1: 2016/02/03(水) 22:58:22.48 ID:2WXPV9w1.net
にこ「今日は節分」

にこ「あのムカつく二人にせめてもの復讐よ…」

にこ「絢瀬とかいう会長は会うたびに冷たい視線を送ってくるし」

にこ「希はたびたびちょっかい出してくるし」


にこ「あのー」コンコン

にこ「すみませーん」コンコン


にこ「…誰もいないみたいね。よーし」


にこ「鬼はー外ー!」ポイ

にこ「福はー内ー!」ポイ

にこ「希はー外ー!」ポイ

にこ「部員はー内ー!」ポイ

にこ「絢瀬はー外ー!」ポイ

にこ「部費はー内ー!」ポイ


にこ「あーすっきりした」

絵里「…誰?」ガチャ

にこ「」

4: 2016/02/03(水) 23:05:33.38 ID:2WXPV9w1.net
絵里「…ちょっと、なによこれ」

にこ(ノックしても出なかったくせに…なんで!?)

絵里「…矢澤さん」

にこ「ぎくっ」

絵里「あなたがやったの?」

にこ「い、いやいやいやいや」ブンブンブンブン

絵里「…じゃあ、どうしてそこにいるのよ」

にこ「ほ、ほら、その、なんていうか…私は通りすがりっていうか…」

絵里「…じゃあ、あなたが来た時にはこうなっていた、というわけ?」

にこ「そう!そうなのよー!」

絵里「そう…」

にこ(助かったー!!!)

希「お?二人とも何してるん?」

にこ(助かってなかったー!!!)

6: 2016/02/03(水) 23:08:37.21 ID:2WXPV9w1.net
絵里「希…面談はもう終わったの?」

希「うん、パパっと終わらせてきたよ。…で、珍しい組み合わせやね」

にこ「たまたまよ…」

絵里「希、見て…これ」

希「ん?」

希(生徒会室前に散らばった豆、冷や汗かいてるにこっち…あぁ、なるほど)

希「…誰がこんなことしたんやろね~?」ニヤニヤ

にこ(うわ…絶対気づかれてる…)

絵里「矢澤さんじゃないって言うのよ。いったい誰がこんなイタズラを…」

希「…とにかく、いったん生徒会室戻ろか。にこっちもおいで」

にこ「えっ…な、なんでよ…」

希「まあまあ、第一発見者のお話も聞いとかなあかんやろ?」ニヤニヤ

にこ「くっ…」

絵里「…そうね。矢澤さん、どうぞ」

にこ「…失礼します」

7: 2016/02/03(水) 23:12:21.99 ID:2WXPV9w1.net
絵里「好きなところに座って」

にこ「…」ガタン

絵里「…顔色が良くないようだけれど。体調でも悪い?」

にこ「別に…あんたに心配されることじゃないわ」ツーン

絵里「…そう」

希「…あっ」


希(ええこと思いついた。犬猿の仲っぽいこの二人を、せっかくならくっつけてあげよう)

希(にこっちも絵里ちも友達少ないし…うっ)

希(ブーメラン刺さったけどまあええわ)

希(そしたら、にこっちもいちいち生徒会に怯えることもなくなるし…絵里ちも、少しくらい悩みが減るやろ)


絵里「…でも、いったい誰がこんなこと…」ブツブツ


希「にこっち、ちょっと耳貸して」

にこ「?」

8: 2016/02/03(水) 23:15:22.35 ID:2WXPV9w1.net
希「豆まいたの、にこっちやろ?」

にこ「な、なななななんのことぉ?」ダラダラ

希「隠さなくてもわかるって…別に、責める気はないよ」

にこ「な、なら見逃してよ!わざわざ生徒会室に入れるなんて…」

希「そこでや。うちが、肩代わりしてあげる」

にこ「…ホントに?」

希「その代わり、絵里ちと仲直りしてみ」

にこ「は?」

希「にこっちだって、いちいち絵里ちに怯えるんは嫌やろ?それに、友達も少ないし」

にこ「あんたに言われたくないわよ」

希「あはは…」

にこ「…ま、いいわ。あんたが肩代わりしてくれるって言うなら、乗ってあげる」

希(自分のせいでこうなったいうのに、偉そうやなぁ…)

9: 2016/02/03(水) 23:24:18.71 ID:2WXPV9w1.net
絵里「…まずは状況を整理しましょう」

にこ「そ、そうね」

絵里「…私は、生徒会室でうたた寝をしてしまっていたの」

希「絵里ちが?珍しいね」

絵里「ええ。昨日は少し、寝るのが遅くてね…」

希「そっかぁ」

絵里「…しばらくウトウトしていたら、生徒会室のドアに何かがぶつかる音が聞こえたの」

にこ「…」

絵里「そして、ドアを開けたら矢澤さんが居た…と、いうわけ」

希「ほほう、なるほどなるほど」

にこ「…わ、私もたまたま通りがかったら、豆が落ちてるのが目に入ったから、中に誰かいたら教えてあげようと思って…」

絵里「そうだったのね」

にこ「そ、そうなのよ~」

絵里「…というか、なんで豆なのかしら…?嫌がらせならもっと、他に方法があると思うんだけれど…」

にこ「なんでって…節分だからじゃないの?」

絵里「節分?」

にこ「え?」

希「え?」

絵里「え?」

12: 2016/02/03(水) 23:30:57.93 ID:2WXPV9w1.net
希「え、もしかして絵里ち」

にこ「節分知らないの…?」

絵里「…し、知ってるわ」


希(知らんやつやこれ!)


にこ「…え、希、節分知らないとかあるの?」ヒソヒソ

希「…ほら、絵里ち、ロシア暮らしが長かったから…」ヒソヒソ


絵里「…節分。書く季節の始まりの日…の、前日のことよね」チラッ

絵里「季節を分ける、という意味でもあるわ」チラッ

絵里「一般的には、福は内、鬼は外と豆をまいて、年齢の数だけ豆を食べるのよね」チラッ


希(机の下でウィキペディア見とる…)プルプル


にこ「ぷっ…くくっ…」プルプル

希「にこっちアカンて…耐えて…」プルプル

絵里「…ハラショー。鬼は内、というのもあるのね…結局鬼を追い出すのか、内に招くのか…どっちなの…?」

にこ「んぶふっ…!」

絵里「…矢澤さん?」

14: 2016/02/03(水) 23:35:41.22 ID:2WXPV9w1.net
にこ「…生徒会長」

絵里「何よ」

にこ「節分、知らないのね」

絵里「だっ、だから知ってるって…」

にこ「鬼について、外と内の二種類掛け声がある理由、知ってる?」

絵里「し、知ってるわ」

にこ「じゃあ答えてみなさい」

絵里「…」チラッ

にこ「ちょっと」ガシッ

絵里「はっ…!」

にこ「…それはなに?」

絵里「…何かしら」プイッ

にこ「ウィキペディア見てたでしょ」

絵里「み、見てないわ」

にこ「見てた」

絵里「見てない」

にこ「見た」

絵里「見てない」

にこ「見てない」

絵里「見た」

にこ「ほら」

絵里「…くっ」ドンッ

希(いや、それで負けを認めるんかい)

16: 2016/02/03(水) 23:39:40.59 ID:2WXPV9w1.net
にこ「生徒会長」

絵里「何よ…」

にこ「…あんただって人間よ。知らないことだってあるわ」

絵里「…」

にこ「みんな、なんでもは知らないの。知ってることだけしか知らないのよ」

絵里「…矢澤さん…」

にこ「…だから、恥ずかしがることはないわ」

絵里「…じゃあ、教えてちょうだい」

にこ「何を?」

絵里「鬼は内と、鬼は外の二種類ある理由」

にこ「…ふふっ、いいわよ。じゃあ希、教えてあげなさい」

希「おい」

18: 2016/02/03(水) 23:45:57.79 ID:2WXPV9w1.net
希「はぁ…元々豆まきっていうのは、諸説あるけど、都を荒らしに来た鬼の目を、炒った豆で潰して、災厄を逃れた…っていう故事が始まりなんよ」

絵里「へぇ…」

にこ「へー」

希(いや納得してんなや)


希「後は語呂合わせとして、豆と魔目…鬼の目に豆を投げて滅する、魔滅…ってことで、鬼に豆をぶつけて邪気を払い、一年の健康を願う…みたいな感じかな」

絵里「…じゃあ、鬼は内っていうのは?」

希「地域とか神社でバリエーションがあるんやけど、鬼を神様としてる神社やお寺があってな。そこだと、鬼は内って言われてるんよ」

にこ「よく知ってるわね」

希「まあね。あ、あとは苗字に鬼の付くお家でも、鬼は内って呼ばれることが多いらしいんよ」

絵里「ハラショー…」

にこ「…と、いうわけよ。わかった?」

絵里「ええ、わかったわ。ありがとう、矢澤さん」

希(え?うちは?)

20: 2016/02/03(水) 23:49:46.16 ID:2WXPV9w1.net
絵里「…話は戻るけれど、誰が豆をまいたのかしら」

にこ「それは…」

絵里「まあ、目的によっては咎めることができないわね。生徒会に福をもたらそうとしてくれたのかもしれないし」

にこ「鬼退治かもしれないわよ?」

絵里「それは…ちょっと怒るわ」

希「…えーっと、絵里ち」

絵里「どうしたの、希?」

希「…実は豆まいたの、うちなんよ」

絵里「…希が?」

希「そう、うち」

絵里「…」

希「…絵里ち、最近いろいろ抱えてるみたいやったし…ずっと怖い顔してた。だから、絵里ちから少しでも悪いものが消えればいいな、って思ってさ」

絵里「希…」

希「ごめんな、騙してて」

絵里「…ううん、いいのよ」

希(…っと、こんなとこかな)

22: 2016/02/03(水) 23:59:32.40 ID:2WXPV9w1.net
~~~~~~~~~~~~

にこ「さて、豆も片付けたし、万事解決ね!」

希(ホント調子いいなぁ…ちょっとムカつくし、あとでわしわししたろ)

絵里「…矢澤さん」

にこ「何?」

絵里「…疑って、ごめんなさいね」

にこ「いいわよ。気にしてないわ」

絵里「…優しいのね」

にこ「別に」

絵里「…ねえ、矢澤さん?」

にこ「何よ」

絵里「…私たち、仲良くなれるかしら」

にこ「は?」

絵里「…今日、話してみてちょっと思ったの」

にこ「…」

絵里「今まであなたのこと、アイドル研究部に籠っている、曲がった人だと思っていたわ」

にこ「随分言ってくれるわね…」

絵里「…でも、違うのね。あなたを疑った私を許してくれて、節分を知らなかった私を慰めてくれた、優しい人だった」

にこ「…う、うん」テレテレ

希(過大評価しすぎやろ)

絵里「…もし、よかったら、なんだけれど」

24: 2016/02/04(木) 00:06:45.28 ID:QRZrQNEA.net
絵里「…これからも、仲良く…その、友達、とか」

にこ「…矢澤にこよ」

絵里「へ…?」

にこ「矢澤にこ。趣味はオシャレすること。特技はヘアアレンジで、好きなものはお菓子とアイドル」

絵里「え、えっと…」

にこ「…あんたは」

絵里「…絢瀬絵里、です」

にこ「よろしく」

絵里「…よ、よろしく」

にこ「絢瀬さん、アイドルに興味は?」

絵里「アイドル…?」

にこ「そう、アイドル。私がスクールアイドルやってたの、知ってるでしょ」

絵里「…興味はないわ」

にこ「…そう」

絵里「ごめんなさいね」

にこ「ま、いいけどね。希だってアイドル興味ないわけだし」

希「え?それってうちも友達ってこと?」

にこ「…違うわけ?」ジト

希「にこっち…」ジーン

26: 2016/02/04(木) 00:18:24.53 ID:QRZrQNEA.net
~~~~~~~~~

希(絵里ちとにこっちが仲良くなってよかったよかった)

希(…と、思っていたんだけど)


にこ「もっぺん言ってみなさいよ」

絵里「だから、素人にしか見えないって言ったのよ」

にこ「はぁ!?このA-RISEのどのへんが素人だってのよ!」

絵里「そう熱くならないで」

にこ「むきーっ!!あんたねぇ!!スクールアイドルのなんたるかを知らないでしょ!!」

絵里「ええ、知らないわ」

にこ「でしょうねぇ!」

絵里「だったら教えてくれる?節分の時みたいに」

にこ「はぁ?」

絵里「矢澤さんが私に教えてちょうだい、って言ってるの」

にこ「…望むところよっ!!」



希(完全な和解には、まだまだ時間がかかりそうやね…)

28: 2016/02/04(木) 00:23:51.63 ID:QRZrQNEA.net
その後、この3人がスクールアイドルとして出発するのはまた別の話であった。


おわり

29: 2016/02/04(木) 00:24:40.56 ID:AqMZ6ffL.net
三年生好き

引用: にこ(高2)「生徒会室の前に豆まきしてやろう」