1: 2016/10/11(火) 03:06:30.38 ID:wZbFQbAfo

エリカ「――――――っ!」 ガバッ

エリカ「……」

エリカ「夢……」

エリカ「……」

エリカ「もう、1年にもなるっていうのに……」

エリカ「……」

エリカ(……もう、1年にもなるのね)

エリカ(下段ベッドの主がいなくなって、下が無人になってから)

エリカ「…………」

ガールズ&パンツァー 最終章 第4話 (特装限定版) [Blu-ray]

2: 2016/10/11(火) 03:08:33.48 ID:wZbFQbAfo

【注意】
・映画『君の名は。』のネタバレがほんのりあるかもしれません
・地の文も少しですがあります
・戦車は火砕流の中だって突き進むように、多少の矛盾点があってもこのスレは突き進みます

3: 2016/10/11(火) 03:13:46.94 ID:wZbFQbAfo

また、彼女の夢を見た。

どこか苛つくのに放っておけなくて

いつもは頼りないのに、ここぞという時頼りになって

妬んで、憧れて、羨んで、追い掛けて――

色々な感情が混ざっていたせいで、結局、どんな関係だったのか、どう想っていたのかも分からない、彼女の夢。

分かる前に、私の前から消えてしまった。

もう1年も経つと言うのに、行き場のない感情だけが、ずうっと残り続けている。

まるで、主を失い空っぽになっても、次の主がやってこないこの下段ベッドのようだ。

代わりも現れず空っぽになったはずなのに、心の中の場所だけを取って邪魔くさいほどに居座っていた。

4: 2016/10/11(火) 03:20:24.77 ID:wZbFQbAfo

エリカ「……」

エリカ(結局……) ギシッ

エリカ(ここの下段は、新入部員にも割り振られなかった……) ギシッ

エリカ(それでも足りたから、というのはあるだろうけど……) ギシッ

エリカ(もしかしたら隊長は、まだあの子が戻ると期待しているんじゃ……) ギシッ

小梅「ん……」

小梅「あ、おはよう、逸見さん」

エリカ「ああ、ごめんなさい、起こしちゃったかしら」

小梅「んー……まあ、でも、練習休みだからってお昼まで寝るのも何だし、丁度よかったかも」

エリカ「丁度良くないときに起こさないためにも、そろそろベッドの梯子は取り替えて貰った方が良さそうね」 ギシッ

小梅「……いいの?」

エリカ「……何が?」

小梅「いや、てっきり、そういう部品一つとっても思い出があるから、ちょっと軋んでも敢えて換えてないのかなーって思ってたんだけど……」

エリカ「っ……馬鹿馬鹿しい」

エリカ「たかだか寝具に思い出なんてあるわけないでしょ」 ギシッ……トン

エリカ(そう、思い出なんてあるはずない)

エリカ(それこそ、あの子の寝ていた下段ベッドだって、私はなくなったって問題ないとすら思って――――)

エリカ「……」

5: 2016/10/11(火) 03:27:02.53 ID:wZbFQbAfo

エリカ「……」

エリカ「ちょっと」

小梅「?」

エリカ「なにこれ」

小梅「?」

エリカ「空っぽであるべき下段ベッドに、何故かサーキット会場が出来上がっているのだけど」

小梅「ああ、それ……」

小梅「逸見さんが昨日寝た後、明日は戦車道の練習も学校も休みだってことで、皆でちょっと夜更かしをしちゃって……」

小梅「それで直下さんの提案で、皆でミニ四駆をしようってなって」

エリカ「なんでまた……」

小梅「ミニ四駆は火砕流の中だってかっとべマグナムをするし、戦車道に通じるものがあるって直下さんが」

エリカ「正気?」

小梅「それでコースを組み立てたんだけど、普通に歩くのに邪魔だからってことで、一旦そこに置いておこうってなって……」

小梅「あ、でも近いうちに皆でやるミニ四駆大会が終わったら、きちんと片付けるから安心してね」

エリカ「もっと大事な大会があると思うのだけれど」

小梅「でも、ほら、息抜きって大事だし……」

小梅「直下さんも、『ミニ四駆はパーツの交換が氏ぬほど楽だし軽くて泣ける』って言ってたし……」

エリカ「いや、まあ、そりゃあ、息抜きの範囲なら咎めはしないけど……」

6: 2016/10/11(火) 03:29:29.33 ID:wZbFQbAfo

小梅「……」

小梅「やっぱり、みほさんのベッドに物を置かれると、不満?」

エリカ「ハァ!?」

エリカ「何でそこであの子が出てくるのよ!」

小梅「だって、そりゃあ……」

エリカ「あの子は関係ない」

エリカ「ええ、関係ないわ」

エリカ「何も言わずに一人で抱えて、勝手に潰れて、戦車道から逃げ出した子なんか……!」

小梅「……」

7: 2016/10/11(火) 03:43:00.66 ID:wZbFQbAfo

小梅「でも、逃げちゃう気持ちも分かるかなあ……」

エリカ「はぁ!?」

小梅「私も……」

小梅「去年の大会以降、あんまり、戦車道の時間に居場所はなかったし」

エリカ「……」

エリカ「くだらない」

エリカ「誰にだってミスはあるし、それがたまたま大舞台で出ただけでしょ」

エリカ「それを大舞台に上がれもしない有象無象や普段のミスを棚上げしている奴らが好きに言ってるだけじゃない」

エリカ「もしも批難して許される人間がいるとすれば、それは一度もミスなんてしたことのない西住隊長だけよ」

エリカ「あの時がたまたまカバー出来るレベルを越えていただけ」

エリカ「敗戦は私も含めて全員が重く受け止めなくちゃいけないし、誰かのせいにだけすればいいわけじゃないわよ」

エリカ「だから、そんなくだらない罵倒や陰湿な嫌がらせなんて、気にもとめなければいいの」

エリカ「西住隊長だって、気にするなっておっしゃってたんだから」

小梅「……逸見さん、顔とか雰囲気に似合わず意外とちょっと優しいよね」

エリカ「当然のことを言ったまd……今しれっと小馬鹿にしなかった?」

小梅「気のせいだと思う」

エリカ「……まあ、いいわ」

エリカ「……そりゃあ確かに小梅はミスを、あの子は自分の選んだ選択肢と勝利を両立できなかったことを責められても仕方がないわよ」

エリカ「無責任で八つ当たりみたいな批判の言葉は無視していいけど、実力が足りなかったことは受け止めなくちゃいけない」

エリカ「……そのうえで、成長して黒森峰に恩返しをするのが、連覇の歴史に土をつけた者の責任でしょ」

小梅「……」

エリカ「なのにあの子は、逃げ出したのよ」

エリカ「一人で勝手に抱えて、潰れて……」

エリカ「逃げ出したのよ!」

8: 2016/10/11(火) 03:50:13.36 ID:wZbFQbAfo

小梅「……逸見さんは、強いよね」

エリカ「……はあ?」

エリカ「別に、強くは……」

小梅「私は……頭で分かってても、無理だった」

小梅「同じ車両に乗ってて一緒に戦犯扱いされた仲間と固まって、ずっと泣いてるだけだった」

小梅「……」

小梅「それで……ありがとうすら、言えなかった……」

小梅「同じ車両の人達からも責められてたみほさんは、きっと私よりも、孤独だったはずなのにね」

エリカ「……」

小梅「だから私は……みほさんを、責める気には、なれないかな……」

小梅「それにほら、私は何だかんだで成長できたなーって思うし、みほさんも、転校を切っ掛けに何か成長するかもだし……」

エリカ「そんなこと、あるわけないじゃない」

エリカ「……道っていうのは、前に向かう者にだけ開かれているのよ」

エリカ「あの子の気持ちなんて、理解できるわけないでしょ」

9: 2016/10/11(火) 03:52:36.79 ID:wZbFQbAfo

小梅「確かに、本人か、本人に近い存在にでもならなきゃ分からないのかも」

エリカ「……」

エリカ「ふん」

エリカ(何よ、それだとまるで私が近い存在じゃなかったみたいに……)

エリカ「……」

小梅「?」

小梅「あれ、どうかしたの?」

エリカ「……いいえ、なにかちょっと寝起きで思考が迷走しただけ」

エリカ「朝は弱いのよ」

小梅「でも夜もあんまり強くなかったような……」

小梅「一日通して最弱なんじゃない?」

エリカ「ちょっと」

小梅「強い時間帯とかあるの?」

エリカ「あるわよランチタイムとか」

10: 2016/10/11(火) 03:58:44.34 ID:wZbFQbAfo

エリカ「……っていうか、もしかして私のこと嫌いなの?」

小梅「そんなことないけど」

エリカ「どこか辛辣だし」

小梅「愛情表現だよ」

エリカ「……」

小梅「疑ってる?」

エリカ「……」

小梅「針の筵だった私達が戦車道の時間を何とかやれてたのは逸見さんのおかげなんだよ」

小梅「あの時から、逸見さんのことは大好き」

小梅「私、多分、逸見さんで、その……頑張ればヌけr」

エリカ「言わないで」

小梅「それに、証拠になるか分からないけど、味方についてもらった当時は逸見さんをオカz」

エリカ「聞きたくなかった!!」

小梅「何なら証拠としてこの場でヌk」

エリカ「そんな側面は知りたくなかったし出来ることなら夢であって欲しいほどなんだけれど」

11: 2016/10/11(火) 04:04:40.40 ID:wZbFQbAfo

小梅「まあ、それは冗談として……」

エリカ「その冗談は笑えないわよ」

小梅「逸見さんの恋愛遍歴ほどじゃないよ」

エリカ「……は?」

小梅「初恋の顛末とか」

エリカ「は?」

小梅「まあ、それは置いておくとして……」

小梅「実際、私は本当に逸見さんには感謝してるの」

エリカ「いや、ていうか恋愛遍……は?」

小梅「逸見さん、すごくひたむきで、だからこそ逃げるような子が駄目なんだろうけど……」

エリカ「っていうか恋愛トークとか黒森峰で誰かに話した覚えないんだけど誰から聞いたのそれ」

小梅「きっと、ゆっくり話し合えれば、みほさんとも、また昔みたいに仲良くなれると思う」

エリカ「いや今はその話はいいから」

小梅「いつか……みほさんの心も、分かるようになるといいね」

エリカ「今分かるべきはソレよりもどこから恋愛遍歴探ったのかと広めてる奴は誰なのかだからいやほんと教えなさい」

12: 2016/10/11(火) 04:26:30.13 ID:wZbFQbAfo

ピンポーン

小梅「あれ、誰だろ」 パタパタ

エリカ「ちょ、誤魔化s――」

小梅「あ、隊長」 ガチャ

エリカ「!?」

小梅「どうかされましたか?」

まほ「ああ、いや、エリカと約束がな」

エリカ「……」

エリカ「!?」

エリカ「ちょ、も、もうこんな時間……!?」

エリカ(し、しまった……赤星と戯れすぎた……!)

エリカ「す、すみません隊長、今急いで準備します!」

エリカ「化粧と着替えに20……いえ、10分だけ! 10分だけ頂けますか!?」

まほ「構わんが……」

小梅「あ、これ使う?」

小梅「化粧の手間が一気に削減できる――」

エリカ「えっ、何だか分からないけど助か――」

小梅「――目出し帽とサングラス」

エリカ「――らないわよ! いらないし、時間ないんだから冗談なら枕にでも言ってて!!」

13: 2016/10/11(火) 04:35:06.37 ID:wZbFQbAfo

エリカ「ええと、下着下着……」 バタバタ

エリカ(どうせ誰かに見せるでもないし……)

エリカ(とりあえず近くにあるやつを……!)

小梅「ねえ枕ちゃん、私ね、立派な車長になりたいの」

小梅「そうなんだ、じゃあ私操縦手やるから車長やってみなよ」 ウラゴエ

小梅「わあ、ありがとう」

小梅「ウィン」

小梅「なんで自動ドアなんだよ」 ウラゴエ

エリカ(本当に枕相手に冗談言ってるっ……!)

エリカ(っていうか枕と漫才やろうとしてる……!)

小梅「自動ドアだと弾飛んできたらウィンと開いて操縦席にダイレクトアタックするじゃねえかよ」 ウラゴエ

エリカ(突っ込んだら負け突っ込んだら負け……)

まほ「ふふっ、赤星はなかなかにユニークだな」

エリカ(嗚呼そいつを甘やかさないで下さいでもその優しさがマジキュートあんどリスペクトっ……!)

小梅「去年の大会の直後は、しばらく枕しか会話相手がいませんでしたから……」

エリカ「重ーーーーーーーーーいッ!」

エリカ(って、あの二人に意識を割いてる場合じゃあないッ!)

エリカ(とりあえず最低限の化粧だけでも……) バタバタ

14: 2016/10/11(火) 04:44:29.75 ID:wZbFQbAfo

エリカ「お待たせしました!」

まほ「ん、そんなに慌てなくてもよかったが……」

エリカ「いえ、隊長をお待たせすることなど……!」

まほ「赤星の枕との冗談のおかげであまり待たされたという気はしないがな」 フフ

エリカ「は、はあ……」

まほ「ちなみに最終的にあの枕は今日からシュトゥットガルトと名乗ることになった」

エリカ「……?????」

まほ「聖グ口リアーナは紅茶の名前、アンツィオは料理の名前と、校風の元となった国にちなんだ名前を名乗る学校は少なくない」

まほ「そこで我々も見習って、ドイツにちなんだ単語をつけようという話になってな」

エリカ「いや、あの、本当にこんなこと言っていいか分からないし何なら恐れ多いんですけど、その」

エリカ「枕ですよ?」

小梅「名前がつくと愛着がわきやすいって聞くし……」

小梅「それに、物にだって魂はあると思うから」

小梅「心と心を通わせれば、ヒトとモノとの友情だって……」

エリカ「へえそうよかったわね、隊長行きましょうか」

小梅「ひどい」

15: 2016/10/11(火) 04:52:36.13 ID:wZbFQbAfo

<神社>

まほ「悪いな、付き合わせて」

エリカ「いえ!」

エリカ「お供をさせて頂けて、光栄です」

まほ「……」

まほ「戦車道にまぐれ無し」

まほ「とはいえ去年のような不幸な事態が起こることもある」

まほ「勿論、そうなってももう同じ轍を踏まぬよう努力はした」

まほ「……だが、それでも……」

まほ「怪我をしないためにも、あんなこと、もう起こらないに越したことはないからな」 チャリーン

まほ「……」 パンパン

まほ「……」

まほ「気休め程度の神頼みと、気持ちを高める必勝祈願だ」

まほ「……神などという不確定なものに逃げるなんて失望した、とエリカに言われてしまうかもしれながな」 フフ

エリカ「そ、そんなこと言いませんよ!」

エリカ「隊長が逃げるなんてこと、ありえないのは私が一番良く知ってますし!」

エリカ「隊長は強い方ですから!!」

まほ「…………ああ」

16: 2016/10/11(火) 05:04:33.16 ID:wZbFQbAfo

まほ「折角だ、エリカも何かを願ったらどうだ?」

エリカ「私の願いも、隊長と同じくですが……」

エリカ「そうですね、折角ですので、私も自分でお賽銭をして、黒森峰の必勝祈願をしたいと思います」

まほ「……いや……」

まほ「黒森峰の戦車道のことは一旦忘れて、自分自身のことを願ってほしい」

エリカ「え?」

まほ「エリカには……来年、本格的に黒森峰を背負ってもらうことになるだろう」

エリカ「はい。その器があると、判断して頂けたのなら、是非とも」

まほ「3年のときは、嫌でも黒森峰全体のことしか考えることが出来なくなる」

まほ「そうなる前、今の間は、自分のやりたいことをして、自分だけの戦車道を積み重ねてほしい」

まほ「長い目で見れば――きっとその方が、黒森峰のためになる」

エリカ「隊長……」

エリカ「わかりました!」

エリカ「では不肖逸見エリカ、進言頂いた通り、戦車道に関する個人的望みを――」 バリバリ

まほ「……」

エリカ「……」

まほ「……見事なまでに小銭がないな」

エリカ「……」

エリカ(すっかり忘れてた……)

エリカ(後でオシャレなカフェでも行くだろうと思って、そこで財布に小銭ジャラジャラしてると格好悪いからって全部出したんだ……)

17: 2016/10/11(火) 05:16:12.05 ID:wZbFQbAfo

エリカ「えーい、こうなったらもう奮発して1万円よ!」

まほ「!?」

ヒラッ

パンパン

エリカ「……」

エリカ(誰よりも『戦車』というものを身近に感じられる存在になりたい……)

エリカ(そして『生ける戦車道』なんて呼ばれるくらいの存在になって、隊長達に肩を並べたい……!)

シーン

???『その願い、叶えてしんぜよう』

エリカ「え?」

まほ「どうかしたのか?」

エリカ「いえ、何か今聞こえたような……」

まほ「何か……?」

▼筋力があがった! ピローン
▼技術があがった! ピローン
▼敏捷があがった! ピローン

エリカ「なんというか、こう、パワプロチックというか、ミートカーソル上げられそうというか……」

まほ「……???」

エリカ「いえ、すみません忘れて下さい多分疲れてるんです私」

18: 2016/10/11(火) 05:24:16.03 ID:wZbFQbAfo

<自室>

エリカ(……その後も散々すぎて、思い返すだけで泣けてくるわ)

エリカ(もう内容も思い出せない変な夢のせいで寝不足だったし……)

エリカ(喫茶店でもさほど会話を盛り上げられずに終わった)

エリカ「……」

エリカ(ああ、余計な会話なんてしなくても落ち着けるような人間関係が欲s……)

エリカ「……」

エリカ(だめだめ、そんな非現実的な夢ばっか見ててもしょうがないわ)

エリカ(とりあえずさっさと寝ないと……寝不足の不味さは、自ら証明してしまったし)

19: 2016/10/11(火) 05:27:23.90 ID:wZbFQbAfo
 





 ☆  ★  ☆  ★  ☆





 

21: 2016/10/11(火) 05:30:45.14 ID:wZbFQbAfo

エリカ「……」 zz...

エリカ「……」 zz...

エリカ「……」 モゾモゾ

エリカ「んっ……」 ピクン

エリカ(やだ、誰かに触られ――――!?)

エリカ「……」

エリカ「……」

エリカ「……ん?」

エリカ(誰かしら、これ……)

エリカ(少なくとも、黒森峰の戦車道メンバーじゃあない……)

エリカ(っていうか、体も全然動かないし……)

エリカ「……」

エリカ「……夢?」

22: 2016/10/11(火) 05:33:10.32 ID:wZbFQbAfo

エリカ(明晰夢ってやつかしら……初めて見るわね……)

エリカ(それにしても……) ピクン

エリカ「んっ……」

エリカ「ちょ、なんでさっきから体を弄られっ……!」 ビビクン

エリカ(明晰夢でこんな夢を見るなんて、も、もしかして欲求不満だとでも言うの……?) カァァァァ

???「んー。奥までよく見てみないとなあ」

エリカ「!?」

エリカ(ちょ、いくら夢でもソレは――――)

???「鏡ー」

???「はいよー」

エリカ(鏡ねえ……)

エリカ「…………」

エリカ「!?」

23: 2016/10/11(火) 05:35:47.60 ID:wZbFQbAfo

エリカ「う、嘘……この姿……」

エリカ「わ、私――――」










          ,___、
         ,_}=n==n{______、
         /-/   /l_l| } =(二iニニO
        ,/-/  ,/ヘ__lノ----ノ フ
    ,---i-←'―‐'―‐‐`--.l-----`------、
  __←―i='=====i=i__iニ1l|,ol[i==・|;;;;|llニニl_|_,o__、
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  (大)_、,_、_、,_、_、,_、,_、,_ (><)==),,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,/))==)
  ヽ'_i_,),i_,),i_,)i_,),i_,),i_,),i_,),i_,)>ノ==ノ ̄ ̄ ̄ ̄'ノ==ノ
    ` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´










 

24: 2016/10/11(火) 05:36:45.30 ID:wZbFQbAfo






エリカ「私、IV号戦車になってる――――!?」






 

27: 2016/10/11(火) 07:13:45.12 ID:/EkUCSQ0o
そこかい

40: 2016/10/11(火) 18:37:43.38 ID:wZbFQbAfo

エリカ「……」 ポカーン

???「うん、この子は、これで大丈夫そうかな」

エリカ「……」 ポカーン

エリカ「……はっ!」

エリカ「そっか、私、戦車になって整備されてる夢を見てるのね……」

???「意外となんとかなりそうだね」

???「一晩で壊れた戦車五台修理って聞いた時はどうなることかと思ったけど」

エリカ「夢じゃなきゃ、そんなワタミも驚くブラック業務委託があるわけないものね……」

???「もうこんな時間か」

???「仮眠は終わってからにして、総仕上げにかかるか!」

エリカ「……」

エリカ「よく見たら、窓からうっすら陽が……」

エリカ「明け方まで作業して五台も直したのね……」

エリカ「私が人間としてこの夢を見ていたら、お疲れ様でご飯くらい奢るのだけど」

???「あー、さすがに授業休みたいなあ」

エリカ「!?」

エリカ「学生!?」

エリカ「このブラック労働従事者の娘達、若々しいと思ったら学生なの!?」

エリカ「労基は何をやっているのかしら……」

エリカ「いや夢にそんなこと言ってもしょうがないんだけど……」

42: 2016/10/11(火) 18:45:31.90 ID:wZbFQbAfo

???「よし、完璧!」

???「これなら生徒会も納得するよね」

エリカ「生徒会が依頼主なのね……」

エリカ「……下請けイジメ、みたいなもの?」

エリカ「別にウチの生徒会に不満はないはずなんだけど……深層心理じゃ生徒会ってものをこんな風に思っているのかしら……」

エリカ「私が動けたら、生徒会にドカンと一発ぶち込んでやるんだけど……」

エリカ「……」 グググ

エリカ「うーん……」 グググ

エリカ「駄目ね」

エリカ「やっぱりそもそも動けないわ……」

エリカ「そもそも体のどこに力を入れたら砲撃できるかも分からないし……」

エリカ「戦車は単独じゃ動けないってことね」

エリカ「喋っても誰にも通じてなかったし、戦車は会話出来ないとか、変なとこだけリアルな夢ね……」

43: 2016/10/11(火) 18:47:59.47 ID:wZbFQbAfo

<数時間後>

エリカ「……」

エリカ「ひ、暇ね……」

エリカ「倉庫の中の景色はさっぱり変わらないし、やることないし……」

エリカ「夢ならもうちょっと色々起きてくれるか、私が起きてくれたらいいのに……」

エリカ「時間をあまりに持て余すわ……」

エリカ「……」

エリカ「歌でも歌おうかしら」

エリカ「……」

エリカ「やーってやるやーってやーるやーってやるぜ」

エリカ「……」

エリカ「……やっぱり駄目ね」

エリカ「これじゃ、まるで……」

エリカ「……」

44: 2016/10/11(火) 18:52:33.02 ID:wZbFQbAfo

<さらに数時間後>

エリカ「……暇すぎる……」

エリカ「夢の中だからか眠るってことも出来ないし……」

エリカ「なんだかやることがなくて枕と喋っていた赤星の気持ちが少し分かってきたわ……」

エリカ「うろ覚えの歌を頭で再生してみるのも大分飽きたし……」

エリカ「結局デイドリームビリーバー、ラストどうやって終わるのか思い出せず頭の中で15分ぐらいずっと流れてたわ……」

エリカ「ずっと夢を見てるけどそろそろ覚めてくれないかしらほんと……」

エリカ「もしくはいっそ荒唐無稽な展開でもしてくれないと、夢の中で退屈に殺されそう……」

ガラガラガラガラガラ

エリカ「!?」

エリカ(誰か来た……?)

ワイワイガヤガヤ

エリカ「結構大所帯ね」

エリカ「まあ、五台あるっていうし、そりゃ大勢なんだろうけど」

エリカ「それにしても他の戦車って何なのかしら」

エリカ「首も振れないから確認できないわね……」

???「うーん、皆結構乗り気だねえ……」

???「初陣ですからねえ。むしろ武部殿のテンションの下がり具合がおかしいのでは……」

沙織「だってぇ! てっきり東京からイケメン高校生講師くらい来るかと思ってたのに!」

エリカ「うーん、この頭のネジも股も緩そうなのが私の車長なのかしら」

45: 2016/10/11(火) 19:02:15.56 ID:wZbFQbAfo

パンパン

エリカ「ん?」

エリカ「あれは確か……西住師範の元に何度か来ていた、西住流の1等陸尉……」

亜美「はい、皆乗り込んで!」

エリカ「あの人が率いるチームの夢を見る、ね……」

エリカ「師事でもしろってお告げかしら」

エリカ「それにしても、私に乗り込むのは誰なのかしら」

エリカ「さっき見かけたロングのゆるふわとショートのゆるふわとストレートの三人でやるには難しいんじゃあ……」

エリカ「……っと」

エリカ「重みが加わった……あの三人はまだ視界にいる……」

エリカ「どうやら氏角にまだメンバーがいたようね」

エリカ「見た目のバランス的に、ショートのストレートかしら」

???「あの、これ、どうやって登るんでしょう……?」

沙織「えっ、分かんない、見てなかった……!」

沙織「あっ、生徒会の人達、踏み台を使ってる」

???「踏み台? でしたら次借り――」

???「どうやら踏み台と言っても人間踏み台みたいですねえ……」

沙織「でも華は私の親友だし、踏み台になんて出来ないよ……」

華「そもそもやるとは言ってないんですけど……」

???「しかも自分が乗る方になる前提なんですね」

エリカ「何やってんのよこの子達……」

47: 2016/10/11(火) 19:09:42.64 ID:wZbFQbAfo

???「ええと、Ⅳ号の場合は、こちら側から足をかけて――」

エリカ「――――!?」

エリカ(この声……)

エリカ(気のせい!?)

エリカ(いや、そんな……)

エリカ(でも、あの子が戦車道をしてるはずなんて……)

沙織「あ、ほんとだ」

沙織「ここからだと登りやすいかも」

華「スカートですので、どこからでも少し躊躇ってしまいますけどね」

エリカ「……」

エリカ「いや……」

エリカ「聞き間違えるはずがないわ……」

エリカ(ずっと隣で鎬を削ってきたのよ)

エリカ(夢に見るほどに)

エリカ(今回だって、夢に見てもおかしくない)

沙織「でも、さすがみぽりんだよね」

沙織「知識が豊富っていうか」

みほ「え、そ、そんなこと……」 アワアワ

エリカ「みほ――――!」

48: 2016/10/11(火) 19:15:00.49 ID:wZbFQbAfo

亜美「じゃ、各チーム役割を決めてくれる?」

亜美「3名のチームは、車長と砲手、装填手」

亜美「4名はそれに加えて装填手、5名は通信手ね」

???「あの、うち6名なんですけど、どうすれば……」

亜美「あら? 貴女は――」

???「あ、ええと、澤梓です。1年の」

亜美「そう。6名チームもいるのね」

エリカ「6人で運用する戦車でも持って無きゃ、無駄な人員ね」

亜美「問題ないわ、役割は色々あるの」

亜美「囮とか」

梓「囮」

亜美「捕虜要員とか」

梓「捕虜要員」

亜美「南斗人間砲弾とか」

梓「ごめんなさいそれはよくわかりません」

エリカ「多分大人しく自分達の乗る戦車名と6人って単語でググった方が早いわよ」

エリカ「……いや聞こえてないでしょうけど」

49: 2016/10/11(火) 19:24:46.91 ID:wZbFQbAfo

沙織「何とかチョウとか何とかシュとか、何が何だか分かんないよお!」

華「もっと私達にも分かりやすい呼び名だといいんですが……」

エリカ「そのくらい理解しなさいよ……」

沙織「だよねー。運転手とかさあ」

華「隊長とか……」

沙織「狙撃手とか」

華「会長とか……」

沙織「養命酒とか」

華「モンシロチョウとか……」

エリカ「ふざけてないで早く決めなさいよ」

???「アレがオチも笑いどころもないのにダラダラ喋るガールズトークというやつなのでありましょうか?」

みほ「わ、私に聞かれても……」 アハハ・・・

50: 2016/10/11(火) 19:27:34.73 ID:wZbFQbAfo

沙織「でも実際どうしましょう?」

沙織「私達のチーム、四人しかいないですし……」

みほ「じゃあ、装填手は通信手と兼任ね」

???「勿論、西住殿がコマンダーですよね」

みほ「ええ!?」

エリカ「そうなるに決まってるじゃない」

みほ「無理無理!!」

エリカ「!?」

???「……」

エリカ「何よそれ……」

エリカ「昔っから自信なさそうで癇に障る所はあったけど……」

エリカ「他の連中に任せられないことくらい、分かるでしょう!?」

エリカ「渋々でもちゃんと適所に収まって働く程度の責任感はあったじゃない……!」

エリカ「それなのに……」

エリカ「こんな脳みそにカニ味噌詰め込まれてるみたいな脳みそゆるふわ女子に命を預けようって言うわけ!?」

沙織「なんだろう、どこかで見ず知らずの人にすっごく馬鹿にされてる気がする」

51: 2016/10/11(火) 19:34:53.66 ID:wZbFQbAfo

華「では、秋山さんは……」

優花里「うーん、私は――」

エリカ「この子犬みたいな方のゆるふわは秋山、ねえ」

エリカ「夢の人物って、初見でも何故か名前を知ってるか、もしくはずっと名無しなものかと思ってたけど……」

エリカ「案外細かく設定されてるのね、この夢」

沙織「もお、くじ引きでいいよお」 ゴソッ

華「私は……なんでしょうこれ……」

華「あおてんあか……でしょうか?」

沙織「そうてんしゅ!」

沙織「さっきみぽりんが言ってたやつ!」

沙織「漢字はちょっと間違ってるかもしれないけど」

みほ「蒼天朱……」 ウワァ

優花里「また随分よりにもよってなチョイスをしましたね……」

エリカ「一昔前の魔法のiらんどか00ホームページで見かけたハンドルネームみたいね」

52: 2016/10/11(火) 19:39:14.25 ID:wZbFQbAfo

優花里「西住殿、お先にどうぞ!」

みほ「私は……っと」

みほ「……」

沙織「どれどれ……」

沙織「あ、どうしよう、みぽりんコマンドー引いちゃったんだ……!」

沙織「コマンドー嫌なんだったよね?」

優花里「私が言ったのはコマンドーじゃなくてコマンダーですよ」

沙織「似たようなもんじゃないの?」

優花里「いやでも、コマンドーって言うと、もっと全然別のものが頭に……」

みほ「そうだね……」

みほ「武器なんか……」

みほ「戦車なんていう武器なんか捨てて、かかっていきたかったのにね」

優花里「西住殿!?」

沙織「重い! 重いよみぽりん!?」

華「お、およそ戦車道の試合直前にする発言と表情じゃないですけど大丈夫ですか!?」

エリカ「その諦めたような笑顔が怖いわ……」

53: 2016/10/11(火) 19:52:18.84 ID:wZbFQbAfo

優花里「ま、まあ、何にせよこれで二席は埋まったわけですし……」

優花里「では私はこれで」 ヒョイ

優花里「」

みほ「?」

華「また変な誤字でも?」

優花里「南斗人間砲弾って書かれてるのですが」

沙織「あと1個なんだっけと思ってたら、さっき教官が言ってたのを思い出して」

エリカ「思い出さなくてよかったやつよそれ」

優花里「あの、南斗人間砲弾が何かご存知で?」

沙織「ううん」

優花里「人間を弾代わりに射出するんですよ」

沙織「!?」

華「!?」

沙織「それ、氏んじゃうんじゃあ……」

優花里「氏ぬでしょうね」

沙織「ひえっ……」 サーッ

華「なんて残酷な……」 サーッ

エリカ「実在しないからそんなポジション」

優花里「それに、装填手とは弾を文字通り装填する人のことなんです」

優花里「つまり……」

華「私が……秋山さんを氏地に追いやる……?」 トゥンク

優花里「あれ!? 何かちょっとトキメイてません!?」

エリカ「ちょ、ヤバイわよこの女!!」

54: 2016/10/11(火) 20:02:14.52 ID:wZbFQbAfo

華「でも、これどうしましょう……」

エリカ「あの脳みそゆるふわの結果を見て、余った一個をそのストレートにやらせたらいいじゃない」

みほ「とりあえず、最後の一つが何なのかを見てみないことには……」

沙織「あ、そっか」

沙織「私のあまりものは――」

沙織「わっ、余り物に福がある!」

沙織「私社長だって!」

優花里「字が違いますよ……!」

沙織「そーなの?」

優花里「そんな移動に手間取ると貧乏神に取り憑かれそうな名前の役職はありません!」

エリカ「そのうえコマンダーとかぶってるわよ」

みほ「あ、あはは……くじ、私が作り直しますね……」

エリカ「よくよく考えれば、何とか長とか言ってた無知の人間にクジ作らせたらそりゃこうなるわ……」

56: 2016/10/11(火) 20:08:06.33 ID:wZbFQbAfo

沙織「じゃあ、改めて決まったことだし、乗り込もっか」

エリカ「……」

エリカ「ん?」

沙織「誰から入るとかあるの?」

エリカ「ちょ、待ちなさい!」

エリカ「あんたらから見ればただのⅣ号かもしれないけど、こっちは人間なのよ!?」

エリカ「人間の中に人間が入るって、出来るわけが――」

華「それでは、お邪魔します」

エリカ「無理無理無理無理!」

エリカ「そんなに入らないから!」

エリカ「ああああああああっ、入ってる! 入ってきてるぅ!!」

エリカ「戦車の搭乗口ガバガバだから痛みとかはないけれども!!」

エリカ「でもっ……でもなんか確実に体の中に何かが入ってきてるぅぅぅぅぅぅ!!」

57: 2016/10/11(火) 20:12:27.49 ID:wZbFQbAfo

エリカ「……」 ビクンビクン

エリカ「は、早く起きなさいよ私……」

エリカ「こ、これ、人として大事な何かが失くなりそう……」 ビビクン

華「……少し、鉄臭いです」

沙織「狭いうえに暑苦しい……」

エリカ「文句言うなら出ていきなさいよっ……!」

エリカ「最悪だわっ……!」

エリカ「おへそより下から体の中に固形物入れたことなんて座薬しかなかったのに……!」

エリカ「感覚的には完全に処O喪失じゃないっ……!」

エリカ「こんな感動もヘッタクレもない……!」

エリカ「……」

エリカ「私にもう少し才能があって、もっとゆとりがあれば、今頃恋人くらい作っていて既に終わらせていたのかしら……」

エリカ「鉄臭い血を股から流して、狭くてあったかいとか言われて……」

エリカ「……」

エリカ「考えたら気が滅入ってきたわ……」

エリカ「この最低な夢といい、欲求たまりまくってるのかしら……」

58: 2016/10/11(火) 20:27:37.72 ID:wZbFQbAfo

沙織「こんなんでドライブするの?」

亜美『それでは、全戦車、パンツァーフォー!』

優花里「へへ、いよいよ戦車を動かすときが……!」

エリカ「い、いよいよ動かされるのね……」 ゲッソリ

華「あの~……どうやって動かせば……」

エリカ「本ッ当に何も知らないのね」

エリカ「……黒森峰にも多少はいたとは言え……」

エリカ「こうも素人集団とはね」

みほ「まず、イグニッションを入れて」

華「これですか?」 ポチッ

エリカ「ひぎっ!?」 ブブブブブ

優花里「いやっほーう、最高だぜーーーっ!」

エリカ「け、痙攣っ痙攣しゅりゅっ!!」 ビクンビクン

沙織「ひ、人が変わった……」

エリカ「人から人よりっ……人から戦車に変わる方がやばっ……た、助けっ……」 ビクンビクンビクンビクン

みほ「パンツァーハイ……」

エリカ「たす……」 ビクンビクン

59: 2016/10/11(火) 20:31:07.06 ID:wZbFQbAfo

華「あの~それからどうすれば……」

エリカ「もういいから!!」 ビクンビクン

エリカ「もうそのままじいっとしてなさい!!!」 ビクンビクン

みほ「アクセルを踏んだら前進」

みほ「前のレバーが操縦桿で、右がシフトレバー」

華「ん……」

エリカ「ちょまっ……」

エリカ「人間として生きてるときは決して味わわない場所に触れるんじゃあないわよ!!」

華「んんんん……」 ギギギギギ

エリカ「~~~~~~~~~~っ!?」

エリカ「だめだめだめだめだめ、そんな風に人の体は出来ては――」

華「重いです……!」

エリカ「やめ――――――――――」

ガコン

エリカ「」 ビクッビク

60: 2016/10/11(火) 20:33:03.72 ID:wZbFQbAfo










みほ「よろしくお願いします」

エリカ「――――――――はっ!」

エリカ「あまりのことに何も考えられずにいたわ……」

エリカ「ならいっそ目が覚めるか、気絶でもしたらよかったのに……」

エリカ「……」

エリカ「さすが戦車……意識がほとんどなくても、操縦されたら動くのね……」

エリカ「自分の意志以外で体が動かされるのって気持ち悪いわ……」

61: 2016/10/11(火) 20:58:39.84 ID:wZbFQbAfo

優花里「いよいよ攻撃開始ですねえ」

優花里「とりあえず撃ってみます?」

みほ「闇蜘蛛に撃っても……」

エリカ「5台で演習ってことは、殲滅戦よね」

エリカ「下手にこちらの場所を知らせるだけの砲撃をする意味なんてないわね」

エリカ「どこかと組めれば作戦の幅が広がるけど、そもそも地形が……」

エリカ「……」

エリカ「って、会話も出来ないのに、たかが夢の戦車戦にマジになってどうするのかしら」

沙織「ねえ、真っ先に生徒会潰さない?」

エリカ「あ、それは賛成ね」

エリカ「粉微塵にして許される枠でしょアレは」

沙織「教官、女の人だったんだもん」

華「まだ言ってるんですか?」

優花里「ある意味イケメンって言われて女子ウケしててもおかしくない人だったじゃないですか」

沙織「私にそっちのケはないの!」

華「……」

エリカ「何でそんなちょっぴり残念そうなのよ……」

エリカ「私にしか見えないからってそういう表情されるとちょっとマジっぽくてツッコミにくいからやめなさいよ……」

62: 2016/10/11(火) 21:03:46.23 ID:wZbFQbAfo

沙織「私が決めていいんでしょ、車長なんだから!」

みほ「え、うん……」

エリカ「ちょっと、こんなのに本当に車長やらせる気!?」

沙織「じゃあ、生徒会チームがいる方へ、前進!」

沙織「……」

沙織「で、どっち?」

ズドーーーーーン

エリカ「!?」

沙織「何!?」

沙織「何が起こったの!?」

エリカ「……不思議な感覚だけど……」

エリカ「車内の状況も、見ることが出来る」

エリカ「戦車の体に馴染んできたってことかしら」

エリカ「外の景色と同時には見られないけど、任意で切り替えはできるのね」

エリカ「外の様子はどうなってるのかしら」

64: 2016/10/11(火) 21:07:22.92 ID:wZbFQbAfo

エリカ「……」

エリカ「なんだろう、どんどん戦車に馴染んでいくというか……」

エリカ「戦車としての生き方が分かってきたというか……」

エリカ「首を動かすと考えるから駄目だったのね」

エリカ「目玉をぐるりと回すイメージ」

エリカ「そうすれば目玉は360度自由に動く」

エリカ「正面部に目がついてるから180度回すと車内が見えるのね」

エリカ「後ろ側の外は氏角だけど……」

沙織「怖い、逃げよう!!」

エリカ「そこは中の人間がどうにかしてくれるでしょう」

エリカ「……」

エリカ「やっぱり不思議な感じだし、良くはないけど……」

エリカ「運転されるのも、そういうもんだとちょっと慣れてきちゃったわね……」 ゲッソリ

65: 2016/10/11(火) 21:10:26.80 ID:wZbFQbAfo

沙織「挟まれた!」

エリカ「へえ、初心者軍団だと思ったけど、普通の作戦を立てる程度の能力がある者はいるのね」

沙織「あっちに逃げよう!」

華「聞こえません!」

沙織「右斜前!!!」

ドグシャァ

エリカ「ちょっとこっちまで痛いからあまり叩き付けないでよ!」

みほ「っ!」

みほ「危ないっ!」

エリカ「え?」

キキィーーーーーーーーーッ

66: 2016/10/11(火) 21:38:03.36 ID:wZbFQbAfo

エリカ「あっっっっっぶなかったわ……」 プハー

エリカ「危うく人を轢き頃すところだったわ……」

エリカ「自分の肉体で人間轢き頃すとか、夢であっても最悪よ……」

エリカ「……」

エリカ(体をどう動かしたのかは分からない)

エリカ(でも……)

エリカ(気のせいじゃなければ、車体が少し言うことを聞いたような気がする……)

エリカ「よく考えると、動かすなと思ったときは操縦桿が硬かったようだし……」

エリカ「基本は操縦される存在だけど、全く介入できないわけじゃないのかしら」

エリカ「操縦手は手元の機械を使い小さな力で大きな戦車を動かす」

エリカ「逆に、戦車は大きな力を持ってすれば、逆に向こうに影響を及ぼせるのかしら」

エリカ「最初は操縦桿を固くしたように、今回は素人でも回避できるように回避行動がとりやすいように動いたみたいだし……」

67: 2016/10/11(火) 21:41:07.97 ID:wZbFQbAfo

エリカ「ということは、こちらの誘導次第でⅣ号の動きは劇的に変わるんじゃないかしら……」

エリカ「ただ、さっきのは無意識だったのよね」

エリカ「ボールが飛んできたらとっさに腕で顔をかばうのと同じ」

エリカ「戦車の体でつい反応したらああなった」

エリカ「……でも、ああなったということは、あの動きをどうにかすれば再現できるはず」

エリカ「アレをまたやれるかどうかで、この車輌の勝利の可能性が大きく変わるわね」

エリカ「……」

エリカ「まあ、夢なんだからどうだっていいと言えばどうだっていいんだけど……」

エリカ「……」

エリカ「でもまあ、例え夢でも戦車道」

エリカ「負けて終わるつもりなんてないわよ……!」

75: 2016/10/12(水) 01:22:06.12 ID:yE/aMg1po

ボガーーーン

沙織「っとと!?」

エリカ「止まってお喋りしてる場合じゃなさそうね」

華「あの、人を保護したから中断してもらうよう頼むのは……」

沙織「やり方わからないよ!」

みほ「と、とりあえず中へ!」

エリカ「そうよ、さすがに人があんなの受けたら氏ぬわよ!?」

沙織「ほら、麻子も!」

麻子「……」

エリカ「……」

エリカ「ん?」

エリカ「私、今、戦車だけど……」

エリカ「さっきから夢なのに痛みは妙にリアルにあるし……」

エリカ「これ、直撃されたら、下手すると痛みをモロに受けるんじゃ……」

エリカ「……」

エリカ「に、逃げるわよ! 全速前進っ!!」

76: 2016/10/12(水) 01:52:46.74 ID:yE/aMg1po

麻子「うっ……酸素が少ない……」

エリカ「文句言うと叩き出すわよ」

優花里「大丈夫ですか……?」

沙織「麻子は低血圧で……」

みほ「今朝も辛そうだったもんね」

エリカ「はぁ!? 今朝ァ!?」

エリカ「ちょ……あ、あんたらまさか……!」

沙織「え、麻子と会っ――」

ドゴーン

沙織「きゃあっ!」

華「ど、どうしましょう、急に操縦桿が固く……!」

沙織「自動車部の整備は完璧だったんじゃないのお!?」

エリカ「あんたまさか、この女のためにまた戦車道始めたとか言うんじゃないでしょうね!!」

沙織「もうやだあ!」

77: 2016/10/12(水) 02:01:42.48 ID:yE/aMg1po

みほ「……」

みほ「停車してください!」

エリカ「はぁ!?」

華「ぐっ……上手く止まらな……」

エリカ「ああもう、わかったわよ!」 ガクン

華「止まった……!」

エリカ「ほら、止めたんだから、全員きっちりさっきの問題発言に言及しなさいよ」

みほ「……」 ガチャ

エリカ「ちょ、逃げるんじゃないわよ!」

優花里「い、今出たら危ないです!」

みほ「二発目までは多分時間があるから大丈夫!」

沙織「た、多分って……!」

エリカ「いや……」

エリカ「おそらく実際まだ来ないわ……」

エリカ「さっきまでの砲撃の感覚からいっても、外に出るならば今……」

エリカ「それにしても、戻り損ねて全滅しかねない行動だけど……」

エリカ「……」

エリカ「なによ、あんた……根っこのところ、全然変わってないじゃない」

エリカ「臆病なくせにどこか大胆で」

エリカ「そのくせ的確に勝利に結びつける」

エリカ「ほんと……腹立たしいわね……」

78: 2016/10/12(水) 02:37:30.08 ID:yE/aMg1po

みほ「ゆっくり前へ!」

エリカ「ふうん……ここを渡るってわけね」

エリカ「いいわ、協力してあげる」

エリカ「大分動き方が分かってきたし、踏み外さないよう手を貸してあげるわ」

エリカ「その代わり――絶対勝ちなさいよ」

ブチブチッ

沙織「きゃあ!?」

みほ「ひゃあ!?」

エリカ「ちょっ、ちゃんと真っ直ぐ進みなさいよ!」

エリカ「このままだと、川に――――」

みほ「……っ!」

エリカ「……」

エリカ「川に落ちそう、か……」

エリカ「やっぱり、深層心理では、まだあのこと、私も引きずってるのかしら……」

79: 2016/10/12(水) 03:52:12.11 ID:yE/aMg1po

ギャーギャー

ワー

エリカ「……ま、まずい!」

ズドーーーーーン

沙織「きゃあああああああああ!!」

エリカ「いっ……」

エリカ「だああああああああああああ!!!!!」

エリカ「な、何よコレいっっっっっっっったい!」

エリカ「か、体がっ! 体がバラバラになるっ!」

優花里「操縦手失神! 行動不能!!」

エリカ「わだっ……私もいっそ……気絶させて……」 ゼハー・・・ゼハー・・・

80: 2016/10/12(水) 03:54:45.90 ID:yE/aMg1po

みほ「……」

みほ「操縦は苦手だけど、私がやるしか……」

ブロロロロロロ

麻子「……」

沙織「麻子運転できたんだ!?」

エリカ「よ、よし、ヤバイくらい痛いし、次貰ったら本当にまずいし、さっさと終わらせるわよっ……!」

麻子「今覚えた」

優花里「今ァ!?」

沙織「さすが学年主席」

エリカ「ええい、どうせ夢、なんだっていいわ!」

エリカ「この際シロートでもなんでもいいから、早く勝つわよ!!!」

81: 2016/10/12(水) 04:43:45.60 ID:yE/aMg1po

そこからは、あんまり覚えてない。

酷い痛みの中、必氏に動こうとしていたように思う。

結局自分の思い通りに動けていたのか、動かされていただけなのかは分からない。

けど――

あの子の声を、指示を、その耳に受けたことだけは、よく覚えている。

簡単な指示だったけど、それでも。

それでもそれは、あの頃の黒森峰にあった、そして今も未来もあり続けると思っていた、

頼りになる車長・西住みほの姿だった。

82: 2016/10/12(水) 04:45:08.89 ID:yE/aMg1po






 ☆  ★  ☆  ★  ☆





 

83: 2016/10/12(水) 05:21:24.41 ID:yE/aMg1po

エリカ「ん……」

エリカ「朝……」

エリカ「ここ……寮の部屋よね……」

エリカ(って、当たり前よね……)

エリカ「……」

エリカ(また、あの子の夢を……)

エリカ(それも、何だか変にリアルな……)

エリカ「……」

エリカ(夢だから、どんどん朧気になるけど……)

エリカ(でも、夢の中で、私、あの子の指揮で――――)

84: 2016/10/12(水) 05:23:42.57 ID:yE/aMg1po

小梅「あっ、逸見さん!」

小梅「おはよう、目をさましたの?」

エリカ「ん……」

エリカ「おはよう」

エリカ「早起きね」

小梅「あ、うん……」

小梅「その……」

エリカ「何よ、歯切れ悪いわね」

小梅「逸見さんが心配で……」

エリカ「……はあ?」

85: 2016/10/12(水) 05:30:32.05 ID:yE/aMg1po

エリカ「昨日って……」

エリカ「……」

エリカ「ああ、隊長に何か聞いたの?」

エリカ「確かに寝不足で少し変なことを隊長には言ったかもしれないけど……」

小梅「……」

小梅「そっか、逸見さん的には、それは“昨日”のことなんだ……」

エリカ「はあ?」

小梅「その……」 スッ

エリカ「そのスマホがどうしたのよ」

小梅「日付。よく見て」

エリカ「……」

エリカ「えっ……」

エリカ「一日、飛んでる……!?」

86: 2016/10/12(水) 05:33:30.20 ID:yE/aMg1po

エリカ「まさか、私……」

小梅「うん……一日中寝ていたの」

エリカ「うそ……」

小梅「本当だよ」

小梅「それも、息もして無くて……」

エリカ「待って」

小梅「試しに口元に紙切れ当ててみたら微塵も揺れないし……」

小梅「氏んじゃってたらどうしようかと……」

エリカ「え、待って本当に」

小梅「動転して救急車を呼びそうになったけど、呼ばなくてよかったあ……」

小梅「直下さんが『救急車を呼ぶって重いんだぞ』って言ってくれてよかったよ」

エリカ「いや見捨てて氏人を出すことの方が重いと思うのだけど」

87: 2016/10/12(水) 05:38:12.46 ID:yE/aMg1po

エリカ「いや、っていうかおかしいでしょ息してないって」

小梅「ほ、本当だよ!」

小梅「直下さんとか、同じ戦車のメンバーとか、色んな人に確認して貰ったもん!」

エリカ「だったらもうちょっと騒ぎになってても……」

小梅「ほら、エリカさんってストレス溜まってそうだし、睡眠時無呼吸症候群ってやつなのかなって」

エリカ「ストレス溜めてそうって思ってくれてるならもう少し手間をかけさせないでくれると有り難いんだけどね」

小梅「もう、そんなこと言わないでよお」

小梅「睡眠時無呼吸症候群って眠りが浅くて大変っていうし、たまにはゆっくり休ませてあげようと、先輩たちにもお願いしたんだから」

エリカ「それは……まあ、感謝しないこともないけど……」

小梅「安らかに眠れるようにって、お花も備えたし……」

エリカ「亡き者にしようとしてない?」

小梅「そんなことないよ、むしろニュー逸見さんに生まれてほしいと思ってるほどだよ!」

小梅「だから快眠できるよう、近所のフリマで買ってきた、赤ちゃん用のぐるぐる回るやつを天井に取り付けておいたし」

エリカ「はずせ」

88: 2016/10/12(水) 05:43:30.40 ID:yE/aMg1po

小梅「でも、本当に昨日の逸見さんはおかしかったんだよ」

エリカ「今現在進行形で頭上でぐるぐる周り続けてるおもちゃのせいでおかしなことになってるのだけど」

小梅「そんなの目じゃなかったっていうか……」

エリカ「……」

小梅「学校終わりに皆でミニ四駆を整備しようってなったの」

小梅「それで、どうせだから、ガチで戦車みたいなメンテやカラーリングをしようってなって……」

小梅「戦車メンテ用のワックスだったり塗装液だったり、いろんなものを用意したんだけど……」

小梅「そしたらその臭いが部屋に充満して……」

エリカ「だからこんなに臭いのねこの部屋……」

エリカ「まあ戦車道を嗜む者として、慣れてはいるし、別に不快ではないけど……」

小梅「そうだよね」

小梅「普通戦車道をしてる子なら、そういう反応だよね」

小梅「でもね、昨日の逸見さん、寝ていたはずなのに、臭いがした途端何だか幸せそうな笑顔になってたの」

エリカ「……はあ?」

89: 2016/10/12(水) 05:50:29.92 ID:yE/aMg1po

小梅「さらにね、直下さんがワックスをうっかり逸見さんにこぼしちゃって……」

エリカ「は?」

小梅「逸見さんがそれはもうローション相撲の大関みたいな風貌になっちゃったんだけど……」

エリカ「待って」

小梅「そしたら、本当にこの世の幸せ全てをその身に受けたみたいな表情になって……」

エリカ「本当に待って何一つ言ってることが理解できないのだけど」

小梅「ええとね、まず直下さんっていうのは」

エリカ「そこはさすがに分かるわよ!!」

エリカ「っていうか、冗談にも程があるでしょ?」

小梅「ほ、ほんとだよ!」

小梅「直下さん、写メに撮ってラインで拡散してたはずだから、多分頼めば証拠写真送ってくれるし……」

エリカ「あの野郎」

90: 2016/10/12(水) 05:57:43.92 ID:yE/aMg1po

小梅「それから――」

エリカ「まだ何かあるわけ!?」

ドンドン

エリカ「……?」

エリカ「こんな朝っぱらから、一体――」

「赤星、起きているか?」

エリカ「た、隊長!?」

「その声……エリカか?」

「目を覚ましたんだな!!」

エリカ「うっ……」

エリカ(隊長まで冗談を……?)

エリカ(いや、とてもそうとは思えない……!)

小梅「隊長、すごく心配してたんですよ」

小梅「ずっと『睡眠時無呼吸症候群、そういう病気ではないんじゃないか』って言い続けていたし」

エリカ「良心」

91: 2016/10/12(水) 06:03:11.71 ID:yE/aMg1po

エリカ(本当は化粧をしてからお会いしたいけど……)

エリカ(そこまで心配かけてしまったのならっ……!)

エリカ「隊長っ!」 ガチャ

まほ「」 ビクッ

まほ「エリカか……」

エリカ「はい」

エリカ「その……ご心配おかけしました」

まほ「……ああ」

まほ「心配した」

まほ「私が連れ回したせいだとしたら、すまないことをした」

エリカ「あ、頭を上げて下さい隊長!」

エリカ「あれ、本当に楽しかったですし、感謝してるんですから!」

エリカ「隊長のせいなんかじゃありませんし、仮に昨日のことが一昨日隊長と神社に行ったことが原因だとしても!」

エリカ「私は隊長に謝ってほしいなんて思いませんから」

まほ「そうか……そう言ってくれるなら、助かるよ」

92: 2016/10/12(水) 06:09:47.27 ID:yE/aMg1po

まほ「だが……隊長として少しだけお小言を言わせてもらえるなら……」

まほ「体調管理は大事だぞ」

まほ「別に、体調管理は出来てて当然なので甘えずに無理して出てこい、なんて無茶なことを言うつもりはない」

まほ「休むなとも言わない」

まほ「日頃からきちんと休めるときには休み、不調を感じたら回復に全力を注ぐ」

まほ「病気になれば病院を頼り時間をかけてでも完治させる」

まほ「健康的でなくては、戦車道なんて成し得ないんだ」

まほ「努力家なのはいいが、あまり無理だけはしないでくれ」

まほ「……お前まで、失うわけにはいかないんだ」

エリカ「隊長……」

小梅「隊長が……体調のことを……」

小梅(あ、やばい、ちょっとツボ……だめ、堪えないと……) プフッ

エリカ「ちょっと、隊長が素晴らしい話をしてくれてるのよ!」

まほ「ああ、いや、いい、いい、大丈夫だ」

まほ「それより、その、あと、なんだ、朝起きたら鏡を見る癖を……」

エリカ「はい?」

まほ「……」

まほ「いや、なんでもない」

まほ「それじゃあ。今日はちゃんと授業に出るんだぞ」

エリカ「は、はい! ありがとうございました!!」

93: 2016/10/12(水) 06:16:34.09 ID:yE/aMg1po

エリカ「ああ、なんて幸せ……」

エリカ「隊長が私を心配して下さって、しかも訪問してくれるなんて……!」

エリカ「でも鏡って……どういうことかしら」

エリカ「スッピンはよくないってことかしら……」

小梅「……」

小梅「とりあえず……」

小梅「洗面所に行って、アドバイス通り鏡に向かってみて顔でも洗うとか」

エリカ「……?」

エリカ「鏡って、何が――――」

『バカ』『犬』『誰だお前は』その他、諸々

エリカ「な、ななななによこの文字の数々は!?」

小梅「その、さっき話そうとしてたんだけど……」

小梅「色々あったのに全然起きないから、逸見さんの顔をキャンバスに落書き大会が始まって……」

エリカ「あ、あの馬鹿……!」 バタバタ

エリカ「いないっ……もうベッドが空っ……!」

エリカ「直下のバカはどこ!?」 ガルルルル

小梅「ええと、朝から学園艦の最北端までパウワウ捕まえに行きました」

エリカ「かえんほうしゃで焼き尽くしてやろうかしら」

100: 2016/10/12(水) 23:46:20.30 ID:yE/aMg1po

<夜>

エリカ「はあ……今日は散々だったわね……」

エリカ「何よ、オイル拭おうとしたら瞼開けちゃって、そのまま閉じずに眠り続けたって……」

エリカ「私がそんなことしてたっていうの……?」 グギギ

エリカ「それにしてもファラオって!!」

エリカ「ファラオって!!!!」

エリカ「悪口みたいなあだ名付けるなら本人の耳に届かないよう徹底しなさいよ!」

エリカ「はあ……」

エリカ「やっぱりボクササイズは落ち着くわね……」

エリカ「あとは布団でネットサーフィンでもしましょう」

101: 2016/10/13(木) 00:28:02.66 ID:bajvrIOgo

エリカ「……」

エリカ(やっぱり……)

エリカ(睡眠時無呼吸症候群って、そーいう病気じゃないわよね……)

エリカ(むしろイビキというか、変な音は出すみたいだし……)

エリカ(でも私はそういうのもなく、ずうっと静かだったっていうけど……)

エリカ(……)

エリカ(あれは本当になんだったのかしら……)

エリカ「……」

エリカ(あとは何ググろうかしら)

エリカ「……」

カコカコカコ

検索窓『西住みほ 現在』

エリカ「……」

エリカ「アホくさ」 カコカコカコ

エリカ「さっさと寝ましょ」

エリカ「きっと疲れがたまっているんだわ」

102: 2016/10/13(木) 00:32:08.34 ID:bajvrIOgo
 





 ☆  ★  ☆  ★  ☆





 

103: 2016/10/13(木) 00:34:33.15 ID:bajvrIOgo

エリカ「ん……」

エリカ「はっ!」

エリカ「不味い、寝すぎt――――」

エリカ「……」

エリカ「これ……」

エリカ「起きた瞬間感覚で寝坊を理解するやつだと思ったけど……」

エリカ「この体の動かなさといい、この景色といい、まだ夢を見てるみたいね」

エリカ「前に見たのと、同じ夢だわ……」

104: 2016/10/13(木) 00:38:41.62 ID:bajvrIOgo

エリカ「意外と……」

エリカ「夢に入るとすんなり前の夢を思い出せるものね」

エリカ「……」

エリカ「確か、視界を変えるには目玉を動かす感覚だったわね」

エリカ「よいしょっと」 グリン

エリカ「……」

エリカ「!?」

エリカ「ちょ、何やってんのよこれ!?」

エリカ「こんな真っピン……うわっ、三突に旗生えてる……」

エリカ「え、何よあの悪趣味な成金みたいなゴールドは……秀吉でも乗ってるの……?」

エリカ「最悪だわ……戦車を何だと思ってるのかしら……」

105: 2016/10/13(木) 01:15:46.66 ID:bajvrIOgo

エリカ「ま、まさか私も……」

エリカ「……」

エリカ「うげっ、少なくとも中はガーリーに……」

エリカ「何よこのクッションやミラーは……」

エリカ「戦車道に不要でしょ……」

エリカ「大体こんなの転倒した時危ないでしょうに」

エリカ「私の体をこんなにしちゃって……」

エリカ「……」

エリカ「いや違う違う、私の体じゃない!」

エリカ「Ⅳ号をこんなにしちゃって、の言い間違いよ!」

エリカ「いくら夢とはいえ、Ⅳ号を自分と完全に認識するだなんてそんな」

106: 2016/10/13(木) 01:33:36.35 ID:bajvrIOgo

エリカ「……」

エリカ「しっかし暇ね……」

エリカ「戦車道の時間くらいさっさと来てくれればいいのに、夢なんだし」

エリカ「……」

ガラガラガラ

エリカ「!」

エリカ「誰か来――――」

みほ「……」 コツコツコツ

エリカ「あんた……」

107: 2016/10/13(木) 01:42:35.32 ID:bajvrIOgo

みほ「……」 カンカンカン

ガチャ

ストン

みほ「……」

みほ「ふう……」

エリカ「……」

エリカ「なんて顔してンのよアンタは」

みほ「……」

みほ「おかしいな……」

みほ「落ち着く……」

エリカ「ちょっ、何寄りかかってきてるのよ!!」

みほ「……」

みほ「そういえば……」

みほ「昔も、何かあったら、こうして戦車の中で過ごしてたっけ……」

108: 2016/10/13(木) 02:22:55.81 ID:bajvrIOgo

みほ「……」

みほ「私ね……」

エリカ「……なによ」

みほ「……」

みほ「戦車道、嫌いなんだ……」

エリカ「はぁ!?」

みほ「昔は、楽しくやってたような気はするのに……」

みほ「もう、それも思い出せなくて……」

みほ「……」

みほ「色々と、責任とかも、あったのに」

みほ「逃げ出してきちゃった……」

109: 2016/10/13(木) 02:41:16.11 ID:bajvrIOgo

エリカ「何よ……」

エリカ「アンタには才能もあって、環境もあって……」

エリカ「私には逆立ちしたって手に入らないものを持ってるくせに、逃げ出して……」

エリカ「なのに……」

みほ「なのに……」

エリカ「なのにアンタは……」

みほ「この前ね……」

みほ「楽しかったんだ……」

みほ「みんなで、下手くそだけど、頑張って……」

みほ「戦車道、嫌だったのに……」

エリカ「何よそれ……ッ」

みほ「みんな……優しいんだ……」

みほ「一緒に居ると、気楽で、すっごく楽しくて……」

エリカ「何よ……」

エリカ「私だって……あんたの……ッ」 ギリッ

110: 2016/10/13(木) 02:50:36.20 ID:bajvrIOgo

沙織「あれ、みぽりん早いねー」

みほ「あっ、ええと、ちょっと……」 アハハ

沙織「練習試合、近いもんねー」

華「やっぱり、勝ちたいですものね」

優花里「確かに相手は超名門校!」

優花里「ですが、西住殿が率いてさえくれれば!」

麻子「……」

沙織「麻子も何か言いなよー」

麻子「眠い……」

みほ「ふふ……」 クスクス

エリカ「何よ……」

エリカ「戦車道嫌いです、なんて言っておいて……」

エリカ「楽しそうじゃないの……」

エリカ「アンタが嫌だったのは……戦車道じゃなかったんじゃない……」

エリカ「……」

エリカ「何でそれを……」

エリカ「黒森峰から居なくなる前に、言ってくれなかったのよっ……!」

エリカ「貴女のそういう所が、私はっ……」 ギリッ

111: 2016/10/13(木) 03:06:56.97 ID:bajvrIOgo

エリカ「……」

エリカ「楽しそうに、しちゃって……」

みほ「シュトリヒというのは――」

エリカ「……」

エリカ「こんなところで……」

エリカ「こんな素人に、初歩的なことを教えて……」

エリカ「貴女はもっと、レベルの高い所で、上を目指せる存在じゃないっ……」

エリカ「私は……」

エリカ「私は、まだ、アンタに勝ってないのに……」

エリカ「何で、こんなところで――ッ」

112: 2016/10/13(木) 03:16:15.09 ID:bajvrIOgo
 





 ☆  ★  ☆  ★  ☆





 

113: 2016/10/13(木) 03:31:50.97 ID:bajvrIOgo

エリカ「……」 パチ

エリカ「……」

エリカ「最悪の目覚めだわ……」

エリカ「リアリティがあるし……」

エリカ「あれが夢で私の深層心理だとしたら、本当に最悪よ」

エリカ「……」

エリカ「確か……」

エリカ「くそやかましい片眼鏡が、我々大洗女子とか言ってたっけ……」

エリカ「……」

ポチポチポチ

検索窓『大洗女子 戦車道』

エリカ「……」

エリカ「戦車道廃止の記事ばかりね……」

エリカ「……」

エリカ「そりゃそうよね」

エリカ「あんな夢に影響を受けるなんて、とんだ間抜けだわ」

114: 2016/10/13(木) 03:50:29.47 ID:bajvrIOgo

エリカ「……」

小梅「あっ、い、逸見さん……!!」

小梅「その、だ、大丈夫!?」

エリカ「……は?」

小梅「その……」

小梅「昨日、また久しぶりに呼吸が止まってたっていうか……」

エリカ「えっ」

小梅「さすがにそれは睡眠時無呼吸症候群とは違うんじゃないかって、隊長前も言ってたから……」

小梅「隊長、必氏で心臓マッサージをしようとして……」

エリカ(隊長ほんと良心すぎて有り難い……)

小梅「胸と胸の間を押した瞬間、逸見さんの口からハンバーグが」

エリカ「は?」

小梅「胸と胸の間を押した瞬間、逸見さんの口からハンバーグが」

エリカ「二度言われてもやっぱり理解できないんだけど」

115: 2016/10/13(木) 04:35:06.67 ID:bajvrIOgo

小梅「私達も何がなんだかよくわからなかったんだけどね……」

小梅「胸と胸の間を押すと、まるで砲撃のように、口から昨日食べてたハンバーグが発射されて……」

小梅「ほら、あの天井のシミ、昨日発射されたハンバーグが着弾したあとだよ」

エリカ「ええっと、うん、ちょっと待って」

エリカ「ハンバーグって着弾って単語を使うものじゃあないと思うのだけど」

エリカ「ようするに、その、口から吐いたっていうことなの?」

小梅「うん……」

小梅「でも吐瀉物って感じじゃなくて、ちゃんと固形だったよ」

小梅「あと、これ以上部屋が汚れると困るからって、途中で窓をあけて……」

小梅「外のゴミ捨て場に飛んでいくように、直下さんが上半身を持ち上げて調整したんだけどね」

小梅「なんていうか、こう、割りと性格に真っ直ぐハンバーグが飛んでいったの」

エリカ「頭が痛くなってきたわ……」

116: 2016/10/13(木) 04:38:24.64 ID:bajvrIOgo

小梅「とりあえず、隊長も含めて皆いっぱい心配してたんだよ」

エリカ「皆……って……」

エリカ「私のその痴態はどこまで広まったのかしら」

小梅「さあ……」

小梅「とりあえず、この前直下さんがラインで拡散してたけど」

エリカ「あの野郎、SNSに流出するってことはとっても重いのよっ!!」

117: 2016/10/13(木) 04:43:11.96 ID:bajvrIOgo

小梅「あと、隊長もやっぱりすごく心配していて……」

小梅「最初はこの部屋に泊まって看病するって言ってたんだけど……」

エリカ「ええ!?」

エリカ「そ、そんな恐れ多い……!」

小梅「うん」

小梅「その事実知ったら、息吹き替えした逸見さんがそのままハンバーグ喉につまらせて自害しそうだったから……」

小梅「ちゃんと止めておいたよ」

エリカ「ちょっと」

小梅「逸見さん、隊長の通り道に置いてある小石をどけることに命を賭けてるとこあるもんね」

エリカ「私を何だと」

小梅「そう言ったら隊長、何か微妙な苦笑いを浮かべて納得してくれたよ」

エリカ「なに、あんたは羞恥で私を氏に追いやりたいの???」

118: 2016/10/13(木) 04:54:33.89 ID:bajvrIOgo

エリカ「……」

エリカ「ちゃんとお礼と謝罪に行ってこい、なんて言われなくても分かってるけど……」

エリカ「戦車道の授業、今日ないのよね……」

エリカ「まあ、居残り自主練はどうせ出るんだけど……」

エリカ「ああああああ気不味い……」

エリカ「何よハンバーグ射出って!」

エリカ「真っ直ぐ正面に射出って!!!」

エリカ「これじゃまるで……」

エリカ「……」

エリカ「まるで、人間戦車よね……」

119: 2016/10/13(木) 05:16:32.76 ID:bajvrIOgo

エリカ「……」

エリカ「……」 ギュッギュッ

エリカ「……うん、やっぱり射出なんてされないわね……」

まほ「今されても困るがな」

エリカ「わひゃあああああ?!」 ピョイン

まほ「どうやら少々愉快な動きを出来る程度には元に戻ったようだな」

エリカ「た、たたたたた隊長っ!」

まほ「心配したぞ」

エリカ「す、すみません! すみません!」

まほ「いや、いい。エリカが無事ならば、それで」

エリカ「隊長……」 ジュン

まほ「それにしても、変な嘔吐をもうしなくなったようで安心した」

まほ「今のトライで射出されていたら、ハンバーグが通行人に直撃していただろうからな」

エリカ「すみません、無思慮でした……」

まほ「ああ」

まほ「次からは気を付けてくれ」 ポン

エリカ「はい……」

エリカ「……」

エリカ(締める所は締める厳しさがあり、それでいて優しさも感じる……)

エリカ(少し、不器用な所はあるけど、それでも、私より……)

エリカ「……」

エリカ(私にも……これだけの器があれば……)

120: 2016/10/13(木) 05:21:25.69 ID:bajvrIOgo

まほ「……」

まほ「あの病気の症状だが……」

まほ「私でも分かる範囲で調べようとは思ったのだが……」

まほ「どうにも特殊すぎて、なかなかな……」

エリカ「そ、そんな! わざわざ隊長のお手を煩わせるようなことじゃあ……」

まほ「いいんだ、させてくれ」

まほ「エリカには、未来の黒森峰を背負って貰わなくちゃならないんだ」

まほ「……」

まほ「終わってからでは、何もしてやれないからな」

エリカ「隊長……」

121: 2016/10/13(木) 05:25:06.44 ID:bajvrIOgo

まほ「まあ、エリカは私と違ってインターネットを使いこなしているから」

まほ「エリカの方が、こういうのは早く調べられるのかもしれないが……」

エリカ「い、いえ、そんな使いこなしているわけじゃ……」

エリカ「……」

エリカ「それに……」

エリカ「……」

まほ「それに……なんだ?」

エリカ「あ、いえ……」

エリカ「……」

まほ「何かあるなら、言ってみてくれ」

まほ「言ってみて――その後後悔したなら、そう言ってくれれば、私はその内容を忘れることを約束しよう」

エリカ「隊長……」

エリカ「……」 ギュッ

エリカ「ネットでも、調べきれなかったことがあって、その……」

エリカ「私の病気とは、あんまり関係ないと言えばないのですが……」

まほ「?」

エリカ「その……」

エリカ「あの子の……転校先っていうのは……」

まほ「あの子……ああ、みほのことか……」

まほ「そういえば二人は、友人だったな」

エリカ「……」

エリカ(友人、か……)

エリカ(正直――本当にそうだったのか、大分怪しいけどね……)

122: 2016/10/13(木) 05:36:20.89 ID:bajvrIOgo

まほ「……そうだな」

まほ「エリカには教えておこう」

まほ「みほは――」

まほ「今、大洗女子にいる」

エリカ「――――――っ!」

まほ「……大洗女子は、遠い昔に戦車道をやめた学校だ」

まほ「みほとはもう、戦車道で見えることはないだろ」

エリカ(う、そ……)

まほ「……」

まほ「私は立場上、もう、みほの傍に居続けることは出来ない」

まほ「だから……」

エリカ(大洗って、あの夢の……)

まほ「エリカは、せめて……」

まほ「戦車道以外の道ででも、みほの傍にいてやってくれ」

エリカ(いや、でもまさか……)

まほ「……」

まほ「エリカ?」

エリカ「あ、はい!」

まほ「聞いているか?」

エリカ「も、勿論です!」

まほ「そうか、ならいいんだ」

123: 2016/10/13(木) 05:40:13.54 ID:bajvrIOgo

まほ「……それじゃ、私は授業があるから」

まほ「放課後の訓練には顔を出すか?」

まほ「今日は大事を取って休んでいても構わないが」

エリカ「……」

エリカ「そう、ですね」

エリカ「少しばかり気分が優れないので、今日も休めたらと」

まほ「わかった。伝えておこう」

まほ「……」

まほ「さっき、言ったこと……」

まほ「頼んだぞ、エリカ」

エリカ「はい!」 パァァァァァ

まほ「じゃあな、お大事に」 スタスタスタ

エリカ「ありがとうございました!!」 ペッコリン

エリカ「……」

エリカ「頼むと言われて思わず笑顔で応えたけど……」

エリカ「何を頼まれたのか、全く聞いていなかった……」 ズーン

124: 2016/10/13(木) 05:51:06.20 ID:bajvrIOgo

エリカ「今更聞けないし、どうしたら……」

エリカ「今日は休んでもいいって言ってたし、私の身を案じてくれていたし……」

エリカ「とりあえず、急がないとまずいような内容じゃないだろうけど……」

エリカ「ああ、どうしよう……」

エリカ「……」

エリカ「いや、どうしようは、それよりも……」

エリカ「昨日の夢と、記憶にない昨日の私のことよね……」

エリカ「ありえない……」

エリカ「ありえないはずだけど……」

エリカ「でも、でも……」

エリカ「あの子の転校先は当たっていたし……」

エリカ「ネットにない情報だから、どこかで無意識に目にしていたり耳にしていた情報じゃない……」

エリカ「それに、あの夢を見た日は、私の意識がなくて、まるで人間戦車みたいになっている……」

エリカ「た、多分、間違いない……」

エリカ「そんなの、信じられないけど……」

エリカ「でも、隊長すら知らない大洗戦車道復活が、本当のことだとしたら……」

エリカ「私はリアルな夢を見ていたんじゃあない……」

エリカ「Ⅳ号戦車に憑依していたんでもない……」

エリカ「私……私……Ⅳ号戦車と――――」

125: 2016/10/13(木) 06:04:48.40 ID:bajvrIOgo

エリカ「今更聞けないし、どうしたら……」

エリカ「今日は休んでもいいって言ってたし、私の身を案じてくれていたし……」

エリカ「とりあえず、急がないとまずいような内容じゃないだろうけど……」

エリカ「ああ、どうしよう……」

エリカ「……」

エリカ「いや、どうしようは、それよりも……」

エリカ「昨日の夢と、記憶にない昨日の私のことよね……」

エリカ「ありえない……」

エリカ「ありえないはずだけど……」

エリカ「でも、でも……」

エリカ「あの子の転校先は当たっていたし……」

エリカ「ネットにない情報だから、どこかで無意識に目にしていたり耳にしていた情報じゃない……」

エリカ「それに、あの夢を見た日は、私の意識がなくて、まるで人間戦車みたいになっている……」

エリカ「た、多分、間違いない……」

エリカ「そんなの、信じられないけど……」

エリカ「でも、隊長すら知らない大洗戦車道復活が、本当のことだとしたら……」

エリカ「私はリアルな夢を見ていたんじゃあない……」

エリカ「Ⅳ号戦車に憑依していたんでもない……」

エリカ「私……私……Ⅳ号戦車と――――」

126: 2016/10/13(木) 06:05:38.12 ID:bajvrIOgo






エリカ「入れ替わってる……!?」






 

136: 2016/10/14(金) 00:59:35.63 ID:YYvzAT34o
眠たいので早く終わりそうですが、そんな何日にも渡ってやるようなネタでもないので、サクサクやりたいと思います

137: 2016/10/14(金) 01:05:53.74 ID:YYvzAT34o

(ここで2度目くらいのオープニング曲がスタート)

エリカ「……」 ポチポチポチポチ

メール『メモ』

メール『今まで起きた入れ替わりは二回』

メール『相手はいずれも大洗女子のⅣ号戦車』

メール『車長はあの西住みほ』

メール『操縦手や、みほと寝たというナルコレプシー』

エリカ「……何って名前だったかしら……」

エリカ「まあいいわ」

エリカ「夢のように記憶が薄れきる前に、メモを取らないと……」

メール『通信手は脳味噌ゆるふわタケベサオリ』

メール『装填手は小型犬ゆるふわアキヤマユカリ』

メール『砲手はトリガーハッピー黒髪ハナ』

エリカ「……」

エリカ「前、あれだけ練習してたのよね……」

エリカ「……」

エリカ「あの子が、大洗で戦車道を続けてるのは、やっぱり納得いかない……」

エリカ「私は……戦車として、どうしたら……」

エリカ「……」

エリカ「……」

エリカ「いやいやいや、何よ戦車としてって、落ち着きなさい私」



138: 2016/10/14(金) 01:32:46.59 ID:YYvzAT34o

エリカ「とにかく、情報がいるわね……」

エリカ「特に、入れ替わってた時の“私”の情報」

エリカ「……」

エリカ「今のところ、動き回ったって報告は聞いてないのよね」

エリカ「……赤星が言うとおり、物にも魂はあった」

エリカ「でも自我まではない、植物みたいなものってことかしら」

エリカ「問題は、胸の間を押したらハンバーグが射出されるやつよね……」

エリカ「おそらく砲撃スイッチってことなんだろうけど……」

エリカ「心臓マッサージ不要って皆に伝えるとはいえ、初見の人間にされたら押されるのは間違いない」

エリカ「……ハンバーグ以外吐いてたかきいて、ハンバーグだけなら夕飯以外は弾にならないってことかもしれないし……」

エリカ「これから毎日、夕食はウィダーインにでもしようかしら……」

139: 2016/10/14(金) 01:42:05.58 ID:YYvzAT34o

エリカ「赤星」

小梅「どうしたの、逸見さん」

小梅「ハンバーグ吐きそうなら、ポリバケツか的を用意するけど」

エリカ「水洗便所でもう一度水難遭ってみる?」

小梅「それで、どうしたの逸見さん」

エリカ「ちょっと、長文のメール送ったから」

小梅「メール?」

エリカ「……昨日とか、この前とか、おかしくなったことがあったでしょ」

エリカ「私なりに、そのときの情報をまとめて、対策を書いておいたわ」

エリカ「まあ基本は放置してってことなんだけど……」

エリカ「またああならないとは限らないし」

エリカ「またああなったら、その時どうだったか、貴女に観察と報告を頼みたいの」

小梅「ふえ、私でいいの?」

エリカ「……ま。ルームメイトだしね」

小梅「ルームメイトなら、直下さんもだけど」

エリカ「あの子は、まあ」

140: 2016/10/14(金) 02:11:47.47 ID:YYvzAT34o

エリカ(まあ、これで少しでも傷を浅くするとして……)

エリカ(実際これからどうするかよね)

エリカ(そんなに頻繁に入れ替わらないといいんだけど、でも……)

エリカ(この感じの頻度だと、きっと、また――)

エリカ(……)

エリカ(眠れないわね……) パカ

エリカ「……」 カチカチカチ

『西住みほ』

エリカ(……)

エリカ(載ってる情報は、どれを見ても、私も知ってるものばかりね)

エリカ(西住流の後継者である西住隊長の右腕として、最高のパフォーマンスをする、史上最強のナンバー2……)

エリカ(……)

エリカ(あの子は……)

エリカ(私がどうしても欲しかったソレを、欲してなんてなかったのね……)

エリカ(そんなこと書いてる記事、どこにもないけど……)

カチカチカチ

エリカ(あ、水着グラビア)

小梅「あ、ごめん逸見さんそういうことするならお手洗いを使ってほし――」

エリカ「わざわざベッドを登ってきてまで何出歯亀してるのかしら」

小梅「ぼ、ボクササイズでキレを身に着けた右ストレートで梯子から落とすの普通に危ないよ逸見さん」 イテテ

141: 2016/10/14(金) 02:18:56.44 ID:YYvzAT34o

直下「どうしたの、何かすごい音したけど」

エリカ「なんでもないわよ、アホがちょっと落下しただけ」

小梅「あのね、逸見さんが眠れぬ夜は君の名をググるよ的なロマンチックな行為を」

エリカ「赤星」

直下「え、誰の名前誰の名前?」

小梅「それがね、みほさんだったの」

エリカ「赤星!!!!」

直下「あー……やっぱり、逸見さんってそうなんだ」

小梅「さっき昔戦車道雑誌でいやいや撮ったっていうグラビア画像を……」

エリカ「バカ星!!!!!!!!!!!!!」

142: 2016/10/14(金) 02:33:08.74 ID:YYvzAT34o

直下「まあまあ、思春期ならそういうことも」

エリカ「ちょっと!」

小梅「ツンデレってやつだったんだね」

エリカ「ここぞとばかりに氏ぬまでマウント取ろうとしてくるんじゃないわよ!」

直下「バイブもローターも持ち込み禁止だからないけど……」

直下「代わりにプラズマダッシュモーター使うか?」

エリカ「使うわけないでしょそんなもん!!」

直下「じゃあ、スタビライザーポール」

エリカ「使わないってーの!」

エリカ「大体実際使われたらアンタちょっと困るでしょうが!」

143: 2016/10/14(金) 02:38:43.34 ID:YYvzAT34o

エリカ「はあ……」

エリカ「まったく頭が痛いわ……」

エリカ(天下の黒森峰とはいえ、やはり所詮は女子高校生ね……)

エリカ(マリオカートに夢中でミーティングに来ないような子もいるし)

エリカ(やはり戦車道の授業程度だと、練度はあれど、意識の面で一流なのは極わずか、か)

小梅「あ、それと逸見さん」

エリカ「なによ、私はもう寝るわよ」

小梅「夕食、食べてなかったみたいだけど……」

小梅「食べても大丈夫だよ」

エリカ「……はあ?」

小梅「そりゃあ、また病気かなにかで発射されちゃうかもしれないけど……」

小梅「お部屋が汚れるだけなら、一緒に片付ければいいだけだから」

小梅「ご飯を抜いて、逸見さんが隊長崩しちゃう方が、その、嫌だなって」

144: 2016/10/14(金) 02:58:40.00 ID:YYvzAT34o

エリカ「……」

エリカ「ふん」

エリカ「私のこと気にかけてる暇があるなら、早く寝なさい」

エリカ「明日は朝早くから練習あるでしょ」

小梅「ふふ……そうだね」

小梅「おやすみ、逸見さん」

エリカ「……おやすみなさい」

直下「布団に潜って指挿れたあとはちゃんと洗ってから寝るんだよ」

エリカ「出来ればそのまま眠りから覚めてこないで」

145: 2016/10/14(金) 03:07:02.59 ID:YYvzAT34o
 





 ☆  ★  ☆  ★  ☆





 


146: 2016/10/14(金) 03:39:01.09 ID:YYvzAT34o

エリカ「ん……」

エリカ「くあ……」

エリカ「……」

エリカ「ああ、またこの景色」

エリカ「ということは……」

ガラガラガラ

みほ「……」

華「いよいよですね」

みほ「うん……」

エリカ「やっぱり、今日はⅣ号になってるってことね」

147: 2016/10/14(金) 03:42:01.79 ID:YYvzAT34o

エリカ「……ん?」

エリカ「人数が少ないような……」

エリカ「秋山と武部、あとあのナルコレプシーはどこに……」

華「本当に、大丈夫なのでしょうか」

みほ「うん」

みほ「冷泉さん、朝、思ったよりも弱いみたいで……」

みほ「迎えにいかないと……」

エリカ「……」

エリカ「はあ!?」

エリカ「あ、あの女を朝から私で迎えに行く気なわけ!?」

エリカ「さすがに甘やかしすぎというか、何、あんたアイツの寝起き知ってるくらい、その……!」

華「あ、あら?」

みほ「どうか、しましたか?」

華「いえ……なんだか、全然上手くエンジンがかからなくて……」

エリカ「そんな舐めた理由で戦車を動かそうなんてねぇ」 ガミガミクドクド

148: 2016/10/14(金) 04:02:34.28 ID:YYvzAT34o

みほ「ちょっと見せて下さい」

エリカ「あっ、ちょ、バカどこ触って……!」

みほ「朝早くからごめんね」

みほ「まだ眠いかもしれないけど……」

みほ「動いてくれると嬉しいかな、なんて」 サワッ

エリカ「ひゃうっ」

華「……?」

華「こういうときは、話しかけると効果が……?」

みほ「あ、ううん」

みほ「ええと、なんていうか……」

みほ「小さい頃、上手く動かないときは、こうしてたんだ」

みほ「訓練では、お姉ちゃんの補佐をするため車長に専念させられたけど……」

みほ「それでもよく、お姉ちゃんと一緒に戦車を動かすのが好きで」

みほ「でも上手く動かない度、こうしてお願いすると、不思議と、ちょっと動いたりしたんだ」 アハハ

エリカ「ばっかじゃないの」

エリカ「そんなオカルト、効果あるわけないでしょ」

エリカ「……まあ、今の私がオカルトの極みみたいなものではあるけどさ」

華「ふふ……とても素敵だと思います」

華「お花だって、言葉をかけて育てると綺麗になると言いますし」

華「きっとそういう戦車への愛情が、上手く動かすコツなんですね」

エリカ「……」

エリカ「愛情、ね……」

149: 2016/10/14(金) 04:05:19.22 ID:YYvzAT34o

エリカ「まったく、特別に力を貸してあげるんだから感謝しなさいよ」 キュラキュラキュラ

華「ええと、次右でしたっけ」

みほ「はい、そこで止めて下さい」

華「空砲というのは……」

みほ「これを」

エリカ「……空砲ってまさか」

みほ「目覚まし作戦、開始します!」

華「照準はどこに合わせればいいんでしょう」

華「空砲ですし、あそこを歩いているおじいちゃんの頭とかでも……」

エリカ「ねえこの娘マジで砲手やらせて大丈夫? いつか人殺さない?」

150: 2016/10/14(金) 04:08:12.62 ID:YYvzAT34o

ズドン

華「はぁ……」 ウットリ

エリカ「ううん……」

エリカ「やっぱり自分の体で砲撃されるって変な感じね……」

エリカ「人間ポンプってこんな感じなのかしら……」

おじさん「なんだ!?」

おばさん「どうしたの!?」

みほ「すみません、空砲です」

おじいさん「大変じゃあ、空襲警報だそうじゃ!」

みほ「あ、ええと、そうじゃなくて、その、音だけを出すための」 ワタワタ

おじいさん「防空壕じゃあ、防空壕に駆け込むんじゃあ!」

華「どうしましょう、やはり撃っておきましょうか……?」

エリカ「やはり、じゃないわよ何狙いを定めてんのよ」

151: 2016/10/14(金) 04:11:11.05 ID:YYvzAT34o

優花里「予想より大事になってしまいましたねえ」

沙織「もうっ、麻子のせいだからね」

麻子「私じゃなくて、こんな時間に練習試合を組んだやつのせいだろう……」 グゥ

エリカ「まったく、朝っぱらから……」

エリカ「……」

エリカ「って、今日が練習試合だったのね」

エリカ「……」

おばさん「あらⅣ号、久しぶりに動いてるとこ見たわねえ」

エリカ「まあ、戦車道が注目されるのは、悪くないことではあるし……」

エリカ「大人しく動いてはあげようかしら」

エリカ「……それで素直に叩き潰されて、戦車道の奥深さと難しさを痛感したらいいんだわ」

152: 2016/10/14(金) 04:17:41.99 ID:YYvzAT34o

エリカ「しかしまあ……」 キュラキュラキュラ

エリカ「意外と声かけられるものなのねえ」 キュラキュラキュラ

エリカ「コンビニもあったし、ググったら関東って書いてあったし、てっきりもっと都会で冷たいみたいなのを想像してたけど……」 キュラキュラキュラ

エリカ「……」

優花里「歯ァ磨いて下さい」

麻子「……ん……」

華「顔も洗ってくださいね」

エリカ「しかし本当に戦車の中とは思えないほど日用品持ち込んでやがるわね……」

エリカ「こんなにたくさんいらないでしょ……」

麻子「……」 シャコシャコシャコ

エリカ「歯ブラシとか、戦車に置きっぱなしにするものじゃないんだからね」

エリカ「聞いてる、そこの問題児」

麻子「……」 グチュグチュグチュ

エリカ「……って、聞こえてないのよね、私の声って」

麻子「ぶえっ」 ペッ

エリカ「ちょっ、おまっ、何口ゆすいだ水普通に吐き出してるのよ!!!!!!」

沙織「きゃあっ、ちょ、麻子!」

優花里「わわっ、外! 外に吐いて下さい!!」

麻子「……悪い、つい……」

エリカ「つい、じゃないわよ!!!!」

エリカ「あんた人の体の中を何だと思ってるわけ!?」

エリカ「ああもうやっぱりこの女大っ嫌いだわほんと!!!」

華「あわわ、また上手く動かなく……」

みほ「ええ!?」

優花里「試合前なのに!?」

沙織「もう、精密機器っぽいのに水なんてかけるから!」

麻子「問題ない……あとでちゃんと操縦してやる……」

エリカ「あああああ……確かに心地よく動けるテクニックはあるけど、歯向かってやりたくなるわ……」

153: 2016/10/14(金) 04:21:09.49 ID:YYvzAT34o

杏『よっすー西住ちゃん』

みほ「おはようございます」

桂里奈『合流ー!』

梓『おはようございます』

エリカ「続々集まってるけど……」

エリカ「集まれば集まるほど異質になるというか……」

エリカ「やっぱりこのカラーリングはおかしいというか……」

エリカ「幼稚園児に塗り絵させました、みたいな目に悪いカラーリング、もうちょっと何とかならなかったのかしら……」

ボボォーーーッ

沙織「でかっ!」

華「あれが聖グ口リアーナの戦車ですか……」

エリカ「……」

エリカ「はあ!?」

エリカ「聖グ口リアーナ!?」

エリカ「あんたらあの練度で聖グ口リアーナに挑もうっていうわけ!?」

154: 2016/10/14(金) 04:28:01.12 ID:YYvzAT34o

エリカ「いや、馬鹿でしょ」

エリカ「勝てるわけないし、ボッコボコにされればいいわ」

エリカ「戦車道を舐めたら駄目ってことを痛感したらいいのよ」

沙織「強そう~……」

沙織「でも、絶対勝とうね、みぽりん!」

エリカ「あのねえ」

エリカ「貴女達程度がそう易易と勝てるほど、四強の壁っていうのは――」

優花里「西住殿が指揮を取ってくれるなら、百人力ですよ!」

エリカ「……」

みほ「あはは……頑張るね」

沙織「あんこう踊り、絶対回避しなくちゃだもんね!」

エリカ「……」

エリカ(確かに、どうしようもない素人集団だし、痛い目を見て然るべき連中)

エリカ(でも……)

エリカ(この子なら……もしかして、そんな連中を使ってでも勝てる……?)

エリカ(少なくとも隊長なら)

エリカ(隊長なら、たったお一人で、聖グロ5両に対して五角以上に立ち回れる)

エリカ(……)

エリカ「私だって、隊長の背中を追い掛けて、横に並ぼうと思ってきた身」

エリカ「そして……」

エリカ「ムカつくけど、その私より、隊長の近くにいたのが、この子なのよね……」

エリカ(……)

エリカ(聖グロ相手にどこまで通用するのか……)

エリカ(見たい気持ちがないわけじゃあない)

エリカ(痛い目見ろとは思うのに……)

エリカ(強い姿を、見たいとも思ってしまう……)

エリカ「はあ……」

エリカ「我ながら面倒臭いやつよね……」

155: 2016/10/14(金) 04:38:35.45 ID:YYvzAT34o

エリカ「ふむ……」

エリカ「車長が整列してるけど……」

エリカ「こうしてみると、Ⅳ号の狭い視界だと把握してなかった子がちらほらいるわね」

エリカ「よく分からない目立った軍服の金髪は嫌でも覚えるからまあいいとして……」

エリカ「あれが一年チームの車長で、そっちにいるのがバレー部ね……」

エリカ「生徒会の連中も比較的分かりやすいし、覚えるのはそこまで労せず行けそうね」

エリカ「まあ、覚えたからって何があるわけじゃないけど……」

エリカ「っと、来たようね」

ガチャ

スタッ

???「ふふ……」

エリカ「……相変わらず腹立たしツラねえ」

エリカ「ダージリン」

ダージリン「……」

エリカ「……」

エリカ(こいつ、優雅に飛び降りたはいいけど、存外痛くて足しびれてるわね……遠くを無言で見つめることで誤魔化そうとしてやがる……)

156: 2016/10/14(金) 04:43:04.32 ID:YYvzAT34o

桃「本日は急な申込みにも関わらず、試合を受けて頂き感謝する」

ダージリン「構いませんことよ?」

ダージリン「それにしても……」

ダージリン「個性的な戦車ですわねぇ」 ブフーッ

桃「うぐっ……」

ダージリン「ですが――」

ダージリン「私達はどんな相手でも全力を尽くしますの」 フフ

エリカ「ふん」

エリカ「そんなこと、戦車道を真剣にやる以上当然のことでしょ」

エリカ「さも自分達は特別みたいに語っちゃって」

ダージリン「サンダースやプラウダみたいに下品な戦い方はいたしませんわ」 ハン

ダージリン「騎士道精神でお互いがんばりましょう」

エリカ「……」 イラッ

エリカ「お得意の格言ジョークはどうしたのかしら、少々ディスが露骨じゃないかしら?」

エリカ「って煽っても、聞こえてないのよねえ……」 チッ

157: 2016/10/14(金) 04:49:19.38 ID:YYvzAT34o

エリカ「……」

エリカ「ダージリン……」

エリカ「聞こえてないからこそ、はっきりと言ってあげるわ」

エリカ「私はねェ、アンタのことが嫌いなのよ」

エリカ「黒森峰に勝ったこともないくせに、自分達は最強みたいに澄ましちゃって……」

エリカ「それに、毎回、いい所まで隊長を追い詰めるからって、終生のライバルみたいな顔をして!」

エリカ「車長として、西住まほのライバルはこのダージリン、みたいなことを思ってるんでしょうけど……」

エリカ「私はそんなの認めないッ」

審判「それではこれより、大洗女子学園と、聖グ口リアーナ女学院との試合を始める!」

エリカ「アンタがどう思っていようと、私は知ってる」

エリカ「隊長を最も輝かせていたのは、腹立たしいけどあの子だってことを」

エリカ「そして隊長が、あの子の才を誰より認め、いつか越えられるだろうと嬉しそうに語っていたことを!」

審判「一同、例!」

エリカ「そんなあの子を、いつか越えるのよ、私は!」

エリカ「だから、隊長と肩を並べる役は、アンタじゃあないわ、ダージリン……!」

エリカ「私か、あの子ッ」

エリカ「それを証明してやるッ……!」

158: 2016/10/14(金) 04:54:42.19 ID:YYvzAT34o

エリカ「勿論ダージリンは強い……」

エリカ「あのやかましいスピードスターは留守番みたいだけど、甘く見れる相手は一両たりともいない」

エリカ「それでも」

桃『用意はいいか、隊長?』

みほ「あ、はい」

エリカ「こっちの指揮は、あの黒森峰最強と言われた西住姉妹の一角」

エリカ「それに、経験豊富で意思を持った戦車と化した私がいるッ」

桃『全ては貴様にかかっている』

桃『しっかり頼むぞ』

みほ「……っ」

エリカ「今までずうっと隊長との一騎打ちに持ち込まれていて直接やりあえてなかったんだもの」

エリカ「この機会に、私達二人なら、あのダージリンだろうが越えられることを証明するわよ!」

エリカ「あの人と肩を並べ、対等でいられるのは私だってこと、教えてあげるッ!」

『試合開始ッ!!』

エリカ「いくわよ――――」

エリカ「パンツァー・フォーッ!」

168: 2016/10/14(金) 21:55:33.31 ID:YYvzAT34o

優花里「いよいよ始まりましたねえ」

みほ「うん……」

エリカ「まったく、お遊び気分でいるんじゃあないわよ」

優季『あのお~、それでどうするんでしたっけえ~?』

みほ「先程説明したとおり、今回は殲滅戦ルールが適用されますので……」

みほ「どちらかが全部やられたら負けになります」

あや『そーなんだー』

エリカ「え、そのレベルなわけ?」

エリカ「いやよしんばそうだとしても、事前に頭に叩き込んだりしないの?」

エリカ「……相変わらず、ほのぼのお遊び同好会みたいなことしてるわねえ」

169: 2016/10/14(金) 22:27:04.83 ID:YYvzAT34o

みほ「まずは我々Aチームが偵察に向かいますので」

みほ「各チームは100メートルほど前進した所で待機して下さい」

『わかりました!』

『はーい』

『御意!』

杏『なんか作戦名とかないの?』

みほ「作戦名は……えーっと……」

みほ「こそこそ作戦です」

みほ「こそこそ隠れてこそこそ相手の様子を見て、こそこそ攻撃を仕掛けたいと思います」

エリカ「相変わらずセンスないわねえ……」

エリカ「黒森峰でもそう言われてたのに」

エリカ「もっとこう、サイレント・アサシン作戦とか、そういうセンスを磨きなさいよ」

エリカ「字面で書くと静かなる暗殺者的なやつを書いてカタカナで読む、これがネーミングのコツよ」 フフン

麻子「……なんだ……今日のエンジン音はどこか不快だ……」

171: 2016/10/14(金) 23:09:18.26 ID:YYvzAT34o

桃『姑息な作戦だな』

柚子『桃ちゃんが考えたんじゃない』

エリカ「はあ!?」

エリカ「アンタが隊長なんじゃないわけ?」

エリカ「仮にも隊長なのに、何であんな片眼鏡に指示仰いでるのよ!」

エリカ「アイツ絶対文句だけは一人前のタイプよ!?」

エリカ「調子乗ると高圧的になるし、ああいうタイプは図に乗らせたら駄目」

エリカ「一回ボッコボコにならないと学習しないタイプなんだから」

エリカ「絶対調子乗った挙句読みを外して無様な地団駄ダンスを踏みまくるはめになるわよああいうやつは」

175: 2016/10/15(土) 00:38:19.77 ID:cQohcwU/o

エリカ「……」

エリカ「暇ねえ……」

エリカ「偵察に出られないのが戦車の体の難点ね……」

エリカ「まあ普段は下級生とかに行かせるけど……」

杏「暇だねー待ってる間」

沙織「すぐ戻ってきて移動するみたいだから、外にも出られないしねー」

麻子「私達は囮だから後も暇はないけどな……」

典子「スクワットなら、すぐに中断も出来て体も鍛えられる!」

あや「誰か何か持ってきた?」

優季「トランプならあるけど、あとでやる?」

左衛門佐「近藤勇」

エルヴィン「ぶんぶん」

おりょう「14人」

カエサル「ぶんぶん」

おりょう「土方歳三」

左衛門佐「ぶんぶん」

エルヴィン「15人」

カエサル「ぶんぶん」

エルヴィン「五稜郭」

おりょう「ぶんぶん」

カエサル「五稜……え!?」

エルヴィン「ふっ、アウトー」

エリカ「うるさすぎるのよアンタら! ちょっとは黙って待てないわけ!?」

176: 2016/10/15(土) 00:40:55.84 ID:cQohcwU/o

エリカ「あ、戻ってきた」

みほ「麻子さん起きて」

みほ「エンジン音が響かないように注意しつつ、展開してください」

麻子「ん……」

エリカ「ったく、もっと迅速に戻って来られないわけ?」

麻子「……」

麻子「たまに、こちらが予期せぬ音をエンジンが出すのだが……」

みほ「まさか……」

麻子「今日がそれだ」

エリカ「何!? 私のせいって言いたいわけ!?」

177: 2016/10/15(土) 00:59:35.29 ID:cQohcwU/o

みほ「敵、前方より接近中!」

エリカ「はん、来たわね」

麻子「本当に今日のエンジンはうるさいな……」

みほ「砲撃準備」

優花里「装填完了ッ」

華「ええと、チャーチルの幅が……」

みほ「3.5メートル」

華「4シュトリヒだから……距離、810メートル……」 キリキリ

沙織「!」

沙織「待機中の車輌から通信!」

みほ「!?」

みほ「繋いで下さい!」

エルヴィン『あ、すまない隊長。今、いいか』

エリカ「電話じゃないんだから、今駄目なら改められるような内容ならかけてくるんじゃないわよ!」

みほ「どうかしましたか?」

エルヴィン『いや、ちょっとこちらで揉めていて……』

エルヴィン『他のチームに聞いても終息しないどころか悪化してきたから、ここはもう隊長にビシっと言ってもらおうかと……』

エリカ「はあ!? 何やってるのよ」

沙織「ええと……どうしよう、この通信」

華「私は私で集中して調整しますから、その間に答えてあげてください」

華「そういう些細な悩みに一緒に悩んで答えてあげるところが、みほさんのいいところですから」 フフ

エリカ「……」

エリカ「なによ、こんな短期間で信頼されちゃって」 ムゥ

みほ「それで、どうかしたんですか?」

エルヴィン『いや、五稜郭ってどう数えるのが正解なのかなと』

エリカ「あ゙?」

178: 2016/10/15(土) 01:12:57.21 ID:cQohcwU/o

エリカ「試合中に何アホな通信してきてんのよこのバカ!!」

みほ「五稜郭……」 ウーン

沙織「五稜郭って、あれだっけ、北海道の観光地」

優花里「あんまり数えるものではありませんよねえ」

華(集中、集中……) キリキリキリキリ

エルヴィン『いや、さっき数取団をしていて揉めてな』

エルヴィン『こっちでも1箇所派とか色々いて……』

みほ「数取団……?」

優花里「ご存知、ないのですか?」

エリカ「まあ、小さい頃から厳格な家庭で戦車道ばかりさせられてたんだしね」

エリカ「……まあ私も、知ったのは最近赤星達に教えられてだけど」

優花里「直前に言った名前の物を、数える遊びなんですよ」

エリカ「説明下手か!」

優花里「手軽に友達と出来るので、小学校で流行ってたんですよねえ」

優花里「まあ私は一緒にやる友達なんていなくてやったことないんですけれど」

沙織(重っ……)

エリカ「ああ……ルール説明する機会もなかったのねこの子……」

179: 2016/10/15(土) 01:28:53.96 ID:cQohcwU/o

みほ「えーっと、分かったような……わからないような……」

エルヴィン『まあ、あれだ』

エルヴィン『例えば目の前に五稜郭が複数あるとして……』

エリカ「前提からして大分無茶なことを言ってる自覚ある?」

エルヴィン『それをどうやって数える?』

みほ「え?」

みほ「ええと……」

エルヴィン『例えば、それが6なら?』

みほ「え、ろ、六稜郭」

エルヴィン『ふふっ』

優花里「ぶふっ」

華「ふふっ」 カチッ

華「…………あっ」

ドーン

エリカ「ちょ、何勝手に発射して……し、しかも外れてるじゃないのよ!!」

180: 2016/10/15(土) 01:35:34.96 ID:cQohcwU/o

華「す、すみません……」

みほ「だ、大丈夫、目的は撃破じゃないから」

エルヴィン『な、なんというか……』

エルヴィン『すまん……』

沙織「う、ううん」

沙織「とりあえず逃げるから切るね?」

エルヴィン『あ、ああ』

エルヴィン『他の班には、西住隊長によって五稜郭は○稜郭と数えるのが正解に決まったことをこちらで共有しておこう』

みほ「そ、それはやめてくださいっ!」

エリカ「ホラ、遊んでないで逃げるわよ!!」

198: 2016/10/18(火) 01:23:19.95 ID:XOPwATDMo

みほ「なるべくジグザグに走行して下さい!」

エリカ「訓練された黒森峰の操縦手ならともかく、素人がいきなりそんな……」

麻子「……」 グイッガキン

エリカ「……」

エリカ「やるじゃないの……」

みほ「こっちは装甲が薄いから、まともに喰らったら終わりです!」

エリカ「……」

エリカ「まともに食らって白旗飛び出す威力って、多分、前のより……」

エリカ「……」

エリカ「ま、まともに食らったら私の体が終わるじゃないのよ!」

エリカ「ほ、ほら、逃げるわよ!」

エリカ「どんなエグいジグザグだろうが、私も一緒に駆け抜けてあげるからっ!」

199: 2016/10/18(火) 01:39:28.15 ID:XOPwATDMo

エリカ「ああああああああっ」

エリカ「カーボンなしで聖グロ相手にするのがこんなに不安だなんてっ……」

エリカ「ひっ」 ズドン

エリカ「伊達に四強扱いされてないわね……結構射撃が正確だわ……」

エリカ「何とか、何とか逃げなくちゃ……」

エリカ「あのスピードバカがいなくて本当によかったわっ……!」

ダージリン「思っていたよりやるわね……」

ダージリン「追うわよ」

ダージリン「どんな走りをしようとも、我が校の戦車は一滴たりとも紅茶をこぼしたりしないわ」

エリカ「――とか言って調子こいてそうでムカつくけど、逃げしかまだ出来ないのよね……」

ヒュドンッ

エリカ「ああ、くそっ!」

エリカ「射撃訓練の時間を削ってでもロデオマシーンで紅茶を飲む練習をしてる奴らの砲撃なんて、食らってなんかやらないんだからっ!」

200: 2016/10/18(火) 01:49:54.53 ID:XOPwATDMo

ガチャ

みほ「ふう……」

沙織「みぽりん危ないって!!」

みほ「ふえ?」

エリカ「素人は黙ってなさいよ、今こっちは切羽詰まってるのよ!」

みほ「ああ、戦車の車内はカーボンでコーティングされてるから大丈夫だよ」

沙織「そういうんじゃなくて!!!」

沙織「そんなに身を乗り出して当たったらどうすんの!?」

みほ「まあ、めったに当たるものじゃないし……」

みほ「こうしていた方が、状況が分かりやすいから」

エリカ「一定以上のレベルの車長ならこんなの当然よ」

エリカ「……素人が車長をやるのが難しいとされる一因ではあるし、怯えるのも分からなくはないけど……」

エリカ「でも幼い頃から戦車道をしてきて、車長をしているものなら、こんなくらい、怯えるにも値しないわ」

沙織「でも、みぽりんにもしものことがあったら大変でしょ!?」

みほ「でも、そんなときのために氏亡保険にはちゃんと入ってるし……」

エリカ「あんたらも入っておいた方がいいわよ、学校側で入るの以外にも保険入っておくと何かと安心だから」

みほ「それに、戦車道の時間に最初に書かれた誓約書で、氏亡時や欠損事故の際のことはきっちり決められてたから……」

沙織「万が一が起きたときのことじゃなくて、万が一を起こさないことを考えようよ!?」

沙織「もっと中に入って!」

みほ「心配してくれてありがとね……」

エリカ「ちょ、人が必氏に逃げてるのに、ナカにイれるとか何話してるのよ!?」

エリカ「何なの、この戦車はレOの淫売によるハーレムでも目指してるの!?」

麻子「うっ、急にコントロールが……」

ヒュドンッヒュドンッ

沙織「ほら、早く中に!」

みほ「え、ええと、じゃあお言葉に甘えて……」


201: 2016/10/18(火) 02:11:47.66 ID:XOPwATDMo

みほ「Aチーム、敵をひきつけつつ、待機地点にあと3分で到着します」

エリカ「……ここで上手くやれればいいんだけど……」

エリカ「話を聞く限り素人集団」

エリカ「しかもわずかな空き時間で遊び出すような連中」

エリカ「本当に大丈夫なのかしら……」

みほ「あと600メートルで、敵車輌射程内です!」

エリカ「自分じゃ動けないし、他の連中の情報が全然無いのが不安要素よね……」

エリカ「他の戦車と会話が出来れば違うんでしょうけど……」

エリカ「……」

エリカ「って、何を考えているのかしら私は……」

エリカ「大洗のことなんてどうでもいいし、そもそも戦車と会話とか阿呆極まる発想なのに」

エリカ「やっぱり戦車になると駄目ね、頭がドンドン悪くなるわ……」

エリカ「はあ……早く体に帰りたい……」

エリカ「黒森峰なら、もっと知的に立ち回れるし、周りのレベルだって高いのに……」

202: 2016/10/18(火) 02:42:03.13 ID:XOPwATDMo

直下「今日も持病で心臓止まってるんだ?」

小梅「うん」

小梅「心臓ってそうホイホイ止まっていいものじゃないと思うんだけどね」

直下「大変だよなあ……」

ギャンッ

小梅「ひゃ!?」

小梅「な、なに!?」

直下「うわっ、コースアウトしたサイクロンマグナム……」

ギャリギャリギャリ

小梅「ああっ、逸見さんの端正な顔がホイールで……!」

直下「やばいやばい!!」

小梅「ああっ、なんか逸見さんが変な風に振動してる!?」

直下「ど、どうしよう……」

直下「とりあえず、逆の方も同じことしたらバランス取れるかな……」

小梅「ええ!?」

ギャリギャリギャリ

直下「あ、収まった」

小梅「どうなってるんだろう、逸見さんの体……」

直下「副隊長がこれで大丈夫なのかな」

小梅「そ、それは言っちゃ駄目だよ……!」

直下「いや、でも、多分黒森峰の歴史で最も阿呆な副隊長なんじゃ……」

小梅「びょ、病気なんだからしょうがないよ! ハンバーグ発射したのもしょうがないんだよ!」

小梅「逸見さん、自分じゃ知的な補佐だと思ってるんだから、起きてるときに言ったら駄目だよ……?」

直下「実際は、歴代最高に恥的なのになあ……」

203: 2016/10/18(火) 03:03:18.65 ID:XOPwATDMo

桃「撃て撃てェェーーーーーーっ!!」

エリカ「はァァァーーーーーーーーーーーーーー!?」

ズドーン

ズドーン

みほ「あ、待って下さい……!」

ズドーン

ズドーン

エリカ「こんのバカども、私達よ!!」

麻子「ちっ……敵と味方の区別もつかないのか……」

華「わ、私達ですよ皆さん!」

沙織「味方を撃ってどうすんのよぉ!?」

ズドーン

ズドーン

エリカ「ああ、もう! なんなのよこいつら!」

エリカ「黒森峰じゃ上下関係は絶対、隊長格にフレンドリーファイアーしようものなら処刑モンよ!?」

エリカ「尊敬とか厳格さとかが欠けすぎじゃないの!?」

エリカ「ああもう、やっぱりさっさと黒森峰の体に戻りたいわっ……!」

エリカ「黒森峰なら隊長や副隊長に手を上げるようなバカはいないのにっ……!」

204: 2016/10/18(火) 03:40:59.25 ID:XOPwATDMo

直下「たわわチャレーーーーンジ!」

ガチャン

脇にヘッツァーがいるぞ子「瞬時に落下した……」

直下「わ、私のブロッケンギガントが……!」

脇にヘッツァーがいるぞ子「ブロッケンに胸を整地されるから……」

小梅「悲しくなるから、そーいうのやらない方がいいんじゃ」

直下「ぐう……」

直下「……」

直下「そういえば……」

直下「露出を全然しない聖グロはさておき、アメリカンなサンダースはナイスバディの集団だよな」

小梅「確かに」

直下「にくきプラウダのブリザードやロシア人も、スタイルはいい」

直下「……あまり薄着をしてくれないが、うちの隊長や副隊長って、そこに食い込めるボディをしているのだろうか」

脇にヘッツァーがいるぞ子「そんなに大きいイメージはないけど」

小梅「でも、プールの時間とか、逸見さん結構あったような……」

直下「……盛ってるの?」

脇にヘッツァーがいるぞ子「プライド高いし、あるかも……」

小梅「……」

直下「……」

直下「剥いて確かめてみようか」

小梅「!?」

脇にヘッツァーがいるぞ子「確かにやるなら、病気で意識がないっぽい今かも……」

小梅「えええええ!?」

小梅「駄目だよそんな寝込みを襲うような真似!」

小梅「ちゃんと起きてるときに、面と向かっておっOい見せてって言わなくちゃ!」

直下「それやる方がなんか変態的だし、普通にぶっ飛ばされそう」

脇にヘッツァーがいるぞ子「それじゃ、脱がすよー」

小梅「え、ええ~~~!?」

205: 2016/10/18(火) 03:52:05.12 ID:XOPwATDMo

桃「撃て撃て撃てェ!!」

ズドンズドンズドン

みほ「そ、そんなバラバラに攻撃しても……」

みほ「履帯を狙ってくださいっ」

エリカ「そもそもこんなバレバレな囮作戦が効いたら苦労しないわ」

エリカ「相手は脳味噌茹だりまくって頭蓋骨で紅茶を蒸らせるような連中とはいえ、腐っても超名門」

エリカ「戦車道の腕前だけは、ムカつくけど一級品なのよ!」

桃「もっと撃てェ!」

ドーンドーン

華「くっ……なかなか当たらな……」

エリカ「予想より、連発されると反動で体が痛いわねっ……」

桃「次々撃てェ!!」

ドーンドーン

エリカ「あまり補正をかけてやれそうにないっ……」

華「やはり動く相手だと、勝手が……!」

桃「見えるもの全て撃てェ!!」

ドーンドーン

沙織「見えるもの全て撃っていいんだって!!」

エリカ「へえ、丁度あの片眼鏡の乗った生徒会の金ピカ戦車が見えてるわね」

華「……」 キリキリキリ

麻子「……なんだか良くない方向で意見がシンクロしようとしてないか?」

206: 2016/10/18(火) 03:59:50.25 ID:XOPwATDMo

ダージリン「攻撃」

ドーンドーン

典子「す、すごいアタック……!」

あや「ありえない……!」

みほ「落ち着いて下さい、砲撃やめないで……!」

エリカ「ちっ、まるで戦車道デビューしたての小学生ね……!」

あゆみ「無理ですう、もう嫌あ!」

梓「待って!」

エリカ「ちょ、バカ、あの子達外に――!」

梓「逃げちゃダメだってばあ!」

ズドン

シャコッ

エリカ「撃墜……は、もういいとして……」

エリカ「こんな激しい戦闘地帯で飛び出すなんて、何考えてるのあの子達は!」

エリカ「……」

エリカ「とりあえず木の上に避難できたみたいだけど……」

エリカ「戦車として広い視野を持つ私以外、気付けてもいない……」

エリカ「とにかく戦場を移さないと、シャレにならないわよ……!」

エリカ「勝利と天秤にかかってるならいざしらず、こんなアホみたいな負け戦で氏人なんて出してたまるものですか!」

207: 2016/10/18(火) 04:07:02.37 ID:XOPwATDMo

ズドン

ズドーン

沙織「ど、どうしたらいいのみぽりん!」

華「どの車輌を狙えばいいんですか!?」

麻子「どうするんだ。逃げるのか、このままなのか」

優花里「に、西住どのぉ!」

みほ「落ち着いてください、まずは冷静に――」

エリカ「無駄よ」

エリカ「パニックになってる連中に言葉は届かないわ」

エリカ「本当なら派手に一発ドカンとやって気付けにでもしたいのだけど」

エリカ「これだけメンバーの気持ちがバラバラだと、まともに射撃をするのは困難ね」

エリカ「でも――」

沙織「どうしよう、とりあえずやられちゃう前に生徒会に一矢報いる!?」

みほ「えっ」

華「あまり動いてませんし、目立ってますから、それなりに狙えるとは思いますが……」

みほ「ちょ」

優花里「確かに気持ちはわかりますがそれは……」

優花里「いや、でもここは敢えて囮として負傷兵を……?」

みほ「あの」

エリカ「ふっ……」

エリカ「どうやら心を一つに出来る相手がいるみたいじゃない」

エリカ「安心しなさい、白旗が出ないよう調整はしてあげるわ!」

麻子「落ち着いて履帯を狙って撃て――と、さっき言っていたぞ」

華「分かりました、履帯ですね!」

みほ「え、ええと……」

桃『いいから撃てェ! 目に見えるものは全て撃てェ!』

華「了解!」

沙織「生徒会のお偉方からの指示だもんね!」

麻子「生徒会の戦車を視界に捉えたぞ」

優花里「さすがに目立ってますねぇ」

みほ「お、落ち着いて……」

エリカ「くたばりなさいッ!!!」

ズドーーーーーーーーーン


208: 2016/10/18(火) 04:12:05.86 ID:XOPwATDMo

華「ごめんなさい外れましたっ……!」

みほ「いや、いいんですよ味方なんですから!」

みほ「皆落ち着いて!」

エリカ「ええ、敢えてああやって外したのよ……!」

エリカ「これなら!」

柚子「あれ?」

柚子「あれれ???」

杏「ああ、外れちゃったね履帯」

杏「38Tは外れやすいからなあ」

エリカ「さ、これで鬱憤も晴れて囮も出来たし、さっさと撤退するわよ」

エリカ「あんまりここでドンパチ続けると、生身で外に出た馬鹿に怪我人が出かねないわ」


211: 2016/10/19(水) 01:36:59.00 ID:AfBpQIboo

みほ「武部さん、各車状況を確認して下さい」

沙織「あ、うん」

沙織「えっと、Bチーム、どうですか?!」

妙子『何とか大丈夫です』

沙織「Cチーム!」

エルヴィン『言うに及ばず!』

沙織「Dチーム!」

エリカ「あいつらなら今木の上よ」

エリカ「さっさと戦場を移さないと不味いって」

沙織「Eチーム!」

杏「駄目っぽいねえ」

エリカ「まあこっちがやっといてなんだけど、ここは元から駄目っぽかったからいいでしょ」

桃「無事な車輌はとことん撃ち返せ!!」

エリカ「あの位置なら逃げたバカ達に当たる心配もないし、移動までの時間を稼ぐ砲台でもやっててくれないかしら」

212: 2016/10/19(水) 01:49:12.78 ID:AfBpQIboo

典子「私達どうしたら!?」

エルヴィン「隊長どの、指示を!」

桃「撃って撃って撃ちまくれぇ!」

エリカ「やっぱりもう指示できないよう通信機器まるっとぶち壊す勢いでぶつけたらよかったかしら」

みほ「このままいってもやられるだけ……」

エリカ「なによ」

エリカ「あんたは別に、隊長の指示を聞くしか出来ないカカシだったわけじゃないでしょ」

エリカ「あんたなら……ムカつくけど、この程度――」

華「隊長は、西住さんです」

沙織「私達、みほの言う通りにする!」

麻子「どこへだって行ってやる」

優花里「西住殿、命令して下さい!」

みほ「……!」

エリカ「……」

エリカ「なによ」

エリカ「慕われてるじゃない」

エリカ「……」

エリカ「言っておくけど……」

エリカ「アンタのことを認めてない連中だけじゃなくて、アンタを認めていた奴らは、黒森峰にだって……」

エリカ「……」

213: 2016/10/19(水) 02:09:17.84 ID:AfBpQIboo

みほ「B・Cチーム、私達の後についてきてください」

みほ「移動します!」

典子「わかりました!」

エルヴィン「心得た!」

桃「何ぃ、許さんぞ!」

エリカ「許さん、とかじゃあないでしょうに」

エリカ「何なのよあの片眼鏡は」

エリカ「隊長の言うことは絶対」

エリカ「部隊というのは、しっかりとした隊長と、その指示を徹底できる部下あってこそ」

エリカ「隊長の言葉は絶対なのよ」

エリカ「……」

エリカ(絶対と言えば……)

エリカ(赤星は、私の言うとおり、きちんと体を管理していてくれてるかしら?)

エリカ(元々気が弱いうえに去年の負い目もあるし、副隊長である私の言うことなら素直に従ってくれてるとは思うけど……)

エリカ(どうにも胸騒ぎがするのよね……)

214: 2016/10/19(水) 02:13:44.18 ID:AfBpQIboo

直下「おお……」

脇にヘッツァーがいるぞ子「意外とある……」

小梅「どちらかというと、サイズよりも形がすごいっていうか……」

小梅「ボクササイズしてるだけあって引き締まってるし、艶もいいよね」

直下「何だかんだで楽しそうだよね、小梅」

小梅「ええ!?」

小梅「そ、そんなことは……」

脇にヘッツァーがいるぞ子「んじゃ、さっそくたわわチャレーンジ」

直下「上半身起こして」

小梅「もう……」 ヨッコラセ

直下(素直にやるのか……)

脇にヘッツァーがいるぞ子「で、どれ乗せる?」

直下「うっかり走らないやつ買っちゃったビークスパイダーでいいんじゃない」

脇にヘッツァーがいるぞ子「それじゃさっそく――」

小梅「ビーチクスパイダー……」 ボソ

直下「ブフッ」

脇にヘッツァーがいるぞ子「もお~~、普段そーいうの言わない子が急に言うのは反則だって」 ゲラゲラゲラゲラ

エリカ「ドゥルン」

直下「!?」

エリカ「ドゥルルルルルルルル」

小梅「わっ、ど、どうしよう、逸見さんが……」

小梅「逸見さんが何かすごい振動し出した!!」


215: 2016/10/19(水) 02:28:29.04 ID:AfBpQIboo

エリカ「もっとこそこそ作戦を開始します!」

エリカ「なんて言うから、どんな作戦かと思ったら」

エリカ「地の利を活かして待ち伏せ、ねえ」

エリカ「王者の戦いじゃあないけど……」

エリカ「ま、雑兵にはそれが妥当な戦い方じゃないの」

エルヴィン『こちらCチーム、1輌撃破!』

典子『Bチーム、1輌撃破!』

優花里「やりましたねえ!」

エリカ「地の利を取るのも、ま、基本戦術と言えば基本戦術だけど……」

エリカ「素人集団でも、ラッキーパンチは当たるものね」

エリカ「一度も紅茶こぼしたことがないって言いながら、予想外の自体で頻繁にカップを割ってるって噂だけど……」

エリカ「既に叩き割ってくれてたりしないかしら」 クク

麻子「何だか悪役のようなエンジン音がしている……」

沙織「?」

216: 2016/10/19(水) 02:40:02.98 ID:AfBpQIboo

ダージリン「おやりになるわね……」

オレンジペコ「あの……」

オレンジペコ「カップ……」

アッサム「オレンジペコ」

オレンジペコ「はい」

アッサム「あれはカップが割れたんです」

オレンジペコ「はあ」

アッサム「カップが割れてしまっただけのこと」

オレンジペコ「わかりますが……」

アッサム「こぼれたわけじゃないので、こぼしたとか広めないように」

オレンジペコ「えっ」

オレンジペコ「いいんですか、そんなガバガバ判定で」

アッサム「紅茶をこぼさない優雅さの強調が目的なのだから、負けた時や衝撃を受けたときにカップが割れるのはセーフなの」

オレンジペコ「いいんですね」

217: 2016/10/19(水) 03:11:05.42 ID:AfBpQIboo

エルヴィン『Cチーム、走行不能ッ!』

典子『Bチーム、敵撃破失敗!』

典子『及び走行不能、すみません!!』

みほ「……っ」

優花里「残ってるのは我々だけです……」

沙織「向こうは何輌!?」

華「4輌です……」

エリカ「正念場ね」

エリカ「名門と言えど、優雅さだかに拘っているような連中」

エリカ「黒森峰で揉まれたのよ、目じゃないわ」

エリカ「とはいえ、数は絶対」

エリカ「真正面から4輌相手に1輌で挑むなんて愚行、西住隊長でもない限り生還は絶望的」

エリカ「ましてや相手には頭はアレでも戦術や車長の技量は一級品のダージリンがいる……」

エリカ「車長としての、アンタの腕の見せどころ」

エリカ「……」

エリカ「見せてみなさい」

エリカ「隊長抜きで、アンタがどこまでやれるのかを」

222: 2016/10/25(火) 03:50:26.28 ID:L44rNxVso

みほ「来た……」

みほ「囲まれたら不味い……」

麻子「どうする?」

みほ「とにかく敵を振り切って……!」

麻子「ほい」 ガシャコン

エリカ「……」

エリカ「この子、素人丸出しだったくせに、時間とともにどんどん上手くなっていくわね……」

エリカ「……」

エリカ「そして私もどんどん乗り物として動かされるのに慣れてきてるわね……」 ゲッソリ

223: 2016/10/25(火) 04:04:27.48 ID:L44rNxVso

小梅「ど、どうしよう」

小梅「逸見さん、さっきからすごく痙攣してるけど……」

直下「あんたのせいよ!?」

脇にヘッツァーがいるぞ子「わ、私ぃ!?」

直下「だって、乳首にビークスパイダーを乗せたあたりで振動し始めたし……」

小梅「……」

小梅「それが事実だとすると……」

脇にヘッツァーがいるぞ子「ちょ、赤星まで私のせいに――」

小梅「そうじゃありません」

直下「?」

小梅「もしかすると、ですけど……」

小梅「乳首が逸見さんの振動スイッチみたいなものだとしたら……」

小梅「もう一度、乳首を押せば止まるのかも」

小梅「それか、逆の乳首が停止ボタンとか……」

直下「ボタンて」

脇にヘッツァーがいるぞ子「そんな機械じゃないんだから……」

小梅「私もそう思うけど……」

小梅「でも、ほうっておくわけにはいかないし……」

直下「言いたいことは分かったし、確かにまあ駄目元で試してもいいかもしれない」

直下「でもさあ……」

直下「効果の保証もなく副隊長様の乳首をプッシュするなんて行為、誰がやるの?」

小梅「……」

脇にヘッツァーがいるぞ子「……」

直下「……」

小梅「やっぱりみんな、したくないよね……」

直下「後が怖すぎるもん……」

224: 2016/10/25(火) 04:18:30.28 ID:L44rNxVso

エリカ「……」

エリカ(相変わらず指示は的確ね……)

エリカ(素人丸出しの連中だっていうのに、きちんと動けている……)

エリカ(誰がどこまで出来るのか、きちんと把握したうえで、キャパオーバーにならないように指示をする……)

エリカ「衰えてないわね……」

エリカ「やっぱり、アンタは……隊長の右腕であるべき存在だったのよ……」

エリカ「ムカつくけど……」

エリカ「それで……いつか私が抜くべき目標であってほしかったのに……」

エリカ「……」

エリカ「工事中、ね」

エリカ「これが、黒森峰や西住隊長を捨てて逃げ出した人間の限界、ってことかしら」


225: 2016/10/25(火) 04:27:06.40 ID:L44rNxVso

ダージリン「こんな格言を知ってる?」

ダージリン「イギリス人は恋愛と戦争では――」

ダージリン「手段を選ばない」 キリッ

華「何がいいたいのでしょう……?」

エリカ「アンタ前それサンダースで言って戦車道と戦争は違うって言われたばかりでしょ」

沙織「えっ、お姉さん恋愛マスターなの!?」

麻子「そうは見えんな……」

優花里「聖グロ隊長の恋愛ともなればそれなりにスクープになりどうですけど、聞いたことはないですね」

麻子「手段は選ばないくせに相手はやたらと選んでいるんじゃないか?」

沙織「あー、そういう」

ダージリン「…………」

オレンジペコ「わ、私は今のダージリン様格好いいしその内いい人が現れると思ってますよっ!!」

226: 2016/10/25(火) 04:38:22.57 ID:L44rNxVso

アッサム「恋愛に手段を選ばない恋愛マスターことダージリン、指示を」

オレンジペコ「ちょ、駄目ですよこれ以上メンタルを傷つけちゃ!」

キュラキュラキュラ

杏「惨状~」

エリカ「まあ惨状だわね」

華「生徒会チーム!」

優花里「履帯直したんですね……!」

エリカ「まだ生きてるなんてね」

エリカ「……私達がいい囮になったのかしら」

エリカ「それともトリガーハッピーが撃ってこなくなったから勘違いしてくれたのか……」

エリカ「いずれにせよ、大チャンスね」

エリカ「これで2輛は落としておきたいけど……」

桃「発射ッ!!」 ズドン

杏「あっ」

柚子「桃ちゃんここで外すぅ~~!?」

ズドドドドン

杏「やーらーれーたー」

エリカ「ちっ、片眼鏡のウスノロ野郎……」

エリカ「指示もお粗末だし、西住隊長を見習ってほしいものだわ」

エリカ「あの人の命令だったら、安心して動けるのに……」

227: 2016/10/25(火) 04:51:54.03 ID:L44rNxVso

直下「じゃあこうしない?」

直下「全員で同時に乳首を押す」

直下「そうすれば、誰が副隊長を起こしたのかは有耶無耶に……」

脇にヘッツァーがいるぞ子「確かにそれなら罪悪感とか責任は分散される……」

小梅「そんな氏刑執行じゃないんだから……」

小梅「大体両乳首を1人ずつ押すとしても、まだ1人押す場所がない人が出ちゃうんだけど……」

直下「そこは、ほら……股間とか……」

小梅「乳首がスイッチみたいって話だったのに!?」

脇にヘッツァーがいるぞ子「いや、でも、ほら、ちょびっツって前例があるし……」

小梅「だとしても、寝てる間に股間に指突っ込みましたとか、バレたら本当に殺されるって」

直下「確かに……血とかついたら最悪だもんね……」

直下「と、なると……」

直下「そういうことやっても問題ない人間を連れてくる必要が」

小梅「ないと思う……」

小梅「連れてきても多分意味ないし、そもそも生理以外で股間から血を流されるとか、問題の塊だし……」

脇にヘッツァーがいるぞ子「確かに、そこまでしてなお激怒されない人物なんて――」

コンコン

ガチャ

まほ「この部屋が騒がしいと苦情が入ったそうだが……」

直下「あっ」

小梅「……」

脇にヘッツァーがいるぞ子「……」

小梅「絶対服従しそうな相手、いましたね……そういえば……」

まほ「?」

228: 2016/10/25(火) 04:57:18.81 ID:L44rNxVso

みほ「一撃で離脱して、路地左折!」

ドゴン

キュラキュラキュラ

エリカ「確かにやるにはやる」

エリカ「でも周囲のレベルがそこまで追いついていない」

エリカ「この環境にいたら、その内腐るわよ」

みほ「大通りに出て、先に路地を押さえます」

みほ「急いで下さいっ」

キュラキュラキュラ

みほ「右折したら、壁に沿って進んで急停止っ」

麻子「はい」

ズドン

キュポッ

エリカ「……」

エリカ「私を……いいえ、Ⅳ号を、随分理解してきたわね……」

エリカ「速度やらを理解してなきゃ出来ない動きだわ」

エリカ「さすが、腐りつつ会っても西住流の系譜」

エリカ「でもそれじゃあ、凄みある西住流の系譜たる西住隊長には勝てない」

エリカ「隊長だって、未知の戦車のことを理解するまでにかかる時間は非常に短い」

エリカ「あの人なら、もっと私を上手く乗りこなして的確な指示で相手を追い込んでるわ」

230: 2016/10/25(火) 05:06:53.92 ID:L44rNxVso

まほ「なるほど、そういうことか」

小梅「はい……」

まほ「わかった、引き受けよう」

直下「えっ!?」

脇にヘッツァーがいるぞ子「まさか本当にそうなるとは……」

まほ「ただし触るのはこうなった原因という乳首からだ」

まほ「それに、船頭多くして登山することもない」

まほ「実際に触れるのは私が引き受ける」

小梅(かっこいい……) キュン

エリカ「ドゥルルルルルルルルン!」

脇にヘッツァーがいるぞ子「なっ!?」

小梅「逸見さんが……」

直下「え、エクソシストみたいに移動し始めた!?」

まほ「ふむ……」

まほ「うっかり胸を揉んだら移動し始めるとは……」

小梅「す、すごい!」

小梅「突然逸見さんが動き始めたのに、平然と覆いかぶさり続けてる……ッ」

直下「振り落とされてないのもすごいし、冷静でいられるのもまた凄いッ!」

まほ「何か法則性があるのか……?」

まほ「……」

まほ「試してみる価値はあるな」 モミモミ

231: 2016/10/25(火) 05:10:45.07 ID:L44rNxVso

キュポッ

エリカ「これで3体……」

エリカ「他のチームが倒したやつも入れれば、これで残るはダージリンのみ……」

みほ「……」

ズドン

エリカ「一発で仕留め損なった、か……」

みほ「後退して下さい、ジグザグに!」

エリカ「悪いけど、その複雑な動きに助力はしてやれないわよ」

エリカ「何せこっちは、間もなく来るであろう砲弾の痛みに耐えられるよう、覚悟を決めて全身に力込めてなきゃ駄目なのよっ……!!」

232: 2016/10/25(火) 05:15:47.12 ID:L44rNxVso

エリカ「あああああああ撃たれてる撃たれてる……」

エリカ「ぐっと堪えられる痛みなんでしょうねえ!?」

麻子「路地行く?」

みほ「いや……ここで決着をつけますっ!」

みほ「回り込んで下さい」

みほ「そのまま突撃します……っ!」

エリカ「なんでもいいから早くしなさいよっ」

エリカ「後ろ向きにジグザグされたりぐるぐる動かれたりで、ちょっと気分悪くなってきたじゃないの!」

エリカ「ああ、無駄にテクニカルなナルコレプシーのせいで酔ってくるわ……」 ゲッソリ

エリカ「後ろ向きにジグザグ走行なんて普通に生きてたらしないのもあって、体中が違和感を発してくる……」

233: 2016/10/25(火) 05:24:45.58 ID:L44rNxVso

まほ「なるほど」

まほ「どうやら両胸で移動方向をコントロール出来るらしい」

小梅「す、すごい!」

小梅「こんな短時間で逸見さんを理解するなんて……!」

直下「これが西住流……!」

脇にヘッツァーがいるぞ子「なんて綺麗なジグザグバック走……!」

まほ「いや、不思議な話なんだが、どうにもエリカの乗り心地が戦車みたいでな……」

小梅「は、はあ……」

まほ「さて……」

まほ「停止は、こうかな」 モミモミ

エリカ「ブォン!!」

直下「ゲェーッ、加速した!?」

脇にヘッツァーがいるぞ子「っていうか、勢い余って扉を破って廊下に出た!!!」

小梅「た、たたたたた隊長~~~~っ」

直下「弘法も筆の誤り、かあ……」

脇にヘッツァーがいるぞ子「筆の誤りというより、筆のない人間の性交渉みたいなドライビングだったよね」

小梅「確かにちょっとエOチだったけど……」

小梅「だからこそ、アレを外に出しちゃ不味いんじゃ……!」

直下「た、確かに!!」

脇にヘッツァーがいるぞ子「と、止めろーーーーーーっ!!」

234: 2016/10/25(火) 05:30:16.18 ID:L44rNxVso

みほ「……と、見せかけて、合図で敵の右側部に回り込みます」

エリカ「ちょ、待……」

エリカ「そんな無茶な動きに神経持って行かれた直後に砲撃なんて食らったら……」

キュラキュラキュラキュラキュラキュラ

エリカ「待ちなさいって!」

エリカ「あああああああ」

エリカ「絶対、絶対勝ちなさいよ!!!」

エリカ「っていうか、この際負けてもいいから、白旗出すレベルのダメージだけは許さないわよ!!」

エリカ「前のであれだけ痛かったのに、白旗飛び出すレベルの砲撃なんて受けたら――」

ギュララララ

エリカ「ひっ!」

エリカ「ちょ、これ、向こう気付いて――――」

ズドン

エリカ「あっ……」

エリカ「ぎゃあああああああああああああああああああ!?!?」

235: 2016/10/25(火) 05:33:18.33 ID:L44rNxVso

エリカ「あ、ぅ……」

エリカ(か、体がバラバラになる……)

エリカ(物凄く痛い、のに激痛じゃない……)

エリカ(ち、力が抜ける……)

キュポッ

エリカ(ああ……)

エリカ(しろはた、でてる……)

『大洗女子学園チーム、全車両、走行不能――』

エリカ(ああ……)

エリカ(やっぱり、まけ……)

エリカ(いしきが……)

エリカ(こ、これが……し……?)

エリカ(やだ……こわ……い…………)

236: 2016/10/25(火) 05:34:23.02 ID:L44rNxVso
 





 ☆  ★  ☆  ★  ☆





 


237: 2016/10/25(火) 05:40:08.40 ID:L44rNxVso

エリカ(ああ……) チョロチョロチョロ

エリカ(漏れ出てる……) チョロチョロチョロ

エリカ(オイルと一緒に、私の命が……) チョロチョロチョロ

エリカ(し、氏にたく……)

エリカ「氏にたくないッッ」 ガバッ

エリカ「……」 ハァ・・・ハァ・・・

エリカ「ゆ、夢……?」

エリカ「……」

エリカ(じゃ、ないわよね……)

エリカ(まだあの痛みが、リアルに記憶に刻まれてる……)

エリカ(やっぱり、入れ替わりが行われてる……)

エリカ「体の方にはダメージはなさそ……」

エリカ「……」

エリカ「…………うっ」 グッショリ

エリカ「う、嘘でしょ……」

エリカ「この歳で!? 寮暮らしで……!?」 サーーーーッ

238: 2016/10/25(火) 05:44:19.56 ID:L44rNxVso

小梅「ん……」

小梅「どうしたの逸見さん……こんな時間に騒いで……」

エリカ「な、ななななんでもないわよ!」

エリカ「いいから寝なさい!」

エリカ(一体いつから濡れてるのか分からないけど……)

エリカ(多分あの一撃で体に激痛が走って、全身弛緩したからよね……)

エリカ(何にせよ、バレないように布団とズボンとぱんつを乾かさないと……!)

小梅「……」

小梅「よくわかんないけど……」

小梅「よかった……いつもの逸見さんだ……」

エリカ「……」

小梅「心配したんだよ……」

小梅「昨日も、やっぱり変だったから……」

エリカ「……」

エリカ「心配かけて、悪かったわ」

エリカ「明日また……起きてから、報告、聞かせて頂戴」

239: 2016/10/25(火) 05:47:31.80 ID:L44rNxVso

小梅「うん……」

小梅「心配してたから、度々起きちゃってたし……」

小梅「今日は、ギリギリまで寝るね」

エリカ「ええ……」

エリカ「ちゃんと学校に間に合うようには起こしてあげるわ」

小梅「ありがとう……」

小梅「やっぱり……」

小梅「ちょっと厳しくて怖いけど、優しいよね、逸見さん」

エリカ「……馬鹿なこと言ってないで早く寝なさい」

小梅「……照れてる?」

エリカ「照れてないわよ」

小梅「そっか」

小梅「……」

小梅「本当に、実は優しいって思ってるんだ」

小梅「半裸でブリッジしながら校内駆け回る逸見さんより、そうやって素直じゃない逸見さんの方が、私、好きだよ」

エリカ「待って今サラッと凄いこと言った」

240: 2016/10/25(火) 05:52:00.83 ID:L44rNxVso

小梅「……?」

エリカ「え、ちょ、半裸って何」

エリカ「っていうか校内!? え?」

エリカ「あ、あんた止めてくれなかったっていうの!?」

小梅「眠いし、それは明日また話すね……」

エリカ「ちょ、気になるじゃないの!」

エリカ「っていうか、そんなこと言われたら気になって私が眠れないわよ!」

小梅「おやすみなさい……」

エリカ「お休むな!」

エリカ「何勝手に会話を打ち切ろうとしてるのよ!!」 ユサユサ

小梅「んん……」 スンスン

小梅「あれ……」

小梅「何かアンモニア臭くない……?」

エリカ「おやすみ赤星ゆっくり爆睡していいのよ」

小梅「どうしたの逸見さん笑顔が過去最高で普通に怖い」

249: 2016/10/26(水) 03:47:23.22 ID:mjXVeS9Bo

エリカ「……」

エリカ(それにしても……)

エリカ(普通に最悪ね……)

エリカ(赤星の残したメモのおかげで、Ⅳ号が私の体に入っているときの操縦方法は理解したけど……)

エリカ(既にどうしようもないくらい醜態を晒している……)

エリカ「はあああ…………」

エリカ(幸い目撃者はそこまで多くなかったみたいだし、隊長達がもみ消ししてくれてるみたいだけど……)

エリカ(普通に氏にたい……)

エリカ(私、まだうら若き乙女なのに……) ズーン

251: 2016/10/26(水) 03:56:57.96 ID:mjXVeS9Bo

エリカ「……」

エリカ(まあ、でも……)

エリカ(へこんでてもしょうがないわよね……)

エリカ(それより、これからどうするか考えないと……)

エリカ「……」

エリカ「……どうにもならない過去を引きずって、耐えきれなくなって逃げるなんて、一番したくないもの」 ボソ

エリカ「……」

エリカ(とりあえず、右乳首がイグニッションだったわね)

エリカ(勝手に入れられないように、寝るときは常にブラをしておいた方がいいかしら)

エリカ(そのうえで、絶対に寝ている私の乳首をいじらないよう通達を……)

エリカ「……」

エリカ「寝てる人間の乳首を弄るなって通達、普通に考えて頭おかしいわよね……」

エリカ「っていうか、通達するまでもなく弄るなって話だわ……」


252: 2016/10/26(水) 04:00:56.76 ID:mjXVeS9Bo

まほ「エリカ」

エリカ「ひゃあっ!」

エリカ「た、隊長……」

まほ「……」

まほ「どうやら、今日は普通のようだな……」

エリカ「え、あ、はい……」

まほ「……」

まほ「どうやら、今までの流れからすると、あのおかしな症状は一日で治るらしいな……」

エリカ「何故か再発はしてますけどね……」 ハハ

まほ「……」

まほ「今日は、そのことで、少し話をしにきた」

エリカ「えっ」

253: 2016/10/26(水) 04:08:54.36 ID:mjXVeS9Bo

エリカ「わ、私何かしましたか……!?」

まほ「……」

まほ「まあ……してなくはないか……」

エリカ(本当だあ~~~~~~~~~~)

エリカ(半裸でブリッジ走行ってよく考えたら結構な“何かした”だったぁ~~~~~~!!)

エリカ(しかも隊長の貴重な練習時間を奪い、戦車の代わりに自分に乗せるだなんて……!!)

エリカ(かなりの重罪なんじゃあ……!?)

まほ「どうした、そんな頭を抱えて頭を振って」

エリカ「あああああ……いっそ頃してえ……!」

まほ「よくわからないが、氏なれては困る」

まほ「例え持病持ちだとしても、決してエリカを追放しないし、副隊長から下ろす気もない」

エリカ「…………え?」

まほ「エリカ」

まほ「誰が何と言おうと、エリカがどう思っていようと――」

まほ「私の右腕はお前だからな、お前だからな」

エリカ「隊長……」 ジーン

254: 2016/10/26(水) 04:34:43.55 ID:mjXVeS9Bo

まほ「エリカは筋がいいし、西住流の教えも継いでいる」

まほ「今回も、来年も、必要な存在だ」

まほ「例え珍妙な病気を持っていたとしても、な」

エリカ「……」

まほ「……」

まほ「私は、西住流の後継者だ」

まほ「そのせいで、してやれないことは多い」

まほ「去年も……私では、何もできなかった」

まほ「西住流として、何かをすることなどできなかった」

まほ「出来ることがあったとしたら、やるべきことがあったとしたら、それは勝利することに他ならなかったのに」

まほ「……フラッグ車を守り抜けなかった」

まほ「あんな想いはもうたくさんだ」

まほ「我々は、同じ轍を踏まぬよう、努力してきた」

まほ「例えフラッグ車が孤立しようとも、予想外の事態に副隊長が戦線離脱したとしても、きちんと勝ち抜く」

まほ「それだけの努力をしてきたんだ」

まほ「……仮にエリカが持病で当日駄目だとしても、それだけが理由で負けることなどありえない」

255: 2016/10/26(水) 04:49:12.77 ID:mjXVeS9Bo

まほ「だから、エリカ」

まほ「大会でも、副隊長として、頼んだぞ」

エリカ「……っ」

エリカ「はい!」

まほ「それに――」

まほ「赤星達も、全員今大会に出てもらおうと思っている」

エリカ「赤星達も……」

まほ「去年のことを、誰より引きずっていたのは彼女達だ」

まほ「贖罪のためか自らをいじめ抜き、メキメキと技量を上げてきているからな」

まほ「もっとも、一部の人間は、いい顔をしていないがな」

エリカ「……」

まほ「だから……」

まほ「二人で、助け合ってくれ」

まほ「副隊長の立場から、客観的に赤星を評価し動かしてやってくれ」

まほ「そして――例の病気になったときは、赤星を頼っていい」

まほ「彼女の方から、エリカについてあれこれ聞いてきたほどだ、見捨てはしないだろう」

まほ「……今大会、お前達二人が万全で挑めるかどうかが鍵だ」

まほ「頼んだぞ」

エリカ「はいっ……!」

エリカ(よかったっ……クビとかじゃなくて本当によかった……!)

256: 2016/10/26(水) 04:57:02.07 ID:mjXVeS9Bo

まほ「勿論、こちらでも分かる範囲で色々調べてはおく」

まほ「……」

まほ「辛いだろうが――」

まほ「頑張ってくれ」

エリカ「はいっ!」

エリカ(ああ、嬉しい……)

エリカ(西住隊長に、そこまで言ってもらえるなんて……) キュン

エリカ(まあ……)

エリカ(病気というより、ただの入れ替わりだから、調べても簡単にはわからないだろうけ)

エリカ(でも、もう何も怖くない!)

エリカ「隊長を信じて――全国、とるわよ……っ!」

257: 2016/10/26(水) 04:57:28.49 ID:mjXVeS9Bo
 





 ☆  ★  ☆  ★  ☆





 

258: 2016/10/26(水) 05:03:18.20 ID:mjXVeS9Bo

エリカ「……」

エリカ「痛みには慣れないけど、この体にはいい加減慣れてきたわね……」

エリカ「自分の柔軟性に正直ちょっと引くわ」

みほ「かばさんチームの皆さんは――」

エリカ「……」

エリカ「それにしても、酷いネーミングセンスねえ」

エリカ「適当すぎるでしょ……」

エリカ「何かチームメンバーも適当に仲良しこよしで組んだみたいだし……」

エリカ「相変わらず戦車道ごっこねえ」

エリカ「そんな適当な組分けやネーミングで何とかなるほど、全国は甘くないわよ」

エリカ「……」

エリカ「ほんと、大会に縁がない弱小校は羨ましいわ」

エリカ「気軽にお遊びのように訓練してればいいものね」

エリカ「こっちは隊長が味方とはいえ、今後の身の振り方とか、色々考えなくちゃいけないっていうのに」

エリカ「……」

エリカ「実際、大事な試合で入れ替わる可能性も普通にあるのよね……」

エリカ「うーむ……どうすれば……」

259: 2016/10/26(水) 05:11:17.77 ID:mjXVeS9Bo

???「やあやあ、お招きありがとう」

まほ「ああ、よく来てくれた」

???「大会直前だと、なかなか試合をしてくれる所なんてないからな」

???「正直、助かってるよ」

まほ「何、気にするな」

まほ「こちらとしても得るものはある」

???「そうか、それならいいんだ」

まほ「……」

まほ「ひとつ、聞いてもいいか?」

???「ん?」

まほ「後輩との人間関係についてなんだが……」

???「へえ、意外だな…・…」

???「でもま、なんでも聞いてくれたら、分かる範囲で答えるぞ」

まほ「そうか……」

まほ「恩に着るぞ、安斎」

アンチョビ「アンチョビと呼べ!」

265: 2016/10/27(木) 00:35:08.91 ID:Q0Ja0iCPo

アンチョビ「それにしても……」

アンチョビ「そちらから呼び出してくれるなんてな」

アンチョビ「顔を売るために練習試合の後の打ち上げで名刺配りしてよかったあ~」

まほ「……」

まほ「私はそういう活動はしたことないな」

アンチョビ「まあ、西住のところはなあ」

アンチョビ「既に名前が売れてるし、練習試合の申込みとかも困らないだろ」

まほ「……いや、そうでもない」

まほ「打倒黒森峰を真剣にかかげる所は、奥の手の温存のため大会が近づくとこちらとコンタクトを取らなくなる」

まほ「更にあまり戦車道に力を入れてないところでは予算の都合でそうそう練習試合も組めない」

まほ「……全車要修理にされかねないうちとの試合は断られることが大半だ」

まほ「4強でも、いつでもホイホイ試合を受けてくれるのはサンダースくらいだしな」

アンチョビ「ふーん、王者は王者で大変なんだなあ」

まほ「……もう王者ではないがな」

アンチョビ「あ、いや、その……」 アタフタ

まほ「まあ何にせよ、紅白戦だけではマンネリする」

まほ「受けてもらえるのは有り難い」

まほ「軽戦車だらけのチームとは練習の機会も少ないしな」

アンチョビ「紅白戦をぶん回せる規模なのが凄いな……」

まほ「そこにあの戦車の数で挑んでくるアンツィオも、十二分に凄いさ」

アンチョビ「やる度ボコボコにされるけど、うちの連中は巨大な敵との試合になると楽しそうにノリ出すからなあ」

アンチョビ「……そのエネルギーが変に真っ直ぐにしか向かわないせいで、まだ一矢も報いれてないけど」

266: 2016/10/27(木) 00:59:36.47 ID:Q0Ja0iCPo

アンチョビ「まあでも実際助かってるよ」

アンチョビ「さすが名門、ゆとりがあるというかなんというか……」

アンチョビ「屋台が驚くほど売上を叩き出す」

まほ「今日イチの真顔だな」

アンチョビ「そりゃあもう、驚くくらい売れるんだよ」

アンチョビ「これでも黒森峰産のウインナーやポテトを使った黒森峰限定ピッツァ作ったりと、黒森峰にも貢献はしているんだぞっ」

アンチョビ「やっぱり黒森峰のはピザにも合うんだよな」

アンチョビ「いや、むしろ我々アンツィオのピザが何にでも合うんだッ!」

アンチョビ「どうだ、いっそのこと黒森峰ピザを各学園艦に売りにいかないか!?」

アンチョビ「戦車道の資金も入り、練習試合も出来て、一石二鳥では効かないぞっ!」

アンチョビ「1+1が2どころじゃなく200になれるやつだぞ!」

アンチョビ「一石二百鳥だ!」

まほ(二百兆?)

アンチョビ「10倍だぞ10倍!」

まほ「そうかよかったな」

アンチョビ「どうだ、黒森峰ピザで本当に天下を取りにいかないか!?」

まほ「いや、うちは色々間に合っているから……」

まほ「それに全国大会間際にそこまで色々歩き回る時間もないし、受けてくれるところなんてほぼ皆無だろう」

アンチョビ「まあ、そうだよな……」

アンチョビ「この土壇場にもう少し費用がないとヤバイのって、うちくらいだろうしなあ」

まほ「安心しろ、継続高校も費用がなくてプラウダで盗みを働いたと聞く」

アンチョビ「全然安心できないし、盗人と一緒にはされたくないぞ!?」

268: 2016/10/27(木) 01:15:49.72 ID:Q0Ja0iCPo

アンチョビ「しかしまあ、そこまで困ってないっていうのに、何でわざわざアンツィオを呼び出したんだ?」

アンチョビ「こっちとしては売上がガンガン入ってありがたいし、皆も楽しそうだからいいが……」

まほ「……」

まほ「こちらも、大会でのレギュラー構想の参考に出来て助かった」

アンチョビ「……」

アンチョビ「まあ、本当にそれだけって言うなら、深くは聞かないぞ」

アンチョビ「アンツィオとしては弱みの一個ぐらい見せてもらった方が嬉しかったけどな」 ハハハ

まほ「……」

まほ「弱み、か」

まほ「そうだな」

アンチョビ「ん?」

まほ「散々付き合ってもらった礼だ、弱みを一つ教えておこう」

アンチョビ「お、おいおい、いいのか?」

アンチョビ「もしぶつかったら容赦なくそこを攻めちゃうぞ?」

まほ「ああ」

アンチョビ「本当に後悔しないんだな?」

まほ「承知の上だ」

アンチョビ「本っ当~~~~~にいいんだな?」

まほ「ああ」

アンチョビ「後からやっぱりなしって言っても無理だからな?」

まほ「分かっている」

アンチョビ「そこを攻めて卑怯者呼ばわりとか無しだからな!?」

まほ「くどい」

アンチョビ「そ、それじゃあマジで聞いちゃうからな!?」

まほ「データを消される間際のスーファミソフトかお前は」

269: 2016/10/27(木) 01:31:19.52 ID:Q0Ja0iCPo

アンチョビ「で、実際何なんだ」

アンチョビ「……別に、ただボーナスで教えてやろうって話じゃあないんだろ?」

まほ「……ああ」

まほ「……」

まほ「安斎」

アンチョビ「アンチョビ」

まほ「安斎は、口がかたい方か?」

アンチョビ「まあ、そりゃ約束とかは守る方だと思っているが……」

まほ「……」

まほ「一つ、聞きたいことが――」

まほ「というより、相談したいことがあるんだが」

まほ「口外しないと約束してくれるか?」

アンチョビ「あ、ああ、かまわないぞ」

まほ「その……なんというんだろうな」

まほ「副隊長のことなんだが……」

アンチョビ「副隊長……」

アンチョビ「ああ、あの『馬鹿な!?』みたいなセリフが似合う感じのあの子か」

まほ「多分それで合っているが結構酷いな」

270: 2016/10/27(木) 02:12:35.25 ID:Q0Ja0iCPo

アンチョビ「どうした、喧嘩でもしたのか?」

アンチョビ「それとも何か問題でも?」

まほ「……」

まほ「いや、喧嘩したわけではないが……」

アンチョビ「ってことは、何か問題があるのか?」

まほ「問題と言えば問題なんだが……」

まほ「まあ、それは私にどこうできるレベルの問題じゃないというかだな」

アンチョビ「?」

まほ「とにかく、今エリカは精神的に大変な時期なんだと思っている」

まほ「だから、その、私はどうしたらいいのか分からないというかだな……」

まほ「私にはどうしようもないのだが、それでも何かしてやりたいし、でもそれが却って迷惑なのではないかと思ってな」

まほ「私が下手に首を突っ込むことで、エリカの自尊心を傷つけたりしまいかと不安なんだ」

まほ「大会も近いし、何だかんだでエリカも多感な女の子……何がきっかけで、私と口も聞かずに去ってしまうかわからない」

まほ「それだけは避けたいが……しかし放っておいていいものか」

まほ「いっそノータッチを貫くべきだったのだろうが、こちらからアレコレ首を突っ込んでしまったことはバレているからな」

まほ「ここで下手に距離を取って、私が引いただの見捨てただの思われても困るんだ……」

まほ「一度しっかり話し合うべきなのだろうが、どうも少々気まずくてな」

まほ「上手く話題を切り出すこともできないし、一体どうしたものかと……」

アンチョビ「思春期になったばかりの娘を持ったパパか」

271: 2016/10/27(木) 02:34:51.20 ID:Q0Ja0iCPo

アンチョビ「まあ、要するに……」

アンチョビ「上手くやりたい相手がいて、でも今は上手くいってるとまでは言えず……」

アンチョビ「破局しないで今後上手くやるにはどうしたらいいか、ってことだな」

まほ「ああ」

まほ「……割りと荒くれ者集団だったアンツィオを単身まとめ、慕われるようになった

まほ「そんな安斎にだから聞きたいんだ」

アンチョビ「アンチョビだ!」

アンチョビ「……まあ、とはいえ相手の子が分からないからなんとも言えないが……」

アンチョビ「基本は、相手の子の気持ちになること、かなあ」

まほ「相手の……」

アンチョビ「こちらが一方的にしたいことや聞きたいことを攻め込んでも、向こうは困っちゃうだろうしな」

アンチョビ「相手の気持ちになって、共感する」

アンチョビ「そこから始めたら、少しは選択肢とかが見えてくるんじゃないか?」

まほ「なるほど……」

アンチョビ「まあ、本当にふわっとしたアドバイスで役に立つのかは分からないが……」

まほ「いや、助かる。何もないより、全然いい」

アンチョビ「それはよかった」

アンチョビ「何なら練習するか?」

アンチョビ「私の気持ちになってみろ!」

まほ「……」

まほ「す、スパゲッティが食べたいんだな」

アンチョビ「アドバイスもらっておいて小馬鹿にしてないか?」

まほ「気のせいだ」

まほ「……で、結局スパゲッティが食べたい気持ちなのか?」

アンチョビ「……」

アンチョビ「それは、まぁ」

273: 2016/10/27(木) 02:54:23.06 ID:Q0Ja0iCPo

アンチョビ「まあ、何にせよ相手の気持ちを理解しようとするところからだな」

アンチョビ「理解出来ないと思ったら、理解するために色々してみることだ」

アンチョビ「例えば実際に自分も同じようなことをしてみるとかな」

アンチョビ「そうすると、また色々な発見があるものだ」

まほ「なるほど……」

ワーワー

アンチョビ「ん?」

アンチョビ「騒がしいな……」

アンチョビ「うちの連中がまた何かやったのk――」

エリカ「ブロロロロロロロロロ」 ブロロロロ

アンチョビ「」

小梅「待って逸見さん!!」

アンチョビ「なんだ今の……」

まほ「今の上半身下着だけでブリッジ体勢で微振動しながら水平移動をしていたのが、副隊長の逸見エリカだ」

アンチョビ「!?」

まほ「確かに、私はエリカをきちんと理解しようとしていなかったのかもしれないな」

アンチョビ「うんごめん、謝るからさっきまでの発言全部忘れてもらっていいかな」

まほ「同じことをし、同じ目線に立つことで、見えてくるものもある、か――」

アンチョビ「やめろ!!」

アンチョビ「そんな悟ったような目で脱ぎ出すな!!!」

274: 2016/10/27(木) 03:01:26.86 ID:Q0Ja0iCPo

エリカ「……ふぅん、やっぱり弱小校ね」

エリカ「演習もお遊びみたいなものじゃない」

エリカ「黒森峰はあらゆる実戦を想定して練習してるわよ」

エリカ「ただ漫然とするのでなく、あらゆるケースを想定してきちんとシチュエーションに入り込む」

エリカ「そうして密度の濃い練習に没入するのよ」

エリカ「きっと今頃は黒森峰で激しい大会前の追い込み中だっていうのに……」

エリカ「まったく、何で私はこんなところで戦車なんてやってるのかしら」

エリカ「……」

エリカ「ほら、ノロノロ追いかけっこしてないで、ちゃんと狙いなさいよ!」

エリカ「……」

エリカ「戦車としてあんこうチームとかいうふざけたチームの一員になりつつあるの、本当によくないわ……」

エリカ「私は誇り高き黒森峰の一員なんだから、大会が始まったらきちんとしないと……」

275: 2016/10/27(木) 03:06:51.73 ID:Q0Ja0iCPo

ペパロニ「あれ、ドゥーチェ、どうしたんですか?」

アンチョビ「ああペパロニ」

アンチョビ「こっちに半裸でブリッジしながら高速水平移動をする変な女が来なかったか?」

ペパロニ「頭どうかしちゃったんすか……?」

アンチョビ「その真顔やめろせめて笑え」

まほ「こちらには来てないようだな」

ペパロニ「あ、いらっしゃ――」

ペパロニ「何で半裸?」

ペパロニ「いやもう暑くて女子校だけど、さすがにそれは……」

まほ「……一人に非難や責任が集中すると、如何にしたたかに見える者も心が折れてしまう」

まほ「それを、私は学んだからな」

ペパロニ「はあ……」

276: 2016/10/27(木) 03:10:21.35 ID:Q0Ja0iCPo

ペパロニ「しっかし、さすが黒森峰は余裕っすねえ」

ペパロニ「大会前だっていうのに、練習しなくていいんすか?」

アンチョビ「ナポリタン作りながら言うセリフじゃないけどな……」 ハハ・・・

まほ「問題ない」

まほ「練習は量より質だ」

まほ「それにこの無駄にした時間の分は自主練で補う」

まほ「今はエリカの捜索が先だ」

まほ「……下手に練習場に乱入されても困るしな」

ペパロニ「……?」

アンチョビ「本当にやばくなったら病院とかも頼らなきゃ駄目だぞ……?」

277: 2016/10/27(木) 03:11:09.17 ID:Q0Ja0iCPo
 





 ☆  ★  ☆  ★  ☆





 

278: 2016/10/27(木) 03:17:43.74 ID:Q0Ja0iCPo

エリカ「ん……」

エリカ「……」

エリカ「体が痛い……」

エリカ「筋肉痛かしら……」

エリカ「……」

エリカ「最近ここまで酷い筋肉痛なんてなかったし、っていうか普段とは違う部分が痛い……」

エリカ「……」

エリカ「赤星」

小梅「あ、おはよう逸見さん……」

エリカ「……その顔……」

エリカ「ひょっとして、また……」

小梅「……強く生きてね?」

小梅「氏んじゃったら、なんにもならないよ……」

エリカ「え、やだ氏ぬかもしれないレベルのことしたの私」

279: 2016/10/27(木) 03:20:36.28 ID:Q0Ja0iCPo

エリカ「今回はブラでイグニッション入らないようにしてあったでしょう!?」

エリカ「前回までもそうだけど、もしかして、あんたら余計なボディタッチを――」

小梅「こ、今回は違うよ!」

エリカ「……」

エリカ「今回“は”?」

小梅「……」

エリカ「……」

小梅「とにかく違うよ!」

小梅「これ以上奇行をさせられないから、ちゃんと誰にも触れさせなかったもん!」

エリカ「分かっちゃいたけど改めて奇行って言われると少し傷つくわね……」

280: 2016/10/27(木) 03:27:49.70 ID:Q0Ja0iCPo

小梅「隊長達と追いかけっこして何とか捕まえて調査したんだけど……」

小梅「どうやら、ブラで乳首を保護したことが原因みたい」

エリカ「は……?」

小梅「こう、ブラで乳首が押されっぱなしになってたらしくて……」

小梅「あと逸見さん、意外と寄せて上げるタイプなんだね……」

小梅「そこでおっOいが変形してブラに収められてたみたいでさ……」

小梅「まるでおっOいハンドルが操縦されているかのように、それはもう逸見さんがブインブインと縦横無尽に」

エリカ「普通に生きてたらおよそ聞かないフレーズばんばん飛び出してきてて正直理解が追いつかない」

小梅「ザックリ言うと、ブラしてると不味いことになるし、今回もまた大変でアンツィオの人達に手伝ってもらったんだよ」

エリカ「……は?」

エリカ「アンツィオ???」

小梅「アンツィオの屋台の方に突っ込んでいったみたいだから……」

エリカ「なるほど今確かにちょっと氏にたい気分」

290: 2016/10/28(金) 00:02:55.05 ID:PAGEGcTzo

エリカ「あー……氏にたい……」

エリカ「休みたいわ学校……」

小梅「事情が事情だし、別に休んでもいいとは思うけど……」

小梅「でもそうすると、明日が行きづらくなるんじゃ……」

エリカ「……?」

小梅「ほら、何だかんだで、まだ1年の頃からポストについてた逸見さんにいい顔しない先輩っているし……」

小梅「練習は出ないのに明日行ったりしたら、またチクチク言われるんじゃないかな遭って」

エリカ「……ああ」

エリカ「そういえば、明日だったわね」

エリカ「大会の、組み合わせ抽選会……」

291: 2016/10/28(金) 00:36:47.97 ID:PAGEGcTzo

エリカ「はあ……出るしかない、わね……」

小梅「……」

エリカ「何よ、その顔」

小梅「いや、参ってる逸見さんって新鮮だなーって」

エリカ「はあ?」

小梅「いつでも余裕ぶって上から目線というかなんというか……」

小梅「怒ってるか驕ってるか、みたいなところあるじゃない」

エリカ「最近私に辛辣じゃない?」

小梅「そんなことないよ」

小梅「ただ、逸見さんの色々な側面をしれて、こういうことが言えるようになっただけ」

エリカ「……それはどう受け取ればいいのかしら」

小梅「いいことだと思うな、私は」

小梅「特に一年生の時なんて、弱みを見せずに強がって背伸びしてたけどさ」

小梅「人気のない体育倉庫裏でハンバーグ弁当食べてるような弱い部分も、私は好きだし」

エリカ「え、ちょ、何で知ってるのよ」

小梅「あの時ハンバーグを一口食べただけで落として、マジ凹みからのマジ泣きしてたのが、私が最後に見た参ってる逸見さんかも」

エリカ「わ、忘れなさいよそんなことは!!!」

小梅「散々悔やんで、悩んで、最終的に地面についてない上半分を削って食べちゃうような可愛い所をもっと前面に出した方が」

エリカ「忘れろ!!!!!!!!!!!」


292: 2016/10/28(金) 00:46:31.60 ID:PAGEGcTzo

小梅「……でも、本当に、逸見さんの色々な面が見られたのはよかったかな」

小梅「最初は、いつもカリカリしてるし、上昇志向が強いんだろうけど怖い人だなーって思ってたし」

エリカ「なによそれ」

小梅「まあ、今でもその印象は変わってないんだけどね」 フフ

エリカ「ほんと、なによそれ」 フフ

小梅「それでも、それだけじゃなくなったっていうかさ」

小梅「人間って、色んな面があって、素敵だなあって」

小梅「同じ側面を見ても、他の側面を知ったあとだと、見方も変わるし」

エリカ「……私も、あんたはただオドオドしてるだけの奴かと思ってたわ」

小梅「それは今もだよ」

小梅「結局まだ――去年のお礼も言えてないし」

エリカ「……」

エリカ(あの子、今、大洗にいるのよね……)

エリカ(でも、教えようがないし……)

293: 2016/10/28(金) 00:50:59.85 ID:PAGEGcTzo

小梅「そーいうのもあって、今では結構、逸見さん、人気あるんだよ」

エリカ「はぁ!?」

小梅「みほさんに突っかかるだけのまほ隊長の犬じゃないんだなーって」 クス

エリカ「絶対バカにしてるでしょ」

小梅「そんなことないよ」

小梅「逸見さんなりに、譲れないものがあって、そーなってるんだなーって」

小梅「でもそういうの、話さないと分からないし」

エリカ「いいわよそういうの」

エリカ「馴れ合いとかキャラじゃないし……」

小梅「そう言わないで」

小梅「隊長も、逸見さんのこと、少し知りたいって思ってるよ」

エリカ「ええ!? 嘘でしょ?」

小梅「本当だよー」

小梅「最近変な行動よく取ってるし、気になるのも普通じゃないかな」

エリカ「パワーボム並に持ち上げてからエグい角度で落としてきたわね」

294: 2016/10/28(金) 01:23:38.33 ID:PAGEGcTzo

小梅「それで、皆で逸見さんと仲良くなろうって話になったんだ」

小梅「よく分からない病気的なので大変だろうし」

エリカ「皆で仲良くやりましょうとか、誰かの提案でわざわざやるものじゃないでしょ……」

エリカ「小学校の帰りの会みたいで、なんか、こう……」

小梅「まあ、確かに、逸見さんは居心地悪く感じちゃうかもしれないけど……」

小梅「でも、今回のは、本当に逸見さんと仲良くなろうって思ってる人だけだから、強制的な仲良しごっことかとは違うから!」

エリカ「……で、その仲良くなろうって人達は何をしてるのよ」

小梅「えっとね、とりあえず、逸見さんのためのライングループを作ったの」

小梅「逸見さんの気持ちになったり、あの症状が出たらフォローできるようにしたり……」

エリカ「……前者はともかく、後者はちょっと有り難いわね」

小梅「逸見さんはスマホにしないの?」

エリカ「そんなお金ないわよ……戦車道、ただでさえお金かかるのに」

小梅「西住隊長もそう言ってたんだよね……」

エリカ「特に隊長レベルだとガンガン戦車を動かすから、試合の度にスマホ割れそうだしね」

小梅「だから代わりに私が運営してるんだ、ライングループ『逸見の森』」

エリカ「ネーミングセンス」


296: 2016/10/28(金) 23:56:29.50 ID:PAGEGcTzo

エリカ「クソみたいな名前はともかく……」

エリカ「ラインって、どーやるのよ」

小梅「あ、興味あるの?」

エリカ「……」

エリカ「一応、後学のためにね」

エリカ(大洗の連中もやってたし、もしかしたらあの子も……)

エリカ「……」

エリカ(いや! 関係ないけどあの子は!!!!!)

小梅「えっとね、ここで発言するの」

小梅「見てて」

逸見エリカ { 逸見エリカさんがスタンプを送信しました

小梅「こうやってスタンプで会話するのが主流なんだー」

小梅「ほら、皆もおはようスタンプ送ってきてる」

逸見工リカ { 逸見工リカさんがスタンプを送信しました

逸見エリ力 { 逸見エリ力さんがスタンプを送信しました

逸見えりか { 逸見えりかさんがスタンプを送信しました

小梅「スタンプにはいっぱい種類があってね、中には有料のも」

エリカ「うん待って、まず聞きたいのはそこじゃない」

298: 2016/10/29(土) 00:35:55.95 ID:BXqfpmsNo

小梅「どうかしたの?」

小梅「あ、フリック入力理解できない?」

エリカ「そこじゃない」

小梅「ああ、これはスマートフォンって言ってね」

エリカ「そこまで馬鹿じゃないわよ!!」

エリカ「何で発言者全員が逸見エリカを名乗ってるのかってことよ!」

小梅「よく見て逸見さん、イツミクリカさんとかイツミエリチカラさんとかだよ」

エリカ「ああなるほどでもそこは全然本質じゃない」

小梅「ああ、ラインは自分で好きな名前を決められるんだよ」

エリカ「へえそう、で、何で全員揃って私の名前なのよ」

小梅「……?」

小梅「逸見さんの気持ちになるための逸見の森なんだから、逸見さんになるに決まってると思うけど……」

エリカ「今日イチのマジかこいつフェイスやめなさい」



299: 2016/10/29(土) 01:00:12.69 ID:BXqfpmsNo

エリカ「っていうかアイコンも全員余すところなく私の写真だし、こんなの撮らせた覚えないんだけど!?」

小梅「意外と人気あるから皆写メ持ってるんだよ」

小梅「もしくは逸見さんがテレビカメラを見かけた中学生ばりに写りたがりなのかのどっちかだよ」

エリカ「別に写りたがりじゃないわよ!!」

小梅「でもこの前隊長のインタビューで逸見さん喋らないのに、静止画で無意味に後ろに写り込んでたよね」

エリカ「この話やめましょうか」

小梅「本当に意味なく斜めの角度でバッチリ後ろに」

エリカ「やめましょうか」

300: 2016/10/29(土) 01:31:22.28 ID:BXqfpmsNo

小梅「でも、わずか1日でここまでになるって、すごいんだよ」

エリカ「そりゃそうかもだけど、その凄さが腹立つ方向に特化しすぎなのよ」

小梅「でも皆で一生懸命逸見さんらしさを追求したんだよ」

小梅「発言も逸見さんっぽくなるようにしたり……」

エリカ「うわログきもっ」

小梅「こうやって皆が逸見さんを理解することで、きっと連携もスムーズにいくようになるよ」

小梅「来年逸見さんが隊長になったときとかも、ね」

エリカ「……」

エリカ「いや一瞬いい気分になりかけたけど、隊長になったときまで続けさせないわよこの森

小梅「えー」

小梅「皆でワイワイ挨拶とかも考えたのにー」

エリカ「挨拶ぅ?」

小梅「うん、帰ってきたら『ただいまほ隊長』って言って、他の皆は『おかエリカ』って言ったり」

エリカ「私を理解云々の名目どこ行ったの」

小梅「眠るときは『おやすみほ』って」

エリカ「ねぇひょっとしてアンタ達の中の私はそんな脳味噌茹だったような発言しそうなイメージなの?」

301: 2016/10/29(土) 01:50:28.20 ID:BXqfpmsNo

小梅「でも、こうしてみると、なんていうか、ちょっと親しまれるようになってきたよ逸見さん」

エリカ「嬉しくないわよ……」

小梅「まぁまぁ」

小梅「あ、それよりそろそろ準備しないと、遅れちゃう」

エリカ「うわ、こんな時間じゃないの!」

エリカ「……っと」 カクン

エリカ(入れ替わった翌日、意味の分からない筋肉痛がやってくるわねえ……)

小梅「っと、皆にラインしておかなくちゃ」

小梅「いってきまほーっと」

エリカ「私の名前でそういう頭のネジが全部はずれて代わりに米粒で頭とめましたみたいな発言やめてほしいんだけど」



302: 2016/10/29(土) 02:01:07.73 ID:BXqfpmsNo

<放課後>

エリカ「どっと疲れたわ……」

エリカ(やっぱり入れ替わりって負担大きいわね……)

小梅「お疲れ様」

エリカ「ええ疲れたわ、半分くらいはアンタのせいで」

小梅「?」

エリカ「キョトンとしないでよ……」 ハァ

エリカ「まあいいわ」

エリカ「私はこれから大会抽選のため隊長と飛行船で移動するから」

エリカ(はあ、久々に隊長と二人っきり……)

エリカ(入れ替わらないと信じて精一杯楽しまないと……) ウフフ

小梅「うん、ちゃんと私も荷造りしてあるよ」

エリカ「戸締まりしとけっつってんのよ何しれっとついてこようとしてるのよ」

303: 2016/10/29(土) 02:37:47.95 ID:BXqfpmsNo

小梅「?」

小梅「今回は私達もついていくんだよ?」

エリカ「はあ!?」

エリカ「私と隊長の二人っきりじゃ……」

小梅「あ、もしかして二人っきりがよかったの……?」 アラアラウフフ

小梅「悪いことしちゃったかなあ」

エリカ「そ、そーいうわけじゃないけど……!」

エリカ「……」

エリカ「ん?」

エリカ「私、達……?」

小梅「うん、私のとこのチームメンバーが一緒に行くんだ」

エリカ「何でまた」

小梅「……去年色々あって、まだその影響が消えたわけじゃないから、気を使ってくれたのかも」

エリカ「……なるほど」

ペパロニ「へえ、そんなことがあったんっすねー」

ペパロニ「名門校も大変だ」

エリカ「誰!?」

アンチョビ「おいおい、ペパロニ。ちゃんと自己紹介はしておけよー」

アンチョビ「来年は隊長同士として会うことになるかもしれないんだから」

エリカ「あ、あんた……」

エリカ(の、そのクソ邪魔そうなツインテール)

エリカ「……は、確かアンツィオの!」

ペパロニ「お邪魔しまーす」

アンチョビ「私達も一緒に乗せてもらうことになっててな」

エリカ「はぁ!?」

アンチョビ「いやー、これで経費浮かせればギリ二回戦には間に合いそうっすねえ!」

アンチョビ「ああ!」

アンチョビ「詳細は、さすがに口には出せないがな!」

小梅「大会直前の仕上げに付き合ってくれたお礼に、ついでだから送っていくんだって」

エリカ(二人っきりの旅路が……) ゲッソリ

304: 2016/10/29(土) 03:07:38.37 ID:BXqfpmsNo

アンチョビ「と、いうわけで、我々アンツィオ一同も世話になるぞ」

エリカ「想定の10倍位の大所帯」

ペパロニ「何せ屋台4つ分の人員っすからねえ~」

アンチョビ「道中の食事なら任せておけ!」

小梅「向こうでもよろしくお願いしますね」

アンチョビ「ああ!」

アンチョビ「向こうで黒森峰ピザを売れれば、ついに念願の……」

アンチョビ「っと、ここから先は秘密だったな」

エリカ「大会抽選直前だって言うのに、緊張感のない連中ねえ……」

まほ「いいんじゃないか」

まほ「大会が始まれば、嫌でも緊張の連続になるんだ」

まほ「たまにはゆっくりしても許されるだろう」

エリカ「まあ、隊長がそうおっしゃるなら……」

305: 2016/10/29(土) 03:30:10.64 ID:BXqfpmsNo

エリカ「しっかし、アンタらの所、色々雑すぎない?」

ペパロニ「えー、そーっすかあ?」

小梅「結局どこにいっても戦車道の話になっちゃうんだなあ」 フフ

アンチョビ「まあ、その代わりウチは勢いがあるからな!」

エリカ「勢いだけの戦車が多すぎるのよ」

エリカ「同じようなアホのペアとか多いんじゃないの?」

エリカ「二人乗りなんだから、もうちょっと視野が広がるような組み合わせとかさあ」

カルパッチョ「でも、船頭を多くすると船が登山しちゃうんじゃあ」

エリカ「そりゃ4人とか5人とかが全然違うタイプだったらそーだろうけど……」

エリカ「2人くらいならすり合わせも簡単じゃない」

アンチョビ「まあ、そうかもしれないが……」

アンチョビ「今更ペアを変えるわけにもなあ」

エリカ「そりゃそーだろうけど」

エリカ「次の新入生からはペア決め吟味した方がいいんじゃあないの?」

アンチョビ「うーん、そうかもなあ」

アンチョビ「適当に二人組作らせたもんなあ、うち」

エリカ「建て直しする気があるとは思えない方法来た」

ペパロニ「そこでペアが作れずノリについてこれない子をふるい落とす効果はあったんすよ!」

アンチョビ「何組か決まった後揉めるところもあって、途中からトランプで決めたりもしたよな」

カルパッチョ「来年はねるとんパーティー形式とか」

小梅「それ面白そう!」

エリカ(エンタメばっかり追求してるからいつまで経っても弱いんじゃないかしらこいつら)

306: 2016/10/29(土) 03:43:51.40 ID:BXqfpmsNo

エリカ「ちゃんと得意分野とか苦手分野とか考慮して、戦略上有用な組み合わせを考えなさいよ……」

エリカ(適当に仲良し同士で組みっぱなしの大洗と言い、ナメてるのかしら……)

アンチョビ「まあ、ウチはそういうの出来るほど経験者豊富じゃないからなあ」

まほ「それに、黒森峰だって、そういうのは一部しかやれてないからな」

エリカ「え!?」

まほ「エリカを含め、一部の成績上位者のチームだけだ、そうやって決めてたのは」

アンチョビ「まあ、そりゃああれだけ人数いればなあ」

ペパロニ「やーばいっすよねあの人数。さすが名門」

小梅「厳しさに耐えかねて選択科目変える娘も少なくないですもんねえ」

エリカ「知らなかった……」

エリカ「てっきり全チームそうやって真剣に決めてたのかと……」

小梅「そんなことないよー」

小梅「私のとこだって、名前に星がついてる連中集めとけって感じで組まれたらしいし」

エリカ「知らなかったし知りたくなかった」

小梅「私が車長なのも、皆と話し合ったらやっぱりリーダーは赤色だよねってなったからだし」

エリカ「本当に知りたくなかったし、夢が壊れていく音がする」

308: 2016/10/29(土) 04:13:01.85 ID:BXqfpmsNo

まほ「エリカはうちに幻想を見ているようだからな」

アンチョビ「理想を持つ――いいことだとは思うけどな」

まほ「ああ」

まほ「だが、いずれ黒森峰を背負ってもらうんだ、ある程度現実というのも知っておいてもらわねば」

エリカ「うう……」

まほ「大事なのは、現実を受け入れて、それからどこをどう改善するか考えることだからな」

エリカ「はい……」

まほ「それに、それだけ適当なアンツィオだって、かなりの成長を遂げたんだ」

まほ「何かヒントを掴んで帰れるといいな……二人共・・・・…」

アンチョビ「私もバンバン何かをつかむ気でいるからな、遠慮なく盗んでくれ!」

まほ「……安斎は私にはないものを持っているから、私個人としても盗みたいものはいっぱいあるしな」

アンチョビ「そう言ってもらえると嬉しいね」

アンチョビ「よーし、野郎ども、オトナのぶどうジュースを用意だ!」

ペパロニ「さっすが姉さん話がわかるう!」

アンチョビ「よーし、まずは皆でコイツを――」

アンチョビ「あれ?」

アンチョビ「そういえば、さっき言ってた赤星車のチームは……?」

アンチョビ「明日黒森峰ピザを売るときも世話になるし、挨拶したかったんだが……」

アンチョビ「見る限り、ウチの連中以外は西住達三人しかいないような……」

小梅「あ、他の子達なら今飛行船操縦してるけど……」

小梅「呼んでこようか?」

エリカ「呼んできて、代わりの運転どうするのよ」

カルパッチョ「あ、よければ私が」

エリカ「……出来るっていうわけ?」

ペパロニ「あ、疑ってやがんな!」

ペパロニ「カルパッチョはなァ、うちで一番スターフォックスが上手いんだぞ!」

カルパッチョ「得意なのは宙返り」

エリカ「振りでもなんでもなく宙返りしたら頃すわよ」

309: 2016/10/29(土) 04:20:01.67 ID:BXqfpmsNo

小梅「パンター星組のメンバーを連れてきたよ」

エリカ「あー……だから俗称星組……あー……」

アンチョビ「合点がいったわりには信じたくなさそうな浮かない顔だな」

エリカ「……っていうか操縦は?」

小梅「えーっと、名前知らないんだけど、ラインのHNがSi子ってなってる子が変わってくれた」

アンチョビ「ああ、彼女なら普通に任せて大丈夫だろうな」

エリカ「……」

まほ「ふっ、まあ大丈夫だ」

まほ「そうそうおかしなことにはならないようになっているし、万が一そうなったら私が責任を持って軌道修正しよう」

エリカ「まあ、隊長がそうおっしゃるなら……」

小梅「逸見さん、隊長にはすこぶる甘いの」

ペパロニ「へえ、うちと一緒っすねえ」

アンチョビ「わ、私は別に甘やかされてはいないぞ!?」

カルパッチョ「皆ドゥーチェが大好きってことですよ」 ウフフ

310: 2016/10/29(土) 04:26:59.91 ID:BXqfpmsNo

小梅「そんなわけで、改めてパンター星組のメンバーを連れてきたよ」

アンチョビ「よろしくなー」

小梅「砲撃の専門家、白星」

白星「うっす、よろしく」

アンチョビ「おー、無骨な感じだな。まさに名門って感じだ」

ペパロニ「うちに欲しい人材っすねえ」

カルパッチョ「でも白ってつくわりに悪役っぽい雰囲気なような」

ペパロニ「黒森峰自体ヒールっぽいし?」

エリカ「ちょっと」

小梅「装填の専門家、黒星」

黒星「がんばります、よろしく」

ペパロニ「戦隊っぽく緑とかじゃないんっすねえ」

アンチョビ「カクレンジャーは白と黒だったぞ」

ペパロニ「カクレンジャー?」

カルパッチョ「あ、ケイン・コスギですよね」

小梅「ドリフト、急停止など操縦の専門家、どどめ色星」

どどめ色星「よっす、どうもー」

アンチョビ「ほう、パンターでドリフトするのか」

ペパロニ「そのドライビングについて聞いておくべきっすかねえ」

エリカ「待ってもっと触れるべきっていうかツッコむべき所がある」

小梅「手刀の専門家、ブロッケンJr」

ブロッケンJr「やるっつぇブロッケン」

エリカ「もっとツッコむ所が多いやつが来た!!!!」

311: 2016/10/29(土) 04:30:22.17 ID:BXqfpmsNo

アンチョビ「そっかー、皆星なんだなー」

ペパロニ「星だけで五人揃うなんて、やっぱり黒森峰は巨大っすねえ~~~」

エリカ「いやいやいやいやいや!!!」

エリカ「明らかにおかしいやつが一人いるでしょうが!」

ブロッケンJr「確かに白がヒールっぽい性格で黒が真面目っぽいというのはアベコベに見えるかもな」

エリカ「アンタよアンタ!」

エリカ「何かもうどどめ色とかいうやつがまともに思えるくらい星でもなんでもないじゃないの!!」

アンチョビ「……!」

ペパロニ「た、確かに……!」

エリカ「何でそんな世紀の大発見みたいな衝撃顔晒してるのよ!!」

まほ「…………!」

エリカ「隊長!?」

エリカ「嘘か冗談ですよね隊長!?」

312: 2016/10/29(土) 04:38:03.83 ID:BXqfpmsNo

小梅「確かにジュニアちゃんに直接星の要素はないかもしれない」

エリカ(ジュニアちゃんて……)

小梅「でもね、これには理由があるの」

小梅「このチームが決められたのは、最初の授業でいきなり実戦テストさせられた、その結果を参考にチーム分けをしてた時なんだって」

まほ「当時の三年が、主にチームを振り分けていてな」

エリカ「あ、隊長がしていたわけではないのですね」

エリカ(少しホッとした……)

まほ「ああ……」

まほ「隊長であったとはいえ、まだ二年生だったからな」

まほ「色々なしがらみもあって、そういった部分は上級生に一任することになっていたんだ」

小梅「で、その最初の試験のときに、ジュニアちゃんは方に大きなスターエンブレムをつけてたから……」

ブロッケンJr「フッ……サンダースに通う俺の仲間が、いい結果を残すためのお守りだって言って寄越してくれてな」

ペパロニ「うう、いい話っすねえ!」

エリカ「正気で言ってるのか」

313: 2016/10/29(土) 04:48:01.73 ID:BXqfpmsNo

エリカ「っていうか何か自然に受け入れられてるけど絶対おかしいでしょうよ!」

エリカ「いやドドメ色も本当ならツッコミたいけど、それをさせないくらいおかしいって!」

まほ「どうしたエリカ、人を指しておかしいなんて言うものじゃないぞ」

エリカ「うっ、そ、そうかもしれませんけど……」

小梅「でもそれが逸見さんの平常運転って感じがするよね」 フフ

エリカ「フフじゃないから。私を何だと思ってるのよ」

白星「酸素を吸って嫌味を吐き出す新人類かなにかかと」

エリカ「初対面よね? 仮に副隊長って立場で殴らないとしても私達って初対面よね???」

黒星「確かに仲良しならジュニアちゃんでなくブロッケンちゃんと呼ぶべきかもしれない」

エリカ「そこじゃないしどうでもいいわ!」

ドドメ色「でも三年生にブロッケン先輩がいるから、それだとややこしいでガンス」

エリカ「おかしなキャラ付けをこれ以上増やすな!!!!」

まほ「彼女には世話になった……当時新入生で隊長となった私への反発は大きかったからな……」

エリカ「わぁそうなんですね超感動出来ればこいつら居ない所でじっくりゆっくり聞きたいんですが」

ブロッケンJr「ふっ……アネキはもう戦車道は引退してラーメン屋になっちまったからな……」

まほ「惜しい人物を亡くしたものだ……今まであそこまで苦戦した相手はいなかったというのに……」

エリカ「ええ!? 隊長を……!? コレの姉が!?」

まほ「ああ」

まほ「戦車道で戦う機会がなかったので一度タンカスロンをしたのだが、彼女の毒ガス攻撃にはそれはもう苦しめられた」

エリカ「バーリトゥードにも程がありますねそいつ」

小梅「もう、さっきから否定ばかりはよくないよ逸見さん」

小梅「大体おかしい度合いで行けばここ数日の逸見さんが頭一つ抜けてるんだからね」

エリカ「そういう反論不能で一撃氏するポイントを的確に突くのはやめて」

320: 2016/10/30(日) 00:37:55.93 ID:UFeasvGSo

アンチョビ「しっかし……」

アンチョビ「結構名門になると、そーいうのあるんだなー」

小梅「毒ガス攻撃はそうそうないと思いますけど……」

アンチョビ「いや、そこじゃなくて」

アンチョビ「派閥争いというか、そーいうのが」

まほ「ああ……」

まほ「そこは大人数の所だとどうしてもな」

黒星「うち、比較的縦社会で年功序列の側面もありましたからね」

まほ「どうしても一年が突然出てくると揉め事が起きるからな」

小梅「マジノでも革命が起きたって噂ですからねえ」

アンチョビ「え、そーなのか?」

ブロッケンJr「ああ」

ブロッケンJr「戦車道からラーメン道に選択科目を変更したアネキが、マジノでそういう情報を仕入れてきたからな」

アンチョビ「うーん、ウチも移動屋台をもうちょっと情報収集で有効活用してみるか……」




321: 2016/10/30(日) 01:34:30.59 ID:UFeasvGSo

まほ「当時は七光と呼ばれたし、反発し離反した者も少なくはなかったよ」

アンチョビ「大変だったんだなあ……」

エリカ「ふん、隊長の実力も見抜けないなんて」

エリカ「おかげで今は結束もバッチリよ」

小梅「でも去年は逸見さんが結構みほさんに突っかかってたよね」

エリカ「うぐっ……」

ペパロニ「サンダースとかピザが売れるからたまに行くけど、あそこはそんなに闇っぽくなかったけどなあ~」

エリカ「あそこの連中全員バカだから」

まほ「まあ、巨大な派閥が勝利したあと、みたいなところあるからなあそこは」

まほ「そもそもあのノリに馴染めない人間は最初からあそこを選ばない」

カルパッチョ「なるほど」

白星「プラウダもアンチの鎮圧に余念がないよなあ」

小梅「派閥が複数しっかり残ってるの、四強だと聖グロくらいかも」

アンチョビ「そ、そうなのか?」

アンチョビ「雰囲気的にあんまり屋台を置いてくれないからあんまり行けてないんだが……」

アンチョビ「そんな殺伐としたイメージなかったけどなあ」

まほ「まあ、殺伐とはしていないな」

まほ「ダージリンのアレを真剣に格好いいと思っている派閥とギャグとして好きな派閥との争いだしな」

小梅「紅茶以外にもお菓子のあだ名も欲しい派閥と保守派の争いもあるとか聞きましたよ、ラインで」

白星「幹部になりたいけどあだ名は勘弁派も少数ながらいるとか」

アンチョビ「平和だなー聖グロ……」

ペパロニ「っていうか、あだ名嫌な人もいるんすねえ」

ペパロニ「うちなんて自己申告制だから色々いすぎて統一感すら最近なくなってきたのに」

アンチョビ「本当にある日突然カルパッチョになったもんなあ」

カルパッチョ「最近増えたのはピザポテトと輪切りのソルベでしたっけ」

アンチョビ「そうそう、それに合わせてエビピラフのやつがジェラートに変わりたいって言ってきて、ジェラートが2人になったんだよ」

アンチョビ「元ジェラートはジェラートは自分だって言うし、よく分からないことで揉めるんだよなーウチの連中」

ペパロニ「あれマジどーすりゃ丸く収まるんすかねえ」

エリカ「無秩序すぎて意味分からなくなってるじゃない」

322: 2016/10/30(日) 01:47:54.99 ID:UFeasvGSo

アンチョビ「どこも苦労はあるんだなあ」

まほ「揉め事のタネを根絶やしにしようとしても、きりなんてないしな」

小梅「ある程度アンチが居なくなって安定したって点じゃ、うちも同じようなものですけど、それでも火種は0じゃないですからねえ」

ペパロニ「まあ半裸ブリッジで全力疾走する奴もいるくらいじゃあなあ~~」

エリカ「それはともかく!!」

エリカ「隊長の凄さが理解できず無意味な反発をした連中が消えて、黒森峰は盤石よ」

エリカ「今年は優勝頂きだわ」

まほ「あまり過大評価してくれるな」

まほ「……連覇を逃したのは事実だ」

まほ「伝統を残しつつ、何かを変えねば奪還は出来まい」

アンチョビ「真面目だなー……」

ペパロニ「すごいっすねえ」

まほ「もう王者でなく挑戦者だからな」

アンチョビ「私達もその姿勢、見習わないとな!」

ペパロニ「確かに、あそこで屋台出すの初めてっすもんねえ~」

アンチョビ「初心に戻って価格でも見直すか?」

エリカ「戦車道が完全にオマケみたいになってるけど大丈夫なのアンタら」

323: 2016/10/30(日) 02:05:07.87 ID:UFeasvGSo

ペパロニ「あとはライバル企業を知る、とかっすね」

アンチョビ「ああ、黒森峰ラーメンな」

ペパロニ「意外とどこでもありますからねえ」

エリカ「え、そんな有名なの?」

小梅「うん」

小梅「実は私達最初六人組だったんだけど、一人辞めちゃって……」

小梅「その虹星さんもラーメン道に行ったんだって」

アンチョビ「レインボシ……」

ペパロニ「およそ現代日本とは思えない名前っすねえ」

エリカ「……」

小梅(あ、ツッコんでいいかちょっと悩んでる……)


324: 2016/10/30(日) 02:06:28.79 ID:UFeasvGSo

小梅「でもブロッケンさんと2人で作ってるラーメンは本当に美味しいんだって」

アンチョビ「なんでも虹が見えるラーメンという噂は聞いたな」

エリカ「はあ?」

エリカ「ラーメン食べてそんなことになるわけないでしょ」

小梅「あと食べたら衝撃で全裸になったって報告も」

エリカ「馬鹿馬鹿しい」

エリカ「でもそこまで美味しいなら食べてみたいですよね隊長」

まほ「目がちょっと怖いぞエリカ」

325: 2016/10/30(日) 02:36:49.06 ID:UFeasvGSo

まほ「とりあえず、もうそろそろ眠るか」

まほ「明日も早いしな」

小梅「私達は交代で運転しておきます」

まほ「すまないな」

エリカ「……」

エリカ(他校の情報、最低限の戦車道関係は抑えていたけど……)

エリカ(意外と、知らないことがあったわね……)

エリカ(……隊長を補佐するためにも、必要な情報はもっと集めていかないと……)

アンチョビ「……」

小梅「それじゃあ皆さん、おやすみほ~」

エリカ「ちょ」

まほ「?」

アンチョビ「何だ今の挨拶」

小梅「あ、これはオリジナルの挨拶で……」

エリカ「赤星」

小梅「逸見の森では皆寝る前にこの言葉を」

エリカ「赤星!!!!!!!!!!」

326: 2016/10/30(日) 03:07:26.71 ID:UFeasvGSo

<翌朝>

アンチョビ「うー……眠い……」

カルパッチョ「はしゃぎすぎましたね……」 クァァ

まほ「大丈夫か?」

アンチョビ「ああ……」

アンチョビ「一緒に来ててよかったよ」

アンチョビ「じゃなきゃ多分寝過ごしてたしな……」

アンチョビ「っと、起きろペパロニ!」

アンチョビ「私達は行くし、そっちも仕込みがあるだろ!」

エリカ「大変ね、アンツィオのトップも……」

まほ「ああ……」

まほ「うちにはない苦労だ」

エリカ「なくていいですよ、あんな苦労」

まほ「そうだな」

まほ「だが――」

まほ「あの姿勢は、少し、見習いたいな」

まほ「ああやって世話を焼くことも、皆を引っ張り鼓舞することも、私には出来ない」

エリカ「隊長……」

まほ「……いや、すまない、忘れてくれ」

まほ「早朝で、少し、寝ぼけたんだ」

327: 2016/10/30(日) 03:21:14.24 ID:UFeasvGSo

<移動中>

エリカ「……」 スタスタ

アンチョビ「なあ」 コソ

エリカ「?」

アンチョビ「……チームメイト、あんまり覚えてないんだな」

エリカ「……ああ、昨日のことですか」

エリカ「そりゃ、ウチは名門で練習厳しいのもあって、どんどん人がやめますから」

エリカ「それに、やらなきゃいけないことが多すぎて、そこまで覚えていられないんですよ」

アンチョビ「まあそうだよな」

アンチョビ「それが普通だと思うよ」

エリカ「……」

エリカ「何か言いたそうな顔ですね」

アンチョビ「なに、普通じゃない黒森峰の隊長様は、それでも全員覚えてるんだよなって思ってさ」

エリカ「……!?」

アンチョビ「……立場もあるし、ゆとりがあるほど完璧じゃないのが当然だし、全員をケアするなんて無理だろうけどさ」

アンチョビ「でもアンタのとこの隊長は、別に下を無碍にしてるわけじゃあないんだ」

エリカ「……」

アンチョビ「……上を見るのはいいことだし、ゆとりがないのはしょうがないことだけどさ」

アンチョビ「もうちょっと、足元の存在をしっかり見てやっても、バチは当たらないんじゃないか?」

エリカ「……」

エリカ「肝に銘じておきます」

エリカ(それでも……私が隊長の横にいようとしたら、辞めるかもしれないレギュラーになるかもわからない子達と馴れ合う暇なんて……)

328: 2016/10/30(日) 03:31:00.45 ID:UFeasvGSo

エリカ「……」

エリカ(こんな考えだから……あの子は、ここを去ったのかしら……)

エリカ(大洗、大会なんて出られないだろうけど、それでも、メンバーの距離は近そうだったし)

エリカ「……」

エリカ(あのお遊戯みたいな空間が、あの子の理想、だったっていうの……?) ギリッ

アンチョビ「ま、最上学年になるまでは、大いに悩むがいいさ」

アンチョビ「何かあったら相談に乗るぞ?」

アンチョビ「自分のとこの連中に言いづらいことを相談し合う仲って大事だしな」

エリカ「……何でそんなこと」

アンチョビ「まぁまぁ」

アンチョビ「来年以降ペパロニ達が世話になるしな」

アンチョビ「恩を売っておこうかなって」 ハハハ

アンチョビ「ほら、これ、私のメアドだ」

アンチョビ「何かあったら連絡してくれ」

エリカ「……一応、ありがたく受け取っておきます」

アンチョビ「あとこれがラインのID」

アンチョビ「こっちが逸見の森用に昨日フェイスブックで作ったサブ垢の方」

エリカ「ちょ、なんでそれ……」

小梅「私が教えといたんだ」 ニュッ

エリカ「うわっ……びっくりした……」

エリカ「っていうか、何広めてるのよ赤星!!!」

小梅「森をどんどん大きくしようと思って……おいでよ!逸見の森!」

エリカ「焼き払えそんな森」

小梅「あ、じゃあ私達屋台班はこっちだから!」

エリカ「逃げたわね……」

329: 2016/10/30(日) 03:34:23.34 ID:UFeasvGSo

アンチョビ「そんじゃ、私達も一旦分かれるか」

まほ「別に一緒に入ってもいいんじゃあ」

アンチョビ「いや、やめておくよ」

アンチョビ「ここから先は、ライバルだしな」

まほ「……そうか」

アンチョビ「それに抽選の結果にビクビクするとこ見られたくないしな」 アハハ

エリカ「まったく……」

エリカ「どんな抽選結果であろうとドンと構えているのが王者」

エリカ「私達は例え相手がどこであろうと動じないっていうのに」

ペパロニ「プラウダや聖グロと初戦でも?」

エリカ「当然よ」

エリカ「もし私が抽選会で動揺するようなことがあったら、虹が見えるラーメンとやらを右の鼻の穴から食べて左の穴からハイブリッドレインボウ出してあげるわよ」 ハン

330: 2016/10/30(日) 03:35:48.10 ID:UFeasvGSo






司会『続いて、大洗女子――――』

エリカ「!?!?!?!?!?!?!?」

まほ「みほ……?」

エリカ「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

アンチョビ「ペパロニが屋台班でよかったなー多分マジでラーメンやらされてたくらいに凄い顔しているぞ今」

335: 2016/11/03(木) 00:05:11.51 ID:/6Fply3xo

カルパッチョ「彼女は……」

アンチョビ「西住みほ」

アンチョビ「……あの黒森峰隊長様の妹君だよ」

カルパッチョ「と、いうことは西住流の……」

まほ「……」

アンチョビ「しかし、あんな子だったんだなー」

カルパッチョ「ドゥーチェはご存知なかったんですか?」

アンチョビ「まあ、去年はうちの戦力もガタガタで向こうは強すぎるわで顔見る前に負けたからなー」

アンチョビ「何回か試合してもらったけど、一度もツラを拝めてなかった」

まほ「色々とあって、挨拶は私と三年生で行っていたからな」

エリカ「……」

エリカ(何で……何でここに……!?)

エリカ(大会とは無縁だけど戦車でのんびりやる、優雅な隠居ドロップアウト生活を送っていたんじゃあないの……!?)

336: 2016/11/03(木) 03:38:34.73 ID:/6Fply3xo

エリカ「……」

アンチョビ「な、なあ、お前ンとこの副隊長とんでもない顔してるけど大丈夫なのか?」

まほ「ああ」

まほ「みほが絡むと大体ああだ、気にしなくていい」

アンチョビ「いや、あれが平常運転なのもどうかと思うが……」

アンチョビ「まあ、いいか」

アンチョビ「気にはなるが、私は私でペパロニ達の所に行かなきゃならないしな」

カルパッチョ「今回はありがとうございました」 ペコリ

アンチョビ「おかげで大会に向けた資金が少し稼げたよ」

まほ「そうか、それはよかった」

まほ「……もっとも、大会で当たれば容赦はしないし、再び資金難になる程度には叩き潰させてもらうがな」 フッ

アンチョビ「ぐう……上等だ!」

アンチョビ「黒森峰だろうがアンツィオはただで負けはしない……いや、勝つ!」

まほ「……エリカ」

エリカ「……はい」

まほ「相手は今後も付き合うことになるであろう学校の隊長格だ」

まほ「副隊長として、挨拶だけはきちんとしなくちゃいけない」

エリカ「……申し訳ありません」

アンチョビ「まあ、なんだ」

アンチョビ「昔の仲間が敵になるって、複雑だと思うが……」

カルパッチョ「まるで漫画か映画みたい……」 ウフフ

アンチョビ「確かに、黒森峰が主人公だとしたら、完全に漫画の展開だ」

アンチョビ「だがしかーし! そうはならない!」

アンチョビ「何せ西住みほは、一回戦がサンダース!」

アンチョビ「更に二回戦はこのアンツィオ高校が相手なんだ」

アンツィオ「悪いが大洗と黒森峰が戦うことはない!」 キリッ

エリカ「……」

エリカ「まあ、そうよね」

エリカ「戦車道はそんなに甘くはない」

エリカ「順当に考えれば、決勝でぶつかるのはプラウダかサンダースだわ」

エリカ「他はさほど苦戦しそうな学校ばかりだし」

アンチョビ「おーい、目の前目の前」

337: 2016/11/03(木) 04:02:42.32 ID:/6Fply3xo

アンチョビ「あまり見くびるなよ?」

アンチョビ「序盤から大物であるマジノと当たり、2回戦はサンダース校を撃破」

アンチョビ「そしてプラウダときて、黒森峰か聖グロ……」

アンチョビ「どうだ、私達こそまさにザ・主人公だろう!」

エリカ「なっ、私達黒森峰が聖グロに遅れを取るとでも!?」

アンチョビ「はは、去年も接戦だったんだ、今年はどうなるかわからないぞ」

エリカ「どうかしてたまるもんですかっ」

エリカ「あんな練習試合のあと、大洗なんかには贈り物するのに私には何もくれないような連中なんかにッ」

アンチョビ「突然私怨を前面打ち出してきたな」

まほ「まあだが、聖グロは厳しい審査基準を越えた相手にしか贈らないという有名な話もある」

アンチョビ「自分の腕を見直せってことか……」

エリカ「あいつら、面白かったとか、そういう部分で判断してるよの!?」

エリカ「勝った試合の方が負けた試合より面白いに決まってるんだから、そりゃ貰えないでしょうよ!」

エリカ「大洗との練習試合のあと、私達より面白いみたいなこと言ってたの、聞いてるんだから……!」 ギリィ

エリカ「今度こそ絶対、隊長の好敵手に相応しい人物は誰か決着をつけてやるわ……!」

アンチョビ(この子も大概スイッチ入ると周りを置いて話し出すよなあ)

まほ(聞いたって、いつどこで誰に聞いたんだろう)

338: 2016/11/03(木) 04:12:14.44 ID:/6Fply3xo

アンチョビ「ま、いずれにせよ互いに決勝まで行かなきゃ戦えないんだ」

アンチョビ「お互い頑張ろう」

まほ「ああ」

アンチョビ「それじゃ、決勝戦で会おう!」

エリカ「また分かりやすくフラグ立てたわね……」

カルパッチョ「さすがにそれは……」

アンチョビ「なに、フラグ!? どこかに恋愛の切っ掛けが――」

エリカ「いや、そーいうのじゃなくて……」

エリカ「如何にも強敵の噛ませ犬になりそうなポジションだなあって」

アンチョビ「何をぅ!?」

まほ「サンダースやマジノの噛ませ犬と言うには戦力差が……」

エリカ「確かに順当すぎますし、アンツィオを破ってもボス感は出ませんよね」

まほ「2回戦あたりで戦う敵に初戦で負けてくれるなら、次の敵の強さが引き立つのだが……」

エリカ「その場合でも2回戦の相手はあまり強そうに見えないんじゃないですか」

エリカ「あまりに戦車がアレなうえにほぼ一芸ですし……」

まほ「噛ませ犬もできないとすると……」

エリカ「強くはないけど何かインパクトに残る枠じゃないですか?」

エリカ「戦車道界のワッパツヨシ的な……」

アンチョビ「お前らなー!」

アンチョビ「切り札見て絶ッッッ対ビビらせてやるかんなー!!」

339: 2016/11/03(木) 04:13:53.56 ID:/6Fply3xo

アンチョビ「おぼえてろよー!」

アンチョビ「行くぞカルパッチョ!」 トテトテトテ

カルパッチョ「おしおきだべー」 トテトテトテ

エリカ「……それはまた別ジャンルじゃない?」

まほ「……最後までコミカルな連中だったな」

エリカ「ええ……」

まほ「……」

まほ「よかったよ、アンツィオと一緒に来て」

エリカ「え?」

まほ「……私と2人だったら、みほを見て以降、ずっと張り詰めた表情でギクシャクしただろうしな」

エリカ「うっ……」

340: 2016/11/03(木) 04:19:24.69 ID:/6Fply3xo

まほ「……っと、赤星からか」 ブルルルル

まほ「どうやら、屋台が繁盛していてしばらく離れられないらしい」

エリカ「はあ?」

エリカ「何やってんのよあの馬k――」 ブルルルル

メール『夕方まで二人っきりにしてあげるから、ファイト(^_-)-☆』

エリカ「……」

エリカ(何の気遣いよこれ……っ)

まほ「ふむ……」

まほ「ならばどこかで少々時間でも潰すか……」

まほ「まるで不慣れなのに手伝いに行くと、むしろ邪魔をしかねないからな」

エリカ「ですよねえ……」

エリカ「……」

エリカ「あ、あの……」

まほ「?」

エリカ「よ、よければなんですけど、その……」

エリカ「戦車喫茶、行ってみませんか!?」

エリカ「ネットで話題で、行ってみたかったんです……!」

エリカ「……だめ、でしょうか」

まほ「……ふっ」

まほ「駄目な理由が見当たらないな」

まほ「息抜きも大事だ。そこに行って楽しもう」

エリカ「…………!」 パァァァァ

エリカ「はいっ!」

347: 2016/11/09(水) 01:51:49.85 ID:eVOC45zqo

エリカ「ここです!」

まほ「ほう、なかなか洒落た外観じゃないか」

エリカ「いつもは長蛇の列ですが、今日は時間が時間なので比較的すぐ入れそうですね」

まほ「いつもはもっと混んでいるのか……」

エリカ「そうなんですよ」

エリカ「それこそ、あそこの細い路地まで列が続くくらい――」

???「ねっ、ここには新鮮で美味なスイーツがたくさん置いてあるのさ」

???「おお……た、確かにほとんど手がつけられてないものまである……」

???「で、でもゴミ箱の中のって汚いんじゃ……」

???「ここのポリバケツは毎日新鮮な袋に変えられている」

???「それに袋と接していない上部のケーキならば――」

???「確かに、たらふく食べてもいい気がしてくる……」

???「ええ、でも人としてどうなの……?」

???「人としての尊厳――それはそんなに大切なことなのかな?」

???「多分無視しすぎると色んな人が怒り出す程度には大切だと思うけど」

エリカ「……」

まほ「どうしたエリカ」

エリカ「いえ、ちょっと路地裏に見ちゃいけないものが……」

まほ「?」

エリカ「なんでもないです、方々から怒られる前に早く入りましょう……」

まほ「?」

348: 2016/11/09(水) 02:22:38.04 ID:eVOC45zqo

まほ「なかなか凝っているな……」

エリカ「ディテールの凄さに関しては全国屈指だそうです」

エリカ「戦車道Walkerにも載ってましたし」

まほ「アンツィオの連中も、ここを見ておけばよかったのにな」

エリカ「う、まあ、商売のうえではそうかもしれませんね……」

エリカ(折角隊長と2人っきりだってーのに、邪魔させるなんて絶対御免……!)

ドーーーーン

まほ「この音は……」

エリカ「ああ、ここは呼び鈴の音も凝っていて――」

華「ケーキセットで、チョコレートケーキ2つといちごタルト、レモンパイと、ニューヨークチーズケーキを1つずつお願いします」

エリカ「」

店員さん「承りました、少々お待ち下さい」 バッ

エリカ(気のせいじゃなければ知ってる顔がいる……)

華「あ、今のは私用ですので……他の皆さんはどうされます?」

店員「!?」

エリカ(知らない顔を覗かせてるけど、あれって、あれって――――!)


349: 2016/11/09(水) 02:42:56.24 ID:eVOC45zqo

沙織「このボタン、主砲の音になってるんだ」

優花里「この音は、九丸式ですね」

エリカ(ぐうっ……)

エリカ(分かっちゃあいたけど、Ⅳ号戦車になってるときに見かける顔ぶれそのまんまっ……!)

エリカ(やっぱりただの夢じゃなくて入れ替わってたッ……)

エリカ(出来ることなら、遠くの席に座って、顔を合わせず――)

まほ「どうした、エリカ」

まほ「そっちに何かあるのか?」

エリカ「うっ、いえ、そんなことは――」

ブロロロロロロ

まほ「ほう……」

まほ「ドラゴンワゴンか、凝っているな」

エリカ「あっ」

まほ「?」

エリカ(そ、そっちに視線を持っていかれると――――)

まほ「あれは……」

エリカ(不味い不味い不味い)

エリカ(ええい、こうなったら、下手に絡んで変な空気になる前に、いっそのこと――)

350: 2016/11/09(水) 03:30:42.61 ID:eVOC45zqo

エリカ「副隊長?」

エリカ(こちらから絡むっ――)

エリカ(これなら予期せぬ話題とかで変なことを答える心配はないっ……)

エリカ(さすがに入れ替わりで得た情報を漏らしでもしたら、変態ストーカー扱いは免れないもの……)

エリカ(なんとしても早々に切り上げるっ!)

エリカ「……ああ、元でしたね」 ハン

まほ「お姉ちゃん……」

沙織「この人が、みぽりんの……」 ゴクリ

みほ「あ、その、そっちの人じゃなくて……」

エリカ「姉が妹をうっかり副隊長なんて言うわけないでしょ頭使いなさいよ」

沙織「うう、そこまで言わなくても……」

華「ということは、こちらの方が、元お姉さん――!」

みほ「ええと、そっちに関しては元じゃなくて……」

まほ「現役だ」

エリカ(こーいう所があるから絡みたくないのよコイツら……!)


351: 2016/11/09(水) 03:43:36.91 ID:eVOC45zqo

まほ「まだ戦車道をやっているとは思わなかった」

みほ「……」

エリカ(うっ……)

エリカ(隊長が、割りと怒っていらっしゃる……)

エリカ(無理もない……)

エリカ(目をかけていた妹が、黒森峰を捨て逃げるように学園艦を降りた……)

エリカ(その時、あの子の側に密かにつき、転校できるよう方々に頭を下げたと聞く……)

エリカ(隊長自身、辛い想いだっただろうに、あの子の幸せを思って、送り出したのに……)

エリカ(この子はのうのうと、他校でまた戦車道をしている……)

エリカ(やっぱり……隊長のためにも、私はこの子を許すわけにはいかないっ……!)

まほ(戦車道始めたならメールで教えてくれてもいいのに……(´・ω・`)サミシイ)

352: 2016/11/09(水) 03:57:39.92 ID:eVOC45zqo

優花里「お言葉ですが、あの試合でのみほさんの判断は、間違ってませんでした――!」 ガタッ

みほ「……っ」

エリカ「……部外者が口を出さないでほしいわね」

優花里「すみません……」

まほ「……行こう」

エリカ「はい、隊長」

エリカ「……一回戦はサンダース付属と戦うんでしょう?」

エリカ「無様な戦い方をして、西住流の名を汚さないことね」

みほ「……」

エリカ(そして私のボディも色々と汚さないで欲しいから入れ替わってないタイミングでさっさと負けなさいよホント……!)

353: 2016/11/09(水) 04:05:26.37 ID:eVOC45zqo

沙織「何よその言い方!」

華「あまりにも失礼じゃ……!」

エリカ「貴女達こそ戦車道に対して失礼じゃない?」

エリカ(まあ大洗の連中の中じゃマシな方ではあるけども)

エリカ(でもあのカラーリングといい、絶対おかしいわよコイツら)

エリカ「……無名校のくせに」

華「……っ」

エリカ「……この大会はねェ」

エリカ「戦車道のイメージダウンになるような学校は、参加しないのが暗黙のルールよ」

エリカ(そこに入るために、皆がどれほど苦労してきたか……)

エリカ(後追いだったアンツィオんとこの連中が、どれだけ努力と練習を積み重ねて舞台に参加出来るようになったか……)

エリカ(私だって、あんたの背中に追いつくために、どれだけっ……!)

エリカ(それなのに、気軽に遊び半分で、アンタたちは……っ!)

354: 2016/11/09(水) 04:12:28.26 ID:eVOC45zqo


麻子「強豪校が有利になるよう示し合わせて作った暗黙のルールとやらで負けたら恥ずかしいな」

エリカ「……っ!」

沙織「もし、アンタ達と戦ったら、絶対負けないから……!」

エリカ「ふん、頑張ってね」

エリカ(当たるとしたら決勝、そこまで来るなんてありえないわよ)

エリカ(戦車道をなめるんじゃないわよ) チッ

沙織「べーーーっ」

華「嫌な感じですわ」

麻子「女の腐ったようなやつだったな」

優花里「羊水が腐っている、というやつでしょうか」

沙織「絶対彼氏いないよアレ」

華「まるで生理中みたいでしたし、腐っているとはいえある意味女性の体現者なのかもしれませんね、悪い意味で」

エリカ「聞こえてるわよクソ弱小」

華「クソだなんてお下品な……」 ヒソヒソ

沙織「自分こそ、金魚のクソなのにね」 ヒソヒソ

麻子「女の要素にクソを加えて『うん子』か、最悪だな」 ヒソヒソ

優花里「少々引きますね……」 ヒソヒソ

エリカ(Uターンして今すぐドロップキックしてきちゃ駄目かしら)

355: 2016/11/09(水) 04:27:11.61 ID:eVOC45zqo

まほ「……」

エリカ「ええと、注文どうしますか?」

まほ「……エリカに任せよう」

エリカ「そ、そうですか……」

エリカ「ええと、では、ケーキセットのガトーショコラを2つ……」

店員さん「承りました、少々お待ち下さい!」 ババッ

エリカ「……隊長……」

まほ「……」

まほ「みほは……」

まほ「まだ、戦車道を続けていたんだな」

エリカ「……」

エリカ(私ですら、あれだけショックだったんだもの……)

エリカ(隊長は、もっとショックのはず……)

エリカ(ましてや私は戦車道をしてること知った後、大会参加を知ったのに対し――)

エリカ(隊長は、いきなり戦車道を続けていることを知った上大会参加というサプライズまで受けている……)

エリカ(ショックじゃないはずがない、わよね……)

356: 2016/11/09(水) 04:30:32.06 ID:eVOC45zqo

まほ「……」

まほ「エリカは……」

まほ「みほが戦車道を続けていると知って、どう思った?」

エリカ「え……」

エリカ「……」

エリカ「私は……」

まほ「……」

まほ「正直な気持ちを、聞かせてくれ」

エリカ「……」

エリカ「ショックでした」

エリカ「あの子が逃げたときでも、裏切られたような気持ちになって、失望したっていうのに……」

エリカ「戦車道から逃げ出して、そのくせ喉元過ぎた熱さを忘れて、のうのうと戦車道を続けている……」

エリカ「そんなに戦車道が好きなら、黒森峰で去年のことを挽回すればよかったじゃないっ……」

エリカ「なのに、あの子は――っ!」

357: 2016/11/09(水) 04:35:37.77 ID:eVOC45zqo

エリカ「だから……だから私は!」

エリカ「あの子を認めたくないっ」

エリカ「黒森峰から逃げ出したあの子を!」

エリカ「私は……」

エリカ「あそこからでも、這い上がって来てほしかったのに……っ」 ギリッ

まほ「エリカ……」

まほ(そう、だよな)

まほ(お前は――みほの、一番の、友人だったものな……)

まほ(エリカは否定するだろうし、みほも素直に首を縦には振らないだろうが――)

まほ(それでも私は、お前達を親友だと思っていたし、そうであってほしかった)

まほ(黒森峰を支える、二本の柱であってほしかったよ……)

358: 2016/11/09(水) 04:52:09.06 ID:eVOC45zqo

まほ(……私は……)

まほ(あの子のために、色々してきたつもりだった……)

まほ(あの子のため、西住流のため、黒森峰のため――)

まほ(色々なもののため、尽くしてきたつもりだった――)

まほ(だが――)

まほ「……」

『何よその言い方!』

『あまりにも失礼じゃ……!』

まほ(守るものが、多くなりすぎていたんだな……)

まほ(自分では、上手く立ち回っていたつもりだったし、失敗したとも思っていないが――)

まほ(それでも……)

まほ(いつしか私は、みほのため、感情のままに怒り何かに立ち向かうことができなくなっていたんだ……)

359: 2016/11/09(水) 04:55:29.31 ID:eVOC45zqo

まほ「エリカ」

エリカ「……はい」

まほ「……」

店員さん「おまたせしました~、ケーキセットでございます!」

まほ「……ありがとう」

まほ「……」

まほ「食べよう」

まほ「この息抜きが終わったら――大会に向けて、本腰を入れなくてはならない」

エリカ「はいっ!」

まほ(……お前は、みほに対して真っ直ぐでいてやってくれ)

まほ(お前も私も、黒森峰や西住流、戦車道に縛られてしまっているが――)

まほ(私と違って、お前はそのしがらみから抜け出せる)

まほ(私の分まで、どうか――)

360: 2016/11/09(水) 05:00:38.32 ID:eVOC45zqo

エリカ「勝ちましょう、隊長」

エリカ「ここを出たら、赤星達を回収して、特訓しましょう」

エリカ「今年こそ、王座を奪還しましょう、絶対っ……!」

まほ「ああ」

まほ「……でもあまり食べながら喋らない方がいいと思うぞ」

エリカ「……失礼しました」 ゴックン

エリカ「こほん。まあ、あの子達と直接対決はないでしょうが……」

エリカ「あの子たちは、どうせサンダースに叩き潰されるでしょうし」

エリカ「でも、圧倒的強さで優勝して、あの戦車道をナメきった連中に、私達黒森峰の凄さを教えてやりましょう!!」

エリカ(そうよ、あのヌルい連中がサンダースに勝てるわけないじゃない!)

エリカ(私の見てないところで早々に負ければいいのよ!)

エリカ(黒森峰の試合や練習に集中するから他校の試合分析はベンチの連中に任せてるから、どんな戦いぶりかは分からないけど……)

エリカ(どうせ負けるんだもの、関係ないわ)

エリカ(せいぜい、私の預かり知らぬところで無様な敗北を喫するといいわっ)

361: 2016/11/09(水) 05:01:25.08 ID:eVOC45zqo
 





 ☆  ★  ☆  ★  ☆





 

362: 2016/11/09(水) 05:06:38.60 ID:eVOC45zqo

桃「整備終わったかーーーー!?」

うわぎさん「「「「はーーーーい」」」」

カエサル「準備完了」

典子「私達もです」

みほ「Ⅳ号も完了です」

エリカ「」

桃「じゃ、試合開始まで待機!」

エリカ「ああああああああ預かり知る所になってるううううううううう」

368: 2016/11/11(金) 01:33:43.14 ID:hHCZMmXHo

エリカ「最悪だわ……」

エリカ「よりにもよってサンダース戦で……」

エリカ「絶対あのいけ好かないファイアフライにキッツイのもらうじゃない……!」

???「のんきなものね」

???「それでよくノコノコ全国大会に出てこれたわね」

エリカ「まったく同感――って、噂をすれば……」

桃「貴様ら何しにきた!」

ナオミ「試合前の交流も兼ねて、食事でもどうかと思いまして」

エリカ「戦車の中じゃあクールぶってるくせに、こうやって煽りに来るあたり性格悪いわね……」

エリカ「嫌味を言うためだけにご足労とは大したものだわ」

エリカ「こまめに毒を吐かないと落ち着かない病気なのかしら、人間性を疑うわね」 ハン

麻子「……」

沙織「どうしたの?」

麻子「いや、なんだか無性に突っ込みをいれないといけないような気がしてな……」

沙織「?」

沙織「寝ぼけてるんじゃないの?」

369: 2016/11/11(金) 02:05:21.06 ID:hHCZMmXHo

沙織「すごっ……!」

優花里「救護車にシャワー車、それにヘアサロン車まで……!」

エリカ「全然戦車道関係ないし、ヘアサロンとか使う人間いるのかしら……」

エリカ「選手ならヘアサロン行ってる場合じゃないし、客も試合見ないでヘアサロンとか行かないでしょうに……」

華「本当にリッチな学校なんですね……」

エリカ「ふん、いけ好かない金持ちなだけよ」

エリカ「戦車保有台数しか売りがないようじゃ、私達黒森峰の敵じゃないわ」

エリカ「それに料理も大きいだけで味は大味、スイーツも人口甘味料や着色料の塊」

エリカ「これなら有料でもアンツィオの屋台の方が数倍マシだわ」

沙織「わあ、熱々ハンバーグがある……!」

華「本場アメリカンのサイズで、とてもジューシーそうですね」

優花里「鉄板でジュウジュウ言われると、お腹が空いてきますよねえ」

エリカ「はあ!?」

エリカ「ちょ、ずるいわよ、ウチとやるときはハンバーグ屋なんてなかったじゃない!!!!」

370: 2016/11/11(金) 02:19:59.52 ID:hHCZMmXHo

ケイ「アンジー!」

エリカ「出たわね、能天気女……」

エリカ「下手したらダージリン以上に理解できないのよね、この女は……」

ケイ「なんでも好きなもの食べて行って」

エリカ「そういうのは!!人間フォルムのときに!!!ハンバーグ屋引き連れていいなさいよ!!」 ムッキー!

杏「オーケイオーケイ」

杏「おケイだけに」

ケイ「HAHAHAHAHA!!」

エリカ「ほんっと、四強はどいつもこいつも四強の自覚がないようなやつが多すぎるわ……!」

エリカ「人間性は底辺だけど、プラウダの連中がマシに思えるわ……」

エリカ「全く隊長を見習ってほしいものね」

エリカ「代表格の言動一つで学校の印象が決まるっていう自覚はないのかしら」

麻子「……」

優花里「どうかしたんですか?」

麻子「いや、今日はエンジン音がどことなく蹴飛ばしたくなる感じでな……」

優花里「……あー」

沙織「分かるんだ!?」

371: 2016/11/11(金) 02:34:32.50 ID:hHCZMmXHo

まほ「……始まったな」

まほ「……」

まほ「いつもなら、エリカの方から『始まりましたね』なんて言って、私は静かに試合を見守るのにな」

まほ「……」

まほ「前日に移動なんてしてくるんじゃなかったな……」

まほ「この症状、おそらく――」

ポチ

エリカ「ドゥルンドルルルルルルル」

まほ「ああ……乳首でエンジンがかかっている……」

まほ「どうしよう……」 ズーン

373: 2016/11/11(金) 03:35:08.95 ID:hHCZMmXHo

みほ「3輌……囲まれたッ!」

エリカ「ふん、早くもバッタバタしてるわね」

エリカ「ま、5台しかない素人集団じゃ当然の結果かしら」

エリカ「このまま現実を思い知って、(私が)痛い目に遭う前にさっさとフラッグ車が落とされればいいのよ」 フン

優花里「北東から6輌……南南西から3輌……」

優花里「すごい、全10輌中9輌この森に投入ですか!」

華「随分大胆な戦術ですね」

エリカ「こいつら、たまに何考えてるんだか王道を外してギャンブルに出ることがあるのよね」

エリカ「スポーツマンシップなのかエンターテイメントなのか知らないけど……」

エリカ「ま、所詮は小手先だけの奇策、大したことはないわ」

エリカ「黒森峰なら真っ向から普段通りの連携で叩き潰してるところよ」 フン

374: 2016/11/11(金) 03:43:40.85 ID:hHCZMmXHo

エリカ「ま、ここは黒森峰じゃなくて大洗」

エリカ「残念ながらアンタたちの全国大会はこれで終わり――」

みほ「このまま全力で進んで下さい」

みほ「敵戦車と混ざって!」

エリカ「はあ!?」

典子「リベロ並のフットワークで……」

エリカ「そんな無茶な……」

エリカ「……」

エリカ「少なくとも、黒森峰の重戦車部隊でやるようなものじゃないわよね……」

エリカ「まあうちならそもそもこんな事態に陥らないわけだけど」

エリカ「……」

エリカ「慣れない事態に、変な指揮でも始めたの?」

エリカ「それとも……」

エリカ「そこまで日も経っていないのに、今の保有戦車の特徴を把握しきって、有効な戦術を編み出したとでも……?」

375: 2016/11/11(金) 03:56:37.09 ID:hHCZMmXHo

みほ「ふう……」

華「危なかったですね……」

エリカ「……」

エリカ「相変わらず、ドライビングテクニックだけは異常に高いわね……」

みほ「うん……」

みほ「まるで私達を待ち構えていたみたい……」

エリカ「偶然に決まってるでしょ」

エリカ「サンダースの隊長は確かに隊長としての能力が高いけど、最近は後進育成のためか、作戦指揮を2年にさせてるみたいだし」

エリカ「相手の幸運に一々動揺しているようじゃあ、まだまだね」 フフン

みほ「はっ……!」

みほ「……」 ガチャン

エリカ「何よ、急に身を乗り出して」

華「みほさん? どうしたんですか?」

みほ「通信傍受機が打ち上げられてる……」

エリカ「はあ!?」

エリカ「何よソレ、反則じゃないの!」

エリカ「いや、その、あれよ、気が付かなかったのは、私自身の意思じゃ動けないしアンタらの味方をする気もないから気を張ってなかったからで……」

エリカ「こ、これが黒森峰との試合だったら当然そんな狡っ辛い手、すぐに気付いていたわよ!!」

376: 2016/11/11(金) 04:03:46.46 ID:hHCZMmXHo

優花里「確かに……」

優花里「ルールブックには傍受機を打ち上げちゃいけない、なんて書いてないですね」

沙織「酷い!」

エリカ「本当よ!」

エリカ「戦車道の品位を落とすような行為だわ!」

エリカ「大体ルールブックに記載がなければ問題ないなら、うちらは毒ガスをぶち込んでるわよ!!」

沙織「いくらお金があるからって……!」

華「抗議しましょう!」

エリカ「そうよ、こうなったら徹底的に叩いて2ちゃんにもスレを立ててやればいいんだわ!」

エリカ「ついでにあの傍受機を写メっておいてTwitterにあげれば炎上間違いなしよ!」

エリカ「そうなったら持ってるアカウント総動員してRTしてやるんだから……!」

377: 2016/11/11(金) 04:14:38.65 ID:hHCZMmXHo

エリカ「いや、でもこれが黒森峰ならそんな格好悪いことは出来ないわよね……」

エリカ「まあ大洗は恥も外聞もなく抗議して失格に追い込めばいいと思うけども」

エリカ「それが無理でもあれの撤回ぐらい求めないとどうにもならないわよ」

エリカ「黒森峰だとしても、通信傍受機が相手じゃ苦しい戦いを余儀なくされるのよ?」

エリカ「それでも冷静に、いつもどおりの戦いで押しつぶすしかないのだけど……」

エリカ「我らが黒森峰や西住流に、後退の文字はないもの」

エリカ「まあ、西住流から逃げ出したアンタなら、平気で逃げるでしょうけど」

みほ「……だったら……」

みほ「前者、0985の道路を南進!」

みほ「ジャンクションまで移動して!」

みほ「敵はジャンクションを北上してくるはずなので、通り過ぎた所を左右から狙って!」

エリカ「はあ!?」

エリカ「相手に作戦は筒抜けになってるのよ!?」

エリカ「一体何を――――」

378: 2016/11/11(金) 04:18:56.34 ID:hHCZMmXHo

沙織「無線じゃなくてケータイで連絡してたんだもーん♪」

優花里「やったあ、作戦成功です!」

エリカ「大洗女子が1輌撃破……それもサンダースより先に……」

エリカ「相手の通信傍受を逆手に取った戦略で……」

エリカ(もし、私が通信傍受をされたとして――)

エリカ(こんな作戦を取ることができた……?)

エリカ(いや――)

エリカ(隊長だとしても、おそらくはこんな策戦は……)

エリカ(勿論、こんな作戦を取らずとも真っ向から叩き潰せるからだけど、でも――)

エリカ「腹立たしいほど、隊長としての資質は衰えてないみたいね……!」 ギリッ

379: 2016/11/11(金) 04:22:03.54 ID:hHCZMmXHo

まほ「……」

まほ「もし、エリカが奇病に侵されていなければ……」

まほ「大洗女子が1輌撃破!?なんて驚いていたんだろうな」

まほ「……」

まほ「もしそうなら、そのようだな、なんて応えたのだろうが……」

エリカ「ドルルルルルルルル」

まほ「会話にならないからな、今……」

まほ「次からは他の奴も連れてきておくか……」

まほ「とりあえず、アイドリングストップしておくか……」 チクビポチー

380: 2016/11/11(金) 04:34:55.65 ID:hHCZMmXHo

アリサ「いい気になるなよ……!」 ギリギリ

みほ『戦車、128高知に集合して下さい』

みほ『ファイアフライが居る限り、こちらに勝ち目はありません』

エリカ『戦力差が分かる程度の脳味噌はあるみたいね』

エリカ『でも勝ち目がない理由はファイアフライ以外にもあると思うのだけど』

エリカ『大体5輌って何よ5輌って』

エリカ『1輌倒してもまだ5対9よ』

エリカ『バスケチームで野球チームに挑むくらいのバランスの悪さよ、分かってるわけ?』

アリサ「……」

みほ『危険ではありますが、128高知に陣取って、上からファイアフライを一気に叩きます!』

アリサ「くくく……」

アリサ「あーーーーっはっはっは、捨て身の作戦に出たわねェ!」

エリカ『無能片眼鏡の射撃とかあてにならないけど、大丈夫なんでしょうね』

エリカ『基本的にこのチーム、コスプレ色物集団と私しか攻撃面でまともな戦力にならない状態なのよ?』

エリカ『バカ食いロン毛の腕は信用できるんでしょうね?』

アリサ「……」

アリサ「どことなく他人事で五月蝿いだけのやつが乗ってるみたいね……」

アリサ「わざわざ通信で文句を言ってるみたいだけど、無視されてるし哀れだわ」 ククククク

アリサ「その点私は信頼を得ているッ……!」

アリサ「多少不自然でも隊長は私の提案に従ってくれる……」

アリサ「くく、このまま大勝利の立役者になってやるわ!」

381: 2016/11/11(金) 04:38:55.56 ID:hHCZMmXHo

エリカ「……認めたくはないけど……」

エリカ「多少は頭が冴えてるじゃない」

エリカ「ま、相手が威張り散らしてデカイ態度を取るしか出来ない無能というのも大きいでしょうけど!」

エリカ「有能ぶって大きな口を叩くやつに限って、思惑が外れたら脆いものなのよね」 フン

麻子「…………」

沙織「どうしたの?」

麻子「いや、なんだろうな、無性に戦車の中を蹴飛ばしたく――」

沙織「もう、集中しなよお!」

沙織「ほら、来るよ――!」

エリカ「クク、囮につられて間抜けなフラッグ車が来たようね」

エリカ「ある意味予想通りの展開――」

エリカ「このまま追い回してやるわ!!」


382: 2016/11/11(金) 04:45:01.21 ID:hHCZMmXHo

エリカ「……」

エリカ「策がハマって相手を叩き潰す――」

エリカ「やっぱり、勝つと気持ちいいものね」

エリカ「それも、策がピタリとハマると」

エリカ「……」

エリカ「黒森峰のときから、アンタはそうだったわよね……」

エリカ「隊長の指揮に忠実でいながら、臨機応変に指示を出し、ハプニングに対処する」

エリカ「……」

エリカ「アンタのそーいう所が、なんか気に入らなかったけど……」

エリカ「同じチームで、隊長の背中を追いかける同士だと思っていたから、少し、尊敬していたのに……」

エリカ「……」

エリカ「まさか、こんな形で、アンタの指揮で気持ちよく相手を追い込む日が来るなんてね……」

華「なにか、喚きながら逃げてます……」

エリカ「ふん」

エリカ「予想外のことに取り乱して叫び始めるのは二流の証ね」

麻子「……折角追い風が吹いているのに、今日のエンジン音は本当に蹴ってやりたくなるな……」

383: 2016/11/11(金) 04:51:18.74 ID:hHCZMmXHo

ズドオオオオオオオン

エリカ「!?」

みほ「今のは――」

優花里「ファイアフライ、17ポンド砲です……!」

沙織「なんか、凄い音だったよ……!?」

エリカ「こ、こんなの体に喰らったら氏ぬ、氏ぬわよ!?」

みほ「……」

みほ「4輌だけ……?」

優花里「距離、約5000メートル!」

みほ「ファイアフライの有効射程は3000メートル……」

みほ「まだ大丈夫です!」

エリカ「ちょ、大丈夫じゃあないわよ!」

エリカ「こっちは掠るだけでも大激痛待ったなしなのよ1?」

エリカ「っていうか、案の定さっぱり砲撃が当たらないし、このままだと時間の問題じゃない!」

エリカ「どうするつもりなのよ!?」

384: 2016/11/11(金) 04:56:11.39 ID:hHCZMmXHo

みほ「うさぎさん、アヒルさんは後方をお願いします」

みほ「カバさんと我々あんこうチームは、引き続きフラッグ車を攻撃します!」

梓「今度は、逃げないから……!」

うさぎさんチーム「「「「「うん!」」」」」

エリカ「……」

エリカ「素人集団ではあるけど……」

エリカ「少しだけ、マシになっている……?」

エリカ「……まあ、マイナスがゼロに近づいただけではあるけど……」

エリカ「この短期間で、車体の色を普通にしただけでなく、本当に基礎の部分と心構えは修正してきたってことかしら……」

みほ「アヒルチーム、怪我人は!?」

典子「大丈夫です!」

エリカ「……ま、変わってないところも、あるいたいだけど」

385: 2016/11/11(金) 04:59:38.06 ID:hHCZMmXHo

エリカ「M3もファイアフライにやられたか……」

エリカ「もう時間の問題ね」

エリカ「……」

エリカ「諦めムードも漂っている」

エリカ「諦めた者に勝利など無い」

エリカ「さりとて、戦車道にまぐれなし」

エリカ「確かにちょっと健闘したのは褒めてあげてもいいけど、現実は厳しいのよ」

エリカ「……」

エリカ「だからさっさとやられなさいフラッグ車!!」

エリカ「あんなのにぶち当てられたら絶対ヤバイから!」

エリカ「車内で出火するレベルの砲撃とか受けるわけにはいかないんだからね!!」

386: 2016/11/11(金) 05:01:42.79 ID:hHCZMmXHo

まほ「……」

まほ「エリカなら……」

まほ「もう時間の問題だなんて思うかもしれないな……」

エリカ「……」

ヒソヒソ

アノコ、ドウコウヒライテナイ?

ヒソヒソ

ッテイウカ、サッキ、オッパイモンデタワヨ

ヒソヒソ

まほ「……」

まほ(色んな意味で、この観戦ももう時間の問題だな……)

まほ(無用なトラブルになる前に、試合が終わればいいのだが……)

387: 2016/11/11(金) 05:07:05.36 ID:hHCZMmXHo

みほ「みんな落ち着いて!」

みほ「落ち着いて攻撃を続けて下さい!」

みほ「敵も走りながら撃ってきますから、当たる確率は低いです!」

みほ「フラッグ車を叩くことに集中して下さい!」

エリカ「そうよ、とにかく先に撃墜するしかないわよ!」

エリカ「何せ相手はあのファイアフライのナオミよ!?」

エリカ「っていうかさっきから立て続けに2輌撃破されてるのよ!?」

エリカ「楽観視してたら私の体がバラバラに吹き飛ぶんだからね!」

みほ「今がチャンスなんです!」

みほ「当てさえすれば勝てるんです……!」

エルヴィン「諦めたら……」

柚子「負け……」

桃「いやもう駄目だよ柚子ちゃあん」 ビエーン

エリカ「ちっ、指揮を下げるようなネガティブな発言なんてするもんじゃないわよ」

麻子「……」 ガイン

エリカ「え、ちょ、今何!? 蹴った!? 今蹴った!?!?」

388: 2016/11/11(金) 05:14:28.37 ID:hHCZMmXHo

優花里「西住殿の言うとおりです!」

沙織「そうだよね……諦めたら負けなんだよね……!」

麻子「うん……」

沙織「華!」

沙織「撃って撃って撃ちまくって!」

エリカ「そうよ、それしかないわ!」

沙織「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるって!」

エリカ「そうよ、いいこと言ったわ!」

エリカ「下手な鉄砲が当たらなきゃ、私は終わりなんだから!!」

沙織「恋愛だってそうだもん!」

華「……いいえ、一発でいいはずです」

エリカ「そりゃあ当たればそうだけども……やれるわけ?」

華「冷泉さん、丘の上へ」

エリカ「待って」

華「上から狙います」

エリカ「待ちなさい」

みほ「稜線射撃は危険だけど、有利に立てる……」

エリカ「聞こえてないのを承知で言うけどホント待って」

みほ「賭けてみましょう」

華「はい」

エリカ「被弾可能性アホほど上がるからホント待ってお願い待って!!!!!」

389: 2016/11/11(金) 05:22:22.56 ID:hHCZMmXHo

エリカ「ああああ、ほら!」

エリカ「こっち狙ってるわよ!!」

エリカ「そりゃそうなるわよ!」

エリカ「ちょっと聞いてるの!?」

みほ「――っ!」

みほ「停車!!」

エリカ「こっちは最初からそうやって体を動かしてるつもりよっ!」

キキーーーーッ

ズドオオオオオオオン

エリカ「っぶな……」

エリカ「急停止できるよう出来る限り体を動かしてなければ氏んでたわね……」

みほ「ファイアフライが次の弾を撃ってくるまでが勝負!」

エリカ「その通り、車長の言うことは絶対よ!」

エリカ「なんとしても早急にフラッグ車を撃破しなさい!」

華「わかりました……!」

390: 2016/11/11(金) 05:23:58.47 ID:hHCZMmXHo

華「花を活けるときのように集中して……」

エリカ「ちょ、集中は大事だけど早くしなさいよ!」

エリカ「つ、次が来るわよ!?」

みほ「華さん、お願い――!」

華「発射――!」

エリカ「よし行k――」

ズドオオオオオオオン

エリカ「ひぎいいいいいいいいいい!?」

391: 2016/11/11(金) 05:27:13.94 ID:hHCZMmXHo

『大洗女子学園の勝利!』

エリカ「おぎゃぐおぅえあぐ」

エリカ「お尻が……お尻がああああああああ!!」

エリカ「自由にのたうちまわれないのがこんなにつらいなんてええええええ……!」

エリカ「いっそ気絶してええええええええええ……!」

エリカ「ああああ……」

エリカ「いい話風に青春してやがるぅ……」

エリカ「何泣ける話みたいなことしてンのよ畜生!」

エリカ「こちとら裂ける穴痔みたいなことになりそうよ!」

エリカ「あああああああ……お嫁にいけない……」

392: 2016/11/11(金) 05:32:02.06 ID:hHCZMmXHo

ケイ「エキサイティーーーーング!」

ケイ「こんな試合が出来るなんて思わなかったわ!」 ガバッ

みほ「あ、あの……」

ケイ「なに?」

みほ「4輌しか来なかったのは……」

ケイ「貴方達と同じ車輌数だけ使ったの」

エリカ「じゃあ撃破された分差し引いて3輌で来なさいよ!」

エリカ「っていうかファイアフライさえいなければ! いなければ……!」

エリカ「ああああ……お尻が2つどころかアスタリスクの形に割れそうっ……!」 ヒギィ

みほ「どうして……」

ケイ「ザッツ戦車道!」

ケイ「これは戦争じゃない」

ケイ「道を外れたら戦車が泣くでしょ」

エリカ「……」

エリカ「戦車道は戦争じゃない、か……」

エリカ「分かってるし、だからこそ、卑怯な手なんて使わないわよ……」

エリカ「……」

エリカ(何でだろう……胸が少し痛いのは……)

エリカ(勝つために落下した仲間を見捨てる行為を、暗に責められている気がしたから……?)

エリカ(それとも――単にファイアフライ浣腸アタックの余波……?)

393: 2016/11/11(金) 05:38:33.02 ID:hHCZMmXHo

アリサ「うう……」

アリサ(とりあえず、運営本部にアレコレ言われるとまずいだろうし、傍受機の回収だけしておかないと……)

ガガー

ピピピ

エリカ『甘っちょろいこと言って……』

アリサ「!?」

アリサ「え……」

アリサ「もう誰も通信してないはずなのに……」

アリサ「誰かが通信をONにしっぱなしに……?」

アリサ「いや、だとしても戦車にもう人はいないはずだし、目に見える範囲でそんな発言してるやつは――」

エリカ『そんなことだから初戦で消えるのよ、ったく……』

エリカ『それにしても五体バラバラになりそうで最悪の気分だわ……』

エリカ『慣れたのか防御力が向上したのか知らないけど、いっそ意識を奪ってくれたらよかったのに』

アリサ「……」

アリサ「そういえば、向こうの隊長車、この声の人間いなかったような……」

アリサ「っていうか、今思うと、傍受機で聞こえた声の数と人数が合わな――」

アリサ「え?」

アリサ「ええええええ!?」

エリカ『絶対許さないし、恨み続けてやるわ……』

エリカ『ファイアフライの弾を直撃させてくれたことは……!』

アリサ「ゆ、ゆゆゆゆゆ」

アリサ「幽霊……!?」 ヘナヘナヘナ

394: 2016/11/11(金) 05:40:25.46 ID:hHCZMmXHo

アリサ「ば、バチが当たったの……?」

アリサ「ぼ、傍受なんてしたから……」 チョロチョロチョロ

ナオミ「?」

ナオミ「どうしたの、そんなトイレの花子さんを見た立野広みたいな顔して」

アリサ「」 ジョロジョロジョロ

ナオミ「……ウップス」

ケイ「反省会するから」

アリサ「ひぃっ」

ケイ「……」

ケイ「……想定より顔面蒼白だけど、何かあったの?」

ナオミ「さあ……」

アリサ「」 ガタガタ

403: 2016/11/14(月) 04:29:31.50 ID:g0yKF7oRo

エリカ「……」

エリカ「全身痛い……」

エリカ「でも意識飛ばせないって最悪ね……」

エリカ「しかも私達は一足先に回収されて壁見るしか出来なくなるし……」

エリカ「はあ……」

ガラガラガラ

エリカ「……ああ、整備部隊が来たのね」

エリカ「まあ、これだけボロボロなのだから当然――」

ピクン

エリカ「んっ……」

エリカ「な、なんてこと……」

エリカ「痛みが和らぎ、むしろ心地のよさすら感じてくるっ……」

エリカ「こ、これが戦車視点の整備……」

エリカ「まるで至高のマッサージと最新医療技術による怪我の治療を同時に受けているような感覚だわっ!」

エリカ「……」

エリカ「……たまには、整備の連中のこともねぎらってやろうかしら」

404: 2016/11/14(月) 04:46:42.51 ID:g0yKF7oRo

麻子「……おばあが倒れて、病院に……」

あんこうチーム「「「「ええ!?」」」」

沙織「麻子、大丈夫!?」

華「早く病院へ――」

沙織「でも、大洗までどうやって……」

みほ「学園艦に寄港してもらうしか……」

優花里「撤収まで時間がかかります……!」

麻子「……っ!」 ヌギヌギ

みほ「麻子さん!?」

沙織「何やってるのよ麻子!?」

麻子「泳いで行く……!」

あんこうチーム「「「「ええええええ!?」」」」

華「待って下さい冷泉さん!」

まほ「話は聞かせてもらった、人類は滅亡する」

みほ「お姉ちゃん!?」

沙織「何やってるのよこの人!?」

まほ「すまない、ヒートアップしているときは小粋なジョークを混ぜてクールダウンを図るよう、最近読んだ自己啓発書に書いてあってな」

まほ「それより、大洗なら私達が乗ってきたヘリを使って」

エリカ「ドゥルン!? ドゥルルルルルルルン」

沙織(いや、それよりも何であの嫌味な人におんぶされながらおっOい揉んでるかの方が気になるんだけど……)

華(何であの人瞳孔開いてあんな微振動しているんでしょう……)

みほ(お姉ちゃん、相変わらず理想の上司になる方法とか慕われる先輩になるとかそういう本読んでるんだ……)

優花里(色々他にツッコミたいところはあるんですが……)

あんこうチーム((((まともな申し出された直後でツッコミを入れられない……))))

405: 2016/11/14(月) 04:59:28.27 ID:g0yKF7oRo

まほ「急いで」

まほ「ぼんやりしている暇はないはずよ」

みほ「え、あ、うん……」

沙織「そ、そーだよね!」

優花里「でも、一体どうして……」

まほ「……」

まほ「隊長、こんな子達にヘリを貸すなんて……!」

まほ「――なんてことを、エリカなら言うのかもしれないな」

まほ「だが、これもまた戦車道だ」

まほ「施しでもなければ、見返りを求めているものでもない」

まほ「何の気兼ねもなく、ヘリに乗っていけばいい」

みほ「お姉ちゃん……」

まほ「……私とて、救いたいという気持ちがないわけじゃないんだ」 ポソ

みほ「いやお姉ちゃん、何か如何にも逸見さん不在みたいな顔して発言してるけど今まさに乳弄られて振動してるの逸見さん本人だよね?」

沙織(あ、ツッコんだ……)

優花里(我慢出来なかったんですね……)

406: 2016/11/14(月) 05:18:46.58 ID:g0yKF7oRo

まほ「……まあ、そうなんだが、今のエリカはエリカであってエリカじゃないというか……」

まほ「赤星たちのデータによると……」

まほ「この状態の逸見は乳首でイグニッションを入れ操縦することで――」

まほ「ペースをほとんど落とさず、人を抱えて長距離移動が可能だという」

まほ「エリカをここまで連れてきたことにも何か意味がないと色々とキツかったからな、その辺を確かめるべく少しドライブをしていたんだ」

華「ど、ドライブですか……」

優花里「自分の副官にまたがることをドライブとは言わないのでは……」

まほ「今のエリカがどうなっているかを教えて、何ならみほのアドバイスが欲しいところだったが――」

まほ「やめておこう」

まほ「今はそれどころではないし、それに多分今は何を言ってもみほがまともに聞いてくれるとは思えないからな」

みほ「お姉ちゃん疲れてるなら親身になってくれる心療内科の先生紹介しようか……?」

優花里(何で紹介できるんでしょう……)

華(親身になってくれるとか、外部から分かるようなものなんでしょうか……?)

沙織(しれっと聞いちゃいけない実体験を聞いちゃった気がする…・…)

407: 2016/11/14(月) 05:33:27.00 ID:g0yKF7oRo

まほ「ところで……」

まほ「君達の中で、ヘリを運転出来る者は――」 チラ

沙織「ええ!? 無理無理無理無理無理!!」

華「私もさっぱり……」

みほ「私も、いつもお姉ちゃんにやってもらっちゃってたから全然……」

優花里「ヘリの操縦はヘリの操縦で求められるスキルっていうのがありますもんねえ」

沙織「麻子だって出来ないよねえ!?」

麻子「え、あ、ああ」

まほ「だよな……」

まほ「いつもなら、ここでエリカに操縦をさせるんだが……」

まほ「さすがにこの状況でヘリの操縦を任せるのはな・……」

エリカ「ドゥルルルルルルルン」

沙織(なんだろう、確かにヘリを任せちゃいけないような顔してる……)

409: 2016/11/14(月) 05:45:34.42 ID:g0yKF7oRo

まほ「乗員制限もあるし、エリカは置いていこうと思う」

まほ「……他に付き添いの子はいないな?」

沙織「あっ、私行く……!」

まほ「それがいいだろう」

まほ「……みほ」

まほ「そんな風になっていても、エリカはエリカだ」

まほ「しばしの間、エリカを預けるぞ」

まほ「それじゃあ、出発――!」

みほ「お姉ちゃん……」

みほ「……」

みほ(完全に道具扱いだったけど、この状況の逸見さんを預けられてもただただ気まずいよお姉ちゃん……)

410: 2016/11/14(月) 05:58:54.23 ID:g0yKF7oRo

優花里「行ってしまいましたね……」

華「色々強烈な方でしたね……」

優花里「でもヘリを出してくれるあたり、いい人かもしれませんね」

華「言われて思い出してみれば、嫌味を言っていたのは主に……」 チラリ

エリカ「ドゥルルルルルルルン」

華「……なのに、倒すべき相手として、ついお姉さんの名前をあげてしまってましたんですよね私達……」

みほ「しょうがないよ……多分、そういうものだもん……」

優花里「どうしても、強いやらかしを誰かがやると、集団全体がそのやらかしが代名詞みたくなっちゃいますからねえ」

華「確かに、戦車喫茶の一件で、黒森峰自体に少しよくない印象がつきましたね」

優花里「更に、西住殿のお姉さんというインパクトが強いせいで、ついついその集団の代表として名前挙げちゃうんですよね」

優花里「結果として、ご本人は違うのに、逸見?殿がこしらえた悪いイメージを押し付けられる形になったと……」

華「確かに、今回物凄く感謝はしているのに、変な微振動する少女に跨って胸を揉んでた印象ばかり残りそうで……」

優花里「ちょっとこの微振動のインパクトが強すぎるんですよねえ……何か胸を揉むと操縦できるとか言ってましたし……」

華「今度は変態のレッテルを黒森峰全体に貼り付けて、危うくお姉さんまで変態扱いしてしまうところでしたね……」

みほ「……」

実際乳は揉んでたし、エリカの印象に引きずられるまでもなく変態認定でいいとは思うのだが、

それはそれとしてそんな変態と血が繋がってるというのも恥ずかしい話なので、みほはただ曖昧な笑みを浮かべるしかできなかった。

416: 2016/11/15(火) 02:03:24.86 ID:fmH9cnVVo
 





 ☆  ★  ☆  ★  ☆





 

417: 2016/11/15(火) 02:07:27.19 ID:fmH9cnVVo

エリカ「――――――はっ!」

エリカ「……」 モゾモゾ

エリカ「……」 モゾモゾ

エリカ「……よし、漏れてない……」 ホッ

小梅「なにが?」

エリカ「うわああああああああああっ!」

エリカ「ちょ、ま、驚かせるんじゃないわよ!」

小梅「そんな、音もなく背後に立っただけなのに……」

エリカ「それを驚かせるって言うのよバカ

エリカ「……」

エリカ「?」

小梅「どうかしたの?」

エリカ「珍しいわね……」

エリカ「いつもなら、この時間まだパジャマなのに」

小梅「」

エリカ「?」

エリカ「何よその顔」

小梅「あ、ううん」

小梅「そーいうの、覚えててくれたのが驚きで」

小梅「逸見さん、てっきり私のことになんて興味ないものかと……」

エリカ「……興味はないわよ」

エリカ「ただ――」

エリカ「ただ、なんとなく、最近になって、覚えただけよ」

418: 2016/11/15(火) 02:14:10.60 ID:fmH9cnVVo

小梅「……!」 パァァァァ

小梅「嬉しいっ……ついにそこまで心を開いてくれたんだ……!」

エリカ「はあ!?」

エリカ「何勘違いしてンのよ!」

エリカ「そーいうわけじゃあ――」

小梅「早速森の仲間達にも報告しなくちゃ!」 シュッシュッシュッ

エリカ「はあ? 森?」

エリカ「……ラインのアレかぁぁぁぁぁ!」

ガバッ

小梅「ひゃあ!?」

エリカ「あんな大規模に私が心開いたなんていう意味分からないこと言わせるわけにはいかないわよ!」

ドタンバタン

コンコン

ドタンバタン

小梅「残念もう送っちゃいましたー!」

まほ「赤星、エリカは今日も無事に目を覚まs――――」

小梅「」

エリカ「」

まほ「……」

まほ「朝から元気なのはいいことだが、あまり音を立てると直下も困るだろうから静かにしてやれ」

エリカ「ち、違います! そーいう行為をしていたわけじゃあないですからね隊長!?」

419: 2016/11/15(火) 02:24:36.59 ID:fmH9cnVVo

小梅「すみません、逸見の森のことでちょっと揉めちゃって……」

まほ「何をやっているんだ……」

まほ「仲良くやるためのツールで仲違いしてどうする」

小梅「すみません……」

まほ「……だが、いい傾向かもな」

エリカ「へ?」

まほ「仲良く喧嘩する、というのも、友人間では必要なことなのだろう」

まほ「……そういうのが、みほは誰ともできなかったし、私も、そういう相手はいないからな」

エリカ「隊長……」

エリカ「でもそれはそれとして逸見の森は黒森峰の沽券に関わるから潰すべきだと思うのですが……」

420: 2016/11/15(火) 02:30:00.78 ID:fmH9cnVVo

小梅「えー……」

小梅「でも正直逸見さんももう慣れてきたでしょ、逸見の森があることに」

エリカ「ええそうね、そのクソフレーズを何の躊躇いもなく口にできた自分にちょっと引いてるくらいにね」

エリカ「だからこそ今すぐ叩き潰してゴルフ場にでもしたい気分よ」

小梅「でも、もうゲストさんだって来てるんだよ?」 スッ

アンチョ見エリカ { おおーっ、本当に逸見ばかりなんだな!

逸見エリ力 { いらっしゃいまほー

逸見工リカ { いらっしゃいまほー

It's me エリカ { こんにちわにー

いつみえりか { いらっしゃいまほ隊長ー

まほ「ほう、私の名前が挨拶に使われているのか」

エリカ「怒っていいですよ隊長」

まほ「……まあ、そうすることで隊員達の距離が近付くなら、いいとしよう」

エリカ「ええ!?」

421: 2016/11/15(火) 02:51:24.39 ID:fmH9cnVVo

小梅「さすが隊長話がわかりますね!」

まほ「このアンチョ見というのは……」

小梅「はい、アンチョビさんです」

まほ「ほう」

小梅「ゆくゆくは逸見の森とアンツィオ屋台でキャラコラボとかありかなーって話もしました」

まほ「なるほど」

エリカ「待って」

小梅「今は逸見さんの2Dキャラでラインスタンプの申請してるんですよ」

エリカ「待てって言ってるでしょ」

422: 2016/11/15(火) 03:12:31.87 ID:fmH9cnVVo

まほ「ああ、エリカの言うとおり、一旦待ってもいいかもな」

まほ「このままでは、エリカに関する情報が全て出ていってしまう」

エリカ「肖像権もあったもんじゃないですよホント」

まほ「そうなると、情報漏えいになり、色々と不利になるかもしれない」

小梅「確かに、逸見さんの人間性という大きな弱点が露見するかもしれませんが……」

エリカ「おい赤星」

小梅「でもそれはもう周知の事実なのでは?」

エリカ「赤星」

423: 2016/11/15(火) 03:31:18.03 ID:fmH9cnVVo

小梅「じゃあ、アンチョビさんとペパロニさんとカルパッチョさんはゲストということで……」

小梅「一日で部屋から退室させて、入りたいって連絡があったら入れる方式で……」

まほ「それなら、まあ」

エリカ「隊長!?」

エリカ「っていうか、三人全員この意味の分からない森に招待したわけ?」

小梅「そうだよー」

小梅「ほら」

逸見エリカルパッチョ { 逸見エリカルパッチョさんがスタンプを送信しました

逸見☆ハンバーグ☆エリカ { 逸見☆ハンバーグ☆エリカさんがスタンプを送信しました

逸見えりか { ようこそいらっしゃいまほ、アンツィオの皆さん!

林家ペーパー { うへえ、本当に同じ人間の顔写真まみれっすねェ~~

逸見エリ力 { それが自慢……(ニッコリ

小梅「ねっ」

小梅「初めての逸見の森に戸惑ってるから、皆で優しく歓迎してあげてるんだよ」

エリカ「いや、っていうか今しれっと私でもなんでもないやついたわよ」

424: 2016/11/15(火) 04:04:57.21 ID:fmH9cnVVo

小梅「そもそもこの逸見の森は、逸見さんを招待したくて作ったの」

エリカ「はあ?」

小梅「皆で逸見さんを知ろうっていうのが目的だけど、やっぱりそれには本物の逸見さんと触れ合うのが一番だから」

小梅「でも、いきなり本物を前にするとお互い色々気まずいかもなーって」

小梅「そこで皆、名前を匿名で逸見さんにすることにしたの」

エリカ「最後一言で数段飛ばしで理論が飛躍したわね」

小梅「それに、逸見さんも本物の逸見さんってバレてるよりも、誰が本物か分からない中での方が、自由に発言出来るかなあって」

小梅「木を隠すなら森の中、ってね」

エリカ「氏体を隠すために大量殺人で氏体を増やすくらいに無茶な理屈を押し通そうとしてくるわね……」

小梅「それで逸見の森って名前なんだけど、まあ木が多ければいいかってことで林もオーケーにしたの」

小梅「この場合木の葉=逸見さんだし、林=逸見さんの集合体だから、林を名乗れば実質逸見さんを名乗ることになるし」

エリカ「へえ、すごいわね。バカじゃないの」

425: 2016/11/15(火) 04:43:25.59 ID:fmH9cnVVo

小梅「あ、でもちゃんと外部から人を呼んだのにも意味はあるんだよ!?」

エリカ「ほーう、言ってみなさい」

小梅「逸見さんに関する外部から見た意見が必要かなって」

エリカ「それが必要になる日なんて永久に来ないしなんで必要だと思ったのよ」

小梅「それが、この前逸見さんの解釈について森の仲間達が揉めちゃって……」

エリカ「森の仲間達」

小梅「解釈違いで揉めた以上、相手陣営の言うことは冷静に聞けないだろうし……」

エリカ「解釈違い」

小梅「ここは中立の立場から意見を貰おうかなって!」

エリカ「争わせたまま滅びるまで好きにやったら?」

エリカ「そしてそのまま両者滅んで」

小梅「駄目だよぉ!」

小梅「逸見の森は皆で仲良くするためのものだもん、バトルロワイアルなんて絶対駄目!」

小梅「孤独だけに蠱毒とか、そういうネタはいらないから!」

エリカ「なっ、別にそういうのじゃないわよ!」

まほ(孤独は否定しないのか……)

426: 2016/11/15(火) 05:21:26.34 ID:fmH9cnVVo

小梅「だから、平和的解決をしようとしてるの!」

小梅「逸見の森はシルバニアファミリーが住めるくらい平和で友好的な森にしたいから!」

エリカ「知らないわよ!」

エリカ「……っていうか、外部に恥晒すくらいなら、私に聞けば答えるわよ」

小梅「え、いいの?」

小梅「てっきり一蹴されるかと……」

エリカ「一蹴したいわよ」

エリカ「……でもま、それはそれで面倒臭いことになるし」

エリカ「病気の時の借りは返さなくちゃいけないもの」 テレッ

小梅「逸見さん……」

小梅「じゃあ近いうちに、逸見さんに聞いた情報を共有するためのイベント開くね!」

まほ(すっかり蚊帳の外になってしまったな)

まほ(だが、後輩に慕われる理想の上司とは、建設的な意見をきちんと言う人らしいし、何か言っておくか……)

まほ「それならば、深く皆の記憶に残るよう、エリカにまつわる情報はクイズ大会という形で提供してみるのはどうだろう」

小梅「なるほど」

エリカ「なるほどじゃない」

427: 2016/11/15(火) 05:29:45.71 ID:fmH9cnVVo

エリカ「大会前なんだから、そんな無駄に手間隙かかることは辞めときなさい」

小梅「うー……」

小梅「絶対おもしろいのになあ、クイズ逸見リオネア……」

エリカ「面白くないわよ」

小梅「絶対おもしろいよ!」

小梅「私、頑張って正解を引っ張る司会者・逸見のもんたになるよ!」

エリカ「ならんでいい!」

まほ「……ふふ」

エリカ「た、隊長……?」

まほ「ああ、すまない」

まほ「……エリカがそうやって友人とふざけあっている姿を見れたのが、少しうれしくてな」

エリカ「え……?」

まほ「……」

まほ「いや、なんでもないさ」

まほ「それより、大会前だし気合を入れないといけないのは事実だ」

まほ「……赤星も、朝から自主練習してくれていたようだが……」

まほ「今日の放課後は、早起きして練習した者だろうと無関係にしごいていくからな!」

小梅「はい!」

エリカ「はい!」

428: 2016/11/15(火) 05:37:46.88 ID:fmH9cnVVo

<数日後>

まほ「エリカ」

エリカ「はい」

まほ「明日は試合を観戦に行きたいと思う」

エリカ「かしこまりました」

エリカ「副隊長として、ヘリの操縦手として、是非お供させて下さい!」

エリカ(隊長と2人でお出かけ……)

エリカ(前回はちょっと嫌な気分になったりしたし、今度こそ楽しく……!)

まほ「もとよりそのつもりだ」

まほ「エリカには黒森峰の未来を任せるつもりだ」

まほ「……逸見の森以外でも、外部とつながりを持ち、外の情報を仕入れる必要はあるだろう」

エリカ「そうですよねただその森でも別に私は外部と繋がってませんけど」

429: 2016/11/15(火) 05:41:25.81 ID:fmH9cnVVo

まほ「……エリカのいいところは、真面目でストイックなところだ」

まほ「自信が努力に裏打ちされているところもだな」

エリカ「な、なんですか急に///」 アワアワ

まほ「……しかしだからこそ、自信より弱いとみなした相手を侮りがちだ」

まほ「努力不足と断じてしまうことも多い」

エリカ「そ、そんなことは……」

まほ「……」

まほ「今大会の日程、他校がいつどこで試合をするか、覚えているか?」

エリカ「え、あ、えーっと、その……」

まほ「……目の前に集中するのは悪いことではない」

まほ「向こうのブロックに至っては、当たるのはどうせ一校だし、無駄に全てを完璧に把握しようとまではしなくていい」

まほ「だが――」

まほ「何も知ろうとしなくては、足元をすくわれる」

まほ「捲土重来のためにも――その可能性は減らさなくてはならないと、思ったんだ」

430: 2016/11/15(火) 05:48:38.22 ID:fmH9cnVVo

まほ「ま、いずれ分かるさ」

まほ「とりあえず今夜は交互に操縦しよう」

エリカ「はい!」

エリカ「では、先に運転させていただきますので、隊長はおやすみください!」

まほ「……ではお言葉に甘えるとしよう」

エリカ「はい!」

エリカ「……」

エリカ(確かに、誰であろうと変わらず叩き潰すってなってるせいで、他所の所の情報全然仕入れてなかったわね…・・)

エリカ(偵察とかは、試合に出られない子達がよくやってくれてたし、これまでは必要なかったけど……)

エリカ(来年までには、そのへんも把握できるようにしなくちゃ)

エリカ「……ま、今年は焦らなくても大丈夫でしょう。隊長もいずれとおっしゃっていたし」

エリカ「それにもう、向こうのブロックがサンダースに負け姿を消した」

エリカ「どうせプラウダに決まってるわ、そうなったら」

エリカ「アンツィオの作戦が通用するタイプでもないし、決まりでしょ」

エリカ「……」

エリカ(大洗は……ありえないわね)

エリカ(あのアホ高校こそ、アンツィオの策に引っかかるはず)

エリカ「何にせよ、憂いはほとんどなくなったわね」

エリカ「装備的にもアンツィオに勝てそうにないし、終わりを見届けてはあげられないけれど、さよならよ、大洗ッ――!」

431: 2016/11/15(火) 05:49:39.61 ID:fmH9cnVVo
 





 ☆  ★  ☆  ★  ☆





 

432: 2016/11/15(火) 05:51:26.83 ID:fmH9cnVVo

ツチヤ「うん、こんなもんかな」

エリカ「」

桃「どうだ、整備の方は」

桃「順調か?」

エリカ「」

桃「とうとう今日は二回戦だ」

桃「絶対に勝つぞ!」

エリカ「またなのおおおおおおおお!?」

437: 2016/11/17(木) 03:24:35.71 ID:ajZahSFso
時間が時間なので、本当に少しだけ投下します

438: 2016/11/17(木) 03:27:25.27 ID:ajZahSFso

エリカ「最悪だわ……」

エリカ「ヘリ、墜落してないでしょうね……」

エリカ「……」

エリカ「……ハン!」

エリカ「一瞬、決勝でぶつかったときに入れ替わったらどうしよう、なんて思っちゃったけど……」

エリカ「奇跡はそうそう起こらない」

エリカ「大体この貧弱な戦車で勝ち上がろうって方がおこがましいのよ」

エリカ「変なところで真っ向勝負をしたがるサンダースならともかく――」

エリカ「抜け目のないアンツィオや、どうせ勝ち上がってくる圧倒的戦力を誇るプラウダに勝てるわけないじゃない」

エリカ「心配しなくても、あいつらの大会は今日で終わりだわ」

439: 2016/11/17(木) 03:39:39.75 ID:ajZahSFso

エリカ「まあ戦力だけならアンツィオも大概だけど……」

エリカ「戦術に関しては、そこそこ評価されてるようだし、さすがにアンツィオでしょう」

エリカ「隊長と同世代でさえなければ、黒森峰に入っていたかもしれないという逸材車長――」

エリカ「練習時代、この私や黒森峰の戦車チームですら何度も騙されそうになったものよ」

エリカ「私たちには冷静な隊長がいたし、奇襲を真っ向から受けきって反撃できるだけの武力もある」

エリカ「でもあの子達には武力もなければ知識も経験もないッ」

エリカ「精々奇襲に慌てふためき、浮足立つといいわ」

エリカ「予想外の事態を前に、まともに思考することも出来ず、大騒ぎしたまま自滅していく姿を見ることができそうね」

エリカ「まっ、精々西住流の名を地に落とさないような負け方をすることね……!」

440: 2016/11/17(木) 04:00:37.36 ID:ajZahSFso

エリカ「それにしても、相手が貧弱装備のアンツィオで助かったわ」

エリカ「これなら撃破されるにしてもファイアフライほど痛くはないでしょ」

エリカ「痛みのあまり漏らす心配ももうないとはいえ、あの痛みはもう御免よ……」

エリカ「五体バラバラになるかと思ったし、整備で癒やされても痛みはちょっと尾を引くのがね……」

エリカ「結局昨日までなんとなく体が痛い気がして筋肉痛みたいに体が上手く動かせなかったし」

エリカ「特にファイアフライのやつ、お尻ばかり必要に打ってきたせいで、お尻の穴がずっとヒリヒリしてたのよね……」

エリカ「トイレで大きい方する時地獄のような痛みが襲ってきたし……」

エリカ「おかげで痔とかいう噂が広まったの思い出して腹立ってきたわ」

エリカ「そういう噂の存在に気がついて否定できるって点じゃ、逸見の森も役には立つのよね……」

エリカ「……」

エリカ「いやそれでも認められないけどねあの森の存在は」

エリカ「頭もキレるしケツも切れてるしまさに黒森峰のキレ芸人だぜHAHAHAHAHAとか抜かしやがったヤツもいるし」

エリカ「……」

エリカ「あれマジ誰だったのかしら一遍マジでグーで殴りたい……」

441: 2016/11/17(木) 04:11:10.21 ID:ajZahSFso

エリカ「まあ問題は秘密兵器とやらだけど……」

エリカ「ま、なんとかなるでしょ」

エリカ「少なくともファイアフライにお尻を狙われるよりやばくなることはないでしょうし」

エリカ「……勢い重視のアンツィオが万が一プラウダに勝った時のことも考えると、ここでじっくり見ておきたいわね」

エリカ「っと、ようやく来たわね」

麻子「眠い……寝ていいか」

沙織「まぁまぁ」

みほ「あはは……」

エリカ「ま、どうせ言わずとも無様な負け方するでしょうから、毒は吐かないでおいてあげるわ」

エリカ「せめて私が秘密兵器とやらを見て理解することが出来るくらいは持ちなさいよね!」

エリカ「ほら、行くわよ!」

エリカ「パンツァー――――」

みほ「――フォー!」

443: 2016/11/17(木) 04:17:25.74 ID:ajZahSFso

ズドォォォォォォォン

キュポッ

エリカ「ん?」

ワァァァァァァァァァ

審判『大洗女子学園の、勝利ッ!』

エリカ「んんんんんんん??????」

エリカ「早くないかしら?????????????」

453: 2016/11/19(土) 02:08:41.80 ID:pMGHW4g4o

エリカ「何だったのかしらこの試合……」

エリカ「まあでも、アンツィオの秘密兵器が分かったのは収穫、かしら……」

エリカ「練習試合とはいえ、黒森峰は遅れを取れないものね」

エリカ「今後、アンツィオとの試合の際はP40対策を徹底させなくちゃ」

アンチョビ(修理費すごいことになりそうだなあ……)

アンチョビ(また屋台で稼がないとだが……)

アンチョビ「今日は豪勢に食べるぞーーーーっ!」

アンチョビ「当然! アンツィオ持ちだぁ!」

ワァァァァァァァァァ

エリカ「相変わらずこの馬鹿騒ぎはやるのね……」

エリカ「……」

エリカ「うちでやるより楽しそうにしてるじゃないの」 ムッ

エリカ「まあそりゃ、厳格な黒森峰としては、あまり馬鹿騒ぎをさせるわけにはいかないけども」

454: 2016/11/19(土) 02:36:34.77 ID:pMGHW4g4o

アンチョビ「お、食べてるか~?」

みほ「はい!」

華「本当に美味しいですねえ~」

アンチョビ「お、おお、すごい食べっぷりだな……」

エリカ「バカなのよそいつ、胃も頭も」

エリカ「……」

みほ「えへへ……」

エリカ「……」

エリカ「楽しそうに笑っちゃって……」

エリカ「……所詮戦車は輪の外」

エリカ「あの子が遠いわね」

エリカ「……」

エリカ「ああ、でも……」

エリカ「隣に居たはずなのに、あの時と、遠さは変わらない、わね……」

455: 2016/11/19(土) 03:15:23.53 ID:pMGHW4g4o

ペパロニ「お嬢ちゃん、いい食いっぷりだねえ!」

ペパロニ「もっと茹でちゃうよお~?」

沙織「ええ!?」

沙織「さすがに華もお腹いっぱいじゃ……」

華「もちろん頂きます」

沙織「ええ!?」

麻子「まるでブラックホールだな……」

ペパロニ「山ほどあるぞお!」

麻子「予算もないのにか」

ペパロニ「ケチケチしたら負けなんだよ!」

ペパロニ「ほーら、アラビアータにゴルゴンゾーラ、更にはトマトと生ハムのペンネパスタだ!」

優花里「おお、本当に山盛り……」

沙織「パット見色んなのが混ざってて綺麗だけど、食べ進めると融合してグロくなりそう……」

ペパロニ「この山盛りのペンペンペンネを食べきれるかなァ!?」

華「ええ」

華「どか食いは淑女らしからぬと、顔をしかめられてきましたが――」

華「私は力強い女性でありたい」

沙織「真顔で何言ってんの!?」

華「もう迷いません……また1から食べはじめます」

沙織「前菜から!?」

華「むしろ0から、胃袋という宇宙を始めてみます」

ペパロニ「くっ……こりゃあ一口食べたら宇宙を見ながら脱衣するレベルのモンを作らなきゃ勝てないかもな」

沙織「これなに!? ねえなんなのこれ!?」

みほ「あはは……」

アンチョビ「ノリと勢いは暴走するとこうなるという見本だな」

アンチョビ「……それより……」

アンチョビ「ちょっといいか?」

みほ「え?」

アンチョビ「いや、ちょっとした、与太話をしようと思ってな」

456: 2016/11/19(土) 03:19:50.53 ID:pMGHW4g4o

エリカ「……」

エリカ「ん、なによあの2人、近付いてくるわね」

みほ「ええと、与太話って……」

アンチョビ「あー……」

アンチョビ「いや、本当に与太話さ」

アンチョビ「大事なシリアスな話なんかじゃないよ」

みほ「はあ……」

アンチョビ「……いや、そーいうのも大事かなって、思うんだ」

アンチョビ「黒森峰だと、こういうの、なかっただろう?」

みほ「……っ!」

アンチョビ「杏のやつ、あれでいて、ちょっぴり強引なところとかあるからなあ」

アンチョビ「やりたくないのに戦車道をさせられてるなら、力くらい貸そうかと思っていたが……」

みほ「アンチョビさん……」

みほ「……」

457: 2016/11/19(土) 03:22:54.26 ID:pMGHW4g4o

みほ「お気遣い、ありがとうございます」

みほ「でも――大丈夫です」

みほ「私、今は、戦車道が楽しいですから」 ニコ

エリカ「……」

アンチョビ「……そっか」

アンチョビ「そんな感じの顔してたけど、それが聞けてよかったよ」

アンチョビ「アレでいて、お前の姉も気にはしているだろうからな」

みほ「ええ、そうですか?」

アンチョビ「ああ」

アンチョビ「あいつもアレでいて大変なんだよ、立場とか」

アンチョビ「戦車道を嫌になって転校したなら自分が連絡しない方がいいだろうって言ってたしな」

みほ「お姉ちゃん……」

エリカ「……ふん」

エリカ「そこまで心配されて愛されてたのに裏切って大洗で戦車道してるんだから、大したタマよアンタは」

アンチョビ「たまには連絡くらいしてやってくれ」

アンチョビ「メアドは変わってないし、知ってるだろ?」

みほ「はい」

アンチョビ「あとこれがラインIDで、こっちが逸見の森のIDだ」

エリカ「おいちょっと待ちなさいおいコラおい」

458: 2016/11/19(土) 03:36:01.35 ID:pMGHW4g4o

アンチョビ「なんだ、スマホじゃないのか」

みほ「あ、はい」

みほ「転校で一人暮らしまでさせてもらってるから……」

アンチョビ「そりゃそうか……」

アンチョビ「高いもんなあ、スマホ……」

アンチョビ「私も屋台の宣伝やらで使うから安いの持ってるけど、負担すごいもんなー」

みほ「黒森峰の人は、結構持ってましたけど」

アンチョビ「あいつら金持ってるもんなー」

アンチョビ「森作れる程度には」

みほ「森……?」

アンチョビ「ああ」

アンチョビ「西住流マニアの集まる森だし、私たちは『しほマニアファミリー森の雑貨屋さん』みたいな扱いしてる」

エリカ「野郎」

463: 2016/11/20(日) 01:48:55.24 ID:KUDNzFeio

アンチョビ「ああ、それと――」

アンチョビ「ほら、これ」

みほ「?」

みほ「なんですか、これ……?」

アンチョビ「いや、詳細は教えてもらえなかったんだが……」

アンチョビ「サンダースの娘で、一人やたらとⅣ号に怯えてる子がいるらしくてな」

みほ「ふえ?」

アンチョビ「よほどのトラウマがあるのか、その、名誉に関わるから秘匿って言われるような状態になっているらしい」

みほ「はあ……」

アンチョビ「なんでも、幽霊の声が聞こえたとか」

みほ「幽霊……?」

アンチョビ「ああ」

アンチョビ「何でも、通信を傍受していたら、ファイアフライに撃たれて痛い~~って声が入ったんだとか」

エリカ「!?」

464: 2016/11/20(日) 02:31:23.41 ID:KUDNzFeio

みほ「それって……」

アンチョビ「まあ、イタズラか、何かの影響で違う所の音声が入っただけだとは思うんだけどさ」

アンチョビ「一応、渡しておこうかと思ってな」

みほ「ふえ?」

アンチョビ「その傍受機」

アンチョビ「それを介せば戦車の声が聞けるかもしれないぞ?」

みほ「あ、それはちょっとロマンチックかも……」

エリカ「そお? あんた趣味どうかしてるんじゃないの」

アンチョビ「こってり絞られて傍受なんてしないって誓わされたうえに、呪われた傍受機なんて要らないんだってさ」

アンチョビ「確かに渡したからな」

アンチョビ「まあ、それをくれた奴を安心させてあげるためにも、それを使って愛車と会話しているといいさ」

アンチョビ「……ツモる話もあるだろうから、私はパスタでも茹でてくるし」

アンチョビ「好きに話しなよ」

みほ「あ、えっと……」

みほ「ありがとうございます!」

アンチョビ「いいっていいって」

アンチョビ「……戦車道を1から立て直すのって、辛いもんな」

アンチョビ「たまには愛車にくらい」

アンチョビ「そんでもって、気がついたら仲間に」

アンチョビ「それも無理なら、他校の人間にくらい、愚痴っちゃってもいいんだからな!」

みほ「……」

みほ「本当に、ありがとうございます……!」

467: 2016/11/20(日) 03:24:33.63 ID:KUDNzFeio

みほ「……」

みほ「いい人だったなあ……」

エリカ「そう?」

エリカ「甘ちゃんなだけよ」

みほ「……」

みほ「これ、どうしよう……」

みほ「……」

スッ

みほ「あー……」

みほ「あーあー」

みほ「聞こえますかー、なんちゃって……」

みほ「……」

エリカ「いや、通信機じゃなくて傍受機なんだから、ヘッドホンに向けて喋っても意味ないでしょ」

みほ「え!?」

みほ「い、今の声……」

エリカ(しまった――――っ!)

481: 2016/11/22(火) 22:29:27.71 ID:beN5jngFO

みほ(なんだろう……)

みほ(エンジン音のようだったけど、でも、言葉になっていた……)

みほ(エンジン音をつなぎ合わせて歌わせるMADみたいな感じではあるけど――)

みほ(でもそもそも、今はエンジンは切っているはず)

みほ(それに、傍受機越しにしか、その音は聞こえなかった)

みほ(つまり――――)

みほ「本当に……」

みほ「貴女は、Ⅳ号戦車なんですか?」

482: 2016/11/22(火) 23:21:45.28 ID:beN5jngFO

エリカ「……」

みほ「……」

エリカ「……」

みほ「……」

みほ「そう、だよね……」

みほ「返事なんて、あるわけ、ない、よね……」

エリカ「……」

エリカ(仕方ないじゃない……)

エリカ(普通、戦車なんてしゃべらないのよ)

エリカ(私が喋っちゃうことで、どうにかなっても困るし……)

エリカ(意識ある時バラされたら最悪だし)

エリカ(喋るわけにはいかないわ)

エリカ(それに、普通戦車なんて喋らないんだもの)

エリカ(すぐに納得するでしょ)

みほ「Ⅳ号、なんて呼び方失礼だよね」

みほ「初対面の人に、貴女人間ですかって言うようなものだし」

みほ「ごめんね、なんて呼べばいいのかな。あんこうさん?Ⅳちゃん?」

みほ「それとも、お母さん戦車につけられた名前でもあるのかな」

エリカ「そういうことじゃないわよ天然なのあんた!?」

みほ「……!」 パァァァァ

エリカ(しまった……!)

484: 2016/11/22(火) 23:55:08.77 ID:beN5jngFO

みほ「やっぱり、偶然じゃない……!?」

みほ「こんなことって……」

エリカ「……」

エリカ(ああああああ……)

エリカ(どうする、どうするのよ私!?)

エリカ(続きはウェブに回せないわよ!?)

エリカ(どうすれば……)

みほ「嬉しい……」

みほ「小さい頃、ずっと戦車が友達だったから……」

みほ「嫌なことがあったら、いつも戦車に逃げ込んで……」

みほ「お家の中で、いつでも味方してくれた戦車に、命があるなんて……」

エリカ(無いわよ!)

エリカ(……いや、まあ、私がこんなことになってるし、絶対ないとは確かに言い切れないけども!!)

みほ「いっぱい、お話したいな……」

みほ「お友達なんだし、私のことは『みほ』って呼んで!」

みほ「その、私は、なんて呼んだらいいかな?」

みほ「教えて?」

みほ「貴女の名は?」

492: 2016/11/30(水) 02:12:27.00 ID:E1XdlUn0o

エリカ「……」

エリカ(名前、か……)

エリカ(そういえば――)

エリカ(自己紹介、したこと、なかったっけ……)

エリカ(初めて会話したときにはもう、私は隊長の右腕候補として知られていて……)

エリカ(同時に、あの子もそうだったから……)

エリカ「……」

エリカ(いや、でもさすがに今『はじめまして逸見エリカです』なんて言うわけにはいかないわよねえ……)

みほ「……」

みほ「あ、もしかして……」

みほ「日本語じゃなくて、外国語じゃないと伝わらないのかな……」

みほ「私、英語くらいしか出来ないけど……」

みほ「えっと、わっちゅあねーむ?」

エリカ「そーいう問題じゃないしさっきまで日本語で喋ってたでしょうが!!」

みほ「……!」 パァァァァ

エリカ「しまった……」

エリカ(うう、だめだ、今の状態のこの子相手だと調子が狂う……!)

493: 2016/11/30(水) 02:54:21.96 ID:E1XdlUn0o

みほ「……」 ドキドキ

エリカ「……」 ドキドキ

みほ「……」 ドキドキ

エリカ(……この子の期待に満ちたソレとは違う意味でドキドキするし心臓に悪いわね……)

みほ「名前は……教えてもらえないんだね……」

エリカ「……」

エリカ(なによ、そんな顔して……)

エリカ(戦車が名乗らないなんて、普通じゃない……)

みほ「じゃあ、ちょっと、お話、しない?」

エリカ「……は?」

みほ「私、ね」

みほ「その、ちょっと、変わったお家で育ったっていうのもあって、お友達の作り方、よくわからなくて……」

みほ「今までだったら、こうやって拒まれちゃうと、その、迷惑だったかなって、怖くて距離を取っちゃってたけど……」

みほ「……」

みほ「でもね、こんな私にも、友達ができたんだ……」

みほ「一人オドオドしてた私に、優しく声をかけてくれたんだ……」

みほ「それで、思ったの」

みほ「私、こうなりたかったんだなあって」

みほ「……こんな風に誰かと接することが出来る女の子になって、きっと、皆と仲良くしたかったんだなあ、なんて」

エリカ「……」

494: 2016/11/30(水) 04:14:38.67 ID:E1XdlUn0o

みほ「だから……」

みほ「今更、遅いかもしれないけど……」

みほ「私からも、少し、踏み出してみようかな、なんて」 エヘヘ

みほ「……そうやって、思えたから」

みほ「この学校に来て、そういう風に変われたから」

みほ「戦車さんが、ちょっと、心を閉ざしても――」

みほ「友達になりたい私から、少しづつ、歩み寄らなくちゃ」

エリカ「……」

エリカ(ほんと、変わったわね……)

エリカ(……)

エリカ(あの連中が、あんたを変えた、か――)


495: 2016/11/30(水) 04:19:13.36 ID:E1XdlUn0o

みほ「だから、その」

みほ「仲良くなるには、まず自分を見せることだって聞いたから……」

みほ「私のこと、お話しようかなって」

みほ「それで――」

みほ「もし、友達になろうって思ってくれたら、その……」

みほ「私のことを『みほ』って呼んでほしいなって」

みほ「その、下の名前で呼ぶのって、お友達ーって感じがするから……」 エヘヘ

みほ「それに、そのときは、お名前、教えてくださいね!」

エリカ「……」

エリカ(なによ)

エリカ(名前くらい――何度だって、呼んであげたのに)

エリカ(そりゃあ、厳しい環境だったし、私もライバルを求めていたから、アンタの望む環境じゃなかったかも、しれないけどさ……)

496: 2016/11/30(水) 04:37:52.03 ID:E1XdlUn0o
 





 ☆  ★  ☆  ★  ☆





 

497: 2016/11/30(水) 04:42:46.44 ID:E1XdlUn0o

エリカ「……」 パチ

エリカ「……」

あの後、2人でダラダラと喋った。

勿論、こっちはほとんど口を開かなかったけど……。

それでも、時折、思わず声を漏らしてしまった。

エリカ(……どうして、こんなに、もやもやするのかしら)

戦車であるからこそ、あの空気を共に出来たことは分かっている。

でも、あの時見せた、私の知らないあの子の顔が、愛おしくて、それ故に憎くて。

あの関係に心地よさを感じていた自分も含めて、如何ともし難い苛立ちを覚えた。

エリカ(……)

エリカ「って、どこよここ……」

エリカ「あの子の顔は知ってる要素があるにはあったけど、この天井120%知らない要素しかないんだけど……」

498: 2016/11/30(水) 04:47:16.55 ID:E1XdlUn0o

小梅「あ、起きた?」 カパッ

エリカ「わ゙ーーーーーーーーーーーっ!」

小梅「あはは、逸見さんでもそんなコミカルな悲鳴あげられるんだね」

エリカ「いや、アハハじゃないわよ!!」

エリカ「何急にゼロ距離で――」

エリカ「って、ちょぉわああああああああ!?」

小梅「もー、二度目はしつこいよー?」

小梅「そこまで取り乱す姿、確かに貴重だけども」 パシャコーン

エリカ「ちょ、何撮ってンのよ!」

エリカ「っていうか、なんでアンタ天井隅から生えてンのよ!?」

小梅「人間は天井からは生えないよ?」

エリカ「わかったうえでだから何なのって聞いてるのよ。マジトーンでアホを見るような視線やめろ」

499: 2016/11/30(水) 05:09:27.34 ID:E1XdlUn0o

小梅「ここ、通気口になってるの」

小梅「だからこうして忍び込めたんだ」

エリカ「ああそ……忍び? え?」

小梅「大変だったんだよー」

小梅「逸見さん、とうとうおまわりさんの前でも暴れたらしくって」

エリカ「!?」

小梅「なんでもおまわりさん相手にハンバーグを射出したとか……」

エリカ「な、なななななな……!」

小梅「その後偶然居合わせた人が乳首のイグニッションを切ってくれたみたいだけど……」

小梅「大騒ぎになって、でもなんとか収集がついて、こうして病室で寝かされてたんだよ」

小梅「その一報を受けて、こうして駆けつけてきたんだから」

エリカ「そ、そう……そこはありがとう……」

エリカ「でも今の話を聞いても、通気口からわざわざ来た理由がわからないのだけど……」

500: 2016/11/30(水) 05:16:54.77 ID:E1XdlUn0o

小梅「ああ、それ?」

小梅「最近勉強した忍道を使ってみたくて……」

エリカ「居ても立ってもいられなくて入り口以外から入るのやめなさい」

エリカ「っていうか、変な学校かマンモス校くらいしか扱ってないそんな変な選択科目をなんでまた」

小梅「なんで、って――」

小梅「10連覇未達の戦犯として居場所を失って戦車道やめようか迷ってたことがあったから」

エリカ(ふ、触れづらッッ)

エリカ(ただでさえ滅茶苦茶デリケートな話題なのに、そんなハイライトのない瞳で言われたら触れられないわよっ)

501: 2016/11/30(水) 05:22:34.78 ID:E1XdlUn0o

小梅「それにほら、日本有数のニンジャの土地じゃない、黒森峰」

エリカ「え?」

小梅「今でこそ履修者少なくてほとんど潰れてるけど、やっぱり地元の伝統は絶やしたくないなーって」

エリカ「ちょっと何言ってるか分からないんだけど」

小梅「こう、ドイツといえばゲルマンニンジャみたいなところあるし……」

小梅「特産品は畳返しに使えるい草だし」

小梅「あんころ餅みたいなの売ってるだけの忍者の里よりよっぽど忍者の系譜だよ黒森峰」

エリカ「伊賀と甲賀と熊本県に謝りなさいよ……あとドイツにも……」

502: 2016/11/30(水) 05:28:29.15 ID:E1XdlUn0o

小梅「それはさておき……」

小梅「本当に心配したんだよ?」

小梅「偵察にいって、持病で倒れたんだもん」

小梅「持病のせいでギャグっぽいけどさ……」

エリカ「……」

エリカ「悪かったわ」

小梅「……」

エリカ「なによその顔」

小梅「いや、その……」

小梅「やっぱり最近、逸見さん丸くなったよなーって」

エリカ「はァ?」

小梅「うん。上手く言葉に出来ないけど……」

エリカ「……」

エリカ「別に、変わらないわよ」

エリカ「何か劇的なことがあったわけじゃあるまいし」

509: 2016/12/02(金) 03:32:00.58 ID:KSpP30yjo

エリカ「それより……」

エリカ「隊長は?」

エリカ「……確か、隊長と偵察に出てたはずなんだけど」

小梅「詳しいことは分からないんだけど、何かトラブルがあったらしくて……」

小梅「個別で帰還するから、私達は私達で帰れってさ」

エリカ「そう……」

小梅「残念?」

エリカ「別に、そーいうわけじゃ……!」

小梅「うふふふふ」

エリカ「何よその笑みは」

小梅「なんでもー」

エリカ「ムカつくわね……」

小梅「なんでもないよ」 パシャコーン

エリカ「だから撮らないでよ」

小梅「でも逸見の森にあげないと……」

エリカ「ゴルフ場にでもしろっての」

510: 2016/12/02(金) 05:01:51.62 ID:KSpP30yjo

小梅「でもほら、皆で逸見さんのことを知るためにはやっぱり不可欠だよ」

エリカ「いや要らないわよ」

小梅「最近では逸見さんらしさの判定のための評議会も出来たし……」

小梅「このまま集合知で逸見さんを分析して」

エリカ「しなくていいし、何組織だってやろうとしてるのよ」

小梅「ちゃんと最終ジャッジを下すエリ神さまの席は用意してるんだよ」

小梅「ちなみに問題を起こしてエリ神さまのクビがはねられると、でーだらぼっちになるの」

小梅「クビでぼっち……まるで私やみほさんみたいだよね」

エリカ「ツッコミ辛いわっ」

小梅「皆が逸見さんを理解する時まで、逸見の森は続くんだよ!」

エリカ「焼き払いなさいよ!」

エリカ「毎回毎回言ってるけど、無許可で顔写真アイコンとか普通に訴えたら勝てるやつよ!?」

小梅「えー」

小梅「じゃあこの動く逸見さんスタンプも……?」

エリカ「ダメっていうか何技術的にちょっと進化したことやってんのよ」

エリカ「普通そういうのは本人に許可とってから販売するものでしょうが!」

小梅「でも許可貰おうとしたら絶対くれないし……」

エリカ「わかってるなら売るなって言ってンのよ」

ミカ「許可――それは本当に必要なことなのかな?」 ポロローン

エリカ「」

ミカ「権利主義には賛同しかねるね」

エリカ「え、なにこの人……」 ヒソヒソ

エリカ「隣のベッドの患者さん? 頭の」 ヒソヒソ

511: 2016/12/02(金) 05:12:46.94 ID:KSpP30yjo

小梅「ああ、この人は、継続高校のミカさん」

小梅「逸見さんのバタバタの際、乳首のイグニッションを切ってくれた人なの」

エリカ「え、あ、ああ、ありがとうございました……」

ミカ「なに、お礼を言われるようなことじゃないよ」

ミカ「ただ、風に呼ばれるがままに動いただけさ……」 ポロローン

エリカ「ねえ、この人なんだかよくわからないけど大丈夫?」 ヒソヒソ

小梅「初対面の人間の乳首をいきなり触ったってことだし、ヤバイ人だとは思う」 ヒソヒソ

512: 2016/12/02(金) 05:17:06.35 ID:KSpP30yjo

ミカ「でも、よかったよ」

ミカ「わざわざ来て正解だったかもしれないね」

エリカ「はあ……」

ミカ「試合でも面白いものが見れたし、何より――」

ミカ「人生観を変えられたよ」 ポロローン

エリカ「はあ……」

ミカ「あの理解不能な振動と、未来を捨ててなくては出来ぬ警察官へのハンバーグ砲撃」

ミカ「常識という檻に縛られていた私の心を解き放てくれたよ」

ミカ「常識という檻は、決して人生にとって大切なものじゃない」

ミカ「本当に大切なものは何か――それを考えるいい機会を貰ったと言ってもいいんじゃないかな」 ポロローン

小梅「…………」

エリカ「な、何よ!? この面倒くさそうな変な奴を作ったのは私だって言うの!?」

513: 2016/12/02(金) 05:24:22.20 ID:KSpP30yjo

小梅「……」

エリカ「その白い目やめなさいよ!」

小梅「はぁ……」

エリカ「露骨にため息を吐――」

小梅「……」 チッ

エリカ「チッ!? チッって言った!? 今舌打ちしたでしょ!? ねえ!?」

小梅「気のせいか空耳かシャブでもやってるんじゃないですか?」

エリカ「やってないわよ! つーかその白い目を辞めろって言ってるでしょ!」

エリカ「こじらせてる時の佐藤寿也じゃないんだから!!」

ミカ「どんな瞳の色をしていても『白い目』、か――」 フフ

ミカ「不思議だよね」 ポロローン

エリカ「だから何よ」

ミカ「実にふざけた言葉と言えるんじゃないかな」

ミカ「超ムカつく、というやつかもしれないね」 クソックソッ

小梅「突然キレ始めた……」

エリカ「何アンタそれ始めたばかりでキャラまだ固まってないの?」

514: 2016/12/02(金) 05:28:32.53 ID:KSpP30yjo

ミカ「とはいえ、目に見えるものが全てとは限らないんじゃないかな?」

エリカ「はあ……」

ミカ「それに、知ってるかい?」

ミカ「ルビーとサファイアは、同じ材料で作られているんだよ」 キリッ

エリカ「……」

小梅「……」

ミカ「……」

エリカ「え!? 終わり!?」

小梅「完全に宴会でも滑るタイプのよく分からない雑学だったね……」

515: 2016/12/02(金) 05:30:38.57 ID:KSpP30yjo

ミカ「まあ、何にせよ――」

ミカ「今日は改めて挨拶を、と思ってね」 ポロローン

エリカ「はあ……」

小梅「ご丁寧にまた……」

エリカ「っと、まあ、お礼はこちらから言いにいかなきゃいけなかったとは思うけど……」

ミカ「いや、そのことはもういいよ」

ミカ「私が言う挨拶とは、戦車道のことさ」

エリカ「!」

小梅「!」

ミカ「継続高校代表・ミカ」

ミカ「今度2回戦で見えるね」 ポロローン

エリカ(そうか、こいつが……!)

516: 2016/12/02(金) 05:43:52.70 ID:KSpP30yjo

エリカ(去年、継続には練習試合で苦しめられた……)

エリカ(タイミング的に、西住姉妹に全権が与えられた直後だったのもある)

エリカ(不満に思った当時の3年がボイコットし、違う選択科目に移ったりと、大混乱があったタイミング)

エリカ(こちらの戦力は、未熟な1・2年中心だったというのはある)

エリカ(それでも黒森峰の、そんじょそこらの3年生よりよっぽど強いッ)

エリカ(継続の連中は、間違いなく強かった……)

エリカ(辛勝とはいえ、あの試合に勝ったことが、西住姉妹への信頼に繋がったくらいだもの)

エリカ(継続高校は、そのくらいの力がある)

エリカ「……」

エリカ「継続高校……」

エリカ「去年の練習試合ぶり、ね……」

エリカ(その継続高校に、挑む……)

エリカ(半数近いメンバーが、去年の練習試合と同じ)

エリカ(……それでいて、あの子がいない)

エリカ(あの子という右腕が、私に差し替わっている)

エリカ「……悪いけど、貴女たちには絶対に負けないわ」

エリカ(……負けるわけにはいかない)

エリカ(他のメンバーは、1年の練習で練度が上がっているんだもの)

エリカ(あの子がやったより、迅速に少ない被害で倒さないと、あの子に負けたことになるっ……!)

517: 2016/12/02(金) 05:45:32.14 ID:KSpP30yjo

ミカ「絶対か。そんなもの、本当にあるのかな」 ポロローン

ミカ「それに、そこまで恨まれる理由もないと思うけど」

エリカ「……そうね」

エリカ「別に恨みなんかじゃないわ」

エリカ「ただ、個人的に、絶対負けられないってだけよ」

エリカ(継続高校、じゃあない)

エリカ(あの子にだけは――――)

ミカ「……いいね」

ミカ「その眼は別の存在を映してそうだけど」

ミカ「全力でお相手するよ」

518: 2016/12/02(金) 05:47:36.19 ID:KSpP30yjo

ミカ「今日は挨拶にきてよかったよ」

ミカ「試合を楽しみにしてるよ」

ブロロロロロロロロ

ミカ「迎えが来たようだね」

ミカ「それじゃあ――今度は、戦場で」

ミカー!

ハヤクノレー!

エリカ「…………」 ギリッ

小梅「賑やかな人……ううん、人達だったね」

エリカ「……そうね」

小梅「……」

小梅「あっ、御見舞のメロン盗られた!」

エリカ「……いいわよ別に」

小梅「一緒にハンバーグも入れてあったのに……」

エリカ「何その組み合わs――ばか! さっさと追うわよ!」

小梅「もう見えないよ……?」

519: 2016/12/02(金) 05:49:29.29 ID:KSpP30yjo

エリカ「ちっ……ハンバーグの恨みも、試合で晴らさなくちゃ……」

小梅「……」

小梅「逸見さん、継続高校には、負けたくないんだ」

エリカ「当然よ」

エリカ「黒森峰は、もう負けることは許されないわ」

エリカ「……」

エリカ「ううん」

エリカ「それだけじゃない」

エリカ「認めるわ、私は個人的な事情で、継続には絶対勝ちたい」

エリカ「逸見の森とかいうふざけた森も、今だけは見逃してあげるわ」

エリカ「共有してもいいわよ」

エリカ「逸見エリカは、継続高校に勝ちたがってる」

エリカ「何が何でも絶対勝て――――ってね」 ギリッ

520: 2016/12/02(金) 05:51:01.46 ID:KSpP30yjo

エリカ「ほら、そうと決まれば、さっさと帰るわよ!」

小梅「ええー」

小梅「観光……」

エリカ「いつでも出来るでしょう!?」

エリカ「いつでも飛行船で連れてきてあげるわよ!」

小梅「……本当?」 パァァァァ

エリカ「ええ」

エリカ「だから、帰って特訓するわよ」

エリカ「もう二度と、不運な敗北は許されないわっ」

エリカ(そして――証明するのよ)

エリカ(あの子より、私の方が、優れているって――――!)

521: 2016/12/02(金) 05:53:21.43 ID:KSpP30yjo
 





 ☆  ★  ☆  ★  ☆





 


522: 2016/12/02(金) 05:55:14.87 ID:KSpP30yjo

小梅「ついに待ちに待ったプラウダ戦だね逸見さん!」

小梅「今日の日のために特訓した成果、見せてあげようね!」

エリカ「」

小梅「…………」

小梅「逸見さん?」

エリカ「」

小梅「…………」

小梅「ま、まさか……」 チクビポチー

エリカ「どぅるん」

エリカ「ドゥルルルルルルルル」

小梅「うわぁ……ここで……」

523: 2016/12/02(金) 05:57:00.02 ID:KSpP30yjo
逸見ボディのほのぼのギャグパート、尺の都合でカットしまくってなんとかプラウダまでいけましたので今日は終了します
サクサクやって、できればこのスレで年内完結したいと思います
ただまあ埋まったら埋まったで次スレ立てるだけなので、感想とか頂けるなら遠慮なくやってもらえればと思います

524: 2016/12/02(金) 06:21:14.92 ID:LdrkQz9V0

引用: エリカ「入れ替わってる……!?」 みほ「貴女の名は」