200: ◆3Y/5nAqmZM 2013/06/18(火) 20:17:44.46 ID:dFXfvjwbo


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです

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ずっと、ひとりぼっちだった。

生まれたときから、みんなとちがったから。

ひとりでエサが取れるようになったら、すぐに群れからおい出された。

それから、ずっと、たったひとりで。

「―――――お、気がついた?」

高いがけから落っこちて、たぶんこのまま氏んじゃうんだろうな、って。

そう思ってたのに。

「じっとしててよー?そりゃーもう色んなとこボロボロだったんだから、しばらく安静にね」

なんで、ウチはまだ生きてるんだろう?それに、コイツはいったい誰だろう?

怪我と疲れのせいで頭がぼーっとしていても、それがとても気になった。









それは、なんでもないようなとある日のこと。


その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
 
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

 
それと同じ日に、宇宙から地球を侵略すべく異星人がやってきました。
地球を守るべくやってきた宇宙の平和を守る異星人もやってきました。

異世界から選ばれし戦士を求める使者がやってきました。
悪のカリスマが世界征服をたくらみました。
突然超能力に目覚めた人々が現れました。
未来から過去を変えるためにやってきた戦士がいました。
他にも隕石が降ってきたり、先祖から伝えられてきた業を目覚めさせた人がいたり。

それから、それから――
たくさんのヒーローと侵略者と、それに巻き込まれる人が現れました。

その日から、ヒーローと侵略者と、正義の味方と悪者と。
戦ったり、戦わなかったり、協力したり、足を引っ張ったり。

ヒーローと侵略者がたくさんいる世界が普通になりました。



「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。

・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。
・一発ネタからシリアス長編までご自由にどうぞ。


・アイドルが宇宙人や人外の設定の場合もありますが、それは作者次第。





シリーズはここからご覧ください
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズ一覧
    




201: 2013/06/18(火) 20:18:19.74 ID:dFXfvjwbo
「『誰だコイツ』って顔してるから名乗らせてもらうけど、あたしは塩見周子。おせっかい焼きの妖怪さんだよん♪」

しゅーこ。コイツは、シューコっていうのか。『ようかい』っていうのは何なのかよくわからない。

「ん、わかんなかった?んー、実際見せたほうが早いかな・・・」

そういってシューコが、ぱちん、と指を鳴らすと、その頭からぴょこんと耳が生えてきた。

それと、腰からはふさふさしたしっぽが何本も。びっくりして後ずさろうとして、傷が痛んですっころんだ。

「わわ、ごめんごめん、いきなり姿が変わってびっくりした?痛かったでしょ」

確かにびっくりしたけど、気になったのはそこじゃない。

よしよし、となでてくる手をふりはらって、ウチは意識を集中する。

「・・・おー、もうそんだけコントロールできるんだ。誰かに教えてもらったんでもなさそうだったけど」

やっぱり、この状態は体がつるつるしてへんな感じがする。でも、こうしないと言いたいことが伝わらないし。

「・・・・・・ウチも、その『ようかい』なのか?」

それが、ウチが狼の姿から変身して、初めてしっかり口にした言葉だった。

202: 2013/06/18(火) 20:19:31.75 ID:dFXfvjwbo
それからシューコは、妖怪のことや変身したあとの体のことを―――こっちは『人間』っていうらしい―――いろいろ教えてくれた。

シューコが言うには、ウチは人狼の『先祖返り』っていうやつらしく、何回練習しても耳と左目が狼のまんまになってしまうのは、ウチがぶきっちょなわけではないそうだ。

人間の姿の方がいろいろ便利だから、ということで、耳は服についてた『ふーど』っていう帽子で、左目は眼帯を付けて隠すことにした。

それからしばらくして、片目が見えないことにも慣れて、たんすに小指をぶつけることも少なくなってきたころ。

「シューコッ!!またウチがとっといたずんだ餅かってに食べただろッ!!!」

「あーごめんごめんおなかすいちゃってつい」

「棒読みにもほどがあるぞっ!?ぜったい反省してないだろっ」

こんな風にちょっとしたことで喧嘩できるくらい、他の誰かと話すことにも慣れてきたころだった。

「おぉ、周子くん、ここにいたかね」

いきなり知らないおじさんがやって来たもんだから、びっくりしてシューコの後ろに隠れてしまった。知らない人は、やっぱりまだこわい。

「・・・ずいぶん、怖がらせてしまったかな?」

「あはは、ちょっと人見知りなだけだよ。・・・ほら、自己紹介して。大丈夫、このおじさん優しいから」

おじっ、と言っておじさんが固まった。どうしたんだろう。

まぁ、あやしいヤツならとっととシューコが追い払ってるはずだし、悪いヤツじゃないのは本当だろう。

「・・・・・・美玲」

でもやっぱりこわいので、ちょっと顔をのぞかせて、ぼそっと名前だけ名乗った。

美玲。名前がないのは不便だ、っていってシューコがつけてくれた、シューコからもらったもので一番すきなもの。

203: 2013/06/18(火) 20:20:39.07 ID:dFXfvjwbo
「ふむ、美玲くんか。『美しいさま』を表す字が二つ、うんうん、名前通りの可愛らしい子だね」

名前を褒められて、それを考えてくれたシューコのことも褒められたみたいでうれしくなる。

悪いヤツじゃないっていうの、ちょっとなら認めてやってもいいかもしれない。

「それで、わざわざどうしたの、社長さん?」

「おぉ、そうだそうだ。周子くん、君に是非頼みたいことがあってね」

「うん?また何か始めたの?」

「うむ。今回の『プロダクション』は、なかなか期待できそうでね。周子くんには、そこでカウンセラーのようなことをやってもらいたいんだよ」

「え、カウンセラー?あたしそんな難しいことできないよ?」

「いやいや、あまり難しく考えなくてもいいんだ。能力を持つがゆえに疎んじられたり、傷つけられた子たちの話し相手になってもらえれば、というだけの話さ」

「うーん、そう言われてもねぇ」

「できれば、また周子くんの力を借りられればと思ったんだが・・・」

・・・なんか難しい話みたいだけど、ちょっと気になった。

「シューコ」

「ん?どったの美玲?」

「えっと、今の話ってさ。『前までのウチ』みたいなヤツのことを助けてあげられる、ってことで良いのか?」

「あー、うん、まーだいたいあってるかな。もしかしたら、美玲よりもっとふさぎ込んじゃった子もいるかもしんないけど」

やっぱり、そういうことみたいだ。だったら―――

204: 2013/06/18(火) 20:21:14.10 ID:dFXfvjwbo
「―――だったら、ウチ、それやりたい」

「・・・へ?ちょ、ちょっと美玲?」

「だって、だって!!それって、すっごく良いことだろッ!?ウチ、シューコと話して、名前もらって、それで、えと、えっと!」

言いたいことがいっぱいでてきて、うまく言葉にならない。それでも、シューコもおじさんも、ウチの考えがまとまるのを待ってくれた。

「えっと・・・ウチ、生きていていいんだって、シューコに会って初めてそう思ったんだ!だから、前までのウチとおんなじヤツがいるなら、そいつのこと助けてあげたいんだ!」

生まれてすぐ、みんなからのけものにされてきたウチが、初めて生きていることを嬉しいと思ったのは、シューコがいたからだ。

ウチも、そうやって、『誰かが生きていていいと思える人』になれるなら、それってすごいことだと思った。―――ウチはヒトじゃなくて狼だけど。

「・・・美玲にそこまで言われちゃうと、ちょっとノーとは言えないよねぇ・・・・・・」

しばらく考え込んでいたシューコが、苦笑いしながらそう言った。っていうことは・・・

「おぉ、引き受けてくれるかね!いやぁ助かったよ」

「んーん、あたしやんないよ?やるのは美玲」

・・・・・・ん?

205: 2013/06/18(火) 20:21:42.74 ID:dFXfvjwbo
「・・・・・・え!?う、ウチひとりでやるのかッ!?」

「いんや、もちろんお手伝いくらいはするよ?でも、あくまでこれは美玲のお仕事。そういう条件なら受けるけど、どうする、社長さん?」

「ふむ・・・ティンと来た!良いだろう、その方向で話を進めよう!周子くんがサポートについてくれるなら、万が一ということもないだろうしね」

・・・なんだろう、なんか大変なことになっちゃった気がする。けど、やりたいって言いだしたのはウチだし、その気持ちに嘘はない。

「とりあえず、一度うちの事務所まで来てもらえるかな?プロデューサーの彼とも顔合わせをしておいた方がいいだろう」

・・・嘘じゃないんだけど。

「・・・みれいー?しがみつかれたまんまだと、あたし動けないんだけどー?」

やっぱり、知らない人に会うのは、まだちょっとこわい。

206: 2013/06/18(火) 20:22:45.22 ID:dFXfvjwbo
美玲(生後半年~1年)

属性:妖怪さん(人狼)
能力:狼への変身

先祖返りで妖怪化してしまったがゆえに、生まれてすぐに群れから追い立てられてしまった狼さん。
瀕氏のところを周子に助けられた。
やや人見知りだが、自分が疎まれていたぶん他人には優しくしてあげたい、と考える良い子。
どういうわけか『プロダクション』のカウンセリング担当になってしまった。

塩見 周子(自称1000年くらい)

属性:妖怪さん(おきつねさま)
能力:変化、お札を使った呪術、狐火などなど

かなりの歳月を生きてきた大妖狐。本来は銀の体毛の美しい狐だが、普段は人間の姿をとっており、滅多に戻ろうとしない。
社長とは旧知の仲だったり、長生きしている分顔が広い。
人をからかって面白がるちょっと意地悪な部分もあるが、基本的に人間大好きで友好的な妖怪さん。

207: 2013/06/18(火) 20:24:20.01 ID:dFXfvjwbo
以上です
あやかし京娘は反則気味に可愛いとおもいます(粉蜜柑)

208: 2013/06/18(火) 20:29:27.52 ID:nca/EYvB0
乙でしたー
あんな格好されたら妖狐以外考えられませんよねー

…ダークな設定だった時が少し気になるが




【次回に続く・・・】



引用元: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」