176: ◆IRWVB8Juyg 2013/07/02(火) 21:53:30.43 ID:GZ1E7xQio



モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ




  やっと準備が整ったんだ。管理者の目を盗んでくみ上げてきた私の最高の傑作。
 このディストピアを救うための最後の手段――

「……『エクセル』の完成、かな」

 見上げればそこに立つのはこの世界の希望。
 何よりも優れて、何よりも強く。私の、私たちの夢。
 白いボディに緑のラインが入った美しいデザイン。無駄のない流線型のフォルム。
 我ながらほれぼれする。かっこいいぞ、すごい。

 耳障りな警報音が私の思考を引き戻す。
 ……そうそう、感動している場合じゃなかったんだっけ。

 私が今いるのはロボたちの自己進化施設の中。
 ちょっとだけお邪魔して、私の『エクセル』の完成に協力してもらったわけだ。

 私の頭の中にある設計図。ありえないはずのロストテクノロジー。
 足りない部分は気合いと、この施設の部品をちょっと拝借してやればいいと気付いて忍び込んだんだった。

 おかげさまで絶賛大ピンチ……だったのはついさっきまでのこと。
 私の開発環境では完成しなかったからこんなリスクを背負ったんだ。
 完成さえしてしまえば問題ない。

「ね、エクセル?」

 エクセルの足を一撫で。起動してないし何の反応もない。
 ……うん、知ってる。







----------------------------------------




それは、なんでもないようなとある日のこと。


その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
 
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

 
それと同じ日に、宇宙から地球を侵略すべく異星人がやってきました。
地球を守るべくやってきた宇宙の平和を守る異星人もやってきました。

異世界から選ばれし戦士を求める使者がやってきました。
悪のカリスマが世界征服をたくらみました。
突然超能力に目覚めた人々が現れました。
未来から過去を変えるためにやってきた戦士がいました。
他にも隕石が降ってきたり、先祖から伝えられてきた業を目覚めさせた人がいたり。

それから、それから――
たくさんのヒーローと侵略者と、それに巻き込まれる人が現れました。

その日から、ヒーローと侵略者と、正義の味方と悪者と。
戦ったり、戦わなかったり、協力したり、足を引っ張ったり。

ヒーローと侵略者がたくさんいる世界が普通になりました。



「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。

・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。
・一発ネタからシリアス長編までご自由にどうぞ。


・アイドルが宇宙人や人外の設定の場合もありますが、それは作者次第。





シリーズはここからご覧ください
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズ一覧
    




177: 2013/07/02(火) 21:55:20.08 ID:GZ1E7xQio
《シンニュウシャヲ ハッケン ハイジョシマス》

 警備ロボがワラワラと群がってくる。
 もう少しぐらい、完成の余韻に浸らせてくれたっていいじゃないか。

 私は左手の『ワード』を起動させて素早くコマンドを入力する。

「Ctrl……V! ペースト!」

 あらかじめコピーをとっておいた戦闘用のロボたちの弾幕が『ワード』の機能によって再現される。
 人間を排除するために放たれる凶悪な弾たちは、皮肉にもロボットを完全に破壊せしめるほどの威力を宿していた。

 強烈な弾幕を再現するのにはエネルギーを大量に消費してしまうのが欠点だけど、今はケチケチしていられる場合じゃない。

「それに……ここさえ、抜ければ終わるんだから……!」

 ペースト、ペースト、ペースト。的確に打ち抜く位置へと弾を再現するがだんだんデータが劣化しているのがわかる。
 警備ロボたちはあと2小隊ほど残っていて全滅させる余裕はない。

「それなら……Ctrl、F。ファインド!」

 ……隊長期を検索。該当あり。
 至近距離へ強烈なグレネードを一発ペースト。爆発させると、周りの機体の動きが目に見えて鈍る。

 後はまとめて大きなのをぶち込むだけ。
 ……どうやら一旦難を逃れることはできたみたいだ。

178: 2013/07/02(火) 21:55:56.78 ID:GZ1E7xQio
 しかしそろそろ逃げないとまずそうだ。エクセルを起動させないと……

 ……あ。その前に資材もいただいておこうかな?
 『ワード』のEnterを入力。左手をかざして範囲指定。

「Ctrl……X。カット」

 研究資材やデータを丸ごといただく。

 まぁ、どうせどこかにバックアップはあるんだろうけど……
 解析してやれば過去人にとってはとんでもないオーバーテクノロジーになるはず。
 このディストピアを作った原因……A.Iにだってきっと通用する。

「……そうだよね。お姉ちゃん、頑張るから」

 もういない私の大切な家族。
 弟のためにも私は絶対にこのディストピアを――

「――デリートしてやるんだから!」

 『エクセル』へとワードから司令。
 起動したエクセルの瞳が緑に光り、私を見下ろす。
 内部へ乗り込む。コックピットの作成に協力してくれた友人ももういない。

179: 2013/07/02(火) 21:56:31.89 ID:GZ1E7xQio
「さぁ……飛んで。エクセル!」

 人間が持ちうるテクノロジーはすべて詰め込んだ。
 私たちにできる最高で、最後の希望の象徴『エクセル』に命を吹き込む。

 目指す時間軸は『A.I』が世界に認められずに泣いていた20XX年。
 彼女が狂い始めてしまった時へと飛んで……必要だったら、私は人間を――

「……違うよ。私がするのはディストピアのデリート。バグは消さなきゃだめなんだから」

 自分に言い聞かせるようにつぶやく。
 人間に時間跳躍ができるのだから、きっとマシンたちにだってできるだろう。

 追手は来るだろうか。そいつ相手に『エクセル』で勝てるだろうか。
 『ワード』のバッテリーは持つかな? 打ち消されたりしたらどうしよう?

 不安が浮かんでは消え、押しつぶされそうになる。
 ……それでもやらなきゃいけない。もうあの世界にはいられない。

180: 2013/07/02(火) 21:57:39.27 ID:GZ1E7xQio
 時の流れに逆らう感覚というのは、思っていたよりもずっと気持ち悪い。
 体がぐにょぐにょと伸びたり縮んだりしているような錯覚を起こす。乗り物には強いつもりだったんだけど。

 急に激しくなったり穏やかになったりするそれにやっと慣れてきたころ、激しい衝撃がエクセルを襲った。
 追手の攻撃? でもこんな、飛んでる最中にだなんて想定外だ。まずい、反撃もできない。
 揺れがどんどん激しくなる。これはもはや攻撃とかじゃなくて、空間自体がおかしくなってるとしか思えない。

 エクセルの計測器がすべて異常値を示す。
 視界がゆがむ。体の中身をぐるぐるかきまぜられているみたいで吐き気がする。
 想定していた逆行にかかる時間はとうに過ぎているはずだ。まさか失敗した? みんなが繋いでくれた希望がこんなところで?

 嫌だ、嫌だ、嫌だ――――


 瞬間、目の前が真っ白になった。



181: 2013/07/02(火) 21:59:15.27 ID:GZ1E7xQio
「う……ん……?」

 意識を失っていたみたいで、やっと視界が開けてくる。
 エクセルのモニタに映っているのは――人。

 人、人、人、人――人がいっぱい?

「なっ……ま、まずったの!?」

 どうやら人たちはみんな私の――エクセルのことを指さしてひそひそと話をしている。
 資料にある21世紀初頭の人たちの生活風景。20世紀末から続いているのであろう割とのどかな商店街。
 つまり、エクセルはとんでもなく目立っているってことで……

「A.Iに見つかる!? いや、その前に追手が……あぁ、どうしよう。に、にげっ……」

 その時、モニタの中のひとつに映っている男性がメガホンのようなものを向けてきている。
 まさかもう追手が――

「あー、キミ! ロボはこういうところでは乗り回さないでねー」


「……は?」

182: 2013/07/02(火) 22:00:45.88 ID:GZ1E7xQio
――

 そのあと。いろいろ聞かれたが私の知っている、想定してる21世紀とはずいぶんとズレているらしいことが判明した。

「いやー、ロボとか巨大ヒーローは珍しいけど。ひょっとして最近目覚めたとか? 若い子はすごいねぇ」

 とは警察官のセリフ。等身大ヒーローやら怪物なら珍しくないらしい。どういうことだ。
 私はエクセルをワードの『カット』で収納したあとしばらくお説教を食らうことになってしまった。

 超能力や超科学が珍しくない、悪魔や死神が存在する世界だなんて馬鹿げてる。
 本当、バカげてる……けど、現実だ。どうしようもなく、真実だ。
 時空跳躍の時に位相がずれたんだろうか? 理由はわからないけど。

 エクセルには確かに『A.I』が存在する世界へと指定したはずなのに。
 本当にこんな世界に『A.I』がいるかは定かじゃないけど、計器は正常に戻っているし……

「……とりあえず、ワードにエネルギー充填してやらなきゃ詳しくも調べられないか」

 エクセルに間違いがあるとは思えないし、ひょっとしたらこの世界は歴史から抹消されただけなのかもしれないし。
 ………うん、だからとりあえずご飯を食べよう。この時代には味覚で喜びを感じるって文化もあったらしいし。

 今は何よりも私自身がエネルギー切れで倒れそうだ。

183: 2013/07/02(火) 22:05:03.81 ID:GZ1E7xQio
大石泉(15)

職業:未来形フリーター
属性:未来人
能力:ロボット『エクセル』の操縦および高次元情報端末『ワード』の操作

機械に支配され、ディストピアと化した未来からやってきた。
未来を変えるために、全てのロボたちの母と言われた『A.I』がいるという21世紀まで飛んでくるも資料との食い違いっぷりに困惑中。
左腕につけたキーボード型の情報端末『ワード』は3次元的にコピー、ペースト、カットなどを実現させる。
『カット』で切り取られたものは無条件で上位次元へとしまわれるが、無機物にしか対応していない。
『ペースト』は『コピー』したものをエネルギーを消費して再現する場合と、『カット』でしまったものを取り出すパターンの2種類。
『コピー』は対象のエネルギーなどをデータとして保管しておけるが、何度もペーストを繰り返すとデータが劣化して制度が落ちる。


『エクセル』
全長20mほどのロボット。白いボディに緑のライン。
流線型にシルバーのかっこいいロボ。泉の『ワード』と連結させ、乗り込むことで戦闘が可能。

184: 2013/07/02(火) 22:08:33.76 ID:GZ1E7xQio
巨大ロボのせようと思った。持ち運び手段必要だと思った。こんなんなった
……周りの被害大きいから普段はエクセル引っ張り出さないでワードで戦うんじゃないかな、いずみん

A.Iがディストピアを生んだ過去ではたぶん自分のことを理解してくれる親友も秩序が壊れる混沌もなかったんだと思います

185: 2013/07/02(火) 22:09:01.74 ID:6dhZ/t2Vo
おつ
ついにきたか、未来人

186: 2013/07/02(火) 22:10:30.11 ID:6Xl0CNgo0
乙です
まさかエクセルがここまでかっこよくなるなんて…その発想はなかったわ

187: 2013/07/02(火) 22:10:45.27 ID:+OSYvGVtO
乙ー

未来人キター

けど、悪魔やら宇宙人やら能力者やらいっぱいいる世界で困惑するいずみんw




【次回に続く・・・】



: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part3