155: 2011/12/10(土) 15:28:07.65 ID:TQx13Olg0
書き始めてたのをこっそり貼ってく


エルメス「ねえキノ」

キノ「なんだいエルメス」

エルメス「ふと思ったんだけどさ、いつも同じ格好で飽きない?」

キノ「どうしたんだい藪から棒に」

エルメス「ほら、この前の国の人達がすごい衣装持ちだったじゃない」

キノ「ああ、一時間に一回は着替えてたよね」

エルメス「まあ、ほとんどみんな駕籠にも試乗って感じだったけどね」

キノ「……『馬子にも衣装』?」

エルメス「そうそれ。でさ、キノもあそこまでは行かなくても、たまには違う服着たくならないのかなー、って。
キノの体型なら結構色々似合いそうだし」

キノ「んー……ボクはこれでいいよ。エルメスに乗るのも、服に色々仕込むのも、この服が一番都合がいいし――
旅人には、これが一番だと思ってるよ」

エルメス「ふーん」
キノの旅 the Beautiful World (電撃文庫)

160: 2011/12/10(土) 15:36:52.34 ID:TQx13Olg0
キノ「エルメスだって、その方がオシャレだからって車体に絵とか描かれたくないでしょ?」

エルメス「うげ、それはたしかに嫌かも――あ、キノ! 見えてきたよ」

キノ「ほんとだ、この分だと予定よりだいぶ早く着けそうだね」

エルメス「前の国の人達が着てた服は、殆どあそこで作られてるって話だったけど」

キノ「らしいね。『本場のファッションを堪能できるなんて』って羨ましがられた」

エルメス「まあ、アレだけいろんな服を作ってる国なんだから、みんなさぞかしお洒落さんなんだろうね」



制服の国――Uni-Clothes――

167: 2011/12/10(土) 15:45:21.39 ID:TQx13Olg0
【一日目】
城門
キノ「ボクはキノ、こちらはエルメス。旅人です。三日間の滞在を希望します」

エルメス「よろしくー」

入国管理官「キノさん、エルメスさん、ようこそ我が国へ! 勿論歓迎しますよ!
いやー、地味な国だからでしょうか、買い付けに来る人は多いんですが、純粋な観光客はなかなか来てくれないんですよ」

キノ「そうなんですか……」

管理官「ご存知かもしれませんが、我が国は服飾産業が盛んでして。当たり前ですが、私が今着ているのも自国製品です! 
自画自賛になりますが、中々いい品でしょう?」

エルメス「そーだね、似合ってるよおっちゃん(ねえキノ、この人の格好)」

キノ「(ああ、エルメス。なんというか、これは……)」

キノ・エルメス「(普通だ……)」

170: 2011/12/10(土) 15:54:21.30 ID:TQx13Olg0
国中心部
案内人「ようこそ、キノさんエルメスさん! 入国管理局から話は伺っております。
もしよろしければこの国の案内を致したいのですが、いかがでしょうか?」

キノ「お心遣いありがとうございます。是非おねがいします」

エルメス「うん、聞きたいことも結構あるし」

案内人「はい、ではその前に……この国をご覧になって、どんな印象をお持ちになったかお聞きしたいのですが」

キノ「驚きました……同じ服の人が多くて。性別や年代で少しずつ違いはありましたが」

案内人「ほう。さすが旅人さん、目の付け所がいいですね!」

エルメス「服自体は割と普通ぽいけどねー。おんなじ服の集団に一斉に手を振られたときは、何事かと思ったよ。
あの服流行ってるの?」

案内人「ほほう! いい質問ですねぇ! 今からその答えをお見せしましょう。どうぞ、こちらへ」

173: 2011/12/10(土) 16:01:36.30 ID:TQx13Olg0
キノ「ここは……工場ですか?」

案内人「はい! 国内向け衣料の生産工場です。国外からいらっしゃる方は、多分キノさんたちが初めてではないでしょうか」

エルメス「へー。ずいぶん立派な施設だね」

案内人「こちらでは主に中年男性向けの製品を生産していますからね。需要があるんですよ、働く男の戦闘服ってやつは」

キノ「戦闘服……?」

エルメス「なになに、アーマーとかついてるの!? それとも全身タイツ?」

案内人「あはは、見ていただければ分かりますよ。さあ、なかにどうぞ」

175: 2011/12/10(土) 16:13:11.31 ID:TQx13Olg0
工場内
キノ「案内人さん、これは……」

エルメス「おっちゃんが着てるのと同じ服がバンバン作られてるね。あ、管理官のおっちゃんも同じ服だったかな?」

案内人「ええ、このラインでは『40代男性・デスクワークB』を造っています。見る人に好印象を与えることに重きをおいたタイプですね」

エルメス「でも、働いている人たちは違う服だね」

案内人「ああ、従業員が着ているのは『20代男性・作業A』あたりですね。動きやすさと頑丈さがポイントです」

工場長「やあ、この方たちが例の旅人さんかね」

案内人「や、これは工場長。わざわざすみません」

キノ「はじめまして。見学させてもらってますが、すごい工場ですね」

エルメス「いろんな国を見てきたけど、ここまでのはそうそうないよ」

176: 2011/12/10(土) 16:22:07.92 ID:TQx13Olg0
工場長「はっはっは。お世辞でも嬉しいよ……ワシも、昔は彼らと同じ『20代男性・作業A』服を着て、ああして働いていた。
それが『30代男性・作業B』になり、『40代男性・半作業A』になり――」

キノ「はんさぎょう?」

案内人「作業タイプの動きやすさとデスクワークタイプの堅さを併せ持った型です。こういう工場などで立場の高い人が着用します」

工場長「そしていまでは『60代男性・半作業C』……いや、若い頃には働くのが嫌になったこともあった。
だが、『いつかあの服を着てやる』という思いで、それに耐えてきたんだ」

エルメス「ふむふむ」

工場長「ようやくこの『60代男性・半作業C』に袖を通せた時は、嬉しかったよ。
これを着られるということは、それに見合うだけの人間に慣れたってことの証みたいなものだからね」

キノ「なるほど」

従業員「工場長ー! ちょっと来てください!」

工場長「すぐ行く待ってろ!! ――旅人さん、すまないね。そろそろ戻らにゃならん」

キノ「わかりました。お話、ありがとうございました」

エルメス「面白かったよ」

キノ「あ、最後にひとつだけ……さっきから思ってたんですが、その服、すごくよく似合ってますね」

工場長「! ……ありがとう。よい旅を!」

179: 2011/12/10(土) 16:35:56.66 ID:TQx13Olg0
ホテル
案内人「では、滞在期間はこちらをご利用ください」

エルメス「わざわざどうもね。じゃ、あしたもよろしくー」

キノ「……はあ、思ってたのとだいぶ違う感じだったね、ここ」

エルメス「いつぞやのクローンの国もすごかったけど、みんな服だけ同じというのも、また違ったテンペストがあるね」

キノ「……『インパクト』?」

エルメス「そうそ――ん? 誰か来たみたい」

客室係「お休みのところ失礼します。案内人の方から、キノさんにこれをお渡しするようにと」

キノ「これは……」

エルメス「服だね」

客室係「『10代女子・通常B』です。可愛いですよねー。わたしの出身地区はAタイプ指定だったから、うらやましいです。
    サイズは目算で選んでますので、もし不都合があったらお取り替えしますね」

キノ「つまり、これを着ろってことですか? ……まいったな」

182: 2011/12/10(土) 16:46:14.66 ID:TQx13Olg0
エルメス「いーじゃん着ちゃいなよキノ。イメチェンだよイメチェン」

キノ「うーん、でもなあ……」

客室係「あの、めったにないお客様ですから、記念に差し上げて着て頂くようお頼みして欲しいと……ご不要でしたら、こちらで回収s」

キノ「有り難くいただきます」

エルメス「(びんぼーしょー――いてっ。はたくことないじゃん)」

キノ「あ、でも、この服スカートですよね。これでエルメスに乗るのはちょっと大変かな」

客室係「ご心配には及びません! 今ならこちら『10代女子・運動B』もおつけしてます! 
エルメスさんにお乗りになる際には、通常服の下にこちらを履けば、今の服と同じ感覚で大丈夫ですよ」

キノ「それはわざわざどうも……それでは、滞在中はこちらの服を着用させてもらいますね」

客室係「はいっ、ありがとうございます! 明日、わたしにも見せて下さいね!」

185: 2011/12/10(土) 17:04:05.96 ID:TQx13Olg0
【二日目】
ホテル
キノ「エルメス! 朝だよ、起きて」

エルメス「んー、まだもう少――キノ! その格好は……」

キノ「どうかな。少しスカートの丈が短い気がするんだけど。あ、それよりこの靴下少し長すぎじゃない?」

エルメス「4:2:1.5か……」

キノ「エルメス?」

エルメス「いや、いいんじゃない? そういうデザインになってるんだよ、きっと」

キノ「そう? ならいいんだけど……あ、ついでにもう運動着の方も履いとこう」

エルメス「えー!! 走るときだけでいいじゃん!」

キノ「なんだよエルメス、別にいいだろ……よいしょ」

エルメス「……」

キノ「うん、伸縮性があって動きやすそうだ……エルメス? どうかした?」

エルメス「キノってさあ……ほんっっとにセンスの欠片もないよね」

キノ「なにが?」

エルメス「……もーいい。行こ。また案内人のおっちゃんと待ち合わせしてるんでしょ」

189: 2011/12/10(土) 17:22:33.66 ID:TQx13Olg0
案内人「おはようございます、キノさんエルメスさん。おや、昨日お渡しした服、着てくださったんですね!」

キノ「はい、なにぶん着慣れないもので、これでいいのかどうか……」

エルメス「いいわけないよねー! おっちゃんも一言言ってやってよ」

案内人「いえ、むしろ馴染んでますよ。
寒い時期になると、今のキノさんみたいに通常服と運動服の重ね着をする女生徒は少なくありません」

エルメス「ありゃ、そうなの?」

案内人「まあ、どんなに寒くても足を晒したままの生徒も多いんですが……今からご案内する場所などでは、特に」

キノ「今から行く場所、とは?」

案内人「国立服飾専門学校――この国の未来を支える若者たちが通う学校です」

194: 2011/12/10(土) 17:41:26.75 ID:TQx13Olg0
国立服飾専門学校
案内人「では、あとでまた来ます――皆さん、よろしく頼みますよ」

生徒たち「はい! ――キノさん、エルメスさん、ようこそわが校へ!!」

キノ「はじめまして。歓迎、感謝します」

エルメス「どうもー。あ、その服」

女生徒「『10代女子・通常B』です。いまキノさんが着てるのと一緒ですね」

男生徒「俺たちのは『10代男子・通常B』っす。個人的には、男女ともに通常服の中では一番イケてると思うっす」

キノ「確かに、皆さん似合ってますね。それに、なんというか、こう……」

エルメス「オシャレだね、着こなしが」

女生徒「本当ですか? 最近、上着の袖をまくるのがマイブームなんです! 手首だけは細いから、見せていこうと」

男生徒「俺、わざとワンサイズ大きいズボンにしたんス。ちょっと崩れた感じが好みなんで」

「私はあえてスカート長めなんです。輸入物の雑誌にそういう服が載ってて、可愛かったから」

「僕はボタンを付け替えたんだ! 先生はいい顔しないけど、この生地には金ボタンのほうが絶対合うと思うんだ!」

195: 2011/12/10(土) 17:47:55.04 ID:TQx13Olg0
キノ「さすが服飾の学校の生徒さんですね。みんなこだわりがあるんですか」

エルメス「ほんとセンスいいよねー。キノも少しは見習ったらどうだい」

女生徒「そんなことありませんよ! キノさんが今やってる、通常服の上に運動服の上着を着るのとか、すごく可愛いです!」

キノ「そうですか? 通常服だけだと寒かったので着ただけなんですが」

エルメス「下のズボンは脱いどいて正解だったと思うなー……いてっ」

キノ「ところで、みなさんはここでどのようなことを学ばれてるんですか?」

女生徒「服飾に関わることは何でも。ですが今は主に国外向け衣料関連ですね……みんな、アレ出して!」

男生徒「よっしゃ! ――旅人さん、見てください。これが俺達の作ってる服っす!」

キノ「わあ……っ」

エルメス「すごいね、どれもこれも。ファッションショーみたいで……これ、全部手作り?」

202: 2011/12/10(土) 18:18:03.08 ID:TQx13Olg0
女生徒「はい! デザインも生地選びも縫製も、全部自分たちでやってます。
基本的なことは教わりましたが、あとはみんなそれぞれの趣味で」

男生徒「卒業したら、家業を継ぐ奴もいれば会社に雇われる奴も居るっす。俺は早く自分の店を持ちたいんスけど」

キノ「そうなんですか。でも、みなさん自分で作った服は着ないんですか?」

女生徒「え? なんでですか? 私達が着るぶんには、制服があるじゃないですか」

エルメス「だって、人に作ってあげるばっかりだと、つまらなくない? 
それに、クラスメイトの服見て『この服着てみたい』って思ったりしないの?」

男生徒「ああ、それは――あ、先生」

校長「続きは私からお話ししましょう。さあ、皆さん授業に戻って」

生徒たち「はーい」

206: 2011/12/10(土) 18:31:35.31 ID:TQx13Olg0
校長室
校長「さて、どこから説明しましょうか」

キノ「まず教えてください。どうしてこの国ではみんな、似たような立場ごとに同じ服を着ているのですか?」

エルメス「外向けにはあんなにいろんな服を作ってるのに。勿体無くない?」

校長「それは、我が国が『制服』を制定しているからです」

キノ「せいふく、ですか……?」

校長「かつては、我が国民も先ほど生徒たちがお見せしたような様々な服を着ていました。
しかし、多種多様な服が出まわることで、問題が起きるようになったのです」

エルメス「例えば?」

校長「すべて書物からの情報ですが……衣服の良し悪しで全てを計ろうとする風潮が生じたようですね。
質の悪い服を着ている人への差別の横行、ならびに身の丈に合わない高価な服を求める人達による借金問題
――今では『着倒れ』と呼ばれています――何より、『何を着るべきか』の決定のために多大な時間と労力が必要になった、と」

キノ「なるほど」

校長「当時の我が国のトップたちは、事態を重く見ました。長い長い協議の結果、彼らはひとつの決断を下します。それが――」

キノ「『制服』の制定、だったんですね」

校長「はい、みんな同じ服になってしまえば、諸々の問題が解決されると気づいたのですね。
一部では『選択の自由を奪う気か』と反対運動も起こったようですが、国民の大半はすんなり受け入れたそうです。
いい加減、着るもので悩む毎日にうんざりしていたんでしょうね」

210: 2011/12/10(土) 18:49:42.44 ID:TQx13Olg0
エルメス「へー、そんな事で悩む人達もいるんだね」

校長「国内で選りすぐりのデザイナーたちが集められ、制服制定委員会が組織されました。
話しあうべき事柄は山ほどありました。
どんな体型の人にも似合い飽きのこない服とはどんなものか、年齢に応じて着る者をより良く見せる服とは何か、
着用する場面ごとに服に求められるものは何か――」

キノ「大変だったでしょうね」

校長「だと思います。ですが、私などは、その時代に生きて、あの協議に参加できたらどんなによかったかとも思います
――服飾に携わる者にとって、あれほどやりがいのある仕事はなかったでしょうから」

エルメス「まー、国の人全員が自分たちの考えた服を着てくれるわけだもんねー」

校長「最終的には国民投票が行われ、幾つかの候補の中から、性別・世代・役割ごとの『制服』が選ばれました。
それ以来、我が国の人間は皆『制服』を着用するようになったのです」

キノ「そうだったんですか……ずいぶん歴史があるんですね」

校長「勿論、昔の姿そのままの『制服』もありますが、多くは少しずつ改良が加えられています。
時代の変化に伴う人々の体型の変化、働き方の変化……『制服』も、それについていかなければなりませんから。
今は、男女で分かれている『制服』を統一しよう、という活動が盛んですね。
今のところ実現可能性は低いですが、ここで学んでいる生徒たちが一人前になる頃には或いは、といったところでしょうか」

213: 2011/12/10(土) 19:01:08.44 ID:TQx13Olg0
キノ「なるほど。『制服』ができたからといって、服飾への関心が薄れたわけではないんですね」

エルメス「思うに、なおさら燃えてるんじゃない? さっきの学生さんたちだって、みんな色々工夫してたじゃん」

校長「そうですね。国民の大半は『制服』に誇りと愛着を持っていますが、
同時に『自分がいちばんこの服の良さを引き出せるんだ!』というような自負心も持ち合わせていますから……
国民性、というものでしょうか」

キノ「ああ、みなさんそんな感じですよね。校長先生が今着てらっしゃる『制服』にも、そのような――」

校長「よくぞ聞いてくれました!!」

キノ「え?」

エルメス「(うわ、眼の色かわった)」

校長「私の着ております『50代女性・教育C』はですね、長年デザインが変わらなかったんですが、
私も参加した3年前の改良会議で、襟の形が変更になったんですよ! 
それまでの襟には装飾品がいまいち似合わなかったんですが、
『教育者といえども場合によっては盛装の必要もある』という私の主張がついに受け入れられまして――」

キノ「は、はあ……」

エルメス「こりゃしばらく止まりそうにないや……終わったら起こして」

218: 2011/12/10(土) 19:12:57.79 ID:TQx13Olg0
ホテル前
案内人「いや、お疲れ様でした。あの校長先生のお話の長さは、私もスピーチなんかで身にしみてますよ」

エルメス「どこの国でも長話のおばちゃんっているよねー」

キノ「エルメスは寝てたろ――ですが、非常に興味深い話を聞けました」

案内人「それは何よりです。ところでキノさん、『私服祭』のお話はお聞きになりましたか?」

エルメス「師父臭い?」

キノ「いえ、うかがってませんが。何かのお祭りですか?」

案内人「ああ、また喋るだけ喋って肝心なことを言い忘れたんでしょうかあの先生は……
あのですね、明日から三日間、半年に一度のお祭りがあるんです。
お祭りの期間中はみんな『私服』、すなわち『制服』以外の格好で過ごすんですよ」

エルメス「へー、そんなのあるんだ。よかったじゃんキノ、お祭り見てから出国できそうだよ」

案内人「国の人間は『制服』を気に入っていますが、この時ばかりは自分の好みとセンスを光らせて、『私服』を選びます。
この国で働く人の半分以上が、国外向けの『私服』産業に関わっていますからね、眼が肥えてる人が多いんですよ。
私も明日からは『私服』です。ああ、今から待ち遠しい」

キノ「面白そうなお祭りですね。ボクも楽しみにしてます。それでは、また明日」

226: 2011/12/10(土) 19:48:38.95 ID:TQx13Olg0
ホテル内
エルメス「みんなどんな服着るんだろうねー」

キノ「昼間会った生徒さんたちは、やっぱり自分の作った服を着るのかな」

エルメス「だろうねー。どの服も気合入ってたし。みんながあんなだったら、
かなり見応えのあるお祭りになりそうだね」

キノ「明日見てのお楽しみ、だね。じゃ、おやすみエルメス」

エルメス「おやすみキノ」

229: 2011/12/10(土) 20:02:52.12 ID:TQx13Olg0

【三日目】
ホテル
キノ「エルメス! いつまで寝てるんだい、出発するよ!」

エルメス「痛いなー。もう少し優しく起こして――ありゃ、『制服』じゃない」

キノ「今日から『私服祭』だからね。それに、出国してから着替えるのも面倒だし」

エルメス「勿体無いなー……色々と」

キノ「何が? ちゃんと全部、もらえるものはもらってるよ?」

エルメス「なんでもない。じゃ、行こっか。早く案内人のおっちゃんの『私服』見てみたいし」

231: 2011/12/10(土) 20:11:36.02 ID:TQx13Olg0
国中心部
案内人「おはようございます、キノさんエルメスさん! 本日はどうされますか?」

キノ「そうですね。このあたりで必要なものを買い揃えたあと西ゲートに向かって、そこから出国しようかと」

案内人「かしこまりました! ゲートまでお見送りさせて頂きますね! 
途中、昨日ご覧になった服飾学校の生徒たちがパレードを行なってますので、時間があったらのぞいてあげてください」

エルメス「りょーかい。丁度見てみたいって思ってたし」

案内人「あ、ところでですねー。キノさん、エルメスさん、その、私の『私服』、どうでしょうか?
輸出売上高1位のメーカーの品、奮発して買ったんですが……」

キノ「ああ、なんというか……すごく新鮮です」

エルメス「『制服』じゃないとだいぶイメージ変わるね」

案内人「そうですか! 私としても冒険したつもりだったんですが、そう言っていただけると嬉しいです!
さあ、お店はあちらです! 衣料関連、色々と充実してますよ!」

233: 2011/12/10(土) 20:17:19.60 ID:TQx13Olg0
路上・パレード
女生徒「あ、キノさーん! エルメスさーん!」

キノ「こんにちは……皆さん、その服は」

女生徒「はい、この日のために作ったんです!」

エルメス「みんな、昨日見せてくれたのとは違うやつなんだね」

男生徒「あれは課題用っすから、また別なんス。
やっぱり、せっかくのお祭りっすから、自分らが今一番着てみたい服を、別に用意してたんス」

女生徒「こういうのが今季の最先端なんですって。やっぱり可愛いですよねー」

キノ「……そうですね。では、ボクはこれで。皆さん、これからも素敵な服を作ってくださいね」

エルメス「これから行く国で、いつかみんなの作った服が見れるかもね」

生徒たち「はい! 頑張ります! キノさんたちも、よい旅を!!」

235: 2011/12/10(土) 20:25:23.56 ID:TQx13Olg0
西ゲート外・湖のほとり
エルメス「色々と面白い国だったね」

キノ「そうだね。『制服』2セットも貰えたし。国内限定品みたいだから、近隣国では相当いい値がつくだろうね」

エルメス「やっぱり売るんだ。なかなか似合ってたのに」

キノ「そうかな? まあ、運動着の方は結構使えそうだけど、どうしてもかさばるしね。
それに、やっぱり着慣れた服が一番だよ」

エルメス「ふーん。まあ、キノがいいならいいけど……そういえばさ、さっき見たみんなの『私服』だけど」

キノ「ああ、エルメスも気づいた?」

エルメス「あれだけいればね――なんていうかさ」

キノ「うん。みんなおんなじ感じの服だったよね」

エルメス「流行りらしいけど、せっかくの『私服祭』なのに梃子も蛇口も似た色、似た形、似た雰囲気でさ」

キノ「……『猫も杓子も』?」

エルメス「そうそれ。まあ、それでもみんな結構似合ってたのは、さすがって感じだったけどねー」

キノ「みんな楽しそうだったしね。お店の人が『祭で気分がいいから』ってあんなに値引きしてくれたのには驚いたよ」

242: 2011/12/10(土) 20:32:23.66 ID:TQx13Olg0
エルメス「そういえばキノ、食料と燃料以外にもなにか買ってたね」

キノ「ん? ああ、ボタンを買ったんだよ」

エルメス「ボタン?」

キノ「シャツのボタン。この前予備の分使いきっちゃったからね。ボタン専門店なんて初めて行ったよ」

エルメス「わざわざそんなとこまで行ったの?」

キノ「すごいんだよ、色々種類あって――ほら、これ」

エルメス「どれどれ? あ、星形だ。こっちは色つきで、これは模様入りか……ちょっとした工芸品レベルだね」

キノ「店主さんがまけてくれて、いいものが買えたんだよ」

エルメス「ねえキノ、これも結構高く売れると思うけど」

キノ「いや、折角だからこれは自分で使うよ」

エルメス「珍しいね。どういう風の吹き回し?」

キノ「別に。ただ……」

エルメス「ただ?」

キノ「旅人の服にも、すこしばかりのお洒落心があってもいいかなって」

247: 2011/12/10(土) 20:42:21.69 ID:TQx13Olg0
エルメス「……」

キノ「エルメス? どうかした?」

エルメス「キノ、どこかに頭ぶつけたの? あ、お祭りの熱気でのぼせちゃったとか?」

キノ「……実はエルメスにもおみやげがあるんだ」

エルメス「え、何?――ちょ、まさかそれは」

キノ「おまけでもらったレースのリボンだよ。可愛いよね。折角だからエルメスにつけてあげよう」

エルメス「ちょ、やだよそんなフリフリ! ゴメンってばキノ、謝るからリボンなんてそんな――
え、待ってやめてフレームはダメだって、キノぉ!!……」



「制服の国」おわり

248: 2011/12/10(土) 20:43:25.93 ID:ts9Cty7Y0
乙!!

249: 2011/12/10(土) 20:43:41.94 ID:pXKEtTPP0
おつおつ!

254: 2011/12/10(土) 20:45:45.14 ID:TQx13Olg0
以上です
あとがきはこれ以上シグーのあとがきネタを潰したくないのでナシです
嘘です、何も思いつけないだけです
セーラー服のキノは可愛いですが、ブレザーのキノも見てみたいです
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました


言うほどミニスカ姿のキノが出なかったので、
誰かミニスカキノのSSかイラストか何か書いてください
ティーか師匠(昔)でもいいです

257: 2011/12/10(土) 20:48:04.44 ID:qTtP1J7I0

: キノ「ミニスカートを着用しないと入国できない国、ですか?」