239:◆kaGYBvZifE 2013/07/03(水) 00:41:32.97 ID:/q6YABDB0



モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


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 短いのを投下

240: 2013/07/03(水) 00:42:20.56 ID:/q6YABDB0
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『なんということだ……』

張り詰めたウサミン星人の声に、リンも内心で頷いた。いや、テクノロジストの彼女でなくとも、
地上の惨劇を目の当たりにすれば彼と同じ思いに至るに違いない。

化学防護服のブーツ越しに踏みしめた大地は、アンダーワールドのそれとさして違いはないように思える。
だが、この視界いっぱいに広がる荒野にかつて街があったと言われて、それを信じる人間はどれくらい
いるのだろうか。

空前の規模のカースの大量発生と、それに端を発する史上最大規模の戦闘。
平和な地方都市を一昼夜にして修羅場とした事件を収束させたのは、たった一発の爆弾によるものだった。
カースの坩堝と化した街へ投下された一発の爆弾が、実に480平方キロメートルを一瞬にして焼き尽くし、
街に存在するすべてを灰燼に帰したのだ。
その街は地図から消え、惨禍の跡には巨大なクレーターが残るのみである。

幸い、公式発表では氏者・行方不明者はゼロであったが、それはあくまで地上人のことを指して
言っているのであって、アンダーワールド人や異星人などの異邦人が含まれているものではない。

地上のあちこちでスカベンジングを行っているアコは無事だろうか――そう考えて、リンは唇を噛んだ。

『……沙織を連れてこなくてよかった。この惨状を見れば、ショックを受けるのは間違いないだろう』







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それは、なんでもないようなとある日のこと。


その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
 
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

 
それと同じ日に、宇宙から地球を侵略すべく異星人がやってきました。
地球を守るべくやってきた宇宙の平和を守る異星人もやってきました。

異世界から選ばれし戦士を求める使者がやってきました。
悪のカリスマが世界征服をたくらみました。
突然超能力に目覚めた人々が現れました。
未来から過去を変えるためにやってきた戦士がいました。
他にも隕石が降ってきたり、先祖から伝えられてきた業を目覚めさせた人がいたり。

それから、それから――
たくさんのヒーローと侵略者と、それに巻き込まれる人が現れました。

その日から、ヒーローと侵略者と、正義の味方と悪者と。
戦ったり、戦わなかったり、協力したり、足を引っ張ったり。

ヒーローと侵略者がたくさんいる世界が普通になりました。



「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。

・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。
・一発ネタからシリアス長編までご自由にどうぞ。


・アイドルが宇宙人や人外の設定の場合もありますが、それは作者次第。





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241: 2013/07/03(水) 00:44:33.01 ID:/q6YABDB0
防護服に内蔵された通信機から、ウサミン星人の声が響いた。

あのアウトレイジの女に襲われて以来、彼は『歌姫』の身の安全を最優先にしている。
テレポーターは個人認証システムを更新して自分達以外の生体データを検出したら自動で停止するようにし、
歌姫には綺麗な指輪やイヤリング型の発信機を手渡して顔を赤くさせたりしていた。
すっぴんの歌姫――奥山沙織は世間ずれしていない田舎娘そのもので、彼女を見出したウサミン星人には
スカウトなりプロデューサーなりの才能があるに違いないと、リンは密かに思っていた。

それでいて、どうせなら宇宙船で寝泊まりさせてはどうかと言うと、この生真面目なウサミン星人は
底堅い声音で「彼女には彼女の生活がある。必要以上に束縛することはできない」と答えるのだ。
現に今、新型爆弾の投下跡を偵察しに来るときも、歌姫は彼女の下宿のアパートに残してある。

ひょっとして、種族の違いさえなければ結構いい男なのではないか……とリンはほんの少しだけ考える。
とはいえ、頭にウサミミを屹立させた大男の恋人役は遠慮しておきたいところだ。

『有害物質は今のところ検出されていないが……しかし、正気の沙汰とは思えんな』

「街をひとつ消し飛ばすなんてね……でも、丸っきり意味のないことでもないんじゃない?」

『というと?』

「これってつまり、カースの駆除と、侵略者に対する牽制をいっぺんにやったってことでしょ」

242: 2013/07/03(水) 00:45:35.26 ID:/q6YABDB0
いみじくもリンが指摘するように、GDF上層部の狙いはまさにそこにあった。
強大な軍事力を誇示することで、異星人、魔界、アンダーワールドへの抑止力とする意図があった。
簡単に言ってしまえば、核抑止論の延長にすぎない理屈だ。
Mutual Assured Destruction――相互確証破壊などは、おそらく最もよく知られた核抑止論であろう。

「やったらやりかえせ」を徹底し、「やったらやられる」という恐怖でもってお互いを束縛し、
戦争の勃発と大量破壊兵器の使用を抑止する。それが抑止論だ。
そして相互確証破壊とは、仮に先制攻撃で相手に打撃を与えることができても、生残戦力による
報復攻撃によって大きな存在を被り、結果として双方が必ず破滅するという状況を作り、開戦を躊躇わせる
ドクトリンである。

核兵器を新型爆弾に入れ替えただけで、思想の根っこの部分は何ら変わるところはない。
それはまるで、ほんの半世紀では人間の心性は変わりようがないのだと語っているようだ。

「地上人がこれだけの兵器を持っているって知ったら、地上を攻めようって気は削がれると思う。
 少なくとも、私はそう思うな」

『……それはどうかな』

リンはそう考えたのだが、ウサミン星人の見解は異なっていた。

『地球人が超兵器の存在を誇示したことで、侵略者がより強力な兵器を作って対抗しないという保証はない。
 それに君の言う抑止の考え方が妥当性を持つには、ある前提がある』

「前提?」

『当事者双方が理性的判断に基づいて行動するという前提だ。
 地上で起こる紛争の原因は領土や資源の獲得だけでなく、民族的宗教的対立に根差すものもある』

243: 2013/07/03(水) 00:47:13.10 ID:/q6YABDB0
「突発的な感情で意思決定する可能性もあるってこと?」

『そうだ。そういった場合、しばしば非理性的な決定がなされる。
 恐怖に尻込みせず、報復を恐れない相手には、抑止論は意味を成さない』

ウサミン星人が語る内容に、リンは胸中に突き刺さった棘を自覚せずにはいられなかった。
自分だって、好奇心の求めるままに宇宙船に忍び込むのを非理性的だと言われれば返す言葉もない。

「……地上人もアンダーワールド人も、そんなにバカだとは思いたくないよね」

と、苦し紛れに珍しく殊勝な態度を取って見せると、ウサミン星人は寂寥を感じさせる声を絞り出した。

『地球人を信じたい気持ちは、私も同じだ』

信じたい、という表現に、リンは彼の心情の複雑さを垣間見る思いだった。
話を聞いたところ彼は地球が好きなようだし、その星に住む人々が野蛮で非理性的な連中だと思いたく
ないのは理解できる。そこまで買い被ってもらえるなら地球人冥利に尽きるというものだ。
どれだけ技術が進歩しても、人という生き物は過ちを繰り返し続けるというのに。

「……ねぇ、ウサミミ」

ふと気になったリンは、意地悪く問うた。

「地球人って、どっちのこと?」

――だが、リンの問いに対して、ウサミン星人はついぞ答えを返さなかった。

244: 2013/07/03(水) 00:48:03.44 ID:/q6YABDB0
GC爆弾投下後の反応。
この事件になんか適当な名前をつけてくれる人募集

245: 2013/07/03(水) 00:48:52.68 ID:07tx6DS9o
>>230
>「…あ、アタシ、もう免罪じゃないんだぁ…!」
よくわかんないけど、柚がまだ許されないことだけはわかった

246: 2013/07/03(水) 00:51:39.22 ID:NljtLaCR0
>>245
ギャー間違えたー!
「犯罪者じゃない」ということでお願いします…

247: 2013/07/03(水) 00:53:11.83 ID:/q6YABDB0
「それでも柚はやってない」
映画化決定!

248: 2013/07/03(水) 00:58:30.83 ID:ofxP3X6to
生活してた人達にとっては悪夢みたいなものだし、完全に消滅して修復も不可能か……
全部塵と化けたのは魔法がとけたシンデレラみたいだし『灰かぶり』とか




【次回に続く・・・】



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