1: ◆mfW3IVu5q2 2016/03/30(水) 03:36:02.92 ID:OPbYQb/W.net
真姫「ちょっと、あそこのダンボールに入れといた衣装は?」

穂乃果「あ、冷蔵庫の中だよっ!」

真姫「はぁ!?」

凛「…衣装、キンキンに冷えてるにゃ」


絵里「ことり、どう?」

ことり「うんっ、絵里ちゃんのおかげでバッチリ!」

絵里「よかった…間に合いそうね」

ことり「ごめんね…ギリギリまで調整しちゃって」

絵里「ううん…私たちがスクールアイドルとして着る、最後の衣装だものね。大事にしないと」

希「おっ、できたん?」

ことり「うん、もう少しで!あとはね…」



海未「お待たせしました!」

花陽「ご飯できたよぉ~!」

にこ「ほら、区切りのいいとこでお昼にしましょ」

2: 2016/03/30(水) 03:37:39.31 ID:OPbYQb/W.net
真姫(今日は3月30日)

真姫(ファイナルライブを翌日に控えた私たちは、わがままを言って音ノ木坂で一日過ごさせてもらうことにした)

真姫(明確に言えば、29日の夜からなんだけれど)

真姫(…で、どうしてここかって言うと)


真姫(ここが、一番の思い出の場所だから)


真姫(…そんなこんなで、明日の準備をしていたら、もう今日という一日も、半分を切っていた)



穂乃果「あっ、そうだ!今日は練習どうするんだっけ?」

海未「そうですね…明日の為にも、ゆっくり身体を休めた方が…」

凛「えーっ、でも凛、ちょっと身体動かしたいなぁ~」

絵里「私も賛成。身体がなまっちゃうと困るからね」

海未「そうですね…では、軽めのメニューを考えておきます。1時間後から始めましょう」

4: 2016/03/30(水) 03:38:40.79 ID:OPbYQb/W.net
真姫「…今の」

海未「ええ…完璧です!」

絵里「これで、もう何も心配はいらないわね」

希「それじゃお風呂入って、あとはゆっくり休もか」

絵里「そうね…じゃあ、ぱぱっと順番に入っちゃいましょう」

凛「えーっ、みんなで入りたいなぁ」

にこ「さすがにあのスペースに9人は無理でしょ…」

花陽「学校のシャワー室だから…仕方ないね」

穂乃果「真姫ちゃん家におっきいお風呂とかないの?」

真姫「ないわよ…」

5: 2016/03/30(水) 03:39:47.43 ID:OPbYQb/W.net
海未「…ことり、私は負けません…さあ、いざ勝負です!」

凛「海未ちゃん頑張れーっ!」

穂乃果「いや~、駄目だと思うなぁ…」

海未「…むむむっ」

ことり「え、えーっと…こっち、かな…」

海未「はぁ…!」

ことり「…や、やっぱりこっち…」

海未「ヴェアア!?」

ことり「…ごめんね、海未ちゃん!」ピッ

海未「最後まで…勝つことができなかった…何故なのですか…」

にこ「いや…顔に出てるからでしょ」

ことり「あっ」

穂乃果「にこちゃんついに言った!」

にこ「え?なんかまずかった?」

海未「そ…そういうことだったのですか…」


絵里「え、ここを…?」

花陽「えっとね、ここをこう…折り返して、最後にこうすると…ほらっ」

絵里「ハラショー…!花陽は折り紙上手なのね!」

希「花陽ちゃんは絵も上手いし…器用やねぇ」

真姫「μ`sでは珍しく文化系よね、花陽は」

花陽「そうだね…」

真姫「…あ、ほ、褒めてるのよ?」

花陽「…えへへ、ありがとっ、真姫ちゃん」

真姫「…べ、べつになにも…」プイッ

6: 2016/03/30(水) 03:40:33.98 ID:OPbYQb/W.net
穂乃果「…そうだっ!」

海未「なんです、いきなり」

穂乃果「寝る前にさ、乾杯しようよ!」

凛「乾杯…?」

穂乃果「そう!明日のライブの成功を祝って!」

にこ「でもジュースもお菓子も、何もないわよ?」

穂乃果「…じゃあ、今から買ってくる!」

真姫「今からって…」

海未「ダメです!身体のコンディションに影響があっては困ります!」

絵里「まあまあ、いいじゃないの。ちょっとくらいなら」

海未「絵里…」

希「そーそー。…あ、そんなら、成功祈願ってことでもっかい神田明神にでも行く?」

絵里「えっ」

穂乃果「おっ、いいねぇ!その帰りにジュースとお菓子買ってきて、それでいいじゃん!ね!」

海未「…」

絵里「…や、やっぱり、行くのは」

凛「さんせー!」

花陽「わたしも、ちょっとお腹空いたし…」

にこ「いいんじゃない?」

穂乃果「よーし!じゃあけってーい!」

絵里「うぅ…」

7: 2016/03/30(水) 03:41:36.15 ID:OPbYQb/W.net
穂乃果「なんか…静かだねぇ」

真姫「…いつもこんなに静かだったかしら?」

花陽「大通りから離れてるから、この辺はあんまりうるさくない…と、思うんだけど」

にこ「…まあ、それにしたって静かよね。人ひとり歩いてないなんて」

絵里「ちょっとやめてよ…」ギューッ

ことり「絵里ちゃん、歩きづらいよぉ…」

希「…」

海未「希?」

希「…あ、うん?」

海未「どうかしたのですか?顔色が悪いですよ」

希「…うん、なんか、変な空気だなって…」

絵里「ちょっと、希まで…!」

凛「あっ、猫だ!」

猫「ニャー」

凛「ふふふっ、かわいいねぇ」

花陽「…あれ?その猫…」

凛「?」

花陽「もしかして…シュシュじゃない…?」

凛「えっ!?…あ、ああっ!」

シュシュ「ニャー!」

凛「ほんとだ!」

にこ「まさかこんなとこで会うなんて…」

希「…」

ことり「うふふっ、私たちのこと、応援しに来てくれたのかな」

シュシュ「うん」

海未「…穂乃果?今何か言いました?」

穂乃果「え?何も言ってないけど」

8: 2016/03/30(水) 03:42:56.60 ID:OPbYQb/W.net
凛「凛じゃないにゃ」

花陽「私でも…」

ことり「ことりも…」

真姫「私でもないわ」

にこ「希じゃないの?」

希「うちじゃない…」

絵里「ヒッ…」

シュシュ「この前はありがとう。がんばってね」シュタッ

凛「…しゅ、」

花陽「シュシュが、しゃ、喋っ…!?」

絵里「…あぁ」フラッ

ことり「絵里ちゃんっ!?」

希「シュシュ、待って!…逃げちゃったか」

真姫「…希?どうかした?」

希「…ううん、なんでもないよ」

穂乃果「まさかシュシュが喋るなんて…」

海未「いや…ありえないでしょう…」

にこ「…なんか不気味ね」

穂乃果「うん…早く買って帰ろっか…」

絵里「ことり…なんでもするから…ぜったいはなれないで…」ガタガタガタガタ

ことり「えっ?なんでも?」

真姫「…絵里も限界みたいだしね」



フワッ


真姫「…?」

ことり「真姫ちゃん?」

真姫「…あ、ごめんなさい。…今、女の子が通ったような気がして…」

絵里「ああああああああああああああああ」

9: 2016/03/30(水) 03:43:51.54 ID:OPbYQb/W.net
穂乃果「えー、では、明日のライブ成功を祝って…」


「「かんぱーい!」」


絵里「さっきのはなんだったのかしら…」

海未「穂乃果のいたずらではないのですか?」

穂乃果「ちっ、違うよぉ!」


真姫「…希」

希「ん…?」

真姫「難しい顔してるわよ…本当に大丈夫?」

希「…うん、大丈夫。…真姫ちゃんは優しいなぁ」

真姫「ヴェエ、そんなこと…」

希「ふふっ…」



真姫「そろそろ寝ましょうか」

ことり「うんっ、そうだ……あ、お母さんから電話だ。ごめん、ちょっと出てくるね」


ことり「…うん、明日のファイナルライブ、頑張るねっ」

ことり「…へ?そうなの…?」

ことり「…わかった。お母さん、無理しないでね…それじゃあ、おやすみ」


ことり「ごめんね、おまたせ~…」

穂乃果「どうしたの?」

ことり「お母さん、体調悪くて明日行けるかわからない、って…」

海未「そうだったのですか…心配ですね」

真姫「一回帰ってみたら?」

ことり「ううん、そこまでじゃないから大丈夫だって」

真姫「…あ、それじゃあ、ママにことりの家に行くよう頼んでみるわ」

ことり「ほんとに?」

真姫「ええ。それなら心配いらないわよね」

ことり「うんっ、ありがとう真姫ちゃんっ」ギュッ

真姫「ヴェエ…くっつかないで!」

10: 2016/03/30(水) 03:45:15.04 ID:OPbYQb/W.net
真姫「じゃあ、電気消すわよ。絵里、いい?」

絵里「な、なんで私に聞くのよ?」

真姫「だって…」

希「絵里ちがビビリやからやろ?」

絵里「希っ!もう…真姫、消していいわよ」

真姫「はいはい」ポチリ



にこ「…しっかし、アレよね。昔あんだけツンツンしてた絵里も、柔らかくなったわよね」

絵里「えぇ?何よ突然」

穂乃果「たしかに…4月に話しかけられたときなんて、人を頃しちゃいそうな目してたもんね」

ことり「穂乃果ちゃん、それは言い過ぎ…」

海未「…そうですね。みんな変わりました」

凛「変わったと言えば、かよちんと真姫ちゃんもすっごく変わったよね!」

真姫「そう?」

凛「そうだよ!だって真姫ちゃん、最初は音楽室のピアノしか友達いなかったもんね」

真姫「なんですって…!?」

希「ふふっ…」

真姫「な、何笑ってるのよぉ!」

希「いやいや、ごめんごめん。合宿の時の事、思い出してな」

真姫「…ふんっ」

希「真姫ちゃん、あそこからだよね。笑いかけてくれるようになったの」

真姫「そんな…」


凛「かよちんはメガネ取って、すごく積極的になったし…」

花陽「そんなこと言ったら、凛ちゃんだって…昔よりとーっても可愛くなったよっ」

凛「えぇ~、かよちんには負けるにゃ~」

花陽「そんなことないよぉ~」

真姫「…はいはい」

12: 2016/03/30(水) 03:46:48.88 ID:OPbYQb/W.net
絵里「変わったって話だったら、希だってそうよね」

希「えぇ、うちも?」

絵里「そうよ。μ`sに入ってからの希、今までの中でいっちばん楽しそうだったもの」

にこ「あ、それあるわね!μ`sが9人になった次の日の朝とか今も憶えてる!

希「え?なんかあったっけ」

にこ「登校してる時の希を見かけたんだけど…スキップしてた」

希「なっ…!?」

ことり「えっ?希ちゃんスキップしてたの?」

希「や、やめてよ!」

にこ「あとはね、神社でこっそりステップの練習してた」

希「ちょっと!!」

絵里「ぶふっ…」

希「アーーーー!!!」

海未「ふふっ…意外ですね」

穂乃果「あ…それなら、海未ちゃんも変わったよね。それと、ことりちゃんもっ」

海未「私がですか?」

ことり「ことりも?」

穂乃果「うん!二人とも、すーっごくかわいくなった!」

海未「…」

ことり「…」

穂乃果「…」

海未「…それだけですか!?」

穂乃果「え、うん…」

海未「…期待した私がバカでした」

穂乃果「ばっ、バカ!?」

14: 2016/03/30(水) 03:48:18.59 ID:OPbYQb/W.net
海未「…でも、ことりは確かに変わりました。いろいろ一人で抱え込むのをやめましたし」

ことり「そうかなぁ…?あ、海未ちゃんも変わったよねっ。昔よりもキラキラしてるっ」

海未「キラキラ…?」

穂乃果「…ねえねえ、ねえねえ!」

海未「?」

穂乃果「穂乃果!穂乃果は!?」

海未「穂乃果は…変わりませんね」

穂乃果「えっ!?」

ことり「そうだねっ…穂乃果ちゃんは穂乃果ちゃんだよっ」

穂乃果「う、うそっ!?」

凛「たしかに、ずっとそのままかも?」

真姫「…でも、そこがいいのよ」

穂乃果「そこが…?」

絵里「…ええ、そうね」

花陽「うん…誘ってくれたのが穂乃果ちゃんだったからこそ、私も一歩前に踏み出せたんだと思う」

にこ「あんたはあんたでなきゃダメなのよ」

希「そうそう。μ`sのリーダーとしてね」

穂乃果「…うぅっ」グスッ

海未「ほ、穂乃果!?」

穂乃果「な、なんか泣けてきちゃった…ありがとうみんな…」

真姫「…ちょっと、湿っぽくしないでよ」

穂乃果「あはは、ごめんごめん…」

にこ「…ま、丁度いいし、これで話は終わりにしましょ」

絵里「そうね。このままだと、ずっと話しちゃいそう」

希「楽しいからね。ふふっ」

真姫「…ふふっ」

穂乃果「それじゃ…みんな、おやすみなさいっ」


「「おやすみなさい」」

15: 2016/03/30(水) 03:49:17.80 ID:OPbYQb/W.net
ゴソゴソ


真姫「ん…?」


希「…」トテテテッ


真姫「…希?」



真姫(…後をつけてきちゃった…屋上に何の用なのかしら)


希「…」


真姫(…月を見てるのね)

真姫(…それにしても、寒いわね…私も毛布持ってくればよかっ…たっ…)


真姫「っくちゅんっ――」


真姫(…し、しまった!希にバレ――――って…あれ?希が居な…)


ガチャ


真姫「ひゃぁぁっ!?」ドサッ

希「おっと…ごめんごめん。まさか転んじゃうとは」

真姫「…希、どうしたのよ?こんな時間に」

希「ん~…ちょっと、センチメンタリズムに浸りたくなって」

真姫「何よそれ…」

希「ま、それはいいよっ。戻ろっか」

真姫「…いえ」

希「?」

真姫「私も少し、月を見ていくわ」

16: 2016/03/30(水) 03:50:16.81 ID:OPbYQb/W.net
真姫「…綺麗ね」

希「うん。とっても綺麗や」

真姫「…」

希「…なあ、真姫ちゃん?」

真姫「何よ?」

希「ちょっとこっち来て?」

真姫「…?」

希「…ワシワシMAXやで~っ!」

真姫「い、いやぁあああっ!!」

希「うん、ちょっと大きくなったなぁ、真姫ちゃん」

真姫「…発展途上だったからね」

希「おっ…覚えてるん?」

真姫「当たり前でしょ…初対面の人間に胸揉まれたら、誰だって覚えてるわよ」

希「そっか」

真姫「…」

希「…」

17: 2016/03/30(水) 03:50:54.76 ID:OPbYQb/W.net
希「…ねえ、真姫ちゃん」

真姫「ん?」

希「うち…μ`sに入って本当によかった」

真姫「…私もよ」

希「…明日で…μ`sともお別れ…だ、なんて…寂しい、なぁ」

真姫「…ええ」

希「本当はお別れなんて、したくないけど…」

真姫「…」ツカツカ

希「…真姫ちゃん?」

真姫「…そろそろ戻るわ、私」

希「ん、そっか…じゃあ、うちも戻ろうかな」

真姫「…明日、晴れるといいわね」

希「うん」

18: 2016/03/30(水) 03:51:47.69 ID:OPbYQb/W.net
チュンチュン


真姫「…ん、ん~」

真姫「…いい天気ね」

真姫「…みんな、ほら、起きなさい…朝よ…」

絵里「…ん~…おばあさま…」

真姫「…」

海未「…」ムクッ

真姫「」ビクッ

海未「…おはようございます、真姫」ムスッ

真姫「え、ええ、おはよう」

海未「顔を洗ってきます」

真姫「いってらっしゃい」

真姫(寝起きの海未はやっぱり怖いわ)

希「…おはよ、真姫ちゃん」

真姫「希…おはよう」

希「ちゃんと寝れた?」

真姫「ええ、大丈夫よ。あなたこそ大丈夫?」

希「うん、ばっちり。うちも顔洗ってくるね」

真姫「そう」

穂乃果「雪穂!このお茶あっつ…あれ?」

真姫「…おはよう、穂乃果」

穂乃果「あ、真姫ちゃん…おはよ~」

凛「なに~…?」ゴシゴシ

穂乃果「あ、凛ちゃん!おはよ!」

凛「穂乃果ちゃん…おはよ~」

穂乃果「…ん~っ!」パンパンッ


穂乃果「よしっ、目覚めた!今日も一日がんばろーっ!」ドドドド

凛「おーっ…」フラフラ


真姫「…朝から元気ね」

19: 2016/03/30(水) 03:53:08.48 ID:OPbYQb/W.net
にこ「…」zzz

真姫(…このきゅうりって食べられるのかしら?)ヒョイ

真姫「にこちゃん、あーん」

にこ「…むにゃ…あーん」

真姫「はい」ポイッ

にこ「ん、んぐんぐ…」ポリポリ

真姫「ぶっふ…」

にこ「!!!」ブーッ

真姫「お、おはようにこちゃん」

にこ「…口にきゅうり入れたのあんた?」

真姫「り、凛かしら」

にこ「凛のやつ…!」ダッ

真姫「…ぷふっ」

絵里「ん~…」

真姫「…絵里」

絵里「…おばあさま…?」

真姫「…絵里、早く起きなさい…でないと海苔を食べさせるわよ…」

絵里「のりはいやぁ…」

真姫「…なんで海苔嫌いなの?」

絵里「おばあさまは…すき…」

真姫「…」ムニッ

絵里「むにゃっ…!?」

真姫「おはよう、絵里」

絵里「…真姫、おはよう」

真姫「早く顔洗ってきたら?酷い顔になってるわよ」

絵里「えっ、うそ…」

20: 2016/03/30(水) 03:53:50.76 ID:OPbYQb/W.net
真姫「…さて、あとは…」


ことり「zzz…」ギューッ

花陽「zzz…」ギューッ


真姫(…すごく柔らかそう…)

真姫(…いい匂い)スンスン

真姫「…」プニッ

花陽「んっ…♡」

真姫「」オドオド

花陽「んぅ…zzz」

真姫「…」ホッ


真姫「…」サワサワ

ことり「ふぁ…♡」

真姫「」ビクッ

ことり「ん~…?」

真姫「あ、お、起こしちゃったかしら」

ことり「真姫ちゃん…?どうしたの…?」

真姫「あ、いや、その…ゴミ。そう、ゴミがついていたから、取っただけよ」

ことり「そっか…ありがとう……?」

ことり「あ、花陽ちゃん、起きて…ことり、起きれないよぉ」

花陽「んぅ…?」パチッ

ことり「おはよう、花陽ちゃん」

花陽「…あ、おはよう、ことりちゃん…真姫ちゃんも」

真姫「ええ、おはよう」

花陽「…今日も、がんばろうね…」

真姫「ええ、そうね」



真姫「明日のために」

21: 2016/03/30(水) 03:55:45.39 ID:OPbYQb/W.net
真姫「ちょっと、あそこのダンボールに入れといた衣装は?まさかまた冷蔵庫に…」

穂乃果「あ、中庭で乾かしてるよ!」

真姫「…そう」

凛「あ、ああーっ!鳥さんが!いたずらしてるにゃ!」


絵里「ことり、どう?」

ことり「うんっ、絵里ちゃんのおかげでバッチリ!」

絵里「よかった…間に合いそうね」

ことり「ごめんね…ギリギリまで調整しちゃって」

絵里「ううん…私たちがスクールアイドルとして着る、最後の衣装だものね。大事にしないと」

希「おっ、できたん?」

ことり「うん、もう少しだよっ。あとは…あれ?」

希「?」

ことり「あ…リボン、家に忘れて来ちゃった…!」

絵里「大変…取りにいかないと」

ことり「でも、ここの仕上げ、絵里ちゃん一人じゃ大変だし…お母さん、体調が悪いって言ってたし…」

希「あ、じゃあうちが行ってこようか?」

ことり「いいの?」

希「うん。行けばわかるかな?」

ことり「うんっ、ことりの部屋の机に置いてある、ピンク色の箱に入ってるから…お願いしてもいい?」

希「ええよ、うちに任しとき~」


海未「お待たせしました!」

花陽「ご飯できたよぉ~!」

にこ「ほら、区切りのいいとこでお昼にしましょ」

希「おっと…どうしよっか?」

ことり「…じゃあ、ご飯食べてからお願いしますっ」ペコリ

希「お願いされま~すっ」

22: 2016/03/30(水) 03:56:55.09 ID:OPbYQb/W.net
真姫(今日は3月30日)

真姫(ファイナルライブを翌日に控えた私たちは、わがままを言って音ノ木坂で一日過ごさせてもらうことにした)

真姫(明確に言えば、29日の夜からなんだけれど)

真姫(…で、どうしてここかって言うと)


真姫(ここが、一番の思い出の場所だから)


真姫(…そんなこんなで、明日の準備をしていたら、もう今日という一日も、半分を切っていた)



穂乃果「あっ、そうだ!今日は練習どうするんだっけ?」

海未「そうですね…明日の為にも、ゆっくり身体を休めた方が…」

凛「えーっ、でも凛、ちょっと身体動かしたいなぁ~」

絵里「私も賛成。なまっちゃうと困るからね」

海未「…そうですね。では、軽めのメニューを考えておきます。希が帰ってきたら始めましょう」

23: 2016/03/30(水) 03:58:07.22 ID:OPbYQb/W.net
希「ことりちゃん家行くの、もしかして初めてかな~…うーん、1年一緒に居て1回って、悲しいなぁ」ピンポーン

理事長「は~い…」ガチャ

希「あ、こんにちは~」

理事長「東條さん…ええと…どうかしたの…?」

希「ちょっとことりちゃんの忘れ物を、代わりに取りに来ました」

理事長「…わかったわ、あがって…」

希「お邪魔しま~す」



希「あの、体調大丈夫ですか?」

理事長「え、ええ…その、ここがことりの部屋よ。どうぞ」ガラッ

希「…っ!?」

理事長「…な、なに、これ…!?」



希(そこでうちが見たんは、まるで何年も立ち入られていないような廃墟…みたいな、ことりちゃんの部屋だった)

24: 2016/03/30(水) 03:58:59.07 ID:OPbYQb/W.net
希(そこらじゅうに蜘蛛の巣が張られているし、棚に置かれたお菓子は異様な色になっていて、虫がたくさんたかっている)

希(ベッドやカーテン、カーペットもカビや虫食いでボロボロ)

希(唯一、テーブルの上にあるピンク色の箱だけは、綺麗な状態で置いてあった)



希「な…なんなん、これ…」

理事長「あ…あぁ…」ガタガタ

希「…理事長?理事長!」

理事長「やっぱり…気のせいじゃないような…」

希「どうしたんですか!?」



理事長「…東條さん、私…何日くらいことりと会ってないのかしら…?」


希「は…?」

25: 2016/03/30(水) 04:00:23.77 ID:OPbYQb/W.net
理事長「お茶でよかったかしら…」

希「あ、ありがとうございます……それで、その…どういうことですか?」

理事長「…今日は、3月30日、よね」

希「はい」

理事長「あなたたちが泊まり込みの許可を取りに来たのは、昨日…3月29日」

希「ええ…」

理事長「だから、ことりと会っていないのは一日だけ、の、はずなんだけど…」

希「…?」

理事長「私、何年もことりに会っていないような気がして…」

希「…」

理事長「…ねえ、東條さん…デジャヴって、知ってるかしら…」

希「え、ええ。あの、体験したことがないのに体験した気がする、っていう…」

理事長「そう…私は今、それを体験してるの…東條さん、あなた、随分前にも、もことりの忘れ物、取りに来なかった…?」

希「は…?」

理事長「…東條さん、明日は何の日…?」

希「え、ええと、明日はファイナルライブ、です…」

理事長「そう…明日はファイナルライブ…そんな台詞を、私、何度も何度も聞いたような気がするの…」

希「…」

理事長「…最近、私、記憶があいまいでね…?昨日…いや、もう、数時間前に何をしていたかも、よく覚えていないの…」

希「…えっと、真姫ちゃんのお母さんが来てたんじゃないんですか?」

理事長「ええ、来てたわ…たぶん…」

希「たぶんって…」

理事長「…ねえ、東條さん…私、これから少しおかしなことを言うわ…」

希「…?」


理事長「もしかして…私、同じ日を何度も何度も、気の遠くなるような時間、過ごしているんじゃないかしら…」

27: 2016/03/30(水) 04:03:05.30 ID:OPbYQb/W.net
希「…それって」

理事長「なんでしょう、浦島太郎、みたいな感じかしら…」

希「…まさか、そんなわけ…」

理事長「え、ええ、そう、そうよね…そんなわけない、っていうのは、わかっているの…でも…」

希「…」

理事長「…東條さん…東條さんは、どうなのかしら…」

希「うち?」

理事長「ええ…あなたは…思い当たることはない…?」

希「そんなこと…だって、昨日は1日中、学校に朝から…いた…し…」

理事長「…?」

希「…あ、あぁっ…!?昨日…!?」


希「そうや…うちらが1日中学校に居たのは、3月30日のはず…で、今日は、30日…昨日は29日のはずや…」

理事長「…」

希「なんで気づかなかったんや…!」




希(その後も理事長と話をして、泊まり込みをいったん解除、夜は全員家に帰らせてみよう…と、いうことになった)

希(学校に戻って、夜は帰らないといけない、ということを伝えると、みんなぶーぶーと不満を言ってた)

希(まあその辺は、不審者が云々とかでなんとかうちが誤魔化して、みんなを納得させた)

28: 2016/03/30(水) 04:04:35.33 ID:OPbYQb/W.net
希(そして、夜)



穂乃果「…とにかく、今日はこれでいったん解散だけど!みんな明日は頑張ろうねっ!」

海未「ええ!」

ことり「うんっ!」

絵里「帰ったらみんなでもう一度話しましょう。電話かけるわ」

にこ「りょーかい」

凛「それじゃあ、凛たちはここで。行こっ、かよちん、真姫ちゃん!」

真姫「ええ…それじゃあ」

花陽「また明日ね~」フリフリ

真姫「迷惑な不審者よね、本当に…」ムッスー

凛「あ・れ・れ~?真姫ちゃん、寂しいのかにゃ?」

花陽「また泊まりに来る?」

真姫「ヴェエエ!?そ、そういうんじゃないわよ!」


海未「では、私たちもここで…」

穂乃果「あーあー、このまま海未ちゃん家泊まろっかな~」

海未「ダメです!というか、ちゃんと前を向いて歩いてください!」

穂乃果「えー、別にいいじゃ…うわぁっ!?」

カランコローン

穂乃果「いったた…空き缶踏んじゃった」

海未「言ったそばから…」

ことり「ことりも海未ちゃんの家、泊まりたいな~…」

海未「…だ、ダメですっ!」

ことり「海未ちゃん…おねがぁい!」キラキラ

海未「うっ…だ…だめです…っ…!」


希「あはは…またな~」フリフリ

29: 2016/03/30(水) 04:07:03.35 ID:OPbYQb/W.net
にこ「…私たち三人で帰るって、初めてかしら」

希「うん…初めてやね」

絵里「…高校は3年間もあったのに、これっきりなんて…なんか、悲しいわね」

にこ「…そうね」

希「…もっとうちらが早く仲良くなれてたら、もっとこういう機会もあったはずなんやけどね」

にこ「…入部断ったのは誰だったかしらね」

希「あっはは、まだ覚えとった…?」

にこ「当たり前でしょ」

絵里「…私の知らないところで、二人が繋がっていたのね…」

希「…ごめんな、絵里ち。にこっちとは実は、絵里ちも知らない深い関係が…」

にこ「無いから…」

希「あははっ…」

絵里「…ふんだ。いいわよ、どうせ昔の私は堅物だったわ…よっ!」カランコローン

にこ「あら、珍しく絵里が拗ねてるわよ」

希「ほんとだ、珍しい。空き缶なんか蹴っちゃっ…て…?」

絵里「…?どうしたの?」

希「…その空き缶、さっき穂乃果ちゃんが踏んだのと違う?」

絵里「まさか…偶然でしょう…って…」

にこ「…ちょっと待って…?ここ、さっきも通った、わよね…」

希「…」

絵里「えっ…」

31: 2016/03/30(水) 04:08:50.95 ID:OPbYQb/W.net
真姫「…何よ、これ…なんでたどり着けないわけ…?」

凛「かよちん…凛たちの家、こっちだよね…?」

花陽「う、うん…」

真姫「…ルートを変えてみましょう」



ことり「…さっきから、同じ道をぐるぐる回ってる、よね…」

穂乃果「海未ちゃん!なんで戻ってきたの!?」

海未「私ですか!?」

穂乃果「うー…この辺は穂乃果の庭なのに…」



真姫「…着いた」

凛「真姫ちゃんの家には帰ってこれるんだ…」

真姫「…ここから、もう一回凛たちの家に向かうわよ」

花陽「うん…」



にこ「…ここを右…のはずよね」

希「うん…」

絵里「いったいどういうことなの…?」

希「何度やっても、どういうルートをたどっても、うちらの家にたどり着けない…」



凛「ダメだにゃ~…」

花陽「何回歩いても、真姫ちゃんの家か、元来た道にしか…」

真姫「…みんなに連絡してみましょう」

33: 2016/03/30(水) 04:10:53.46 ID:OPbYQb/W.net
真姫(みんなに連絡を取ってみた結果、たどり着けたのは私の家だけみたい)

真姫(仕方がないから、みんなうちに泊まっていくことになった)


真姫ママ「真姫ちゃんがみ~んな連れてくるなんて…」ウズウズ

真姫「不可抗力なんだからっ!」

海未「突然申し訳ありません、お世話になります…」

真姫ママ「いいのよ!大丈夫、気にしないでね!」

真姫「…もう」

希「ごめん真姫ちゃん、ちょっと電話してくるわ」

真姫「…そう?わかったわ」



希「…出ない」

希(理事長…大丈夫かな…)



「こんばんは」



希「…?」

34: 2016/03/30(水) 04:12:21.13 ID:OPbYQb/W.net
「あなた、こんな時間に女子高生が一人だなんて危ないわよ」


希「…あなたは?」


「ただの通りすがりのおせっかいよ。用が無いなら早くお家に帰ったほうがいいわ」

希「はぁ…」

「…そうだ。ねえ、あなた」

希「?」

「浦島太郎って知ってる?」

希「…ええ」

「じゃあ、もし…竜宮城に行ったのが、浦島太郎だけじゃなくて、村人全員だったら…
それでも、街は数百年の時が経っていたのかしら。玉手箱を開けると、全員が歳をとっていたのかしら」

希「…何が言いたいんですか?」

「時間って、人間の意識の産物なのよ。確かなのは、今ある"現在だけ"」

希「…あなた、何か知って…」


「だから、色々考えなくていい。あなたたちは、与えられた今を生きていけばいいの」



ヒュオォォォォ



希「うっ…!?」


希「…消えた」


希(…いったい何が言いたかったんやろ…?)

35: 2016/03/30(水) 04:14:13.50 ID:OPbYQb/W.net
絵里「ちょっ、ちょっとことり!やめなさ…」

ことり「この前、なんでもしていいって言ってたよ、絵里ちゃん…ことり、絵里ちゃんをめいっぱい見てみたかったんだぁ…!」

穂乃果「おぉ、なんか…ことりちゃんがやばい!」

花陽「はわわわわわわわわ…」チラッ

凛「???」

真姫「ちょっと!うるさいわよ!」

希「ただいま…」

真姫「あ、希…おかえり。もういいの?」

希「うん…」

真姫「…ねえ、ちょっと!ママもパパもいるんだからっ!」

海未「…希」

にこ「ちょっといいかしら」

希「…海未ちゃん、にこっち」




希「話って…」

海未「今私たちが置かれている状況は…明らかに、常軌を逸しています」

希「…うん」

にこ「猫が喋って、道がループして…私たち、夢の中にでもいるのかしらね?」

希「…さあ」

海未「もし目が覚めたら、また私たちは学校に向かうのでしょうか」

希「本来ならアキバドームに行くところやけど…」

にこ「…とりあえずは、今夜を過ごしてみないと分からないわね」

希「うん…」

36: 2016/03/30(水) 04:16:55.80 ID:OPbYQb/W.net
チュンチュン


真姫「…ん、ん~」

真姫「…今日は雨ね。少し暑かったから、降ってくれて正解かもね」

真姫「…みんな、ほら、起きなさい…朝よ…」

絵里「…ん~…おばあさま…」

真姫「…」

海未「…」ムクッ

真姫「」ビクッ

海未「…おはようございます、真姫」ムスッ

真姫「え、ええ、おはよう」

海未「顔を洗ってきます」

真姫「いってらっしゃい」

真姫(昨日よりもさらに怖いわね)

希「…おはよ、真姫ちゃん」

真姫「希…おはよう」

希「ちゃんと寝れた?」

真姫「え?…ええ。あなたこそ大丈夫?」

希「まあまあ、かな。うちも顔洗ってくるね」

真姫「場所わかる?」

希「うん、大丈夫~」

穂乃果「雪穂!これ餡子入ってんじゃ…あれ?」

真姫「…おはよう、穂乃果」

穂乃果「あ、真姫ちゃん…おはよ~」

凛「なに~…?」ゴシゴシ

穂乃果「あ、凛ちゃん!おはよ!」

凛「穂乃果ちゃん…おはよ~」

穂乃果「…ん~っ!」パンパンッ

穂乃果「よしっ、目が覚めた!今日も一日がんばろーっ!」ドドドド

凛「おーっ…」フラフラ

真姫「…朝から元気ね」

37: 2016/03/30(水) 04:18:19.01 ID:OPbYQb/W.net
にこ「…」ムクリ

真姫「おはよう、にこちゃん」

にこ「…ええ、おはよう」

真姫「どうしたの?」

にこ「今日は何月何日だったかしら?」

真姫「…何言ってるの?今日は3月さんじゅ…」

絵里「おばあさまっ!?」ガバッ

真姫「…絵里」

絵里「…あら、真姫、にこ…おはよう」

にこ「…おはよう」

真姫「早く顔洗ってきたら?結構酷いわよ」

絵里「えっ、うそ…」

にこ「…私も行ってくる」

真姫「…さて、あとは…」


ことり「zzz…」ギューッ

花陽「zzz…」ギューッ


真姫(…やっぱり、すごく柔らかそうね)

38: 2016/03/30(水) 04:18:50.47 ID:OPbYQb/W.net
真姫(…いい匂い)スンスン

真姫「…」プニッ

ことり「んぁ…♡」

真姫「」キョロキョロ

花陽「ぅ…zzz」

真姫「…」ホッ


真姫「…」サワサワ

花陽「ぴゃ…♡」

真姫「」ビクッ

花陽「ん~…?」

真姫「あ、お、起こしちゃったかしら」

花陽「真姫ちゃん……?」

真姫「あ、いや、その…ゴミ。そう、ゴミがついていたから、取っただけよ」

花陽「そっか…ありがとう」ムクリ

ことり「ふあぁ…」

花陽「あ、ことりちゃん…おはよ~」

ことり「おはよう真姫ちゃん、花陽ちゃん」

真姫「ええ、おはよう」

ことり「…今日も、がんばろうね…」

真姫「ええ、そうね」



真姫「…明日のために」

39: 2016/03/30(水) 04:20:11.51 ID:OPbYQb/W.net
「「お世話になりましたー!」」

真姫ママ「いいのよ~、またいつでもいらっしゃ~い」

真姫「…じゃあ、行ってきます」

真姫ママ「いってらっしゃ~い」フリフリ




真姫「ちょっと、あそこのダンボールに入れといた衣装は?まさか校庭に…」

穂乃果「あ、さっき畳んでおいたよ!」

真姫「…ならいいわ」

凛(穂乃果ちゃんの着替えが紛れ込んでるにゃ…)


絵里「ことり、どう?」

ことり「うんっ、絵里ちゃんのおかげでバッチリ!」

絵里「よかった…間に合いそうね」

ことり「ごめんね…ギリギリまで調整しちゃって」

絵里「ううん…私たちがスクールアイドルとして着る、最後の衣装だものね。大事にしないと」

ことり「うん、あとは…」

希「なあ、ことりちゃん」

ことり「?」

希「今日は忘れ物とか、ない?」

ことり「うん、今日は大丈夫だよ。昨日希ちゃんに持ってきてもらったから」

希「…そっか」



海未「…お待たせしました」

花陽「ご飯できたよぉ~!」

にこ「…さっさと食べましょ」

40: 2016/03/30(水) 04:23:07.15 ID:OPbYQb/W.net
ことり「おいしかったぁ…」

穂乃果「にこちゃんはやっぱりいいお嫁さんになるね!」

にこ「…それはどうも」


花陽「…今日は雨だね」

絵里「そうねー…荷物の運搬に支障が出ないといいんだけど」

凛「もういっそ、ドームがどかーんって隣にできちゃったらいいのにね!」

にこ「何言ってんのよ」

真姫「…ま、それなら楽でいいかもね」

海未「真姫まで…」

希「…」





海未「…今日も、それぞれの自宅にはたどり着けませんでしたね」

にこ「…絶対、現状打破するからね」

希「…うん」

にこ「…そのためにも、まずは…」

42: 2016/03/30(水) 04:25:26.47 ID:OPbYQb/W.net
「「お世話になりましたー!」」

真姫ママ「いいのよ~、またいつでもいらっしゃ~い」

真姫「…じゃあ、行ってきます」

真姫ママ「いってらっしゃ~い」フリフリ


にこ「ねえあんたたち…おかしいと思わないの?」

穂乃果「どうしたの?にこひゃん」

ことり「穂乃果ちゃんっ、口の中にご飯入れたまま喋っちゃだめっ」

穂乃果「んぐっ…ふぁーい」

凛「どうしたの?お昼ご飯ならとっても美味しいよ」

絵里「にこっていいお嫁さんになりそうよね…」

にこ「そ、そういう話じゃなくて!…昨日の凛の言葉、覚えてるわよね」

真姫「…なによ、いきなり」

花陽「雨降らないといいね、って…?」

にこ「それは絵里が言った台詞よ。…まあ、今日晴れてるから、それも関係あるけど」

凛「…あ、もしかして…アレのこと?」

にこ「そうよ」


にこ「音ノ木坂の隣にアキバドームが建った」


真姫「…あぁ、そのこと」

海未「そのことって…おかしいと思わないんですか!?」

真姫「ええ」

にこ「なっ…」

真姫「だってもう、とっくに色々おかしいじゃない」

にこ「っ…」

真姫「気付いてない人なんていないでしょ…」

花陽「…」

ことり「…」

穂乃果「…」モグモグ

絵里「…」

43: 2016/03/30(水) 04:27:51.29 ID:OPbYQb/W.net
真姫「…でも、おかしいからってどうするの?」

海未「それは…」

絵里「…そうね。私たちは確かに、終わらないライブ前日を過ごしている…でも、どうやって抜け出すの?」

真姫「抜け出す方法がわからないんじゃ、私たちが何をしても無駄じゃない」

にこ「だからって、このまま毎日ダラダラするわけ!?そんなこと…」

穂乃果「いいんじゃない?」

にこ「…穂乃果?」

穂乃果「…だって、楽しいもん」

海未「穂乃果…」

穂乃果「…私たちが今まで一生懸命用意してきた、集大成のライブをできないのは、悲しいけど」

にこ「そうよ…こんなことしてる場合じゃなくて、私たちはライブをっ…」

穂乃果「でも…それでも、だよ?…みんなと、お別れしなくて済むから…」

にこ「…あんた」


希「…うんうん、皆の考えはわかった」

絵里「希…居たのね」

希「えっ…あ、うん、皆の話聞きたいから静かにしてたんよ」

真姫「…で、わかったから何よ?」

希「…えっと、一応、現状維持でいい派は…もし解決の方法が分かれば、協力してくれるんかな」

花陽「なにか方法があるの?」

希「…少しだけ、試してみたいことがあるんよ。…とりあえず、一回帰って準備をしよか」

44: 2016/03/30(水) 04:32:25.90 ID:OPbYQb/W.net
絵里「うぅ…やっぱり夜の学校って不気味ね…」

花陽「…原因って、本当に音ノ木坂なのかなぁ?」

絵里「希はそう言っていたわよね…」

ことり「…あっ、あれ…!?」

絵里「…?」

ことり「音ノ木坂って…4階建て、だったよね…」

絵里「…何言ってるのことり?今も、いち、に、さん…はっ…!?」

花陽「ずっとここで過ごしてたはずなのに…」

絵里「どうして全然気づかなかったのかしら…」

ことり「あっ、電気が点いたり消えたりしてる…」

花陽「窓もぱかぱか開いたり閉じたり…」

絵里「…たしかに、ドームが建ったり、こんなことが起こったり…おかしいのは間違いないわね」

ことり「みんな…大丈夫かな…」

絵里「…今の私たちにできることは、ここにクッション…というかトランポリンを置いて、みんなの帰還を待つことだけよ」ギュッ


ことり「…絵里ちゃん」

絵里「何かしら」

ことり「暑いよ…」

45: 2016/03/30(水) 04:34:16.60 ID:OPbYQb/W.net
海未「希と真姫は2階、穂乃果とにこは1階を調査しましょう。凛は私と3階、屋上に」

凛「了解にゃ!」

にこ「わかったわ」

希「みんな、気を付けてな」

海未「希こそ。身の危険を感じたらすぐ逃げてくださいね」

にこ「…絶対、何か掴んで帰るわよ」

穂乃果「が、がんばる!」

真姫「…にこちゃん」

にこ「…何よ?」

真姫「どうしてそんなに…いや、やっぱりなんでもないわ」

にこ「…そう?」

真姫「ええ…気を付けて」

希「…」

46: 2016/03/30(水) 04:41:01.69 ID:OPbYQb/W.net
穂乃果「…うぅ、やっぱり夜の学校って怖いね…」

にこ「…そ、そうかしら」

穂乃果「…にこちゃん、くっついていい?」

にこ「い、いい、いいわよ…そ、その代わり、絶対離れるんじゃないわよ…」

穂乃果「…」

にこ「何よ」

穂乃果「なーんだ、やっぱりにこちゃんも怖いんじゃん」

にこ「ばっ…そ、そんなことないわよ!怖かったら夜の学校の調査なんて、進んでやったりしないわよ!」

穂乃果「ほんとに~?」

にこ「…本当よ」

穂乃果「そっか。ふ~ん」

にこ「何よ」

穂乃果「よ~しよしよし、怖くないですよ~」ナデナデ

「ちょっ、穂乃果ちゃん何するのぉ~?」

穂乃果「へ?」

にこ「何やってんの?」

穂乃果「え?」

「穂乃果ちゃん、ニコのこと子ども扱いしないでほしいニコ~♡」

穂乃果「え、にこちゃん?」

にこ「私はこっちだけど」

穂乃果「え?え?」

「?」

にこ「…」

穂乃果「…にこちゃん?」

「なぁに?」

にこ「なによ…」

穂乃果「…」


「「ぬぅわあああああああああああああああああっ!!!!!」」

47: 2016/03/30(水) 04:44:03.05 ID:OPbYQb/W.net
海未「凛、大丈夫ですか?」

凛「?」

海未「怖くありませんか」

凛「うん、大丈夫だよ」

海未「…そうですか」

凛「海未ちゃんも大丈夫?」

海未「ええ。このくらいは…」

凛「…海未ちゃん」

海未「?」

凛「…凛たち、どうなっちゃうんだろうね…このまま、ずっとみんなと一緒にいるのかな」

海未「…どうでしょう」

凛「…凛はそれでもいいけど、でも、良くないとも思うにゃ」

海未「凛…」


グラグラ


海未「な、なにが…地震…!?」

凛「う、海未ちゃん!?なんで天井に立ってるの!?」

海未「え?…あっ!?り、凛、どうなっているのですか!?」

凛「凛が聞きたいにゃーっ!!」


バタンバタンバタンバタン


凛「窓もドアも、開いたり閉じたり…」

海未「…凛、いったん移動しましょう…あまりにも不気味です」

凛「うんっ…!?う、海未ちゃん!降りる階段が無いよ!」

海未「なっ…!?」

凛「あとは屋上の階段しか…」

海未「…仕方ありません。屋上に向かいましょうっ」ダッ

48: 2016/03/30(水) 04:44:56.63 ID:OPbYQb/W.net
希「…ごめんな、嫌って言ってたのに連れて来ちゃって」

真姫「…いえ」

希「外で待っててもよかったのに」

真姫「…」

希「…ねえ、真姫ちゃん」

真姫「…何よ」

希「いや…何も起こらないとええな」

真姫「…ええ」

希「…」

真姫「…希」

希「?」

真姫「いつだったか言ってたわよね。お別れなんてしたくないって」

希「…言ってたけど」

真姫「…じゃあ、なんで原因を突き止めようとしているの?」

希「…それは…このままじゃダメだと、思ったから…」

真姫「私たちの今までの努力が無駄になるから?」

希「それもあるけど…」

真姫「…希にしては随分煮え切らない答えね」

希「…真姫ちゃん、もしかして」


チカチカチカ


希「!」

真姫「…電気が」

希「…何か起こったね」

真姫「ええ」

希「…真姫ちゃん、帰ったらゆっくり話させてな」

真姫「…わかったわ」

49: 2016/03/30(水) 04:47:12.93 ID:OPbYQb/W.net
海未「…屋上は何もないようですね」

凛「…空、綺麗だね」

海未「ええ…まるで宇宙のようです」

凛「…海未ちゃん!あれ見て…っ」

海未「…なっ、柵に…女の子…!?」

凛「ね、ねえ!そんなところにいちゃ危ないよ!」


「…ふふっ」ピョーン


凛「と、飛び降りちゃった!」

海未「…なんだったのでしょうか」

凛「さあ…」

海未「…それにしても、下の物音、落ち着きましたね」

凛「うん…」

海未「降りても大丈夫そうでしょうか」

凛「…?」

海未「…凛?」

凛「…や」

海未「や?」

凛「矢だ…」

海未「矢?」

凛「ドアに矢が刺さってる…入ってきたときは気づかなかったけど」

海未「…趣味が悪いですね」

凛「…なんか、9本っていう所もちょっといやだね…しかも、1本折れてる」

海未「凛。…帰りましょう」

凛「…うん」

50: 2016/03/30(水) 04:48:40.46 ID:OPbYQb/W.net
にこ「はぁ、はぁっ…な、なんでわたしがっ…」

穂乃果「にこちゃん、本当に忍者だったのっ!?」

にこ「あれは撮影用の衣装でしょうがっ!!っていうかっ、そんなこと言ってないでもっと速く走りなさいよっ!!」

穂乃果「わかってる~っ!!!」

にこ「…見えた!昇降口!」

穂乃果「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」ドドドドドッ

にこ「ど、どこにそんな力…あっ!?」コケッ


にこ「いっつつ…」


にこ「…ち、ちょっと、穂乃果ぁ!お、置いてかないでよぉーっ!!」





「…」ニコッ

51: 2016/03/30(水) 04:51:12.51 ID:OPbYQb/W.net
希「…にこっち!」

真姫「にこちゃん!」

にこ「…いたたた」

希「大丈夫!?」

にこ「だ、大丈夫~…まったくもう、穂乃果ちゃんってばニコのこと置いていくんだもの…!」

希「ん?」

真姫「何かあったの?」

にこ「そうなの、ニコがもう一人出てきて…」

希「もう一人、にこっち…?」

にこ「そう、もうどっか行っちゃったんだけどね~…」

真姫「…」


凛「あっ、真姫ちゃんたちにゃ!」


希「や、そっちも無事みたいやね」

海未「ええ、なんとか…おや?穂乃果は?」

にこ「先に行っちゃったニコ…」

海未「そうでしたか」

凛「凛たちも早く帰ろう…?」

海未「ええ…」

52: 2016/03/30(水) 04:52:16.24 ID:OPbYQb/W.net
絵里「…ねえ」

希「どしたん、絵里ち?」

絵里「…まだ、帰れないのかしら」

ことり「…家に?」

絵里「ええ…亜里沙のことも心配だし…」

真姫「…じゃあ、タクシーでも使ってみる?」

穂乃果「た、タクシー…!」

海未「…そうですね。歩いて行って駄目だったのなら、乗り物を使ってみる…というのもありかもしれません」

希「色々、試してみよか…」

にこ「えぇ~、でももう、ニコ疲れちゃった…」

花陽「でも、にこちゃんもこころちゃんたちのこと、心配じゃないの?」

にこ「それは心配だけど…また明日でいいんじゃない…?どうせ、明日も今日なんだろうから」

希「…」

海未「いえ」

凛「海未ちゃん?」

海未「今日のうちにできることはしておきましょう」



真姫「まずはタクシーね。この人数だから、2台呼んでおいたわ」

穂乃果「家には電話できないのに、タクシーは呼べたね…」

海未「…私と真姫、希とにこはこちらに乗ります」

絵里「…最初に私の家でいいの?」

希「ええんやない?結局誰かの家に行くのは変わらないから」

53: 2016/03/30(水) 05:11:30.41 ID:OPbYQb/W.net
海未「すみません、このメモの住所まで」


真姫「…海未、なんでこの組み合わせにしたわけ?」

海未「意味は特にありませんよ。なんとなくです」

希「…」

にこ「…みんな、顔怖いよ?」

希「にこっちは黙ってて」

にこ「…」

運転手「…あら、ケンカ?」

海未「…すみません、騒がしくて」

運転手「いいのよ、別に。そんなことできるのも、若いうちだけだから」

希「…あっ!?あなたっ…」

運転手「着いたわよ。お代はいらないわ」

海未「え?」

にこ「…あれ?ニコたち、いつのまに降りたの?」

希「…」

海未「…というか、ここは」

真姫「…タクシーに乗った場所、ね」

穂乃果「…あれ?」

ことり「ここって…」

花陽「タクシーに乗った場所、だよね…」

凛「あ、真姫ちゃんたちも…」

絵里「…つまり、タクシーはダメってわけね」

54: 2016/03/30(水) 05:12:00.90 ID:OPbYQb/W.net
凛「…次は電車?」

海未「ええ…私たちの家は電車を使うような場所にはありませんが…」

希「ルートの変更っていうか、スタート地点の変更みたいな意味やね」

穂乃果「なるほど…」

海未「ここ御茶ノ水から乗って、秋葉原で降ります」


凛「こんな時間にアキバから電車に乗るなんて、新鮮だにゃ~」

花陽「9人みんなで電車に乗るの、いつぶりかなぁ」

ことり「海外に行ったときかな?」

穂乃果「やっぱり楽しいねぇ、ふふっ」

海未「呑気ですね…」


『次は~御茶ノ水~』


希「…!」

55: 2016/03/30(水) 05:14:23.14 ID:OPbYQb/W.net
希「…結局、電車もバスも駄目やったね」

海未「八方塞がりですか…」

真姫「…まだ、一つだけあるわ」

海未「他に…?」

真姫「…ちょっとついてきて」



海未「なっ…へ、ヘリコプターですか!?」

真姫「…」

にこ「すっご~い!真姫ちゃん、ヘリ持ってるの!?」

真姫「私のじゃないけど…」

穂乃果「かっこいい~…!」

希「真姫ちゃん、なかなか大胆やね」

真姫「別に…」

凛「でも、これ誰が動かすの?」

ことり「もしかして真姫ちゃんが?」

穂乃果「あっ、そういえばコナン君が操縦してたよね!真姫ちゃん、免許持ってるとか!?」

真姫「…自家用ヘリの免許は17歳からだったはずよ」

絵里「じゃあ、どう…」

真姫「…誰も、操縦できないとは言ってないわよ」

56: 2016/03/30(水) 05:19:19.50 ID:OPbYQb/W.net
絵里「ハラショー!!」

穂乃果「うわーーーーーーーー!!!すごーーーーーーーーーーーーーーい!!!」

凛「テイクアウトにゃーっ!!」

にこ「テイクオフでしょー!!」

真姫「うるさい!」

ことり「すごぉい…本当に飛んじゃった…」

海未「ま、真姫、本当に大丈夫ですよね…」

真姫「大丈夫よ」

花陽「でも、これどこに降りるの?」

真姫「…」

花陽「私たちの家、そんなに広くないし…」

海未「…真姫?」

真姫「…ダイジョウブヨ」

希「真姫ちゃーん!!」

真姫「な、なんで乗る前に誰も止めてくれなかったのよ!!」

海未「気づきませんでした…」

希「同じく…」

花陽「ま、真姫ちゃん、自信満々だったから、大丈夫かと思って…」

真姫「…お、降りられそうな場所を探すわ…ちょっと待ってて…」

57: 2016/03/30(水) 05:21:04.52 ID:OPbYQb/W.net
凛「なんか、ニューヨーク思い出すねっ」

ことり「ふふっ、やっぱりちょっと似てるよねっ」

凛「うんっ」

穂乃果「おぉ…おぉっ…おわああっ!?」

真姫「うるさいってば!!」

穂乃果「ちょ、みんなあれ見てよ!」

凛「なになに?」

絵里「なにかあったの?」

真姫「ちょっと!機体が傾くでしょ!」

海未「…こ、これは…!」

希「…う、嘘やろ…!?」

真姫「なっ…!」



真姫(私たちが、ヘリコプターから見た光景)


真姫(それは、わたしたちの居た千代田区が、円形にくりぬかれて宙に浮いているというものだった)


真姫(つまり、この世界には千代田区しか存在していない)



絵里「はらしょー…」

海未「こ、これは…なにがどうなっているのですか…!?」

花陽「だ、だれかたすけてぇ…」フラッ

凛「かよちん!」

希「…ま、真姫ちゃん、この円の外側、行ける?」

真姫「やってみるわ…」

58: 2016/03/30(水) 05:29:53.04 ID:OPbYQb/W.net
海未「…浮いているのではなく、亀の上に乗っていたのですね」

凛「おっきい亀さんにゃ~…」

ことり「…あれ…?亀さんと地面の間に、何かある…」

絵里「真姫、高度落とせる?」

真姫「やってみる」




ことり「あ…え…うそ…おかあさん…?うっ…うっ、うえぇっ…」フラッ


穂乃果「ことりちゃん!」

海未「ことり!」


真姫「…何なの、あれ…理事長の、石像…!?」


花陽「地面を支えてる…のかな…」

真姫「…亀の周り、一周してみるわよ」

59: 2016/03/30(水) 05:31:21.26 ID:OPbYQb/W.net
希「…うっ!?」

絵里「な、何よあれ…」

にこ「石像がいっぱい…」

花陽「…あ、あれ!?ちょっとまって!?あ、あれって…」

希「…にこっち!?」



ピーピーピー



真姫「…ウソ!?これしか燃料残ってないの!?」

花陽「ガス欠なのぉ!?」

真姫「そんな!ちゃんと燃料は満タンだったハズよ!」

穂乃果「じ、じゃあいったんあの亀の上とかに着陸して…」

真姫「燃料の補給が出来ないんだから意味ないわよ!とにかく、戻れるところまで戻るわ…!」

海未「あぁ、神様仏様っ…」

にこ「希さま~っ」

凛「希ちゃんさま~!」

希「うちに祈られても困るっ!」








真姫「…な、なんとか円の内側まで戻ってきたわね…」


ビービービー


海未「あああああああああああああああああああああ」

凛「う、海未ちゃん!しっかりするにゃ!」

穂乃果「真姫ちゃん、何の警報!?」

真姫「…みんな、しっかり捕まってるのよ…」


ガクンッ


「「き(ぎ)ゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!」」

60: 2016/03/30(水) 05:32:09.11 ID:OPbYQb/W.net
バラバラ



真姫ママ「…こんな時間にヘリなんて、どうしたのかしらねぇ」


バラバラバラバラ


真姫パパ「…随分近いな」

バラバラバラバラバラバラバラバラ

真姫ママ「…っていうか、近づいてきてない…?」
バラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラバラ

バサバサバサバサバサッ ガラガラガラガラガシャン バラバラバラバラバラバラバラバラ


真姫ママ「な、なに!?」

真姫パパ「…うちのヘリじゃないか!」


ガチャッ


穂乃果「うえぇ…氏ぬかと、思った…」ドサッ

凛「にゃぁあぁ~…」ドサッ

穂乃果「ぐえっ」

花陽「ぴぇぇ…」ドサッ

凛「に゙ゃっ…」

希「う~…スピリチュア…ル…」ドサッ

花陽「ピャッ」

にこ「にこぉ…」ドサッ

希「ぷしゅっ…」

絵里「はら…しょぉ…」ドサッ

にこ「にごっ…」

海未「…うぅっ…生きて帰ってこれましたよ、ことり…」ヒョイッ

ことり「うぅ~ん…海未ちゃん…?」

ことり(…こ、これって、お、おおお、おひめさまだっこ…!?」


真姫「…ただいま」

真姫パパ「真姫…ずいぶんとダイナミックな帰宅だな」

61: 2016/03/30(水) 05:33:01.66 ID:OPbYQb/W.net
保守ついでの投下終了 一旦休憩

70: 2016/03/30(水) 10:37:55.76 ID:OPbYQb/W.net
料理人「お待たせしました。食事の準備が出来ましたので、どうぞ」

穂乃果「…ホントにいたんだ、料理人…」

ことり「あらためて、真姫ちゃんってすごいね…」

真姫「べ、別に普通でしょ!」

にこ「じゃあ、ニコたちがキッチンに立つことはなさそうね~」

真姫「!」

凛「そうだね~」

海未「凛はキッチンには立たなくてもいいですよ…」

凛「え?」

真姫「…じ、じゃあ…明日からは、皆で作りましょ。当番決めて。そういうことだから、よろしく頼むわ」

料理人「かしこまりました」



にこ「えっと…誰?」

和木「わたくしお手伝いをさせていただいている、和木です」

凛「お手伝いさんまでいるなんて…」

真姫「…あー、えっと…和木さん、今日は私たちがやるから大丈夫。休んでてもらっていいわよ」

和木「ですが…こほん。かしこまりました」

71: 2016/03/30(水) 10:41:42.15 ID:OPbYQb/W.net
海未「はっ、はっ…」シュルルル

希「…どうーっ、海未ちゃん?」

海未「…希ーっ!やはり間違いありません!私たちの周りから居なくなってしまった人たちの分、みんな石像があります!」

希「そっか…わかった。海未ちゃん、気を付けて戻ってきてなー!」

海未「はい!そちらのロープ、解けないように見ていてください!」

希「おっけー、まかしときー!」


海未(…あれからいったい、何日経ったでしょうか)

海未(…いえ、一日も経っていないんですよね)

海未(私たちはもう、何度繰り返したかわからないくらい…何度も何度も、3月の30日を過ごしています)



穂乃果「前のリベンジだよ、にこちゃんっ…!」

にこ「リベンジ~?」

穂乃果「さあ…この、ダンスゲームで!」


絵里「すうぅっ…はぁっ!!」ドゴォ

凛「絵里ちゃん、それ蹴っちゃダメだよぉ!」

絵里「え、そうなの?」

凛「パンチだけ!」


真姫「なによ…クイズゲームなんて言ってるけれど、ただ問題に答えればいいだけなんて、結構簡単ね…って、これはなんだったかしら…」

ことり「これの答えは小麦粉だよ、真姫ちゃん」

真姫「…本当だ。流石ことりね」ピンポーン

ことり「えへへ」

花陽「すごい…!このゲーム、決勝進出できる人は本当に一握りなのに…」

真姫「…ま、私とことりなら当然ね」

ことり「お母さんの子供として恥ずかしくないように、勉強はちゃんと頑張ってるからねっ」



真姫(あれからいったい、何日経ったかしら)

真姫(いや、一日も経ってないのよね)

真姫(海未と希はたまに参加するだけで、ほとんど遊びに来ない)

真姫(…二人も来れば、もっと楽しいのに)

73: 2016/03/30(水) 10:46:50.07 ID:OPbYQb/W.net
花陽「…よしっ」

凛「…かよちん、何書いてるの?」

花陽「ぴゃああっ!?」

凛「…オトノキぜんし?」

花陽「り、凛ちゃん!み、見ないでぇ~っ」

凛「かよちん、小説家になるの?ふふふっ、かよちん本読むの好きだもんねっ」

花陽「うぅ…そ、そういうのじゃなくて…」

凛「あ、そうだ!ねえねえ、今日はどこにいこっか?さっきね、穂乃果ちゃんがみんなでプールに行こうって言ってたよ!

花陽「プールかぁ…久しぶりだねっ」

凛「うん!この前行ったのはいつだっけ?」

花陽「1ヶ月くらい前だったかなぁ?」

凛「やだなぁかよちん、1ヶ月も経ったら、もう凛たちはμ`sじゃないにゃ」


真姫「和木さん?和木さーん…どこいっちゃったのかしら」

真姫パパ「どうした、真姫」

真姫「ああ、和木さんを探してるんだけど…」

真姫パパ「…そういえば最近見ていないな。休暇は出していないんだが」

真姫「…うーん」


真姫ママ「今夜のおかずは何がいいかしら…」

にこ「あ、それならチーズハンバーグとかどうですかぁ~?」

真姫ママ「あら、いいわね~!それじゃあハンバーグにしましょうか!久しぶりに作るわね~」

にこ「うふふっ、ニコの得意料理なんですよっ♪」

真姫ママ「あら、そうなの!それじゃあ、今日もこのお肉、使っちゃおうかしら~」

にこ「わぁ~っ、すっごく美味しそう…!」

74: 2016/03/30(水) 10:51:01.62 ID:OPbYQb/W.net
私の名は小泉花陽。

かつては音ノ木坂学院に通う一女子高生であり、スクールアイドルとして戦い続ける日々でした。

ですが、あの夜、ヘリコプターから目撃したあの、衝撃の光景が私の運命を大きく変えてしまいました。

ヘリコプターで真姫ちゃんの家に強行着陸したその翌日から、世界はまるで開き直ったかのごとくその装いを変えてしまったのです。

いつもと同じ街、いつもと同じ角店、いつもと同じ公園。だけど、なにかが違います。

路上からは行き来する車の影は消えて、色とりどりのお店で流れる音も途絶えて…街頭でチラシを配るメイドさんの姿もありません。

真姫ちゃんの家の料理人さんやお手伝いさんすら。

この街に、いえ…この世界に私たちだけを残し、人々は突然、その姿を消してしまったのです。

…数日を経ずして、荒廃という名のときが駆け抜けていきました。

かくも静かな、かくもあっけない終末をいったい誰が予想できたでしょう。

人類が過去、数千年にわたり営々として築いた文明とともに、西暦は終わってしまいました。

しかし、残された私たちにとって終末は新たなるはじまりにすぎません。

世界が終わりを告げたその日から、私たちの生き延びるための戦いの日々が始まったのです。

奇妙なことに、真姫ちゃんの家の貯蔵は押し寄せる荒廃をものともせず、その勇姿をとどめ、食料品、日用雑貨等の豊富なストックを誇っていました。

いくら使っても、減ることはありませんでした。いえ、使っても気づけば元に戻っている、と言った方が正しいでしょうか。

そして更に奇妙なことに、真姫ちゃんの家には電気もガスも水道も依然として供給され続け、驚くべきことに新聞すら配達されてくるのです。

さらにさらに、私たちが行きたいと思ったところは唐突に街に現れ、誰もいないのにその役割を果たし続けているのです。

ゲームセンターならゲームが動いているし、レストランに行けば料理が完成している。

プールに行きたいと思えば秋葉原の街中に突然出てきて、綺麗な水が流れ続けている…といった感じに。

私たちは、人類の存続という大義名分のもとに、真姫ちゃんの家をその生活の拠点と定め、学校にも行かずに遊んでいました。

もちろん、ダンスの練習はしてはいるんだけど…

その中で希ちゃんと海未ちゃんは、街を調査するために朝から出かけて、夜に帰ってくるという生活を開始。


…あの運命の夜からどれ程の歳月が流れたのでしょう。

しかし今、私たちの築きつつあるこの世界に時計もカレンダーも必要ありません。

私たちは、衣食住を保証されたサバイバルを生き抜き、かつて今までいかなる先達たちも実現し得なかった地上の楽園を、あの永遠のシャングリラを実現するでしょう。

ああ、選ばれし者の恍惚と不安、共に我にあり…

人類の未来がひとえに我々の双肩にかかってあることを認識するとき、めまいにも似た感動を禁じ得ません…

…いえ。嘘です…誰か、誰か助けてぇ~…


小泉花陽著 オトノキ全史 第1巻「終末を越えて」 序説第3章より抜粋

75: 2016/03/30(水) 10:55:15.03 ID:OPbYQb/W.net
ことり「えーいっ!」バシャーッ

穂乃果「ぶぼぼぼ!!」


海未「絵里、いきますよーっ」パシャッ

絵里「やっ、つめたーいっ!」


花陽「え、ええっと…」

凛「かよちん、右!もっと右ー!」

花陽「こ、ここかな?」

穂乃果「いけーっ、花陽ちゃん!」

希「妙法蓮華焼肉定食香川県楠田亜衣奈…」

凛「ちょっと違くないかにゃ~…?」

にこ「んふふ~っ」

花陽「えいっ!」スカッ

穂乃果「あーっ!」

にこ「ざんねんでしたーっ♪」

花陽「…に、にこちゃん!スイカ取っちゃったのぉ!?」

76: 2016/03/30(水) 10:56:38.28 ID:OPbYQb/W.net
真姫「…ふあぁ」

希「真姫ちゃんは日光浴?」

真姫「…今日は探索、もういいの?」

希「うん。たまには遊ばんとと思って、早めに切り上げてきたんよ」

真姫「…そう」

希「…真姫ちゃん。今夜、少し時間もらってもええ?海未ちゃんと3人で話がしたいんよ」

真姫「…いいわよ。家のバルコニーを片付けておくわ」

希「ありがと。…あ、そうだ」

真姫「何?」


希「真姫ちゃん、この世界どう思う?」


真姫「…すごく楽しいわ」


希「そっか。…それじゃ今夜、みんな寝た後にバルコニーで待ち合わせで」

真姫「わかった」

希「よろしく頼むなっ」ワシッ

真姫「ひゃあっ!?」

希「油断大敵、やよ~」ヒラヒラ

真姫「まったく…」


真姫「…?」

77: 2016/03/30(水) 11:03:39.33 ID:OPbYQb/W.net
海未「…」

希「…おっ」

海未「…来ましたか、真姫。時間通りですね」

希「ごめんな、こんな時間に」

真姫「別に。それで、話って何?」

海未「この世界についてです」

真姫「…ああ」

海未「…私たちは、このいい加減に作られた世界で…ずっと、この世界の構造を調べていました」

希「…なんとか、元の世界に戻れないか考えていた、ってわけやね」

真姫「…手伝わなかったことを責めてるわけ?」

海未「いえ、そうではありません。…私だって、何もかも忘れて、あなたたちと遊んでいたかったですよ…」

真姫「…」

希「ま、まあまあ海未ちゃん、それは置いといて」

海未「…すみません。…さて、本題に入ります」

78: 2016/03/30(水) 11:08:07.56 ID:OPbYQb/W.net
海未「さて、この世界ですが…東京都千代田区のみが、存在しています。そしてそれは、巨大な亀に乗って空を飛んでいます」

真姫「ええ。そこまでは私も知ってるわ」

海未「こんな世界が、それも亀に乗って空を飛んでいるだけで十分なまでに異常なのですが…問題は別にあります」

真姫「…どうして、私たちの生活が困っていないか?」

海未「はい。西木野家の食糧や日用品は減ることはなく、ガスに水道、電気も供給され続けている…」

希「ちなみに遊びに行った先は、うちらが帰ればその機能が停まるみたいや」

海未「そして、さらに遡り…この街の、私たち以外の人々は、どこに行ってしまったのか…」

真姫「そんなこと知らないわよ」

海未「…それは置いておいて。日常生活に不都合が無い点を除き…」

海未「…いえ。日常生活に不都合を無くすために、この世界は私たちの為に、いい加減に、出鱈目にできています」

海未「こんな世界は絶対、現実にはあり得ません…もし、ありえるとすれば」

真姫「夢の中だけって言いたいの?」

海未「…気づいていましたか」

真姫「当たり前じゃない…皆気づいてるわ」

海未「そうでしたか」

真姫「あの子たちは分かって遊んでるのよ。私もね」

海未「それは前にも言った…みんなと別れなくて済んでいることに対しての安心から、ですよね」

真姫「ええ」

海未「…希、どうですか」

希「うん、間違いないんやないかな」

真姫「…?」

希「真姫ちゃん。海未ちゃんはさっき、この世界はうちらの為に出来てる、って言ったけど」

真姫「…違うの?」

希「…真姫ちゃんに都合がよく出来てるんよね」

真姫「…そこまで気づいてたの」

希「…自覚はあるんやね」

真姫「…ええ、まあね」

希「…そうなん?真姫ちゃん。真姫ちゃんも、自覚ある?」

真姫「…は?何言ってるのよ、だからそう言って…」


「ええ、あるわよ」

79: 2016/03/30(水) 11:10:42.41 ID:OPbYQb/W.net
真姫「なっ…」


真姫「…お待たせ」


真姫?「な、なん…」

真姫「昼間プールで希にセクハラされたとき、水着の中にメモを差し込まれたの」

希「あえて15分くらい遅れてきて、ってな」

海未「真姫はマジメですからね」

希「そうそう。言っておかないと、時間前に来ちゃうもんなぁ…偉い偉い」ナデナデ

真姫「撫でないで!」

希「ごめんごめんっ。…さーて、そっちの真姫ちゃん。正体を見せてもらおか?」ワシワシ

真姫?「…いつから、私があなたたちを狙ってたのがわかってたの?」

希「しばらく前やね。街の調査中、度々誰かからの視線を感じてたから」

海未「…観念してください」チャキッ

真姫(どこからそんな刀を…)


真姫?「…仕方ないわね」グッ


バサーッ


海未「なっ…!」

80: 2016/03/30(水) 11:11:52.85 ID:OPbYQb/W.net
真姫「ママ…!?」

真姫ママ?「いえ…私は…うーん、私"も"、西木野真姫よ。希は久しぶりね」

希「…そうやね。何回か会ってたのが、あなたやったんや」

真姫ママ?「ええ。…しかし、よくもこれだけママにそっくり育ったと思わない?…あ、私は、あなたの未来の姿よ。真姫」

真姫「…うそ」

西木野「紛らわしいから、私の事は西木野、あなたのことは真姫って呼ぶことにするけれど…」

希「…で、なんでその未来の西木野さんがここに?」

西木野「タイムマシンでね」

海未「タイムマシン…?」

西木野「そう。穂乃果も使ってニューヨークやアキバに行ってたらしいけれど、会ってないのかしら?」

海未「いえ…」

西木野「…そう。穂乃果にしては上手く立ちまわったってワケね」

希「…質問、ええかな」

西木野「いいわよ」

希「…にこっちを消したのも、西木野さんなん?」

西木野「消したって…ちゃんと下に寝てるじゃない」

希「偽物のにこっちはね。…本物は?」

西木野「…やっぱり希って鋭いわね」

希「うちやなくてもわかると思うけどなぁ…少なくとも、うちらの知ってるにこっちはもっと毒気のある子やったもん」

西木野「…はぁ、全部お見通しってわけね。いいわ、全部話してあげる」

81: 2016/03/30(水) 11:15:16.37 ID:OPbYQb/W.net
西木野「この世界は、真姫の夢の中。真姫の思ったことがなんでも実現できる、いい加減な世界。

つまり、真姫は3月31日に来てほしくない。3月30日で、μ`sのメンバーとずっと一緒に居たい、と願っているわけね。

だから、その願いが叶って、3月30日が繰り返されている…というわけ。

街の人々が消えたのは、真姫の世界に特に必要ないと思われた存在だから。

そしてにこちゃんは、真姫じゃなくて私、西木野が消した。

一番しつこく、この世界を壊そうとしていたから。

でも、消したままじゃ真姫の夢は叶わない。にこちゃんがいないんじゃ、μ`sは成り立たないからね。

だから、偽りのにこちゃんを創った。…他に質問はあるかしら」


海未「…あなたを殴ったり斬ったりするのは後ですね。色々言いたいことがあります」

西木野「斬るのはやめてよ、海未」

海未「うるさいですっ!!」

希「海未ちゃん、落ち着いて…」

西木野「…それで、言いたいことは?」

海未「…すみません。…西木野は、どうしてにこを消せたのですか?」

西木野「ああ…それは、この夢を作っているのが私だから」

真姫「…私じゃないの?」

海未「あなたにそんな力があるんですか?」

西木野「…ええとね。この夢を創っているのは真姫。作っているのは私。

…つまり、真姫の創った世界を思い通りに動かす役目を負ってるのが、私西木野なの」

海未「…そんなことが可能なのですか」

西木野「未来で私が開発したのよ。夢の世界を具現化する方法を」

海未「…そんなバカな」

希「すごいことを随分軽く言うなぁ」

西木野「未来人だからね」

真姫「…ねえ、ちょっと待って…この世界からにこちゃんが消えたってことは、私…」

西木野「ああ、それは違うわ。私、西木野が消したの。あなたはにこちゃんのことが邪魔だなんて1ミリも思っていないから、安心していいわ」

希「…流石のうちも、ハラワタが煮えくり返りそうや」

西木野「ちょっと、やめてよ希まで」

82: 2016/03/30(水) 11:17:57.92 ID:OPbYQb/W.net
希「…ところで。なんでうちらを泳がせておいたん?」

西木野「…というと?」

希「にこっちが居なくなった後も、うちらは調査を続けていた…今までは、それをコソコソ見てるだけやったやん」

西木野「まあ、そうね」

希「どうして今日はうちらの前に現れたのか、と思って」

西木野「ああ、それは…」パチンッ


希「!」ブクブクッ

海未「っ!?」ガボゴボッ


西木野「にこちゃんと違って、あなたたちは隙が少なすぎるから」

真姫「希!海未!」

西木野「だから、機会をうかがってたの。丁度良かったわ、あなたたち、私への怒りで冷静さが欠けていたんですもの」

真姫「ちょっと、あの二人をどうするつもり!?あのままじゃ溺れ氏…」

西木野「大丈夫。二人には、少し竜宮城に行ってもらうだけだから」パチンッ


シュンッ


真姫「あぁっ…」

西木野「…真姫、あの石像見たでしょう?」

真姫「…ええ」

西木野「あれはね、お察しの通り、私に消された人々なんだけれど…頭の中では、みんな夢を見てるの」

真姫「夢…?」

西木野「そう。幸せな夢。それぞれが一番望んでいる、楽しい夢を。…つまり、竜宮城ね」

真姫「…」

西木野「…不満そうね」

真姫「…動機は?」

西木野「ん?」

真姫「動機を聞いてなかったわ。どうして、あなたが私の夢に介入してきたのか」

西木野「ああ…それはね」

83: 2016/03/30(水) 11:21:41.85 ID:OPbYQb/W.net
西木野「私ね、未来ではμ`sのみんなに、全く会えてないの」

真姫「…そうなの?」

西木野「…私、どこで間違えたんだろうって思ったわ。

あんなに一緒だったのに、もう全く会えないなんておかしいって思った」

真姫「…みんな、何してるの?」

西木野「私は見ての通り、医者を継いだ。もうやめたけどね。

穂乃果はシンガーとして全国をフラフラしてるし、海未は家を継いだ。

ことりはパリで服飾の仕事、絵里はロシア、希は所在不明。

にこりんぱなの3人は、連絡つかない。にこちゃんはアイドルでも始めるかと思ってたけど、そうじゃなかったわね。

…それで、こんなの、絶対嫌だったわけ。みんなと会えない人生なんて楽しくないって、絶望しちゃった」

真姫「…」

西木野「だから私は、医者をやめてタイムマシンを開発したところに転がり込んだ。

その力を使って、私は夢を操る技術を手にした」

真姫「随分人間離れしたことをやってくれたわね」

西木野「当然でしょ?西木野真姫なんだから」

真姫「…そうね」

西木野「さて、それでね。その夢を操る技術ってとってもすごくて…

他の人も巻き込んで、一人の夢に閉じ込めておけるの」

真姫「…つまり、今ここにいる人たちはみんな、本当の…」

西木野「ええ、そうよ。現実であなたが一緒に過ごしていた、穂乃果たちそのもの」

真姫「…」

西木野「すごいでしょう?感動したかしら?」

真姫「いえ、全然」

西木野「…そう。まあいいわ。…で、話は戻って…絶望した私は、せめて昔の自分に楽しく暮らしてほしいと思った。

…私みたいにならないように。人生のピークにある、あなた…真姫にね」

84: 2016/03/30(水) 11:23:55.14 ID:OPbYQb/W.net
真姫「私を起こして」

西木野「…どうして?」

真姫「にこちゃんと海未、希が消えた時点でμ`sじゃない」

西木野「ちゃんといるわ。ほら」

海未「真姫、今日は遅いですし…もう寝ましょう?」

希「そうそう、明日が待っとるよ~」

真姫「ふざけないで…」

西木野「…」

真姫「こんな偽物の世界なんて…」

西木野「少し落ち着きなさいよ。…結構いいものよ、ここ。実際、楽しかったでしょう?」

真姫「バカにしないで…」

西木野「…目覚めたら、別れがやってくるのよ?」

真姫「…」

西木野「あ、今迷ったわね」

真姫「…っ」

西木野「…とりあえず、過ごしてみなさいよ。いい世界だから」

真姫「お断りよ」

西木野「…どうして?」

真姫「言ったはずよ。私が一緒に居たいのは偽物じゃない。本物のμ`sなの」

西木野「いるじゃない」

真姫「6人だけね。あとの3人が足りないわ」

西木野「…なんなのよ」

真姫「あなたがね」

西木野「…ふざけないで」

真姫「こっちの台詞よ」

西木野「ここまで散々好き勝手過ごして来たくせに…喜んで毎日過ごして来たくせに…!

私にはもう実現できない、μ`sのみんなと楽しく毎日を過ごしているくせに!

今更手のひら返すつもり…?」

真姫「人間、手のひらはすぐひっくり返る生き物よ。こんな風にね」ヒラヒラ

85: 2016/03/30(水) 11:27:30.90 ID:OPbYQb/W.net
西木野「わかったわ、もういい…」

真姫「…?」

西木野「"この"夢は終わりにしましょう…絶対逃がさないから…!」


西木野が指を鳴らすと同時に、私は意識を手放してしまった。









真姫「…はっ…!?」

穂乃果「…あれ、真姫ちゃん?どうかしたの?」


目が覚めると、そこは部室だった。


凛「真姫ちゃんも寝てないで、早く手伝うにゃ~」

真姫「…そっか…じゃあ、あれも全部夢…」

ことり「夢?」

真姫「…ええ、随分と真実味のある夢を見ていたわ」


にこ「それって、どんな夢だったニコ?真姫ちゃんの見てた夢、ニコ気になるなぁ~」


真姫「…っ」


ゾクリとしたものが、背筋を通る。


海未「真姫…」


真姫「海未…希…」



希「…逃がさないって、言ったやん?」



真姫「ひっ…!」




私の目の前は、希に肩を掴まれたところで再びブラックアウトした。

86: 2016/03/30(水) 11:31:58.04 ID:OPbYQb/W.net
真姫「はぁ、はぁ…って、あ、あれ…?」


私は気が付くと、音楽室に居た。

辺りを見回しても、私の他には誰もいない。


真姫「…これは」


私は、ピアノに楽譜がセットされているのを見つけた。

この楽譜は、私に弾け、と言っているような気がした。



真姫「…」


すぅっ、と息を吸い込んで、鍵盤を叩く。



真姫「愛してるばんざーい…まけないゆうき…わたしたちはいまを、たのしもう…♪」


真姫「だいすきだばんざーい…がんばれるから…きのうにてをふって、ほら…まえむいて…♪」


真姫「ん?…う、ヴェェッ!?」


ドアの方を見やると、穂乃果がキラキラした笑顔で拍手していた。

遠慮も無しに、ドアを開けて穂乃果が入ってくる。


穂乃果「すごいすごいすごい、感動しちゃったよぉっ!」


真姫「…これって」


最初に穂乃果と会ったときのシチュエーションだ。


穂乃果「歌上手だねぇっ!ピアノも上手だねぇっ!それに、アイドルみたいにかわいいっ!」

真姫「あ…」

穂乃果「あのっ!…いきなりなんだけど…」

真姫「…」


穂乃果「あなた、アイドルやってみたいと思わない?」

87: 2016/03/30(水) 11:33:40.02 ID:OPbYQb/W.net
…ここで私が、もしも。


穂乃果の誘いを素直に受けていれば。


…もっと、穂乃果たちと一緒に居ることができたのか?


西木野も、もっと幸せになれたのだろうか?


穂乃果「…あ、ご、ごめんねっ!突然困るよね、アハハ…」

真姫「…思う」

穂乃果「え?」

真姫「…やりたいと、思うわ。あなたと、一緒に」

穂乃果「…えっ、ウソ!?ほんとに!?」

真姫「本当よ!ウソついて何になるの!?」

穂乃果「うわああっ、嬉しいっ!じゃあ、真姫ちゃん」

真姫「…え?」

穂乃果「ずっといっしょにいようねっ」



それはもう、穂乃果ではなかった。

88: 2016/03/30(水) 11:36:17.27 ID:OPbYQb/W.net
音楽室を抜けるとそこは、古城の中のようだった。


どこからか照らされるスポットライトを浴びながら、私は何かから逃げ惑う。


真姫「はっ、はっ…」


背後からは、何かが近づいてきている気がする。


真姫「はぁっ、はぁっ…!」


私を追いかけるように、蝋燭の火が灯っていく。


真姫「あぁっ、はぁっ…!」




しばらく走っていると、ステンドグラスから光の差し込む広い部屋に出た。


真姫「はぁ、はぁ…」


一休みして息を整え、後ろを振り返る。

安心して、胸をなでおろす。もう誰も追ってきてはいないみたい。


…けれど、上から檻が降ってきて、私をとらえた。


真姫「やっ…!?」


…黒いローブを着た人間が、私を取り囲むようにこちらに迫ってくる。

その数は、8。


私はどうすることもできず、ただ恐怖で目に涙を浮かべるだけだった。



真姫「誰か…誰か…っ」

89: 2016/03/30(水) 11:39:39.11 ID:OPbYQb/W.net
花陽「誰か助けてぇ~っ!」

真姫「…って、なんであなたが怖がるわけ?」

花陽「はっ…そんな夢見たら誰だって怖いよぉっ!」

真姫「そうだけど…はぁ、もうウンザリ…朝からテンション下がったわ…」

花陽「はぁ、はぁ…」

真姫「だからなんであなたが…」

花陽「あぁ、夢に見そうぅ…」

真姫「…ねえ」


真姫「今も夢の中だったら、どうする?」

花陽「…そうなのぉ!?」

真姫「バカね…言ってみただけよ」


いつにも増してオーバーリアクションを取り、息を整える花陽。

…私はふと、窓の外を見つめてつぶやいた。



真姫「…さっき話した夢、たしかに怖かったけど…ちょっと楽しかったかも」



自分でも、何を言っているのかよくわからなかった。

90: 2016/03/30(水) 11:41:47.50 ID:OPbYQb/W.net
そのあと、げんじつとゆめのさかいめがよくわからないまま、わたしはおとのきざかがくいんにかようひびをすごしていた。


いつのまにか、3がつの30にちではなくなっていた。


あたまではわかっているけれど、ながされるままに、ひびをすごした。



西木野「随分応えてるみたいね」


真姫「…」


西木野「夢の中で嫌なことがあっても、夢でよかったと思うでしょ?」


夢だから、何度でも繰り返せるのよ。


…そうだ、こういう話、知ってるわよね?


ある男が夢から覚めたら、いったいどっちの自分が本当の自分かわからなくなった。


もしかして、蝶が見ている夢の中の自分が本当の自分なんじゃないのか…っていう。


…夢や現実っていうのは、人の考え方の一つなの。


だったら、いっそ夢の中で楽しく暮らせばいいじゃない。


やろうと思えば、もっといい夢が作れるわよ。


決心がついたらいつでも呼んで。待ってるわ」

91: 2016/03/30(水) 11:43:22.31 ID:OPbYQb/W.net
穂乃果「よーしっ、今日も練習がんばろー!」

凛「おーっ!」

海未「はりきりすぎて倒れないでくださいよ?」

にこ「そうニコよ~?穂乃果ちゃんのせいでまたライブ中止にでもなったら困るんだから~っ」

穂乃果「はーいっ」


まったくもって、いつもどおりのにちじょうだ。


でも、すこしもやもやとしたきもちがある。


真姫「ふぅ…」

希「真姫ちゃん?どうしたん?」

真姫「…ちょっとたいちょうがわるいみたい。ほけんしつにいってくるわ」

ことり「あ、それじゃあことり、ついていくよ!保健委員だし…」

真姫「いえ、だいじょうぶ。すぐもどってくるから、あんしんして」

92: 2016/03/30(水) 11:45:19.99 ID:OPbYQb/W.net
わたしは、おんがくしつへやってきた。


そうすれば、このもやもやもきっときえるとおもうから。


だからいつものように、ぴあのをひこう。


ふたをあけて、けんばんをたたく。


…が、おとがならない。


げんでもきれてしまっているのだろうか?


…でも、のぞきこんでも、そんなことはない。



真姫「ん? ん~っ…?」



…ふと、けはいをかんじた。


そこには、しろいわんぴーすがまぶしい、あかいかみのおんなのこがたっていた。


真姫「きゃあああっ!「


わたしはびっくりして、しりもちをついてしまう。


真姫「…ちょっと、かってにがっこうにはいってきちゃ…」


「ねえ」

真姫「…?」

「帰りたくないの?」

真姫「…」

「ずっとここにいるの?出ていきたくないの?ずっと終わらない夢の中に居るの?」

真姫「おわらない…」


「そうだよっ。ここは終わらない、パーティーの中」

93: 2016/03/30(水) 11:47:17.42 ID:OPbYQb/W.net
真姫「あ…あぁっ…そう、そうよ、私は…」



背後で、雷が落ちる。



「…おいで!」


真姫「…ちょ、どこに…」


「うふふっ」



くすっと笑って、音楽室から出ていく女の子。



真姫「ちょっと、待ちなさい!」



私は一目散に、女の子を追いかける。

94: 2016/03/30(水) 11:51:09.22 ID:OPbYQb/W.net
続きは夜に
回線変わるかもしれないから、トリップ付けとく

100: 2016/03/30(水) 23:36:05.88 ID:YIfYloEO.net
廊下では色とりどりのスポットライトが動いており、さっきまで明るかった外も暗くなっていた。


不気味で薄暗い廊下を駆け抜け、微かに見える光の方へと走り続ける。





その先に広がっていたのは、屋上だった。


音ノ木坂学院の、屋上。


私たちμ`sにとって、大事な場所。



でも、私が知っている屋上とは、少しだけ違っていた。


空はクリーム色に染まっていた。


落下防止の柵が、消えてなくなっていた。


下には見慣れた校庭があるわけでもなく、アキバドームがあるわけでもない。


大きな湖と綺麗な花畑が広がっていた。



「飛べるよ」


真姫「え…?」



振り返ると、にっこり可愛い笑顔でこちらを見つめる女の子。



「飛べる」


真姫「飛べる…」

101: 2016/03/30(水) 23:41:55.10 ID:YIfYloEO.net
「ここから飛んで、本当に一緒に居たい人の名前を呼ぶの」



とんっ。


背中を押される。



「そしたら、帰れるから」



真姫「あっ…」



そのまま、私は走り出す。



そうして、屋上から跳ぶ。



私は、せいいっぱい叫ぶ。




穂乃果!


ことり!


海未!


花陽!


凛!


にこちゃん!


絵里!


希!

104: 2016/03/31(木) 01:27:53.14 ID:NMSw/nAi.net
目が覚めるとそこは部室だった。


穂乃果、ことり、海未、花陽、凛、にこちゃん、希、絵里…そして、私が寝ている。


真姫「…人の苦労も知らないで、呑気に寝ちゃって」


真姫「ほら、起きなさい。今日が始まるわよ」

105: 2016/03/31(木) 01:33:22.58 ID:NMSw/nAi.net
チュンチュン


真姫「…ん、ん~」

真姫「…いい天気ね」

真姫「…みんな、ほら、起きなさい…朝よ…」

絵里「…ん~…おばあさま…」

真姫「…」

海未「…」ムクッ

真姫「」ビクッ

海未「…おはようございます、真姫」ムスッ

真姫「え、ええ、おはよう」

海未「顔を洗ってきます」

真姫「いってらっしゃい」

真姫(寝起きの海未はやっぱり怖いわ)

穂乃果「雪穂!このお茶あっつ…あれ?」

真姫「…おはよう、穂乃果」

穂乃果「あ、真姫ちゃん…おはよ~」

凛「なに~…?」ゴシゴシ

穂乃果「あ、凛ちゃん!おはよ!」

凛「穂乃果ちゃん…おはよ~」

穂乃果「…ん~っ!」パンパンッ

穂乃果「よしっ、目覚めた!今日も一日がんばろーっ!」ドドドド

凛「おーっ…」フラフラ

真姫「…朝から元気ね」

106: 2016/03/31(木) 01:35:40.56 ID:NMSw/nAi.net
にこ「…」zzz

真姫(…このきゅうりって食べられるのかしら?)ヒョイ

真姫「にこちゃん、あーん」

にこ「…むにゃ…あーん」

真姫「はい」ポイッ

にこ「ん、んぐんぐ…」ポリポリ

真姫「ぶっふ…」

にこ「まっず!!!」ブーッ

真姫「お、おはようにこちゃん」

にこ「…口にきゅうり入れたのあんた?」

真姫「り、凛かしら」

にこ「凛のやつ…!」ダッ

真姫「…絵里」

絵里「…おばあさま…?」

真姫「…絵里、早く起きなさい…でないと海苔を食べさせるわよ…」

絵里「のりはいやぁ…」

真姫「…なんで海苔嫌いなの?」

絵里「おばあさまは…すき…」

真姫「…」

絵里「むにゃっ…!?」

真姫「おはよう、絵里」

絵里「…真姫、おはよう」

真姫「早く顔洗ってきたら?結構酷いわよ」

絵里「えっ、うそ…」

真姫「…さて、あとは…」


ことり「zzz…」ギューッ

花陽「zzz…」ギューッ


真姫(…すごく柔らかそう…)

107: 2016/03/31(木) 01:40:52.56 ID:NMSw/nAi.net
真姫(…いい匂い)スンスン

真姫「…」プニッ

花陽「んっ…♡」

真姫「」オドオド

花陽「んぅ…zzz」

真姫「…」ホッ


真姫「…」サワサワ

ことり「ふぁ…♡」

真姫「」ビクッ

ことり「ん~…?」

真姫「あ、お、起こしちゃったかしら」

ことり「真姫ちゃん…?どうしたの…?」

真姫「あ、いや、その…ゴミ。そう、ゴミがついていたから、取っただけよ」

ことり「そっか…ありがとう」ムクリ

ことり「…?」

ことり「あ、花陽ちゃん、起きて…ことり、起きれないよぉ」

花陽「んぅ…?」パチッ

ことり「おはよう、花陽ちゃん」

花陽「…あ、おはよう、ことりちゃん…真姫ちゃんも」

真姫「ええ、おはよう」

花陽「…今日は、がんばろうね…」

真姫「ええ、そうね」


真姫「今日は、私たちのファイナルライブよ」

108: 2016/03/31(木) 01:42:30.90 ID:NMSw/nAi.net
希「…ん~」


真姫「…一番寝ぼすけさんね、希」


希「真姫ちゃん…おはよ。夢見てたんよ、うち」


真姫「夢?」


希「そう。みんなとずっと楽しく、永遠に暮らす夢…」


真姫「…ふふっ、それは夢よ。私たちμ`sは、今日でおしまいなんだから」


希「…うん」



真姫「…さ、行きましょ」

109: 2016/03/31(木) 01:44:49.13 ID:NMSw/nAi.net
ラブライブ!μ's Final LoveLive!~μ'sic Forever♪♪♪♪♪♪♪♪♪~へ続く

110: 2016/03/31(木) 02:22:25.34 ID:buMiGfyd.net

112: 2016/03/31(木) 06:37:50.85 ID:GBDdYSg+.net
おつ

引用: 真姫「ビューティフル・ドリーマー」