550:◆58jPV91aG. 2009/05/19(火) 21:12:41.34 ID:q28t1VY0
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第一章
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第二章
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第三章
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第四章

イャンクック 「旧沼地で人間を拾ったんだが」 第5章

副題:お兄ちゃんの体から、あの女の匂いがする

―数年前、旧密林、昼―

ナナ・テスカトリ 「いいですか? みなさん。今日はキノコの見分け方を勉強します」
ティガ兄 「ふぁぁぁぁ……あ゛ッ!」
ティガ弟 「兄者、今日の晩飯どうする?」
モンハン イャンクック ペン画 原画
551: 2009/05/19(火) 21:13:40.79 ID:q28t1VY0
ティガ兄 「そういや、リオママが食いに来いって言ってたぞ」
ティガ弟 「まじでか! 今日はツイてるぜ」
ガノトトス 「君たち、授業中は静かにしてくれないか。先生の話が聞こえないじゃないか」
ティガ兄 「うるせー。キノコなんざ俺達は食わねェんだよ」
ティガ弟 「軟弱なてめーらにはお似合いだがな!! ゲッヘッヘ!」

553: 2009/05/19(火) 21:14:54.60 ID:q28t1VY0
ティガ兄 「おらどけよ!(ドンッ)」
ガノトトス 「うわっ」
ティガ弟 「ケッケッケッケ!(ズンズン)」
ガノトトス 「……何て乱暴な人たちだ……僕はやはり、彼らを好きにはなれないよ」
翠トトス 「ガノ、行きましょ。あの人達に構うことはないわよ」
ガノトトス 「……ふぅ。翠、体は大丈夫かい?」

554: 2009/05/19(火) 21:16:05.48 ID:q28t1VY0
翠トトス 「ええ。赤フルフルさんのお薬を飲んだから、今日は平気」
ガノトトス 「そうか、良かった。帰りにまた、おじいさんのところに行こう」
翠トトス 「そうね。ほら、先生が先に行ってしまうわ」
ガノトトス 「これはしまった。行こう」

555: 2009/05/19(火) 21:16:35.30 ID:q28t1VY0
ナナ・テスカトリ 「まずは、このキノコからです。みなさん、ここに集合してください」
ラージャン 「………………」
ガノトトス 「ラージャン君、どうしたんだい。ほら、みんな先に行ってしまうよ」
ラージャン 「…………(ドス、ドス)」

556: 2009/05/19(火) 21:17:49.53 ID:q28t1VY0
翠トトス 「あの人、いつも何を考えてるかわからないわよね」
ガノトトス 「無口なだけなんじゃないかな」
翠トトス 「でも、少し前に、低学年の子が身包み剥がされるっていう事件があったわ。その子の話では、猿族だったって……」
ガノトトス 「うーん……でも、先生達も言っていただろう。確証がないのに責めることをしてはいけないって」
翠トトス 「そうなのだけれど……」

557: 2009/05/19(火) 21:19:04.15 ID:q28t1VY0
ナナ・テスカトリ 「ここに生えているのは特選キノコです。こちらが厳選キノコ。違いが分かる人はいますか?」
ヴォルガノス 「…………」
ナナ・テスカトリ 「ヴォル君、分かります?」
ヴォルガノス 「特選は色が薄い。厳選は土の中に少し埋もれていて、色が濃い……と、記憶している」

558: 2009/05/19(火) 21:20:14.51 ID:q28t1VY0
ナナ・テスカトリ 「その通りです。よく勉強しているようですね。10点をあげましょう」
ヴォルガノス 「…………」
ティガ兄 「ケッ。それくらい俺らにも分かるぜ」
ティガ弟 「いい気になってんじゃねーぞ!」
ヴォルガノス 「…………」

559: 2009/05/19(火) 21:21:12.12 ID:q28t1VY0
ナナ・テスカトリ 「それじゃ、ティガ兄君。このキノコが何だか分かりますか?(ゴソゴソ)」
ティガ兄 「あァん? おいおい先生、俺をナメてんのか」
ナナ・テスカトリ 「見分けることができれば、30点です」
ティガ兄 「………………」

560: 2009/05/19(火) 21:22:17.99 ID:q28t1VY0
ティガ兄 「(ひそひそ)弟者、何だこれ」
ティガ弟 「(ひそひそ)知るかよ。ニトロダケじゃねぇか、赤いし」
ティガ兄 「(ひそひそ)でも変な臭いがするぞ」
ティガ弟 「(ひそひそ)腐ってんじゃね?」

561: 2009/05/19(火) 21:23:10.28 ID:q28t1VY0
クシャルダオラ 「……(ボソ)マンドラゴラの小さいの」
ティガ兄 「! マンドラゴラの小さいのだ!」
ナナ・テスカトリ 「あら! ティガ兄君、ちゃんと予習をしてきたのですね。よくできました。これはマンドラゴラの幼体です」
ティガ兄 「ケケケッ、簡単すぎて反吐が出るぜ!」

562: 2009/05/19(火) 21:23:43.03 ID:q28t1VY0
クシャルダオラ 「……(ニコニコ)」
錆クシャルダオラ 「……(ニコニコ)」
ティガ弟 「悪ィな」
錆クシャルダオラ 「……(ポッ)」
クシャルダオラ 「……(ポッ)」

564: 2009/05/19(火) 21:25:30.90 ID:q28t1VY0
ナナ・テスカトリ 「マンドラゴラは幼体ですと毒性は弱いのですが、成長したものを乾燥させると、強力な幻覚作用を発します」
ラージャン 「…………」
ナナ・テスカトリ 「ラオシャンロン様が、このキノコの無許可採集は禁止しています。間違って採ってきたりしてはいけませんよ」
ティガ兄 「へぇ。幻覚作用。ま、俺達にとっちゃ屁でもねぇけどよ!」
ティガ弟 「ゲッヒャッヒャッヒャ!」

565: 2009/05/19(火) 21:26:18.89 ID:q28t1VY0
ガノトトス 「まぁ、あの人達は、常時ラリってるようなものだからね……」
翠トトス 「本当。もう少し静かにできないのかしら……」
クシャルダオラ 「…………」
錆クシャルダオラ 「……(チッ)」

566: 2009/05/19(火) 21:27:50.03 ID:q28t1VY0
ナナ・テスカトリ 「駄目ですよ、この毒性は悪影響しかありません。依存性もあるので、興味本位で手を出してはいけません」
ティガ兄 「関係ねぇぜ。先生俺達をナメんなよ」
ティガ弟 「これくらいどーってことねぇよ(バッ)」
ナナ・テスカトリ 「あ、こら!」

567: 2009/05/19(火) 21:28:50.06 ID:q28t1VY0
ティガ弟 「(ごくり)ゲヒャヒャヒャ! ……グッ!」
ティガ兄 「弟者!」
ナナ・テスカトリ 「ああ……耐性もないのに、そんなことをするから……」
ティガ弟 「(ぐるん)…………(ドサリ)」
クシャルダオラ 「!!」
錆クシャルダオラ 「小兄様!」

568: 2009/05/19(火) 21:29:51.29 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「…………」
ガノトトス 「バカだね」
翠トトス 「ええ、バカね」
ナナ・テスカトリ 「はぁ……みなさん、少し自由行動にします。わたくしは、ティガ弟君を泉に運びますから(ぐいっ)」

569: 2009/05/19(火) 21:31:05.30 ID:q28t1VY0
錆クシャルダオラ 「私もお手伝いします!」
ナナ・テスカトリ 「お願いできるかしら。ティガ兄君も、ほら早く尻尾を持って」
ティガ兄 「あ……ああ」
クシャルダオラ 「お兄ちゃん、私も行く」

570: 2009/05/19(火) 21:32:14.41 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「…………」
ラージャン 「…………」
ガノトトス 「兄さん、あっちの方で休もう」
翠トトス 「私、釣りカエルを持ってきたわ」
ガノトトス 「いいねェ! ラージャン君も一緒にどうだい?」
ラージャン 「…………」
ヴォルガノス 「…………(ずい)」

571: 2009/05/19(火) 21:33:32.83 ID:q28t1VY0
ラージャン 「……何だ? 俺に何か文句でもあるのか?」
ヴォルガノス 「…………」
ラージャン 「何とか言え(グッ)……何だその目は……」
ヴォルガノス 「手ェ……離してくんねェか……猿臭ェ」
ラージャン 「…………」
ガノトトス 「兄さん! ラージャン君も、こんなところで喧嘩はいけないよ!」

572: 2009/05/19(火) 21:34:37.40 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「や……ただ、ちょっと……先日あっしの弟弟子が、旧砂漠でカツアゲ喰らったって話ィ聞いたンで」
ラージャン 「…………」
ヴォルガノス 「金色の毛の猿が見えたってなことだったんでねィ。あらま、そっくりさんがおるわ思ったわけよ」
ラージャン 「…………」

573: 2009/05/19(火) 21:36:18.25 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「その金色の猿は、どうやら、弟弟子の竜玉を奪ってったらしいんだわ」
ラージャン 「…………」
ヴォルガノス 「あっしはそれを探してるんでね」

574: 2009/05/19(火) 21:37:15.31 ID:q28t1VY0
ラージャン 「(バッ)…………」
ヴォルガノス 「どっかに落ちてたら、あっしまで届けてくんねェもんかと思っただけよ」
ラージャン 「……知らねェな。てめぇの頼みを聞く気もねェ」
ヴォルガノス 「や、見つかったらの話よ。見つかったらのな」
ラージャン 「……(ドス、ドス)」

575: 2009/05/19(火) 21:38:09.42 ID:q28t1VY0
ガノトトス 「兄さん! いきなり喧嘩を売ることはないだろう。彼がやったという証拠はないんだよ」
ヴォルガノス 「…………」
翠トトス 「でも、モノブロス君、大事な竜玉を無くして相当落ち込んでいるわ。もしラージャンさんがやったとしたら、酷い話よ」
ガノトトス 「それはそうだけど……先生達も、彼に随分話を聞いたみたいじゃないか。僕達が、余計に手を出すことはないよ」
ヴォルガノス 「…………」

576: 2009/05/19(火) 21:40:42.75 ID:q28t1VY0
ガノトトス 「それに、僕は彼にあげようと思って、新しい竜玉を作ってるんだ。ほら」
翠トトス 「まぁ! 隠れてそんなことをしてたの?」
ガノトトス 「兄さん、ラージャン君はブランゴ一族の御曹司だから、争ってもいいことはないよ」
ヴォルガノス 「………………」

577: 2009/05/19(火) 21:41:31.39 ID:q28t1VY0
ガノトトス 「ほら、釣りカエルがあるよ。一緒に食べよう」
ヴォルガノス 「武士はそんなもの食わん……」
ガノトトス 「好き嫌いは良くないよ。カエルはこんなに美味しいのに」
翠トトス 「まだまだあるわ」
ガノトトス 「ヒャァ!」
ヴォルガノス 「………………」

578: 2009/05/19(火) 21:42:01.74 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「(ナナ先生、何故あそこでマンドラゴラなんてものを出した……?)」
ヴォルガノス 「(ありゃァ、くすり……)」
ヴォルガノス 「(それに、わざとバカ弟が取りやすい位置に置いていたように見える……)」

579: 2009/05/19(火) 21:42:29.93 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「(幼体キノコだから、毒素は薄いはずだがィ……)」
ヴォルガノス 「(今時、バカじゃなければ、あれが危険なモンだってァ知っている)」
ヴォルガノス 「(牽制か……やっぱ……)」
ヴォルガノス 「(ラージャン………………)」

580: 2009/05/19(火) 21:43:02.34 ID:q28t1VY0
―火山、崩落時、中央エリア―

ヴォルガノス 「! (何ィ。洞窟が崩れかかってる)」
ヴォルガノス 「(人間か!)」
ヴォルガノス 「(何てことしやがるんでぇ。ここいらにはガブラスの集落があるってのに)」

581: 2009/05/19(火) 21:43:37.71 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「(オカマトルムは、失敗したってこってか)」
ヴォルガノス 「(……溶岩の流れが変わってる……)」
ヴォルガノス 「(どっかの噴出口が崩れて、あふれ出したな……)」
ヴォルガノス 「(くわばら、こりゃあっしの遊泳力でも、逆らえそうにねェ)」

582: 2009/05/19(火) 21:44:26.83 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「(クック氏には申し訳がつかねェが、あっしまで氏んだらしょうがねェ)」
ヴォルガノス 「(ここいらで、避難させていただくとしやすか)」
ヴォルガノス 「(人間……)」
ヴォルガノス 「(クック氏は、シュレイド城の戦いで、家族を焼き殺されてるはずでせぇ……)」

583: 2009/05/19(火) 21:44:53.56 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「(トトスは、悪い人間じゃあんめェつってたが……)」
ヴォルガノス 「(何故、今更人間の餓鬼なんざァ……)」
ヴォルガノス 「(クック氏にぁ、何の得もねぇはずでさ)」

584: 2009/05/19(火) 21:45:37.54 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「(……!! 揺れが強ェ。鉱脈を崩したな)」
ヴォルガノス 「(こりゃ、予想以上に崩れが激しいぞ)」
ヴォルガノス 「(一旦、溶岩の上に出るしかねェ)」

585: 2009/05/19(火) 21:47:01.98 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「ぶはぁッ(!! 何だこりゃァ……岩盤が粉々になってる)」
ヴォルガノス 「(人間がやったのか!?)」
アカムトルム 「!! ヴォル子!」
ヴォルガノス 「アカムの旦那! 一体何が……」

586: 2009/05/19(火) 21:47:57.43 ID:q28t1VY0
アカムトルム 「受け止めて、アタシじゃ待にあわない!!」
ヴォルガノス 「受け止める? 何を……」
アカムトルム 「上よ!!」
ヴォルガノス 「……! バサルの小僧……!」

587: 2009/05/19(火) 21:48:20.94 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「(でもあいつァ、溶岩は平気なはず……)」
ヴォルガノス 「(確かに、高さはやべェが……)」
ヴォルガノス 「……!!」
ヴォルガノス 「(何か落ちた!)」
ヴォルガノス 「(人間……の、子供!)」

588: 2009/05/19(火) 21:48:49.99 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「(このままでは、溶岩に直撃する)」
ヴォルガノス 「(ちっ……あっしにゃぁ、関係のないことなんだがねィ……)」
ヴォルガノス 「そぉい!(バシャァ!)」
女児 「………………(ヒュゥゥゥゥ)」

589: 2009/05/19(火) 21:49:36.72 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「(体が熱気で焦げている……こりゃ……)」
ヴォルガノス 「(仕方ねェ!)」
ヴォルガノス 「(バクッ)」
アカムトルム 「! イエス! 落ちる前に、口の中に!」
ヴォルガノス 「(モゴモゴ)……(バシャァァァン)」

590: 2009/05/19(火) 21:50:15.24 ID:q28t1VY0
アカムトルム 「! ヴォル子! 危ないわ!」
ヴォルガノス 「!? (ドズゥゥゥッ!!) ギャッ!」
アカムトルム 「(落石が、ヴォルに……!)」
アカムトルム 「(一緒に沈んで……)」
アカムトルム 「ヴォル子おおお!!」
ヴォルガノス 「………………(ドプドプドプ)」

592: 2009/05/19(火) 21:52:58.21 ID:q28t1VY0
―崩落後、旧火山、テオとナナの巣―

ヴォルガノス 「………………」
ナナ・テスカトリ 「あ、目がさめましたか。良かった」
ヴォルガノス 「ここァ……ナナ先生? 先生の巣じゃ……痛ッ……」
ナナ・テスカトリ 「動かない方がいいですわ。まだ、頭の鱗がへこんでいます。相当強く打たれたのですね」

593: 2009/05/19(火) 21:53:35.68 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「……ふぅ……」
ナナ・テスカトリ 「火山の中央を押し流されてきたのですよ、あなたは。随分と無茶をしましたね」
ヴォルガノス 「やろうとおもってやったんじゃぁねぇでさ。お見苦しいところをお見せしやす……」
ナナ・テスカトリ 「そんなに気をつかう間柄でもないでしょうに。しばらく見ない間に大きくなって」

594: 2009/05/19(火) 21:54:46.11 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「…………」
ナナ・テスカトリ 「あなたがくわえていた人間は、溶岩がかかったようで、右腕にだいぶ酷い火傷をしています」
ヴォルガノス 「……ちっ。しくじりやしたか……」
女児 「はぁ……はぁ……」
ナナ・テスカトリ 「今は鎮静剤を飲ませているので眠っていますが、きちんとした治療をしなければいけません」
ヴォルガノス 「…………」
ナナ・テスカトリ 「どうしてこんなことに? この子は、一体どうしたのですか?」

595: 2009/05/19(火) 21:55:44.13 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「………………まぁ、そう言うわけで。あっしにもよくは分からねぇですな」
ナナ・テスカトリ 「そう……イャンクック様が保護された人間の娘さんとは、この子のことだったのですね……」
ヴォルガノス 「とっさに口の中に入れたんですがね、まぁあっしも急なことだったんで、どうしようもなかったってなわけで」
女児 「…………」

596: 2009/05/19(火) 21:56:39.12 ID:q28t1VY0
ナナ・テスカトリ 「オオナズチ君の皮を着ていたので、そんなに酷くはないのですが……」
ヴォルガノス 「むしろ、鱗もなにもねェ人間の童(わっぱ)が生きているってことでも、驚異的だと思いますがね」
ナナ・テスカトリ 「……この皮は、もう使いものにはなりませんね。随分焼け焦げています」

597: 2009/05/19(火) 21:58:55.26 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「(ググ……)あっしは大丈夫でさ。これくらいどうということはありやせん」
ナナ・テスカトリ 「無理はしない方がいいわ。少なくとも、鱗が元に戻るまでは寝ていた方がいいです」
ヴォルガノス 「……頼まれたことはやりやした。あっしはもう(ぐらっ)」
ナナ・テスカトリ 「ほら、急に立ち上がるから……寝ていなさい」
ヴォルガノス 「………………」

598: 2009/05/19(火) 22:00:10.85 ID:q28t1VY0
ナナ・テスカトリ 「しかし……この人間の娘さんは、どうしたものでしょう……わたくし達は、火傷に効く薬など持っていませぬ」
ヴォルガノス 「人間のこたぁ、人間に任せるのが一番でさ。里の近くに放りだしてくりゃぁいいんです」
ナナ・テスカトリ 「そういうわけにはいかないでしょう……この子は仲間に迫害されていたという話ではないですか」
ヴォルガノス 「…………」
ナナ・テスカトリ 「それに、火山で人間が随分暴れまわったようで……今、人里には近づけません。相互共に危険です」

599: 2009/05/19(火) 22:01:26.99 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「いっそのこたぁ、火傷にかかった腕ぇ切り離すってのぁ?」
ナナ・テスカトリ 「それも考えましたが、赤フルフルさんがご存命でしたら可能な手術です。わたくしには無理です」
ヴォルガノス 「…………そういえば先生、校長は?」
ナナ・テスカトリ 「先ほど、ガブラス君が、あの人は火山の瓦礫をどかす作業に入っていると」

600: 2009/05/19(火) 22:02:04.60 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「(ギリ……)人間め……」
ナナ・テスカトリ 「ヴォル君、そう画一的なものの見方をしてはいけません。教えたでしょう?」
ヴォルガノス 「…………」
ナナ・テスカトリ 「人間にも、人間の事情があったのでしょう。すぐ怒っていては、また争いになるだけですよ」

601: 2009/05/19(火) 22:05:08.44 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「……して、先生。この童はどうするんでさ?」
女児 「…………うう…………」
ナナ・テスカトリ 「猫さんにイャンクック様を探しに行ってもらったのですが、行方不明なのです。わたくしも考えあぐねています」
ヴォルガノス 「……崩落に巻き込まれたんですな。クック氏は、キリン嬢と火山にいやした」
ナナ・テスカトリ 「…………」

602: 2009/05/19(火) 22:05:45.56 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「(人間の分際で熔岩になぞ近寄るから、こうなるんでぇ)」
ヴォルガノス 「(古龍の皮を被っていたのが、不幸中の幸いってとこかぃ)」
ヴォルガノス 「(火傷は……右腕全体か)」
ヴォルガノス 「(腐る前に切り離した方がいいと思うが……)」

603: 2009/05/19(火) 22:06:36.27 ID:q28t1VY0
ナナ・テスカトリ 「この歳で片腕になるのは、人間とはいえ酷いですわ。何とか処置をしてあげたいのです」
ヴォルガノス 「赤フルフル氏は、二年前にくたばっちまってますからねェ」
ナナ・テスカトリ 「早く何とかしないと、手遅れになってしまいます。かといって不用意に動かすわけにもいきません」
ヴォルガノス 「そうですな……ここは、師匠に相談するのが手っ取り早いかと」

604: 2009/05/19(火) 22:07:07.73 ID:q28t1VY0
ナナ・テスカトリ 「師匠……? ディアブロス老師のことですか! そうですね、その手がありました。彼ならいい手を……」
ヴォルガノス 「先生、落ち着いて考えりゃぁ、どうにかなりやす。あなたは優しいが、大事な時に取り乱しすぎる」
ナナ・テスカトリ 「……確かに、違いありません。ありがとうヴォル君。わたくし、砂漠に行ってまいります」

606: 2009/05/19(火) 22:09:26.30 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「待ちなせぇ。師匠は、門下生としかお話になりやせん。あっしも行きましょう」
ナナ・テスカトリ 「でも、ヴォル君、その傷では……」
ヴォルガノス 「これくらいの傷で寝ていたと知れちゃァ、どっちにしろブッ飛ばされまさぁ(ググ……)」
ナナ・テスカトリ 「……分かりました。この子は、わたくしの背中にくくりつけましょう」

607: 2009/05/19(火) 22:11:21.62 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「呼吸が荒いな……熱が出てやすねェ。こりゃあ、長くねぇかもしれやせん」
女児 「…………」
ナナ・テスカトリ 「熔岩内を通ることはできませんが、ここには、砂漠に繋がる抜け道があるのです。行きましょう」
ヴォルガノス 「(よっ)……先生、くくりつけやした」
ナナ・テスカトリ 「ありがとう。あなたは、無理をしないように、私の後についてきてください」

608: 2009/05/19(火) 22:12:15.14 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「…………!!(バッ)」
ナナ・テスカトリ 「どうかしましたか?」
ヴォルガノス 「………………」
ヴォルガノス 「や、何やら妙な気配を感じましてね……」
ナナ・テスカトリ 「妙な……? ここには、わたくし達しかおりませんが……」

609: 2009/05/19(火) 22:12:57.14 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「(今の気配は、殺気……?)」
ヴォルガノス 「(先生は平和主義者だ……気づかんとも無理はねぇ)」
ヴォルガノス 「(あっしと、この人間に向けられていた……)」
ヴォルガノス 「(やはり、ここは離れるべきさねェ)」

610: 2009/05/19(火) 22:15:08.06 ID:q28t1VY0
ヴォルガノス 「(ぐい)行きまさぁ、先生。あっしが後ろにつきますわ」
ナナ・テスカトリ 「ちょ……ヴォル君、近いのでは……」
ヴォルガノス 「………………(ぎろ)」
ナナ・テスカトリ 「……? ヴォル君?」
ヴォルガノス 「先生、クシャルか、ティガの居場所は知りやせんか?」

611: 2009/05/19(火) 22:16:32.13 ID:q28t1VY0
ナナ・テスカトリ 「クシャルさんたちは、今夫と火山へ行っています。ティガさんたちは分かりませんね」
ヴォルガノス 「途中で、砂漠入り口のクロネコ飛脚便詰め所に寄ってくだせぇ。奴らを呼びやす」
ナナ・テスカトリ 「え? どうして?」
ヴォルガノス 「(ズンズン)」
ナナ・テスカトリ 「あ、待ってください!」

612: 2009/05/19(火) 22:17:16.32 ID:q28t1VY0
―テオ・ナナの巣、入り口―

××××× 「…………」
××××× 「(あれは、ヴォルガノス……)」
××××× 「(先生……? 何故、奴らと……)」
××××× 「(人間なんぞを……)」
××××× 「(裏切るつもりか……)」

613: 2009/05/19(火) 22:17:37.32 ID:q28t1VY0
××××× 「(話は、本当だったのか……)」
××××× 「(先生は、奴らと共に、人間の側につくという……)」
××××× 「(そんなことはさせん……)」
××××× 「(許さんぞ…………)」

次回へ続きます

638: 2009/05/21(木) 21:04:51.05 ID:N7ONU720
第五章 Part.2

―十数年前、旧火山、夜―

テオ・テスカトル 「どうした、妻よ。何を考え込んでいる」
ナナ・テスカトリ 「あなた様……いえ。少し考え事をしておりました」
テオ・テスカトル 「(ドス)考え事とは?」
ナナ・テスカトリ 「ええ……この前の集会にて、ラオシャンロン様が仰っておられたことについてです」

639: 2009/05/21(木) 21:05:50.10 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「ふむ。我らのまとまりのことか」
ナナ・テスカトリ 「そうです。わたくし達は、どうしても、互いに交流というものを持たない傾向にあります」
テオ・テスカトル 「私達もそのように育ってきた。いたし方あるまい」
ナナ・テスカトリ 「事実は事実と考えておりますが……それが、問題なのやもしれぬと、ふと思ったのです」

640: 2009/05/21(木) 21:06:25.11 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「どういうことだ?」
ナナ・テスカトリ 「人間の侵攻に対する脅威に、今現在はそれぞれの一族ごとに立ち向かっております」
テオ・テスカトル 「…………」
ナナ・テスカトリ 「そのことにより、例えばブランゴ一族の侵攻に対する報復を、ガオレン一族が受けるなどということも……」

641: 2009/05/21(木) 21:06:53.88 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「確かに。我らの間には交流がなさ過ぎるのも事実だ。子供達の教育にも、ばらつきがある」
ナナ・テスカトリ 「他部族のしきたりまでは存じませぬが、やはり、親が戦闘しか教えねば、悪化の一途を辿るのではないかと」
テオ・テスカトル 「…………」
ナナ・テスカトリ 「わたくしはふと、そう思ったのです」

642: 2009/05/21(木) 21:08:48.63 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「成る程、一理ある」
ナナ・テスカトリ 「子供達はみな平等で、そこに種族の差はあれば、違いはないと思います」
テオ・テスカトル 「…………」
ナナ・テスカトリ 「これからは、人から身を守るために秩序ある生活が求められるでしょう。学問、教養は必要ではないでしょうか」

643: 2009/05/21(木) 21:09:21.30 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「我々も幼い時分、先代のテスカから教えを受けた。お前は、皆にもそれを分け与えたいというのか」
ナナ・テスカトリ 「はい。戦い以外の世界もあるということを、誰かが子供達に教えねば」
テオ・テスカトル 「…………」
ナナ・テスカトリ 「協力し、助け合うという概念を教えねば、いけないような気もするのです」

644: 2009/05/21(木) 21:09:47.85 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「……元来、火山と雪山はあまり交流はない。いさみあいも多い」
ナナ・テスカトリ 「はい。しかし、親の代の確執は、子供達には関係がありませぬ」
テオ・テスカトル 「……うむ」
ナナ・テスカトリ 「親がいさみあったまま、その世界しか知らねば、子供にまでもその確執が染み付いてしまいます」

645: 2009/05/21(木) 21:10:56.05 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「して、妻よ。お前は具体的にはどうしたいと?」
ナナ・テスカトリ 「学校を作るというのはどうでしょうか」
テオ・テスカトル 「学校? 寺子屋のことか……そこに、子供達を預かり、教育を施そうというわけだな」
ナナ・テスカトリ 「そうです。次の集会で、提案ができれば……」

646: 2009/05/21(木) 21:11:28.09 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「…………」
ナナ・テスカトリ 「いかがでしょうか?」
テオ・テスカトル 「私も……言い方は悪いやもしれぬが、私達が受けてきた教育と、他所の教育水準に差があることは感じていた」
ナナ・テスカトリ 「…………」
テオ・テスカトル 「確かに、次代を担っていくのは子供達だ。子供が、協力し合う世界を知れば、我々の力はより堅固なものとなる」

647: 2009/05/21(木) 21:11:52.27 ID:N7ONU720
ナナ・テスカトリ 「それでは……」
テオ・テスカトル 「問題は、それを今まで誰もやろうとしなかったことだ」
ナナ・テスカトリ 「ええ……」
テオ・テスカトル 「部族には部族の慣習が存在する。口出しをすることを嫌う者たちも多いだろう」

648: 2009/05/21(木) 21:12:26.89 ID:N7ONU720
ナナ・テスカトリ 「先代のテスカもそうでした」
テオ・テスカトル 「私にはそのような考えはない。知識は広く分け与えるべきだ」
ナナ・テスカトリ 「あなた様……」

649: 2009/05/21(木) 21:12:49.48 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「……反対するにべはない。次回の集会にて、提案するのも良いだろう」
ナナ・テスカトリ 「ありがとうございます」
テオ・テスカトル 「ある程度の議案は作っておかねばなるまい。お前のみでは納得させるのは厳しかろう」
ナナ・テスカトリ 「……(ニコリ)」

651: 2009/05/21(木) 21:14:01.41 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「夜分は冷え込む。中に入るが良い」
ナナ・テスカトリ 「ええ。ご足労おかけいたしました」
テオ・テスカトル 「何、気にすることはない。私も夜空を見たくなっただけのことよ。ゆくぞ」
ナナ・テスカトリ 「かしこまりました」

652: 2009/05/21(木) 21:15:28.05 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「そういえば、先日、人間にやられたティガレックス夫妻なのだが、子供は無事、フルフル夫妻の元についたと」
ナナ・テスカトリ 「そうですか……フルフル様達ならば、安心してお任せできます。良かった」
テオ・テスカトル 「我が屋敷でも良かったのだが、既にクシャル達がいる。苦渋だったが、何にせよ引き取り手がいて良かった」
ナナ・テスカトリ 「皆様、ご自分のことでも大変だというのに、ありがたいことです」
テオ・テスカトル 「クシャル達はもう寝た。あの子らも、明日ほどから、そろそろ飛ぶ練習を始めても良い頃だろう」

653: 2009/05/21(木) 21:15:56.15 ID:N7ONU720
ナナ・テスカトリ 「そうですね……ん?」
テオ・テスカトル 「どうした、妻よ」
ナナ・テスカトリ 「あなた様、あそこに何かおります」
テオ・テスカトル 「ハンターか? こんな夜分に……下がりなさい」
ナナ・テスカトリ 「ええ」

654: 2009/05/21(木) 21:16:19.56 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「…………」
××××× 「……(ごそごそ)」
テオ・テスカトル 「いや、違う。それにしては大きい。人ではない」
ナナ・テスカトリ 「ここは、わたくし達の領地でございます。無断侵入者でしょうか?」
テオ・テスカトル 「そのようだ。少し注意をしてくるとしよう」

655: 2009/05/21(木) 21:16:59.84 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「そこな者。何をしている」
××××× 「!!(ビクゥッ!)……!!!」
ナナ・テスカトリ 「?」
テオ・テスカトル 「……猿の子供? 見たことのない顔だな。そこの鉱脈には、残念ながら宝石はない。盗みとは感心せぬものよ」
××××× 「(ガルルルルル)」

656: 2009/05/21(木) 21:17:30.59 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「ほう。私を炎皇と知りながらも牙を剥くか。無知か、はたまたは阿呆か」
××××× 「(サッ)」
テオ・テスカトル 「? ……人間の刃物? やめておけ。そんなものは、何の役にも立たぬ」
××××× 「ギャォォォ!(バッ)」

657: 2009/05/21(木) 21:17:58.82 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「(ガキィィィン)しょうもない餓鬼よ」
××××× 「!!」
テオ・テスカトル 「その刃物は折れたぞ。どうした? それで終わりか」

658: 2009/05/21(木) 21:18:37.35 ID:N7ONU720
××××× 「ガルルルルルル……ッガァァァッ!(ドォォォンッ)」
テオ・テスカトル 「! 何だ……この覇気は(毛並みが金色に変わった。目つきも据わっている。ただの小猿ではない……!)」
××××× 「シャァァ!(ブォォン)」
テオ・テスカトル 「あれは電気の塊……溜めているのか」
ナナ・テスカトリ 「あなた様!」
テオ・テスカトル 「急くな妻よ。やらせておけ」

659: 2009/05/21(木) 21:19:08.38 ID:N7ONU720
××××× 「キャオラァァ!(ドォォンッ!)」
テオ・テスカトル 「ふんッ!(バシィィィッ)」
××××× 「!!?」
テオ・テスカトル 「これしき弾けぬとでも思うたか。ちと、お灸を据える必要がありそうだな」

660: 2009/05/21(木) 21:19:33.09 ID:N7ONU720
××××× 「…………(じり……じり……)」
テオ・テスカトル 「(逃げる気配がない……? 何だ、この奇妙な猿は……)」
テオ・テスカトル 「(見たことがない……それに、小猿の割に、とてつもないパワーだ)」

661: 2009/05/21(木) 21:22:10.96 ID:N7ONU720
××××× 「(ぐぅぅぅぅ~)…………ギリ……」
テオ・テスカトル 「……?」
ナナ・テスカトリ 「おやめください、あなた様。そこな小猿も、お控えなさい(ザッ)」
××××× 「!!」
ナナ・テスカトリ 「お腹がすいているのですか? そのような追いはぎのような真似をせずとも、ならばそう口に出せばよいのです」

662: 2009/05/21(木) 21:22:33.45 ID:N7ONU720
××××× 「…………ギリ…………」
ナナ・テスカトリ 「ほら(ポイッ)」
××××× 「…………」
ナナ・テスカトリ 「ドス食い大マグロの干物です。おいしいですよ」
××××× 「…………(くんくん)」
××××× 「(ぎろ)………………(サッ)」
××××× 「(むしゃむしゃむしゃむしゃ)」

663: 2009/05/21(木) 21:23:08.60 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「…………ふむ」
ナナ・テスカトリ 「どこの子でしょうか。見たところ、ブランゴ一族のようですが……」
テオ・テスカトル 「ドド殿は、火山をいたく嫌っておられる。それに、小猿の力ではない。異常な何かを感じる」
ナナ・テスカトリ 「今は戻ったようですが、先ほど金色に輝きましたわ」
テオ・テスカトル 「うむ。どうしたものか」

664: 2009/05/21(木) 21:23:31.40 ID:N7ONU720
××××× 「………………(ぺろぺろ)」
ナナ・テスカトリ 「お名前を聞かせてください。わたくしたちは、特に何をするつもりもありませんが、ここは領地の中なのです」
××××× 「(じり……じり……)………………」
ナナ・テスカトリ 「わたくしはナナ、こちらが夫のテオです。人にいきなり刃物を向けるのは、あまり関心しませんね」

665: 2009/05/21(木) 21:24:01.77 ID:N7ONU720
××××× 「…………(ぐぅぅぅ~)」
ナナ・テスカトリ 「足りなかったようですね。お家にいらっしゃい。何か、ご馳走してあげましょう」
テオ・テスカトル 「ふむ。施しもまた修行だ。先ほどのことは大目に見よう。人間のそれを捨てるのならばな」
××××× 「…………」

666: 2009/05/21(木) 21:24:25.61 ID:N7ONU720
ナナ・テスカトリ 「ほら、おいでなさい」
テオ・テスカトル 「(くるっ、ズン、ズン)人の武器に頼るなど、男としては言語道断。良い筋をしているというに、惜しいものだ」
××××× 「………………(ポイッ)」
ナナ・テスカトリ 「そうです。ほら、行きますよ」
××××× 「…………」

667: 2009/05/21(木) 21:24:47.07 ID:N7ONU720
―テオ、ナナの巣―

クシャルダオラ 「すぅ……すぅ……」
錆クシャルダオラ 「すぅ……すぅ……」
ナナ・テスカトリ 「子供達が寝ていますので、静かにお願いね」
××××× 「…………」

668: 2009/05/21(木) 21:25:08.84 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「妻よ、私にはツチハチノコの地酒をくれないか」
ナナ・テスカトリ 「はい、あなた様。坊やは、ミルクは大丈夫?」
××××× 「…………」
テオ・テスカトル 「そう睨むな。お前一人が暴れたところで、私にとっては痛くも痒くもない」

669: 2009/05/21(木) 21:27:06.21 ID:N7ONU720
ナナ・テスカトリ 「どうぞ、温めたミルクと、こんがり肉Gよ」
××××× 「………………!!」
ナナ・テスカトリ 「いいのよ、食べても」
××××× 「(バクバクバクバク)」

670: 2009/05/21(木) 21:27:21.64 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「(ぐびり)ふむ……」
××××× 「(ピタッ)…………(ごそごそ)」
ナナ・テスカトリ 「どうしたの、急にお肉をしまったりして」
テオ・テスカトル 「…………」

671: 2009/05/21(木) 21:27:45.74 ID:N7ONU720
××××× 「………………もっとくれ………………」
ナナ・テスカトリ 「(ニコリ)いいわよ。でも、その前にお名前を教えてくれないかしら」
××××× 「…………ラージャン…………」
ナナ・テスカトリ 「ラージャン君ね。沢山あるから、ゆっくり食べていいのよ」

672: 2009/05/21(木) 21:30:47.60 ID:N7ONU720
ラージャン 「…………(ゴソゴソ)…………(モグモグ)」
テオ・テスカトル 「そうか。お前は、ブランゴ一族の忌み子だな」
ラージャン 「!!!!」
ナナ・テスカトリ 「え? 忌み子?」

673: 2009/05/21(木) 21:31:16.22 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「ああ。道理で見たことのない顔だと思った」
ラージャン 「…………」
ナナ・テスカトリ 「(忌み子……? この子が!?)」
ナナ・テスカトリ 「(ブランゴ一族などは、より強い戦士を残すために、別種と婚姻させるしきたりがあると聞くけれど……)」

674: 2009/05/21(木) 21:31:41.47 ID:N7ONU720
ナナ・テスカトリ 「(その結果、普通ではありえない力を持った子が生まれるって……)」
ナナ・テスカトリ 「(単なる噂ではなかったの……?)」
テオ・テスカトル 「抜け出してきたのか。何か事情がありそうだな」
ラージャン 「…………」

675: 2009/05/21(木) 21:32:16.25 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「(ぐびり)まぁ、構えるな。別に無理に聞こうというわけでもない」
ラージャン 「…………(ガツガツガツガツ)……(スクッ)」
ナナ・テスカトリ 「あら、もういいの?」
ラージャン 「……別に……(くるっ)」

676: 2009/05/21(木) 21:32:42.88 ID:N7ONU720
ナナ・テスカトリ 「お待ちなさい」
ラージャン 「!!(ビクッ)」
ナナ・テスカトリ 「これをお持ちなさいな。何かに使えるかもしれません(ぽいっ)」
ラージャン 「……!(ひょい)」

677: 2009/05/21(木) 21:33:04.48 ID:N7ONU720
ナナ・テスカトリ 「メランジェ鉱石です。それ一つあれば、大概のお薬などはもらえますよ」
ラージャン 「…………」
ナナ・テスカトリ 「また、お腹がすいたらいらっしゃい。今度は、刃物は持たずにね」
テオ・テスカトル 「(ぐびり)」
ラージャン 「(くる……バッ)」

678: 2009/05/21(木) 21:35:42.03 ID:N7ONU720
―次の日、朝―

テオ・テスカトル 「それでは妻よ、すこし樹海に行ってくる」
ナナ・テスカトリ 「ええ、分かりました。これがお弁当です」
テオ・テスカトル 「ありがとう……ん? 入り口で二人が呼んでいるな」

679: 2009/05/21(木) 21:37:22.16 ID:N7ONU720
ナナ・テスカトリ 「? 何でしょう」
クシャルダオラ 「とうさまー何かあるよー」
錆クシャルダオラ 「何だろこれ」
ナナ・テスカトリ 「二人ともどうしたのですか?(ひょこ)」

681: 2009/05/21(木) 21:40:23.31 ID:N7ONU720
>>680
今日の投稿分が終わりましたら、時間と共に場所を書きますので、その時にお時間がありましたらご参加ください

682: 2009/05/21(木) 21:40:46.39 ID:N7ONU720
テオ・テスカトル 「ぬ? これは、花か? そのへんに咲いている雑草の……」
クシャルダオラ 「沢山おいてあるよ」
錆クシャルダオラ 「変なの」
テオ・テスカトル 「誰かの悪戯か? 片付けておきなさい」
クシャルダオラ 「はーい」

683: 2009/05/21(木) 21:41:16.14 ID:N7ONU720
ナナ・テスカトリ 「……? (これは、赤茶けた毛……)」
ナナ・テスカトリ 「(昨日の子の……)」
ナナ・テスカトリ 「(クスッ)」
ナナ・テスカトリ 「(お礼ということでしょうか……可愛いことをするではありませんか)」

684: 2009/05/21(木) 21:41:58.68 ID:N7ONU720
―現在、砂漠入り口、クロネコ飛脚便詰め所―

ヴォルガノス 「(ドス、ドス)邪魔するぜィ」
メラルーA 「っぉ! 兄さん困りやすぜ。まだ開店前でっさ!」
ヴォルガノス 「カタいこと言うなや。こっちゃ急ぎなもんでね」
ナナ・テスカトリ 「申し訳ありません、お願いしたいのですが……」
メラルーA 「おぅふ。ナナ先生じゃねぇですか。こりゃこりゃ、今お茶ぁお持ちしやすんで」

685: 2009/05/21(木) 21:42:32.42 ID:N7ONU720
ナナ・テスカトリ 「お気になさらず。すぐに行くところがありますので」
ヴォルガノス 「今、出れる猫はいるかィ?」
メラルーA 「丁度早めに出勤してきた野郎がいやす。おいハチィ!」
メラルーB 「へい!」
メラルーA 「ちょち早ェが仕事だ」
ヴォルガノス 「今から火山に行って、クシャル姉妹を呼んできて欲しいんで。できれば地獄兄弟も」

686: 2009/05/21(木) 21:43:08.13 ID:N7ONU720
メラルーA 「どこにでさ?」
ヴォルガノス 「ディアブロス老師のところにだ。急ぎの用だと伝えてくれればいい」
メラルーA 「こっから火山だと、ちぃと遠いな……ハチ、アレを出すぞぃ」
メラルーB 「えぇぇぇえぇぇ!? 店長、アレを!?」
メラルーA 「グダグダ言うな。それともお前、無職猫になりてぇか?」
メラルーB 「ちっ……分かりましたよ。やりゃあいいんでしょうやりゃあ(スタスタスタ)」
メラルーA 「ちょいとおまちくだせぇ」

687: 2009/05/21(木) 21:44:12.56 ID:N7ONU720
メラルーB 「(ガラガラガラ)店長、スタンバイできやしたぜ」
ナナ・テスカトリ 「これは……大砲?」
メラルーA 「火山はこっちの方だな……(グイ)お二人とも、耳ィ塞いでたほうがいいでさ」
ナナ・テスカトリ 「?」
メラルーB 「(よじよじ)オールライトでさぁ!」

688: 2009/05/21(木) 21:44:36.42 ID:N7ONU720
ナナ・テスカトリ 「(大砲の中に……)」
メラルーA 「点火ァァ!(ボッ)」
メラルーB 「(ズッドォォォォン)ギニャァアァァァァァ……………………ァァ…………」
ナナ・テスカトリ 「ね……猫さんが、大砲で撃ち出されて空を……!!」

689: 2009/05/21(木) 21:45:05.03 ID:N7ONU720
ヴォルガノス 「毎回思うんだがね、ありゃ着地はどうやってんでさ」
メラルーA 「企業秘密でさ。お二人はこれから砂漠に?」
ヴォルガノス 「ああ。そのつもりだがね」
メラルーA 「砂嵐がくっかもしんねぇ。気をつけなされ」
ナナ・テスカトリ 「分かりました。ヴォル君、急ぎましょう」
ヴォルガノス 「……そうですな。大将、これは御代だ(ぽいっ)」
メラルーA 「まいど。今度は開店後に来てくだせぇよ」

690: 2009/05/21(木) 21:45:28.33 ID:N7ONU720
―砂漠―

ヴォルガノス 「…………」
ナナ・テスカトリ 「日差しが強い……この子には辛いですね……」
女児 「はぁ……はぁ……」
ヴォルガノス 「もうじき、地下道に入れまさぁ。そこに行きゃぁ水が手に入る」

691: 2009/05/21(木) 21:45:50.62 ID:N7ONU720
ナナ・テスカトリ 「急がなくては……」
ヴォルガノス 「先生、砂の上は走らねェほうがいい。足をとられますぜ」
ナナ・テスカトリ 「分かってはいるのですが……しかし……」
ヴォルガノス 「急ぐよりも、同じペースで進んだ方が早いんでさ(ドス、ドス)」

692: 2009/05/21(木) 21:46:10.12 ID:N7ONU720
ヴォルガノス 「(いやな気が後ろから近づいてくる……)」
ヴォルガノス 「(見た感じ、何もいねェが……)」
ヴォルガノス 「(わざと目に付きやすい場所を歩いてるってのに、仕掛けてこねぇ)」
ヴォルガノス 「(だが殺気は、随分と大きくなってやがる)」
ヴォルガノス 「(いやな感じだ……)」
ヴォルガノス 「(明らかにつけられてるってのに……)」

693: 2009/05/21(木) 21:46:31.97 ID:N7ONU720
ヴォルガノス 「(ここで暴れていぶりだすのも手だが……)」
ヴォルガノス 「(先生と、あの人間を巻き込む……)」
ヴォルガノス 「(万が一のことがあったら大変でぇ)」
ヴォルガノス 「(どうする……?)」
ヴォルガノス 「(何かがつけてきてるってのぁ間違いねぇ)」
ヴォルガノス 「(それも、砂に潜って……)」
ヴォルガノス 「(この気迫にぁ、覚えがある……)」

694: 2009/05/21(木) 21:46:54.15 ID:N7ONU720
ナナ・テスカトリ 「……ッ。砂が、顔にかかりますね……」
ヴォルガノス 「……そういや風が……(ハッ)」
ヴォルガノス 「風!?」
ナナ・テスカトリ 「どうしました、ヴォル君?」

695: 2009/05/21(木) 21:47:29.40 ID:N7ONU720
ヴォルガノス 「しまった……凪地帯に入っちまったんで!」
ナナ・テスカトリ 「凪?」
ヴォルガノス 「こんな、乾燥した時は、局所的に砂嵐が起こることがあるんでさ。その直前は、こんな緩やかな空気になる」
ナナ・テスカトリ 「砂嵐……ど、どうしましょう」
ヴォルガノス 「一、二分でおさまりやす。障害物がねェんで、強風で嵐みてぇになるんでさ。砂に潜っていればいいんですが……」

696: 2009/05/21(木) 21:47:54.16 ID:N7ONU720
ヴォルガノス 「(ちっ……)」
ヴォルガノス 「(まだ、殺気が静まってねぇ……)」
ヴォルガノス 「(あっし一人なら、どうということもねぇんだが)」
ナナ・テスカトリ 「ほ……ほんと……風が急に強くなって……」
ヴォルガノス 「先生、離れてくだせぇ!(ドンッ)」

697: 2009/05/21(木) 21:48:10.94 ID:N7ONU720
ナナ・テスカトリ 「きゃあ!(ズゥン)」
 >ゴウッッ!!
ヴォルガノス 「ぐっ……(突風が……)」
ヴォルガノス 「(地下洞への入り口は、すぐそこなのに……)」

698: 2009/05/21(木) 21:48:30.08 ID:N7ONU720
ナナ・テスカトリ 「ヴォル君! きゃっ……風が、急に強くなって……」
ナナ・テスカトリ 「目が……」
ナナ・テスカトリ 「(この子は守らなければ……)」
ナナ・テスカトリ 「(胸に抱いて……)」
ナナ・テスカトリ 「(うっ……舞い上がる砂で……)」
ナナ・テスカトリ 「(何も見えない……)」

699: 2009/05/21(木) 21:48:52.90 ID:N7ONU720
ヴォルガノス 「(ちぃっ、先生を見失った)」
ヴォルガノス 「!! (殺気が近づいてきた!)」
ヴォルガノス 「(落ち着け……気を落ち着かせ、相手の出方を待つ……)」
ヴォルガノス 「(空気と気の揺らぎを感じるんだ……)」
ヴォルガノス 「(後ろか!!)」
××××× 「(グルルルルル)」
ヴォルガノス 「……何ッ!? (近い!)」

700: 2009/05/21(木) 21:49:14.92 ID:N7ONU720
××××× 「(ゴウッ)」
ヴォルガノス 「ッオラァ!(バシッ)」
ヴォルガノス 「……!! ガ……(何だ……痺れる……)」
ヴォルガノス 「(舞い上がった砂で、目が……)」
××××× 「(ゴウッ)」

701: 2009/05/21(木) 21:49:32.11 ID:N7ONU720
ヴォルガノス 「(ズキィ)!(ぐっ……)」
ヴォルガノス 「(ぶつけた頭の傷が……)」
ヴォルガノス 「(ドゴォッ)ガァァ!」
ヴォルガノス 「…………(ズゥゥゥン)」

702: 2009/05/21(木) 21:49:52.85 ID:N7ONU720
ヴォルガノス 「(何だ……この攻撃は……)」
ヴォルガノス 「(まるで、雷に打たれたような……)」
ヴォルガノス 「(か……体が……)」
ヴォルガノス 「(やはり……やはりこいつか……)」
ヴォルガノス 「(ラージャン……!!)」

703: 2009/05/21(木) 21:50:09.57 ID:N7ONU720
ラージャン 「…………(グイッ)」
ヴォルガノス 「………………」
ラージャン 「裏切り者が…………」

705: 2009/05/21(木) 21:50:34.60 ID:N7ONU720
ヴォルガノス 「………………隠れて……襲うたぁ…………随分じゃねぇか…………」
ラージャン 「(ググ)…………(ドゴォ!)」
ヴォルガノス 「グガッ!」
ラージャン 「頃しはしない……ただ、人間に組するものは、戦えない体にはなってもらう」
ヴォルガノス 「………………何ィ…………?」

706: 2009/05/21(木) 21:51:07.07 ID:N7ONU720
ラージャン 「シェンの復活だ……じき、シャンロンの時代は終わる」
ヴォルガノス 「それで……先生を……つけてたってわけ……か?」
ラージャン 「………………」
ヴォルガノス 「不安になって……ククッ…………お笑い草ってなァこのことさ…………」

707: 2009/05/21(木) 21:51:33.00 ID:N7ONU720
ヴォルガノス 「(まだか……クシャル……ティガ…………)」
ラージャン 「……俺の頭にゃァ……予約は二つしか入らないものでな……」
ヴォルガノス 「…………」
ラージャン 「残念ながら、予定は遂行する。どんな障害があろうとも(ググ……)」
ヴォルガノス 「ガ………………ッ」
ラージャン 「先生に手は出さん……しかし、あの人間は災厄だ……氏んでもらう」
ヴォルガノス 「…………カカ…………ハハ…………ハハハッ!」
ラージャン 「……?」

708: 2009/05/21(木) 21:52:06.46 ID:N7ONU720
ヴォルガノス 「先生には……手を出さん? よく言う…………」
ラージャン 「………………」
ヴォルガノス 「色狂いめ…………先生は…………もう既に……あんたのこたぁ…………二度と許しちゃぁくれねぇよ」
ラージャン 「(ブワッ!)」
ヴォルガノス 「(チッ……金色に……)」

709: 2009/05/21(木) 21:52:25.07 ID:N7ONU720
ラージャン 「………………(グググ)」
ヴォルガノス 「ガ……ァ……」
ラージャン 「……!(バッ)」
ヴォルガノス 「(ドサッ)…………ガハッ……ガハッ……」

710: 2009/05/21(木) 21:52:48.36 ID:N7ONU720
ナナ・テスカトリ 「ヴォル君! どこにいるんですか、ヴォル君!」
ナナ・テスカトリ 「砂嵐で姿が見えないんです、返事をしてください!」
モノブロス 「アニキィィ~! どこだぁぁ~!」

711: 2009/05/21(木) 21:53:14.08 ID:N7ONU720
ラージャン 「…………チッ(ズザァッ)」
ヴォルガノス 「………………(砂に……くそっ、逃がして……)」
ヴォルガノス 「(ガクッ)」
ヴォルガノス 「(くそ……頭の傷……思い切り殴りやがってからに……)」
ヴォルガノス 「(まずい……また、意識が…………)」
ヴォルガノス 「……………………」

次回へ続きます

741: 2009/05/26(火) 21:31:41.11 ID:c3JjqS.0
―数分後、砂漠、秘境―

ナナ・テスカトリ 「はぁ……はぁ……」
ナナ・テスカトリ 「(こんなところに入り口があったなんて……)」
ナナ・テスカトリ 「(だいぶ深くまで潜ったわ……ここまで来れば大丈夫ね……)」

742: 2009/05/26(火) 21:32:06.41 ID:c3JjqS.0
ナナ・テスカトリ 「(……それより……)」
ヴォルガノス 「…………」
ナナ・テスカトリ 「(ヴォル君がまだ目を醒まさない……随分酷く首を絞められたんだわ……)」
ナナ・テスカトリ 「(一体、どうしたら……)」

743: 2009/05/26(火) 21:32:44.56 ID:c3JjqS.0
モノブロス 「ふぅ(どっかり)ナナ先生! おひさしぶりっス! マッジ久しぶりっス。相変わらずお美しくて俺感動っス」
ナナ・テスカトリ 「あ……ありがとう。それより、老師は……」
モノブロス 「よいしょっと(ズゥン)アニキをここに降ろして……」
ヴォルガノス 「…………」
モノブロス 「こっちスよ。んま、どこのどいつがやったのか知らないですけど、アニキは恨み買うタイプだからなァァ~」

744: 2009/05/26(火) 21:34:13.83 ID:c3JjqS.0
ナナ・テスカトリ 「それにしてはこれは、酷い……随分手酷く殴られて……一体誰が……」
モノブロス 「あぁ、へーきへーき。師匠の修行の時なんざ、俺なんざ脳挫傷して、一週間も意識がなかった時がありますからねぇ」
ナナ・テスカトリ 「一週間……」
モノブロス 「この秘境の出入り口は、俺ら夢幻砂漠流の奴らしか知らないんっスよ。安心してくんせぇ」

745: 2009/05/26(火) 21:37:05.05 ID:c3JjqS.0
モノブロス 「ちっと人呼んできますわ」
ナナ・テスカトリ 「ええ。お願いできるかしら」
モノブロス 「しっかし、先生さ、その背中にくっつけてんの、餌っスか? 悪ィけど、老師は肉は食いませんス」
ナナ・テスカトリ 「え!? 違うわ。この子は、イャンクック様の保護されている娘さんで、助けていただくためにお伺いしたの」
モノブロス 「人間をぉぉぉ~? へぇぇぇ、先生も好きモノ、ぁいゃ違った。モノ好きっスね。人間かぁ……」

746: 2009/05/26(火) 21:37:48.21 ID:c3JjqS.0
ナナ・テスカトリ 「…………そういうわけなのです。失礼は承知よ。老師に、何とかお話を通してもらえないかしら……」
モノブロス 「いやいやー、先生の頼みっつーなら、そりゃ聞きますよ? アニキもこうだし。ま、偶然俺が通りかかって良かったス」
ヴォルガノス 「…………」
モノブロス 「なーんかこのやられ方、覚えがあるようなないような……とっかく先生、ここらで待っててくだせぇス」
ナナ・テスカトリ 「ええ、分かったわ」
モノブロス 「そこらへんに座っててくんなまし。あ、少し右に泉があるっス。ほいじゃ(ドスドスドス)」

747: 2009/05/26(火) 21:39:03.11 ID:c3JjqS.0
ナナ・テスカトリ 「(ヴォル君……砂嵐が収まった後、気を失って倒れていたけれど……)」
ナナ・テスカトリ 「(誰かに、後をつけられていた……)」
ナナ・テスカトリ 「(出発前から、ヴォル君の様子がおかしかったのは、そのせい……)」
ナナ・テスカトリ 「(何ということ……わたくしは気づきもせず、教え子が傷ついている間、狼狽しているだけでした……)」

749: 2009/05/26(火) 21:41:18.96 ID:c3JjqS.0
>>748
そうですね、震盪の方なのかもしれません。曖昧な知識ですみません

750: 2009/05/26(火) 21:42:15.27 ID:c3JjqS.0
ナナ・テスカトリ 「(許されることではありません……)」
ナナ・テスカトリ 「(…………)」
ナナ・テスカトリ 「(このやり方……)」
ナナ・テスカトリ 「(もしかして……)」

751: 2009/05/26(火) 21:43:39.34 ID:c3JjqS.0
女児 「う……うぅ……」
ナナ・テスカトリ 「……(この子にも水を飲ませなければ)」
ナナ・テスカトリ 「(ドス、ドス)よっ……」
女児 「…………」
ナナ・テスカトリ 「(石が光っていて明るい……良かった……)」

752: 2009/05/26(火) 21:44:13.34 ID:c3JjqS.0
ナナ・テスカトリ 「(この、大きなサボテンの影に砂がたまっている……ここにしましょう)」
ナナ・テスカトリ 「(私の尻尾に水を含ませて……)」
ナナ・テスカトリ 「………………」
女児 「(ごく、ごく)」

753: 2009/05/26(火) 21:45:02.59 ID:c3JjqS.0
ナナ・テスカトリ 「……(水を飲む力は、まだ残っているみたい……)」
ナナ・テスカトリ 「(良かった……)」
ナナ・テスカトリ 「(ヴォル君にも……)」
ナナ・テスカトリ 「(……?)」
ナナ・テスカトリ 「(何か、地鳴りのような音が……)」

754: 2009/05/26(火) 21:45:55.98 ID:c3JjqS.0
×××××× 「(ドドォォォンッ)」
ナナ・テスカトリ 「きゃあ!」
ナナ・テスカトリ 「(地面の中から、誰かが……)」
ドスガレオス 「ちわっす。兄弟子から話ィ聞いてきました」

755: 2009/05/26(火) 21:46:24.31 ID:c3JjqS.0
ナナ・テスカトリ 「あなたは……ドスガレオス君!」
ドスガレオス 「ナナ先生、こんちは」
ナナ・テスカトリ 「老師の所に弟子入りしたのですか? 前に見たときは随分と小さかったのに、大きくなって」
ドスガレオス 「いやぁ、そうなんスよ。老師に引き抜かれまして。暑い中、わざわざご苦労さんです」
ナナ・テスカトリ 「こちらこそ、丁寧にありがとう」
ドスガレオス 「事情はあらかた兄弟子から聞きました。っと、失礼(ずいっ)」

756: 2009/05/26(火) 21:48:19.21 ID:c3JjqS.0
ドスガレオス 「あー、締め落とされたんですね。こりゃ駄目だ、多分頚椎がズレてる」
ナナ・テスカトリ 「頚椎が!?」
ドスガレオス 「あーあー心配ないです。よくあることですから。よいしょ」
ナナ・テスカトリ 「よくあるのですか!?」

757: 2009/05/26(火) 21:49:45.96 ID:c3JjqS.0
ヴォルガノス 「…………」
ドスガレオス 「ハンターですか? 強い奴がいるんですね」
ナナ・テスカトリ 「そ……それは……私にもよくは……」
ドスガレオス 「……で、それが問題のアレですか」

758: 2009/05/26(火) 21:50:35.95 ID:c3JjqS.0
女児 「…………」
ドスガレオス 「とにかく上に見せましょう。行きますよ(ズルズル)」
ナナ・テスカトリ 「ちょ……ドスガレオス君! ヴォル君は重症なんですよ!? そんな、尻尾を引っ張って……」
ドスガレオス 「兄弟子は重いんで、担ぎ上げるのは俺では無理なんで。それに、不思議とこれくらいじゃ氏なないんです俺ら」

759: 2009/05/26(火) 21:51:31.36 ID:c3JjqS.0
ナナ・テスカトリ 「そんな無根拠な……」
ドスガレオス 「ほら、先生。ぐずぐずしてっとその子危ないんでしょ? 連れてきてください(ズルズル)」
ヴォルガノス 「………………」
ドスガレオス 「師匠達は、この秘境地下奥の洞窟にいらっしゃるんで」

760: 2009/05/26(火) 21:52:45.84 ID:c3JjqS.0
―秘境、地下―

ナナ・テスカトリ 「地上はあんなに熱かったのに、今度はひんやりしていて……むしろ肌寒い……こんなところがあったなんて」
ドスガレオス 「師匠は滅多なことじゃ、ここを出ることさえされませんから、俺にとっちゃ外が暑すぎて……(ズルズル)」
ナナ・テスカトリ 「ドスガレオス君、ちょっと待って。さっきからヴォル君の頭が、いろんなところにぶつかっているわ」

761: 2009/05/26(火) 21:53:29.58 ID:c3JjqS.0
ドスガレオス 「あぁ、こりゃ失敬。でもどうせ気を失ってるんですから、気にしなくていいのに」
ナナ・テスカトリ 「そういうわけには参りませんよ……わたくしが頭を持ちますから」
ドスガレオス 「マジですか? 悪いですね」
××××××× 「悪いですねそれは。あなたは何を、女性に荷物運びをさせようとしているのですか」

762: 2009/05/26(火) 21:54:26.23 ID:c3JjqS.0
ナナ・テスカトリ 「その声は……」
黒ディアブロス 「久方ぶりにお目にかかりますマドモアゼル。最後にお会いしたのは、十年程前のことになりますでしょうか」
ナナ・テスカトリ 「黒ディアブロス様!」
ドスガレオス 「げっ……」
黒ディアブロス 「いかにも。この地下秘境にて、我が主ディアブロスの執事を務めさせていただいております黒ディアでございます」

763: 2009/05/26(火) 21:55:32.21 ID:c3JjqS.0
ナナ・テスカトリ 「失礼いたしております。いきなり押しかけて、ご無礼は承知しております」
黒ディアブロス 「ああ、いえ。招かれざる客人にはしかるべき対応をいたしますが、淑女はいついかなる時も寛大にお迎えせよと」
ドスガレオス 「…………」
黒ディアブロス 「そう、我が主は申されておりますゆえ。それゆえ、どうか頭なぞお下げにならぬよう」
ナナ・テスカトリ 「お気遣い、痛み入ります……」

764: 2009/05/26(火) 21:56:17.11 ID:c3JjqS.0
黒ディアブロス 「しかし特筆すべきは、我が主の弟子、その不敬さ。淑女の眼前にて醜態を晒し引きずられてくるとは……」
ドスガレオス 「…………」
ヴォルガノス 「…………」
黒ディアブロス 「お前も、夢幻砂漠流の直弟子として、兄弟子の不始末は家督の不始末。恥に思わねばならぬものを」

765: 2009/05/26(火) 21:57:02.18 ID:c3JjqS.0
ドスガレオス 「まぁそうは言いますけど、執事(バトラー)、俺が呼ばれた時には、もう兄弟子はやられてましたんで」
黒ディアブロス 「口答えをするんではありません」
ドスガレオス 「別に口答えをしたわけじゃないんですけどね」
黒ディアブロス 「全く……その不敬な態度は誰に似たのか(ドスドス)」

766: 2009/05/26(火) 21:58:20.66 ID:c3JjqS.0
ナナ・テスカトリ 「あ……黒ディアブロス様、ヴォル君は……」
黒ディアブロス 「淑女の眼前にて、どこぞの誰かに不覚をとるような男は男ではなし。氏んで結構。それより、問題の娘子を」
ナナ・テスカトリ 「え? ……あ、えぇ……この子です」
黒ディアブロス 「ふむ………………これしきの熱傷ならば、地下の滋養水に半日ほど浸せば回復の見込みは出てきます」
ナナ・テスカトリ 「本当ですか!?」

767: 2009/05/26(火) 21:59:28.62 ID:c3JjqS.0
黒ディアブロス 「はい。あなた様ですからお教えいたしますが……この地下には、埋葬されたモンスターの納骨堂があります」
ナナ・テスカトリ 「納骨堂ですって!?」
黒ディアブロス 「某ども角竜種やケルビ族など、骨髄や角の骨組織に治癒作用がある骨が、大量に埋葬されておりまして」
ドスガレオス 「それが浸かって、湧き出た地下水が一部、強力な滋養作用に変質した場所があるんですよ」
黒ディアブロス 「お前は、それは某が説明しようと思っていたところを!」

768: 2009/05/26(火) 22:00:24.69 ID:c3JjqS.0
ドスガレオス 「まぁ、とは言っても何でも治るわけじゃないですけれど、焼け焦げた鱗を再生するくらいならできるんですよ」
ナナ・テスカトリ 「充分です! 早く連れて行ってください!」
黒ディアブロス 「仰せのままにいたしましょう。では、その娘子は預かります」
ナナ・テスカトリ 「わたくしも……」

769: 2009/05/26(火) 22:01:13.06 ID:c3JjqS.0
黒ディアブロス 「大変申し訳ないのですが、納骨堂には一族しか立ち入ることが許されておりません。大丈夫。某が責任を持ちます」
ナナ・テスカトリ 「……そうなのですか……」
黒ディアブロス 「……しかし、強力な滋養作用ということは、裏を返せば毒です。特に人間は弱い」
ドスガレオス 「…………」
黒ディアブロス 「何かしらの障害は、確実に残ると思われますが、よろしいか?」

770: 2009/05/26(火) 22:04:02.10 ID:c3JjqS.0
ナナ・テスカトリ 「障害……そんな……」
黒ディアブロス 「前、滋養地下水を奪ったハンターがおりましたが、高濃度の治癒水により、逆にショックで勝手に氏にました」
ナナ・テスカトリ 「!!」
黒ディアブロス 「納骨堂から少し組んできた弟子が襲われたのです。原液を飲んで、倒れているところを見つけました」

772: 2009/05/26(火) 22:05:11.81 ID:c3JjqS.0
ナナ・テスカトリ 「そんなに強くては……」
黒ディアブロス 「ご安心を。某は扱い方を心得ております。それでは、ドスガレオス、ヴォルガノスも連れてきなさい」
ドスガレオス 「了解です(ズルズル)」
ヴォルガノス 「…………」
黒ディアブロス 「一刻を争うようですので、ここにて失礼をいたします。ああ、それとナナ嬢」
ナナ・テスカトリ 「は……はい。何でしょうか?」

773: 2009/05/26(火) 22:06:19.34 ID:c3JjqS.0
黒ディアブロス 「砂嵐の中とはいえ、ヴォルガノスに手傷を負わせるとは、相当な手慣れが潜んでおります」
ナナ・テスカトリ 「……!!!」
黒ディアブロス 「事情は分かりませんが、あなたも危険にさらされたことに変わりはない。しばらくは外に出ない方がよいでしょう」
ナナ・テスカトリ 「ええ……そう、ですね……」

774: 2009/05/26(火) 22:07:43.46 ID:c3JjqS.0
黒ディアブロス 「…………今、他の弟子を周辺の警備に当たらせています。それに、火山に使い猫を飛ばしました。ご安心を」
ナナ・テスカトリ 「……(ホッ)わたくしは……おろおろするばかりで……しかし、何から何まで……」
黒ディアブロス 「お気になさらぬよう。それが紳士の務めでございます。あなたはご立派につとめを果たされた」
ナナ・テスカトリ 「…………」
黒ディアブロス 「しとめられたのはヴォルガノスの不手際ゆえ、容赦を請わねばならないのはこちらの方です」

775: 2009/05/26(火) 22:08:36.35 ID:c3JjqS.0
ナナ・テスカトリ 「と、とんでもありません! ヴォル君は、立派に動いてくれました!」
黒ディアブロス 「……そうですか。お心遣いありがとうございます。さ、奥へどうぞ。美味しいアイスティーをご用意させています」
ドスガレオス 「先生、俺も後で行きますから(ズルズル)」
ヴォルガノス 「…………」

776: 2009/05/26(火) 22:08:59.38 ID:c3JjqS.0
黒ディアブロス 「こら、お前はまだ修行が……」
ドスガレオス 「バトラー、細かいことはいいじゃないですか。折角女性が来訪されたんですよ」
黒ディアブロス 「そんなことばかり言っているからお前は……(ドスドス)」
ドスガレオス 「はいはい。とっとと行きますよ(ズルズル)」

777: 2009/05/26(火) 22:09:21.24 ID:c3JjqS.0
ナナ・テスカトリ 「(おそらく、ヴォル君を襲ったのはラージャン君……)」
ナナ・テスカトリ 「(あの時のように、電気をぶつけられたんだわ……)」
ナナ・テスカトリ 「(彼が、わたくしの後をつけてきたということは……)」
ナナ・テスカトリ 「(もしかして……)」

778: 2009/05/26(火) 22:09:49.92 ID:c3JjqS.0
モノブロス 「先生~~~ッ! こっちですこっち。老師がお待ちですよ~~~」
ナナ・テスカトリ 「! あ、はい! 今行きます!!」
ナナ・テスカトリ 「…………」
ナナ・テスカトリ 「(幸い、猫さんを火山に飛ばしてくださったよう……)」
ナナ・テスカトリ 「(状況を見て火山に戻り、テオ様にこのことを報告せねば……)」

779: 2009/05/26(火) 22:10:49.37 ID:c3JjqS.0
―秘境、奥間―

ナナ・テスカトリ 「失礼いたします」
ナナ・テスカトリ 「(少しだけ広い場所になっている……それに、石が薄く光っていて、ここも明るい……)」
モノブロス 「先生、こっちス」
ディアブロス 「…………」

780: 2009/05/26(火) 22:11:44.69 ID:c3JjqS.0
ナナ・テスカトリ 「(ザッ)お久しぶりにお目にかかります。老師」
ディアブロス 「………………ナナか。随分と、美しくなった(スッ)」
ナナ・テスカトリ 「!! 老師、その目は……」
ディアブロス 「何、歳よ。右はもう、白濁していてな……わしもまた、時の流れには逆らえぬ……」

781: 2009/05/26(火) 22:12:44.46 ID:c3JjqS.0
ディアブロス 「……しかしその声……匂い……ゆらぐ気……お主が、あの子ライオンだったとは思えぬな……」
ナナ・テスカトリ 「勿体無いお言葉です」
ディアブロス 「先代テスカと、わしは懇意にしておった……それに、美しく成長した淑女をはねる教えはしておらぬ」
ナナ・テスカトリ 「…………突然のことでしたゆえ、手土産もご用意できず……」

782: 2009/05/26(火) 22:13:35.08 ID:c3JjqS.0
ディアブロス 「許す。それに、この歳になると、うわべのみの手土産など、むしろ神経を逆なでするものでな……」
ナナ・テスカトリ 「…………」
ディアブロス 「成長した子供の姿を見るのが、一番の土産よ……のう、教師などをしているお前ならば、分かるだろう」
ナナ・テスカトリ 「ええ……その通りです、老師」

次回に続きます

807: 2009/05/30(土) 21:15:20.19 ID:eXwwbYc0
ディアブロス 「マ王と呼ばれていた時期が懐かしいものよ……そろそろ、後継者を決めねばならんかもしれぬな」
モノブロス 「老師! いきなり何をおっしゃるんで!? まだまだビンビンじゃないですかぁぁ~」
ディアブロス 「喉元に障る言い方は止めよ」
モノブロス 「えぇ~障ります?」
ディアブロス 「……わしの目は、じき完全に見えなくなる」
モノブロス 「…………」

808: 2009/05/30(土) 21:16:09.12 ID:eXwwbYc0
ナナ・テスカトリ 「何という……それは、ここの地下にある滋養水というものでも、どうしようもないのですか?」
ディアブロス 「さてな……もはや試す気にもならぬわ」
モノブロス 「…………」
ディアブロス 「万物は流転し、生きとし生けるものはやがてまた、赤子の頃の力に戻ってゆく。そしてまた無となる」
ナナ・テスカトリ 「ですが……」
ディアブロス 「わしはもはや、その循環の輪の始まりに戻ってきているに過ぎぬ。いたずらに輪を歪めることもあるまい……」

809: 2009/05/30(土) 21:17:05.56 ID:eXwwbYc0
ナナ・テスカトリ 「…………」
ディアブロス 「モノよ、麗人がお越しくださったというに、お前は何もせんだって良いものか?」
モノブロス 「こりゃいけねぇ! (ゴソゴソ)先生、この実の中に、ギンギンに冷えた果実茶が詰まってます」
ナナ・テスカトリ 「そんな、お気になさらずとも……」
モノブロス 「あとはこっちが干し魚に、釣りカエル。いろいろつまみはありますぜ。どんどんイッちゃってくだせぇ」
ディアブロス 「オオシッポガエルの干物をもて」
モノブロス 「老師、これっス」
ディアブロス 「うむ(ボリボリ)」

810: 2009/05/30(土) 21:18:22.08 ID:eXwwbYc0
ディアブロス 「して、ナナよ。事情を聞かせてはくれぬのか」
ナナ・テスカトリ 「こ……これは失礼をいたしました。少々頭が混乱しておりまして……」
ディアブロス 「良い、話せ」
ナナ・テスカトリ 「……………………と、そのような次第でございます」
ディアブロス 「臭いで、もしやと思ったが。やはり……我が弟子ヴォルガノスは、猿の忌み子ラージャンに不覚を取ったのだな」
ナナ・テスカトリ 「!!」
モノブロス 「あんだってェェ!? ラージャン!?」
ナナ・テスカトリ 「きゃあ!」
モノブロス 「ブッ頃してやる! 外か!? 外に奴がいンのか!?」
ディアブロス 「静まれ、モノよ」

811: 2009/05/30(土) 21:19:23.47 ID:eXwwbYc0
モノブロス 「(ギリリリリ)………………ッ! ………………失礼しやした、先生……」
ナナ・テスカトリ 「え……ええ」
ディアブロス 「雷の臭い……それに混じり、猿であって猿ではない獣臭……間違いはない」
ナナ・テスカトリ 「やはり、わたくしたちの後をつけてきていたのは、彼でしたか……」
ディアブロス 「おぬしと奴との間に起こったことは知っている……あながち我が同門も無関係というわけではなきゆえ」
ナナ・テスカトリ 「やはり、この混乱に乗じて、人間へ報復の強硬手段に出るつもりなのでしょうか」
ディアブロス 「…………」
ナナ・テスカトリ 「それで、邪魔なわたくし達を、気づかれないように始末を……」

812: 2009/05/30(土) 21:20:30.01 ID:eXwwbYc0
ディアブロス 「…………それもあるのだろうが、ブランゴ一族はどうやら、ラオシャンロンのことを察してしまったと考えられる」
ナナ・テスカトリ 「ラオシャンロン様の? それは一体……」
ディアブロス 「……彼は病気だ」
ナナ・テスカトリ 「! …………え……!?」
ディアブロス 「知っておるのは、我が同門のみ。滋養水にて治療を行っているが、もはや効かぬ。奴は氏を待つしかない身よ」
ナナ・テスカトリ 「……………………」
モノブロス 「…………」
ディアブロス 「同門から裏切りが出たとは考えにくい……おそらく、ラオの様子に何者か、感じいるところがあったのだろう」

813: 2009/05/30(土) 21:21:39.14 ID:eXwwbYc0
ナナ・テスカトリ 「(ラオシャンロン様が……ご病気!?)」
ナナ・テスカトリ 「(そんな……先日の集会の時は、いつもと変わらない様子で……)」
ナナ・テスカトリ 「(!?)」
ナナ・テスカトリ 「(……いつもと変わらない……?)」
ナナ・テスカトリ 「(違う……)」
ナナ・テスカトリ 「(そういえば、テオ様も、何か違和感を感じたと仰っていた……)」
ナナ・テスカトリ 「(確かにラオ様は、心なしか呼吸が……)」

814: 2009/05/30(土) 21:22:06.70 ID:eXwwbYc0
ディアブロス 「ラオは口外をしないようにと切に願っているが、このままでいるわけにもいかぬ。思案をしていた最中だった」
ナナ・テスカトリ 「治らないのですか? そのご病気は」
ディアブロス 「治らぬ」
ナナ・テスカトリ 「そんな……」
ディアブロス 「赤フルフルがもし存命だったとしても、無理だろう。何故ならば、ラオの病気は、巨大古龍宿命のものだからだ」
ナナ・テスカトリ 「宿命……?」
ディアブロス 「先代のラオ……灰ラオシャンロンもそうだった。本来、あれほどの大きさになる前に、シャンロン種は命を落とす」
ナナ・テスカトリ 「…………」
ディアブロス 「あそこまで成長した、ということが既に奇跡である。しかし、その奇跡は恩恵のみを与えるのではない」

815: 2009/05/30(土) 21:23:02.37 ID:eXwwbYc0
ナナ・テスカトリ 「と……申されますと?」
ディアブロス 「奴の成長は止まらぬ」
ナナ・テスカトリ 「…………」
ディアブロス 「永遠に成長し続ける異龍。それがラオシャンロンだ。そしてラオの心臓は、もはやあの体を支えるに及ばん」
ナナ・テスカトリ 「そんなことが……わたくし達は、何も……」
ディアブロス 「ラオが巧妙に隠しておったのだ。しかし、ブランゴ一族が強行に出てきたとなると、いずれ明るみに出よう……」
モノブロス 「……心臓をでっかくする薬はねぇんでさ。そもそも傷じゃぁねぇんです」
ディアブロス 「左様。治す、治さぬの問題ではない」
ナナ・テスカトリ 「…………」
ディアブロス 「それもまた、命の循環の輪ととらえるしか、あるまいな」

816: 2009/05/30(土) 21:25:18.72 ID:eXwwbYc0
ディアブロス 「おおかた、何かしらのことを契機ととり、反ラオシャンロン派が反乱を起こそうとでも企んでおるのだろう」
ナナ・テスカトリ 「一体どうすれば……こんなところでのんびりしている場合では……(ザッ)」
ディアブロス 「待て、ナナよ。どこに行こうというのだ」
ナナ・テスカトリ 「すぐに、ラオシャンロン様をお守りに向かいます。失礼とは存じますが……」
ディアブロス 「ラオの身辺には、既に我が同門弟子達がついておる。それに、おぬしはおそらく、ここを出ぬ方が良い」
ナナ・テスカトリ 「どうして!? こんな状況で、じっとしているわけには……」
ディアブロス 「見張りに出した弟子達の戻る時間は、とうに過ぎておる」
モノブロス 「そういえば……あいつら、やけに遅いな……」

817: 2009/05/30(土) 21:26:20.07 ID:eXwwbYc0
モノブロス 「ま……まさか……!!」
ディアブロス 「ラージャンの力は強大だ。あ奴はブランゴ一族に殺戮道具として忠実に仕えているゆえ」
モノブロス 「…………」
ディアブロス 「若い弟子には、少々相手がきつかろう」
ナナ・テスカトリ 「…………」
ディアブロス 「しかしまぁ、確かに。人と戦うために反乱を起こす時、他者が人間を保護していては、立つ瀬というものはないわな」
ナナ・テスカトリ 「そういうことですか……」
ディアブロス 「イャンクックめが……余計なことをしおってからに……」
ナナ・テスカトリ 「老師、しかしあの子は子供です……それに、とても優しい子だと……」
ディアブロス 「…………」

819: 2009/05/30(土) 21:29:15.12 ID:eXwwbYc0
ナナ・テスカトリ 「わたくしは、モンスターでも、人間でも……子供は子供として、守っていきたいのです」
ディアブロス 「…………」
ナナ・テスカトリ 「老師……」
ディアブロス 「……………………ああ。分かる。同じ、教える側の者としてな…………」
ナナ・テスカトリ 「……(ほっ)」
ディアブロス 「つまりお主は、ここに攻め込んでくるやもしれぬラージャンから、あの娘子を守る気概があるというのだな」
ナナ・テスカトリ 「!!!!」
ディアブロス 「……まぁ良い」

820: 2009/05/30(土) 21:49:34.13 ID:eXwwbYc0
ディアブロス 「(ぐぐぐ……)」
モノブロス 「老師!? 駄目ですって寝てなきゃぁ!」
ディアブロス 「黒ディアはまだ地下か……では、お前が供をせい、モノよ」
モノブロス 「供……? え? 俺が……俺が、お供!? 老師の!!?」
ディアブロス 「不服か?」
モノブロス 「いいえぇぇぇえ! 全身全霊でお供しやす!!」
ディアブロス 「良し。少し外の様子を見にゆくぞ……」
モノブロス 「承知ィ!」
ナナ・テスカトリ 「老師、そんな……ご無理をなさっては……」

821: 2009/05/30(土) 21:52:23.23 ID:eXwwbYc0
ディアブロス 「……無理? お主は、このわしに無理と?」
ナナ・テスカトリ 「(ビクッ)そ……そんなことは……」
ディアブロス 「お前はここに居よ」
ナナ・テスカトリ 「…………で、でも…………」
ディアブロス 「五年前に、ラージャンがお前にしたことは忘れぬ。奴の激昂は、なるべくならば避けねばならぬ」
ナナ・テスカトリ 「…………」
ディアブロス 「何、少し外の空気を吸いにゆくだけよ……少しな……(ドス、ドス……)」
ナナ・テスカトリ 「…………申し訳、ございません…………」
ディアブロス 「構わぬ。実力行使に出てくるとならば。この二刀夢幻砂漠流師範として、黙っているわけにはいかぬでな……」
モノブロス 「……(ニヤッ)」
ディアブロス 「(クックック)ゆくぞ……」

822: 2009/05/30(土) 21:52:50.87 ID:eXwwbYc0
―秘境、納骨堂―

黒ディアブロス 「ドスガレオス、ヴォルガノスの様子はどうですか?」
ドスガレオス 「まだ、目がさめるまでもう少しかかりますね。つか、頚椎やっぱ外れてます。戻していいスか?」
黒ディアブロス 「ん? 少し待ちなさ……」
ドスガレオス 「ふんっ!(ゴキッ)」
ヴォルガノス 「ビャッ!(ビクンッビクンッ)」
ドスガレオス 「あれ……間違ったかな?」
黒ディアブロス 「……どきなさい。はぁ、お前は、その先に出ようとする気概は評価しますが(ゴキッ)」
ヴォルガノス 「ギャビャッ!(ビクンビクン)」
黒ディアブロス 「そんなことでは、次期執事(バトラー)の候補として前に出せぬ(ボキッ)」
ヴォルガノス 「(ビクンビクン)」

823: 2009/05/30(土) 21:53:50.51 ID:eXwwbYc0
ヴォルガノス 「……………………」
黒ディアブロス 「これでいいだろう」
ドスガレオス 「いや、どうでしょう……氏んだんじゃないですかこれ?」
黒ディアブロス 「無駄口を叩く暇があったら手伝え」
ドスガレオス 「はいはい。あと俺、別に執事になるつもりはないんで」
黒ディアブロス 「誰に対して口をきいていると思っている……そもそも、お前をドス家から引き抜くように進言したのは……」
ドスガレオス 「いやぁ、俺男ですよ。執事って、黒ディアさんみたいに、女が男の格好してやんなきゃなんないんでしょ?」
黒ディアブロス 「どこからその知識を得たのだ……これはただ単に某の趣味だ」
ドスガレオス 「なおさら嫌ですよ。俺もあべこべに女の格好しなきゃいけんような羽目は」

824: 2009/05/30(土) 21:55:01.76 ID:eXwwbYc0
黒ディアブロス 「…………ちょっとそこに座れ。いいから座れ」
ドスガレオス 「ちょっ、やめてくださいよ。それより、その人間の子供、ちゃんと見てなきゃ駄目なんじゃないです?」
黒ディアブロス 「(ふん)一応、薄めた滋養水を一定時間ごとに塗りつけ、飲ませたことで火傷は治まった。しかしまだ熱がある」
ドスガレオス 「どうするんです?」
黒ディアブロス 「どんな後遺症が出ているとも限らない。ここの空気を吸っているだけで毒のようなものだ。出るのが吉だろう」
ドスガレオス 「ヴォル兄弟子はどうします?」
黒ディアブロス 「そのへんに転がしておけば、じきに蘇生する。とにかく、某はこの娘を持つ。お前は少し殻に滋養水を汲んでこい」
ドスガレオス 「ラジャーっス」

825: 2009/05/30(土) 21:55:55.85 ID:eXwwbYc0
黒ディアブロス 「(……少し長く、納骨堂の空気を吸わせすぎたか……)」
黒ディアブロス 「(顔色がかなり青ざめている……しかし熱はある……)」
黒ディアブロス 「(ここから出して、滋養水に火傷の箇所を浸さねばならんが……)」
黒ディアブロス 「(人間というものが、予想を遥かに超えて脆い……これは、確実にどこかに障害が出ている……)」
ドスガレオス 「バトラー、汲みましたよ」
黒ディアブロス 「それでは、某はこの子をくわえるので(はぐ)……行くぞ」
ドスガレオス 「………………!」
黒ディアブロス 「どうした?」
ドスガレオス 「いや、この上を、老師と……モノ兄弟子の足音が、出口に向かってくのが聞こえまして。俺、耳はいいんです」
黒ディアブロス 「何と……」

826: 2009/05/30(土) 21:58:05.63 ID:eXwwbYc0
ドスガレオス 「バトラー?」
黒ディアブロス 「(我が主のお手伝いに行かねば……)」
黒ディアブロス 「(しかし、主は某に、人間の子供の介護を仰せつけた……)」
黒ディアブロス 「(……くっ……今、某がここを離れるわけにはいかん……)」
黒ディアブロス 「(それに、主が直々に外に出ねばならぬほどの相手……)」
黒ディアブロス 「(…………)」
ドスガレオス 「どうしましょう。俺も行っていいスか?」
黒ディアブロス 「ならぬ。お前は某の補佐と言っておろう。二度同じことを言わすな、阿呆」
ドスガレオス 「……はーい」

827: 2009/05/30(土) 21:59:37.88 ID:eXwwbYc0
女児 「う……うぅ……」
ドスガレオス 「! バトラー、人間が目を醒ましましたよ」
黒ディアブロス 「(ドス、ドス)話は納骨堂を出てからだ」
女児 「痛い……腕が痛い……!」
女児 「痛いよぉ……」
黒ディアブロス 「我慢しろ。今、ゆっくり治療できる場所にお前を連れて行く」
女児 「(ひっく……うっく……)」
ドスガレオス 「あ~……泣いちまった。何だ、心配するほどでもないっスね」
女児 「痛い……おじさん……おじさん、痛いよ……」

828: 2009/05/30(土) 22:00:10.91 ID:eXwwbYc0
女児 「だれか……」
黒ディアブロス 「(熱でうかされているのか……? もがいて助けを求めている)」
黒ディアブロス 「(どこにも障害は出なかったということか?)」
黒ディアブロス 「(強い滋養水の霧を吸わせる必要があった……)」
黒ディアブロス 「(悪影響が及んでいないならば……)」
女児 「くらい…………くらいよぉぉ……」
黒ディアブロス 「……!」
女児 「まっくらだよぉ……だれか……だれか…………痛い……! うう…………」

829: 2009/05/30(土) 22:00:30.18 ID:eXwwbYc0
ドスガレオス 「真っ暗? ここは、壁のマカライト鉱石でまぶしいくらいなのに」
女児 「痛い……ううう…………だれか、いるの? だれ……くらくて何も見えない…………」
ドスガレオス 「誰って……あんたがその目で見てるだろ。目の前にいるし」
女児 「……ううぅ…………うう…………」
黒ディアブロス 「…………」
女児 「こわいよ…………おじさん…………」
黒ディアブロス 「構うな。急ぐぞ(ドスドスドス)」
ドスガレオス 「え? は、はい(ドスドスドス)」

830: 2009/05/30(土) 22:00:51.70 ID:eXwwbYc0
―秘境、入り口―

ラージャン 「…………」
ガレオス達 「(ドサッ)……………………」
ラージャン 「随分と手間取らせてくれた……」
ラージャン 「ここが、夢幻砂漠流の隠れ家に通ずる、入り口か……」
ラージャン 「…………」
ラージャン 「(砂でまぎれているが、これはナナ先生のにおい……)」
ラージャン 「(とっさに身を隠してしまった)」
ラージャン 「(あの時に、応援に来た者と共に、抵抗力だけでも奪っておけば……)」

831: 2009/05/30(土) 22:01:10.87 ID:eXwwbYc0
ラージャン 「(ズキッ)ぐっ……!!」
ラージャン 「(ギリギリ)…………ッ……ッ……」
ラージャン 「頭が……頭が…………(ドスッ)」
ラージャン 「っ……はぁ……はぁ……」
ラージャン 「(薬は……薬はどこだ……)」
ラージャン 「(ごそごそ)……ぐっ……(ポ口リ)」
ラージャン 「(しまった……砂の中に……)」
ラージャン 「…………ッ……」

832: 2009/05/30(土) 22:01:32.90 ID:eXwwbYc0
ラージャン 「駄目だ……先生は殺さない……先生はやらない……」
ラージャン 「(ズキッ)がっ……嫌だ……先生はやらぬ!!」
ラージャン 「くそっ…………(ギリギリ)」
ラージャン 「(ビクッ)」
ラージャン 「(ブワッ)」

833: 2009/05/30(土) 22:01:52.63 ID:eXwwbYc0
ラージャン 「………………」
ラージャン 「キキ……」
ラージャン 「……………………クッ……ケケ…………」
ラージャン 「先生……先生がいんのかァ」
ラージャン 「カカッ……役得ゥ……」
ラージャン 「(きょろきょろ)」

834: 2009/05/30(土) 22:02:17.22 ID:eXwwbYc0
ラージャン 「他にも何やらごちゃごちゃいるなァ」
ラージャン 「構うことはねェ。やっちまうか……」
ラージャン 「カカカッ、あれァ俺の女だァ」
ラージャン 「腐れライオンにゃ……勿体ねぇ」
ラージャン 「そう思わないか? 兄弟ィ」

835: 2009/05/30(土) 22:03:07.42 ID:eXwwbYc0
ラージャン 「(ズキッ)ぐっ…………ケケ……カカカッ! 痛ェ痛ェ」
ラージャン 「そうだもっと泣け……もっと喚け……」
ラージャン 「胸がよ……スゥーッ、とするんだよ」
ラージャン 「お前のその泣き声聞いてるとな、胸がスゥ~~~ッとするんだァ」
ラージャン 「な、あんたもそう思わない?」
ガレオスA 「………………」
ラージャン 「もしもーし! 人の話は(ドガッ)礼儀正しく!(ドガッ)」
ガレオスB 「………………」
ラージャン 「聞いてくれないかなぁぁぁ!?(ドゴッ)」
ガレオスC 「………………」

836: 2009/05/30(土) 22:05:24.19 ID:eXwwbYc0
ラージャン 「お兄さんそう言うの嫌いなんだよね!」
ガレオス達 「………………」
ラージャン 「そうそう。そうやって、人の話を聞くときは、目ン玉と瞳孔おっぴろげて、ちゃんと相手の顔を見る」
ガレオス達 「………………」
ラージャン 「ふぅ~~。さて(ふらふら)」
ラージャン 「(ズキッ)カカッ……」
ラージャン 「先生……先生、先生…………(ドス、ドス)」

837: 2009/05/30(土) 22:05:54.89 ID:eXwwbYc0
ラージャン 「!(サッ)」
××××××× 「ギャォォォォッ(ゴウッ)」
×××××××× 「シャァァァ(ゴウッ)」
ラージャン 「…………(バシッ、バシッ)」
ラージャン 「…………?」
ラージャン 「何だァ?」
××××××× 「ズゥゥゥン」
×××××××× 「ズゥゥン」

838: 2009/05/30(土) 22:07:06.88 ID:eXwwbYc0
ラージャン 「あ、見たことあるなあんた達」
ラージャン 「久しぶり? 久しぶりかい? 久しぶりなんだろうなァ、多分」
ラージャン 「違った? あぁー…………」
ラージャン 「え~~と…………あー…………誰だっけ?」
クシャルダオラ 「(ズン、ズン)」
錆クシャルダオラ 「(ズン、ズン)」

839: 2009/05/30(土) 22:09:42.03 ID:eXwwbYc0
錆クシャルダオラ 「ねねさま、気をつけて。何があったのか分からないれど、もう金色になってる」
クシャルダオラ 「……あの状態でも電気を飛ばしてくるわ。お前こそ気をつけて」
錆クシャルダオラ 「言われなくても」
クシャルダオラ 「ここにナナ・テスカトリ様がおいでになっただろう! 正直に見聞きしたことを吐け!」
ラージャン 「…………?」
クシャルダオラ 「五秒待つ! 隠すとためにならんぞ!」
錆クシャルダオラ 「(じり……じり……)」

841: 2009/05/30(土) 22:10:32.43 ID:eXwwbYc0
ラージャン 「…………あ! あぁぁ~」
錆クシャルダオラ 「!」
クシャルダオラ 「…………」
ラージャン 「何だっけ? あぁ、でてこねェ……(ズキッ)何だっけ、ほら……」
クシャルダオラ 「……?」
ラージャン 「あぁぁぁあ! そう。そうそう、お前」
錆クシャルダオラ 「ねねさま、こいつ、様子がおかしいわ……」
クシャルダオラ 「…………」
ラージャン 「一昨日だっけかァ? お前、あれだろ? ティガレックスのアレ」

842: 2009/05/30(土) 22:11:00.21 ID:eXwwbYc0
クシャルダオラ 「何を言っている……?」
ラージャン 「好きなんだっけ~~? レックスのこと」
クシャルダオラ 「!!」
錆クシャルダオラ 「!!」
ラージャン 「嫌いじゃないよ、分かる。大好きな人に言い寄る女達。分かるよ。俺も、とても身に染みてわかる」
クシャルダオラ 「こいつ……記憶が、昔と混濁しているのか……?」
錆クシャルダオラ 「ラージャンは気狂いよ、相手にすることはないわ!」
ラージャン 「でもさ、悲しいことに、男は女の好みにはうるさいと思うからさぁ~」
錆クシャルダオラ 「…………」
ラージャン 「ティガに教えてやったんだ。あいつら、いろんな女を影で痛めつけてて……ゲハッ……」

843: 2009/05/30(土) 22:11:23.46 ID:eXwwbYc0
ラージャン 「おにいちゃぁぁ~ん、こっち向いて~ってか。いいねぇ~若い子ッてのは純粋で」
錆クシャルダオラ 「……ギリ……」
ラージャン 「何? 怒った? カカカッ、あぁぁ怖い怖い(ズキッ!)ぐっ……ッ!!」
クシャルダオラ 「猿が…………」
ラージャン 「……………………」
錆クシャルダオラ 「(ヒュゥゥゥゥ)」
クシャルダオラ 「(ヒュゥゥゥゥ)」

844: 2009/05/30(土) 22:11:44.25 ID:eXwwbYc0
錆クシャルダオラ 「(この下衆のせいで、ねねさまは……!)」
錆クシャルダオラ 「(こいつがばらさなければ、ねねさまは、大兄様と…………)」
錆クシャルダオラ 「(下衆な猿が…………!!)」
クシャルダオラ 「(何だ……? 固まっている……)」
ラージャン 「………………」
クシャルダオラ 「! 錆、お待ち!」
錆クシャルダオラ 「(ゴウッ!!)」

845: 2009/05/30(土) 22:12:09.50 ID:eXwwbYc0
ラージャン 「(ドゴォォォォォッ!!)」
クシャルダオラ 「砂煙が……!(火弾が直撃した!?)」
錆クシャルダオラ 「ねねさまを愚弄した……私を愚弄した……許さない!(ヒュゥゥゥゥ)」
ラージャン 「………………」
クシャルダオラ 「!(砂煙の中から、奴が……)」
クシャルダオラ 「ま……まずい……! 放電している……!!」
ラージャン 「(バチ……バチ……)」
錆クシャルダオラ 「(ゴウッ!)」

846: 2009/05/30(土) 22:12:29.44 ID:eXwwbYc0
ラージャン 「(スッ)…………(ブゥゥンッ!!)」
ラージャン 「(ゴッッ!!)」
クシャルダオラ 「何!?(火弾を、跳ね返しただと!?)」
錆クシャルダオラ 「(ドォォンッ!)きゃあぁあ!」
クシャルダオラ 「錆!」
ラージャン 「………………(くるっ)」
クシャルダオラ 「な……」
クシャルダオラ 「(何だあの顔は……)」
クシャルダオラ 「(瞳孔が、開いている……)」

847: 2009/05/30(土) 22:12:50.12 ID:eXwwbYc0
ラージャン 「(シュッ)」
クシャルダオラ 「!! 消えた!?」
ラージャン 「(グググッ)」
錆クシャルダオラ 「ねねさま! 後ろです!」
クシャルダオラ 「何ィ!?」
ラージャン 「(ブゥンッ)」

848: 2009/05/30(土) 22:13:21.43 ID:eXwwbYc0
ラージャン 「! (ガキィィン)」
ラージャン 「(バッ)」
錆クシャルダオラ 「(攻撃が、弾かれた……)」
錆クシャルダオラ 「(何かが、砂漠の奥から風のような速さで……)」
錆クシャルダオラ 「(あれは……)」
ディアブロス 「………………(ズズズッ)」
ラージャン 「………………(ザザッ)」

次回へ続きます

866: 2009/06/05(金) 21:08:52.92 ID:g/uLxe20
ラージャン 「(バチ……バチ……)」
ディアブロス 「………………」
クシャルダオラ 「老師! 」
ディアブロス 「(やはりラージャン……しかし……)」
ラージャン 「…………」
ディアブロス 「(何だ、あの異様な力は……? わしの初撃を、いとも簡単に弾き返した……)」

867: 2009/06/05(金) 21:09:19.79 ID:g/uLxe20
モノブロス 「(ズザッ)野郎……」
ガレオス達 「…………」
モノブロス 「老師、俺にやらせてください!(ザッ)」
ディアブロス 「…………」
クシャルダオラ 「邪魔だよ、下がってな!」

868: 2009/06/05(金) 21:09:42.56 ID:g/uLxe20
モノブロス 「そういう訳にもいかんね、姉さん方。ウチの弟弟子達が世話になってるみたいで」
錆クシャルダオラ 「……」
モノブロス 「それに俺ァ、そいつはちぃぃっと気に食わないんで」

869: 2009/06/05(金) 21:10:08.84 ID:g/uLxe20
ラージャン 「……」
モノブロス 「久しぶりだなぁゲス猿。俺のこと覚えてるか? 憶えてないだろうな」
ラージャン 「……(ふらふら)」
モノブロス 「こっち見ろォ言ってンだッァこらァ!」
ラージャン 「…………(ピタッ)」
モノブロス 「……」

870: 2009/06/05(金) 21:10:42.30 ID:g/uLxe20
ラージャン 「(バチ……バチ……)」
モノブロス 「(何だ? 視線が定まってねぇ。まるで生き物じゃないような……)」
ラージャン 「…………」
モノブロス 「(相変わらず気味が悪ィ野郎だ)」

871: 2009/06/05(金) 21:11:11.64 ID:g/uLxe20
モノブロス 「(それに何だ……? あの、周りの雷みたいなもん……)」
ラージャン 「(ズッ)」
モノブロス 「(動いた……! とにかく、あれにゃぁ、障らぬ神はなんとやらだ)」
ラージャン 「……(ザッ)」
モノブロス 「……? 速……(もう後ろに……)」

872: 2009/06/05(金) 21:11:36.85 ID:g/uLxe20
ラージャン 「(ブオォンッ!)」
モノブロス 「(ドガァッ)グッ……(ズズズッ)」
ラージャン 「……」
モノブロス 「何てェバカ力だ……! だが動きが止まったなッ!」
ラージャン 「(ガッ!)……!!」
錆クシャルダオラ 「頭に、モロに入ったわ!」

873: 2009/06/05(金) 21:12:00.64 ID:g/uLxe20
モノブロス 「まだまだぁあ!」
ラージャン 「(ドゴァッ! ドゴァ!)ッ……ッ……!」
モノブロス 「ラストォォ!」
ラージャン 「(ガゴォッ!)…………(ズゥゥゥン!)」
モノブロス 「はぁ……はぁ……」
モノブロス 「(全弾入った……確かに手ごたえはあったけど……)」
モノブロス 「(何だ? やった気がしねぇ……)」

874: 2009/06/05(金) 21:12:38.23 ID:g/uLxe20
ラージャン 「…………(ムクリ)」
モノブロス 「(起き上がった……?)」
ラージャン 「……(バチ……バチ……)」
モノブロス 「……! 効いてねぇ! あの、電気みたいなのが、体を守ってンのか……!」
ラージャン 「(シュッ)」
モノブロス 「! (まずい、また後ろに……)」
ラージャン 「(ブゥゥンッ!)」
モノブロス 「(しまった、速い!)」

875: 2009/06/05(金) 21:14:26.05 ID:g/uLxe20
ディアブロス 「(ザザザッ)」
ラージャン 「(ゴッ)……!! (ズゥゥン)」
ディアブロス 「…………(ザザッ)」
モノブロス 「老師!」
ディアブロス 「モノよ、わしの後ろにつけ」
モノブロス 「了解でさァ!(ズザッ)」
ディアブロス 「…………」

876: 2009/06/05(金) 21:15:07.83 ID:g/uLxe20
モノブロス 「奴のあれ、何ですかィ。ただの電気にしちゃ、硬すぎる」
ディアブロス 「わしらの空気投げと似たようなものだ……」
モノブロス 「そんじゃ……」
ディアブロス 「左様。気を高め、目に見える程度まで圧縮していると見るべきよな」

877: 2009/06/05(金) 21:15:34.47 ID:g/uLxe20
ディアブロス 「……最も、あんな高密度の気は、いまだかつて目にしたことはないが……」
ラージャン 「(バチ……バチ……)」
ディアブロス 「気が高まりすぎて爆ぜている。あそこまで強力なオーラをまとわれては、通常の打撃は通らぬ」
モノブロス 「じゃあ、どうすりゃいいんでさ……てゆうか、あれじゃ、もう完全に化けモンじゃねぇか!」

878: 2009/06/05(金) 21:15:59.40 ID:g/uLxe20
モノブロス 「(目の瞳孔がおもっくそ開いてやがる……)」
モノブロス 「(気を高めすぎて、理性が吹っ飛んでるんだ……)」
錆クシャルダオラ 「老師、加勢します。あいつの強さは異常です(ザッ)」
クシャルダオラ 「錆! 私たちだけで……」
ディアブロス 「勝手にせい……ゆくぞ、モノ」
モノブロス 「合点!(ドドドドッ)」
ディアブロス 「(ズッ……ドドドドドッ)」
ラージャン 「…………」

879: 2009/06/05(金) 21:16:31.33 ID:g/uLxe20
ラージャン 「(スッ)……」
モノブロス 「……!」
モノブロス 「(両手を上げた……)」
モノブロス 「(……! 何だありゃ!)」
モノブロス 「(電気? 違う、帯電してる……気の塊が出てきた……!)」
モノブロス 「でけぇ……! くそっ!」
錆クシャルダオラ 「モノ君気をつけて! それを喰らうと、内臓が焼けるわ!」
モノブロス 「……ちぃぃ!(ザザッ)」

880: 2009/06/05(金) 21:16:59.70 ID:g/uLxe20
ラージャン 「(ゴゥッ!)」
モノブロス 「(投げた……!)」
ディアブロス 「止まるな、走れモノよ」
モノブロス 「! ……了解!」
ディアブロス 「ふんッ! かぁッ!(パァァンッ!)」
クシャルダオラ 「嘘! 咆哮でかき消した!?」

881: 2009/06/05(金) 21:17:26.67 ID:g/uLxe20
ラージャン 「……(ブゥン)」
モノブロス 「(なっ……二発目!?)」
クシャル姉妹 「ヒュゥゥゥゥゥ!(ゴウッ)」
ラージャン 「(ドゴッ!)……!」
モノブロス 「ッおらァッ!」
ラージャン 「ッ!? (ズッ……ドォォン)」

882: 2009/06/05(金) 21:17:58.31 ID:g/uLxe20
モノブロス 「はぁ……はぁ……やったか……くそ、土煙が……」
ディアブロス 「モノよ、油断をするな!」
モノブロス 「! 何だ、地面が揺れて……」
ラージャン 「(ドパァッ!!)」
モノブロス 「(じ……地面の中から……)……マジか……効いてねぇ!?」

883: 2009/06/05(金) 21:18:21.21 ID:g/uLxe20
ラージャン 「(ブゥゥゥン!)」
モノブロス 「(バチバチバチ!!)ガァァァ! …………(ズゥゥゥン)」
錆クシャルダオラ 「そ……そんな! モノ君!」
ディアブロス 「待て娘ども! 動くな!」
錆クシャルダオラ 「この……下衆猿……! 猿のくせに!!(ドドドドッ)」
クシャルダオラ 「ナメるなァァ!(ドドドドドッ)」

884: 2009/06/05(金) 21:18:46.13 ID:g/uLxe20
ラージャン 「…………(ググッ……ゴッ!)」
ディアブロス 「(気を、放射状に周りに……)」
クシャルダオラ 「きゃあああ!(バチバチバチ) …………ッ……(ズゥゥン)」
錆クシャルダオラ 「きゃ……ああッ!!(バチバチバチ)…………(ズゥゥン)」
ラージャン 「…………」

885: 2009/06/05(金) 21:19:26.32 ID:g/uLxe20
ディアブロス 「…………ちっ…………」
ディアブロス 「(これ程とは思わんかったが……)」
ディアブロス 「(ドドめ……切り札として、これを隠しておったのか……)」
ディアブロス 「(異常な力よ……忌み子としての責は全うしているというわけか……)」
ディアブロス 「(多少、知能は足りないようだが……)」
ラージャン 「(ゆらり)…………」

886: 2009/06/05(金) 21:19:56.11 ID:g/uLxe20
ディアブロス 「(目が霞む……)」
ディアブロス 「(わしでも、あの密度の気に触れればまずい……)」
ディアブロス 「(さて……どうするか……)」

887: 2009/06/05(金) 21:20:12.61 ID:g/uLxe20
ラージャン 「!!」
ディアブロス 「……! 何かが飛んでくる……!」
ラージャン 「(バッ……!)」
×××× 「(ズッドォォォンッ!)」
×××× 「(ズッドォォォンッ!)」

888: 2009/06/05(金) 21:20:56.21 ID:g/uLxe20
ティガ兄 「着地オーライィィィ!」
ティガ弟 「クソ野郎発見!」
ラージャン 「!!」
ティガ兄 「っおらぁぁぁ!(ガチガチガチ!)」
ティガ弟 「くたばれあァァ!!(ブンブンブンブン)」
ラージャン 「!! ……ッ!! ……ッガ…………!」

889: 2009/06/05(金) 21:21:30.82 ID:g/uLxe20
ディアブロス 「(……速い!)」
ディアブロス 「(ティガレックスか……! 奴らの奇襲速度に、ラージャンの、気の防御が間に合っていないのだ)」
ラージャン 「(ドゴァッ!)……ッぐぁ! (ズゥゥゥンッ)」
ティガ弟 「トドメやァァッ!!」

890: 2009/06/05(金) 21:21:55.60 ID:g/uLxe20
ラージャン 「! (ブゥン)」
ティガ兄 「避けろ、弟者!」
ティガ弟 「! ラージャン玉か! こなくそォォォ!」
ラージャン 「(ゴウッ!)」
ティガ弟 「っらぁああ!(グルン)」

891: 2009/06/05(金) 21:22:20.55 ID:g/uLxe20
ティガ兄 「イエス! 何百回と練習した、空中方向転換が決まったぜ! 華麗に避けて、トドメだァ!」
ティガ弟 「氏ねぇっぇえ!」
ラージャン 「ぐ……(ブゥン)」
ティガ弟 「え……? (もう一発……)」

892: 2009/06/05(金) 21:22:44.27 ID:g/uLxe20
ラージャン 「(ゴウッ)」
ティガ弟 「(バチバチバチバチ)ぎゃああああ!!」
ティガ兄 「弟者ァァァ!!!」

893: 2009/06/05(金) 21:23:05.95 ID:g/uLxe20
ティガ弟 「ま……まさか……連発できたとは……(ズゥゥン)」
ラージャン 「はぁ……はぁ…………」
ティガ兄 「弟者! しっかりしやがれ!」
ティガ弟 「兄者……後ろ……」

894: 2009/06/05(金) 21:23:30.82 ID:g/uLxe20
ティガ兄 「! はぁぁ!?」
ラージャン 「(ゴゴゴゴゴゴッ)」
ティガ兄 「いやいやいやいやデカ過ぎだろそのラージャン玉! ラオシャンロンの頭くらいあるぞ!」
ティガ弟 「ジーザス……!!」
ラージャン 「(ゴウッ!!)」

895: 2009/06/05(金) 21:24:15.77 ID:g/uLxe20
クシャルダオラ 「…………!(バッ)」
ティガ兄 「! クシャル!」
クシャルダオラ 「…………(ダッ)」
ティガ兄 「(ドガッ)うおっ! 何すんだクシャル! クシャル!!」

896: 2009/06/05(金) 21:24:35.48 ID:g/uLxe20
クシャルダオラ 「(ドォォンッ……!!)きゃぁ……ぁぁ……!!」
クシャルダオラ 「(バチバチバチバチ)…………く……」
クシャルダオラ 「…………ッ!(ゴウッッ)」
ラージャン 「(ドゴォッ!)グッ……!!(ズゥゥゥン)」
クシャルダオラ 「…………(ズゥゥン)」

897: 2009/06/05(金) 21:25:05.63 ID:g/uLxe20
ティガ兄 「クシャル!」
クシャルダオラ 「…………」
クシャルダオラ 「(あの女の……匂いがする……)」
クシャルダオラ 「(やっぱりお兄ちゃんが来てるんだ……)」
クシャルダオラ 「(モロに、あれ二発も……もらったから……意識が……)」
クシャルダオラ 「…………」

898: 2009/06/05(金) 21:25:27.01 ID:g/uLxe20
ティガ兄 「……畜生ガァァ!」
ラージャン 「ぐっ……が……(ふらふら)」
ラージャン 「(ズキィッ)ぐあああ!」
ラージャン 「頭……(ズキッ!)があああ!」

899: 2009/06/05(金) 21:26:38.42 ID:g/uLxe20
ディアブロス 「(ズザァァァッ)…………ッ!!」
ラージャン 「(ゴウッ)!? うわぁああ!」
ティガ兄 「何だ!? クソ猿が……すげぇ空の上に吹っ飛んだぞ!!」
ラージャン 「……ッ! ……!!(ズゥゥゥゥゥゥン)」
ラージャン 「…………ガッ……ッ……ツ…………(ガクガク)」

900: 2009/06/05(金) 21:27:02.04 ID:g/uLxe20
ディアブロス 「…………!!」
ディアブロス 「(まだ意識があるか……)」
ディアブロス 「(モノや娘どもの攻撃は確かに入っているはず……)」
ディアブロス 「(どうなっている……?)」

901: 2009/06/05(金) 21:27:30.59 ID:g/uLxe20
ラージャン 「…………うああぁぁ……頭……(ズキィッ!) あああ!」
ラージャン 「薬……薬ィィ!!(ズキィッ!!!)」
ディアブロス 「…………」
ティガ兄 「何だ……? あいつ一人で、何騒いで……」

902: 2009/06/05(金) 21:27:45.56 ID:g/uLxe20
ティガ兄 「……! 何か、砂の中から……」
××××× 「(ドバッ!!)」
ラージャン 「うぅぅぅ! うううう!!」
ディアブロス 「…………」

903: 2009/06/05(金) 21:28:09.09 ID:g/uLxe20
ババコンガ 「……間に合ったか。ラー、薬だ(ぐい)」
ラージャン 「(バッッ……ゴクリ)」
ラージャン 「はぁ…………はぁ……(ふらふら)」
ババコンガ 「…………」

904: 2009/06/05(金) 21:28:34.79 ID:g/uLxe20
ババコンガ 「砂漠流の師範に、蟲竜の兄か……」
ババコンガ 「少々部が悪い。ここは退散させてもらう(ぐい)」
ラージャン 「…………」
ババコンガ 「さらば!(ドパァッ!)」
ティガ兄 「あ! 待てクラァ! 潜って逃げるなんて卑怯だぞコルァ!!」

905: 2009/06/05(金) 21:29:07.77 ID:g/uLxe20
ディアブロス 「……ティガレックス兄だな。後は追わんで良い」
ティガ兄 「あァァん!? 誰だてめェ!!」
ディアブロス 「…………最後にお前達を見たのは、卵から生まれたばかりの時のことだ……知らずとも無理はない(ドスドス)」
ティガ兄 「とにかく! 奴が悪いんだな!? じゃあ追いかけてブチ頃すぞ!」

906: 2009/06/05(金) 21:29:29.32 ID:g/uLxe20
ディアブロス 「猿族の地中を進む速度には適うまい。それに、手負いの手当てもせねばならぬ」
ティガ弟 「…………」
クシャルダオラ 「…………」
錆クシャルダオラ 「…………」
モノブロス 「…………」
ティガ兄 「……ちぃぃ!」

907: 2009/06/05(金) 21:30:24.59 ID:g/uLxe20
―数時間後、秘境奥間―

ディアブロス 「……そのような次第だ。撤退をさせることにはさせたが、こちらの被害は予想以上に甚大だ」
ナナ・テスカトリ 「ああ……! ラージャン君……どうして……」
ディアブロス亜種 「手傷を負った者は、ドスガレオスに洞窟の別室で世話をさせている。滋養水を飲ませてきたが、あれは、雷の気功を受けた痕なのですか……」
ディアブロス 「左様。いくら鱗が硬かろうと、体の内部に力を流し込まれてはひとたまりもない。特にわしらのような、竜はな」

908: 2009/06/05(金) 21:30:57.69 ID:g/uLxe20
ティガ兄 「…………(ギリ)許せねェ……やっぱ、あの時に頃しておくべきだったんだ!」
ナナ・テスカトリ 「ティガ兄君、そんなことは言うものじゃありません。同じ、仲間じゃありませんか」
ティガ兄 「仲間ァ!? 先生、あの下衆野郎は、よりにもよって先生をストーキングして、そんで襲ってきたんですぜ!」
ナナ・テスカトリ 「ですが……」
ティガ兄 「久しぶりに会っていきなりこんなこと言うのもなんだけどさ! もういい加減分かったでしょ? あいつ頭おかしいんだってよ!」

909: 2009/06/05(金) 21:31:23.28 ID:g/uLxe20
ナナ・テスカトリ 「…………」
ディアブロス亜種 「して、主殿。この品のない小僧は一体誰で?」
ティガ兄 「あンだこらァやんのか!?」
ディアブロス 「やかましい(ぐい)」
ティガ兄 「(ぐるん)うおっ!(ズゥゥン)」
ディアブロス 「主殿の御前だぞ。少しは敬意を払ったらどうだ?」
ティガ兄 「……な……何だァ? 転ばされたのか、オレ……触られてねぇのに……」

910: 2009/06/05(金) 21:32:00.80 ID:g/uLxe20
ディアブロス 「ティガの息子だ……捨て置け。コンガの男が、ラーを回収していった。姿を見せたということは、じきに正式な勧告があろう」
ディアブロス亜種 「…………」
ディアブロス 「今、ラオシャンロンには、戦争派を押し留める力はない。おそらくは、わしらの力を狙っていると考えられる」
ナナ・テスカトリ 「そんな……話し合いを、まず……」
ディアブロス 「話し合いならば、幾度となく過去に行ってきたではないか」
ナナ・テスカトリ 「…………」
ディアブロス 「その結果、お前達は人間の街に手を出し、取り返しのつかない傷を仲間に与えた。それは事実である」

911: 2009/06/05(金) 21:32:38.74 ID:g/uLxe20
ティガ兄 「あァ? おぅぉぅじいさん。先生の悪口は許さねェぞ」
ディアブロス 「やかましい(ぐい)」
ティガ兄 「(ぐるん)ぎゃあ!(ビダンッ)」
ディアブロス 「無論わしらは、三年前と同様に、無益な戦いに貸す手は持たぬ。それは、今回とて同じこと」
ティガ兄 「(びくんっ、びくんっ)」

912: 2009/06/05(金) 21:32:58.01 ID:g/uLxe20
ナナ・テスカトリ 「しかし、あなた方は、ラオシャンロン様を守ってくださっているのでは……」
ディアブロス 「奴に頭を下げられたゆえのこと。それ以上は念頭に置いてはいない」
ディアブロス亜種 「ともすれば……ここに、この娘子がいるのは、我らにとって良いことではないな……」
女児 「すぅー……すぅー……」

913: 2009/06/05(金) 21:33:37.37 ID:g/uLxe20
ディアブロス亜種 「今は寝ているが……」
ディアブロス亜種 「人間を保護している、と触れ回られてしまっては、戦争反対派ととられてしまう」
ティガ兄 「(パチッ)……? 俺は何を……ん? あれェ!? おっさんが連れてたガキじゃねーか!」
ナナ・テスカトリ 「ティガ兄君、この子を知っているのですか?」
ティガ兄 「ああ。フルフルのババァのところで会ったんだ。え? 何これ? もしかして氏にかけ?(きょろきょろ)」

914: 2009/06/05(金) 21:34:39.76 ID:g/uLxe20
ティガ兄 「クックのおっさんはいねェのか?」
ナナ・テスカトリ 「いえ……火山の崩落に巻き込まれてしまったらしく、ヴォルガノス君が、この子だけは助けたのですが……」
ティガ兄 「えぇぇ? そういや、すっげぇ地震があったけど……火山崩れたの!?」
女児 「うぅ……う……」
ナナ・テスカトリ 「あ、目を醒ました! 良かった……!!」
ディアブロス亜種 「…………」

915: 2009/06/05(金) 21:35:02.68 ID:g/uLxe20
女児 「ぅ……(むくり……)」
女児 「(ふらふら)」
女児 「頭が……いたい……」
ディアブロス亜種 「火傷は塞がった。しかし……」
女児 「あれ……まだ暗い……」
ナナ・テスカトリ 「……?」

916: 2009/06/05(金) 21:35:24.66 ID:g/uLxe20
女児 「暗い……暗いよ。ここどこ……?」
ティガ兄 「暗いィ? まぶしいぐらいだろ! しっかりしろや」
女児 「ひっ……その声、こわい顔の竜さん……どこ? 何も、何も見えない……」
女児 「だれかいるの? おじさん? おじさん、いるの?」

917: 2009/06/05(金) 21:35:46.46 ID:g/uLxe20
ティガ兄 「おちょくってンのか?」
ナナ・テスカトリ 「まさか……」
ディアブロス亜種 「もしやとは思ったが、やはり人間には強すぎた薬だったようだ。どうやら、視力がなくなってしまっているらしい」
ナナ・テスカトリ 「!!」
女児 「暗いよ……ここどこ!? だれか!!」
ディアブロス 「……落ち着け、人間の娘」
女児 「(びくっ)」

918: 2009/06/05(金) 21:37:04.49 ID:g/uLxe20
ディアブロス 「わしはまどろっこしいことは好かぬ。簡潔に言おう」
ディアブロス 「お主は、火山の崩落に巻き込まれ、ここにいる、ナナ・テスカトリに、この秘境に運び込まれた」
女児 「火山……わたし、そう! 熱いのに落ちて……」
ディアブロス 「その際、重度の火傷を負ったが、わしら砂漠の民がそれを治療した。火傷による命の危険は、もはやない」

919: 2009/06/05(金) 21:37:46.48 ID:g/uLxe20
女児 「あ……あなたは?」
ディアブロス 「砂漠が竜族の長、ディアブロスである。して、娘よ。お前はこれより、受け入れねばならぬことがある」
女児 「受け入れ……」
ディアブロス 「今のお前は、どうやら光を見ること適わぬ様子。薬の副作用だ。それがいつまでか、はたまた一生のことかは分からぬ」
女児 「光……え……? え……!?」
ディアブロス 「この部屋は砂漠の地下だが、発光するマカライト鉱石により、昼間のように明るい。その意味が、分かるな」

920: 2009/06/05(金) 21:38:21.62 ID:g/uLxe20
女児 「……………………」
ディアブロス 「他にも何らかの障害が現れるかも知れぬ。しかし……」
ディアブロス 「本来お前は、数時間前に氏んでいてもおかしくはない命であった」
ディアブロス 「それをたっての願いで救ったのは、ナナ・テスカトリの恩情である」
ディアブロス 「すぐに理解をすることはできぬと思うが、お前は感謝をせねばならぬ」
ディアブロス 「本来の、氏に向かう輪を逃れ、生き続けることができた事実への感謝をな……」
女児 「……………………」

921: 2009/06/05(金) 21:38:46.33 ID:g/uLxe20
女児 「光……? ぇ…………わ、わたし……」
ディアブロス 「…………」
女児 「何も、見えない……」
ナナ・テスカトリ 「…………」
女児 「目が見えない! わたしの目……目が、目が見えないよ! そ……そんな!!」

922: 2009/06/05(金) 21:39:05.77 ID:g/uLxe20
ディアブロス 「…………」
ディアブロス 「亜種よ、わしは少し休む」
ディアブロス亜種 「かしこまりました。して、この人間はいかがいたしましょう」
ディアブロス 「じき、ここに戦争推進派の何者かが押し寄せてくる。もはや隠すには手遅れよな」
ディアブロス亜種 「…………御意に」

923: 2009/06/05(金) 21:39:29.69 ID:g/uLxe20
女児 「おじさん……おじさん、いないの? (よろよろ)」
ティガ兄 「何してンだ!(ぐいっ)立ち上がンな。そっちは岩がある方だ」
女児 「(ひっく……)」
女児 「何も見えない……ティガさん、わたし、ティガさんの顔も見えない……」
ティガ兄 「…………」

924: 2009/06/05(金) 21:39:54.17 ID:g/uLxe20
女児 「こわいよ……暗い、暗いよ……」
ティガ兄 「ここにクックのオヤジはいねェ。運び込まれたのはてめぇだけらしい」
女児 「!!」
女児 「そんな!」
女児 「あの時……わたし、聞いたの!」
ティガ兄 「な……何だよ……?」

925: 2009/06/05(金) 21:40:15.99 ID:g/uLxe20
女児 「落ちるとき、おじさんの声……もしかしたら、巻き込まれて……」
女児 「ティガさん、おじさんを助けて!」
女児 「ひどいけがをしてるかもしれない、おねがい!」
女児 「おねがい!!」
ティガ兄 「ちょっ……鼻掴むな……そこは……鼻の……穴だ……」

926: 2009/06/05(金) 21:40:49.58 ID:g/uLxe20
ナナ・テスカトリ 「……人間の娘さん、よく聞いて。イャンクック様は」
ティガ兄 「おっさんは無事だ。今、別の用でちっと出てる」
女児 「ほ……ほんと?」
ナナ・テスカトリ 「…………」
ティガ兄 「あァ。心配すんなって……な、まぁ……そういうわけだ! グダグダ言うな!」

927: 2009/06/05(金) 21:41:44.76 ID:g/uLxe20
女児 「(ひく……)」
ティガ兄 「! 泣くなよ!? 絶対泣くなよ! 俺が泣かせたみてぇじゃねぇか!!」
女児 「おじさん……わたしのこと、捨てたんじゃ……なかったんだ……」
ティガ兄 「………………」
女児 「…………でも、わたし…………」
女児 「何も、見えない…………」
女児 「おじさんの顔も……もう」
女児 「見えない…………」
ティガ兄 「………………」

928: 2009/06/05(金) 21:44:08.95 ID:g/uLxe20
―火山、崩落した瓦礫の中―

ハンマー 「……ッ痛……(頭を打ったか……)」
ハンマー 「(俺は……無事なのか……?)」
ハンマー 「(シュボッ)……(火種があってよかった……)」

929: 2009/06/05(金) 21:46:38.93 ID:g/uLxe20
ハンマー 「(………頭上に……大きな岩盤が……途中でひっかかって止まったのか……)」
ハンマー 「(洞窟のようになっている……)」
ハンマー 「(周りを落石が封鎖している……出口を探さなければ……)」
ハンマー 「(巻き込まれた者はいないだろうか……)」

930: 2009/06/05(金) 21:46:59.42 ID:g/uLxe20
ハンマー 「……(何だ……右足が動かん……)」
ハンマー 「! (落石に挟まっているのか……)」
ハンマー 「(くそっ……足を抜かなければ……)」
ハンマー 「(それに、熱気が酷い……)」
ハンマー 「(どこからかマグマがあふれ出しているのか……?)」
ハンマー 「(このままでは煮えたぎってしまう……)」
ハンマー 「(くっ……動かん)」

931: 2009/06/05(金) 21:47:28.34 ID:g/uLxe20
ハンマー 「(俺の武器は……)」
ハンマー 「(…………崩落の時に、どこかに落ちてしまったのか……)」
ハンマー 「(何たる不覚……)」
ハンマー 「(あれがあれば、こんな岩……すぐに砕けるものを……)」

932: 2009/06/05(金) 21:47:44.83 ID:g/uLxe20
ハンマー 「!!」
ハンマー 「(何だ……?)」
ハンマー 「(これは……モンスター達のうなり声だ……!!)」
ハンマー 「(瓦礫の向こうから聞こえる!)」
ハンマー 「(まさか、俺の臭いを嗅ぎつけて……)」
ハンマー 「(離れなければ……!!)」

933: 2009/06/05(金) 21:48:06.37 ID:g/uLxe20
××× 「…………(ザッ)」
ハンマー 「!!!」
キリン 「…………」
ハンマー 「(あれは……キリン!? どうして、こんなところに……!!)」

934: 2009/06/05(金) 21:48:27.54 ID:g/uLxe20
キリン 「(ザッザッ)」
ハンマー 「(まずいぞ、こんな状態で幻獣など相手にできない!)」
ハンマー 「(殺されてしまう……!!)」
ハンマー 「(くそっ)……(バッ)」
キリン 「!」
ハンマー 「(今あるのは、この投げナイフだけか……)」
ハンマー 「(しかし、やるしか……)」

935: 2009/06/05(金) 21:49:37.00 ID:g/uLxe20
キリン 「ヒィィ!」
ハンマー 「(ピシャァァン)うわっ!」
ハンマー 「(ナ……ナイフだけを正確に……雷が……)」
キリン 「(ザッザッ)」
ハンマー 「(やられる……!!)」
キリン 「ヒヒィィィ!」

936: 2009/06/05(金) 21:49:56.54 ID:g/uLxe20
ハンマー 「(ピシャァァァン)………………?」
ハンマー 「(これは……)」
ハンマー 「(足を押さえていた岩が、砕けた……)」
ハンマー 「(まさかこの幻獣……)」
ハンマー 「(俺を、助けたのか……!?)」

937: 2009/06/05(金) 21:50:18.39 ID:g/uLxe20
キリン 「…………(くるっ)」
ハンマー 「…………」
キリン 「(ザッザッ)」
ハンマー 「(モンスターが、人間を助けるなんて……)」
ハンマー 「(そんなバカな……)」

938: 2009/06/05(金) 21:50:45.14 ID:g/uLxe20
ハンマー 「(このキリン、もしかして……)」
ハンマー 「(先日、村の道具屋に、薬を取りに来たキリンか……!)」
ハンマー 「(誰かの怪我を、治すために……?)」
ハンマー 「(まさか……)」
ハンマー 「(あの、女の子か……!?)」

939: 2009/06/05(金) 21:51:05.99 ID:g/uLxe20
キリン 「!! ヒ……ヒィィン!(ピシャァァン)」
ハンマー 「うおっ!」
ハンマー 「(何だ……? 瓦礫の山に雷を落としたぞ……)」
ハンマー 「(いや……違う!)」
ハンマー 「(瓦礫に何か埋もれている……)」

940: 2009/06/05(金) 21:51:24.61 ID:g/uLxe20
ハンマー 「(あれは!)」
ハンマー 「(俺に突撃してきた、怪鳥だ!)」
キリン 「ヒィン! ヒヒィィ!(ガリガリ)」
ハンマー 「(氏んでいるのか……? 動かない……)」
ハンマー 「(掘り出そうとしているのか……?)」
ハンマー 「(無茶だ……動物の足や雷では、傷つけずに全ての岩をどかすことはできん……)」

941: 2009/06/05(金) 21:51:50.23 ID:g/uLxe20
キリン 「(ガリガリ)」
ハンマー 「(よろよろ)…………どくんだ」
キリン 「! (バッ)」
ハンマー 「ふんッ! ぐぉぉぉぉお!」
ハンマー 「とりゃぁあ!(ズゥゥン)」
キリン 「…………」
ハンマー 「俺が岩をどかそう……」
キリン 「………………」
ハンマー 「ぐぬっ! とりゃぁあ!(ズゥゥン)」

942: 2009/06/05(金) 21:52:27.61 ID:g/uLxe20
ハンマー 「……………………はぁ……はぁ……(ドサッ)」
ハンマー 「これで……怪鳥の上の、瓦礫は全てどかしたな……それに、生きているようだ……」
キリン 「…………(ブルルルル)」
キリン 「(カミッ)……(スッ)」
ハンマー 「何だ? たてがみ? ……くれるのか」

943: 2009/06/05(金) 21:53:12.89 ID:g/uLxe20
キリン 「…………」
ハンマー 「ありがとう。いただいておこう」
ハンマー 「(やはり、あの時見たものと同じだ……)」
ハンマー 「(と、するとあの女の子……)」
ハンマー 「(熔岩の中に落ちていったように見えたが……)」

944: 2009/06/05(金) 21:53:54.98 ID:g/uLxe20
ハンマー 「ふふっ……」
キリン 「?」
ハンマー 「モンスターに礼をもらうとはな。俺はハンターだというのに、とても不思議な気分だ」
キリン 「(くるっ)……(スタスタ)」
クック 「………………」
キリン 「(ペロペロ)」
ハンマー 「(怪鳥の傷を舐めている……)これを使うといい(ぽいっ)」

945: 2009/06/05(金) 21:54:26.88 ID:g/uLxe20
キリン 「!!」
ハンマー 「俺がいつも、お守りとして持っている、いにしえの秘薬だ。大抵の傷はそれで治る」
キリン 「………………」
ハンマー 「……言葉は分からんか。だが、薬の存在が理解できるなら、悪いものではないと、分かるだろう?」
キリン 「(カミッ)」

946: 2009/06/05(金) 21:54:50.99 ID:g/uLxe20
ハンマー 「よせ、頭など下げるな」
キリン 「…………」
ハンマー 「……この崩落を引き起こしたのは、俺の仲間だ……」
ハンマー 「都合のいい話とは思うが、受け取ってくれ」
キリン 「…………」
ハンマー 「……モンスターと話をするなど……奇妙な気分だ……」

947: 2009/06/05(金) 21:56:20.12 ID:g/uLxe20
ハンマー 「(そういえば……隣街で、奇妙な噂を聞いたことがある……)」
ハンマー 「(まるでモンスターと話をしているような、不気味な行動をとる子供がいると)」
ハンマー 「(随分と迫害されていたようだが……もし……)」
ハンマー 「もし、お前達にも……」
ハンマー 「……俺達と同じような心があるのなら……」
ハンマー 「(そして、俺にもそんな力があれば……)」
ハンマー 「(今のこの気持ちを、お前達に伝えられるのだがな……)」

948: 2009/06/05(金) 21:56:43.72 ID:g/uLxe20
キリン 「…………」
××××× 「ぉーぃ!!」
キリン 「!!」
ハンマー 「助けが来たか……お前達の仲間とは、反対方向のようだ」
キリン 「…………」
ハンマー 「身構えるな。俺は、ハンターとして義理は返す。お前は俺を助けてくれた。黙って去ることにする」

949: 2009/06/05(金) 21:56:57.03 ID:g/uLxe20
ハンマー 「……(よろよろ)」
キリン 「…………」
ハンマー 「……少し上に登らねばならんようだな……」
キリン 「(スタスタ)」
ハンマー 「? 何だ?」
ハンマー 「背中に乗れというのか?」

950: 2009/06/05(金) 21:57:22.09 ID:g/uLxe20
ハンマー 「……すまない。俺が、足を痛めていることも分かるのか……」
キリン 「…………」
ハンマー 「少し背中を借りるぞ(バッ)」
キリン 「ヒィィィ!(ダッ)」
ハンマー 「うおっ!」
ハンマー 「(も……ものすごい跳躍力だ……!)」
ハンマー 「…………(たちまち、数十メートルも上についてしまった……)」

951: 2009/06/05(金) 21:57:41.07 ID:g/uLxe20
ハンマー 「よっ……と」
キリン 「…………」
ハンマー 「ここまででいい。ありがとう」
キリン 「(スッ)」
ハンマー 「いにしえの秘薬は、持っておいてくれ。お前の仲間に役に立つだろう」
ハンマー 「じゃあな……」

952: 2009/06/05(金) 21:58:12.49 ID:g/uLxe20
―火山、入り口―

ヘビィ 「ハンマー!! 大丈夫かー!!」
ハンマー 「心配をかけた」
ライト 「うおっ! お前、足怪我してんじゃねぇか!? 武器は!?」
ハンマー 「崩れた時に落としてしまったらしい」

953: 2009/06/05(金) 21:58:36.31 ID:g/uLxe20
ヘビィ 「ザマぁねぇなぁ」
ハンマー 「はは……まったくだ」
ハンマー 「…………」
ハンマー 「奥には熔岩が流れ込んでいる。近づかない方がいい」
ヘビィ 「あンだってぇ? そりゃ大変だ。早いとこ街に帰ろうぜ」

954: 2009/06/05(金) 21:59:03.93 ID:g/uLxe20
ライト 「ガンランスの野郎、洞窟で爆弾ブッ放したんだって? ネコートさんにえらく怒られて、懲罰房に入れられたぞ」
ハンマー 「あの場合は、仕方がなかったとも思うが……」
ヘビィ 「はぁ……ま、氏人が出なかっただけよしとするか……」
ハンマー 「行方不明は、もういないのか?」
ライト 「お前で最後だよ」
ハンマー 「そうか……」

955: 2009/06/05(金) 21:59:27.16 ID:g/uLxe20
ヘビィ 「しっかし、あれだけやって出たのが損害だけってのもな……割に合わなすぎるぜ……」
ハンマー 「そんなことはない。今はもう、この奥には近づけないが……(スッ)」
ヘビィ 「! お前、そりゃ……」
ハンマー 「メランジェ鉱石と、黄金石の原石だ。これだけの量があれば、街にも食料がいきわたるだろう」
ライト 「すげぇでかさだ!」
ヘビィ 「あぁぁ~! 熔岩がひでぇんだろ? くそっ! 俺も巻き込まれてりゃな……」
ハンマー 「ただの偶然だ……」

956: 2009/06/05(金) 21:59:42.84 ID:g/uLxe20
ハンマー 「…………」
ハンマー 「(もしも、あのキリンのように、モンスターにも心というものがあるのなら……)」
ハンマー 「(何故、あの怪鳥は、俺に殴られながらも、それでも尚飛び掛ってきた……?)」
ハンマー 「(あれは怒りというよりも……)」
ハンマー 「(悲しみに見えた……)」

957: 2009/06/05(金) 22:00:04.25 ID:g/uLxe20
ヘビィ 「(バシィ!)」
ハンマー 「ッ……」
ヘビィ 「何シケた面してんだ。今晩は逃がさねェぜ。酒場もフル回転だ」
ハンマー 「俺は酒は……」
ライト 「怪我に一番効く薬は酒ってな。ほら、行くぜ」

第6章に続きます

958: 2009/06/05(金) 22:01:01.64 ID:Ouro8Hwo
お疲れさまでした。
体調は大丈夫ですか?お体に気をつけてください。
楽しみに待ってます。

959: 2009/06/05(金) 22:03:18.14 ID:g/uLxe20
お疲れ様でした。今日はパー速で始めて、すんなりと投稿できた日でした
no title
no title
no title
no title
no title
no title
no title
no title

書き溜めはここまでとなります
次スレを立てようと思います
少しお待ちください

960: 2009/06/05(金) 22:06:19.90 ID:V3.rPBIo
お疲れ様でした!御体に気をつけながら頑張ってくださいね

引用: イャンクック 「旧沼地で人間を拾ったんだが」