1:◆cgcCmk1QIM 23/11/27(月) 18:54:49 ID:iQ0a

ドンッ(泰葉マンションを訪ねてきた松尾千鶴)

ドンッ(等身大関裕美人形)

ドンッ(玄関先でそれを抱き抱えてる岡崎泰葉)

2: 23/11/27(月) 18:55:13 ID:iQ0a
松尾千鶴「か、帰るね(クルリ)」

岡崎泰葉「待って待って帰らないで(ガシッ)」

千鶴「いーやーっ、帰らせてーっ」

泰葉「今帰らせたら二度と誤解が解けなくなりそうな気がするからダメ!」

千鶴「してない。誤解なんかしてないから」

泰葉「本当?」
にいてんごむっ! アイドルマスター シンデレラガールズ Vol.2 [9.松尾千鶴] 単品

3: 23/11/27(月) 19:07:50 ID:iQ0a
千鶴「大丈夫、趣味は人それぞれだよ。びっくりしたし理解はできないけど尊重はする」

泰葉「やっぱり誤解してるじゃないー!!」

千鶴「他にどう理解しろっていうのー!」

ドーン(無言で佇む等身大関裕美人形)

4: 23/11/27(月) 19:08:30 ID:iQ0a
千鶴「親友が親友の等身大人形持ってるとかそりゃあショックだけどそういう物があるのは知ってるし泰葉ちゃんそういえば裕美ちゃん可愛い可愛い言ってたしドールハウスが趣味だしでもちょっと私自身がこの光景を飲み
込むのに時間がかかるから一刻も早くここを離れて冷静になりたいというか(ぶつぶつ)」

泰葉「おちついて。お願いだから落ち着いて」

千鶴「無理だって」

5: 23/11/27(月) 19:10:45 ID:iQ0a
泰葉「そこを曲げてお願いしたい。ほら、あれだから。これ私のじゃないから」

千鶴「そんな事ってある?」

泰葉「あったんだって。買い出しから戻ったらこう玄関にドーンとこの子が置いてあって」

千鶴「そんな事ってある!?」

泰葉「あったんだもんほんとだもん!!」

6: 23/11/27(月) 19:11:22 ID:iQ0a
千鶴「……本当に違うの?」

泰葉「もしそうなら玄関先じゃなくていちばん奥の部屋にしまっておくでしょ」

千鶴「それは確かに」

泰葉「こんな高価そうなもの、とても玄関先なんかに置いておけないよ。安全なところに安置したい」

千鶴「そうなの?」

泰葉「そうだよ。たぶんオーダーしたら七桁の世界」

7: 23/11/27(月) 19:13:06 ID:iQ0a
千鶴「そういえば衣装もすごく凝ってるし、間接とか人形丸出しなのにまるで生きてるみたいに見える……」

泰葉「ね。お顔とか、つついたらぷるぷるしてそう」

千鶴「あ、この人形ってあれだね。裕美ちゃんが人形のお仕事したときの」

泰葉「うん。亡失のローズルージュ。あれをモデルにした人形だと思うんだけど」

千鶴「なんでそんなものがここに」

泰葉「さあ」

8: 23/11/27(月) 19:13:29 ID:iQ0a

千鶴「……本当に本当に泰葉ちゃんがオーダーしたんじゃない?」

泰葉「違うって。まあドールは大きさが正義みたいなところはあるけど」

千鶴「そうなの?」

泰葉「人形本体はビスクとかキャストとかプラスチックとかの工芸品だから極端な話コストを度外視すれば小さくてもすごく凝ったものが作れるんだけど、人形に着せる服やウイッグはそうはいかないんだよね」

千鶴「へえ」

泰葉「人間の服やカツラに似せて作っても、小さいとどうしても……繊維の太さや重さはごまかせないからね」

千鶴「そういえば昔持ってたお人形さんも髪や服が妙にフワフワしてた」

9: 23/11/27(月) 19:15:47 ID:iQ0a
泰葉「縫製なんかの限界もあるしね。そういうわけで小さいスケールのドールってやっぱりリカちゃんぽさから抜け出せないって言うか、人形や家具の精密さと服の質感のギャップで人形っぽさが逆に際だつというか」

千鶴「詳しいね」

泰葉「昔ヤスハちゃん人形を売り出すときに色々あってね」

千鶴「あ、ほたるちゃんも持ってたってヤスハちゃん人形」

泰葉「ヤスハちゃん人形の話はやめよう。そうしよう(マガオ)」

千鶴「う、うん」

10: 23/11/27(月) 19:16:19 ID:iQ0a

泰葉「まあそういうわけで大きいスケールには魅力を感じるよね。服や髪も自然になるししっかり重量があるがゆえの自然な存在感ていうか」

千鶴「重ねて聞くけど泰葉ちゃんの可愛いもの好きとドールハウス好きが暴走した結果等身大人形に手を出したんじゃないのね?」

泰葉「違うってば。というかドールハウスとドールはまた別の趣味だからね。私はハウスに人形入れない派だし」

千鶴「そうなんだ」

11: 23/11/27(月) 19:19:45 ID:iQ0a
泰葉「あと、もしそういう趣味があったとしても、いくらなんでも千鶴ちゃんたちがお泊まりにくると解ってる日にこんなとこに出しておくほど私は迂闊じゃない」

千鶴「それは確かに」

泰葉「芸歴11年、一度も醜聞を書き立てられたことの無い私の注意力を嘗めないでほしい」

千鶴「おみそれしました……でもじゃあこれ、一体なんなんだろう」

泰葉「さあ……」

千鶴「何か手かがりは無いのかな」

泰葉「うーん、たいていの人形はウイッグの下か背中かお尻にメーカーの刻印があるものだけど」

12: 23/11/27(月) 19:20:03 ID:iQ0a
千鶴「調べてみる? 作ったところが解れば問い合わせられるし」

泰葉「やってみるかあ。ウイッグの下は……」

千鶴「なんか、裕美ちゃんの顔したものの髪の毛を剥がしちゃうのって気が引ける」

泰葉「同じく。後回しにして背中を確認しようか。手伝ってくれる?」

千鶴「うん。どうしたらいい?」

泰葉「服をめくってみるから、前から抱えて支えててほしいの。このぐらいの大きさの人形だと相当の重さだし、倒れたらたぶん壊れちゃう」

13: 23/11/27(月) 19:21:44 ID:iQ0a
千鶴「解った。こう?(ギュウ)」

泰葉「それでいい。ちょっと支えててね(ゴソゴソ)」

千鶴「あっ、グラグラする。重っ、堅っ」

泰葉「よくできてるけどやっぱり人形だからね。えーと背中に刻印はなし。お尻は(ペロン)」

ほたる「(ドアガチャー)泰葉ちゃん千鶴ちゃん遅くなってごめ……」

14: 23/11/27(月) 19:23:37 ID:iQ0a
千鶴(等身大裕美人形に抱きついてる人)

泰葉(等身大裕美人形のズボンを脱がそうとしている人)

ほたる「帰ります(クルリ)」

千鶴「待って帰らないで!」

泰葉「誤解だから待って!!」

15: 23/11/27(月) 19:25:50 ID:iQ0a
ほたる「人の趣味はそれぞれですから……松尾さんも岡崎さんもごゆっくり」

千鶴「名字呼びになっちゃった」

泰葉「これはショックが大きい」

ほたる「裕美ちゃんには今日のお泊まりは中止になったと連絡して、やんわりと二人に近づかないように注意しておきますから」

千鶴「淡々と壁を作らないでえ」

16: 23/11/27(月) 19:29:29 ID:iQ0a
泰葉「誤解だから! かくかくしかじかだから!!」

ほたる「それじゃあ、謎の等身大ドールが玄関にあったからその正体を探るために服を」

千鶴「そういうことです」

泰葉「誓ってはれんちな動機ではない」

ほたる「……」

泰葉「ほたるちゃん?」

ほたる「あの、私、思うんですが」

泰葉「なに?」

17: 23/11/27(月) 19:31:35 ID:iQ0a
ほたる「まずやるべきは正体の確認じゃなくて裕美ちゃんが来る前に人形をどこかに隠す事では」

千鶴「そういえばそうだ」

泰葉「千鶴ちゃんに見られてつい我を忘れてたけどそうだよね」

千鶴「解る。私もパニックになってたもん」

泰葉「ほたるちゃん、誤解は解けた?」

ほたる「うん」

千鶴「よかったあ」

18: 23/11/27(月) 19:33:16 ID:iQ0a
泰葉「それじゃこの子を隠すの手伝って。重くて一人じゃ運べないの」

ほたる「そんなに重いの?」

泰葉「うん。たぶん50キロとかあると思う」

千鶴「しかも間接が動くからよけい重く感じて」

ほたる「脱力した人間も運びづらいですからね……」

泰葉「まるで運んだことがあるような言い方を!」

千鶴「ねえ、どこに隠そう」

ほたる「使ってない客間のベッドに寝かせるのはどうでしょう」

千鶴「万が一目撃したらショック倍増じゃない?」

泰葉「とりあえず鍵のかかるクローゼットがあるからそこに」

千鶴「それだ」

19: 23/11/27(月) 19:33:45 ID:iQ0a
ほたる「ダメです。人形とはいえ裕美ちゃんの形をしたものを物入れに押し込めるなんて」

千鶴「人形だから。人形だから!!」

泰葉「この裕美ちゃん大好きっこめ!」

ほたる「そう、あれは冷たい雨のなかをさまよい物陰にうずくまった日……」

泰葉「いや感動エピソードは後にしてください」

ほたる「はあい」

千鶴「とにかく一度そのクローゼットに隠して、本格的にどうするかはその後考えようよ。ほたるちゃんもそれで一度納得して。もういつ裕美ちゃんが来てもおかしくないんだから」

裕美「私がどうしたの?」

20: 23/11/28(火) 07:57:39 ID:vtKO
千鶴「ギャー!?」

泰葉「ギャー!?」

裕美「おしとやかさんな2人がこんな悲鳴を!?」

21: 23/11/28(火) 07:59:25 ID:vtKO
ほたる「裕美ちゃん早かったね」

裕美「うん。だってお泊まり楽しみにしてたんだもん!」

千鶴「そうだよね(裕美ドールを背後に隠そうとしている)」

泰葉「私たちも楽しみにしてたよ(裕美ドールを背後に隠そうとしている)」

裕美「あっ、そのドールもう届いたんだね」

ほたる「え」

千鶴「えっ」

22: 23/11/28(火) 08:02:25 ID:vtKO
泰葉「じゃあこれの送り主は裕美ちゃん!?」

裕美「そうだけど」

ほたる「一体どうして」

裕美「あのね、亡失のローズルージュの撮影のときにね、私二役やってたでしょ」

千鶴「お嬢様役と人形役ね」

泰葉「ああ」

23: 23/11/28(火) 08:08:19 ID:vtKO
裕美「それで一緒に撮影する時のために、お人形の私の方は職人さんに頼んでドールを作ったの。これがそれ」

ほたる「一回切りの撮影に使うものにしては出来が良すぎないですか」

千鶴「絶対ものすごくお高いよね」

裕美「うん。だからこの人形を発注したDさんは予算の使い込み? とかでプロダクションやめさせられちゃったって」

泰葉「oh……」

千鶴「さもありなん……」

24: 23/11/28(火) 08:14:28 ID:vtKO
裕美「で、この子がプロダンションの倉庫に押し込められてるのを知って、なんだか可哀想になっちゃって」

千鶴「人形には魂が宿るなんて言うし、このぐらい人間っぽいと確かにそれは可哀想ね」

ほたる「裕美ちゃん、優しいですから……」

裕美「それでちひろさんにお願いして買い取らせてもらったの。貯金はたいちゃったエヘヘ」

25: 23/11/28(火) 08:21:58 ID:vtKO
泰葉「それは解ったけどどうして私のところに送ろうと思ったの」

裕美「泰葉ちゃんドールハウスやってるし興味あるかなあって思って」

泰葉「千鶴ちゃんと同じタイプの誤解してるう」

裕美「……もしかして、興味なかった?」

泰葉「無いわけじゃないけど送る前に一度連絡してほしかった」

裕美「ごめんなさい」

ほたる「……でも、ちひろさんらしくないですね」

千鶴「えっ?」

26: 23/11/28(火) 08:34:29 ID:vtKO
ほたる「泰葉ちゃんたちの話だと、玄関にこのまま置いてあったんでしょう?」

泰葉「そうだけど」

ほたる「こんな高価そうな人形、梱包もせずに送りつけるなんて、ちひろさんなら絶対しないんじゃないでしょうか」

千鶴「言われてみれば」

泰葉「そういや鍵かけてたのになんで玄関の中にあったんだろう」

裕美「(ジリリリリ)あ、電話だ。もしもし……え?」

ほたる「どうしたんですか」

裕美「うん。ちひろさんがね」

千鶴「ちひろさんが?」

27: 23/11/28(火) 08:37:23 ID:vtKO
裕美「送ってくれって言われた人形が、プロダクションの倉庫から行方不明になったって。今プロダクション大騒ぎだって」

泰葉「……え」

(ギ……ギギ……)

千鶴「……なんか音がしない?」

泰葉「後ろの方から、するね」

28: 23/11/28(火) 08:37:41 ID:vtKO
(ギ……ギギ……)

ほたる「なんの音、でしょうか」

千鶴「ここには私たちしかいないし」

泰葉「私たちの背後には……」

裕美「え、え」

泰葉(私たちは息を飲んで、ゆっくりと、背後を振り返った)

泰葉(私たち以外には誰もいないはずのマンションの中。隠そうとした人形しかないはずの背後。振り返ったそこには、そこには、ぎこちなく動く……)

29: 23/11/28(火) 08:38:09 ID:vtKO





30: 23/11/28(火) 08:38:37 ID:vtKO
三つ指ついた裕美ちゃん人形『裕美さんに助けていただいたドールです。せっかく産まれたのに雑に倉庫に突っ込まれてメッチャ心細かったので是非助けていただいた恩返しをしたいなって』

泰葉「こう来たかあ」

千鶴「どうすればいいのかなこれ」

ほたる「裕美ちゃんの優しさの賜物ですね」

裕美「とりあえず今夜は5人一緒にお泊まりだね!」

(おしまい)

引用: 【モバマス】松尾千鶴「泰葉ちゃんが等身大裕美ちゃんドールを抱きしめてる」