118: 2013/11/29(金) 18:17:55 ID:isgSSEeQ
モバマス連作短編21
ニューウェーブ「寄せては返す波の様に」

あい「これで一通りは回った事になるのかな?」

P「大体は終了です、しかし」

あい「しかし、なんだい?」

P「プロデューサーの営業にアイドルがついてくるって異例にも程があるんですが」

あい「君はプロデューサーとしてアイドルの仕事に付くだろう、同じ事さ」

P「同じなんでしょうか」

あい「こうしてスーツを着て歩くというのもいいものだ。どうした? 立ってないで座りたまえ」

P「えーっと」

あい「それともそこから私の脚を眺めていた方が休まるというなら、協力するのも吝かではないが」

P「違いますって!」
アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(8) (電撃コミックスEX)
アイドルマスター シンデレラガールズ シンデレラガールズ劇場(8) (電撃コミックスEX)

このSSはアイドルマスターシンデレラガールズの世界観を元にしたお話です。
複数のPが存在し、かつオリジナルの設定がいくつか入っています。
連作短編の形をとっており、
前のスレを読まないと話が分からない事もあるかと思います。

検索タグ:ありす「心に咲く花」

その為、最初に投下するお話は事前情報なしでも理解できる構成としました。
こんな雰囲気が好きだなと少しでも感じて頂けた方は前スレも目を通して頂ければ 嬉しく思います。
それでは、投下を開始します。
119: 2013/11/29(金) 18:18:32 ID:isgSSEeQ
あい「何の為に隣を空けていると思っているんだ?」

P「……失礼します」

あい「それでいい」

P「あいさんが着てるとスーツまで衣装に見えてきますね」

あい「素直に似合ってると言ってくれると嬉しいのだが」

P「俺に言われても仕方がないでしょう」

あい「本気でそう思っているのなら、君は一から勉強しなおした方がいい」

P「ありすからも似たような事を言われたような気が」

あい「そしてもう一つ、女性と二人でいる時は他の女の名は出さない事だ」

P「女って、ありすはまだ12ですよ」

あい「そう思っていると、いつか袋小路に追い詰められるのは君だよ」

P「笑い話として受け取っておきますよ」

120: 2013/11/29(金) 18:19:09 ID:isgSSEeQ
あい「……君を慕う子は多い。受け止めろとまでは言わないが、それでも」

P「誰も言わないんですよね、お前のやり方は間違っているって」

あい「君は優秀だ。熱心で、真っ直ぐで、そんな君を間違いだとは誰も言えないさ」

P「いつか誰かが泣くのだとしたら、それは全て俺のせいですから」

あい「半分は自己責任さ、私も黙ってその子に胸を貸すくらいはしよう」

P「行きましょうか、もう少しです」

121: 2013/11/29(金) 18:19:45 ID:isgSSEeQ
みく「今日のワンニャフルラジオのラジオは……大丈夫にゃ?」

比奈「多分……あー、大丈夫っス」

みく「眠そうにゃ」

比奈「昨日、寝たの陽が昇ってからで……やばいっス」

みく「頑張るにゃ! お仕事が忙しいのにゃ?」

比奈「いやー、漫画読んでたらいつの間にか」

みく「酷いにゃ!」

比奈「大丈夫っス、スタドリ飲んで来たんで」

みく「うにゃあ……じゃあ信じてコーナー行くにゃ!」

122: 2013/11/29(金) 18:20:25 ID:isgSSEeQ
比奈「今日のみくにゃん、このコーナーではリスナーの方からみくの日常を愉快に勝手に想像してもらうコーナーっス」

みく「じゃあ一通目を比奈にゃん宜しくにゃ」

比奈「ペンネーム、ヒノエウマ=アンペア=ボルト=ワットくんさんからっス」

みく「長いにゃ!」

比奈「まあ、拘りっスかね。今日もひとりぼっちなみくにゃん、ふらりと立ち寄ったお店で見つけたカップを手に取りご機嫌」

みく「終わりにゃ?」

比奈「そうっス」

みく「やっと、やっと平和な投稿が来たにゃ! こういうのでいいのにゃ!」

比奈「笑いがないっス」

みく「それでいいのにゃ! 今日は平和な日にゃ、平和が一番にゃ!」

123: 2013/11/29(金) 18:22:53 ID:isgSSEeQ
比奈「ペンネーム、蒼さんから」

みく「ゆったりした気持ちで聞けるにゃ」

比奈「手に持ったカップを会計に持っていこうとするみくにゃん、その背中に幼子の手を引いた母親の無言の視線が突き刺さる。どうするみくにゃん!? 
頑張れみくにゃん!」

みく「続き!?」

比奈「これはプレッシャーっスね」

みく「みくはどうすればいいのにゃ!」

比奈「三通目いくっスよ、ペンネーム紅さんから」

みく「どうするのにゃ」

比奈「突き刺さった視線を引っこ抜いたみくにゃん、背中の痛みをこらえレジに向かたみくにゃんに店員が一言」

みく「ドキドキ……」

比奈「非売品です」

みく「見られてたってそういう事にゃ!?」

比奈「そりゃ見られるっスよ」

124: 2013/11/29(金) 18:23:43 ID:isgSSEeQ
みく「変な小話を送ってくるコーナーじゃないのにゃ!」

比奈「いいじゃないっスか、平和で」

みく「そんな平和は望んでないにゃ!」

125: 2013/11/29(金) 18:24:15 ID:isgSSEeQ
頼子「秋……芸術、読書に適したこの季節。今日、お薦めするのはこの絵画……ブリュンヒルデの微笑み」

沙紀「何だか物々しいっすね」

頼子「ブリュンヒルデは戦場で命を失くした戦士達の命をヴァルハラへと導くワルキューレの一人」

沙紀「ワルキューレって何すか?」

頼子「戦場において氏を定め、勝敗を決する存在。この絵はまだワルキューレであった頃のブリュンヒルデを描いたとされる絵画」

沙紀「この人って、じゃあその戦場を見て笑ってるんすか」

頼子「それは画家にしか分からない、私達は想像するだけ」

126: 2013/11/29(金) 18:25:01 ID:isgSSEeQ
沙紀「それを考えて見ると何だか死神みたいで不気味っすね」

頼子「命を賭す者達の最後を見て何を思うか……考えてみるのもいいかもしれません」

沙紀「考えさせられる絵っすね」

頼子「明日もまた、新たな世界をお見せします」

沙紀「明日はあの名作の登場っすよ」

渚「今日はプロ野球が6試合、サッカーが9試合行われました。それでは友紀さんお願いします!」

友紀「おっけー! 今日はキャッツが初回から大爆発! 打者一巡の猛攻で6点を先制してそのまま圧勝! 優勝までのマジックを22としました!」

渚「……その他の試合は?」

友紀「以下のとおりです」

渚「端折りすぎでしょ!?」

晴「いつもの事だろ、お次は皆も待ってたか? サッカーの時間だ。今日は渚さんが言ったとおり9試合、まずはこの試合から――」

127: 2013/11/29(金) 18:25:40 ID:isgSSEeQ
P「……」

あい「何やら感傷に耽っているように見えるが?」

P「分かります?」

あい「折角、仕事も終わったんだ。ならこうして仲間の活躍を見るのも悪くはないさ」

P「何か、不思議なんです。俺の知らない所でもこうして皆が活躍して、頑張ってる。それでも同じ事務所の繋がりは確かにあって、
俺の顔を見ると手を振ってくれたりして」

あい「ここは特殊みたいだからね、他の事務所の子によく不思議そうな顔で聞かれるよ」

P「プロデューサーの数がこれだけ少なくてもやっていけるのは、そんなアイドルがいてくれるからなんだって改めて思ったっていうか」

あい「だからといって、君が不要になる日が来る事はないよ」

P「そこまでは思ってませんって」

あい「どうだろう、君は私の想像を常に越えてくるからね」

P「そんな事ありましたっけ?」

128: 2013/11/29(金) 18:26:19 ID:isgSSEeQ
あい「私にメイド服を着せたのはどこの誰だったか、ここで思い出させてあげようか?」

P「あれはほら、ノリです」

あい「全く、そういうところに無自覚だから苦労するんだ」

P「返す言葉もないです」

あい「さて、お喋りは控えようか。歌姫の出番だ」

P「西川さんか、16歳なんですね。驚きましたよ」

あい「色んな子がいる、その魅力を引き出すのが君の役目だ」

P「一日、ありがとうございました。お蔭で助かりましたよ、女性がいるとそれだけで場の空気が柔らかくなる」

あい「まだそれを言うのは早いな」

P「何かありましたっけ?」

あい「確か、ここは屋上にも行けるんだったね?」

P「ええ」

あい「少し、いいかい?」

129: 2013/11/29(金) 18:26:56 ID:isgSSEeQ
P「外で過ごすには、少し肌寒くなってきましたね」

あい「何だか動き始めてる気がして、話をしたくなった」

P「流石」

あい「そんな賞賛は今はいい、私が聞きたいのは」

P「結果なんて知りませんよ、情けないですが全てを知っている訳でもない」

あい「では、聖來さんの様子がおかしい事にも気付いていないのかな?」

P「最近、一緒に仕事をしていませんから」

あい「……理由を知っている顔だね」

P「大体の想像は付きます。ですが、その結果をどう受け止めるかも聖來さん次第です。俺の出番はありません」

あい「出来る事は何もないと?」

P「別にあいさんを蚊帳の外に置こうなんて思ってません。ただ、それほど大きな話でもありませんから」

あい「……信じていいのかい?」

130: 2013/11/29(金) 18:28:55 ID:isgSSEeQ
P「どう受け止めるかは、あいさん次第です」

あい「なるほど、好きにしろという訳だね」

P「生憎、これ以上は何とも――」

あい「凄い歓声だね」

P「この歌は、ニュージェネレーションか」

あい「流石エース、と言ったところか」

P「今日はLIVEバトルの日ですからね、ツアー中でもこうして出てくるのか」

あい「いつもより人も多いね、さて今日の相手は誰かな?」

P「……あんまり楽しい思いはできませんよ」

あい「なるほど、理解した」

P「普段なら、バランスを考えて組み合わせは考えられます。人気や実力も同じ位で、来た人がどちらに入れようか迷う様に」

あい「私もその配慮は分かっているしありがたいと思う、だが今日は」

131: 2013/11/29(金) 18:31:58 ID:isgSSEeQ
P「はっきり言います、ニューウェーブでは相手になりません」

あい「歓声も下がったか、これでは互いにやりにくいだろう」

P「会議で話す事もあるんですが、この事務所ユニットが少なすぎるんですよ。ソロで出来るのが多いというのもありますが、
  ニュージェネレーションとニューウェーブしかいないんですよ」

あい「特別に組む事は多々あっても、認知されていると言い難い事は確かだ」

P「迷走してるのは俺達の責任でもあります、この二組を上手く差別化できてないんですから。だからどちらかに人気が偏って
  しまう。だからこそ共演なんてさせてないはずだったんですけど、統括と女Pさん何を考えて……」

あい「君がニュージェネレーションを相手にするなら誰を出す?」

P「にゃんにゃんにゃんを、スケジュールを合わせるのに凄く苦労するんですけど
  あれも特別に組んだだけでユニットではないんすよね」

あい「あのユニット名は君が考えたのかい?」

P「いえ、あれも統括の案です」

あい「たまに、彼は思い切った事をするね」

P「それで結果が出てるんですから」

132: 2013/11/29(金) 18:32:46 ID:isgSSEeQ
あい「君はユニットを作ろうとか思わないのかい?」

P「ユニットですか……考えてる案はあります。本当に頭の中にあるだけのお話ですが」

あい「いつか実現するのかな?」

P「さあ、どうでしょうか。終わりましたね」

あい「圧勝と言うべきか、惨敗と言うべきか」

P「何とも言えませんね、実力にそこまで差はあるとは思ってませんが」

あい「なら、君はあの二組の差は何だと思っているんだい?」

P「ニュージェネレーションって、最初からニュージェネレーションとして活動してた訳じゃないんですよ」

あい「それが問題だと?」

P「だからこそ、ユニットにとらわれない活動ができる。最初からユニットとしてデビューしてしまうと、そこから踏み出すのが
  難しいんですよ。あのユニットの誰々だ、なんて言い方もされますし」

あい「ニューウェーブはまだ踏み出せていない、か」

P「女Pさんや本人達がどう考えているか知りませんが、今のままだと埋もれていくだけです。変わらなければ、ニュージェネレーションと
  ずっと比較され続ける事になる」

あい「アイドルとして生き残る為の、踏ん張り所だね」

133: 2013/11/29(金) 18:33:23 ID:isgSSEeQ
亜子「アカン! 三馬身どころやない! 八馬身差や!」

泉「これが今の差、騒いでも仕方がない」

さくら「何かさぁ、もう最初から勝負が決まってるっていうかぁ」

泉「私達、女Pさんの顔に泥を塗ってばかりだね」

亜子「ここで思いつめてもどうしようもあらへんけど、それでも何とかしないと」

さくら「もう共演するの辞めようよぉ」

亜子「白旗掲げて平伏すんかい!」

泉「勝つとか負けるとかじゃない、ただ何かを変えないといけないのは事実」

亜子「何かって……」

泉「分からない、でも」

134: 2013/11/29(金) 18:35:11 ID:isgSSEeQ
さくら「それなりには売れてるのにぃ」

亜子「比較対象がでか過ぎやっちゅうねん!」

泉「三人でデビューするって決めた時から分かってた事、今更それを言うのは無し」

さくら「そんなぁ」

亜子「終わった事を考えても仕方あらへんけど」

泉「弟に、笑われちゃうね」

亜子「笑わへんよ、それはアタシが保証したる」

泉「……そうだね、頑張らないと」

女P「入るわね」

さくら「はぁい!」

女P「見たくないでしょうけど、今日の結果」

亜子「またシビアなものが」

135: 2013/11/29(金) 18:36:01 ID:isgSSEeQ
女P「有効票数2万9700票、ニュージェネレーション2万2351票」

泉「私達に入ったのは7349票ですか」

女P「そういう事ね」

亜子「これ……史上最大の差とか?」

女P「酷かったのは他にもある。ただ……やっぱりね」

さくら「どうしたって無理だよぉ」

泉「これで三連敗」

女P「票数の差なんてライブごとに変動するんだから、そこまで気にしなくていい。今回だって相手がいなかったから
   出てあげただけの話」

亜子「そうは言ってもなあ」

泉「女P」

女P「何?」

136: 2013/11/29(金) 18:36:45 ID:isgSSEeQ
泉「どうして私達はニューウェーブなんですか?」

女P「どういう事?」

さくら「あっちと名前が似てるってことぉ!」

女P「名前なんて一年も前に決めた事でしょ? 今更それを言ってどうするの」

さくら「分かってるけどぉ」

女P「ニュージェネレーションの事は考えなくていいから、貴方達には貴方達のファンがいる」

亜子「まあそうやけど」

女P「切り替えなさい、これも仕事の内よ」

亜子「行ってもうた」

さくら「本当にこれでいいのかなぁ」

泉「これから……どうすればいいのかな」

亜子「落ちたで、あれ? 珍しー」

さくら「イズミンが缶ジュース!」

137: 2013/11/29(金) 18:37:48 ID:isgSSEeQ
泉「ううん、貰ったもの。入ってたの忘れてた」

さくら「誰から貰ったの?」

亜子「スタッフとかやろ?」

泉「えっと、誰だったっけ?」

亜子「誰って」

さくら「そんなに前なの?」

泉「確か先月」

亜子「その間、ずっと鞄の中……」

泉「いる?」

亜子「いるかい!」

さくら「そろそろ帰る?」

138: 2013/11/29(金) 18:38:20 ID:isgSSEeQ
亜子「よっしゃ! 反省会といこか」

さくら「美味しいもの食べたら元気になるかも」

泉「そうだね、たまにはそういうのも」

亜子「なら食べる物は決まりや!」

さくら「なぁに?」

亜子「カツに決まっとる」

さくら「アコちゃんって時々、おっさんだよね」

亜子「お、おっさん……」

泉「早く行こう、遅くならないうちに」

さくら「はぁい、賛成」

亜子「ちょっと待たんかい!」

139: 2013/11/29(金) 18:38:50 ID:isgSSEeQ
さくら「コーラに砂糖を入れてぇ♪」

亜子「うっわ」

泉「もう慣れたでしょ?」

亜子「慣れても理解できへん」

泉「まあ、ね。席、戻ってるね」

亜子「りょーかい、いやーファミレスもええもんやね」

泉「気分転換にはなるかな」

美嘉「あ」

泉「美嘉さん」

莉嘉「あー! 泉ちゃんだ!」

美嘉「大声を出さないの、気付かれたらどうする訳?」

莉嘉「すごいぐうぜーん☆ みんなでご飯?」

140: 2013/11/29(金) 18:40:18 ID:isgSSEeQ
泉「まあ、ちょっと気分転換に」

美嘉「そういえば……」

泉「担当が同じだと、スケジュールもばれちゃうか」

莉嘉「何かあったっけ?」

美嘉「えっと、あたしたち邪魔?」

泉「そんな事。すみません、気を使わせてしまって」

莉嘉「ねえお姉ちゃんってば」

美嘉「あんたこの前の負けもう忘れたの?」

莉嘉「まけ?」

美嘉「6票差」

莉嘉「せっかく忘れてたのにー!」

美嘉「自業自得でしょ、そういうこと」

莉嘉「あれは奈緒ちゃん達が凄かっただけ!」

141: 2013/11/29(金) 18:41:18 ID:isgSSEeQ
泉「奈緒さんと加蓮さん?」

美嘉「宥めるの大変だったんだから、拗ねちゃうし」

莉嘉「拗ねてないもん」

泉「仕事を誰かが見てる訳でもなかったはずですよね」

美嘉「でも莉嘉の言う通り凄かった。アタシたちってさ、長く一緒にやってるから息が合ってるとか
   合ってないとか何となく分かるんだけど」

泉「合ってたんですか?」

美嘉「そうだね、悔しいけどあの時だけは負けたって思った。最近になって凄くなってきてるよ、あの二人」

泉「自分達だけでそんなに」

美嘉「ま、アタシたちも負けない様に頑張ろーよ。一回くらいでどうこうなる訳でもないでしょ?」

亜子「誰かと思えば」

莉嘉「おっつー☆」

亜子「おっつー、しっかし17にもなってオムライス」

142: 2013/11/29(金) 18:42:07 ID:isgSSEeQ
美嘉「べっつにいいでしょ! そっちは何?」

亜子「カツや!」

美嘉「カツ?」

亜子「肉も食わんと付くもんも付かないかもよ」

美嘉「そんなの無くてもいいし!」

亜子「ほんまかぁー?」

さくら「なになにぃー? 誰かいるのぉー?」

泉「本当に、すぐに賑やかになっちゃうんだから」

143: 2013/11/29(金) 18:42:53 ID:isgSSEeQ
統括「いつまであれの面倒を見る気でいる?」

女P「あれって?」

統括「分からないか?」

女P「アイドルをあれ呼ばわりされる覚えはないから」

統括「切り捨てる時は躊躇うな、自分の身を滅ぼすぞ」

女P「余計なお世話」

統括「一つ、チャンスをやる」

144: 2013/11/29(金) 18:44:54 ID:isgSSEeQ
女P「チャンス?」

統括「使うか使わないかは自分で決めろ」

女P「何このファイル?」

統括「他の事務所から適当に名前を挙げておいた、好きなのを選べ」

女P「ふうん、こういう事もするのね」

統括「得意だろう?」

女P「……受け取っておくわ」

145: 2013/11/29(金) 18:45:59 ID:isgSSEeQ
先P「おう、早いな」

菜々「早いなって、スケジュールを組んだの先Pさんですよ」

先P「違いないが、俺はもう少し遅くてもいいと伝えたはずなんだがな」

菜々「久しぶりのLIVEですから、身体を動かさないと」

先P「年を考えると始動も遅いってかそりゃ大変ぐはっ!」

菜々「レッスン場に行ってますね♪」

先P「お、おう……」

藍子「今のは擁護しません」

先P「ここのアイドルはおじさんに冷たいねえ」

藍子「そんな事ありませんから、早く体を起して下さい」

先P「へいへい。で、ゆるふわちゃんはおじさんに何の用かな?」

藍子「統括さんから言われて来たんですけど、何も聞いてませんか?」

146: 2013/11/29(金) 18:47:26 ID:isgSSEeQ
先P「統括? ちょっと待ってろ……俺には何もないな。Pか女Pか、ドジっ子はどっちだ?」

藍子「パソコン、見ちゃっていいんですか?」

先P「俺達のは二重ロックになっててな、最初のパスは全員が知ってる。二つ目に入ってたら俺もお手上げだが、共有情報ならこっちにあるだろ。
   あったあった女Pの方に、レコーディングの日程か。こんな大事な物をあいつは何で放置してんだ」

藍子「よかった、メモしますね」

先P「おう、終わったら言ってくれ。一応、他のは目に入っても見なかった事にしとけ」

藍子「見ません。はい、これで終わりました」

先P「早いな、ばれない内にとっととっと、新着メールか」

藍子「見ちゃうんですか?」

先P「重要な案件だったら教えた方がいい、携帯もそこにある。煙草でも吸いに行って忘れてんだろうさ」

藍子「いいんでしょうか」

先P「彼氏からのデートの誘いならOKしとくさ」

藍子「そんな調子のいい事ばかり言うんですから」

147: 2013/11/29(金) 18:48:12 ID:isgSSEeQ
先P「新着2件。先月の実績表か」

藍子「実績?」

先P「こんなんだよ」

藍子「これ、私が見たら駄目です!」

先P「別にいいさ、うちのプロデューサーどもは真面目に働いてんのか知りたいだろ?」

藍子「皆さん一生懸命になってくれてるのは知ってます」

先P「全米が泣きそうな台詞をどうも、今月は……こんなもんか」

藍子「統括さん、凄いですね」

先P「事務所開設以来、トップから落ちた事はない。毎月恒例の醜い二位争いに、どこまでもマイペースな最下位」

藍子「低いんですか?」

先P「いや、一人当たりの仕事にすればまあまあだ。他に十代のプロデューサーなんて765にいるのしか知らないが、ここも当たりを引いたことは確かだ」

藍子「凄いんですね」

先P「それを言うならアイドルだって大したもんだよ、これが先月のアイドル達の実績表」

148: 2013/11/29(金) 18:49:15 ID:isgSSEeQ
藍子「シンデレラガールズって、こんなに」

先P「うちの稼ぎ頭だ、統括もこの二人だけで食ってける位だからな」

藍子「やっぱり、人気に直結するものですよね」

先P「金を落とさせる能力に長けてる奴は生き残る、そんだけ厳しい世界ってこった。ここにいるのはとりあえずは安泰だが、
   だからといってこの先がどうなるかは誰にも分からない」

藍子「生きていけなくなったら……その時は」

先P「潔く身を引くか、抗うか」

藍子「抗う」

先P「どんな道を選んでもこの世界にいたいなら、そういう道を選ぶ子もいるって事だ」

藍子「どんな道でも、ですか」

先P「そういうこった。さてもう一つのメールは、と」

藍子「統括からですね」

先P「何で一緒に添付してないんだ? いや、俺とPには内緒か。珍しいな、本当にデートの誘いか?」

149: 2013/11/29(金) 18:50:47 ID:isgSSEeQ
藍子「これは絶対に駄目です」

先P「分かってるよ、これでも紳士なんでね」

藍子「私は行きますけど、勝手に見たら言っちゃいますからね」

先P「廊下の隅でバケツ持って震えておくよ」

藍子「また」

先P「行ってこい、お前のファンが待ってる」

藍子「はい、失礼します」

仁奈「お仕事でごぜーますか?」

先P「ん? いや、お遊びだ。今日は何だ、イカか?」

仁奈「白いタコでごぜーますよ」

先P「何だそれ、旨いのか?」

150: 2013/11/29(金) 18:51:24 ID:isgSSEeQ
女P「いいわね、遊んでる暇があって」

先P「お蔭様でね」

女P「あんた、これ弄った?」

先P「高森にスケジュールを伝え忘れたお前が悪い」

女P「……しまった」

先P「それを見せただけだ、他は実績表を覗いたくらいだ」

女P「またギリギリで三位なのね」

先P「毎月、こうも競り負けるとなると俺も鷹富士を担当に付けてほしくなるね」

女P「ねえ」

先P「あん?」

女P「プロデューサーの仕事ってアイドルを上へ連れて行くことよね?」

先P「そんな十人十色な疑問に答える気はないな」

女P「私はそう思う」

先P「なら、それを信じて仕事するしかないだろ」

女P「……そうよね」

151: 2013/11/29(金) 18:51:58 ID:isgSSEeQ
亜子「二週連続でLIVEバトル?」

泉「また急な話ね」

さくら「今度は大丈夫かなぁ」

亜子「まあ、相手を見る限りそんな格上でもないけど」

さくら「これで負けたら連敗だよぉ」

泉「練習してきたことを練習通りに出せばいい、私たちにできるのはそれだけ」

亜子「考えてもしゃーない、とりあえずやるだけやろか」

さくら「勝ったぁ!」

亜子「自分でも信じられへん」

泉「気を使わせちゃったかな」

さくら「勝てば全てOK!」

亜子「そうやな、何か悩んでたのがアホみたいや」

女P「ええ、はい、ありがとうございました……礼はまたおって、はい、ええ次も」

152: 2013/11/29(金) 18:52:35 ID:isgSSEeQ
亜子「いやー、勝った後の飯は美味い!」

泉「あんまり大声出さない」

さくら「よかったぁ、これで安心」

亜子「ええ報告もできるな!」

泉「さっき電話してきた」

亜子「喜んどったやろ?」

泉「うん、最近はあんまりそういう報告をできてなかったから」

さくら「このまま順調にいけるかなぁ」

亜子「いけるいける! 悩んどっても仕方ないって事はもう分かったんやから」

泉「うん、次に帰る時にいい報告ができる様に」

亜子「このまま突っ走るだけや」

153: 2013/11/29(金) 18:53:28 ID:isgSSEeQ
女P「ありがとうございました」

統括「しかし、あっさりと手を出したな」

女P「いけませんか?」

統括「いや、いい事だ」

女P「初めてでもありませんから」

統括「何かあれば言うといい、力になろう」

女P「当面は、このままいきますから」

統括「分かった」

154: 2013/11/29(金) 18:54:12 ID:isgSSEeQ
春菜「LIVEバトルですか」

P「ついに、って感じだ」

春菜「一番手に私とはPさんもいいところに目を付けましたね!」

P「スケジュールの都合」

春菜「……嘘でもそこはそうだって言って下さいよ」

P「というか、俺が都合付けられるアイドルだとソロしかできないし、LIVEに慣れてるの多くないし」

春菜「ないないだらけじゃないですか」

P「千枝やありすにそういうのはまだ早いし、楓さんだと今度は相手がいない。肇とか千秋さんはドラマとかで忙しくて、
  沙紀は学園祭のシーズンはあちこちに引っ張りだこ」

春菜「聖來さんは?」

P「いやーえっと」

春菜「忙しいんですか?」

P「ここ一か月、会ってない」

155: 2013/11/29(金) 18:54:42 ID:isgSSEeQ
春菜「会ってない? 珍しいですね、仕事がなくても事務所に来たりするのに」

P「……まあ」

春菜「喧嘩ですか?」

P「いや、そういう訳じゃないんだけど避けられてる。連絡しても返事がなくて」

春菜「何したんですか」

P「うーん、理由は分かってるんだけど俺にはどうしようもないというか」

春菜「私から言ってみましょうか?」

P「いいか?」

春菜「猫カフェで」

P「猫でも犬でも狸でも」

春菜「とりあえず返事をする様にと言っておけばいいんですね?」

P「時間が空いたらでいい、今はこっちに集中しよう」

春菜「それで、初めての相手は?」

156: 2013/11/29(金) 18:56:07 ID:isgSSEeQ
P「みく」

春菜「緊張感が吹き飛びました」

P「凄くいい勝負になると思う、人気も同等だし」

春菜「それ位が盛り上がりますから、下手に格上だったりすると」

P「惨めだよなあ、曲の選定とかは俺がやるから。慣れてるのでいこう、リラックスして」

春菜「任せて下さい!」

P「無理に勝つ必要はないからな。同じ日は他に……ニューウェーブか」

春菜「ユニットですか」

P「そ、他に三組いるから」

春菜「ソロは私達だけですか?」

P「目立つチャンスだ、しっかりな」

157: 2013/11/29(金) 18:58:00 ID:isgSSEeQ
亜子「これで三連勝や!」

泉「うん、知らない内に力を付けてるのかも」

さくら「今度も頑張れるよぉ」

P「好調みたいだな、見るのが楽しみだ。おっと、みくにも伝えておかないと」

みく「Pチャン何でみくに付いてくれないのにゃ!?」

P「春菜とみくなら春菜」

みく「酷いにゃ、差別だにゃ!」

P「差別って、別に俺はどっちが勝っても公平に褒めるつもりだけど」

みく「じゃあ勝ったらご褒美頂戴!」

P「ご褒美?」

みく「その時はみくに付き合ってもらうのにゃ」

P「春菜に全力でいけって指示出しとく」

みく「何でにゃ!」

158: 2013/11/29(金) 18:58:46 ID:isgSSEeQ
女P「LIVEバトルデビューだそうね」

P「ああ、聞きましたか」

女P「身内同士なんて困った事をするわよね」

P「初めてなんでその方が春菜もいいかと思いますから」

女P「当日は私もいるから」

P「分かりました、ニューウェーブ楽しみにしてます」

女P「……そう」

P「そう? また妙な反応だな」

凛「いた」

P「本気でびっくりした、どうしたの?」

凛「一つ、教えてあげようかと思って」

P「女Pさんのしてる事か?」

凛「気付いてた?」

P「ニュージェネレーションに負けテンション最悪の状態から三連勝、誰だって疑う」

159: 2013/11/29(金) 19:00:30 ID:isgSSEeQ
凛「結果を聞いてちょっと不思議に思って統括に聞いたんだ」

P「回答は?」

凛「ノーコメント」

P「肯定と見た方がよさそうだな」

凛「上条春菜と前川みくはどっちを勝たせるの?」

P「どっちでもいいさ、勝ったら褒めるし負ければ反省会。その工程をあの人は無駄だとすっ飛ばした、
  それも一つのプロデュース方法」

凛「意味あるの?」

P「結果なんて出てみない事には分からないさ、それにある程度の実力がなければ勝たせてもらう事もできない。
  それで好調になるならそれも一つの方法だよ」

凛「私は嫌い」

P「なら、実力でねじ伏せればいい。そういう世界だ」

160: 2013/11/29(金) 19:01:00 ID:isgSSEeQ
凛「聖來さんとはどう?」

P「なるほど、原因は君か」

凛「私は話しただけ、何か言われた?」

P「接触すらないよ」

凛「そっか」

P「軽く言うね」

凛「大丈夫だよ、嫌われてる訳じゃないと思うから」

P「本当か?」

凛「隠し事はするけど嘘はつかない、もう行くから」

P「統括に見つからないようにな」

凛「人の心配してる場合?」

P「全くだな」

161: 2013/11/29(金) 19:01:38 ID:isgSSEeQ
春菜「つまり、ここは……」

P「春菜の場合、俺が弄らない方がいいんだよな。良くも悪くもそれで完成」

春菜「妥協されてます?」

P「いや、安定してるってのは長所だよ。変わり映えしないともいえるけど」

春菜「せめて短所から長所に直すような言い方にしましょうよ」

P「ぶっちゃけ、眼鏡アイドルっていう一つのジャンルを確立してるから普通のアイドルと比べようがないっていうか」

春菜「色物みたいな言い方に聞こえるんですけど」

P「どこの世界に振り付けの最中に眼鏡アピールするアイドルがいるんだよ」

春菜「お望みならもっと増やしますよ!」

P「あのなあ……って言ってる内に来たな色物」

みく「にゃ?」

162: 2013/11/29(金) 19:02:11 ID:isgSSEeQ
春菜「来ましたね」

みく「ふふふっ勝負にゃ!」

P「そういえばのあさん、バニーの服なんて着てたけど内紛でもあったのか?」

みく「違うにゃ、あれは……」

P「何だよ?」

みく「みくのハンバーグ勝手に食べたのにゃ! だからついかっとなって……」

春菜「なって?」

みく「猫失格にゃ! って怒ったらあんな事になってたのにゃ」

P「まず猫失格って何だよ、抜け目のなさとか猫らしくていいじゃねえか」

163: 2013/11/29(金) 19:02:44 ID:isgSSEeQ
春菜「簡単に取られるみくさんに問題があるのでは?」

P「それで出て行かれたのか、アナスタシアさんも愛想を尽かすのは時間の問題だな」

春菜「ああ、だから今回ソロなんですね。可哀想に」

みく「せ、精神攻撃なんて卑怯だにゃ!」

P「明日は貰ったな」

春菜「ふふん、眼鏡の力を思い知らせてあげますよ」

みく「思い知るのはそっちの方にゃ!」

164: 2013/11/29(金) 19:03:26 ID:isgSSEeQ
P「春菜お疲れ、いいライブだった」

春菜「あっけなかったですね」

みく「んにゃああああああああああ!!」

P「まさか第一声で噛むとは思わなかった」

みく「違うのにゃ……大事に大事にいこうと思ってたら」

春菜「大事にいきすぎたと」

P「言っちゃ悪いが、馬鹿だ」

みく「ふにゃあ」

P「ったく、後で反省会だ。シャワー浴びたら部屋で休んでろ、後で迎えに行くから」

春菜「にゃあ! Pチャン大好きにゃ!」

P「仕事見てるの統括だろうに、何で俺にくっついてくるんだ」

春菜「懐かれましたね」

165: 2013/11/29(金) 19:04:05 ID:isgSSEeQ
P「情は湧いてこないけどな」

春菜「またまた」

P「春菜も休んでていいぞ。悪かったな、手探り状態で行かせて」

春菜「栄えある一番手でテンションも上がってましたから、平気です」

P「眼鏡でユニットかあ」

春菜「だから比奈さんと真尋ちゃんあたりで!」

P「……考えるだけ考えておく」

春菜「ぜひ!」

P「どうした? 戻っていいんだぞ?」

春菜「個人的に興味のある子達ので、ここで鑑賞させてもらおうと思いまして」

P「ニューウェーブと仲いいのか?」

春菜「学校の後輩なんです」

P「凄い学校だな」

春菜「あんまり交流とかないんですが、それでも気になっちゃいまして」

166: 2013/11/29(金) 19:04:40 ID:isgSSEeQ
P「何となくその気持ちは分かる」

春菜「大丈夫でしょうか?」

P「見てみない事には何とも」

司会「以上、ニューウェーブのステージでした!」

P「……」

春菜「凄いですね、輝いてましたよ!」

P「やっぱりモチベーションってのは大きいな、前に見た時とは大違いだ」

春菜「文字通り、新しい波って感じです」

P「この分なら、もう必要ないだろうな」

春菜「何がです?」

P「何でもない。さて、祝勝会と反省会だ」

春菜「景気よくいきましょう」

167: 2013/11/29(金) 19:05:18 ID:isgSSEeQ
P「の前に、女Pさんに一声掛けてくるから車で待っててくれ。ほら鍵」

春菜「分かりました、今日の眼鏡を選びながら待ってます」

P「はは、楽しみにしてる」

女P「ええ、はい次もよろしくお願いいたします」

P「おめでとうございます」

女P「称賛ならあの子達にしてあげなさい」

P「いえ、今日の勝利は女Pさんの力ですよ」

女P「何が言いたいの?」

P「これでもプロデューサーですよ、分かるに決まってるでしょう」

女P「それで、やるなって止めに来たの?」

P「いえ、モチベーションを上げるにはいい方法だと思います。手放しで褒める訳ではありませんけど」

168: 2013/11/29(金) 19:09:03 ID:isgSSEeQ
女P「余裕ね」

P「そんなのありませんって。ただ、これならもう大丈夫ですよね?」

女P「まだよ」

P「まだですか?」

女P「そう、まだ」

沙紀「あの、Pさん?」

P「んー?」

沙紀「凄く難しい顔してますけど、何かあったんすか?」

P「いや、俺にはそんなに関係ない事なんだけど」

沙紀「問題が?」

P「かもしれないし、そうでないかもしれない。なあ、女Pさんが仕事を見てるアイドルで仲がいいのって誰かいるか?」

沙紀「聞きたい事でもあるんすか?」

P「少し」

169: 2013/11/29(金) 19:10:22 ID:isgSSEeQ
智絵理「あ……あの、何か?」

P「どういう繋がりだよ」

沙紀「伊吹に頼んでそこからっすけど」

P「バレンタインか……ここのアイドル全員が繋がってたりして」

沙紀「で、何を聞くんすか?」

P「その前に、体調はどう? もう良くなった?」

智絵理「すみません、ご迷惑をお掛けしてしまいまして」

P「あの後、女Pさんとは?」

智絵理「無理をしない様に、と」

P「それだけ?」

智絵理「あまり、たくさん話さない人ですから」

P「様子がおかしかったり、とかはないか?」

170: 2013/11/29(金) 19:11:24 ID:isgSSEeQ
智絵理「何かあったんですか?」

P「これから起こるかもしれない」

沙紀「また微妙な言い方っすね」

P「俺だって断定できないし、かといって誰かに相談もできないで困ってんだよ」

智絵理「聞きたいです」

P「言うと思ったし、意地悪な事を言うと言わせようと思った」

沙紀「チキンだ」

P「実は沙紀に最初に言ったのも計算があってな」

沙紀「DVD?」

P「BDを導入する財力は俺にはなくてな、画質は気にするな。そんなに長くは見せないから」

沙紀「LIVE映像っすね、いい盛り上がり」

P「参考にしたいってスタッフに言ったら貸してくれた。二ヶ月くらい前のLIVEバトルだそうだ」

171: 2013/11/29(金) 19:12:17 ID:isgSSEeQ
智絵理「ニューウェーブ……」

沙紀「やっぱり凄いっすね」

P「この光景をよく覚えておけよ」

沙紀「他にもあるんすか」

P「次はこっち、先週のLIVEバトルの時の映像だ」

智絵理「こっちも、さっきと同じ様に見えます」

沙紀「全く違うっすね」

智絵理「え?」

P「沙紀だからすぐに気づける、俺でも気付くのにもう少し掛かった」

沙紀「へへっ、そう言われると照れるっすよ」

P「何が違うか分かるかい?」

智絵理「何も変わらないと、思います」

P「こっちもこっちで流石だよなあ」

172: 2013/11/29(金) 19:13:10 ID:isgSSEeQ
智絵理「気づけないのにですか?」

P「沙紀、正解を」

沙紀「LIVEバトルは誰が出てくるか分からない中で、アイドル達がいかにパフォーマンスで観客を引きこめるかの勝負」

P「無作為に選ばれるからな、まあアイドル好きしか応募してこないからある程度の知名度があればすぐに観客も乗ってくれるんだけど」

沙紀「最初の方は段々と観客が盛り上がる……言ってみれば波っすね。それが奇麗に見えるんすけど」

智絵理「二回目は違うんですか?」

沙紀「最初から波が高すぎるっていうか、ピークが早いって思ったんすけど」

P「その要因は何だと思う?」

沙紀「こんなのあんまり言いたくないんすけど……サクラっぽいっすね」

P「95点」

沙紀「ありゃ」

智絵理「でもほとんど合ってるんですね」

173: 2013/11/29(金) 19:14:37 ID:isgSSEeQ
P「合ってる、作為的に観客を選んでるんだから。だけどニューウェーブくらいのレベルのアイドルならサクラなんて一発で気づく。
  そんな作られた声援を浴びたら彼女達は一発でこれは違うなってなっちまう、それだと意味がないんだ」

沙紀「本物のファンなんすね」

P「やり方は簡単、応募してきた中からニューウェーブのファンを優先的に選んで当選させるだけ」

智絵理「そんな事」

P「情報を仕入れて、相手と打ち合わせすればいいだけ。現に、超大手のプロダクションでもわざと弱い相手を用意するくらいの事はしてる。
  俺は道場って呼んでるけどな、若手のアイドルはそういう経験をしてライブに慣れていく」

沙紀「そういう手もあるんすね」

P「やり方は簡単だけど、必要な条件は多い。まず、相手の事務所に恩を売る価値があると思われなきゃこんな話は受けてもらえない。
  おまけに、ファンの数がある程度はいないと二週目でアイドルの方が気付く。同じ面子だらけだと流石におかしいってなるだろ?」

沙紀「で、それに何でアタシが気付くって思ったんすか?」

P「生の声に慣れてるだろ、学園祭とかで学生を相手にライブやったりするんだから」

沙紀「ああ、そういう事っすか」

174: 2013/11/29(金) 19:15:36 ID:isgSSEeQ
P「乗り気でなかったり、参加自体がめんどくさいと思ってるのだって当然いる。その中で何度もライブやってる沙紀なら、こういう事には敏感になる」

沙紀「まあ、そういう子達も最後は乗ってくれますから」

P「それは沙紀の力だよ、規模ももう少し大きくしていってもいいかもな。大学とかならまた違う空気の中でのライブになるし」

智絵理「あの、さっきの話ですけど」

P「ああ、気付けないのに流石って言った意味か。そのまんま、何の皮肉もない純粋な評価だよ」

沙紀「どういうことっすか?」

P「そういう空気が分からないってのは、そういう経験が一切ないって事。自分に興味のない人のいる場でライブした事ないんだと思う」

沙紀「そんなのありうるんすか?」

P「緒方さんならあるいは、トップ層にいる中でも最初から人気あったからなあ」

智絵理「そう、でしょうか……」

P「俺は実際に見てた訳じゃないから好き勝手な想像になってしまうけど、思う様な場所でライブのできないアイドルはたくさんいる。
  ステージに立って歓声が貰えなかったことはある?」

智絵理「私は、そこまで目を配る余裕がないだけです」

175: 2013/11/29(金) 19:16:15 ID:isgSSEeQ
沙紀「ステージ上で何を考えてるんすか?」

智絵理「頑張れば、認めてくれるかなって」

P「女Pさんに?」

智絵理「はい。あの、もう行きますね。お話、ありがとうございました」

沙紀「あのまま行かせていいんすか?」

P「緒方さん以外だったらこの話はしないつもりだった」

沙紀「何で緒方さんだったら話す気になるんすか?」

P「この前、ちょっとありすとの仕事の帰りに鉢合わせしたんだけど。何か余裕がなかったんだよ、あの子。仕事が一つお蔵入りになった所で人気が左右される
  レベルでもないのに、何でなんだろうってちょっと気になって……嫌な言い方をすると試したくなった」

176: 2013/11/29(金) 19:16:51 ID:isgSSEeQ
沙紀「どう動くか見るんすか」

P「何か互いに痛々しく見えた。あんな状態が続いたら遅かれ早かれどちらも潰れるんじゃないかって心配になって……」

沙紀「確かに余裕はなさそうっすね」

P「少し様子を見るよ。どの道、同じやり方を何回も続けさせる訳にもいかないからどこかで止める事にはなるんだが」

沙紀「上手くいくといいっすね」

P「本当にな」

177: 2013/11/29(金) 19:18:25 ID:isgSSEeQ
泉「智絵理さん、お疲れ様です。今日はどうしたんですか?」」

智絵理「ライブ、調子いいって聞いたからお祝い」

泉「ありがとうございます、早く追いつけるように頑張ります」

智絵理「これ、三人で分けてくれると嬉しいなって」

泉「クローバーの栞……いいんですか?」

智絵理「既製品だけど、似合うと思って」

泉「これを機に、さくらや亜子も本を読んでくれるようになるといいんですが」

智絵理「それで……もしよかったらなんだけど」

泉「何か?」

智絵理「次のライブ、すぐだよね?」

泉「来てくれるんですか?」

智絵理「迷惑じゃなければいいんだけど」

泉「いえ、ぜひ。楽しみが一つ増えました、最高のライブをお見せします」

智絵理「うん、じゃあまたその日に」

178: 2013/11/29(金) 19:18:56 ID:isgSSEeQ
泉「今日は少し大きい場所ね」

亜子「ま、今のニューウェーブなら大丈夫やろ」

さくら「心配しなくても三人なら大丈夫だよぉ」

泉「分かってる、武者震い」

亜子「ちょっと敵情視察してくるわ」

泉「相手に迷惑かけないようにね」

亜子「分かっとるー!」

さくら「今日はどんなライブになるのかなぁ」

泉「油断は禁物」

さくら「もう、イズミン心配性なんだからぁー」

亜子「お、ここか?」

179: 2013/11/29(金) 19:19:35 ID:isgSSEeQ
アイドル「ニューウェーブの土屋亜子?」

亜子「そうやけど、今日の相手さん?」

アイドル「そう、宜しくね」

亜子「こちらこそ、いい勝負にしようや」

アイドル「なるほど、知らないパターンか……まあいいや」

他P「何を話してる?」

アイドル「何でも。それじゃ、また後で」

他P「仲良くしてどうする」

アイドル「私を踏み台にして上へ行くのはどんな子かなぁーって」

他P「いずれ、お前が上へ行ける日も来る」

アイドル「来る訳ないでしょ。大丈夫、私はステージに上がれるだけ幸せだと思ってるから」

180: 2013/11/29(金) 19:21:24 ID:isgSSEeQ
智絵理「……」

美嘉「緒方智絵理?」

智絵理「はやひゅ!?」

美嘉「あ、ごめん。別に驚かせる気はなかったんだけど」

智絵理「あの、今日のライブを?」

美嘉「見に来た、好調みたいだしその元気を分けてもらおっかなって」

智絵理「開場時間だから、もう行きますね」

美嘉「後で莉嘉にも会ってくれないかな? お気に入りみたいでさ」

智絵理「今日は……ごめんなさい」

美嘉「忙しかった? 気にしなくていいって、また次の機会があったらヨロシク」

智絵理「次、多分すぐに来ます」

美嘉「そんな予定あった?」

智絵理「これから、入ると思います」

181: 2013/11/29(金) 19:22:02 ID:isgSSEeQ
先P「ニューウェーブ四連勝」

P「凄いですね」

先P「本気で思ってるか?」

P「次が限界でしょうね」

先P「だな、悪者やるか?」

P「どうやって? 普通に言って聞くと思います?」

先P「それをどうにかして聞かせるのが後輩の仕事だろ」

P「まあ、一つ手は打ちました」

先P「マジか」

P「マジです。正しい一手だったかは分かりませんが、何もしないよりはと」

先P「任せていいか?」

P「頑張るのはアイドルですよ、プロデューサーはあくまで舞台装置でしかないんですから」

182: 2013/11/29(金) 19:22:54 ID:isgSSEeQ
先P「お前は違うと思ってるが」

P「買い被りすぎで――」

先P「何の騒ぎだ?」

P「あんまり聞きたくないですけど、そうも言ってられませんか」

先P「はいどうも、報告が来たぞ」

P「ありがとうございます、さて」

先P「これがお前の一手か」

183: 2013/11/29(金) 19:24:37 ID:isgSSEeQ
P「間違ってはないです、この可能性も考えてましたから」

先P「女Pは知ってるのか?」

P「どうでしょう、この子が独断でやったのなら……あるいは」

先P「緒方智絵理ってどんな子だ? 関わりないから分からん」

P「俺だってそこまで関わりあるわけではありませんから」

先P「この子なりの罪滅ぼしのつもりか?」

P「女Pさんの為の、という意味かもしれません」

先P「何れにせよこのLIVEバトルは荒れるぞ」

P「見届けるしかありませんよ」

184: 2013/11/29(金) 19:25:53 ID:isgSSEeQ
美嘉「これ、どうなの?」

莉嘉「相手ってこの前、ニューウェーブに負けた人だよね?」

美嘉「勝負なんて最初から決まってると思うんだけど」

泉「やっぱりその話題ですか」

美嘉「何か聞いた?」

泉「それを私も聞こうと思ったんですが」

美嘉「行ってみないと分からないかな」

泉「女Pは?」

美嘉「返信ナシ」

泉「……スケジュール開いてますか?」

美嘉「開始は夜だから、何とかってところ。そっちは?」

泉「私だけですが、行けます」

185: 2013/11/29(金) 19:26:38 ID:isgSSEeQ
莉嘉「何? 何か問題なの?」

美嘉「その日、一日中あんたは仕事でしょ。気にしないでいいから」

莉嘉「また隠し事!?」

美嘉「後で説明はしてあげるから。じゃ、当日に」

泉「はい……本当に、どうしたんだろう」

泰葉「ちょっと、宜しいですか?」

泉「えっと」

美嘉「岡崎さん……でいいんだよね」

泰葉「はい、それで構いません。時間は大丈夫ですか?」

泉「何か私たちに?」

泰葉「少し気になったものですから、その……今回のLIVEバトルの件も含めて」

美嘉「も?」

泰葉「相手のアイドル、少し有名な子で」

186: 2013/11/29(金) 19:27:21 ID:isgSSEeQ
泉「名前は聞いた事のなかった人でしたけど」

泰葉「その……どういう言い方をすればいいのか分らないんですけど」

美嘉「どんな言い方でもいいって」

泰葉「わざと負けるんです、この事務所」

美嘉「わざと……って」

泰葉「やり方は様々です。ですが、智絵理さんのレベルならそういった方法を取らなくても勝てる相手なんていくらでもいるはずなんです。
   なのに、どうしてなのかなって少し気になったものですから」

泉「……女Pに聞いてみる」

美嘉「先週も同じだったって決まった訳じゃないよ」

泉「それでも!」

泰葉「先週?」

泉「先週、一緒にステージに立ちました」

187: 2013/11/29(金) 19:27:52 ID:isgSSEeQ
泰葉「それ、智絵理さんは知ってるんですか?」

美嘉「そういえば見に来てた」

莉嘉「じゃあ絶対に知ってるよ!」

泰葉「勝つなら実力通りの結果で問題ありませんが、もし負ける事がある様なら」

美嘉「そんなのアタシが許さない」

泉「智絵理さんはどこに……」

泰葉「プロデューサーの誰かがいればいいんですが」

泉「女Pの場所が分からないのに、誰に聞けば……」

泰葉「……相談してみます」

188: 2013/11/29(金) 19:28:55 ID:isgSSEeQ
P「やっぱり来たか」

泰葉「知ってましたか?」

P「俺もその子の事は知ってる、使った事はないが」

泰葉「智絵理さんに教えたのはPさんですね」

P「その通り、そして俺の想像通りならあの子は負ける」

泰葉「それが負けたアイドルへの贖罪ということですか」

P「女Pさんに対して依存的な面もあるから、負けた後にニューウェーブとLIVEバトルしようとするかもな。踏み台にされるのは私でいいとでも考えて」

泰葉「そんなの事務所も世間も許しません」

P「そう、だから女Pさんがどうするかなんだ。泰葉だけじゃない、瞳子さんや白菊さんだって気付きかねない問題だから、俺も早めに手は打ったんだけど」

189: 2013/11/29(金) 19:29:34 ID:isgSSEeQ
泰葉「智絵理さんが動けば解決するんですか?」

P「するしないに関わらず、やっぱり動くのは彼女達であるべきだと思う。俺が動いても意味がない」

泰葉「無いことは無いと思います」

P「負けると分かっている舞台に立てって言われたら、泰葉は立てるか?」

泰葉「Pさんの判断にお任せします」

P「俺は自分から立ってしまうと思うんだ。もちろん、泰葉の様にプロデューサーに従うのも当然の意見だよ。だけど今回の問題を解決するのに必要なのは、
  俺や泰葉の様なタイプの人間じゃないと思う。そろそろいい時間だ、今日はこれでおしまいにしよう。当日は俺も会場に顔を出すから」

泰葉「……プロデューサーなら誰にでも従う訳ではないんですよ、Pさん」

190: 2013/11/29(金) 19:31:07 ID:isgSSEeQ
ありす「扉の前に仁王立ちする趣味にでも目覚めたんですか?」

春菜「私がそんな事をする女に見えますか?」

ありす「一応」

春菜「コホン、あのですね。今、私はPさんから頼まれた重要な任務の真っ最中なんです」

千枝「Pさん?」

春菜「本当に名前を出したらどこからでも出てくるね」

千枝「えっへん」

ありす「Pさんがどうしたんですか?」

春菜「聖來さんと喧嘩したみたいです」

ありす「ありえません」

千枝「千枝も、流石にそれは」

191: 2013/11/29(金) 19:33:16 ID:isgSSEeQ
春菜「ここで衝撃の事実。あの二人、一か月会ってません」

千枝「Pさんと一か月も会えなかったら氏んじゃいます」

ありす「……氏にはしませんが」

春菜「それで話を聞きに来たんですが、応答がなくて」

千枝「お出かけ中でしょうか?」

ありす「分かりました、見かけたら声を掛けるようにします」

春菜「簡単に仲直りしてくれたらいいんだけど」

千枝「大丈夫です、Pさんと聖來さんならすぐに仲直りです」

春菜「そうだね、不在なだけかもしれませんし出直そうかな」

聖來「……」

192: 2013/11/29(金) 19:33:52 ID:isgSSEeQ
女P「準備はいい?」

智絵理「はい、ばっちりです」

女P「いきなり出たいなんて言いだして驚いたけど、大丈夫?」

智絵理「こういう事もしていかないと」

女P「出番は後だから、もう少しゆっくりしてなさい。普段のライブとは雰囲気も違うでしょうけど――」

智絵理「大丈夫です」

女P「智絵理?」

智絵理「ちゃんと歌いますから、聞いて下さいね」

アイドル「二回連続かあ」

他P「今回は、前回と条件が違う」

アイドル「勝ってもいいって言われても、勝てないし」

他P「俺はそうは思ってない」

アイドル「やるだけやるよ、私なりの歌を」

他P「明日の為に、だ」

アイドル「どんな明日なんだろうね、私達の明日って」

193: 2013/11/29(金) 19:34:48 ID:isgSSEeQ
泰葉「Pさん、本当に来たんですか」

P「それはどっちかって言うとこっちの台詞だ、何でそこまで気にするんだ?」

泰葉「あの子の最後のステージかもしれませんから」

P「そういう事か、緒方さん次第だろうな」

泰葉「Pさんこそ、わざわざ時間を空けてまで来た理由は?」

P「焚き付けたの俺だし、何かあったら責任取るのも俺。なら見届けようかなって」

泰葉「当たり前だと思っていた事が、ここでは特別なんですね」

P「俺達が異常なのか、それともここが特別なのか。どっちだと思う?」

泰葉「その問いに答えるのにはまだ、時間が足りません」

P「一つの答えを示してくれるのかもしれない、彼女が」

194: 2013/11/29(金) 19:35:39 ID:isgSSEeQ
泉「もうすぐです」

美嘉「自分のライブよりも緊張してきた」

泉「もし岡崎さんの話が本当なら」

美嘉「出来にかかわらず大した盛り上がりもなく終わるって話でしょ?」

泉「前回の時は覚えてますから、それが比較対象になります」

美嘉「気にし過ぎって事が分かるだけだって」

泉「それも、今から分かる事です」

アイドル「今日はみんな来てくれて――」

美嘉「って、何?」

泉「何で最初から!?」

泰葉「これ……」

P「どうなってんだ?」

女P「何で最初からこんな盛り上がり!? これじゃまるで……」

智絵理「……おめでとう、ごめんなさい」

195: 2013/11/29(金) 19:38:01 ID:isgSSEeQ
泰葉「Pさん!」

P「多分、緒方さんのやった事なんだろうけど」

泰葉「やっぱり」

P「あの子のファンを優先的に集めたのか? だけど個人でそんな事……」

泰葉「いえ、きっとこれは」

P「泰葉?」

「頑張れ!」

「今日は応援するぞ!」

「やっと来れた! 誰が相手でも絶対にやれる!」

泉「何、この雰囲気?」

美嘉「ちょ、ちょっとどうなってんの?」

泰葉「緒方さんは何もしていません、条件は対等です」

196: 2013/11/29(金) 19:42:03 ID:isgSSEeQ
P「なるほど、観客も分かってたんだな。この子がそういう環境で歌ってきたって」

泰葉「長くやってきた子ですから、知名度はあります。同情かもしれませんが、相手のファンがいない
    この環境なら票は彼女に集まるかもしれません」

P「そっか、だから出てきた途端にこの盛り上がりって訳か」

泰葉「緒方さんでも、今日の彼女を相手だともしかしたら」

P「そうだな、活き活きとしてる。相手のファンばかりの環境で歌ってきたんだもんな」

泰葉「ファンも長い間、待ち続けてたでしょうから」

P「これは決まったかな」

アイドル「ねえ、楽しかった」

他P「……ああ」

アイドル「やっぱり……楽しいよ……アイドル」

他P「よかった、これなら緒方智絵理にも勝てる」

アイドル「うん!」

197: 2013/11/29(金) 19:43:04 ID:isgSSEeQ
泉「雰囲気は完全に持っていかれてる」

美嘉「ここから逆転とか、できる?」

泉「厳しい、としか言い様がありません」

美嘉「だよね、どうするんだろ?」

泉「気を使ってもらわなくても大丈夫です」

美嘉「な、何の事?」

泉「私たちの時と出来が全く違いました。そういう話が合った事はこれで……分かりました」

美嘉「それは本人に聞いてみないと」

198: 2013/11/29(金) 19:43:42 ID:isgSSEeQ
泉「今日の彼女を相手に勝つ自信が私にはありません、ステージに立っても結果は見えてます」

美嘉「最初からそんな事を言ってどうすんの!?」

泉「事実です、智絵理さんも分かっていたんでしょうね」

美嘉「代わりに負けようとしてるってこと……?」

泉「恐らく」

美嘉「やってみなくちゃ結果なんて分からない」

泉「分かります、こればかりはプログラムと一緒です」

199: 2013/11/29(金) 19:44:17 ID:isgSSEeQ
女P「智絵理」

智絵理「出番ですね、行ってきます」

女P「智絵理、あのね」

智絵理「いいんです、全て分かってましたから」

女P「……そう、それでこんな」

智絵理「だから、気にしないで下さい。ちゃんと歌ってきますから、見てて下さい。それだけで、いいですから」

女P「言われなくても、それくらい」

智絵理「なら、私は歌えますから」

P「出てきた」

200: 2013/11/29(金) 19:45:04 ID:isgSSEeQ
泰葉「何か、騒然としてますね」

P「事務所の中でもトップ層だ、普通にやればまず負ける事はない子なんだけど」

泰葉「その不敗神話も今日でストップかもしれません」

智絵理「あの、とっても素晴らしいステージでした。心が震えて、そんな方と一緒のステージに立てて嬉しいなって、そう思います」

泉「智絵理さん」

美嘉「ステージ上だとあんな風に喋るんだ」

智絵理「その余韻の中に浸っていられたら、って思いますけど、でもこれもLIVEバトルで、だから私もここで精いっぱい歌いたいと思って、ここにいます」

P「さて、どうする」

泰葉「始まる」

泉「な……」

美嘉「すご……」

泰葉「はは……そっか、そうなるんですか」

201: 2013/11/29(金) 19:46:06 ID:isgSSEeQ
女P「あんたには無理なのよ、智絵理。あんたじゃどんな風に歌ったって」

アイドル「見せつけられちゃってるなあ、さっきまで完全に私の場所だったのに」

P「楓さんや蘭子と同等か。やっぱり、この世界は残酷だな」

泉「勝つとか負けるとかそんなレベルじゃありません」

美嘉「アタシ達だって、ここまでは」

泉「智絵理さんには必要ありませんよね、よく分かりました」

美嘉「泉、ニューウェーブだって」

泉「それが女Pの選択! 彼女は勝てる、けど私達は勝てない!」

美嘉「今は確かにそうだけど、でもいつかは!」

泉「私達にいつか、なんて言葉は許されない」

美嘉「泉?」

泉「今日は帰ります、ありがとうございました」

202: 2013/11/29(金) 19:46:45 ID:isgSSEeQ
P「結果は見るまでもないよな、もう」

泰葉「Pさんなら、この後でもステージに立てますか?」

P「立つよ、今でも立てるなら立ちたいと思う。だけどそれは今の俺の答えで、あの時の俺がどう答えるかは分からない」

泰葉「私は、分からなくなってきました」

P「それでいい、迷うことを恥じるな。誰だって戸惑う、それで当たり前だ」

泰葉「それでも、出さないといけませんから。迷ったままステージに立っても」

P「これで拗れたら俺も謝らないといけないな」

智絵理「勝っちゃいました」

女P「勝ちに相応しい歌だったもの、誇りなさい」

智絵理「でも、これだと私は」

女P「……智絵理、あなたは何も気にしなくていい。今日の様に明日からもそのままで――」

智絵理「女Pさんの役に立てません」

203: 2013/11/29(金) 19:47:35 ID:isgSSEeQ
女P「あんたにそんな役は無理、今日で分かったでしょ? 私がプロデュースしてもこれ程のアイドルになれるんだから」

智絵理「だから、ニューウェーブも信じられないんですか?」

女P「そうよ、分かった? 私はそういうプロデューサーなの」

智絵理「自分を信じられないから、人も信じないんですか?」

女P「あの子達には時間がない、智絵理と同じ様にいけたなら私だって何もしない。けど、残念ながらあの子達に智絵理と同じ力はなかった」

智絵理「私と同じ力なんてありません、私はニューウェーブにはなれませんから」

女P「正論、アイドルにそう言われるのも情けないけど……自分のやり方を貫いてアイドルを潰す様な真似はもうしたくないの」

智絵理「そんなの、絶対に違います」

204: 2013/11/29(金) 19:48:16 ID:isgSSEeQ
女P「智絵理、どうして今日のLIVEバトルに出ようと思ったの?」

知絵理「私は女Pさんを信じてここまできたんです。だから、何の力がなくても勝てるって、示したくて!」

女P「それは私の力じゃない、ごめんね。こんなプロデューサーで」

智絵理「まだ続けるんですか!?」

女P「今日、泉と美嘉が見に来てた。選ぶでしょう、どうするか。もう一人、今日来てた彼についてみるのもまた一つ」

智絵理「そんなの……嫌です」

女「だから悪役は私だけでいい、帰りなさい。ここはいつまでも智絵理みたいな子がいていい場所じゃない」

205: 2013/11/29(金) 19:49:09 ID:isgSSEeQ
泉「と、いう結果でした」

さくら「はぁー、そっかー」

亜子「調子に乗ったらこうなるっていういい例やな」

泉「私達に残された選択はあまり多くない」

さくら「このまま続けるか止めるかって事ぉ?」

亜子「辞めるのは現実的じゃないやろ?」

さくら「お金まだまだ足りないもんね」

泉「それは私の問題だから、別に亜子やさくらが気にすることじゃない」

さくら「気にするよぉ!」

亜子「泉、それは言わん約束や。私達は三人でニューウェーブなんやから」

泉「辞めるのは無しにしても、このまま続けても必ずどこかで行き詰まる。それは女Pの問題じゃなくて私達の問題」

亜子「いつか勝てなくなったら……またずるずるといきそうやな」

206: 2013/11/29(金) 19:49:42 ID:isgSSEeQ
さくら「じゃあ、どうすればいいの?」

泉「提案がある」

亜子「また怖い顔しとるけど」

さくら「何かあるのぉ?」

泉「そのライブ、実は私と美嘉さん以外にも事務所の人間で来てる人がいた」

亜子「って事はその人も……」

さくら「知ってるかもしれない?」

泉「だから聞きに行こう。全てを曝け出してでも、その価値はあると思うから」

207: 2013/11/29(金) 19:50:19 ID:isgSSEeQ
P「そっか、見てたか」

泉「岡崎さんといる所を見かけましたので」

P「俺がどこまで知ってるかって言われてもな……あんまり耳触りのいい事は言えないぞ」

泉「そのつもりです」

P「四連勝は恐らく何らかの力が外部から働いてる可能性が大きいっていうのは?」

泉「何となく、ですが」

亜子「やっぱりか」

さくら「ずばっと言われちゃったねぇ」

P「自覚あったのか?」

泉「気づいたのは緒方さんのおかげです、恥ずかしながらそれまでは全く」

P「気付いたなら俺じゃなく女Pさんに聞いた方がいいと思うが」

208: 2013/11/29(金) 19:51:25 ID:isgSSEeQ
泉「……手詰まりなんです、このままじゃ」

P「順調に見えるが」

泉「このまま同じ方法を続けて勝ってもいつか限界が来ます」

P「続けなくても限界は来るぞ」

亜子「それは分かっとるけど、それでもどうにかせなあかんって話」

P「どうにかって……そもそも女Pさんは何で始めたんだ? 俺だってそういう手法に理解はあるけど、
  まだ焦る段階でもないだろ?」

泉「……時間がありませんから」

P「時間って、まだまだこれからだと思うけど」

亜子「ま、泉が話すなら止めはせんけど」

さくら「イズミン……」

泉「実は」

209: 2013/11/29(金) 19:52:12 ID:isgSSEeQ
杏「弟?」

P「そう、弟」

杏「病気か、大変だね」

P「で、治療費が中々に掛かるそうで」

杏「それでアイドル?」

P「まあ、あの年齢で稼ごうと思ったらな」

杏「0か100しかないのに、よくやろうと思ったね。全て無駄になるかもしれないのに」

P「それでもデビューはした」

杏「して、それから?」

P「伸び悩んでるのは事実、だからといって辞める訳にもいかない」

杏「事務所から貸せば?」

P「核心を突いてきたな」

杏「当然の感想だと思う」

210: 2013/11/29(金) 19:53:38 ID:isgSSEeQ
P「それ、実は社長に聞いてみた。知ってますかって」

杏「ふうん、何て?」

P「断られたって」

杏「よく分かんないけど、何で?」

P「返せるか分からないから」

杏「そんなに凄い額なの?」

P「詳しい額は分からないけど、現状で足りてないならそれなりの額なんだろう」

杏「また首を突っ込むんだ」

P「ただ、今回ばかりは解決法が見つからない。人気をいきなり上げられる方法なんてないし」

杏「その子って、危ないの?」

P「いや、それは否定された。もしそうなら形振り構ってないだろうし、問題は今の収入がいつか途絶えるんじゃないかって方だ」

杏「仕事なら喜んで譲る」

211: 2013/11/29(金) 19:54:15 ID:isgSSEeQ
P「お前とニューウェーブじゃ仕事が違いすぎる」

杏「そもそもさ、LIVEバトルって稼げるの?」

P「出れば分かるが、ファン数は増えるし賞金も貰える。だから道場なんてものがある、勝てなくなれば逆に搾取されるけどな」

杏「出続けてればいいじゃん」

P「それやって段々と勝てる相手が減ってきたから女Pさんもあんな手に出たんだ」」

杏「本末転倒、自業自得」

P「言うな、本人達も分かってる。デビュー当時はどうだったんだ? 俺が来る前だからよく分からないんだよ」

杏「失敗」

P「失敗って、何かやらかしたのか?」

杏「大々的に売り出されてた、イベントの主役だったし」

212: 2013/11/29(金) 19:54:51 ID:isgSSEeQ
P「そのイベントが駄目だったのか?」

杏「何というか、キャラが受け入れられなかったというか、そもそも売り出し方を間違えたというか」

P「統括から女Pさんに変わったのってそこら辺の事情が絡んでるのか?」

杏「さあ、そこまでは知らない」

P「となると、起氏回生で何かやるしかないが……そういえば俺が来てからあの子達の仕事って」

杏「主役はないね」

P「それは確かに焦る気持ちは分かるが……」

杏「それで、どうするの?」

P「一度、見る事にはなった。軽いレッスンだけどな」

杏「ふうん、いいんじゃない」

P「それでどうにかるのか、自信はまるでないな」

杏「自業自得」

P「分かってるよ、それでも何とかするのが俺の仕事」

杏「後悔しないといいけど」

213: 2013/11/29(金) 19:55:24 ID:isgSSEeQ
P「何だこれ!?」

泉「えっと、今までのスケジュールですが」

P「LIVEだけ?」

亜子「それも、異常なんか?」

P「デビューした時はイベントの主役だったって聞いたけど」

亜子「懐かしい話やなあ」

P「それがこれ? 女Pさん何をしてたんだよ……」

さくら「それはまあ……その」

泉「あの頃は色々と手探りでしたから」

P「何で俺を頼ってきたのか分かってきた、何かやらかしたな?」

亜子「まあ、さくらの迷台詞があったんやけど」

P「名台詞? ファンに向かって何か言ったのか?」

214: 2013/11/29(金) 19:56:06 ID:isgSSEeQ
「プロデューサーさん、わたし営業のお仕事に向いてないんじゃないかなって思うんですけどぉ」

「むぅ…プロデューサーさん、今日は全然営業のお仕事が出来なかったですねぇ…」

「プロデューサーさんってもしかして…ちょっと優柔不断な感じですかぁ?」

「こんなことばっかりじゃ、わたし心配になっちゃいますよぉ! プロデューサーさぁん!」

P「統括にこれ言ったのか? 馬鹿だろ」

さくら「うわぁんこの人やっぱり嫌!」

亜子「まあまあ、もう昔の事やから」

泉「……本当に、何と言ったらいいのか」

P「女Pさんよく引き受けたな」

さくら「感謝してまぁす」

P「何でそんな事情でそんな台詞が……ああ、焦りか」

215: 2013/11/29(金) 20:04:24 ID:isgSSEeQ
泉「早く上へ行かないとって焦ってばかりで、私や亜子も口には出さなかっただけで」

P「統括もそんなんで放り投げるなよ、子供の言う事だろ。しかも事情は似てるんだし……」

泉「似てる?」

P「何でもない。過去は俺にはどうにもできないし、とりあえず通しでやってみよう」

さくら「どう?」

P「じゃあ、次」

さくら「次?」

P「次」

亜子「嫌な予感が……」

P「その反応には訳がありそうだな」

泉「私達、曲のレパートリーがあまりなくて」

216: 2013/11/29(金) 20:05:03 ID:isgSSEeQ
P「ちょっと待った、リストとかある?」

泉「リストですか、これでいいでしょうか?」

P「……なるほど、LIVEバトルに特化してるのか。完成度がやたら高いから、他はどんなのだろうと思ったんだけど」

さくら「褒めてくれた?」

P「うーん」

泉「そういう訳ではなさそうですね」

P「勝率もそれなりにいいし、大概のアイドルには勝ってきたんだろう。そういうアイドルもありなんだが……負のスパイラルに陥りやすいんだよなあ」

泉「それを強引に解消しにいった結果が、今です」

P「その特化してる部分でさえニュージェネレーションには負けてるとなると……女Pさん、本当に数字を重視してやってんだな。ここまでとは思ってなかった」

亜子「どうしようもないとか?」

217: 2013/11/29(金) 20:07:50 ID:isgSSEeQ
P「ちょっと試したい。さっきの曲でいいから、何度か繰り返してくれないか?」

卯月「……」

未央「おやおやー? そんなに真剣に何を見て――」

卯月「ニューウェーブの人達が練習してるんだけど……」

未央「って、あのプロデューサー!?」

卯月「確か、女性のプロデューサーだったよね?」

未央「これは……事件の匂いがするねえ」

P「普段からトレーナーさんが見てるのか?」

泉「そうですが」

P「まあ、プロデューサーからの意向は尊重するもんなあ、かといって……うーん」

さくら「何かまた渋い顔してるよぉ」

亜子「宣告前の空気や」

218: 2013/11/29(金) 20:09:03 ID:isgSSEeQ
P「はっきり言う、スタミナが無さすぎだ」

さくら「スタミナぁ?」

泉「でも、まだこれ位なら」

亜子「別に、他のアイドルとのレッスンもこなしとるけど」

P「違う、もっと言うなら集中力の使い方って言い替えようか。LIVEバトルの間でも、他のアイドルは仕事を入れる」

泉「いけない事なんですか?」

P「仕事ってのはライブだけじゃない。ドラマやコンサート、営業にグラビアと山程ある。その辺りへの力の振り分けができてないのに、
  他のアイドルとレッスンこなせたって満足してたらそこで終わりだ」

卯月「厳しい事も言うんだ」

未央「何かイメージと違うかも」

卯月「真剣なんだよ、真っ直ぐ向き合ってる」

未央「ここからどうなる……?」

219: 2013/11/29(金) 20:11:25 ID:isgSSEeQ
P「得意分野を持つ事と、一極集中ってのは違う。ライブで負けて行き詰って袋小路にはまるのは、他にできる事がないって自覚があるからだろ?」

亜子「耳が痛いけど」

泉「正論なんでしょうね」

さくら「うう……」

P「どんな形であれ勝ってるのに現状に満足できないなら、変わるしかない」

泉「変わる、か。今からできるのかな」

P「俺に聞かれても、と言いたいけど緒方さんをけしかけたの俺だしなあ」

さくら「はぁ?」

P「……睨むな、悪かった。だから本気でやる」

220: 2013/11/29(金) 20:12:17 ID:isgSSEeQ
泉「宣材写真からですか?」

P「生徒手帳かと思ったぞ、あれ」

亜子「確かに固い」

さくら「笑えば可愛いのにね」

P「笑えば誰だって可愛いだろう……アイドルなんだぞ」

さくら「かわいい? サービスショット!」

P「ぶっとばしたくなる」

さくら「やっぱりこいつ嫌だぁ!」

P「本気でぶっ飛ばすか」

亜子「ええコンビや」

泉「……そうかな?」

221: 2013/11/29(金) 20:13:08 ID:isgSSEeQ
P「口を開けて、はい閉じて」

さくら「何か、地味」

P「鎧でも着せてエキストラで放り込むぞ」

さくら「天下統一!」

P「俺の方がまだ可能性が高い」

さくら「そんなことないもん!」

亜子「こういう事から逃げとったから、こういう事になったんかな?」

泉「効率だけを追い求めても、駄目だったのかな」

亜子「まあ、あの人の言う通り過去はどうにもならん。頑張ろ、そして女Pに示すしかない」

P「しかし、俺が片手間にやっても限界はあるなあ……ん?」

亜子「そこは自分たちで何とかするって、子供じゃないんやから」

P「そこにいるの、誰ですか? そこで見てる暇があるなら手伝ってもらいますよ」

222: 2013/11/29(金) 20:14:08 ID:isgSSEeQ
卯月「あ」

未央「いやー、ばれちゃってましたか」

P「……ニュージェネレーション?」

泉「いつから?」

卯月「ついさっきだよ、あはははは」

P「じゃあ俺がさっきまで見てたのは幻影なんだな?」

卯月「は」

未央「投降しよう、凛と同じタイプだよ」

卯月「そうだね」

卯月 未央「ごめんなさい!」

P「別に俺は怒ってないが、まさかこんな大物が隠れてたとは」

卯月「こうしてお喋りするのは初めてですね」

亜子「そうやけど、時間とか大丈夫なんか?」

223: 2013/11/29(金) 20:15:06 ID:isgSSEeQ
未央「いやー、私達はそこまで忙しくもないから」

卯月「凛ちゃんは凄いけどね」

P「まあ、全員が同じ人気とも限らないが」

卯月「ちょっと気になってたんです、凛ちゃんが張り切っちゃったからあんな結果になってしまって」

亜子「いや、あれは完全に実力差やし」

P「ライバル視してたりするのか?」

未央「屋上にいたでしょ?」

P「マサイ族かよ」

さくら「見てたんですかぁ?」

P「何となくな、仕事の終りにちょっと見ただけだ」

未央「いやー、照れますな」

P「照れるって……もう何百回としてきた事だろう?」

224: 2013/11/29(金) 20:15:53 ID:isgSSEeQ
未央「あれ、しぶりんから聞いてない?」

P「まあ、ざっとだが」

未央「なら、そういうこと」

卯月「お詫びとして、協力できることはします!」

泉「いいんですか?」

卯月「私も勉強になりますから」

P「願ってもない話だけど……島村さんちょっと」

卯月「はい?」

P「統括にばれたら不味くないのか?」

卯月「大丈夫です、今日は凛ちゃんにずっとついてますから」

P「だが、何で事情を知ってるのに」

卯月「美穂ちゃんと泰葉さんのお礼です、二人とも元気にしてくれたんですよね?」

225: 2013/11/29(金) 20:16:53 ID:isgSSEeQ
P「泰葉……さん?」

卯月「私にとっては大先輩ですから」

P「ありがとう。ごめん、何か誤解してたみたいだ」

卯月「仕方ありません、それに……」

P「それに?」

卯月「いえ、まずは何からお手伝いしましょうか?」

P「宣材写真見て思ったんだけど、ニュージェネレーションは統一感がまるでないんだな」

卯月「別々に撮りましたから」

未央「まさかこんな風になるとは思ってなかったからね」

泉「個性がいるのかな」

226: 2013/11/29(金) 20:17:40 ID:isgSSEeQ
亜子「よっしゃ! なら胸元開けるか!」

泉「え」

未央「はい、見ない」

P「言われなくても分かってる!」

さくら「個性……」

P「個性の塊が何を言ってんだ」

さくら「でも、イズミンやアコちゃんみたいなスタイルも胸もないし」

P「スタイルはともかく、胸のないアイドルなんてうちの事務所にもいくらでもいるだろ」

さくら「こういう時、どうすればいいんだろうっていっつも迷っちゃってぇ」

卯月「自分らしくしてればいいんだよ」

さくら「卯月ちゃんはだって、お尻大きいしぃ」

227: 2013/11/29(金) 20:18:57 ID:isgSSEeQ
未央「お、やっぱり分かってた? このダイナミックな二つの山」

卯月「ちょっと未央ちゃん! こんな所で……もう……」

亜子「ちょっとくらい見たって黙っとくけど?」

P「絶対に見ない、絶対に絶対に見ない」

卯月「私は気づいてなかったんだけど、なんかファンの人からいつの間にか言われるようになってて」

未央「頑張ってれば、個性なんて勝手に誰かが見つけてくれるから。だから今は笑って皆の前で全力でアイドルやるのが一番だって!」

卯月「未央ちゃんの個性は誰が見つけてくれるんだろうね?」

未央「卯月……何か辛辣」

卯月「お尻なら未央ちゃんの方が大きいもん!」

さくら「やっぱり、お尻も大きい方がいいのぉ?」

P「俺に聞くな!」

228: 2013/11/29(金) 20:20:10 ID:isgSSEeQ
泉「勝手に見つけてくれる、か。考えたこともなかったな」

亜子「この衣装も、久しぶりや」

未央「デビューした時を思い出して、感想は?」

泉「何か、不思議なんだけど懐かしくない」

未央「ほう? その心は?」

泉「まだ、私はスタート地点にいる」

卯月「私達もだよね」

亜子「ゴールは遠いなあ」

さくら「これから走るのぉ?」

229: 2013/11/29(金) 20:20:45 ID:isgSSEeQ
P「一度、ゴールしたんだよ。また新しいゴールを見つけたからスタート地点にいるんだ」

泉「新しいゴール」

亜子「とりあえずは女Pに心配かけなくて済むアイドルになる事やな」

泉「撮影、お願いします」

P「何だ、いい顔で笑えるんだな」

泉「女Pに見せる最初の写真だから」

P「それがきっと、君の自然な表情になるよ」

230: 2013/11/29(金) 20:21:32 ID:isgSSEeQ
未央「ちょっとギブギブギブギブギブ!!」

亜子「意外と固いなあ」

P「体力は島村さんがトップか、意外」

卯月「体育祭でも頑張ったんですよ!」

さくら「もう……駄目……無理だよぉ」

泉「私の半分だよ、もうちょっと頑張って」

さくら「うう、イズミンが鬼に見える……」

P「あっはははははは、腹が……腹が……」

亜子「笑わんでもええやろ!」

さくら「だから苦手だってデビューの時から言ってるのにぃ」

未央「ダンス、苦手?」

231: 2013/11/29(金) 20:22:15 ID:isgSSEeQ
泉「歌なら何とかなるんですけど」

P「だからレパートリーが少ないのか、納得した」

卯月「これから覚えていけばいいんだよ、大丈夫。未央ちゃんは今もライブが近づくと特別にレッスン組まれてるから」

未央「それは今ここで言う話じゃないよね!?」

P「基礎からやるか、忙しくなるとこういう時間も取れなくなるよな」

泉「ふう……」

P「お疲れ様。はい、今度は貰い物じゃなくてちゃんと買ってきた」

泉「私達のしてる事って、他の人から見れば単純で地味で」

P「結果は見えにくいな、プログラム組む時はどうなの?」

泉「亜子やさくらから聞いたんですか?」

P「いや、あの日ルキトレと会ってさ。ちょっと聞かせてもらった」

232: 2013/11/29(金) 20:23:54 ID:isgSSEeQ
泉「趣味みたいなものです、亜子は勝手に売ろうとしましたけど」

P「売らなかったの?」

泉「利益が大して望めるものではありませんでしたから。一つ作ると、その修正に時間も取られてしまいます」

P「そこら辺の世界はさっぱりだ」

泉「知らなくてもパソコンは動きますから、その仕組みに興味を抱く人も少ない」

P「でもそういう仕組みに精通してる人は確かにいるんだよなあ」

泉「アイドルもいつかそうなるかもしれません」

P「アイドルがプログラミングで動くの?」

泉「画面の中なら、今だって動かせます」

P「そんな時代が来たらプロデューサーなんて職種もなくなるかもな」

泉「その歌もまた、誰かに響くのか。響かせる歌があるのか、私は知りたい」

233: 2013/11/29(金) 20:25:53 ID:isgSSEeQ
P「なら、俺はそれに負けないアイドルを育てたいな。いつか頂上決戦する日がくるかも」

泉「この汗も、その為の小さな一歩ですね」

P「その時は、どっち側にいるんだ?」

泉「どちらにも」

P「言い切ったね」

泉「でなければ、進む意味がありませんから」

P「さて、もういい時間だな」

卯月「続きはいつですか?」

P「できるかなあ……えーっとスケジュール的には……」

亜子「アタシらそれほど仕事がある訳でもないしなあ」

P「うーん……まあ何とか……夜でもいいか?」

234: 2013/11/29(金) 20:26:41 ID:isgSSEeQ

未央「もっちろん!」

P「来るの?」

卯月「お邪魔でしょうか?」

P「いや……別に来たいならいいが」

未央「じゃ、これメアドだから決まったら教えて!」

泉「あの二人、どうして」

亜子「お人好しなんかね」

P「まあ、レッスンするというのなら止めないが」

235: 2013/11/29(金) 20:27:44 ID:isgSSEeQ
千枝「それで千枝を放って夜の特別レッスンですか!?」

P「……まあ」

千枝「千枝にも夜の特別レッスンして下さい!」

P「だから変な言い方をするなって! それに決まったわけじゃない、女Pさんに報告して駄目だというなら
  その時点で――」

女P「いえ、続けてもらえる?」

P「知ってたんですか?」

女P「担当の動向くらい把握してる……悪いわね、本当に」

P「いえ、出来る限りはしますが」

女P「担当、変えてみる?」

P「それは彼女たちが拒否すると思いますよ」

女P「今はそうでしょうね」

P「これからもですよ」

236: 2013/11/29(金) 20:29:07 ID:isgSSEeQ
千枝「何か、元気なさそうです」

先P「向き合うのを怖がってるからな」

P「先輩……そのきのこは一体」

先P「ん? 生えてたから回収した」

P「頭に植えます?」

先P「ほう……いい度胸だ」

P「すいません冗談です。で、さっきのですが」

先P「あいつはアイドルとの接し方がビジネスライクにしようとしてるだろ?」

P「しようとしてますけど、実際は違いますよね」

先P「ここはアイドルが距離を詰めてくるからな、どこにこんなおっさんの机の下でフヒフヒ言うアイドルがいるんだか」

P「ああ、そのきのこもしかして」

237: 2013/11/29(金) 20:29:54 ID:isgSSEeQ
先P「友達だそうだが、生憎あそこに置かれたら邪魔なんでね。丁重に移住してもらうさ」

千枝「Pさんのきのこ?」

先P「お前……」

P「はい千枝はこっちにおいで。まあ、それは同意しますが」

先P「あいつはずっと戸惑ってんだよ、その理由は知らねえが」

P「アイドルと仲良くなるのが嫌なんでしょうか」

先P「そんな風に見えるか?」

P「……うーん、女Pさんってここに来る前は何してたんですか?」

先P「俺は知らん、適当に聞いてみればいいんじゃないか?」

238: 2013/11/29(金) 20:33:15 ID:isgSSEeQ
レナ「それで私に?」

P「女Pさんが仕事を見てる中で、年が近いのって兵頭さんくらいですから」

レナ「ブラックジャックは知ってる?」

P「ええ、ルールくらいなら」

レナ「どうぞ」

P「……では」

レナ「貴方の手にはトランプが二枚。一枚はクローバーのエース、もう一枚はクローバーの9」

P「お見通しですか」

レナ「私の手にはダイヤの8とダイヤのクイーン、つまり貴方が勝つには?」

P「ジャックしかない」

レナ「トランプの枚数は全部で52枚、残っているのは48枚。つまりジャックを引く確率は12分の1」

239: 2013/11/29(金) 20:34:04 ID:isgSSEeQ
P「その通りです」

レナ「さて問題、貴方はカードを引く?」

P「引きません、これで勝負です」

レナ「そう? 本当にいいのね?」

P「はい、では勝負です」

レナ「……どうして」

P「俺の勝ちですね」

レナ「私が嘘を付いてるって分かったの?」

P「ただの勘ですよ」

レナ「その勘はどこから来たのか教えてくれない?」

240: 2013/11/29(金) 20:35:58 ID:isgSSEeQ
P「誰にどんなカードがいくかは兵頭さんの次第。素人の俺はそんなの見破れませんから、この勝負は
  単純に兵頭さんが勝つ気があるかどうかに掛かってます」

レナ「そうね」

P「もし勝つ気があるならやり方はいくらでもある。その状況下でわざわざ自分の手まで晒して作り上げたのは、
  12分の1の確率に頼らざるを得ない状況」

レナ「うんうん」

P「ですが兵頭さんは勝つ確率とは言わなかった、ジャックを引く確率なんて表現にした時にこれはヒントかなと」

レナ「……へえ」

P「俺は捻くれ者ですから、ここまで厳しい確率を提示されると勘ぐりたくなるんです。つまりジャックを引く以外にも勝つ手段を
  この人は用意しているんじゃないかって」

241: 2013/11/29(金) 20:36:35 ID:isgSSEeQ
レナ「それで引かなかったの?」

P「ジャックしかないなんて言った手前、引いた方がかっこよかったんでしょうけど。俺の所に来てくれた子達を信じてみました、なんて
  言えば少しはかっこよく見えますか?」

レナ「お見事、私の負けよ」

P「それで、この勝負と女Pさんと何か関係が?」

レナ「彼女も貴方と同じ引かなかったのよ」

P「そうなんですか? 理由は?」

レナ「私の選択一つで、負けるかもしれない子を増やしたくないから」

242: 2013/11/29(金) 20:38:46 ID:isgSSEeQ
亜子「プロデューサー?」

P「え?」

亜子「疲れ取るんか? ぼーっとしとったけど」

P「いや、ちょっと考え事をしてて」

泉「お疲れですか?」

P「違う違う。よし、もう少し続けようか」

さくら「お疲れ様でしたぁ」

P「お疲れ様。しかし、どうするかな……このままレッスンだけ続けたって」

美嘉「よかった、まだいた」

P「城ヶ崎さん? どうしたの?」

美嘉「ニューウェーブを見てるって聞いたからさ」

P「まあ、責任をもって見てるよ。幸い、俺は他のプロデューサーと比べて仕事の量も少ないから」

243: 2013/11/29(金) 20:40:05 ID:isgSSEeQ
美嘉「大丈夫だと思う?」

P「彼女たち次第、としか。俺はちょっとしたお手伝いしかできないから、よくも悪くも」

美嘉「女P、何であんなにピリピリしちゃってんのか分かる?」

P「俺が知りたい、先輩は接するのを怖がってるなんて言い方をしてたけど」

美嘉「プロデューサーは怖くないの?」

P「怖いと思ったことならある。大きな仕事の前とか、俺の言葉一つでアイドルが動揺したらとか考えると自然と慎重にはなる」

美嘉「それはそうだけど、でも」

P「そういうのとは違うんだろうな、何でそんな事になったんだか」

美嘉「調べる方法とかある? 協力できるならアタシもするから」

P「本人に無断で?」

美嘉「このままだと共倒れになるよ」

P「その言い方をされると辛いんだが……ちょっと業界内の知り合いに聞いてみる」

244: 2013/11/29(金) 20:40:58 ID:isgSSEeQ
美佳「変なことになんない?」

P「大抵の事は知ってそうだから、聞いてみるさ」

監督「何だよ、復帰するのかと思ったんだが」

P「ありえません、ちょっとした質問です」

監督「そんなんでお前はこの時間に電話してくるのか」

P「今は海外でしょう? 何時ですか?」

監督「朝の8時」

P「ならいいじゃないですか」

監督「貴重な自由時間を」

P「すぐに済みますよ、女Pってうちの事務所にいるんですけど知ってますよね?」

監督「何だ、注意しとけって言ったのにもう問題起きたのか」

P「まだ起きてません、ただ起きちゃいそうなんで先手を打とうかと」

監督「昔、何て言ったか……雪月花だったか」

P「あ、共演した事あります」

245: 2013/11/29(金) 20:42:04 ID:isgSSEeQ
監督「ならお前、女Pとも会ってるぞ」

P「関係者?」

監督「プロデューサーだったんだよ」

P「はあ? あそこそれなりに大きな所でしょう、何で移籍なんか」

監督「噂とか聞いたことなかったか?」

P「噂? いえ、あんまり」

監督「魔王の怒りを買って潰されたらしいぞ」

P「……何でまた」

監督「色々やってたんだとさ、妨害じみた事を何度も」

P「なーるほど、それでやられたのか」

監督「今こそ大人しくしてるが、また何をやるか分からんぞ」

P「分かりました、すみませんわざわざこんな時間に」

監督「あ、もう一つ」

246: 2013/11/29(金) 20:43:21 ID:isgSSEeQ
P「何でしょう?」

監督「前に言ってた撮影の話だが、恐らく黒川千秋になる」

P「あ、本当の話だったんですか。連絡ないんで聞こうかと思ってたんですが」

監督「準備に時間が掛かってたんだが、この撮影が終わったらそっちだ。お前は来れるのか?」

P「海外だと俺は厳しいんで、スタッフを何人か行かせるくらいでしょうか」

監督「ま、そんなとこだろうな。ブラックも真っ青な業務形態だもんな」

P「ブラックが真っ青って」

監督「おっと呼ばれた、じゃあな。正式に決まったら連絡する」

P「お待ちしてます」

247: 2013/11/29(金) 20:45:16 ID:isgSSEeQ
先P「分かったのか?」

P「まあ、痛い目を見たんだなって事くらいは」

先P「お前の情報網も謎だよな」

P「先輩って俺の前職知らないんでしたっけ?」

先P「お前が俺の前職を知らねえのに……お前、ここに来る前も働いてたのか?」

P「収入は得てました」

先P「曲者揃いかここのプロデューサーは」

P「これ以上、首を突っ込んでもいいと思います?」

先P「全身しっかり浸かってる奴が何を言ってんだ」

P「……そうですよね。ちょっと勝負に出ます」

先P「勝算は?」

P「勝つ必要なんて誰にもありませんよ」

248: 2013/11/29(金) 20:46:31 ID:isgSSEeQ
さくら「単独ライブ!?」

P「そんなに驚くことか? デビューする時もそうやってしたんだろ?」

さくら「そうだけどぉ」

泉「お客さん、入ってくれるのかな?」

亜子「どうやろうなあ」

P「そこまで大きい箱を抑える気もないし、チケットが売り切れる必要性もない」

泉「利益を求めないということですか?」

P「力を試す格好の場だと思ってくれていい」

亜子「いや、本当に?」

P「大丈夫、それ位の損は何とかなる」

さくら「で、でも曲とか今から用意しても」

249: 2013/11/29(金) 20:47:47 ID:isgSSEeQ
P「使える曲なんていくらでもある、ニュージェネレーションの曲を使ったっていい」

泉「今から練習してマスターできるかどうか」

P「決定権は君達にある、時間が欲しいなら待つが」

泉「……やります」

さくら「イズミン!?」

泉「チャンスをくれたんだもの、次があるか分からない」

P「分かった、じゃあ君達の曲は使ってもいいのかな?」

卯月「私は大歓迎です」

未央「ふふふ、一ヶ月ぽっちで大丈夫かな?」

卯月「未央ちゃんはもう少し掛かったね」

未央「ぐぬぬ……」

P「使えそうな曲は限られてるけど、できる限り用意するから。さあ、始めようか」

250: 2013/11/29(金) 20:48:38 ID:isgSSEeQ
卯月「気のせいか、前より活き活きしてますね」

P「分かりやすい目標があるからかな、そこに向かって頑張れる」

卯月「プロデューサーさんは何か目標とかあるんですか?」

P「皆をトップアイドルにすること……何でそんな不満そうな顔を」

卯月「凛ちゃんの目標はなんでしたか?」

P「俺を超えたいって言ってたな」

卯月「簡単に越えられないで下さいね」

P「既に超えられてる気しかしないけど、またどうして?」

卯月「最初に超えるのは私ですから」

P「そんなタイプには見えなかったな」

卯月「皆が友達で、皆がライバルです。だから私はいつも頑張れるんですから。練習、見てきますね」

未央「ライバル宣言ですなあ」

251: 2013/11/29(金) 20:49:26 ID:isgSSEeQ
P「不思議に思ったんだけど、何で俺のライブに行こうとか思ったの?」

未央「チケット拾った」

P「拾ったあ?」

未央「運命かと思って行ったら運命だったって感じかな!」

P「何だそれは……」

未央「しぶりんの理由は知ってるよね、じゃあしまむーは?」

P「そういえばまだ聞いてないな」

未央「面白いよ、他のライブに行こうと思って間違えたんだって」

P「いや、どこかで気付けよ!?」

252: 2013/11/29(金) 20:50:33 ID:isgSSEeQ
未央「チケット見て気付いたけど、お小遣いがなかったんだって」

P「あの日のライブ、そんなんばっかりだったのかな」

未央「でもそれでファンが少なくとも三人は増えたんだからさ」

P「まあ、どんな理由でも来てくれるのは嬉しいけど」

未央「そうだよね、本当にそう思う!」

P「成功するといいな」

未央「させるんだよ!」

P「そうだな、させようか」

253: 2013/11/29(金) 20:51:48 ID:isgSSEeQ
先P「任せっきりでいいのか?」

女P「それで成功するならあの子の方があってる事でしょ」

先P「ほー」

女P「何よ?」

先P「挫折ってのは人を変えるなと思ってな」

女P「変わらなきゃ、しょうがないじゃない」

先P「だとさ」

女P「美嘉」

美嘉「ちょっといい?」

先P「邪魔者は失礼するさ、ごゆっくり」

美嘉「ニューウェーブの三人、頑張ってるよ」

女P「知ってるわよ」

254: 2013/11/29(金) 20:54:16 ID:isgSSEeQ
美嘉「見に行かないの?」

女P「邪魔じゃない、あんなやり方しか取れないのがいたって」

美嘉「アタシはそうは思わない。アタシ達だって女Pがいたから」

女P「結果論」

美嘉「何でそんな!?」

女P「あの子は簡単に変えるじゃない、やる気のなかった加蓮は今や人気アイドルの一角。泰葉は笑顔が柔らかくなってファン層の幅が増えた、
   名前を呼ばれる事さえ嫌ってたありすは自分から呼んでくれと人に頼み始める始末」

美嘉「アタシが……皆が何も変わらなかったとでも思ってんの?」

女P「……」

美嘉「絶対に見に行って」

女P「……」

255: 2013/11/29(金) 20:56:26 ID:isgSSEeQ
P「大人を説得するのって難しいな」

莉嘉「大人ってタイヘン?」

P「俺はまだ大人になれてないからよく分かんないな」

莉嘉「働いてるのに大人じゃないの?」

P「働いてなくたって大人にはなっちゃうんだよ」

莉嘉「むずかしーねー」

P「全くな」

256: 2013/11/29(金) 20:57:16 ID:isgSSEeQ
さくら「ここが会場?」

亜子「ほへー、こんな所があったんか」

卯月「ここ……」

未央「うん、プロデューサーの」

P「まさかリハまで来るとは思ってなかった、ツアー中だよな?」

未央「いや、もう行かなくちゃいけないんだけどね」

卯月「本番は間に合うように頑張りますから」

P「無理しないように」

泉「プロデューサーにとって特別な場所なんですか?」

P「ん? まあ、ちょっとここからアイドルがどんな風に見えるか見てみたくなってさ」

泉「私はどんな風に映るでしょうか?」

P「すぐには変われないよ。誰にだって積み重ねはあるし、それを否定する必要もない。
今はただ、女Pさんの心に何かが響くように願うだけだよ」

257: 2013/11/29(金) 20:58:34 ID:isgSSEeQ
泉「チケットは?」

P「聞かなくていい、販売期間は一週間前からの短期間。どんな結果でも責任は俺が負う。
別に興行として成功しなくたっていいんだ、目的はそこじゃない」

泉「……どうしてそこまでするんですか?」

P「心が動く瞬間ってのを、見たいからかな」

春菜「Pさん!」

P「おお、お帰り。地方ロケありがとな」

春菜「帰ってみたら何ですかこれ!?」

P「ニューウェーブのライブ、チケットあるけどいるか?」

春菜「欲しいですけど、何があったらこうなるんですか?」

P「何も教えないでおくよ、その方が彼女達のためになる」

春菜「その言い方、やっぱり何かあったんですね?」

P「終わった時、ありのままを伝えてあげたらいい。それが一番、彼女達の為になるはずだから」

258: 2013/11/29(金) 21:00:15 ID:isgSSEeQ
さくら「本当に今日、ライブするんだよね?」

亜子「ここまできたらやるしかない」

泉「女Pは?」

美嘉「来る、来ないなら引きずってでも」

泉「そう、なら後は私達次第」

美嘉「ごめん、何か任せるだけの形になっちゃうけど」

泉「元々、私達のせいだから。こっちこそ謝らないと」

美嘉「頼むね、アタシもこのままは嫌だからさ」

亜子「任せとけ! と言いたいけど、どうなる事やら」

智絵理「あ、あの」

美嘉「智絵理!?」

さくら「うわー久しぶりに会ったぁ」

亜子「また凄い意外……でもないか」

泉「意外って言っても知り合ってからライブするの初めてだし、それに」

259: 2013/11/29(金) 21:01:48 ID:isgSSEeQ
智絵理「ライブ、おめでとう」

泉「ずいぶんと遠回りした気もするけど、ありがとう」

智絵理「そんな事ない、羨ましいなって思う」

泉「私たちが?」

智絵理「私がどんなに歌っても、変えられなかったから」

亜子「いや、変わったと思う。アタシ達も女Pも」

さくら「多分、私たちはあのまま続けてただけだったと思うし」

泉「ライブしても、女Pがここに来てたか怪しいと思う」

美嘉「本当に何もしてないのは莉嘉くらい」

亜子「実は裏でとんでもない事しとったりして」

美嘉「ないない」

260: 2013/11/29(金) 21:04:01 ID:isgSSEeQ
泉「頑張ろう、勝つためにじゃない。ファンと女Pと何より……私達の為に」

春菜「こんな後ろの席でいいんですか?」

P「ここなら全体がゆっくりと見えるから、劇場みたいな作りになってるんだな。ここは」

春菜「結局、完売したんですね」

P「実は売ってない」

春菜「売ってない!?」

P「配っちゃった」

春菜「あの、誰に?」

P「過去のLIVEバトルの記録を調べてさ、ああ言ってなかったか。うーんと、まあ実は女Pさんがちょっと観客を操作してたんだけど」

春菜「え」

P「それで行けなくなった人達が発生してたからさ。こんなライブやりますけど、どうでしょうかって電話してチケットを発送して」

春菜「でもニューウェーブは普通にファンが来ると思ってますよ」

261: 2013/11/29(金) 21:05:24 ID:isgSSEeQ
P「うん、だから俺からのテスト。ここで駄目なら違う道を歩んだ方がいいかなって。お金を稼がないといけないなら、
  普通に勉強して就職した方がいいと思う。特に大石さんにはその力が既にある様だから」

春菜「何と言いますか」

P「もちろん、ここまで全力は尽くした。後は――」

莉嘉「ニューウェーブのお姉ちゃんたち次第だね!」

春菜「えっと、この子って確か」

P「そう、城ヶ崎さんちの下の方。ちょっと打ち合わせを兼ねて一緒にいたんだけど」

春菜「しかし、普通の単独ライブだと思ってるでしょうに」

P「あ、単独でもない。これも内緒だけど」

春菜「はい?」

P「だってさ、LIVEバトルだったら複数のアイドルが出てくるだろ? その代替ライブなら他にも出さないと失礼かなって」

春菜「誰を用意してるんですか?」

P「ちょっと、とっておきの人達をね」

262: 2013/11/29(金) 21:06:49 ID:isgSSEeQ
泉「アイドル?」

亜子「そうや、アタシらが稼げるチャンスや!」

泉「だからって、私達そんな経験ないじゃない」

亜子「経験じゃない、女は度胸や!」

さくら「イズミン、お金がいるの?」

泉「え、ああ……まあ。けどさくらと亜子には」

さくら「協力するよ」

泉「えっと、理由とか何も言ってないけど」

さくら「イズミン困ってるんだよね? アコちゃんお金稼ぐ方法を探してたんだから、何かと思ってたんだけどぉ」

泉「二人とも、本気?」

亜子「冗談でこんな事は言わないって、けどさくらは」

さくら「仲間外れは駄目だよぉ、いつか話してくれたらそれでいいから」

263: 2013/11/29(金) 21:07:54 ID:isgSSEeQ
泉「でも、事務所とか決めてるの?」

亜子「ここ!」

さくら「シンデレラガールズ?」

泉「まだ新しいみたいだけど」

亜子「何でもこの学校を卒業した人がここでアイドルやってるらしいのよ」

泉「そんな噂どこから」

亜子「先生が言ってたんだから間違いない、な? やってみよ?」

泉「アイドルは手段のはずだった。二人が協力してくれるからって始めて、どこか冷めてて……でも」

264: 2013/11/29(金) 21:08:34 ID:isgSSEeQ
亜子「どーもどーも、亜子でーす!」

さくら「さくらでぇす! えっへへー」

泉「大石泉です、今日は本当にありがとうございます。久しぶりのライブ、本当に楽しみで……」

春菜「言葉が……」

P「大丈夫だよ、流されてない」

泉「今ここで私達の持つ全てを出し切ります、最後まで一緒にこの波に乗って盛り上がりましょう!」

美嘉「デビュー曲……」

女P「構成は、あの子達が考えたの?」

智絵理「女Pさん!」

美嘉「多分、三人と彼が考えたんだと思う」

女P「そう、そっか」

美嘉「誰の為に歌ってるか分かってる?」

女P「分かってる、ここまでされないと分からない自分が馬鹿だったって事も」

265: 2013/11/29(金) 21:11:50 ID:isgSSEeQ
亜子「最高のLIVEにするよん!」

さくら「えっへへー♪ いくよーっ!」

泉「私たちの、魅せてをここで!」

P「デビューまでどんな葛藤があったのかとか俺は知らないけどさ。でも誰かの為にここまで歌えるなら、彼女達は大丈夫だと思う」

春菜「それで、この後に誰を?」

P「そろそろ出てくるよ」

泉「皆さん、今日は本当にありがとうございました。今日のライブはこれで――」

莉嘉「って思うでしょー!?」

美嘉「莉嘉!?」

智絵理「だ、大丈夫でしょうか?」

女P「大丈夫でしょ、客席であいつがにやっとした」

266: 2013/11/29(金) 21:13:03 ID:isgSSEeQ
美嘉「折角のライブがこれで終わっちゃうのもったいないから、凄い人達を呼んじゃったんだ!」

美嘉「凄い人達?」

女P「あいつの呼べるアイドルで凄いっていうレベルだと」

智絵理「高垣さん」

美嘉「後は?」

女P「誰が出てくるか」

未央「みんな、待たせたね!」

卯月「遅れてすみません! 島村卯月です!」

美嘉「はあ!?」

智絵理「ニュージェネレーションだ……」

女P「」

267: 2013/11/29(金) 21:14:03 ID:isgSSEeQ
春菜「これ、お金とか」

P「さっきも言ったとおり一円も取ってない」

春菜「よく呼べましたね」

P「あのステージに立ってみたいという彼女達からの希望もあった。それに何というか、これは俺からの」

春菜「からの?」

P「宣戦布告だ」

268: 2013/11/29(金) 21:16:00 ID:isgSSEeQ
泉「ありがとう、来てくれて」

未央「あれ? 分かってた」

亜子「ま、何となく」

さくら「凄い、それ私達と同じ衣装だぁ!」

卯月「特別に作ってもらったの、似合う?」

亜子「何でも似合うね」

未央「だからこのお尻がいいんだって」

卯月「未央ちゃん」

未央「よっし、じゃあ一曲いってみよう!」

泉「うん、では聞いて下さい!」

269: 2013/11/29(金) 21:17:29 ID:isgSSEeQ
美嘉「って、何も言わずに帰る気!?」

女P「やる事がたくさんあるから」

美嘉「それ、絶対にしなくちゃいけないの?」

女P「もちろん、あの子達のプロデュースを一から見直す。彼女達が結果で示したんだから、私も示す」

美嘉「はあ、もう」

智絵理「でも、いい顔でした」

美嘉「大人ってこうなんだから」

智絵理「でも、嬉しそう」

美嘉「……まあ、いいライブだったよね」

智絵理「うん!」

270: 2013/11/29(金) 21:18:56 ID:isgSSEeQ
さくら「疲れたぁー」

泉「うん、でも今までとは違う」

亜子「女Pチャン、本当に帰ったみたい」

泉「仕方ないよ、すぐには――」

さくら「メール?」

泉「……ふふっ」

亜子「お? まさかの本人から?」

さくら「見せて見せて」

泉「はい」

亜子「何というか、女Pチャンらしいというか」

さくら「でもこんな風に送ってくれたの初めてだね」

271: 2013/11/29(金) 21:19:54 ID:isgSSEeQ
泉「これで、弟にも笑われなくて済むかな」

亜子「よっしゃ、この調子でばんばん稼ぐで!」

さくら「うん、頑張ろイズミン」

泉「ええ、私達は波だから」

亜子「一度引いても繰り返す」

さくら「世界のどこにでもあるし」

泉「寄せては返す波のように、返す度に新しい何かを見せられるように」

亜子「はりきっていこう!」

NW「おー!」

272: 2013/11/29(金) 21:21:44 ID:isgSSEeQ
マストレ「ライブは成功だったようだ、利益はなかったようだが」

社長「その条件で許可しましたから、問題ありません。構いませんよね?」

統括「決定権は私にはありませんので、失礼します」

マストレ「どう思う?」

社長「ニュージェネレーションの内の二人を連れていったのは予想外でしたけど、それが彼からのメッセージなんでしょう」

マストレ「彼を入れて正解だったと思うか?」

社長「そう思いましたからここに彼を入れたんです。さて、では行きますね」

マストレ「仕事か?」

社長「スタドリの販売にイベントの告知、やる事が盛りだくさんです」

マストレ「トップ自ら現場に出る社長、か。人手不足は間違いないが」

社長「プロデューサーさん達も頑張ってますから」

マストレ「なら、私もそれに応えるとしよう」

終わり 次回は10日後くらいを予定してます

273: 2013/11/29(金) 23:36:52 ID:y4g6sErQ

今回も面白かった
次回も楽しみにしてる

引用元: ありす「心に咲いた花」