1:◆58jPV91aG. 2009/06/05(金) 22:13:03.34 ID:g/uLxe20
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第一章
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第二章
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第三章
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第四章
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第五章

◆あらすじ
第1章:旧沼地でイャンクックに拾われた女の子。彼女はモンスターのしがらみに巻き込まれてしまいます。
    フルフルの薬を取りに、人間の里へ向かった帰り、ドドに襲われてしまいますが……。
第2章:ランゴスタの毒にやられてしまったグラビモス亜種を救うため、キングチャチャブーの元に向かうイャンクック達。
    その頃、薬の禁断症状に苦しむグラビモスは、人間に捕獲されてしまっていました。
第3章:三年前、シュレイド城での人間との戦いで、モンスター達は内部分裂を起こしてしまいます。
    大切な家族を守るためにイャンクックは戦おうとしますが……。
第4章:キングチャチャブーと共に、ランゴスタクイーンの下へ急ぐイャンクック。
    しかし雪山では、人間を憎むイャンガルルガに女児がさらわれてしまいます。
第5章:ナナ・テスカトリに救われる女児。しかし火傷は深く、ナナは女児を砂漠に連れて行きます。
    その中、シェンガオレン復活を目論む一派のラージャンが襲来し……。

以下続刊です

12: 2009/06/10(水) 20:59:58.74 ID:A1QGIGY0
イャンクック 「旧沼地で人間を拾ったんだが」 第6章

副題:「明日、天気になぁれ」

―二年前、人の里―

女将 「まったく! そこじゃないっつってんだろ!(ビシッ)」
女児 「きゃあ!」
女将 「お前のお袋と同じく、使えない娘だよ。雨が降ってきたら、とっとと洗濯物を取り入れな!」
女児 「はい……ごめんなさい……」
女児 「…………」
女児 「(とぼとぼ)」
モンハン イャンクック ペン画 原画
13: 2009/06/10(水) 21:00:33.63 ID:A1QGIGY0
女児 「(雨……)」
女児 「(雨が降ってる)」
女児 「……?」
兵士A 「住民票がないアイルーはこっちだ!」
兵士B 「抵抗するようなら殺せ! 所詮モンスターはモンスターなんだよ!」

14: 2009/06/10(水) 21:01:03.32 ID:A1QGIGY0
アイルー達 「ひぃぃ! あっしらは何もしてないにゃァァ!!」
兵士C 「黙れ!(ビシィッ)」
アイルー達 「ビャァ!」
兵士D 「どうせお前らが、モンスターに内通してやがったんだ!」

15: 2009/06/10(水) 21:01:28.44 ID:A1QGIGY0
アイルー達 「あっしらはそんなことは……」
アイルー達 「人間様の味方でさぁ!」
兵士B 「連れてこい! 住民登録もないアイルーは、別の街に奴隷として売りに出す!」
アイルー達 「そ……そんニャ! あっしらは今までギルドに尽くしてきたのに……」

16: 2009/06/10(水) 21:02:26.36 ID:A1QGIGY0
アイルー達 「横暴だニャ!」
兵士C 「うるせぇ!(ドガッ)」
アイルー達 「ビニャァ!!」
兵士C 「俺は今まで、モンスターが人間と同じような面ァして、そのらへん歩き回ってるのが気に食わなかったんだ!」

17: 2009/06/10(水) 21:02:58.16 ID:A1QGIGY0
兵士C 「これでせいせいするぜ!!」
アイルー達 「おいらにはご主人がいるニャ! ご主人に会わせてくれにゃァァ!!」
アイルー達 「嫌だにゃァァ! 奴隷生活は嫌だにゃァァァ!!」
兵士B 「(ガチャン)連れて行け」
兵士E 「了解しました。任務ご苦労様です。ではこのアイルー達は、護送車で運び出しますので」
アイルー達 「ヘルプ! ヘルプにゃァァ!!」
アイルー達 「あっしらは無実でさァァ!!」

18: 2009/06/10(水) 21:03:34.60 ID:A1QGIGY0
住民達 「またネコが連れて行かれるわよ(ひそひそ)」
住民達 「でも、噂ではこの前のシュレイド城の戦いで、アイルーがモンスター軍と内通してたんじゃないかって……」
住民達 「ほんと!? でもあのネコ達、人なのかモンスターなのか分からないから、前から不気味だって思ってたのよ」
住民達 「この機会に、街からいなくなってくれれば嬉しいんだけどね……」
住民達 「ウチの子も、あの戦いで大怪我してね。今はモンスターの顔を見るだけで吐き気がするわ」
女児 「…………」
アイルー達 「ヘルプ! ヘルプミィィィ!!」
猫護送車 「(ガラガラガラガラ)」

19: 2009/06/10(水) 21:04:40.37 ID:A1QGIGY0
女児 「…………」
女児 「(お洗濯もの……)」
女児 「…………(とぼとぼ)」
女児 「モンスター……」
女児 「モンスターが、お父さんと、お母さんを……」
女児 「…………」

20: 2009/06/10(水) 21:05:09.03 ID:A1QGIGY0
女将 「何してんだい! とっとと取り込んで来るんだよ!!」
女児 「! はい! ごめんなさい……!」
女将 「ぐずぐずしてると鞭でぶつよ! お前みたいな役立たずを拾ってやったんだ! いくら役立たずでも、働く努力くらいはするんだね!!」
女児 「(ダッ)」
住民達 「……やぁねぇ。あのお屋敷の子、また怒鳴られてるわよ」
住民達 「父親が、母親と軍を脱走したんだろう? 子供もろくな子じゃないのかもしれないね」
住民達 「何でも、あの子を捨てて、二人で逃げる途中に、砦蟹の侵攻に巻き込まれたとか……」

21: 2009/06/10(水) 21:05:38.63 ID:A1QGIGY0
女児 「…………」
女児 「よいしょ……」
女児 「(ふらふら)」
女将 「それが終わったら、あとはお客さんの食事作りだよ。休むんじゃないよ。とっととしな!」
女児 「はい……!」
女将 「まったく本当、使えない……(ススッ)」
女児 「…………」

22: 2009/06/10(水) 21:07:02.44 ID:A1QGIGY0
女児 「よいしょ……」
女児 「雨が……」
女児 「……強くなってきた……」
女児 「(お洗濯ものを、中に入れて……)」
女児 「痛っ……」
女児 「(さむい……)」
女児 「(手が、しもやけで切れてる……)」

23: 2009/06/10(水) 21:07:41.43 ID:A1QGIGY0
女児 「ふーっ……ふーっ……」
女児 「(すりすり)」
女児 「よいしょ……」
女児 「…………」
女児 「(あとは、お食事をつくらなきゃ……)」
女児 「…………」
女児 「(てが……いたい……)」

25: 2009/06/10(水) 21:08:19.65 ID:A1QGIGY0
女児 「……?」
女児 「あ……」
女児 「(こんなところに、アイルーがいる……)」
白アイルー 「…………」
女児 「(あまやどりかな……)」
女児 「(でも、バッジをつけてない……)」
女児 「(へいしさんたちに見つかったら、つれていかれちゃう……)」
白アイルー 「…………」

26: 2009/06/10(水) 21:11:01.83 ID:A1QGIGY0
>>24
今確認したら埋まっていました。皆さんありがとうございます
あと、1000の人、天鱗GETおめでとうございます

27: 2009/06/10(水) 21:11:35.83 ID:A1QGIGY0
兵士達 「路地裏も全部探せ! バッジのないアイルーは、全部奴隷市場送りだ!」
アイルー達 「ギニャァァ!!」
兵士達 「逃げたぞ! 追えぇぇ!!」
女児 「…………」
白アイルー 「ふぅふぅ」
女児 「(手に息をかけてる……)」
女児 「(この子もさむいんだ……)」

28: 2009/06/10(水) 21:12:48.18 ID:A1QGIGY0
女児 「……こっちだよ」
白アイルー 「!」
女児 「そこにいたら、こわい人につれていかれちゃうよ」
白アイルー 「…………(きょろきょろ)」
女児 「かぞくの人と、はぐれたの?」
白アイルー 「(こくり)」
女児 「とりあえず、こっちにかくれて。ほら……」
白アイルー 「(こくり)……(トコトコ)」

29: 2009/06/10(水) 21:13:42.77 ID:A1QGIGY0
兵士達 「(バタバタ)」
女児 「!」
兵士達 「おい、そこのガキ! この辺にアイルーが逃げ込んでこなかったか!?」
女児 「(ビクッ)…………」
兵士達 「とっとと答えろ!」
女児 「し…………しらない(ふるふる)」
兵士達 「おーい! こっちだ!」
アイルー達 「ギニャァァ! 見つかったニャァァ!!」
兵士達 「チッ(ダダッ)」

30: 2009/06/10(水) 21:15:18.19 ID:A1QGIGY0
女児 「…………」
女児 「(スッ)夜まで、うごかないほうがいいよ」
白アイルー 「…………」
女児 「さいきん、ずっとこうなの」
白アイルー 「…………」
女児 「(しゃべれないのかな……)」
女児 「そうだ……」
女児 「(ごそごそ)これ、あげる」
白アイルー 「?」
女児 「お魚の干物」

31: 2009/06/10(水) 21:16:13.85 ID:A1QGIGY0
白アイルー 「???」
女児 「(ぐぅ~)」
女児 「あ……」
白アイルー 「…………」
女児 「はい」
白アイルー 「(ふるふる)」
女児 「じゃあ、はんぶんこにして食べようか(ポキッ)」
女児 「……はい」
白アイルー 「(もぐもぐ)……(にこっ)」

32: 2009/06/10(水) 21:18:33.20 ID:A1QGIGY0
白アイルー 「……?」
女児 「?」
白アイルー 「(スッ)」
女児 「どうしたの? わたしの手?」
白アイルー 「(こくり)……(ぐい)」
女児 「あ……よごれてるから……」
白アイルー 「(ふぅ)」
女児 「!」
女児 「きずが……」
女児 「きずが、ふさがった!」
白アイルー 「(にこにこ)」

33: 2009/06/10(水) 21:19:02.56 ID:A1QGIGY0
女将 「女児! 女児、どこにいるんだい! とっとと戻ってこないとぶつよ!」
女児 「(ビクッ)」
女児 「あ……ごめんね、わたし、もういかなきゃ……」
女児 「よくわからないけど……」
女児 「手、なおしてくれてありがとう(なでなで)」
白アイルー 「(ごろごろ)」
女児 「この納戸にはだれもこないから、夜までまっててね。また来るから」
白アイルー 「(こくり)」

34: 2009/06/10(水) 21:20:19.22 ID:A1QGIGY0
―どこか、遠い場所―

×××××× 「Min datter(娘が)」
×××××× 「…………Hun er ikke her(娘が、ここにいない)」
×××××× 「Hun er ikke(いない)」
×××××× 「Det er nodvendigt at lede efter hende(探さねばならぬ)」
×××××× 「Det er nodvendigt at finde hende(見つけねばならぬ)」
×××××× 「Vores barn er en vigtig barn(あの子は大切な子……)」
×××××× 「At barnet skal vare hvidt(……白くなければいかぬ……)」

35: 2009/06/10(水) 21:21:10.01 ID:A1QGIGY0
×××××× 「Landsby(人里か?)」
×××××× 「Landsby(人里!?)」
×××××× 「Det beskidte landsby(あの汚らしい人里!?)」
×××××× 「Jorden regeret af menneskelige der defiled (穢れた人間に、支配された土地に!?)」
×××××× 「Ah……(ああ……)」
×××××× 「Fadase der, hvad er det vard(失態をした……)」
×××××× 「Det faldt(落ちたのだ)」

36: 2009/06/10(水) 21:21:43.12 ID:A1QGIGY0
×××××× 「At barnet vil blive defiled(このままではあの子は、地上の毒に冒されてしまう」
×××××× 「Det er nodvendigt at hjalpe(助けなければ)」
×××××× 「Det er nodvendigt at hjalpe(助けなければいけない)」
×××××× 「Fra rotted jorden(腐った地上から……)」
×××××× 「Min datter(娘を……)」
×××××× 「Lad os komme i gang(……降りましょう)」
×××××× 「Til at rotted jord(あの腐りきった土地へ……)」
×××××× 「Kun en gang nu(今一度……)」

37: 2009/06/10(水) 21:22:11.08 ID:A1QGIGY0
―二年前、人の里、女児の住む屋敷、夜―

女児 「(すすっ)」
女児 「ネコさん、いる?」
白アイルー 「すぅー……すぅー……」
女児 「(ねてる……)」
白アイルー 「……!」
女児 「ごめんね、おこしちゃった」
白アイルー 「(ごしごし)」

38: 2009/06/10(水) 21:22:47.90 ID:A1QGIGY0
女児 「いろいろ、あまりものだけどもってきたよ」
白アイルー 「……?」
女児 「干物とか……おやさいとか……」
白アイルー 「!」
女児 「どうしたの?」
白アイルー 「(ちょいちょい)」
女児 「あ……おきゃくさんの食べ残しなんだけど……」
女児 「なんだかよくわからないの……」

39: 2009/06/10(水) 21:23:44.46 ID:A1QGIGY0
白アイルー 「(つんつん)……(パカッ)」
女児 「この種、われたんだ……」
白アイルー 「(すっ)」
女児 「たべられるの? でも、種のなかみだよ?」
白アイルー 「(こくり)」
女児 「(もぐもぐ)……! 甘いねぇ。中の方がおいしいんだぁ」
白アイルー 「(もぐもぐ)」
女児 「いつも種はすててたよ。あなたは、すごいこと知ってるんだね」

40: 2009/06/10(水) 21:24:37.48 ID:A1QGIGY0
白アイルー 「?」
女児 「あぁ、これ?」
女児 「おかみさんに、おこられちゃったの」
女児 「わたしあんまりやくにたてないから……」
白アイルー 「(くいっ)……(ふぅ)」
女児 「青くなってたのに……治ってく。とってもあったかい」
白アイルー 「(ニコニコ)」
女児 「ありがとう。やさしいんだね(なでなで)」

41: 2009/06/10(水) 21:26:00.59 ID:A1QGIGY0
女児 「お父さんと、お母さんは?」
白アイルー 「(きょろきょろ)……??」
女児 「どこにいるか、わからないの?」
白アイルー 「(こくり)」
女児 「じゃあ、どうしようね……いま、兵士さんに見つかると、ネコさんはつれていかれちゃうんだよ」
白アイルー 「…………」
女児 「外は雨がすごいから、出れないね……」

42: 2009/06/10(水) 21:26:33.30 ID:A1QGIGY0
白アイルー 「……(ぎゅっ)」
女児 「……?」
白アイルー 「…………」
女児 「(なでなで)いっしょにねよう? 明日、雨がやんでたら、一緒にお父さんたちを探しに行こう」
白アイルー 「…………(こくり)」
女児 「明日は雨がやむよ。そんな気がするもん、だいじょうぶ」
白アイルー 「(にこり)」

43: 2009/06/10(水) 21:26:56.36 ID:A1QGIGY0
女児 「お父さんと、お母さんはね」
白アイルー 「…………」
女児 「きっと、むかえにきてくれるんだよ。だって、かぞくなんだもん。むかえにきてくれるよ」
白アイルー 「…………」
女児 「だから、だいじょうぶだよ。こわい人なんて、心配ないよ」
白アイルー 「(こくり)」
女児 「お母さんがね、よくわたしに言ってたの」
女児 「(ごそごそ)」

44: 2009/06/10(水) 21:27:25.26 ID:A1QGIGY0
女児 「これ」
白アイルー 「!」
女児 「てるてる坊主っていうの。わたし、沢山つくった。これを吊るして、おねがいすれば、きっと明日はお天気になるの」
女児 「一つ吊るしてもだめなら、もっと沢山吊るせばいいの」
女児 「おねがいすれば、きっと明日はお天気になるって、お母さんはいつも言ってた」
女児 「だからわたし、明日はね、明日こそはね、天気になぁれって、そう思って」
女児 「……そう思いながら、いつもこれ、つくってるんだ」
白アイルー 「…………」

45: 2009/06/10(水) 21:27:48.10 ID:A1QGIGY0
女児 「小さいのがあるから、あげる」
白アイルー 「(にこり)」
女児 「こうやって、ヒモを通して首にかけておけば……」
女児 「もしかしたら、もしもの時に飼いアイルーって思ってもらえるかもしれないし……」
女児 「明日はきっとお天気になって」
女児 「きっと、あなたのお父さんとお母さんも」
女児 「…………」
女児 「探しにきてくれるよ」

46: 2009/06/10(水) 21:28:19.33 ID:A1QGIGY0
白アイルー 「(にこにこ)」
女児 「…………」
女児 「(にこり)」
女児 「…………」
白アイルー 「(ごろごろ)」
女児 「……!」
女児 「(このネコさん、せなかに小さな羽がある……)」
女児 「(きれい……)」
女児 「(特別なネコさんなのかな……)」

47: 2009/06/10(水) 21:28:45.45 ID:A1QGIGY0
女児 「(今は森はあぶないけれど……)」
女児 「(こわい兵士さんたちにつれて行かれるくらいなら)」
女児 「(もしもの時は、森の方が……)」
女児 「(……森……)」
女児 「(お父さんと、お母さんをころした……)」
女児 「(モンスターたちがいる森……)」
女児 「(モンスター…………)」
女児 「(…………この子も…………)」

48: 2009/06/10(水) 21:29:08.89 ID:A1QGIGY0
白アイルー 「すぅー……すぅー……」
女児 「………………」
女児 「(てるてる坊主を、にぎってる……)」
女児 「(お父さんとお母さんに、会いたいのかな……)」
女児 「(そうだよね……)」
女児 「(一人はさみしいよ)」

49: 2009/06/10(水) 21:29:26.38 ID:A1QGIGY0
女児 「(…………)」
女児 「(でも、だいじょうぶだよ)」
女児 「(この子の分も、お願いするの……)」
女児 「(明日、天気になぁれって……)」
女児 「(どんな幸せがくるのかは、わからないけれど)」
女児 「(明日はきっと、雨が止むよ……)」

50: 2009/06/10(水) 21:30:28.32 ID:A1QGIGY0
―次の日、朝―

女児 「ん……」
女児 「……(あったかい……)」
白アイルー 「すぅー……すぅー……」
女児 「(この子がくっついててくれたから……)」
女児 「あ……」
女児 「(外……雨……。きのうより、強くなってる……)」
女児 「…………」

51: 2009/06/10(水) 21:33:20.35 ID:A1QGIGY0
白アイルー 「(ふぁぁ)」
女児 「あ……おはよう」
白アイルー 「(ごしごし)……(にこり)」
女児 「今日の、夕方に自由時間があるから、そのときにお父さんとお母さんを探しにいこう?」
白アイルー 「(こくり)」
女児 「あとでまた、何か食べるものを持ってきてあげる」
女児 「ここにいてね?」
白アイルー 「(こくり)」

52: 2009/06/10(水) 21:33:46.92 ID:A1QGIGY0
―女児の住む屋敷、昼―

女将 「女児! ちょっと来な!」
女児 「は……はい!」
女将 「……あんた、何かやらかしたんじゃないだろうね!?」
女児 「(ビクッ)え……」
女将 「兵士が来てるんだよ。お前を呼んでこいってさ」
女児 「わたしを……?」
女将 「ぐずぐずするんじゃないよ。あたしもいくからついといで!」
女児 「…………」

53: 2009/06/10(水) 21:34:46.34 ID:A1QGIGY0
女児 「(もしかして、あの白いネコさんが……)」
女児 「(そんな……)」
女児 「(あの子は、わたしのきずを治してくれて……)」
女児 「(すごくやさしい子で……)」
女児 「(悪いネコさんじゃないのに……)」
女将 「何ボサッとしてんだい! とっとと入るんだよ!(ぐいっ)」

54: 2009/06/10(水) 21:35:39.96 ID:A1QGIGY0
女将 「お待たせしました。いやぁ、なかなかこの子がね、融通がきかなくてね」
女児 「(兵士さんたちだ……)」
女児 「(白いネコさんはいないみたい……)」
兵士A 「…………」
兵士B 「君か、シュレイド城から来た子っていうのは」
女児 「!!」
兵士B 「孤児登録を整理していて、少々気になる点があってね……」

55: 2009/06/10(水) 21:37:01.66 ID:A1QGIGY0
女将 「あの……この子が何かをやらかしたんでしょうか?」
兵士A 「いや、そういうわけではありません。どちらかというと、この子の親が問題でして」
女児 「……!!!」
兵士B 「登録によると、父親が脱走兵となっていましてね。知っての通り、軍規によると脱走は氏罪に当たる重罪でして」
兵士A 「氏亡は確認されてはいますが、法律では、その家族に、軍罰則による罰金が科せられるんですよ」
女児 「………………」
女将 「罰金!? ちょっと、そんな話聞いてませんよ!」

56: 2009/06/10(水) 21:37:54.92 ID:A1QGIGY0
兵士A 「ええと……あなたは、この子の保護者という形でよろしいでしょうか?」
女将 「! バ……バカを言わないでください。この子は、ウチでただ雇っているだけ……ただの小間使いとして、雇っているだけです」
女児 「!?」
女将 「奴隷として私が買い取ったんです。市民登録があるなんて知りませんでしたよ!」
女児 「(そんな……うそ……)」
女児 「(おかみさんは、お母さんの遠いしんせきで……)」
女児 「(わたし、奴隷じゃない……)」
兵士A 「はぁ、そうなんですか」
兵士B 「まぁ、このご時世ですから、形態はどうあれ、子供が大人の保護下にあるという状況だけで、私たちは口出しをいたしませんよ」
女将 「…………」
兵士B 「それで、本人確認をしてもらいたいんですが」

57: 2009/06/10(水) 21:39:59.67 ID:A1QGIGY0
女児 「!!」
兵士A 「(スッ)この映写画像は、君のお父さんとお母さんで、間違いないかい?」
兵士B 「もしもそうだというのなら、君に軍からの罰金が科せられることになる」
兵士A 「奉公しているというなら、そこから税金という形で引かせてもらうよ」
兵士B 「残酷なようだが、これも規則でね……家族を失って辛いとは思うが」
女児 「…………」
兵士B 「認めなくてもいい、ただ、形式的なものなんだ」
女児 「!?」
女児 「(認めなくてもいい……?)」
女児 「(わたしが、お父さんとお母さんの子供だって……?)」

58: 2009/06/10(水) 21:41:32.63 ID:A1QGIGY0
兵士A 「もし違うというなら、この市民登録は抹消して、また新しく作ればいい」
兵士B 「ただの確認なんだ。そう、構えることはない。別人だということで、いいね?」
女児 「…………」
女将 「ええ、ええ別人ですとも。お前も何とかお言い!」
女児 「…………」

59: 2009/06/10(水) 21:42:09.17 ID:A1QGIGY0
女児 「(お父さん、お母さん……)」
女児 「(むかえに……)」
女児 「(…………………………)」
兵士A 「ん? どうだい?」
女児 「………………」

60: 2009/06/10(水) 21:43:17.77 ID:A1QGIGY0
女児 「(お金……罰金……)」
女児 「(女将さんにめいわく……)」
女児 「(わたし、いくところ……)」
女児 「(ない……)」
女将 「ほら!(ぐいっ)」
女児 「ひっ……」
女児 「……………………」
女児 「べ……」
女児 「別のひと……です」

61: 2009/06/10(水) 21:45:38.78 ID:A1QGIGY0
兵士A 「分かった。ではそのように処理をしておこう」
兵士B 「君の新しい孤児登録市民票の発行手続きもしておくよ」
兵士A 「時間があったら、役所に写真を撮りに来なさい」
女将 「なんだか、たいしたお構いもできませんでして……」
兵士B 「いえ、仕事ですから」
兵士A 「それでは、僕らは失礼します」
女児 「……………………」

62: 2009/06/10(水) 21:47:06.10 ID:A1QGIGY0
―夕方―

女児 「…………」
白アイルー 「?(ぷにぷに)」
女児 「え? あ……ごめんね(にこっ)」
女児 「お父さんと、お母さんを探しにいこうね」
女児 「探しに……」
女児 「…………」
白アイルー 「…………」
女児 「……わたしの、服の中に入って。そうすればみつからないよ」
白アイルー 「(コクリ)」

63: 2009/06/10(水) 21:49:54.58 ID:A1QGIGY0
アイルー達 「ギニャァ! こっちにも追っ手がいるにゃァ!」
兵士達 「逃がすな! 捕まえろー!!」
アイルー達 「おいどんらは無害ですにゃァァァ!!」
アイルー達 「奴隷市場はもういやだニャァァ!!」
兵士達 「騒ぐな! この!!」
アイルー達 「ブッギャァァ!」
女児 「…………」
女児 「(ひどい……)」
女児 「(何もしてないのに……)」

64: 2009/06/10(水) 21:51:13.74 ID:A1QGIGY0
女児 「(でも、だれも……)」
女児 「(だれも、たすけてあげようとしない……)」
女児 「(わたしも……)」
女児 「(…………)」
女児 「(モンスターだから……)」
女児 「(モンスター、だから……みんな……)」
白アイルー 「………………」

66: 2009/06/10(水) 21:52:04.25 ID:A1QGIGY0
白アイルー 「(ちょいちょい)」
女児 「?」
白アイルー 「(スッ)」
女児 「これ……てるてる坊主?」
女児 「木の実の皮で、作ったの?」
白アイルー 「(コクリ)」
女児 「わたしにくれるの?」
女児 「わぁ……」
女児 「ありがとう(にこっ)」

67: 2009/06/10(水) 21:53:54.50 ID:A1QGIGY0
アイルー 「(ダダッ)」
女児 「!!」
アイルー 「ヘルプ! ヘルプミィ!」
女児 「(ネコさんが、道路に飛び出してきた……!)」
アイルー 「どなたかあっしをヘルプしてくだされ! あっしはれっきとした雇われアイルーでっせ!!」
住民達 「…………」
アイルー 「あっしのバッヂが、盗まれちまったんです! どなたかあっしの無実を証明して……」
兵士達 「こっちに逃げたぞ!(ダダダダッ)」
アイルー 「ギニャァァ! お縄は勘弁にゃァ! どなたかあっしの顔を!!」
アイルー 「ギルドであっしをみかけたっつぅ人おりませんか! どなたかぁぁ!!」
兵士達 「このっ! 暴れるな!!」
アイルー 「あっしは奴隷じゃねぇですぅぅぅ!!」

69: 2009/06/10(水) 21:55:04.99 ID:A1QGIGY0
女児 「(奴隷……)」
女児 「(………………)」
女児 「(足が、うごかない……)」
白アイルー 「…………」
アイルー 「だからあっしは……」
アイルー 「無実だって……!!」

71: 2009/06/10(水) 21:57:05.07 ID:A1QGIGY0
兵士達 「いい加減にしろこの……!(ブゥン)」
アイルー 「!!」
兵士達 「モンスターめ!!」
アイルー 「(ドガッ)ビャァ!!」
兵士達 「へへっ……バケモンが人間様と同じ口ィきいてんじゃねぇよ」
アイルー 「(ずるずる……ばたん)」
住民達 「………………」

72: 2009/06/10(水) 21:59:38.68 ID:A1QGIGY0
兵士達 「おいこれ、氏んだんじゃねぇのか?」
兵士達 「強くやりすぎだぞ。あくまで、売るために捕まえてるんだからよ」
兵士達 「構うもんか。ネコなんて腐るほど出てくるだろ」
女児 「………………」
女児 「(血……)」
女児 「(あのネコさん、助けてあげなきゃ……)」
女児 「(でも、体が……)」
女児 「(震えて……)」

73: 2009/06/10(水) 22:01:37.57 ID:A1QGIGY0
女児 「(奴隷……)」
女児 「(お父さんとお母さんは、もういないの……)」
女児 「(だれも……)」
女児 「(だれも、わたしを守ってくれない……)」
女児 「(もし、兵士さんをおこらせて、お父さんが脱走兵ってわかって……そうなったら……)」
女児 「(お金……………………)」
女児 「…………」
白アイルー 「………………」

74: 2009/06/10(水) 22:02:43.07 ID:A1QGIGY0
白アイルー 「(スッ)」
女児 「あ! 駄目! 出ちゃ駄目!!」
白アイルー 「(スタッ)……(トコトコトコ)」
住民達 「ちょっと! あの白ネコ、バッヂをつけてないわ!」
住民達 「野良よ!!」
女児 「あ……ぁ……」
兵士達 「何だァ、あのネコ」
兵士達 「くたばったアイルーに近づいてくぞ」
白アイルー 「(スッ)」
アイルー 「………………」
白アイルー 「(ふぅ)」

75: 2009/06/10(水) 22:03:58.90 ID:A1QGIGY0
女児 「(あのネコさんの、傷が治っていく……)」
アイルー 「!!! な、何が……」
白アイルー 「(ニコニコ)」
兵士達 「お……おい、今の見たかよ……」
兵士達 「怪我が、消えたぞ……」
兵士達 「それに、あれ……背中に羽が……」
兵士達 「何だあれ……? アイルーじゃねぇ!」
住民達 「ば……化け物……」
住民達 「化け物よ! 化け物猫が、入り込んでるわ!!」

76: 2009/06/10(水) 22:06:00.94 ID:A1QGIGY0
白アイルー 「…………」
アイルー 「か……かたじけねぇ! あっしは逃げまさぁ!(ダダダッ)」
兵士達 「その白いのを捕まえろ!」
兵士達 「用心しろ! 強力なモンスターかもしれないぞ!!」
兵士達 「野郎!!(ブン)」
女児 「きゃっ……(剣を、いきなり……)」
白アイルー 「………………」
兵士達 「(キィィンッ)うわぁっぁぁぁ!」
兵士達 「何だ!? 斬りかかった奴が、逆に吹っ飛んだぞ!!」
兵士達 「ひ……ひぃぃ!」
白アイルー 「………………」
兵士達 「目が赤く、光ってる……!! ネコじゃねぇぞあれ!!」

77: 2009/06/10(水) 22:07:19.32 ID:A1QGIGY0
兵士達 「全員構えろ! ここでしとめるぞ!」
女児 「あ……あぁ……(沢山の兵士さんたちが、剣を抜いてる……)」
白アイルー 「…………」
兵士達 「モンスターめ……どこから入り込んだ!!」
住民達 「ひえええ! 巻き込まれるぞ!!」
住民達 「氏ね! モンスター!!(ブンッ)」
白アイルー 「(パチィィンッ)……?」
住民達 「ひっ……石が弾けて消えた……」

78: 2009/06/10(水) 22:08:08.32 ID:A1QGIGY0
兵士達 「迂闊に近づくな! 矢を射掛けろ!!」
白アイルー 「…………」
女児 「駄目……」
女児 「(あんなに沢山の矢に……)」
女児 「(あの子は何も悪いことを……)」
女児 「(わたしと同じ)」
女児 「(わたしと……同じ)」
女児 「(でも、わたしとちがう)」
女児 「(迎えに来てくれる、お父さんとお母さんがいるの!!!)」

79: 2009/06/10(水) 22:08:57.42 ID:A1QGIGY0
女児 「やめてぇぇ!(ダダッ)」
兵士達 「! 子供!? しゃ、射撃待て……」
兵士達 「氏ねぇ!(ズドドドド)」
女児 「あッ……!!!」
白アイルー 「!!!!」
女児 「う……」
女児 「(撃たれたの……わたし……?)」
女児 「(からだが……しびれて……)」
女児 「(あれ……?)」
女児 「(ドサッ)」
女児 「………………」
白アイルー 「!!! ……!!!」

81: 2009/06/10(水) 22:10:52.51 ID:A1QGIGY0
兵士達 「この野郎! 子供を盾にしやがった!!」
兵士達 「突き頃してやる!!」
兵士達 「うぉぉぉぉおおお!!」
白アイルー 「…………Stop、det!!」
兵士達 「! 何だ!?」
兵士達 「何だこの光……ま……まぶしい!!」

82: 2009/06/10(水) 22:11:53.42 ID:A1QGIGY0
×××××× 「En del af hendes……!」
兵士達 「耳に刺さる……な……なんだ……この声!!」
×××××× 「Det er sa meget. Menneskelige!!」
兵士達 「(ゴゥゥゥゥッ)うわぁぁ!」
兵士達 「ぎゃああ……ッ! た、台風か!? 目が……」
兵士達 「何だ……黒い猫と……赤い猫……!!! いつの間に!!」
兵士達 「踏ん張っていられねぇ……!! うわあああ!」

83: 2009/06/10(水) 22:13:43.80 ID:A1QGIGY0
―女児、夢の中―

女児 「(どこ……ここ……)」
女児 「(真っ白い……ばしょ…………)」
女児 「(何も見えない……)」
白アイルー 「(にこにこ)」
女児 「!! ネコさん!」
女児 「良かった……けがはなかったんだね……」
女児 「けが……あれ……?」
女児 「わたし……」
女児 「どこも、けがしてない……」

84: 2009/06/10(水) 22:14:37.83 ID:A1QGIGY0
白アイルー 「(ちょいちょい)」
女児 「……? 空……?」
白アイルー 「(ふぅ)」
女児 「!! わぁ! 太陽……それに、虹!!」
白アイルー 「(ちょいちょい)」
女児 「それ……わたしの、てるてる坊主……」
白アイルー 「(にっこり)」

85: 2009/06/10(水) 22:16:49.61 ID:A1QGIGY0
女児 「あ……どこに行くの!?」
白アイルー 「(トテトテトテ)」
女児 「…………!」
黒アイルー 「…………」
赤アイルー 「…………」
女児 「………………あ………………」
白アイルー 「(にこにこ)」
女児 「………………」
白アイルー 「ニャァ(ブンブン)」

86: 2009/06/10(水) 22:17:37.30 ID:A1QGIGY0
女児 「………………」
女児 「……良かったね(にこり)」
白アイルー 「ニャ…………ニャウ…………」
白アイルー 「Fine…………vejr」
女児 「……?」
女児 「言葉……?」
白アイルー 「Desuden…………lad…………os…………modes」
女児 「…………」
白アイルー 「Under……fine…………vejr!」

87: 2009/06/10(水) 22:18:01.91 ID:A1QGIGY0
女児 「あ……」
女児 「(手を振って……消えて……)」
女児 「(お父さんと、お母さんと一緒に……)」
女児 「きゃぁ!」
女児 「(い……今一瞬、太陽が爆発したみたいに光った……)」
女児 「……!!!」
女児 「空に……」
女児 「大きな……黒と、赤と……白の、ドラゴンが…………」

88: 2009/06/10(水) 22:18:19.07 ID:A1QGIGY0
―路地―

女児 「…………」
女児 「……けほっ……けほっ……」
女児 「わたし……生きてる……」
女児 「(まわりが……台風みたいに、大きく崩れてる……)」
女児 「(まるで何かがばくはつしたみたい……)」
女児 「…………」
女児 「(白ネコさんは、いない……)」
女児 「(カサ……)」
女児 「(これ……あの子がつくった、てるてる坊主……)」

89: 2009/06/10(水) 22:18:42.01 ID:A1QGIGY0
女児 「あれ……?」
女児 「雨が……止んだ……」
女児 「(空に、虹ができてる……)」
女児 「(きれい…………)」
女児 「あれ……あそこの雲も……」
女児 「てるてる坊主にみえる……」

90: 2009/06/10(水) 22:19:04.44 ID:A1QGIGY0
女児 「(どうしてだろ……)」
女児 「(涙、出てくる……)」
女児 「(あぁ……わたし……)」
女児 「(わたし……)」
女児 「…………」

91: 2009/06/10(水) 22:19:31.36 ID:A1QGIGY0
女児 「………………」
女児 「(お父さんと、お母さんに会えてよかったね…………)」
女児 「(私も……)」
女児 「(あしたは……)」
女児 「(あしたは、天気になると……いいなぁ……)」

101: 2009/06/14(日) 18:38:32.89 ID:Ky.D1Uo0
―現在、火山、深夜半―

クック 「……ン……ンン……」
キリン 「! おじさま!」
クック 「キリンちゃん……? 私は……」
キリン 「ずっと気を失っていたのよ。良かった、気がついて……」
クック 「ここは……?」
キリン 「アカムトルムさんのお家。洞窟が崩れて、怪我をした人は、みんなここに避難しているの」

102: 2009/06/14(日) 18:39:06.59 ID:Ky.D1Uo0
テオ・テスカトル 「……? おお、イャンクック殿。目を醒まされたか」
クック 「テオさんではないか。あなたも、いらっしゃったのですか」
テオ・テスカトル 「ああ。人間側の火山通路は、ほとんど完全に埋まってしまった。ガブラス君達の群落が潰れてしまったな……」
クック 「そうですか……」
テオ・テスカトル 「人間が何かを爆発させて、この騒ぎを引き起こしたと聞くが?」
クック 「! そうだ……女児! 女児は……!!」
クック 「助けに行かねば……!!」
クック 「ぐ……(よろり)」
キリン 「おじさま……」

103: 2009/06/14(日) 18:39:30.79 ID:Ky.D1Uo0
キリン 「女児ちゃんは大丈夫。ヴォルガノスさんが助けてくれて、今、火傷を治すために砂漠にいるらしいわ。さっきネコ飛脚便が知らせてくれたの」
クック 「そうか……良かった……」
クック 「本当に、良かった……(ふらり)」
テオ・テスカトル 「クック殿。私にはどうにも理解ができないのだが、人間は、あなたが保護していた子を熔岩に落とし……」
テオ・テスカトル 「しかしその一方、あなたの傷を治すために、キリンに薬をよこした。そうだね、キリン」
キリン 「はい。おじさまや、他の方の大きな傷はそれで治しました」
クック 「薬を……? 何故だ。私は、確かに人間が悪意を持って爆弾を撃つのを見た。女児はそのせいで、落ちてしまったんだ」

104: 2009/06/14(日) 18:39:57.66 ID:Ky.D1Uo0
テオ・テスカトル 「私にも詳しいことは分かりませんが……とにかく、大事に至らなくて良かった」
黒グラビモス 「(ズシン、ズシン)イャンクック様!」
クック 「! 黒グラビさん!! 良かった、毒が消えたのか!!」
黒グラビモス 「ええ。この通り動くことが出来るようになりました。夫のことも……重ねて、ご迷惑をおかけいたしました……」
クック 「そんな……頭を上げてください。あなた方には、私の家族が生きているとき、妻の産後など随分と世話になりました」
黒グラビモス 「私の方こそそんな……もう、お礼しか申し上げることができずに……」
バサルモス 「…………」
クック 「あァ、バサル君も無事だったか。良かった」

105: 2009/06/14(日) 18:40:20.34 ID:Ky.D1Uo0
バサルモス 「クックおじさん、怪我は大丈夫!? 俺……俺……(ぐすっ)」
クック 「私はほら、この通りだ。どうしたんだい?」
バサルモス 「…………」
バサルモス 「……目の前で落ちたんだ……女児が……でも、助けられなかった……」
クック 「(そういえば、あの時、女児はバサルモス君の背中に乗っていた……)」
バサルモス 「ごめんなさい……おじさん、俺……」
クック 「そんなに気に病むことはない。それに、女児は生きているのだろう? なら、問題はないさ」
バサルモス 「でも……俺、情けないよ……」
バサルモス 「何もできなかった……俺……」

106: 2009/06/14(日) 18:40:40.97 ID:Ky.D1Uo0
黒グラビモス 「(なでなで)この子、火山に迷い込んでいた女児ちゃんと、少しの間一緒にいたらしいんです。それで……」
バサルモス 「(ぐすっ……)」
クック 「一歩間違えば、だれもが惨事になりかけたことだった。何事もなく済んでよかったよ」
アカムトルム 「(ズイッ)そうよぉぉ~、泣いてばっかりいたら、折角のカワイ子ちゃんが台無しじゃない? 駄目よぉ?」
バサルモス 「!!」
クック 「アカムさん!?」
アカムトルム 「あら何? ここ、あたしの家よ」
テオ・テスカトル 「アカム殿、手間をかける」
アカムトルム 「いいのよいいのよ~、テオちゃんの頼みなら、ンもう何でも聞いちゃうっ!」

107: 2009/06/14(日) 18:41:00.60 ID:Ky.D1Uo0
バサルモス 「おじさ……お姉ちゃん」
アカムトルム 「なぁに純情ボウイ?」
バサルモス 「その……変態とか言って、ごめん……お姉ちゃん、すごく強くて……男らしかった」
アカムトルム 「ちょ、ちょっと何よ改まって。そんなこと言われると照れちゃうじゃなーぃ!」
クック 「(男らしいというのはいいのか……)」
アカムトルム 「んま、坊やも沢山食べて自分を磨けば、いずれアタシのようになれるわよーぅ」
バサルモス 「俺……お姉ちゃんみたくでっかくなれるかな?」
アカムトルム 「なれるなれる。あたしだってね、あんたくらいの時があったんだからねぃ」
バサルモス 「まじで……!?」

108: 2009/06/14(日) 18:41:17.77 ID:Ky.D1Uo0
テオ・テスカトル 「アカム殿、銀さんは?」
アカムトルム 「ん? お銀なら、一旦塔に戻ったわよ。金子を連れて来るってさ」
テオ・テスカトル 「そうか……」
クック 「どれ……(ぐぐ……)」
キリン 「! おじさま、まだ寝てなきゃ駄目よ!」
クック 「そうもしていられない。女児が、砂漠にいるというなら、迎えに行ってやらねば……」
クック 「あの子も、怖い思いをしたことだろう……」
クック 「私が、ついていてやりたいんだ……」
テオ・テスカトル 「そのことなのだが……」

109: 2009/06/14(日) 18:41:48.88 ID:Ky.D1Uo0
テオ・テスカトル 「今現在、女児という人間の子は、我が妻に連れられ、夢幻砂漠流、ディアブロス老師の元にいるらしい」
クック 「! 老師の……」
クック 「確かに、老師なら、深い怪我などを治す手立てを知っている……」
クック 「私も随分若い頃、一度だけお会いしたことがある……」
テオ・テスカトル 「しかし、飛脚便で飛んできた猫によると、どうやら今現在、砂漠は、その女児を狙う猿と蟹に囲まれてしまっているらしいのだ」
クック 「! 何だって!?」
クック 「女児は……優しい子なんだぞ!」
クック 「モンスターか、人間かなど関係はない。あの子は、相手が竜でも何でも、自分で薬を塗ってあげるような……」
クック 「そんな、優しい心を持つ子なんだ」
クック 「それを何故、殺そうとなど……!!」

110: 2009/06/14(日) 18:42:06.25 ID:Ky.D1Uo0
テオ・テスカトル 「うむ……私も、話を聞いている限りでは、排斥しようとは思わない」
テオ・テスカトル 「しかし、この混乱に対する報復を、猿、蟹族は声高に主張をしている……」
テオ・テスカトル 「ラオシャンロンは、お住まいの樹海奥から出てこず、話し合いもできぬ……」
テオ・テスカトル 「それゆえに、猿蟹族が、強行に出ようとしているのだ」
クック 「なんということだ……!!」
クック 「ラオシャンロン殿は、何をしておられるのだ!」
テオ・テスカトル 「分からぬ……しかし、妙な胸騒ぎがする」
テオ・テスカトル 「猿蟹族は、そんな最中、モンスターが人間を助けている状況を、裏切りと考えているようだ」
テオ・テスカトル 「それゆえ、夢幻砂漠流に女児の引渡しを求めているとのこと……」

111: 2009/06/14(日) 18:42:26.40 ID:Ky.D1Uo0
クック 「……くっ……」
テオ・テスカトル 「私はこれより、砂漠に向かう。我が妻が心配だ」
クック 「テオ殿。私も行きます」
テオ・テスカトル 「しかしクック殿……クチバシが割れている。完治したわけでもない。無理は禁物だ」
クック 「それでも、迎えにいきたいのです……!」
テオ・テスカトル 「……分かった」
バサルモス 「俺も行く。おじさん、俺の背中に乗ればいいよ!!」
クック 「! バサルモス君!」
バサルモス 「ママ、いいでしょ? 俺、おじさんのことを助けてくる」
黒グラビモス 「ええ。ええ、よく助けてさしあげて。イャンクック様、不肖な息子ですが、使ってやってくださいませんか?」

112: 2009/06/14(日) 18:42:45.09 ID:Ky.D1Uo0
クック 「そんな……いや、ありがたい。すまないが、助けになってくれ」
バサルモス 「はい!」
アカムトルム 「頑張ってくるのよーぅ、純情ボウイ。ことと次第によっちゃ、あなた、将来二代目カム子の座を継げるかもしれないわ。今から精進なさいな」
バサルモス 「うん!(カム子……?)」
キリン 「おじさま、私も行く。このままここで待っているなんてできないわ」
クック 「ああ、キリンちゃん、行こう」
テオ・テスカトル 「よし、では私の巣から抜けられる近道を通って……」
×××××××× 「(ドバッ)」
黒グラビモス 「!! 何かが、地面から出てきたわ!」
アカムトルム 「ちょぉぉっとぉ! 何アタシの家に穴開けてんのよぉぉ!」

113: 2009/06/14(日) 18:43:03.52 ID:Ky.D1Uo0
ダイミョウザザミ 「シェキ……シェキ……」
バサルモス 「カニだ……!!」
ダイミョウザザミ 「…………テオ・テスカトルはいるか…………?」
テオ・テスカトル 「私だ。何の用だ?」
ダイミョウザザミ 「……シェキ…………我が父より……伝言だ……」
ダイミョウザザミ 「我々、ギザミ一族は…………この行為を……人間の脅威ととって……」
ダイミョウザザミ 「その報復に……出ることにした……」
テオ・テスカトル 「……! 何だと!? 勝手な戦闘は、ラオシャンロンが禁止をしているはずだ」
ダイミョウザザミ 「シェキ……シェキ……」
ダイミョウザザミ 「その……シャンロンは……どこだ……?」

114: 2009/06/14(日) 18:43:18.28 ID:Ky.D1Uo0
テオ・テスカトル 「何……」
ダイミョウザザミ 「もう……奴は…………我々を守っては……くれない……」
テオ・テスカトル 「…………」
ダイミョウザザミ 「自分の身を自分で……守ろうとして……何が悪い……!」
ダイミョウザザミ 「攻撃は…………明朝…………」
ダイミョウザザミ 「我らの…………力と共に……人を攻撃する……」
ダイミョウザザミ 「その前に……」
ダイミョウザザミ 「貴様らが囲っている……裏切り者が囲っている……人間を…………」
ダイミョウザザミ 「血祭りにあげる…………」
クック 「!!!」

115: 2009/06/14(日) 18:43:33.77 ID:Ky.D1Uo0
ダイミョウザザミ 「以上だ…………」
テオ・テスカトル 「待て! それでは完全な、反乱宣言ではないか!!」
ダイミョウザザミ 「…………ブランゴ一族も、我らに賛同した…………」
ダイミョウザザミ 「我らはもう……止まらぬ……」
ダイミョウザザミ 「三年前のような…………中途半端な…………」
ダイミョウザザミ 「そのせいで、今のような…………」
ダイミョウザザミ 「それはもう……ごめんだ…………」
テオ・テスカトル 「ダイミョウ殿!!」
ダイミョウザザミ 「(ズボボボボ)」

116: 2009/06/14(日) 18:43:49.05 ID:Ky.D1Uo0
テオ・テスカトル 「くっ……潜って行ってしまった」
アカムトルム 「ちょぉぉっと! なぁにあれ? 不愉快極まりないわね、まったくカニってやつは!」
テオ・テスカトル 「……とにかく、早く砂漠に行かねばなるまい。アカム殿、後を頼めるか?」
アカムトルム 「それはいいけど……ちょっとあのカニの言ったこと、気になるわね」
アカムトルム 「ラオちゃんには連絡してるの? このこと」
テオ・テスカトル 「ああ。ネコは随分前に走らせている」
アカムトルム 「あたし、ちょっと後で様子見てくる」
テオ・テスカトル 「すまない。では、行くぞ、クック殿方!」
クック 「ああ……!」

117: 2009/06/14(日) 18:44:04.07 ID:Ky.D1Uo0
キリン 「女児ちゃんを頃すなんて……!! 何ということを!」
クック 「……ギザミ一族は昔からそうなんだ……!」
クック 「人間に対する憎しみが、ここまで根深いとは……!」
バサルモス 「おじさん、俺の背中に捕まって」
クック 「ああ、世話をかける……(ズッ)」
バサルモス 「よっ……と。じゃ、ママ、行ってくる。助けてくるよ。女児も……!」
黒グラビモス 「ええ。イャンクック様をよくお助けするのですよ」
黒グラビモス 「その、人間の子も……」
バサルモス 「うん!」

119: 2009/06/14(日) 18:44:30.14 ID:Ky.D1Uo0
―砂漠、秘境、奥間、深夜半―

ディアブロス 「……それで、ギザミ一族とブランゴ一族は、この洞窟の入り口を囲んでいるわけか」
ディアブロス亜種 「はい。奴らの要求は、女児の引き渡しと、可能ならば、人間に対する攻撃への参加ですね。どうにも言葉が野蛮でよく分かりません」
女児 「………………」
ディアブロス 「ラオシャンロンが動けぬこの時期を見計らい、人間に対して報復をするつもりか……愚かなことを……」
ドスガレオス 「何かえらいことになってますねぇ……でも、ずっと監視されてるのも癪だな。俺、外に行って蹴散らしてきましょうか?」
ティガ兄 「同感だな。カニや猿がなんぼのもんだっつぅんだよ。ラージャンもいるんだろ? 叩き頃してやるぜ!」
ドスガレオス 「お、兄さん、話が分かるね」
ティガ兄 「てめーもな! ドス家の連中はどいつもこいつも軟弱野郎とばっかし思ってたが、なるほど良さそうなのもいるじゃねぇか」
ナナ・テスカトリ 「……なりません」

120: 2009/06/14(日) 18:44:49.97 ID:Ky.D1Uo0
ティガ兄 「先生、でもよ……」
ナナ・テスカトリ 「絶対になりません。私の目の届くところで、もう一度ラージャン君や、他の方に暴力を振るうなど……」
ナナ・テスカトリ 「ティガレックス兄君、それを、私が許すとでも思いますか?」
ティガ兄 「…………ッ……いや……それは……」
ナナ・テスカトリ 「ことに及んで、叩き頃すなど……わたくしは、そのようにあなたを教育したつもりはありませんよ」
ティガ兄 「だぁぁーッ、もう何で俺怒られてんの!? 助けに来たのに!」
ナナ・テスカトリ 「物事には順序というものがあるでしょう。まずは話し合いを……」
ティガ兄 「先生、ラージャンに話し合いなんて通じないって! 分かってるでしょ!?」

121: 2009/06/14(日) 18:45:03.27 ID:Ky.D1Uo0
ティガ兄 「あいつ、先生を呼び出して襲うような、野蛮な下衆野郎だぜ?」
ティガ兄 「それに、ウチの妹分達も、あん時、随分痛めつけられてんだ。これで二回目だぜ!?」
ティガ兄 「話し合いなんて、もうできるわけがねぇ!」
ナナ・テスカトリ 「それでもです」
ティガ兄 「!!」
ナナ・テスカトリ 「それでも、戦ってしまったら、どちらかが折れない限り、もう後には引けないのです」
ナナ・テスカトリ 「何と言おうと、あなたも、ラージャン君も、私の生徒です」
ナナ・テスカトリ 「生徒同士が頃し合いなど、断固として許すことはできません」

122: 2009/06/14(日) 18:45:22.21 ID:Ky.D1Uo0
ディアブロス 「…………」
ディアブロス亜種 「いかがいたしましょう、主。随分な数を集めているようですが……」
ディアブロス亜種 「それに、何か、嫌な臭いも感じまして……」
ディアブロス 「嫌な臭いとな……?」
ディアブロス亜種 「はい。腐ったような、生臭い磯の臭いでございます」
ディアブロス 「まさか……シェンか……」
ディアブロス亜種 「…………」
ディアブロス 「あ奴は殻を破壊され、地中に封じられているが……ラオの力も弱まっている。出てきたのか……」

123: 2009/06/14(日) 18:45:37.74 ID:Ky.D1Uo0
ディアブロス亜種 「して、主……」
ディアブロス 「うむ……」
女児 「あの…………」
ディアブロス 「何だ?」
女児 「わたしのせいで、みなさんめいわくなら……」
女児 「わたし、出ていきます」
ディアブロス 「…………」
女児 「目、みえなくなっちゃったけど……」
女児 「けがなおしてくれて、ありがとうございました……」
ティガ兄 「…………」
ディアブロス 「引き渡しなどせぬ」
女児 「!!」
ディアブロス 「たわけが。命を与え、そしてまた奪うなど愚の骨頂。奪うくらいならば与えぬ。それはわしに対する愚弄である」

124: 2009/06/14(日) 18:45:54.77 ID:Ky.D1Uo0
ティガ兄 「…………」
ディアブロス亜種 「かしこまりました。そのように伝えてまいります」
ディアブロス 「待て、わしもゆこう」
ナナ・テスカトリ 「老師、わたくしも参ります」
ディアブロス 「良かろう。ゆくぞ、黒ディア、ナナよ」
ディアブロス亜種 「はっ」
ナナ・テスカトリ 「はい!」
女児 「おじいさん……」
ディアブロス 「(ドス、ドス)人間の娘よ」

125: 2009/06/14(日) 18:46:08.04 ID:Ky.D1Uo0
女児 「何……ですか?」
ディアブロス 「わしもほとんど、目が見えぬ」
女児 「!!」
ディアブロス 「しかしわしには、お前の顔が見える」
女児 「…………」
ディアブロス 「見るということは、ただ、目に映る現実を知覚することではない……」
ディアブロス 「聞き、肌で感じ、想い、そして脳の、心の中でそれを受け止め、想像すること……」
ディアブロス 「それが、見るということだ……」
ディアブロス 「よいか……」

126: 2009/06/14(日) 18:46:24.70 ID:Ky.D1Uo0
ディアブロス 「お前の目が、見えずとも、全て世界は流れ続ける……」
ディアブロス 「お前の目に光が映らずとも、太陽は昇り、また落ちる……」
ディアブロス 「お前が氏のうが、世界はそのままよ……」
ディアブロス 「想像せよ……」
ディアブロス 「心で願え……」
ディアブロス 「そのまま、あり続けるであろう世界を想像するのだ」
ディアブロス 「思い描くのだ、場面を……」
ディアブロス 「それが、見るということだ……」

127: 2009/06/14(日) 18:46:38.84 ID:Ky.D1Uo0
ディアブロス 「………………(ドス、ドス)」
ディアブロス亜種 「(ドス、ドス)」
ナナ・テスカトリ 「すぐ戻ります。みなさん、ここにいてください(ドス、ドス)」
女児 「…………」
ティガ兄 「…………」
ドスガレオス 「……はぁ、やっぱしいつも、老師の話は難しくてよく分からないや」
ティガ兄 「……あぁー眠っ。つか、お前マジで何も見えねーの?」
女児 「…………うん」
ティガ兄 「ぎゃはっ、いいことじゃね? もう俺の顔見てビビるこたーねぇ!」
女児 「…………」
ドスガレオス 「滋養水が強すぎたんだな……時間を置けば、治るかもしれないから、ま、気にせず過ごせばいいと思うよ」
ティガ兄 「軽いなァ兄弟」
ドスガレオス 「俺のウリはこの軽さなもんで」

128: 2009/06/14(日) 18:46:55.85 ID:Ky.D1Uo0
ヴォルガノス 「……(ズシン、ズシン)」
ドスガレオス 「誰か起きてきやしたぜ」
ティガ兄 「あァ? ヴォルの野郎じゃねぇか!」
ヴォルガノス 「お前は……ティガか。来ていたのか。兄と弟、どっちだィ」
ティガ兄 「兄だ! 見りゃ分かンだろ!」
ヴォルガノス 「首が痛む……あっし、気を失っていたんですかね……」
ドスガレオス 「………………」

129: 2009/06/14(日) 18:47:08.65 ID:Ky.D1Uo0
ドスガレオス 「………………てな訳で。ちょっと面倒なことになってるんです」
ヴォルガノス 「…………なるほど、じゃあ、今は、先生は師匠たちと一緒に、話し合いに出てるってとこかい」
ティガ兄 「ここにいろってさ。ラージャンもいるってのに……」
ヴォルガノス 「……あっしを闇討ちしたのも、奴だった。前に戦った時より、雷の力が増幅しやがってましてねェ……」
ティガ兄 「へっ。ざまぁねぇぜ」
ヴォルガノス 「つっても弟サンもやられてんでしょ? クシャル姉妹も見えたが……」
ティガ兄 「…………」

130: 2009/06/14(日) 18:47:29.81 ID:Ky.D1Uo0
ティガ兄 「……確かに、あいつの力ァかなり異常だ。普通のモンスターが出せるパワーを、遥かに超えてやがる」
ヴォルガノス 「…………」
ティガ兄 「単純な戦闘力なら、校長といい勝負だぜ」
ヴォルガノス 「……猿蟹なんざぁ相手にしても、キリがねぇ。得もねぇ。先生の仰ることは的を射てまっせ」
ティガ兄 「ンだとォ!? てめぇ、ラージャンの野郎をあのまま好きにさせといていいってでもいうつもりか!?」
ヴォルガノス 「あっしがクック氏から頼まれたのは、そこな童を探し出すってことだけなんで。それ以外は、今んとこ関係のないことでして」
女児 「…………」
ティガ兄 「チッ。腰抜け野郎が」

131: 2009/06/14(日) 18:47:51.45 ID:Ky.D1Uo0
ヴォルガノス 「何でも、目ェ見えんくなったとか」
女児 「うん……でも、わたしをたすけてくれてありがとう」
ヴォルガノス 「礼には及ばねぇ。もともとあっしには何ら関係がねぇことでござんす」
女児 「それでも……ありがとう」
ヴォルガノス 「むしろ、あの熱気の中、ナズチの皮を被ってたとはいえ、それだけで済んだのが驚きでさァ」
女児 「…………」
ヴォルガノス 「感謝なら、自分の悪運の良さにするんですな。氏んでた方が幸せってことも、世の中にぁよくありまさ」
ティガ兄 「あァ? てめ、何が言いてぇ?」

132: 2009/06/14(日) 18:48:06.15 ID:Ky.D1Uo0
ヴォルガノス 「特に言いたいことってァねぇが、師匠が外に出てるってなら、あっしもいかにゃぁならんと思ってな」
ティガ兄 「先生がここにいろっつったんだぜ? てめぇ、先生の言うことが聞けねぇってのか」
ヴォルガノス 「それはアンタらに向かって言ったんじゃなかろうかね。あっしにじゃねぇ(ドスドス)」
ティガ兄 「屁理屈言いやがって……てめぇが行くなら俺も行くぜ」
ヴォルガノス 「先生の言うことァ聞けねぇってかい」
ティガ兄 「それとこれたぁ話が別だ。抜け駆けは許さねェ。野郎をブチ頃すのは俺だ」
ヴォルガノス 「…………」

133: 2009/06/14(日) 18:48:31.00 ID:Ky.D1Uo0
ティガ兄 「おい、ドスガレ公」
ドスガレオス 「へ? はい、何です?」
ティガ兄 「この小娘、砂漠から連れ出せ。ここ、抜け穴とかあんだろ?」
ドスガレオス 「ぇぇ!? 俺だけ負けクジ? そりゃないですぜ兄さん」
ヴォルガノス 「目上のいうことは黙って聞け、バカ者が」
ドスガレオス 「うぅ……さっきまで気絶してたくせに……」
ヴォルガノス 「何か言ったか?」
ドスガレオス 「何も」
女児 「…………」
ティガ兄 「てな訳だ。俺らも加勢に向かうぜ。てめーはとっととおっさんのところに帰るんだな」

134: 2009/06/14(日) 18:48:54.23 ID:Ky.D1Uo0
女児 「帰る……私が? おじさんのところに……」
ティガ兄 「目の前でうろちょろされると、気になって仕方ねぇ。とっとと森の奥にでも引っ込んで老衰で氏ね!」
女児 「…………」
ティガ兄 「よし、行くぜ。ドスガレ公、火山の方に行ってみろ」
ドスガレオス 「合点しましたッス。兄さん方、まぁせいぜい気をつけて」
ヴォルガノス 「言われるまでもない」
ドスガレオス 「そいじゃ、お前さんはこっちにきなされよ」
女児 「う、うん……(ふらふら)」
ドスガレオス 「土ン中通らなきゃいけないからなァ……口の中に入っててくんない?」
女児 「え? いいの……?」
ドスガレオス 「俺、頬袋あるからそこに入ってりゃいいよ」
女児 「あ……ほんとだ……入れそう……」

135: 2009/06/14(日) 18:49:10.23 ID:Ky.D1Uo0
―秘境、入り口―

ティガ兄 「ラーの野郎は、前から気に食わなかった……」
ヴォルガノス 「…………」
ティガ兄 「あの時……先生を呼び出して、火山で襲ったとき、熔岩に突き落としときゃぁ良かったんだ」
ヴォルガノス 「ラージャンは普通じゃねぇって話ィ、聞いたことありやしてな……」
ティガ兄 「……」
ヴォルガノス 「ありゃ、ドドブラと砂ブラの子供ぅつう話だが……」
ティガ兄 「砂ブラ? まさか! 雪山と砂漠のモンスターじゃ、そもそも種族が違うだろ」
ヴォルガノス 「それでも突然変異で産まれることがあるってな。そんな話でさ」
ティガ兄 「第一砂ブラなんて、俺だって話に聞いただけで……本当にいるかどうかも……」
ヴォルガノス 「まぁ、そういったわけで、あいつはモンスターでありながら、モンスターを越えた力を持ってるんでさ」

136: 2009/06/14(日) 18:49:21.64 ID:Ky.D1Uo0
ティガ兄 「ちぃっ。胸クソ悪ィ」
ヴォルガノス 「学生の頃からおかしいたぁ思ってたが、どうにも、興奮すると人格が変わったようになるとか」
ティガ兄 「……確かに。金色になると、妙に滑舌良くなるな……」
ヴォルガノス 「先生は平和主義者だが、敵になるってんなら、早めに叩いとくに越したこたぁねぇって訳で」
ティガ兄 「…………同感だ。ン? 先生達だ」
ヴォルガノス 「ドドとギザミもいやすぜ」
ティガ兄 「くそが……イラつく面ァしてやがる」

137: 2009/06/14(日) 18:49:34.95 ID:Ky.D1Uo0
ドドブランゴ 「……では、人間の引渡しもせず、攻撃にも参加しないと、そう言うのか」
ディアブロス 「くどい。我らにはせんなきこと。おぬしらの意見も聞く余地などはない」
ショウグンギザミ 「…………キシェッ……おいぼれが…………話にならん…………」
ディアブロス亜種 「(ぐるるるる)」
ナナ・テスカトリ 「ドド様、何故ですか。人間達との争いは、ラオシャンロン様が……」
ドドブランゴ 「黙れ、愚女が」
ナナ・テスカトリ 「……!!」
ドドブランゴ 「……このたびの攻撃で、まだ分からないか。人間は、我らの住処を奪うことなど、なんとも思っておらぬ」
ナナ・テスカトリ 「ですが……」
ドドブランゴ 「ですが、何だ? 貴様には癒せるのか? 住処を、仲間を失った者の苦しみ悲しみ全てを……」
ナナ・テスカトリ 「…………」
ドドブランゴ 「だから我らは、報復をするのだ……人間達に、我らの恐怖を与えるのだ……」

138: 2009/06/14(日) 18:49:49.89 ID:Ky.D1Uo0
ドドブランゴ 「その何が悪い……砂漠の長よ、答えよ!」
ディアブロス 「笑止」
ドドブランゴ 「何!?」
ディアブロス 「雪山の長よ、悲しみだ、苦しみだとのたまうが……なら、それはお主らだけで勝手に取り組めばよいこと」
ドドブランゴ 「……!!」
ディアブロス 「我々は、知ったことではない」
ドドブランゴ 「…………モンスターの身でありながら、モンスターを支持せぬと申すか……」
ディアブロス 「同じことよ。知ったことではないというだけの話……」

139: 2009/06/14(日) 18:50:03.60 ID:Ky.D1Uo0
ドドブランゴ 「……これ以上話しても無駄なようだな……」
ディアブロス 「…………」
ドドブランゴ 「我らの攻撃は、明朝予定通りに行う……しかし、その前に……」
ドドブランゴ 「貴様らが保護している人間を差し出せ……」
ドドブランゴ 「……差し出せぬというのならば、貴様らも人間と同じよ……」
ドドブランゴ 「奴らに組するものとして、実力行使に移らせてもらう…………」
ディアブロス 「…………」

140: 2009/06/14(日) 18:50:22.23 ID:Ky.D1Uo0
ディアブロス 「話はそれだけか……」
ドドブランゴ 「…………」
ディアブロス 「……沢山の蟹と猿をはべらせよく言う……」
ディアブロス 「やるなら来んか……男らしくないぞ、雪山の主……」
ドドブランゴ 「! 貴様……」
ドドブランゴ 「……わしを愚弄するか…………!」
ディアブロス 「………………そちらの愚息に、我が弟子が少し世話になってな……」
ディアブロス 「何、来るというのならば、拒む理由もないというもの……」

141: 2009/06/14(日) 18:50:37.96 ID:Ky.D1Uo0
ナナ・テスカトリ 「(駄目だわ……話を聞いてくださるような状況では……)」
ナナ・テスカトリ 「(……ラージャン君の姿が見えない……)」
ナナ・テスカトリ 「(せめてあの子だけでも、この不毛な争いから……)」
ナナ・テスカトリ 「……!!」
ナナ・テスカトリ 「(何? 地面が揺れてる……!!)」
ナナ・テスカトリ 「(地震!? こんな、砂漠の真ん中で……)」
ティガ兄 「! 先生危ねぇ!(バッ!!)」
ナナ・テスカトリ 「きゃぁ!(ズザァァッ)」
ヴォルガノス 「師匠!!」
ディアブロス 「!!(バッ)」
ディアブロス亜種 「……!(バッ)」

142: 2009/06/14(日) 18:50:49.84 ID:Ky.D1Uo0
>ズゥゥゥゥン
ナナ・テスカトリ 「(な……何かが、私たちのいた場所に……突き刺さった……!!)」
ナナ・テスカトリ 「(ティガ兄君が、私を抱えて飛び退ってくれなかったら……)」
ナナ・テスカトリ 「(あ……あの……)」
ナナ・テスカトリ 「(あの巨大な足は……もしかして……)」
ナナ・テスカトリ 「(シェンガオレンの……!!!!)」

143: 2009/06/14(日) 18:51:05.24 ID:Ky.D1Uo0
ディアブロス 「(ズザッ)」
ディアブロス亜種 「主、お下がりください」
シェンガオレン 「(ズズズズズズ)」
ディアブロス亜種 「…………地中を移動してきたか、ヤド無しカニが……!」
ディアブロス 「今更、ヤドを壊され、気が触れた男の封印を解いて、どうするというのだ……?」
シェンガオレン 「キシェ…………シャァァ!!」
ティガ兄 「な……何て大きさだ……」
ヴォルガノス 「それに、目の色が完璧おかしい……ったく、面倒なことに……」

144: 2009/06/14(日) 18:51:20.93 ID:Ky.D1Uo0
シェンガオレン 「痛ェェエエェ……痛ぇぇぇええぇヨォォォ」
ショウグンギザミ 「父上…………もうじき……痛みは晴れます…………人間に恨みを晴らし…………」
ショウグンギザミ 「そして……ラオシャンロンの頭を、新たなヤドとすれば…………」
ナナ・テスカトリ 「! 何ということを!! あなた方、ご自分の仰っていることが……」
シェンガオレン 「痛ぇぇぇえよぉぉぉぉ!!(ブゥン)」
ティガ兄 「先生、早く逃げろ!(ドン!)」
ナナ・テスカトリ 「きゃ……ティガ兄君!!」
ティガ兄 「(ドズッ)ガッ………………!!!」
ティガ兄 「…………(ズゥゥゥン)」

145: 2009/06/14(日) 18:51:34.66 ID:Ky.D1Uo0
ナナ・テスカトリ 「そ……そんな! そんないきなり!!」
シェンガオレン 「ブェァァァァアァ(バシャァァァ!!)」
ディアブロス亜種 「くっ……溶解液を……! これでは近づけない……!!」
ディアブロス亜種 「奴め……本気で、人間に組するモンスターごと、人を叩くつもりか……!!」
ディアブロス 「…………」
シェンガオレン 「キャラァァ!!(ブゥゥゥン)」
ディアブロス 「(スッ)…………(ガキィィィンッ)」
ドドブランゴ 「!!」
ディアブロス 「…………えげつがない……だらしもない……一度負けた負けカニが、今更何をほざく……」
シェンガオレン 「痛ェェえええ! 背中が痛ぇぇよぉぉぉ!(ブゥゥゥン)」
ディアブロス亜種 「……(ガキィィィン!)」
ナナ・テスカトリ 「(あの大きな足を、跳ね返した……!!)」
シェンガオレン 「キシャァァア!!」

146: 2009/06/14(日) 18:51:47.89 ID:Ky.D1Uo0
ディアブロス 「大方……ラオの監視の目が緩んだのを見て連れ出したようだが……ヤドのないカニは、所詮カニよ……」
ショウグンギザミ 「我が父を……愚弄するか…………!!!」
シェンガオレン 「シャァァ! シャァァ!!(ブン! ブン!)」
ディアブロス 「(ガキィィン! ガキィィィン!) ……ッ!」
ディアブロス亜種 「主!」
ドドブランゴ 「ふん……老体でよくやる……しかし……」
ラージャン 「………………(スッ)」
ナナ・テスカトリ 「!!」
ドドブランゴ 「行け」
ラージャン 「……(シュッ)」

147: 2009/06/14(日) 18:52:00.77 ID:Ky.D1Uo0
ディアブロス 「(ガキィィン)……!!」
ラージャン 「(ヒュッ)…………(バチバチ)」
ナナ・テスカトリ 「いけない! 駄目、ラージャン君!!」
ラージャン 「……!(ピクッ)」
ディアブロス亜種 「主!(ドドドッ)」
ラージャン 「(ブワッ)」
ディアブロス 「な……(早い……)」
ディアブロス 「(それに気の量が……爆発的に……)」
ヴォルガノス 「師匠!!(ラージャンが、金色に……)」

148: 2009/06/14(日) 18:52:15.76 ID:Ky.D1Uo0
ラージャン 「ギャォォォォ!!(バチバチバチバチバチ)」
ディアブロス 「ガァァァ!」
ディアブロス亜種 「グ……アァァ!!!」
ディアブロス 「…………(ズゥゥン)」
ディアブロス亜種 「………………(ズゥゥン)」
ラージャン 「はぁ…………はぁ…………はぁ…………」
ヴォルガノス 「(な……何てこった……)」
ヴォルガノス 「(師匠とバトラーに、雷が落ちた…………)」
ラージャン 「はぁ……はぁ……(ガクッ)」

149: 2009/06/14(日) 18:52:28.75 ID:Ky.D1Uo0
ヴォルガノス 「……ッ! しまった! シェンが……!!」
シェンガオレン 「ギャハハハハ! 痛ぇぇぇよぉぉぉぉ!!(ブゥゥゥゥン)」
ナナ・テスカトリ 「!!」
>ドズゥゥゥゥン
ヴォルガノス 「ぐぁぁぁ!!」
ナナ・テスカトリ 「きゃぁぁあああ!!」
ヴォルガノス 「………………(ズゥゥゥン)」
ナナ・テスカトリ 「………………(ズゥゥゥン)」

150: 2009/06/14(日) 18:52:42.68 ID:Ky.D1Uo0
シェンガオレン 「ケヒュ…………ケヒュ…………」
ショウグンギザミ 「……もうじき……もうじき新しいヤドが手に入ります……父上……」
ドドブランゴ 「………………戻れ、ラーよ」
ラージャン 「…………(シュバッ)」
ドドブランゴ 「…………」
ディアブロス 「………………」
ドドブランゴ 「よし、者ども……ディアブロスの巣を漁れ……」
ブランゴ達 「キキィ!!」
ラージャン 「はぁ…………はぁ………………」
ラージャン 「せ…………先生…………」
ナナ・テスカトリ 「………………」

151: 2009/06/14(日) 18:52:56.61 ID:Ky.D1Uo0
―砂漠、火山近く―

ドスガレオス 「(ブハァ!)……ッ、やっと抜けた!!」
ドスガレオス 「(しかし、途中で何か地震みたいな音を聞いたが……)」
ドスガレオス 「(また、火山が崩れたのかね……)」
女児 「はぁ……はぁ……」
ドスガレオス 「おっと、まだ氏んでないみたいだな」
女児 「うん……ありがとう……」
ドスガレオス 「ここからは、砂を泳ぐから、俺の背中に登って、ヒレを掴んでな」
女児 「わかった……(よじよじ)」

152: 2009/06/14(日) 18:53:13.02 ID:Ky.D1Uo0
ドスガレオス 「ん~~~~、綺麗な星空だ!」
女児 「…………」
ドスガレオス 「……(そういや、目が見えなくなってたんだっけか)」
ドスガレオス 「(人間も、俺らと同じように……)」
ドスガレオス 「(心細くなったりすんのかね)」
ドスガレオス 「? あれは……」
ドスガレオス 「!! テオの旦那に……バサルっち!」
女児 「……バサル君?」
ドスガレオス 「おーい! 何してんですかい~~!!」

153: 2009/06/14(日) 18:53:35.12 ID:Ky.D1Uo0
テオ・テスカトル 「ドスガレオス君ではないか!(ズザザザザッ)」
ドスガレオス 「おっす旦那。こんばんはです。奥さん探しっすか?」
テオ・テスカトル 「その通りだ。そういう君は……」
女児 「…………」
テオ・テスカトル 「そうか……この子を先に連れ出したのだな」
女児 「こ……こんばんは…………」
テオ・テスカトル 「……?」
テオ・テスカトル 「(目の焦点が合っていない……)」
テオ・テスカトル 「(見えていないのか……?)」

154: 2009/06/14(日) 18:53:46.89 ID:Ky.D1Uo0
バサルモス 「あぁぁ!! 女児!! 良かった!!」
女児 「その声は、バサル君!」
ドスガレオス 「バサルっち、久しぶりだなー!!」
バサルモス 「ドスガレ!? 何でこんなとこにいるの!?」
クック 「女児!? 女児じゃないか!!(バサァッ)」
キリン 「女児ちゃん!?」

155: 2009/06/14(日) 18:53:58.59 ID:Ky.D1Uo0
女児 「(あれ……)」
女児 「(おじさんと、お姉ちゃんの声が聞こえる……)」
女児 「(見えないよ……何も、見えないよ……)」
女児 「(聞き違い……?)」
クック 「女児!!」
女児 「(おじさんの声……)」
女児 「(おじさんの羽のにおい……)」
女児 「(見えない……見えないけど……)」

156: 2009/06/14(日) 18:54:12.62 ID:Ky.D1Uo0
女児 「(おじさんが、そこにいるの……?)」
女児 「(おねえちゃんも……)」
女児 「(おじいちゃん……わたし……)」
女児 「(想像してもいいの……?)」
女児 「(むかえに……)」
女児 「(わたしを、むかえに…………)」
クック 「女児! 探したぞ!!(バサァ!!)」
キリン 「女児ちゃん、良かった……心配したのよ……」
女児 「おじさん……おねえちゃん……?」

157: 2009/06/14(日) 18:54:31.16 ID:Ky.D1Uo0
クック 「女児、どうした? 私だ。クックだ!」
女児 「おじさん…………(ふらふら)」
女児 「…………ッ(ゆらっ)」
クック 「あ……ッ!!(がしっ)」
女児 「……!!」
女児 「これ…………おじさんの羽だぁ…………」
女児 「………………」
女児 「おじさん!!」

第7章に続きます

158: 2009/06/14(日) 18:57:20.62 ID:Fwdqozoo
乙!!

161: 2009/06/14(日) 19:07:16.00 ID:f.FIxyco
乙!
最後の「おじさんの羽だぁ……」の部分でガチ泣きしてしまった
最近暑くなってきたから、体調管理に気を付けてな!

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no title
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引用: イャンクック 「旧沼地で人間を拾ったんだが」 2