1: 2011/10/11(火) 13:50:00.37 ID:zxOCwlKi0
立ったら書きます。
というか書き溜め終わってますので、立ったら続々投下して参ります。

本当は約1年前に投下する予定だったのですが、
規制やら自分の事情やらなんやらで遅れてしまいました。

あの時、楽しみにしていただいた方には本当申し訳ないと思っております。

当時読んでおられた方がいらっしゃれば嬉しいのですが、
おられなくても投下いたします。

SSの内容としては昨年10月に発売された
「とある科学の超電磁砲」のOVAのOP
を元ネタにという感じです。


よければお付き合いください。
では。

5: 2011/10/11(火) 13:51:43.19 ID:zxOCwlKi0
 『幻想御手』事件も終了し、平穏を取り戻した街を歩いている少女が一人。
 放課後の時間をのんびり過ごしている。

「暑っついなー」

 そうボヤキながら手をパタパタさせ、少女は風を顔に送っていた。花のワンポイントが実に可愛らしい。
 その時、ポケットの携帯が鳴り響く。

「っと。メールだ……」

「初春からか……ふむふむ…………えっ!?」

『佐天さん!至急支部まで来てください!!緊急事態です!!』

 メールにはただそれだけ書かれていた。
とある魔術の禁書目録 29巻 (デジタル版ガンガンコミックス)
6: 2011/10/11(火) 13:53:16.51 ID:zxOCwlKi0
 同じ頃。某公園にて二人の少女がクレープを頬張っている。

「ここのクレープって美味しいけど、外で食べるのも辛い季節よね」

「そうですわね~。この暑さはたまりませんわ」

 ツインテールの少女と、その横には彼女の先輩らしい短髪の少女が座っている。
 どちらも学園都市屈指の名門校、常盤台中学の制服を着ている。
 と、その時。先の少女と同様にこちらも携帯が鳴った。

「黒子。携帯鳴ってるわよ」

「ええ。……初春からですわね……なになに…………ふむ」

「どうしたの?召集?」

「そのようですわ……ただ……」

「ただ?」

「こう書いてありますの」

『あっ!!御坂さんも一緒なら、連れて来てください!!!』

 どういうことなのか分からないが、それはここで考えても答えが出るものではない。
 なので、彼女達はとりあえずそれに従うことにした。

9: 2011/10/11(火) 13:54:56.98 ID:zxOCwlKi0
 風紀委員第一七七支部にて。

「すみません皆さん。急に呼び出しして」

「いいっていいって!!どうせ暇だったしさ」

「で、どういうわけですの?お姉さまや佐天さんまで呼びつけるとは」

「それがですね……私の口から説明するのも面倒なので、これ見てください」

 そう言うと、初春はPCを操作しメールの画面を呼び出す。
 そこに映し出されたのは一通のメールだった。

『撮影要請』
 
 タイトルにはこれだけしか書かれていない。

「なによ、これ?」

11: 2011/10/11(火) 13:57:00.63 ID:zxOCwlKi0
「なにか、すっごく怪しい匂いがするね」

「私も最初は何かの迷惑メールかと思いましたけど」

「風紀委員の支部にそんな物を送るのは少し考えにくいですわね」

「はい。それに、こういうのはプロテクトかけて来ないようにしてるんですよ」

「だから、ただの嫌がらせではないとは思うんですが……」

「まあ、なんにせよ内容を確認してみないとね」

 そのメールの内容とは――

・御坂美琴、白井黒子、佐天涙子、初春飾利の四名の日常風景を映像に収めよ。

・内容は自由。構成等もすべてそちらに任せるものとする。

・このメールと同時に送信する音楽ファイルとそれを合成、編集し、完成次第データを送ること。

・これをOPとし後はこちらでOVAを製作する。出来ばえがOVAの売り上げを左右するのでそれを忘れないように。

・以上。統轄理事会より。

 というものであった。

13: 2011/10/11(火) 13:59:35.15 ID:zxOCwlKi0
 何故自分達がOPの撮影などをしないといけないのか、それも分からないが、そもそもOVAとは一体何か。
 売り上げという言葉も気になる……一体誰に何を売るのか。彼女達の疑問は尽きない。

「こういうことなんですけど……」

「これは……うさんくさいね。だけど……」

「なんともいえない強制力を感じますの……作品的都合といいますか……」

「そうね。でもなんだか漠然としすぎてて訳が分からないわね」

 突然の事態に一体どうしたらいいのか良いのか四人は悩む。
 そこに、これまでのやり取りを横から見ていた人物が声をかける。

「なるほど、そういうことね」

「固法先輩!?聞いていらしたのですか?」

「ええ、ひととおり」

「それでそれで。なにか分かったんですか?」

「つまりね。こういうことよ……」

 そういうと、固法は四人に説明をする。

「OVAのOP撮影!?」
 
 謎のメールが届くとき、四人の少女達の撮影が始まる!!

14: 2011/10/11(火) 14:00:40.71 ID:zxOCwlKi0
「TVの外の大人の事情ってやつね……」

「なるほど、そういうことでしたら納得ですの」

「変な強制力を感じたのはそれか~」

「ですね。でも、これからどうします?」

 四人は再び考え込む。

「まあまあ、そんなにかたく考えずにさ。その添付ファイルでも開いて聞いてみたら?」

「そうですわね。初春、お願いしますの」

「はい、了解ですっ……と!!」

 慣れた手つきでパソコンを操作しファイルを実行する。
 支部内に音楽が流れ、彼女達はそれを静かに聴いた。

15: 2011/10/11(火) 14:03:04.97 ID:zxOCwlKi0
「へぇー、なかなか良い曲じゃない」

「これにアタシ達の映像を合わせればいいんですね~」

「それにしてもこの声」

「どこかで聞き覚えがあるような……」

 四人がそんな会話をしていたとき。

……

……

……

……

「くしゅん」

「あら、お風邪でもひいてしまわれましたの?」

「きっと、誰かが噂でもしているに違いありませんわ。おーほっほっ」

 どこかで三人が話していたのだが、それはまた別のお話。

16: 2011/10/11(火) 14:05:25.90 ID:zxOCwlKi0
「しかし、こんなに急に撮影しろといわれましても……」

「ですよね~……」

「じゃあ、こうしましょう!!」

「御坂さん。なにか良い案でもあるんですか?」

「今日はとりあえずここまでにして、明日までに各自撮影したい内容を考えて――」

「それで、明日撮影しない?ちょうど休みだしさ」

「そうですね、ここで悩んでても仕方ないですし」

 という事で、各自が撮りたい内容を考えることにし、この日は解散となった。

18: 2011/10/11(火) 14:07:19.58 ID:zxOCwlKi0
そして、明朝。

四人は支部に集合したものの、途方にくれていた。

「参りましたわね」

「撮影機材のこと、すっかり忘れてました……」

 そこに固法がどこからか現れる。

「やっぱり考えてなかったのね、コレ使いなさい」

 そう言いながら持っていたダンボールを開く、そこには時代遅れの8mmカメラが二台。

「うわあ、すごいですね~~、流石は固法センパイ!!」

「なんだか面白そうだったから、私も少し協力しようかなって思ってね」

「ありがとうございます先輩。でもどうしてこんなアナログな……」

「こういうものの方が味が出ていいものなのよ。それに」

「それに?」

「これなら御坂さんが電撃放ってもデジタル機器ほどの損傷はなさそうだし」

あーなるほど。さすが先輩だ。とその場の皆が考える。
御坂自身も、普段の行動からその自覚があるのか不本意ながらそう考えていた。

19: 2011/10/11(火) 14:09:16.74 ID:zxOCwlKi0
「さーて、じゃあ気を取り直して、皆撮りたいものは考えてきた?」

 御坂が声をかけると三人それぞれが頷く。

「なんだかわくわくしてきちゃいますね」

「ですわね。ではそろそろ行きましょうか」

「あっ、最初は機材の使い方の説明も兼ねて私が撮るわ」

「ありがとうございます固法先輩!!」

「用事ですぐ抜けるからそれまでに使い方覚えてね」

「はーい」

 一通り意見がまとまったところで彼女達は支部を出て行く。
 いよいよ撮影が始まる。

20: 2011/10/11(火) 14:12:07.29 ID:zxOCwlKi0
「まずは何から撮ろっか?」

「そうですねー。アタシは別に何でも良いですけど」

「白井さんは何かありますか?」

「そうですわね~」

 考えるが特に思い浮かばない。

「だったらさ、まずは軽くスナップ撮影と行きましょう!」

「あ、いいですねー」

「じゃあ、私が撮るから、皆は普段どおり会話してて」

「会話って、何をしましょうかね?」

「そう考えるとなんか、こっ恥ずかしいわね」

「音楽が入るんですから内容は気にしないで良いのではないですの?」

「そっか、さすが白井さん!!」

「ということですんで、固法先輩!もう撮っても……って!!」

「もう撮ってるわよ?」

21: 2011/10/11(火) 14:16:24.49 ID:zxOCwlKi0
 最初は『撮られている』という意識から四人は緊張していたが、だんだんと慣れ
 普段どおりの姿をカメラの前に晒すことができるようになってきた。

「んー、なかなか良い感じよ。みんな!!」

「それはそうと固法さんは入りませんの?せっかくですのに」

「私はいいのよ、気にしないで。それにコレは貴女たち四人の日常撮影なんだし」

「ありがとうございますですの。では、おねがいしますわね」
 
 などと会話している間も撮影は続いていた。
 今はビルの裏で四人が雑談中。
 初春と御坂が話している横で佐天が考えていた。

(そうだ……今日アタシ初春のパンツ確認してない……)

(初春は……隙だらけ!!!)

(よしっ!今だ!!!)

 そーーーっと近寄り、大胆かつ慎重に対象のスカートを捲る。

22: 2011/10/11(火) 14:19:35.89 ID:zxOCwlKi0
「ひゃっ!!!!!」

 ほぼ毎日捲られている割にそれを学習しない初春は今日も驚き、奇声をあげる。
 その光景に、白井も御坂も思わず苦笑い。
 しかし、初春本人よりもスカートを捲った張本人の佐天のほうが驚いていた。

「ちょっ!!!初春!!!アンタこれ?」

「いいい、さ、佐天さん!!ダメです言っちゃだめ~~」

 普段とは違う佐天の反応と、それに対する初春の対応に二人も興味を持つ。

「初春……?」

「佐天さん……一体何を見たの?」

「えっとですねーーー」

「いやあああああああああああ!!!佐天さん!!!」

「……秘密にしときます……」

23: 2011/10/11(火) 14:23:29.35 ID:zxOCwlKi0
「ねー初春!!もう怒らないでってばー」

「佐天さんがいけないんですからね!!!もう!!」

「まあまあ初春さん。怒ってばかりじゃ撮影も進まないし……ね?」

「う~~、分かりました~~」

「それに、ちょっとパンツ見えたくらいで取り乱しすぎですわ」

「…………そーだよ初春!ちょっとくらい気にしない気にしない!!」

「それは佐天さんの言えた台詞じゃありません!!」

「はあ……私も御坂さんみたいに短パンはこうかな」

「お姉さまの悪いところを見習う必要はありませんわよ、初春」

「…………」

 白井の言葉に何もいえず沈黙する御坂の横で佐天は考える。

(初春が御坂さんの真似して短パンはいたらパンツ確認できなくなっちゃう……)

(んっ……?真似?あっ、そうだ!!)

「――――っていうのはどうですか?」

24: 2011/10/11(火) 14:27:47.49 ID:zxOCwlKi0
 佐天の提案を聞き入れた彼女達はその準備をするために移動する。
 移動の途中で初春が毛躓いて転びそうになったが、その場面もばっちりフィルムに収められた。ただ本人は知らない。
 準備を颯爽と終え、再び彼女達は街へ出る。

 四人の姿だけを見る限り普段と特に変わりなく、制服姿の女の子が四人歩いているだけだ。
 だが、一つ根本的に違う部分がある。それは制服の組み合わせ。

「へー、なかなかこっちの制服も可愛いわね」

「お姉さまは何を着てもお似合いですもの」

「えっへん!!我ながらなかなか良いアイデアですよねー。って初春!念願の常盤台のお嬢様制服だよー、もっと喜びなよ!」

「ううぅ~~。ス、スカートが短くて恥ずかしいですよ……」

 恥ずかしがる初春をよそに白井は淡々と

「そういうのは慣れですわ。それにもし見えたからといって何かあるわけではないでしょうに」

「う、今日はちょっと……」

「今日はというと?何かありますの?」

「いえ……なんでも……ありません」

 そのやり取りを佐天はにやにやしながら見つめていた。

26: 2011/10/11(火) 14:33:15.62 ID:zxOCwlKi0
 そこで初春が思いつく。
 元はといえば短パンがどうのこうのという話で制服を交換する事になった。
 のであれば、御坂の短パンをどうにかして借りられないものか、と。

「あっ、そうだ。折角だし制服だけじゃなくて小物も交換しませんか?」

「小物?どういうこと、初春さん」

「私の本体――じゃなくて花飾りとか貸しますから、御坂さんは短パン貸してください!!」

 そういいながら強引に御坂に花飾りや鞄を初春は押し付ける。

「あ、ごめん無理」

 しかし初春の質問に答えたのは佐天だった。続けて言う。

「だって……こういうことだもん!!!」

 というと少し顔を赤らめながら彼女は自分のスカートをばっと捲る。
 そこにあったのは可愛らしいパンツ、ではなく。憎らしいまでにその下着をきっちりガードしている短パンだった。

「柵川の制服、スカート長いしさ今は要らないかなって思って佐天さんにもう貸しちゃった。ごめんね初春さん!」

 佐天に続き御坂が初春に話す。先ほど受け取った花飾りや鞄をちゃっかり付け、満面の笑みを浮かべている。

「……そんな…………」

「一体どうしたというのですの、初春??……はっ!!!」

27: 2011/10/11(火) 14:38:15.28 ID:zxOCwlKi0
 白井は一瞬で状況を判断し、考える。

(お姉さまが佐天さんに短パンを貸しているという事は、今のお姉さまのスカートの中身は……)
 
 じゅるりと生唾を飲み込み、いかにも不純な事を考えてますよという顔。
 そんな様子に御坂はいち早く気付き先手を打つ。

「黒子ーーー?アンタ考えてる事実行したら頃すわよ」

 顔は笑っているものの身体には青白い電気が帯電しており周囲には殺気も漂っている。

「まままま、まさか私がそんな事……おほほほ」

 焦りが隠せない。そんな表情を白井は浮かべている。汗でもかいたのか、ハンカチを取り出そうとする。
 しかし出てきたのは別のものだった


28: 2011/10/11(火) 14:41:02.59 ID:zxOCwlKi0
「これは腕章――っと。……ふむ」

 何かを思ったようで、ポケットから取り上げた手で白井はそのまま風紀委員の腕章を装着する。

「初春飾利ですの!!ジャッジメントですの!!!」

……

……

……

 沈黙が流れる。
 モノマネならもっと真面目に真似しろよ。と思うくらいの散々の出来ばえに白井の他の面々は戸惑って何も言えない。
 真似をされた当の初春を除いて……

「白井さん!!いくらなんでもそれはひどいです!!そんな中途半端なモノマネはもはや侮辱です!!」

 珍しく本気の表情を浮かべている初春はそう言いながら腕章を取り出し装着し言う。

「ジャッジメントですのっ!!!!!」

30: 2011/10/11(火) 14:45:27.02 ID:zxOCwlKi0
 再び沈黙が流れた。
 だが、一同が思っているのは先ほどとは真逆だった。

「えっと……初春さんってモノマネの才能あったんだね……」

「アタシも知らなかった……なんか上手すぎてびっくりしちゃった」

 どこかで練習でもしていたのだろうか、それほどまでの完璧な出来ばえに二人は感想を述べる。

「えっへん!!すごいでしょう!!」

 そんな三人を尻目に白井はどこか不服そうだ。

「なんか腹が立ちますの……どこかやりきれないですわ……」

「まあまあ白井さん抑えて抑えて――あっそうだ、折角だし二人並んでやってみてくださいよ!『ジャッジメントですの!!』って!!」

「そうねー私も見てみたいかもーー」

「……お姉さまが望まれるのなら……」

 口車に乗せられた白井は初春と一緒にポーズを決め、その様子もしっかり収められた。

31: 2011/10/11(火) 14:48:18.90 ID:zxOCwlKi0
「っと。制服交換してみたけど、出来るのはこれくらいかしらね?」

 あらかた考えうる限りの事を済ませた彼女達は考える。

「ですね~、もう着替えましょうか?っていうか早く着替えたいです!!」

「なによ初春ーーー、念願の常盤台の制服なのに早く脱ぎたいとはーーー?」

 わざとらしく佐天は聞く、しかし結局初春の望みは叶い、彼女達は着替えをすることに決めた。
 ここでいままで話に加わらず撮影していた固法が口を開く。

「あ、ごめん皆。私ちょっとこれから用事だから」

「そういえばそうでしたわね」

「先輩、ありがとうございました!!」

 一同は声をそろえお礼。それを聞きながら固法は去っていった。

「で。どこで着替えます?」

「そうですわね……ここからだと支部は少し遠いですし……」

「ねえねえ、それなら近いしうちの寮行かない?私撮りたいものもあるし」

 そうして四人は常盤台女子寮へ向かい歩いていった。

32: 2011/10/11(火) 14:52:50.01 ID:zxOCwlKi0
「ふう。やっと着替え終わりました」

「短いお嬢様気分だったねー初春!!」

 やはりわざとらしく話しかける佐天の言葉を聞き流しながら初春は

「ところで御坂さんが撮りたいものって何なんですか?」と尋ねる。

 しかし返事は無かった。どうやら何か探し物をしていて気付いていないらしい。

「お姉さま……何をしてらっしゃいますの?」

「んー……えっとねーー……あっ!あったあった、これよこれ!!」

 そういいながら御坂が取り出したものは一枚のパネルだった。そこには何か書かれている。
 『とある科学の超電磁砲』と、シンプルにただそれだけが。

「うわー、なんか本格的なレタリングですね」

「昨晩遅くまで起きていらしたかと思えば……素晴らしい!!流石はお姉さまですわ!!」

「御坂さんの手作りなんですか~?」

「う、うん。まあね」

 三人にほめられ照れながら御坂は説明をする。

「OP撮影って聞いたからさ、タイトルロゴも要るかなって思って」

「あとで合成してもいいかもって思ったけど、折角撮影するんだからこういうのもアリかな……とおもうんだけど……」

33: 2011/10/11(火) 14:57:51.41 ID:zxOCwlKi0
「いいですわね、では私が撮影いたしますのでお姉さまはそれを持っていて下さいな」

 白井の行動は素早かった。
 何しろ大好きなお姉さまの勇姿をその手で記録に残す権利を得られるのだから。

「え、でも黒子。ただこのパネル撮るだけなんだからそんなに気合入れなくても――」

 白井は聞いていない。そしてその手の中のカメラが写すものはパネルだけでなく御坂もしっかり入っている。

(ふへへへ、お姉さまを私の視界に独り占めですの……じゅる)

 白井がそんなことを思っていることに半分気付きながらも御坂は考える。
 せっかく黒子が撮影してくれてるんだし、何か被写体として出来ないかなと。 
 そんな彼女の目に付いたのは佐天だった。

「ねえねえ佐天さん、こっちこっち!折角だから一緒に映ろうよ」

「あ、はいはいー」
 
 軽い返事をしながら彼女は近づく。

「で。なにします?ただ棒立ちしてるだけじゃ面白くないですよね」

「うーん……そうねー……」

 少し考えたが御坂は思いつかなかった。その横で佐天が閃いた。

「じゃあ、初春のスカート捲って視聴者サービスってことでどうでしょう?」

「さ、佐天さん!!!!」

34: 2011/10/11(火) 15:02:47.28 ID:zxOCwlKi0
 そんな二人のやり取りを苦笑いして見ながら、御坂は初春も呼び寄せる。
 佐天にスカートを捲られないよう警戒し、少しもじもじしている初春。
 それを当の佐天は笑いながら

「もう、初春ったら本気にしてーー。冗談に決まってるでしょ」

「それは佐天さんが言える台詞じゃ有りません!!!」

「あはは……それでどうしよっか?」

「うーん……あっ!!さっきタイトルで『超電磁砲』って撮りましたよね」

「それがどうかしたの?初春」

「それでちょっと思いついたんですけど、皆で御坂さんの『超電磁砲』を撃つ真似をするってのはどうですか?」

 その言葉に場にいた一同がハッとする。

「なかなか良い事考えるね初春!!御坂さんはどう思いますか?」

「うん!!なかなか良いんじゃない!!面白そうね!!」

「黒子!アンタも入りなさいよ。カメラ固定して、四人でやるわよ」

「了解ですの!!」

36: 2011/10/11(火) 15:06:20.60 ID:zxOCwlKi0
「こういう感じで持ってね――うん、そんな感じ。それでね――――」


 御坂が簡単にポーズの説明をしている。

 依るところは『超電磁砲』のレクチャーをして準備完了。

 

 御坂の説明中、片目で狙いを定める。というものがあったので一同それに習った。

 四人が一列に並び、タイミングを合わせて、放つ。

 しかし、放った後の指導は特に無くかったため若干一名、その目を閉じてしまっていたが誰も気付かなかった。

37: 2011/10/11(火) 15:09:16.31 ID:zxOCwlKi0
「さてさて。次は何撮ります?」

「一応一人ずつ何か考えてきてるわよね?私のは今やったから――」

「じゃあ次は私たち三人の誰かの案ですわね……って初春なにやってますの?」
 三人が話しているのを尻目に初春は自分の鞄をごそごそして何が探っている。

「えっとですね……これが私の案なんですけど!!!じゃん!!」

 効果音と共に取り出したのは彼女自身が普段から着けている花飾りだった。
 今もその頭につけているはずなのになぜ鞄に入っているのか皆疑問に思う。

「まさか初春……アンタ……」

「はい!!そのまさかです!!!私の本t……じゃなくて、これ皆でつけてみませんか?」

「……お断りですの……」白井は率直な感想を簡単に述べた。

「うっ!!白井さん、酷いです……」

 そう言い、うなだれてしまった初春を見ながら御坂がフォローする。

「まあまあ、さっき私も着けたんだし、黒子もつけてみたら?案外似合うかもよ」

「……お姉さまがそう申されるのなら……」

「じゃあ白井さん早速!!!」

 結局、初春のごり押しで彼女達は花飾りを装着し、その様子を収めた。
 似合う似合わないは別として、可愛らしくはにかむその姿はとても絵になっていた。

39: 2011/10/11(火) 15:15:18.75 ID:zxOCwlKi0
「さーて、次はどうしよっか?」寮を後にし歩きながら御坂が言う。

「初春の案は終わりましたから……次は佐天さんのにしましょうか」

 そんな白井の言葉に佐天は答える。

「うーん……アタシのはですねーー。って、ちなみに白井さんはどんなの考えてきたんですか?」

「どうせ『御坂さんとのツーショット』とかですよね?」
 それに答えたのは初春だった。
 思考を読み取られていた事と、それを半分馬鹿にされた事に腹を立てた白井は、初春の身体を激しく揺さぶる。

「ふえええ、す、すみません~~」

「こら!黒子いい加減にしなさい!!」

 御坂は叱責とともに軽く電撃を飛ばす。

「ツーショットくらいなら撮ってあげるから大人しくしなさい!」

 普段の御坂なら考えられないような台詞が飛ぶ。
 こんなイベントはあんまりないからたまには白井の希望もかなえてあげよう。そう御坂は考え言っていた。
 しかし白井はそれを曲解する。
 『ツーショットOK』→『二人だけの特別な時間を共有しよう』→『愛してる』と。
 だから

「お・ね・え・さ・ま~~!!!」

 そう言いながら抱きついていくのだった。
 次の瞬間に先ほどよりも強い電撃が御坂の身体から放たれたのは言うまでも無い。

41: 2011/10/11(火) 15:17:24.18 ID:zxOCwlKi0
「じゃあ白井さん。どこで撮りますか?」

「別にここで良いわよね?黒子」

「お姉さま……こんな殺風景な場所で撮るのは嫌ですの」

「そそ、そうですよ御坂さん……さすがに――」

 言葉を続けようとしたところで佐天のお腹が鳴った。

「きゃっ」

 頬を染め恥ずかしそうにしている彼女を見て白井が提案する。

「昼食ついでに、いつもの場所で撮影しません?」

 そうして彼女達はいつものファミリーレストランへ足を運ぶ。

44: 2011/10/11(火) 15:21:22.02 ID:zxOCwlKi0
「ふう、食べた食べたーー。お腹いっぱいだよー」

「もう、佐天さん行儀悪いですよ!!」

「そういう初春も。口の周りが汚れていますわよ」

「ふふ。二人とも、よっぽどお腹すいてたのね」

 食後の談笑をする四人。そこへジュースが運ばれた。

「ん?」

 四人いるのに運ばれたのは一つ。白井以外の三人は不思議に思う。

45: 2011/10/11(火) 15:23:02.23 ID:zxOCwlKi0
「これは撮影用ですの。ささ二人とも私とお姉さまを撮ってくださいな」

「そしてお姉さまはこれを飲んでくださいまし」

 目の前にあるのは白井が差し出すジュース。何か入っていないだろうかと御坂は警戒する。
 だが、運ばれたばかりの商品だ。白井が何かした様子も無く、御坂はストローを開け口をつける。
 彼女は飲みながら考えていた。

(私がジュース飲んでるところを見つめるだけだなんて、黒子も殊勝になったものね)

 その矢先の出来事だった。白井がつぶやく。

「ほら、お姉さま。カメラにも視線を向けてくださいまし」

 その言葉に従い御坂が顔を向けた瞬間。
 目にも留まらぬ速さで白井がストローを取り出しジュースに口をつける。
 これこそが白井が撮ろうとしていたシーン。

 『お姉さまと恋人飲み』達成の瞬間だった。

46: 2011/10/11(火) 15:26:13.65 ID:zxOCwlKi0
「まったく。アンタってやつは油断も隙も無いんだから……」

 店での撮影を終え御坂がぶつぶつ言っている。
 今日だけということでさっきのシーンは了承したが、そのことで白井が図に乗らないか不安なようだ。
 その横で「次は佐天さんですね。何撮りたいんですか?」初春が聞いていた。

「うーん、アタシはね――」構想を簡単に説明する。

「なるほど、決めポーズというわけですわね」

「でもなんかさっきので半分満足しちゃったんですよ、『超電磁砲』撃ったところで」

「たしかにそんな感じはしますね~」

「まあでもいいじゃない!!せっかく佐天さんが考えてきたんだし、やりましょうよ!!」

「そうですわね。佐天さん、場所は決めていますの?」

「ええ、一応。じゃあいきますかー」

47: 2011/10/11(火) 15:30:04.97 ID:zxOCwlKi0
 佐天につれられ三人は少し歩いた。
 
「ここなんですけど……」

「特に何かの場所でもないですわよね……」

「何か思い入れでもあるの?佐天さん?」

 四人が着いたのは何の変哲も無い場所だった。
 あるのはレンガ造りの建物と少し長めの階段くらい、他に変わったものは無い。

「えっと……じつはここ……『幻想御手』を使おうって決めちゃった、ちょっと曰くつきのとこなんです……」

 少し空気が重くなる。
 例の事件からほとんど時間が経っておらず各々思うところがあるからだ。

48: 2011/10/11(火) 15:32:58.15 ID:zxOCwlKi0
 そんな雰囲気の中、初春が口を開く。

「どうしてそんな場所で撮影しようと思うんですか?あんまり良い思い出がないと思うんですけど」

 そんな彼女の言葉に佐天は一瞬目をそらし、何かを考えてから再び言った。

「……うん。だから――」

「良い思い出で上書きしようかなって思ってるんです」

 さっきまでの重い空気を吹き飛ばすような、いつもどおりの明るさで佐天は話す。

「それなら納得だわ!!今度は良い思い出にしなきゃね」
 
 その明るさに答えるように御坂も笑顔で返し

「そうですわ。じゃあ早速撮影と行きましょう!」それに白井も続いた。

 御坂と白井が準備を進める中、初春は佐天の事を少し見つめていた。
 佐天がそれに気付き二人の目が合う。数秒お互いの事を見つめた後、何も言わず笑って二人も準備を始めた。
 言葉が無くても通じ合える。それが親友というものだ。彼女達の姿はまさにそのものだった。

 撮影が始まる。
 そして、この場所は新たな思い出の場所となった。

50: 2011/10/11(火) 15:37:57.18 ID:zxOCwlKi0
「さてと。これで一応みんなの案は全部撮れたわね」

「そうですね~、でもまだ昼過ぎですよ、どうしましょう?」

「ですわね、まだまだ時間がありますわね……」

「それじゃあそれじゃあ、ぶらぶらしながら適当に思いついたものでも撮りませんか?」

「いいわね。じゃあそうしましょう」

 こうして四人は当ても無く歩き出す。

51: 2011/10/11(火) 15:44:35.97 ID:zxOCwlKi0
 話しながらぶらぶら歩き、たどり着いたのは、とあるビルの合い間。

「ここなんてどうかな?」

「ただのビル街ですけど何か思いつきました?御坂さん?」

 見渡す限りビルが見える、何の変哲も無い町並み。

「そうよね、普段の視点で見たらそうだと思うわ、でもね――」

 一息置いてから御坂はビルの間に有る、とあるものを指差しながら話す。

「この風車って、いわば学園都市のシンボルみたいなものよね。これを撮らない手は無いと思うのよ」

「あっ!!」

 そういわれて三人は気付く。自分達がいかにこの街に慣れているのかということに。
 学園都市とその外では技術が全く違う。それを電力面でこの街を支えているのがこの風車なのだ。

「良いアイデアですね、御坂さん!!」

「本当ですの!!流石はお姉さま!!」

「白井さんには真似できませんね!!」

 撮影を始めて風車を見上げてみると、その大きさに彼女達は改めて驚く。
 そして、学園都市に初めて来たときも同じ事を思っていたなと、
 その時のことをそれぞれ思い出していた。

52: 2011/10/11(火) 15:48:00.39 ID:zxOCwlKi0
 風車の撮影後。

(んーーー、暖かくて気持ち良いなー。お腹もいっぱいだし)

 そう考えながらベンチで少し休んでいた佐天はうとうとしていた。
 横には知らぬ間に初春が座っていて、寄り添ってきている。

(む、初春いつの間に…………うう、眠い……)

(……さ、撮影しなきゃ……)

(でも……さすがにこの陽気に、この眠気は……)

(うう…………寝ちゃ……だ……め……)

(……)

(…………)

(………………)

 そんな二人の様子を白井のカメラが捉えていたことを二人は知らない。
 そんな白井さえも御坂に撮られていたが、白井は気付かない。

 撮影は二人が起きるまで秘密裏に進められた。

53: 2011/10/11(火) 15:54:24.26 ID:zxOCwlKi0
 ふいに白井の携帯が鳴る。どうやらメール着信のようだ。

「えっと……ふむふむ……」

「どうしました、白井さん?」

「固法先輩からですの。用事が終わったからもう一度手伝いに来るとの事ですわ」

「先輩今どこにいるって?」

「それがここからは少し離れているようでして……」

「じゃあ、先輩のところに行きながら撮影しましょうよ!!」

「そうですわね、行きましょうか」
 
 再び四人は歩き出す。

54: 2011/10/11(火) 15:56:44.50 ID:zxOCwlKi0
 途中。御坂がふと足を止めた。

「どうしました、御坂さん?」

 佐天が呼びかけるが返事が無い。

「お姉さま?」

 白井も呼びかける。しかしやはり返事が無い。
 当の御坂はというと、ある一点を見つめ何か悩んでいるようだ。
 
 その視線の先にあるものを見て三人は一瞬で理解した。
 そこにあったのは……
 いや。
 あったのではなく、「居た」の方が正しい。
 
 そこに居たのはカエルの着ぐるみだった。

55: 2011/10/11(火) 16:01:13.69 ID:zxOCwlKi0
 初春と佐天はお互いの顔を見合わせ、そして着ぐるみに向かって走り出した。
 その心中にあるのは『御坂に素直になってもらおう』という共通の思い。
 その思いのもと、二人は気ぐるみの手をとって白井と御坂を呼ぶ。

「御坂さんと白井さんも一緒にどうですかーー?」

「たのしいですよ~~!!」
 
 それを見て白井も彼女たちと同じ思いを持った。
 普段なら御坂の子どもっぽい趣味を嘆んでいる白井だが、今日みたいな特別なイベントの日くらい協力しよう。そう思った。
 それに、御坂は白井の撮影したかったものを文句を言いながらも叶えてくれた、その恩も返したい。

「お姉さま。私達も行きません?たまにはこういうのもいいと思いますわ」

「え、でも……」

「…………あ、私撮影してるから黒子行って来なよ?撮ってあげるからさ」

 ここまで三人が気を遣っても、御坂は素直になれなかった。
 本当は誰よりも気ぐるみのもとに駆け寄りたい。しかしそれを恥ずかしさが邪魔をした。

「お姉さま……」

「いいからいいから、私撮影しないといけな――」

「私が撮るから御坂さんも行ってきなさい」

 御坂の言葉を遮ったのは固法だった。
 彼女は白井に目配せをしそれに気付いた白井が強引に御坂を連れて行った。
 着ぐるみとの撮影の最中、御坂は恥ずかしそうにしながらも、ずっと満面の笑みを浮かべていた。

56: 2011/10/11(火) 16:04:26.95 ID:zxOCwlKi0
「だいたい撮りたいものは撮れた?」

 再度合流した固法が撮影の状況について尋ねる。

「ええ。固法さんに教えていただいたお陰で捗りましたわ」

「ならよかったわ、後は他に何か撮るもの無い?」
 
 その問いに四人は顔を見合わせ考える。

「…………」

 考えても特に何も案が出ず時間が過ぎる。
 気がつくと、日が傾いていた。

「わあ、今日は綺麗な夕焼けですね」

「本当ーーきれいだねーー」
 
 一同は暫し夕焼けに目を奪われる。そして――

「じゃあ、最後はこの夕日をバックにスナップと行きましょう」
 
 最後の撮影が決まった。
 夕日を背に話す四人の姿や、女の子らしくクレープを食べ談笑する姿がフィルムの最後に収められた。

57: 2011/10/11(火) 16:07:54.61 ID:zxOCwlKi0
 撮影が全て終わった数日後。

 『誰かが見てる』事件が発生した。

 それが解決するのとほぼ同時に、撮影フィルムの編集が終わり、彼女達はそれを理事会へ提出した。

 そしてまた数日経って――

58: 2011/10/11(火) 16:11:31.95 ID:zxOCwlKi0
 理事会から一七七支部にあるものが届く。
 届いたものは『とある科学の超電磁砲 OVA』
 それを見終わって四人は話す。

「なるほど。『誰かが見てる』だからこういうことをさせたわけですね」

「『誰かが見てる』様なOPを作ることによって、本編と掛けているんですわね」

「でもさあ。なんか妙じゃない?なんで理事会はこの事件が起こることが分かったんだろう?」

「それに、この本編の映像っていつ撮られたのかな……ってか私裸撮られてるし!!!!」

「あーー!!それアタシもですって!!!」

「でもなんか。深く考えたらいろいろ負けな気がします」

「そうね。なんだか始めに感じた強制力が今になって違和感となり、変にぶり返してきてるわ……」

 その違和感を感じながらも、四人は思っていた。

「また、こんな風に私達が活躍できる機会があったらいいな!!!」






とある科学の超電磁砲 SS
『御坂・白井・初春・佐天「OVAのOP撮影!?」』
終わり。

59: 2011/10/11(火) 16:12:27.80 ID:onfW1AzBO
黒子と結婚したい

61: 2011/10/11(火) 16:25:11.36 ID:iTDwUGdI0
乙!

引用元: 御坂・白井・初春・佐天「OVAのOP撮影!?」