988:◆EBFgUqOyPQ 2013/11/19(火) 01:57:54.68 ID:6e91Hul7o

989: 2013/11/19(火) 01:58:44.64 ID:6e91Hul7o
 化物級の学校、京華学院は秋炎絢爛祭によって大きな賑わいを見せている。

 学生や保護者、はたまた関係のない一般客が行き交う中、とある一つのベンチが異彩を放っている。
 その道を通る人々はそれをチラ見はするものの、なるべくかかわらないように道を行く。
 この学園内では犬が歩けば棒に当たるかのごとく、変人に当たったりするのでこれくらいのことでは珍しくはないのだがやはり皆面倒事は嫌うので積極的に話しかけることはないだろう。

 そのベンチにはとある男が座っていた。
 折り目正しく、卸したてともいえるようなタキシードに身を包むその男。
 ここがロサンゼルスで赤絨毯でも敷いてあるならば、まさにハリウッドスターの様であろう。
 ただしここは日本の、ただのでっかい学園祭である。

 その存在はあまりにも浮いているだろう。
 いくら見た目が良くともお近づきにはなろうとは思わない。

「はぁ、結局昨日は眠れず、挙句の果てには集合時刻の午前10時よりも4時間も早く来る始末。焦りは失敗を生むぞ……」

 その男はそんなことを呟きながら、近くの売店で買ったマルメターノソーセージを頬張る。
 この男、ほぼ連続で早朝6時からこのベンチを占拠していたというのだ。
 学際の準備のために朝早くから登校してきた生徒はこの男を当然見ているし、その後この道を通り、この男が全くこの場所から移動していないことを知れば正直通報物であろう。

 現に一部の生徒の中では『朝からベンチを陣取る謎のハリウッドスターもどき』として噂になっているのだがこの男はそのことなど到底知りはしないだろう。


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それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。




990: 2013/11/19(火) 01:59:17.16 ID:6e91Hul7o

「ごめーん☆待ったー?」

 そんなタキシード男に近づいていく少女が一人。
 大槻唯は集合時間の10分前である午前9時50分に律儀に到着した。

「いえ、今来たところですよ」

 そう言って、常套句を返すタキシード男、もといイルミナP。
 ベンチからすっと立ち上がってソーセージの串を放り投げ、それは回転しながら近くのゴミ箱へと吸い込まれていった。

「ところでその服どうしたの?イルミナPちゃんの服装はダサい部屋着かぴっちりスーツしか見たことないんだけど」

「せっかくの唯からの誘い。私も気合いを入れてきました」

 イルミナPの表情は間違いなどないという自信のある顔。TPOが破綻した服装なのだが彼は気合が入りすぎて服装のセンスがどこに行ってしまったらしい。

「う、うん……。たまにはいいんじゃない……☆」

 そんなイルミナPに状況にあってないとは言えるはずもなく唯は空気を読んでとりあえず肯定しておく。

991: 2013/11/19(火) 02:00:01.87 ID:6e91Hul7o

「では今日はどこを回るんですか?」

 唯はイルミナPの問いに対して持っていたパンフレットを広げてうーんと唸る。

「いざ来てみるとどこに行こうか悩んじゃうもんだねー。とりあえず適当に回ってみよっか☆」

「わかりました。唯」

 まだ午前中だというのに学園内は賑わっており、人がひっきりなしに行き交っている。
 制服を着た生徒は忙しそうに荷物を抱えて走り回る者もいれば、複数人固まって談笑しながら学園内の回っている者たちもいた。
 そんな陰で出歩かずに空き教室などで引きこもって友人とゲームなどをするものや、一人で学園祭を回る猛者もいるのだろうがここでは無視しておくことにしよう。

 当然生徒だけでなく、外部の人間も多くいる。
 特にこの秋炎絢爛祭では規模が規模なために、商売の機会であるために外部からの出店も多くある。
 さらに大量の生徒の親や、その関係のある人、様々な目的をもって人が集まっていた。

「ところで唯はどうしてここに来ようと思ったんですか?」

 イルミナPはふと唯に聞いてみた。
 その理由は想像はつくのだが、なんとなく聞いてみようと思ったのだ。

「えーっとね。ただ楽しそうだったからゆいは来たくなっただけ!イルミナPちゃんだってわかってるくせにー」

「ええ、察しはついていましたよ。昔から面白そうなことに首突っ込んだりしてましたからね」

 だからこそ境界崩しを行おうとすることは唯のこの性格とはあまりあわないとイルミナPは疑問に思っていた。
 境界崩し自体手間がかかるものなので唯が積極的にやろうとは思えない。ルシフェルのためにしようとしているとも思えない。
 なのでイルミナPはわからないのだ。
 唯が何をしたいのか、何を目的としているのか。

「イルミナPちゃん、こっち行ってみよー!」

「ええ、わかりました。唯」

992: 2013/11/19(火) 02:00:35.23 ID:6e91Hul7o

 その後、暫く二人はいろいろなところを回ったりした。
 そこら中に出店されている売店に目移りしながら食べ物を買ったり、よくわからないクラス展示などを見たりした。
 そして一時間くらい回った後に二人は教習棟の上層階へと訪れた。

「アンティークショップ・ヘルメス?」

 たどり着いた教室には『アンティークショップ・ヘルメス 秋炎絢爛祭出張店』と書かれた看板が掲げられていた。
 看板以外には簡単な飾りつけがされているだけであったがそれがなかなか凝っている。

「学園祭に出展されている店にしては、なかなか雰囲気がありますね。入ってみますか?唯」

「ちょっぴり騒がしいところばっかり回ってたからこういった静かな店に行くのもいいかも!」

 そんな風に言いながら唯はその店の戸をゆっくり開ける。

「しつれいしまーす」

 イルミナPも続いて店内へと入っていく。
 店内は外の簡素な装飾とは一変してそこら中に多くの装飾が施されており、それらが店の雰囲気を引き立てていた。
 装飾の感じも外の装飾を施した者と同じ者がしたのだろう。統一感があり元がただの教室だと考えれば感服する。

 店内にはちょうど客は居なかった。
 ちょうど昼少し前の時間だったので昼食を食べに行く人など、食品の売店や模擬店の方へと人が集まるのだろう。

993: 2013/11/19(火) 02:01:17.62 ID:6e91Hul7o

 店内には大小さまざまな品物が並べられており、どれも趣のある品ばかりである。
 イルミナPはちょうど近くにあった商品である指輪を手に取ってまじまじと見る。

「魔力が通っている……。どうやらマジックアイテムのようですね」

「取り扱ってる商品、ほとんどから魔力が感じるね」

「なにか……お探しですか?」

 そんな二人の会話に割り込んでくる一つの声。
 陳列された商品を見つめていた二人の後方、窓際近くから一人の女性が声をかけてきていた。

「あなたは……?」

「私はここの店主の相原雪乃と申しますわ。いらっしゃいませ」

 そう言って店主である相原雪乃は軽く頭を下げた。

「ここに置いてある商品、材質の劣化具合がほとんど見られない。最近作られた物みたいですが全部あなたが作ったんですか?」

 イルミナPは素直に思った疑問を雪乃に投げかける。

994: 2013/11/19(火) 02:01:50.98 ID:6e91Hul7o

「ええ、我ながら自信作ばかりですわ。先ほどの会話から察するに、それなりの知識はあるようですけどどうでしょうか?私の品は」

 雪乃は二人に商品であるマジックアイテムについての評価を求めた。

「うーんと……それなりに質のいい魔力をゆいは感じるんだけどねー。こういうのはよくわかんないや。イルミナPちゃんはどう思う?」

 唯は近くの金属でできた小物を手に取っていろんな角度から見ているがあまり興味はなさそうである。

「私はそれなりの数のマジックアイテムを見てきましたけど、かつての高名な魔法使いが作った物と遜色ないくらいいいものですよ。これ」

 対してイルミナPは少し目を輝かせながら、素直にマジックアイテムの出来を褒める。
 彼自身魔術分野の技術屋であるので、人の手で作られた物、その技術には興味があるのだ。

「これは錬金術ですか?」

「そうですわ。よくご存じですわね」

「いえ、私は軽く本で読んだことがあるくらいです。魔法を学んだ後に工学を取り入れたので錬金術との親和性があまりなかったので不勉強でした」

「なるほど。たしかに錬金術は魔法などの神秘を用いて物を作る術ですが、工学は神秘とは程遠い現実的な物作り。あんまり親和性はなさそうですわね」

 雪乃はそう言いながらも少し疑問を抱えた表情になる。

「しかし私としてはあなたの魔法に工学を取り入れる……というのは聞いたことがありませんわ。それこそ親和性があまりない気がしますが……」

「まぁ趣味でやってるようなものですから。ですがやはりこういった自身にない他の技術に触れることはいい刺激になりますよ」

「刺激……ですか。そうなると私もあなたの魔法……工学とでもいえばいいでしょうか?気になりますわ」

995: 2013/11/19(火) 02:02:35.55 ID:6e91Hul7o

 興味深そうな目で雪乃はイルミナPを見つめるが、イルミナPは苦笑する。

「あいにく企業秘密のようなものなのでこればかりは教えられませんよ」

「なんだか不公平ですわ……」

 雪乃は不満そうな顔をする。

「こればかりは無理ですね。申し訳ない」

「イルミナPちゃんばっかり話しててゆいちょっとつまんないなー」

 会話に割り込むように唯が置いてあった椅子に勝手に座りながら文句を言う。

「おや、すみません。ではせっかくなのでこの指輪でもいただきましょう。いくらですか?」

 イルミナPはちょうど手に持っていた雪乃作の指輪の値段を尋ねる。

「えーっと……それは***円になりますわ」

「な、なんだと!?***円だと!それだけあればガチャが何回引けると思ってるんだ!」

「どしたの?イルミナPちゃん」

 急に声を上げたイルミナPに対して唯は尋ねる。

「あ……い、いえ謎の電波を受信しただけです。気にしないでください……。ともかくその値段となると手持ちにありませんね。一応聞きますけどカードはどうでしょう?」

 その問いに雪乃は少し困った顔をする。

996: 2013/11/19(火) 02:03:13.95 ID:6e91Hul7o

「申し訳ないのですがカードは使えないですわ。出張店ですので……」

「どうするの?イルミナPちゃん?」

「しょうがないですね。これならどうでしょう?」

 そう言ってイルミナPは左手に着けていた3つの指輪の一つを取り外して雪乃に差し出した。

「使われているマテリアルにはエメラルド、金属にはミスリルが使用されてるのでそれなりの価値はあるかと思いますがどうでしょう?」

 雪乃は手渡された指輪を目の前まで待ってきてまじまじと見る。

「たしかに高密度の魔力のこもったエメラルドに、質のいいミスリルですけど……。さすがに私の作品程度ではつり合いませんわ。これ一つで高級外車数台買えるものだと思うのですが……」

 正直雪乃は驚きを隠せなかった。
 素材の希少性、品質もさることながら作られている技術やマテリアルの中に内包した魔法の錬度。
 どれをとっても一級品、まさに芸術と言ってもいいほどだったのだ。
 これほどの品は彼女でも指折り数えるほどしか目にしたことがない。

「かまいませんよ。私も持て余していた骨董品ですし、なによりそれは私が持っているものよりもあなたが持っている方がふさわしいものですので」

 雪乃の反応を見てその指輪が十分つり合うものだと判断したのだろう。
 イルミナPは代わりに雪乃から買った指輪をはめる。

997: 2013/11/19(火) 02:03:41.70 ID:6e91Hul7o

「では唯、お待たせしましたね」

「じゃあ、そろそろ行こっか♪」

「あ、少し待ってくださ……」

 雪乃は二人を制止しようとするが、唯とイルミナPはそのまま店内から出て行ってしまった。
 雪乃は狐につつまれたような顔をして、少しの間呆然としていたがすぐに我に返った。

「私……騙されてはいませんよね……」

 雪乃はそう呟いてから握りしめていた渡された指輪をもう一度見直してみる。
 それはやはりまぎれもなく本物のマジックアイテムの指輪であった。

「あら?」

 その指輪を見ながら雪乃はあることに気づく。
 指輪の内側に英字で何かが刻まれている。

「Hermes……Trismegistus?……冗談でしょう」

 正直価値は本物ならば高級外車数台どころではなかった。


998: 2013/11/19(火) 02:04:16.64 ID:6e91Hul7o
以上です

二人の学園祭はまだ続きます

999: 2013/11/19(火) 02:20:53.29 ID:jgP3n4jt0
乙ー

イルミナPwwメタルなwww

1000: 2013/11/19(火) 08:13:13.95 ID:6e91Hul7o
おっと忘れてました
相原雪乃さんお借りしました。

>>1000ならクリスマス中止の危機




【次回に続く・・・】



引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part7