432: ◆6osdZ663So 2013/08/23(金) 21:53:53.99 ID:V/L3AiXao


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ



祟り場に集うキャラ数人をお借りして投下します


前回までのあらすじ

 藤原父「パパの言う事を聞きなさい。」


参考
(美穂と藤原父)
【モバマス】美穂「肇ちゃんが倒れた。」

433: 2013/08/23(金) 21:54:19.64 ID:V/L3AiXao

美穂(皆さん、こんにちは。小日向美穂です。)

美穂(肇ちゃんのお父さんに、「妖怪たちの宴に混じって遊んで来い。」と)

美穂(言われ、外に出てきた私達でしたが。)


犬頭壱「退くがいい、小娘ども」

犬頭弐「ここは、我らが主様の通り道であるぞ。」

犬頭参「はやく去ねワン!はやく去ねワン!」


美穂(気づけば犬の妖怪さん達に絡まれてました。)

美穂「ど、どうしよう。肇ちゃん。」


今日、こうして彼女達が妖怪に絡まれることは一度や二度ではなく、

その度に、肇の妖術であったり、『小春日和』を使って追い払うことになっていた。

『溜まった妖力の消費』と言う目的自体は順調に進んでると言えるが、


美穂(とにかく大変な事ばかりでした。ドッペルゲンガーにも出会っちゃったし。)

美穂(肇ちゃんは大丈夫って言ってくれたけど、本当に氏んじゃうかもと思うと不安で泣きそうです。)

美穂(でも今は目の前の問題を何とかしないと・・・・・・。)


肇「美穂さん。ここは私に任せてください。」

美穂「肇ちゃん・・・・・・・。」

美穂(こう言うとき、普段なら肇ちゃんはすごく頼りになるのだけど、)

肇「捻り潰しますからっ!」 グッ

美穂「バイオレンスなのはやめようね?」

美穂(今日はそんな肇ちゃんのブレーキが、時々壊れてるように見えます。)

美穂(妖怪のテンションがおかしくなりやすいとは聞いてたけど、こうなっちゃうとは。)


----------------------------------------



それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。


~中略~


「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。

・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。





434: 2013/08/23(金) 21:55:15.83 ID:V/L3AiXao


「こーら。やめなさい、お前達。」


そうこうしていると、犬頭の妖怪達の後ろから、

熊よりも大きな戌に跨って、腰に一本の刀を下げた、若い女性が現れた。


犬頭壱「あ、主様!しかしっ」

犬頭弐「この者達もどうせ我々の邪魔をする妖怪の類に決まってます!」

犬頭参「邪魔される前にやっつけるワン!」

「その子達は違うよ、もう。ちゃんと確認しなさい。」


主様と呼ばれたその女性は、部下の犬頭たちをたしなめる。

彼女は白い犬の面を被っていて、美穂からは、その顔は伺えなかった。


美穂「えっと、あなたが妖怪さんの主さんですか?」

そう訪ねると、彼女は美穂の方を向いて、何かを考え込みはじめる。

犬面の姫「・・・・・・。」

美穂(・・・・・・もしかして私、何か不味い事を言っちゃったのかな。)

そんな心配をしたが、すぐに彼女は口を開き、

犬面の姫「ふふっ、この子らにはそう呼ばれておるの。」

少し笑いながら、美穂の質問に答えた。

美穂(よかった、優しい人みたい。)


犬頭壱「おうおう!聞いて驚きやがれ!このお方はな!」

犬頭弐「此度の祟り場を以って、これから全ての妖怪の主になられるお方!」

犬頭参「僕らの姫様だワン!強くてカッコイイワン!」

犬面の姫「・・・・・・持ち上げるのはそのくらいにね。」


美穂「妖怪のお姫様?」

犬面の姫「ふふっ、うむ。そうなるかな。」

楽しげにお姫様は答えました。

435: 2013/08/23(金) 21:56:07.72 ID:V/L3AiXao

肇「・・・・・・あの、どうして貴女が?」

美穂(肇ちゃんは知ってる人?)

犬面の姫「久しぶりであるの、えっと、肇どの。」

どうやら2人は知り合いであったようで。

犬面の姫「話せば長くなる事ではあるが、今回の事で、」

犬面の姫「・・・・・・わらわにもまあ・・・・・・色々あっての。」

犬面の姫「成り行き上、仕方なくこう言う事をさせてもらっておる。」

犬頭壱「仕方なくとか、言わないで下さいよ。主様ぁ。」

犬面の姫「あはっ、ごめんごめん。」

美穂(よくわからないけど、何か難しい事情があるみたい。)


肇「うーん。なんだかややこしい事になってるみたいですね。」

肇「事情はわかりませんが、何か協力できませんか?」

犬面の姫「協力・・・・・・してもらっても良いのかな?」

肇「構いませんよ。きっとお互いのためになりますから。」

お互いのため。

彼女達の抱える問題を解決することで、

美穂(きっと、溜め込んじゃった妖力を消費する良い機会になるよね。)

うまくいけば、win-winの関係なのだろう。

436: 2013/08/23(金) 21:56:57.06 ID:V/L3AiXao

犬面の姫「ありがとう、肇どの。悪いけど頼らせてもらうよ。」

肇「ええ、お任せください。」

美穂「えっと、あの・・・・・・わ、私も手伝います!」

肇の知り合いならば、きっと悪い妖怪ではないのだろう。

友達の知り合いが困っていて、手を貸さない理由がない。そんな風に美穂は考えた。

犬面の姫「ふふっ、美穂どのもありがとう。」

美穂「い、いえ!お構いなくっ!」


美穂「って・・・・・・あれ?私、名前名乗ってました?」

犬面の姫「むっ、ああ。そう言えば妖術を使っておったの。」

何かの妖術を使って、彼女は美穂の名前を先に知っていたのだと言う。

犬面の姫「勝手に名前を探るような真似をしてすまぬ。以後気をつけるとする。」

美穂「あっ!いえ!そのっ!お、お気になさらず?」

美穂(なんだか変なやり取りをしてしまった。)

美穂(肇ちゃんのお父さんみたいに、進んでそうしようと思って無くても)

美穂(心が読めちゃうタイプなのかも?私もあまり気にしないようにしよう。)


犬面の姫「美穂どのが、その腰に下げているのは、肇どのが配っている刀、『鬼神の七振り』であろう?」

犬面の姫「刀の使い手であるのならば、丁度良い。是非ともわらわに協力しておくれ。」

437: 2013/08/23(金) 21:57:42.69 ID:V/L3AiXao

犬面の姫「美穂どのは、祟り場の収束のために動いておる者達がいるのは知っているかな?」

美穂「えっと、そう言う人たちが居るって聞いてはいましたけど、詳しくは・・・・・・。」

犬面の姫「異界から来たと言う巫女とその仲間が、清めの符を貼って祟り場を回っているのだが、」

犬面の姫「しかしどうやら、一部の妖怪達に妨害されておるようでな。」

美穂「えっ!」

犬面の姫「巫女達を脅かしたり、符を張るべき場所に近づけなくしたり、やりたい放題。と言う訳であるな。」

肇「祟り場は妖怪にとっては心地よい空間ですから、邪魔をしたい者達も少なくないでしょうね。」

美穂(楽しい時間が終わってほしくない気持ちはわかるけど・・・・・・。)

この祟り場が収束しない場合、美穂達は間違いなく困ることになる。


犬頭壱「そこで我らの姫様は、妨害する妖怪どもを懲らしめる役割を買って出てるのだ!」

犬頭弐「祭りは確かに楽しい!だが、この祟り場は本来であれば存在してはならない異質な空間。」

犬頭参「僕たちにも悪影響を及ぼさないとも限らないワン!ちゃんと終わらせるのが一番いいワン!」

妖怪達の中にも、この状況が続くことは良くないと考える者達も居たようだ。

438: 2013/08/23(金) 21:58:30.08 ID:V/L3AiXao

肇「では、私達も、祟り場の収束を妨害する妖怪たちをひねり・・・・・・」

肇「こほん、懲らしめるのを手伝えばいいんですか?」

美穂「肇ちゃん、バイオレンスなのはダメだからね。」

美穂(本当に今日はブレーキ壊れてるなぁ、肇ちゃん。)


犬面の姫「いや、おそらく・・・・・・一匹一匹懲らしめていてもキリが無いのであろうな。」

妖怪のお姫様は困った様に言った。

どういう事だろう?

犬頭壱「此度の祟り場、範囲が広すぎる上に、妖怪の数があまりに多すぎるのだ。」

犬頭弐「その上、祟り場の収束に興味がなくても、悪ふざけで絡んでくる妖怪たちも少なくない。」

犬頭参「二人増えてもまだ全然手が足りないワン!」

一匹を懲らしめても、また一匹、また一匹と遭遇するならキリが無い。

美穂達がそれを手伝っても、やはりその全てに対応しきれない事には変わりないのだろう。

肇「そうですね。協力者がもう少し多ければいいのですが。」

犬面の姫「そこでわらわは妙案を思いついた。」

439: 2013/08/23(金) 21:59:22.11 ID:V/L3AiXao

犬面の姫「此度の祟り場に現れた、仮面を被った剣の姫を知ってるかな?」

美穂「剣のお姫様ですか?」

犬面の姫「西洋の剣を摩訶不思議な術で巧みに操る少女のようでな。」

犬面の姫「とにかく、その少女の剣捌きが見事であるらしい。」

美穂「?」

肇「それが祟り場の収束とどう言う関係が?」

犬面の姫「その少女は剣を使って、見世物をしているらしく、」

犬面の姫「しかも、その相手を探しておるようでな。」

犬面の姫「是非、わらわはお相手して頂きたいと考えておる。」

犬頭壱「宴の場で少女と舞ってみせることで、姫様の凄さを、妖怪たちに見せ付けるのだ!」

犬頭弐「そうして凄くて強い姫様が、祟り場の収束を妨害する者を懲らしめていると聞けば、悪ふざけで絡んでくる者もずっと少なくなる!」

犬頭参「姫様の凄さを気に入って手伝ってくれる妖怪も増えるかもワン!僕たちも楽になるワン!」

美穂(なるほど、確かにそれは妙案なのかも。)

犬面の姫「しかし、相手は一人で五本の剣を操ったと言う凄腕の剣使い。」

肇「一人で五本の剣をですか?」

美穂「う、腕が5本あるとか?ど、どんな人なんだろう。」

犬面の姫「もしかすると、わらわ一人では、力不足なのかもしれぬ。と思っておった。」

犬面の姫「そこで、『鬼神の七振り』を持つおぬし達の力を借りたい。」

美穂「・・・・・・。」

美穂「それってつまり・・・・・・?」

犬面の姫「ふふっ、簡単に言えば、美穂どのにも剣舞の舞台に上がって欲しいってこと、であるな♪」

美穂「・・・・・・えええええええっ!!」

440: 2013/08/23(金) 22:01:28.69 ID:V/L3AiXao

――

――

犬頭壱「ありました!主様!ここです!この公園ですよ!」

犬頭弐「例の仮面の少女はここに居るはずです!」

犬面の姫「うむ、よく見つけてくれたのう。」

犬頭参「姫様のためですワン!」


妖怪のお姫様の跨る大戌に乗せて貰って、美穂達がやって来たのはとある公園。

右も左も妖怪達が歌って踊って、飲んで語らって、食べて騒いで、どこもかしこも賑やかでございます。


美穂「す、すごい妖怪の数だね。」

肇「はい、それに強い力も集まってるみたいです。」

肇「とてつもない妖力も感じますね。」

美穂「と、とてつもない妖力?だ、大丈夫なの?」

つまりそれは、凄く強い妖怪達が近くに居ると言う事で、美穂は不安になる。

肇「この宴の様子を見る限りは、おそらく危険は無いと思いますよ。」

周囲を見渡せば、たくさんの妖怪達が笑っていて、楽しんでいる。

美穂(確かに、この様子なら、危険な事はないのかなあ。)

441: 2013/08/23(金) 22:02:07.90 ID:V/L3AiXao

犬頭壱「・・・・・・ど、どうやら、れ、例の剣使いの娘は。」

犬頭弐「あ、あの一角にいる、よ、ようですね・・・・・・。」

犬頭参「ひ、姫様ぁ。こ、怖いワン。」

犬面の姫「お前達、動けぬのだけど。」

犬頭の妖怪達の指した一角には、個性的な女の子達が居ました。

美穂(パッと見にはそれだけの事だけど・・・・・・。)

犬頭達は、みな怯えて美穂達が乗る大戌の足にくっ付いている。

その大戌にしてもわずかに唸り震えているようであった。

美穂(私は、肇ちゃんみたいに妖力だとか、目に見えない力を感じる事はできないけど、)

美穂(そんな私にも、その一角だけ明らかに、なんて言うか、)

美穂(オーラ的なものが違うのはわかる。)

彼らがあの中の何かに怯えるのも仕方ないのかもしれない。


犬面の姫「仕方ないの、お前達は待っておるとよい。」

大戌から降りた彼女は、優しく彼らにそう告げて、

悠然とその集まりに近づいていく。

美穂「だ、大丈夫なのかな?」

肇「大丈夫ですよ、安心してください。」

確信しきっている返事。肇には、安心できる理由があるようだ。


犬面の姫「すまぬが、そこの方々。剣舞の相手を探していると言うのはどなたか?」

仮面の少女「むふふ、わたしにお客さんみたいですねぇ♪」

442: 2013/08/23(金) 22:02:51.18 ID:V/L3AiXao

妖怪のお姫様と、仮面の女の子が話している。

どうやら彼女が、噂の凄腕の剣使いであるらしい。

美穂(あの子が、幾つも剣を使うなんて想像できないな。どうやるんだろう?)

口に咥えても三刀流?指に挟んで六刀流?

美穂(たくさんの刀剣を一度に扱うなんて、私にはできそうにないな。)

変な想像をしながら、その様子を、美穂はそわそわと見守っていると。

「あれ、肇ちゃんじゃん!」

お連れに声がかかったのでした。


その声を聞いた肇が、大戌から降りて地面に立ったので、美穂もそれに続く。

周子「久しぶりー、元気してたー?」

肇「お久しぶりです、周子さん。」

フレンドリーに手を振り、近づいてきた狐耳の女性。

彼女に対して、うやうやしく挨拶する肇に習って、美穂もまたおずおずとお辞儀した。

傍にいたはずの犬頭の妖怪たちは、彼女が近づいてくると凄い勢いで後ろに木陰に隠れてしまっていた。

美穂(人見知りってわけじゃないよね、キツネが怖いのかな?)


肇「紗枝さんも、お久しぶりです。」

さらに周子の、やや後方に控えていた女の子にも肇は挨拶をする。

長い髪が綺麗なその子は、

紗枝「ひ、久しぶりやね?」

声が上ずっていて、微妙に動揺している様に見えた。

美穂(たぶん見られてはいけない現場を見られてしまったみたいな、そんな感じ。)

美穂(私にも、最近、見られたくないところを見られてしまう経験が多いから、なんとなくわかる。)

443: 2013/08/23(金) 22:03:47.04 ID:V/L3AiXao

肇「珠美さんと、西蓮さんは元気ですか?」

その様子を特に気にすることもなく、肇は話を続ける。

紗枝「えっ、ああ。あんじょうやってはりますよ?」

紗枝「肇はんからいただいた『餓王丸』のおかげもあってか、」

紗枝「最近は、えらいきばってはりますえ。」

紗枝「せやから、うちも安心して留守を任せて・・・・・・。」

そこで言葉が急に止まった。

紗枝「・・・・・・。」

紗枝「こ、これはな。ちゃうんやで?」

紗枝「さ、サボ、サボってるわけちゃう。」

美穂(・・・・・・事情はまったくわからないけど)

語るに落ちちゃったのはわかった。

紗枝「た、ただ・・・・・・そう。だ、大事な用があって・・・・・・」

肇「大事な用事ですか?」

肇「ああ、周子さんとのデートですよね?なんだかお邪魔しちゃってすみません。」

紗枝「はっ?!」

美穂「肇ちゃんっ!?」

いきなり何を言いだすのだろう、この子。

美穂(あっ、そう言えば今日ブレーキ壊れてるんだった。)

何でもないように振舞っていて、唐突にアクセルを踏むから手に負えない。

444: 2013/08/23(金) 22:04:20.09 ID:V/L3AiXao

肇の言葉に、紗枝は顔を手で抑えて黙り込んでしまった。

見えてる耳は真っ赤になってる。

周子「はいはい、紗枝ちゃん弄るのはそのくらいにしてあげてねー。」

肇と紗枝の間に、周子が割って入ってきた。

美穂(もう少し早く助け舟を出してあげて欲しかったな。)

もしかしてわざと成り行きを見守ってたとか。いやいやまさか。

周子「紗枝ちゃんも働きづめだからさ。たまの息抜きくらい見逃してあげてね。」

肇「見逃すもなにも、見られて拙い物は何も見てませんよ。見てない物は誰にも言えません。」

周子「ふふっ、話が早くて助かるよ。」

肇「周子さんが誘ったんですよね?」

周子「ぴんぽーん、せいかーい♪」

肇「ふふっ、それでは仕方ありませんね。」

周子「うんうん、仕方ない仕方ない。」

美穂(?)

事情のわからない美穂にはよくわからないやり取りが続く。

445: 2013/08/23(金) 22:05:07.21 ID:V/L3AiXao

周子「ところで肇ちゃん、そっちの子は?」

そしてついに。と言った感じに、美穂に話が回ってきた。

肇「紹介します。私の友人の美穂さんです。」

美穂「こ、こ小日向美穂ですっ!」

人の事を言えない、声の上ずった自己紹介。

上がり症なのはどうにもまだ直らないようで。

周子「んー。」

周子はマジマジと、美穂を見つめている。

周子「なるほどねー、この子も例の刀の所有者なんだ。」

周子「あたしはシューコ、まあ見ての通りのものだよ。」

見ての通り。美穂の目には狐耳の妖怪の女の子と言ったところ。

それがどれほどの力を持っているのかなんて事は、美穂にはわからない。

周子「よろしくねー、美穂ちゃん。」

美穂「よ、よろしくお願いしますっ!」

周子「そんなに緊張しなくてもいいよー」

美穂の返事に周子はケラケラ笑う。

美穂(うう、なんか恥ずかしいなぁ。)

446: 2013/08/23(金) 22:05:52.85 ID:V/L3AiXao

周子「そして、私の後ろに居るのが紗枝ちゃん。」

周子「職業は・・・どうでもよね?いい子だから仲良くしてあげてね。」

紗枝「紗枝どす。どうぞよろしゅう。」

先ほどまでの動揺は何処へやら、

挨拶となれば、すぐに姿勢を整えて、丁寧にお辞儀する。

しっかりしている娘であるらしい。

美穂「は、はい。よ、よろしゅうお願いします。」

変な挨拶を返してしまう自分はしっかりしてない子だな、と美穂は思うのであった。


周子「いやー、にしても、肇ちゃん達もデート中だったんだねー。」

美穂「へっ?!」

先ほどの意趣返しかの様な、周子の言葉に戸惑う美穂。

これには流石の肇も顔を赤らめている。

美穂「ち、ち違いますよっ!私たちは、そのっ!」

肇「私は、美穂さんになら、その・・・・・・心も体も」

美穂「あれっ?!なんで満更でも無い感じにっ?!」

肇「ふふっ、冗談です。」

美穂「本当に今日ブレーキどこ行っちゃったの?!」

顔を赤らめて言うから冗談に聞こえなかった。

美穂「と、とにかく私たちは、で、ででデート中とかじゃなくて、そのっ」

肇「お互い、溜まっちゃってどうにもならなくなったものを、発散しに来たんですよね。」

美穂「そう!」

美穂「って違っ!!違うくないけどその言い方はなんか違うっ!!」

その様子を見て、周子はゲラゲラ笑っていた。


その後、誤解を解くのが大変でした。と言うほどでもなかったけれど、

肇ちゃんのテンションをおかしくしてる、この祟り場は早く何とかしよう。と強く美穂は思うのだった。

447: 2013/08/23(金) 22:06:41.67 ID:V/L3AiXao

そんな感じで、しばらく周子達と談笑していると、

犬面の姫「美穂どの、肇どの。」

仮面の女の子と話していた、妖怪のお姫様に呼ばれる。

その様子からすると、例の話はついたようだ。

肇「では周子さん、紗枝さん。失礼します。」

美穂「お、お邪魔しましたっ!」

周子「うん、またねー。」

2人に軽く挨拶をすると、その場から少し離れた場所にいる

妖怪のお姫様と、仮面の女の子のところに美穂達は向かった。

448: 2013/08/23(金) 22:07:40.23 ID:V/L3AiXao

――

仮面の少女「むふふ♪はじめまして♪」

美穂「えっと、はじめまして。」

仮面の少女「あなたも、わたしのお相手をしてくれるんですよねぇ?」

美穂「は、はい。そうです。そうなっちゃいました。」

状況に身を任せているうちに、気づけばトントン拍子に話が決まっていた気がする。

仮面の少女「そうですかぁ、むふっ、楽しくなりそうです♪よろしくお願いしますねぇ。」

美穂「よ、よろしくお願いします。」

ぺこりと軽く一礼。

犬面の姫「わらわと、美穂どの。そして仮面の少女どの。舞台に上がるのは3人になる。」

犬面の姫「肇どのには、妖術を使い、舞台を盛り上げる裏方を務めて欲しい。」

肇「なるほど、わかりました。」

美穂「・・・・・・あ、あの。」

このまま流されていてはダメだなと、意を決して声を出す美穂。

美穂「ここまで来て言う事じゃないかなとは思うんですけど・・・・・・。」

美穂「私、剣舞ってよくわからなくって。」

美穂「剣を持って、踊るんですよね?」

おずおずと尋ねる。

剣を持って踊ると簡単に言葉にこそしてみたが、正直よくわからない。

アイドルヒーローを目指すと決めてからダンス自体は少し練習したけれど、

それだって、まだまだ人に見せられるものではないのだ。

美穂「私、踊れないんですけど、舞台に上がっても平気なんでしょうか。」

449: 2013/08/23(金) 22:08:42.47 ID:V/L3AiXao

美穂が踊れないと聞いても、二人は慌てることはなく、

犬面の姫「その点についてはちゃんと相談しておるよ。」

仮面の少女「わたしの舞台は演劇仕立てになってまして、」

仮面の少女「美穂さんは踊れなくても平気ですから、ご安心を~。」

美穂「演劇・・・・・・。」

踊れなくても良いらしいのだが、演劇にしてもやはり未経験。

美穂「あの、劇ってことは、台本とか役割とかもあるんですよね?」

犬面の姫「いや、流石にそこまでしっかりと練る時間はないの。」

仮面の少女「本格的に動きを覚えてもらうのも大変ですからねぇ。」

仮面の少女「ある程度見世物として成立すればいいですから、」

仮面の少女「ほとんど即興でやってしまうつもりですよぉ。」

仮面の少女「3人の姫君による美しき剣戟、と言うテーマはありますけどねぇ♪むふふっ♪」

450: 2013/08/23(金) 22:09:13.98 ID:V/L3AiXao

美穂「即興で・・・・・・。」

仮面の少女「即興劇と言っても、そこまで難しく考えなくてもいいですよぉ。」

仮面の少女「美穂さんは、いつも通り、刀を使って戦うつもりで、」

仮面の少女「わたしに向かってきてくれればいいです~。」

仮面の少女「わたしがそれに合わせますからぁ。」

犬面の姫「わらわも美穂どのをサポートするつもりで刀を振るうつもりでおる。」

犬面の姫「だから、形上はニ対一になるかの。」


つまりそれは、美穂の動きで舞台の全てが決まると言う事で。

たくさんの目に見られている場所で、初めてとなる、剣の舞を即興で演じる。

美穂(そんな事が私にできるだろうか。)


――心音が早まる。

451: 2013/08/23(金) 22:09:47.58 ID:V/L3AiXao


たくさんの目が見ている。

――きっと緊張してしまう。


初めての事をする。

――失敗してしまうかもしれない。


即興で演じる。

――舞台に立てば、頭の中は真っ白になるだろう。


緊張するだろう。失敗するだろう。真っ白になるだろう。

不安が不安を呼んで、

だんだん何がなんだかわからなくなって。


パンッ!

美穂「ふぇっ!?」

すぐそばで手のなる音がした。

452: 2013/08/23(金) 22:10:13.37 ID:V/L3AiXao

肇「気がつきましたか?」

美穂「肇ちゃん・・・・・・。」

『鬼手快晴』、肇の使う妖術。

手を鳴らす音で、精神状態を回復させる技。

不安のあまり、軽いパニックに陥ってたところを気づかせてくれたようだ。

美穂「すみませんっ!なんだかぼーっとしちゃって。」

犬面の姫「いや、こちらこそすまぬ。いきなり無茶な事ばかり頼んでしまったかな。」

犬面の姫「もし無理そうならば、今回の事は諦めるが。」

肇「と言う事みたいですけれど」

肇「美穂さんはどうしたいですか?」

美穂「私は・・・・・・。」


美穂は考える。

自分はどうしたいか。

肇の術のおかげで、緊張は解れ、

おかげで頭をクリアにして、自分の気持ちと向き合うことが出来た。

緊張も失敗もするかもしれない。

それでもできるなら、

美穂「・・・・・・舞台に立ってみたい、かな。」

453: 2013/08/23(金) 22:10:44.80 ID:V/L3AiXao

小日向美穂は、アイドルヒーローに憧れる。

歌って、踊って、戦えて、みんなを守れる、希望の光。

そんな存在になってみたいと考える。


美穂(もしかしたら今回の事もチャンスなのかもしれない。)

彼女はここの所、幾度と出会いを繰り返して、

夢への道を進み始めた。

だから思う。此度の出会いも夢への一歩になるのかもしれないと。

今宵の舞台、立つことが出来たなら一歩くらいアイドルヒーローに近づけるかもしれない。


緊張もするかもしれない。

失敗もするかもしれない。

でも、前進できるのかもしれない。


美穂「うん、私は舞台に立ってみたい。」

454: 2013/08/23(金) 22:11:20.03 ID:V/L3AiXao

肇「じゃあ、是非やりましょう。」

美穂「うんっ!ありがとう!肇ちゃん!」

最後は彼女が背を押してくれた。

ここ一番で彼女はやはり頼りになる。

美穂「あのっ、私、ご迷惑掛けちゃうかもしれないですけど。」

美穂「それでも一緒に舞台に立たせて貰ってもいいですか?」

一緒に舞台に立つ2人に向き合い、改めて、美穂自身から頼み込んだ。

犬面の姫「ふふっ、もちろん。元はわらわからの頼みだからの。」

仮面の少女「むふふっ♪わたしは大歓迎ですよ~。」

仮面の少女「こう言う宴の場で一番大事なのはぁ、演者自身が楽しむことです」

仮面の少女「楽しんでる、と言う事は観客にもちゃんと伝わりますからぁ。」

仮面の少女「一緒に楽しんでくれる方なら、少しくらいへたっぴでも、全然構いませんよぉ。」

仮面の少女「わたし達もサポートしますし、ねぇ?」

犬面の姫「うむ、任せておれ。」

美穂「ありがとうございますっ!」

快諾してくれた2人に、深くお礼をした。

455: 2013/08/23(金) 22:11:53.57 ID:V/L3AiXao

美穂「・・・・・・ここまで決意しておいてだけど。」

美穂「刀を使う以上、今回はヒヨちゃんに頼ることになるんだよね。」

美穂「ちょっとズルいかもだけど・・・・・・」

美穂「でも、いいよね?」

刀を抱きかかえ、美穂は静かに問う。

彼女のアホ毛はやる気満々とばかりにピョンピョンはねている。

肇「いいと思いますよ。それでも意思を決定したのは美穂さんですから。」

舞台に立つ、と最後に決めたのは彼女の意思。

誰かに流された結果でも、刀に頼ったわけでもない。

それだけは彼女の意思が決めたこと。

美穂「うん。ヒヨちゃん。よろしくね。」

任されたとばかりにピーンと立つアホ毛。

豪放な彼女ならば、このステージも案外何てこと無いのかもしれない。


仮面の少女「それじゃあ、軽く段取りだけ説明しますから。」

仮面の少女「付いてきて貰えますかぁ?」

美穂「は、はいっ!」

トテトテと、仮面の少女に付いていく美穂。

美穂「?」

舞台に立つはずの、もう1人が付いて来ていないので振り返る。

犬面の姫「わらわはよいのだ。先ほど説明してもらったからの。」

犬面の姫「ここで待っておる。気にせずに行ってくるが良い。」

美穂「えっと、わかりましたっ。」

そうして、美穂はその場から離れていった。

456: 2013/08/23(金) 22:13:04.55 ID:V/L3AiXao

そこには、犬面の姫と、肇だけが残される。


犬面の姫「・・・・・・やっぱり、友達の一言はちがうのかなあ。」

犬面の姫「なんか、ごめんね。ここまでやってもらって。」

肇「いえ、私も協力すると言いましたからね。」

肇「ここまで含めて、協力だと思ってください。」

肇「それにきっと美穂さんのためにもなりますから。」

犬面の姫「もちろん、それは約束するよ。」


犬面の姫「・・・・・・・。」

犬面の姫(さて、あの子を舞台にあげる。ここまではうまく行ったね。)

犬面の姫(けど本番はここから。手筈通りになればいいけれど、)

犬面の姫(ふふっ、まずは『小春日和』のその実力。見せてもらおうかな。)

その面の下に、企みを潜ませる者が静かに笑う。


おしまい

457: 2013/08/23(金) 22:13:41.01 ID:V/L3AiXao

『犬頭の一族』

妖怪の一派。頭部が犬で身体は人間と言った感じの妖怪達。
群れを作り、自分達の主を1人決めて、その者に命令に従う忠犬たち。
人間に比べて、非常に素早く鼻が利く。


『大戌』

妖怪の犬。化け犬の類。
熊よりも大きく、力強い。しかもお利口さん。
人間を3人くらいならば、落さずに乗せたまま走ることができる。
凶暴そうな見た目だが、意外と温厚。犬頭達によく飼われている。



紗枝はん、周子さん、謎の仮面の少女、お借りしましたー

そのなんていうか・・・・・・
ちょっと時間が掛かりそうで演舞パートはまた次回に・・・・・・すまない

458: 2013/08/23(金) 22:17:57.28 ID:r/2I9IKHo
乙乙

狗面の姫……いったいどこのカリスマなんだ……!?
アホ毛が意思を持つひなたん星人きゃわわん




【次回に続く・・・】



引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part 6