトレ「何?」

P「時間もないし、楓さんの所に行ってくる」

ルキトレ「って、ちょっ、ちょっと!」

P「本番前には戻る」

ルキトレ「はあ、やっぱり一人で突っ走るんだから」

楓「はい」

P「すみません、Pです。いつもは入らないんですが、今日はちょっと」

楓「この前の事でしたら大丈夫です、歌えます」

870: 2013/09/23(月) 14:54:05 ID:mjfumOvE
P「歌えるでしょう、楓さんならどんな状況でも。ただ、一つ正直になろうかと思いまして」

楓「……」

P「楓さんをプロデュースすると知った時に俺がどう思ったか」

楓「はい、どんな理由でも受け止めます」

P「助かったって思ったんです」

楓「……はい?」

P「意外そうな顔してますね」

楓「あの、嫌じゃなかったんですか?」

P「それ以上に、限界が近づいてましたから。自分でダンスメインのレッスンを組んでおいてなんですが、
  あれ以上ついてたら倒れてたのは俺の方でした」

楓「どこか悪いんですか?」

P「まあ、多少は。日常生活に不便はありませんけど、長時間の運動はちょっと」

871: 2013/09/23(月) 14:54:45 ID:mjfumOvE
楓「ですが、それでも」

P「やりたい思いはありました。ただ、やっぱり体はついてこなかった。楓さんなら俺が指導する必要はまるでありませんから、
  体力面でも精神面でも楽だったんです。情けない話ですが」

楓「色々と教えてもらいました。アイドルとしての姿勢から、日々の生き方まで。何もなかったなんて事はありません」

P「それも、楓さんの力です。統括が見出してきただけの事はあるアイドルだなって、本当に感心したんです」

楓「でも、あの子達は」

P「思う部分があるのは一緒です、それに俺は彼女達にリベンジする機会は与えたいと思っています。途中で投げ出してしまった負い目もありますし、
  何より彼女達がどれだけできるか俺が見てみたいので」

楓「壁であれと、そういう事ですか」

P「そうあって欲しいと思います、内緒ですよこんな話。あいつらが聞いたら自分たちを責めかねませんから」

楓「今日、統括と話したんです。その、ライブの件で」

P「聞いてます、出演決定ですね。おめでとうございます」

楓「プロデューサーの体調をしきりに聞いてきました、何か知っているんですか?」

P「知っているんでしょう、俺は彼が全て悪いと思っている訳ではありません。その道を進むなら止めもしない。
  アイドルの為に、その思いが変わらない限りそれは変わりません」

872: 2013/09/23(月) 14:55:31 ID:mjfumOvE
楓「あの――」

P「本番ですね、少し長話になってしまいました。続きはまた。あ、そうだ」

楓「はい?」

P「楓さんの歌、俺は大好きですから。今日も楽しみしていますね」

楓「……はい」
  
ルキトレ「P」

P「楓さんは、次の次か」

ルキトレ「どうだった?」

P「すぐに変わるってのは難しいよ」

873: 2013/09/23(月) 14:56:23 ID:mjfumOvE
ルキトレ「そっか……ごめん、無理言って」

P「何かあれば俺の責任だよ、気にするな。俺が決めた事だから」

ルキトレ「次だね」

P「最初に聞いた時も、こんな感じだったな。あの頃とは何もかも違うけど」

ルキトレ「変わったら戻れないのかな」

P「さあ、分からない。でもそれも含めて受け止めるしか――」

ルキトレ「この曲って」

P「こいかぜだよ、変えてきたな楓さん」

874: 2013/09/23(月) 14:57:21 ID:mjfumOvE
楓「何だか、囚われの姫君みたいですね」

P「曲と合ってない気もしたんですけど、これはこれで……」

楓「これで?」

P「恐ろしいまでに似合いますね」

楓「そうでしょうか」

P「そのドレス、楓さん以外は着こなせそうにはありません」

楓「ありがとうございます……」

P「何か気になります?」

楓「いえ、この胸の所」

P「もう少し露出を控えた方がいいですか?」

楓「塩キャベツが食べたくなりました」

P「……はあ」

875: 2013/09/23(月) 14:58:23 ID:mjfumOvE
楓「似てません?」

P「似てる様な……って、あんまり注目させないで下さい」

楓「それも撮影用ですか?」

P「これですか? えっとうぉ!」

楓「はっとしますね」

P「そんな堂々とされても、鳩に驚いた俺が馬鹿みたいじゃないですか」

楓「よく使われるんです」

P「鳩が?」

楓「一緒に写ると絵になると」

P「確かに帽子も似合いそうですね、はっとだけになんてははははは」

楓「……きょとん?」

P「わざわざ口で言わなくても滑ったって自覚してますから!」

876: 2013/09/23(月) 14:58:56 ID:mjfumOvE
楓「檻の中の鳥、この部屋が檻の中なのに」

P「逃げ出したと思ってもまだ檻、か」

楓「唯、魅せる為だけに存在するんでしょうか」

P「それは鳩に聞いてみなければ何とも、確かにこれでは人形と変わりありませんが」

楓「翼があっても無くても同じですね」

P「持ち主も選べない、ただそこにいるだけの――」

楓「えい」

P「えっと、何で顔を」

楓「私は選べます」

P「楓さんは寧ろ……」

楓「ぼーっとしてどうしたんですか?」

877: 2013/09/23(月) 14:59:43 ID:mjfumOvE
P「もしかして、オッドアイですか?」

楓「あ……はい」

P「綺麗だなあ」

楓「その……そんなに見つめられても」

P「顔を向けたのは楓さんでしょう」

楓「そんなの知りません」

P「フリーダム過ぎますって」

楓「自由人ですから」

P「……はい、次は外ですよ」

楓「鳩って、ちゃんと戻ってくるんですね」

P「躾けられてるんでしょう」

楓「こんなに広い空があっても、綺麗な檻の中の方が居心地がいいんでしょうか?」

878: 2013/09/23(月) 15:00:16 ID:mjfumOvE
P「ここまでくると、野生では生きていけないってだけでしょう」

楓「空の青さを知っていても、それでも檻の中で誰かの為に生きていきたいと思う鳥もいるかもしれません」

P「また酔狂な」

楓「お酒は大好きですから」

P「酔っぱらってませんよね?」

楓「空を飛んで綺麗な景色を見たって一人では意味がありません」

P「行けばいいんですよ、一緒に行ける誰かと」

楓「私はここにいます、何があっても」

P「……何も知らない訳ではないんでしょう?」

楓「それはプロデューサーも同じはずです」

P「はは、お互い様ですか」

879: 2013/09/23(月) 15:00:53 ID:mjfumOvE
楓「檻の中にいても、自由に空は飛べるかもしれません」

P「どれだけ大きな檻が必要なんですか、それ」

楓「檻の中だと鳥が気付かなければ、広さなんて関係ありません」

P「それはそうですが……」

楓「檻の中にいる事すら知らぬまま、空を飛べるならきっとその鳥は檻から出ようなんて考えもしません」

P「俺はそこまで広くないですよ」

楓「私はこの鳩よりも小さくて臆病ですから」

P「……」

楓「だから、充分なんですよ」

880: 2013/09/23(月) 15:01:30 ID:mjfumOvE
ルキトレ「何か……変わった?」

P「何でなんだろうな、本当に」

ルキトレ「やっぱり何かあった?」

P「分からない、分からないけどやっぱり今日も楓さんの勝ちみたいだ」

ルキトレ「勝つ気でいたの?」

P「負けず嫌いなんでね」

ルキトレ「ニュージェネレーション」

P「事務所のエースのご登場だ」

ルキトレ「凄い歓声」

P「今日の一番だな、客層を考えれば当然か」

ルキトレ「……ねえ、始まったけど」

P「見るのが初めての分際で何も言いたくないけど、同じ事を考えてると思う」

881: 2013/09/23(月) 15:02:14 ID:mjfumOvE
ルキトレ「合ってない」

P「客に見せられる最低限、という評価しか与えられない。それでも形にしてるのは見事だけど」

ルキトレ「どうしちゃったんだろう? 卯月ちゃん、あんなに張り切ってたのに」

P「そもそもハードスケジュールなんだよ、俺だったらツアー以外の仕事は極力避ける。1ヶ月で
  7公演も入れてるんだから」

ルキトレ「やっぱり疲れだよね」

P「いくら売り出し時とは言ってもな……」

ルキトレ「ちょっと、声掛けてくるね」

P「分かった、今度はちゃんと携帯見ろよ」

ルキトレ「分かってる!」

P「本当かな」

882: 2013/09/23(月) 15:02:46 ID:mjfumOvE
楓「携帯は携帯しないと意味がありません」

P「ギャグになってませんよ」

楓「ただの注意です」

P「何で曲を変更したんです?」

楓「してません」

P「はい? だって曲目は」

楓「それ、嘘です。本物はこっちに」

P「は!? いつ?」

楓「最初に送られてきた時に、こっそりと」

P「俺がスタッフに確認してたらばれる様な嘘ついて何になるんですか」

楓「思い出してくれたらいいなあ、と思いまして」

P「歌う理由ですか」

楓「はい、思ったとおりでした」

883: 2013/09/23(月) 15:03:41 ID:mjfumOvE
P「何でそんな回りくどい事を」

楓「歌でないと伝えられませんから」

P「何をまた」

楓「今日のセット、見てました?」

P「楓でしょう、植物と名前が一致してるとやっぱりそういうイメージで見られがちですね」

楓「青々と茂る葉よりも、散る時の方が奇麗なんです」

P「楓さんは楓ではありませんよ」

楓「楓でいいんです、最後まで見てもらえますから」

P「散った後はどうするんです?」

884: 2013/09/23(月) 15:04:49 ID:mjfumOvE
楓「さあ、どうしましょうか。風に乗ってゆらゆら揺れながら考えます」

P「そういえば……ニュージェネレーションって」

楓「おかしかったですね」

P「疲れですかね、何か動きが」

楓「いえ、疲れではありません」

P「疲れでなかったら、何です?」

楓「気負いです」

ルキトレ「卯月ちゃん!」

卯月「あはは、恥ずかしい所を見られてしましました」

ルキトレ「大丈夫? やっぱり疲れが――」

凛「疲れじゃない、万全だった」

未央「ちょっと出鼻を挫かれちゃったかなー」

885: 2013/09/23(月) 15:05:26 ID:mjfumOvE
卯月「今日は私達の負けです、予想外の歌声で変に気負っちゃいました」

ルキトレ「負け? 何の勝負?」

未央「次は負けないようにしないとね、連敗なんてしたらニュージェネレーションの沽券に関わる!
   なーんて」

凛「当たり前、帰って練習」

ルキトレ「練習って」

卯月「次はもっと頑張りますから、その時はまた見に来て下さいね。それでは失礼します」

ルキトレ「何…何と戦ってるの……」

886: 2013/09/23(月) 15:05:58 ID:mjfumOvE
ありす「お疲れ様でした」

P「って、本当にいるのか」

ありす「何でそんな事で嘘を付かないといけないんですか」

P「いや、日が変わる一歩手前だぞ」

ありす「いいじゃないですか、どうせ夏休みです」

P「用があるならさっさと終わらせるか、いつまでも話してても眠いだろ?」

ありす「時間はありますから心配いりません」

P「時間はあるって……」

ありす「明日は少し遅いですよね?」

P「出勤か? 何もなければ10時からの予定だけど」

ありす「なら大丈夫ですね、行きたい所がありますから」

887: 2013/09/23(月) 15:06:28 ID:mjfumOvE
P「車か?」

ありす「タクシーを呼んでます、仕事終りに運転なんてさせたくありません」

P「変に気を使うなって」

ありす「いいんです、私のわがままですから」

P「目的地は聞かないほうが良さそうだな」

ありす「有名な所ではありません、人がいても邪魔ですから。お願いします」

P「運転手にも伝えないのか?」

ありす「伝えてあります、先に行ってる人がいますから」

P「仕掛け人がもう一人いるのか」

ありす「誘おうか迷ったんですが、このままだと後ろめたいので」

P「何かやっちゃったのか?」

888: 2013/09/23(月) 15:07:22 ID:mjfumOvE
ありす「多分」

P「多分?」

ありす「それも今日、分かります」

P「最近、意味深な発言だけして解説してくれない事が多くなってきた気がする」

ありす「大丈夫です、そこまで深刻でもありませんから。もう着きます」

P「公園……にしては」

ありす「公園ですよ、調べたらすぐに出てきました」

P「深夜のピクニックか? それはそれで悪くないが」

ありす「お待たせしました」

肇「いえ、私も着いたばかりですから」

P「肇か」

肇「はい、藤原肇です」

889: 2013/09/23(月) 15:07:55 ID:mjfumOvE
P「何でこの組み合わせなんだ?」

ありす「Pさんのせいです」

P「俺が何かしたか?」

ありす「まだ分からなくていいです」

肇「そうですね、今日の主役は私達ではありませんから」

P「主役?」

ありす「空ですよ」

P「……言葉を失うな、これは」

肇「ありすちゃんがのあさんに教えてもらったそうで、お誘いを受けたんです」

ありす「ペルセウス座流星群って言うんです」

P「名前は聞いた事あるけど、そっか東京でも見えるんだな」

890: 2013/09/23(月) 15:09:21 ID:mjfumOvE
肇「二人で、とは思わなかったの?」

ありす「飲んでしまいましたから」

肇「……気にしなくていいのに」

ありす「いいんです、流れ星もこれだけありますから。二人だけでは多すぎます」

肇「願い、叶うかな」

ありす「叶いますよ、これだけあるんですから」

肇「うん、叶うといいな」

終わり 次回は今月中には何とか

891: 2013/09/24(火) 02:57:41 ID:sGzRYmGM
乙乙乙

引用元: ありす「心に咲く花」