346:◆58jPV91aG. 2009/11/16(月) 18:15:34.00 ID:RbEmICU0

348: 2009/11/16(月) 18:16:55.46 ID:RbEmICU0
イャンクック 「旧沼地で人間を拾ったんだが」

外伝 ~砦ドラゴンと少女~ 第3話

-旧火山、朝-

テオ・テスカトル 「(吹雪というより暴風雨だ……やはり、嵐は格段に強くなっている……)」
テオ・テスカトル 「(早く皆の避難を完了させなければ……)
ナナ・テスカトリ 「あなた様、雪は……」
テオ・テスカトル 「うむ。昨日よりさらに激しさを増している。樹海や密林の者達が心配だ。早く向かわねばなるまい」
カム・オルガロン 「テオ。やはり雪はまだ止んでいなかったか」
テオ・テスカトル 「カム、ノノ、起きたか……ああ、残念なことに、今年の寒波は三十年前のあの時を思い出させる」
ナナ・テスカトリ 「三十年前……先代のテスカトリは、あの時の寒波が元で亡くなってしまいました……」
テオ・テスカトル 「…………ああ。彼女は良きテスカトリだった……」
モンハン イャンクック ペン画 原画
349: 2009/11/16(月) 18:18:15.36 ID:RbEmICU0
カム・オルガロン 「……して、いかにする、テオ」
ノノ・オルガロン 「ヤマツカミ様がご無事だと良いのですが……」
カム・オルガロン 「そうだな。ヤマツカミ様がご無事であることを祈るばかりだ」
テオ・テスカトル 「ヤマツカミ様のところにはオオナズチ君もいる。きちんと対策を立ててくれているはずだ」
ナナ・テスカトリ 「あの子は、ああ見えてもしっかり者ですからね」
テオ・テスカトル 「ああ、そうだな」
テオ・テスカトル 「とにかく、遭難すると元も子もない。私とナナの炎の力で道を切り開く。カムとノノはついてきてくれ」
テオ・テスカトル 「まずは旧密林から見回ろう。そして樹海のヤマツカミ様のところへ。それでよろしいか?」
カム・オルガロン 「意義はない。ノノは?」
ノノ・オルガロン 「ええ。意義はないわ」

350: 2009/11/16(月) 18:19:22.97 ID:RbEmICU0
ガノトトス 「校長先生、ナナ先生、おはようございます」
テオ・テスカトル 「! ガノトトス君!」
翠トトス 「おはようございます」
ナナ・テスカトリ 「翠トトスちゃんも。おはよう」
カム・オルガロン 「ガノ、翠、久方ぶりだな」
ノノ・オルガロン 「ええ、久方ぶりね」
翠トトス 「カム先生にノノ先生!! いつこちらに?」
ガノトトス 「お久しぶりです!!」
カム・オルガロン 「昨日、旅より戻った。二人とも大きくなったな」
ノノ・オルガロン 「ええ、大きくなって」
ガノトトス 「先生方。僕たち、正式に結婚したんです」

351: 2009/11/16(月) 18:20:27.07 ID:RbEmICU0
翠トトス 「ええ。先生達にも報告したかったんですの」
カム・オルガロン 「なんと! ついに結婚したか!!」
ノノ・オルガロン 「それはめでたいわ。いつの話?」
翠トトス 「つい二ヶ月ほど前のことです。彼の家族にもよくしてもらっています」
カム・オルガロン 「後ほど、正式にお祝いの品を持参しよう」
ノノ・オルガロン 「そうね。お祝いの品を持参しなきゃね」
ガノトトス 「そんな、あまりお気になさらないでください」
テオ・テスカトル 「火山はどうだい? 君たちにとっては慣れない環境で辛いだろうが……」
ガノトトス 「いえいえ。ここに避難させていただいて助かっています」
翠トトス 「そうでなければ、今頃一族全員氷漬けになってしまっていましたわ」

352: 2009/11/16(月) 18:21:18.55 ID:RbEmICU0
ガノトトス 「先生方は、これからどこへ?」
テオ・テスカトル 「まだ避難ができていない部族がいるかもしれない。見回りにな」
ガノトトス 「そうですか……お手伝いできればいいんですが、僕たちは雪には弱くて……」
テオ・テスカトル 「いや、その気持ちだけで十分だ。君たちは、私たちに代わって子供達の相手をしてくれないか?」
ナナ・テスカトリ 「ええ。そうしていただけると、すごく助かります」
翠トトス 「喜んで! 先生方、お気をつけて……」
テオ・テスカトル 「よければ低学年の子達のために授業をしてもらえると助かる」
ガノトトス 「はい、わかりました!」
カム・オルガロン 「テオ、それでは行こうか」
テオ・テスカトル 「ああ。すまないな二人とも。話は戻ってからゆっくりとらせてもらうこととしよう」
ガノトトス 「ええ。お待ちしています」

353: 2009/11/16(月) 18:22:37.04 ID:RbEmICU0
-雪山-

テオ・テスカトル 「……ぐっ。なんだこの吹雪は……」
ナナ・テスカトリ 「まるで吹雪自体が意志を持っているかのような……」
テオ・テスカトル 「この寒波では、人間達の村も危ないかもしれぬ」
カム・オルガロン 「三十年前もそうだった……人間達は寒波で大きく数を減らしたが……」
ノノ・オルガロン 「私たちに与えられた被害も甚大だったわ」
カム・オルガロン 「そうだ。甚大だった」
テオ・テスカトル 「カム、ノノ、何かを感じるか?」
カム・オルガロン 「視界が定かではないが、海岸の方に何か、巨大な者がいるのを感じる」
ノノ・オルガロン 「そうね……あまりいい気分はしないわ」
テオ・テスカトル 「……もしかしたら、その『超自然的な何か』がこの寒波を発生させているのかもしれない」
ナナ・テスカトリ 「あなた様……と、申しますと?」
テオ・テスカトル 「……砦ドラゴン……」

354: 2009/11/16(月) 18:23:30.33 ID:RbEmICU0
テオ・テスカトル 「先代のテスカトルから、一度だけ話を聞いたことがある」
テオ・テスカトル 「あの童話は、真実であると」
ナナ・テスカトリ 「確かに……先代のテスカトリも、三十年前にそのようなことを仰っておりました」
カム・オルガロン 「…………」
ノノ・オルガロン 「…………」
テオ・テスカトル 「もしかしたら、冬の砦ドラゴンが、何らかの理由で力を振るっているのかもしれぬ」
カム・オルガロン 「テオ、だとしたらどうする?」
テオ・テスカトル 「言い伝えの通りだとすると、砦ドラゴンは、すでにモンスターの枠を越えた、神格化された存在だ。話が通じるとは思えない……」
カム・オルガロン 「いずれにせよ、避難を続けるしかないということか……」
テオ・テスカトル 「そうなるな……」
テオ・テスカトル 「考えていても埒があかない。まずは樹海だ。その後に、海岸に向かってみよう」
カム・オルガロン 「了解した」
ノノ・オルガロン 「ええ、了解したわ」
ナナ・テスカトリ 「(砦ドラゴン……)」
ナナ・テスカトリ 「(もしそれがこの猛吹雪を起こしているのだとしたら……一体なぜ……?)」

355: 2009/11/16(月) 18:24:25.13 ID:RbEmICU0
-樹海、入り口近くの森-

ヒプノック 「Oooooh, シット! さ、さ、さ、寒ゥゥゥゥ!!」
ガルルガ 「ぐおおおおお!! 耳が凍るぅぅぅ!!」
ヒプノック 「Hey! ブラザー! 本当にゲリョ公の家はこっちであってるんだろうな!?」
ヒプノック 「遭難なんてマジ勘弁してほしいぜ!!!」
ガルルガ 「うるせぇ! 俺だって好きでこんな目に遭ってるんじゃねぇ!」
ガルルガ 「俺たちの洞窟が雪で埋まっちまったから、仕方なく出てきたんじゃねぇか!!」
ヒプノック 「My GOD……だから俺は、クックの家みてぇに入り口を塞いでおこうぜって提案したんだ!!」
ガルルガ 「そんな人間みてぇな真似、氏んでもできるか!!」

356: 2009/11/16(月) 18:25:36.78 ID:RbEmICU0
ヒプノック希少種 「お、お……お兄ちゃん。言い争いはいいから早く避難しようよ……」
ヒプノック 「見ろ! マイシスターがすでに半氏半生だ!」
ヒプノック希少種 「ガルルガさん……本当にこっちで道は合ってるの……?(ブルブル) 何だか、樹海から遠ざかってる気が……」
ガルルガ 「俺の方向感覚をナメんなよ。確かにここが、ゲリョ公の家の近道なんだよ」
ヒプノック 「マイシスター、俺にもっとくっつくんだ!!」
ヒプノック希少種 「い……今だけはお兄ちゃんの暑苦しさがありがたいわ……!!」
 >ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!
ヒプノック 「Aaaaaah! 遭難するゥゥゥ!! 寒い! くちばしが凍るぅぅぅ!!」
ヒプノック希少種 「お兄ちゃん、温かいけどうるさい!!」
ガルルガ 「少しは静かにできねぇのか!!」
ヒプノック 「で……でもよ、このままじゃ本当に遭難しそうな……」
ガルルガ 「!! おい、見ろ!」
 >ピカッ! ピカッ!
ガルルガ 「あれはゲリョ公のライトクリスタルの光だ!」
ヒプノック 「Oh、Yes!! どんぴしゃか!?」
ガルルガ 「とりあえずあそこに向かって走るぞ!!」
ヒプノック 「OK行くぞ妹よ!!」
ヒプノック希少種 「あ、待って!」
ヒプノック希少種 「…………?」
ヒプノック希少種 「……何かしら、あれ……?」

357: 2009/11/16(月) 18:26:33.62 ID:RbEmICU0
-樹海、ゲリョスの巣-

ゲリョス 「(ピカッ、ピカッ)」
ガルルガ 「うおっまぶしっ! ゲリョ公、オレ達だ。光を止めやがれ」
ゲリョス 「………………」
ゲリョス 「ガルルガ……ヒプノックに妹。来ると思ってた」
ゲリョス 「ここは寒い。中に入ろう」
ヒプノック 「ヒュゥ! 助かったぜ。俺たちのために外で待っててくれたのか、ブラザー」
ゲリョス 「……ママの占いは良く当たるから……」
紫ゲリョス 「あら! まぁ本当に来たわ!」
紫ゲリョス 「みんな中に入って。凄い吹雪だったでしょお~~?」
ガルルガ 「ケェ! 俺たちが来るのはお見通しかよ」
紫ゲリョス 「ちょっと気になって占ってみたら、あなたたちが来るって出たのよう~~。用意しといてよかったわぁ」
紫ゲリョス 「さ、洞窟の奥に」
ガルルガ 「ああ、助かるぜおばさん!」

358: 2009/11/16(月) 18:27:24.38 ID:RbEmICU0
ヒプノック 「やれやれ、やっとこれで一息つける……」
ヒプノック希少種 「………………」
ヒプノック 「Hey、マイシスター。どうした?」
ヒプノック希少種 「お兄ちゃん、何か変な感じがしない?」
ヒプノック 「変な感じ?」
ヒプノック希少種 「うん……何か、誰かに見られてるような……」
ヒプノック 「おいおい寒さでイカれたかい? この吹雪の中で歩く馬鹿は俺たちだけで十分さ」
ヒプノック希少種 「そういうことじゃなくて……何だか懐かしい感じが……」
ヒプノック希少種 「それに、海岸の方で何かが動くのが見えたの」
ヒプノック 「吹雪の塊だろ? ほら、中に入るぜ」
ヒプノック希少種 「あ、待ってよお兄ちゃん!」

359: 2009/11/16(月) 18:28:18.04 ID:RbEmICU0
―ゲリョスの巣、中―

紫ゲリョス 「それにしてもすごい吹雪ねぇ。あ、希少種ちゃん、大丈夫? 風邪とか引いてない?」
ヒプノック希少種 「(ブルブル)だ……大丈夫だとおも……ふえっくしょっ!」
ヒプノック 「Oh,シット! マイシスター!!」
ヒプノック希少種 「大げさだよ。くしゃみしただけだし」
紫ゲリョス 「とにかく三人とも、狂走エキスのお酒をぐいっとおやり。そしたら体があったまるよ」
ガルルガ 「そうさせてもらうぜ(ぐびり)……ッカァ!」
ヒプノック 「(グビグビ)」
ヒプノック希少種 「(チビリ)……それにしても、紫ゲリョスさんのお宅にたどり着けてよかったわ……」
ヒプノック希少種 「兄たちじゃ、どうにも頼りなくて……」
ヒプノック 「マイシスター! 兄が頼りないとは聞き捨てならないぞ」
ガルルガ 「ケッ。くっついてくるしか能がねぇくせに言いやがる」
ヒプノック希少種 「私たちの巣は浅いんだから、蓋をしなくちゃいけなかったの。それに反対するから、雪で埋まっちゃったんじゃない」
紫ゲリョス 「あらあらまぁまぁ。巣が雪で埋まっちゃったの? 良くここまで無事で来れたわねぇ~~」

360: 2009/11/16(月) 18:29:19.98 ID:RbEmICU0
ガルルガ 「チッ。余計なこと言いやがって」
紫ゲリョス 「でもこの雪は変よぉ。いつもこんなに降り積もったりしないのにねぇ」
紫ゲリョス 「ま、ゲリョの友達なら大歓迎よ。しばらくここにいなさいな」
ゲリョス 「(こくり)」
ヒプノック 「YO、頼れるぜおばさん!」
ヒプノック希少種 「すみません、お世話になります」
ガルルガ 「…………?」
ヒプノック希少種 「……? ガルルガさん?」
ガルルガ 「いや……何か、今誰かに呼ばれたような……」
ヒプノック 「吹雪が吹き込んできてる。空耳だろ?」
ガルルガ 「………………」
ガルルガ 「(……空耳……? いや、それにしてははっきりと聞こえた)」
ガルルガ 「(それに、あの声は…………)」
ガルルガ 「(いや、そんなはずはない……だって…………)」

361: 2009/11/16(月) 18:30:11.15 ID:RbEmICU0
紫ゲリョス 「さぁさ、体が温まった所でご飯にしようかね! ゲリョ、奥からモス肉を取ってきておくれ」
ゲリョス 「(こくり)」
ヒプノック 「Oh、YES!! 最近モス肉を食ってなかったんだ!! ありがたいぜ!!」
ヒプノック希少種 「ふぅ……私、安心したらなんだか眠くなってきちゃった……」
ヒプノック 「マイシスター、ほら、兄の胸の中で眠ってもいいんだぞ。ほら。ほら! COME OooooN!!」
ヒプノック希少種 「うるさい、お兄ちゃん」
ヒプノック 「…………」
ヒプノック希少種 「おば様、どこもこんなに酷い吹雪なのかしら?」
紫ゲリョス 「ああ、多分ね。あたしの占いじゃ、あと一週間は続くねぇ」
ゲリョス 「(ドサッ)ママ、肉持って来た……」
ヒプノック 「ちょっと凍ってるけどまぁいいぜ! いただきまーすッ!!(もぐもぐ)」
ヒプノック希少種 「お兄ちゃん……すみませんこんな兄で」
紫ゲリョス 「いいのよいいのよ。希少種ちゃんもおあがりなさいな」
ヒプノック希少種 「……はい!(シャク……)……」
ヒプノック希少種 「(本当に凍ってる…………)」
ヒプノック希少種 「ガルルガさん、焼いてくれない? ……ガルルガさん?」
ガルルガ 「………………あ? ああ…………」

362: 2009/11/16(月) 18:31:20.34 ID:RbEmICU0
―ゲリョスの巣、夜―

ガルルガ 「…………」
ガルルガ 「(やはりあの声……気になる……)」
ガルルガ 「(あれは確かに、かかさまの声だった……)」
ガルルガ 「(他の誰の声と間違うはずもねぇ。かかさまの声は、俺がこの世で一番よく覚えてる)」
ガルルガ 「(空耳なんかでもねぇ……)」
ガルルガ 「(…………だが、どうしてこんな吹雪の日に…………)」
ガルルガ 「(何かの悪ふざけか? いや…………そんなことをするメリットなんざ、どこにもねぇだろ……)」
ガルルガ 「…………」
ガルルガ 「(希少種が、海岸で何かを見たとか言ってたな……)」
ガルルガ 「(むくり)」
ヒプノック 「GUGAAAAA! GUGAAAAA!」
ヒプノック妹 「すぅ……すぅ……」
ゲリョス 「ぐぅ…………ぐぅ…………」
紫ゲリョス 「グガァ…………グガァ…………」
ガルルガ 「(まだ夜早いが、酒のせいで全員眠ってる……)」
ガルルガ 「(少しだけ見に行っても、文句を言う奴はいねぇ……)」

363: 2009/11/16(月) 18:33:41.53 ID:RbEmICU0
―樹海、海岸沿い―

 >ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
ガルルガ 「(……ぐっ! 何て風だ!!)」
ガルルガ 「(まるで俺たち全員をブッ殺そうとしてるかのような……)」
ガルルガ 「(凶暴な…………)」
 >……! ……!!
ガルルガ 「!!」
ガルルガ 「(……まただ……)」
ガルルガ 「(冷たい風に混じって、声が聞こえる…………)」
ガルルガ 「(かかさまの声だ……!!!)」
ガルルガ 「(だが、何を言っているのかわからねぇ……)」
ガルルガ 「(それに、風と雪が強すぎて、どこから聞こえてくるのかもわからねぇ……!!)」
ガルルガ 「(どういうことだ……?)」
ガルルガ 「……かかさまーッ!!!」
ガルルガ 「かかさまですか!? それともタチの悪ィ悪戯か!!!」
 >・……!! ……!!!
ガルルガ 「う……っ! 雹が目に…………」

364: 2009/11/16(月) 18:34:40.73 ID:RbEmICU0
ガルルガ 「! (何か、海岸の方で動いてる……)」
ガルルガ 「(…………何か、光のようなものが、海岸の方に……)」
ガルルガ 「(一つ……二つ……)」
ガルルガ 「(…………)」
ガルルガ 「(踊るようにくるくる回ってる……沢山の、青白い光だ……)」
ガルルガ 「(……ッ!!)」
ガルルガ 「(何……だ、あれ……!!!)」
ガルルガ 「(山? あんな所に山なんてなかったはず……)」
ガルルガ 「(いや……違う!!)」
ガルルガ 「(大きな…………天を衝くほどの大きさの、ドラゴン…………?)」
ガルルガ 「(ドラゴンが、海に浮かんでるんだ……!!!)」
ガルルガ 「(くそっ…………吹雪でよく見えない…………)」
 >……!! …………!!!
ガルルガ 「(また聞こえる……)」
ガルルガ 「(!!!!!!)」

365: 2009/11/16(月) 18:35:31.27 ID:RbEmICU0
ガルルガ 「(何だ……!? 一瞬、あのドラゴンの方から……見えた……)」
ガルルガ 「(かかさまの姿だ……!!!)」
ガルルガ 「(間違いない!! かかさまが、あそこにいた……!!!)」
ガルルガ 「かかさまーッ!!!(ダダダッ)」
 >ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
ガルルガ 「かかさまーッ!!!! 俺です! ガルルガです!!!」
ガルルガ 「返事をしてください! かかさまーッ!!!」
 >ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
ガルルガ 「クッ!(ダダダダダッ)」
 >ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
ガルルガ 「うわっ……!!!(雪が、体に、絡みつくように…………)」
ガルルガ 「(ドサッ)……ガッ!!」
ガルルガ 「ちっ……こ、転んじまった…………」
 >ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
ガルルガ 「(ブルブル)…………! こ、ここはどこだ…………」
ガルルガ 「(いつの間にか、妙な光も巨大なドラゴンも見えなくなってる……)」
ガルルガ 「(かかさまも……!!)」

366: 2009/11/16(月) 18:36:22.07 ID:RbEmICU0
ガルルガ 「ううううう……寒っ………………」
ガルルガ 「(ガクガク)」
 >ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
ガルルガ 「(か……体が凍る…………)」
ガルルガ 「(は、早くここから離れないと…………)」
ガルルガ 「!! (翼が凍って動かねぇ!!!)」
ガルルガ 「く……そ…………」
ガルルガ 「こんな……ところで……」
ガルルガ 「(意識が……ヤバくなってきやがった…………)」
ガルルガ 「(か…………)」
ガルルガ 「(かかさま………………)」
 >ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
ガルルガ 「…………(ガクリ)」
ガルルガ 「……………………」
××××× 「(ドスンッ!!)」
××××× 「………………」
××××× 「(ぐいっ…………!!)」

367: 2009/11/16(月) 18:37:15.22 ID:RbEmICU0
―樹海、火山近く―

テオ・テスカトル 「……あとは奇面族の村と、樹海の海岸近くに住んでいる者の確認だな」
ナナ・テスカトリ 「あなた様、この猛吹雪では……」
テオ・テスカトル 「………………」
カム・オルガロン 「ああ。ナナの言うとおりだ」
ノノ・オルガロン 「そうね、ナナの言うとおりだわ」
カム・オルガロン 「これ以上は我々の身も危ない。今のところは、一時撤収が妥当な所だろう」
テオ・テスカトル 「……やむをえないか……ぬ?」
ナナ・テスカトリ 「……! 誰か来ます」
××××× 「(ズンッ、ズンッ、ズンッ)」
テオ・テスカトル 「あれは…………」
ラージャン 「(ズシャァッ)………………(ポイッ)」
ガルルガ 「(ドサッ)………………」
ラージャン 「海岸沿いで気絶していた…………酷い凍傷になっている……」
ナナ・テスカトリ 「……ガルルガ君!」
ナナ・テスカトリ 「ラージャン君……彼を助けてくれたの?」
ラージャン 「………………」
ラージャン 「俺の民を火山に避難させた。俺も、行かねばならない……」
テオ・テスカトル 「………………」

368: 2009/11/16(月) 18:38:09.72 ID:RbEmICU0
ラージャン 「…………それじゃ…………」
テオ・テスカトル 「待て、ラージャン君」
ラージャン 「……?」
テオ・テスカトル 「仲間を救ってくれて、ありがとう。ガルルガ君は、私たちが責任を持って治療するよ」
ラージャン 「………………」
ラージャン 「海岸に……何かいる」
カム・オルガロン 「……!!」
ノノ・オルガロン 「……!!」
ラージャン 「俺もそれに、取り込まれかけた……」
ラージャン 「先生方も、十二分に気をつけることだ……」
ラージャン 「(シュバッッ!!)」
テオ・テスカトル 「海岸……やはり、海岸か……!!」
ナナ・テスカトリ 「あなた様、とりあえず、ガルルガ君を近くの火山洞に運びましょう」
ナナ・テスカトリ 「大変……翼の先まで凍りついてしまっているわ」
テオ・テスカトル 「ああ。そうだな。カム、手伝ってもらえるか?」
カム・オルガロン 「分かった」

369: 2009/11/16(月) 18:39:00.81 ID:RbEmICU0
―クックの巣、少し前―

少女 「よし、出来たっ!(バサッ)」
キリン 「少女ちゃんは器用ねぇ」
ティガ弟 「へぇ。それが、兄者の皮とウラガンキンとやらの鱗を使った『服』か」
少女 「うん。フードもつけたから、これを着てれば外に出ても寒くないよ」
ロアルドロス 「人ってこうやって毛皮を入れ替えるんだねぇ」
少女 「私たちは鱗や毛がないから、こうやって体を守るんだよ」
クック 「少女、準備は出来たか?」
キングチャチャブー 「…………」
少女 「うん! おじさん、これどうかな?」
クック 「おお、いい感じにもこもこになったじゃないか」
クック 「しかし……この吹雪だ。少女は留守番をしていてもいいんだぞ?」
少女 「でも、私もヤマツカミ様やオオナズチさんが気になるよ」
ロアルドロス 「勇敢なバンビーナが行くというのであれば、僕も留守番をしているわけにはいかないな」
キリン 「弟さんは……来ますよね」
ティガ弟 「俺もかよ! 何でゾロゾロ総出で、あのクソジジイに会いに行かなきゃいけないんだよ!」

370: 2009/11/16(月) 18:40:15.63 ID:RbEmICU0
キリン 「だって、こんなに小さな少女ちゃんが頑張ってるっていうのに、弟さんはクックさんの家でぬくぬくとしているつもりなんですか?」
ティガ弟 「そのつもりだったよ!」
キリン 「いいからいいから。行きましょう」
ティガ弟 「何がいいんだかよくわかんねーよ。この雪の中、出かけようとする神経を疑うぜ」
クック 「無理には誘わないよ。ゆっくりしていってくれていい」
ティガ弟 「ほれみろ!」
キリン 「……情けない……」
ティガ弟 「!」
キリン 「いいですよ。少女ちゃんは私が、責任を持って守ってきますから……」
キリン 「あなた方に期待した私が間違っていました……」
ティガ弟 「聞き捨てならねぇな。俺は卑怯なことはするが、情けないことはした覚えがねぇ」
ティガ弟 「……ケェ。気分が悪ィ。少女。俺の背中に乗れ」
少女 「弟さん、来るの?」
ティガ弟 「どうせここに居ても、寝ぼけた兄者と二人きりだからな。それに情けないとまで言われて、だまってぬくぬくしてるわけにはいかねぇよ」
ティガ兄 「グガァァ……グガァァァ…………」
キリン 「(くすり)」

371: 2009/11/16(月) 18:41:11.02 ID:RbEmICU0
クック 「どうするキング。真正面から樹海の奥に抜けるのは、少しばかり厳しいぞ」
キングチャチャブー 「裏道を使う」
クック 「裏道?」
キングチャチャブー 「本来は俺たち奇面族専用なんだが、まぁいいだろう。火山洞から旧火山を抜けて樹海奥に入る」
クック 「そんな道があったのか。ロアルさん、大丈夫かい? 火山に入るまでは雪の中を通ることになるが……」
ロアルドロス 「一晩休んですっかり良くなりました。それに、折角この大陸に来たからには、主様にも挨拶をしなければいけませんからね。ヘバってもいられませんよ」
クック 「そうか。それじゃ、みんな。雪ではぐれないように、キングの後についてきてくれ」
キングチャチャブー 「じゃあ、行くぜ」
ティガ弟 「はぁ……気が乗らねぇ(ドスドス)」
少女 「弟さんの背中は、視線が低いからちょうどいいよ」
ティガ弟 「そんなもん褒められたって嬉しくもなんともねーや」
キリン 「私が、皆さんの周りにも雷の膜を張ります。少しは雪を防げるでしょう」
クック 「助かる。ありがとうキリンちゃん」

372: 2009/11/16(月) 18:42:02.16 ID:RbEmICU0
―クックの巣、外―

キングチャチャブー 「…………」
キングチャチャブー 「(殺人的な大雪だな……太陽がどこにあるのかさえわからねぇ……)」
キングチャチャブー 「(砦ドラゴン……何が目的だ……?)」
キングチャチャブー 「(てめぇは俺から、茶アイルーを奪っていった……)」
キングチャチャブー 「(その借りをまだ返していねぇ……)」
クック 「……うわぁ! やはり外に出ると違うな……」
少女 「凄い雪……」
ティガ弟 「ケッ、やってらんねぇぜ」
少女 「お兄さんには何も言わなくて大丈夫かな?」
クック 「薬を置いてきたし、よく眠っているから大丈夫だろう。それに、こんな雪の中外に出たら風邪が悪化してしまう」
クック 「私たちが早く帰るようにすれば済む話さ」
ロアルドロス 「前が見えないけど……そんなに寒くないな。白いバンビーナの力かい? ブリリアント!」
キリン 「褒めてくださってありがとう。もうちょっと中に寄ったほうがいいですよ」
キングチャチャブー 「………………」
キングチャチャブー 「……? (何だ……? 何か聞こえる……)」
キングチャチャブー 「(この声は…………)」
キングチャチャブー 「……!! (まさか……!!)」

373: 2009/11/16(月) 18:42:54.96 ID:RbEmICU0
キングチャチャブー 「………………(いや、そんなはずはない……)」
キングチャチャブー 「(冷静になってみれば、吹雪の音が重なって、そう聞こえただけだ……)」
キングチャチャブー 「…………」
キングチャチャブー 「ついて来い」
クック 「ああ。みんな、行こう」
ロアルドロス 「ここからじゃ、海岸は見えないねぇ」
少女 「ロアルさんが見たのって、一体何だったんだろうね」
少女 「本当に砦ドラゴンだったりして」
ティガ弟 「そんなもんはこの世にいねぇよ。いつまでもガキのたわごとを信じてるんじゃねぇ」
キングチャチャブー 「………………」
ロアルドロス 「うーん……確かに大きなものがいた気がしたんだけれど……」
少女 「何か他に、特徴みたいなものはなかったの?」
ロアルドロス 「あ……! 何だか、懐かしい感じがしたな」
少女 「懐かしい感じ……」
ロアルドロス 「前に一度、どこかで会ったことがあるような……そんな不思議な感覚だったよ」
少女 「(砦ドラゴン……)」
少女 「(もし、キングさんの言うとおり、本当に砦ドラゴンがこの近くに来ているんだとしたら……)」
少女 「(お話、してみたいな…………)」
少女 「(そうしたら、この吹雪も止めてもらえるかも…………)」

430: 2010/01/03(日) 16:21:46.02 ID:9PdQ5L60
-しばらく後、樹海、火山に通じる洞窟-

キングチャチャブー 「ここだ」
クック 「こんなところに抜け道があったなんて……知らなかった」
キングチャチャブー 「だろうな……俺もここを通るのは久しぶりのことだ」
少女 「ロアルさん、大丈夫?」
ロアルドロス 「白いバンビーナのおかげで、たいして寒くはなかったよ」
キリン 「それはよかったわ。それにしても……狭い洞窟ね」
ティガ弟 「ケェ! 外は吹雪いていやがるし洞窟は狭いときやがる。最悪だぜ」
クック 「まぁそう言わないで。火山に入れば今よりはましになるだろう」
キングチャチャブー 「……」
クック 「キング、砦ドラゴンのことを気にしているのか?」
キングチャチャブー 「てめぇらには関係がない話だ……」
少女 「…………」
ティガ弟 「ずいぶんとこだわってるようだが、おとぎ話はおとぎ話だろ。本当に見たってのか?」
キングチャチャブー 「…………」
ティガ弟 「ヘッ。だんまりかよ」

431: 2010/01/03(日) 16:22:53.72 ID:9PdQ5L60
少女 「でも、もしそんなにおっきなドラゴンさんがいるなら私、お話してみたいな」
クック 「そうだな。ジエン・モーラン老も話してみれば意外に気さくな方だった」
クック 「砦ドラゴンも、もし話すことができたならこの吹雪を止めてくれるかもしれない」
キングチャチャブー 「そいつは無理な相談だな……」
クック 「? どういうことだ?」
キングチャチャブー 「砦ドラゴンは、伊達や酔狂のために吹雪を起こしているんじゃぁねぇ……」
キングチャチャブー 「……そんな生やさしい話じゃねぇよ」
キングチャチャブー 「…………」
ティガ弟 「……ま、もしそんなのがいるとしたら、よほど性格がねじ曲がってやがるんだろうな」
ティガ弟 「こんな吹雪じゃ、人間たちだってヤバいんじゃねぇ?」
少女 「(……! ハンマーさん達、大丈夫かな……)」
ティガ弟 「俺たちだってヤバかったぜ。嫌がらせ以外の何者でもねえな」

432: 2010/01/03(日) 16:23:49.53 ID:9PdQ5L60
―旧火山―

キングチャチャブー 「……出口だ」
クック 「ここから火山に入れるのか。よっこらしょと。少女、掴まるんだ」
少女 「うん! ……わ、いきなり暑くなった」
ロアルドロス 「こいつはありがたい!」
キリン 「ふぅ、やっとついたわね……」
ティガ弟 「お、鼻水がみるみる溶けていくぜ!」
クック 「ん? あそこに誰かいるな……」
キングチャチャブー 「…………」
キリン 「あれはテオ様とナナ様だわ。それに……」
クック 「おお! カムさんとノノさんじゃないか!!」
カム・オルガロン 「……! その声は、イャンクック」
ノノ・オルガロン 「久しいわ、イャンクックよ」
クック 「ずいぶんと久しぶりだなぁ。旅から戻ったのですか」
カム・オルガロン 「ああ。先刻な」
ノノ・オルガロン 「ええ、つい昨日戻ったの」
キリン 「先生方、お久しぶりです」
カム・オルガロン 「おお、君はキリン!」
ノノ・オルガロン 「綺麗になって。見違えたわ」
カム・オルガロン 「ああ、見違えたな。綺麗になった」
キリン 「うふふ、ありがとうございます」
ティガ弟 「(こそこそ)」

433: 2010/01/03(日) 16:26:38.23 ID:9PdQ5L60
テオ・テスカトル 「クック殿? 皆お揃いで、避難に来られたか」
ナナ・テスカトリ 「まぁ、よかった。心配していていたところだったのです……あら、そちらの方は?」
ロアルドロス 「向こうの大陸からきましたロアルドロスと申します、マダム。先日氷に囚われたところを、ここにいる方々に助けていただきました」
ナナ・テスカトリ 「この寒さの中大変だったでしょう。無事でよかった……」
カム・オルガロン 「……ふむ。これが少女か」
ノノ・オルガロン 「人間の少女ね。テオとナナの話にあった」
少女 「あ……こ、こんにちは。少女っていいます」
クック 「カムさん、ノノさん。今は私の娘として育てているんだ。大丈夫、害はないよ」
カム・オルガロン 「そのようだな。私の名前はカム。カム・オルガロン。こちらは妻の」
ノノ・オルガロン 「ノノ。ノノ・オルガロンよ」
キリン 「お二人は、学校で授業も教えてくださっていたのよ」
少女 「そうなんだ。じゃあ、カム先生とノノ先生だね」
カム・オルガロン 「うむ。今度授業を聞きに来るがいい」
ノノ・オルガロン 「そうね、一緒に授業に参加するといいわ」

434: 2010/01/03(日) 16:27:31.91 ID:9PdQ5L60
ティガ弟 「(こそこそ)」
カム・オルガロン 「そういえばあそこにいるのは……」
ノノ・オルガロン 「地獄兄弟の片方だわ」
ティガ弟 「(ビクッ)」
カム・オルガロン 「そうだな、地獄兄弟の片方だ」
ティガ弟 「チッ……見つかっちまった…………」
カム・オルガロン 「悪戯坊主、こっちに来るがいい」
ノノ・オルガロン 「ええ、悪戯坊主。何をこそこそ隠れているのです?」
ティガ弟 「誰が坊主だ! 俺はれっきとした地獄の……」
カム・オルガロン 「ああ、地獄の使者か。それを名乗るにはまだ三十年は早いな」
ノノ・オルガロン 「ええ、三十年は早いわ」
ティガ弟 「………………」
少女 「カム先生、ノノ先生、いたずらぼうずって?」
ティガ弟 「そんなところに反応せんでいいわ!」
カム・オルガロン 「その喋り方は弟の方か。いや、何。こやつ等は私達の教え子でもあるのだ」
ノノ・オルガロン 「いたずらばっかりして、授業を聞かない子達でした」
カム・オルガロン 「そうだな。授業を聞かない子達だった」
少女 「そうなんだぁ。ダメだよ弟さん、お授業はちゃんと聞かなきゃ」
ティガ弟 「余計なお世話だ」

435: 2010/01/03(日) 16:28:36.32 ID:9PdQ5L60
ノノ・オルガロン 「兄の方はいないのですか?」
少女 「うん。風邪を引いちゃって、今は私たちのお家で寝てるよ」
ノノ・オルガロン 「まぁ……バカと何とかは風邪を引かないと言うことわざもあるのに」
カム・オルガロン 「そうだな。バカと何とかは風邪を引かないらしいのに、珍しいこともあるものだ」
ティガ弟 「じゃかしいわ。バカって言うなバカって」
クック 「そういえば、テオ殿方はここで一体何を?」
テオ・テスカトル 「まだ避難していない者が居ないかどうか、見回っていたのだ」
ナナ・テスカトリ 「樹海の奥にも行きたかったのですが、どうにも吹雪が強すぎて進めないので戻ってきた所です」
キングチャチャブー 「…………」
カム・オルガロン 「そこにいるのはキングチャチャブー」
ノノ・オルガロン 「ええ、キングチャチャブーよ。お久しぶり。奇面族の王」
キングチャチャブー 「……ああ」
ロアルドロス 「ねぇ、少女(こそこそ)」
少女 「ん? なぁに?」
ロアルドロス 「あの綺麗な炎獣さんは、あっちの格好いい炎獣さんの奥さんかい?」
少女 「うん。ナナ先生とテオ先生は夫婦だよ」
ロアルドロス 「何だ……ふぅ、残念だな……」
少女 「?」

436: 2010/01/03(日) 16:29:56.99 ID:9PdQ5L60
クック 「そうか、これ以上奥には進めないか……」
テオ・テスカトル 「避難しに来たのではないのか? みなで一体どうしたのですか?」
クック 「ヤマツカミ様のところに行こうと思って。ロアルさんが挨拶をしたいと言っているし、安否が気になる……」
カム・オルガロン 「ヤマツカミ様は我々も気になる」
ノノ・オルガロン 「そうね。気になるわ」
キリン 「オオナズチ君がいるので大丈夫だとは思いますけれど……この寒波、心配だわ……」
ナナ・テスカトリ 「とにかく今日は、これ以上樹海の奥に進まない方がいいでしょう。皆様、少し暖を取っていかれたほうがいいわ」
ロアルドロス 「そうさせてもらいます、マドモアゼル。ふぅ……やっと水かきの氷が溶けてきた……」
少女 「ヤマツカミ様、大丈夫かな……?」
クック 「……? そういえば、誰かが寝かされているようだが……」
テオ・テスカトル 「ああ。ラージャン君が連れてきてくれた。猛吹雪の中で意識を失っていたらしい」
テオ・テスカトル 「私とナナの炎で温めて、容態が安定したので今は温かい場所に寝かせているんだ」
クック 「……ガルルガさん!? 一体なんだってこの吹雪の中……」
ナナ・テスカトリ 「それが……ラージャン君は雪の中見つけたとしか言わなかったので理由が分からないのです」
ナナ・テスカトリ 「それに、体はもう十分温まったはずなのに目を覚ましません」
少女 「ガルルガさんだ……」
ガルルガ 「………………」
少女 「……怪我してるの?」
ナナ・テスカトリ 「見たところ、所々の凍傷以外には怪我は見当たりません……」
カム・オルガロン 「うむ。我々も困っている。まるで眠っているようだ。しかし起きぬ」
ノノ・オルガロン 「そうね、眠っているようなのに起きないわ」
テオ・テスカトル 「とりあえずもっと体を温める場所に運ぼうとしていたところなのだ」

437: 2010/01/03(日) 16:31:41.09 ID:9PdQ5L60
ロアルドロス 「ちょっと見せてください」
テオ・テスカトル 「ロアルさんとやら。医術の心得があるのか?」
ロアルドロス 「ええ。少し。勉強したことがあります」
ロアルドロス 「ふぅむ………………」
ロアルドロス 「動悸も正常だし、瞳孔だってちゃんと閉じてる。確かに、まるで夢を見ているかのような状況ですね……」
ロアルドロス 「どうしてこんなことになったのか……」
ロアルドロス 「体を押しても反応はないのは、魂だけ抜け出しているかのようです」
ティガ弟 「ケェ、魂だけ? そんなバカな話があるかよ」
キリン 「ガルルガさん……一体どうしちゃったんでしょう……」
ロアルドロス 「……私たちの部族の中では、時折このような症状を発する者が出ることがあります」
テオ・テスカトル 「そうなのか……して、どうすれば治すことが出来るか、わかりますか?」
ロアルドロス 「残念ながら……」
ロアルドロス 「原因も、その治療法も分かっていないのです。私たちはこの状況を『魂抜き』と呼びます」
少女 「たましいぬき……」
ロアルドロス 「ある日突然目を覚ます者もいれば、一生涯目を覚まさない者もいます」
ロアルドロス 「本当に、魂だけどこかをさまよっているのかもしれません」
ティガ弟 「…………難しいことはよくわからねぇが、生きてんだろ?」
ロアルドロス 「はい。間違いなく生きてはいますが……」
ティガ弟 「ならブッ叩きゃ起きるんじゃねぇのか? おるぁ!!(ドゴッ!)」
ガルルガ 「…………」
キリン 「ちょっ……弟さん、乱暴ですよ!」
ナナ・テスカトリ 「そうですよ、弟君。いきなり何をするんですか」
ノノ・オルガロン 「粗暴なところは相変わらずだな……」
ティガ弟 「総バッシングかよ。でもこれで、寝てるんなら目を覚ますだろ」
ガルルガ 「………………」
キリン 「……うんともすんとも言いませんね……」
ティガ弟 「シカトブッこいてんじゃねぇぞ! もう一撃……」
テオ・テスカトル 「…………やめるんだ、弟君。これは本当に、ロアルさんの言うとおり『魂抜き』の状態なのかもしれない」
キングチャチャブー 「………………」

438: 2010/01/03(日) 16:33:06.69 ID:9PdQ5L60
キングチャチャブー 「……砦ドラゴンに連れてかれたな……」
カム・オルガロン 「!!」
ノノ・オルガロン 「!!」
テオ・テスカトル 「キング、今何と?」
キングチャチャブー 「砦ドラゴンがガルルガの魂を連れてったと考えるのが妥当だろうよ……」
キングチャチャブー 「今頃は奴の背中をさまよってるのかもしれねぇ」
ティガ弟 「いい加減にしろよおっさん!」
キングチャチャブー 「…………」
ティガ弟 「御伽噺みてぇな話に執着しやがって。俺はそーいう根拠のない話が一番嫌いなんだ」
ティガ弟 「何ならその砦ドラゴンとやらをここに連れてこいや。そしたら納得してやらぁ」
ティガ弟 「あぁ、海岸に何かいるとか言ってたな。だったら俺がちょっくら行って見てきて……」
テオ・テスカトル 「……ダメだ。海岸には近づかない方がいいだろう」
ティガ弟 「おいおい先生まで、臆病風にふかれたか?」
テオ・テスカトル 「そういうわけではないが、確かにこの寒波は異常だ。それに砦ドラゴンの伝承は、先代のテスカトルからも聞いたことがある」
テオ・テスカトル 「幾百、幾万の魂を背中に乗せて歩き回る、神のような存在だとな」
キングチャチャブー 「…………」
テオ・テスカトル 「もしいるとすれば、何故この場所でこんなにとどまっているのか分からないが……」
テオ・テスカトル 「とにかく、どちらにせよ外は危険だ。危うきには近づかない方が吉だろう」
ティガ弟 「まぁ……そう言うなら俺はそれでもいいがよ……」

439: 2010/01/03(日) 16:33:57.67 ID:9PdQ5L60
キングチャチャブー 「……(スッ)」
テオ・テスカトル 「キング、何か分かるのですか?」
ガルルガ 「…………」
キングチャチャブー 「確かに、魂が抜けたような状況だ……」
キングチャチャブー 「三十年前にも、ウチの部族にこのような症状を発した奴がいた……」
キングチャチャブー 「………………」
クック 「キング、何とか治してやれないか?」
キングチャチャブー 「…………こいつは自分の意思で、砦ドラゴンの背中に乗ってやがるんだ……」
クック 「……? どういうことだ?」
キングチャチャブー 「降りてくるのはこいつの心次第ってことだ……」
キングチャチャブー 「脇でやいのやいの騒いでも仕方がねぇ……」
キングチャチャブー 「…………俺は里に戻るぜ」
テオ・テスカトル 「待ってください、キング。何か知っているなら教えてください」
テオ・テスカトル 「ガルルガ君も大事な教え子だ。出来ることなら助けてやりたい」
キングチャチャブー 「助けるも何も……その手段がねぇ……」
キングチャチャブー 「こいつが自分の意思で『戻る』と思ったとき、初めて砦ドラゴンの背中から戻ることが出来る……」
キングチャチャブー 「…………」
キングチャチャブー 「俺ァ三十年前、砦ドラゴンの背中に乗ったことがある……」
ティガ弟 「……!!」
キリン 「背中って……本当に、実在してるの……砦ドラゴン……」

440: 2010/01/03(日) 16:36:03.76 ID:9PdQ5L60
キングチャチャブー 「『いる』のか『いない』のか、そういう話は知らねぇ」
キングチャチャブー 「ただ、俺は盗られたものを取り返そうと、三日三晩奴の背中の上をさ迷い歩いた……」
キングチャチャブー 「その結果気づいたことがある……」
キングチャチャブー 「砦ドラゴンというものが、自然現象であろうと、何であろうと……」
キングチャチャブー 「戻らねぇものは戻らねぇし、戻るものは戻る……」
キングチャチャブー 「それが、『氏ぬ』ってことなんだってな……」
キングチャチャブー 「じゃあな(スタスタ)」
クック 「……行ってしまった。話はよく分からなかったが……無事に里にたどり着けるだろうか。心配だな……」
少女 「ガルルガさん、起きて。私だよ、少女だよ。分かる?」
ガルルガ 「…………」
少女 「おじさん、ダメだよ。ガルルガさん、ちっとも目を覚まさない」
ナナ・テスカトリ 「とにかく、もう少し奥に移動しましょう」
ナナ・テスカトリ 「グラビモス夫妻の所に、今夜は泊めてもらおうと思っています。先ほど承諾もいただいてきました」
少女 「! バサル君のお家だ!」
ナナ・テスカトリ 「ふふ。ザザミ一家のみなさんもいらっしゃるわよ」
少女 「紫ガミザミちゃんとも、久しぶりに会えるんだ! わぁ、嬉しいな」
クック 「うむ。そう決まっているのなら、我々も今日は厄介になってもいいだろうか」
テオ・テスカトル 「グラビ殿には私から話をしよう。避難所にもなっているから大丈夫だ」
キリン 「ガルルガさん……無事に目を覚ましてくれるといいけれど……」
ティガ弟 「………………」

441: 2010/01/03(日) 16:37:02.07 ID:9PdQ5L60
―砦ドラゴンの背の上―

ガルルガ 「…………ッ…………」
ガルルガ 「……(何だ……?)」
ガルルガ 「(何だって、俺ァこんなところに…………)」
ガルルガ 「(一面真っ白だ……雪か? でも、不思議と全く寒くねぇ……)」
ガルルガ 「(端が見えねぇ……)」
ガルルガ 「(どこまでも白い空間が続いてやがる…………)」
ガルルガ 「(ここはどこだ……)」
ガルルガ 「(かかさまの声が聞こえて……外に出て、俺は意識を失っちまったんだ……)」
ガルルガ 「(だがおかしいぞ……)」
ガルルガ 「(凍傷の一つや二つは出来ててもおかしくないのに、体は全く正常だ……)」
ガルルガ 「(それに、逆にポカポカと温かい…………)」
ガルルガ 「(いや…………)」
ガルルガ 「(温かいのは、地面だ……)」
ガルルガ 「(こんなに雪が積もっているはずなのに、温かい…………)」

442: 2010/01/03(日) 16:37:53.33 ID:9PdQ5L60
ガルルガ 「(とにかく、ここはどこだ……?)」
ガルルガ 「(早くゲリョの巣に戻らねぇと……)」
ガルルガ 「!!!」
ガルルガ 「(雪の向こうに、何かが見える…………)」
ガルルガ 「(あれは…………!!!!)」
×××××× 「………………」
ガルルガ 「なっ…………!!!」
両耳ガルルガ 「………………」
ガルルガ 「(ふらっ)」
両耳ガルルガ 「………………」
ガルルガ 「…………かっ…………………………かかさまぁぁー!!!!」
両耳ガルルガ 「(にこり)」
ガルルガ 「(ダダダダダッ)」
ガルルガ 「(ガシッ)」
ガルルガ 「こっ……この感じ……本物……?」
ガルルガ 「本物のかかさまだ!!!!」
ガルルガ 「本物!? 本物だ!!!」
ガルルガ 「ど……………………どうして!!!?」

443: 2010/01/03(日) 16:39:31.99 ID:9PdQ5L60
両耳ガルルガ 「(ぎゅう)」
ガルルガ 「う…………」
両耳ガルルガ 「ガル……こんなに大きくなって…………」
両耳ガルルガ 「寂しかったでしょう……独りで……」
ガルルガ 「………………」
ガルルガ 「………………(じわり)」
ガルルガ 「…………かかさま…………(ぎゅ……)」
両耳ガルルガ 「………………(撫で撫で)」
両耳ガルルガ 「ガル……私の子……」
両耳ガルルガ 「ねぇ、こっちを見て」
ガルルガ 「…………」
両耳ガルルガ 「……泣いてるの? 大丈夫、顔を見せて……」
ガルルガ 「(ぐしっ……)」
両耳ガルルガ 「(にこり)」
ガルルガ 「ど…………どうして、かかさまがここに…………」
両耳ガルルガ 「ガル……よく聞いて……」
両耳ガルルガ 「……ここは、生と氏を繋ぐ場所なの……」
ガルルガ 「……???」
両耳ガルルガ 「そしてあなたは選ばなくてはいけないわ……」
両耳ガルルガ 「『戻る』か……『共に来る』か……」
両耳ガルルガ 「そのどちらかを…………」

444: 2010/01/03(日) 16:40:29.44 ID:9PdQ5L60
―旧火山、避難所、子供たちの部屋―

バサルモス 「ぐぅ……ぐぅ…………」
紫ガミザミ 「すぅ……すぅ…………」
少女 「(うつら……うつら……)」
少女 「(バサル君も紫ちゃんも元気でよかった……)」
少女 「(家のティガ兄さんが気になるけど、今日は疲れたしここで休もう…………)」
少女 「………………」
 >………………!! ……!!!!
少女 「……?」
 >………………!!!! …………!!!
少女 「(何……この声……)」
少女 「(この声……まさか…………)」
 >…………!! …………!!!!

445: 2010/01/03(日) 16:41:20.01 ID:9PdQ5L60
―四年前、シュレイド城―

父 「ダメだ……今回の戦いには幼女を連れて行くことはできない」
母 「そんなことを言ったって……私も出て行ったら、この子を守る人はもういないのよ……!」
父 「そうならないように、二人で戦いに出るんじゃないか!」
父 「幼女、よく聞くんだ」
父 「お父さんとお母さんは、これからモンスターを倒しに戦いに出る」
父 「二人とも、ハンター……モンスターハンターなんだ」
父 「だから戦わなくちゃいけない」
父 「幼女。お前はここで、俺たちが戻るのを待っているんだ」
母 「…………」
父 「大丈夫。こんな戦争、すぐに終わるさ。俺たちの力があれば……!!!」

446: 2010/01/03(日) 16:42:29.76 ID:9PdQ5L60
―三年前、街―

行きかう人々 「(ひそひそ)お父さんが脱走兵ですって……」
行きかう人々 「(ひそひそ)登録された正式なハンターだったんでしょう? それが敵前逃亡とはね……」
行きかう人々 「(ひそひそ)噂では山の向こうに逃げたって話だけど、奥さんもつれて、こんな小さな子供を置いて……」
幼女 「………………」
行きかう人々 「(ひそひそ)前線のハンターが逃亡なんてしなかったら、砦にまでモンスターが攻め込んでくることはなかったんじゃないかしら」
行きかう人々 「(ひそひそ)しっ……こっちを見てるよ」
幼女 「……………………」
行きかう人々 「(ひそひそ)あぁやだやだ。脱走兵の娘なんて。ウチじゃ絶対引き取りたくないね」
行きかう人々 「(ひそひそ)全くだよ。ハンターの風上にも置けないじゃないか」
幼女 「……………………」
幼女 「(お父さん、お母さん…………)」
幼女 「(お父さんは逃げたの……?)」
幼女 「(お母さんも逃げたの……?)」
幼女 「(私を置いて……)」
幼女 「(どうして…………???)」
幼女 「(どうして…………………………?)」

447: 2010/01/03(日) 16:43:20.77 ID:9PdQ5L60
―現在、旧火山、子供たちの部屋―

少女 「(…………ッ……!!)」
少女 「(思い出したくない……)」
少女 「(そんなこと、思い出したくない…………)」
 >…………!!! …………!!!!!
少女 「(何……?)」
少女 「(何なの、この声…………)」
少女 「(まるで私に、嫌なことを思い出させるように………………)」
 >おいで………………
少女 「(嫌…………行きたくない………………)」
 >ここには君の望む世界がある…………
 >さぁ、おいで…………!!!
少女 「(この声…………)」
少女 「(お父さんの、声…………!!!)」

449: 2010/01/03(日) 16:53:58.85 ID:9PdQ5L60
お疲れ様でした。4話に続かせていただきます。

非常に寒い日が続いていますが、皆様の体調は大丈夫でしょうか。
温かくして眠るようにしてくださいね。

私の職場が変わったことにより、色々何かと時間が取れない部分が多くなってきました。
低速になってしまいますがこれからも続けていこうと思いますので、長い目で見ていただければ幸いです。

451: 2010/01/03(日) 16:55:28.33 ID:lc6QYkco
乙!
少女も砦ドラゴンの背中に行くのか

引用: イャンクック 「旧沼地で人間を拾ったんだが」 3