48: ◆6osdZ663So 2013/07/01(月) 23:08:32.94 ID:CN8cD/wgo



モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ




  
桃華「わたくし、こう言う事ははじめてですのよ・・・・・・。」


桃華「これを・・・・・・どうすればいいんですの?」


桃華「ここを握って・・・・・・・もっと優しく?」


桃華「適当に弄ってるだけではダメですのね、難しいですわ。」


桃華「ですがやり方はわかりましたわ!次はわたくしが・・・・・・。」


桃華「そっ、そこはダメですわっ!」


桃華「あっ!ああんっ!」


PLAYER 1 WIN !!


紗南「またあたしの勝ちだね!」

桃華「今の反則ではありませんのっ!?同じところばかり攻撃して!」

紗南「甘い甘い、これがこのゲームのルールだよ。」

桃華「くっ、悔しいですわっ!次は、次こそはわたくしが勝ちますわよっ!!」



本日、櫻井桃華は何故かテレビゲームに興じていた。
 







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それは、なんでもないようなとある日のこと。


その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
 
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

 
それと同じ日に、宇宙から地球を侵略すべく異星人がやってきました。
地球を守るべくやってきた宇宙の平和を守る異星人もやってきました。

異世界から選ばれし戦士を求める使者がやってきました。
悪のカリスマが世界征服をたくらみました。
突然超能力に目覚めた人々が現れました。
未来から過去を変えるためにやってきた戦士がいました。
他にも隕石が降ってきたり、先祖から伝えられてきた業を目覚めさせた人がいたり。

それから、それから――
たくさんのヒーローと侵略者と、それに巻き込まれる人が現れました。

その日から、ヒーローと侵略者と、正義の味方と悪者と。
戦ったり、戦わなかったり、協力したり、足を引っ張ったり。

ヒーローと侵略者がたくさんいる世界が普通になりました。



「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。

・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。
・一発ネタからシリアス長編までご自由にどうぞ。


・アイドルが宇宙人や人外の設定の場合もありますが、それは作者次第。





シリーズはここからご覧ください
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズ一覧
    




49: 2013/07/01(月) 23:10:12.80 ID:CN8cD/wgo

三好紗南。

七つの大罪の悪魔ベルフェゴールに憑かれた少女。


あの日、死神ユズはベルフェゴールの魂を刈取った後、

疲労で眠る紗南の身体を安全な場所まで運び、一旦放置。

付近の住民が発見するのを待って、それを見届けると

ベルフェゴールの魂を持って魔界に帰還した。

故に彼女は三好紗南のその後を知らない。


あの後、

ここ数ヶ月の記憶が曖昧で、『悪魔に憑かれていた』と証言する少女を

「然るべき機関で療養すべき。」と言う意見のもと、財閥の病院が保護したことなど。

そして、今は『強欲』の悪魔の手元に居ることなど知るはずも無いだろう。



桃華「三好さんは、悪魔に憑かれていた頃の事覚えてますの?」

紗南「・・・・・・ほんのちょっとだけね。」


ベルフェゴールは彼女の肉体と精神を完全に支配していたはずだ。

故に、その期間の事を彼女がほんの少しでも覚えてると言う事に『強欲』の悪魔は興味を示したのだ。

それが今、三好紗南がこの屋敷に居る理由である。

50: 2013/07/01(月) 23:12:31.49 ID:CN8cD/wgo
桃華「その時の事、わたくしに教えてくださるかしら?」

紗南「本当にちょっとだけだよ。覚えてない事の方が多いから。」


三好紗南は素直に答える。

なんとなく、櫻井桃華の質問には必ず答えねばならない気がしたからだ。


紗南「えっと、なんて言えばいいのかな。」


紗南「・・・・・・近くなのにずっと遠くから、あたしじゃない”あたし”を見てる感覚があってね。」

紗南「あたしはそこに居るのにそこに居ない。そんな感じだったよ。」

紗南「丁度、画面に映るゲームの主人公を見てる感じに似てる・・・のかな?」

紗南「でもコントローラはあたしの手元には無くって、本当にただ見てるだけ。」

紗南「その頃の”あたし”は、悪魔で。悪魔の仲間が居て。死神と戦ったりして。」

紗南「まあ、ほとんど覚えてないんだけどね。」

紗南「でも、一個だけ強烈に覚えてることがあるんだ。」


紗南「すごく・・・・・・すごく『退屈』だったよ。」


紗南「あたしもだけど・・・・・・たぶん”あたし”も、ね」

51: 2013/07/01(月) 23:14:25.71 ID:CN8cD/wgo
桃華(なるほど、紗南ちゃま。)

桃華(やはりあなた、本当は全部覚えていますのね。)


この少女は全て覚えている。

そこに意思はなくとも、自分がベルフェゴールだったことを記憶している。

そして、その時にした事も、その時に感じたことも、やはり覚えている。


ただ少女の脳が、理性が、全てを思い出すことを拒否しているのだろう。

ベルフェゴールの持つ情報の負荷と毒気は、14歳の少女には重すぎる。

思い出せないのは、少女の精神の防御反応によるものだ。


桃華(思い出せないだけで、彼女の中にも記憶は確かに存在する。)

桃華(それが分かれば十分ですわ。)

桃華「ねえ、三好さん。」

紗南「ん、何?」


桃華「その記憶、わたくしが貰ってもよろしくて?」

『強欲』の悪魔は怪しく微笑む。


紗南「うん・・・・・・いいよ。あげる。」


『櫻井桃華の言う事には逆らえない』

答える少女の目には、光はなかった。

52: 2013/07/01(月) 23:16:02.69 ID:CN8cD/wgo
――


桃華「使い魔ですわね。」


サクライPから送られてきた映像を見て、

『強欲』なる彼女は、そこに映る物の在り方を看破した。


サクライP『随分と変わった使い魔ですね。』

通信先からサクライPが答えた。


桃華「魔翌力管理人の・・・・・・あ、いえ違いましたわ。」

桃華「魔力管理人のユズちゃまにしか作れない使い魔ですから。」

サクライP『魔翌力?』

桃華「・・・・・・異界の理のせいで言い間違えただけですわ。気にしたら負けですわよ。」

53: 2013/07/01(月) 23:17:42.19 ID:CN8cD/wgo
桃華「魔法塔のクリスタルから製造された使い魔。」

桃華「ベルフェちゃまの記憶にある姿とは少々違うようですけれど、」

桃華「その存在を構成する要素は同じですわね。」


サクライP『ニ体発見された時点でもしやとは思っていましたが・・・・・・どちらも本体ではないのですね。』

桃華「本体は自分のフィールドに逃げ込んだのでしょう。」

桃華「世界の狭間。穴熊を決め込むならあそこほど適した場所もありませんわ。」

桃華「けれど、ユズちゃま。魔王の命も残り僅かですのにあまり悠長な事もできませんわよ?」


三好紗南から『搾取』したベルフェゴールの記憶は、彼女にとって非常に有益であった。

死神ユズの詳細な来歴、天使「望月聖」の姿と居場所、

魔王の娘ブリュンヒルデの地上での活動、魔王を侵す竜帝の呪い、

悪用しようと思えば、幾らでもできそうな情報ばかり。


桃華「ベルフェちゃまにもう少し野心があれば、本当に怖い存在でしたわね・・・・・・。」


『怠惰』の悪魔の能力、つくづく恐ろしい力であったと思う。

54: 2013/07/01(月) 23:21:48.13 ID:CN8cD/wgo
サクライP『本体の代わりを使い魔が勤めていると言う事は、』

サクライP『彼女には魔界からの増援は無い、と考えてよろしいのですか?』

桃華「無いとは言い切れませんけれど、可能性は低いですわね。」


桃華「彼女ほど有能な者など魔界広しと言ってもなかなかいませんし、」

桃華「それに先の戦争で魔界に有能な人材はほとんど残ってませんのよ。」

桃華「今の日和った魔王に忠義を尽くすほどの人材となれば余計にですわ。」

地上に来訪者達が現れても、行動を起こさない魔王に不信感を持つ悪魔も少なくはない。

そして、

桃華「残る忠義に厚い者達も、魔界で虎視眈々と魔王の命を狙う不届き物相手に目を配らせねばなりませんから。」

あわよくば伸上ろうと画策する悪魔や、未だ復讐心に燃える竜族の生き残りを抑える者が魔王の傍に必要なのだ。


戦争による人材の減少と、魔王の威光の翳り。

それを良いことに、七大罪をはじめとする悪魔達がこぞって地上に出たので

さらに人材不足の傾向は悪化しているようである。


桃華「ユズちゃまだって魔力の管理と、兼任してわたくし達の捕縛を任されてますのよ。」

魔力管理人とは決して暇なお飾り官職ではない。なにしろ世界の魔力のバランサーだ。

その魔力管理人に別の仕事を頼まねばならないほどに、魔界は手が足りていないのだ。



サクライP『なるほど・・・・・・魔界は随分と弱っているのですね。』

桃華「・・・・・・あら。」

桃華「ウフ、Pちゃま。きっと今すごく悪い顔してますわね♪」

桃華「でも止めて置いたほうがいいですわよ。幾ら全盛期より弱ってるとは言っても、」

桃華「それでもなお魔界は深淵ですわ。”人類が侵攻できるほど”には落ちぶれてはいませんわよ。」

サクライP『残念です。獲得できれば、人類はさらに進化できると思ったのですが。』

桃華「ウフ、ウフフフ!Pちゃまは本当に面白い方ですわね!」

55: 2013/07/01(月) 23:24:51.85 ID:CN8cD/wgo
しかし、悪魔である彼女にとって考えさせられる話ではある。


”あの日”から、人類は『異能』を獲得し、貪欲に外の『技術』を手にしてきた。

『魔術』や『魔法』を扱う人間も居る。悪魔に対抗できる程度の力は十分にあるのだ。

いずれ、人間と悪魔の力関係が反転する事もあり得る事だろう。

人類の魔界への侵攻も夢物語ではないはずだ。


桃華(いえ・・・・・・そもそも抑止力であるわたくし達、悪魔が戦争で弱ったからこそ、)

桃華(人間の渇望に歯止めが掛からなくなったのですわ。)


人の『欲望』を愛し、『欲望』を力にする彼女にとっては、

それは特に不都合なことではなく、むしろ人類の欲望は積極的に煽っていきたい事なのだが。

桃華(それはそれとして、気になりますわね。)


桃華(あの戦争は悪魔と竜の覇権争い。)

桃華(結果は悪魔の勝利で終わりましたが、悪魔達もまた安くない代償を払いましたわ。)

桃華(竜帝の崩御、氏の呪いに侵される魔王、役職を持つ多くの悪魔達の氏・・・・・・)

桃華(・・・・・・出来すぎてますわね。)

桃華(どう転んでも・・・・・・パワーバランスは崩壊し、魔界そのものが弱る。)

桃華(もし、あの戦争を仕組んだ者がいるとするなら、魔界全土の衰退を望むもの?)

桃華(それはいったい・・・・・・。)


何者なのか

56: 2013/07/01(月) 23:26:47.94 ID:CN8cD/wgo
桃華「いずれにしても、今はユズちゃまですわね。」

桃華「翼をもいだのはいいですけれど、引きこもられるのも面白くありませんわ。」

桃華「あの使い魔を打ち倒せば、出てきてくださるのかしら。」


サクライP『その使い魔ですが、我々としては材料となったクリスタルを手に入れたいのです。』


桃華「Pちゃまは貪欲ですわね♪」

桃華「ですがアレには自己破壊機能がありますし、首尾よく無力化できたとしても」

桃華「クリスタルは魔力管理人以外が触れれば消滅しますのよ。」

桃華「それをどうやって回収しようと・・・・・・。」


桃華「・・・・・・ああ、そう言う事ですの。」

桃華「Pちゃまはわたくしに『動け』と言いたいわけですわね♪」


サクライP『・・・・・・いえ』

サクライP『動くのは私どもです。貴女様は”その場所”に居てくだされば問題ありません。』


桃華「・・・・・・わかりましたわ。Pちゃまの手腕、期待してますわよ。」

サクライP『ご協力、感謝いたします。』


かくして財閥は死神の使い魔を追い始める。

57: 2013/07/01(月) 23:28:52.30 ID:CN8cD/wgo
桃華「そうそう、Pちゃま。紗南ちゃまの処遇ですけれど。」

桃華「財閥の末端組織で能力者として使ってあげなさいな。」

サクライP『能力者としてでございますか?』

桃華「記憶を貰うついでに、彼女の中身を覗かせて頂きましたけど。」

桃華「『怠惰』の因子がわずかに残ってましたのよ。」

桃華「ベルフェちゃまの依り代に選ばれるだけの事はありましたわね。」

サクライP『その力は奪わなかったのですか?』

桃華「今はまだ小さい力でしたもの。わたくしには必要ない力ですわ。」

桃華「それをどう扱い、どう成長させるかは紗南ちゃま次第ですのよ♪」


桃華「それに、たしか・・・・・・紗南ちゃまのご両親はベルフェちゃまに操られた後遺症があるのでしょう?」

三好紗南の両親は、ベルフェゴールの洗脳によってすっかり怠惰な人間にされてしまっていた。

彼らも財閥が保護し、治療を受けているところである。


桃華「財閥としてもタダで治療することもありませんし、ご両親が働けないなら」

桃華「その分紗南ちゃまに働いて貰うのがよろしいですわよね?」

サクライP「わかりました、ではその様に手配いたしましょう。」

桃華「頼みましたわよ、Pちゃま♪」


こうして三好紗南の社会復帰が決まったのであった。

58: 2013/07/01(月) 23:30:25.11 ID:CN8cD/wgo
おわり


『搾取』
『強欲』の悪魔マンモンの能力の一部。
対象1体から資産、生命力、魔力、能力、意思、記憶、経験などいずれかを奪い、自分の物とする。
ただしマンモンより弱い相手にしか通用しない。

『ベルフェゴールの記憶』
三好紗南がベルフェゴールとして見聞きした情報の記憶。
内容は主にゲームの攻略情報全般。
「もし次に紗南ちゃまとゲームで戦うことがあっても、今度は勝てますわ。」


三好紗南(14歳)

職業:中学生、兼、財閥の能力者
属性:怠惰
能力:?

「怠惰」を司る悪魔ベルフェゴールに憑かれていた少女。
悪魔に精神を乗っ取られていたが死神ユズによって開放される。
一度は財閥の病院に運ばれ、治療を受けていた。
その後、マンモンによって記憶の一部を奪われて社会復帰。

元の中学校に通いながら、今も入院している両親のために
能力者として財閥に扱き使われてるとか使われてないとか。
記憶を奪われたために桃華との面識は無い。

59: 2013/07/01(月) 23:31:27.44 ID:CN8cD/wgo
紗南ちゃんが倒れたまま放置されてたので、使わせていただいた。
魔界関係の話はおかしいところあるかもしれない。都合が悪かったらスルーで

屋敷の外に出ようとしない桃華ちゃまはユズポンのこと引きこもりとか言えないって思うな!

60: 2013/07/01(月) 23:32:26.78 ID:vaDF+WPOO
乙ー

引きこもりVS引きこもり……胸が熱くなるな




【次回に続く・・・】



: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part3