751:◆58jPV91aG. 2009/08/07(金) 15:35:12.41 ID:7KHfNew0

752: 2009/08/07(金) 15:36:07.54 ID:7KHfNew0
7.少女 「声が、聞こえない」

―十数年前、モガの森―

スラッシュアックス 「……父さん、母さん……」
ハンターA 「怪我人はこっちに運べ! 傷の重い者から奥に入るんだ!!」
ハンターB 「畜生! モンスターどもめ! 奴ら徒党を組むことを覚えやがった!」
ハンターC 「水没林に行った奴らもやられた! これ以上は危険だ!!」
村長 「いたし方あるまい……全員撤退じゃ」
ハンターD 「村長!!」
村長 「元々森の奥は未開の土地……わしらはそこに、あえて手を出さないことで今まで生きてきた……」
村長 「その均衡は破ってはいけないものだったのじゃ……」
村長 「モンスターにはモンスターの領域、わしらにはわしらの領域がある」
村長 「このままでは、働き手が全員やられ、村が滅んでしまう」
村長 「全員村まで戻るように伝えるんじゃ」
モンハン イャンクック ペン画 原画
753: 2009/08/07(金) 15:37:54.23 ID:7KHfNew0
スラッシュアックス 「………………」
スラッシュアックス 「(戻る……? 戻るだって?)」
スラッシュアックス 「何でだ!? 何でみんな戻って来いなんて言うんだよ、爺ちゃん!!」
村長 「…………」
スラッシュアックス 「父さんと……母さんがやられたんだぞ!」
スラッシュアックス 「俺は行く!(ガシャコン)」
村長 「いかん……!! スラッシュアックス、もう森の奥には手を出すな……!!」
スラッシュアックス 「俺の家族をやったモンスターが……」
スラッシュアックス 「『モンスター』が……この森の奥にいる!」
スラッシュアックス 「のうのうと生きている!!!!」
スラッシュアックス 「なのに何故止めるんだよ!!」

754: 2009/08/07(金) 15:38:47.42 ID:7KHfNew0
村長 「……村を、守るためじゃ……」
村長 「そのときの怒りで行動していては、大事なものを見失ってしまいかねない」
村長 「お前の父と母は、何を守るために戦った?」
村長 「わしらと……お前をだ……!!」
スラッシュアックス 「!!!!」
村長 「そのお前がむざむざ氏にに行くというのか!!」
村長 「恥を知れィ!!」
スラッシュアックス 「…………(ギリ……)」
スラッシュアックス 「…………その程度の恥なら、いくらでも背負ってやる……!!」
村長 「スラッシュアックス!!」
スラッシュアックス 「俺は行く! まだ勇気のある者はついて来い!!」
スラッシュアックス 「モンスターにやられない、強い心を持つ者は、次期族長の俺について来い!!」
スラッシュアックス 「父さんと母さんをやったモンスターはどこだ!?」

755: 2009/08/07(金) 15:39:43.51 ID:7KHfNew0
村長 「いかん! 皆スラッシュアックスを止めるんじゃ!!」
スラッシュアックス 「やかましいィ! 腰抜けは黙っていろ!!」
村長 「!!!」
スラッシュアックス 「どこだ!? その、金色の牙の白い獣と……」
スラッシュアックス 「赤い目の黒い獣は!!!(ガシッ)」
ハンターD 「お……落ち着いてくれ、スラッシュアックス」
ハンターD 「その二匹なら、手傷を負って凍土の方に……」
スラッシュアックス 「凍土か……!!!(バッ)」
ハンターD 「お……おい待て!!」
村長 「…………」
村長 「(父と母に続き、スラッシュアックスまでも……)」
村長 「スラッシュアックス! 待て!!」
スラッシュアックス 「父さんの武器……くっ……重い……(ずるずる)」
スラッシュアックス 「(手傷を負わせたと聞いた……まだ遠くには行っていないはずだ……)」
スラッシュアックス 「(今追いかければ、先回りできる……!!!)」
スラッシュアックス 「頃す…………頃してやる!!」
スラッシュアックス 「今、頃しに行ってやるぞ……『モンスター』め!!!!」

756: 2009/08/07(金) 15:41:31.33 ID:7KHfNew0
―凍土―

ベリオロス 「しっかりしろ、もうじき水没林まで抜ける。そこまで頑張るんだ」
ナルガクルガ剛種 「はぁ……はぁ……」
ナルガクルガ剛種 「あなた……この子を……」
子ナルガクルガ 「………………」
ベリオロス 「諦めるんだ……!!」
ナルガクルガ剛種 「!!!」
ベリオロス 「人間の攻撃で、もうその子は事切れている……」
ベリオロス 「ここに埋めていこう。今は一刻も早く、ベルキュロス様たちの所に行かねばならん」
ナルガクルガ剛種 「まだ……まだ生きているわ!」
ナルガクルガ剛種 「まだこの子は生きている!!」
ナルガクルガ剛種 「私達の子供よ……やっと出来た子よ……」
ナルガクルガ剛種 「捨てていくなんて出来るわけがないじゃない!!!」
ベリオロス 「落ち着け、傷に触る……」
ナルガクルガ剛種 「私は……ゲホッ! ゲホッ!!」
ベリオロス 「……人間に打たれた傷が深い……」
ベリオロス 「このままでは本当に氏んでしまう」

757: 2009/08/07(金) 15:42:23.01 ID:7KHfNew0
ベリオロス 「………………分かった。その子は私が抱える」
ベリオロス 「お前は、私の前を歩きなさい」
ナルガクルガ剛種 「はぁ……はぁ……(ドクドク)」
ベリオロス 「早く!」
ナルガクルガ剛種 「あなた……絶対よ……」
ナルガクルガ剛種 「絶対に、この子と……」
ナルガクルガ剛種 「この子と、三人で暮らすのよ……」
ナルガクルガ剛種 「約束よ……」
ベリオロス 「(この深手では……もう…………!!)」
ベリオロス 「………………」
ベリオロス 「……ああ、約束だ!!」
子ナルガクルガ 「………………」
ベリオロス 「やはり私に掴まって歩きなさい。いつ人間の追っ手が来るか分からない(ぐいっ)」
ナルガクルガ剛種 「はぁ……はぁ……」

758: 2009/08/07(金) 15:44:49.64 ID:7KHfNew0
スラッシュアックス 「………………見つけた………………」
スラッシュアックス 「金色の牙に、白いモンスター……それに……」
スラッシュアックス 「黒い毛に、赤い目のモンスター……!!」
スラッシュアックス 「父さんと母さんの仇……!!!」
スラッシュアックス 「『モンスター』……ッッ!!!!」
ベリオロス 「!!!!(人の臭い!!)」
ベリオロス 「(くっ……ここは身を隠す場所が無い……!!)」
スラッシュアックス 「(ガタガタガタ)ま……待て!!!」
ベリオロス 「!! (背後から!!!)」
ナルガクルガ剛種 「………………!?」
ベリオロス 「(何だ……小さな人間が一人……)」
ベリオロス 「(巨大な武器を背負っているが……他に人の気配は無い……)」
ベリオロス 「(軽装だ……寒さか、恐怖か。震えている……)」
ベリオロス 「(人間……)」
ベリオロス 「(私の子……………………!!!!)」
子ナルガクルガ 「……………………」
ベリオロス 「(私の子の、命を奪った人間……!!!)」
ベリオロス 「グルルルルルルルルルッ!!!!!」

759: 2009/08/07(金) 15:46:17.52 ID:7KHfNew0
ナルガクルガ剛種 「あなた……」
ベリオロス 「三十秒で終わらせる。待っていなさい…………」
ベリオロス 「グルルルル……(ザッザッ)」
スラッシュアックス 「のうのうと……」
スラッシュアックス 「父さんと母さんを頃して、のうのうと自分達は逃げるつもりか……!!!」
スラッシュアックス 「くそっ……!! くそっ……!! 震えるな! 俺の脚!!!」
スラッシュアックス 「震えるな!!! (ガンッガンッ!!)」
ベリオロス 「(ふん……恐怖でおかしくなったか?)」
ベリオロス 「(自分の武器で自分の足を殴っている)」
スラッシュアックス 「うぅぉぉぉぉぉおおお!!!!」
スラッシュアックス 「(ガシャコン)がぁあぁぁああ!!(ダダダダダダッ)」
ベリオロス 「!!!!!!!?」
ナルガクルガ剛種 「あなた……!!」
ベリオロス 「(何だ!? 無茶苦茶に武器を振り回しながら突撃してくる!!)」
ベリオロス 「(下がれば、剛種に攻撃が……)」
ベリオロス 「(かえって危険だ! 受けるしかない……!!!)」

760: 2009/08/07(金) 15:47:16.53 ID:7KHfNew0
ベリオロス 「(ガギィィィィン!!)ッ!!」
スラッシュアックス 「うぉぉぉぉ!!!! (ブンッ! ブンッ!!)」
ベリオロス 「(ギィィン! ガギィィンッ!!)……くっ……」
ベリオロス 「(私も人間に数箇所撃たれている……)」
ベリオロス 「(体の自由が効かん!!)」
ベリオロス 「(それにこの人間の餓鬼……太刀筋は滅茶苦茶だが、威力がある!!)」
スラッシュアックス 「(いける……! 俺でもやれる!!!)」
スラッシュアックス 「(ピンッ)食らえ……!! 打ち上げ樽爆弾Gだ!!」
ベリオロス 「(ドドドドドドッ)……っ……ぐぅぅぅ!!!」
スラッシュアックス 「(何て硬い皮膚だ!! だが……!!)」
ベリオロス 「ギャォォォォォォ!!!」
スラッシュアックス 「今だ! 閃光玉……!!!」
 >パシャァァァアッ!!
ベリオロス 「!!! ガッ……目……目が……!!!」

761: 2009/08/07(金) 15:48:20.17 ID:7KHfNew0
スラッシュアックス 「いかに貴様ら強力なモンスターと言えど……」
スラッシュアックス 「頭をやられて生きてはいけまい!!(ガシャコン)」
スラッシュアックス 「もらった!! その首切り落として、我が父母の墓前に捧げてくれる!!!!」
ナルガクルガ剛種 「あなたぁぁぁ!!!!」
ナルガクルガ剛種 「(バッ)」
スラッシュアックス 「つぉらああああ!!(ブゥンッ)」
ナルガクルガ剛種 「(ザンッッ!!)か………………」
ベリオロス 「!!!!!!!?」
ベリオロス 「剛種!!!!」
ナルガクルガ剛種 「あ……(ぐらり)」
ナルガクルガ剛種 「あなた…………」
ナルガクルガ剛種 「(ズゥゥゥゥンッ!!)」
子ナルガクルガ 「……………………」
ナルガクルガ剛種 「(ズルズル……)」
子ナルガクルガ 「(ヒュゥゥゥゥゥ………………)」
ナルガクルガ剛種 「坊やぁぁぁあああ!!!」
ベリオロス 「(子ナルガが、凍土のクレバスに落ちた!!!!!!)」
ベリオロス 「(それにこのままでは、剛種も落ちてしまう!!)」
ベリオロス 「おぉぉぉぉ!! どけ人間!!!」
スラッシュアックス 「次は貴様だァァァ!!!!」

762: 2009/08/07(金) 15:49:15.82 ID:7KHfNew0
ナルガクルガ剛種 「あなた……あなたぁぁ!!」
ナルガクルガ剛種 「坊やが……坊やが!!!」
ベリオロス 「剛種ゥゥゥゥ!!!!」
ナルガクルガ剛種 「(ずるっ……)」
ナルガクルガ剛種 「あ………………っ」
ベリオロス 「!!!!!」
ベリオロス 「(剛種が………………)」
ベリオロス 「(剛種が、クレバスに落ちた……!!!!)」
ベリオロス 「そ……そんな……そんな……」
ベリオロス 「そんな!!!!」
スラッシュアックス 「もらった! 去ねよモンスタァァァ!!!!」
ベリオロス 「(ザンッッ!!!)ぐ……があぁああ!!!」
スラッシュアックス 「とどめだぁぁ!!!」
>ゴウッ
スラッシュアックス 「!! (ガキィィン)……(ズザザザザザ)」

763: 2009/08/07(金) 15:50:06.24 ID:7KHfNew0
ベルキュロス剛種 「(バサァ……バサァ……ッ!!)ベリオロス!!」
ベリオロス 「…………ベル……キュロス様…………」
スラッシュアックス 「くっ……新手か…………!!」
スラッシュアックス 「(今の電撃で、腕が上がらない……)」
スラッシュアックス 「(まずい……)」
ハンター達 「スラッシュアックスーッ!!!!!」
スラッシュアックス 「!!」
スラッシュアックス 「みんな!!!」
ベルキュロス剛種 「……人間の増援か……」
ベルキュロス剛種 「ナルガは……」
ベリオロス 「………………(ギリ………………)」
ベルキュロス剛種 「…………そうか………………」
ベルキュロス剛種 「下がるぞ、ベリオロス。こちらまで来れるか?」
ベリオロス 「…………(ずる……ずる…………)」
スラッシュアックス 「くそ……モンスターめ……」
スラッシュアックス 「逃がしてしまう……」

764: 2009/08/07(金) 15:51:47.84 ID:7KHfNew0
スラッシュアックス 「うぉぉぉぉぉおお!! モンスター!!!」
スラッシュアックス 「俺は貴様を許さない!!!」
スラッシュアックス 「絶対に許さない!!」
スラッシュアックス 「いつの日か、必ずこの手で、貴様に止めを刺すッッ!!!!」
スラッシュアックス 「化け物……化け物めええぇぇ!!!!」
ベリオロス 「……………………」
スラッシュアックス 「!!!」
スラッシュアックス 「(な……何だ!?)」
スラッシュアックス 「(何だ、あの白いモンスターの目は…………)」
スラッシュアックス 「(あれは怒り……いや、違う……)」
スラッシュアックス 「(深い……悲しみの目……!!?)」
スラッシュアックス 「(何故!? 何故だ!!!)」
ベリオロス 「………………」
ベルキュロス剛種 「………………」
ハンター達 「スラッシュアックス、これ以上の深追いは危険だ」
ハンター達 「遠目だが、お前が黒いモンスターを仕留めるのが見えた」
ハンター達 「さすが次期族長だ!!!」
スラッシュアックス 「……………………」
スラッシュアックス 「くそ…………」
ハンター達 「? どうした、さぁ、早く村に……」
スラッシュアックス 「何だこの気持ちは……くそ…………!!!」
スラッシュアックス 「くそぉぉぉっぉおお!!」

765: 2009/08/07(金) 15:52:51.79 ID:7KHfNew0
―現在、砂原―

テオ・テスカトル 「(ズゥゥゥゥン)」
ナルガクルガ 「(ズゥゥゥゥン)」
ハンマー 「スラッシュアックス、ここは剣を収めろ! 訳は後で話す!」
テオ・テスカトル 「グルルルルルル…………」
ジャギィ&ジャギィノス達 「(ビクッ)」
太刀 「ハンマー! あんな高さから飛び降りるなんて……」
スラッシュアックス 「(見たことのないモンスターの背中から、太刀までも……!!)」
スラッシュアックス 「モンスターの手先と化したか……!!(ギリ……!!)」
ハンマー 「違う! 戦うべきときと、戦わざるべきときがある!」
ナルガクルガ 「ガルルルルル…………!!!」
スラッシュアックス 「!!!!」
スラッシュアックス 「(あのモンスターは……!!)」
スラッシュアックス 「(間違いない! あれは……)」
スラッシュアックス 「(父さんと、母さんを頃したモンスターの片割れ!!)」
スラッシュアックス 「生きて…………」
スラッシュアックス 「(ギリギリ)生きていたのかァァァ!!!」

766: 2009/08/07(金) 15:53:42.78 ID:7KHfNew0
ナルガクルガ 「!?」
スラッシュアックス 「うおぉぉぉおお!!」
ハンマー 「(ガチィィィンッ!!)待てェェ! 落ち着け!」
スラッシュアックス 「邪魔をするか! ならば貴様も敵だ!!」
ハンマー 「何故そうなる!? (ガチィィンッ! ガチィィンッ!)」
ハンマー 「俺の話を聞け!!!(ガチィィン!!!)」
スラッシュアックス 「問答無用ォォ!! どけぇぇ!!」
太刀 「ハンマー! スラッシュアックス! やめてよ!」
太刀 「あたしたち仲間なのに、なんで戦わなきゃいけないの!?」
ハンマー 「(話して通じる相手ではない……ならば、拳で答えるまで!!)」
ハンマー 「うぉぉぉおおお!!(ブゥンッ!!)」
スラッシュアックス 「(ガチィィンッ)……ぐっ…………」
スラッシュアックス 「! 俺の武器にヒビが……!」
スラッシュアックス 「(このまま打ち合うのは危険だ……!!)」
ハンマー 「何をしている! 炎王龍、迅竜!」
ハンマー 「お前たちは、お前たちの仲間を助けに来たのではないのか!!」
ハンマー 「太刀、炎王龍と共に、少女を頼む!!」

767: 2009/08/07(金) 15:55:02.19 ID:7KHfNew0
テオ・テスカトル 「騒がしいので降りてきてみれば……ずいぶんと厄介なことになっているようだ」
ナルガクルガ 「…………」
テオ・テスカトル 「どうやら状況を見るに、あの方がボルボロス……」
テオ・テスカトル 「そして仲間割れが起きているようだな……」
ナルガクルガ 「あの人間が、トドメを刺そうとした人間を抑えている」
紫ガミザミ 「救出するなら今じゃ! 何をしておる二人とも!」
紫ガミザミ 「せっかくあの人間が、隙を作ってくれたんじゃぞ!」
紫ガミザミ 「それに、あっちに少女たちが見えた!!」
紫ガミザミ 「はようせぬか!(バシバシ)」
ナルガクルガ 「頭を叩くな……!!」
ボルボロス 「はぁ……はぁ……(よろよろ)」
ナルガクルガ 「先ほどの咆哮で、体力を使い果たしたようだな……」
ボルボロス 「(よろっ……)」
テオ・テスカトル 「(がしっ)大丈夫ですか? あなたを助けに来ました」
ボルボロス 「ゲホッ……ゲホッ…………」
ボルボロス 「人間……私の……」
ボルボロス 「私の赤ちゃん……(ググググッ)」
ボルボロス 「許さない…………!!!」

768: 2009/08/07(金) 15:56:11.26 ID:7KHfNew0
テオ・テスカトル 「ボルボロス殿で間違いないな!?」
テオ・テスカトル 「あなたの子供は生きている。落ち着きたまえ!!」
ボルボロス 「……!! 私の赤ちゃんが…………!!」
ボルボロス 「生きている!?」
テオ・テスカトル 「はい。だから今は、落ち着いて後退してください」
ボルボロス 「あなたは……それに、背中に人間が……」
テオ・テスカトル 「私はテオ・テスカトル。隣の大陸から来ました。この人間は、私が信用を置く人間の仲間です。敵ではありません」
太刀 「……………………」
ナルガクルガ 「テオ殿、この周りのうざったい連中を蹴散らすぞ!!」
テオ・テスカトル 「任せる! 私は少女たちの所にゆく!!」
紫ガミザミ 「(ササササッ)……ほれ、おばさん、こっちじゃ」
紫ガミザミ 「暴れても何もならぬ。おぬしの子、ウラガンキンは生きておる」
紫ガミザミ 「静かに下がるんじゃ」
ボルボロス 「カニの子供………………」
ボルボロス 「………………分かりました……(ズズズ)」

769: 2009/08/07(金) 15:57:33.94 ID:7KHfNew0
ナルガクルガ 「ギャォォォォ!!!」
ジャギィ達 「!!(ビクゥッ!!!)」
ジャギィノス達 「こ……こいつ、ベリオロスの仲間かい!?」
ジャギィ達 「とても俺たちじゃかなわねぇ!!」
毒リオレウス 「へんだらぁぁ! ジャリどもォォオ!!(ドドドドド)」
毒リオレイア 「この落とし前はつけさせてもらうかんよぉぉぉ!!!(ドドドドド)」
ドスジャギィ 「(チッ……)」
ドスジャギィ 「分が悪ィ。全員撤退だ!! さっさと撤収するぜ!!」
ジャギィ&ジャギィノス達 「了解!!」
ナルガクルガ 「(逃げていく……)」
ナルガクルガ 「(しかし……何だ、この殺気は……)」
ナルガクルガ 「(あの人間から発せられている……)」

770: 2009/08/07(金) 15:58:54.11 ID:7KHfNew0
スラッシュアックス 「くっ………………!!!」
スラッシュアックス 「貴様……ハンマー!! どうしてもモンスターの側につくというのだな!」
ハンマー 「そうとるのならそうとってくれて構わん!」
スラッシュアックス 「!!」
ハンマー 「今は、俺は仲間を守るために、仲間の大事な人を守るために戦う!」
ハンマー 「お前がそれでもなお、俺の話を聴かずに向かってくるというのならば、受けて立とう!!」
ハンマー 「スラッシュアックス!!!」
スラッシュアックス 「…………(ギリ…………)」
スラッシュアックス 「『モンスター』…………!!」
ハンマー 「!?」
スラッシュアックス 「貴様も、モンスターになるのか!!」
スラッシュアックス 「化け物の仲間でいいと、そう言うのか!!!」
スラッシュアックス 「我らの敵に!!」
スラッシュアックス 「ならばもはや貴様を友とは思わぬ!」
スラッシュアックス 「俺の前に立ちふさがる敵として、俺は貴様を倒す!!」
ハンマー 「上等!」

771: 2009/08/07(金) 16:00:38.83 ID:7KHfNew0
毒リオレウス 「クソ人間がァァ!!(ゴゥッ!!)」
毒リオレイア 「夫婦コンビネーションを食らえやぁぁ!!(ゴウッ!!)」
スラッシュアックス 「!!」
ハンマー 「!!!」
 >ドォォォォンッ!!
スラッシュアックス 「くそ……ッ! 邪魔が入った!!」
ハンマー 「……ぐ……」
ハンマー 「(今の火の玉で肩をやられた……!!)」
スラッシュアックス 「………………」
スラッシュアックス 「この勝負、後に預ける!!!」
スラッシュアックス 「(ここは下がらなければ、俺の命も危ない……)」
スラッシュアックス 「(ハンマー、太刀……)」
スラッシュアックス 「(何故だ……!!)」
ナルガクルガ 「………………」
スラッシュアックス 「………………」
スラッシュアックス 「(クルッ……ダダダダッ)」

772: 2009/08/07(金) 16:01:57.06 ID:7KHfNew0
ハンマー 「ぐ……(ガクッ)」
毒リオレウス 「トドメじゃぁぁぁぁ!!」
毒リオレイア 「氏ねよやぁぁ!!」
ボルボロス 「……やめなさい、毒リオレウス、毒リオレイア」
毒リオレウス 「!」
毒リオレイア 「!」
毒リオレウス 「女王様、正気が戻ったんで!?」
毒リオレイア 「やめろって!? でもこいつ人間だぜ!?」
ボルボロス 「話はこの異国の者に聞きました……そこな人間は敵ではありません……」
紫ガミザミ 「そ、そうじゃ! そいつは敵じゃないんじゃ!!」
ナルガクルガ 「………………」
毒リオレイア 「はぁぁぁ!? 人間が、敵じゃない!?」
毒リオレウス 「バカァ言っちゃぁいけませんぜ、女王!!」
ボルボロス 「わたくしの命令が聞けないのですか……?」
毒リオレウス 「そ……そんなことはねぇけど……」
ハンマー 「………………ぐ…………(ドサッ)」

773: 2009/08/07(金) 16:03:12.54 ID:7KHfNew0
―少し離れたエリア―

テオ・テスカトル 「ラギア殿!!」
ラギアクルス 「(ガラガラ)はぁ……はぁ……」
ラギアクルス 「ウラガンキン様……ご無事ですか?」
テオ・テスカトル 「(落石から、身を挺して少女たちを守ったのか……!)」
テオ・テスカトル 「(この男、優男に見えて、やる……!!)」
ウラガンキン 「まんま! まんまーッ!!!」
トレニャー 「少女さん!!」
クルペッコ 「ぐ……むぅ。すさまじい女王の声で、洞窟の入り口が崩れたのか……」
クルペッコ 「!! 少女の頭から血が!!」
テオ・テスカトル 「少女! どうしたんだ!!!」
クルペッコ 「うおっ! あなたは!?」
ラギアクルス 「大陸の向こうから共に来た、テオ・テスカトル卿だ。はぐれてしまった連れとはこの方々のことだ」

774: 2009/08/07(金) 16:04:32.87 ID:7KHfNew0
少女 「………………」
太刀 「この子……モンスターの毛皮や、古竜の皮を継ぎ合わせた服を着てる……」
太刀 「まさか、この子がハンマーの言ってた女の子……?」
太刀 「(頭を強く落石で打ってる)」
太刀 「(秘薬がまだ少しあったはず……)」
クルペッコ 「む!? テオ殿とやら、何故人間を背に乗せておる!?」
テオ・テスカトル 「後ほど説明しよう。敵ではない」
太刀 「(バッ)ちょっとどきなさい、変な竜と猫。邪魔よ」
ウラガンキン 「グォルルル!! グォルルル!!」
トレニャー 「キニャァァ!!」
太刀 「はいはい。あたしは何もしないから」
太刀 「(薬を塗って……これは飲ませて……)」
太刀 「……どこか休める所に連れて行かなきゃ……」
太刀 「………………」
太刀 「え……炎王龍」
テオ・テスカトル 「…………」
太刀 「言葉、分からないだろうけど……」
太刀 「応急処置はしたけど、この子のことを休ませなきゃいけない。どこか落ち着ける場所につれてって」

775: 2009/08/07(金) 16:06:45.93 ID:7KHfNew0
テオ・テスカトル 「(この人間、少女のことを治療してくれたのか……)」
テオ・テスカトル 「(あれは、ナルガの傷を治した薬と同じ……)」
テオ・テスカトル 「(しかし少女はまだ目を覚まさぬ。重症なのだ!)」
テオ・テスカトル 「(人間が何かを私に言っている)」
太刀 「×××××!」
テオ・テスカトル 「……分かった。少女を我の背に乗せろ」
ラギアクルス 「テオ殿、少女は……」
テオ・テスカトル 「落石が防ぎきれなかったようだ。この人間が処置をしてくれたが、容態は危ないらしい」
ラギアクルス 「人間だ。信用していいのか?」
テオ・テスカトル 「…………大丈夫だ。どこか、この近くに身を隠せる場所はないか?」
テオ・テスカトル 「とにかく落ち着かねば」
ラギアクルス 「分かった。一旦凍土に下がろう」
クルペッコ 「凍土? ここからだと……そうか!」
ラギアクルス 「ああ……ドスバギィに協力を仰ぐ」
ウラガンキン 「まんま! まんまー!!(ぐいぐい)」
少女 「……………………」

776: 2009/08/07(金) 16:08:13.55 ID:7KHfNew0
―凍土、ドスバギィの巣前―

ドスバギィ 「………………」
ラギアクルス 「申し訳ない。あなた方との不戦不干渉の条約はわきまえている」
ラギアクルス 「しかし、ことは緊急を要するのだ。ボルボロス様と、人間の少女の手当てをしたい」
ラギアクルス 「あなた方の洞窟の一部を使わせてもらえないだろうか」
母バギィ 「ケッ。お断りだよ」
ラギアクルス 「!!」
母バギィ 「王家があちき達になにをしてくれた? 何の力もないじゃないか」
母バギィ 「持ってくるのは災難だけさね。これ以上の面倒ごとは、もう御免なんだよ」
ラギアクルス 「…………」
クルペッコ 「まぁ……そういわないでくれ。私の顔を立てると思って」
母バギィ 「! クルペッコ先生!?」
クルペッコ 「子バギィは元気か? お前も、ずいぶんと大きくなった」
クルペッコ 「ンン~ッ、マァァ~~! 綺麗になった~~(↑↑)♪」
母バギィ 「ちょ……やめておくんなましよ先生、こんな所で……」

777: 2009/08/07(金) 16:09:48.80 ID:7KHfNew0
ドスバギィ 「…………良かろう。入れ」
母バギィ 「ちょっと、父ちゃん! 王家はともかくとして、人間だよ!?」
ドスバギィ 「……………………」
ドスバギィ 「あぁ……」
母バギィ 「人間があちきたちに何をしたか、忘れたって訳じゃないんだろうね!?」
母バギィ 「いくらあの変なイャンクックがかばったって、人間は人間さ!」
母バギィ 「それに余計なのがくっついてるじゃないかい!」
ハンマー 「…………」
太刀 「ハンマー、しっかりして……」
ドスバギィ 「てめぇよぉ……」
ドスバギィ 「イャンクックが恐れねぇものを恐れて、どうすんだ」
母バギィ 「……!!」
母バギィ 「そ……それはそうだけど……」
ドスバギィ 「洞窟は誰の物でもねぇ。勝手に入って勝手に休めばいいぜ……」
ラギアクルス 「すまない、恩に着る……!!」

778: 2009/08/07(金) 16:10:49.93 ID:7KHfNew0
―ドスバギィの巣、内部―

ラギアクルス 「ボルボロス様、こちらに……」
ボルボロス 「その前に……」
ウラガンキン 「………………」
ボルボロス 「坊や……わたくしの坊やなの……?」
ウラガンキン 「…………(ササッ)」
ボルボロス 「!?」
ウラガンキン 「まんま……(ぐいぐい)」
少女 「………………」
ボルボロス 「……あの姿は、我が夫ウラガンキンのものと瓜二つ……なのに何故……」
ラギアクルス 「少々込み入った事情がございます。ご説明をばさせていただきたいのですが、お時間頂戴したく……」
ボルボロス 「…………」
ラギアクルス 「ホイッスラー、毒夫婦、テオ殿こちらに来てくれないか?」
毒リオレイア 「あ、あぁ……」
毒リオレウス 「まぁ……しゃぁねぇな、ここまできちまったんならよぉ」
紫ガミザミ 「わらわは数のうちにも入っておらぬのか……」
ナルガクルガ 「少女の意識が戻らぬ……この人間たち、本当に信用が置けるのか……?」
テオ・テスカトル 「ご指名だ。君たちは少女を頼む」

779: 2009/08/07(金) 16:12:01.91 ID:7KHfNew0
太刀 「ひどい怪我……でも、落石に押しつぶされた割には、頭の打撲だけだわ」
ハンマー 「俺がいながら……くっ……」
太刀 「ハンマー、あなたも腕の火傷がひどい。自分の怪我の応急処置に専念して」
太刀 「この子、本当にあなたが言っていた……」
ハンマー 「ああ。間違いない」
ハンマー 「その証拠に、モンスターたちが俺たちを恐れて逃げ出したり、飛び掛ってきたりしないだろう」
ナルガクルガ 「………………」
紫ガミザミ 「………………」
太刀 「本当……不思議。まるでこの子自体がお守りみたい。だってここ、モンスターの巣の中でしょ……?」
太刀 「あたし、モンスターの巣、こんな奥深くまで入ったことないよ」
太刀 「包帯があってよかった。これで一応、止血は終わったわ(ぎゅ……)」
少女 「………………」

780: 2009/08/07(金) 16:13:49.51 ID:7KHfNew0
ドスバギィ 「おい、話の前にイャンクックを呼んで来い」
ドスバギィ 「娘とやらがみつかったとな」
母バギィ 「あぁ! うっかりしてたわ」
母バギィ 「ちょい待っとき」
ラギアクルス 「イャンクック殿は、あなた方が保護してくださっていたのか!」
ドスバギィ 「…………あァ。偶然な」
ラギアクルス 「良かった……」
テオ・テスカトル 「クック殿!」
クック 「!! テオ殿! それにラギアさん達も!!」
クルペッコ 「おやまぁ、これまたヘンテコな鳥だ」
毒リオレイア 「人のこと言えるかい」
毒リオレウス 「全くだ」
テオ・テスカトル 「クック殿、無事でよかった」
クック 「ドスバギィさんたちが、雪に埋もれた私を掘り出してくれたんだ」
クック 「ナルガ! 紫殿!!」
ナルガクルガ 「クック……無事だったか」
紫ガミザミ 「クックおじさん! 良かった!!」

781: 2009/08/07(金) 16:16:00.48 ID:7KHfNew0
ボルボロス 「ラギア、この方は……」
ラギアクルス 「はい、向こうの大陸から共に来た、イャンクック殿です。ベリオロスの裏切りで、途中はぐれてしまいました」
ボルボロス 「なんということ……ベリオロスが……」
クック 「……少女! 少女は……」
太刀 「ハンマー!! こんなところにイャンクックがいるよ!!!」
クック 「クケェェー!!(人間!!)」
太刀 「威嚇してきやがった!(ガシャッ)」
ハンマー 「やめろ、太刀。少女から離れるんだ。俺たちは少し距離をとった方がいい」
太刀 「どうして!?」
ハンマー 「あのイャンクックは、この子の父親なんだ」
太刀 「はぁ!?」
ハンマー 「久しぶりだな、イャンクック。あの時俺がお前のくちばしを砕いて以来か」
クック 「(この人間は、少女が時々会っていた、あの時の……)」
クック 「(いや、それより少女だ!)」
クック 「少女! 少女!(ゆさゆさ)」
少女 「………………」
クック 「(処置は人間がしてくれたようだが、意識がない……!!)」
クック 「ど……どうしてこんなことに!?」
ナルガクルガ 「落石に巻き込まれたのだ。ラギアクルスが身を挺して、つぶれる所から助けてくれた」
クック 「しかしこれは……」
ナルガクルガ 「後は、道中遭遇したこの人間たちの処置が功を奏すことを祈るしかないな……」

782: 2009/08/07(金) 16:17:11.80 ID:7KHfNew0
~しばらく後~

ボルボロス 「…………事情は分かりました。では、確かにベルキュロスが私の卵を……」
ラギアクルス 「ドスジャギィはそのように言っておりました」
ボルボロス 「………………」
テオ・テスカトル 「心中お察しする。しかし、子供はこうして無事なのだ」
テオ・テスカトル 「その点では、我らが偶然保護したことは幸運だったといえる」
トレニャー 「ほいきた。オイラのおかげですぜ」
テオ・テスカトル 「説明をさせていただいたとおり、あの少女は我々の仲間です。害ある者ではない」
テオ・テスカトル 「あの人間達もそうです」
ボルボロス 「ええ……あそこにいる人間は、自分達の仲間からわたくしを、身を挺して守ってくれました」
ボルボロス 「しかし…………」
ウラガンキン 「………………(ビクッ)」
ボルボロス 「やっと会えた我が子に、触れることさえも出来ないとは……」
ボルボロス 「何ということ……」

783: 2009/08/07(金) 16:18:46.64 ID:7KHfNew0
クルペッコ 「…………これは、元老院に相談をした方がいいかもしれぬな」
毒リオレウス 「元老院に!?」
毒リオレイア 「ゲェ。ジエン・モーランに!? あの偏屈じじい、どこにいるかもわからねぇじゃんか」
クルペッコ 「しかし、ベルキュロスの反乱に加え、ウラガンキン二世様の問題。それにいい知恵を授けてくれるかも知れぬ」
クルペッコ 「お前たちは、今から火山に赴き、イビルジョーとアグラコトルにこのことを知らせるのだ」
クルペッコ 「ウラガンキン様の右腕と左腕の二人ならば、必ずはせ参じるはずだ」
毒リオレイア 「な、何だよ。急に真面目になるなよ……」
毒リオレウス 「あんさんに真面目になられると、頼みィ聞かんでられんわな」
ボルボロス 「私からも命じます。二人に事情を知らせてください」
毒リオレイア 「あァ。任せてくださいな(ドスン、ドスン)」
毒リオレウス 「ちょっくら行ってくらぁ(ドスン、ドスン)」
クルペッコ 「さて……肝心のジエン・モーラン老だが……」
ラギアクルス 「居場所が分からぬ。それに、人間達の目にモーラン老を触れさせるわけにはいかない」
クルペッコ 「確かに……」

784: 2009/08/07(金) 16:19:39.81 ID:7KHfNew0
ドスバギィ 「……ボルボロスさんよ……」
ボルボロス 「何でしょうか? バギィの長」
ドスバギィ 「戦争か? なら別ンとこでやれ……」
ドスバギィ 「もう家族を出すのは勘弁だ……」
ボルボロス 「……………………」
ボルボロス 「ええ……分かっています。戦争などは起こしません」
ボルボロス 「あくまでわたくしは、ベルキュロスと話をし、穏便に事を運ぶつもりです」
ドスバギィ 「……なら、いい……」
クルペッコ 「…………ジエン老の居場所について、私が少し心当たりがある」
クルペッコ 「ンッン~~♪ ちょっくら~♪」
クルペッコ 「様子を見に行ってみるとしますかなぁぁ~(↑↑)♪」
ボルボロス 「頼めますか、彩鳥の長」
クルペッコ 「あなた様のお頼みとあらば、何なりと~~♪」
ラギアクルス 「ホイッスラー、我も……」
クルペッコ 「団長、あなたはボルボロス様とウラガンキン二世様の護衛という最重要任務があるではないか」
ラギアクルス 「う……うむ……」
クルペッコ 「そういうわけで、少しの間、私もおさらばすることにしましょうかな」

787: 2009/08/07(金) 16:21:39.32 ID:7KHfNew0
トレニャー 「これでうるせぇ鳥がいなくなるニャ(ボソ)」
クルペッコ 「カァァァァッ!」
トレニャー 「(ドォォォォンッ)ぶぅぁぁああ!」
トレニャー 「………………(ドサリ)」
ボルボロス 「砂原はベルキュロスの管轄です。十分に気をつけて」
クルペッコ 「私は~氏にません~~♪ あなたが! 好きだから!(ドス、ドス)」
ボルボロス 「(くすり)」
ラギアクルス 「クック殿、少女はまだ目を覚まさないのか?」
クック 「あぁ……どうしたものか……」
少女 「………………」
太刀 「ハンマー、やっぱりこの子、ちゃんと村に連れて行って治療した方がいいと思う」
ハンマー 「…………」
太刀 「傷口から雑菌が入るかもしれないし、秘薬の効果だって万能じゃないし……」
ハンマー 「その心配はない。見てみろ」
太刀 「! もう傷が消えかかってる!?」
ハンマー 「この少女は、どこか不思議な力を持っているんだ。人間というよりも……少しモンスターじみているところがある」
ハンマー 「村に連れて行くのは簡単だが、この土地の者の、モンスターに対する憎しみや恐怖は、俺たち以上だ」
ハンマー 「避けた方がいいと、俺は思う」
ハンマー 「それに、親がそれを許さないだろう」
クック 「………………」

788: 2009/08/07(金) 16:23:04.25 ID:7KHfNew0
ラギアクルス 「して、ボルボロス様、これからいかがいたしましょうか……」
ボルボロス 「………………」
ボルボロス 「イビルジョー達の到着を待ちましょう。話し合いを行うにも、まずは頭数が必要です」
テオ・テスカトル 「賢明な判断だ。それにあなたは傷ついている。十分な休息が必要だ」
ボルボロス 「………………」
テオ・テスカトル 「(しかし、やっと見つけた息子が他の……しかも人間の子を親と思っているとは……)」
テオ・テスカトル 「(身を切るような不安のはずなのに、彼女は気丈に振舞っている……)」
テオ・テスカトル 「(立派なことだが、不憫だ……)」
ウラガンキン 「まんま…………」
少女 「…………(ピクッ)」
ウラガンキン 「!!」
ウラガンキン 「まんま! まんま!」
クック 「! 少女が目を開けた!!」
少女 「………………」
少女 「(頭ががんがんする……)」
少女 「(私、気を失っちゃったの……?)」
少女 「(ガツーンッっていう衝撃があって……目が回って……)」

789: 2009/08/07(金) 16:23:57.80 ID:7KHfNew0
少女 「! おじさんの匂い……!!」
少女 「おじさん!!」
クック 「クケェ!」
少女 「!? おじさん、そこにいるんでしょ?」
クック 「クケェ、クッ、クッ、クッ、クッ!!」
ウラガンキン 「ギュルルル……ルルル!!」
少女 「……? あ、あれ……?」
ラギアクルス 「シャォォォォ!!」
少女 「どうしてみんな、鳴き声だけなの……?」
クック 「クケェ!(すりすり)」
少女 「おじさん……」
少女 「おじさん、私だよ、少女だよ」
クック 「クケッ。ケッ、ケッ」
少女 「(まさか……)」
少女 「(私、モンスターの言葉が、分からなくなってる……!?)」

790: 2009/08/07(金) 16:24:49.69 ID:7KHfNew0
ハンマー 「よかった、少女。目が覚めたか」
ハンマー 「太刀、この子は目が不自由だ。補佐してやってくれ」
少女 「ハンマーさん!? それに、女の人の匂いがする……」
太刀 「あなたが少女ね。あたしは太刀。ハンマーの幼馴染さ。くっついてここまできちゃったよ」
少女 「ハ……ハンマーさん!」
ハンマー 「どうした? どこか痛むのか?」
少女 「私、しゃべれなくなっちゃった……」
ハンマー 「何?」
少女 「モンスターの言葉が、分からないの!!」
クック 「クケェ! クケェ!!」
クック 「(どうしたことだ!? 急に少女の言葉が分からなくなってしまった!!)」
クック 「(人間とは普通に話をしているようだが……)」
クック 「(私の方を向いた……!!)」
少女 「×××××!! ××××!!」
クック 「少女! どうしたというんだ……私の言葉が分からないのか!?」
少女 「×××!! ××!!」
テオ・テスカトル 「もしや……頭を強く打ったときに、脳が衝撃を受けてしまったのかもしれぬ」
テオ・テスカトル 「(むしろ、正常に戻ったというべきか……)」

791: 2009/08/07(金) 16:26:20.02 ID:7KHfNew0
クック 「くそっ……何ということだ……せっかく再会したというのに!!」
ナルガクルガ 「………………」
紫ガミザミ 「少女! わらわの言葉も分からぬのか!」
紫ガミザミ 「一緒にたくさんおしゃべりをしたではないか! もう、おしゃべりできないのかぇ!」
紫ガミザミ 「少女、何とか言ってたもう!」
少女 「(紫ちゃんが、空気が漏れるみたいな音を出してる……)」
少女 「(何かしゃべってるんだ……)」
少女 「でも分からない……分からないよ……」
ハンマー 「……ふむ、頭を打った時に、君に備わった神通力が支障をきたしたのかもしれない」
少女 「どうしよう……私、おじさんやみんながいるのに!!」
ハンマー 「俺たちがいて幸運だった。落ち着くんだ」
太刀 「ねぇ……あんた、本当にモンスターとしゃべることが出来るの?」
少女 「出来たけれど……今は出来なくなっちゃったの!」
少女 「う……(じわ……)」
少女 「うぁあぁぁぁん…………」
太刀 「あ、ちょっと……泣かないで」
太刀 「よしよし、落ち着いて」

792: 2009/08/07(金) 16:28:00.79 ID:7KHfNew0
クック 「……どうやら、本当に私達の言葉が分からないらしい」
紫ガミザミ 「そんな……!!」
ナルガクルガ 「テオ殿の言うとおり、頭を打った時のショックが原因だろう」
ナルガクルガ 「元々俺たちと話せることが異常だったのだ」
ナルガクルガ 「それが正常な歯車に戻ったと考えるのが妥当だろうな」
紫ガミザミ 「おぬしは……!! どうしてそう冷静なのじゃ!!」
ナルガクルガ 「子供は黙っていろ」
紫ガミザミ 「なっ……」
ナルガクルガ 「クックよ。いずれこのような日が来るであろうことは、俺は警告したはずだ」
ナルガクルガ 「所詮人間は人間、我らは我らだ」
ナルガクルガ 「そもそもが別の生き物よ」
ウラガンキン 「まんま……」
クック 「………………」
クック 「しかし……少女は私の娘だ……」
ナルガクルガ 「……クック。時が来たのだ」
クック 「………………」
少女 「×××……(スッ)」
ウラガンキン 「(なでなで)まんま…………」
クック 「(少女が私の方に、手を……)」
クック 「(ぎゅっ)」
少女 「………………」
クック 「………………」

793: 2009/08/07(金) 16:29:53.08 ID:7KHfNew0
ラギアクルス 「……その少女からは、白光の匂いがした」
クック 「!」
ラギアクルス 「我ら竜の神がまとう、きらめく光だ」
ラギアクルス 「一度、我が師匠、ナバルデウス様の御前でそれを見たことがある」
クック 「少女は……何とか治らないのか?」
ラギアクルス 「分からぬ……そもそも、人間とモンスターが言葉を交わすなど、前例がないことだ」
ラギアクルス 「ナバルデウス様は深海の奥の奥にお住まいで、今はお会いすることは適わないが……」
ラギアクルス 「だが、ジエン・モーラン老なら何かをご存知かもしれない」
クック 「少女……」
少女 「…………(ぎゅっ)」
クック 「お前は、私の娘だ」
クック 「どんなになっても、私の家族だ」
クック 「安心しろ。絶対に……絶対に見捨てたりはしない……!!」
ナルガクルガ 「………………」
テオ・テスカトル 「現状を打破する鍵は、ジエン・モーランという方が握っているようだな……」
ハンマー 「(炎王龍が、こちらをじっと見ている……)」
ハンマー 「(分かっているさ。炎王龍)」
ハンマー 「(お前の仲間は、俺が責任を持って守る。少女は、俺の仲間でもあるんだ……!!)」

794: 2009/08/07(金) 16:31:02.94 ID:7KHfNew0
少女 「(おじさんたちの声が聞こえない……)」
少女 「(私、見えない……聞こえない……)」
少女 「(おじさんの顔も……声も……)」
少女 「(これ以上、私、何をなくせばいいの……?)」
少女 「(もうやだよ……)」
少女 「(せっかく一人じゃなくなったのに……)」
少女 「(私、怖い……)」
少女 「(このまま、私がなくなってしまいそうで……)」
少女 「(私…………)」

795: 2009/08/07(金) 16:34:35.57 ID:7KHfNew0
お疲れ様でした。次回へ続かせていただきます

no title


トライは全般的に敵が強いですね
私は、先日オフでやっとラギアクルスさんを討伐しました
他にトライをプレイされている方がいらっしゃいましたら、是非オンでご一緒しましょう

843: 2009/08/14(金) 12:15:19.34 ID:iIQPapQ0
8.パリアプリア 「真珠の耳飾りを……」

―十年前、砂原、ベルキュロス剛種の巣―

ベルキュロス 「父様ー、父様ー(バタバタ)」
ベルキュロス 「見て、父様! こんなに大きな貝が取れたよ!」
ベルキュロス剛種 「…………」
ベルキュロス剛種 「(バシッ!)」
ベルキュロス 「あっ……(ガシャン)」
ベルキュロス剛種 「娘よ……お前は、また人間の村の近くに行ったのか……」
ベルキュロス 「と……父様……?」
ベルキュロス剛種 「(バシンッ!)」
ベルキュロス 「きゃっ!」
ベルキュロス 「い……痛い……痛いよぉ……」
ベルキュロス剛種 「何度言っても分からぬ子だ……」
ベルキュロス剛種 「そなような子は我の子ではない。どこへなりと、好きなときへ好きな場所へ行くが良い……」
ベルキュロス剛種 「いつも言っている通りにな……(ドスン、ドスン)」
ベルキュロス 「ひっく……う……」

844: 2009/08/14(金) 12:16:12.96 ID:iIQPapQ0
ベルキュロス 「父様…………」
ベルキュロス 「喜んでくれるかと……思ったのに……」
ベルキュロス 「粉々になっちゃった…………」
パリアプリア 「お嬢…………」
ベルキュロス 「なっ……見てたの!? 無礼者!(ブンッ)」
パリアプリア 「お……おで、何も見てない。見てない」
ベルキュロス 「…………」
パリアプリア 「…………」
パリアプリア 「お嬢、片付け、おでがやる……(ズシン、スジン)」
ベルキュロス 「ひっく……ひっく……」
パリアプリア 「…………」
パリアプリア 「お嬢よぉ……」
パリアプリア 「お館様が、きづーく言ってらしてっじゃねぇかぇぇ」
パリアプリア 「なして人間の里さ近くいくだ?」
パリアプリア 「そっだらことすったら、あぶねぇぜぇ」

845: 2009/08/14(金) 12:17:13.15 ID:iIQPapQ0
ベルキュロス 「お……お前には関係ない!」
パリアプリア 「でもよぉ」
ベルキュロス 「うるさい! うるさい! 無礼者!(ビシ! バシ!)」
パリアプリア 「あ痛っ、痛っ! お嬢、勘弁さ勘弁さ」
ベルキュロス 「…………」
パリアプリア 「あ痛ァなァ。お嬢はいっづも容赦ぁねぇがんなぁ」
パリアプリア 「…………」
パリアプリア 「お館様ァ、ご機嫌悪ィんだっぺ」
パリアプリア 「なぁに、運が悪かっただけさ」
パリアプリア 「お!」
ベルキュロス 「?」
パリアプリア 「この巨大な貝殻、中に真珠を持ってだ!(キラキラ)」
ベルキュロス 「うわぁ……」
ベルキュロス 「…………」
ベルキュロス 「………………」
パリアプリア 「真珠にはァ、幸運のまじないがかかってるんだァ」
パリアプリア 「これは……こうして(プス、プス)」

846: 2009/08/14(金) 12:18:15.72 ID:iIQPapQ0
パリアプリア 「ほうれ。耳輪が出来たぞィ」
ベルキュロス 「わぁ」
パリアプリア 「お嬢にィ、いいごとがありますよぉぉーに」
ベルキュロス 「くれるのか?」
パリアプリア 「お嬢がとってきたんだっぺ?」
ベルキュロス 「ふ……ふん!(バッ)」
ベルキュロス 「幸運のまじない……」
ベルキュロス 「(もぞもぞ……)」
パリアプリア 「あんれまぁ、こりゃまた美人だっぺぇ」
ベルキュロス 「…………」
ベルキュロス 「ふん、お前などに世辞を言われても、うれしくも何ともないわ」
パリアプリア 「お嬢は今日もつれねぇなぁ」
パリアプリア 「(サッサッ)」
パリアプリア 「しっかしよぉ、やっぱ人間の里へは近づいちゃいけねぇ」
パリアプリア 「ウラガンキン様がそう決めてんだっぺ。なら従うのが道理だっぺェ」

847: 2009/08/14(金) 12:19:07.48 ID:iIQPapQ0
ベルキュロス 「ふん……」
ベルキュロス 「あんな王家、滅んでしまえば良い……」
パリアプリア 「お……お嬢、いきなり何を言い出すんだァ」
パリアプリア 「どこぞで誰が聞いてるか、わがったもんじゃねぇで」
ベルキュロス 「知ったことか! 事実ではないか」
ベルキュロス 「あいつがいるせいで、父様はいつまでも……」
ベルキュロス 「父様は…………」
ベルキュロス 「ひっく…………」
ベルキュロス 「…………」
パリアプリア 「あーあー、美人さんが台無しだァ」
パリアプリア 「ほーれ、部屋に戻っぺなぁ」
パリアプリア 「おでがうんめぇ魚汁作ってやっがらなぁ」
ベルキュロス 「…………いらない…………」
パリアプリア 「そういわずに、ほれほれ(ぐいぐい)」
ベルキュロス 「ええい引っ張るな……!」

848: 2009/08/14(金) 12:20:04.74 ID:iIQPapQ0
ベルキュロス 「父様………………」
ベルキュロス 「…………」
ベルキュロス 「パリア」
パリアプリア 「何ですだ?」
ベルキュロス 「父様は、私がいらないのだろうか……」
パリアプリア 「…………」
ベルキュロス 「今日も……とても、怒ってた」
ベルキュロス 「私のせいで…………」
ベルキュロス 「我の子ではない、って言われた……」
パリアプリア 「そりゃ、お嬢がァ、お館様の言うこど聞かねぇからだっぺェ」
ベルキュロス 「…………」
パリアプリア 「…………」
パリアプリア 「お館様も、奥方様が亡くなっでがら、気難しくなっぢまったからなぁ……」
ベルキュロス 「前の父様は……あんな父様じゃなかった……」
ベルキュロス 「もっとやさしくて……もっと……」
ベルキュロス 「…………」
ベルキュロス 「母様…………」
ベルキュロス 「ひっく…………」
パリアプリア 「あぁもう。泣くでねぇよぉ」
パリアプリア 「ほうれ、べろべろぶるぶるば~」
ベルキュロス 「や……やめぬか! 変な顔など……私はもう子供じゃない!」

849: 2009/08/14(金) 12:20:58.40 ID:iIQPapQ0
パリアプリア 「(ぷくぅぅぅ)はぃはぃ、お嬢は立派な大人ですよ(ひゅるるるる)」
ベルキュロス 「…………」
パリアプリア 「今日はちと運がァなかっただけでさぁ」
パリアプリア 「だけんど、真珠のお守りがあるお嬢は無敵さ!」
パリアプリア 「明日はきっど、お館さまの機嫌もいいに違いね」
パリアプリア 「この貝殻は、おでが拾ってきだって言っておっからな」
ベルキュロス 「!! 何を言う! お前に罪を被ってもらおうなどど思わん!!」
ベルキュロス 「召使いの癖に、恥を知れ!」
パリアプリア 「ゲゲッ、怒られちまった」
パリアプリア 「んでもお嬢、罪っで言っで、悪ィことしだって、分かってんじゃねぇか」
ベルキュロス 「…………」
パリアプリア 「んなら、夕食の時にでも謝ればええ。正直に言えば、お館様も邪険にはしねぇよお」
ベルキュロス 「………………」
パリアプリア 「しっがし、なしてそんな遠くにいっただ?」
ベルキュロス 「……ウラガンキンの作った境界線なんて、知らない」
パリアプリア 「お嬢……」
ベルキュロス 「王家の作った決まりなんて知らない……!」
ベルキュロス 「王家なんて……王家なんて……」
ベルキュロス 「母様が人間に殺されたときも、何もしてくれなかった……!!」
ベルキュロス 「何もしてくれなかったくせに、えらそうに父様に命令して……」
ベルキュロス 「私は、王家なんてゆるせない……」
パリアプリア 「………………」

850: 2009/08/14(金) 12:21:50.79 ID:iIQPapQ0
―夕刻―

ベルキュロス剛種 「(もぐもぐ)」
ベルキュロス 「………………」
パリアプリア 「(つんつん)」
ベルキュロス 「………………」
ベルキュロス 「あ……あの、とおさ……」
メラルー 「(タタッ)報告しますニャ!」
ベルキュロス 「………………」
ベルキュロス剛種 「聞こう」
メラルー 「今朝方、水没林にハンターが三人侵入しましたがラギアクルスが撃退しましたニャ」
ベルキュロス剛種 「…………そうか。若いのによくやる」
メラルー 「また、昼ごろ火山で怪しい人影を見たと、アグナコトルが言っていましたニャ」
メラルー 「現在イビルジョーが捜索に当たっていますがニャ、まだ発見できずとのことですニャ」
メラルー 「イビルジョーを戻してもいいでしょうかニャ」
メラルー 「と、ウラガンキン様からの伝言ですニャ」
ベルキュロス剛種 「……火山に人影か……」
ベルキュロス剛種 「イビルジョーは全て喰らってしまい、確認が出来ない」
ベルキュロス剛種 「分かった。私が見に行こう。ガンキン様には、そのようにお伝えするのだ」
メラルー 「合点ですニャ!(ササッ)」

851: 2009/08/14(金) 12:23:15.67 ID:iIQPapQ0
ベルキュロス 「と……父様……?」
ベルキュロス剛種 「パリアプリアよ、少し空ける」
パリアプリア 「は……はいですだ」
ベルキュロス 「………………」
ベルキュロス剛種 「…………(ドス、ドス)」
ベルキュロス 「父様……」
パリアプリア 「……残念だったなぁ、お嬢。お館様は仕事だで」
ベルキュロス 「(ギリ……)そんなの、ウラガンキンが自分で行けばいいんだ……!!」
ベルキュロス 「摂政だからって、父様ばっかり頼って……」
ベルキュロス 「自分では何も出来ないくせに……!!!」
パリアプリア 「………………」
パリアプリア 「(なでなで)」
ベルキュロス 「な……何をする!」
パリアプリア 「お嬢は口は悪ィけんど、さっき、ちゃーんと謝ろうとしてたなぁ」
パリアプリア 「えらいえらい」
ベルキュロス 「ええいやめぬか! 私はもう子供じゃない!」
パリアプリア 「ははっ。ほうれ、汁が冷めっぞい」

852: 2009/08/14(金) 12:24:53.15 ID:iIQPapQ0
ベルキュロス 「………………」
ベルキュロス 「(父様、私の方を見てもくれなかった……)」
ベルキュロス 「(やっぱり私は……)」
ベルキュロス 「(いらない子なんだ……)」
パリアプリア 「(お嬢…………)」
パリアプリア 「(お館様は、奥方様が亡くなってから、お嬢に冷たくなっだ)」
パリアプリア 「(お嬢は悪くねぇ)」
パリアプリア 「(奥方様に……お館様が守れなかった奥方様に、お嬢がだんだん、似でぎてんだァ)」
パリアプリア 「(お館様のお気持ちもわがっけど、お嬢はまだ子供だで……)」
パリアプリア 「(どうにかしでやりでぇけんどなぁ……)」

853: 2009/08/14(金) 12:26:05.41 ID:iIQPapQ0
―翌朝、水没林―

ベルキュロス 「(家にいるとパリアプリアがうるさいや……)」
ベルキュロス 「(抜け出してきちゃった)」
ベルキュロス 「(父様……結局昨日は帰ってこなかった……)」
ベルキュロス 「(火山…………)」
ベルキュロス 「(王家の連中がいる所なんて、行きたくない……)」
ベルキュロス 「(でも、父様……)」
ベルキュロス 「………………」
ベルキュロス 「(そうだ、昨日の巨大な貝殻……)」
ベルキュロス 「(あれをもう一度拾ってくれば……)」
ベルキュロス 「(父様に、おそろいの真珠の耳飾りをプレゼントできる……)」
ベルキュロス 「(………………)」
ベルキュロス 「(でも、今度こそ、捨てられちゃうかも……)」
ベルキュロス 「(私は、要らない子なんだ……)」
ベルキュロス 「………………」

854: 2009/08/14(金) 12:26:56.85 ID:iIQPapQ0
ラギアクルス 「……?」
ラギアクルス 「ベルキュロス様!」
ベルキュロス 「! ラギアクルス!? こんな入り口で何をしている?」
ラギアクルス 「ベルキュロス剛種様から伝達がありました。ここから先は、立ち入り禁止になっております」
ラギアクルス 「申し訳がありませんが、お引き返しください」
ベルキュロス 「(父様……)」
ベルキュロス 「(私には何も、直接言ってくれなかったのに……)」
ベルキュロス 「………………」
ラギアクルス 「……?」
ベルキュロス 「…………う、うるさい!」
ラギアクルス 「……な……」
ベルキュロス 「騎士団風情が無礼であるぞ。『王族』の私が通るといっているのだ」
ベルキュロス 「道を空けい、駄竜!」
ラギアクルス 「…………」
ラギアクルス 「ベルキュロス様、ご立腹推し量りまする。しかしながら我は、その王家に仕える身」
ラギアクルス 「王家次期党首候補のあなた様に危険が及ばぬようにするのも、我が命をかけての努めの一つです」
ベルキュロス 「ふんッ」
ベルキュロス 「次期党首候補……よく言うわ。王家の犬のくせに」
ラギアクルス 「………………」

855: 2009/08/14(金) 12:28:23.44 ID:iIQPapQ0
ベルキュロス 「貴様と話すことなど何も無いわ」
ベルキュロス 「ただ散歩で立ち寄っただけよ」
ラギアクルス 「左様でしたか」
ラギアクルス 「お気に障ってしまったのなら、謝罪いたします」
ラギアクルス 「我はこのあたりを巡回しておりますので、何かありましたら御用付けください」
ラギアクルス 「それでは……(とぷり)」
ベルキュロス 「ふん!(くるり)」
ベルキュロス 「(何よ、パリアプリアの奴……)」
ベルキュロス 「(何が、真珠のお守りは幸運を呼ぶだ! 邪魔者がいるじゃない!)」
ベルキュロス 「(王家の犬が……)」
ベルキュロス 「(王家なんてみんな滅びちまえばいいんだ……!!!)」
ベルキュロス 「(バサァッ)」

856: 2009/08/14(金) 12:29:28.67 ID:iIQPapQ0
ベルキュロス 「(はぁ……)」
ベルキュロス 「(父様……)」
ベルキュロス 「(火山で、何かがあったのかな……)」
ベルキュロス 「(火山に行くなっては、言われていないよね……)」
ベルキュロス 「(バサァッ)」
ベルキュロス 「! パリアプリア!」
パリアプリア 「お嬢ー! お嬢ー!!(ドドドドド)」
ベルキュロス 「何をしてるのこんなところで(バサッ)」
パリアプリア 「あぁよかっだ! お嬢、人の里に行ってるのかと思っだ!!」
ベルキュロス 「そんなことしないわ……」
ベルキュロス 「…………」
パリアプリア 「こんなことぁしてらんね。お嬢、今すぐ巣さ帰ってくれ!」
ベルキュロス 「? 何かあったの?」
パリアプリア 「火山に人間が入り込んだでな。今、ウラガンキン様から外出禁止令がこの辺りに発令されたんだァ」
ベルキュロス 「火山に……人間!?」

857: 2009/08/14(金) 12:30:55.39 ID:iIQPapQ0
ベルキュロス 「父様が……!!」
パリアプリア 「わぁーっでる! わかっでる。連絡がねんだ。んだから、これからおでがいっでくっがら」
パリアプリア 「お嬢はここを動かねで……」
ベルキュロス 「父様……!!!(バサッ!!)」
パリアプリア 「お嬢! 駄目だで!!!」
ベルキュロス 「(ヒュゥゥゥゥ)…………(父様が、人間と……!?)」
ベルキュロス 「(もしかして、人間にひどい目に……)」
ベルキュロス 「(でも火山にはイビルジョーやアグナコトルが……)」
ベルキュロス 「(ブンブン)…………(王家なんて信じられるもんか!)」
ベルキュロス 「(父様、もしかしたらお一人で戦ってるのかも……)」
ベルキュロス 「(私が……)」
ベルキュロス 「(私がお助けするんだ……!!!)」

858: 2009/08/14(金) 12:32:39.43 ID:iIQPapQ0
―火山、同時刻―

スラッシュアックス 「はぁ……はぁ……」
熟練ハンターA 「くそっ……残ったのは俺とお前だけか……」
熟練ハンターA 「回復薬も底をついた。それに……」
イビルジョー 「ギャォォォォォオオオオ!!」
熟練ハンターA 「危険すぎる。あれは恐暴竜だ!!」
熟練ハンターA 「俺たちの姿を見失って騒いでるんだ」
熟練ハンターA 「この隙に逃げるぞ!」
スラッシュアックス 「……俺は逃げん!(ガシャコン)」
熟練ハンターA 「何言ってんだ! この頭数で、恐暴竜を相手に出来るわけがないだろ!!」
スラッシュアックス 「…………」
熟練ハンターA 「炎戈竜は何とか撒いたが……舞雷竜まで合流してきやがった……!!」
ベルキュロス剛種 「シャァァ………………」
熟練ハンターA 「聞いてるのか!? この辺りのウロコトルやリノプロスは殲滅したが、あんな大型二匹……」
熟練ハンターA 「殺されるぞ!!!」
スラッシュアックス 「お前は逃げろ。巻き添えになる前に(バッ)」

859: 2009/08/14(金) 12:34:33.60 ID:iIQPapQ0
熟練ハンターA 「お前……スラッシュアックス、お前それは……!」
スラッシュアックス 「俺が改良した、小型の大樽爆弾Gだ。一つで大岩を吹っ飛ばす威力がある」
スラッシュアックス 「全部で五十本だ」
スラッシュアックス 「一度に起爆させれば、いくら恐暴竜だといっても手傷を負わせられるはずだ!」
熟練ハンターA 「だ……だが無茶だ!」
熟練ハンターA 「もう罠だって使い切っちまってないんだぞ!」
スラッシュアックス 「だが……俺は逃げるわけにはいかない……(ギリ……)」
スラッシュアックス 「モンスターは皆頃しにする……!!」
スラッシュアックス 「あの恐暴竜には、おびただしい数の仲間がやられた!」
スラッシュアックス 「それに、あの舞雷竜……!!!!」
スラッシュアックス 「あれは……俺の両親の仇を……」
スラッシュアックス 「仇をかばった、敵だ……!!」

860: 2009/08/14(金) 12:36:15.53 ID:iIQPapQ0
スラッシュアックス 「いいか!? 俺は族長だ! 人間の長だ!」
スラッシュアックス 「背を向けて『逃げる』というのがどういうことか、分かるか?」
スラッシュアックス 「1パーセントでも勝てる見込みがあるのに、そこで逃げてしまったら……」
スラッシュアックス 「そこで諦めてしまったら……」
スラッシュアックス 「俺たち弱い『人間』は、もう二度と挑もうと思えなくなってしまう」
スラッシュアックス 「俺たち人間は、そこで終わってしまう!」
スラッシュアックス 「弱い人間は、諦めてしまったらそこで負けだ。永遠に! 二度と勝つことは出来ない!!」
スラッシュアックス 「だが俺はハンターだ。モンスターを狩る、モンスターハンターだ!!」
スラッシュアックス 「諦めぬ! 逃げぬ!」
スラッシュアックス 「敵は、俺が食い止める……!!!!!」
熟練ハンターA 「滅茶苦茶な暴論だ! 氏んじまったら元も子もないんだぞ!!」
スラッシュアックス 「それでもやるんだ!」
イビルジョー 「! ギャォォォオオオオオオォオオ!!!!」 
熟練ハンターA 「!!!! こっちに気づいたぞ!」
ベルキュロス剛種 「シャォォォォ!!!」

861: 2009/08/14(金) 12:37:07.60 ID:iIQPapQ0
イビルジョー 「ゲヘヘヘヘヘヘヘ!! ヒャハハハハハ!! ゲス野郎二匹見ィィィィッけェェ!!!」
ベルキュロス剛種 「気をつけろイビルジョー。あの人間には見覚えがある」
ベルキュロス剛種 「かなり強力な武器と道具を使う……見た目にだまされてはならぬ」
イビルジョー 「ケケケケケ!! 構やしねぇ! 人間が何をしようがな!」
イビルジョー 「所詮人間は人間よぉぉぉぉ! 何をやろうが、俺ァァ! ン!! ノン! ストップ!!」
イビルジョー 「かくれんぼはおしまいだぜぇぇぇぇ!! ド腐れ共の残党狩りじゃぁぁぁ!!」
イビルジョー 「ギャオオオオオ!!(ドドドドド)」
ベルキュロス剛種 「(戦闘モードに入ったイビルジョーを止めることは出来ん……)」
ベルキュロス剛種 「(この目で、確かに人間の侵入と、一部の撃退は確認したが……)」
ベルキュロス剛種 「(何だ? この妙な胸騒ぎは……)」
イビルジョー 「ケケケケケケケケ!!!(ドドドドド)」
スラッシュアックス 「もう少し……もう少しだ……」
熟練ハンターA 「もう駄目だ……!!」
スラッシュアックス 「諦めるな!」
イビルジョー 「ギャオオオオオ!!!!」
スラッシュアックス 「巨体が災いしたな! 食らえ!!!!(カチッ)」
 >ドカンッ

862: 2009/08/14(金) 12:37:58.49 ID:iIQPapQ0
イビルジョー 「(ガクンッ)……な……ッ!?」
ベルキュロス剛種 「(イビルジョーの体が傾いた……! 何かに躓いたのか!?)」
ベルキュロス剛種 「(あの人間、溶岩でドロドロの場所を岩で隠して、簡易的な落とし穴を……)」
ベルキュロス剛種 「(いつの間に……!!)」
イビルジョー 「しゃらくせぇぇぇ!!(ググググ)」
熟練ハンターA 「攻撃が来るぞ!」
スラッシュアックス 「(口を開けた……! 今だ……!!!!)うおおおおおおお!!!(ダダダダダッ)」
熟練ハンターA 「スラッシュアックスーッ!!!!」
ベルキュロス剛種 「(何だ!? あの人間、逃げるではなく向かってくる!?)」
ベルキュロス剛種 「イビルジョー! 何かおかしい、下がれ!!」
イビルジョー 「アァァァ!?」
スラッシュアックス 「遅い!!(ブゥゥゥゥゥンッ!!!)」
イビルジョー 「(バクンッ!)」
ベルキュロス剛種 「(イビルジョーの口に、人間が何か大きなものを投げ込んだ!)」
 >チュッ………………ドォォォォォォォォォォォンッ!!!!
ベルキュロス剛種 「うおおおおおお!?」
イビルジョー 「ギャァァァァァァアア!!!!」
スラッシュアックス 「特製大樽爆弾Gと、斬裂弾、竜撃弾!! 閃光弾全ての味はどうだ!!!!!」

863: 2009/08/14(金) 12:40:03.56 ID:iIQPapQ0
イビルジョー 「(ふら……ふら……)」
ベルキュロス剛種 「イビルジョー!!!」
ベルキュロス剛種 「くっ……爆発の閃光と土煙で、何も見えぬ!!!」
スラッシュアックス 「がぁぁああああああッ!!!!」
ベルキュロス剛種 「!!!!!!!!!?」
ベルキュロス剛種 「(こっ……この人間……!!)」
ベルキュロス剛種 「(最初から、イビルジョーではなく、私を狙っていたのか!!!?)」
スラッシュアックス 「もらったァァァァ!!!!」
スラッシュアックス 「父の仇……母の仇……」
スラッシュアックス 「散っていった仲間達の仇……!!!!」
スラッシュアックス 「全ての子供と、全ての人間のために……!!!」
スラッシュアックス 「ハンターを…………ナメるなぁぁぁぁああ!!!」
スラッシュアックス 「(ザンッッ!)………………うあああああ!(ズッ……ドドドドドドドド)」
ベルキュロス剛種 「…………!!!!!!!!!!」

864: 2009/08/14(金) 12:41:14.80 ID:iIQPapQ0
ベルキュロス 「父様ァァァ!!!」
ベルキュロス 「(イ……イビルジョーの全身から煙が……!!)」
ベルキュロス 「(それに、すさまじい音と、煙と光……!!)」
ベルキュロス 「(父様、戦ってるんだ!!!)」
ベルキュロス 「父様! お返事を……お返事をしてください!!!」
ベルキュロス 「父様ァァーー!!!」
ベルキュロス 「あ………………」
ベルキュロス剛種 「………………(ズゥゥゥゥン)」
ベルキュロス剛種 「………………」
ベルキュロス 「父……様……?」
スラッシュアックス 「はぁ…………はぁ………………」
スラッシュアックス 「うおおおおおお!!!」
ベルキュロス 「(ビクッ…………!!)」
ベルキュロス 「(な……何だ!? この人間の……声……!!)」
ベルキュロス 「(怖い……? きょ、狂気……狂気を感じる!!!)」
ベルキュロス 「ああ………………あ…………」
ベルキュロス 「父…………………………様……………………」

865: 2009/08/14(金) 12:42:06.37 ID:iIQPapQ0
イビルジョー 「が……カ…………(ズゥゥゥゥン)」
ベルキュロス 「イビルジョーまで……!!!」
ベルキュロス 「…………う……嘘………………」
ベルキュロス剛種 「父様! 父様ァァー!!!」
スラッシュアックス 「!! 仲間か!!」
スラッシュアックス 「(小さい! この舞雷龍の子供か!!)」
スラッシュアックス 「(禍根は残さん!!)……!!(ガシャコン)」
ベルキュロス 「父様が……父様が……!!!!」
ベルキュロス 「誰かァァ!!!」
スラッシュアックス 「隙だらけだ! 喰らえェェェ!!!(ブゥゥンッ!!!)」
×××××× 「危ない!!!!(ドドドドドド)」
スラッシュアックス 「(ズザシュッ!!!)くっ……何だ!(バッ)」

866: 2009/08/14(金) 12:43:15.02 ID:iIQPapQ0
ベルキュロス 「あ……ああ…………」
パリアプリア 「お……お嬢、怪我は…………?」
ベルキュロス 「パリア! 何で……」
パリアプリア 「お嬢こそ……何で火山に…………」
パリアプリア 「まっだく、聞き分けのない子だない…………」
ベルキュロス 「パリア! 父様が息を…………」
パリアプリア 「…………(ガクリ)」
ベルキュロス 「!!!!!!」
ベルキュロス 「パリア!!」
ベルキュロス 「きゃぁぁああ! 血が…………お前の頭から、血が!!!!」
パリアプリア 「………………お、嬢。逃げるんだ」
パリアプリア 「あの人間は……ヤバいでよ…………」
パリアプリア 「化け物じみた…………狂気を感じるでよ…………」
ベルキュロス 「ば……バカを申すな!! 父様も……お前も、早く手当てを…………」
ベルキュロス 「誰か! 誰かぁぁ!!!」

867: 2009/08/14(金) 12:44:05.47 ID:iIQPapQ0
スラッシュアックス 「何かと思えば呑竜が乱入してきたのか……」
スラッシュアックス 「だが今の一撃で致命傷を与えた……!!」
スラッシュアックス 「やれる! 舞雷竜の子供もろとも!!」
スラッシュアックス 「うおらぁああ!!(ブゥン!)」
ベルキュロス 「(ビクッ)……!!」
パリアプリア 「お嬢!!」
パリアプリア 「(バッ)…………ッ!(ザグシュッ!!)」
パリアプリア 「……ガアァァ!!」
ベルキュロス 「パリア! パリア!!!」
スラッシュアックス 「うおおおお! 氏ねぇぇえ!!」
パリアプリア 「(ザシュッ! ザバシュッ!!!)ガッ……ガァァ!! ガァァアア!!」
ベルキュロス 「パリア! パリア、私から体をどけるのだ!!」
ベルキュロス 「反撃して!!! パリア!!!!」
パリアプリア 「……………………」
スラッシュアックス 「はぁ…………はぁ………………」
スラッシュアックス 「やった……」
スラッシュアックス 「俺一人で……モンスターどもを…………!!!!」
パリアプリア 「………………(ズゥゥゥン)」

868: 2009/08/14(金) 12:45:23.96 ID:iIQPapQ0
ベルキュロス 「あ……ああ…………」
スラッシュアックス 「ふん、恐怖で威嚇をするしかないか、舞雷竜の子供……」
スラッシュアックス 「(ガシャコン)」
スラッシュアックス 「お前たちに殺された子供達の気持ちが分かるだろう……」
スラッシュアックス 「お前たちに蹂躙された仲間達の気持ちが……叫びが……!!!」
スラッシュアックス 「俺の父と母を頃し、仲間達を頃し、それでものうのうと生きているお前たちモンスター!!!」
スラッシュアックス 「俺は、お前たちを絶対に許さないッ!!!」
パリアプリア 「ガ……アァァァ!!!(ドドドドドドッ)」
スラッシュアックス 「!! (ドズゥッ!!)ぐはぁぁああ!」
スラッシュアックス 「(ドガッ)………………(ずるずる)」
スラッシュアックス 「(くっ……)」
スラッシュアックス 「(呑竜が最後の力で……体当たりを……)」
スラッシュアックス 「(腕が折れた……くそっ!!!!!!)」
ベルキュロス 「パ……パリア…………」
スラッシュアックス 「貴様も……」
スラッシュアックス 「貴様も覚えたぞ……」
スラッシュアックス 「禍根は残さん! 絶対に俺の手でしとめてくれる!!(バッ)」

869: 2009/08/14(金) 12:46:15.80 ID:iIQPapQ0
ベルキュロス 「(人間が逃げていく……)」
ベルキュロス 「(か……体が動かない……)」
ベルキュロス 「(あれは人間ではない……化け物だ…………)」
ベルキュロス 「(こ……怖い……)」
ベルキュロス 「(怖いよ………………)」
ベルキュロス 「……………………」
イビルジョー 「………………」
ベルキュロス剛種 「………………」
パリアプリア 「………………」
ベルキュロス 「父様……? パリア……?」
ベルキュロス 「パリア……(ゆさゆさ)」
パリアプリア 「………………」
ベルキュロス 「パリア……」
パリアプリア 「…………ゲホッ…………」
ベルキュロス 「!!! パリア!!」
パリアプリア 「…………お、嬢…………無事でよかった……だ……」

870: 2009/08/14(金) 12:47:13.88 ID:iIQPapQ0
ベルキュロス 「しゃ……しゃべるでない。今助けが……」
パリアプリア 「おでは……もう、駄目だで。へっへ……しくったなァ…………」
ベルキュロス 「パリア……パリア、父様が……それに、お前まで……?」
ベルキュロス 「嘘……そんなの嘘だ……」
ベルキュロス 「嘘だ……」
ベルキュロス 「王家は……王家は何をしている!!」
ベルキュロス 「助けはまだか!!!!!」
パリアプリア 「おいおいィ…………泣くんで……ねぇよ、お嬢…………」
ベルキュロス 「ひっく……ひっく…………」
パリアプリア 「王家を……憎んじゃいけねぇだ……」
パリアプリア 「みんな……仲良くだ……」
パリアプリア 「泣くんでねぇ…………美人さんが台無しだぁ……」
パリアプリア 「真珠のお守りは……幸運の……」
パリアプリア 「……………………」
ベルキュロス 「パリア!? パリア!!!!」
パリアプリア 「……………………」
ベルキュロス 「うわぁああぁぁああぁぁあ!!!」

871: 2009/08/14(金) 12:48:26.95 ID:iIQPapQ0
―現在、モガの村―

スラッシュアックス 「…………」
スラッシュアックス 「(ハンマー……太刀、何故だ?)」
スラッシュアックス 「(モンスターは俺たちの敵のはずだ。なのに……)」
スラッシュアックス 「(…………それに、俺は確かにモンスターの群れの中に女の子が混じっているのを見た)」
スラッシュアックス 「(物の怪か幻かと思ったが、やはりあれは小さな女の子……)」
スラッシュアックス 「(捕まっているのか……? いや、そうは見えなかった……)」
スラッシュアックス 「(もしやハンマーたちは、あの子を守ろうとして……)」
スラッシュアックス 「…………」
スラッシュアックス 「(モンスターは敵だ)」
スラッシュアックス 「(俺は、それだけを信条に今まで生きてきた)」
スラッシュアックス 「(たくさんのモンスターを頃し、たくさんの仲間がやられた……)」
スラッシュアックス 「(その上で、今の生活があるんだ……)」
スラッシュアックス 「(その生活を、均衡を壊させるわけにはいかん……)」
スラッシュアックス 「(モンスターに組する者は仲間ではない……)」
スラッシュアックス 「(排除しなければいけない、敵だ……!!!)」

872: 2009/08/14(金) 12:49:17.75 ID:iIQPapQ0
熟練ハンターA 「スラッシュアックス、どういうことなんだ!?」
熟練ハンターA 「あんたの友達とやらは、モンスターを庇っているようにしか見えなかった」
熟練ハンターA 「それに、見たことのないモンスターに乗ってきたじゃないか!」
熟練ハンターA 「どういうことなのか説明をしてくれ!」
スラッシュアックス 「………………」
スラッシュアックス 「俺も、詳しいことまでは知らん。だが……」
スラッシュアックス 「ハンマーがこの島に来た時、妙な事を俺に聞いていた」
スラッシュアックス 「『モンスターの群れの中に女の子を見なかったか』とな……」
熟練ハンターB 「女の子……?」
熟練ハンターD 「俺……見たぞ! 戻るとき、確かに女の子が何かを叫んでいるのを見た……」
熟練ハンターD 「あの時は見間違いかと思ったが……」
スラッシュアックス 「………………」
スラッシュアックス 「どうやら、ハンマーと太刀の狙いはその女の子らしい」
スラッシュアックス 「そして、信じがたいことだが、その子はモンスターの中で生活をしているようだ」
熟練ハンターA 「モンスターの中で!? そんなバカな!」
スラッシュアックス 「考えられないことではない。モンスターにも高度な知能を有する者がいる」
スラッシュアックス 「ただ、敵意を持たずに保護しているという事実が少々気になるが……」

873: 2009/08/14(金) 12:50:20.63 ID:iIQPapQ0
熟練ハンターA 「どうするんだ、スラッシュアックス」
熟練ハンターA 「さっきの戦闘で、モンスターを刺激してしまった。奴らはきっと報復に出るぞ」
熟練ハンターA 「女の子のことなんて、考えている暇は無いんじゃないのか?」
スラッシュアックス 「(ギリ……)その通りだ」
スラッシュアックス 「それに……あの中に、俺の仇の姿を見た……」
スラッシュアックス 「(黒い毛皮に、赤い眼の獣……)」
スラッシュアックス 「(あれは紛れもなく、父と母を頃したモンスターの片割れ……!!)」
スラッシュアックス 「(谷底に落としたと思っていたが、生きていたとは……)」
スラッシュアックス 「引くわけにはいかない……」
スラッシュアックス 「俺たちは村を守らなければいけない」
スラッシュアックス 「そのためには、モンスターを狩り続けなければいけないんだ」
スラッシュアックス 「ハンマーや太刀が立ちふさがるというのならば、蹴散らして進むのみよ!」
熟練ハンターB 「で……でも、女の子は?」
熟練ハンターB 「モンスターの中にいるとしても、人間であることに代わりは無いんだろう」
熟練ハンターB 「保護するべきじゃないのか?」
熟練ハンターD 「確かに……仲間を傷つけるのは気が引けるぜ……」
スラッシュアックス 「……まだきちんと見たわけではない。その子が何なのか、確認しなければいけない」
スラッシュアックス 「古い伝承では、いにしえの竜はあらゆるものに姿を変えることが出来る力を持っていたとも聞く」
スラッシュアックス 「(あのときに聞いた叫び声……あれは人間の言葉ではなかった……)」

874: 2009/08/14(金) 12:51:43.73 ID:iIQPapQ0
熟練ハンターB 「まさか……竜神がこのモガに降りてきてるって言うのか!?」
スラッシュアックス 「あくまで憶測だ。だとしたら、モンスター全体の総攻撃という危険も考えられる……」
熟練ハンターA 「それは……」
スラッシュアックス 「憶測だ。まずは真実を確かめなければいけない」
スラッシュアックス 「砂上船を出すんだ」
スラッシュアックス 「土砂竜には手傷を負わせた。あのモンスターの群れは、そう遠くにはいっていないはずだ」
スラッシュアックス 「(それに、ハンマー達も……)」
スラッシュアックス 「攻撃をかけるなら今だ」
熟練ハンターD 「し……しかし、あのハンター達は相当な手馴れだ」
熟練ハンターD 「モンスターに加えて、あいつらも相手になんて……」
スラッシュアックス 「(ガシャコン)…………」
スラッシュアックス 「俺が出る」
スラッシュアックス 「奴らとは、俺が話をつけよう。奇妙な女の子のことも……」
スラッシュアックス 「今は、手傷を追った土砂竜が奥地に逃げ込む前に、トドメをさすことを考えよう」
スラッシュアックス 「この機を逃したら、次はいつ戦えるかわからん」
スラッシュアックス 「村中のハンターを集めるんだ!!」

875: 2009/08/14(金) 12:52:36.68 ID:iIQPapQ0
―砂原、夜―

ドスジャギィ 「聞いてねぇぜ、ベルキュロス様よ。あんなけったいな奴らがついてるなんてな」
ベルキュロス 「…………」
ドスジャギィ 「人間とボルボロスを戦わせる方法は成功したが、今一歩で邪魔が入った」
ドスジャギィ 「あいつらは何者なんだ? 見たこともねぇ奴らだ」
ベリオロス 「…………異国の者だ」
ドスジャギィ 「異国? まさか、海を渡ってあっちの大陸から来たってのか?」
ドスジャギィ 「そういや、あんたにそっくりな黒い獣もみたような……」
ベリオロス 「………………」
ドスジャギィ 「な……何だよ睨むなよ。俺はただ見たまんまを言っただけだぜ」
ベリオロス 「………………」
ベリオロス 「(ベルキュロス様の父、ベルキュロス剛種様には、命を救っていただいた恩がある)」
ベリオロス 「(それゆえ娘の気まぐれに付き合うことにしたが……)」
ベリオロス 「(気になる……あのモンスターは……)」
ベリオロス 「(本当に、私の息子なのか……!?)」
ベルキュロス 「……それで尻尾巻いて逃げ出してきたってか? ドスジャギィ」

876: 2009/08/14(金) 12:53:27.55 ID:iIQPapQ0
ドスジャギィ 「! し……仕方ねぇだろ。頭数が違いすぎる」
ベルキュロス 「くそ……王家め。あっちの大陸から助っ人を呼ぶとは思ってもいなかった……」
ベルキュロス 「いつでもしぶとく、卑怯な手使いやがって……!!」
ドスジャギィ 「騎士団も戻ってきちまった。ラギアが近くにいる限り、ボルボロスにゃもう手は出せねぇ」
ベルキュロス 「お前……人間を戦わせたって言ってたね」
ドスジャギィ 「ああ。いつもの村の、いつもの野郎だ。見たら逃げろって言われてるアレな」
ベルキュロス 「ふふ……くくくっ……」
ベルキュロス 「それならなおさら好都合じゃないか」
ベルキュロス 「そいつは絶対に、手傷を負わせた相手を忘れない」
ベルキュロス 「何年たっても、どこまでも追いかけてくる化け物さ」
ベルキュロス 「ボルボロスが傷をつけられたんなら、後は勝手にあっちからやってきてくれる」
ベルキュロス 「そう遠くないうちにね……」
ベルキュロス 「(あの化け物と、王家が共倒れになってくれれば……)」
ベルキュロス 「ふふ……ようはボルボロスと、ガンキン二世が氏ねばことたりるんだ」
ベルキュロス 「まだ、あたしたちの勝ちの目は消えてないよ……」
ベリオロス 「………………」

877: 2009/08/14(金) 12:54:19.13 ID:iIQPapQ0
―凍土、ドスバギィの巣、深夜―

少女 「(ウラちゃん……まだ私から離れない……)」
少女 「(おじさんも……)」
ウラガンキン 「ブフー…………ブフー…………」
クック 「グガァ……グガァ……」
少女 「(私、モンスターの言葉がわからなくなっちゃった……)」
少女 「(私がここにいる意味って何だろう……)」
少女 「(言葉もわからないのに、ウラちゃんは私のことを……)」
少女 「(私はウラちゃんの顔を見ることも出来ない……)」
少女 「(守ってあげることも出来ない……)」
少女 「(私はここで、みんなと一緒にいていいの……?)」
少女 「…………」
少女 「(なでなで)」
ウラガンキン 「グゥ……」

878: 2009/08/14(金) 12:55:33.05 ID:iIQPapQ0
少女 「あのね、私は……」
少女 「あなたの、本当のお母さんじゃないの」
ウラガンキン 「ブフー……ブフー……」
少女 「私にはあなたを守ってあげられる力もないし……」
少女 「モンスターのみんなと一緒にいる資格もなくなっちゃったの」
少女 「ここには、あなたのお母さんもいる……」
ボルボロス 「グゥ…………グゥ…………」
少女 「あなたのお母さんはとても強い人だし、あなたを守ってくれる騎士団の皆さんは、頼りになるよ」
少女 「私はいない方が……いいのかもしれないね」
少女 「……………………」
少女 「(すっ)」
少女 「?」
少女 「…………ウラちゃんが、私の手を握ってる……」
少女 「…………」

879: 2009/08/14(金) 12:56:35.90 ID:iIQPapQ0
ハンマー 「少女、どこに行こうというんだ?」
少女 「ハンマーさん……」
ハンマー 「炎王龍達が特に何も言わないので、俺たちも泊まらせてもらった。少し奥にテントがある」
ハンマー 「そっちに来るか?」
ハンマー 「……いや、君はここの方がいいか……」
クック 「ガァ……ガァ……」
少女 「………………」
少女 「うぅん……そっちにいく」
少女 「(ごめんね、ウラちゃん)」
クック 「………………」
ハンマー 「そうか。携帯食料を持ってきている。何か腹に入れておいた方が良いだろう」
少女 「ありがとう……」

880: 2009/08/14(金) 12:58:06.62 ID:iIQPapQ0
~ハンマー達のキャンプ~

太刀 「へぇ、そんなことがあってから、モンスターの声が聞こえるようになったんだ」
少女 「うん……私は、ずいぶん長い間それが当たり前だと思ってたんだけれど……」
少女 「ハンマーさんに聞いて、それがとっても特別なことだって気がついたの」
太刀 「ね、モンスターはどんなことを言ってるの?」
太刀 「あたしそれ、すごく興味があるな」
少女 「え……どんなことって……」
少女 「クックおじさんは、私に始めてやさしくしてくれて……」
少女 「テオ先生は、時々怖いけれど、面白いお話をたくさん知ってて……」
少女 「ナルガさんやキングさんはあんまり話さないけれど、とってもやさしい人……」
少女 「みんな、みんなすごくいい人だよ」
少女 「人間と変わらないよ」
少女 「ううん……人間より……」
少女 「………………」
太刀 「そっかぁ。昔ね、あたし爺ちゃんに聞いたことがあるんだ」
太刀 「モンスターにも家族がいて、学校があって、あたしたちと同じように考えて暮らしてるって」
太刀 「そのときは良くわからなかったけど、あんたを見てて何となくわかるような気がするよ」

881: 2009/08/14(金) 12:59:35.81 ID:iIQPapQ0
少女 「でも……私、言葉わからなくなっちゃった……」
少女 「もう、どこにもいけない……」
ハンマー 「…………」
ハンマー 「そんなことはないと思うぞ、少女」
少女 「?」
ハンマー 「お前の親は、お前の目が見えなくなっても、お前の耳が聞こえなくなっても、お前を捨てたりはしないだろう」
ハンマー 「お前は、お前の親が、目が見えず、耳が聞こえなくなったら捨てるのか?」
ハンマー 「邪魔者だと、邪険にするのか?」
ハンマー 「少女、これは大事なことだ。よく、考えてみるんだ」
ハンマー 「どんなに形が違おうが、どんなに種族が違おうが、お前たちは親子、家族、仲間なんだろう」
ハンマー 「少なくとも俺は、お前が人間の言葉を忘れてしまおうが、お前のことを見捨てたりはしない」
ハンマー 「『友達』だからな」

882: 2009/08/14(金) 13:00:26.39 ID:iIQPapQ0
少女 「………………」
少女 「私、まだみんなと一緒にいていいの……?」
少女 「何の役にも立てないのに……」
少女 「声を聞いてあげることも出来ないのに……」
少女 「それでも、あの人たちは、私を家族だって、友達だって、思ってくれるの……?」
ハンマー 「俺にはモンスターの言葉はわからない」
ハンマー 「だが、目はわかる」
ハンマー 「男の目はわかる」
ハンマー 「炎王龍は、迅竜は。お前の父、イャンクックは、そんなにごった目をしていない」
ハンマー 「お前の『子供』、あの竜もそうだ。澄み切った、信じきった目をしている」
ハンマー 「逃げるな、少女」
少女 「!!」
ハンマー 「お前は、人間が一生をかけて手に入れようとしている、本当に大切なものを、その手につかもうとしているんだ」
ハンマー 「自分では気がつかないだろうが、もう少しで手が届く所に、お前はいる」
ハンマー 「その本当に大切なものは、とても曖昧なもので、とても不確かなもので」
ハンマー 「簡単なものなのだが、たったそれだけのものを手にするだけのことが、人間には中々出来ない」
ハンマー 「それは、誰かを心の底から信じて、そして誰かに心の底から信じられるということだ」
ハンマー 「それがあって初めて人間は、生きる意味を得ることが出来るんだ」
少女 「生きる……意味……?」

883: 2009/08/14(金) 13:01:41.87 ID:iIQPapQ0
ハンマー 「だから諦めるな、少女」
ハンマー 「目が何だ。耳が何だ」
ハンマー 「お前はお前じゃないか。ここにいるじゃないか」
ハンマー 「お前の親も、友達も、子供も、ここにいる」
ハンマー 「俺もここにいる」
ハンマー 「お前は一人ではない。立ち向かうんだ」
ハンマー 「お前が欲しいものを手にするために、立つんだ」
ハンマー 「人には、生まれつき許されているたった一つの資格がある」
ハンマー 「それは、幸せをつかむということだ」
ハンマー 「どんな人間にもそれは許されている」
ハンマー 「お前が何を幸せと思い、どれを幸福を感じるのか……そこまで俺は知らない」
ハンマー 「だが、お前が幸せになろうとすること、それは罪ではない」
ハンマー 「その結果、俺はお前がモンスターの中で生きることを、行き続けることを選択することは……」
ハンマー 「それが幸せのために望むことだったら、間違いではないと思うんだ」
少女 「ハンマーさん……」
少女 「ハンマーさん、私…………」
少女 「私…………(ひくっ)」

884: 2009/08/14(金) 13:03:03.23 ID:iIQPapQ0
少女 「う……うう…………」
ハンマー 「心細いときは泣けばいい(ポンポン) 気を使うことはない。お前がいくら特別でも……」
ハンマー 「俺たちは、友達だ」
太刀 「(ふぅ)」
太刀 「(適わないなぁ、こいつには……)」
クック 「……………………」
太刀 「うわぁ!! いつの間に!?」
ハンマー 「イャンクック。話を聞きに来たのか」
少女 「おじさん…………」
クック 「クワァ、クッ、クッ、クッ」
少女 「おじさん、ごめんなさい……」
少女 「私、おじさんのこと大好きなのに……」
少女 「おじさんの声も、顔もわからないよ……」
ハンマー 「………………」
ハンマー 「イャンクック、俺たち人間の携帯食料だ。少し火で炙っておいた。食うか?」
クック 「………………」
ハンマー 「ほら(ポイッ)」
クック 「(パクッ)…………(モグモグ)」

885: 2009/08/14(金) 13:04:01.94 ID:iIQPapQ0
太刀 「イャンクックが……私たちの食料を食べた……!!」
クック 「クケェ」
ハンマー 「何だ? 腰に何かぶら下がってるな」
少女 「あ……」
少女 「私が、出かける前に狂走エキスのお酒を用意してあげたの……」
ハンマー 「俺達に、くれるというのか?」
ハンマー 「ありがとう、イャンクック」
ハンマー 「(グビリ)~~~~ッ!!!!」
ハンマー 「カァッ! やっぱりこの酒は効く!」
太刀 「モ……モンスターの作ったお酒なんて、あたしはじめて飲むよ……」
太刀 「(グビッ)…………苦ッ!!」
少女 「…………(くすり)」
クック 「………………(ニコッ)」

886: 2009/08/14(金) 13:04:52.89 ID:iIQPapQ0
ハンマー 「(気のせいか……今、イャンクックが笑ったような気がした)」
ハンマー 「何を突っ立っているんだ、イャンクック。こっちに来て、一緒に飲もうじゃないか」
クック 「クケェ(ドスッ)」
太刀 「うわっ! あたしの……あたしの隣にイャンクックが腰を下ろした!!!」
少女 「おじさん……」
クック 「ケェ(スリスリ)」
ハンマー 「少女、言葉が何だ?」
少女 「……」
ハンマー 「種族が何だ。俺とイャンクックは、これで友達になったぞ」
ハンマー 「太刀もだ。これで俺たちは友達だ。お前のおかげで」
少女 「私の……おかげ?」
ハンマー 「ああ。お前がいなかったら、俺たちはここに来ることも無かった」
ハンマー 「イャンクックに酒を振舞われることも無かった」
ハンマー 「わかるか? お前は、自分で思っている以上にこの男の家族なんだ」
少女 「おじさん……」
クック 「クケェ」
少女 「(ぎゅっ……)」

887: 2009/08/14(金) 13:06:00.37 ID:iIQPapQ0
―砂原、深夜半―

クルペッコ 「(むぅ、これだけお呼びしても姿を現す片鱗さえないとは……)」
クルペッコ 「(ジエン・モーラン老はいったいいずこへ……)」
クルペッコ 「(過去の移動範囲から推測すると、この辺りで間違いないのだが……)」
クルペッコ 「(もう一度、ソウルを響かせてみるとするか……)」
クルペッコ 「(む!? あれは……)」
クルペッコ 「(人間の砂上船!!)」
クルペッコ 「(こんな夜更けに……しかもあっちは凍土、ボルボロス様たちが休んでおられる場所に……)」
クルペッコ 「(足跡や血から、痕をたどっているのか!!)」
クルペッコ 「(ジエン・モーラン老がお出でにならないのも説明がつく……)」
クルペッコ 「(こうしてはおれぬ。早くボルボロス様たちにこのことをお伝えしなければ……)」
 >ヒュッ……チュッッドォォォンッ!!
クルペッコ 「ガァァァ!!!」
クルペッコ 「(こ……これは……電撃…………)」
クルペッコ 「(ふ…………不覚…………)」
クルペッコ 「(ドサリ)」

888: 2009/08/14(金) 13:07:27.20 ID:iIQPapQ0
ベルキュロス 「(ニヤッ)くくっ……こんなところで何やってたのか知らないけどさ」
ベルキュロス 「ボルボロス達に知らされちゃ困るんだよね、クルペッコ先生」
クルペッコ 「……………………」
ベリオロス 「………………」
ドスジャギィ 「兵の配置終わったぜ。凍土の出口は岩でふさいできた」
ベルキュロス 「ご苦労。さて……人間の、あの化け物と王家が戦って、果たしてどっちが残るか……」
ベルキュロス 「どっちがつぶれても、あたしには得だけどね……」
ベルキュロス 「くくく……ははは!!」
ベルキュロス 「せいぜい頃しあえば良いよ!」
ベリオロス 「(歪んでいる……)」
ベリオロス 「(この子をここまで歪ませるのは、恐怖か……それとも……)」

889: 2009/08/14(金) 13:14:18.11 ID:iIQPapQ0
お疲れ様でした。次回(20~21日)へ続かせていただきます

no title


904: 2009/08/28(金) 12:12:31.18 ID:CfNFRWc0
お疲れ様です。9話を書きましたので投稿させていただきます

905: 2009/08/28(金) 12:13:56.01 ID:CfNFRWc0
9.ナルガクルガ 「家族などいない」

―凍土、真夜中―

ドスバギィ 「……ヘェ。あの人間がな……」
ラギアクルス 「ウラガンキン様が母親だと思われてしまっている。ドスバギィ殿は何か、解決策をご存じないだろうか」
ドスバギィ 「こればかりはどうしようもねぇ……」
ドスバギィ 「卵から産まれた時、普通近くにいるのはその親だ……」
ドスバギィ 「いなかったんなら仕方がねぇさな……」
ボルボロス 「………………」
ドスバギィ 「まだ言葉も上手く介さねぇ赤子だ……教えるにはちと難しい」
ラギアクルス 「やはりそうか……」
ボルボロス 「…………この際、あの子が生きていたことを喜びましょう」
ボルボロス 「遅くなってしまいましたが、あちら側の大陸からお越しいただいた方々……」
ボルボロス 「テオ様、ナルガ様……紫様、それに、卵を救ってくださったトレニャー様」
トレニャー 「いやいやそれほどでも……」
ボルボロス 「ここに、心からお礼を述べさせてください」

906: 2009/08/28(金) 12:14:53.08 ID:CfNFRWc0
テオ・テスカトル 「礼には及ばない。それより、この状況をどうにかすることを考えよう」
ナルガクルガ 「全くだ。ただ返しにきただけが、紛争に巻き込まれてしまうとはな……」
ナルガクルガ 「因果なものよ。俺たちは戦に引き寄せられてしまうタチらしい」
紫ガミザミ 「これ、なるが殿。ぼるぼろす殿は何も悪くはないではないか」
紫ガミザミ 「責めるような口はやめるのじゃ」
ボルボロス 「ふふ……小さなカニさん。ありがとうございます」
ボルボロス 「しかしこ度の騒乱、私にそのほとんどの責任があるといっても過言ではないでしょう」
テオ・テスカトル 「…………」
ボルボロス 「部下の失態や裏切りは主の不敬と申します。主、主足らずば臣、臣足らずとの言があるとおりに……」
ラギアクルス 「言葉もございません……」
ボルボロス 「お前の責任ではありません。全ては、ベルキュロスの心を察してやることができなかった私の罪……」
ボルボロス 「彼女が、ウラガンキン二世の誕生にどれだけ憤懣を抱いていたか、それを知りながら……」
テオ・テスカトル 「自責なさることはないだろう。いつの世も、心は風雲のごとく移り変わるとも言う」
テオ・テスカトル 「誰にもそれを完璧に推し量ることなど、出来ようはずもない」
テオ・テスカトル 「それがたとえ主であれ、臣であれだ」

907: 2009/08/28(金) 12:15:48.18 ID:CfNFRWc0
ボルボロス 「ありがとう。その言葉でわたくしはずいぶんと救われます」
ラギアクルス 「………………」
ボルボロス 「ベルキュロスの戦闘力は高い……それに、あちらにはベリオロスとドスジャギィがついています……」
ボルボロス 「これからどうすべきか……わたくしにも決めあぐねている部分はあります」
ボルボロス 「……そういえば。そこなお方……ナルガクルガ様」
ナルガクルガ 「…………」
ボルボロス 「あなた様は、ベリオロスにまさに……いえ、ベリオロスのかつての伴侶、剛種に瓜二つです」
ボルボロス 「名前をお聞きしたときにもしやと思いましたが……」
ボルボロス 「もしやあなたは……」
ナルガクルガ 「…………剛種とは?」
ボルボロス 「……強く、美しい方でした」
ボルボロス 「しかし、十数年前、人間との激しい戦いの中で、その子供と共にクレバスの中へ……」
ボルボロス 「わたくしたち王家は、何もすることが出来ませんでした……」
ナルガクルガ 「………………」
ボルボロス 「もし、あなたがその子供だとしたら……」

908: 2009/08/28(金) 12:16:49.83 ID:CfNFRWc0
ナルガクルガ 「俺は一人で生きてきた」
ボルボロス 「…………」
ナルガクルガ 「目が覚めた所は奈落の底だった。それから俺は、襲い掛かる者を倒し、無法な者を従え……」
ナルガクルガ 「だからこそ、今の俺がある」
ナルガクルガ 「俺が、俺の力のみで行ったことだ」
ナルガクルガ 「家族や親など、俺にはいない。必要がないものだ」
紫ガミザミ 「…………」
ナルガクルガ 「俺は独りで十分よ。独りは気楽だ……独りが良い」
ボルボロス 「……そうですか。余計な詮索でした」
ナルガクルガ 「気にするな……」
ドスバギィ 「(しかしこの小僧……)」
ドスバギィ 「(ボルボロスの言うとおり、あのときに氏んだ剛種に瓜二つ)」
ドスバギィ 「(子供か……隣の大陸に流れ着いていたとはな……)」
ドスバギィ 「(因果なことよ)」

909: 2009/08/28(金) 12:17:57.37 ID:CfNFRWc0
テオ・テスカトル 「よく分からないのでお聞きしたいのだが、よろしいだろうか?」
ボルボロス 「何でしょうか?」
テオ・テスカトル 「ジエン・モーランとは何者です? 聞き及ぶにあなた方の長ではないようだが……」
ボルボロス 「ジエン・モーラン老は元老院のお一人です」
ナルガクルガ 「元老院?」
ボルボロス 「はい。この大陸は陸と海、二箇所に一つずつ元老院があり、そこを治めるお方なのです」
テオ・テスカトル 「元老院……王家の上に立ち、助言や諫言を行う者のことか……」
ラギアクルス 「いかにも。海の元老院は、我が師ナバルデウス様が治められている」
ラギアクルス 「それと同時に、陸の元老院はジエン・モーラン老が治められているのだが……」
テオ・テスカトル 「?」
ラギアクルス 「ジエン・モーラン老はとても奔放なお方だ。規律や規則を好まず、自由を愛するお方ゆえ」
ラギアクルス 「王家の争いに嫌気がさし、十数年前に行方をくらまされてしまったのだ」
ボルボロス 「…………」
ラギアクルス 「しかし、度々砂原でその姿を確認されている」
ラギアクルス 「ホイッスラーはそれを当てに出て行かれたに違いない」
ボルボロス 「ジエン老にご助言を頼めれば、我が子の問題、それに少女さんの言葉の問題も解けるかもしれません」

910: 2009/08/28(金) 12:20:11.50 ID:CfNFRWc0
テオ・テスカトル 「(ずいぶん前に、ラオシャンロン様に、はるか昔自分と同じ古龍と暮らしていたとお聞きしたが……)」
テオ・テスカトル 「(もしや、そのお方か……)」
ドスバギィ 「……餓鬼と人間は寝たか……」
ウラガンキン 「ぐぅー……ぐぅー……」
少女 「すぅ……すぅ……」
ハンマー 「………………ぐがぁ………………」
太刀 「…………うーん……むにゃ…………」
クック 「グガァ……グガァ……」
ドスバギィ 「人間のくせに太ェやつらよ。人の巣でこうも堂々とくつろがれては、手出しする気も起きねぇ」
テオ・テスカトル 「はは、違いない」
テオ・テスカトル 「あの人間のオスの方は、私たちの大陸で事件があったときに、力を貸してくれた男だ」
ドスバギィ 「ヘェ。人間が……」
テオ・テスカトル 「お話しよう。あの時は……」

911: 2009/08/28(金) 12:21:32.72 ID:CfNFRWc0
ドスバギィ 「……………………聞くに信じられん話だが………………」
ボルボロス 「人間が、そうやってモンスターと共闘するなど……」
ラギアクルス 「驚きだ。こちらの大陸の人間とはずいぶん違うのだな」
テオ・テスカトル 「いや、この人間が特殊なのだろう。それに、少女に好意も持っているらしい」
テオ・テスカトル 「言葉は通じないが、あの時私は、あの男の顔……目に、我らと同じ澄んだ闘志を見た」
テオ・テスカトル 「信用に足りる人物だとは思うのだ」
ボルボロス 「卿にそこまで言わせるとは、よほどの男性なのですね」
ナルガクルガ 「……気に食わんが、腕の立つ男であることは間違いがない」
ナルガクルガ 「それに、今は少女が言葉をしゃべれなくなってしまっている」
ナルガクルガ 「………………奴の力が必要だ……」
紫ガミザミ 「…………(こくり、こくり…………)」
ナルガクルガ 「………………(ぐい……)」
紫ガミザミ 「すぅー…………すぅー…………」
ボルボロス 「なるほど、わたくしを助けてくれたのもそのような理由だったのですか」
ボルボロス 「モンスターであれ、人間であれ、仲間は仲間と考えることが出来る人間がいるなんて……」
ボルボロス 「もう少し早く出会えていれば…………」

912: 2009/08/28(金) 12:22:23.14 ID:CfNFRWc0
テオ・テスカトル 「……………………」
テオ・テスカトル 「ん? 何か気配がするな?」
ドスバギィ 「……客だ」
母バギィ 「父ちゃん、ギギネブラが来たよ」
ドスバギィ 「……入れな」
子バギィ 「ギギィ、こっちだ」
ギギネブラ 「こんばんは。お初にお目にかかります。ギギネブラと申します」
テオ・テスカトル 「!! フルフル殿!?」
ナルガクルガ 「!」
子バギィ 「洞窟の奥で会ってな。つれてきた。親父、いいだろ?」
ドスバギィ 「………………あァ」
ギギネブラ 「おじ様、ごきげんよう。ボルボロス様の匂いもしますね。みなさま重ねてごきげんよう」
ボルボロス 「お久しぶりです、ギギネブラ」
ギギネブラ 「お話は途中で子バギィから聞きました。何でも、異国の方がいらっしゃっているとのことで……」

913: 2009/08/28(金) 12:23:14.53 ID:CfNFRWc0
テオ・テスカトル 「いや、驚いた。あなたにそっくりな方がこちらの大陸にもいるものでな」
子バギィ 「ヘェ、ギギィ、あっちに親戚でもいるのか?」
ギギネブラ 「母が、私の祖父があちらの大陸の出身だと仰っていました。あなた様は……?」
子バギィ 「あぁすまねぇ。ギギィは目が不自由なモンでな。気にしないでくれ」
テオ・テスカトル 「私の知り合いもそうだよ。私はテオ・テスカトル」
ナルガクルガ 「俺はナルガクルガだ」
トレニャー 「おいらはトレニャーでがんす」
ギギネブラ 「……? ナルガクルガ……様……?」
ナルガクルガ 「……?」
ギギネブラ 「いえ、申し訳ありません。ベリオロス様と同じ匂いがしたもので……」
ギギネブラ 「気のせいですわ。あなたからは、深い森の苔の香りがします」
ギギネブラ 「テオ様という方からは、荒れ狂うマグマの香り……」
ギギネブラ 「お二人とも、とても勇壮ながら、やさしさを秘めた香りですわ」
テオ・テスカトル 「これは、お褒めに預かり光栄だ」
ナルガクルガ 「…………」
トレニャー 「おいらは無視ですかい……」

914: 2009/08/28(金) 12:24:07.97 ID:CfNFRWc0
ギギネブラ 「……………………まぁ。私がお昼寝をしている間に、そんな大変なことになっていたなんて」
ギギネブラ 「ウラガンキン様の二世閣下が誕生なさっていたんですね」
ギギネブラ 「通りで懐かしい香りがすると思いました」
ギギネブラ 「しかし、人間がこうやって私たちと仲良くするなんて……」
ギギネブラ 「素敵なことですわ(にこり)」
子バギィ 「ギギィは平和主義者だからな。何でも受け入れちまって困りモンだ」
母バギィ 「はいはい、酒追加よ、飲みねぇ(ドスドス)」
テオ・テスカトル 「や、これはありがたい(ぐびり)」
ナルガクルガ 「(ぐびり)」
トレニャー 「ケェー……ぺっ、ぺっ、辛っ。甘酒はねぇんですかい」
ギギネブラ 「はい、どうぞ猫さん」
ギギネブラ 「私が火山イチゴから作ったお酒ですよ」
トレニャー 「お、気が利くねぇねぇさん(ぐびり)ンんまぁぁ~い!」
ナルガクルガ 「静かにしろ。餓鬼共が起きる」

915: 2009/08/28(金) 12:25:08.19 ID:CfNFRWc0
トレニャー 「何だい何だい。オイラが猫だからってみんな冷たくするんだい……」
ギギネブラ 「ふふ……猫さん、こちらに来て一緒に飲みましょう」
トレニャー 「姉さん……!!」
ギギネブラ 「ボルボロス様、ジエン・モーラン様をお探しなんですって?」
ボルボロス 「ええ。この状況を打開できる策をお持ちではないかと思うのです」
ギギネブラ 「私、少し前に砂漠の奥地でお会いしましたわ」
ラギアクルス 「! 何だって!? それはいつのことだ!?」
ギギネブラ 「今から一ヶ月ほど前になりますでしょうか……」
ギギネブラ 「砂漠下の地下道で、私うたた寝をしていましたの。そうしましたら、いきなり地面が揺れて……」
ギギネブラ 「突然、壁にぽっかりと穴があきましたわ」
ギギネブラ 「何かと思って近づいてみますと、目が見えない私にも分かるほど、巨大な力強いお方がそこにいらしましたの」
ギギネブラ 「何か飲むものを欲しいと仰ったので、イチゴ酒をお渡ししましたら、いたく喜んでおられました」
ギギネブラ 「それから少しお話をして、その方は自分が『ジエン・モーラン』だと名乗って行かれました」

916: 2009/08/28(金) 12:26:18.47 ID:CfNFRWc0
ラギアクルス 「一ヶ月前か……なら、まだこの近くにいらっしゃる可能性が高いですね!」
ボルボロス 「ええ……! 良かった……」
ギギネブラ 「とても壮大で、海と風と、空の匂いを感じさせる方でした」
ギギネブラ 「そういえばテオ・テスカトル様。あなた様からも同じような匂いを感じます」
テオ・テスカトル 「サイズは違えど、私も同じ古龍だからな」
ギギネブラ 「まぁ、そうだったのですか」
子バギィ 「よかったなぁギギィ。俺だってジエンのおっさんには一回しか会ったことねぇんだぜ」
ギギネブラ 「そんなにレアイベントだったとは知らなかったの。後からびっくりしたわ」
母バギィ 「ジエン様はでかすぎるからねぇ。ま、仮にここにお越しになっても、巣が潰れちまう」
母バギィ 「ギギィちゃん、生き埋めにならんくてよかったなぁ」
ギギネブラ 「大丈夫です。私、掘るのは自信あるんです」
子バギィ 「ギギィはすげぇ勢いで地面を掘るんだぜ」
母バギィ 「へぇ、そりゃ初耳だ。なら今度、あちき達の巣の拡張工事を手伝っておくれよ」
ギギネブラ 「ええ、喜んで」

917: 2009/08/28(金) 12:27:20.01 ID:CfNFRWc0
ドスバギィ 「…………!」
母バギィ 「父ちゃん、どうした?」
ドスバギィ 「………………何かが裏口の方に集まっていた」
ドスバギィ 「お前たち」
バギィ達 「親方、何ですかい?」
ドスバギィ 「裏口を見て来い」
バギィ達 「イエッサーですぜ!」
ドスバギィ 「………………風が変わった」
ドスバギィ 「嫌な風だ」
ボルボロス 「どうかされましたか、バギィの長」
ドスバギィ 「空気に混じって、人間の火薬の臭いがする」
ドスバギィ 「……鉄の鳴る音……」
ドスバギィ 「何かが近づいてきている」

918: 2009/08/28(金) 12:29:21.95 ID:CfNFRWc0
テオ・テスカトル 「何だと……!? 昼間の人間か……!!」
ナルガクルガ 「……俺も様子がおかしいと思っていた。無数の気配にここは囲まれている」
ナルガクルガ 「手出しをしてこないので、様子を見ているだけかと思ったが……」
ナルガクルガ 「人間の、鉄くさい臭いが近づいてきているのを感じる」
ドスバギィ 「(この小僧……)」
バギィ達 「親方、大変だ!」
ドスバギィ 「…………」
バギィ達 「裏口が、外から岩で塞がれてる。凍り付いてこっち側からじゃ開けられねぇ!!」
ドスバギィ 「やはりな……」
ボルボロス 「まさか……ベルキュロス達が……」
ドスバギィ 「こんな姑息なまねをするのはドスジャギィ達しかいねぇ……」
ドスバギィ 「どうやら、ボルボロスさんよ、あんたに傷をつけた奴が……」
ドスバギィ 「……追ってきているようだな」
ボルボロス 「…………!!!」
ラギアクルス 「くっ……しつこい奴らめ……!!!」

919: 2009/08/28(金) 12:31:20.72 ID:CfNFRWc0
ギギネブラ 「人間が、ボルボロス様を狙っているのですか?」
ギギネブラ 「戦うのは良くないわ。無駄な血を流すことは、野蛮よ」
ラギアクルス 「しかし相手から向かってきているのだ。それに……」
ラギアクルス 「出口まで塞がれてしまっては、戦わざるを得ない……!!」
子バギィ 「やれやれ。これだからポッと出のボンボンは……」
ラギアクルス 「何だと!?」
子バギィ 「俺たちバギィ一族と、ギギィの穴掘り能力を甘く見るんじゃねぇぞ」
ギギネブラ 「おじさま、もしよければこの脇に通路を作って、水没林まで抜けられるようにするわ」
ドスバギィ 「…………頼めるかい、嬢ちゃん」
ギギネブラ 「(にこり)ええ、喜んで」
ラギアクルス 「水没林……助かる! 水の中なら我が騎士団の天下だ!」
テオ・テスカトル 「しかし……これは誰かが足止めをしなければいけないな……」
テオ・テスカトル 「この位置からでも分かるほど、人間の鉄の臭いが近づいてきている」
テオ・テスカトル 「おそらくは、ボルボロス殿に襲い掛かった人間が、何かマーキングのようなものをしたのだろう」
テオ・テスカトル 「恐ろしいものだ。あれだけの戦力差を見せ付けられておきながら尚、止めを刺しにこようとは……」

920: 2009/08/28(金) 12:32:31.93 ID:CfNFRWc0
ドスバギィ 「…………卿よ、あの妙な武器を使う人間には気をつけろ」
テオ・テスカトル 「……?」
ドスバギィ 「ありゃぁ人間じゃねぇ。デーモンだ……」
テオ・テスカトル 「デーモン……悪魔か?」
ドスバギィ 「………………」
テオ・テスカトル 「(確かに、あの時異常な俊敏さでボルボロス殿の頭に駆け上がっていった……)」
テオ・テスカトル 「(まるであの人間のように……)」
ハンマー 「………………ぐぅ…………ぐぅ…………」
テオ・テスカトル 「(しかし、決定的にあの姿は何かが違った……)」
テオ・テスカトル 「(勇気や覇気ではない……もっと黒い何か……)」
テオ・テスカトル 「(氏を恐れない、奇妙な感覚をまとっていた……)」
テオ・テスカトル 「…………」
テオ・テスカトル 「ご忠告感謝する」
ドスバギィ 「………………」

921: 2009/08/28(金) 12:33:33.01 ID:CfNFRWc0
少女 「(ゾクッ)…………!!」
少女 「ハッ…………!!」
ハンマー 「…………? どうした、少女? ……ん?」
ハンマー 「(古龍の大宝玉が光っている……)」
ハンマー 「(少女の意思に反応しているのか……? いや、違う……!!)」
ハンマー 「(この張り詰めた感覚……これは、危険を知らせる信号だ……!!)」
ハンマー 「太刀、起きろ!」
太刀 「んぅ……? 何よまだ真夜中じゃない……」
少女 「ハ……ハンマーさん、何か、とても嫌な感じがするの……」
ハンマー 「俺もだ。武器がさっきから振動している」
ハンマー 「それに、モンスター達も何かを感じているようだ」
テオ・テスカトル 「………………」
ドスバギィ 「………………」
ナルガクルガ 「………………」

922: 2009/08/28(金) 12:34:23.54 ID:CfNFRWc0
ハンマー 「もしやスラッシュアックスが…………!!」
太刀 「ハンマー、何かさっきから音が聞こえない?」
ハンマー 「音……? これは……!!」
太刀 「砂上船の駆動音だよ!!」
太刀 「あいつ……まさか……!!!」
太刀 「(バッ)……え……えぇ!?」
太刀 「ちょっ……」
ハンマー 「どうした太刀!? ……はっ!?」
少女 「ど……どうしたのハンマーさん!?」
ハンマー 「やってくれる……スラッシュアックスの奴、砂上船の大銅羅を向けて、洞窟に突撃してくるぞ!!」
ハンマー 「このままここにいれば、洞窟もろとも吹き飛ばされる!」
クック 「……!! クケェ!」
トレニャー 「(とことことこ)…………(くいくい)」
少女 「え……?」
ハンマー 「誘導している……ん? あそこに大きな穴が……!!」
太刀 「モンスター達が穴を掘ってるんだ!」

923: 2009/08/28(金) 12:35:19.00 ID:CfNFRWc0
ハンマー 「少女、ここにいたら巻き込まれる。太刀と一緒に逃げるんだ」
少女 「ハンマーさんは!?」
ハンマー 「俺は(ガシャコン)あのバカ者を黙らせてくる……!!」
クック 「ケェ、ククックッ」
ハンマー 「……分かっている。少女を頼む」
太刀 「少女ちゃん、行くよ!(バッ)」
少女 「ハ……ハンマーさん!!」
テオ・テスカトル 「……どうやら人間の方も、尋常じゃない様子に気づいたようだな」
ナルガクルガ 「あの巨大な武器で突っ込んでくるつもりか」
母バギィ 「ケェ! だから王家は厄介ばっかを抱え込んでくるって!!」
ボルボロス 「も……申し訳ありません……」
ドスバギィ 「子バギィ、母ちゃんたち連れて行け」
子バギィ 「父ちゃんは!?」
ドスバギィ 「……人ン家に土足で上がりこんでくるような野郎どもにゃ……」
ドスバギィ 「えェ? お灸すえにゃならんだろうがな…………」

924: 2009/08/28(金) 12:36:16.60 ID:CfNFRWc0
紫ガミザミ 「ナルガ殿! わらわも……」
ナルガクルガ 「足手まといなだけだ! クック、こいつを連れて行け!」
クック 「分かった! ナルガ、無茶はするなよ!!(ガシッ)」
紫ガミザミ 「こ、これクック! 離せ、離すのじゃ!!」
クック 「紫殿、聞き分けてくだされ!!」
クック 「少女……!!(ぐいっ)」
太刀 「イャンクック、あんたの背中借りるよ!」
クック 「(背中に乗るつもりか……)早くしろ、人間!」
太刀 「少女ちゃん、こっちだよ!」
少女 「でも、ハンマーさんが……」
太刀 「あいつは大丈夫。氏なないから!!」
少女 「(ハンマーさん……!!)……(ガシッ)」
クック 「(少女と人間の女が背中に乗った……)よし、行くぞ!!」
ラギアクルス 「ボルボロス様、お入りください!」
ボルボロス 「しかし、テオ様達が…………」
テオ・テスカトル 「我らは心配ご無用! 先に行かれたまえ!!」
ナルガクルガ 「……行け!!」
ラギアクルス 「ボルボロス様!!」
ボルボロス 「…………申し訳ありません……!!(バッ)」

925: 2009/08/28(金) 12:37:16.78 ID:CfNFRWc0
ハンマー 「(ものすごいものだな……この短時間で、あれだけの洞窟を作り出すとは……)」
ハンマー 「(これで少女たちは守れる……)」
ハンマー 「フッ……」
ハンマー 「新顔もいるが、シェンガオレン討伐の顔ぶれがそろうとはな……」
テオ・テスカトル 「…………ガルルル」
ナルガクルガ 「グルルルル……」
ドスバギィ 「………………」
ハンマー 「炎王龍達、ここは危険だ、脇に下がった方がいい!!」
砂上船 「(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ)」
ハンマー 「……!!!(な……っ……加速した……!!!)」
テオ・テスカトル 「(バッ)」
ハンマー 「炎王龍! 俺をくわえて……」
 >ドッゴォォォォォォンッ!!!
 >ズゥゥゥゥゥン

926: 2009/08/28(金) 12:38:08.31 ID:CfNFRWc0
―二十年前、凍土―

ベリオロス 「(くっ……人間に受けた傷が痛む……)」
ベリオロス 「(目も霞んできた……あの、光る玉のせいだ……)」
ベリオロス 「(足も上手く動かぬ……)」
ベリオロス 「(俺は……俺は、このまま氏ぬのか……)」
ベリオロス 「(ズゥゥゥゥン)」
ベリオロス 「(……思えば何もない人生だった……)」
ベリオロス 「(友も、守るべきものも、何もない人生だった……)」
ベリオロス 「(産まれたときから俺は一人だった……)」
ベリオロス 「(独りはいい……独りは気楽だ……)」
ベリオロス 「(失うものは何もない……)」
ベリオロス 「(そう考えて生きてきた……)

927: 2009/08/28(金) 12:39:06.98 ID:CfNFRWc0
ベリオロス 「(だが……失うものが何もない生に、何か意味はあったのだろうか……)」
ベリオロス 「(俺の生に、何かしらの意味は、あったのだろうか……)」
ベリオロス 「(俺が生きることで、何か変わったのだろうか……)」
ベリオロス 「(………………氏にたくない………………)」
ベリオロス 「(だが………………)」
ベリオロス 「(俺が生きることを誰も望まず……)」
ベリオロス 「(俺が生きて欲しいと、誰も望まず……)」
ベリオロス 「(そんな世界に、戻ってどうするんだろう……)」
ベリオロス 「(…………ふっ…………)」
ベリオロス 「(氏の寸前に、こんなセンチメンタルな気分になるとはな……)」
ベリオロス 「(俺もヤキがまわったものだ……)」
ベリオロス 「(疲れた……もう……)」
ベリオロス 「(願わくば、このまま氏なせてもらえることを……)」
ベリオロス 「(願わくば…………)」

928: 2009/08/28(金) 12:40:01.11 ID:CfNFRWc0
ナルガクルガ剛種 「…………あなた、ちょっと、あなた!!」
ベリオロス 「……………………?」
ナルガクルガ剛種 「ひどい怪我……人間にやられたの!?」
ナルガクルガ剛種 「ここは危険よ。早く奥のほうに移動しましょう」
ベリオロス 「………………君は………………」
ナルガクルガ剛種 「私はナルガクルガ剛種。あなた、ベリオロスね」
ベリオロス 「………………」
ナルガクルガ剛種 「独りで人間の群れに向かっていくなんて、あなた何を考えているの!」
ナルガクルガ剛種 「こうなることは分かりきってるのに……!!!」
ベリオロス 「………………ふっ………………」
ベリオロス 「俺のことなんて、放っておけ……」
ベリオロス 「じきにここに、俺の血をかぎつけた人間が来る……」
ベリオロス 「お前には関係がないことだ……」

929: 2009/08/28(金) 12:40:53.52 ID:CfNFRWc0
ナルガクルガ剛種 「…………バカ!」
ベリオロス 「……?」
ナルガクルガ剛種 「いい? この奥には、まだ小さな子供たちが遊んでいる場所があるのよ」
ナルガクルガ剛種 「氏ぬんなら、迷惑がかからない場所で氏になさいよ!」
ベリオロス 「………………」
ベリオロス 「(ここは……)」
ベリオロス 「(戻ってきてしまったのか……)」
ベリオロス 「(小さい頃から、俺がずっと……)」
ベリオロス 「(同族たちが遊ぶこの場所に……)」
ナルガクルガ剛種 「それに、私の目の前で氏ぬなんてナメたこと、ほざかないで」
ベリオロス 「………………何……?」
ナルガクルガ剛種 「あなたは生きるのよ。立ちなさい」
ナルガクルガ剛種 「……」
ナルガクルガ剛種 「バカじゃないの!? 誰が好き好んで、こんなところで独りで氏のうっていうの!」

930: 2009/08/28(金) 12:41:45.40 ID:CfNFRWc0
ベリオロス 「……俺は……助けなど要らない」
ベリオロス 「俺の問題だ……(ググ…………)」
ベリオロス 「もう……疲れたんだ……」
ベリオロス 「俺は今まで独りだった…………」
ベリオロス 「だから、独りで氏なせて欲しい…………」
ベリオロス 「ただ、それだけだ………………」
ベリオロス 「俺が生きることで何が変わる…………」
ベリオロス 「俺が生きることで何かが変わるか…………」
ベリオロス 「何も変わりはしない………………」
ナルガクルガ剛種 「…………」
ナルガクルガ剛種 「(バシッ!)」
ベリオロス 「……!!! ~~ッ!!!」
ナルガクルガ剛種 「そこまで演説できるんなら、自力でまだ立てるでしょ。ほらさっさと立ちなさい(ググッ)」

931: 2009/08/28(金) 12:42:36.74 ID:CfNFRWc0
ベリオロス 「何故……俺なんかを助ける……」
ナルガクルガ剛種 「いいから早く!」
ベリオロス 「何故だ……(グググ)」
ベリオロス 「俺はお前と初対面だ…………」
ベリオロス 「お前は俺と……関係がない……」
ナルガクルガ剛種 「ええ。確かに関係がないわ」
ナルガクルガ剛種 「でも、一人ぼっちで氏にそうな、弱そうなのを見かけておいていけるわけがないでしょ!」
ベリオロス 「弱そう……俺が…………」
ナルガクルガ剛種 「あなた、私と同じ種族ならもっと胸張って堂々と氏になさいよ!」
ナルガクルガ剛種 「こんなところで惨めったらしくつぶれて氏んで、それで満足!?」
ベリオロス 「…………それで、いい…………」
ナルガクルガ剛種 「………………」
ベリオロス 「もういいんだ…………」

932: 2009/08/28(金) 12:43:37.04 ID:CfNFRWc0
ナルガクルガ剛種 「……確かに、あなたが生きることで、何か変わるか? って聞かれたらね、何も変わらないわ」
ベリオロス 「………………」
ナルガクルガ剛種 「当たり前じゃない。少なくともあたしは何も変わらない」
ナルガクルガ剛種 「だってあたしはあんたのことを知らない」
ナルガクルガ剛種 「あんたはあたしのことを知らない」
ナルガクルガ剛種 「変わりようがないじゃない!」
ナルガクルガ剛種 「変えるの、これから。生きていればそれが出来るわ!」
ベリオロス 「変える………………俺が……?」
ナルガクルガ剛種 「さぁ、あなたの足は何のためにあるの? その立派な尻尾は何のためについてるの!」
ナルガクルガ剛種 「立ちなさい!!」
ベリオロス 「………………(ググググ…………)」
ベリオロス 「…………女ごときにここまで叱責されたのは初めてだ…………」
ベリオロス 「この屈辱……忘れんぞ……」
ナルガクルガ剛種 「はいはい、いい顔になってきたじゃない。男の顔だよ」
ナルガクルガ剛種 「氷河に入って臭いと血を消して、逃げるよ!」
ベリオロス 「(よろよろ)」

933: 2009/08/28(金) 12:44:32.15 ID:CfNFRWc0
ベリオロス 「(何だ……この女は……)」
ベリオロス 「(どうして俺なんかのためにここまでする…………)」
ベリオロス 「(何故、氏なせてくれない……)」
ベリオロス 「(俺が生きることで、何も変わらない……)」
ベリオロス 「(変える……俺が……?)」
ベリオロス 「(独りじゃなくなる……)」
ベリオロス 「(子供………………この奥で遊んでいるのか……)」
ベリオロス 「(小さい頃からずっと……あの輪に入りたかった……)」
ベリオロス 「(俺は……今からでも、輪に入れるのだろうか……)」
ベリオロス 「(俺は……生きていても、いいんだろうか…………)」
ナルガクルガ剛種 「(ガシッ)」
ベリオロス 「!!」
ナルガクルガ剛種 「あたしの巣に行くよ。まだ大丈夫。それほど血が流れてない」
ナルガクルガ剛種 「あなたは生きるの。あたしの前で、もう二度と人は氏なせない」
ナルガクルガ剛種 「いい? 生きるのよ!」
ナルガクルガ剛種 「誰もいないってんなら、あたしが一緒にいてあげる! だから氏ぬなんてバカなこと……」
ナルガクルガ剛種 「考えるんじゃないよ!!!」
ナルガクルガ剛種 「だって、あんたはまだ、生きてるじゃないか!!」
ベリオロス 「……………………(よろよろ)」
ベリオロス 「………………」

934: 2009/08/28(金) 12:45:32.76 ID:CfNFRWc0
―現在、凍土―

ベリオロス 「………………」
ベリオロス 「(剛種…………)」
ベリオロス 「(私は、間違ったことをしているんだろうか……)」
ベリオロス 「(お前を奪った人間、お前を助けられなかった王家…………)」
ベリオロス 「(私には、どちらも助ける気がおきない……)」
ベリオロス 「(共倒れになるのを見ている、この浅ましい私を、お前は笑うか……それとも、あのときのように……)」
ベリオロス 「(叱責するのだろうか……)」
ベリオロス 「(お前ならどうする……)」
ベリオロス 「(お前なら…………)」

935: 2009/08/28(金) 12:46:58.05 ID:CfNFRWc0
ベルキュロス 「ひゃははは! 人間達、ずいぶんと思い切ったことをしてきたね!」
ドスジャギィ 「ひでぇ……ドスバギィの洞窟に直撃だ……」
ドスジャギィ 「何がここまで、あの人間達をやらせるんだ……」
ドスジャギィ 「そこまで俺たちモンスターが憎いのか……?」
ドスジャギィ 「(だって、ボルボロスは手負いだろ……!?)」
ベルキュロス 「フンッ、関係ないね!!」
ベルキュロス 「ここであたし達は、あの悪魔と王家が共倒れになるのを楽~に見てればいいって寸法さ」
クルペッコ 「………………」
ベルキュロス 「何してたかわかんないけど、残念だったねぇクルペッコ先生」
ベルキュロス 「王家は今日でおしまいさ! あの悪魔に狙われたら、誰だって生きてはいられないんだ!」
ベリオロス 「…………」
ベリオロス 「(ベルキュロス……震えているのか……?)」
ベルキュロス 「その後に代頭してやる……」
ベルキュロス 「次に王家を継ぐのは、ベルキュロス王家だ!!!」

936: 2009/08/28(金) 12:47:51.91 ID:CfNFRWc0
ベリオロス 「…………」
ベリオロス 「(人間は、あの巨大な船で突っ込んできたのか……)」
ベリオロス 「(! 中から人が……!)」
ベリオロス 「(あれはバリスタ!?)」
ベリオロス 「……!!!!」
ベリオロス 「(……洞窟から出てきた誰かが撃たれた……)」
ベリオロス 「(撃たれたのは……黒い獣……!!)」
ベリオロス 「(剛種にそっくりな……)」
ベリオロス 「(私の……)」
ベリオロス 「(私の息子……)」
ベリオロス 「(私の息子が、撃たれた……!!!)」
ベリオロス 「(……あの兵器の威力は、よく知っている)」
ベリオロス 「(私の足に古傷を負わせたのも、あのバリスタだった……!!)」
ベリオロス 「(このままでは、黒い獣が……)」
ベリオロス 「(息子が……『ナルガクルガ』がやられる…………!!!)」
ベリオロス 「…………チィッ!(バッ)」
ベルキュロス 「あ!! こ、こら、ベリオロス!! 何をしている!!!」

937: 2009/08/28(金) 12:48:59.50 ID:CfNFRWc0
―凍土、ドスバギィの巣前―

ハンマー 「(くっ……まさか本当に、大銅羅をドリルのようにして突っ込んでくるとは……)」
ハンマー 「なりふり構わずか! スラッシュアックス!!!」
ハンマー 「(洞窟の入り口が崩れる……)」
ハンマー 「すまない! 炎王龍、また背中を借りる!(バッ)」
テオ・テスカトル 「ギャォォォォォ!!!」
ナルガクルガ 「グォォォォ!!」
ドスバギィ 「ギギ……グ……ガォォォォォ!!!!」
ハンマー 「くっ……モンスターが怒り狂っている……」
ハンマー 「少女のためにも、何とか止めたい……抑えてくれ……!!」
ハンマー 「! あれは……バリスタ!?」
ハンマー 「やめろぉぉぉ!!」
バリスタ 「(ドヒュゥゥゥンッ!!)」
ナルガクルガ 「!! (ズガガガガガガッ)ギャ……ォォォォ!!!!」
ハンマー 「! 迅竜が撃たれた!!」
バリスタ 「(キュルキュルキュル)」
ハンマー 「トドメをさすつもりか! 炎王龍!」
テオ・テスカトル 「シャァァ!(バッ!!)」

938: 2009/08/28(金) 12:49:51.10 ID:CfNFRWc0
バリスタ 「(ドヒュゥゥゥゥッ!!)」
ハンマー 「っっおらぁぁ!!!(ガキィィン!!)」
テオ・テスカトル 「!! (ギィィィィン!!)」
ナルガクルガ 「………………グ…………が………………」
ナルガクルガ 「(な……何だ……)」
ナルガクルガ 「(撃たれたのか……? どこから!?)」
ナルガクルガ 「(ぐっ……両翼を貫通している………………!!)」
ナルガクルガ 「グゥ…………ッ!!」
テオ・テスカトル 「ナルガ殿!!」
ナルガクルガ 「不覚………………ッ! 腕をやられた……!!」
バリスタA 「(キュルキュルキュル)」
バリスタB 「(キュルキュルキュル)」
バリスタC 「(キュルキュルキュル)」
バリスタD 「(キュルキュルキュル)」
テオ・テスカトル 「あそこか! 船の中からバリスタでこっちを狙っている!!」
テオ・テスカトル 「卑怯な!!」
ドスバギィ 「人間の使う常套手段だ……」
ドスバギィ 「だが、さすがにあの数はやべぇな…………」
ハンマー 「やめろォォ! スラッシュアックス!」
ハンマー 「ここに敵はいない!!」

939: 2009/08/28(金) 12:50:43.57 ID:CfNFRWc0
ハンマー 「(もしや、土煙で正確に見えていない中、やたらめったらに攻撃をしているのか……!!)」
ハンマー 「(村の仲間のために俺たちを捨てたか……!!)」
テオ・テスカトル 「しくじった……なるべく後方に下がるぞ! ナルガ殿、動けるか!?」
ナルガクルガ 「う……ぐぅ…………」
テオ・テスカトル 「ナルガ殿!!」
ドスバギィ 「小僧……!(バッ) つかまれ!」
ナルガクルガ 「………………すまない………………」
ドスバギィ 「ちぃ! 足を動かせ!!」
テオ・テスカトル 「来るぞ!!」
ハンマー 「やめろスラッシュアックス!!」
ハンマー 「俺が……俺たちがここにいる!」
ハンマー 「お前の仲間にもなれるかもしれない奴らが……ここにいるんだ!!」
バリスタ 「(キュルキュルキュルキュル)」
ハンマー 「(駄目か……!!)」
ハンマー 「(モンスターに対する恐怖と、憎しみで物事の本質が見えていない……!!)」
ハンマー 「(全て目に付いたものを倒す……)」
ハンマー 「(かつては俺もそうだった……)」
ハンマー 「(だが、それでは駄目なんだ……スラッシュアックス!!)」

940: 2009/08/28(金) 12:51:39.38 ID:CfNFRWc0
バリスタ 「(ドヒュゥゥゥゥンッ!!)」
ハンマー 「! 来る!!」
テオ・テスカトル 「!」
××××× 「グォォォォォォオ!!」
××××× 「(ドスドスドスドスドス)…………ギャ……ァァァァ!!!!」
ナルガクルガ 「……!」
ナルガクルガ 「(何だ……)」
ナルガクルガ 「(俺の前に、何かが飛び出してきた……)」
ナルガクルガ 「(白くて…………)」
ナルガクルガ 「(大きい………………)」
ナルガクルガ 「(あれは…………)」
ベリオロス 「ググ……ガ………………」
ドスバギィ 「ベ……ベリオロス!!!」
ベリオロス 「………………(ゴフッ)」
ベリオロス 「(ズゥゥゥゥゥゥン)」

941: 2009/08/28(金) 12:52:36.59 ID:CfNFRWc0
テオ・テスカトル 「何だ……!? 私たちを襲ってきた白い獣が……」
テオ・テスカトル 「ナルガ殿を庇った!?」
ベリオロス 「………………逃げろ、戦士よ………………」
ナルガクルガ 「!!!」
ベリオロス 「お前は……こんなところで氏んでいい者ではない…………」
ナルガクルガ 「何故……何故俺をかばった……!!」
ナルガクルガ 「俺とお前は敵同士のはずだ……」
ナルガクルガ 「俺に……家族などいない……!!!」
ベリオロス 「家族…………フッ………………」
ベリオロス 「戦士よ……」
ベリオロス 「家族はいいぞ…………」
ベリオロス 「仲間はいいぞ…………」
ベリオロス 「気楽ではないが……その方が断然いい………………」
ナルガクルガ 「………………」
ベリオロス 「逃げろ……」
ベリオロス 「『ナルガクルガ』…………!!」

942: 2009/08/28(金) 12:53:32.88 ID:CfNFRWc0
バリスタ 「(キュルキュルキュルキュル)」
ハンマー 「まだやるつもりか……!!」
ドスバギィ 「卿! 力を貸せ! ベリオロスを運ぶ!!」
テオ・テスカトル 「分かった!(バッ)」
ハンマー 「(バッ)行け、炎王龍! 俺は奴らを止める!!」
ハンマー 「うおおおお!(ダダダダッ)」
ハンマー 「!! (中から人が出てきた!!!)」
スラッシュアックス 「! ハンマー!! 貴様……また邪魔をするつもりかァァ!!」
ハンマー 「お前は間違っている! 敵ではない者を倒して、何が残るというんだ!」
スラッシュアックス 「敵ではない……!? 何をバカなことを!!」
スラッシュアックス 「その白い獣と、黒い獣は……」
スラッシュアックス 「俺の父と母を頃した、仇だ!!!」
ハンマー 「!?」
スラッシュアックス 「どけぇぇぇ! 奴らの始末は、俺自らの手でつける!!!」
スラッシュアックス 「おおおおお!!!(ダダダダッ)」

943: 2009/08/28(金) 12:54:26.29 ID:CfNFRWc0
スラッシュアックス 「邪魔をするというのならば……モンスターの肩を持つというのならば……」
スラッシュアックス 「貴様も敵だ! 斬る!!!!」
ハンマー 「(スラッシュアックスの武器が変わっている!?)」
スラッシュアックス 「うぉらぁああ!(ブゥン)」
ハンマー 「(ドガァァアッ!!)うおおお!!(ば……爆発した!?)」
スラッシュアックス 「引けハンマー! 引かねば頃す!!(ジャキィィィン)」
ハンマー 「引けぬ訳がある! 問答無用!!(ジャキィィィン)」
スラッシュアックス 「なら受けるがいい!!(ブゥンッ!)」
ハンマー 「(ドォンッ! ドォン!)ぐ………………」
ハンマー 「(撃ち込むたびに爆発する! 衝撃が…………)」
ハンマー 「(くっ……火竜にやられた肩の傷が………………)」
拘束弾発射装置 「(ドヒュゥゥゥゥン)」
テオ・テスカトル 「!! ギャォォォォォ!!」
ハンマー 「(! 炎王龍がバリスタ拘束弾に捕まった!!)」
スラッシュアックス 「隙あり! もらったあぁぁ!(ブゥゥゥゥンッ!!)」
ハンマー 「(ドッゴォォォォンッ!!)ぐぁぁああああ!」

944: 2009/08/28(金) 12:55:25.40 ID:CfNFRWc0
ハンマー 「(ドサッ)……が…………」
スラッシュアックス 「そこで寝ていろ! 俺は、俺の仇を頃す!!」
スラッシュアックス 「組するモンスターも頃す!」
スラッシュアックス 「モンスターは全て敵だ! 俺たちを脅かす敵だ!!!」
スラッシュアックス 「俺はハンターだ! モンスターハンターだ!!」
スラッシュアックス 「子供を……仲間を、俺は守る!!!」
ハンマー 「ま……待て……」
ハンマー 「(くそ……鎧がひしゃげている…………)」
ハンマー 「(体がしびれて…………)」
スラッシュアックス 「うおぉぉぉぉお!」
ベリオロス 「!!!」
ベリオロス 「(あれは……私と剛種を襲った人間……)」
ベリオロス 「(剛種とナルガクルガを、谷底に突き落とした人間……!!!!!)」
ベリオロス 「ガ……グォォォォォォ!!!(グググ)」
ナルガクルガ 「……無茶だ……! その体で……!!」
ベリオロス 「止めるな戦士よ……!! 男には、決着をつけねばなるまい時がある……!!!!」
ベリオロス 「ドスバギィよ、息子を頼む!!」
ナルガクルガ 「!!!!!」
ドスバギィ 「ベリオロス! ここは一旦引け!!!」

945: 2009/08/28(金) 12:56:32.04 ID:CfNFRWc0
ベリオロス 「グオォォォォォォオオ!!(ドドドドドッ)」
スラッシュアックス 「閃光玉を食らえ!!!(バッ)」
ベリオロス 「(ピシャァァァ!)……ギャォォォ!!(バッ)」
スラッシュアックス 「! うぉぉぉぉ!?(ガキィィンッ)」
スラッシュアックス 「(閃光玉が効かない……!?)」
ベリオロス 「(私の目は、濁って光に疎くなっている……)」
ベリオロス 「(もうあの光る玉は効かぬ……!!)」
スラッシュアックス 「……だが!!(ドバッ)」
ベリオロス 「!! これは……」
ベリオロス 「(痺れ毒の煙玉……!? しまった、傷口から…………)」
ベリオロス 「(体が痺れて…………)」
スラッシュアックス 「うぉぉぉぉぉ!!(バッ)」
スラッシュアックス 「父の! 母の仇!! 今ここで晴らさせてもらう!!」
ベリオロス 「!!!!」
ナルガクルガ 「…………ベ、ベリオロ…………」
ナルガクルガ 「…………!!!」

946: 2009/08/28(金) 12:57:26.46 ID:CfNFRWc0
 >ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
スラッシュアックス 「! な……何だ!? 地震……!?」
ハンマー 「(地面が……揺れている! これは……)」
 >ドバァァァァッァァアァッ!!!
×××××××× 「キシャォォォォォォォォォォォォォオオオ!!!!」
×××××××× 「(ブゥゥゥゥン!)」
砂上船 「(ドガァァァァァッ!!)」
×××××××× 「シャァァァァァアァ!!(ブゥゥゥゥン)」
砂上船 「(ドゴォォォォォッ!!)」
スラッシュアックス 「うおぉぉぉぉお!!?」
ハンマー 「あれは……古龍!? だが……老山龍よりもはるかに大きい!!!!!」
ジエン・モーラン 「シャァァァァァァ!!(ブゥゥゥゥンッ)」
スラッシュアックス 「!! 峯山龍か! こんな所に隠れていたとは!!」
スラッシュアックス 「角で船を壊されるぞ! 大銅羅を撃ち込むんだ!!!」
熟練ハンターA 「む……無理だ! セットにまだ時間が……うわあぁああ!!」
砂上船 「(ズゥゥゥゥゥンッ)………………(ズズズズズズ…………)」
ハンマー 「(船が……倒れる!!!)」

947: 2009/08/28(金) 12:58:25.03 ID:CfNFRWc0
ドスバギィ 「こ、これは……ジエン・モーラン老!!」
ジエン・モーラン 「見ておれぬ……!! 我、いざ助太刀せん!!!」
ジエン・モーラン 「ガァァァァ!(ブゥゥゥゥン!!)」
砂上船 「(ドッガァァァァンッ! ………………ドズゥゥゥゥゥン!!)」
スラッシュアックス 「みんな!!!!」
テオ・テスカトル 「! 拘束が緩んだ!」
テオ・テスカトル 「もしやこの巨大な影は……ジエン・モーラン殿か!?」
ジエン・モーラン 「おぬし等を口の中に入れる……ここを離れるぞよ……」
テオ・テスカトル 「! 分かった! ドスバギィ殿!」
ドスバギィ 「合点だ」
テオ・テスカトル 「人間!(バッ)」
ハンマー 「炎王龍! ありがたい!(ガシッ)」
ジエン・モーラン 「(ググググ……バクゥゥゥッ)」
スラッシュアックス 「!! モンスター達を、砂ごと口の中に……!!」
スラッシュアックス 「くそ…………!」
スラッシュアックス 「くそぉぉぉぉぉ!!」
スラッシュアックス 「土の中に…………大銅羅はまだか!! このままではまた逃げられてしまう!!!」
ジエン・モーラン 「………………(ズズズズズズズズ)」
スラッシュアックス 「待て! 待てぇぇぇぇえ!!」
ジエン・モーラン 「(ズズズズズズ)」

948: 2009/08/28(金) 12:59:16.42 ID:CfNFRWc0
―凍土、少し離れたエリア―

ベルキュロス 「!!! あれは……ジエン・モーラン!!!」
ベルキュロス 「元老院が!! 王家を助けるの!?」
ベルキュロス 「ど……どうして!!」
ベルキュロス 「どうして……!!!」
ベルキュロス 「私たちの時は、助けてくれなかったじゃないか!!!!」
ドスジャギィ 「ベルキュロス様、ここは危険だ。人間に見つかるかもしれねぇ」
ドスジャギィ 「早く離れた方がいい」
ベルキュロス 「(ギリリ…………)」
ベルキュロス 「ジエン・モーラン……この屈辱、絶対に忘れない…………」
クルペッコ 「………………」
ベルキュロス 「クルペッコ先生は連れてくよ。あんたたち、ふんじばってきな」
ドスジャギィ 「あ……ああ」
ベルキュロス 「(王家め…………)」
ベルキュロス 「(絶対にこのままじゃ済まさない…………!!!)」

949: 2009/08/28(金) 13:03:22.36 ID:CfNFRWc0
お疲れ様でした。次回へ続かせていただきます

no title


950: 2009/08/28(金) 14:37:14.16 ID:tObTrWoo
おっつー

引用: イャンクック 「旧沼地で人間を拾ったんだが」 2