1:◆58jPV91aG. 2009/05/03(日) 21:25:13.56 ID:Xjk4FDAN0
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第一章
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第二章

■イャンクック 「旧沼地で人間を拾ったんだが」 あらすじ

[1章]
旧沼地で小さな女の子を拾ったイャンクック。彼は女児を連れ帰り、保護します。
モンスターの間での確執に巻き込まれ、女児はドドブランゴに目をつけられてしまいます
そこを助けたのは、フルフルに呼ばれたティガレックス地獄兄弟でした

[2章]
薬物中毒で暴れているグラビモスの息子、バサルモスは逃げ出し、金レイアと銀レウスに保護されます
一方、危機を脱したイャンクック達は、蜂の毒にやられ遭難した黒グラビモスを発見します
黒グラビモスを助けるため、キングチャチャブーに応援を頼みに向かう、イャンクックと地獄兄弟
そんな中、薬物の禁断症状に苦しむグラビモスは、人間のハンターに捕獲されてしまいます
また、イャンガルルガ、ヒプノックに、女児を守るキリン達が眠らされてしまい……

474: 2009/05/02(土) 21:17:15.36 ID:oez/cUC10
―3年前―

ラオシャンロン 「…………」
ウカムルバス 「……ちょっとやりすぎじゃないかしら」
アカムトルム 「ここまでやることはないと思うのよ、アタシ達」
ラオシャンロン 「…………」
ウカムルバス 「確かにねェ、人間はアタシ達のとこに土足で上がりこんでくるけどネ」
アカムトルム 「だからっていって、皆頃しにする必要もないと思うのヨ」
ウカムルバス 「今までどーり、てきとーにあしらって、てきとーに追い返すことって、できないのかしら?」
モンハン イャンクック ペン画 原画
476: 2009/05/02(土) 21:20:20.14 ID:oez/cUC10
ショウグンギザミ 「シェ…………愚問だな…………オカマども…………」
ウカムルバス 「何よ! アタシ達は真・面・目に、ラオちゃんとお話してるのよーぅ! 失語症は黙ってらっしゃい!!」
アカムトルム 「そうヨ! アゴ美のアゴクラッシュが炸裂するわよーぅ!」
ウカムルバス 「ラオちゃぁ~ん、こーんな薄気味わるぅ~ぃ奴らと戦うよりも、アタシ達と、さっさと帰ってイイコトしましょ」
ショウグンギザミ 「…………シェ…………シェ…………腰ぬけどもが……(ニタニタ)」
アカムトルム 「うるっさいわねヤドカリ親父! 黙ってらっしゃぃ! やるの!? アゴ美のアゴは何でも砕けるのよーぅ!!」
ウカムルバス 「ちょっとキバ代ぉ、さっきからアゴアゴうっさいわよ」

477: 2009/05/02(土) 21:21:37.44 ID:oez/cUC10
ショウグンギザミ 「……ぶくぶくに太った……醜い竜どもの…………戯言には……つきあいきれんまでよ…………」
ウカムルバス 「ちょっとアンタ! あたしのアゴくらいたいのぅ!?」
ドドブランゴ 「……全くだ。ここまで来てしまったからには、もはや行けるところまで行くのみよ。臆病者は去れ……」
アカムトルム 「なぁぁんですって!?」
ドドブランゴ 「貴様らには分かるまい……蹂躙され、略奪され続けてきた、我ら一族が、どれだけこの時を待ち望んでいたか……」
ウカムルバス 「しぃぃったこっちゃないのよーぅ!! ちょぉっと! アタシ達の話、邪魔しないでくれるぅ!?」
ドドブランゴ 「…………聞く価値もない。もはや、戦いは架橋に差し掛かった……一族の血気を止めるのは、不可能よ……」

479: 2009/05/02(土) 21:23:13.90 ID:oez/cUC10
ウカムルバス 「だぁかぁら、それはアンタ達だけでやりなさいって。アタシ達は、ラオちゃん連れて帰るから」
アカムトルム 「そうよぅ。これ以上アタシ達が暴れたら、ホントのホントに、人間根絶やしになっちゃうわ」
ショウグンギザミ 「それがどうした…………我らは、そのために…………ここにいる…………シェ……キシャ……」
ラオシャンロン 「…………」
金レイア 「……ンだなァ。アゴ美とキバ代の言うとおりだっぺェ」
銀レウス 「こんくらい痛めつけりゃァ、もう十二分だァ。シュレイド城こえりゃァ、人間の子供だぢさいるだ」
金レイア 「そっげな無抵抗なァのブッ頃しても、しゃァねェべぇ」
ドドブランゴ 「金銀……貴様らまで臆病風に吹かれおったか……」

481: 2009/05/02(土) 21:24:59.77 ID:oez/cUC10
金レイア 「ンだァ。正直そうだァ」
ウカムルバス 「…………」
アカムトルム 「…………」
銀レウス 「金さんとよォ、話ィすたんだけんどもよ、やっぱす、こんりゃァやりすぎだぁ」
金レイア 「これ以上やっだら、おらだちにも被害が出るだ」
ドドブランゴ 「……戦いの中で氏ぬのなら、本望よ……我らの民は、その覚悟はできている……」
金レイア 「ふんぬぅ……おめだぢはどぅだ?」

484: 2009/05/02(土) 21:27:45.36 ID:oez/cUC10
キングチャチャブー 「……オレ達は、依頼を受け……その結果ここにいる。戦いが終わりというなら、そこで帰るまでよ…………」
銀レウス 「あいがわらず主体性がねェなァ」
キングチャチャブー 「一人殺せば……それから十人頃しても、百人頃しても、罪は変わらねェ……戦争という枠ン中じゃァな」
ナナ・テスカトリ 「…………わたくしは、金さんと銀さんに賛成ですわ。これ以上の戦いは無意味です」
キングチャチャブー 「…………」

485: 2009/05/02(土) 21:30:46.52 ID:oez/cUC10
ナナ・テスカトリ 「この戦いには、わたくしの教え子達も沢山参加しています。彼らが取り返しのつかない怪我を負う前に……」
テオ・テスカトル 「……全くだ。若い者は、血気が流行りすぎている。人間も必氏だ。このままでは必ず氏者が出る」
ドドブランゴ 「……戦いに氏者はつきものだ。貴様らは、みすみす勝利を目の前にして、それで引き上げろと言うのか……」
ナナ・テスカトリ 「その、何をもって勝利とするのかを、ウカム様と、アカム様は仰っているのではないでしょうか、ドド様」

487: 2009/05/02(土) 21:32:05.25 ID:oez/cUC10
ウカムルバス 「そーのとうりよぉ。アタシ達は、もーじゅうぶんなの。満足したわ」
アカムトルム 「そーよぅ。よわっちぃ人間踏み潰しても、ぜーんぜん面白くないわぁ。それより、帰ってイイコトしましょぅよぉ」
シェンガオレン 「……気色……悪ィんだよ……オカマども…………」
ショウグンギザミ 「…………父上…………起きて…………らっしゃったのです…………か…………キシャ…………」
ウカムルバス 「カニどもうるさいよ! 今はアタシ達が話してンのよ!!」
アカムトルム 「いい加減にしないと、アゴ美のアゴクラッシュが炸裂するわよ-う!!」

488: 2009/05/02(土) 21:33:13.91 ID:oez/cUC10
シェンガオレン 「…………いいじゃ……ねえか…………帰れ、役立たずども…………」
ウカムルバス 「ンなんですって!!」
アカムトルム 「キィィ! アンタ、誰に話をしてるか、分かってるの!」
シェンガオレン 「あぁ……どうしようもねェ……臆病者の……くそ野郎……くそオカマとな…………ガキが…………」
ウカムルバス 「!! ……ちょぉぉ~っと、カチンときたわ」
アカムトルム 「アンタが勝手なことばっかりするから、アゴ美が今日、みんなの盾になったんじゃなぃ! ナメんじゃないわよ!」
シェンガオレン 「………………知るか…………役立たずどもは…………みな、氏ね…………邪魔だ……」

489: 2009/05/02(土) 21:35:03.51 ID:8xAfd/1y0
ヤマツカミ 「アゴ美、キバ代、落ち着くんじゃ。シェンも、そんなに攻撃的では、話し合いにならぬ」
シェンガオレン 「…………(ニタニタ)」
ウカムルバス 「……!! でぇもぉ、おじいちゃん、このカニ生意気なのよ!!」
アカムトルム 「ンもう! 不愉快だわ! 行きましょ、キバ代。アタシ達の美肌が、磯臭くなっちゃう!」
ウカムルバス 「もう、寝る! ラオちゃん! とにかく、アタシ達、これ以上は割に合わないから、考えさせてもらうわよーぅ!」
ラオシャンロン 「…………」

490: 2009/05/02(土) 21:37:25.31 ID:8xAfd/1y0
ヤマツカミ 「……行ってしまったかぃ……何だい、話し合いにならん……」
ランゴスタクイーン 「…………あたいはここを外すよ。無駄な議論は……あんたたちでやりな……」
金レイア 「女王蜂よ! ちょっくらまぢぃ! …………行っちまッだ……」
キングチャチャブー 「オレも……戻らせてもらう。民が待っているからな……」
ラオシャンロン 「…………」
シェンガオレン 「…………ケッ…………猫の手など……いらねぇ…………獣臭ぇ、蛮族どもが…………」
ナナ・テスカトリ 「シェン様! 彼は、わたくしたちの仲間ですよ!」
キングチャチャブー 「…………カニ料理は食い飽きたもんでな…………食材の言葉なんざァ……聞こえねェな……」

492: 2009/05/02(土) 21:45:19.36 ID:8xAfd/1y0
シェンガオレン 「…………」
ショウグンギザミ 「…………」
ナナ・テスカトリ 「行ってしまわれた……これでは、集会になりません!」
テオ・テスカトル 「ラオシャンロン、とにかく、明日の攻撃をどうするか、それくらいは話し合わないと」
ラオシャンロン 「…………そうだな。その通りだ」
ドドブランゴ 「決まっている……明日は、シュレイド城に攻め込む。貴様らが臆病風に吹かれるなら、いいだろう。わしらがゆく」

495: 2009/05/02(土) 21:53:27.93 ID:8xAfd/1y0
ショウグンギザミ 「…………シェ…………キシェ……ギザミ一族も…………準備は……できている…………」
シェンガオレン 「……皆頃しの…………な…………」
ヤマツカミ 「……お主ら、先ほどから聞いていたが、どうにも、この戦いの主旨を、間違えてはおらぬか?」
シェンガオレン 「…………何ィ…………?」
ヤマツカミ 「わしらは、人間の侵攻を威嚇するために集まった。頃すことが目的ではないのじゃ」
ナナ・テスカトリ 「ええ。その点では、もう、十分目的は達したと、わたくしは思いますわ」
テオ・テスカトル 「私も同感だ。それに、これ以上、我が校の生徒達が蛮虐に走るのは、いい気分はせぬ」

500: 2009/05/02(土) 22:03:25.78 ID:8xAfd/1y0
ドドブランゴ 「……戦士は、戦ってこその戦士だ……テオ、ナナよ……貴様ら、何のために戦闘を彼らに教えた……?」
ナナ・テスカトリ 「わたくしが教えたのは、人頃しのすべではございませんわ。大切な人の身を守るための、力のありようです」
シェンガオレン 「…………キシェ……キシェ……キシェ……キシェ……キシェ!!」
ナナ・テスカトリ 「……!」
テオ・テスカトル 「シェン殿、我が妻は、何かおかしなことを言っただろうか」
シェンガオレン 「おかしすぎて…………はらわたが飛び出るかと…………思ったぜ………………キシェ……キシェ!!」
ショウグンギザミ 「シェ……シェ……(ニタニタ)」

510: 2009/05/02(土) 22:10:12.47 ID:8xAfd/1y0
シェンガオレン 「簡単だ…………人間、皆頃しに……すりゃぁ…………敵は、もう、どこにもいねェ…………」
ナナ・テスカトリ 「……しかし、それはもはや威嚇ではなく、単なる蛮行ではないでしょうか?」
ドドブランゴ 「……ナナ、テオ……貴様らには分かるまいよ」
テオ・テスカトル 「ドド殿……何を、ですか?」
ドドブランゴ 「ぬるま湯で育っている貴様らと、貴様らの教え子には、分からぬことがある……」
ナナ・テスカトリ 「…………」

512: 2009/05/02(土) 22:13:36.47 ID:8xAfd/1y0
ドドブランゴ 「一族の悲しみと、苦しみ…………それを、貴様らは、蛮行の一言で片付けるか…………」
ナナ・テスカトリ 「だからと言って、何をしても許されるわけではないのでは? 感情論では、命は語れません」
ドドブランゴ 「……貴様の言葉は、人間に対して発せられるべきものよ…………愚女が…………」
テオ・テスカトル 「…………我が妻に対する罵倒は許さぬ。ドド殿とはいえ、聞き捨てならぬな」
ドドブランゴ 「…………」
ナナ・テスカトル 「あなた様、良いのです。ドド様、少々言葉が過ぎました。ご容赦を」
ドドブランゴ 「…………」

514: 2009/05/02(土) 22:19:19.62 ID:8xAfd/1y0
金レイア 「……おめら、喧嘩はよそでやれェ」
銀レウス 「んだんだ。餓鬼じゃねンだがらよぉ」
シェンガオレン 「…………」
ヤマツカミ 「ラオシャンロン、どうするんじゃ?」
ラオシャンロン 「…………シェンの長、ドドの長、あなたたちの言い分は分かります。もっともだ」
ドドブランゴ 「…………」
ラオシャンロン 「鬱積した恨み、つらみ……悲しみ、絶望……犠牲になった仲間は、数知らず……」

515: 2009/05/02(土) 22:23:48.11 ID:8xAfd/1y0
ラオシャンロン 「私は、その亡骸を見てきた……人間に蹂躙され、骨のみになった無残な遺骸も、この目で、しかと」
シェンガオレン 「…………」
ドドブランゴ 「…………」
ラオシャンロン 「さぞや、無念であっただろう……さぞや、心をお痛めなさっただろう……その苦しみ、察するに余りあります」
ヤマツカミ 「…………」
ラオシャンロン 「しかしながら……おふた方。しばし、私に考える時間を、いただけませぬか?」

517: 2009/05/02(土) 22:29:05.72 ID:8xAfd/1y0
ドドブランゴ 「……この、敵の根城を目の前に、怖気づいたのか……」
ラオシャンロン 「いいえ……ギザミ一族、そしてブランゴ一族の武勇は、この両眼に刻み込まれております」
ドドブランゴ 「…………」
ラオシャンロン 「あなた方のお力があれば、人間を殲滅することも可能でしょう。そして、人間はそれに値する愚行をしました」
シェンガオレン 「……なら…………何でだ……? なにゆえ……すぐに殺らせねェ……」
ラオシャンロン 「…………」
シェンガオレン 「獲物ォ…………目の前によォ…………いつまで……生頃しすりゃァ…………気が済むよ…………」

519: 2009/05/02(土) 22:31:55.01 ID:8xAfd/1y0
ラオシャンロン 「私たちは、住処から離れすぎています。分かりませんか?」
ドドブランゴ 「…………!!」
ラオシャンロン 「……そうです。今、住処に残っているのは、女、子供……老人のみ。襲われれば、ひとたまりもありません」
ドドブランゴ 「……その前に、叩き潰すことを提案しているのだ……」
ラオシャンロン 「偵察隊が……人間達が、他所に助けを求めにいく動きを見せているとの、情報を掴んできました」
テオ・テスカトル 「……!」
ナナ・テスカトリ 「……!」

521: 2009/05/02(土) 22:34:35.72 ID:8xAfd/1y0
ラオシャンロン 「私たちが今、すべきこと……それを、見定める必要があります」
シェンガオレン 「…………知るか…………弱ェ奴らは氏ぬ…………それが、自然の……摂理じゃァねェか…………?」
ナナ・テスカトリ 「……わたくしたちが守るべきものは、子供たちです。それが、一番大切なことです」
シェンガオレン 「……黙ってろ…………バカ女…………てめェらの……出る幕じゃ…………ねぇ…………」
テオ・テスカトル 「………………(グルルルルルル)」
ヤマツカミ 「テオよ、不敬じゃ」
テオ・テスカトル 「…………失礼した」
シェンガオレン 「……労害は…………すっこんでろ…………止められても…………オレァ……やるぜ? 腰抜けは……氏ね……」

524: 2009/05/02(土) 22:38:07.16 ID:8xAfd/1y0
ヤマツカミ 「シェン……暴言が過ぎる。戦いとはいえ、本質を見誤っては、犠牲になった仲間にも、申し訳が立たん」
シェンガオレン 「…………氏んだのァ…………弱ェからだ…………クズどもが……いくら氏のうが……オレぁ……知らん……」
金レイア 「……いんやァ……そりゃぁ、アンタ、ちょいっと違ぇべ」
銀レウス 「すったごと言っちまっだら、おめ、何のだめに戦ってンだァ?」
シェンガオレン 「……決まってる…………血だ……」
ナナ・テスカトリ 「……!」
シェンガオレン 「血が…………足りねェ……………………」

529: 2009/05/02(土) 22:44:16.72 ID:8xAfd/1y0
ヤマツカミ 「……長とは思えぬ言葉じゃな」
シェンガオレン 「何とでも…………言え…………」
ラオシャンロン 「シェンの長、ドドの長。明日の正午だ……」
シェンガオレン 「…………?」
ラオシャンロン 「明日の正午まで、お待ちいただけないだろうか。私の顔を、立てると思って……」
シェンガオレン 「………………」
ドドブランゴ 「…………良かろう。我が戦士たちに、そう伝える……」
ラオシャンロン 「ドドの長……すまない」

535: 2009/05/02(土) 22:51:20.25 ID:8xAfd/1y0
シェンガオレン 「…………(ズシン……ズシン……)」
ショウグンギザミ 「(ギロ……ズシン……ズシン……)」
ヤマツカミ 「……行ってしまった。あの者たち……分かっているのか? 本当に……」
銀レウス 「はぁぁ~……カニはどぉーも苦手だなぁ金さんや」
金レイア 「んだなァ。あいづら、余計なごとすねぇどいいげんども」
ナナ・テスカトリ 「……ラオシャンロン様。人間が増援を呼んだというのは……?」
ラオシャンロン 「……そのように、私は聞いています」
ナナ・テスカトリ 「あぁ……何てこと……」

538: 2009/05/02(土) 22:53:35.83 ID:8xAfd/1y0
テオ・テスカトル 「子供たちがもし襲われでもしたら……」
ヤマツカミ 「……フルフル達が残っておる……上手く立ち回ると思うがの……心配じゃ」
ナナ・テスカトリ 「あなた様、わたくし、一足先に火山へと戻ります」
テオ・テスカトル 「ああ。それがいいだろう。ラオシャンロン、妻を先に帰らせてもよろしいか」
ラオシャンロン 「……仕方がないでしょう。それをお願いしようと思っておりました。クシャル姉妹も、連れて行ってください」
テオ・テスカトル 「承った。我が妻よ、すぐに彼女たちと共に、ここを発つのだ。子供たちを守りなさい」
ナナ・テスカトリ 「かしこまりました、あなた様。失礼をいたします(スッ)」

543: 2009/05/02(土) 22:58:41.98 ID:8xAfd/1y0
ヤマツカミ 「…………ラオシャンロン、引き際を誤ると、あとが怖いぞぃ」
ラオシャンロン 「分かっております、森の神よ。少し……考えさせてください」
ヤマツカミ 「…………」
テオ・テスカトル 「それでは、私も失礼する。ラオシャンロン、少し休まれよ」
ラオシャンロン 「はい。あなた方も、お仲間のもとへ、お戻りください。あまり遅いと、みな不安になる」
ヤマツカミ 「……そうさせてもらうとするかいな……」
金レイア 「んだなァ。ラオぉ、あんま難しぃく考えんじゃぁねぇよ」
銀レウス 「そんだな。おめさんが、全部しょうこだぁねんだ。みぃんな、仲間だかんな」
ラオシャンロン 「ご老人方……お心遣い、痛み入ります」

552: 2009/05/02(土) 23:18:55.46 ID:8xAfd/1y0
―深夜、別エリア―

クック 「(人間達の砦に動きはない……)」
クック 「(……もう一ヶ月近く、巣に帰っていない……蒼レウス……子クック達……)」
クック 「(私は……無事に戻ることができるんだろうか……)」
クック 「(それに、ラオシャンロンの侵攻……これは、どう考えてもやりすぎだ……)」
クック 「(抵抗力がない人間達の、野営地を襲うなんて……)」
クック 「(沢山氏んだ……あの中には、私のように……家に、家族がいる者もいたのだろうか……)」

554: 2009/05/02(土) 23:22:12.42 ID:8xAfd/1y0
ナルガクルガ 「クックよ。何を、見ている……」
クック 「あァ、ナルガ……休まないのかい?」
ナルガクルガ 「…………眠れなくてな…………」
クック 「…………そうか。こちらへ、来るといい。夜風が当たる」
ナルガクルガ 「…………お前は…………」
クック 「? どうした?」
ナルガクルガ 「…………いや……気にするな。これは酒だ。飲め」

555: 2009/05/02(土) 23:25:24.85 ID:8xAfd/1y0
クック 「悪いな(グビリ)うむ、美味い」
ナルガクルガ 「……(グビリ)」
クック 「お前は……森に、想い人はいないのか? 気には、ならないか?」
ナルガクルガ 「…………こんな顔をした男を好く、物好きな女はいないな。俺は一人身よ……」
クック 「……そうか」
ナルガクルガ 「……独りが気楽だ……独りはいい。余計なことに、気を回さずに済む……」

557: 2009/05/02(土) 23:29:37.03 ID:8xAfd/1y0
ナルガクルガ 「女ァ守って、餓鬼守って、そんながんじがらめの生活ァ、俺はまっぴらだ。神経を疑う」
クック 「……はは。違いない」
ナルガクルガ 「………………」
クック 「…………(グビリ)」
ナルガクルガ 「…………歯ごたえがなかった」
クック 「……何がだ?」
ナルガクルガ 「ここに近づくにつれ、人間の抵抗が弱まってきている。今日は、無抵抗に近かった」

559: 2009/05/02(土) 23:30:44.45 ID:8xAfd/1y0
クック 「…………」
ナルガクルガ 「胸の奥がな……ムカムカする。この感情は、何だ? このイラつきは……何だ?」
クック 「…………」
ナルガクルガ 「俺ぁ、人間が嫌いだ。反吐を吐くほど嫌いだ。奴らは小ずるく、卑しく、卑怯だ。威厳も尊厳もありはしない」
クック 「……(グビリ)」
ナルガクルガ 「だが……抵抗も、逃走もせず……ただ、ただ恐怖の目で俺を見る。あの目だ……あの目が……」
クック 「…………」
ナルガクルガ 「気にいらねェ(グビリ)」

561: 2009/05/02(土) 23:40:04.58 ID:8xAfd/1y0
クック 「それは、お前が戦士だからだよ……ナルガ」
ナルガクルガ 「…………」
クック 「……戦いとは、その先にあるものを見据えんと、途端に空虚に、むなしくなるものさ……」
ナルガクルガ 「クックよ。俺は、頃してもいいのか」
クック 「…………」
ナルガクルガ 「このまま、命令の赴くまま、頃してもいいのか。皆頃しにしてもいいのか」
クック 「それは……私にも、分からん。誰にも分からん」
ナルガクルガ 「…………」
クック 「ただ……私は、妻や、子供が安心して……ハンターの脅威がない世界で暮らせるよう、それだけを願っている」

562: 2009/05/02(土) 23:45:56.80 ID:8xAfd/1y0
クック 「頃す理由、戦う理由、そんなものは分からん……ただ、それだけだ」
ナルガクルガ 「…………」
クック 「それだけなんだ……」
ナルガクルガ 「…………(グビリ)」
両耳ガルルガ 「クック、見張り交替の時間よ」
クック 「あァ、両耳ガルルガさん。息子さんは、大丈夫だったかい?」
両耳ガルルガ 「ええ。少し前に出すぎて、爆弾が耳をかすっただけ。いたって無事。ナルガさん、こんばんは」
ナルガクルガ 「…………ああ」

569: 2009/05/02(土) 23:50:40.47 ID:8xAfd/1y0
両耳ガルルガ 「お酒? 私にもくれない?」
ナルガクルガ 「……(スッ)」
両耳ガルルガ 「どうも(グビッ)~~っ、効くわァ」
ナルガクルガ 「女に飲める酒じゃァねぇ」
両耳ガルルガ 「カッコつけてくれるじゃない。これくらい何てことはないわ(グビリ)」
ナルガクルガ 「…………」
クック 「……なァ、息子さんは、ここいらで森に帰したほうがいいと、私は思うんだ」
両耳ガルルガ 「…………そうねェ。万が一のことがあって、氏んだあの人の後でも追ったらたまんないわ……」

574: 2009/05/02(土) 23:55:52.62 ID:8xAfd/1y0
ナルガクルガ 「……ガルルガか……奴は俺の隊だったな……」
両耳ガルルガ 「あの子、どう? 戦士として使えそう?」
ナルガクルガ 「命令を聞かん。あれでは邪魔になるだけだ。性根からどうにかしなければ、使い物にはならん」
両耳ガルルガ 「あははは! はっきり言うわね!」
ナルガクルガ 「…………」
両耳ガルルガ 「……まっ……あの子は、随分と甘やかしてきたから。あの人との、今残ったたった一つの思い出だしね……」
クック 「…………帰すべきだ。もう、勝敗は決した。今なら危険もない。帰り道に襲われることもない」

581: 2009/05/03(日) 00:05:26.40 ID:UXXN61bI0
両耳ガルルガ 「…………分かってる。分かってるよ。明日、帰すつもりなんだ」
クック 「そうか……あんたも、一緒に戻ったらいい」
両耳ガルルガ 「……! 私はまだ戦えるわ! 女だからって、甘く見ないでほしいものね」
ナルガクルガ 「…………戦いの場に女はいらねェ。目障りだ」
両耳ガルルガ 「なっ……言ってくれるじゃない。二人とも。女の強さ、分かってないみたいね」
ナルガクルガ 「…………そのかしましさが、目障りだと言っている」
両耳ガルルガ 「はぁ、青臭いボーヤが、母と大地は敬えって、習わなかった?」

582: 2009/05/03(日) 00:08:01.32 ID:UXXN61bI0
ナルガクルガ 「……俺は孤児だ。生まれた瞬間に、冷たい谷底に捨てられた」
クック 「…………」
ナルガクルガ 「事故なのか……故意なのかは知らんがな。母も、大地も、俺にとっては忌まわしい単語でしかない」
両耳ガルルガ 「…………ぷっ……(バシバシ)」
ナルガクルガ 「な……何をする……!」
両耳ガルルガ 「なぁに、それ? 悲劇の主人公ぶっちゃってさァ、新手のくどき文句?」
ナルガクルガ 「ひっつくな……」
両耳ガルルガ 「あんた、よく見るといーい男じゃない。そんなしかめっ面してなきゃ、可愛いわよ」
ナルガクルガ 「…………! 離れろ……!!」

588: 2009/05/03(日) 00:11:45.03 ID:UXXN61bI0
両耳ガルルガ 「ねぇ、そんな野暮なこと言わずにさァ、お姉さんと飲もうよ」
ナルガクルガ 「……ちっ。俺に触るな!!」
両耳ガルルガ 「(ひょい)おぉっと。情熱的なアプローチ! いい男が、そんなしわ寄せてちゃ、台無しだよ」
ナルガクルガ 「~~~……!!」
クック 「両耳ガルルガさん、若い男をあんまりからかうものじゃないよ」
両耳ガルルガ 「私が若い女じゃないっての? まだまだ現役よ」
ナルガクルガ 「…………」
両耳ガルルガ 「あれ? 黙っちゃった? 悲劇の過去の、続きはないの? だーめよ、女の子には最後まで話しなきゃ」

595: 2009/05/03(日) 00:20:54.53 ID:UXXN61bI0
ナルガクルガ 「…………」
両耳ガルルガ 「……ふぅん、そういうキャラでいくんだ(グビリ)ま。寡黙な男ってのもいいかもね」
クック 「……両耳ガルルガさん、ラオシャンロンの決定は、まだ出ないか?」
両耳ガルルガ 「あぁ、そうねぇ……このまま砦に攻め込んで、終わりじゃない? 人間達、もう抵抗する気ないでしょ?」
クック 「やはり攻め込むのか……」
両耳ガルルガ 「あとは、カニと猿。あいつらをどうにか上が抑えてくれることを願うわ」
ナルガクルガ 「……ギザミ一族は、勝手な行動が多すぎる……今日の侵攻も、八割がた奴らの殺戮だった……」
両耳ガルルガ 「…………(ぐびり)」

606: 2009/05/03(日) 00:37:20.65 ID:UXXN61bI0
両耳ガルルガ 「……ま、この戦いも、もうじき終わるわ。いいじゃない。私たちへの被害が、段々減ってるんだから」
クック 「…………私は、そうは思わないんだ……」
両耳ガルルガ 「……え?」
ナルガクルガ 「…………」
クック 「妙な胸騒ぎがする……何だか、酷いことが起こりそうな……」
両耳ガルルガ 「やだ、不安になるようなこと言わないで」
クック 「…………あァ。すまない」
ナルガクルガ 「……いや、俺もそれは感じている」

608: 2009/05/03(日) 00:40:11.77 ID:UXXN61bI0
両耳ガルルガ 「ナルガさんまで……悪いことが起こって欲しいの? あなたたち」
ナルガクルガ 「い……いや、そういうわけではないが……」
クック 「…………」
両耳ガルルガ 「じゃ、もっと気楽にいきましょ。ほら、顔の皮が突っ張っちゃうわよ。一、二、はい笑ってー」
ナルガクルガ 「…………」
両耳ガルルガ 「……駄目ね。女の子に好かれないわよ。男はね、時々ふっと見せる顔が一番素敵なの。折角いい男なのに」
ナルガクルガ 「……余計なお世話だ(ぷいっ)」
両耳ガルルガ 「あ、ちょっと今照れた? ねぇ照れた?」
ナルガクルガ 「………………」
両耳ガルルガ 「顔赤くなってるわよぉ、照れてるんでしょう?」
ナルガクルガ 「………………」

610: 2009/05/03(日) 00:41:26.54 ID:UXXN61bI0
クック 「(……あのナルガが、怒鳴りつけないとはな……)」
クック 「(両耳ガルルガさんの人柄もあるのだろうが、彼もまた、不安になっているのだろう……)」
クック 「(……いやな風だ……生温い……)」
クック 「(星も見えない……明日は雨か?)」
クック 「(黒い空だ……まるで、ぶちまけた血のようだ……)」
クック 「(人間の砦には、気配がない…………)」
クック 「(もう、勝利は確定しているというのに、この胸騒ぎは一体何だ……?)」



13: 2009/05/03(日) 21:38:36.88 ID:Xjk4FDAN0
―朝―

クック 「(……やはり雨……か。生温く、変な雨だ……)」
クック 「(太陽も中途半端に昇っている……)」
クック 「(私は一足先に休んだが、ナルガは、迷いを振り切ることができたのだろうか……)」
クック 「(余計な気負いをして、危険が及ばなければいいが……)」
クック 「(……あれは、キングチャチャブー……? 何だ? こんな、朝早くに……しかも一人だ……)」

14: 2009/05/03(日) 21:41:27.32 ID:Xjk4FDAN0
キングチャチャブー 「…………」
クック 「……キング。何を見ているんだ?」
キングチャチャブー 「……(じろり)…………てめぇ……にゃ、関係ねェ」
クック 「…………」
キングチャチャブー 「…………」
クック 「……そうか、邪魔をしたな。しかし、この雨だ……体を壊さないようにな……」

17: 2009/05/03(日) 21:47:16.46 ID:Xjk4FDAN0
キングチャチャブー 「…………」
クック 「その割には、視線が尋常ではないが……? 何だ?」
キングチャチャブー「……気づかねェか……愚図が……」
クック 「……!! あれは……!」
キングチャチャブー 「………………」
クック 「人間達の砦の門が…………開いている!?」



22: 2009/05/03(日) 21:52:23.92 ID:Xjk4FDAN0
キングチャチャブー 「…………今から、数分前に……な。見張りの戦士が報告してきやがった……」
クック 「これは……!? 人間達は、砦を明け渡すつもりなのか!?」
キングチャチャブー 「…………偵察に出た戦士たちが……戻らねェ」
クック 「な……っ!?」
キングチャチャブー 「……嫌な臭いだ……あの中から……氏臭がする」
クック 「ラオシャンロンに知らせねば……」

25: 2009/05/03(日) 21:59:28.75 ID:Xjk4FDAN0
キングチャチャブー 「先ほど…………ギザミ一族が、突撃を開始した……」
クック 「……!!」
キングチャチャブー 「じきにシェンガオレンが動き出す……オレ達ァ……巻き込まれンのァ、御免だ……」
クック 「そんな……私たちには、ラオシャンロンの命令は、何にも出ていないぞ!」
キングチャチャブー 「……馬鹿どもがよ……おおかた、手柄ァ狙って先走った……」
クック 「……あれは……シェンガオレン! 馬鹿な! もうじき砦に到着してしまうじゃないか!!」
キングチャチャブー 「…………」

29: 2009/05/03(日) 22:03:35.60 ID:Xjk4FDAN0
>>24
気長にお待ちくださいね

クック 「キング! 何をしている!? ギザミ一族を止めねば!!」
キングチャチャブー 「奇面族は…………ここで、手を引く…………」
クック 「何!? あれは、絶対に人間の罠だ! キング、私たちを見捨てるのか!?」
キングチャチャブー 「……契約外のこたァ……しねェ主義でな……」
クック 「契約外……?」
キングチャチャブー 「毒よ…………ありゃァ……毒爆弾の臭いよ…………」
クック 「何だって!? 人間は、血迷ったのか!? そんなことをすれば、自分たちも……」

34: 2009/05/03(日) 22:09:16.58 ID:Xjk4FDAN0
キングチャチャブー 「…………見ろ。シェンガオレンの侵攻を見て、開戦と勘違いした馬鹿野郎どもが……突撃を始めた……」
クック 「あれは……グラビモスの隊じゃないか……まだ、何の命令も出ていないぞ!」
キングチャチャブー 「先走りってやつァ……怖ェな。打ち合わせェ、しねェからこうなる」
チャチャブー 「ビィ!(サササッ)」
キングチャチャブー 「…………報告しろ」
チャチャブー 「ビィ! 先遣隊は連絡途絶! 一番隊から十四番隊は所定位置で待機しています!」
キングチャチャブー 「……引き上げだ。この戦、手ェ出す価値もねェ」
チャチャブー 「ビィ! ビッ! ビィ!(ササササササッ)」

40: 2009/05/03(日) 22:16:30.59 ID:Xjk4FDAN0
ナルガクルガ 「……クック! 何が起こっている!? 俺の隊の半数がいなくなっているぞ!」
クック 「ナルガ……!? 何……そんな、馬鹿な……!」
キングチャチャブー 「大方……あの中だな……早氏にが望みか…………それも、また自由」
クック 「このままでは、むざむざ毒の中に飛び込むようなものだ! 止めねば!!」
ナルガクルガ 「待て! クック!!」
クック 「(バサァッ! バサァッ!)」
キングチャチャブー 「馬鹿が…………氏にてぇ奴は、氏なせときゃいい…………」
チャチャブー 「ビッ! ゴッドファーザー! 全軍撤退準備ができました!」
キングチャチャブー 「…………あばよ…………オレたちァ、一足先に奇面の里へ戻るぜ…………」
ナルガクルガ 「…………(ちぃぃ!)」

44: 2009/05/03(日) 22:20:20.98 ID:Xjk4FDAN0
クック 「(ぐっ……雨で、臭いが分からなくなっている……!)」
クック 「(まだヤマツカミ様たちは、気づいていらっしゃらないのか!!)」
シェンガオレン 「(ズゥゥゥゥン…………ズゥゥゥゥン…………)」
クック 「(ギザミ一族……! 総出じゃないか……勝手な真似を……!)
クック 「(……あれは、両耳ガルルガさん!)」
クック 「両耳ガルルガさん!(バサァッ! バサァッ!)」
両耳ガルルガ 「クックさん! ガルが……あの子が、勝手にギザミ達についていってしまったの!(バサァッ! バサァッ!)」
クック 「何だって!? この攻撃は、ラオシャンロンの……」
両耳ガルルガ 「こんな命令は出ていないわ! それに、人間の砦が……何だかすごく、不気味な雰囲気なの!!」

48: 2009/05/03(日) 22:24:15.26 ID:Xjk4FDAN0
クック 「くっ……やっぱりか。キングチャチャブーが、人間が毒を充満させていると……」
両耳ガルルガ 「えぇ!? これは……罠!? そんな……ガル!!」
クック 「急ごう。今なら、まだ間に合うかもしれない」
両耳ガルルガ 「分かったわ。スピード出すわよ!」
クック 「ああ! ゆくぞ!!」
両耳ガルルガ 「(ガル…………無事でいて……!!)」

59: 2009/05/03(日) 22:38:59.40 ID:Xjk4FDAN0
―別エリア―

ウカムルバス 「ちょっぉっとちょっとぉぉぉ! なぁによこれ! 聞いてないわよーぅ! こんなのぅ!」
アカムトルム 「アゴ美! カニに混じってヤ・ン・グたちが見えるわよぅ!!」
ウカムルバス 「ンなぁんですってぇ? キバ代ぉ、こんなの予定にあったかしら?」
アカムトルム 「ラオちゃん……もしや、アタシ達のことはもー頼りにしないってことなんじゃないかしら?」
ウカムルバス 「なっ……キィィ! あーんなにモーションかけたのに、今更スルーってわけ?」
アカムトルム 「許せないわ! アタシ達という貴重なステディを無視して!!」

62: 2009/05/03(日) 22:48:03.88 ID:Xjk4FDAN0
ウカムルバス 「とりあえず、ラオちゃんにもいっちょ直談判よ!」
アカムトルム 「アゴ美! ラオちゃんが生意気言うなら、アゴクラッシュやっちゃいな!」
ウカムルバス 「承知よォ! ラオちゃん……オカマ怒らすと怖いわよぉぉぉ!」
ヤマツカミ 「(ザザザザザ)アゴ美、キバ代! いるか!!」
アカムトルム 「……っ! なぁによおじいちゃん! アタシ達、今、恋という名の怒りの炎に燃えてるの!」
ウカムルバス 「じゃぁぁーましないでくれるぅ!?」
ヤマツカミ 「それどころじゃないんじゃ! お主ら、急いで仲間達を止めてくれ!!」

66: 2009/05/03(日) 22:53:38.17 ID:Xjk4FDAN0
ウカムルバス 「…………えぇぇぇ!? 毒ガスゥゥゥ!?」
アカムトルム 「んまっ! 人間はどこまで行っても野蛮ねぇ」
ウカムルバス 「そうよねぇ。ここまで来ると見上げたものだわぁ」
ヤマツカミ 「去り際にキングチャチャブーが言い残して行ったんじゃ。もはや、ギザミ一族を抑えられるのはお主らしかおらぬ!」
ウカムルバス 「そうはいっても……ねェ、キバ代? アタシ達も、毒ガスの中に入らなきゃいけないの?」
アカムトルム 「やぁねぇ。お肌が汚れちゃう。カニなんていーじゃない別にぃ」
ウカムルバス 「ヤング達も、勝手に出ていったんでしょーぅ? 自分の身くらい自分で守って欲しいわぁ~」

70: 2009/05/03(日) 22:59:13.44 ID:Xjk4FDAN0
ヤマツカミ 「わしからのお願いじゃ。行っとくれ……!!」
ウカムルバス 「えぇぇぇぇ~~やぁよぉ、もう。あの子達、多分氏にたいのよぉ」
アカムトルム 「そうよそうよぉ。やりたい子にだけやらしとけばいいの。それに、こんな雨の中出て行ったら、鱗が汚れちゃう」
ヤマツカミ 「このじじいが、頼んでも駄目か……」
ウカムルバス 「だぁってぇ、ラオちゃんが止めてないんでしょーぅ?」
ヤマツカミ 「違う! ラオシャンロンは、シェンガオレンを止めるために、動き出した」
アカムトルム 「……!!」
ウカムルバス 「…………何ですって……? ラオちゃんが、ここに来るの? 」

73: 2009/05/03(日) 23:04:20.62 ID:Xjk4FDAN0
ヤマツカミ 「もうじき、彼自身がこの砦に突撃をかける。その時までに、若者たちを退避させねばならぬ」
アカムトルム 「……だってさぁ。どうするぅ、アゴ美ぃ?」
ウカムルバス 「そうねぇ、キバ代。でもぉ、ラオちゃんのお顔に傷でもついたら、大変だわぁ」
アカムトルム 「うぅっ、気乗りがしないわ。地面だってこれ、どろんこじゃないの」
ウカムルバス 「ほんとやぁねぇ。あたしたちのつるつるの美肌が、ささくれ立っちゃう」
ヤマツカミ 「頼めるか、お主たち……わしは、テオと共に皆の衆を下がらせにゆく」
ウカムルバス 「…………あっ、おじいちゃん、ちょぉっとぉ!」
アカムトルム 「……えぇ? これ、アタシ達行かなきゃいけない系?」
ウカムルバス 「選択の余地がない系? かーんべんしてほしいわよーぅ」

79: 2009/05/03(日) 23:13:03.76 ID:Xjk4FDAN0
―シュレイド城―

ガルルガ 「(人間め……ついに俺達の力に、恐れをなして降伏か……)」
ガルルガ 「(ケケ……ッ! ナルガの野郎、チキンなこと言いやがって。どうってことねェじゃねーか)」
ガルルガ 「(あんなガン黒よりも、俺の方が沢山殺せる。殺れる! 俺の方が、実力がある!!)」
ガルルガ 「(どこだ……ゲス人間ども……突き頃して、燃やし頃してやる……)」
ガルルガ 「(一匹も逃がさねェ。人間は敵だ、クズだ。下品で卑しい生き物だ)」
ガルルガ 「(たらふく頃してやる……)」

81: 2009/05/03(日) 23:15:27.49 ID:Xjk4FDAN0
ガルルガ 「(……昨日の夜……かかさま、ナルガの野郎と……)」
ガルルガ 「(あんなに楽しそうに…………)」
ガルルガ 「(……かかさまは、俺の前では、あんな風に笑ったりはしねェ……)」
ガルルガ 「(くそっ……くそっ……! 許せねェ……ナルガ…………)」
ガルルガ 「(あんな脆弱野郎なんかより、俺の方が殺れる! 殺れるんだ!!)」
ガルルガ 「(お手柄目の前にして、森に帰れだァ……? かかさまは、俺の実力を分かってねェ)」
ガルルガ 「(なら見せつけてやる……俺が、どんだけ強くて、どんだけ戦えるのか!!)」

86: 2009/05/03(日) 23:23:50.74 ID:Xjk4FDAN0
ヒプノック 「YO、何か気配がねェな。城門の中にも、誰もいやしねェ」
ゲリョス 「(チッチッチッチッ)」
ガルルガ 「ゲリョ、舌打ち止めろ」
ゲリョス 「………………」
ガルルガ 「しかしよ……確かに不気味だな……雨のせいで、霧も深くて前がよく見えねェ」
ヒプノック 「ヘイ、ブラザー。やっぱよ、一旦ビッグボスのとこに戻った方がいいんじゃねェか?」
ガルルガ 「…………野郎のことを言うな。あんな軟弱野郎の命令なんざ、屁でもねェ」
ゲリョス 「…………クケッ……ケッ……軟弱…………(ニタニタ)」

87: 2009/05/03(日) 23:26:11.75 ID:Xjk4FDAN0
ヒプノック 「Oh,でもよ……」
ガルルガ 「ンだァ? てめぇ……ビビってやがんのか?」
ヒプノック 「い、いや……そんなことはねぇよ。俺達はレジェンドになるんだ、だろ?」
ガルルガ 「怖気づいたんなら消えろや……俺一人でやれる……」
ゲリョス 「(チッチッチッチッチッ)」
ヒプノック 「ま、待てよ。俺もトゥギャザーするってよ!」

89: 2009/05/03(日) 23:30:44.59 ID:Xjk4FDAN0
ガルルガ 「(しかし……マジで誰もいねェな……)」
ガルルガ 「(人間どもは、ここを捨てて逃げ出したのか?)」
ガルルガ 「(いや……この砦を越えれば、もう、すぐに人間の根城だ……)」
ガルルガ 「(まさか、昨日の戦闘で、本当に皆頃しにしちまったのか……?)」
ガルルガ 「(ちぃっ。だとしたら、わざわざ抜け出して、カニ野郎に便乗してきた意味がねェ)」
ガルルガ 「(せめて生き残りハンター、一人だけでも首を取らなきゃァ、かかさまに……)」
ガルルガ 「…………」

97: 2009/05/03(日) 23:46:35.47 ID:Xjk4FDAN0
ヒプノック 「ヘイ、ガルルガ! 何かよ、さっきから臭くねェか?」
ガルルガ 「あん? ……そういや、確かに臭ェな……何だ? 何か、腐ったみてェな臭いだ」
ヒプノック 「下から流れてきてるぜ。何の臭いだ? 鼻の奥が気持ち悪ィ」
ゲリョス 「(くんくん)…………」
ヒプノック 「人間の姿も見えねぇし、気分が悪ィな。ソーバッド。獲物はどこよ?」
ゲリョス 「…………(チッチッチッチッ)」
ヒプノック 「ヘイ、ゲリョ公! 勝手に動き回るな!」
ゲリョス 「…………」
ヒプノック 「ちぃ。いつ見ても何考えてるかわかんねぇ奴だ」

99: 2009/05/03(日) 23:50:06.38 ID:Xjk4FDAN0
ガルルガ 「煙を出してやがる……爆弾か!?」
ゲリョス 「グ……ガ…………ガガ…………(ズゥゥン)」
ヒプノック 「ゲリョ公!!」
ゲリョス 「か……体…………う………………動か……ね………………」
ガルルガ 「……毒か!? あの煙出してる玉!!」
ヒプノック 「WAHT(何)!? 毒玉!?」
ガルルガ 「……人間が一度だけ、使ってるとこを見たことがある……」
ヒプノック 「…………ヘイ、良く見ると……街のいたるところに、あの玉あるぜ……」

100: 2009/05/03(日) 23:53:45.90 ID:Xjk4FDAN0
ガルルガ 「…………ちぃっ。この霧、あれのせいか」
ヒプノック 「おいおい……」
ゲリョス 「…………ガ……ガ…………(ズル……ズル……)」
ヒプノック 「ゲリョ公を連れて出ようぜ。このままじゃ、俺達もやべェ」
ガルルガ 「…………ちっ…………」
ゲリョス 「ガ……(カチッ)」
ガルルガ 「……?」
ゲリョス 「(ズドォォォォォン!!)」
ヒプノック 「!!? がっ…………何だ!? 爆発した!!」

10: 2009/05/05(火) 21:53:05.00 ID:Vl.QX3k0
第3章の後半、過去編で、シェンガオレンが勝手に侵攻をはじめたところからです

イャンガルルガ、ヒプノック、ゲリョスは、シュレイド城に入り込みますが、内部には毒が充満していました
そしてゲリョスは罠にかかり、爆弾にやられてしまいます

13: 2009/05/05(火) 21:54:19.78 ID:Vl.QX3k0
ガルルガ 「ゲリョ公ォォォ!!」
ゲリョス 「…………ガ…………カ……」
ヒプノック 「……ひでぇ……頭のクリスタルが……」
ガルルガ 「ちっ……ヒプノック! ゲリョ公のケツ持て。ここを出るぞ」
ヒプノック 「……あァ。人間どもめ……狂ってやがる! 毒ガスに爆弾だとォ……デンジャラス過ぎるぜ!」
ガルルガ 「…………許せねェ……戦うことさえもしねぇのか……!」
ゲリョス 「………………」
ヒプノック 「ブラザー! ゲリョ公が……」
ガルルガ 「気絶しただけだ。とにかく、毒ガスに、人間がいねェなら処置がねェ。ゲリョを救護隊に連れてくぞ」

17: 2009/05/05(火) 21:55:56.02 ID:Vl.QX3k0
ヒプノック 「…………? ……!」
ガルルガ 「……?」
ヒプノック 「…………おい、ガルルガ……俺らァ、どうやらハメられたみてぇだぜ」
ガルルガ 「あん? 寝ぼけたこと……言ってんじゃ…………」
ヒプノック 「何か聞こえるぜ……Oh,Sit! こりゃ、人間のアレだ……」
ガルルガ 「アレ……? まさか……! ……奴ら、俺らを最初ッから誘い出すつもりだったのか……!!」

18: 2009/05/05(火) 21:56:50.27 ID:Vl.QX3k0
ヒプノック 「ありゃぁ……竜撃槍……! しかも、動くように車輪がついてやがる……」
ガルルガ 「こっちに来る……しかも、乗ってる人間! 奴ら、マスクをつけてやがる!! 自分らは安全なのか……!」
ヒプノック 「ど……どうすんだ! こっちに来るぞ! オレ達ァ竜じゃねぇ! あんなの受けたら、一発でお陀仏だ!!」
ガルルガ 「……ちぃぃ!」

19: 2009/05/05(火) 21:57:25.60 ID:Vl.QX3k0
ガルルガ 「(ゴゥッ!!)」
ヒプノック 「……! ブラザーの火の玉でも……傷がつかねぇ! 人間ども……あんな奥の手を隠してやがった!!」
ガルルガ 「はぁ……はぁ……駄目だ……毒で、体が痺れてきやがった……」
ヒプノック 「Very,シット……俺もだ……逃げるぜ、ブラザー……」

20: 2009/05/05(火) 21:58:19.35 ID:Vl.QX3k0
ガルルガ 「……俺ァ……逃げねェ……」
ヒプノック 「何アホ言ってんだ! あんな戦車には、俺達みてぇなスモールバードはかなわねェ!」
ガルルガ 「……ここで逃げたら……正真正銘のアホになっちまう。かかさまにも顔向けができねぇ……!」

21: 2009/05/05(火) 21:59:39.76 ID:Vl.QX3k0
ヒプノック 「ブラザー! ヘイ! 待てよ!!」
ガルルガ 「てめぇらなんぞに……くそ人間なんぞに……俺らが負けるか! こんな卑怯くせぇ手で、やられてたまるか!!」
ヒプノック 「無茶だ! あんな大きさの竜撃槍にゃ、とてもかなわねェ!」
ガルルガ 「うおぉぉおおお! (ゴウッ! ゴウッ!)」
ヒプノック 「……駄目だ! イッツソーナンセンス! 効いちゃいねェ!!」
ガルルガ 「まだだ……乗ってる人間を頃しゃァ止まる!! (バサァッ!)」
ヒプノック 「ブラザァァ!」

22: 2009/05/05(火) 22:00:23.10 ID:Vl.QX3k0
ガルルガ 「[ピーーー]ェ! くそどもがァァァ!(バサァ! バサァ!!)」
ヒプノック 「(パシャァァ!)ガッ……! 閃光玉を投げてきやがった!」
ガルルガ 「ギャォォォォ!! (ズゥゥゥゥン!!)」
ヒプノック 「……! 直撃か! ブラザーが撃ち落された! あのままじゃ踏み潰されちまう!」
ガルルガ 「ガ……くそ……畜生……! 目が……目がッァ!」
竜撃戦車 「…………(ガラガラガラガラ)」

23: 2009/05/05(火) 22:02:23.75 ID:Vl.QX3k0
××××× 「グォォォォォ!!!(ズシン!)」
竜撃戦車 「……!!(ズズズッ!)」
ヒプノック 「! 何か飛び出してきやがった……ありゃあ……!」
グラビモス 「何してるガキども! 下がれェェ! (ズシン! ズシン!)」
竜撃戦車 「……! ……!」
ヒプノック 「す……すげェ! 戦車を一匹で押し戻してやがる!」
グラビモス 「卑怯者どもがぁぁ! くたばれ! くたばれやァァァ!(ズシン! ズシン! ズシン!)」
竜撃戦車 「! ……! ……!(ズズ……ズ……ズズズ……)」

24: 2009/05/05(火) 22:04:16.51 ID:Vl.QX3k0
ヒプノック 「……! オヤジィ! 危ねェ!!」
グラビモス 「っつぉらぁぁぁぁ!! しゃらぁぁぁ! (ズシン! ズシン!)」
竜撃戦車 「(キュラキュラキュラキュラ)」
ガルルガ 「……ッ……卑怯な手ェばっか使いやがって……くそどもが……」
グラビモス 「ガキィ! 邪魔だ下がれえぇぇ!」
ガルルガ 「グラビモス!? っざけんなァ! 俺ァてめぇらの助けなんざ……」
竜撃戦車 「(キュラキュラキュラ…………ジャギィィィィン!!!)」
グラビモス 「っうおお…………お…………」
ガルルガ 「………………ぁ……?」

25: 2009/05/05(火) 22:05:25.20 ID:Vl.QX3k0
竜撃戦車 「(キュルキュルキュル……)」
グラビモス 「……が……ぁ……」
ヒプノック 「(オヤジの体を、何本も槍が……)」
ガルルガ 「あぁ……? あ……」
グラビモス 「っごはッ! ガ……っぁ……(ズゥゥゥゥン)」
竜撃戦車 「……(ガラガラガラガラ)」
ヒプノック 「(向かってきやがる! オヤジの攻撃でも、まだ壊れねェのか!!)」
ガルルガ 「あ……? は…………何だ、これ……」
グラビモス 「………………」
ガルルガ 「おい、グラビモス……何寝てンだ? ここァ、敵の本拠地だぜ……?」
グラビモス 「………………」

28: 2009/05/05(火) 22:06:37.81 ID:Vl.QX3k0
グラビモス 「………………」
ガルルガ 「……畜生! 畜生ォォォ!!(ゴゥッ! ゴゥッ!)」
ヒプノック 「駄目だブラザー! マジに逃げるんだ! この戦車パねェ! まじパねェよ!」
ガルルガ 「くそが! くたばれ……くたばれぇぇ!(ゴウッ! ゴウッ! ゴウッ!)」
竜撃戦車 「……(ガラガラガラ……キュラキュラキュラキュラ)」
ヒプノック 「ブラザァァァ! また槍ィ出すぞ! 避けろ!!」
ガルルガ 「逃げねェ……俺ァ逃げねェ! 俺は戦士だ! 戦士のはずなんだ!!」
竜激戦車 「(キュラキュラキュラキュラ)」

30: 2009/05/05(火) 22:09:07.59 ID:Vl.QX3k0
ガルルガ 「俺達は勝ってた……勝利は、もう目の前のはずだ! こんなゲスども、蹴散らせる……やれるはずなんだ……」
ガルルガ 「(くそ……くそ! 何で壊れねェ! 鋼鉄でできてやがるのか……)」
ガルルガ 「(でけぇ……周りの民家をなぎ倒して……突き進んできやがる!)」
ガルルガ 「(かかさま……)」
ガルルガ 「(いや……俺がやる。止めてやる! 俺一人でやれることを証明するンだ!)」
ガルルガ 「(ガン黒の力は借りねェ……かかさまの力も借りねェ……! 俺は戦士だ! 立派な、一人前の戦士だ!!)」

31: 2009/05/05(火) 22:10:22.02 ID:Vl.QX3k0
ガルルガ 「っがああああ! (バサァッ!)」
ヒプノック 「やめろォォォ!」
竜撃戦車 「(キュラキュラキュラ……ジャキィィィィン!)」
ガルルガ 「(ドズッ!)ギャァァァアア!(ズゥゥゥゥン)」
ヒプノック 「ひっ……顔面……直撃……」
ガルルガ 「耳が……俺の、耳……耳が……耳がァァァ!!!」
竜撃戦車 「(キュルキュルキュル……ガラガラガラガラ)」

32: 2009/05/05(火) 22:11:09.14 ID:Vl.QX3k0
竜撃戦車 「(ジャコ、ジャコ、ジャコ、ジャコ)」
ヒプノック 「はは……嘘、だろ? 中から、大砲かよ……あんなにたらふく出してよ……」
竜撃戦車 「(ギギギ……)」
ガルルガ 「はぁ……はぁ……ぐっ……く……くそが……」
ガルルガ 「(くそ……耳が片方聞こえねェ……吹っ飛ばされたのか? 槍に……!)」
ガルルガ 「(毒で……体も痺れて…………く、苦しい……)」
ガルルガ 「卑怯だ…………」

33: 2009/05/05(火) 22:11:57.06 ID:Vl.QX3k0
ガルルガ 「卑怯だ……! 卑怯だ! 卑怯だ! 戦えェェ!!!」
竜撃戦車 「………………(ギギ……)」
ガルルガ 「降りてきて、俺らと戦えェェ! サシなら負けねェ! 出て来い! 降りてきやがれぇえぇ!」
ヒプノック 「(ブラザーはもう駄目だ……殺られる……!)」
ヒプノック 「(……! この地鳴りは……Oh,My,Godness!! 奴らだ!」
ヒプノック 「間に合ったァァ!!」
ウカムルバス 「そぉぉぉぉぃい!!(ズシンズシンズシンズシン)」
アカムトルム 「っっっしゃぁぁぁぁ!!(ズシンズシンズシンズシン)」

34: 2009/05/05(火) 22:12:23.43 ID:Vl.QX3k0
ウカムルバス 「行くわよォキバ代!」
アカムトルム 「オーライよぉ、アゴ美ィ!」
ウカムルバス 「愛と!」
アカムトルム 「涙の!」
オカマ二人 「トゥインロォォォド!(ズゥッシィィィィン!)」
竜撃戦車 「……!!!(ズズズズズズズ)」
ヒプノック 「すげぇ!! あんなに遠くに押し戻した!!」

35: 2009/05/05(火) 22:13:46.53 ID:Vl.QX3k0
アカムトルム 「はぁ……はぁ……アゴ美、何コレ!?」
ウカムルバス 「分からないわ……でも、とても不気味なモノであることは間違いないわ……」
竜撃戦車 「(キュラキュラキュラ)」
アカムトルム 「……! 何かやらかすつもりよォ!」
ウカムルバス 「さぁぁせないわよーぅぅ! アゴクラッシュゥゥゥ!(ズゥゥン!)」
竜撃戦車 「……!!(ズズズ)」
ウカムルバス 「……ッ、硬いわ……ドラグライト鉱石で、全部を覆ってる……!」
アカムトルム 「! アゴ美、危ない!」
ウカムルバス 「……!」
竜撃戦車 「(ジャッキィィィィン!!)」

36: 2009/05/05(火) 22:15:51.00 ID:Vl.QX3k0
ウカムルバス 「っぁが……」
アカムトルム 「腕をやられた……! あれ、移動型の竜撃槍なの……? 大丈夫!?」
ウカムルバス 「(ズザッ)……つぅぅぅ……油断したわ……平気よ、これくらい」
アカムトルム 「来るわよ! 大砲よ!」
ウカムルバス 「キバ代!!」
竜撃戦車 「(ドォン! ドォン! ドォン! ドォン!)」
アカムトルム 「……拡散弾!? あいたっ! 痛い! 滅茶苦茶に撃ってる!」
ウカムルバス 「あいたぁぁあ! これじゃ、痛ッ! 近づけ、痛い! ないわ!」

38: 2009/05/05(火) 22:17:19.37 ID:Vl.QX3k0
ガルルガ 「(……はぁ……はぁ……体が……)」
ガルルガ 「(こっちに……砲撃が……離れ……ねぇと……)」
ガルルガ 「(……ヨロ……ズゥゥゥゥン)」
ガルルガ 「(何だ……目の前がぼやけやがる…………)」
ガルルガ 「(! 傷か! 傷口から、毒が…………)」
ガルルガ 「(あ…………弾が…………こっちに…………)」

39: 2009/05/05(火) 22:18:38.69 ID:Vl.QX3k0
×××××× 「!!! ~~!!!!」
ガルルガ 「(……何だ……向かってきてる弾が……ゆっくりに……)」
ガルルガ 「(走馬灯……? くそが! 俺はしなねェ……しなねェ!)」
ガルルガ 「(体が動かねぇ……)」
×××××× 「! ~~ッ!!!」
ガルルガ 「(……ちぃっ……こんな時に……かかさまの声が聞こえやがる…………)」
ガルルガ 「(かかさまは………………俺がしんだら、泣くだろうか……)」
ガルルガ 「(ちっ…………やってられねぇ…………)」

40: 2009/05/05(火) 22:19:54.44 ID:Vl.QX3k0
両耳ガルルガ 「(バサァ! バサァ!)ガルゥゥゥ!!」
ガルルガ 「!? 違う! かかさま!?」
両耳ガルルガ 「早く逃げて! そこから、早く! 人間の砲げ(ッッドォォォォォン!!)」
ガルルガ 「……………………え……………………」

41: 2009/05/05(火) 22:20:25.20 ID:Vl.QX3k0
両耳ガルルガ 「…………! …………(ズゥゥゥゥン…………)」
ガルルガ 「………………」
両耳ガルルガ 「………………」
ガルルガ 「は…………?」

43: 2009/05/05(火) 22:21:14.23 ID:Vl.QX3k0
ガルルガ 「…………かかさま…………?」
両耳ガルルガ 「…………ガ……ガル…………良かった…………ぶ……じ…………」
ガルルガ 「かかさま……?」
両耳ガルルガ 「……こっ…………ここから……す、すぐに……離れて…………」

44: 2009/05/05(火) 22:22:31.06 ID:Vl.QX3k0
ガルルガ 「…………な…………何だ? お…………おい、冗談やめろよ…………」
ガルルガ 「(ぬるっ)…………はァ……? おい、何だよ……何だよこれ……」
両耳ガルルガ 「早く…………ここを…………私は、いい…………お前、だけでも…………」
ガルルガ 「血…………? ……血? ……血!? …………!! かかさま!? かかさまぁぁ!!」

45: 2009/05/05(火) 22:23:05.33 ID:Vl.QX3k0
ガルルガ 「そんな……そんな! そんな!!! 俺を、俺をかばって!?」
両耳ガルルガ 「…………っげほ……げほ……」
ガルルガ 「嘘だ……嘘だぁぁ!! かかさま!? かかさまあぁぁー!!」
両耳ガルルガ 「にげ……なさい…………早く!!」
ガルルガ 「だ、誰か……! 誰かああ! 血がぁああ! 血が止まらねぇええ!」
両耳ガルルガ 「……げほ……ぅ……」

47: 2009/05/05(火) 22:24:06.19 ID:Vl.QX3k0
―別エリア―

クック 「(……しくじった……! 両耳ガルルガさんとはぐれてしまった!)」
クック 「(うぅ……私も、足と翼を撃たれた……もう、長いこと飛べん……)」
クック 「(間に合わない……もう、戦いが始まっている……!)」
クック 「(人間の巨大戦車……ウカムルバスとアカムトルムが戦っている……)」

49: 2009/05/05(火) 22:24:41.39 ID:Vl.QX3k0
クック 「(シュレイド城が、火に包まれている……!)」
クック 「(キングチャチャブーが言っていたのは、こういうことか……!!)」
クック 「(人間達は、自分達の根城ごと、私たちを焼き払うつもりなのか!!)」
クック 「(追い詰めすぎた……もはや止めることはできん!!)」

52: 2009/05/05(火) 22:27:01.31 ID:Vl.QX3k0
>>50 VIPから、ありがとうございます……助かります……

シェンガオレン 「ヒャハハハ……ヒャハハハハハ!! 火だ! 燃えろ! 全部燃えちまえ!!」
クック 「……シェン! 城の中に……」
シェンガオレン 「しねしねぇぇ! 戦争だァ! 血だァ! ヒャァァーハッハ! 楽しぃぃぃぃ!!」
シェンガオレン 「(ズンッズンッ)アヒャヒャヒャ痛え! 痛ぇよぉぉ! もっと撃て! 撃ってこい!」
シェンガオレン 「野郎共! 手当たり次第壊せ! ころせ! 命を惜しむなァ!」
シェンガオレン 「逃げ出す奴ァ氏刑だ! 殺せねェ奴も氏刑だ! 進めや進めェ! 命かけろ! しに物狂いで遊べてめぇら!!」
ギザミ一族 「シェェェェェ!!!」
クック 「くうううう! ギザミ一族……!!」

53: 2009/05/05(火) 22:28:16.48 ID:Vl.QX3k0
シェンガオレン 「ぶぉぇぇっぇ!!(バシャァァァァ!)」
クック 「(溶解液を吐いて、手当たり次第に城を壊している……!)」
クック 「(これは、もはや戦いではない……悪夢だ……!!)」
クック 「(! この地響き……地震のような揺れ……もしや、これは……!)」

55: 2009/05/05(火) 22:29:03.76 ID:Vl.QX3k0
クック 「(な……何か、巨大すぎるものが……城門にぶつかっている……)」
クック 「(城門が、弾け飛んだ……!)」
クック 「(一直線に、全てをなぎ倒しながら……あれは!!)」
クック 「(ラオシャンロン!!)」

56: 2009/05/05(火) 22:29:51.66 ID:Vl.QX3k0
ウカムルバス 「っしゃぁぁああ!(ズン!)」
アカムトルム 「オカマナメんなよぉぉっぉ!!(ズン!)」
竜撃戦車 「……!!」
ウカムルバス 「……弾も尽きたようね……だいぶ弱ってきてるわ」
アカムトルム 「早くこいつを片付けて、シェンを止めないと……」

57: 2009/05/05(火) 22:30:59.97 ID:Vl.QX3k0
シェンガオレン 「(ズンッズンッ)」
ウカムルバス 「……!? ちょっ……あのカニ、こっちに向かってくるわ!」
アカムトルム 「へェ!? 何で!?」
シェンガオレン 「ケケケケケケケ!! 目障りなオカマ見ぃぃぃぃぃっけぇぇ」

58: 2009/05/05(火) 22:31:57.42 ID:Vl.QX3k0
シェンガオレン 「ぶぅぇえああぁああ(バシャァァァ)」
ウカムルバス 「きゃぁ! 目……目に……!」
アカムトルム 「あぐぅぅ! な……何すんのよ!!」
シェンガオレン 「前々からてめェら目障りだったんだよォォ! この機会にしね! みんなしね!」
ウカムルバス 「こ……こいつ、興奮しすぎて、正気をなくしてる!」
アカムトルム 「目が見えないわ……アゴ美!」
竜撃戦車 「…………(キュラキュラキュラ)」

59: 2009/05/05(火) 22:32:37.45 ID:Vl.QX3k0
アカムトルム 「……! この地響き……これって、まさか……!」
ウカムルバス 「ラオちゃん!!」
ラオシャンロン 「(ズシン、ズシン、ズシン、ズシン)」
シェンガオレン 「ケケケ……きやがったァァ、くそドラゴンよぉぉぉぉ」
ラオシャンロン 「…………(ズシン、ズシン、ズシン)」
竜撃戦車 「(ギギ……)」
シェンガオレン 「まとめて全員あの世に行きなァァ!!」

61: 2009/05/05(火) 22:33:25.22 ID:Vl.QX3k0
ラオシャンロン 「(グォォォォォォォォ)」
シェンガオレン 「…………ァ? 何だァ? いきなり夜に…………」
ウカムルバス 「ラオちゃんが……立った!!?」
アカムトルム 「アゴ美、アタシの体を引いて!」
ウカムルバス 「こっちよキバ代ぉぉ!」

62: 2009/05/05(火) 22:34:08.25 ID:Vl.QX3k0
ラオシャンロン 「………………(ズズズズズズ)」
シェンガオレン 「……た…………倒れこんでき……ギャァァァァァ!」
竜激戦車 「…………!(メキメキメキメキ)」
ラオシャンロン 「(ズズズズズズゥゥゥゥゥゥン)」

64: 2009/05/05(火) 22:35:17.96 ID:Vl.QX3k0
ラオシャンロン 「(ガルルルルルルルル)」
シェンガオレン 「やめろォォォ! 俺の、俺の殻がぁぁぁああ!」
ラオシャンロン 「(ガルルルルルル…………バギィィィィン!!)」
シェンガオレン 「ぎゃぁああああ!!」
ラオシャンロン 「(グォォォォォ……)」
シェンガオレン 「が……が……も……もう一発…………?」
ラオシャンロン 「(ズゥゥゥゥゥゥゥン)」

67: 2009/05/05(火) 22:36:38.54 ID:Vl.QX3k0
シェンガオレン 「……………………(ビクンッ…………ビクンッ…………)」
ラオシャンロン 「………………」
ウカムルバス 「…………」
アカムトルム 「…………」
ラオシャンロン 「…………ギザミ一族よ…………引け……」
ギザミ一族 「キ……」
ラオシャンロン 「聞こえなかったか…………引け」

70: 2009/05/05(火) 22:37:18.86 ID:Vl.QX3k0
ラオシャンロン 「アカム、ウカム……」
アカムトルム 「え……うん……」
ウカムルバス 「ラ……ラオちゃん……」
ラオシャンロン 「シェンを連れて、ここを去る。撤退だ」
ウカムルバス 「…………分かったわ」
ラオシャンロン 「ギャォォォォォォォォ!!」

71: 2009/05/05(火) 22:38:11.09 ID:Vl.QX3k0
クック 「ラオシャンロンが…………シェンガオレンを……」
クック 「あれは、撤退を告げる吼え声だ……」
ナルガクルガ 「(バサッ! バサッ!)クックッ! 戻れぇぇ!!」
クック 「ナルガ!?」
ナルガクルガ 「やられた! 人間どもが……森に……!!」

72: 2009/05/05(火) 22:38:55.49 ID:Vl.QX3k0
クック 「…………え…………」
クック 「……(何だ? 地平線の向こうが、真っ赤だ……)」
クック 「(あれは……森? 私たちの、住処……?)」
クック 「(何故あんなにも明るい……? 何故、あんなにも赤い……?)」

73: 2009/05/05(火) 22:40:02.54 ID:Vl.QX3k0
クック 「何だあれは……? 火……? 火……なのか?」
ナルガクルガ 「クック! 何を呆けている!!」
クック 「人間が……森に火をかけた……? 私たちの家族がいる場所に……?」
クック 「……! 青クック! 子クック!!」
ナルガクルガ 「ゆくぞ! ぐずぐずするな!!」

77: 2009/05/05(火) 22:41:05.33 ID:Vl.QX3k0
―夜―

クック 「………………」
クック 「………………(雨で、森にかかった火が消えていく……)」
クック 「………………」
クック 「(ここは、私の巣……私たちの、巣……だったはずだ……)」
クック 「………………」

79: 2009/05/05(火) 22:41:35.91 ID:Vl.QX3k0
クック 「青クック! 子クック! 返事を……返事を……」
クック 「返事を…………」
クック 「………………」
クック 「…………返事を…………」
クック 「………………」

80: 2009/05/05(火) 22:42:12.64 ID:Vl.QX3k0
クック 「………………」
クック 「(これは……私が、青クックに贈った宝石だ…………)」
クック 「(あいつが、いつも身につけていたものだ…………)」
クック 「………………」

81: 2009/05/05(火) 22:42:52.94 ID:Vl.QX3k0
クック 「(これは、子クックに、私が作ってやった玩具だ……)」
クック 「(焼け焦げて、熱で溶けている……)」
クック 「(ここは…………巣の、台所だ…………)」
クック 「………………」

82: 2009/05/05(火) 22:43:31.10 ID:Vl.QX3k0
クック 「(泣き声が……聞こえる……)」
クック 「(あれは……ドス家の声だ……)」
クック 「(みんな…………)」
クック 「………………」
クック 「(みんな、氏んだのか)」

84: 2009/05/05(火) 22:44:40.51 ID:Vl.QX3k0
火が消えたのは、次の日の朝のことだった
朝日に照らされた森の中、体中火傷だらけのクックが見たのは
やはり、ただ黒い炭となった
自らの巣が、あった場所だった

第四章に続きます

87: 2009/05/05(火) 22:46:17.98 ID:ZBN6dUoo
>>1乙
今日はおしまい?

88: 2009/05/05(火) 22:47:20.95 ID:S7JpqjUo
>>1乙でした。
体調は大丈夫ですか?

95: 2009/05/05(火) 22:55:19.68 ID:Vl.QX3k0
短時間になりましたが、ご閲覧いただき、ありがとうございました
第3章は、これで終わりになります

ニュー速VIPから移動をしてくださった皆様、重ねてありがとうございます
本日は休ませていただきます

体調の方は、小康状態となっております。お気遣い、痛み入ります
少々VIPでの書き込みに動揺をいたしました
私自身が氏について考えることが多いため、ショックを受けてしまいました
他意はありませんでしたが、お怒りを買ってしまったのは、私の不手際でございます
私の書き込みに対し怒りのご意見が多かったのは、VIPのルールを分かっていなかったせいなのでしょう

パート速報というものが良く分かっていないままのスレ立てになってしまいましたが
こちらにても、もしご不快な思いをした方がいらっしゃいましたら、申し訳ありません

また21:00より明日、ないしは明後日に続きを投稿させていただきます

みなさま、GWも明日で終わりですが、ご各人おのおの、ゆっくりと休まれてください

sagaなのですか。了解いたしました。次からは、そのようにさせていただきます
それでは、お目汚し失礼いたしました
よい夜を、過ごされてください

引用: イャンクック 「旧沼地で人間を拾ったんだが」 その2