470:◆kaGYBvZifE 2013/07/06(土) 23:54:14.04 ID:WWv5iVO20



モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


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 ザ・岡崎先輩の近況

471: 2013/07/06(土) 23:55:20.45 ID:WWv5iVO20
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眼下に広がる風景を埋め尽くすマグマのそれに似た赤黒い波濤は、順調にカースが増え続けている
ことを示す何よりの証拠だった。
脈動する悪意が大地の底から滲み出し、形を得たそれは赤いオーラとなってカースの泥の身体から
立ち上り、遠目には街が燃えているようにも見える。
わらわらと湧き出す『憤怒』のカースの、薄闇の中に浮かび上がる姿は、地獄の悪鬼のようでさえあった。

数時間前まで平和な日常を送っていた街が呪詛の汚泥で満ちていくのをビルの屋上から眺めながら、
岡崎泰葉は口角を歪に釣り上げて笑った。

このカースの大量発生は無論、泰葉の仕業であった。
カースがどこまで自己増殖を続けることができるか、人間から発せられる感情はどれほどまで
カースの成長に影響を及ぼすのか、それらを調べるための実験としての試みである。

地下鉄や下水道に多数のカースの核を仕掛け、それらを同時多発的に覚醒させ街をカースで埋め尽くし、
ヒーローやGDFに介入する暇を与えず電撃的に街を制圧。
その後は、街の人間を捕らえて実験台にするなり、素質があるようならばカースの核を埋め込んで
カースドヒューマンにするなり、泰葉の思うままに事を運ぶことができる。
今のところ、すべては予定通りに進行している。

しかし今の泰葉の表情からは、実験対象を観察する学者の冷徹な目線はなく、むしろサディスティックな
法悦を湛えてさえいた。

見てみるがいい、逃げまどう者達の無様な姿を。日常とやらを理不尽に踏みにじられる様を。
何ら疑うことなく幸福を謳歌する者の、なんと脆く弱いことか。
尽きることのない憤怒や嫉妬がわずかばかり慰められるのを感じ、泰葉は胸が躍る気分だった。

これでこそ、あの『憤怒』の声――邪龍ティアマットの甘言に乗ってやった甲斐があったというものだ。







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それは、なんでもないようなとある日のこと。


その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
 
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

 
それと同じ日に、宇宙から地球を侵略すべく異星人がやってきました。
地球を守るべくやってきた宇宙の平和を守る異星人もやってきました。

異世界から選ばれし戦士を求める使者がやってきました。
悪のカリスマが世界征服をたくらみました。
突然超能力に目覚めた人々が現れました。
未来から過去を変えるためにやってきた戦士がいました。
他にも隕石が降ってきたり、先祖から伝えられてきた業を目覚めさせた人がいたり。

それから、それから――
たくさんのヒーローと侵略者と、それに巻き込まれる人が現れました。

その日から、ヒーローと侵略者と、正義の味方と悪者と。
戦ったり、戦わなかったり、協力したり、足を引っ張ったり。

ヒーローと侵略者がたくさんいる世界が普通になりました。



「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。

・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。
・一発ネタからシリアス長編までご自由にどうぞ。


・アイドルが宇宙人や人外の設定の場合もありますが、それは作者次第。





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472: 2013/07/06(土) 23:56:06.64 ID:WWv5iVO20
「クッククク……おーおー、これはまた派手にやってますねぇ……」

ざらつくような声を背中に受け、泰葉はちらと視線をやる。
そこにいたのは、慇懃無礼を形にしたような、顔を見ることさえ不愉快な男の姿があった。
それは泰葉の元プロデューサーであり、今は邪龍の魂に肉体を乗っ取られている男だった。

ティアマットがよりにもよってこの男を選んだのは勿論、泰葉の憤怒を煽るためだろう。
本来なら顔も見たくないのは当然として、泰葉をなお不愉快な気分にさせたのは、この男が自分の
担当アイドルに手を出して業界を追放されていたという事実だった。

唾棄すべき、見下げ果てたクズだ。ティアマットも、この元プロデューサーも。
『憤怒の王』とやらになった暁には、真っ先に頃してやる。

胃の腑を突き上げる不快感を自覚しながら、泰葉は吐き捨てるように言う。

「……何の用? 今のところ問題は起きていないけれど」

「そうつれないこと言いなさんなよ。俺と泰葉ちゃんの仲だろぉ?」

「ふざけないで」

「クッククク……ああ、これは失礼。ククク……」

この男は、いちいち人を不愉快がらせなければ話もできないのか。

泰葉の射抜くような視線を風と受け流し、ティアマットは嗤う。

473: 2013/07/06(土) 23:56:35.87 ID:WWv5iVO20
「祭りの準備は順調のようですからね……ちょっとばかり手助けを、と思いまして」

「必要ない」

泰葉は内容も聞かずに断じる。
この男の『プロデュース』を受けるとはいえ、手放しに信用するほど泰葉はお人好しではない。

「主要な道路はカースの群れで完全に封鎖したわ。GDFもヒーローも迂闊には近寄ってこれない。
 それこそ、また例の爆弾を使いでもしない限りは」

そして、今のGDFが世論に背を向けてまでカースの大量駆除を行う性格の組織ではないことを、
泰葉は薄々ながら感じ取っていた。テレビや新聞、インターネットで情報はいくらでも入手できるし、
GDF総司令交代に前後して行われた記者会見で事件のあらましは世間に知れ渡っていたからだ。

「クッククク……さすがご明察。私の伝手で調べていますが、今のところ連中も攻めあぐねていますねぇ」

「伝手?」

「ええ。これでいて『友達』の多い方でしてねぇ……」

露骨に当てこするような言い方に苛立ちを覚えたが、何か言い返すのも無駄だと判断した泰葉は、
射るように睨みつける目を唯一の抗弁とした。

とはいえ、不愉快なのはともかくとして、無能な男ではないのは確かだ。
少なくとも今のところはティアマットは泰葉を裏切らないし、泰葉もティアマットに敵対するメリットはない。

474: 2013/07/06(土) 23:59:19.00 ID:WWv5iVO20
「あなたの『友達』っていうのは、とても頼りになるみたいね?」

「ええ。安っぽい友情ごっこなんかじゃあ生まれえない、本物の信頼関係ですよ……クッククク」

こいつのような悪魔が、言うに事欠いて信頼などと、それこそお笑い草だ。
泰葉は内心の失笑をおくびにも出さず、ただティアマットの戯言を聞き流すのに努めた。

こうしている間にも、カースは増殖を続けその生息圏を拡大し続けていく。
『憤怒』の心性のままに、やり場のない怒りと憎悪でその身を焦がし、破壊を振り撒いていく。
そしてその過程で生まれた恐怖と悲しみが、より大きなカースを生んでいくのだ。
泰葉が『憤怒の王』となり、世界のすべてを破壊するその日が来るまで……。

「……?」

ふと泰葉は、地上から立ち上る『憤怒』のオーラで赤黒く染まった夜空へと視線を向けた。

不意に視界の端に、空の果てから地上へと伸びる一筋の輝く軌跡が映り――願い事をする間もなく、
空から流れ落ちた星は見えなくなる。

いや、自分はもう星に願いを捧ぐ年頃ではない。
あれはむしろ、古巣に留まる仲間に手向けられた餞――あるいは、惜別の涙か。

そんな風に考えた泰葉の胸にちくりと後悔の棘が突き刺さったが、カースの浸食の深まった精神の中で
その小さな『痛み』は行き場を失い、やがて遣る方ない腹立たしさに変わっていった。



「ああ――腹立たしい」

475: 2013/07/07(日) 00:01:30.64 ID:0KKU5keR0
『憤怒の街』
泰葉とティアマットの作戦によって占拠された都市。
大量の『憤怒』のカースによって封鎖されており、迂闊に近寄れない。
街の中には多数の民間人が取り残されている。

イベント情報
・しばらくの間、泰葉は『憤怒の街』を拠点に活動するようです。
・憤怒Pに接触し、協力している何者かがいるようです。

476: 2013/07/07(日) 00:04:31.49 ID:0KKU5keR0
宇宙レベルさんに負けじと一大勢力を築いているようです
岡崎先輩がお元気そうで何よりです(白目)

477: 2013/07/07(日) 00:08:13.65 ID:Z8lDXpr0O
乙ー

コレは勝手に攻められななそうだし、イベントがすすむまで待ってみるかな?

というか取り残された一般人氏ぬんじゃね?




【次回に続く・・・】



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