2: 2012/10/02(火) 22:21:49.49 ID:bXQhZUKf0
洋榎「……は?」

絹恵「だって、デートしたいんだもん」

洋榎「手錠なんかいらへんやろ……」

絹恵「……お姉ちゃんは、私から離れたいん?」

洋榎「いや……ちゃうねん」

絹恵「……へへ、やっぱりお姉ちゃんは、ずーっと私と一緒やな」

絹恵「安心しいや、片方は私がつけるから」

洋榎(んな問題やあらへんやろ……)

5: 2012/10/02(火) 22:25:48.04 ID:bXQhZUKf0
洋榎「な、なぁ……?」

絹恵「なんや?」

洋榎「そ、そういうの、マフラーやあかんの?」

絹恵「構へんけど……」

洋榎(よ、よかった)

絹恵「せやったら……下手に動けへんように、固結びかなぁ」

絹恵「ま、まぁ? 私はお姉ちゃんに締められるんやったら、光栄やけど……えへへ」

洋榎(な、何言っとんねん……)

洋榎(でも、うちがいるからわざと首締めたり……くそ、やりかねへん……)

洋榎「……わかった、手錠でええわ」

絹恵「ふふ、そか」

9: 2012/10/02(火) 22:30:13.91 ID:bXQhZUKf0
絹恵「お姉ちゃん、手出して」

洋榎「……ほれ」

絹恵「…………」ガチャッ

洋榎(よりによって利き手、抜かりないなぁ……)

洋榎(しっかし未だに慣れへんなこれ、慣れてもろても困るけど)

絹恵「はい、終わったで」

洋榎「まだ、うちだけやん」

絹恵「……お姉ちゃんが、私にかけたってや」

洋榎「なっ、え……」

絹恵「その方が嬉しい、かな」

洋榎「……わかった」

10: 2012/10/02(火) 22:34:45.34 ID:bXQhZUKf0
洋榎「手、借りるで」

絹恵「う、うん……」

洋榎「ん……んー、こうか?」ガチャッ

洋榎「ああ、ええのか」

洋榎(合ってても嬉しくないけど……それに)

絹恵「ふふ、えへへ……むっちゃ幸せ……」

洋榎(なんで、こないなことされて笑えるんよ、絹……)

絹恵「なんや心配そうやなぁ……鍵は持ってくから安心してええで」

洋榎「そか……」

絹恵「……川に投げてまうかもしれへんけど」

洋榎「……」

13: 2012/10/02(火) 22:40:17.84 ID:bXQhZUKf0
洋榎「や、やっぱりちょくちょく見られとる……」

絹恵「せやなー」

洋榎「なんも思わんのか……?」

絹恵「ううん、むっちゃ嬉しいで」

絹恵「皆見よるなら、それだけ私とお姉ちゃんの関係が知れ渡るっちゅうことやろ?」

絹恵「最高やん、それ! 誰も私らの邪魔をせえへんし」

洋榎「……最初から、そのために提案したんか」

絹恵「……お姉ちゃんは、嫌なん? なんで、そんな……お姉ちゃん……」

洋榎(あかん……スイッチ入れてもうたかも知らへん)

洋榎「や、それとこれとは……」

絹恵「怖い怖い怖い……嫌や、離れとうない……」

洋榎「絹、大丈夫やから」ギュッ

絹恵「ぁ……うん……お姉ちゃん……」

16: 2012/10/02(火) 22:45:29.89 ID:bXQhZUKf0
喫茶店

絹恵「お姉ちゃん、あーん」

洋榎「……んっ」

絹恵「ふふ、お姉ちゃん、可愛ええなぁ」

洋榎「……そのケーキ、絹は食べんの?」

絹恵「うん、私は後で、お姉ちゃんの口からもらうから」

洋榎「…………」

絹恵「あ、そか、そろそろ口が甘ったるくてしゃーないか」

洋榎「っ……やったら、飲み物飲むからええよ」

絹恵「じゃ、私が飲ましたる。 ほら、口開けて」

洋榎「……溢れるのがオチやろ」

絹恵「ええから、ほら」

洋榎「ん……っ、ぶえっ……」

17: 2012/10/02(火) 22:49:20.55 ID:bXQhZUKf0
絹恵「ちょっ、お姉ちゃん、溢れとる!」

洋榎「……やっぱり」

洋榎(なんか、情けないな……)

絹恵「……あむっ」

洋榎「なっ……何しゃぶっとんねん!」

絹恵「ふぅ……ぇ、だって、服濡れてもうたし……」

洋榎「紙使えばええやろ!」

絹恵「お姉ちゃんの口から出たもんやろ、もったいないやん……ぺろっ」

洋榎「ふぁ、っ……こそばい、から……」

絹恵「大丈夫、すぐ舐めとったるから……んっ」

洋榎「ぅ、あっ……」

19: 2012/10/02(火) 22:53:42.64 ID:bXQhZUKf0
絹恵「あーん」

洋榎「……残り一口くらい、絹が食べればええやん」

絹恵「やから、今から食べるんよ。 はい、あーん」

洋榎(ああ、そういうことかいな……)

洋榎「……ん」

絹恵「……んむっ」

洋榎「っ……ぅ、ふぅ……」

絹恵「……おいしい」

絹恵「……ああ、ええこと思いついた……んっ」

洋榎「…………」

絹恵「んぐっ……」

洋榎「んぅ……っ、んっ……はぁっ……」

絹恵「……最初からこうすれば、溢さずに飲めたなぁ」

21: 2012/10/02(火) 22:57:39.02 ID:bXQhZUKf0
………
……

絹恵「ただいまー」

洋榎(手錠はほとんどなくなったけど、最近は両手を使わないとあかん時以外、ずっと手繋ぎ……)

洋榎(手錠だって休日はようつけるし、疲労してしゃあないな)

洋榎(うちがこうしてへんと絹はどうなるかわからん、それはわかっとるけど……)

洋榎「ん、眠い……」

絹恵「制服着替えたら、寝よか」

洋榎「……せやな」

絹恵「先、私が着替えるね」

23: 2012/10/02(火) 23:02:13.29 ID:bXQhZUKf0
絹恵「……っしょっと」

洋榎(……なんや絹がうちのシャツ着とるのも、変な目で見てまうな)

洋榎(それに……)

絹恵「……えへへ、やっぱ幸せやなぁ」

洋榎(腕の傷……うちがつけた、つけさせられた傷……っ)

洋榎(見るのは、辛い……)

絹恵「ほら、お姉ちゃんも着替えんと」

洋榎「……ふぅ」

絹恵「よかった、まだ消えてへんな……ふふ」

洋榎(うちにも、同じ咬み傷……)

24: 2012/10/02(火) 23:07:05.67 ID:bXQhZUKf0
絹恵「おやすみー」

洋榎「ん、おやすみ……」

洋榎(やっと安息の時間……)

絹恵「お姉ちゃん、こっち向いて寝てくれへんの?」

洋榎(んな甘くないか……)

洋榎「……だって、向いたらキスするやろ」

絹恵「お姉ちゃんは私のこと全部わかっとるんやなぁ……嬉しいで」

洋榎「……そか」

絹恵「まあ、眠いならしゃーないか」

洋榎(なんや、物分かり良くて逆に怖いな)

26: 2012/10/02(火) 23:12:10.49 ID:bXQhZUKf0
絹恵「その代わり、うなじ噛ませて?」

洋榎(やっぱり……)

洋榎「あんまり、痛くなければ」

絹恵「うん……あむっ」

洋榎「……ぅ、んっ」

絹恵「……んぎっ」ギュウ

洋榎「がっ、だあっ!」

洋榎(噛む力も抱く力も強すぎる……絹、全然わかっとらん……っ!)

絹恵「……んぁ」

洋榎「あっ、ふぅっ、はーっ……ごほっ、うえぇ……」

28: 2012/10/02(火) 23:16:50.42 ID:bXQhZUKf0
洋榎「き、絹」

絹恵「んっ……何や、お姉ちゃん」

洋榎「や、やっぱり、キスしてもええから……首はやめたってや……」

絹恵「やった! ……あ、でも、少し待ち」

洋榎「…………」

絹恵「……つっ」

洋榎(絹、何しとるん……?)

絹恵「……ん、ええよ、こっち向いて」

洋榎「……んぅ……っ!」

絹恵「んぐっ……」

洋榎(え……なんで、血の、味……)

30: 2012/10/02(火) 23:20:46.16 ID:bXQhZUKf0
絹恵「んっ、ん……」

洋榎(絹、さっき、自分の舌切っとったんか……!?)

洋榎「んんっ!」

絹恵「っ、んむっ……ぅ」ギュウ

洋榎(嫌や! 離したって、絹……)

絹恵「……ふぅ、へへ」

洋榎「……絹、なんで……痛いやろ、わけわからへんよ……」

絹恵「ううん、一石二鳥やわ」

洋榎「な、何が……」

33: 2012/10/02(火) 23:25:44.77 ID:bXQhZUKf0
絹恵「傷口にお姉ちゃんのよだれが入るし、お姉ちゃんの口に私の血を移せる」

絹恵「ああ、あかん……へへ、むっちゃ満たされる……」

洋榎「き、絹……」

絹恵「ねえお姉ちゃん、もう一回!」

洋榎「い……」

洋榎(……あかん、拒絶したらあかん……うちがしっかりせな)

洋榎「……これが最後やで」

絹恵「うん……んむぅ」

洋榎「ぁ、んぅ……」

洋榎(喉、血がへばりついとる……気持ち悪い……)

37: 2012/10/02(火) 23:31:38.93 ID:bXQhZUKf0
絹恵「……ん、あっ」

洋榎(終わった……口の血、どうすんねん……飲めっちゅうんか?)

絹恵「……お姉ちゃん」

洋榎「も、もう終わりや……」

絹恵「うん、キスはせえへん、けど……飲んで?」

洋榎「っ!」

洋榎(ほんまに……何考えとるんや、この子……)

洋榎(……くそっ)

洋榎「……んっ」ゴクッ

絹恵「……ぁ……へへ、お姉ちゃんっ」ギュッ

洋榎(は、吐きそう……それに、なんで、そんなに笑えるん……)

洋榎(わからん、わからんわからん……絹がわからん……)

39: 2012/10/02(火) 23:37:20.46 ID:bXQhZUKf0
………
……

絹恵「お姉ちゃん、どーぞ」

洋榎「なぁ、また咬み跡かいな……?」

絹恵「そろそろなくなりそうやしなー」

洋榎「……絹を傷つけるのは、もう嫌」

絹恵「え、なっ、なんでや?」

絹恵「私はお姉ちゃんの所有物やで? 印付けとかんでええの?」

洋榎(意味、わからん……物やない……)

絹恵「お姉ちゃん、私を捨てないで……っ」

洋榎「ち、違っ……やったら、最後の一回にしたってや……」

絹恵「……なら」

洋榎「なんや」

絹恵「咬み千切れるくらい、思いっきり首咬んでくれへん……?」

洋榎「え、はっ……?」

44: 2012/10/02(火) 23:42:59.70 ID:bXQhZUKf0
絹恵「なあ、どっちがええ?」

洋榎「き、絹ぅ……」

絹恵「私としては、毎日千切られるのも……なんて」

洋榎(なあ、うちは……どないすればええんや?)

洋榎(何もせえへん、ってのはありえん、やったら……)

洋榎(…………)

洋榎「……これで、最後か?」

絹恵「うん、まあ……どっちも捨てがたいんやけど、しゃあないしなぁ」

洋榎「……首、貸して」

絹恵「! う、うん! やった!」

洋榎(ごめんなさい、絹……ごめんなさい……)

46: 2012/10/02(火) 23:48:23.16 ID:bXQhZUKf0
洋榎「……んっ」

絹恵「いたっ……」

洋榎「ぁ……ご、ごめん」

絹恵「お姉ちゃん、全然強くないやん……」

洋榎「っ……あぐっ」

絹恵「んっ、ぐえっ!」

洋榎「あっ……だ、大丈夫か!?」

絹恵「……げほっ……加減しとるやろ……も、もっと、強く」

洋榎(なんで……もう、いや……)

絹恵「このままじゃ、終われへんよ?」

絹恵「こんなん、普段のと変わらん……」

洋榎「くっ……」

洋榎(下手に弱めたら、余計絹が傷つく……)

48: 2012/10/02(火) 23:52:19.61 ID:bXQhZUKf0
絹恵「お姉ちゃーん……まだ……?」

洋榎(……わかったわ、絹)

洋榎「はぁ、ふぅ……よし」

絹恵「……へへ」

洋榎「……いぎっ!」

絹恵「いだっ、がっ! っ、うああああ!」

絹恵「ん、ぐぇっ……」

洋榎「…………」

洋榎(絹、どうして……こんなん、狂っとるやろ……)

絹恵「あっ、かはっ……げほっ……」

洋榎「絹、平気かいな……?」

絹恵「こほっ、うぇっ……はあっ、お姉ちゃん、嬉しいっ」

洋榎「……っ」

洋榎(ふざけんな……)

52: 2012/10/02(火) 23:57:41.00 ID:bXQhZUKf0
………
……

絹恵「お姉ちゃん、トイレ行ってくるから……逃げちゃ嫌だよ?」

絹恵「……っしょっと、じゃあね」

洋榎(手錠でベットに固定されるんも、なんだか慣れたもんやな……甘かないわ、ほんま……)

洋榎(もう、辛い……傷つけられて、傷つけて、傷つけて、傷つけられて……)

洋榎(絹はそれでどえらい喜んどるけど……うちはともかく、絹が傷つくのは嫌や……)

洋榎「……あっ、げほっ」

洋榎(……なんやあのナイフ、まさか自傷しとるんか!?)

洋榎(……あ、よかった、血はない……ちゅうか別に、絹はそういう趣味はあらへん)

洋榎(あくまでもうちに傷つけられることを望んどる……って、うちが悪いのかな、これ、なあ……)

洋榎(……もう見るんは辛い……嫌や、無理……)

洋榎「……これで一片、氏んでみるか……?」

55: 2012/10/03(水) 00:04:10.39 ID:bXQhZUKf0
洋榎「ふぅー……ああ、これはサクっといけそうな……」

洋榎「……っ、くそっ!」

洋榎(何考えとるんや、あほが……一片もへったくれもあらへんやろ!)

洋榎(……今、背筋が凍ってもうた……氏ぬのは、怖い)

洋榎(それにうちが氏んだら、絹もきっと後を追う……それは、それだけは避けへんと……)

絹恵「……お、お姉ちゃん? な、何やっとん!」

洋榎「絹……心配してくれるんか……」

絹恵「当たり前やろ! な、なんでこんな……」

絹恵「傷つけるんやったら、私がやったるから……な?」

洋榎「…………」

絹恵「いや、私以外は許さへん……」

洋榎「……このナイフも、そのために買ったんか」

59: 2012/10/03(水) 00:15:08.59 ID:7K4/+dd70
絹恵「……これ本当は、お姉ちゃんに傷つけて欲しくて手に入れたやつなんよ」

絹恵「ただの咬み傷もええけど、これで身体にお姉ちゃんの名前を刻んでもろてもええかな、って」

洋榎「……絹、どうして……」

絹恵「ああ、せっかくやし、今やらへんか? ……ふふ」

洋榎(なぁ、絹……なんで、そんな幸せそうな顔できるんや……)

洋榎「もう、嫌……」

絹恵「……お姉ちゃんは、なんで私を拒絶するの……?」

洋榎「っ……別に、しとらんやろ!」

絹恵「そ、そうかな、私の気のせい、かな……はは……」

絹恵「お姉ちゃん、離れとうない……無理、怖い、怖い……助けて……」

洋榎「……大丈夫」

絹恵「お姉ちゃん、どこにも行かないで……私だけを見て……」

洋榎(うちが甘やかしとるのが、あかんのかな……もうわけわからへん……)

洋榎(絹、元に戻って……)

62: 2012/10/03(水) 00:22:57.22 ID:7K4/+dd70
絹恵「お姉ちゃん、抱っこして、キスして、なんでも……なんでもしてほしい……」

洋榎「自分が手錠つけたくせに、抱っこしては無理やわ……」

絹恵「じゃあ、じっとしてて……」

洋榎(な、なんや……ナイフ持って、うち、刺されるん……?)

洋榎(絹、エスカレートしとる……うちのほうが怖い、逃げたい……)

絹恵「……私が」

洋榎「は……」

絹恵「私が先に、お姉ちゃんに名前書いたるわ……ふふ」

洋榎(…………)

洋榎「……絹は、また今度でええか」

絹恵「せやな、お姉ちゃん、疲れとるみたいやし」

洋榎(……良かった、やったらまだ、大丈夫)

洋榎(うちが耐えれば……それで、済むこと……)

67: 2012/10/03(水) 00:30:33.35 ID:7K4/+dd70
絹恵「腕より、お腹の方がええかな?」

洋榎「ぁ……う、うん……」

絹恵「……ん、しょっ」

洋榎「だっ、いたっ……」

絹恵「……もうちと、勉強しとけばよかったかな」

洋榎「がっ、う、あっ……」

絹恵「……もうちょっと我慢してな」

絹恵「……ぺろっ」

洋榎「ぁ、うああああっ! やあ、いだいっ!」

洋榎(痛い痛い痛い痛い痛い、痛い……あ、あかん、我慢できひん……)

洋榎「あ、うあっ、うぇっ……」

絹恵「お姉ちゃん、泣いたら顔に変な跡ついてまうで」

絹恵「ん……ちゅっ」

洋榎「あ、は……はっ?」

洋榎(絹、なに目舐めとるん……おかしい、おかしいやろ……)

69: 2012/10/03(水) 00:36:41.56 ID:7K4/+dd70
絹恵「ふぅ……んっ、涙って、ちとからいね……」

洋榎(……痛くないのが不思議やな、変な感じ……表面だけやったら、もう、好きにさせたるか)

洋榎「……噛み千切ったりだけはやめたってや」

絹恵「するわけないやろ……んむっ」

洋榎(これ、失明したりせえへんのかな……まあ、片目くらいやったら……)

洋榎(どうせもう、うちは絹の側におるって決めたことやし……)

絹恵「……ん、ふぅっ……」

洋榎「……ぅ」

ガラッ

洋榎「!」

雅枝「……は? な……あっ」

雅枝「あんたら、何しとん……」

絹恵「ぇ……」

洋榎(……見つかってもうたな、はは)

73: 2012/10/03(水) 00:43:38.50 ID:7K4/+dd70
雅枝「う、あああっ!」

雅枝「ちょっ、絹、そこ離れたってや!」

絹恵「…………」

洋榎(ナイフ、血だらけ、手錠、眼球キス……そら、そんな反応もするわな……)

雅枝「洋、大丈夫か!?」

洋榎「……まぁ」

雅枝「これも外さんと……の前に止血が先や! 跡になってもうたらあかん!」

絹恵「え……」

雅枝「絹、タオル持ってきたってや!」

絹恵「う、うん……」

洋榎(あ、よかった……おかんまで、刺されるかと思うた……)

洋榎「…………」

雅枝「……すまんな、気付けへんで」

洋榎「何や……別に、なんもあらへんわ……」

雅枝「っ……」

79: 2012/10/03(水) 00:49:27.70 ID:7K4/+dd70
絹恵「お母さん、タオル……と、鍵……」

雅枝「…………」

雅枝「絹、あんたうちの目の前座っときいや」

絹恵「……うん」

………
……

雅枝「それで……これ、ほんま絹がやったんか、なあ……?」

洋榎(おかんもさすがに混乱しとるな……何やねん、珍しい……)

洋榎(……ああ、うちみたいな人間のことを、バカっちゅうんかなぁ)

洋榎「……うちが、やらせた」

絹恵「なっ……」

雅枝「……っ」

雅枝(あほ……んなわけ、ないやろ!)

84: 2012/10/03(水) 00:56:36.37 ID:7K4/+dd70
雅枝「……後で聞いたるわ」

雅枝「とりあえず、洋、立てるか?」

洋榎「大丈夫……いっ、つ……」

絹恵「ぁ、お姉ちゃん……」

雅枝「……絹、こっちきいや」

洋榎(手錠外したんも絹やし、ナイフ持っとったのも絹……さすがに、無理があるかなぁ)

洋榎(でもこう言うておけば、おかんも絹のこと打たへんやろ……)

雅枝「……っ!」バシッ

絹恵「いっ!」ガタン

洋榎「なっ……!」

洋榎「何もそこまで強く打たへんでもええやろ! 頭ぶつけたらどないするん!」

絹恵「…………」

雅枝「……洋に免じて、これだけで勘弁したる」

雅枝「次同じことしたら、知らへんからな……絹、頭冷やしとき」

絹恵「…………」

89: 2012/10/03(水) 01:02:30.92 ID:7K4/+dd70
洋榎「……絹、大丈夫?」

絹恵「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい……」

洋榎「うちは問題あらへんよ、大丈夫……」ギュッ

絹恵「ごめんなさい、ごめんなさい……あ、う、ああっ……ごめっ……」

洋榎「いたた……先に、絹落ち着かせてからでもええか?」

雅枝「…………」

雅枝「……好きにせえ」

洋榎(さすがに、参っとるな……)

洋榎「……ありがと」

洋榎「絹、部屋行くで」

絹恵「うん、わかった……ごめんなさい、ごめんなさい……」

洋榎「もう、ええから……な」

92: 2012/10/03(水) 01:08:05.66 ID:7K4/+dd70
………
……

洋榎「話す前に、一つ言いたいことがあんねん」

雅枝「……なんや」

洋榎「絹のことは、責めないであげたってや」

雅枝「あないなことされた後で……よう言えるな、そんなこと!」

洋榎「……で、はいかいいえ、どっちやねん」

雅枝「……絹は、反省しとるん?」

洋榎「一応、かな」

雅枝「わかった……テコでも動かへんやろ、こうなると」

洋榎「ようわかっとるやん」

雅枝「……絹のことも、わかっとるつもりやったんやけどな……堪忍」

洋榎「ええわ、それに、うちもわからんかった」

96: 2012/10/03(水) 01:16:10.98 ID:7K4/+dd70
雅枝「……で、何があったん」

洋榎「どこから話したらええ?」

雅枝「発端からやな、明らかに喧嘩なんて温いもんとちゃう

雅枝「ほんまのところ、わけわからへん……」

洋榎「……結構前に、絹に本気の告白されてん……付き合って、てな」

雅枝「……なんて答えたんや」

洋榎「咄嗟で焦ってもうて、姉妹やからとか同性やからって言うたと思う」

洋榎「それが原因やろなぁ……時期から考えると」

雅枝「……それで、ほんまはどう思ってんねん」

洋榎「恋愛対象として、とかそういうのは構へんわ、ただ普通に好きになってもろたほうがええな」

雅枝「そら、そうやろな」

洋榎「絹がどう思うとるんかはよう知らんけど……もう一度告られたら、はいって言うてまうかも」

雅枝「……自分、バイか?」

洋榎「いや、知らんて……そないなこと考えたことあらへん」

雅枝「あんなことの後やからこそ言えるけども……傷つかへんのやったら、なんでもええよ」

99: 2012/10/03(水) 01:23:13.02 ID:7K4/+dd70
雅枝「それにしても、度が過ぎとるな……」

洋榎「……でも放っとかれへんやろ、絹のこと」

洋榎「痛いのは無論嫌やけど、それで絹が落ち着くならそれでええ……なんて、思うとった」

雅枝「……ちと良すぎる性格に産んでもうたみたいやな」

洋榎「ほー、うち完璧人間やないけ」

雅枝(……こっちは返す元気も出えへんわ)

雅枝「絹はそこに依存しとるのかもな……」

雅枝「……実は、こうなったの初めてのことやあらへんし」

洋榎「え、どういうこっちゃ」

雅枝「……洋、絹のことをなんとか落ち着かせて、元通りに戻す気やろ?」

洋榎「当面の目標はそうなるやろなぁ」

雅枝「不甲斐ないけど、それはうちにはできん、依存されとる洋にしかできひんことかもしれへん」

雅枝「ほんまは口止めされとった……けど、原因を知らん内にはどうしようもあらへんしな」

洋榎「なんやもったいぶってからに」

105: 2012/10/03(水) 01:32:31.89 ID:7K4/+dd70
雅枝「……洋が姫松に入学してすぐの頃、絹がうちに、お姉ちゃんが離れてくのが嫌やって相談したんよ」

洋榎「……ほんまか」

雅枝「言った後に、めちゃくちゃに泣き散らかしてもうてな……絹は絹なりに、色々思うとったんやろ」

洋榎「…………」

雅枝「一般でも姫松入る言うたのは、それからすぐ後のことやな」

洋榎「なんで、気付かれへんのやろ、いつもいつも……」

雅枝「ま、洋が責任感じることあらへんわ」

洋榎「そないなこと言うても……」

雅枝「大体、絹が口止めした理由て、麻雀で勝つ続けとる洋を邪魔せんようにちゅうことや」

雅枝「そんで、自分が落ち込んどったらあかんやろ」

洋榎「無茶ぶりやな」

雅枝「話さへんと解決せん、しゃあないやろ……」

洋榎「……確かに絹も、離れたとうないってむっちゃ言っとったわ」

雅枝「それにしても、ああまでするか、て感じやったねんけど……」

洋榎「許容量を超えたんとちゃうんかなぁ」

108: 2012/10/03(水) 01:38:26.37 ID:7K4/+dd70
雅枝「……被害者の癖に、なんや落ち着いとるな」

洋榎「被害者やなんて思うとらへんがな」

雅枝「……はぁ」

洋榎「おかんこそ、似たようなもんや思うけど」

雅枝「うちか? 落ち着いとるわけないやろ……動揺しまくっとる、今夜多分寝られへんな」

雅枝「せやかてうちが動揺しとったら、相談もへったくれもあらへんしな……」

洋榎「そういうもんなんか」

雅枝「……親になったらわかるで」

洋榎「やったら、うちには一生わからへんやろ」

雅枝「なんや、それ」

洋榎「うちはもう、絹に添い遂げたるって決めてん」

雅枝「……そか」

洋榎「それじゃ、戻るで、絹も心配やから」

雅枝「せやな……おやすみ」

洋榎「ん、おやすみ」

110: 2012/10/03(水) 01:46:11.78 ID:7K4/+dd70
………
……

洋榎「帰ったで」

絹恵「あ、お、お姉ちゃん!」ギュッ

絹恵「やった、良かった、帰ってきた、お姉ちゃん……」

洋榎(こういうところはかわええんやけど……)

絹恵「な、なぁ……首、首……ん」

洋榎(やっぱり……)

洋榎「……んむっ」

絹恵「っ……あっ」

洋榎「……はあっ……噛まへんて言うたやろ、これで我慢せえ」

絹恵「……お姉ちゃん、またどっか行ってまうん?」

洋榎「一々考えすぎやわ、絹」

112: 2012/10/03(水) 01:49:50.88 ID:7K4/+dd70
絹恵「だって、じゃあ、私がお姉ちゃんを咬むから……」

洋榎「あほ、あれはもうなしや、次見つかったらどないすんねん」

絹恵「で、でも、うん、それはわかっとる……」

絹恵「けど、せやないとお姉ちゃん盗られる、どっか行っちゃう……」

洋榎「うちはもう、絹を傷つけとうない、傷つけられたくもあらへん」

洋榎「普通に、愛したってや……」

絹恵「なんでや! 私はお姉ちゃんの特別になりたい、そのためならなんだってしたる!」

洋榎「……もうとっくに、絹はうちの中の特別や……はよ気付かんか、なぁ」

絹恵「なんでや……わからへん……」

洋榎「特別とちゃう人間以外と、こうやって一線越えるわけないやろ……」

洋榎「同性やし、姉妹やし、あかんこともたくさんした……一線どころかなんぼも越えとる……」

洋榎「なぁ、わかって……」

絹恵「……私は」

116: 2012/10/03(水) 01:56:17.44 ID:7K4/+dd70
絹恵「私は、お姉ちゃんにもっとどっぷり浸かりたい……」

絹恵「正直今も、もうなんかあかん……押し倒して、ぐちゃぐちゃになりたい……」

洋榎「…………」

絹恵「お姉ちゃん……」

洋榎「な、なんや……」

絹恵「キスして……」

洋榎「……ちゅっ」

絹恵「ん……ぁ、ふぅ」

洋榎「……これで落ち着くんなら、いくらでもしたるわ」

絹恵「……ほんまやな? えへへ、依存してまうで」

洋榎「んな嘘ついてどないすんねん、大体もうしとるやろ……そっちについては、もう構へんと思うとるわ」

絹恵「えへへ、優しいなぁ、お姉ちゃん……」

洋榎「……ごめん」ギュッ

絹恵「ん……もうちときつい性格しとったら、私もベタ惚れせえへんかったかも、なぁ……」

120: 2012/10/03(水) 01:59:55.77 ID:7K4/+dd70
洋榎「……まぁ、リハビリにしても、まずは形からやな」

洋榎「絹、このけったいな瓶捨てるで」

絹恵「え……お姉ちゃんの髪、綺麗なのに……」

洋榎「……あんなぁ」

絹恵「じゃあ……お姉ちゃんの髪、触らしたってや」

洋榎「……ん、それくらいなら、まあ普通やろな」

絹恵「あ、あと嗅がせて!」

洋榎「まあ、別に……寝る時でええやろ?」

絹恵「それと……舐めたい」

洋榎「…………」

洋榎「それは、片足突っ込んどるんとちゃうかな……」

絹恵「わ、わかった、我慢する……」

124: 2012/10/03(水) 02:07:27.66 ID:7K4/+dd70
洋榎「おやすみ、絹」

絹恵「おやすみ、お姉ちゃん」

洋榎「……んー」ゴロッ

絹恵「な、なんであっち向くん……嫌、嫌っ……」

洋榎「ちょっ、絹が髪触りたいっちゅうから……」

絹恵「こっち向いてても触れるやん、こっち向いて……」

洋榎「……わかった」ゴロッ

絹恵「……へへ、綺麗……んっ」

洋榎「こそばゆっ……」

絹恵「……お姉ちゃん、髪舐めたい……」

洋榎「……んむっ」

絹恵「ぁ、んぅ……」

洋榎「っ……ふぅー」

絹恵「……抱きしめて」

洋榎「ん……」ギュッ

125: 2012/10/03(水) 02:12:21.91 ID:7K4/+dd70
洋榎「少しは、落ち着いたか……?」

絹恵「ううん、全然……」

洋榎「……んっ」

絹恵「ぅ……んぁっ」

洋榎「……ふぁ、っ!」

絹恵「ん、ぐっ……」ギュッ

洋榎(な、離して……苦しっ……)

絹恵「……んっ」

洋榎「……んぅ、ん……」

洋榎(……逃げようとしなければ、ある程度マシかな)

洋榎(咬まれたりするよりは全然ええし、な……)

127: 2012/10/03(水) 02:16:17.27 ID:7K4/+dd70
………
……

絹恵「ほら、お姉ちゃん行こ!」

洋榎「ああ、うん……」

洋榎(絹のキスに付き合って、一睡もできんかった……)

洋榎(絹がピンピンしとるのがわからへんわ……)

絹恵「……腕、組まへん?」

洋榎「まあ、ええで」

絹恵「私は、手錠でも構へんけど……」

洋榎「……あかんもんはあかん、腕出し」

絹恵「ん……ふふっ」

洋榎「?」

絹恵「これもこれで、ありかもしれへんなぁ……」

洋榎「これが普通やで……」

129: 2012/10/03(水) 02:21:15.84 ID:7K4/+dd70
………
……

洋榎(……うわっ! 一限全部寝てもうた!)

洋榎(……なのに、ここ最近で一番快眠やった……一応は、肩の荷が降りたっちゅうことかいな?)

洋榎(いや、まだ全部終わっとらへん)

恭子「主将、どないしたんです」

洋榎「なっ! ……恭子か、びびった」

恭子「……いい加減、話したってもええと思うんですけど」

洋榎「な、なんや」

恭子「絹ちゃんのことに決まっとるやないですか……」

洋榎「……一区切りは、ついた」

恭子「! よ、よかった……」

131: 2012/10/03(水) 02:27:28.62 ID:7K4/+dd70
洋榎「心配、してくれるんか……」

恭子「当たり前やないですか!」

恭子「ちゅうか話聞こうとしても、主将、構うなとしか言わへんし……」

洋榎(教室で話したら、絹に刺されてもおかしくなかったしなぁ……)

洋榎「はぁ……うちの弱さが、絹に移ったんかな……?」

恭子「……ネガティブすぎます」

恭子「とりあえず、相談できひん分は、勝手に調べました」

洋榎「女子高生探偵やな……」

恭子「ちゃいますよ、絹ちゃんの直し方の方です」

洋榎「な、ほんまか!?」ガタッ

恭子「び、びびった……直し方言うても、分析したわけやなくて、ただ事例とか調べただけですけど……」

洋榎「……なんでその発想が浮かばんかったんやろ」

恭子「……相当、参っとりましたやん」

133: 2012/10/03(水) 02:31:44.08 ID:7K4/+dd70
恭子「ハッキリ言いましょうか」

洋榎「……おう」

恭子「絹ちゃんが噛んだりするのは性癖とちゃいます、病気ですね」

洋榎「そら、そうやろな……あんな危ないのが元々の性癖やっちゅうんやったら、うちが持たへん」

恭子「……もしそうでも、主将は受け入れとったでしょう」

洋榎「……かも、しれへんな」

恭子「せやから、心配やったんですよ……」

洋榎「…………」

恭子「…………」

洋榎「それで、うちは何したらええねん」

恭子「……これが一番、きついかも知れへんけど」

恭子「絹ちゃんに、自分がおかしいっちゅうことを気付かせてください」

洋榎「……半々、やわ」

恭子「はい?」

136: 2012/10/03(水) 02:36:55.29 ID:7K4/+dd70
洋榎「成功率が、な……」

恭子「そないなこと言いましても……」

洋榎「……あれやわ、この前、おかんに見つかってな」

恭子「……そ、それで? 絹ちゃんは?」

洋榎「一応、反省はしとった……そこを開いてけば、改善の余地はあるやろなぁ」

恭子「うーん……もう半分、ってのはどないです?」

洋榎「絹の愛情表現は行き過ぎもええとこやけど、本人はそれが普通だと思うとる節がある」

洋榎「あんまりねじ曲げるようなことは、しとうないしな……」

恭子「せやかて、そこを治さへんと!」

洋榎「言うても、手段がわからへん……」

洋榎「こういうの、本人は気付かれへんもんやろ」

恭子「……主将みたいに、ですか?」

洋榎「…………」

洋榎「……は?」

139: 2012/10/03(水) 02:43:04.87 ID:7K4/+dd70
恭子「絹ちゃんの愛は、確かに行き過ぎやな……」

恭子「せやかて、それを全部受ける主将も……おかしいの一言です」

洋榎「な……」

恭子「あんま言いたかない、ちゅうか聞きにくいんですけど……」

恭子「……腹、腕、胸、肩……むっちゃ傷あるんとちゃいますか?」

洋榎「…………」

恭子「別に、答えを聞こうっちゅうわけやあらしまへん」

洋榎「…………」

恭子「……チャイム、鳴りましたね」

洋榎「ちょ……」

恭子「また、次の休み時間にしましょうか」

洋榎(なんや、嫌な切り方しよって……)

洋榎(うちは実際、どうなんやろ……)

141: 2012/10/03(水) 02:48:17.04 ID:7K4/+dd70
洋榎(結局、また寝てもうた……)

恭子「起きましたか」

洋榎「うわっ……心臓に悪い現れ方やめえや」

洋榎「で、さっきの続きは? うちが、おかしいとかなんとか」

恭子「…………」

洋榎「……恭子?」

恭子(休み時間、挟んでおいてよかったかもしれへんな……)

恭子(「ほんまは絹ちゃんの愛情表現を受け入れとったんやないですか?」)

恭子(なんて言うてもうたら、恐ろしいこっちゃ……かっとなって言うてまうかもしらへんしな)

恭子(変に煽って、万が一当たって自覚してもうたら、責任感じて夜眠られへん……)

恭子「いや……あれは忘れてください」

洋榎「それはないやろ」

恭子「まあ、ただの憶測なんで……」

143: 2012/10/03(水) 02:52:34.62 ID:7K4/+dd70
恭子「……最悪、依存状態はそのままでもええとしましょうか」

洋榎「せやな、そっちを治せるとは思うとらへん」

恭子(……危なっ、冷静になっとらんかったら、多分、さっきの言っとった)

恭子「……今、絹ちゃんには何されてます?」

洋榎「んー、そやなぁ……昨日は、手錠かけられて、腹刺されて、そこ舐められて……」

恭子「は、え、はっ? ちょっと……」

洋榎「ああ、こっちはおかんに見つかる前の話やで?」

恭子(にしたって、ハードル高すぎですやん……)

洋榎「見つかる前は……後は、黒目、舐められた」

恭子「な、はあっ!?」

145: 2012/10/03(水) 02:56:01.78 ID:7K4/+dd70
洋榎「恭子、やかましい、唾飛んだわ」

恭子「……すんません、で、その後はどないですか?」

洋榎「ああ、これ、あんま言いたかないねんけど……ああ、でも言ったかな」

恭子「どのことです?」

洋榎「うちの髪の毛な、結構前から採取されて、瓶につめられとってん」

恭子(ああ、それ……堪忍、正直怖い……)

洋榎「それを、捨てさせて……」

恭子「……ん? それは成功したんですか?」

洋榎「代わりに、うちの髪の毛触らせる、嗅がせるちゅう条件で……」

恭子「食べたがりはしなかったんですね」

洋榎「エスカレートの火種になると思うて、それはやめさせたわ」

恭子(……今の、本気の言葉やなかったんやけど)

149: 2012/10/03(水) 03:02:54.03 ID:7K4/+dd70
洋榎「それで、絹が暴走しそうになったらうちが止めるって約束したのが、昨晩のことやな」

恭子「なんや、割とええ感じやないですか」

洋榎「……ただし、止めるために、ずっとキスしとった」

恭子「……まさか」

洋榎「そのまさか、朝までやな……おかげで一睡もできとらへんわ……」

恭子(ついていかれへん……)

恭子「まあでも……それの延長線上で、なんとか過剰な愛情表現は薄められそうですね」

洋榎「……傷跡のことが、ネックになっとんねん」

恭子「ま、また傷つけられたんですか?」

洋榎「や、今日はまだ平気やわ……うちが気にしとるんは、マーキングとかなんとか」

洋榎「そないな理由で、今まで傷つけたりつけられたりしとったところや」

恭子「…………」

洋榎「行動はうちが自力で止められるにしても、そっちはどないすればええんやろな」

152: 2012/10/03(水) 03:07:43.41 ID:7K4/+dd70
恭子(超過激なペアルックやな……あっ)

恭子「……代わりが、効くんですよね?」

洋榎「? まあ夜通しキスしたのは、首噛んだり、髪舐めようとしてきよった代わりやな」

恭子「傷も、似たようなことができるんとちゃいますか」

洋榎「タトゥーでも入れろ言うんかい」

恭子「……主将、それ、冗談でも絶対絹ちゃんに言わへんように」

恭子「言うたら多分、名前入れよう言われて引きませんわ……」

洋榎「た、確かに……元々うちが腹刺された理由も、似たようなもんやから……」

恭子「…………」

洋榎「しかも漢字……まあ、糸、の上部分しか残っとらんのは幸いやな」

恭子(それ、4回5回は切られてんとちゃうん……)

恭子「……そないなこと、ようしれっと言えますね」

洋榎「起きてもうたもんは、もうしゃあないやろ」

恭子「いや……もうええですわ」

153: 2012/10/03(水) 03:13:50.37 ID:7K4/+dd70
恭子「タトゥーはないにしろ……指輪とか、どないですか」

恭子「女の子は、そういうの結構喜びますやん」

洋榎「なんやねん、自分かて女やないけ」

恭子「私より、絹ちゃんの方がそういう傾向強いじゃないですか」

洋榎「胸でかいしな」

恭子「オヤジですね」

洋榎「ええ趣味しとるやろ、絹見とるから目には自信あるで」

恭子(まあ、多少は調子戻ったなら安心……)

恭子「……指輪」

洋榎「一番現実的やし、試してみるわ、おおきに」

恭子「……薬指につけへんように」

恭子(そないなことしよったら、比喩でもなんでもなく、一生離れなくなる……)

洋榎「んー、せやな」

154: 2012/10/03(水) 03:20:03.94 ID:7K4/+dd70
………
……

洋榎(久しぶりに、落ち着いて麻雀打ったかも知れへんな)

洋榎(絹も麻雀部では普通やし……)

洋榎(むっちゃ疲れた……ねむ……)

洋榎(……予想以上に、プレッシャーみたいなんがあったっちゅうことかいな)

絹恵「お姉ちゃん、大丈夫?」

洋榎「ん……眠い、帰ったら眠らへん?」

絹恵「せやなぁ……あ、ごめん、忘れたことがあった」

絹恵「お姉ちゃん、ここで待っててくれる……?」

洋榎「待っとるから、大丈夫」

絹恵「……うん、ありがと」

洋榎(……少し、仮眠するかな)

157: 2012/10/03(水) 03:26:20.73 ID:7K4/+dd70
絹恵「…………」

恭子「あれ、絹ちゃん、どないしたん?」

絹恵「……ちょっと、忘れとったことがありました」

恭子「私、鍵かけて出るから、気にせんでええよ」

絹恵「……末原先輩?」

恭子「何や」

絹恵「今日……お姉ちゃんと、何話とったんですか……?」

恭子「……っ!」

恭子(こ、この子……あかん、目が本気や!)

恭子(……せやから、主将が私のこと遠ざけとったんか)

絹恵「末原先輩……? 答えてくださいよ……」

絹恵「ねえ、先輩? ねえ、答えて……」

160: 2012/10/03(水) 03:33:35.83 ID:7K4/+dd70
恭子「い、いや……」

絹恵「あ……はは、わかった、わかってもうた……」

恭子「……私は、ただ絹ちゃんのことを」

絹恵「そういうんはもうええんですよ……ただ」

恭子「……?」

絹恵「お姉ちゃんが私と一生居てくれても、周りの人はそうやない……」

絹恵「皆、寄ってくる……お姉ちゃんは、それだけの要素はあるからしゃあないけど、なぁ……?」

恭子「別に、そういうわけやない……」

絹恵「……邪魔」

絹恵「邪魔、邪魔、邪魔邪魔邪魔……邪魔!」

恭子「……き、絹ちゃん!」

絹恵「私からお姉ちゃんを奪わないで!」

166: 2012/10/03(水) 03:44:13.63 ID:7K4/+dd70
恭子「ちゃう! むしろ最近、麻雀部以外じゃ話とらん!」

絹恵「…………」

恭子「教室見とったんなら知っとるやろ!」

絹恵「でも、今日は……」

恭子「休憩時間しか、相談事はできひんやろ……」

絹恵「……そりゃ、そうでしょう」

絹恵「私がいなくて、ちょうどええ、から……」

恭子「なっ……違う……」

絹恵「何が違わないんですか!」ドガッ

恭子(な、卓蹴りおった……)

絹恵「念のため、持ち歩いとって良かった……ちと、用途が違うけど、まあええわ」

恭子「ひっ……!」

恭子(あ、あかん……刺される!)

絹恵「お姉ちゃん……今、皆片付けていくから……待っててね」

絹恵「帰ったら、一緒に寝られる……ふふ、楽しみやわ!」

169: 2012/10/03(水) 03:51:16.31 ID:7K4/+dd70
洋榎「っ!」

洋榎(な、何や今のどえらい音……明らかに部室の中から……)

洋榎(……恭子が残っとったはずやけど……あ、絹、まさか……)

洋榎(肩の荷が降りて、眠くて、油断した……くそっ、言い訳すんな!)

洋榎(こんなんで今度絹とどうやっていくん、あほ!)

洋榎「……っ、絹!」ガラッ


絹恵「お、お姉ちゃん……」

恭子「主将……」

郁乃「お? なんや豪華やね~」

洋榎(なんやこれ……惨状やな、情けない……)

洋榎(……って絹のナイフ、血がついとる! 誰の……っ!)

洋榎「……監督代行」

郁乃「ん~?」

洋榎「……迷惑、かけてもうてすんまへん」

郁乃「…………」

173: 2012/10/03(水) 03:57:40.63 ID:7K4/+dd70
洋榎「恭子は……大丈夫かいな」

恭子「わ、私は……平気……」

洋榎「……責任は、うちが取りますから」

郁乃「うーん、とりあえずナイフは没収……麻雀部の責任問題になったら面倒くさそうやし、私そういうの嫌やわ~」

洋榎「な、そんなんで済む問題やあらへんやろ!」

郁乃「……まあ、よう知らんけど、明日もちゃんと部活来るんやで~」

郁乃「麻雀牌、棚の影とかに転がっとると思うし、明日は大変そうやからなぁ……早いとこ帰り~」ガチャッ

絹恵「…………」

恭子「……絹ちゃん」

洋榎「……絹」

洋榎「絹、どうして……」

176: 2012/10/03(水) 04:04:24.09 ID:7K4/+dd70
洋榎「…………」ギュッ

絹恵「ぁ……」

洋榎「……ごめん、恭子……ごめん、絹」

恭子「な……なんで主将が謝っとるんですか……」

洋榎(うちがおかんみたいに、ここで一発打てればええんやろな……)

洋榎(……うちは、恭子の言った通りかもしれへん)

洋榎「……うちが、絹のことを全部理解してへんから……こうなったんやろ? なぁ……」

恭子「…………」

洋榎「絹」

絹恵「……お姉ちゃん、ごめんなさいっ……」

洋榎「……ちゃうやろ、あほ」

絹恵「……末原先輩、ごめんなさい……っ!」

恭子「……ぁ、や、一応、無事やったし……な」

179: 2012/10/03(水) 04:12:13.42 ID:7K4/+dd70
絹恵「お姉ちゃん……」

洋榎「……なんや」

絹恵「今日、末原先輩と、何話しとったん……?」

洋榎「……うちと絹がこういう仲やっちゅうのは、恭子はもう知っとる、安心しいや」

絹恵「……うん……うん、わかった、わかった……」

恭子「絹ちゃん……大丈夫?」

絹恵「……ご、ごめん、なさい、ごめんなさい……」

恭子「ええよ、私は」

洋榎「……監督代行は、大丈夫やろか?」

恭子「手だけなら、致命傷やあらへんけど……私、追ってきますね」

洋榎「いや、さすがにうちらが……」

恭子「絹ちゃん、放っとく気ですか?」

洋榎「…………」

恭子「……鍵置いときますんで、鍵閉めだけお願いします」ガチャッ

洋榎「……すまんな、恭子」

181: 2012/10/03(水) 04:19:56.11 ID:7K4/+dd70
絹恵「……う、うえっ、ぐずっ……」

洋榎「不安やったんか」ギュッ

絹恵「…………」

洋榎「……なぁ、皆ええ人ばかりや……何をそんなに不安になっとんねん」

絹恵「……お、お姉ちゃん、が……盗られるかと、思った……」

絹恵「嫌や、それだけは、絶対に……」

洋榎「恭子は、うちらのことを知っとる……それなら、安心できるん?」

絹恵「……うん……早とちりして、勘違いしてもうて、ごめんなさい……」

洋榎「……なんや、それなら、簡単やわ」

絹恵「ぅ、えっ?」

洋榎(今までずっとしてきたこと……それをまた、もう一度すればええだけの話……か)

183: 2012/10/03(水) 04:27:36.91 ID:7K4/+dd70
………
……

洋榎「絹、うまく舌出せる?」

絹恵「ん、ぁー……微妙に難しいなぁ」

洋榎「こっちの位置があかんのかな」

絹恵「んー……」

洋榎「……んむっ」

絹恵「ぁ……んっ、終わった?」

洋榎「……まあ、いけるやろ、これは」

絹恵「ほんまに、やる気?」

洋榎「なんやそれ、絹を見捨てろっちゅうことか?」

絹恵「……それは嫌や、でも」

洋榎「ま、別に心配することなんかあらへん……絹、もうずっと安心してええで」

絹恵「……うん」

洋榎「おかんには、ちと迷惑かけてまうかもなぁ……」

洋榎「……行ってくる」

187: 2012/10/03(水) 04:36:30.40 ID:7K4/+dd70
………
……

洋榎「おーおー、我ながらどえらいことになっとるなぁ」

洋榎(結果的には、大成功やな……)

洋榎(……こういったキスの写真を撮りまくって、色んなところに送って)

洋榎(姫松のエース、姉妹、同性……スクープとして取り上げへんところはなかった)

洋榎(……風当たりはむっちゃ強くなってもうたな、プロ行きの推薦とかも、全部一時中断してもうたし)

洋榎(麻雀も、下手したらできなくなるかも……まあ、別に、それでもええか)

洋榎(何も両手なくなってできんくなるわけやあらへん、それなら、全然構へんわ)

洋榎(……絹が、安心するなら)


190: 2012/10/03(水) 04:42:57.68 ID:7K4/+dd70
洋榎「……なあ、絹」

絹恵「何や、お姉ちゃん」

洋榎「恭子がな、前に絹に指輪でもあげたら、なんて言ってん」

洋榎「……ペアリングっちゅうんかな、こういうの……これで、マーキングの代わりにはなるやろ?」

絹恵「……うん」

洋榎「ほれ」

絹恵「……ぁ、薬指……」

絹恵「……ごめん、なさい……好き、愛してる、ごめん、お姉ちゃん、ごめん……」

洋榎「何言っとるん、安心しいや」

洋榎「……うちが、一生一緒にいるから」

絹恵「…………」

絹恵「……うん」


おわれ

192: 2012/10/03(水) 04:43:58.56 ID:GLsuHwWx0
おつおつ
お姉ちゃん頑張った

196: 2012/10/03(水) 04:49:00.87 ID:XsJfenq10

お姉ちゃんの愛も相当強い物だな

引用: 絹恵「お姉ちゃん、手錠かけさせてもらうから」