242:◆ORDERq/08U 2019/02/02(土) 18:57:50 ID:TEyoqEKA




前回はこちら


雪美さんといっしょシリーズ


121

モバP「最近は雪美に触発されてか膝に乗ってきたがる子が増えてきた気がする」

雪美「……大変……?」

モバP「体のことなら大丈夫だ」

モバP「撫でるオプションとかを付けると仕事はやや滞るが大したことではない」

雪美「……ご苦労を……かける……」キリッ

モバP「ハハハ、良いってこと」

モバP「……それより雪美は、他人を乗せることで嫉妬したりはしないのか?」

雪美「……しない。……それより……良さを……知ってほしい」

モバP「ならばその良さに惹かれてお客さんが増えているのは本望か」

雪美「でも……Pと……一番深く……繋がっているのは……私」

雪美「……良さを……一番、分かっているのも……私」ギュッ


ちひろ「雪美ちゃんはクールだなぁ(白目)」

243: 2019/02/02(土) 18:59:31 ID:TEyoqEKA
122

モバP「アイドルには様々なお仕事があるし、企画によっては様々な衣装が用意される」

雪美「……にゃー」キラキラ

モバP「こうして雪美が幼稚園児のようなチャイルドスモックを試着しているのもその一つだ」

雪美「……にゃー」ワキワキ

モバP「ネコミミと、襟元に鈴も付いていますし」

雪美「……にゃー?」

モバP「意図せずまじまじと観察してしまう。良いぞ良いぞ」デレデレ

モバP「雪美はこういうぶかっとしたものもフィットするなあ」

雪美「ンギャア」

モバP「……俺もしかして幻覚を見ていて、ペロに話しかけたりしていないよな?」

雪美「……ふふ……ごめんなさい……大丈夫……私……だから」


ちひろ「あら、尻尾まで付いているんですね。……何か今動いた気がしますけど」

244: 2019/02/02(土) 19:03:45 ID:TEyoqEKA
123

モバP「久々の何もしない休日も良いものだ」

モバP「どこにも行かず、家でのんびりと過ごす」

加蓮「そうだね」

雪美「一理ある……」

モバP「本来そこに”誰とも会わず”も付け加えられるはずなんだがな」

モバP「お聞きの通り、今日はどこにも連れて行かないぞ」

加蓮「良いよ。ただPさんと、ダラダラ過ごしたいだけだもん。ねっ?」

雪美「……」コクン

モバP「なら構わん。ただプロデューサーの男の家に女子アイドルが居て大丈夫か?」

加蓮「あまりにいろんなアイドルが頻繁に出入りしているから、お咎めなしだね」

モバP「謎理論。社宅に格安で住まわせてもらっているから贅沢は言えないが」

モバP「みんなが近くに寄った時の休憩所になっているのは確かだな」

雪美「……便利」

245: 2019/02/02(土) 19:15:55 ID:TEyoqEKA
モバP「まあ俺は家に居ないことの方が多いし、物置になるよりは、節度を守って利用してもらうのも良いさ」

加蓮「……お父さ――じゃなくてっ、Pさん」

モバP「おやおや、リラックスし過ぎて間違えたか? あるあるだな」

加蓮「違うの! もうっ! そんなに歳離れてないのに!」

雪美「……P……休み……邪魔して……迷惑じゃ……ない……?」

モバP「いんや? 誰か居る方が楽しいからな。共にぐうたらしようじゃないか」

モバP「加蓮や雪美とは充分打ち解けていると思っているから、気疲れもしないよ」

雪美「……良かった」

モバP「ところで、小腹空いたろう。実家の実家から送られてきたポテトを今フライにした」コト

加蓮「わーい! Pさん分かってる~♪」

雪美「……いいの?」

モバP「俺が好きでサービスしているんだから気にしない!」

モバP「さ、箸もディップ皿もレタスサラダも出したし、手を合わせて」


「「「いただきます」」」

246: 2019/02/02(土) 19:19:38 ID:TEyoqEKA
124

モバP「はぁ」

莉嘉「どうしたのPくん」

モバP「以前は平気だった虫を触るのが苦手になって歳を取ったなと実感して」

莉嘉「そういうのいけないんだよー? 心の老化は体の老化! これお母さんの格言!」

莉嘉「Pくんは若いじゃん! 何ならアタシがそれを実感させてあげよーか?」ガバッ

莉嘉「わはははー☆」グルングルン

モバP「目が回るわ~……パッショナブルな励ましありがとうございます」

モバP「莉嘉は虫さん平気なんだよね」

莉嘉「平気だよ☆ 大したもんでしょー?」

モバP「ああ。だがこの先もそのままでいられるかな? 若さゆえの蛮勇・無敵感といったものは誰にもあるものだ」

莉嘉「それまで平気だったことが大人になってダメになるのってさ」

莉嘉「それ、ただキョーミ無くしただけなんじゃないかな?」

モバP「そこに気づくとは大した奴だ……」ナデナデ エヘヘー

247: 2019/02/02(土) 19:22:33 ID:TEyoqEKA
モバP「しかし、カブトムシなんかはまあ良いとして、どんな虫でもって訳にはいかないだろう」

莉嘉「まーそこはねー。触ると危ないのはいるし、キライな虫だっているけど」

モバP「直接触る訳ではなくても、害虫にも臆さない男勝り婆ちゃんや肝っ玉母ちゃんみたいなのは凄いよなあ」

莉嘉「それはちょーすごいってゆーか、迫力ある!」

雪美「……」テクテク

モバP「おう雪美さん。雪美さんは昆虫とか触ったりできるかい?」

雪美「……」ニコッ

雪美「……できない」

ズコー

モバP「余裕の表情と見せかけてフェイントか」

モバP「しかし、成長してから抵抗が無くなるような人もいるだろうし分からんな」

雪美「Pが……怖がってたら……私も……怖い……」


莉嘉「じゃあ、苦手は克服しないとねっ☆ Pくん?」 ウッス

248: 2019/02/02(土) 19:25:50 ID:TEyoqEKA
125

モバP「街は早くもバレンタイン商戦といった風でチョコレートが嫌でも目につくな」

雪美「限定品……おいしそう」

晴「実際うまいんだろうぜ。テレビで北欧の専門店を特集していたけど、すげー気合い入ってた」

モバP「海外デザインのチョコレートって我々の感覚からすると結構ファンシーだ」

晴「町並みからして何かカラフルだったりするよなー」

雪美「……マーブルチョコレート……みたいに……鮮やか……」

モバP「最近食べてないなあ。あれを見ると碁石を思い出すよ」

晴「形は似てるけどさあ……」

モバP「マーブルチョコレートと言えば、お皿に並べてお湯をかけてカラーアートを作る動画があるな」

晴「えっ何だそれ」

モバP「色が溶け出して面白いグラデーションになるんだ。本家はチューイングキャンディーだが」

晴「へー……まあやってみたいとは思わねーや」

雪美「食べないの……もったいない……」

249: 2019/02/02(土) 19:29:24 ID:TEyoqEKA
モバP「とにかくビビッドカラーは日本にはあまり馴染みきらないところがあって新鮮ではあるな」

モバP「レインボーケーキやギャラクシーケーキなんて食べ物なのか一瞬疑ってしまうよ」

晴「それはこの前のロケで見たな。確かに体に悪そうな色してたぜ」

雪美「晴は……チョコレートや……ケーキより……ガムの……イメージ……」

晴「昔から好きだからな。でもPにアイドルに誘われてから、何て言うのかな」

晴「もうガムで変にボーイッシュ? 気取らなくても良いやって思うようにはなってきたな」

モバP「晴にとってはガムは嗜好品であると同時に、自分をアピールする物でもあったんだな」

晴「かもな。まずいろんな人と交流するのにガム噛んでたらちゃんと喋れねーからな」

モバP「ハハッ、ちげえねえ」

雪美「晴……プロ意識……かっこいい」

晴「よせやい、照れるぜ」ヘヘッ

雪美「言葉選びが……Pっぽくは……なってる……」

晴「責任取れP」

250: 2019/02/02(土) 19:32:19 ID:TEyoqEKA
モバP「それはそうと、ガムも最近食べないねえ。俺は口寂しい時は飴派だし」

晴「オレの好感度が2ポイント減って杏の方に行ったぞオイ」

モバP「ガムは味なくなるとペッしないといけないのがなあ。チョコと一緒に食べると溶けてくれるが」

雪美「……初耳」

晴「どっからそういう知識を仕入れてくるんだアンタは」

モバP「大人の雑学だよ。尚、口の中はあまり愉快なことにはならない」

晴「だろーな」

晴「……Pは、バレンタインはチョコレート以外でも貰えたら嬉しいもんか?」

モバP「うれしいよ! 晴がくれるものは何でもうれしい!」

晴「あげるとは言ってねーだろ。……そっかー良いこと聞いたぜ」

モバP「世間では贈るお菓子によってそれぞれ意味があるらしいが、細かいことを気にし過ぎてもな」

モバP「後でフォローが要るならそれはそれでお互いをよく知り合うきっかけになるってもんさ」

雪美「……ポジティブ……すてき」


モバP「よせやい、照れる」 オイマネスンナ

251: 2019/02/02(土) 19:35:25 ID:TEyoqEKA
126

薫「おにはーそとー!」

仁奈「ふくはーうちー!」

モバP「マッチ一本火事の元ー!」

ちひろ「それは違うやろ」

雪美「鬼は……どこ……?」

モバP「鬼とはな、我々人間の心の中に潜むものだ」

雪美「私の中にも……いるの……?」

モバP「ああ。そして心が弱った隙に雪美を乗っ取って悪さをするかもしれない」

薫「大変だー!」

仁奈「一体どうしたら良いんでやがりましょーか?」

モバP「節分豆は体の中に投げる、つまり食べて鬼を追っ払えば良いのだ」

ちひろ「何か慣習を曲解しているように見えますけど」

252: 2019/02/02(土) 19:39:13 ID:TEyoqEKA
モバP「という訳で小袋入りの炒り豆どうぞ」

ちひろ「……いただきます」

雪美「……」ポリポリ

モバP「よし、これでこの二人は救われた。次行くか小鬼一号二号」

薫・仁奈「世直しじゃー!」

ちひろ「想像を遥か超えてフリースタイルだった……あなたたち鬼側だったんですか」

モバP「鬼に身を窶して鬼気迫る感をですね……うっ!」ガクッ

薫「せんせぇ!」

仁奈「隊長!」

モバP「二人ともすまない。ここまで頑張ってきたが……オラもう力が出ねぇ……」

薫「氏なないでせんせぇ!」

仁奈「あなたが氏んだら一体誰がこの星を守りやがるんですかリーダー!」

雪美「薫、仁奈……これを……食べさせて」

薫「分かった!」

253: 2019/02/02(土) 19:41:17 ID:TEyoqEKA
仁奈「はい、あ~んしやがりください」

カリッ モグモグ ゴクン

モバP「……」

モバP「……ふ」

モバP「ふっかあああああつ!」

薫「せんせぇ!」ガバッ

仁奈「ボス!」ガバッ

雪美「……」ポリポリ

ちひろ「茶番グダグダですけど。あと呼称統一しましょう仁奈ちゃん」

モバP「仙豆食べてる気持ちになるでごぜーますよ」

ちひろ「やかましい」

薫「はいはーい! 次はかおるに食べさせてー♪」

仁奈「その次は仁奈にもおねげーします!」


雪美(……仙豆?)ポリポリ

254: 2019/02/02(土) 19:44:35 ID:TEyoqEKA
127

ナターリア「P! エホウマキという訳でもナイ、ノリマキ食べヨ!」

雪美「一緒に……作ってきた」

モバP「お、ありがとう。どれどれ……?」

モバP「……すごく……太くて長いです……」

ナターリア「男の子はタクサン食べテ、大きくならないとネ! ムフフ」

モバP「最後の笑いが意味深だな。では早速いただこうか」

モグモグ

モバP「美味い。この具は、納豆、アボカド、玉子に穴子? か」

モバP「ちょっと変わった取り合わせではあるが、即効で元気が出るようだよ」

雪美「……ふふ」モクモク

ナターリア「Pに元気になってもらいたいからナ!」ニコニコ


ちひろ「地味に精の付く物を詰め込んでますね……あ、おいしい」

257: 2019/02/09(土) 20:23:15 ID:bDoH2qvU
128

モバP「……」(-_-)

雪美「……」(-_-)

ちひろ「ちょっと、額と額くっつけて何してるんですか!」

モバP「静かに……」

雪美「…………」

モバP「…………」

雪美「……ん……同期……完了……」パチッ

モバP「良し。これで例えどちらかが斃れたとしても、心は共にある」

雪美「……P……行ってくる」

タタタ

モバP「ちょっとしたSFごっこです」


ちひろ「真顔で言わないでください」

258: 2019/02/09(土) 20:25:34 ID:bDoH2qvU
129

モバP「雪美」

雪美「何……?」

ツン

雪美「……?」

モバP「雪美の頬、柔らかいな」

雪美「……P」

グニグニ

モバP「あっあっ、ほっぺた引っ張らないで」

雪美「Pのも……やわらかい……楽しい」グニグニ

モバP「止めないのならこっちからももう一度だ」

雪美「……だめ。……大人しく……して……」グニグニ


ちひろ「雪美ちゃん、意外とやり返しますよね」

259: 2019/02/09(土) 20:27:47 ID:bDoH2qvU
130

雪美「……P」

モバP「おっ、どうした雪美」

雪美「……あげる」

モバP「チョコレートかぁ! 嬉しいな、ありがとう……って」

タタタタッ

モバP「何も恥ずかしがることはないと思うが、行っちゃったよ」

ちひろ「受け取り方が普通過ぎてつまらない-346点」

モバP「どうしろと」

ちひろ「捕まえてハグしてキスの一つでもすれば良いじゃないですか?」

モバP「して良いんですか?」

ちひろ「勿論早苗さんには通報しますけどね」

モバP「まあ、また後で会うでしょうからそこでしっぽりと」

ちひろ「置き早苗さんしておきましょうか?」

260: 2019/02/09(土) 20:29:13 ID:bDoH2qvU
ちひろ「しかし、見れば可愛らしい手作りですねえ」

モバP「本当ですよ。俺はつくづく幸せ者です」

ちひろ「大人はあまり相手に渡す為に手作りを、とはなりませんからね」

ちひろ「市販の高給なやつや珍しい物をチョイスして、それをどうぞと渡す感じです」

モバP「例えは変ですが自由課題みたいなもので、センスが試されますね」

ちひろ「作るにしても買うにしても、か」

ちひろ「……で、食べないんですか?」

モバP「雪美に貰った手作りチョコレートですよ? あまりに尊くてどう手を付けたものか」

ちひろ「勿体無くて食べずにいつまでも持っておく……ベタですね」

モバP「……ちょっとだけ」

――

モバP「……食べちゃったぁ」スッカラカン


ちひろ「自制心そんなに無かったですね」

261: 2019/02/09(土) 20:33:14 ID:bDoH2qvU
131

モバP「雪美さんや」

雪美「……どうした……の?」

モバP「宮本フレデリカ直伝のビズをしても良いかい」

雪美「……? ビズ……知らない……」

モバP「ヒントは挨拶の一種だ。何をやるかはお楽しみ。やるかい?」

雪美「…………」コク

スッ

チュッ チュッ

モバP「ビズはフランス語、英語ならチークキスとも言うかな」

モバP「正面から相手の左頬に右頬を、右頬に左頬をそれぞれ合わせる。That's it!」

雪美「……///」ポー


ちひろ「明らかにキスまでしていましたよね?」

262: 2019/02/09(土) 20:45:13 ID:bDoH2qvU
132

巴「強くなったのう、雪美」

雪美「……ありがとう……巴」

モバP「おっ、将棋教えていたのか」

巴「おう、Pか。見ての通りじゃ」

モバP「若いもんは上達が早いけぇの」

巴「何言っとるん、うちもまだ若いわ」

モバP「しかし教える側ってのも良いもんだろ? 自分にもフィードバックされるというか」ポン

巴「人の髪を気安くさ・わ・る・な・や」バシッ

モバP「まあ教えるのも良いけど後輩として可愛がられる経験も良いよなー」ワシャワシャ

巴「やめろ言うとるんに……雪美、こいつ取り押さえてイタズラするか」

雪美「する……!」


ちひろ「若いっていいものですね。参加はしませんけど」 チョマッ ドコサワッテンデイ!

263: 2019/02/09(土) 20:47:11 ID:bDoH2qvU
133

モバP「ただいま戻りましたー」

モバP「あれ? 電気消してあるし誰もいない? でも戸締りしていないとは不用心だな」

ガサガサ ガサガサ

モバP「ん、何の音だ? まさか泥棒じゃないよな?」 カチッ

カチッ

モバP「蛍光灯が切れているじゃないか。参ったな」

ガサガサ

モバP「俺の机の方から聞こえるな」

モバP「――そこにいるのは誰だっ」

クルッ

ペストマスクの怪人「……ミタナ」

モバP「ひっ!?」

264: 2019/02/09(土) 20:49:23 ID:bDoH2qvU
モバP「! お、おい……そこに倒れているのは、雪美……か?」

怪人「……」

モバP「お前がやったのか? 畜生、何てことだ。そこをどけっ!」

ダッ

モバP「あっ、おい!」

ガシャーン!

モバP「待て! ここは五階だぞ!」ダッ

モバP「……!」

モバP「いない……窓の外には、誰も……一体どこに……」

モバP「いや、とりあえず雪美だ。……雪美!」

モバP「――う、う、う、う、嘘だろ……血だらけ……体っ……冷たい……」

モバP「雪美いいいっ!!」

265: 2019/02/09(土) 20:50:35 ID:bDoH2qvU
――

モバP「うわあっ!」ガバッ

チク タク チク タク

モバP「……ここは……俺の家か」

モバP「生々しい夢だったなあ。ここ何年かあんな類のは見ていなかった」

トットットッ

カラス「カー」

モバP「うへっ!?」

ビクッ

モバP「あっ、驚かせてすまん」

モバP「……おいおいおい、どうして家の中にカラスが入り込んでいるんだ。どっから入ってきた?」

モバP「アイドルの誰かが手引きしたとも思い難いし……」

pipipi

266: 2019/02/09(土) 20:52:39 ID:bDoH2qvU
モバP「ん? 朋からのメールか」

 身近な異性の友人が大切な人の氏に目に会うかもしれない
 今朝の占いだよ。
 こんなのが出てきたの初めてで、あたし嫌な予感がしたから一応Pに教えておくね。

モバP「……ゾッとするな」

カラス「……カー」

モバP「おっと待ってろ、今外に出してやるから」

ジッ

モバP「空きっ腹か? しかし野生のカラスに餌付けなんてして良いものか」

ジーッ

モバP「……みんなには内緒で、一回きりだぞ?」

 カラスくんはリンゴを食わせてからベランダに出すと何事も無かったように飛び立っていった。
 妙な胸騒ぎがしていた俺は、その後すぐに身支度をして家を出た。
 冬ながら春さながらの陽気に恵まれた、そんな朝だった。

267: 2019/02/09(土) 20:53:49 ID:bDoH2qvU
モバP「おはようございます」

ちひろ「プロデューサーさん、おはようございます」

モバP「ちひろさん、何かおかしなことはありませんでした?」

ちひろ「いえ。どうかしたんですか?」

モバP「無かったなら良いんです。今朝からちょっと奇妙な目に遭っていまして」

ちひろ「あなたは年がら年中奇妙ですからね。さあ、仕事しましょう」

 それから、プロデューサーとしての仕事に追われながら何事も無い一日が過ぎていった。
 何か引っかかる感覚がありながらも時間が経つごとにそれも薄れていく。
 夕方になり、雪美が事務所に顔を出す。

雪美「……P」

モバP「どうした? 雪美」

雪美「……」プイッ

スタスタ パタン

モバP「おっ、おい雪美っ!」

268: 2019/02/09(土) 20:55:21 ID:bDoH2qvU
ちひろ「どうしたんですか? 構い過ぎて遂に嫌われました?」

モバP「……」ダッ バタン

モバP「雪美! 待ってくれ!」

モバP「はぁ、はぁ……一体、どうしたんだ?」

雪美「……」

雪美「……P……怖い……来ないで」

モバP「なっ……!?」

 初めて見る冷たい目だったかもしれない。
 俺の足は一歩踏み出そうとしたままで動けず、彼女が視界から去るのを見送る以外に出来ることは無かった。
 事務所に戻るとちひろさんが備品が足りないが手が離せないと言う。
 俺は外までひとっ走り買いに行くこととなった。

モバP「……考えても分からん」

カーカーカー

モバP「まだ冬やのにカラスが仰山飛んではるわ」

269: 2019/02/09(土) 20:56:22 ID:bDoH2qvU
バサバサバサッ!

モバP「わっ、何だ一斉にこっちに!? 鳥葬か? 鳥葬なのか!?」

カーカーカー

『……オモイダセ』

モバP「う、うわあああああっ!」

――

ハッ

モバP「……あれ? カラス……」

 気づくと俺は、店の中で買い物かごを持って立っていた。
 白昼夢を見るとはいよいよどこかおかしくなったのだろうか。
 とりあえず買うものを買って戻る。

モバP「ただいま戻りましたー」

モバP「あれ? 電気消してあるし誰もいない? でも戸締りしていないとは不用心だな」

270: 2019/02/09(土) 20:57:24 ID:bDoH2qvU
ガサガサ ガサガサ

モバP「ん、何の音だ? まさか泥棒じゃ……待て、……俺は知っている」

モバP「夢だ。あれと同じことが……雪美!?」ダッ

ガサガサ

モバP「――おいっ!」

クルッ

雪美「……どうして」

モバP「えっ……!?」

雪美「どうして……ペロを……頃したの……」

モバP「! お、おい……そこに倒れているのは、ペロ……か?」

雪美「……」

モバP「違う! 俺がペロを頃したりなんかするものか!」

雪美「……」ツー

モバP「雪美、口から血が……あっ」 ドサッ

271: 2019/02/09(土) 20:58:18 ID:bDoH2qvU
「な、何かの間違いだ。こんなの……俺は……俺は……!」

「……!?」

 俺は窓ガラスを見た。
 反射して自分の姿が映っていた。
 黒づくめの、ペストマスクをした怪人だった。

「俺は……Pでは……無かっタ……?」

「俺は……ダレダ……?」

「オレ……? ワタシ……?」

「コレハ……ナニ……? アアアア」

「――そこにいるのは誰だっ」

クルッ

「……ミタナ」

「ひっ!?」

272: 2019/02/09(土) 20:59:00 ID:bDoH2qvU
「! お、おい……そこに倒れているのは、雪美……か?」

「……」

「お前がやったのか? 畜生、何てことだ。そこをどけっ!」

ダッ

「あっ、おい!」

ガシャーン!

「待て! ここは五階だぞ!」ダッ

「……!」

「いない……窓の外には、誰も……一体どこに……」

「いや、とりあえず雪美だ。……雪美!」

「――う、う、う、う、嘘だろ……血だらけ……体っ……冷たい……」

「雪美いいいっ!!」

273: 2019/02/09(土) 21:00:16 ID:bDoH2qvU
 私はどこかの草むらの上にいた。
 目の前にある澄んだ湖が、私の姿を映し出す。
 黒づくめでペストマスク、そして黒い翼を持った、小さな体。

「……」

 煩わしくなり、マスクを外す。
 宵闇の帳が下りる前の僅かな光が、私の貌を見せてくれる。
 ……そうだ……私は……佐城雪美だった……。

「……ふふ……ふふふ……」

――

モバP「こうして哀れなPは夢と現実の境を見失い、佐城雪美に変貌してしまったのでした。続く」

雪美「怖く……ない、よ……? まかふしぎ……ただ……それだけ……」

紗南「プレイグナイト風の雪美ちゃんかあ……そのイベントどうすれば発生するの?」

光「Pは闇堕ち怪人マスクだったか! 安心しろ、アタシがきっと救い出してみせる!」

飛鳥「迷宮に囚われたヒトはやがて自我崩壊する……山月記の様だね」


ちひろ「中学生たちにもいいかげんな話をするな」

274: 2019/02/09(土) 21:02:16 ID:bDoH2qvU
134

裕子「むむむ……む~ん……きえええぇいっ!」

シーン

モバP・雪美「……」サクサク モグモグ

裕子「……」

裕子「サイキック・ツッコミ!」ピシッ

モバP「あたっ! 何だよー」

裕子「お菓子食べながら見ていないでプロデューサー、何か助言をください!」

モバP「そうだな……音楽をかけながら作業をすると仕事の効率が良くなることがある」

モバP「こいつでリズムに乗りながらパワーを高めてみたまえ」カチッ

エッビバリダンスナーウ!

裕子「おっ? おっ? 何だかノッてきたかも? しれません!」

裕子「行きますよー、ムムムムーン……サイキック・Everybody Dance Now!」


早苗「何? ポールダンスでもしてるの?」

【さなえがしょうかんされた!】

275: 2019/02/09(土) 21:03:48 ID:bDoH2qvU
135

モバP「雪美さんマジ天使」

雪美「……」キラキラ

モバP「比喩ではなく本当に天使のような衣装なんだよな」

モバP「白で統一されたドレスにふわふわの翼、足は白タイツ、頭にはご丁寧に輪っかまで」

雪美「……天使って……何をすれば……良い……?」

モバP「人の側にいて加護を与えるのはどうですかね」

雪美「……かご……分かった……」

ポスン

雪美「これで……私は、どこへも……行けない……」

雪美「あなたを……守る……」

モバP「ははは、頼もしい奴じゃ……おふっ」

雪美「……?」


ちひろ「輪っかがプロデューサーさんの顔に当たってますね」

277: 2019/02/16(土) 21:06:29 ID:GjwPqNuo
136

モバP「世のお菓子には割とアルコールが含まれている物が多い」

雪美「……」クンクン

モバP「例えばこの美味しいラムレーズンサンドとかもな」

雪美「……」プイッ

モバP「幸い雪美さんはアルコールに敏感でこういうものには口を付けない」

モバP「児童が興味本位で食べて体調を崩すようなこともあるから、自分の判断で忌避してくれるのは助かる」

雪美「……」

モバP「でも一度酔った雪美さんを見てみたいと思ったこともない訳ではない」

雪美「……えっ」

モバP「……十年後な」

雪美「……うん……。それまで……一緒にいて……ね?」


ちひろ「志希ちゃんなら疑似的に酔う薬とか作れそうですけど、そこは言わぬが花ですね」

278: 2019/02/16(土) 21:11:26 ID:GjwPqNuo
137

モバP「志希は最近失踪しないよな」

志希「正直キミから逃げ切れる気がしないんだよねー。すぐ捕まる」

モバP「またまたご謙遜を」

志希「確かにヒントは残すし遠くには行かないし本気で逃げてる訳じゃないけどさ~」

モバP「完璧に逃げようと思えばいつでも可能だが、それじゃつまんない! だろ」

志希「そーゆーこと。縛りの中で導き出すから楽しいのだ。……それ、どう?」

雪美「イチゴの……フレグランス……いい」

志希「それは良かった♪ にゃはは」ナデナデ

志希「こうして雪美ちゃんとキミをのんびり観察してるだけで、満足な最近のあたし。焼きが回ったねー」

モバP「じゃあ、発想を変えて新しいことにチャレンジしようぜ。筋トレとかさ」

モバP「志希がそういうこと言い出すのは、退屈になってきて現状打破したい時だろ? 知ってるぞ」

志希「そういうとこ分かってるからキミはズルいんだよねー。でも、よりによって筋トレ推すー?」


ちひろ「インテリ脳筋に目覚めた志希ちゃんは見たくないですねえ……」

279: 2019/02/16(土) 21:13:30 ID:GjwPqNuo
138

モバP「雪美さんはトレンチコートも似合うんですね。実にオシャレさんです」

雪美「……」キラキラ

モバP「帽子と合わせるとアンニュイな表情が実によく決まるな」

モバP「しかしおてては」

雪美「……猫の手」

モバP「ここにきて肉球手袋がカジュアルな方向に突き抜けているな」

雪美「これ……あったかい……」

モバP「触ってみても?」

雪美「うん……」

モフモフ

モバP「やだ柔らかい……」

280: 2019/02/16(土) 21:23:40 ID:GjwPqNuo
モバP「でも指が使えないのが不便だな。どうやって抜くんだ?」

雪美「…………がんばる」

モバP「まあ押さえて抜くしかないか。手伝おうか?」

雪美「まだ……このままで、いい……」

モバP「そっか。……それにしてもトレンチコートはベルトで腰をきゅっと見せるのも良いが」

モバP「こうやって前を開いて、ミニスカートとコートの裾の長さの対比に耽るのも――」

ちひろ「思春期かお前は」

雪美「……そんなPは……こうする……」バッ

モバP「うおっ、肉球手袋で対面目隠しとは! ありがとうございます!」

ちひろ「Mの素質ありかお前は」

雪美「……ふふ……これで私は……見えない……」

モバP「肉球がプニプニして面白いっすねこれ」

雪美「……じゃあ……もっと……してあげる……」グイグイ


ちひろ「日常エンジョイ勢かお前は」

281: 2019/02/16(土) 21:26:40 ID:GjwPqNuo
139

ちひろ「あら、チョコレートを食べているんですね」

モバP「バレンタインにアイドルから貰ったりイベントで配られたりで山とありますよ」

モバP「チョコレートなどは幸い日持ちしますから、ゆっくり消費しています」

ちひろ「大人の方たちとかは配慮してチョコレート以外を渡されたりもしたようですね?」

モバP「違うお菓子であったり、日本酒、ワイン、焼酎。食べ物以外をくれた方もいました」

ちひろ「責任持って、平らげる訳ですか?」

モバP「勿論。男モバP、出されたものは残さず食べる!」

ちひろ「モテる男はお辛いですねぇ」

モバP「自分もアイドルだったならそれこそトラックいっぱい貰えたりするんでしょうか?」

ちひろ「まあチェック入ってそれらが口に入るかは知りませんけどね」

まゆ「プロデューサーさぁん。チョコレートが減らないようなら、加勢しましょうか?」

モバP「やぁ、まゆ。イベントで配られた奴なら良いが、アイドルから貰った物は俺が食べきるよ。ごめんな」

まゆ「いえ。貴方に渡したチョコレートなのに、食べてもらえない立場はまゆも嫌ですからね」

282: 2019/02/16(土) 21:29:39 ID:GjwPqNuo
ちひろ「それにしても、プロデューサーさんがアイドルから貰う分にも、どうなんでしょう?」

モバP「どうと言いますと?」

ちひろ「疑うつもりはないんですけど、例えば媚薬とか毒とか入れられていたりしませんか?」

まゆ「割とはっきり言いますねぇ」

モバP「毒……効かない体質なんだよね、俺」

ちひろ「キルアじゃないんですからそんなところで特異体質を発揮しないでください」

モバP「まゆ。これはA社からのだけど……はい、あーん」

まゆ「あーん……ん……おいひい」

ちひろ「話の合間にイチャつくのも止めてもらえませんかねえ……」

モバP「さて、俺はこれを……」パク

モバP「……ふむ。――うまい。だが毎年調合を変えて精力剤を入れてくるのはやめようね? と」カキカキ

まゆ「誰ですかぁ?」

モバP「志希」

ちひろ「バレンタインに託けて人体実験されていませんかね?」

283: 2019/02/16(土) 21:32:50 ID:GjwPqNuo
ちひろ「しかし、手紙に一枚一枚、貰ったチョコレートの感想を書くんですね」

モバP「そして怪盗のようにアイドルの枕元にこっそり置いてきます」

ちひろ「アイドルの寝床に忍び込んでいるんですか!?」

まゆ「ロマンチックじゃないですか」ウットリ

モバP「まゆには気づかれましたけどね」

ちひろ「本当に警察呼ばれてもおかしくない事案ですよ」

まゆ「そんなことしませんよぉ。プロデューサーさんは紳士ですから……うふふ」

ちひろ「含みがありますねえ」

雪美「P……アナトール……みたい」

モバP「やぁ雪美。……ネズミがチーズの味を鑑定してくれる話か。あれ良いよなあ」

モバP「まあ基本は感謝と、どこが良かったかを素直な気持ちで書き綴ります」

ちひろ「本当、マメですね。暇な奴とも言いますけど」

モバP「お酒なら一緒に宅飲みして直接感想を言いますので無駄がありませんが」

284: 2019/02/16(土) 21:36:04 ID:GjwPqNuo
ちひろ「二人とも、手紙貰えるのは嬉しい?」

まゆ「はい♪ 褒めてもらえれば張り合いが出ます」

雪美「次はもっと……おいしいのを……作ろうって……思える」

モバP「( ;∀;)イイハナシダナー」

ちひろ「ソウナノカナー?」

まゆ「まゆも最初は、惚れ薬とか入れていました。今は味にこだわるようになりましたけど」

雪美「ほれ薬……Pには……効かない」

ちひろ「雪美ちゃんは既に知っているのか……」

ちひろ「あ。ちょっと疑問なんですけど、惚れ薬と媚薬ってどう違うんですかね?」

まゆ「惚れ薬は惚れるだけ、媚薬は……ちょっぴり如何わしい意味も含む、という理解ですね……」

モバP「まゆの口から如何わしいなんて言葉が……変な気分だ。チョコレートのせいかな?」

まゆ「あっ……貴方に意識してもらえた……」

雪美「私も……意識して……」


ちひろ「よく考えたら何でドリンクは効くんだろうこの人」

285: 2019/02/16(土) 21:38:34 ID:GjwPqNuo
140

りあむ「うう……」

モバP「新人は最初はなかなか上手く行かないよなあ」

りあむ「ぼくはクソザコナメクジのスロー口リスだよ! もうダメぽ」

モバP「少しは開き直れそうかい?」

りあむ「りあむちゃんのガラスハートはクラック。10代終わりかけでこれだよう。やむ!」

モバP「なに、年齢幅広いアイドルの子たちと接していれば自然と強心臓になれるよ」

りあむ「ここのPサマが言うとめっちゃ不安だけど大丈夫かな? かな?」

モバP「困ったら助けになるよ」

モバP「ただ油断しているといつの間にか常識人枠に入れられているかもしれないから気を付けて」

りあむ「えっなにそれこわい。ぼくが冷静にツッコミに回るとか、草も生えない! よ!」

雪美「こんにちは、りあむ……。私を……すこれ」

りあむ「早速やみ感染者がいる!? ぼくみたいになっちゃいけないよ! でも真似されたい!」


ちひろ「……また一人アイドルが変な方向に捻じ曲がった音がした気がする」

286: 2019/02/16(土) 21:42:46 ID:GjwPqNuo
141

あかり「あきらちゃん! りんごをあげるんご!」ハイ

あきら「自分に? ありがとう」クイッ

ガブガブガブ シャクシャクシャク

あかり「丸かじりとはワイルドですね! だがそれがいい!」

あきら「ごちそうさまデス」フキフキ クイッ

あかり「マスク戻しちゃうなんてそんなぁ、みんな大好き顔出しタイムが」

あきら「持ち芸みたいに言うなし」

ンゴ! デス

雪美「……仲、良さそう……。……あきらは……クール?」

モバP「ああ。……ギザ歯をマスクやマフラーで隠してるのって立派な属性だよねえ」

モバP「兄ぃくんと会ったことあるんだが彼いわく、懐くと指とかガジガジしてくるらしいぞ?」

雪美「あまがみ……愛情表現……」


あきら「こらPサン! それはガセ、いいね?」

287: 2019/02/16(土) 21:44:51 ID:GjwPqNuo
142

モバP「冬は夏が恋しいもんだね」

雪美「……そう?」

モバP「そう言いつつ夏になると冬が恋しくなるという逆もありきか」

モバP「様々なことに当てはまるが、気温的な意味でね」

ちひろ「現代は以前より夏はより暑く、冬はより寒くなっている実感がありますからどちらもしんどいです」

ちひろ「気温なら過ごしやすい春や秋くらいを望むべきでは?」

モバP「それが正解なんですが、やっぱり冬と対になるのは夏って認識がありまして」

モバP「こんな日に都合良く夏の時の暑さを借りてきて、打ち消し合うことが出来たら良いのになあ、と考えます」

雪美「……P……たまに……変なこと……考える……」

ちひろ「小学生でもしないような発想ということです。残念でしたね」

モバP「あっ、そっかぁ……」


雪美「でも……良いと思う……がんばれPくん……」 ガンバリマス

290: 2019/02/23(土) 19:39:05 ID:/XNEm2fA
143

雪美「ふふっ……つかまえて……ごらんなさーい……」

モバP「あははっ、雪美、待て待てー」

雪美「こっちよ……はやくはやくー……」

モバP「お転婆な奴めー、逃がさないぞー」

雪美「……ふふっ」ギュンッ

モバP「……っ!?」

モバP「雪美っ! ちょっ、まっ! 速いって! 足速っ!」

モバP「ふんぬっ! 負けるものかぁああ!」ダッ

モバP「ぬおおおおおおおおお!」

――

モバP「夢の中って上手く走れませんよねえ。いつも雪美に追いつけません」


ちひろ「夢でまでいつも雪美ちゃんに会えるなんて羨ましい」

291: 2019/02/23(土) 19:41:11 ID:/XNEm2fA
144

モバP「おや……雪美、おはよう」

雪美「……うん……おはよう……」ポー

モバP「ぼんやりしているなあ。珍しく髪がハネているし」

雪美「えっ……本当……?」

モバP「おっちょこちょいさんめ。待ってろ、髪様を鎮めてあげよう」

――

モバP「はい。これでいつものクールに決まった雪美だ」

雪美「ありがとう……でも……」

モバP「何だ?」

雪美「Pも……髪が……はねてる……」

モバP「……あらー」

雪美「……座って……。Pのは……私が……鎮める……」


ちひろ「私の心も鎮めてほしいなあ」

292: 2019/02/23(土) 19:46:50 ID:/XNEm2fA
145

モバP「バニーガールは欧米だと性の象徴とされ場によっては規制対象だ」

モバP「ましてや未成年にバニーの衣装なんて着せていたら」

モバP「日本ってクレイジーやな、と外国の人は思うのだろうか?」

雪美「……猫と……そんなに……違わない……」キラキラ

モバP「しかし雪美は着たがりさんだった」

モバP「頭にウサ耳、バニースーツの上に薄手のスラックスを重ね穿き……何か鼻がツンとするな」ムー

ちひろ「ちょっと刺激感じ過ぎじゃないですか? でも前髪の横分けでグッと大人っぽくなりますねえ」

雪美「……ドキドキ……してきた」

モバP「雪美が爆発しないか不安だ……これ一体どこから持ってきたんですか?」

ちひろ「コスプレ好きを侮るべからず。私のルートですよ。いろんなサイズあります」ジャン

モバP「あんたも好きやのう……」

ちひろ「あら、でも雪美ちゃんで見られて嬉しいでしょう?」

モバP「本当に感謝しかないです。一体何を企んでいる?(錯乱)」

293: 2019/02/23(土) 19:50:07 ID:/XNEm2fA
モバP「これ、スラックスの下は普通にレオタードなんですか?」

雪美「……見る……?」

ちひろ「ダメですよ~。愛梨ちゃんのような直レオタードはお見せできません。想像で補完してくださいね」

雪美「……ダメ……だって。……ふふっ」

モバP「ぐぬう」

モバP「しかしアイドルと言えど小学生、お仕事であまり煽情的な衣装は風紀上NGな訳で」

モバP「これは実質、激レア雪美だな。よく目に焼き付けておこう」

雪美「……これを見た……あなたは……ラッキー……♪」クルン

ちひろ「ドリンクなど買っていただければ後で写真送りますよ?」

モバP「商売すな! ……言い値で買います」

千秋「私にもください」

ちひろ「千秋ちゃんいつの間に……」

雪美「千秋……! ……千秋も、一緒に……バニーに……なろう……」


千秋「えっ……それは……///」

294: 2019/02/23(土) 19:51:57 ID:/XNEm2fA
146

モバP「雪美さん雪美さんあそぼじゃないか」

雪美「……今は……ダメ」プイッ

モバP「……しょぼん」

千秋「誰だって一人になりたい時はあるものよ。仲睦まじい人でも例外ではないわ」

モバP「そうだな……」

――

雪美「P……かまって……」

モバP「雪美すまない。今はどうしてもこの作業を終わらせねばならんのだ。今度にしてくれ」

雪美「……分かった……」

雪美「……」ジッ

モバP「……ここをこうして……ああ、いかん。やり直しじゃないか……」

雪美「……またね……」 パタン

295: 2019/02/23(土) 19:53:26 ID:/XNEm2fA
――

モバP「話をしようと思ったが、ハードスケジュールでくたびれて寝てしまったか」

雪美「……すー、すー」

モバP「こんな社用車ですが、家まで送っていきますよお姫様。ゆっくりお休みになられてください」

モバP「ふわぁあ……っと、いかんいかん。俺も疲れているのかな。気を付けよう」

――

ギィ

雪美「……P……?」

ちひろ「あら、雪美ちゃん。もしかしてプロデューサーさんに用があるの?」

ちひろ「残念ですけど、打ち合わせに付き添いにで、今日も夜まで帰って来ないと思いますよ」

雪美「……」

ちひろ「そんな悲しい顔をされると辛いです……」

ちひろ「そうだ、お菓子でも食べていきませんか?」

296: 2019/02/23(土) 19:56:48 ID:/XNEm2fA
――

杏「最近雪美ちゃんの相手してる?」

モバP「それが近頃は間が悪くて、なかなかね」

杏「雪美ちゃん、気を抜くと自分のことは後回しで良いからって遠慮し始めるからね」

モバP「最初の頃はそうだったな。分かっているつもりではあるんだ」

杏「分かってるつもりで相手の気持ちの確認を怠っていると、すれ違いが起きるよ」

モバP「疲れや忙しさに気を回しすぎず、俺から話しかけるべきだったか」

杏「でもボタンのかけ違いに気づいた時には、大切な人は寝取られていた」

モバP「鬱展開の王道はやめてくれ」

りあむ「Pサマ~! めっちゃやむ! 本当にやんじゃうぞ! 良いのか!?」

モバP「おーよすよすどうした」

杏「……うちのプロデューサーって替えが利かないのがシステムとしては致命的だよねえ」

モバP「システム言ってやるな」

杏「ここは杏が面倒見るから、行ってあげなよ。――りあむ、一緒にサボろうぜ!」 オイコラ

297: 2019/02/23(土) 19:58:26 ID:/XNEm2fA
――

雪美「……」

ガチャ

ちひろ「はい、あとは若い二人でね」 エッ

バタン

モバP「いきなり休憩室に連れて来られた……雪美か?」

雪美「……P!」ダキッ

モバP「おお……不安がらせていたみたいだな。ごめんな」ナデナデ

雪美「違う……私が……Pの誘い……断ったのが……」

モバP「そんなことで雪美と距離を置いたりしないよ。後でフォローしなかった俺の慢心だった」

モバP「雪美は俺が思っている以上に、俺のことを考えてくれているんだな」ギュッ

雪美「……」ギュー

モバP「……」ヨシヨシ

298: 2019/02/23(土) 20:00:52 ID:/XNEm2fA
雪美「………………ふぅ……ありがとう」

モバP「いい顔だねえ。解決したら気持ちの切り替えが早い、さすがだ」

雪美「……でも……Pに、かまってもらいすぎ……良くない……?」

モバP「どうかな……雪美は俺に構ってほしいんだな?」

雪美「……うん」

モバP「良かった。俺もよく雪美に構ってほしくて誘ったりしているから、お互い様だ」

雪美「……なるほど……」

モバP「そして今はお互いに受け入れる余裕もある。このままゆっくりしよう」 ウン

――

ガチャ

モバP「……戻りました」

雪美「……///」ポーッ


ちひろ「事後っぽい雰囲気を醸し出すのやめましょうね」

299: 2019/02/23(土) 20:07:36 ID:/XNEm2fA
147

モバP「美味しそうなドーナツがいっぱいだな」

雪美「……カラフル」

法子「おひとつどーぞ♪」

モバP「このグリーンはメロンチョコかな? それともアイシングかな? いただきます」ヒョイ

法子「雪美ちゃんも、選んでね?」

雪美「ピンク色……貰う……」

モグモグ

モバP「美味しいなあ。こんな見て良し味良しの市販ドーナツ、幼い頃はたまにしか食べられなかった」

法子「じゃあ、反動が来ていたりする? よくドーナツを大人買いしちゃうとか」

モバP「いや、代わりにカーチャンがよく揚げドーナツを作ってくれていたから満たされていたよ」

モバP「ホットケーキミックスか何かを使っていたのかな? 型抜きした穴の部分の丸ドーナツも食べたなぁ」

法子「家庭の味ドーナツ……何だかそれはそれで羨ましいかも」


ちひろ「もしかして:アメリカンドッグ」モグモグ

300: 2019/02/23(土) 20:12:34 ID:/XNEm2fA
148

モバP「たまにボウリングに行くと筋肉痛になりません?」

ちひろ「……本格的に歳ですかあなたは」

モバP「普段使わない所を動かしているせいなんでしょうが、人間の体って面白!」

ちひろ「客観的に言いますねえ」

モバP「それとはまた違いますが、昨日は雪美と張り切り過ぎまして若干腰が痛いのです」

ちひろ「……」チラッ

雪美「……?」キョトン

モバP「ダンスのことなんですが、何を想像して雪美の方を見たんですか」

ちひろ「いや何しでかしたのかと。まあプロデューサーさん、身持ちが堅いと身内から評判ですからね」

モバP「それは女性に対して使う言葉な気が」

ちひろ「それにしても破天荒な存在のあなたでも人並に体を痛めたりはするんですね」

モバP「いや~それほどでも~」 ホメテナイ


雪美「……Pの腰使い……激しいから……」 イミシンデスネ イミシンイウナ

301: 2019/02/23(土) 20:15:05 ID:/XNEm2fA
149

こずえ「ぷろでゅーさー……だっこしてー」

モバP「……すまないこずえ。見ての通りだ」

杏「おっす」

仁奈「えへへ」

モバP「右に杏、左に仁奈と小脇に抱えていて俺の手は塞がってしまっているのだ」

雪美「……」ヒソヒソ

こずえ「……んー……なるほどー」

こずえ「だったらー……かたぐるまで、たのむー」

モバP「よっしゃ、それだったら良いぞ!」

【合体】

モバP・杏・仁奈・こずえ「わっはっはっはー」

雪美「P……とても……立派……」パチパチパチパチ


ちひろ「アイドル三刀流とは腕を上げたなあいつ……」

302: 2019/02/23(土) 20:20:53 ID:/XNEm2fA
150

雪美「私は……Pにとって……どんな存在……?」

モバP「一つに絞れないが、とりあえず神様みたいな側面はあるな」

雪美「……神様……?」

モバP「膝の上に御座す神様――膝神様とでも言おうか」

雪美「……」

モバP「徳の高い神様だよ。雪美さんが俺に乗ってくれていると、何もかも上手く行く気にさせてくれる」

雪美「させてくれる……だけ?」

モバP「神様はきっかけをくれるだけ。人は最後は自らの手で切り開かなくてはならない」

モバP「でも、だけでも心強い。ここで護ってもらっているという安心感があるというかね」

雪美「……私の方が……護られて……いるのに……変なの……」

モバP「まあそれで言うと俺の膝は神様を祀る神棚ってことになるのかな」


ちひろ「プロデューサーさんには榊の代わりにイチゴの葉でも飾りましょうか」

303: 2019/02/23(土) 20:22:25 ID:/XNEm2fA
今日はここまで
俺たちに明日はない

304: 2019/02/24(日) 10:09:52 ID:gYmEE366

モバマスは未成年どころか年齢1桁台の薫ちゃんに白ビキニ着せたりするからなぁ


to be continued...→


引用: モバP「雪美さんといっしょ」