645: ◆zvY2y1UzWw 2013/10/20(日) 18:27:48.18 ID:LPSd0q5x0

モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ



投下します

646: 2013/10/20(日) 18:29:30.62 ID:LPSd0q5x0
「昼子ちゃん…ついに始まったね、秋炎絢爛祭。」

「ああ…だが、我が何故このような格好をせねばならぬと我は今日まで何回言ったことだろうか…」

「あはは…」

「はいはい、お二人さ~ん?お喋りしてサボってると、そのワンダーな不思議のお山を冒険しちゃうぞぉ?」

童話のアリス風のコスプレをした愛海が、指をワキワキを動かしながら背後から接近してきた。

「あ、愛海ちゃん、まじめにやってるから、ね?その手の動きを止めて…!」

二人とも思わず胸をガードする。

「…愛海、今のお前の役割は宣伝だろう!もう始まっているのだ!その声を会場中に轟かせる勢いで宣伝して来い!」

「ちぇー、仕方ない、アタシはこっちの山を探りますよー」

「探るな、セクハラで訴えられたらどうするんだっ」ポカッ

「いてっ」

制服に白衣を着ただけの姿の晶葉が愛海にツッコミを入れる。

「痛いよー晶葉ちゃん…」

「こっちは厨房の手伝いロボットの管理で忙しいんだ、問題は起こさないで行動を心がけてくれないか…」

晶葉に外に追い出されていく様子をただ見守った。


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それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。




647: 2013/10/20(日) 18:29:57.89 ID:LPSd0q5x0
…彼女達のクラスの出店は、『コスプレ喫茶』。

中学生らしい発想ではあるが、こんな大きな祭りに出る為それなりの準備をされており、コスプレも本格的である。

魔法少女服のツインテールの蘭子と、黒いメイド服のツーサイドアップの昼子。

他にも某アニメの主人公、某電子の歌姫、某マンガのヒロイン…etc

とにかく盛りだくさんである。しかも、調理の補助に晶葉のロボットたちが付くということで、味のクオリティもなかなかの物。

本業のメイド喫茶が出張店を出してくるのは想定外ではあったが、客の入りはいい感じである。

648: 2013/10/20(日) 18:30:52.40 ID:LPSd0q5x0
厨房スペースとテーブルスペースの間のウェイトレス待機スペースで、男子の一人が携帯の画面を見せてきた。

「おい、見ろよ蘭子、昼子!結構俺たちの店、呟きでも話題になってるぜ!」

「え、本当!?」

「別の所のアイス屋の宣伝とかと同じくらい、話題に上がってる!すげぇ!」

むしろ、美少女の写真が男たちの間で流れているようで…客の入りは少しずつ多くなってきている。

「…初日からこれで、大丈夫なのか…?っと、我が注文を取ってきてやろう。」

昼子が横から覗いていたが、チンチンとテーブルの卓上ベルが鳴り、その席に向かっていった。

「フハハ、我に何を命ずる!?」

「…熱を帯びし雪上に輝く甘美な蜜(ハニートースト)と、浸食する深淵の闇(コーヒー)を我が下へ!」

「把握した!暫し待たれよ!」

冗談半分で用意した、一部のテーブルにある昼子用ベルを鳴らしてメニューにある昼子専用メニュー名を言うことが出来る、『悪魔メイドシステム』。意外と評判が良いようだ。

「…なんでこれ、評判良いんだろう?」

「…さぁ?」

649: 2013/10/20(日) 18:32:03.97 ID:LPSd0q5x0
その頃。

「えっと…姫様達はコスプレ喫茶だっけ。アタシみたいな子が一人で入るような店じゃない気が…あ、うまー❤」

黄色いフードのついた服を着た少女…ユズが、人気のない校舎裏の隅の方でパンフレットを読みながらクレープを食べていた。

「あー久々にこういうの食べるなぁ。けど…なんか、嫌な予感がするんだよね…せっかくお祭りだって言うのにサ。」

こんなに人が集まると、嫌な思考の持ち主が紛れ込むものだ。しかも5日間も行われる。何か事件があってもおかしくはないだろう。

それとは関係ないが…時折、例のぷちどるを見かけて若干気まずい。追いかけている人たちもいて尚更気まずい。

「…元気なようで何よりではあるけどネ。屋台にもいたし…あとベルゼブブも。」

ソーセージ屋台の近くを通った時、一匹、いや一人と言うべきか?…まぁ居たのには心底驚いた。

それと近くで見かけたベルゼブブは討伐対象ではないので特に接触もしなかった。…暴食らしく楽しんでいて何よりである。

650: 2013/10/20(日) 18:33:17.48 ID:LPSd0q5x0
「…次は何食べようかなぁ…姫様達は店の場所覚えておけば何とかなると思うし…と言うか長時間居座れないだろうしね!」

使い道も無かったので結構溜まっている財布の中身を確認しつつ、立ち上がる。

『ぷち、カモン!』

鎌の色がそれぞれ、黒・白・黄緑のぷちユズが召喚される。

「みー!」「みみー!」「みぃ!」

「姫様の居る部屋の監視ヨロシク!くれぐれも大罪連中に見つからないようにね!」

「「「みっ!」」」

そのままどこかへ行こうとして…思い出したように振り返る。

「…あとさ、ぷちどる達…何かあったら助けてあげてね。」

「「「みー!」」」

一応、自分が生み出した命なのだ。悪用されるのは気分が悪い。

ぷちユズ達が一応目立たないように飛んでいったのを見届け、ユズも歩き出した。

651: 2013/10/20(日) 18:34:24.01 ID:LPSd0q5x0
ユズは会場を適当にうろつきつつ、いろいろ食べている。

サボりではない。これでも周囲の魔翌力や力の流れは観察している。

「んーアイス、んまー❤…って、おやおや?」

ある階から魔翌力を感じる。それも結構な…

「…ちょっと気になるねー」

ササッとアイスを食べ、ごみをちゃんと捨てると、その階に向かっていく。

すぐにお目当ての店は見つかった。木製の看板を見る。

(『アンティークショップ・ヘルメス 秋炎絢爛祭出張店』かぁ…どう見ても普通じゃないんだけど…まぁ有害ではない…カナ?)

入ってみると、元は教室だったのが疑われるほどのしっかりとした装飾の店。

飾られている色とりどりの宝石から、魔翌力を感じた。他にもマジックアイテム。…あとはちょっと細工がされている日用品。

そして漂っているのはおそらく紅茶と焼き菓子の匂い。良い雰囲気の店だ。

652: 2013/10/20(日) 18:36:05.08 ID:LPSd0q5x0
小さな小物はともかく、大きな物もあるからか、始まったばかりの今は客は殆どいない。かさばるから、そういった物は帰る時に買うのだろう。

取りあえず棚の腕輪を手に取る。二つで一つのペアらしい。片方は黒い腕輪に白いユニコーンが。もう片方は白い腕輪に黒いペガサスが描かれている。

それら…否、店にある殆どの物から魔力、又はそれに近い力を感じた。

「…錬金術?」

思わず口からボソリと言葉が出てしまう。殆ど聞こえない程の声。

「…あら、お分かりですか?」

後ろから声をいきなりかけられたが、不思議とビクリとはしなかった。

「えっと…店主さん?」

「ええ、相原雪乃と申しますわ。…立ち話もなんですし、こちらに座ってくださいな。今は二人きりですし。」

言われるままに席に座る。少し席を離れた雪乃は紅茶とクッキーを持ってきた。

二人が向かい合う様に座ると、ユズが問いかけた。

「これ全部…作ったの?」

「ええ♪皆、私が作り上げたものですの。」

周囲のかなりの数のアイテム、これらを全部作り上げる。それはかなりの実力者と言う事なのだろう。

「…すごいねぇ。あ、アタシはユズっていうんだ。錬金術は本でしか知らなかったからこんなところでお目にかかるとは思ってなかったよ。」

「あら、そうでしたの?」

「うん、この部屋の魔力が何なのか、気になって来たんだよ。あの宝石の魔力だったんだね。」

飾られている宝石。魔力が固体となった管理塔のクリスタルとは違い、宝石の中に魔力を保持しているようだ。

それに、もう純粋な魔力ではなく…何らかの性質をすでに持っているように思える。

653: 2013/10/20(日) 18:38:21.29 ID:LPSd0q5x0
「なるほど…マテリアルの魔力を感じてきたのですね?」

「そんな名前なんだ…。似ている物は知っているけど、こういうのは初めて見るよー。」

「まぁ、そうでしたの?さすがあれ程の魔術を使えるだけありますわね。」

その言葉に一瞬、真の姿である黒いローブの幻影が見える程にユズは警戒心を露わにしたが、すぐに警戒を解いた。

「…あ。うっかりしてたなぁ…ユズの事、結構広まっているんだった。思わず警戒しちゃったよ。これからは気をつけなきゃ…」

「いえ、殆どの人はその後の憤怒の街の事などもありましたし、一時的なニュースとしてしか覚えていませんわ。それに黒いローブの姿が印象的ですし、騒ぎにはならないかと。」

紅茶を一口飲み、雪乃は続ける。

「それに…いえ、なんでもありませんわ。」

雪乃は見逃さなかった。黒いローブの幻影の下の彼女の表情。それは殺意、それに恐怖を秘めていた。

今でもユズはテレビ局とその関係者には良い感情を抱いていない。一種のトラウマでもあるからだ。

…瞳に光が宿っていなかったのだ。まるで骸骨の空っぽの瞳を覗き込んでいるような…そんな気分になる程に。

654: 2013/10/20(日) 18:40:21.06 ID:LPSd0q5x0
「そう?まぁ一応対策は練っておくべきかなぁ…いやでも…あ、そうだ。」

しかし当の本人はそんな雰囲気を纏っていたとは思えない程の仕草と態度。

思い出したように、持っていた腕輪をすっと前に出した。

「そういえば、これを知り合いに渡したいんだけど…どんな腕輪なのコレ?」

「ああ、それはちょっと面白い仕掛けがありますの。せっかくですしお見せしますわ。」

腕輪を両手に持ち、横から合わせるように近づける。

不思議な事に腕輪の中のユニコーンとペガサスが動き出し、完全に触れると腕輪が小さな淡い光を纏った。

そして光が消えると二つの腕輪は一つの腕輪になっていた。上下に重ね合わせているように見えるが完全に接合されている。

そしてその接合された白黒の腕輪の中を…翼のあるユニコーンと言うべきか、角があるペガサスと言うべきか…とにかく灰色のそれが飛び回っていた。

「すごーい!」

飛び回るそれを雪乃が撫でると、腕輪は再び二つの腕輪に戻った。

「うふ、喜んでいただけて何よりですわ。これはアリコーンリング。一つにすると魔力を呼び、二つに分けるとお互いを感じ、求める力がありますの。」

「へぇ…買ってもいいかな?プレゼントにいいかも。」

「お買い上げありがとうございます♪」

655: 2013/10/20(日) 18:41:18.56 ID:LPSd0q5x0
少しの雑談をして、紅茶とクッキーをしっかりといただき、ユズは腕輪の入った袋を大切そうにカバンにしまった。

「さて、そろそろ行くよ。えへ、また来るかも♪次は自分用カナ?」

「そう言って貰えてなにより…そうそう、本店宣伝用のチラシをどうぞ。開けている曜日などは決めていませんけど…よかったらこちらにもいらっしゃってくださいまし♪」

「うん、できれば知り合いも連れていきたいな、いい店だよここは。」

「そんなに褒めていただけるとは…うふふ♪」

「じゃあ、もう行くね。繁盛するとイイネ!」

「はい、またのお越しをお待ちしております♪」

手を振るユズに雪乃も手を振り返す。そこにまた次の客が入って来たのを見て、ユズは再び歩き出した。

656: 2013/10/20(日) 18:44:12.33 ID:LPSd0q5x0
そして、教会のとある部屋。キヨミたちが話している部屋の真横。

「キヨミお姉ちゃん、お祭りに行くんだァ…ふぅん…」

ナニカは隣の部屋のキヨミの話を壁に耳を当てて聞いていた。

教会に来て、ナニカはクラリスからまともな衣類や食事を与えられた。下着も着ておらず、ワンピースだけだったのだから余計にクラリスに心配された。

ともかく、一応彼女には現実にも安らぎの場が与えられたわけなのだが、満足はしていない。

…加蓮とクラリスの、抱きしめた時の柔らかさの違いとかではない。決して。柔らかいほうが好きではあるが。

ほぼ同一存在である加蓮より、他の者は安心できないのもある。

そしてただ単純に…足りないのだ。

657: 2013/10/20(日) 18:46:03.70 ID:LPSd0q5x0
彼女が『奈緒』でも『ナニカ』でもない、『仁加』という存在に完全に生まれ変わり、悪夢から逃れるにはまだ人格形成が不十分なのだ。

少しずつ悪夢は短くなりつつあるが、まだ不十分だ。

記憶を他人事のように認識し続ければ、人格は別の人格へと変わる。それなら悪夢の様な記憶からも逃れることが出来るはずなのだ。

『奈緒』の記憶を否定して、彼女は『仁加』になる事を求める。

『自分』は『奈緒』とは別人である。だから口調も心も別の者。

『怪物』は『人間』になりたくて仕方ない。幸福を求めているから。

だから『奈緒』と言う名の『人間』に…

(あれ?)

嫉妬…している筈なのだ。『家族』がいて、笑えて、愛されている奈緒に…

(なんでだろう、あたし…奈緒が『人間』なのが嬉しいの?)

ありえない、筈なのだ。

過去の記憶を封じたのは誰?理由は?何故分離した?…そんな事…

(『知らない』?…『思い出さない方がいい』?)

暫く考えて、結論を出した。

「ま、いーや。そんな事はどうでもいいの。」

奈緒と分離した彼女はもう奈緒の記憶は覗けない。夢に潜り込んでも逃げられるだろう。と言うかよっぽどのことがない限り、その時間分加蓮と一緒にいたい。

少なくとも、今彼女が持っているのは自分の記憶と感情。思い出せないなら思い出さない方がいい。

思い出して不幸せになるくらいなら、知らない方がいい。

658: 2013/10/20(日) 18:47:48.30 ID:LPSd0q5x0
「そんな事よりお祭りなの…お祭り、行きたいの…キヨミお姉ちゃんも行くんだし。退屈だし。」

キヨミ、そして彼女といつも共にいる男たち。ナニカから見ると彼女達からは非常に甘い匂いが微かに漂っている。

血の香り。それが『おいしそう』なのだ。一応食べてはいないが…時折キヨミたちは彼女の目が捕食者の目になっているのを見ている。

「…おなかすいたなぁ」

あの香りは非常にマズイ。おいしそうだから食欲を刺激する。獣のように喰らってしまいたくなる。

「お祭り、お菓子あるカナ!ゴハンアルカナ!オナカスイタオナカスイタオナカスイタ!でもお金ないの…」モグモグ

モグモグと神父がこっそり買っていたのを知らずに部屋に持ち込んでいたお徳用袋入りクッキーを食べて自分を落ち着ける。そこで一つのアイデアを思いつく。

「…そうだ、悪い事した人なら食べてもいいかも!正義の味方はどうせ悪い人頃しちゃうの、なら食べてもオッケーだよね!」

『罪悪感』を白兎に消されたことによって生まれた狂った発想。吸血鬼によって刺激された食欲は、甘い血肉を求める。

「キシ、キシシ!行ってきまーす!」

窓を開けて、クラリスや神父に見つからないように教会を飛び出した。窓は内側から黒い泥が閉じて、別の場所から彼女に合流する。

こうして、一人の気狂いが祭りに参加することになった。

659: 2013/10/20(日) 18:48:57.73 ID:LPSd0q5x0
アリコーンリング(ユニコーンリング・ペガサスリング)
黒と白の腕輪。一つになったり二つになったりする。
一つになっている時は魔力を引き寄せ、二つに分けている時はお互いを感じ、求める力があり、近いと腕輪の中の絵が動き出す。
ユニコーンを昼子、ペガサスを蘭子に渡す予定。

ぷちユズ鎌鼬隊
ぷちユズの黒・黄緑・白セットの時の別名。
黒が物体操作で転ばせ、黄緑が風に乗って切り裂き、悪人じゃなかったときは白が回復する。
このコンビネーション以外にも結構万能な組み合わせ。いざという時は合体もする。

661: 2013/10/20(日) 18:52:08.70 ID:LPSd0q5x0
以上です
お祭りがどんどん混沌としていってるね!(白目)

愛海、晶葉、雪乃、キヨミ、名前だけではベルちゃん、加蓮、クラリス、神父をお借りしました

イベント情報
・某中学の某クラスの生徒達が教習棟中層階でコスプレ喫茶をやっています。
・ぷちユズ3体が教習棟周辺を巡回中。昼子達やぷちどるを守ろうとします。
・ナニカ(一文無し)が暇つぶしも兼ねてウロウロしてます。吸血鬼から漂う血の甘い香りで食欲が刺激される模様。逃げるか食べ物をあげてね!

660: 2013/10/20(日) 18:51:23.63 ID:NX8W8wOAO
おつ

神父がクッキーをこっそり買ってたくだり、すごくいい、すごくいいよ

662: 2013/10/20(日) 19:36:22.70 ID:To8cOo3wO
乙ー

ナニカコワイ。けどカワイイ!
そして、昼子ノリノリである




【次回に続く・・・】



引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part7