1: 2015/09/07(月) 12:41:00.01 ID:dHC7orE4.net
まきちゃん「大学を卒業して、医者になって…もう40年余りが経つのね。」

まきちゃん「脳外科医にはなれなかったけど、外科医になって、沢山の人を救うことができたわ。」

まきちゃん「……それにしても、仕事に精を出し過ぎたわね。こんな歳まで独り身で…私の部下ですらもう孫ができていたりするものね。」

まきちゃん「そして、μ'sのみんなとももう30年前の同窓会以来、まったく会えていないわ。」

まきちゃん「パパもママも10年前に亡くなって、せっかくの定年退職だって言うのに、病院の人しか労ってくれないなんて。」

9: 2015/09/07(月) 12:48:27.42 ID:dHC7orE4.net
病院

まきちゃん「みんな、おはよう。」

ナース「おはようございます、院長先生。今日で最後ですね。」

まきちゃん「ええ、まあ経営者としてこれからも病院には来るけれど、医者としては今日で最後ね。」

まきちゃん「子供がいたら、明日からは経営も子供に任せて自由に過ごせるんだけどね。」

ナース「あら、院長先生なら今からでも遅くないんじゃありません?今でもとても65歳には見えませんわ。」

ナース「昔は元スクールアイドルの美人すぎる女医、としてテレビや雑誌によく取り上げられていましたもんね」(クスッ

まきちゃん「ハァ…何十年前の話をしているのよ…。もう今じゃシワもシミも増えて、私の財力と地位以外、誰も見向きもしないわ。」

13: 2015/09/07(月) 12:59:30.00 ID:dHC7orE4.net
まきちゃん「下らない話をしてないで、さっさと準備しなさいよ。朝から予約が入ってるんでしょ?」

ナース「はい、朝は…」

私は西木野真姫。ここ、西木野総合病院で院長をしながら、外科医を担当している。
高校3年間、スクールアイドルの活動と勉強を頑張りに頑張って、東京の大学の医学部に入学した。

まきちゃん「あら、木村さんおはようございます。調子はどうですか…?」

大学に入学してからは、オーケストラ部に入部し、大好きなピアノと勉強を更に頑張った。

まきちゃん「経過も順調ですね。今日からはリハビリのメニューも変更しましょうか。」

国家試験にも一発で合格し、親が経営していたここ、西木野総合病院で研修をし、今日まで外科医として沢山の患者を診てきた。

17: 2015/09/07(月) 13:09:51.59 ID:dHC7orE4.net
まきちゃん「それじゃあ、トレーナーにもリハビリの内容の変更を伝えておきますから。これまでより少しハードになりますけど、頑張って下さいね。」

木村さん「分かりました。でもこれから大変になりそうだわぁ…歳はとりたくないわねぇ」

まきちゃん「何言ってるんですか?私より20も若いんだから…」

木村さん「それでも先生本当にお若いわぁ。私よりずっと若く見えるわよぉ。」

まきちゃん「もう…でも、お世辞でも嬉しいですわ。ありがとう。」

木村さん「お世話だなんてとんでもない!!…先生、今日で最後なんでしょう?」

まきちゃん「ええ、これまでお世話になりました。」

20: 2015/09/07(月) 13:18:49.29 ID:dHC7orE4.net
木村さん「本当にうちの親の代から子供までお世話になって…親族共々お世話になりました。」

まきちゃん「どういたしまして。これからはうちの優秀なスタッフが対応しますから、よろしくお願いしますね。」

木村さん「はい、お世話様。」

西木野総合病院はここ、音ノ木坂にずっと昔からあって、今日までここに住む沢山の人達が訪れる。

まきちゃん「はい、次の方。」

そう言えば、元スクールアイドルμ'sの西木野真姫が女医をしているってことで、わざわざ遠方から診察に来る人も、昔はいたわね。

ナース「先生、午前はこれで終わりです。」

まきちゃん「ふぅ…休憩しましょうか。」

23: 2015/09/07(月) 13:28:11.31 ID:dHC7orE4.net
病院の屋上

まきちゃん「…ふぅ」

この病院の屋上からはこの街の景色が見渡せるの。夏には花火を見るために、入院患者の人が集まる。

まきちゃん「…屋上に来ると、思い出すわね。」

屋上で感じる陽射しから思い出すのはμ'sでの思い出。μ'sで活動していた時も、今みたいに背中にジリジリと熱い陽射しを感じていたわ。

まきちゃん「音ノ木坂…相変わらずボロボロね。」

私が皆と出会い、皆と夢を見た音ノ木坂学院。私達の活動の甲斐あって、今もこうして存在している。しかし、国立高校だからという事情もあるのだろう。隣に見えるUTXと比べて、外観はボロボロだ。

まきちゃん「音ノ木坂が私立なら、私が寄付でもしてあげるんだけどね。」

24: 2015/09/07(月) 13:35:47.61 ID:dHC7orE4.net
まきちゃん「みんな、どうしているのかしら。」

同じ街に住んでいるはず…なのに。

まきちゃん「何よ、みんな…。あんなに何かあったら、まきちゃんの病院のお世話になるって、言ってくれてたのに。」ジワッ

まきちゃん「…ダメね。歳のせいだか、すっかり涙脆くなっちゃったわ。」

まきちゃん「このままここにいたら、なんだか気分が沈んでしまうわね。戻りましょ。」

ブー、ブー

まきちゃん「?」

25: 2015/09/07(月) 13:47:08.28 ID:dHC7orE4.net
鳴ったのは内線子機。

まきちゃん「…もしもし?」

子機「先生!私です!!急患です!!8人も!!!」

まきちゃん「…8人!?」

8人、まさか。そんなことって。

こんな形で、会えるの?

こんなに走ったのはいつ振り?

μ'sの練習以来ね、きっと。

老体に鞭を打って、足が地に着いているんだかいないんだか、
呼吸をしてるんだかいないんだか分からない勢いで走った。

まきちゃん「急患は…!?」

うあーいだいよー
おがあざーん おどうざぁーん

まきちゃん「……」

そこにいたのはμ'sのみんなではなく、
小さな子供達だった。

27: 2015/09/07(月) 13:55:30.98 ID:dHC7orE4.net
まきちゃん「…どういうことなの!?」

ナース「先生!!…近所音ノ木坂幼稚園の通園バスで、事故があったそうで…」

まきちゃん「…すぐに病院中の先生を集めて。今日病院にいない鈴木先生と佐藤先生もすぐに呼んで。今の人数じゃ足りないわ。」

ナース「はい!!!」

まきちゃん「みんな、まずは応急処置よ!!!子供を優先に血が出ている子の止血措置をして!!!」

「「「はい!!!」」」

病院は子供の大きな泣き声で渦巻いている。

私はみんなに聞こえるように、大声を出した。

こんなに大声を出したのも…いつ振りかしら。
μ'sでにこちゃんと口論になった時?

凛を叱った時?

なんて…悠長なこと言ってる場合じゃないわね。

28: 2015/09/07(月) 14:02:14.14 ID:dHC7orE4.net
まきちゃん「みんな、大丈夫よ。安心して。このまきちゃん先生がすぐに助けてあげるわ。」

子供1「うわああああ!!!いだい!!いだいいいいい!!!」

まきちゃん「大丈夫!大丈夫だから…!!」

この腫れ方…間違いなく骨折ね。私も5歳で骨折した時、痛かったなあ。

ナース「院長先生!!応急処置終わりました!!」

まきちゃん「OK!!傷が少ない子はレントゲン撮ってもらって!!傷が深い子は縫合するから!!!」

ナース「はい!!」

29: 2015/09/07(月) 14:15:23.11 ID:dHC7orE4.net
子供1「うわああああん!!!おがあざあーん!!」

まきちゃん「うんうん、痛いわね~。でももう大丈夫よ。このまきちゃん先生がいるんだからもう安心!!お母さんもすぐ来るからね~。」

私は麻酔の準備をしながら子供を宥める。子供、昔は苦手だったのにね。

まきちゃん「ちょっと、チクっとするわよ…?」

子供1「ぐずっ…お注射するの…?」

まきちゃん「そうね。でも、ほんの一瞬よ。頑張って。」

チクッ

子供1「んんっ!!いだいいい!!」

医療技術の進歩で、麻酔もそんなに痛くないはずなんだけど…。
やけに反応がオーバーな子ね。

まきちゃん「OK!よく耐えたわね!それじゃあ、しばらくそのままにしてね。」

私は麻酔が効くまで、縫合の準備をしながら子供の相手をする。

30: 2015/09/07(月) 14:18:50.87 ID:dHC7orE4.net
まきちゃん「あなた、名前は?」

子供1「ぐずっ…ぐずっ…ほなみ…」

まきちゃん「ほなみちゃんって言うのね。いい名前だわ。」

ほなみ…漢字でどう書くのかしら。

…まさか、ね。

それより、麻酔が効いてきた頃ね。

まきちゃん「ほなみちゃん、今先生がほなみちゃんの手をつねってるの、分かる?」

ほなみ「ヒック…ヒック…わかんない…」

そろそろ、ね。

まきちゃん「OK!ほなみちゃん、目、絶対に開けちゃダメよ?」

31: 2015/09/07(月) 14:24:54.92 ID:dHC7orE4.net
ほなみ「ゔん…」

縫合、最初は苦労したわね。手先は器用な方だと思っていたけど。チクチクッ

まあ、40年も縫ってたら…ね。チクッ

まきちゃん「はい!もう開けても良いわよ!」

ほなみ「うん…うわあああん、手に糸がああ!!糸がああああ!!」

まきちゃん「ごめんねほなみちゃん、おケガを治すにはね、こうするしかないのよ。」

ほなみ「うわあああん!!手がおがじいよおおお!!」

まきちゃん「大丈夫よ、おケガが治ったら糸取るから…。」


32: 2015/09/07(月) 14:34:06.53 ID:dHC7orE4.net
あれから他の子供、幼稚園の先生の縫合をしたり、骨折が複雑な場合は手術をしたりして、ようやく一息付けたと思った時には、時計は次の日付を回っていた。

まきちゃん「まったく、とんだ退職日和だわ…。」

沢山の子供の大きな泣き声を聞いて、余計に疲れたわ。最後の最後に大仕事しちゃった。

ナース「先生、お疲れ様です。」

まきちゃん「あなたも、こんな時間まで残業させて、ごめんなさいね。」

ナース「いえ、先生の最後の大仕事に立ち会えて、光栄です。」

まきちゃん「そう…。でもこの状況じゃ、これが最後の大仕事とは行かないわね。明日も大仕事になりそうよ。」

ナース「今日も、患者さんを含めて先生の退職をお祝いしようと思っていたのに、叶わずじまいですね。」

まきちゃん「気持ちだけもらっておくわ。」

この歳で、ここまでやるのはさすがに辛いわね。
もう今日は病院に泊まろうかしら。

まきちゃん「それじゃあ、私は休んでくるわ。あなたもしっかり休みなさいよ。」

ナース「はい、お疲れ様です。」


34: 2015/09/07(月) 15:16:26.75 ID:dHC7orE4.net


まきちゃん(ん、んん…)

………ゃん

まきちゃん(…?)

…きちゃん

まきちゃん(優しくて、懐かしい声…誰?)

まきちゃん

まきちゃん(ほの…か…?)

穂乃果「まきちゃん」

まきちゃん「穂乃果!!」

花陽、凛、希、ことり「まきちゃん」

まきちゃん「花陽!凛!希!ことり!」

にこ、絵里、海未「真姫」

まきちゃん「にこちゃん!エリー!海未!」

まきちゃん「みんな!!会いたかった!!本当に会いたかったの!!!」

穂乃果「ごめんね、まきちゃん…」

スタスタ

まきちゃん「待って!!どこに行くのよ!!置いて行かないで!!あっ!!」ドザッ

まきちゃん「お願い!!私を置いて行かないで!!みんなと一緒にいたいの!!ずっと寂しかったの!!」

穂乃果「ごめんね…」

まきちゃん「!?…だめ!!!そっちに行っちゃ!!帰ってこれない!!!」

まきちゃん「だめえええ!!!」


36: 2015/09/07(月) 15:27:01.75 ID:dHC7orE4.net


まきちゃん「…はっ!」

灰色の景色。ここは…

まきちゃん「…まったく、嫌な夢を見てしまったわ。」

頭の中を整理する。

私は昨日突然の急患の対応でてんてこ舞いで、

昨日で定年退職にしようと思っていたら、今日からもその後の対応のために働こうとしていて、

そして疲れ果てて、シャワーを浴びて院長室の椅子に持たれかけて寝てしまった…。

まきちゃん「…今、何時?」

机の上にある猫の形をしたアナログ時計が示しているのは5時45分…これ、17歳の誕生日に凛がくれた物。50年経っても動いてるのよね。

まきちゃん「少し早起きしすぎたかしら…。まあ、昨日の患者のカルテを確認しておきましょう。」

37: 2015/09/07(月) 15:41:38.60 ID:dHC7orE4.net
まきちゃん「お疲れ様。」

鈴木先生「あ、院長先生。昨日はお疲れ様でした。」

まきちゃん「こちらこそ、昨日は休みだったのに、ごめんなさいね?」

鈴木先生「いえ、昨日はあれだけの数の急患が来たんですから…それに、院長先生に直々に呼んで頂けるなんて、光栄です!」

まきちゃん「フフッ、ありがとう。ところで、昨日の急患のカルテを確認したいんだけど…。」

鈴木先生「はい、どうぞ。」

パラパラッ

やっぱり子供達はまだ骨が弱いから、骨折の子が多かったのね。先生方も、全身打撲だったりで中々重傷だわ。

まきちゃん「殆どの子供が入院しているわね。二宮すず子ちゃん、高坂穂奈美ちゃん、堀ちなみちゃん…」

高坂穂奈美ちゃん!?

高坂…もしかしてあの高坂?、そして「穂」奈美…

保護者は…高坂美穂。

間違い無いわ。

43: 2015/09/07(月) 18:12:52.25 ID:dHC7orE4.net
今すぐにでも確認に行きたいところだけど…
今は早すぎるわね。8時は過ぎないと難しいかしら。

鈴木先生「どうしたんですか、院長先生?そんな恐い顔して…」

まきちゃん「あっごめんなさい、ちょっと…これからの治療方法について検討していたから。」

鈴木先生「そうそう、中にはひどい骨折で、昨日大きな手術をした子もいるみたいですよ?」

まきちゃん「ああ…この中村彩香ちゃんね。昨日は原田先生が担当してくれたみたいだけど…そうね今後は…」


44: 2015/09/07(月) 18:18:43.96 ID:dHC7orE4.net


病院の皆でミーティングをしていたら、あっという間に8時を過ぎていた。
ちょうど朝御飯が配膳されて、皆が食べ終わる頃だろうか。

私は病院を巡回して、自分が担当している患者の様子を診て回る。

まきちゃん「田中さん、おはよう。」

田中さん「あら、西木野先生?昨日で最後だったんじゃあ…?」

まきちゃん「そう思ってたんだけど、そうも言ってられなくてね。昨日急患が来てから、夜中までてんてこ舞いよ。」

田中さん「ウフフ、それはお疲れ様ですね。」

まきちゃん「フフッ、それで今日はレントゲンを撮るから…」

………
……

45: 2015/09/07(月) 18:21:47.23 ID:dHC7orE4.net
まきちゃん「ふぅ…次は304号室の…!」

来た。ついに来てしまった。

304号室は、高坂穂奈美ちゃん。

他の先生から聞くと、私が治療をしてからすぐに家族の方が駆け付けて、お母さんがそのまま病室に泊まってかかりっきりだったらしい。

まきちゃん「美穂ちゃん…私のことなんて覚えてないだろうなあ…」

まきちゃん「おはようございます。」ガララッ

46: 2015/09/07(月) 18:28:16.77 ID:dHC7orE4.net
緊張感と微かな懐かしさを感じながら、私はドアを引いた。

穂奈美「あ!まきちゃん先生だ!!おっはよー!!」

…やだ、夢を見てるのかしら。

だってそっくりなんだもの。

いつも、おはようって元気に挨拶してくれたあの人に

私は少し涙を滲ませながら笑っていた。

本当、歳はとりたくないわね。

美穂「こらっ!おはようございますでしょ!先生、昨日は本当にお世話になりました…。」

まきちゃん「いえ、良いんですよ。おはよう、穂奈美ちゃん。」

まきちゃん「穂奈美ちゃん、とっても元気が良いわね。昨日はあんなに泣いてたのに(クスッ」

穂奈美「ムッ!穂奈美泣いてないよ!!泣いてないもん!!!」

勘弁してほしいわ。膨れっ面まで、そっくり。

47: 2015/09/07(月) 18:33:46.93 ID:dHC7orE4.net
まきちゃん「美穂ちゃんも、久し振り。大きくなったわね。」

美穂「…えっと?」

まきちゃん「フフッまあ無理もないわよね。30年前にあった時は、まだ穂奈美ちゃんぐらいの歳だったもの。」

美穂「???」

?「美穂ー!!穂奈美ちゃんの着替え持ってきたよー!!!」ガララッ

まきちゃん「……!!!」

48: 2015/09/07(月) 18:44:36.06 ID:dHC7orE4.net
歳のせいなのかしら。

驚いて声が出ないってこういうことなのね。

ああ、変わってないのね。

ちょっと太った?白髪も増えた?

自慢のほのまげはどうしたのよ。

でも、変わってない。

いくら歳をとっても、一発で分かるわ。

?「……まき…ちゃん…?」

まきちゃん「……ほ、のか…穂乃果あああ!!」

私は年甲斐もなく声を上げて泣いて、穂乃果と抱き締めあった。

こんなに泣いたのは、いつ振り?

それにしても良いのかしら?

いつも病院ではしゃいでる子供や患者に向かって、お静かにって注意してきたのに。

ま、私が院長だもの。今この瞬間だけは大声を出しても良いってルールにしましょ。

49: 2015/09/07(月) 18:48:54.36 ID:dHC7orE4.net
まきちゃん「穂乃果…会いたかった。穂乃果に、みんなに会いたかったの…グズッ」

穂乃果「うん…ズビッ…わだじも…あいだがっだ…まぎぢゃんに…ズビビッ」

穂奈美「……」

美穂「あ、あの……?」

まきちゃん、穂乃果「……ハッ!!」

美穂「お母さん…どういう…こと?」

穂乃果「実は……」


51: 2015/09/07(月) 18:57:02.56 ID:dHC7orE4.net
美穂「ええ!!西木野先生がお母さんの高校の頃の友達で…」

穂奈美「おばあちゃんとまきちゃん先生、アイドルだったの!?!?」

穂乃果「そうだよ…っていうか、美穂は会ったことあるでしょ!?ほら、30年前のお母さんの同窓会に連れて行って挨拶してたじゃん!!」

美穂「そんな昔の話、覚えてるわけないじゃん!!!」

穂奈美「ねえねえっ!アイドルって、あのあらいずみたいなアイドル!?すごーい!!」

まきちゃん「まあ、無理もないわよね。美穂ちゃん、穂奈美ちゃんぐらい小さかったんだから。」

美穂「ごごごごめんなさい…すっかり気が付かなくて…。」

まきちゃん「フフッ…良いのよ、気にしないで。」

52: 2015/09/07(月) 19:08:36.22 ID:dHC7orE4.net
まきちゃん「……それよりも」

穂乃果「ヒッ…!!」

まきちゃん「一体どういうことよ!!30年も会いに来ないで!!何かあったらまきちゃんの病院にお世話になるって言ってたじゃない!!」

穂乃果「ご、ごめん…実は、今穂むらも音ノ木坂の他にも京都や神戸の方にも支店だ出してて…それで私もそっちの手伝いに行ってたりしてたから…」

穂乃果「…って!!まきちゃんこそ穂むらに遊びに来てくれないし!!病院に行ってまきちゃんに会わせてって言っても会わせてくれないんだもん!!」

まきちゃん「ウェッ…私は医者なんだから忙しいの!!」

ナース「…あっ院長先生、鈴木先生が呼んでます。」

まきちゃん「はいはい、すぐに行くわよ。」コホンッ

まきちゃん「それで、穂奈美ちゃんのケガのことだけど、傷口は昨日縫合したんだけど、レントゲンを撮ると、脚を骨折しているみたい。幸い一ヶ所だけだし、綺麗な折れ方をしているから、しばらく入院して経過を診ましょう。」

美穂「はい、分かりました。」

穂奈美「えー!!穂奈美、遊びに行けないの?」

まきちゃん「そうね。しばらく、走ったりすることはできないから…。」

穂奈美「やだやだやだやだ!!!」

53: 2015/09/07(月) 19:14:36.43 ID:dHC7orE4.net
美穂「こらっ!ワガママ言わないの!」

まきちゃん「ごめんね。でも、必ず治してあげるから。…っと、それじゃあそろそろ行くわね。」

穂乃果「えーっ!!まきちゃんもう言っちゃうの!?!?」

まきちゃん「当たり前よ!!仕事中なんだから!!」

穂乃果「せっかくの感動の再会だよ!?もっとお話したいもん!!!」

まきちゃん「もう、これからいくらでも会えるわよ…。行くわね。」

穂乃果「やだやだやだやだ!!!」

美穂「お母さん!!!!」

美穂ちゃん…大変ね。

そうだ!(カキカキ

まきちゃん「穂乃果、これ、私の連絡先。ちゃんと連絡寄越しなさいよ。」

穂乃果「まきちゃん…分かった!!必ず連絡するね!」

部屋を出て、私は少しスキップ気味に廊下を渡る。

今日は、羽目を外しすぎね。

54: 2015/09/07(月) 19:36:44.45 ID:dHC7orE4.net


まきちゃん「それじゃあ、この子の手術は私が担当するわね。」

佐藤先生「良いんですか院長?…退職されるのでは?」

まきちゃん「そう言ってられる状況じゃないでしょ?それに平気よ、早く退職して、何かしなければいけない訳じゃないし。」

佐藤先生「そうですか、それじゃあ、お任せします。」

まきちゃん「はいはい。それじゃあ、今日はここまでね。お疲れ様。」

「「「お疲れ様です」」」

まきちゃん「ふう、今日も疲れたわ。さて…。」

内心かなり期待しながら、私用の携帯の電源を入れる。

ある人からの連絡を待ちわびて。

56: 2015/09/07(月) 19:46:55.45 ID:dHC7orE4.net
まきちゃん「…って、何よコレ!!」

着信履歴37件

090-XXXX-XXXX

間違いない、穂乃果からだ。

まきちゃん「まったく…せっかちなんだから…。」

それでも、自然と顔が綻びてるのは喜んでいるからなのね。

trガチャッ

穂乃果『まきちゃん!!遅いよ!!何回電話したと思うの!!』

まきちゃん「あなたねえ…仕事がそんなに早く終わるわけないでしょ!?」

穂乃果『あはは、それもそうだよねえ…。ねえねえ、今から近くのバーで話さない?あっ…でも明日も仕事かな?』

まきちゃん「そうねえ…」

昨日から氏ぬ程忙しかったもの。

確認したら案の定、明日からは2連休ね。

まきちゃん「私は平気よ。それじゃあ、どこに集合するの…?」

穂乃果『にひひっ少し遠いんだけどねえ…』


57: 2015/09/07(月) 20:05:02.65 ID:dHC7orE4.net


まきちゃん「結局近いのかと思ったら、新橋の方まで来ることになっちゃったじゃない!!」

穂乃果「あはは…。ごめんごめん。」

穂乃果「でもその代わり、すごいことが起きるから期待しててよ!」

まきちゃん「本当に、こういう所も変わってないのね…。こんなのでよく穂むらを大きく出来たわね。」

穂乃果「もう謝ってるじゃん!!あ、着いたよ!」

私達の目の前には、紫色の照明に照らされて、なんだか不思議な、少し怪しげな小さな扉が見えた。

看板には、Bar Nozomi…なるほど、一瞬で悟っちゃった。

穂乃果ったら、中々粋なことするじゃない。

カランコローン

?「お、いらっしゃい…!!」

59: 2015/09/07(月) 20:11:19.08 ID:dHC7orE4.net
まきちゃん「希…!希でしょ!?久しぶり!!」

希「まきちゃん…!!本当に久しぶり!!30年振りやね!」

希、とても若々しいわ。肌のハリツヤも、私よりあるんじゃない?

スピリチュアルなパワーで若さを保っているのかしら。

歳を取ると性格が顔に出るって言うけど、その通りね。高校時代よりも、30年前よりも、もっともっと優しい顔立ちになってる。

穂乃果「にひひっ希ちゃん久しぶり!びっくりしたでしょ!?」

希「穂乃果ちゃん、ひどいわぁ…こんなおばあさん驚かせたら、心臓が止まってしまうかもしれんよ?」

希は目に浮かべた涙を指で拭っている。

指には年齢が出るって言うけれど、本当に綺麗…良いなあ…。

60: 2015/09/07(月) 20:19:47.83 ID:dHC7orE4.net
希「よしっ!!今日はウチの奢り!!なんでも好きなん頼んでって!!」

穂乃果「やったー!!ありがとう希ちゃん!穂乃果はね~…」

希、確か30年前は会社で普通に働いていたわよね。定年退職して、お店を開いたのかしら。

辺りを見渡すとお酒のボトルの他に…水晶玉?

希「まきちゃん、ほんまに久しぶりやね。」

まきちゃん「ええ、余りにも若々しくて、びっくりしちゃった。」

希「フフッまきちゃんには負けるよ。美人すぎる女医さん、なんやから♪」

まきちゃん「フフフッ」

昔の私なら、希にからかわれたらムッとして突っかかってたのに、今は笑って流してる。

私も大人になったのね。って当たり前か。

大人どころか、おばあちゃんだもの。

61: 2015/09/07(月) 20:31:59.75 ID:dHC7orE4.net
希「ウチなあ、前の同窓会の次の年に子供ができて、会社を辞めたんよ。そして子供の手が離れてからは、ここで占いバーやってるん。」

まきちゃん「そう、昔から占い好きだったものね。タロットカードはもう使わないの?」

希「ううん、もちろん使うよ。再会の記念に、占ってあげようか?」(ニヤッ

まきちゃん「ううん、今日は占いよりも、話がしたいかな。」

希「そうやね…。まきちゃんは今どうしてるん?」

まきちゃん「想像通り、親の病院を継いで、そこで院長をしているわ。」

希「うわーすごいなあ。ウチもまきちゃんにずっと会いたかったんやけど、育児がすごい忙しくて…その中でいつの間にか連絡も付かなくなっちゃってね。」

まきちゃん「私も、子供こそいないけど、毎日本当に忙しくて、一時はμ'sのことを思い出す余裕もなかった程よ。お互い様ね。」

穂乃果「まきちゃん!なんでそんなに希ちゃんには優しいの!?穂乃果だってすごく忙しかったんだから!!!」

まきちゃん「ウェッ、別にそんなことないわよ…!」

希「まあまあ、穂乃果ちゃん。穂乃果ちゃんの好きなカルーアミルクと、摘みのピザパン、焼けたよ♪」

穂乃果「わあ…!おいしそう!!いただきまーす!!」

63: 2015/09/07(月) 20:40:09.32 ID:dHC7orE4.net
まきちゃん「穂乃果はここによく来るの?」

穂乃果「ふぁいふぃんはふぁはふぁはふぃふぁんふぁふぁふふぇ」

希「穂乃果ちゃん、行儀が悪いよ。」(クスッ

もう、穂乃果より若い人で、餅を喉に詰まらせて亡くなった人もいるのに…。

希「ウチ、穂乃果ちゃんと会うのも久しぶりなんよ。それでも半年振りぐらいかなあ。」

なんだ、全然久しぶりじゃないじゃない。

私なんて30年も会えてなかったのに。

でも、それも私の仕事が忙しすぎたし、みんなもそれぞれ忙しかったから…予定が合わないのも仕方ないわよね。

穂乃果「ねえねえ!久しぶりに、μ'sのみんなで集まりたいよね!!」

まきちゃん「バカね…みんな忙しいんだから。…でも、悪くないわね。」

私がずっと言いたかったこと。

みんなで集まりたいってこと。

私からはやっぱり言い出せなかった。

昔から私が言いたかったこと、いつも穂乃果は代弁してくれたわ。

ありがとう。

64: 2015/09/07(月) 20:47:03.21 ID:dHC7orE4.net
希「ええやん!ウチも賛成!…でも」

希「みんなの連絡先、分かるん?」

まきちゃん「私は分からないわ…。」

穂乃果「私も…。」

まきちゃん、穂乃果、希「………。」


66: 2015/09/07(月) 21:59:56.54 ID:dHC7orE4.net
……

まきちゃん「~♪」タン♪タタン♪タララーン♪

まきちゃん「みんな、どうもありがとう。」ペコッ

パチパチパチパチ

穂乃果「すごいすごい!やっぱりまきちゃんの歌とピアノは最高だよ!!」

凛「凛、感動しちゃったよ~」グスン

まきちゃん「なに泣いてるのよ…馬鹿ね。」

絵里「腕、上げたんじゃない?高校時代からすごかったけど、それ以上に今の方が魅力的よ!ハラショー!」

まきちゃん「ありがとう…」

……

67: 2015/09/07(月) 22:04:28.47 ID:dHC7orE4.net


まきちゃん「…?」

どこかしらここ…ウップ気持ち悪い…

希「おはようまきちゃん。もうお昼だよー?」

希の声?…あっそう言えば昨日、穂乃果に誘われて希のバーに行って…

話が弾んじゃってお酒も沢山飲んじゃったんだっけ?

希「もう、ウチまきちゃんが中々起きないからおうち帰れなかったんよ~?」

まきちゃん「ごめんなさい…。」

ウップ…気持ち悪い…

昔はあんなにお酒強かったのにね…。

68: 2015/09/07(月) 22:19:39.07 ID:dHC7orE4.net
まきちゃん「そういえば、穂乃果は?」

希「お孫さんのお見舞いに行ったみたいよ?事故に遭ったんやってなあ…」

まきちゃん「ええ…」

私も穂奈美ちゃんのお見舞いに行こうかしら…でも、一人の患者だけを贔屓するわけにはいかないし…。

それよりも、まず…

まきちゃん「希、お手洗い借りるわね。」

希「うん、カウンターの横にあるよ。あっそうだ!」

希「実はまきちゃんが寝てる間、μ'sのみんなの消息をネットで調べてたらね…」

希「掴めたんよ!えりちとことりちゃん、凛ちゃんと花陽ちゃんの消息!」

まきちゃん「えっ!?!?」

私の吐き気は、どこかに消えてしまった。

69: 2015/09/07(月) 22:25:21.62 ID:dHC7orE4.net
まきちゃん「本当に!!みんなはどうしてるの!?!?」

希「ちょ、ちょっと落ち着いてよ…!」

まさか…穂乃果、希と再開できただけでもとてもラッキーなのに。

会えるの…?みんなに…!?

希「…にこっちと海未ちゃんのことは分からなかったけどね。」

絵里、ことり、凛、花陽と連絡が取れたら、にこちゃんと海未とも絶対に連絡が取れるわ。

私は特に理由もなく、そのことを確信していた。

まきちゃん「それで、みんなはどうしてるのよ!?!?」

希「だから落ち着いてよ…!!」

70: 2015/09/07(月) 22:40:28.63 ID:dHC7orE4.net
希の話をまとめると、

絵里はあれからアパレル商社を起業し、今も社長としてバリバリ仕事をしている。

ことりは世界中にファンを持つ、若い女性向けブランド「Macaronage」のオーナー兼デザイナー兼ディレクター。フランスで仕事をしている。

そして、日本でのライセンスを絵里の会社が取得し、絵里の商社がMacaronageを展開している。

花陽は食品会社を途中で退社し、新潟で農家をしていて、

凛は自分のジムとダンススクールを経営している。

ということだった。

幸い、この4人にはなんとかコンタクトが取れそうだった。

私は穂乃果にも連絡をし、希と3人で、にこちゃんと海未も含めた残りのメンバーとコンタクトを取るべく、動き出した。

私もネットで検索したことあったけど…ちっとも見つからなかったわ。

まあ、希のスピリチュアルパワーのお陰かしら。ズルいわよね。

73: 2015/09/07(月) 23:31:56.15 ID:dHC7orE4.net
……

まきちゃん「ふああ…」

ナース「院長先生が欠伸してる…珍しいですね?」

まきちゃん「私だって人間だし、もうすぐ70よ?欠伸ぐらい出るわよ。ふぁ~」

ナース「…寝不足ですか?」

まきちゃん「ええ、少し調べごとがね…」

あれから、急に増えた患者の対応もあり、またしばらく医者として働くことになった。

そして、医者として仕事をしながらメンバーとコンタクトを取るべく行動している。

手術の前日は、さすがにゆっくり休んだ方が良いわね…。

76: 2015/09/07(月) 23:44:45.45 ID:dHC7orE4.net
穂奈美「あ!!まきちゃん先生!こんにちは!!!」

まきちゃん「こんにちは、穂奈美ちゃん。」

太陽に当たると眠気が吹き飛ぶっていうけど、この子の挨拶でも同じ効果があるわね。そして、穂乃果にも。

高坂家の血筋には科学的に太陽と同等の何かが含まれているのかしら。今度職権濫用で、採血して調べてみようかしら。

なんて、

まきちゃん「穂奈美ちゃん、今日はレントゲンを撮るわよ!」

穂奈美「レントゲン!?やったー!!あの機械の中に入れるんだー!!」

レントゲン、なぜか子供に人気なのよね。何がそんなに良いのかしら。

まきちゃん「じゃあ、今から行きましょう。車椅子に乗せてあげるわね。」


77: 2015/09/07(月) 23:57:17.50 ID:dHC7orE4.net


穂奈美「ねえねえ、まきちゃん先生とおばあちゃんってアイドルだったんでしょ?」

まきちゃん「そうよ、もうずっと昔、穂奈美ちゃんのお母さんも生まれていない頃の話だけどね。」

穂奈美「そうなの!?それじゃあね、あらいずとどっちがすごいの!?」

まきちゃん「フフッどっちがすごいのかしら…」

A-RISE。A-RISEは私達がμ'sを終わりにするのとは対照的に、プロアイドルの道を選んだ。

そして、毎年UTXの卒業生の中からメンバーを選抜し、メンバーチェンジを繰り返して、もうすぐ50周年を迎える。

まきちゃん「A-RISEもすごいけどね、あなたのおばあちゃん。本当にすごかったのよ?」

穂奈美「えー?穂乃果おばあちゃんがー!?」

まきちゃん「そうよ。穂むらのお店に、あなたのおばあちゃん目当てに毎日人が沢山来るぐらいにね。」

穂奈美「絶対ウソだよそんなの!おばあちゃんお家でいっつもおならブーブーしてるもん!人気のアイドルだったらそんなことしないよ!!」

まきちゃん「あらあら…仕方ないおばあちゃんね。」(クスッ

まきちゃん「っと、着いたわよ。穂奈美ちゃんの好きなレントゲンのお部屋。ちゃんとレントゲンの先生の言うこと、よく聞いてね?」

穂奈美「はーい!…まきちゃん先生、また遊びに来てね?」

まきちゃん「大丈夫!明日また来るから。それじゃあね。」


78: 2015/09/08(火) 00:05:51.78 ID:sYx+LcwO.net


まきちゃん(カタカタカタ…)

ことりとコンタクトを取るにはMacaronage本部に問い合わせなければならないなんて…フランス語なんて大学でちょっと齧ったぐらいなのに…。

英語かドイツ語なら良かったわ…。

まったく、絵里と早くコンタクトが取れたらことりとも…

けど絵里の会社からは返事が中々返事が来ないから、悠長に待ってられないしね。

まきちゃん「ああっ!!途中から英語で書いちゃってるじゃない!もうっ…!」

ブーブー

何よこんな時に…!!

まきちゃん「もしもしっ!?」

少しイライラしながら内線を取る。

『院長、お客様が来ております。』

まきちゃん「一体誰!?急ぎじゃないなら断ってくれn」

『小泉花陽様と、星空凛様という方々です。院長に取り次いでもらえたらすぐに分かるはずだからと…。』

まきちゃん「…えっ!?」

83: 2015/09/08(火) 11:50:53.14 ID:qlKdspEu.net
嘘…こんなに早く花陽と凛にも会えるなんて

こんなことなら、今日は気合い入れて化粧しとくべきだったわ。

2人共、高校の頃から童顔で可愛かったから、今も可愛くて若々しいんだろうなあ…

穂乃果も希も若々しいし、私だけこんなおばあちゃんになってるなんて…

『…あの、院長?』

まきちゃん「…ああ、ごめんなさい、院長室まで案内して。」

『はい、分かりました。』

どうしよう、どうしよう…。

下の受付から院長室まではエレベーターで8階に上がってすぐ…

とりあえず香水を振って少しでも若々しくして、

あとは…ちょっと化粧が崩れてないか確認しましょ。鏡鏡…

まきちゃん「…やだ、ファンデーション崩れてるじゃない!!」

すぐに直そう…化粧ポーチ…あれ、ファンデーションが見つからないじゃない!

ガチャッ

まきちゃん「!?」

84: 2015/09/08(火) 12:05:28.97 ID:qlKdspEu.net
ナース「先生!!穂奈美ちゃんが!!」

まきちゃん「…えっ!?」



まきちゃん「穂奈美ちゃん!?」

穂奈美「うわああああ!!!いだいいい!!いだいよおおおお!!!」

まきちゃん「一体どうしたの…!?」

ナース「穂奈美ちゃん…勝手に外に出ようとして、病院の階段から転がり落ちたみたいなんです…」

まきちゃん「なんでそうなるのよ!!

子供が松葉杖で階段下りようとしてたら気付くでしょ普通!!

あなた達は病院を巡回してこういうことを防ぐっていうのも仕事の内でしょう!?

取り返しのつかないことになったらどうするのよ!?!?」

私は声を荒げてナース達を叱る。

それよりも、今は。

まきちゃん「すぐにレントゲンを撮って。新たに骨が折れてるかもしれないわ。」

………
……

85: 2015/09/08(火) 12:27:46.48 ID:qlKdspEu.net
レントゲンの結果、穂奈美ちゃんは脚の骨折に加えて、更に右腸骨を剥離骨折したということが分かった。

脚の骨も順調に回復の兆しを見せていたけど、今日の事故で振り出しに戻った。

手術は必要ないけど、穂奈美ちゃんの入院は更に伸びることになった。

美穂ちゃんに連絡すると、穂奈美ちゃんがレントゲンを撮っている間にすぐに駆けつけてくれた。

まきちゃん「本当にごめんなさい…。今日のことは、うちの病院の責任よ。だから…」

美穂「西木野先生、とんでもございません。私達のせいで、病院の皆様に多大なご迷惑をおかけし、本当に申し訳ありませんでした。」

まきちゃん「そんなこと…?」

美穂ちゃんは穂奈美ちゃんが腰掛けるベッドの前まで歩いていった

穂奈美「グズッ…グズッ……?」

パァン

まきちゃん「…!?」

50年前のあの時と、同じ様な乾いた音。

美穂「あなたはどれだけ沢山の人に迷惑をかけたと思っているの!?

あれだけ何度も何度も外には出るなって!!

何か用があるなら看護師さんを呼びなさいって!!

お母さんが何度あなたに言ったと思うの!?!?」

穂奈美「………」

美穂「………骨折で済まなかったらどうするつもりだったの…?

穂奈美にもしものことがあったら、お母さんやおばあちゃん…どれだけ沢山の人が悲しむと思うの…」

穂奈美「………うわあああああごめんなざああああい!!!!」

美穂ちゃんは穂奈美ちゃんを抱き締めた。

穂奈美ちゃん、お母さんに本当に愛されてるのね。

私はお邪魔したら悪いと思って、今後の新たな治療計画を説明して、部屋を出た。

部屋を出た瞬間、何かを忘れていることに気付く。

まきちゃん「…あっ!いけない!!」

花陽と凛のこと、すっぽかしたままだったわ。

私は急いで院長室に戻った。

86: 2015/09/08(火) 12:37:56.52 ID:qlKdspEu.net
ハァ…ハァ…

院長室は別の病棟なのよね…この歳になると移動にも時間がかかるわ…

時間は…ヴェッ!すごく長い時間待たせちゃった。

院長室前に着くエレベーターの扉が開くと、そこにはより小柄な、そして可愛らしいおばあさんがいた。

?「…!まきちゃん!?まきちゃんでしょ!?」

ほっぺ、今でもプクプクね。

?「もう!どれだけ待たせるのー?」

なんて言いながらも、餌を見つけた猫の様にはしゃぐのは…

まきちゃん「…ハァ、久しぶりね、ハァ、花陽、凛。」

私はハァハァ言いながら2人に挨拶を交わす。

まきちゃん「ここで話すのもなんだから、ハァ…中に入って。」

88: 2015/09/08(火) 13:51:17.37 ID:qlKdspEu.net
凛「もう!待ちくたびれたよ~」

まきちゃん「仕方ないでしょ?急な事故があったんだから…。」

花陽「エエッ!?大丈夫だったのぉ!?」

まきちゃん「大丈夫じゃないわよぉ…でもこういうこともあるから…」

凛「あー!!これ、私がまきちゃんに昔プレゼントした時計だー!!まだ持っててくれてたんだあ!!!」

まきちゃん「そうよ?50年間ずっと使い続けてきたんだから」(クスッ

花陽「確か、まきちゃんの誕生日に凛ちゃんがプレゼントしたんだよね。」

凛「そうそう!確か18歳の誕生日だよねー!?」

まきちゃん「バカ。17歳でしょ?18歳はラーメンの丼だったじゃない。まあそれもまだ持ってるけど…」

凛「そうだったかにゃー?…あっ
こほん、そうだったっけ?」

まきちゃん「なによにゃーって…子供がえりでもしたの?」(クスッ

凛「いやあ、久しぶりにまきちゃんとかよち、…花陽ちゃんに会うと、なんだか昔を思い出しちゃって」(クスクス

花陽「フフフッ…かよちんで良いよ、凛ちゃん!私がまきちゃんの誕生日にあげたのは、確かおにぎりの形のスピーカーだったよね?」

まきちゃん「そうね、そっちも家に飾ってあるわよ?そっちはもう壊れちゃったけど…」

久しぶりの思い出話で盛り上がる。

その頃には待たせて拗ねてた凛の機嫌もすっかり戻っていた。

90: 2015/09/08(火) 14:08:55.38 ID:qlKdspEu.net
まきちゃん「ところで、2人はどうやってここに?」

花陽「うん、私は今新潟で農業をしてるんだけど、私の知らない所で、穂むらと取引をしていてね?」

花陽「穂乃果ちゃんもそれを最近知ったらしくて、その伝手で連絡が来たの。」

まきちゃん「穂乃果ったら…なんでそんなことも知らなかったのよ。って花陽も!」

花陽「私も穂乃果ちゃんもね、取引先のことはあまりよく把握できてないんだあ。別の人が担当してるからね。」

まきちゃん「そうなの…。それで、凛は?」

凛「凛は今新宿でジムとダンススクールを経営していて、そこでインストラクターと講師もしてるんだあ!そして最近、希ちゃんから連絡が来たの!」

まきちゃん「この歳でインストラクター!?本当に元気ね…」

穂乃果はともかく、希も花陽も若々しい。それ以上に、凛は本当に30年前と変わらないわ。

やっぱり体を動かすって老化防止に効果があるのね。

凛「凛、まきちゃんともかよちんとも、希ちゃんとも30年振りだったから…もう本当に嬉しくて…」(グズッ)

まきちゃん「バカね…何泣いてるのよ。」

とかいう私も目に涙が浮かんできた。

花陽と顔を合わせると花陽も。

実は不安だった。凛と花陽は、私の知らないところで会ってたんじゃないかって。

まきりんぱなの内、私だけ長い間仲間外れだったんじゃないかって。

私って本当に馬鹿。そんなこと、あるはずないのに。


91: 2015/09/08(火) 14:14:20.28 ID:qlKdspEu.net
そこからも、久しぶりの再会を喜びあい、再び思い出話が続く。

会話がひと段落した頃、私は2人にメンバーの話題を切り出した。

まきちゃん「…ところで、エリー、ことり、海未、そしてにこちゃんのことについて、何か知らない?」

花陽「私、他のメンバーのことは、本当に最近まで知らなかったんだ。それに分かったのも、まきちゃん、凛ちゃん、穂乃果ちゃん、希ちゃんのことだけ…。」

凛「………」

まきちゃん「凛?」

何か、知ってるわね。

凛「にこちゃんは…」

まきちゃん「…!?」

92: 2015/09/08(火) 14:23:48.60 ID:qlKdspEu.net
にこちゃんは、高校を卒業と同時に芸能事務所に所属し、アイドル活動をした。

私達μ'sは一時、日本中を席巻するスクールアイドルだった。

当然、にこちゃんにも大きな人気があり、プロアイドルになるということで大きな話題になった。

にこちゃんはいきなり、大々的にプロモーションを行って、デビューソロライブを秋葉ドームで行ったり、新人賞を受賞したり、ドラマにも出演したりして、時の人となった。

30年前に会った時も、これから映画の撮影でフランスに行くから~なんてはしゃいでた。

私は普段テレビを見ないけど、にこちゃんの出る番組は録画して見ていた。

他のメンバーも同じ様にして、にこちゃんを応援していた。

でも、ある日にこちゃんはテレビから消えた。

雑誌からも、街の看板からも、CDショップからも。

93: 2015/09/08(火) 14:29:46.60 ID:qlKdspEu.net
にこちゃんはアイドルを引退してからも、女優として、アーティストとして活動していた。

そのダンスレッスンの為に通っていたスクールは、凛が当時インストラクターとして仕事をしていたところだった。

そこで凛はにこちゃんと顔を頻繁に合わせることになったそうだけど、

ある日、にこちゃんは事務所トラブルで事務所をクビになったらしい。

にこちゃんが所属していた事務所は、大手中の大手芸能事務所。

他所の事務所は大手事務所の圧力に屈し、にこちゃんを取ることはなかった。

そして凛は、徐々に崩壊していくにこちゃんを近くで見守り続けた。

でも、次第に凛の前ににこちゃんが現れることは、なくなってしまった。

94: 2015/09/08(火) 14:34:26.88 ID:qlKdspEu.net


まきちゃん「…今、にこちゃんがどこにいるか、知らない?」

凛「…にこちゃんが事務所をクビになる前に、にこちゃんのマンションに遊びに行ったことがあるの。」

凛「そのマンションは、にこちゃんのお母さんが買ったもので、こころちゃん達もたまに来るって言ってたから、きっと…」

まきちゃん「……凛、花陽、今週暇な日があったら教えてくれない?」



花陽、凛「…えっ?」

95: 2015/09/08(火) 14:38:37.18 ID:qlKdspEu.net


まきちゃん「こんにちは、穂奈美ちゃん。」

穂奈美「あっ、まきちゃん先生…。」

まきちゃん「どうしたのよ?元気がないわねえ…?」

穂奈美「…あの、ごめんなさい、まきちゃん先生。穂奈美のせいで、みんなに迷惑かけちゃった。」

まきちゃん「フフッ、そのことで元気が無いのね。」

まきちゃん「今日は気分転換に外に出ましょうか?車椅子、押してあげるから。」

穂奈美「本当!?」


96: 2015/09/08(火) 14:47:43.93 ID:qlKdspEu.net


まきちゃん「ふぅ…今日も良い天気ね。」

穂奈美「うん!あっ見て!変な形の雲!!」

まきちゃん「本当ね…フフフッ」

娘や孫がいたらこんな感じなのかしら。

かわいいなあ。

まきちゃん「ねえ、穂奈美ちゃん。そんなにお外出たかったの?」

穂奈美「うん、だって病院にいても退屈だし、ちなみちゃんなんてもう退院したんだよ!?」

まきちゃん「そうね、穂奈美ちゃんもあの時ケガしなかったら、もしかしたらもう退院できてたかもしれないのに…。」

穂奈美「ブー!

まきちゃん「フフッ…ねえ、それじゃあ外に行くよりももっと楽しいこと、教えてあげよっか?」

穂奈美「えーなになに!?」

まきちゃん「明日、穂奈美ちゃんのリハビリが終わるまでのお楽しみよ♡」

穂奈美「やだやだ!!今教えてよ!!」

まきちゃん「だーめっ」

私は少し意地悪な顔をする。



?「なあ、あのババア医者じゃね?つーことは金持ちなんじゃね?」

?「あーもうさっきマスカラ買ったしプリクラ撮ったから金ねーよ!」

?「ちょっとババア狙うのはひでー気がするけど、まあしょうがないじゃんね?」

97: 2015/09/08(火) 14:57:19.03 ID:qlKdspEu.net
制服を着崩した、ガラの悪そうな女子高生?がこっちを見てる…。

早く帰りましょう。

まきちゃん「穂奈美ちゃん、そろそろ帰りまs」

不良1「うっわ!この子めっちゃかわいいじゃん!骨折ってるけど!!」

不良2「そこいじるとか不謹慎すぎじゃね?ばくわら」

まきちゃん「何よあなた達、あっちに行きなさい!」

不良3「あっ!?うるせーよババア!…ちょっこのババア!めっちゃでかい宝石付いた指輪持ってんじゃん!!」

不良2「でけー!!!これ売ったら100万ぐらいいけるんじゃね!?」

不良1「やっべ!!!プリクラ何回分よ!?」

まきちゃん「あっちに行って!警察呼ぶわよ!?」

不良1「あ!?今から警察呼んで来るのに何分かかると思ってんだよバーカ!!」

病院の敷地内だけを散歩すれば良かったわね…。

繁華街の方まで来るんじゃなかった。

周りの人は…見て見ぬ振り。

昔の私だったら、お年寄りがこんな目に遭ってたら率先して助けに行ったのに。

まきちゃん「いいから!どきなさいよ!!」



ドスッ!!




痛っ!!!?

穂奈美「…っ!?まきちゃん先生!!!先生をいじめるなあああ!!!」

不良2「…なんだクソガキ!?」

ダメッ穂奈美ちゃん…刺激しちゃあ

くっ…お腹が痛くて、立てない…

穂奈美ちゃんを守らなくちゃ…

99: 2015/09/08(火) 15:02:28.38 ID:qlKdspEu.net
この指輪…ママがパパからもらった結婚指輪…

ママの形見…

手術のない日はいつも肌身離さず持ってたから…こういう日に限って運が無いわね…

でも、穂奈美ちゃん…

まきちゃん「ゲホッゲホッ…あなだだぢ…コホッ…ごの指輪が…目当てなんでじょ…?」

不良2「えっマジで!?!?ウチらにくれんの!?!?」

嫌だ、渡したくない。

でも、穂奈美ちゃんだけは、絶対に守らないと。

誰か、助けて。

みんな…助けて…。

?「そこまでです。」

101: 2015/09/08(火) 15:15:25.70 ID:qlKdspEu.net
空気が変わった。

何…?

まきちゃん「!?!?」

?「お年寄りと子供を集団で取り囲んで恐喝など、恥ずかしいとは思わないのですか!?」

不良1「んだてめー!?…アッハッハッハ!!てめーもババアじゃん!!」

不良2「ババアがババア庇うとかウケるんですけど!!!」

不良3「………ちょっ待って、このババアなんかやべーよ…殺気が…」

歳は、私と同じくらい?

それなのに、姿勢がとても綺麗で、この構えは…武道経験者ね。

髪…切ったのね。でも分かる、きっとあの人。

誰よりも不正を嫌い、真面目で実直なあの人。

?「せめてもの情けです。命だけは残してあげましょう。」

不良1「ハァ!?ババアがウチらに勝てるわけねーだろ!!」

不良3「ヤバイって!!逃げようマジ!!!」

?「もう遅い!園田拳法奥義…」

不良1、不良2、不良3「ぎえええええええ!!!!!」

不良1「お、覚えてろよ!?!?」

手をあげずして、不良達をなぎ払った。

さすがね、海未……

穂奈美「!?まきちゃん先生!?!?おばあちゃん!!まきちゃん先生が!!!」

海未「しっかりして下さい!!今救急車を呼b……」

………
……

103: 2015/09/08(火) 17:00:34.69 ID:qlKdspEu.net


「いよいよ本番ね。緊張してない?」

「どうしようお母さん…私、緊張しちゃって頭真っ白だよお…」

「フフッ…大丈夫よ。今日まで沢山練習したじゃない。努力は絶対に裏切らないから、自信を持って。」

「うん…」

「お客さんが待ってるわ…」

パチパチパチパチ


104: 2015/09/08(火) 17:17:15.70 ID:qlKdspEu.net


……んん

まきちゃん「…ここは?」

穂奈美「…!まきちゃん先s」

穂乃果「まきちゃあああああああんんんん!!!!」

まきちゃん「ちょっ!何よ!抱きつかないで!!」

穂乃果「本当に心配したんだよ!不良に絡まれて、パンチされて気を失って救急車で運ばれたって聞いたから…!!」

まきちゃん「べ、別に平気よ、あれぐらい。それに、海未が助けてくれたから…。」

海未「本当に危ない所でしたね。私が運良く通りかかったので、事なきを得ましたが…。」

まきちゃん「…ええ、本当にありがとう、海未。そして、久しぶりね。」

海未「はい、お久しぶりです、真姫。相変わらずお美しいですね。」

まきちゃん「あなたが言っても嫌味にしか聞こえないわよ…」

海未「別にそう言うつもりは…」

穂乃果「海未ちゃん!!道場にも帰らず一体どこに行ってたの!?穂乃果がどれだけ探したと思ってるの!?!?」

海未「ごめんなさい、鍛錬のために、娘の手が離れてからは中国に篭って修行をしていました。」

海未「そして、昨日まで香港に弟子の大会の応援に行っていまして、今日、8年振りに日本に帰国したのです。」

穂乃果「えー!でもずっと昔から道場に行っても会えなかったよ!?」

海未「弟子の遠征大会の付き添いなどをしていたので、留守にすることが多かったからだと思います。日舞の方でも弟子を取っていますから…。」

まきちゃん「…相変わらず、あなたには頭が下がるわ。この歳になるまでそんなに…大変ね。」

海未「いえ、真姫の方がすごいと思います。ただでさえ忙しい医者の中でも、特段
忙しい外科医なのですから。」

確かに、忙しいわよね。この仕事。

でももっと忙しい海未でも子どもを持ってるんだ。

良いなあ。

105: 2015/09/08(火) 17:28:31.38 ID:qlKdspEu.net
穂奈美「海未おばあちゃん、すごかったよね!体から竜巻みたいなのが出てきてバンバンバーンって!!」

あれ、幻じゃなかったのね…。

…スピリチュアルだわ。

海未「誰でも、鍛錬を重ねればできますよ。穂奈美ちゃんにも稽古して差し上げましょうか?」

穂乃果「ダメだよ海未ちゃん!穂奈美ちゃんはかわいく女の子らしく育てるんだから!!」

海未「ですが…」

ガララッ

美穂「!」

美穂「…西木野先生!うちの子を守ってくれて、本当にありがとうございます。」

まきちゃん「べ、別に私が守った訳じゃあ…むしろごめんなさい、私が外に連れ出したから穂奈美ちゃんを危険な目に…」

海未「真姫は大通りを穂奈美ちゃんと散歩していただけです。今日は不良と遭遇しましたが、それは真姫の責任ではありません。他の患者さんも、大通りを散歩していますし。」

穂奈美「そうだよ!!悪いのはまきちゃん先生じゃなくてあいつらだもん!!」

穂乃果「そうそう!!だから…まきちゃん、本当にありがとおおおお!!!!」

まきちゃん「だからくっつかないでよー!!」


107: 2015/09/08(火) 17:35:15.37 ID:qlKdspEu.net
まきちゃん「ハロー穂奈美ちゃん。リハビリは終わった?」

穂奈美「あーっ!!まきちゃん先生遅いよーっ!!」

まきちゃん「フフフッごめんごめん、少し仕事が忙しくてね。」

穂奈美「…そうだったんだ、ごめんなさい。………じゃあ早速!」(ニヤッ

まきちゃん「ええ、ちょっと場所を移動するから車椅子の準備をするわね。」


108: 2015/09/08(火) 17:45:20.79 ID:qlKdspEu.net
穂奈美「ねえ、まきちゃん先生、昨日のケガ、大丈夫?」

まきちゃん「ケガ?…ああ、不良にお腹を殴られた時のことね。平気よ、これぐらい。」

穂奈美「穂奈美ね、まきちゃん先生が殴られて倒れちゃったから、氏んじゃったのかと思ったの…」

まきちゃん「もう、それぐらいで氏ぬ訳ないでしょ?…でも、あそこでまきちゃん先生をいじめるなっ!!って大声で立ち向かってくれたこと、嬉しかったな。」

穂奈美「だって、大好きなまきちゃん先生をいじめるやつは許せないもん!!」

大好きなまきちゃん先生。

その何気ない言葉に私は胸が躍る。

まきちゃん「フフッ…ありがとう。」

やだ、涙もこぼれそう。

穂奈美「あーでもまきちゃん先生の指輪、真っ赤で大きな宝石が付いて綺麗だったなあ…」

まきちゃん「今日は付けてないけどね。…あれはね、先生の宝物なのよ。」

穂奈美「宝物?」

まきちゃん「うん、先生の氏んだお母さんのね。」

穂奈美「まきちゃん先生、お母さん、いないの?」

まきちゃん「…うん、いないわよ。…でも寂しくないわ。あなたのおばあちゃんや、昨日あった海未おばあちゃんや…仲間がいるからね。」

…穂乃果達と再会するまで、すごくすごく寂しかったなあ。

穂奈美「穂奈美も、まきちゃん先生にずっと付いててあげるからね!?」

まきちゃん「…ありがとう。」

何よ。

この数分で2回も泣かされそうになっちゃった。

まきちゃん「っと、着いたわよ。今鍵を開けるわね。」

109: 2015/09/08(火) 17:56:14.60 ID:qlKdspEu.net
ゴゴゴッ

穂奈美「うわー!真っ暗!」

まきちゃん「今電気をつけるから、待ってて。」

カチッ

穂奈美「わー!ひろーい!!おっきいピアノもある!!」

まきちゃん「病院の中にこんな所があるなんて、びっくりしたでしょ?」

まきちゃん「ここで先生はピアノを弾いてるの。最近は弾いてないけど、昔はよく患者さんを招待してコンサートをしてたのよ?」

穂奈美「まきちゃん先生ピアノも弾けるんだ!!…うちのおばあちゃんとは大違いだなあ。」

まきちゃん「フフッ…そうかもね。」

私は穂奈美ちゃんの車椅子をステージのすぐ前まで移動させ、ステージに上がる。

はーっ、やっぱりステージに立つと、見知ったお客さんが1人だけでも緊張するわね。

ピアノの鍵盤蓋を上げ、鍵盤に手を置く。

まきちゃん「穂奈美ちゃんだけのまきちゃん先生の特別コンサート、始めるわよ?」

穂奈美「わー!」パチパチパチパチ

よし、かっこいい所見せちゃうわよ。

110: 2015/09/08(火) 18:01:32.52 ID:qlKdspEu.net
タンタンタララーン…♪

私は得意なモーツァルト、シューマンの曲を弾いた。

久しぶりでも、体が覚えているのね。

穂奈美ちゃん、退屈していないかな?

弾き終わって穂奈美ちゃんの方を見ると、目をカッと開いて高速で拍手をしていた。

私が初めて穂乃果と出会った時も、穂乃果はこんな間抜けな表情でパチパチやってたわね。

穂奈美「すごいすごい!!まきちゃん先生すごい!!もっと聴かせて!!」

良かった。満足してくれたみたい。

まきちゃん「良いわよ?…それじゃあ次はね。」

声、出るかな?

歌の方はもうずっと長いこと歌ってないけど。

111: 2015/09/08(火) 18:06:11.31 ID:qlKdspEu.net
ターン、

まきちゃん「さあーだいすきだーばんざーい♪

まけなーいゆーうきー♪

わたしたちはいまをーたーのーしもうー♪」

私が、初めて穂乃果に聴かせた曲。

穂乃果がμ'sに誘ってくれて、その時は断ったけど、

私の、はじまりの曲。

まきちゃん「まえむいてー♪」

声、やっぱり出ないわね。

そりゃもうずっと歌ってないのに、

この歳になって歌おうなんて考える方がおかしいのよ。

はあ…もっと上手かった時に聴かせてあげたかったなあ。

112: 2015/09/08(火) 18:10:31.77 ID:qlKdspEu.net
穂奈美ちゃんに下手って思われないかな?

もう慕ってくれなくなったらどうしよう。

歌い終わって、恐る恐る穂奈美ちゃんを見ると、

穂奈美「すごい!!!すごいすごいすごい!!!」

穂奈美「まきちゃん先生歌もすっごく上手なんだね!!すごいよ!!」

さっき以上に興奮していた。

とりあえず面目は保てたかしら?

まきちゃん「歌、久しぶりに歌ったから声出なかったんだけどね…」

穂奈美「全然そんなことないよ!!本当に上手だったよ!!」

まきちゃん「…ありがとう。」

弾きながら歌うって大変ね。

この歳になるともうキツくなってきちゃった。

113: 2015/09/08(火) 18:20:05.71 ID:qlKdspEu.net


まきちゃん「穂奈美ちゃんは、音楽は好き?」

穂奈美「今まではふつーだったけど、まきちゃん先生のピアノと歌を聴いたら大好きになった!!」

まきちゃん「本当に…?フフッ…」

嬉しいなあ…自分の力で、人を音楽に引き込むことができるなんて。

まきちゃん「穂奈美ちゃんも、何か歌わない?」

穂奈美「本当!?それじゃあねえ…」

私は穂奈美ちゃんがリクエストする曲を弾きながら、穂奈美ちゃんと歌った。

童謡は分かったけど、最近のA-RISEの曲や、アニメの曲はまったく分からなくて弾けなかった。

メロディーだけ、昔のA-RISEの曲を弾いたけど、穂奈美ちゃんは分からない様だった。

頑張って最近の曲を勉強しないと…ますます忙しくなるわ、なんてね。

それにしても不思議ね。あんなに疲れてたのに、疲れはどこかに吹き飛んで、今は心が活き活きするわ。


114: 2015/09/08(火) 18:29:01.98 ID:qlKdspEu.net


穂奈美「あーあ、もっと一緒に歌いたかったのに…」

まきちゃん「仕方ないでしょ?もうすぐ晩御飯なんだから。」

穂奈美「ねえ、まきちゃん先生!」

まきちゃん「なーに?」

穂奈美「また、ピアノ聴かせて!そして一緒に歌ってよ!!」

とても嬉しい。

けど…いくらなんでも、穂奈美ちゃんにだけ贔屓しすぎよね。

でも…

まきちゃん「ええ、良いわよ。」

…まきちゃん先生の音楽教室を開講していて、今の所生徒は穂奈美ちゃんだけってことで自己完結しましょう。

穂奈美「本当!?わーい!ありがとう!!ねえねえ!明日も歌いたーい!!」

まきちゃん「ごめんね、明日は…」

明日は、花陽、凛と一緒ににこちゃんに会いに行く日。

穂奈美「えー!そんなぁ…」

まきちゃん「ごめんね、その代わり明後日はどう?明後日なら大丈夫だから。」

穂奈美「うーん、しょうがないなあ…」

まきちゃん「ごめんね、ありがとう。」


118: 2015/09/09(水) 17:56:34.65 ID:4rnwZTyP.net


まきちゃん「ただいまー。」

「奥様、お帰りなさいませ。」

まきちゃん「花陽と凛は?」

この間、にこちゃんに会いに行く計画を立ててから、2人は私の家に泊まっている。

まあ、2人とも今週は結構余裕があるらしいし、花陽に関してはまた新潟から来てもらうのも…ね。

「花陽様と凛様は料理室にいらっしゃいます。」

まきちゃん「なんでよ?シェフが来てるはずでしょ?」

「はい、ですが本日は自分達で料理をするからと…。」

凛「あっまきちゃん!おかえり!!」

まきちゃん「ちょっと、自分達で料理をするってどういうことなのよ?」

凛「昔まきちゃんのお家に3人で泊まった時、みんなで料理したでしょ?だから、懐かしくなっちゃって…」

まきちゃん「はぁ…なによこっちは仕事帰りなのに…面倒臭いわね。」

どうしよう、野菜の皮すらもう40年は剥いてないのに。

花陽「あっまきちゃん!お帰りなさい!」

奥から出てきたのは割烹着を着た花陽。やけに似合うわね。

というか、なんで割烹着なんて持ってきてるのよ。

まきちゃん「花陽、一体どういうことなのよ?」

花陽「えへへ…せっかくお泊まりしてるんだから、それっぽいことしたいなあって…」

まったく…

でも、悪くないかもね。

119: 2015/09/09(水) 18:05:12.83 ID:4rnwZTyP.net
まきちゃん「それで、何を作るわけ?」

凛「おっ!まきちゃんが乗ってきたにゃー!」

まきちゃん「うるさい!」

花陽「それも、学生に戻った気分でカレーなんてどうかな?」

カレーか…。野菜と肉を切って炒めて、鍋で茹でて、ルーをいれるだけよね。

それなら、私でもなんとかなるか。

まきちゃん「分かったわ、このまきちゃん先生が料理も得意だってこと、証明してあげる!」

凛「まきちゃん、昔は料理苦手じゃなかったかにゃー?」

まきちゃん「そんなことないわよ!!」

花陽「まあまあ。それじゃあ、料理室に行こっか。」

とかなんとか言いながら、私はすごく楽しみだった。

みんなで料理をして、みんなで食べる。

家族がいたら、こんなこともできたのかな。

120: 2015/09/09(水) 18:14:46.11 ID:4rnwZTyP.net
花陽「泊めてもらってるせめてものお礼に、材料はさっき凛ちゃんと買ってきたから…。」

まきちゃん「別に気を遣わなくても良いのに。野菜やお肉なら、シェフが買い置きしてたものがあるでしょう?」

凛「はぁ…まきちゃん分かってないにゃー。」

まきちゃん「何がよ!?」

花陽「まあまあ、まきちゃんのお家にあるものも良いけど、今日は私達が買ってきた物を使わない?」

まきちゃん「…まあ、良いけど。」

じゃがいもって…今こんな値段で売ってるのね。

花陽「それじゃあ、役割分担をするね!」

花陽「まず、花陽はご飯を炊きます!それが終わったら、付け合わせを何か作るね!」

…言うと思った。

花陽「凛ちゃんは、野菜を洗って、皮を剥く係ね!」

凛「はーい!」

花陽「まきちゃんは、野菜と肉を切って、炒めて、水で茹でてからルーを入れる係ね!」

まきちゃん「了解。」

包丁…もう随分長いこと持ってないわね。

メスならほぼ毎日持ってるんだけど。

花陽「はい!それじゃあ作業開始!」

121: 2015/09/09(水) 18:30:51.53 ID:4rnwZTyP.net
花陽「……」ジャリジャリジャリ

花陽の米の研ぎ方……慣れてるわね。

凛「……」カリカリカリ

凛も野菜を洗って、とてもスムーズに皮を剥いてる…。

凛「はい!まきちゃん!」

まきちゃん「え、ええ…。」

私が呆気に取られていると、凛から皮を剥いた野菜を渡された。

まきちゃん「……」ザクッザクッ

じゃがいもってこれぐらいの大きさで良いのかしら…?

ゴロゴロして…切りにくい…

凛「?…まきちゃん、それじゃあ小さすぎるよ~!」

間違えちゃった。

まきちゃん「なによ!!そういうことはもっと早く言いなさいよ!!」

まきちゃん「もうっ!」

ザクッ

痛っ…!?

凛のせいで気が散って、指を切ってしまった。

122: 2015/09/09(水) 18:31:43.35 ID:4rnwZTyP.net
凛「あーあーまきちゃん…何やってるにゃ…」

まきちゃん「あなたが気を散らす様なこと言うからでしょ!?」

凛「ちょっと凛に貸して…?」

ザクッザクッ

……悔しいけど、料理の手際に関しては完敗ね。

凛「はい!それじゃあ、まきちゃんは野菜と肉を炒めてね!」

まきちゃん「…了解。」

花陽「あっまきちゃん、ちょっとごめんね…。」

私が鍋を火にかけようとしたら、花陽が隣のコンロに割り込んできた。

まきちゃん「それは、何を作ってるの?」

花陽「これ?これは付け合せのリゾットだよ。最近はまってるんだあ…!」

カレーの付け合せにリゾットって何よ…。

けど、私が野菜を切るのに四苦八苦してたころ、花陽はこんなものまで作ってたなんて。

凛「こっちもサラダができたにゃー!」

後ろでザクザクやってると思ったら凛まで。

…負けてられない。

123: 2015/09/09(水) 18:35:55.01 ID:4rnwZTyP.net
私がコンロに火をかけた瞬間、鍋にはった油が弾けて…

まきちゃん「きゃ、きゃあああ!!!」

花陽「ま、まきちゃん!!」

花陽が火を切った。こ、こわかった…。

凛「まきちゃん、油入れすぎだよ~。しかも野菜の水気をちゃんと切らないから…。」

まきちゃん「わ、分かってるわよ!!うるさいわね…。」

変な見栄、張らなきゃ良かった。


124: 2015/09/09(水) 18:46:27.01 ID:4rnwZTyP.net


途中苦労しながらも、なんとか無事に作り終えることができた。

花陽「わぁ~!おいしそうだね!!」

凛「誰かさんのせいですごい時間かかったけどね~?」

まきちゃん「…うるさいっ!」ピン

凛「にゃっ!」

私は悔し紛れに、凛にデコピンをお見舞いした。

花陽「じゃあ、食べよっか?」

まきちゃん「ええ。」

凛「いただきまーす!!」

私と花陽も、いただきますと凛に続いた。

はふはふっ

まきちゃん「!?」

熱いのも相まって、辛い。

けど、おいしい。

普段食べるカレーより、ずっとずっとチープな味だけど、

普段食べるカレーより、ずっとずっとずーっとおいしい。

花陽「おいしい!!」

凛「いけるにゃー!!」

まきちゃん「もう、食事中にはしゃがないの!!」

花陽「ふふっ、ねえ、リゾットも食べてみて?自信あるんだ!」

本当だ。コンソメが効いてて、おいしい。

凛「凛のサラダもおいしーよ!?」

カラフルな野菜で彩られていて、綺麗。

凛「ドレッシングも手作りしたんだよ!?」

…おいしい、ドレッシング。

レモンの酸味と、黒胡椒が効いてて…。

2人共、すごいなあ。

125: 2015/09/09(水) 19:12:24.05 ID:4rnwZTyP.net
食事をしながら、ここでも学生時代の思い出話が始まり、長く続いた。

この2人とは高校3年間の付き合いだったから、話も尽きない。

それでもやがて話は一区切りになり、後片付けをしながら明日の話になった。

まきちゃん「それで、にこちゃんのマンションはどこにあるの?」

凛「うん、中野の方にあるんだけど…。」

凛「…行っても、会ってくれるか分からないよ?」

前の話でも、凛の前に現れなくなったって言ってたものね。

まきちゃん「大丈夫よ…私達は、ずっと友達でしょ?」

まきちゃん「友達との久しぶりの再会なんだから、きっとあってくれるわ。」

私は自分に言い聞かせる様に言った。

凛「…そうかな。」

花陽「にこちゃん…会ってくれると良いなあ。」

まきちゃん「さあ、明日もあるし、お風呂に入って寝るわよ?」

花陽、凛「はーい!」

花陽と凛が泊まってから、毎日お風呂に入る時も、寝る時も、年甲斐もなくはしゃいでいたけど、

今日はみんな静かだった。

私を含め、みんなにこちゃんのことが気がかりだったんだと思う。

私は中々眠れなかった。

127: 2015/09/09(水) 22:01:55.11 ID:4rnwZTyP.net


まきちゃん「う、うそ…うそよ…うそでしょ…!?」

穂乃果「…」

海未「…」

ことり「…」

花陽「…」

凛「…」

絵里「…」

希「…」

にこ「…」

まきちゃん「なんで…なんで私だけ置いて…」

まきちゃん「…パパもママも、みんなみんな、なんで私をひとりにするの…!?」

まきちゃん「なんで、なんで…なんでなのよおおおおおお!!!!!」

穂奈美「…わ、私はまきちゃん先生の側にいるy」

まきちゃん「うるさああああい!!!!」

バンッ

穂奈美「きゃあっ!…いっ痛い…」グスッ

穂奈美「うわああああああん!!痛いよおおおおおお!!」

まきちゃん「穂乃果ああああああ!!!みんなああああああ!!!!!!」

………
……

128: 2015/09/09(水) 22:09:13.39 ID:4rnwZTyP.net
………

まきちゃん「……ほのかぁ…みんなぁ…」

花陽、凛「…」

まきちゃん「……ん?」

まきちゃん「って!!きゃあああ!!」

花陽、凛「わあああああ!!!」

まきちゃん「な、何よ!!人が寝てる時に…!!」

花陽「まきちゃん、大丈夫…?」

凛「すごく…うなされてたから…」

まきちゃん「え?…へ、平気よ…」

こんな悪夢は久しぶりに見たわ。

最近見る夢は中々良いものが多かったのに。

なんて目覚めの悪い朝なの…。

まきちゃん「…今、何時?」

花陽「えっと…もうすぐ9時だね…。」

まきちゃん「…私は寝汗かいちゃったから、シャワー浴びてくるわ。朝はシェフが用意してくれてるはずだから、適当に食べて準備しといて。」

凛「えー!朝も何か一緒に作ろうよー!?」

まきちゃん「ばか、そんな余裕ないわよ…それに、せっかくシェフが作ってくれたんだから食べないともったいないでしょ?」

凛「それもそうだね…。じゃあ、遠慮なく頂くにゃー!」

花陽「楽しみだねえ!朝ごはん!!」

まったく…。

でも、本当に夢で良かった。

130: 2015/09/09(水) 22:19:39.31 ID:4rnwZTyP.net
……

凛「…ここだよ。」

にこちゃんのマンションを目指して、駅からタクシーに乗り、降りた先に見えたのは、ごくごく平凡なこじんまりとしたマンションだった。

にこちゃんが高校時代に住んでたマンションと同じ様な雰囲気ね。

凛「ここの…確か205号室だよ!2(に)5(こ)だから覚えてる!」

まったく、矢澤家らしい安直な部屋の決め方ね。

花陽「はうう…緊張するねえ…」

まきちゃん「友達に会いに行くんだから、緊張してどうするのよ?」

私も人のこと言えないけどね。

とか言ってたら、エレベーターは2階に到着した。

エレベーターを出ると、すぐに205号室に着いた。

131: 2015/09/09(水) 22:26:05.45 ID:4rnwZTyP.net
まきちゃん「…」

凛「…」

花陽「…」

まきちゃん「…凛、あなたがインターホンを押しなさい。」

凛「…えー!?なんで凛が!?」

まきちゃん「あなたは私達のリーダーでしょ?押しなさいよ!」

凛「まきちゃんさっき(友達に会いに行くんだから、緊張してどうするのよ?)って言ってたにゃー!!」

まきちゃん「ムッ!何よそれ!!私のマネ!?イミワカンナイッ!!」

まきちゃん「…仕方ない!それじゃあ部長の花陽!お願い!!」

花陽「エ、エエッ!?私!?」

凛「ずるいにゃ!!理由付けして人に任せるなんて!!」

?「…あの、うちに何か用ですか?」

まきりんぱな「…!?!?!?!?」

まきりんぱな「にこちゃん!?!?」

132: 2015/09/09(水) 22:31:26.45 ID:4rnwZTyP.net
杖、ついてるの…?

まあ、にこちゃんももう67歳だものね。

でも、顔は全く変わってない…。

けど、昔よりずっと縮んだわね。それに、脚の形が…?

凛「にこちゃん、にこちゃん…凛ずっとにこちゃんのこと心配して…。」グスッ

花陽「花陽、ずっと、ずーっと会いたかったんだよ!?」ズビッ

?「…にこは、私の姉です。」

まきちゃん「…えっそれじゃあ、あなたは!?」

?「…みなさん、本当にお久しぶりです。妹の、ここあです。」

まきちゃん「!?」

133: 2015/09/09(水) 22:38:17.03 ID:4rnwZTyP.net
そうだった。

にこちゃんの妹の、特にこころちゃんはにこちゃんと瓜二つだったわね。

まきちゃん「…そうだったの、ごめんなさい。」

まきちゃん「今日は、にこちゃんに用事があって来たんだけど、ここに住んでるのよね?」

こころ「…」

こころ「……帰って下さい。」

まきちゃん「…えっ!?」

こころ「…姉は、皆さんに会いたくないと思います。」

凛「なんでそんなことっ!?」

花陽「どういうことなの!?」

こころ「とにかく、帰って下さい。」

まきちゃん「…なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないのよ!?にこちゃんの気持ちをなんであんたが分かるの!?」

こころ「いいから帰って!!」

?「…うるさいわよここあ、家の前で何やってるの!?」

ここあ「あっ、お姉さま…!?」



ガチャッ



まきちゃん「…!?」



私は、目を疑った。

134: 2015/09/09(水) 22:52:22.49 ID:4rnwZTyP.net
?「……真姫…なの?」

まきちゃん「……にこちゃん、なの…!?」

私の前に現れたのは、みすぼらしい老婆だった。

本当に、にこちゃんなの…?

自慢の黒くてツヤツヤのツインテールは、短く切られ、真っ白でボサボサ。

高校の頃から熱心にケアしていた肌も、シワとシミだらけだった。

ドアを支える手も、ボロボロだ。

そして、ただでさえ華奢だったにこちゃんの体は、今や病的に痩せ細っていて痛々しい。

ファッションにも敏感だったのに、もう何十年も昔に流行った服を着ている。

私も、凛も、花陽も、言葉が出なかった。

にこ「……ここあ、早く入りなさい。」

ここあ「…は、はい。」

にこ「あなた達は帰って。」

ガシャン

まきちゃん「…!?!?ちょっと!!待ちなさいよ!!」

まきちゃん「一体何があったのよ!?!?そんなになるまで、なんで頼ってくれなかったのよ!?!?」バンバンッ

凛「そうだよ!!凛、にこちゃんのことずっと心配して、頼ってくれたら、なんだって力になれたのに!!!みんなだって力になったのに!!!」

花陽は、その場で泣き崩れていた。

まきちゃん「にこちゃん!!話がしたいのよ!!開けて!!!」

にこ「うるさいうるさい!!もういい加減に帰って!!!これ以上は警察呼ぶわよ!?!?」

まきちゃん「…っ!?」

136: 2015/09/09(水) 23:03:47.15 ID:4rnwZTyP.net
友達に、警察を呼ぶなんてこと、言われるなんて。

まきちゃん「……なんで、なのよお。」グスッ

凛「凛がいけないんだっ…凛がっ!凛が…ずっとにこちゃんのことを放っておいたから…。」ヒックヒック

花陽「にごぢゃん…にごちゃん…」

どうすれば良いの…。

にこ「もう良い加減にして!!帰りなさいったら!!!!…お願い、だから…!!」

にごちゃんは、涙声になりながら怒鳴ってる。

まきちゃん「…」

これ以上は、現時点ではどうしようもないわ…。

まきちゃん「…花陽、凛、帰りましょう。」

凛「…えっ?にこちゃんのこと、このまま放っておくの!?」

まきちゃん「今はこれ以上どうしようもないでしょう!?!?」

私は声を荒げる。

今日の所は、退くしかないわ。

まきちゃん「…分かったわ、にこちゃん。今日は帰るから。」

にこ「…」

カキカキ

まきちゃん「私の連絡先を書いたメモ、ポストの中に入れておくから。」

にこ「…余計なことしないで!!」

まきちゃん「必要ないなら、連絡しなくても良いわよ。」

にこ「…もう分かったからさっさと帰って!!」

まきちゃん「…はいはい、帰るわよ。」

まきちゃん「行くわよ、2人とも。」

花陽、凛「…」

みんな、帰りは無言だった。

一旦私の家に着いて、2人とも荷物をまとめたら、その場で別れた。

帰りの挨拶以外は、ずっと無言だった。

139: 2015/09/09(水) 23:27:37.34 ID:4rnwZTyP.net
……

まきちゃん「ふわあ……」

「奥様、おはようございます。」

まきちゃん「おはよう…」

今日は夢を見なかった。

まあ、悪夢を見るよりマシね。

それでも、昨日のにこちゃんの姿が、頭から離れない。

連絡、来てないわよね?

私は期待して携帯を見る。

まきちゃん「えっ!?!?」

知らない番号から不在着信が、

まさか、にこちゃん!?

そして、メールも来ていた。

折り返しの電話をしようとする前にメール画面を開くと、差出人は…

Eli Ayase

145: 2015/09/10(木) 22:20:57.80 ID:FSID2kXh.net
メールには、久しぶり、見たら連絡ちょうだい。とだけ淡白に書かれていた。

…これだけ待たせといて、他に言うことあるんじゃない?

ま、本来の人柄とは打って変わって、エリーのメールっていつも事務的だったわよね。

ホッ

昨日のにこちゃんとのことがあったからか、あの頃のエリーの淡白さが感じられて安心した。

すぐにでも、連絡したい…けど

「奥様、早く朝食をお食べにならないと、遅れてしまいますよ?」

…一旦病院に着いてからね。

まきちゃん「今行くから!」


146: 2015/09/10(木) 22:29:28.00 ID:FSID2kXh.net


佐藤先生「…と、言うことなんですが」

まきちゃん「…そうね。」

鈴木先生「しかし、あの年齢ではまだ…」

まきちゃん「…そうね。」

ナース「………院長先生?」

まきちゃん「…そうね。」

ナース「院長先生!!」

まきちゃん「…そうね。……っ!?」

佐藤先生「…」

鈴木先生「…院長、話聞いてましたか?」

まきちゃん「コ、コホン!…当たり前でしょ!?聞いてたわよ!!」

佐藤先生「それでは、伊藤さんの治療方法に関して、私と鈴木先生の案、どちらが良いと思いますか?」

まきちゃん「ヴェェ…そ、それは…」

ダメね…。

昨日のにこちゃんのことが気がかりだし、エリーに早く連絡したいし、穂奈美ちゃんと歌いに行きたいし、仕事に集中できないわ…。

まきちゃん「…」ソワソワッソワソワッ

ナース「…ハァ」


147: 2015/09/10(木) 22:37:51.97 ID:FSID2kXh.net
お昼休み、私は病院の屋上に走った。

ここなら、誰にも邪魔されずにエリーに電話できるわ。

…病院の内線が鳴らなければの話だけど。

スゥ…ハァ…

私は深呼吸をして、エリーのものであろう番号に電話をかける。

trtrtrtr

trtrtrtr

trtrtrtr

…遅いわね。

trtrtrtr

trtrガチャッ

まきちゃん「…っ!?」

私は不意に電話が繋がり、怯んだ。

『わ~♡まきちゃん、久しぶりだね~♡』

このフワッフワした甘ったるい声は…

まったく、この時間に聞くと眠気を誘うのよね。

まきちゃん「久しぶり…ってなんでことりが出てるのよ!?」

私は眠気覚ましを兼ねて、少し声を荒げる。

148: 2015/09/10(木) 22:44:36.62 ID:FSID2kXh.net
ことり『ごめんね、まきちゃん。今絵里ちゃん運転中だから…少し待っててね♡』

?『チャオ~真姫!久しぶりね?』

まきちゃん「チャオって…ロシアキャラはどこにいったのよ、エリー?」

絵里「フフッ、仕事柄ヨーロッパにいることが多くてね?言葉も馴染んじゃったのよ。」

なるほど。イタリアはミラノなんて、ファッションの街だものね。

私も若い頃ママとミラノに旅行に行って、プラダのドレスをプレゼントしてもらったなあ。

まきちゃん「…というかあなた、電話しながら運転したら危ないじゃない!?」

絵里「安心して、ハンズフリーで電話してるから。」

…賢い。

151: 2015/09/10(木) 22:55:50.92 ID:FSID2kXh.net
まきちゃん「…それで、今日本にいるの?」

絵里『ええ、今度日本でもことりのブランドのコレクションがあるから、ことりと一緒に昨日日本に帰ってきたのよ。』

まきちゃん「…ねえ、今ならμ'sのみんな、大体集まれるみたいなんだけど、会いに来ない?」

素直に会いたいって言えば良いのに…。

絵里『ハラショー!!それは素晴らしいわね。』

『ことり、μ'sのみんなに会えるんですって!』

『本当~?♡ことり、みんなにずっと会いたかったから、嬉しい♡』

絵里『ぜひ行かせてもらうわ。もう30年ぶりだものね。』

まきちゃん「そう…。」

ほっ…良かった。

まきちゃん「もし今日でも大丈夫なら、夜の6時頃にうちの病院に来てくれない?」

絵里『うちの病院って、西木野総合病院?』

まきちゃん「そうよ。…ああごめん、行ってなかったけど、今は私が院長をしてるのよ。」

まあ、わざわざ説明しなくても、大方の予想通りだと思うけどね。

絵里『ハラショー!すごいじゃない!!』

まきちゃん「エリーの方がすごいわよ…。それじゃあ、今日は待ってるからね?」

絵里『分かった。それじゃあ、また後でね?』

プツッ…プー、プー

よし、午後からは頑張らなきゃ。

163: 2015/09/12(土) 19:21:26.98 ID:1HEhfuVe.net


まきちゃん「…うん、経過も順調だわ。予定通り、来週には退院できますよ。」

「本当ですか!?」

まきちゃん「ええ、完治までまだ時間はかかるけれど…。」

まきちゃん「早く治す為にも、これまで以上に安静を心掛けて下さいね。」

「はい、分かりました。」

まきちゃん「はい、それじゃあ結構ですよ。お大事に。」

「ありがとうございました。」

164: 2015/09/12(土) 19:24:22.52 ID:1HEhfuVe.net
バタンッ

ふぅ…

ナース「院長先生、お疲れ様です。先程の患者さんで、今日はもう終了ですよ。」

まきちゃん「分かったわ、お疲れ様。」

さて、と…

まきちゃん「…♪」

自然と胸が躍る。

ナース「…フフッ院長先生、この後何かあるんですか?」

バレていた。

まきちゃん「べ、別に...そんなんじゃないわよ!!」

ナース「フフッ…」

ふと、銀色の柱に反射した自分の顔を見ると、なんともだらしない面をしていた。

ムッ

私は柱の前でいつもの得意気なすまし顔を作って、診察室を出た。

準備をして、急がないと。


171: 2015/09/14(月) 23:44:20.98 ID:79RrK81/.net


まきちゃん「チャオ!穂奈美ちゃん!」

…いけない、昼のエリーの挨拶が移っちゃった。

穂奈美「チャオ~!まきちゃん先生!…早速…」(ニヤッ)

ノリの良い挨拶で返してくれる穂奈美ちゃん。

こういう所を見ると、愛しくなっちゃうわね。

まきちゃん「フフッ…行きましょうか?」(ニヤッ)

今日の楽しみのもう1つが、始まる。

私は穂奈美ちゃんを車椅子に乗せ、あの部屋へ向かった。

…おっとと。

今日は片手にパソコンを持っているから、気を付けないと...。

172: 2015/09/14(月) 23:45:23.20 ID:79RrK81/.net
ゴゴゴッ

カチッ

穂奈美「まきちゃん先生!早く早く~!!」

まきちゃん「もう、急かさないの。」(クスッ)

私はステージの前に、穂奈美ちゃんの車椅子を押してから、ピアノの鍵盤蓋を開け、イスに座った。

まきちゃん「…♪」タラッタララー♪ラー♪

穂奈美「…!!それは!?」

これは、穂奈美ちゃんが好きなアニメの曲。

この間は知らなかったから弾けなかったけど。

穂奈美ちゃんが前にリクエストした曲、全て聴いて、練習してきたのよね。

まきちゃん「どう!?すごいでしょ!?」

フフン、私は得意気な顔で穂奈美ちゃんを見る。

ああ、ずっと聴かせてあげたかった。

だって穂奈美ちゃんに聴かせたら、絶対にまきちゃん先生すごいって言ってくれるもの。

173: 2015/09/14(月) 23:46:32.72 ID:79RrK81/.net
穂奈美「すごい!!すごいすごいすごーい!!この前は弾けなかったのに!!」

反応は期待以上ね。

まきちゃん「まきちゃん先生はね?一度聴いたらどんな曲でも弾けるのよ!?」

...思わず見栄を張ってしまった。

この間の花陽と凛の件で、物理的にも精神的にも痛い目に遭ったというのに。

穂奈美「すっごい!!まきちゃん先生って天才だね!?!?」

まあ、穂奈美ちゃんが聴きそうな曲なら、なんとか対応できそうね。

まきちゃん「フフッそうよ?それに今日はパソコンを持ってきてるから…。」

まきちゃん「穂奈美ちゃんが歌いたい曲、何でもその場で聴いて、その場で弾いてあげるわ!!」

穂奈美「本当っ!?やったー!!!」

穂奈美「それじゃあね…穂奈美、パラキュアのお歌歌いたーい!!」

まきちゃん「OK!」

174: 2015/09/14(月) 23:47:24.62 ID:79RrK81/.net
タラタラタラララー♪

これは、練習してきたわ。

穂奈美「~♪」

穂奈美ちゃんが、ピアノに合わせて歌う。

私も歌おうかな…。

いや、穂奈美ちゃんの歌を聴いていたい。

タラーン♪

穂奈美「どうだった!?まきちゃん先生!?」

まきちゃん「ええっ、とってもお上手よ。」

それは、心からの感想だった。

ちょっと音程が外れてたり、滑舌が良くなかったりするけど、

とても、良い声。

穂乃果はもちろん、雪穂もそうだった。

高坂家は、声帯に恵まれた家系だわ。

175: 2015/09/14(月) 23:48:04.48 ID:79RrK81/.net
穂奈美「本当!?わーいっ!!まきちゃん先生に褒められちゃったー!!!」

特に際立つのは、声量ね。

座った状態でこれなんて…天才はこの子の方じゃないかしら。

穂奈美「まきちゃん先生、次はあの曲が良い!!」

まきちゃん「OK、任せて!」

それから、私は穂奈美ちゃんのリクエストに応えて、ピアノを弾いた。

穂奈美ちゃんは私のピアノに合わせて歌った。

楽しい。

この時間が、ずっと続いたらなあ…。

176: 2015/09/14(月) 23:48:42.00 ID:79RrK81/.net
穂奈美「穂奈美、次はあらいずの新曲歌いた~い!」

…A-RISEの新曲

これかしら?タンタンタラタン♪

穂奈美「まきちゃん先生違うよー!それは先週出たやつだよ!?」

A-RISE、今週もまた曲を出してるって言うの?

まきちゃん「ごめんね、穂奈美ちゃん、ちょっと分からないから、パソコンで調べるわね。」

私はパソコンで、動画サイトを開いた。

すると、いきなりA-RISEのPVのページが出てきた。

177: 2015/09/14(月) 23:49:18.81 ID:79RrK81/.net
これかしら?

まきちゃん「穂奈美ちゃん、これで合ってる?」

私は再生ボタンを押して、穂奈美ちゃんに問いかける。

穂奈美「うん!これこれっ!!あー…ハヤテちゃん、やっぱりかわいいなあ。」

~♪

私は画面に映った、ハヤテちゃんとやらを見る。

ふーん、A-RISEも随分ガーリーなグループになったのね。

けど、ツバサ達の方がダンスにもキレがあったし、魅力的だったわ。

179: 2015/09/14(月) 23:52:08.46 ID:79RrK81/.net
まきちゃん「この子、いまいくつなの?」

穂奈美「ハヤテちゃんは18歳で、今年デビューしたんだよ!?」

穂奈美「まきちゃん先生知らないのー?」クスクス

秋葉なんていつも通ってるのに、全然知らなかったわ。

まあ、今のA-RISEはスクールアイドルじゃないから、秋葉をホームにしている訳じゃないものね。

180: 2015/09/14(月) 23:53:15.37 ID:79RrK81/.net
まきちゃん「…穂奈美ちゃんは、将来A-RISEみたいなアイドルになりたいの?」

穂奈美「うーん、穂奈美はアイドルより、お花屋さんになりたい!!」

穂奈美「でも、まきちゃん先生のお陰で、歌うことが大好きになったから、お歌も歌えるお花屋さんになりたい!!」

まきちゃん「フフッ…欲張りな子ね。でも、良いんじゃない?」

穂奈美「うん!ありがとう!!」

歌うことが大好き、か。

同じね、私達と。

まきちゃん「…穂奈美ちゃん、良いもの見せてあげるわ。」

181: 2015/09/14(月) 23:55:17.18 ID:79RrK81/.net
…やっぱり、恥ずかしいな。

穂奈美「?」

私はパソコンを操作し、(μ's)と書かれたフォルダを開く。

どの曲にしようかしら。

…私の氏んでいた音楽が、再び始まった曲。

もしこの曲が、穂奈美ちゃんにとってもスタートの曲になったら、どんなに幸せだろう。

タラランララン♪

タラランララン♪

タラタタタタータタタン♪

穂奈美「…!!」

アイセーイ♪

182: 2015/09/14(月) 23:57:39.86 ID:79RrK81/.net
さっきのA-RISEのPVと比べると、やっぱり古いわね。

まあ無理もないわ、もう半世紀前の映像だもの。

…やっぱり恥ずかしい。

私が恥ずかしくなって消そうとしたら、

穂奈美「…待って!」

穂奈美ちゃんは瞬きもせずに、パソコンの中のかつての私達に夢中になっていた。

183: 2015/09/14(月) 23:58:33.99 ID:79RrK81/.net
諦めちゃダメーなんだー♪

穂奈美「…これ、海未おばあちゃん!?」

まきちゃん「そうよ、よく分かったわね?」

あ、来た…。

君も感じてるよねー♪

はじーまりーの鼓動ー♪

穂奈美「あー!?もしかして、まきちゃん先生!?!?」

まきちゃん「そ、そうだけど…。」

穂奈美「まきちゃん先生、この頃から歌すごく上手かったんだね!!それに、アイドルみたいにかわいい!!!」

まきちゃん「いや、そんな…い、一応アイドルだったんだから、当たり前よ!!」

まきちゃん「そ、それより、あなたのおばあちゃんよ!?」

穂奈美「…わぁ!!」

184: 2015/09/14(月) 23:59:24.20 ID:79RrK81/.net
眩しいひかーりーにー♪

照らさーれてー変われー♪

START!

穂乃果、やっぱりセンターに立った時の圧倒的なオーラはさすがね。

穂奈美ちゃん、これで少しは穂乃果のすごさが分かったかしら?

185: 2015/09/15(火) 00:00:06.09 ID:mJm/08wF.net
穂奈美「…」

ああ…穂奈美ちゃん、やっぱり横顔が一番穂乃果に似てるわね。

穂奈美「...決めた。」

まきちゃん「ん?」

穂奈美「私、アイドルやる!」

186: 2015/09/15(火) 00:00:49.59 ID:mJm/08wF.net
穂奈美「いつか、ハヤテちゃんより、あらいずよりすごいアイドルになる!」

穂奈美「そして、まきちゃん先生やおばあちゃん達よりすごいアイドルになる!!」

穂奈美「なるったらなる!!」

まきちゃん「穂奈美ちゃん…。」

まーたーひーとーつー♪

ゆーめーがーうーまれー♪

187: 2015/09/15(火) 00:01:54.01 ID:mJm/08wF.net


もうすぐ、夕飯が配膳される頃。

私は穂奈美ちゃんを部屋まで送っている。

穂奈美「ねえねえまきちゃん先生!アイドルになるにはどうすれば良いの!?」

まきちゃん「そうね…まずはおケガを治すことかしら。」(クスッ)

穂奈美「じゃあじゃあ!!おケガはどうすれば早く治るの?」

まきちゃん「カルシウムを沢山摂ると良いから、好き嫌いをせずに沢山食べることね。」

穂奈美「穂奈美、好き嫌いなんてしてないよおー!?」

まきちゃん「嘘付いても分かるわよ?毎日牛乳残してるの、ちゃんと知ってるんだから。」

穂奈美「だってえ…。」

穂奈美「…牛乳飲んだら、早く治るの?」

まきちゃん「ええ、もちろん。」

穂奈美「…分かった!!今日の晩御飯から頑張る!!」

まきちゃん「フフッ、頑張って。」

188: 2015/09/15(火) 00:04:34.65 ID:mJm/08wF.net
穂乃果「…あっ!!穂奈美ちゃん!まきちゃん!」

穂奈美ちゃんの部屋の前で、穂乃果が待っていた。

穂乃果「どこ行ってたの!?探したのに~!!」

まきちゃん「…もう、ちゃんと病院のホールに私が連れて行ってるってドアの前に書いてるじゃない。」

穂乃果「そのホールが分からないんだよお~!!まきちゃんの病院おっきいから、迷子になっちゃって~!!」

穂奈美「…はぁ、やっぱりおばあちゃんはおばあちゃんだなあ…。」

まきちゃん「…フフッ、そうね。」

穂乃果「え?なになに?」

191: 2015/09/15(火) 00:22:39.85 ID:mJm/08wF.net
まきちゃん「もう、あまり孫をがっかりさせるんじゃないわよ?」

私が穂乃果をたしなめていると、

?「クスッ相変わらずね、穂乃果は。」

後ろから声がした。

?「はああ♡穂乃果ちゃぁぁん♡まきちゃぁぁん♡久しぶりだねぇ♡」

更にフワッフワした声が続く。

私達が振り返ると


そこには美女達がいた。

203: 2015/09/18(金) 18:47:10.26 ID:bkJXqJpZ.net
絵里「久しぶりね、穂乃果、真姫、…それから…?」

ことり「2人とも、会いたかったあ♡…はっ、もしかしてこの子、穂乃果ちゃんのお孫さん?♡♡」

…あれ、エリーもことりも、私より歳上よね?

2人とも、まるで時が止まったみたいに、若くて綺麗。

その辺の女優より、ずっと綺麗だわ。

しかも、2人ともハイブランドのバッグや服を身に付けているのに、見事に着こなしている。

昨日のにこちゃんの姿を見たからか、余計に2人が輝いて見える。

204: 2015/09/18(金) 18:48:15.43 ID:bkJXqJpZ.net
穂乃果「ことりちゃあん!!!ぅ絵里ちゃあん!!!」

ガバッ

絵里「…もう、いきなり抱きついたら危ないじゃない」(クスッ)

ことり「穂乃果ちゃん…抱きしめ合うのも30年振りだねえ…」(グスン)

穂乃果「うわああああん!!会いたかったよお!!」

ことり「よしよし♡…まきちゃんもおいで?♡」

…できる訳ないでしょう、穂奈美ちゃんの前で。

まきちゃん「もう、ここは病院よ?少しは落ち着いてよ。」

私ったら、人のこと言えないはずなのに。

205: 2015/09/18(金) 18:49:04.81 ID:bkJXqJpZ.net
穂奈美「まきちゃん先生…もしかしてこのおばさん達、さっきの…?」

おばさん…穂奈美ちゃんの目から見ても、やっぱりこの2人って若々しいんだわ。

それに、すぐにさっきパソコンで見た人だって分かるものね。

…私のことは、きっとおばあちゃんって思ってるわよね。

まきちゃん「そうよ、このおばさん達も、μ'sの元メンバーで…」

ことり「きゃぁぁあ♡かわいいぃぃぃ♡」

私が穂奈美ちゃんの質問に答えていたら、ことりに遮られた。

206: 2015/09/18(金) 19:17:06.94 ID:bkJXqJpZ.net
ことり「はあああん♡小さい頃の穂乃果ちゃんにそっくり!はじめまして、ことりおばあちゃんですっ♡」

穂奈美「はじめまして!ことりおばあちゃん!私、高坂穂奈美!!」

絵里「あらっ!きちんとご挨拶ができて偉いわね、穂奈美ちゃん。私は絵里おばあちゃんよ。よろしくね?」

穂奈美「よろしくね!絵里おばあちゃん!!」

絵里「…それにしても驚いたわ。穂乃果ももうおばあちゃんなのね。」

ことり「でも穂乃果ちゃん、やっぱりいくつになってもかわいい!」

絵里「確かに、穂乃果はいくつになっても元気があって若々しいわ。」

穂乃果「そんなことないよぉ。すっかりお腹もダルンダルンだし…大体、ことりちゃんも絵里ちゃんもまきちゃんも、なんでそんなに若々しいのさ!?」

まきちゃん「そうよ。私はもうおばあちゃんだけど、2人は30年前から時が止まったみたいに若々しいんじゃない?」

絵里「フフッ…そんなことないわよ。まあ強いて言うなら、毎日フィットネスクラブに通っているのが効いているのかしら。」

ことり「ことりも糖質制限してるから…。もうマカロンやチーズケーキなんて、何年も食べてないんだよお?」

穂乃果「ほええ…やっぱり努力してるんだ…。」

まきちゃん「穂乃果は仕事柄毎日和菓子を食べるし、まあ仕方ないんじゃない?」

それでも、同年代のおばあちゃんより、ずっと若いわよ。

穂乃果「まきちゃんも美容の為に何かしてるの?」

まきちゃん「私は精々、規則正しい生活をするぐらいよ。まあ、たまにエステに行くこともあるけど…。」

208: 2015/09/18(金) 19:27:13.75 ID:bkJXqJpZ.net
穂乃果「えええっ!?ずるいよおっ!!穂乃果もエステ行きたーい!!!」

絵里「それだったら、うちの会社が経営してるエステが新宿にあるんだけど、時間が合えば一緒に行きましょうか?」

ことり「ことりもダイエットサプリ、穂乃果ちゃんにあげるね♡」

穂乃果「本当に!?やったー!絵里ちゃん、ことりちゃん、大好きー!!」

ガチャ

ナース「すみません、本日の面会はもう…。」

あら、もうこんな時間。

まきちゃん「もう今日の面会時間は終わりよ。場所を変えましょう?」

穂乃果「うん、それじゃあみんな穂むらにおいでよ!!」

ことり「うわあ…穂むらに行くのなんて、もう大学生の時以来かも♡」

絵里「私も久しぶりにほむまんを頂きたいわ。海外にいると和菓子なんて滅多に食べられないし…と言っても、日本に帰っても食べ損なっちゃうんだけどね。」

穂乃果「うんうん!久しぶりにμ'sのみんなも呼んで、穂むらでパーっとやろうよ!!」

まきちゃん「…待って!!」

209: 2015/09/18(金) 19:46:58.40 ID:bkJXqJpZ.net
まきちゃん「…今日は、私の家にしない?」

まきちゃん「…私の家なら、大きなテーブルでみんなで食事ができるし、泊まることになっても、部屋を沢山用意できるし。」

…わがまま、言っちゃった。

穂乃果「…本当!?」

まきちゃん「ヴェッ?」

穂乃果「ねえっ!?それってまきちゃんの家の豪華な食事が食べれて、大きなお風呂にも入れるのー!?」

まきちゃん「そ、そうよ…。料理も食べれるし、浴場もあれからリフォームしたから、高校生の頃より大きくなってるわ。」

穂乃果「やったー!!2人共、まきちゃんの家にしよう!?」

ことり「うん!まきちゃんのお家も久しぶりに行ってみたいと思ってたんだあ♡」

絵里「そうね。真姫も忙しいから、真姫の家に行ける機会もそうそう無さそうだしね。」

穂乃果「うんうん!じゃあ、ほむまんをお土産に持っていくね!?」

絵里「ハラショー!それは楽しみだわ。」

穂乃果「っよし!じゃあみんなに連絡だー!!」

穂奈美「まきちゃん!!よろしくっ!!」

ことり「穂乃果ちゃん、まきちゃんに任せっきりにしちゃダメだよ?」

穂乃果「だってー、みんなの連絡先はまきちゃんしか知らないもん!!」

まきちゃん「良いのよ、任せておいて。」

みんなに連絡して、シェフに料理の追加と…あとお手伝いさんに寝床の準備もお願いしなきゃ。

面倒ね、なんて思いながらもとても楽しみ。

全員は、揃わないけど。

211: 2015/09/18(金) 19:55:09.17 ID:bkJXqJpZ.net
ナース「…あ、あの。」

穂乃果「わあっ!!ごめんなさーい!!」

絵里「それじゃあ、行きましょうか。穂奈美ちゃん、さようなら。」

ことり「穂奈美ちゃん♡また来るねー?」

穂乃果「穂奈美ちゃん、ちゃんと病院の人の言うこと聞くんだよ!?」

穂奈美「…。」

いけない、私達だけで盛り上がって、穂奈美ちゃんのことを放ったらかしにしてた。

まきちゃん「…ごめんね、穂奈美ちゃん。私達だけで盛り上がっちゃって。」

穂奈美「…まきちゃん先生、明日もおうたの練習したい。」

まきちゃん「分かった。今日のお詫びに、明日は今日よりも長く練習しましょう?」

穂奈美「本当に!?」

まきちゃん「ええ、約束よ。その代わり牛乳、ちゃんと飲むのよ?」

穂奈美「うん、分かった!!」

穂奈美「まきちゃん先生、おばあちゃん、またね!!」

まきちゃん「フフッ…またね。」

217: 2015/09/20(日) 13:01:00.90 ID:5Je6Gz+4.net


穂乃果「うわあ…相変わらず大きいねー!!」

まきちゃん「当然よ、入って。」

穂乃果、ことり、絵里「お邪魔しまーす!」

「奥様、お帰りなさいませ。皆様、ようこそおいで下さいました。」

まきちゃん「ただいま。料理と寝床の準備はしてくれた?」

「はい、料理の方はシェフがただいま大至急準備しておりますし、寝床の方も私達で準備していますわ。」

まきちゃん「そう、ありがとう。」

穂乃果「ねえねえ、今日の晩御飯なーにー!?」

「本日は但馬牛フィレ肉のステーキと伺っております。」

穂乃果「た、タジマギュウ…?おいしいの?」

絵里「おいしいに決まってるじゃない!とても高級なお肉なのよ?」

穂乃果「ほええ…まきちゃん、普段からそんな高級なお肉食べてるの?」

まきちゃん「…?但馬牛ってそんなに高級なお肉なの?」

穂乃果「さすが、総合病院の院長…。」

まきちゃん「…あっ、ことりは別のメニューを用意した方が良いかしら?お肉はともかく、付け合わせでライスがあるし…。」

ことり「ううん、大丈夫♡せっかく用意してもらったし、今日は気にせず頂きます♡」

穂乃果「あー!!こんなの絶対食べ過ぎちゃうよお!また太っちゃう…!!」

絵里「炭水化物を摂りすぎなければ大丈夫よ…。」

ことり「ところで、海未ちゃん達は?」

まきちゃん「さっき連絡して、もうすぐみんな来るはずなんだけど…。」

ガチャ

218: 2015/09/20(日) 13:17:20.28 ID:5Je6Gz+4.net
「奥様、お客様がお見えになりました。」

まきちゃん「来たわね。通してちょうだい。」

「かしこまりました。」


スタスタ


海未「お邪魔します…!?ことり、絵里!!」

凛「お邪魔しまーす…あーっ穂乃果ちゃん、ことりちゃん、絵里ちゃん!!」

希「お邪魔します、そして2人共…久しぶりやね。」(グスッ)

ことり「わー!!久しぶり♡海未ちゃん、髪切ったんだね♡とってもかわいい♡」

穂乃果「凛ちゃん!30年振りだねー!話には聞いてたけど、やっぱり若いねー!!」

絵里「フフッ…希も相変わらずね。みんなも。」

みんな、久しぶりの再会にはしゃいでいる。

ガチャ

「皆様、本日のディナーをお持ちしました。」

まきちゃん「ありがとう。それじゃあ、食事にしましょうか。」

220: 2015/09/20(日) 13:47:27.44 ID:5Je6Gz+4.net
穂乃果「うわあ…すごい…。」

凛「…こんなお肉、滅多に食べられないよ。」

まきちゃん「そんな怖い顔で肉を睨まなくても、肉はどこにも逃げないわよ…。」

希「でも穂乃果ちゃんと凛ちゃんの気持ちも分かる。ウチもこんなお肉、もう何年も食べてないんよ。」

海未「御祝いの場や特別な場でなければ、中々目にする機会がない様なお肉ですからね。」

ことり「ことりも普段の食生活は野菜や果物が中心だから、お肉なんて久しぶり♡」

絵里「ほんとにね。ところで、花陽とにこは?」

まきちゃん「…花陽は新潟に住んでるから、さすがに来れないわよ。その代わりに…。」

私はパソコンの電源を入れる。

まきちゃん「花陽、準備はできてる?」

『うん、大丈夫だよ。』

まきちゃん「花陽とはパソコン越しに会えるわよ?」

私はパソコンをみんなが見やすい位置に置いた。

221: 2015/09/20(日) 13:48:18.06 ID:5Je6Gz+4.net
画面の中には、お盆の上に食事を用意した花陽の顔があった。

花陽『わーっ!みんな久しぶりだね!?』

穂乃果「花陽ちゃん、久しぶり!!それから、穂むらがお世話になってます…。」

花陽『ううん、こちらこそ。末永くよろしくお願いします!』

まきちゃん「…もう、こんなところで仕事の話をしないでよ。」

ことり「わー♡花陽ちゃん、久しぶり♡やっぱりかわいいー♡」

花陽『エエッ!ことりちゃんナノォ!?わ、若い…。』

絵里「私もいるわよ、花陽。久しぶりね?」

花陽『はわわ…2人ともどうしてそんなに若いノォ!?』

まきちゃん「…もう、落ち着いてよ。」

海未「花陽、お久しぶりです。」

花陽『海未ちゃん、久しぶり!あっ、髪の毛切ったんだね?とても似合ってるよ!』

希「花陽ちゃん、久しぶり!相変わらずお米大好きなんやなあ。」(クスッ)

パソコン越しに、特盛りのご飯が用意されているのが見える。

花陽『希ちゃん!久しぶり!!えへへ、こればっかりは止められなくて…。』

凛「やっほーかよちん!凛達は昨日会ったばかりだもんねー?昨日はちゃんと帰れた?」

花陽『こんばんは、凛ちゃん。うん、ちゃんと帰れたよ。ありがとう。』

まきちゃん「…それじゃあ、花陽の準備もできたことだし、頂きましょう?」

穂乃果「そうだね、それじゃあ…」

7人「頂きまーす!」

花陽『頂きまーす!』

225: 2015/09/20(日) 20:36:02.52 ID:5Je6Gz+4.net
モグモグ

穂乃果「うわあああ…すごく柔らかい…。」

希「口の中に入れたらとろけてしまうね…。」

海未「フィレ肉は赤身のはずですが、なぜこんなに柔らかいんでしょう。」

絵里「フィレはスジがほとんど無いからね。それに、高級なお肉だもの。」

ことり「おいしい~♡やっぱりお肉は日本産に限るね~♡」

花陽『良いなあみんな…私も但馬牛のステーキ食べたい…。』(グスッ)

凛「かよちんが食べてるお肉も美味しそうだにゃー!」

まきちゃん「あっ!…もう、凛がはしゃぐからソースがパソコンに飛んじゃったでしょ!?」

凛「あーっ!ごめんなさい…。」

ことり「あっ、ことりのハンカチ貸してあげる♡」

まきちゃん「良いわよ、そんな高そうなハンカチ、使ったら勿体ないわ。」

穂乃果「じゃあおしぼり使う?」

まきちゃん「ばか、おしぼりで拭いたら壊れちゃうでしょ。」

「奥様、クロスをお持ちしました。」

まきちゃん「ありがとう。」(フキフキ)

絵里「フフッ…真姫ったら、花陽の顔を拭いてるみたいよ。」

海未「昔から花陽はクレープを食べてはよくクリームを顔に付けて、私達がそれを拭っていましたね。」

花陽『あ、ありがとうまきちゃん…。うん、みんな本当のお姉さんみたいだったなあ。』

希「そういえば、えりちと海未ちゃんもハンバーガーを食べるのが下手で、よく制服汚してたよね。」(クスッ)

226: 2015/09/20(日) 20:53:48.31 ID:5Je6Gz+4.net
絵里「えっ…そうだったかしら?」(カアア)

希「フフッ都合の悪いことは忘れるんやから…」

絵里「もうっ!からかわないでよ?」

アハハ

楽しい。

いつも寂しさでいっぱいだったこの部屋が、

今は楽しさで溢れている。

…でも

穂乃果「…ところで、にこちゃんはどうしてるの?今日は来れないの?」

まきちゃん「それは…。」

凛「…。」

花陽『…。』

私は凛と顔を合わせる。

花陽とも、画面越しに顔を合わせる。

…私達は、言葉が出なかった。

5人「…。」

さっきまでの楽しい雰囲気をかき消す様に、部屋に緊張と沈黙が走る。

絵里「…ねえ、まさかとは思うけど」

227: 2015/09/20(日) 20:54:08.93 ID:5Je6Gz+4.net
絵里「…にこは、亡くなったの…?」





希「…えりち!冗談でもやめて!」

絵里「っ!!…ごめんなさい。」

ことり「生きてるよね…?まきちゃん?」

まきちゃん「…。」

海未「真姫、凛、花陽、どうしたのですか!?にこのことを何か知っているのでしょう!?」

穂乃果「まきちゃん、凛ちゃん、花陽ちゃん。」

まきちゃん「!?」

穂乃果「…話して。にこちゃんのこと。」

凛「…。」

花陽『…。』

2人が私を見る。

まきちゃん「にこちゃんは…」

238: 2015/09/27(日) 23:20:13.65 ID:lDuw9YA8.net
私はみんなに話した。

にこちゃんは、ちゃんと生きていること。

でも、姿は変わり果てていること。

そして、苦しそうな生活を送っていること。

私達には、会ってくれなかったこと。

途中、希が嗚咽を漏らして泣き出した。

ことりと花陽も、希に続いて泣き出した。

239: 2015/09/27(日) 23:21:38.30 ID:lDuw9YA8.net
まきちゃん「…ということよ。」

海未「…とても信じられません、そんなこと。」

海未「真姫!!ふざけた冗談はやめて下さい!!」

まきちゃん「冗談でこんなこと言うわけないでしょ!?!?私だって信じられないわよ…。」

希「…ウチ、ほんまにアホやわ。にこっちのことずっと放ったらかして…」(グスッ)

希「こんなんで…なにが友達なんよ…。」

凛「…まきちゃんが話したことは、全て本当だよ。」

絵里「…にこを、今もそのまま放ったらかしにしているの?」

凛「…うん。」

絵里「うん。じゃない!!どうして無理矢理にでも連れ出して助けないのよ!?私達は友達じゃなかったの!?!?」(ガシッ)

凛「え、絵里ちゃん!?」

ことり「…!?ダメ!!絵里ちゃん、落ち着いて!!!」

凛「…凛だって、凛だってどうにかしたかった!!大切な友達だもん!!でもすぐにドアを閉められて、どうやっても出てきてくれなかったもん!!!」

240: 2015/09/27(日) 23:22:21.30 ID:lDuw9YA8.net
花陽『やめて!!2人とも落ち着いて!!』

絵里「っ!!…ごめんなさい、凛。」

凛「…うわああああ!!にごぢゃぁぁぁん!!」

絵里「ごめんなさい、凛。ごめんなさい…。」

絵里「本当に…ごめんなさい…。」

海未「どうしてですか、にこ…。どうしてですか…。」

3人に続いて、私も、凛も、絵里も、海未も泣いた。

さっきまでの楽しい雰囲気が嘘の様に、

部屋には、にこちゃんを思ったみんなの悲痛な叫びが渦巻いている。

穂乃果「…行こう、にこちゃんの所に。みんなで。」

241: 2015/09/27(日) 23:23:18.44 ID:lDuw9YA8.net
穂乃果が言葉を切り出した。

穂乃果「私達は一つだった。いや、今だって一つだよ。」

穂乃果「みんなの思いをにこちゃんにぶつけたら、にこちゃんは私達のことを、きっとまた頼ってくれるんじゃないかな?」



まきちゃん「…無理よ。」

まきちゃん「そんなの返ってにこちゃんの神経を逆撫でするだけだわ!!にこちゃんを余計傷つけることになるのよ!?」

穂乃果「そんなのやってみなきゃ分からないじゃん!!」

穂乃果「私達が力を合わせれば、絶対ににこちゃんのことを助けてあげられる!そうでしょ!?」

まきちゃん「穂乃果…。」

242: 2015/09/27(日) 23:24:27.88 ID:lDuw9YA8.net
失敗するかもしれない、

でも、やってみなけりゃ分からない。

それに、私達の力を合わせれば、どんなことだって叶えるれる。

…どんな手を使っても、にこちゃんを傷つけてしまうのは避けられないわ。

まきちゃん「…分かった。みんなでにこちゃんのところに行きましょう。」

243: 2015/09/27(日) 23:26:13.23 ID:lDuw9YA8.net
凛「まきちゃん!?またにこちゃんのことを傷つけるだけだよ!」

凛「凛達でにこちゃんに会いに行った時のこと、忘れたの!?!?」

まきちゃん「…にこちゃんを助けるには、どんな手を使っても、どの道にこちゃんを傷つけてしまうと思う。」

まきちゃん「だってにこちゃんは私達と会うことを拒絶してるんだから。」

まきちゃん「でも、会わなきゃ何も始まらない。にこちゃんを助けられないわ。」

まきちゃん「それに、μ'sが全員揃ったら、なんだってできるわ。私達は9人で、沢山の奇跡を起こしてきたじゃない。」

まきちゃん「そうでしょ?みんな。」

穂乃果「まきちゃん…。」

まきちゃん「さあみんな、空いてる日を教えて。8人で会いに行くわよ!」




みんなで都合を合わせた結果、週明けににこちゃんに会いに行くことになった。

予定は決まったけれど、みんなにこちゃんのことでショックを受け、早々に帰ってしまった。

246: 2015/09/28(月) 00:01:45.11 ID:A8BA2vPP.net


まきちゃん「穂奈美ちゃん、こんにちは…あら?」

穂奈美ちゃんを迎えに部屋を訪ねると

穂奈美「…」スヤスヤ

穂奈美ちゃんはなんとも気持ち良さそうにお昼寝をしていた。

まきちゃん「…」

私はベッドに近付いて、その可愛い寝顔を見る。

…かわいい。

まさに、天使の寝顔ね。

なんて思っていたら…

穂奈美「ふわぁぁ…まきちゃんせんせえ…?」

おぼろげな表情の穂奈美ちゃんと目が合う。

まきちゃん「おはよう、寝坊助さん。」

穂奈美「…おはよぅ…おやすみなさい…」

…そしてまた眠ってしまった。

247: 2015/09/28(月) 00:02:43.32 ID:A8BA2vPP.net
まきちゃん「お歌の練習、しなくて良いの?穂奈美ちゃんがやりたいって言ったんでしょ?」

穂奈美「…おうたのれんしゅう…?」

穂奈美「…はっ!!そうだったー!!眠ってなんかいられない!!」

穂奈美「まきちゃん先生!!今日もよろしくお願いします!!」

まきちゃん「フフッ…それじゃあ行きましょうか?」


248: 2015/09/28(月) 00:03:51.86 ID:A8BA2vPP.net
穂奈美「エヘヘ、まきちゃん先生!昨日は牛乳全部飲んだよ!?」

穂奈美「大好きなパンよりも、一番最初に牛乳飲んだんだ!」

穂奈美「もちろん、今日の朝ごはんの牛乳も、お昼ごはんの牛乳も、一番最初に飲んだよ?」

穂奈美ちゃんが得意げに言う。

まきちゃん「昨日だけじゃなく、今日の朝と昼も頑張ったのね。偉いわ。」

私は車椅子を押す手を止め、穂奈美ちゃんの頭を撫でる。

穂奈美「エヘヘ…。」

穂奈美ちゃんは照れた様に笑った

249: 2015/09/28(月) 00:04:48.50 ID:A8BA2vPP.net
穂奈美「これで骨治ったかなあ?」

まきちゃん「フフッ…そんなすぐには治らないわよ。」

穂奈美「えーっ!?3本も飲んでるのに…。」

まきちゃん「こういうことは毎日の積み重ねが大事よ。これからも毎日頑張って。」

穂奈美「えー…毎日はちょっと…。」

まきちゃん「アイドルになったら、牛乳を飲むよりももっと大変なことが沢山あるんだから。」

まきちゃん「牛乳ぐらいで弱音を吐いてたら、アイドルになんてなれないわよ?」(クスッ)

私は少し意地悪なことを言う。

穂奈美「…飲むもん!!牛乳でも何でも飲むもん!!」

単純なんだから

でも、こういうところがかわいい。

まきちゃん「それじゃあ、牛乳を飲めたご褒美に、お歌の練習を始めるわよ?」


250: 2015/09/28(月) 00:06:27.07 ID:A8BA2vPP.net
穂奈美「待ってた~♪」

まきちゃん「…少しズレてるわね。この音よ。分かる?」~♪

穂奈美「えー!?ちゃんと出してるよ~。」

まきちゃん「ほんの少しだけ上よ。ほんの少しだけ。」~♪

穂奈美「待ってた~♪」

まきちゃん「…今度は上すぎね。今の音とさっきの音のちょうど真ん中よ。」~♪

穂奈美「待ってた~♪」

まきちゃん「さっきと高さ変わってないわよー?もう少し下!」~♪

穂奈美「待ってた~♪」

まきちゃん「…うーん、ダメね。」

穂奈美「なんでー!?」

まきちゃん「ちゃんとピアノの音を聞いて?」~♪

穂奈美「待ってた~♪」

まきちゃん「そう!その音よ!」

穂奈美「やったー!!穂奈美って天才!?」(ニヤリ)

まきちゃん「調子に乗らないの。はい、もう一度!」~♪

穂奈美「待ってた~♪」

まきちゃん「…またズレ始めたわ。」

251: 2015/09/28(月) 00:08:02.59 ID:A8BA2vPP.net
穂奈美「そんなあー!?」

…声質は良いんだけど、

音感を鍛えないといけないわね。

いきなりμ'sの曲を練習に使ったのはミスだったかしら。

まきちゃん「ちょっと童謡とか、穂奈美ちゃんが聴き慣れてる曲から練習しましょうか。」

穂奈美「なんでー!?さっき合ってる音出たじゃん!?」

まきちゃん「まずは基礎からやらなきゃ、何事も上達しないでしょ?」

穂奈美「やだやだやだ!!まきちゃん先生のおうた歌うもん!!」

穂奈美ちゃんは駄々をこね出した。

まきちゃん「じゃあ穂奈美ちゃんが森のくまさんを先生が認めるくらい、上手に歌えたら、先生が作ったお歌をやりましょう?」

穂奈美「ほんとっ!?!?」


まきちゃん「ええ、約束するわ。それじゃあ、早速弾くわよ?」~♪

穂奈美「ある~日~♪」

……こっちもズレてる。

252: 2015/09/28(月) 00:08:55.08 ID:A8BA2vPP.net


それから数日、穂奈美ちゃんは基礎から歌の練習を重ねた。

まきちゃん「音を合わせるだけじゃダメよ?リズムに乗って?」~♪

穂奈美「~♪」

最初はどうなることかと思ったけど、ほんの数日の短い期間で穂奈美ちゃんは期待以上の上達を見せ、

まきちゃん「それじゃあ、今日はテストをするわよ?」

~♪

まきちゃん「はいっ!」~♪

穂奈美「~♪」

まきちゃん「すごいわ!合格よ!」

穂奈美「ほんと!?やったーっ!!」

まだまだだけど、それなりのレベルには到達した。

254: 2015/09/28(月) 00:33:05.62 ID:A8BA2vPP.net
まきちゃん「それじゃあ約束通り、明日からは先生が作ったお歌をやりましょう?」

穂奈美「うんっ!!楽しみだな~!」

まきちゃん「それじゃあ明日は…」

明日は、みんなでにこちゃんに会いに行く日。

まきちゃん「…明日は、朝御飯を食べてから、昼御飯までの間に練習しましょうか。」

午後は、色々準備がありそうね。

穂奈美「うん!分かった!」

まきちゃん「それにしても穂奈美ちゃん、練習よく頑張ったわね。」

穂奈美「だって、穂奈美アイドルになるんだもん!これぐらいとーぜんだもん!」

穂奈美ちゃんはここでも得意げな顔をする。

私はそれがかわいくて、つい

まきちゃん「そうね、アイドルはみんな熱心に練習してるもの。それじゃあ明日からは先生も鬼になってビシバシ穂奈美ちゃんを鍛えようかしら。」

穂奈美「えー?やだやだ!!優しくしてよ~!?」

まきちゃん「アイドルになるんだから、これぐらいとーぜんでしょ?」

穂奈美「そんなあ~!!」

ついついからかってしまった。

だってかわいいんだもの。

っと、そうこうしてたら穂奈美ちゃんの部屋に着いた。

まきちゃん「フフッ冗談よ。それじゃあ、今日もお疲れ様。明日からも頑張りましょう?」

穂奈美「うんっ!!まきちゃん先生ありがとう!!さようなら!」

まきちゃん「さようなら。」

255: 2015/09/28(月) 00:33:27.77 ID:A8BA2vPP.net
「あっ!西木野先生っ!」

部屋を出ようとしたら、美穂ちゃんがいた。

美穂「いつも穂奈美と母がお世話になってます。2人共、最近特に御迷惑をお掛けしている様で…。」

まきちゃん「良いのよ。それに、2人が迷惑を掛けてるんじゃなくて、私が付き合わせてしまってる様なものだから…。」

美穂「ですが…。」

まきちゃん「気にしなくても良いのよ。というか、なんだかその他人行儀な話し方、慣れないわね。」

まきちゃん「敬語なんて使わなくて良いのよ?美穂ちゃん。」

美穂「いえいえ、そういう訳にはいきません!お世話になっている身ですし…。」

ハァ…。

穂奈美ちゃんも、いつか私にこんな畏まった口の利き方をする様になるのかしら。

まきちゃん「別にそんなこと…それじゃあ、私はそろそろ行くわ。またね。」

美穂「はい!さようなら。」

…今日はなんだかお腹が空いちゃったわ。

早く帰ろう。

257: 2015/09/28(月) 01:03:13.64 ID:A8BA2vPP.net


穂乃果「それじゃあ、行くよー?せーのっ!!」

9人「ラブライブ!お疲れ様ーっ!!」

パーン!パーン!

穂乃果「みんな、本当にお疲れ様!!そして優勝できて、本当に良かったよねー!?」

ことり「うん♡みんなで頑張った成果が出たね♡」

海未「でも、本当に夢の様です…。今、私達がスクールアイドルの頂点に立っているのですね…。」

花陽「私も信じられない…。とんでもないことになっちゃったね…。」

凛「すごいことだよね!?でも、凛達は本当に優勝に向けて頑張って練習したもん!勝利は頑張った者へのご褒美だにゃー!!」

にこ「コラッ!調子に乗っちゃダメよ。頑張ったのは他のグループだって同じなんだから。」

絵里「そうね。でも、優勝の喜びはきちんと味わっておくべきだわ。」

希「そうそう。今日は思いっきり楽しもう?ウチらももう来週には卒業なんやから。」

穂乃果「おーい!まきちゃん!こっちおいでよー!?」

まきちゃん「…。」

にこ「はぁ…まったく、辛気臭い顔するんじゃないわよ。」

まきちゃん「べ、別にそんな顔してないわよ!!」

絵里「真姫、卒業したからってもう会えなくなる訳じゃないんだから。」

希「そっかあ…まきちゃんはウチらが卒業したら、もう会ってくれんのやね。」

まきちゃん「そんなこと…そんなこと一言も言ってないでしょ!?」

希「アハハ!冗談やん!まきちゃん本気にしちゃって…はっ!」

まきちゃん「…」(グスン)

絵里「もう希、からかいすぎよ。真姫、いらっしゃい。」

絵里「卒業しても私と希は都内の大学に進学するし、にこだって東京を拠点に活動する予定なんだから、いつでも会えるわよ?」

にこ「そうよ。まったく大袈裟なのよあんたは。」

まきちゃん「だって…。」

凛「まきちゃんかわいいにゃー!!」(ダキッ)

穂乃果「私も私もー!」(ダキッ)

まきちゃん「ち、ちょっと!苦しいってばー!!」


259: 2015/09/28(月) 10:26:52.63 ID:A8BA2vPP.net
………
……

「おくさまー?早く起きて下さい!遅刻してしまいますわよー!?」

まきちゃん「…ん?」

さっきまでみんなとラブライブの打ち上げパーティをしていたはずなのに、

目の前には、現実を突き付ける様な灰色の壁。

あっちが現実なら良かったのに。

まきちゃん「もう、そんな大声出さなくても起きてるわよ!」

…起こさないでいてほしかったなあ。

でも、現実を相手に戦わなきゃ。

私は枕元に置いた携帯の画面を見ながら、部屋を出る。

今日はみんなでにこちゃんに会いに行くんだもの。

みんなからそのことでの連絡が沢山来ていた。

行儀が悪いけれど、食事をしながら返事をしようかしら。

ガチャ

「奥様、おはようございます。朝食はもうできていますよ。」

まきちゃん「ありがとう、こっちへお願い。」

「かしこまりました。」

花陽は昨日から仕事のこともあって穂乃果の家に泊まってるのね。

そしてエリーとことりは、エリーの会社が経営するホテルにあれからずっと泊まっていると…

あのホテル、エリーの会社が経営してたんだ。

すっかり携帯の画面に夢中になっていると、

「…奥様、急いでお食べになりませんと、そろそろ…。」

まきちゃん「…!?」

時計は既に7時30分を回っていた。

いけない、今日は朝から穂奈美ちゃんとお歌の練習をしなくちゃいけないのに。

まきちゃん「い、頂きます!!」


260: 2015/09/28(月) 10:36:01.37 ID:A8BA2vPP.net


いつもよりバタバタしながら、私は穂奈美ちゃんの部屋に着いた。

まきちゃん「お、おはよう…穂奈美ちゃん…。」

穂奈美「おっはよー!まきちゃん先生…!?」

穂奈美「アハハッ!まきちゃん先生ねぐせ付いてるよー!?」

まきちゃん「えっ!?」

私は部屋の窓越しに自分の髪を見る。

鮮明には見えないけど、自分の髪がいつもよりだらしないのははっきりと分かる。

まきちゃん「ごめんなさい、今日は急いでたから。」

穂奈美「朝からお仕事だったの?」

まきちゃん「…ええ、まあそんなところよ。」

穂奈美「そうなんだ!まきちゃん先生、お疲れ様ー!」

…心が痛む。

まきちゃん「それじゃあ、今日も行きましょう?」

穂奈美「うん!」

purupurupuru

いけない、携帯をマナーモードにしておくのを忘れていた!

まきちゃん「ごめんね、ちょっと…?」

知らない番号。

誰よ、これからお歌の練習だって言うのに。

まきちゃん「…もしもし?」

私は不機嫌に着信に応える。

「真姫…お願い、助けて」

まきちゃん「…!?」

声の主は、思ってもみない相手だった。

263: 2015/09/28(月) 12:55:52.29 ID:A8BA2vPP.net
まきちゃん「にこちゃん!?にこちゃんなんでしょ!?」

まきちゃん「助けてって…一体何があったの!?」

にこ『…さっき、こころを外に出そうと階段を一緒に降りていたら、こころを転ばせてしまったの。』

にこ『今、すごい悲鳴をあげてて、体がどうにも動かないらしくて、』

にこ『体を動かそうとすると、激痛がするって…。』

にこ『……救急車を呼んでも、こころはまだ治療費がかかる年齢だし、救急車を呼ぶこともできなくて。』

にこ『………虫が良すぎることは分かってる。でもごめんなさい、あなたに頼るしか、どうすることもできない。』

にこ『…………お願い助けて、こころのこと。』

にこちゃんは泣きながら状況を話している。

264: 2015/09/28(月) 12:56:31.32 ID:A8BA2vPP.net
まきちゃん「そんなことどうでも良いから!!すぐに救急車で西木野総合病院まで運んで!!」

pi

今日は大仕事になりそう。

穂奈美「…どうしたの?まきちゃん先生?」

まきちゃん「穂奈美ちゃん、本当にごめんなさい。突然仕事が入っちゃったの。」

まきちゃん「今日の練習は、仕事が終わるまで待ってくれるかしら?」

まきちゃん「もしかしたら今日中に終わらないかもしれないけど、そしたらまた別の日にお詫びをするから。」

穂奈美「…うん、分かった!お仕事頑張ってね!」

265: 2015/09/28(月) 12:57:13.40 ID:A8BA2vPP.net


ガララッ

まきちゃん「みんな、急患が入る予定よ!すぐに手術の準備を!」

ナース「はいっ!」

ピーポーピーポー

「患者さんが到着しました!」

まきちゃん「レントゲン室に通して!」

「はい!」

担架に担がれたこころちゃんと共に、にこちゃんも救急車から降りてきた。

にこ「あの、真姫…ごめんなさい。」

まきちゃん「そんな話をしている余裕は無いわ、状況を詳しく説明して。」

にこ「ええ…。」

266: 2015/09/28(月) 12:57:55.55 ID:A8BA2vPP.net
にこちゃんの話を聞くと、

いつもこころちゃんはマンションの周りを散歩しているらしい。

そしていつもはエレベーターで降りるが、今日は故障中で、階段で降りることになった。

そして、こころちゃんが階段を降りるのをにこちゃんは手伝っていた。

そして、最後の一段というところで、こころちゃんは転んでしまい、ケガをしたという。

まきちゃん「…最後の一段から、転んだだけで?」

にこちゃん「…そうよ。」

まきちゃん「…嫌な予感がするわね。」

「院長、レントゲンの結果が出ました。」

まきちゃん「ありがとう…!?」

にこ「…こころは、大丈夫なの!?」

まきちゃん「…取り急ぎ、この場で説明するわ。」

267: 2015/09/28(月) 12:58:34.24 ID:A8BA2vPP.net
まきちゃん「こころちゃんはかなり骨粗鬆症が進んでいて、骨がスカスカよ。脚の形が歪んでるのも、きっとそのせいね。そして骨粗鬆症だから、少し転んだだけであちこちを複雑骨折してる。」

まきちゃん「すぐに手術が必要よ。手術が終わってからは、長期の入院も。」

にこ「そんな…。」

にこ「手術のお金に入院のお金なんて…無い。」

まきちゃん「無くても手術と入院はしてもらうわ。良いわね?」

にこ「…分かったわ。」

ナース「院長先生、手術の準備ができました!」

まきちゃん「ありがとう!それじゃあ、行ってくるわね。」

にこ「…ありがとう。」

268: 2015/09/28(月) 12:59:22.23 ID:A8BA2vPP.net
ガララッ

まきちゃん「こころちゃん、意識はある?」

こころ「真姫さん…ごめんなさい、御迷惑をお掛けして。」

まきちゃん「私はこれが仕事だもの。」

まきちゃん「これから手術をするけど、あなたは今あらゆる所を複雑骨折していて、手術が終わるまでそれなりの時間がかかるわ。」

まきちゃん「体力も消耗するけれど、手術するしか手が無いの。分かってね?」

こころ「…はい、お願い致します。」

こころちゃんは全身麻酔が効いて、眠りに落ちた。

さて、頑張らないと。

私は患部をメスで開く。

…細かに骨が砕けているわね。

今回はかなり神経を使いそうだわ。

私は神経を研ぎ澄ませ、丁寧に骨を結合させていった。






どれだけの時間が経ったのかしら。

ひとまず、手術は成功ね。

ガララッ

にこ「…!?真姫っ!こころは…?」

269: 2015/09/28(月) 13:00:08.00 ID:A8BA2vPP.net
まきちゃん「手術は無事に成功よ。これからの治療計画はこころちゃんが起きてから一緒にするわ。」

にこ「…治療費は、払えないわよ?」

まきちゃん「…別に、にこちゃんから治療費なんて取る気無いもの。」

にこ「…そうやって私のことを哀れんでるの?」

まきちゃん「相手がにこちゃんだろうが穂乃果だろうが、友達から治療費を巻き上げようなんて真似はしないわ。」

まきちゃん「そんなことより、お礼の一つでも言ったらどうなのよ?」

にこ「………ありがとう。」

まきちゃん「…こころちゃん、かなり骨粗鬆症が進んでいたわ。この間こころちゃんに会った時も脚の形がおかしいと思ってたけど、どうしてこんなになるまで放っておいたのよ!?」

にこ「…病院に連れて行く、お金が無かったのよ。」

270: 2015/09/28(月) 13:02:11.03 ID:A8BA2vPP.net
まきちゃん「どうしてよ?30年前に会った時は似合わないブランド品沢山身に付けてたじゃない。」

まきちゃん「…お金が無いならないで、なんで私達を頼らないのよ。」

にこ「…頼れる訳ないでしょ!?あれだけみんなに応援してもらっておきながら、夢は半ばで折れて…」

にこ「そして幸せそうに悠々自適に暮らしてるあんた達に、一人だけ惨めな私がどの面下げて会えっていうのよ!?頼れって言うのよ!?」

まきちゃん「っ!?…バカッ!!」

まきちゃん「にこちゃんのアイドルの夢が折れたからって、なんで私達の関係まで変わらなきゃいけないのよ!?」

まきちゃん「それにみんな幸せそうに悠々自適に暮らしてるですって!?」

まきちゃん「私達だってみんなそれぞれ、大変なことや辛いことなんて沢山あったわ!!」

まきちゃん「にこちゃんだけが辛い訳ないでしょ!?」

まきちゃん「それにアイドルの夢が折れたからって何よ!?何があったか知らないけど、にこちゃんのアイドルへの情熱ってそんなちっぽけな物だったの!?」

まきちゃん「そんなの外部の影響のせいにして、結局自分で勝手に諦めてるんじゃないの!?」

にこ「あ、あんたに…」

271: 2015/09/28(月) 13:03:19.19 ID:A8BA2vPP.net
にこ「あんたに何が分かるっていうの!?!?自分で諦めるとか諦めないとか関係なく、目の前の道が閉ざされることだってあるの!!」

にこ「あんたみたいに最初から親が敷いたレールに沿って生きて、親が残した病院で何の不満も無く暮らしてる人間とは訳が違うの!!」

まきちゃん「…なんですって!?」

穂奈美「やめてーっ!!」

!?

穂奈美ちゃん…

ナース「…。」

…穂奈美ちゃん、今日はレントゲンの日だったのね。

だからこんな所にいるのか。

穂奈美「まきちゃん先生、ケンカしちゃダメだよ…。」

すっかり熱くなってしまっていたわ。

まきちゃん「…そうね。ありがとう、穂奈美ちゃん。」

まきちゃん「…ごめんなさい、にこちゃん。言い過ぎたわ。」

272: 2015/09/28(月) 13:04:34.61 ID:A8BA2vPP.net
にこ「…。」

穂奈美「…このおばあちゃん、誰?」

まきちゃん「…このおばあちゃんはね」

まきちゃん「先生や、あなたのおばあちゃんの友達よ。」

にこ「!?…友達なんかじゃ…!」

穂奈美「そうだ!まきちゃん先生、おうたの練習いつやるの?あっ…でも、まきちゃん先生お仕事で疲れてるよね…。」

まきちゃん「いいえ、それじゃあ、今から練習に行きましょうか?」

穂奈美「ほんと!?わーい!!」

まきちゃん「…にこちゃんも付いて来なさい。」

にこ「…ふざけないで!!行く訳ないでしょ!?」

まきちゃん「治療費全部私が持つんだから、それぐらいのお願い聞いてくれても良いんじゃない?」

にこ「ぐっ…」

…我ながら、最低ね。

273: 2015/09/28(月) 13:05:28.31 ID:A8BA2vPP.net


まきちゃん「さあ、着いたわよ。」

穂奈美「わーいっ!早く早くぅ!」

にこ「何よ、ここは?」

まきちゃん「…なんだって良いでしょう。」

ゴゴゴッ

カチッ

まきちゃん「穂奈美ちゃん、今日はお客さんがいるから頑張らないとね?」

穂奈美「うん、わああ…緊張するなあ。」

まきちゃん「にこちゃん、そこに座ってなさい。」

にこ「…ふんっ!」ガタッ

まきちゃん「…それじゃあ、あの歌を通しで練習してみましょう?」

穂奈美「うんっ!」

274: 2015/09/28(月) 13:06:01.09 ID:A8BA2vPP.net
~♪

にこ「…!?」

穂奈美「真っ直ぐな~おも~いが~♪」

穂奈美「みんなを結ぶ~♪」

にこ「…。」

穂奈美「本気~でも~♪不器用~♪」

穂奈美「ぶつかり合う心~♪」

にこ「…いやっ!」ガタッ

まきちゃん「聴いて!にこちゃん!」~♪

にこ「!?」

275: 2015/09/28(月) 13:06:53.09 ID:A8BA2vPP.net
穂奈美「それ~でも~♪見た~いよ~♪おお~きな夢は~♪」

穂奈美「ここ~にあ~るよ~♪はじま~ったば~かり~♪」

分かってる

楽しいだけじゃない

試されるだろう
ーーーーーー
「矢澤、やっと次の仕事が取れたぞ。」

にこ「…!?本当ですか!?」

にこ「…これって」

「お前のデビューのプロモーションにいくらかかったと思ってるんだ!?もうお前もおばさんなんだから、回収して貰わないと。」

にこ「そんな…。」

にこ「嫌です!こんな仕事!!」

ーーーーーー
分かってる

だって

その苦しさも
ーーーーーー
にこ「ギャラは安くても良いから、出演させて下さい!」

「でもねえ~、もうあんたに需要がないんだよねえ。」

「あんたが今からお金稼ぐなら、ビデオに出るしかないんじゃないの?」

にこ「そんな…。」

276: 2015/09/28(月) 13:07:25.89 ID:A8BA2vPP.net
ーーーーーー
ミライ

行くんだよ

にこ「…いやっ!!やめてっ!!」

集まったら強い自分になってくよ

きっとね

変わり続けて

We'll be star!
ーーーーーー
にこ「矢澤にこ、18歳。音ノ木坂学院を卒業し、3月までμ'sのメンバーとして活動し、ラブライブで優勝しました!」

にこ「夢は、世界一のアイドルになって、沢山の人を笑顔にさせることですっ!」

にこ「決めポーズはこれですっ!にっこにっこにー!」

ーーーーーー

277: 2015/09/28(月) 13:08:00.14 ID:A8BA2vPP.net
それぞれが好きなことで頑張れるなら

新しい場所がゴールだね

にこ「それぞれの好きなことを信じていれば…」

ーーーーーー
「ニコニーは、なぜアイドルに?」

にこ「はいっ!」

にこ「にこがアイドルになったのは…


アイドルが大好きだからっ!



ーーーーーー
ときめきを抱いて

進めるだろう

278: 2015/09/28(月) 13:08:47.05 ID:A8BA2vPP.net
穂奈美「こわがるく~せ~は~捨~て~ちゃえ~♪」

穂奈美「とびきり~の笑顔で~♪」

穂奈美「跳んで跳んで~た~かく~♪」


僕らは


にこ「私は…」


今のなかで


輝きを待ってた



穂奈美「…ふぅ、緊張した~!」

279: 2015/09/28(月) 13:09:49.26 ID:A8BA2vPP.net
まきちゃん「他の人の前で歌うのは初めてだものね。」

まきちゃん「上手だったわよ?練習の成果が出たわね。」

穂奈美「エヘヘ…」

まきちゃん「どう?にこちゃん、この子穂乃果の孫なんだけど、中々良い声でしょう?」

にこ「……」

にこ「全然…ダメよ…。」(グスッ)

にこ「…アイドルを舐めるんじゃないわよ。音程も全然合っでないじ…。」(ヒッグ)

にこ「あんだのおばあぢゃんだっで…もうぢょっどマシだっだわよう…」(ズビッ)

穂奈美「えーっ!?そんなあ!……?」

穂奈美「……おばあちゃん、泣いてるの?どこか痛いの?」

にこ「あんだ…」(フキフキ)

280: 2015/09/28(月) 13:10:30.70 ID:A8BA2vPP.net
にこ「あんたねえ、そんなんでアイドルになれる訳ないでしょ!?」

穂奈美「ヒイッ…」

にこ「日本のジュニアアイドルのレベルを舐めるんじゃないの!!あんたの今のレベルならローカルアイドルすらままならないわ!!」

穂奈美「えーっ!?じゃあどうすれば良いのぉ!?」

にこ「…あんた、本気でアイドルになる気はあるの?」




穂奈美「なるっ!!なるったらなる!!」




にこ「…分かったわ。これからビシバシ鍛えてあげるから、覚悟しなさい!!」

まきちゃん「…にこちゃん!」

ゴゴゴッ

281: 2015/09/28(月) 13:11:19.23 ID:A8BA2vPP.net
穂乃果「もうっ!まきちゃん!!ちゃんとメール返事してよー!?」

海未「まったく、探したんですよ!?」

ことり「あ♡看護師さんの言う通り、ここだったね♡」

凛「…!?にこちゃん!?!?」

花陽「にこちゃん!?にこちゃああん!!」

絵里「にこ!?にこなの!?」

希「にこっち…間違いないにこっち…。会いたかった…。」




にこ「みん…な…」

にこ「みんなあああああ!!!!」

私も、みんなも、涙を抑えられなかった。

282: 2015/09/28(月) 13:12:19.56 ID:A8BA2vPP.net
穂乃果「にこちゃん、にこちゃん…にごちゃぁん!!」

希「ごめんなあ…ごめんなあにこっち。ウチを許して…。」

絵里「もう、本当に心配かけて…。どれだけ会いたかったと思うのよ。」

にこ「…ごめん…ごめんなさい。みんなに会うのがずっとずっと辛くて…。」

海未「友達と会うのに…何を辛く思う必要があるのですか…。」

花陽「そうだよ…にこちゃん、なんで今まで頼ってくれなかったの…。私もみんなも、本当に、本当に心配して…。」

凛「うわああああん!!!にこちゃぁぁん!!もう離さないにゃああ!!!」

ことり「ことりも…もう離してあげないっ…!!」

真っ直ぐな思いが

みんなの会いたいって気持ちが

みんなを結んだ。

良かった。

ずっと、ずっと、

ずーっと、

みんなに会いたかった。

穂奈美「エヘヘ…まきちゃん先生、良かったね?」

まきちゃん「…うん。」

穂奈美「…まきちゃん先生、泣いてるの?」

まきちゃん「…うん、嬉しくってね。」

穂奈美「…まきちゃん先生も、いってらっしゃい!!」

まきちゃん「…うん。」

今、素直にならなくて、

いつなるのよ。

284: 2015/09/28(月) 13:16:41.66 ID:/cJDhLLu.net
まきちゃん「…みんなああ!!」(ガバッ)

にこ「ふごっ…ち、ちょっと!!痛いわよ!!」

凛「あーっ!まきちゃんデレデレだにゃー!?」

穂乃果「私も私もー!」(ギュー!!)

にこ「もう痛いったら!!あんた、孫の前でなんて見っともないことしてるのよ!!」

絵里「気にしない気にしない!」(もぎゅー!!)

にこ「く、苦しい…」

希「…ん!?はっ!!にこっち!しっかり…!!」

にこ「そ、その前に…ちょっと離しなさいよお…!」

凛「離さないにゃー!!」

にこ「…あんた、いい加減にしなさいよお…!」


まきちゃん「…みんな、泣いたり笑ったりうるさいわね。」

まきちゃん「ここは、ホールと言えど病院よ?」

私ったら、人のこと言えないはずなのに。

309: 2015/10/08(木) 10:51:56.37 ID:2vosCE8Q.net
………

「奥様、お帰りなさいませ。」

まきちゃん「ただいま。準備、できてる?」

「はい、もうすぐでございます。」

にこ「ちょっとあんた!ちゃんとフカヒレはあるんでしょうね!?」

まきちゃん「もう、しつこいわね。ちゃんと沢山あるわよ…。」

凛「にこちゃん、フカヒレそんなに好きだったかにゃ?」

希「まあ、フカヒレさんはコラーゲンたっぷりで美容に良いからね。」

花陽「はああ…今日はごはん食べる暇もあまりなかったから、お腹空いたなあ。」

穂乃果「私も私も!!今日は沢山食べよっと!!」

海未「いけませんっ!この歳になるとただでさえ代謝が落ちて、一度脂肪が付くと中々落ちないのですよ!?」

ことり「まあまあ海未ちゃん…。せっかくみんなが揃った記念なんだし…。」

絵里「そうよ。楽しまないと…ね?」

「奥様、夕食の準備が終わりました。」

まきちゃん「ありがとう。それじゃあ、行くわよ?」

ガチャ

312: 2015/10/08(木) 11:46:26.27 ID:RJpzVCrW.net
8人「わああ…!!」

まきちゃん「…ちょっと、いくらなんでも張り切りすぎじゃない?」

…私達おばあちゃんなのに、食べきれるかしら。

「奥様、申し訳ございません…。今までで一番豪勢な食卓で、フカヒレ大盛りと聞いておりましたので…。」

部屋に入ると、そこにはいつも以上に沢山のテーブルと、色とりどりの料理が用意されていて、食欲を駆り立てる香ばしい匂いがした。

にこ「…もう、もう我慢できないわ!!」

花陽「…わ、私も!!」

穂乃果「いただきまーす!!!!」

海未「…あっこらっ!あなた達!!」

希「ああ!急いで取らないと、全部取られてしまうやん!!」

凛「よーし、負けないよー!?」

海未「ち、ちょっと!?」

絵里「海未、ぼさっとしてるとあなたの分も食べちゃうわよ?」

ことり「あ~♡燕の巣がある!美味しそう~♡」

海未「なっ!!…私だって、負けません!!」

みんな、本当に童心に帰って目の前の豪華な食事を取り合ってる。

………もう、

さっき泣いたばかりなのに。

私はまた、自分の目頭が熱くなるのを感じた。

だって、ずっとずっと見たかったもの。

みんなで、この9人で心の底から笑い合えるこの光景を。

まきちゃん「…あっ!そのトマトはダメー!!私のなのー!!」

私は少し目に浮かんだ涙を拭って、みんながはしゃいでいるテーブルに向かった。

316: 2015/10/08(木) 13:09:23.74 ID:RJpzVCrW.net
………

穂乃果「あー!お風呂気持ちよかったねー!」

花陽「気持ちよかったけど…ごはんを食べ過ぎてお腹が…クルシイよお…」

凛「かよちん、沢山食べてたもんねー。」

希「ウチも…もうしばらく食事しなくても良いかも。」

海未「…だ、だから言ったでしょう?わ、私は何度も…止めましたから…ね?」

絵里「とか言いながら、海未も残すともったいないからって沢山食べてたじゃない。」(クスッ)

ことり「海未ちゃん、気分悪くない?大丈夫…?」

まきちゃん「…あら、にこちゃんは?」

ガチャ

?「もう!ドアのところで固まらないでよ!!動けないでしょっ!?」

8人「…!!」

317: 2015/10/08(木) 13:13:24.86 ID:RJpzVCrW.net
まきちゃん「…な、何よそれ!?」

にこ「…美容法だけど?」

絵里「…ひ、久しぶりに見たわ。ハラショー。」

まきちゃん「…大体、きゅうりなんてどこから持ってきたのよ。」

ことり「あっ♡そうだ!ことり、にこちゃんにプレゼントがあるんだあ♡」

にこ「何よ?」

ことりは自分のキャリーケースを漁っている。

ことり「あった♡…えへへ、にこちゃん♡目を閉じて下さい♡」

にこ「?」

8人「!?」

ことりが取り出したもの、それは…

319: 2015/10/08(木) 14:09:09.86 ID:yI1lylU5.net
ことり「はい、もう良いよ♡」

ことりは手鏡をにこちゃんに差し出し、自分の顔を見るよう促した。

にこ「…!?」

ことりのにこちゃんへのプレゼントは、

長い黒髪をツインテールで結ったウィッグだった。

ことり「…まきちゃんからこの間話を聞いてね?ことりにはこんなことしか出来ないけど、少しでも、にこちゃんが喜んでくれるかなって…。」

にこ「…。」

にこ「……ど、どうかしら?…似合う?」

にこちゃんのトレードマークのツインテール。

その姿は衰えたとはいえ、私たちが知ってるにこちゃんだ。

花陽「かわいい!!かわいいよにこちゃん!!」

凛「それでこそにこちゃんだにゃー!!」

にこ「み、みんな…ことり…。」

ことり「うん♡」

絵里「やっぱり、にこはこうでないとね?」

希「似合うやん!!一気に若返ったね?」

海未「ええ、とてもかわいいですよ。にこ?」

にこ「ほ、本当に…?」

320: 2015/10/08(木) 14:10:12.63 ID:yI1lylU5.net
まきちゃん「…まあ、悪くないんじゃない?」

穂乃果「にこちゃああああん!!!!」ガバッ

にこ「ちょ、ちょっと!!重たいってば!!」

穂乃果「だってえ、かわいいんだもん!!」

にこ「は、はあ…!?と、ととと当然でしょ!?」

にこちゃんはなんだかんだ言っても、喜びを抑えきれないみたいだった。

ことり「今日はウィッグしかないけど、今度は私のブランドが出してる服も持ってくるね?ガーリーで、にこちゃんに絶対似合うと思うんだあ♡」

絵里「私も仕事の関係で化粧品を沢山貰うから、今度持ってくるわね?」

穂乃果「私も私も!!穂むらの和菓子沢山にこちゃんに持ってきてあげる!!この間テレビでも紹介されたんだよ!?」

花陽「じゃ、じゃあ私はお米を…。」

凛「それじゃあ凛は、うちでやってるジムのフリーパスをにこちゃんにあげるね!」

海未「それでは私は、うちにある着物を差し上げますね。にこの背丈だと、お直しが必要ですが…。」

希「にこっち、うちのバーにも遊びに来てね?もちろん、ウチの奢りで飲ませてあげる!」

にこ「…みんな…みんなあ…。」(ポタポタ)

まきちゃん「…もう、今日は病院で沢山泣いたでしょう?」

にこ「だってえ…。」

まきちゃん「…私も、服とかバッグしかないけど、にこちゃんにあげるわ。ちょっと待ってて。」

にこ「ダメよう…こころの面倒見てもらってそれ以上してもらうのは…」(グスッ)

まきちゃん「気にしなくても良いのに…そういうところ強情なんだから…」

……

332: 2015/10/09(金) 10:13:45.96 ID:WPsfzSmZ.net


?「……き……きて…」

まきちゃん「…?」

夜眠っていると、微かに私を呼ぶ声がした。

誰…?

あっ…そうか。今日はみんな私の家に泊まっているかな…。

?「まき…起きて…」

何よ…今日ははしゃぎすぎて疲れてるのに。

?「ちょっと!起きてってば!」

まきちゃん「…もう、何よにこちゃん?」

にこ「…トイレに行きたいんだけど、場所が分からないの。連れてってくれない?」

まきちゃん「…もう、しょうがないわね。」

私達は寝てるみんなを踏まない様に、微かなスペースに足を伸ばして部屋を出た。

まきちゃん「まったく…昔何回か来たでしょ?」

にこ「何年前の話だと思ってるのよ。覚えてるわけないでしょ?」

まきちゃん「…というか、ウィッグつけたまま寝てたの?」

にこ「…だって、外したくなかったもの。」

まきちゃん「…そう。」(クスッ)

まきちゃん「着いたわ。ここよ。」

にこ「それじゃあ、ちょっと行ってくるわ。…ここから離れないでよね?」

まきちゃん「分かってるわよ。」


335: 2015/10/09(金) 10:37:13.50 ID:WPsfzSmZ.net
ガチャ

にこ「おまたせ。」

まきちゃん「じゃあ、戻りましょうか。」

にこ「…ねえ、穂乃果の孫のことなんだけど。」

まきちゃん「ああ、穂奈美ちゃんね。」

にこ「そう、穂奈美ちゃん。」

にこ「…私、あの子からアイドルの才能を感じるのよ。」

まきちゃん「…そうね。私も感じるわ。」

にこ「まだまだ練習が足りないけど、磨けば絶対に光ると思うの。」

にこ「…私、あの子を宇宙ナンバーワンアイドルに育て上げてみせるわ!」

まきちゃん「にこちゃん…。」

にこ「私はアイドルが大好き。他の何よりも大好きなの。」

にこ「もちろん、自分がアイドルとして、ステージに立つことが大好き。…でも同じくらい、輝いてるアイドルを見ることが大好き、応援することが大好きなの。」

にこ「私のアイドルへの夢は終わったって思ってたけど、でも私は氏ぬまでアイドルを身近に感じていたい!素晴らしいアイドルに関わっていたいの!」

にこ「自分の大好きなこと…。大好きなアイドルを信じたい!夢を見続けたいの!」

にこ「…だから、今の私の夢は、穂奈美ちゃんを宇宙ナンバーワンアイドルに育て上げること。」

にこ「絶対に育て上げるから!」

まきちゃん「…にこちゃん。」

まきちゃん「やっぱり、にこちゃんは夢を語っている時が一番生き生きしてるわね。」

にこ「当然でしょ!?アイドルが大好きなんだから!!」

にこ「さあ!明日から本格的に穂奈美ちゃんのレッスンをするんだから、早く寝て明日に備えるわよ!!」

まきちゃん「そんな大声出してたら、目が冴えちゃうわよ?」


352: 2015/10/20(火) 13:27:59.09 ID:liu3jTMGa.net
まきちゃん「…ということよ。」

まきちゃん「だからしばらくは投薬と無理のないリハビリから始めていくわ。」

まきちゃん「それから、入院もしばらくしてもらう必要があるわね。」

まきちゃん「…心配しなくても、今は良い薬もあるし、ちゃんと良くなるわよ。」

私はにこちゃんとこころちゃんを連れて、こころちゃんの今後の治療計画について説明している。

にこ「…分かったわ。こころのこと、お願いね。」

こころ「真姫さん、よろしくお願いします。」

まきちゃん「良いのよ。それじゃあ、部屋に戻りましょうか。」


353: 2015/10/20(火) 13:29:30.81 ID:liu3jTMGa.net
こころ「お姉さま、昨日は楽しめましたか?」

にこ「え?…ええ。」

にこ「…こころ、本当にごめんね。私の不注意でケガをさせて…。」

にこ「…そしてこころが辛い時に、私は仲間とはしゃいじゃってた。」

にこ「こんなの、お姉ちゃん失格だわ。」

こころ「フフッ…お姉さまったら、何を言っているんですか?」

こころ「私、とても嬉しいんです。」

こころ「…お姉さまが、かつての明るさを取り戻してくれたんですから。」

にこ「こころ…。」

こころ「本当に、真姫さんやμ'sの皆さんのお陰です。私のケガも治療して下さって…姉妹共々本当にありがとうございます。」

まきちゃん「…別に、私やみんながしたことは、私達がしたかったからしたことよ。」

こころ「それでも、ありがとうございます。」

まきちゃん「フフッ、どうたしまして。」

にこ「……本当にありがとう。」

まきちゃん「何よ、気持ち悪いわね。昨日あんなにはしゃいでたのに。」

にこ「昨日は!…こころを助けてもらって、私も助けてもらって、みんなに会えて嬉しかったから。」

にこ「…もうっ!この話はもう良いでしょ!?こころ、着いたわよ。」

ガララ

354: 2015/10/20(火) 13:30:00.50 ID:liu3jTMGa.net
こころ「はい、お姉さま、真姫さん、ありがとうございます。」

まきちゃん「それじゃあ、午後からリハビリのトレーナーが来るから、リハビリの内容についてはトレーナーの説明を聞いてちょうだい。」

こころ「はい、分かりました。」

まきちゃん「それじゃあ…。」

にこ「こころ、また午後に来るからね。」

こころ「はい、ありがとうございます。」

355: 2015/10/20(火) 13:31:07.58 ID:liu3jTMGa.net


ガララッ

まきちゃん「おはよう、穂奈美ちゃん。」

穂奈美「あっ、まきちゃん先生!おっはよー!」

にこ「ハイ失格!!アイドルたるもの、そんなガサツな挨拶じゃダメよ!!」

穂奈美「ひっ…だあれ?このおばあちゃん…。」

にこ「なっ…!おばあちゃんですってぇ!?」

まきちゃん「…このおばあちゃんは先生や、あなたのおばあちゃんの友達のにこおばあちゃんって言うの。昨日会ったでしょ?」

穂奈美「知らないよお…こんなおばあちゃん。」

相手に与える印象って髪型で結構変わるのよね。

にこ「…これで分かるでしょ?」(カポッ)

穂奈美「ひっ…!」

にこちゃんはウィッグを外した。

356: 2015/10/20(火) 13:31:39.84 ID:liu3jTMGa.net
穂奈美「あっ昨日のおばあちゃん!」

にこ「だ・か・ら!おばあちゃんって呼ぶんじゃないの!!これからはにこにー先生と呼びなさい!!」

にこ「今日からあんたをビシバシ鍛えてあげるから、覚悟しなさいよ!!」

穂奈美「にこおばあちゃん!よろしくお願いします!」(ペコッ)

にこ「だから!にこおばあちゃんって呼ぶんじゃないわよ!!これからはにこにー先生と呼びなさい!!」

まきちゃん「…もう、大人気ないんだから。」


357: 2015/10/20(火) 13:32:35.15 ID:liu3jTMGa.net
にこ「それじゃあ、にこにーのラブにこレッスン第一回目を始めるわよ!!」

穂奈美「はーい!」

にこ「ハイ失格!!」

穂奈美「えー!?何が失格なの!?」

にこ「アイドルになるなら、返事をする時もアイドルらしくなきゃいけないの!」

にこ「こういう時は…ちょっと見てなさい!」(シュルッ)

…にこちゃんは髪を解いた。

にこ「えへっ♡今日はよろしくお願いします♡」

にこ「にこ、トップアイドルになれる様に精一杯頑張ります♡」

にこ「…だから、先生もにこのこと、応援してくださいね?♡」





穂奈美「…ちょっと寒くないかな?」

まきちゃん「キモチワルイ。」

にこ「な、なんですってえ!?!?」

358: 2015/10/20(火) 13:33:10.26 ID:liu3jTMGa.net
にこ「…とにかく、どんな時でも自分がアイドルであるということを忘れちゃダメよ!」

にこ「どんな時でもアイドルってことは、一つ一つの行動もアイドルらしくないといけないの!」

にこ「ハイ!やってみなさい!」

穂奈美「えへっ♡にこにー先生、今日はよろしくお願いします♡」

にこ「…多少はマシになったわね。」

まきちゃん「ちょっと、穂奈美ちゃんに変なこと吹き込まないでよ。」

にこ「なっ…!これのどこが変なことなのよ!?」

まきちゃん「にこちゃんの真似させてたら、穂奈美ちゃんの良さが消えてしまうわ。」

359: 2015/10/20(火) 13:33:59.42 ID:liu3jTMGa.net
…こんなペースで、にこちゃんのレッスンは始まった。

にこ「手を振る時も思いっきり振れば良いってわけじゃないの!」

にこ「首を30度傾けて、傾けた側の手を顔の近くで小さく振るのよ!」

手を振る動作一つにも、にこちゃんの厳しいチェックが入る。

まきちゃん「ここはそのままで良いのよ!穂奈美ちゃんの良さは元気の良さなんだから、そんなブリブリにしたら寒くなるだけでしょ!?」

にこ「なんですってぇ!?」

まきちゃん「何よ!?」

穂奈美「ふ、2人とも喧嘩しないでよお~!」

私とにこちゃんの意見は中々合わず、時折レッスン放ったらかしで口論になることもあった。

穂奈美「あ、おばあちゃん♡今日も穂奈美に会いに来てくれたの?♡」

穂乃果「……にこちゃん、どういうこと!?」

にこ「何よ?何か文句でもあるわけ!?」

穂乃果「大アリだよ!!」

にこ「何よ!?」

ギャーギャー

ナース「…病院はお静かに。」

試行錯誤を繰り返して、穂奈美ちゃんのキャラも定まって行き…

360: 2015/10/20(火) 13:34:57.28 ID:liu3jTMGa.net
穂奈美「ラー♪」

まきちゃん「良いじゃない!大分良くなってきてるわ!」

穂奈美「ほんとっ!?やったー!!」

にこ「まだダメよ!!もっと上のレベルを目指さないと!!」

穂奈美「はい!!にこにー先生!!」

にこ「だから!!にこおばあちゃんでしょっ!?……あれ?」

穂奈美ちゃんの歌声もますます良くなり…

まきちゃん「穂奈美ちゃん、退院おめでとう。」

穂奈美「まきちゃん先生、看護師さん、本当にありがとう!!」

美穂「西木野先生、本当にお世話になりました。」

穂乃果「本当にまきちゃんのおかげだよー!!」(ガバッ)

まきちゃん「ちょっ!くっつかないでよ!!」

まきちゃん「…穂奈美ちゃん、退院できてもまだちゃんと治ってないんだから、無理しちゃダメよ?」

穂奈美「うん、分かった!」

穂奈美「…まきちゃん先生、これからもアイドルのレッスンしてくれる?」

まきちゃん「もちろん、にこにー先生と一緒に待ってるから。幼稚園が終わったらいつでもいらっしゃい。」

穂奈美「うん!!」

ナース「穂奈美ちゃん、本当におめでとう。」

穂奈美ちゃんは無事に退院の時を迎えた。

363: 2015/10/21(水) 22:55:03.30 ID:+tY3d106a.net
そして、こころちゃんも著しい回復を遂げ…

まきちゃん「…すごいわ。この早さは驚異的ね。」

まきちゃん「こころちゃん、来週には退院できるわよ!」

こころ「本当ですか!?」

にこ「本当に!?」

まきちゃん「ええ、年齢的にももっと時間がかかると思ってたけど…。」

まきちゃん「もう大丈夫よ。これからは毎月診察に来てくれたら、それで十分ね。」

にこ「良かったあ!!」

にこ「…こころ、本当に良かったわね。」(ウルッ)

こころ「…はい、本当にお姉さまや真姫さんのおかげです。」(グスッ)

まきちゃん「そんなこと…。でも、本当に良かったわ。」

…こころちゃんの回復力ももちろんだけど、それ以上ににこちゃんの若返り方が何よりも驚異的ね。

にこ「…?何よ、人の顔ジロジロ見て。」

まきちゃん「…別に。」

364: 2015/10/21(水) 22:56:28.66 ID:+tY3d106a.net
そして、同時にみんなとの親交も変わらず続いている。

花陽「うわー…相変わらず大きいねー…。」

海未「最近はずっと真姫や穂乃果の家でしたからね。さすがに申し訳ないので…。」

まきちゃん「別に…気を遣わなくて良いのに。」

希「でも、ウチ久しぶりに海未ちゃんの家にも行ってみたかったんよ♪」

穂乃果「私も私もー!」

凛「絵里ちゃんとことりちゃんも来れたら良かったのにね?」

にこ「仕方ないでしょ?私達と違って忙しいんだから。」

まきちゃん「わ、私だって忙しいわよ!」




…そして、月日が流れた。

366: 2015/10/21(水) 22:57:28.13 ID:+tY3d106a.net
チュンチュン

まきちゃん「…うーん!」

気持ちの良い朝。

まきちゃん「今日で私も…やっと定年退職ね。」

なんて言いながら、あれから結局1年も経っちゃった。

「奥様、おはようございます。」

まきちゃん「おはよう。」

「ついに今日が来てしまいましたわね。」

まきちゃん「そうね。…まあ、これからも病院の経営の為に働かないといけないし、これからは余生を楽しく過ごそうって訳にはいかないけどね。」

まきちゃん「それよりもあの件、よろしくね?」

「はい、かしこまりました。」

367: 2015/10/21(水) 22:58:32.75 ID:+tY3d106a.net
今日は私の退職記念パーティーを病院で行う。

その為に、家の使用人にも今日は病院に出てもらって、準備をしてもらう。

まきちゃん「…さて、仕事しなくちゃ!」


368: 2015/10/21(水) 22:59:13.72 ID:+tY3d106a.net
私は病院の院長室に着くと、今日の予定を確かめた。

まきちゃん「…午前に穂奈美ちゃんの健診があって、後は…」

穂奈美ちゃんにも、今日でついに完治宣言できるわね。

そして…午後からは…。

ピロローン♪

まきちゃん「…。」

私は携帯に届いたメッセージを確認する。

「みんなで絵里ちゃんとことりちゃんを迎えにいってくるね!昼過ぎには病院に着くから、パーティーの準備を手伝うにゃー!>ω</」

メッセージは凛からだった。

369: 2015/10/21(水) 22:59:45.39 ID:+tY3d106a.net
まきちゃん「…。」

「了解。よろしくね。」

私は返事をする。

まきちゃん「さて、そろそろ穂奈美ちゃんが来る頃ね。」

私は診察室へ向かった。


371: 2015/10/21(水) 23:01:11.68 ID:+tY3d106a.net
ガチャ

まきちゃん「あら、おはよう。早いのね。」

ナース「院長先生、おはようございます。…いよいよですね。」

まきちゃん「そうね。あれから色々あって、結局退職するのに1年もかかっちゃったわ。」

ナース「フフッ…私は院長先生と1年長く仕事ができて、とても嬉しいですわ。」

まきちゃん「…バカなこと言ってるんじゃないの。」

ガチャ

穂奈美「こんにちはー!」

まきちゃん「こんにちは、穂奈美ちゃん。」

ナース「こんにちは。」

美穂「ご無沙汰しております、西木野先生。」

まきちゃん「ご無沙汰ね、美穂ちゃん。それじゃあ、レントゲンで撮れた写真を見てみるわ。」


372: 2015/10/21(水) 23:01:55.29 ID:+tY3d106a.net
まきちゃん「うん、もう大丈夫ね。完治してるわ。」

穂奈美「本当に!?やったー!!」

美穂「こら!落ち着きなさい。本当に長い間ありがとうございました。」

まきちゃん「良いのよ。でも、本当に良かったわ。」

穂奈美「ねえねえ、これからはダンスのレッスンも出来るよね!?」

まきちゃん「そうね。無理をしちゃいけないから、初めは簡単なことからだけど…。」

まきちゃん「にこにー先生にも伝えておくわ!」

穂奈美「うん!楽しみだなあ。」

穂奈美「あっそうだ!!まきちゃん先生、今日は…。」

まきちゃん「…ええ、分かってるわよ。」

373: 2015/10/21(水) 23:02:46.90 ID:+tY3d106a.net
美穂「西木野先生、パーティーのことでお手伝いできることがあれば、なんでも言ってくださいね。」

まきちゃん「…ありがとう。それじゃあ、また後でね。」

穂奈美「はーい!」

美穂「失礼します。」

ガチャ

バタン

まきちゃん「…ふぅ、それじゃあ私も院長室で色々準備してくるわね。」

ナース「はい、分かりました!」


374: 2015/10/21(水) 23:03:47.28 ID:+tY3d106a.net
まきちゃん「…医者としての最後の仕事、ついに終わっちゃったわね。」

まきちゃん「パパ、ママ…私、頑張ったわよ?」

私は、デスクの上に置かれた写真に微笑みかける。

まきちゃん「…さて、と」

ホールに行ってピアノを弾こうかと思って時計を見ると、

針はとっくに昼の1時を指し示していた。

まきちゃん「…本当に最近は時間が経つのが早いわね。」

…まあ、私も歳だもの。

375: 2015/10/21(水) 23:05:00.95 ID:+tY3d106a.net
まきちゃん「凛達、昼過ぎには病院に着くのよね?」

携帯をチェックしても、何の連絡もない。




ガシャーン!!

!?

まきちゃん「…あっ!?」

嫌な音がした方向を振り返ると、デスクの上に置かれていた、凛からもらった猫の時計が落ちて、壊れてバラバラになっていた。

まきちゃん「…なんで、どうしてよ?」

50年ずっとずっと大切にして来たのに…

人からもらった物が壊れるのは、とても心が痛い。

376: 2015/10/21(水) 23:05:39.70 ID:+tY3d106a.net
まきちゃん「…今日、凛に謝らないと。」

私は滲む涙を拭い、時計の破片を拾い集めようとすると

ブー、ブー

病院の内線が鳴った。

何よ、今最悪な気分だって言うのに。

まきちゃん「もしもs

『院長先生、急患です!!すぐに来てください!!!!』

まきちゃん「!?」

嫌な、とても嫌な予感がした。


377: 2015/10/21(水) 23:06:26.99 ID:+tY3d106a.net
タッタッタッタッ

まきちゃん「…ハァ…ハァ…!」

まきちゃん「…っ!?」(ドタッ)

急ぎすぎて、気持ちに足が付いていかなくて転んでしまった。

転んでる場合じゃない。

老体に鞭を打って、私は走った。



着いた。

まきちゃん「…急患は……!?」







そこには、最も見たくなかった光景が広がっていた。






まきちゃん「……何よ、これ。」

391: 2015/10/30(金) 22:22:37.82 ID:3Tfsw9Tca.net
「おどうざあああん!!おがあざあああん!!」

「これだけの人数を診るなんて無理です!ウチの医者の数では…!」

「早く!病院中の先生と看護師を集めて!!」

「ウチではもう無理です!他を当たって下さい!!」

「この患者は刻一刻を争う状態です!今すぐに措置をお願いします!!」

「私より、この子をすぐに治療して下さい!お願いします!」


痛みに悶える叫びが聞こえる。

焦りから周囲への荒んだ声が聞こえる。

血だらけの人が沢山いる。


泣いている人が沢山いる。


皆が絶望の中にいて、まさにこの世の地獄とでも例えられる様な光景だった。





…私にとっては、本当の地獄だった。

392: 2015/10/30(金) 22:23:22.49 ID:3Tfsw9Tca.net
私の目に映ったもの。それは、

まきちゃん「う、うそ…うそよ…うそでしょ…!?」

穂乃果「…」

海未「…」

ことり「…」

花陽「…」

凛「…」

絵里「…」

希「…」

にこ「…」

393: 2015/10/30(金) 22:23:30.13 ID:3Tfsw9Tca.net
ちだらけのメンバーのかお。


まっかなのに、まっさおなメンバーのかお。


8人のうたのめがみは、ちぞめのめがみたちだった。

394: 2015/10/30(金) 22:24:11.53 ID:3Tfsw9Tca.net
まきちゃん「なんで…なんで私だけ置いて…」

まきちゃん「…パパもママも、みんなみんな、なんで私をひとりにするの…!?」

まきちゃん「なんで、なんで…なんでなのよおおおおおお!!!!!」

なんで

いくなら私も一緒に連れてってよ

ナース「院長先生!しっかりして下さいっ!!」

こんなことになるなら

こんなことになるなら





みんなに会えないままの方がずっとマシだった。

395: 2015/10/30(金) 22:24:50.74 ID:3Tfsw9Tca.net
「…ちゃん!!おばあちゃん!!」



穂奈美「おばあちゃん!!おばあぢゃぁぁぁん!!!!」

穂奈美「おばあぢゃん!!氏んじゃいやあああ!!」

穂奈美「穂奈美良い子にするから!!…もうイタズラしないからああああ…!?」

泣き叫ぶ穂奈美ちゃんと、目が合った。

…美穂ちゃんは隣で泣き崩れている。

穂奈美「まぎちゃんぜんぜえ!!!!」(ダダダッ)

穂奈美「お願い、おばあぢゃんを…みんなをだすげで!!」

穂奈美「穂奈美何でもするがら!!もうイタズラもじないじ、牛乳も全部のむ!!穂奈美のだがらもののネッグレスとあげるがらっ!!」

穂奈美ちゃんは私の下に駆け寄って、泣きながら、ガラガラにしゃがれた声でお願いしてきた。

けれど、私はもう何も思考できない。

396: 2015/10/30(金) 22:41:48.09 ID:bjnZgI65a.net
穂奈美「まぎちゃんぜんぜえ!!何か言っでよお!!」

穂乃果「……うぅ。」

微かに漏れた穂乃果の声で、私は意識を取り戻した。

まきちゃん「穂乃果っ!?」

穂奈美「おばあちゃん!?」

美穂「お母さん!?」

穂乃果「…ごめん、ね、まきちゃん、穂奈美ちゃん、美穂。」

まきちゃん「…ほのかあ!」

穂乃果「……まき、ちゃん、お願い、みん、な、を、たすけ、て。」

穂乃果「……み、んな、きっとまだ、だい、じょうぶ…。これでもまだ、わかい、から。」

穂乃果は途切れ途切れになりながらも、必氏に話している。

私は一言一言を噛みしめるように、穂乃果の話を聞いた。

397: 2015/10/30(金) 22:42:35.19 ID:bjnZgI65a.net
「西木野先生、この8人の患者は全員脈があります!!」

穂乃果「…よかっ、た。」

まきちゃん「穂乃果…。」





まきちゃん「…すぐにこの8人を手術するわ!!」

ナース「無理です!!先生の数が足りません!!」

まきちゃん「そんなの分かってる!!私がやるのよ!!」

ナース「…無理です。先生の体力も、患者さんの体力も持ちません。」

穂乃果「…まき、ちゃん。」

398: 2015/10/30(金) 22:43:37.95 ID:bjnZgI65a.net
穂乃果「ほの、かはへい、き、だよ。μ'sのリー、ダーだから、ね。」

穂乃果「さきに、ほかのみん、なをみ、てあげ、て。」

穂乃果「とく、に、にこちゃんは、からだもちいさい、から。」

穂乃果「ほの、かは、みんな、がおわる、まで、まってる、から。」

穂乃果「まき、ちゃんも、たいへ、ん、だとおもう、けど、おねがい。」

まきちゃん「…氏んだら許さないんだから!!」(ジワッ)

まきちゃん「全員手術室に運んで!!」

「「「はいっ!!」」」


399: 2015/10/30(金) 22:44:20.25 ID:bjnZgI65a.net


私は穂乃果の望み通り、にこちゃんの手術から始めた。

まきちゃん「にこちゃん、私よ!!しっかりして!!」

ペチペチ

にこ「…。」

……意識はない。

心拍数から察するに、かなり衰弱が進んでるわ。

…急がないと。



まきちゃん「…傷が大きいわね。」

それにかなり複雑だわ。

まきちゃん「…。」

ごめんね、にこちゃん。

傷跡、目立ってしまうけど許してね。


400: 2015/10/30(金) 22:44:56.46 ID:bjnZgI65a.net
まきちゃん「…。」

今できる措置は、これぐらいね。

まきちゃん「…次の患者を!」

私は重傷のメンバーから順に手術をしていくことにした。

花陽「…。」

まきちゃん「…今、助けてあげるから。」

私は花陽の服を切った。

まきちゃん「…!?」

こんな光景、何度も見てきたけど

仲間のこんな姿を見るのは、辛い。

まきちゃん「………!」

私は一瞬、意識が飛びそうになった。

でも、

私は目を背けたくなる様な現実を直視し、あくまでも冷静に手術を進める。


401: 2015/10/30(金) 22:45:23.78 ID:bjnZgI65a.net
まきちゃん「…次よ。」

次は、希。

まきちゃん「希、しっかりして!!」

希「……まき、ちゃん?」

まきちゃん「!?…のぞみいい!!」

希「…ごめんね、まき、ちゃん。」

まきちゃん「大丈夫よ!今すぐ手術するから!!」

希「いややわあ、まきちゃんに、こん、な、すがた、みせるのは。」

まきちゃん「…こんだけ話せれば、きっと大丈夫よ。」

私は微かに安堵を覚えた。


402: 2015/10/30(金) 22:51:03.82 ID:p1RhvzB8a.net
まきちゃん「…次をお願い。」

次は、ことり。

まきちゃん「…ことり、私よ!分かる!?」

ことり「…。」

意識はない様ね。

「先生!脈拍が…!」

まきちゃん「…!?」

ことりの脈拍が下がって来ている。

…大分待たせちゃったもの。

……ごめんね、ことり。

まきちゃん「すぐに助けるから!」


403: 2015/10/30(金) 22:51:34.82 ID:p1RhvzB8a.net
まきちゃん「次の患者さんを!!」

ナース「…院長先生、大丈夫ですか?」

まきちゃん「大丈夫よ、早く!」

正直、少しきつい。

でも、みんなはもっと苦しんでる。

休んでなんていられない。

ナース「…はい。」

404: 2015/10/30(金) 22:52:30.79 ID:p1RhvzB8a.net
次に手術をするのは、凛。

まきちゃん「凛、私よ!分かる!?」

凛「…。」

……病院に搬送されてから随分経っているもの。

意識が無いのも当たり前ね。

凛、待たせてしまって、ごめんね。

まきちゃん「…。」

凛の身体を見ると、身体中が青あざだらけになっていた。

凛、とても痛かったわよね。ごめんね。


405: 2015/10/30(金) 22:53:15.22 ID:p1RhvzB8a.net
まきちゃん「…次よ。」

…そろそろ、自分に限界が近付いていることに気付く。

ナース「…先生、これ以上は無茶です。別の先生に交代した方が!」

まきちゃん「うるさい!!他の先生だって他の患者さんを診てるでしょ!?」

ナース「ご自身の年齢を考えて下さい…。院長先生のご年齢では…。」

まきちゃん「良いから、次の患者を!!」

ナース「…。」

次は、エリー。

まきちゃん「エリー、私よ!しっかりして!!」

絵里「…ま、き。」

まきちゃん「…!?良かった!!」

まきちゃん「今から手術をするから、絶対に助けるからね!?」

絵里「…ありが、とう。」

まきちゃん「…。」

私はエリーの服を切って、身体を見る。

まきちゃん「…。」

良かった。比較的軽傷ね。

406: 2015/10/30(金) 22:53:42.97 ID:p1RhvzB8a.net
私はエリーの脚を動かす。

絵里「…うあああああ!!!!」

まきちゃん「っ!?ごめんなさい!!」

まきちゃん「エリー!?どこが痛いの!?」

絵里「…。」

…痛みに気を失ってしまったみたい。

先に麻酔してあげたら良かった。

ごめんね、エリー。

407: 2015/10/30(金) 22:55:14.22 ID:p1RhvzB8a.net
まきちゃん「…。」

どこが痛むのかしら。

…ここね。

こんな大きな腫れにも気付かないなんて。

集中力が大分切れかかってるわ。

…本当に、ごめんね。

408: 2015/10/30(金) 22:55:47.67 ID:p1RhvzB8a.net


まきちゃん「…はぁ…はぁ。」

…ダメね。

もう限界…。

ナース「院長先生、いい加減にして下さい!!」

まきちゃん「…良いから、次よ。」

ナース「させません!休んで下さい!!」

まきちゃん「…院長命令よ、患者を通して。」

ナース「…従えません。」

まきちゃん「…ここで私が休んだら、誰が診るのよ。」

まきちゃん「…通しなさい。」

ナース「…。」


409: 2015/10/30(金) 22:56:14.32 ID:p1RhvzB8a.net
まきちゃん「海未!?」

海未「…真姫、すみません。」

まきちゃん「良かったわ。待たせてごめんなさい。」

やっぱりさすがね、海未は。

診た所、外傷もそんなに無いみたい。

海未「…真姫、肺を診てくれませんか?……呼吸をする度に、痛むのです。」

まきちゃん「…分かった!!すぐに治してあげるから!!」

まきちゃん「…。」

海未の身体を切開する。

410: 2015/10/30(金) 22:56:39.84 ID:p1RhvzB8a.net
まきちゃん「…!?」

骨が、

肺ではなく、心臓に刺さっている。

…厄介ね。

普段のコンディションでも神経を使う所なのに、今のコンディションじゃ…。

ナース「…院長先生、無茶です。」

まきちゃん「…そうね。」

海未の身体を思ったら、ここは…。

411: 2015/10/30(金) 22:57:38.66 ID:p1RhvzB8a.net
「ダメです!他の先生もまだ手術中です!!」

ナース「…そん、な。」

まきちゃん「…。」

まきちゃん「…やるわ。」

ナース「院長先生!?」

まきちゃん「…この8人は、私が診るんだから。」

412: 2015/10/30(金) 22:58:28.99 ID:p1RhvzB8a.net


まきちゃん「…。」

意識が飛びそう。

絶対に傷つけてはいけない所。

そんなところに細かな骨が複雑に刺さっている。

…よくこれまで意識があったわね。

まきちゃん「…。」

私は慎重に、慎重に骨の破片を取り除く。

まきちゃん「…。」

私は手を一旦止め、目を瞑って3秒程小休止した。

ナース「院長先生…。」

まきちゃん「…大丈夫よ。」

私が、みんなを助けるんだから。

まきちゃん「…。」

413: 2015/10/30(金) 23:01:20.56 ID:p1RhvzB8a.net


まきちゃん「…ふぅ。」

なんとか、終わった。

…そろそろ限界ね。

まきちゃん「…。」(パァン)

私は気を持ち直す為に、自分の頬を叩いた。

まきちゃん「…よし!」

穂乃果…待たせてごめんね。

414: 2015/10/30(金) 23:01:59.54 ID:p1RhvzB8a.net
まきちゃん「…穂乃果。」

私は穂乃果の手を触った。

冷たい。

まきちゃん「…ほのかあ…ごめんなさい。」

脈も、どんどん下がっている。

身体を見ると、あらゆる所が腫れていたり、出血していた。

穂乃果…。

痛かったわね。

ごめんね、遅くなって。

私は傷口を縫合していく。


415: 2015/10/30(金) 23:02:33.71 ID:p1RhvzB8a.net
まきちゃん「…あと少しね。」

まきちゃん「穂乃果、待っててね。」







ピー





___そんな




穂乃果の心臓は、止まった。

416: 2015/10/30(金) 23:03:22.74 ID:p1RhvzB8a.net
まきちゃん「…あ、ああ…。」

穂乃果の手は、より一層冷たくなった。

まきちゃん「…ほの、か?」

まきちゃん「…………いやあああああああ!!!!」

まきちゃん「ほのか!ほのか!ほのかあああああ!!!!!!」

まきちゃん「いやよ!!こんなの!!!!氏んだら許さないって言ったじゃない!!!!!!」

私は心臓マッサージをしながら叫んだ。

ナース「…院長先生!」

まきちゃん「うああああああああ!!!!!!」

まきちゃん「ほのか……ほのか、ほのか…………。」

417: 2015/10/30(金) 23:04:03.59 ID:p1RhvzB8a.net
泣いても

叫んでも

部屋には無機質な音が鳴り続けるだけ。

私のせいだ。

私が、病院で退職記念パーティーをするなんて言い出したのが悪かった。

私が、今日退職するのが悪かった。




私が、またみんなに会いたいなんて思ったのが悪かった。

418: 2015/10/30(金) 23:04:37.60 ID:p1RhvzB8a.net
まきちゃん「ほの、か…ほのかああ…。」

ねえ

お願い

助けて、穂乃果のこと。

私が持ってるもの、なんでもあげるから。

私の命をあげてもいいから。

……………
…………
………

419: 2015/10/30(金) 23:06:02.49 ID:p1RhvzB8a.net
穂乃果「それじゃあ、行くよー?せーのっ!!」

8人「ラブライブ!お疲れ様ーっ!!」

パーン!パーン!

穂乃果「みんな、本当にお疲れ様!!そして優勝できて、本当に良かったよねー!?」

ことり「うん♡みんなで頑張った成果が出たね♡」

海未「でも、本当に夢の様です…。今、私達がスクールアイドルの頂点に立っているのですね…。」

花陽「私も信じられない…。とんでもないことになっちゃったね…。」

420: 2015/10/30(金) 23:06:35.36 ID:p1RhvzB8a.net
凛「すごいことだよね!?でも、凛達は本当に優勝に向けて頑張って練習したもん!勝利は頑張った者へのご褒美だにゃー!!」

にこ「コラッ!調子に乗っちゃダメよ。頑張ったのは他のグループだって同じなんだから。」

絵里「そうね。でも、優勝の喜びはきちんと味わっておくべきだわ。」

希「そうそう。今日は思いっきり楽しもう?ウチらももう来週には卒業なんやから。」

穂乃果「おーい!まきちゃん!こっちおいでよー!?」


まきちゃん「…え?」


どういうこと?

421: 2015/10/30(金) 23:07:13.99 ID:p1RhvzB8a.net
海未「どうしたのですか?豆鉄砲を食らった鳩の様な顔をして。」

まきちゃん「…どこよ、ここ。」

凛「どこって…部室だよ?」

まきちゃん「どうして!?さっきまで病院に…」

希「…まきちゃん、今日までウチらの為に沢山曲書いてくれたもんね…。きっと疲れてるんや…。」(グスッ)

まきちゃん「何よ!!別にそんなんじゃ!!」

花陽「まきちゃんたら、寝ぼけてるんだね。」(クスッ)

ことり「まきちゃんが寝ぼけるなんて、珍しいね♡」

まきちゃん「…。」

今までのは、何?

422: 2015/10/30(金) 23:07:42.96 ID:p1RhvzB8a.net
にこ「あーら、とうとうあんたもきがふれちゃったのねえ!」

まきちゃん「…そう、なのかも。」

希「まきちゃん、ウチらが卒業するからって現実逃避したらあかんよ?」(ニヤッ)

まきちゃん「現実逃避なんてする訳ないでしょ!?」

まきちゃん「…別に、3年生が卒業したって…。」

まきちゃん「…寂しくなんか、ない。」(じわっ)

にこ「はぁ…まったく、辛気臭い顔するんじゃないわよ。」

まきちゃん「べ、別にそんな顔してないわよ!!」

423: 2015/10/30(金) 23:08:14.26 ID:p1RhvzB8a.net
絵里「真姫、卒業したからってもう会えなくなる訳じゃないんだから。」

希「そっかあ…まきちゃんはウチらが卒業したら、もう会ってくれんのやね。」

まきちゃん「そんなこと…そんなこと一言も言ってないでしょ!?」

希「アハハ!冗談やん!まきちゃん本気にしちゃって…はっ!」

まきちゃん「…」(グスン)

絵里「もう希、からかいすぎよ。真姫、いらっしゃい。」

絵里「卒業しても私と希は都内の大学に進学するし、にこだって東京を拠点に活動する予定なんだから、いつでも会えるわよ?」

にこ「そうよ。まったく大袈裟なのよあんたは。」

まきちゃん「だって…。」

432: 2015/11/01(日) 15:14:37.58 ID:zJwF8qHua.net
凛「まきちゃんかわいいにゃー!!」(ダキッ)

穂乃果「私も私もー!」(ダキッ)

まきちゃん「ち、ちょっと!苦しいってばー!!」


433: 2015/11/01(日) 15:15:51.88 ID:zJwF8qHua.net
穂乃果「ねえねえ!また9人でパーっと遊びに行きたいよね!?」

海未「今日散々パーっと遊んだじゃないですか!これから卒業式の準備もあるんですから、当分お預けです!」

ことり「まあまあ、3年生とはいつでも会えるって言っても、やっぱりこれまでよりは会いづらくなるんだし…。」

まきちゃん「…もっと遊びに行きましょうよ。」

8人「!?」

まきちゃん「な、何よ…!?」

希「珍しいこともあるもんやね。まきちゃんがそんなこと言うなんて。」

にこ「あんた本当にどうしちゃったのよ!?」

まきちゃん「だって、いつでも会えるって言っても4月からはみんなそれぞれ忙しくなるでしょ!?だから…。」

434: 2015/11/01(日) 15:16:25.55 ID:zJwF8qHua.net
花陽「…私も、みんなともっと一緒に遊びたいなあ。」

凛「凛も凛もー!」

絵里「…それじゃあ、近くのハンバーガーショップで二次会しない!?」

海未「今からですか!?」

穂乃果「わーい!さんせー!!」

絵里「それじゃあ、いつもの店まで競争!!」

絵里「負けた人ジュース奢りー♪」

435: 2015/11/01(日) 15:18:01.07 ID:zJwF8qHua.net
8人「えーっ!?」

海未「負けません!!」

ことり「ことり、本気出しちゃう♡」

花陽「うう…さっき食べ過ぎちゃったから走れない…。」

凛「凛も…。もう、絵里ちゃんずるいにゃー!」

にこ「にこもお小遣い日前だって言うのに…!絶対に負けられないわ!!」

希「ほんまえりちは唐突やなあ…。」


穂乃果「おーい!まきちゃんも早く早くぅ!」

まきちゃん「穂乃果!!待ちなさいよ!」

436: 2015/11/01(日) 15:18:42.32 ID:zJwF8qHua.net
花陽「まきちゃん、頑張って!」

凛「まきちゃん、急がないとビリになっちゃうよー?」

希「ホッ、まきちゃんのおかげでビリは免れそうやね。」(ニヤッ)

ことり「まきちゃん、急いでー!」

まきちゃん「花陽!凛!希!ことり!…待ってってば!」

にこ「ほらほらっ早く来ないと置いてくわよ!?」

絵里「フフッ、今日は真姫の奢りになりそうね。」

海未「真姫ー?絵里は本気の様ですよー!」

437: 2015/11/01(日) 15:19:23.09 ID:zJwF8qHua.net
まきちゃん「にこちゃん!エリー!海未!…もう、早いってば!」

タッタッタッ

まきちゃん「待って!!置いて行かないで!!あっ!!」ドザッ

まきちゃん「お願い!!私を置いて行かないで!!」



どんなに走っても、みんなに追いつけなかった。


そして、いつの間にか見失ってしまった。

まきちゃん「…なんで、置いてくのよ。」(グスッ)



「…気付かないの?」

439: 2015/11/01(日) 15:20:35.91 ID:zJwF8qHua.net
まきちゃん「…えっ?」

「氏んだのよ、あなた。」

まきちゃん「…氏んだって。」

まきちゃ「…私が?」

「ええ。だからみんなの所には行けないのよ。」

まきち「………どうして私が氏ななくちゃならないのよ。」

「…あなたが自分の命と引き換えに穂乃果を、みんなを助ける道を選んだんでしょ。」

まき「…。」

ま「…そうだった。」

「だから私、氏んだのね。」

444: 2015/11/01(日) 21:58:33.14 ID:jYy1weIea.net
良かった。

みんな、無事なんだ。

自分の命と引き換えにみんなが助かったのなら、

…悪くないかも。

でもパパ、ママ、ごめんなさい。

2人にもらった命、自分で捨てちゃった。

でも、私は医者だもの。

医者として、患者を助ける為に「命懸け」で頑張ったもの。

医者として、ある意味美しい最期よね。

445: 2015/11/01(日) 22:00:34.49 ID:jYy1weIea.net
書き込めてる!
どなたか存じませんが、ありがとうございます。
鮒寿司さんも知らせてくれてありがとうございます。

446: 2015/11/01(日) 22:01:37.51 ID:jYy1weIea.net
「…。」

思いの外、「氏」というものを抵抗なく受け入れている自分がいる。

きっと、氏ぬ前にまたμ'sのみんなに会えたからなのかもね。

思い残すことは、もう無いわ。

我が人生に、一片の悔い無し、ね。

もし、生まれ変わるとしても、

また、西木野真姫として生まれたい。

そして、またμ'sのみんなと出会いたい。

447: 2015/11/01(日) 22:02:27.37 ID:jYy1weIea.net
そして、歌いたい、踊りたい、曲を書きたい。

みんな



出会ってくれて



ありがとう。



また、よろしくね。



The End

448: 2015/11/01(日) 22:03:11.68 ID:jYy1weIea.net
____るーばんざーい♪

…?

ここでーよかったー♪

…穂奈美ちゃん?

わたしーたーちーのいーまがー♪

こーこーにあるー♪

一片の悔い、あったわね。

449: 2015/11/01(日) 22:03:52.13 ID:jYy1weIea.net
あいしてるーばんざーい♪

もっと一緒に歌いたかったなあ。

始まったばーかーりー♪

もっと稽古してあげたかったなあ。

あしたもよーろしーくねー♪

もっとお話ししたかったなあ。

まだー♪

…アイドルとしての成功、見届けたかったなあ。

ゴールじゃなーい♪

……生きたい。

450: 2015/11/01(日) 22:04:26.87 ID:jYy1weIea.net
我儘かしら。今更生きたいなんて。

私が生きる道を選んだら、穂乃果は、みんなはどうなるのかしら。

…みんなで、生きたい。

66年間、ずっと頑張ってきたんだから

これくらいの我儘、聞いてくれても良いじゃない。

…ダメかしら?

451: 2015/11/01(日) 22:05:07.74 ID:jYy1weIea.net
……………
…………
………
……


「………。」

「………。」

「……ん。」

えっ今何か言ったよね?絶対言ったよね?ちょっと落ち着きなさい!落ち着いてられないよ!気のせいじゃないの?気のせいじゃないよ!今絶対に喋ったもん!こら、病院で騒いではいけません!!だってー!!

うっ

頭、痛い…。

こんな時に、うるさいわね!

「もう!!うるさーいっ!!!!」(ガバッ)

あっ…。

……みんな、さっき会った時よりなんだか老けてない?






穂乃果「っ!?…まきc」

穂奈美「まきちゃんせんせえええええええ!!!!!!」

まきちゃん「ちょっ!!きゃあああ!!」(ガバッ)

452: 2015/11/01(日) 22:05:40.06 ID:jYy1weIea.net
ベッドに横たわる私に、穂奈美ちゃんが飛びついてきた。

穂奈美「良かったああ!!まきちゃん先生生きてたああ!!!!」

まきちゃん「もう、勝手に殺さないでくれる?」

穂奈美「だっでね、もうなんにぢもねでだがら、しんじゃっだのかどおもっで…。」

まきちゃん「…馬鹿ね。」

穂奈美「穂奈美ちゃんの晴れ舞台を見るまで、氏ぬもんですか。」

私は、穂奈美ちゃんを強く、優しく抱きしめた。

453: 2015/11/01(日) 22:06:44.00 ID:jYy1weIea.net
穂乃果「あー!穂奈美ちゃんズルい!!穂乃果もハグしたいのにー!!」

海未「穂乃果、ベッドから動いてはいけません!!」

まきちゃん「…私、そんなに眠ってたの?」

花陽「そうだよお!もう3日も!」(グスッ)

凛「凛も、まきちゃんもう目を覚まさないのかと思ったよ…。」

希「まきちゃん、ウチら8人のこと手術してくれたもんなあ。」

絵里「…真姫、本当にありがとう。」

ことり「まきちゃんのお陰で、こうやってみんな助かったんだもんね。」

にこ「まあ、若さ溢れるにこのバイタリティーなら、あれぐらいの事故でも余裕だけどね!」

454: 2015/11/01(日) 22:09:07.84 ID:jYy1weIea.net
まきちゃん「…とか言うけど、にこちゃんの衰弱が一番酷かったのよ?」

にこ「はあっ!?証拠を出してみなさいよ!!」

まきちゃん「後でにこちゃんのカルテ持ってきてあげるわよ!!」

アハハハハ

穂奈美「…まきちゃん先生、良かったね。」

まきちゃん「ええ。」


そして私は8人のケガが完治するまで、また医者を続けることになった。

…みんな、なんでおばあちゃんなのに、こんなに回復するのが早いのよ。




そして、私は今度こそ退職を迎えることになった。

三度目の正直、というやつね。

455: 2015/11/01(日) 22:10:34.63 ID:jYy1weIea.net


穂乃果「今日でやっとまきちゃんも退職だね。わー!美味しそうな料理がいっぱい!!」

海未「私達のせいで、退職が随分伸びてしまいましたね…。」

ことり「うん…。まきちゃんに悪いことしちゃったね。」

凛「あっ、ダメだよ海未ちゃん!ことりちゃん!その話ししたらまきちゃんに怒られちゃうよ!」

にこ「そうよ!今は真姫がいないから良いけど…。って、真姫は一体どうしたのよ?」

希「そろそろパーティーが始まる時間やのに…何か準備してるんかな?」

花陽「どうかなあ…朝も会えなかったもんね。」

絵里「…あら、そういえば穂奈美ちゃんは?」




ナース「お集まりの皆様、お待たせ致しました。」

ナース「これより、当病院の院長である、西木野真姫先生の退職記念パーティーを執り行わせて頂きます。」

456: 2015/11/01(日) 22:10:57.65 ID:jYy1weIea.net
ナース「まずは、西木野真姫先生とスペシャルゲストによる、スペシャルパフォーマンスです!」

穂乃果「…スペシャルゲスト?」


457: 2015/11/01(日) 22:11:23.63 ID:jYy1weIea.net
まきちゃん「いよいよ本番ね。緊張してない?」

穂奈美「どうしようまきちゃん先生…私、緊張しちゃって頭真っ白だよお…」

まきちゃん「フフッ…大丈夫よ。今日まで沢山練習したじゃない。努力は絶対に裏切らないから、自信を持って。」

穂奈美「うん…」

まきちゃん「お客さんが待ってるわ…」

パチパチパチパチ


458: 2015/11/01(日) 22:11:57.40 ID:jYy1weIea.net
穂乃果「えっ…!?」

海未「あれは…!」

ことり「わー♡かわいい♡」

穂奈美「みみみみにゃしゃん、こんにちは、こここうさきゃほにゃみでしゅ!!」

まきちゃん「フフッ…大丈夫よ、落ち着いて。」

希「まきちゃんも穂奈美ちゃんも、綺麗でかわいいね。」

にこ「当たり前でしょ!真姫はともかく、穂奈美ちゃんはにこが見込んだ子なんだから!」

絵里「2人共、ハラショーよ!」

穂奈美「スゥー、ハァー」

穂奈美「今日は、私とまきちゃ…西木野先生とで、お歌とピアノを披露するので、楽しんで行って下さい!」

459: 2015/11/01(日) 22:12:31.09 ID:jYy1weIea.net
凛「わー!楽しみだにゃー!」

花陽「2人共、頑張ってー!」

パチパチパチパチ

穂奈美「それじゃあ…」

まきちゃん「…。」

私はピアノの前に座り、鍵盤蓋を開く。

こんなに沢山の人の前でピアノを弾くのも、歌うのも、本当に久しぶりね。

…パパとママにも届きます様に。

私は鍵盤の上に指を置いた。

これで、スタンバイ完了ね。

460: 2015/11/01(日) 22:13:23.21 ID:jYy1weIea.net
まきちゃん「…。」

穂奈美「…。」

私は穂奈美ちゃんに目で合図する。

さあ、練習の成果をみんなに見せてあげましょう?

タラララターン♪

穂奈美「たーのしーねー♪」

あっ…良い感じよ、穂奈美ちゃん。


461: 2015/11/01(日) 22:14:03.27 ID:jYy1weIea.net
穂奈美「サンパワ~♪」

まきちゃん「~♪」タン♪タタン♪タララーン♪

穂奈美「ありがとうございました!」ペコッ

まきちゃん「みんな、どうもありがとう。」ペコッ

パチパチパチパチ

穂乃果「すごいすごい!やっぱりまきちゃんの歌とピアノは最高だよ!!穂奈美ちゃんもこんなに上手になっちゃって!!」

凛「凛、感動しちゃったよ~」グスン

まきちゃん「なに泣いてるのよ…馬鹿ね。」

絵里「腕、上げたんじゃない?高校時代からすごかったけど、それ以上に今の方が魅力的よ!穂奈美ちゃんも、ハラショー!」

まきちゃん「ありがとう…」

462: 2015/11/01(日) 22:14:37.39 ID:jYy1weIea.net
穂奈美「はぁ、はぁ…えへへ。」

まきちゃん「…フフッ。」

穂奈美ちゃんと顔を合わせると、

思わず、顔が綻ぶ。

まきちゃん「本当に上手だったわ。言った通り、努力は裏切らなかったでしょ?」

穂奈美「うん!…でも、一番はやっぱりまきちゃん先生が側にいてくれたからだよ!」

穂奈美「まきちゃん先生のピアノを聴くと、すごく安心するし、まきちゃん先生の歌声は、私を引っ張って行ってくれるみたいで、自信をくれるんだもん!」

まきちゃん「穂奈美ちゃん…。」

463: 2015/11/01(日) 22:15:08.53 ID:jYy1weIea.net
にこ「ううっ…穂奈美ちゃん、成長したわね!」(ウルウル)

海未「2人とも、もっと聴かせて下さい!」

希「ウチも聴きたい!アンコールや!」

ことり「アンコール♡アンコール♡」

花陽「アンコール!アンコール!」

アンコール!アンコール!

穂奈美「えっ!?ええっ!?」

会場は大きなアンコールで溢れていた。

…ラブライブの本選を思い出すわね。

464: 2015/11/01(日) 22:15:51.28 ID:jYy1weIea.net
穂奈美「そんなっ…どうしよ~!!」

まきちゃん「…アンコール、答えましょうか?」

穂奈美「…うわああああん!!」

まきちゃん「あらあら、どうしたの?」

穂奈美「穂奈美無理だよ…。頭真っ白になっちゃったよお…。」(グスッ)

まきちゃん「あらあら…。」

穂奈美ちゃんには少し、刺激が強すぎるのかしらね。

…よし、頑張ろう。

まきちゃん「じゃあ、先生が歌うから、おばあちゃん達の所で聴いてて?」

穂奈美「…うん。」

466: 2015/11/01(日) 22:27:24.39 ID:jYy1weIea.net
穂奈美「おばあちゃ~ん!!緊張したよ~!!」

穂乃果「よしよし!穂奈美ちゃん、よく頑張ったね!!」

こんなんじゃ、将来ドームでライブなんてしたら腰抜けちゃうわよ?

これから度胸を付けるレッスンも追加ね。




まきちゃん「それじゃあ__」


私は、再び椅子に座り鍵盤に指を置く。


なんだか、込み上げてくるものがあるわね。

まきちゃん「…。」


私は鍵盤に置かれた自分の指を見る。

…照明に照らされていても、やっぱりおばあちゃんの指ね。

その上、随分前に凛達と料理をした時に包丁で切った跡まで、まだ残っている。


でも、この指で私はμ'sの曲を作り、

医者になる為に勉強をし、

沢山の患者を助けてきた。

そう、穂乃果達や、穂奈美ちゃんのことも。



おばあちゃんの指でも、大好き。

明日から、少しは休ませてあげられるかも。

今までありがとう。




…なんて感慨に耽っていると大分間を空けてしまった。

これ以上間を空けると、始めづらくなっちゃうわね。

私は指に力を入れる。

タン♪タラララーン♪タン♪

この跳ねるリズム、気持ち良くて好きなのよね。

467: 2015/11/01(日) 22:28:46.12 ID:jYy1weIea.net
まきちゃん「____♪」

全ては、私の仄かな予感から始まった。

みんなに会いたい。

もしかしたら、会えるかもしれない。

もしかしたら、あの人かもしれない。

こんな仄かな予感が、

希となり、星空を駆ける様に、

それはみんなに届いた。

469: 2015/11/01(日) 22:33:03.87 ID:jYy1weIea.net
まきちゃん「____♪」

久しぶりに見たみんなの顔。

それは花が咲く様なにっこり笑顔だったり、

絶望に沈んだ様な顔だったりして、

…もう、かつての私達には戻れないのかな、なんて考えたりもした。

でも、やっぱり私達は変わってなかった。

ずっと同じだった。

最後には、友情を確かめ合い、笑顔
になって、私達は再び繋がった。

470: 2015/11/01(日) 22:34:41.79 ID:jYy1weIea.net
まきちゃん「____♪」

私は、

忘れなかった。

いつまでも忘れなかった。

こんなにもみんなと心が通じ合い、一つになれるμ'sという場所を。

再びその場所に巡り会えた。

この喜びを私は歌う。

みんなも、感じているわよね?

この喜びを。

471: 2015/11/01(日) 22:36:16.80 ID:jYy1weIea.net
まきちゃん「___♪」

μ'sの活動を通して、

産毛の小鳥だった私達の翼も大きくなり、

やがて、μ'sという巣を巣立った。

そして、μ'sを巣立ってから、

これまでの人生の道中には

色々なことがあった。

時には、

荒れ狂う海を彷徨う様な絶望を味わったこともあった。

それでも、今ここから見える景色は、

とても暖かくて、

夢にまで描いた、私が見たかった景色が広がっている。

472: 2015/11/01(日) 22:37:23.64 ID:jYy1weIea.net
まきちゃん「___♪」

大好きなみんなと、

一緒に楽しみあって、

同じ気持ちを共有している様な、

世界中のどの絵画よりも美しい景色が広がっている。

473: 2015/11/01(日) 22:38:46.52 ID:jYy1weIea.net
もしも、


これまでに別の選択肢を選んでいたら、



もっと早く辿り着けた景色?



もっと大きな幸せを手に入れていたの?



もし、時が巻き戻せるなら、巻き戻そうか。





答えは、Noね。


____だって




まきちゃん「__いまが最高♪」


だから。



…………………
………………
……………
…………

474: 2015/11/01(日) 22:39:49.89 ID:jYy1weIea.net
「いよいよ本番だね。緊張してない?」

「どうしよう…私、緊張しちゃって頭真っ白だよお…」

「大丈夫だよ。今日まで沢山練習したもん。努力は絶対に裏切らないから、自信を持って頑張ろう?」

「うん…」

「お客さんが待ってるよ…」

パチパチパチパチ





穂奈美「みんなー!今日はここ、秋葉ドームに来てくれて本当にありがとう!」

穂奈美「私達のファーストライブ!楽しんで行ってねー!!」



___まきちゃん先生、ちゃんと見ててね?



終わり

476: 2015/11/01(日) 22:44:32.86 ID:jYy1weIea.net
以上です。
これまで支援、保守して下さった皆様、本当にありがとうございました。
誤字、設定等で不愉快にさせてしまった方もごめんなさい。

477: 2015/11/01(日) 22:44:42.79 ID:EamR5DT20.net
二ヶ月か…長いようでいて短かったな
良かったよ、乙!

478: 2015/11/01(日) 22:46:18.69 ID:QI43SZwf0.net
小津でした

479: 2015/11/01(日) 22:46:51.24 ID:QI43SZwf0.net
ミス
乙でした

481: 2015/11/01(日) 22:53:26.28 ID:451/u84A0.net
おつです!
665ってのは結局なんだったのかな?

引用元: まきちゃん(665)「今日で私も定年退職…ね…」