782: ◆lhyaSqoHV6 2013/07/09(火) 03:56:32.66 ID:w0ARctWro



モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ




 昨今の情勢に全く関係しない小話投下します
時系列としてはベルゼブブがそらと総司令を懲らしめる以前の話

残念になっちゃった加蓮お借りします

783: 2013/07/09(火) 03:57:49.79 ID:w0ARctWro

元カースドヒューマンの少女──北条加蓮は、とある計画を実行に移そうとしていた。
そう、嫉妬の呪縛から解放されてからずっと温めていた、友達100人計画である。

加蓮「友達を作ると言っても」

加蓮「闇雲に探し回ったってそんな人見つからないだろうし」

加蓮「やっぱりご近所付き合いからだよね!」

エンヴィーとして過ごす以外の時間はアルバイトに割いていたため、寮の他の住民との交流は今まであまり無かったのだ。

加蓮「お隣さんは……私と同年代らしいし……丁度いいかな」

そう言うと、加蓮は意を決して隣の部屋のドアをノックするのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――







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それは、なんでもないようなとある日のこと。


その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
 
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

 
それと同じ日に、宇宙から地球を侵略すべく異星人がやってきました。
地球を守るべくやってきた宇宙の平和を守る異星人もやってきました。

異世界から選ばれし戦士を求める使者がやってきました。
悪のカリスマが世界征服をたくらみました。
突然超能力に目覚めた人々が現れました。
未来から過去を変えるためにやってきた戦士がいました。
他にも隕石が降ってきたり、先祖から伝えられてきた業を目覚めさせた人がいたり。

それから、それから――
たくさんのヒーローと侵略者と、それに巻き込まれる人が現れました。

その日から、ヒーローと侵略者と、正義の味方と悪者と。
戦ったり、戦わなかったり、協力したり、足を引っ張ったり。

ヒーローと侵略者がたくさんいる世界が普通になりました。



「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。

・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。
・一発ネタからシリアス長編までご自由にどうぞ。


・アイドルが宇宙人や人外の設定の場合もありますが、それは作者次第。





シリーズはここからご覧ください
モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズ一覧
    




784: 2013/07/09(火) 03:58:39.83 ID:w0ARctWro


   コンコン


そら「!?」ビクッ

「ごめんくださーい!」

そら「(来客? 何者だ……?)」

そら「はいはーい!」


   ガチャッ


「あ、こ、こんにちは……」オドオド

扉を開けると、目の前には自分と同じくらいの年の頃(あくまで肉体年齢の話だが)の地球人の少女が居た。

そら「(この娘は……隣の部屋に住んでる地球人か)」

そら「(たしか近所のサプライデポ──地球では"コンビニ"と呼ばれていたか……そこで働いていたはずだ)」

目の前の少女について、かつて自身の近辺の地球人を調査した際の情報を脳内で検索する。

そら「(北条加蓮──年齢は16、幼少期より病を患っており、数ヶ月前に両親によって氏亡届書が出されている……)」

そら「(しかし、その氏亡が確認されるより前に、入院していた病院より失踪……以後消息不明)」

地球人の公の機関の記録では、北条加蓮についての情報は概ねこのような内容だった。
しかし、秘密裏にアクセスした宇宙管理局のデータベースには、地球人には知られていない内容が記載されていた。

そら「(入院先の病院において負の思念体と融合……嫉妬の化身エンヴィーを名乗り各地で暴れ回る)」

そら「(最終的には宇宙管理局の特殊部隊と交戦し、負の思念体は浄化され、北条加蓮自身も負の感情から解放される……)」

そらが調べ得る範囲で得られた情報はこれくらいだった。
問題は、なぜその北条加蓮が自分を訪ねてきたのかということだ。

785: 2013/07/09(火) 03:59:23.99 ID:w0ARctWro

そら「えっと、北条加蓮さん……だったよね?」

加蓮「っ!」

加蓮「(この子、私の名前……知っていてくれたの?)」

そら「なんのご用~?」

加蓮「えっと……あの、その……」

加蓮「今まで、お隣に住んでたのに、全然挨拶とかもしたことなかったから……」

そら「(どういうことだ? 今更引っ越しの挨拶に来たとでもいうのか?)」

そら「(以前こちらから出向いたときにはなしのつぶてだったが……)」

そらの工作員としてのモットーは『郷に入っては郷に従え』である。
その土地に住んでいる存在になりきるための文化、風俗、習わしなどは一通り頭に入れてある。
今の活動拠点に入った時も、周囲の部屋を『そば』なる食物を片手に回ったのだが、その際に北条加蓮は部屋から出てこなかった。


加蓮「せっかく隣に住んでるんだし、歳も近そうだから……」

加蓮「な、仲良く出来たら……良いなって思って……」

そら「(なるほど……そういう事か)」

地球人は他の個体と連れ立って行動するのを好む種族だと学んでいる。
生まれてこの方病院という閉鎖された環境で育ってきたこの娘にとって、同世代の友人というものに憧れがあるのだろう。
地球人の心情に共感することなどないが、理解することはできる。


そら「(……私くらいの年頃の地球人の娘がずっと部屋に篭っているというのも怪しいから)」

そら「(この娘と友人関係になる事で、あるいはカムフラージュになるかもしれないな)」

786: 2013/07/09(火) 04:00:16.07 ID:w0ARctWro

そら「そういうことなら、あたしも仲良くしたいなっ!」

そら「友達はたくさんいた方が、はっぴーだもんねっ☆」

加蓮「と……友達……?」

そら「ちがうの?」

加蓮「え……いや……その」

加蓮「(出会って間もない私を、友達って……)」

加蓮「(そっか……ただ見てるだけじゃなくて……こっちから歩み寄れば)」

加蓮「(こんなに簡単だったんだ……!)」


加蓮「わ、私も、友達になれたらいいなって……!」

そら「じゃあ、あたし達これから友達ねっ!」

加蓮「う、うん! えっと……」

そら「あ、あたしは野々村そらね! そらって呼んで☆」

加蓮「うん! よろしくね! そら!」


そら「(これでいい……あとは……そうだな)」

そら「それじゃ、お近づきのしるしに、どっかお出かけしよっか☆」

そら「加蓮は今日はひまなのかな?」

加蓮「お出かけ……? うん! 私も暇だよ!」

そら「それじゃ決まりねっ! どこ行こうか?」

加蓮「あ、私行ってみたいところがあるんだ!」

そら「そう? じゃあお任せする☆」

787: 2013/07/09(火) 04:02:37.77 ID:w0ARctWro



そらが加蓮に連れられるがままに訪れた場所は、全国チェーンの某有名ファーストフード店だった。
二人は思い思いの注文をして、商品を受け取り店内の席に着く。

そら「(なんだこの食物は……栄養価は偏っているし、摂取しにくいし……)」

そら「(こんなものを好んで食べる地球人……やはり理解できない)」チラッ

加蓮「~♪」モグモグ

味なんてわかりはしないのだが、目の前の少女は実に良い表情でこの"ハンバーガー"とやらを食べている。
となれば、自分も地球人になりきる身として、同じ反応をしないわけにはいかない。


そら「おいしいねっ☆」ニコッ

加蓮「うん!」

そら「加蓮は、はんばーがー好きなの?」

加蓮「んー……好きっていうか」ウーン


加蓮「私ね、小さい頃から今まで、ほとんど病院に居たんだ」

加蓮「だから、いわゆるジャンクフードっていうの? こういうの食べたこと無かったの」

そら「……」

加蓮「……いろいろあって、元気になって病院から出られたから」

加蓮「今まで出来なかったこと、いろいろやってみたいんだ!」

そら「そっか……」


そら「それじゃ、今まで出来なかった分、これからはたくさんはっぴーを集めないとねっ!」

加蓮「ハッピー?」

そら「うん! 友達がはっぴーになれば、あたしもはっぴーだから☆」

加蓮「……そうだね! もっともっと幸せになってやるんだから!」

そら「うんうん、あなたもはっぴーあたしもはっぴーでみんなはっぴーだよ☆」

加蓮「(みんなハッピー、か……)」

加蓮「……ありがとね、そら」

788: 2013/07/09(火) 04:04:50.05 ID:w0ARctWro

――――――――――――――――――――――――――――――――


寮の戻り、そらと別れた加蓮は、自室で今日の出来事を振り返っていた。

加蓮「……友達……か」

加蓮「そら……元気があるし……とっても良い子だったなぁ」

ファーストフード店を出てから、友達になった記念に二人で撮ったゲームセンターの写真プリント機のシールを眺めながら呟く。

加蓮「……今まで、酷い事たくさんしてきちゃったけど」

加蓮「これからは私も……周りの人達を幸せにできたらいいな」

カースドヒューマンとして数々の暴挙を働いてきた事を無かったことには出来ないし、するつもりもなかった。
だが、いつまでも過ぎたことを悔やんでも仕方がない。
負の感情に囚われるのはもうやめたのだ。

加蓮「よし! そうと決まれば、明日から頑張ろう!」

加蓮「時間は、一杯あるんだしね!」


せっかく繋がった命だから、今後はそれを自分と周りの人の為に使おうと、加蓮は決意を新たにするのだった。

789: 2013/07/09(火) 04:07:51.19 ID:w0ARctWro
友達が増えたよ! やったね加蓮ちゃん!

オマケで総司令辞職までの補完的なのを…
アイドル出てこないので誰得ですが

790: 2013/07/09(火) 04:17:32.48 ID:w0ARctWro

カースの大量発生から数日後、GDF本部の司令の下に件の総司令からの通信が入った。

司令「今回はどのような要件で?」

総司『カースの発生源が判明した』

司令「!?」

総司令が突然とんでもない事を言い出すので、司令は思わず狼狽える。


司令「ほ、本当ですか!?」

総司『ああ、俗に言う能力者と呼ばれる者達により生み出されるらしい』

司令「なっ!?」

総司『そこでお前には、日本にいる能力者の捕獲作戦の指揮を命じる』

司令「その情報は……確かなのですか?」

総司『先ほど、我々の"友人"から情報が入ってな』

総司『彼らの技術で特定したらしい』

司令「(友人……例の異星人連中か……)」

どうやら、先の爆弾投下も、この異星人が唆したらしい。
司令の中では、どうにも胡散臭い連中という印象が出来上がっていた。


司令「しかし……真偽が定かでない情報のままに、捕らえるというわけにもいきません」

総司『司令……この際、真実などどうでもよいのだ』

司令「……!?」

791: 2013/07/09(火) 04:19:24.06 ID:w0ARctWro

総司『先の作戦以降の、GDFに対する世論の反発は知っているな?』

総司『我々の力でカースを殲滅してやったにも関わらず、民衆は不満があるらしい』

司令「(不満が出るのも当然だ……)」

司令「(あれだけの範囲を更地にしたんだ、帰る家や、職を失った人々は百万人を下らない……)」

司令「(今回巻き込まれなかった人々も、他人事と傍観するわけにはいかないだろう)」

総司『このままでは、我々の今後の活動に支障をきたすことは明らかだ』

司令「……」

日本国政府……ひいては国際連合の権力のもとで活動しているGDFであるが、
やはり一般大衆の意見を軽視することは出来ないのだ。
このままGDFに対する厭忌感が蔓延すれば、地球防衛どころではなくなってしまう。


総司『つまり、民衆にあてがってやればよいのだ』

総司『我々に替わる、不満の捌け口をな』

司令「……能力者を……身代わりに立てろと……そう仰るのですか」

総司『……フッ』

総司『誰もそんな事は言っておらんよ、ただ"カース発生の原因"である能力者共を捕らえろと』

総司『そう命令しただけだ』

司令「(現代において……魔女狩りをしろと……そう言うのか)」

司令「(こんなふざけた命令、なんとか撤回させなければ……)」

792: 2013/07/09(火) 04:20:34.87 ID:w0ARctWro

司令「しかし、実際に能力者を捕らえるといっても、問題は多いです」

司令「まず、能力者はかなりの人数に上ります」

司令「その数は、私の担当する第一地区でさえ把握しきれていません」

総司『現在判明している者らだけでよい、その他は、正体が割れ次第捕獲ということになるな』


司令「それに、アイドルヒーロー同盟が黙ってはいないでしょう」

司令「彼らの戦闘力はかなりのものです、抵抗されれば、こちらもそれなりの損害を出すでしょう」

総司『地球の危機を金に換える悪党共か……』

総司『義を持たぬ輩など恐れるに足りんよ』

総司『世論が反能力者に向けば、連中の力も弱まるだろうしな』

司令「……」


司令「一番の問題は……能力者の協力無しでは地球は守れないということです」

司令「現状のGDFの戦力だけでは……能力者を捕らえてカースの発生を防げたとしても」

司令「宇宙犯罪者をはじめとする異星人の勢力に対抗できないでしょう」

総司『司令……上に立つものがそのような心構えでどうする』

総司『真に地球を、人々の平和を守れるのは我らGDFだけなのだぞ?』

司令「総司令がなんと仰られようと、この命令は承服できません」

総司『では、黙ってカースの発生を見過ごせと、そう言いたいのか』

793: 2013/07/09(火) 04:27:17.90 ID:w0ARctWro

総司『……人類の歴史に、反逆者として名を残すことになるぞ?』

司令「ッ!」

司令「このままアンタに従っていたら、俺の名前が残る前に人類の歴史が終わってしまう!」

総司『……』

司令「(やってしまった……)」

言ってから司令は後悔した。
溜まりに溜まった物が溢れつい熱くなってしまったが、命令違反どころか上官に暴言を吐いてしまったのだ。


総司『なるほど……お前の言い分はよく分かった』

総司『今回の件の処遇は、追って沙汰する』

総司『お前は有能な部下だったが……残念だが、仕方あるまいな』

そう言うと総司令は、通信を切るのだった。

司令「……クソッ!」

司令は、ただ立ち尽くすほか無かった。

794: 2013/07/09(火) 04:28:49.49 ID:w0ARctWro

──次の日──

司令「総司令が……辞職!?」

GDF総司令部からの通信が入った時点で、軍法会議だのの召集だろうと覚悟してはいたが、その内容は驚くべきものだった。
極東方面軍総司令が、辞職をするといった内容の置手紙を残し姿を消したというのだ。

司令「ど、どういうことですか!?」

『彼が何を考えていたのかなど、我々の与り知らぬことだ』

『むしろ、君の方がその辺の事情には詳しいのではないかね?』

司令「……」

『とは言っても、彼と君の間で交わされた会話の内容について、我々は追及する気はない』

司令「(やはり……昨日のやり取りが原因か……? まったく、わからんな……)」


『いずれにせよ、極東方面軍総司令の突然の失踪に際し、代任が必要になった』

『そこで、君に辞令を申し渡す』

『失踪した前任者に替わり、極東方面軍総司令の任を与える』

司令「!!」

司令「じ、自分が……ですか?」

『そうだ、今後も、より一層の健闘を期待している』

『こちらからは以上だ』

言いたいことだけ告げると、総司令部からの通信は途絶えてしまった。
毎度のことながら、一方的である。

司令「(俺が……総司令か……)」

司令「(だが、能力者を捕らえるという命令は撤回されたんだ……)」

司令「(それは喜ぶべきことだろう)」

司令「(問題は他にも山積みだが……やるしかない、か)」


前任者の強硬姿勢のお陰で、GDFに対する世間の風当たりは強くなる一方だ。
司令にとっては負の遺産を押し付けられたようなものだが、戸惑ってもいられない。
敵はいつ何時襲い掛かってくるかも分からないのだ。
対処するべきは相手は敵意を持った侵略者だけではなくなってしまったが、頑張れ皆のGDF!

795: 2013/07/09(火) 04:31:54.48 ID:w0ARctWro
投下終わりです

ベルちゃんが懲らしめてなかったらもっと面倒臭いことになってたよって話でした
そらは洗脳が解けたとはいえ、人間?としてまっさらな状態なので、加蓮がなんとかしてくれるのを期待…

796: 2013/07/09(火) 08:12:28.91 ID:Ydd/voFB0
乙です
加蓮残念かわいい

797: 2013/07/09(火) 08:56:33.93 ID:CsiQa4GCo

まっさらなそらは今度は改めて友達になってもらう側になるのか……

800: 2013/07/09(火) 12:49:12.16 ID:3CZ5FuQnO
言い忘れてた
カース発生の原因が能力者ってのは、
そらが人類仲違いさせるために適当ぶっこいただけなので気にしないでください

人類側は人間そっくりのユズに扮したルシファーがカース操ってるとこ見てるし、
それなりに信憑性はあったと思うけども




【次回に続く・・・】



: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part3