1: ◆jBL8Qe1.Ns 2015/03/22(日) 20:20:50.00 ID:PY1fshm80

11: 2015/03/29(日) 22:12:00.90 ID:aW0bUEmd0

【阿知賀宿舎にて】


灼「……休憩」

玄「もうヘトヘトだよ……」

憧「これ、ハルエと晩成OGのプロ二人の卓よりキツイよ……七人だからローテは楽なのに半荘一回一回がキツイ……」

宥「ちょうど清澄が試合してるね。見る?」

衣「どうせ有象無象が蹂躙されているだけだろうが、一応見ておくか」

佳織「もう終わってたりして」

穏乃「いくらなんでもそれは……相手は全国でもトップクラスの強豪三校ですよ?」

玄「小鍛治プロの解説の方でいい?」

灼「どっちでも。見れればい……」

衣「ヒサが出ているな、前半は既に終わっているのか? 中堅戦の後半にしては清澄の点が少ない気がするが、ヒサが手を抜いたか、マコが不調だったか……」

憧「二位は千里山か。流石、関西最強って感じだね」

玄「三位は姫松で、四位の新道寺は4万点台か……苦しそうだね」

灼「新道寺の切り札は副将と大将のダブルエースってハルちゃんが……」

憧「ああ、ラスト二人だけで10万差は余裕でまくるとか言ってたねー。てことは、清澄以外はまだどうなるかわかんない感じかな?」

佳織「試合は、竹井さんが南場の親で二本場を積んだところですね」

宥「どんな展開だったんだろう?」

憧「それは、準決勝を抜けたらゆっくり見よう。今は準決勝を通過しないと」

衣「まあそう急くな。もう南二局だ、この半荘が終わるまではヒサの打ち方を見ていてもよかろう」

12: 2015/03/29(日) 22:14:14.20 ID:aW0bUEmd0

洋榎(……なんで、こうなった?)

久「~♪」

洋榎(おかしくなったのは、そうや、東二局……東一局もこいつは様子見をしていて、うちは、こいつが動かんなら更に稼げると判断した)

洋榎(都合のいいことに三巡目で 234赤5678p345s567m のタンヤオ赤1を聴牌、うちは迷わずリーチをかけた)

洋榎(ところが、山に居るはずの258の三面単騎がいつまでたってもツモれん。そうこうしてるうちに、竹井から追っかけリーチが入った、そして……)


*** 

洋榎「くそっ……追っかけかい」

打:1p

久「ロン」

洋榎「……あー、くそっ、追っかけに一発で振り込むとか最悪や」

久「……48000」

洋榎「……は?」


久手牌

11222赤55588899p ロン:1p


洋榎「リーチ一発、清一色、対対、三暗刻、ドラ1……しかも、それ……」

久「あ、やっぱりこれだった? 山に9枚居たわよ」

洋榎「……9枚全部、ツモったってことか?」

久「ええ、オリるつもりだったんだけど、この筋ばっかり来るんだもの。そういうことだと思ったわ」

***

13: 2015/03/29(日) 22:17:25.10 ID:aW0bUEmd0

『というわけで、東二局で流れが変わりましたね。あの和了りを高校生の試合で見られるとは思いませんでした』

『おおっ! べた褒め!?』

『プロでも、聴牌から三面子捨ててまであの聴牌に辿りつける人は滅多にいません。人と違うものが……和了りへの道が見えているとしか思えません』

『最初に聴牌した時点で追っかけリーチをしていたら次巡の2筒を切って逆に直撃! むしろ、普通ならそれ以外の展開はあり得ないところ! まさか本当に未来が見えているのか、竹井久ああああ!?』

『あの直撃で、姫松が一気に前半の稼ぎを吐き出して三位に転落しました。加えて、盤石なトップと苦しい点数の最下位……清澄の優位が確定しましたね』

『あ、白糸台の時になんか聞いた気がする、なんだっけ?』

『また説明するの!? 昨日見てなかった人も居るから説明するけどさ……』



憧「うわ……リーチかけた時点で山に9枚残ってた和了り牌を丸ごとかっさらったっていうの?」

灼「これはキツ……」

玄「これが、長野県の個人戦二位……」

衣「ヒサめ、こんな打ち方も出来るのか……いや、むしろこちらが本来の……なるほど」

宥「その後、また様子見みたいな打ち方に戻して、親を迎えてからは小さな和了りを続けてこの二本場なんだね」

穏乃「なにが狙いなんでしょう?」

佳織「あ……」

衣「どうした?」

佳織「あ、いえ、今のお話とは全然関係ないんですけど……新道寺の人、今の南を鳴かないのかなって」

玄「新道寺の江崎はあんまり鳴かないって、赤土先生が……」

憧「自分が鳴かないだけじゃなく、鳴きが発生すること自体が苦手、だからあたしとは相性がいいとも言ってたね」

衣「そうか、それは不自由なことだな」

佳織「翻牌だし、私なら鳴くけど……」

憧「あたしも当然鳴く」

玄「鳴くということは一度他人の手牌に入ったということ、つまり、その牌はドラじゃない。私の場合、鳴きはNG」

衣「衣なら海底で和了れるように打つぞ」

灼「天江さんの意見は全く参考にならな……黙っててほし……」

衣「ひどい……」グスン

15: 2015/03/29(日) 22:19:06.45 ID:aW0bUEmd0

仁美(……さっきから、配牌がマシになってきちゅーように思う。ツモも悪くなか)

洋榎(ダメや、折れるな、うちが勝たんで誰が勝つんや? 絹は浩子とならいい勝負やけど、あと二人が白水と原村、恭子の相手は清水谷と鶴田と宮永や。流石に分が悪い……
  せめてここで千里山より上で終わらんと二位にもなれん……なのに、手が進まん)

セーラ(前半で差がついてもうたからなあ……ツキが離れとるみたいで、なかなかいいとこツモれんわ)

仁美(大阪の二人が失速して、あたしにも目が出て来たってことやね。さて、行くべきか否か)

久「ツモ。1200オール」


444p2346788s345m ツモ:8s


仁美(悩んでる間にサクッと和了らるっちゃね。圧倒的な速度の早上がり、こいがこいつの本領……)

久「咲と和に出番を残すつもりだったけど……」

洋榎「」ピク

セーラ「……」

仁美「」ゾクッ


久「あんまり腑抜けた打ち方してると、ここで終わらせるわよ?」


洋榎「やってみい、ただじゃ氏なんで」

セーラ「返り討ちにしたるわ」

仁美(ブラフやなか、本気たい。こいつはそれが出来る力がある……何とか哩に繋がんと)

久「じゃ、三本場ね」

16: 2015/03/29(日) 22:20:28.69 ID:aW0bUEmd0

咲「」ゴゴゴ

和「部長、何本積む気ですか?」ゴゴゴ

照「東二局の役満だけでも危ないのに、ここで大連荘なんかしたら竹井さんがインタビューを受けることは確実……止めないと」ゴゴゴ

優希「てゆうか、あの役満だけでも確定だと思うじぇ」

まこ「こいつらは……本当に応援する気が欠片もないのう」

京太郎「味方が和了って殺気出してる控室は、全国でここだけだと思いますよ」

優希「でも、部長はなんで今更本気出してるんだじぇ?」

照「……確かに、おかしい」ピク

咲「む、言われてみれば」

和「あの人の気まぐれなんかいつものことですが……確かに妙ですね」

まこ「お手柄じゃ優希、よくこいつらを止めた」

咲「うーん……何だろう? 勝ちにこだわるにしても東場の役満直撃で十分だよね」

和「後の試合のために、切り札である悪待ちの印象を薄めて早上がりを印象付けている……というのも不自然ですね」

照「一回戦でも長野でも散々やったから、今更それはない」

まこ「おんや?」

京太郎「どうしました?」

まこ「いや、珍しいことが起きたもんでな」

優希「珍しいこと?」

まこ「ほれ」スッ

京太郎「あっ、これは……確かに」

優希「関係なさそうではあるけど、確かに珍しいじぇ」

17: 2015/03/29(日) 22:22:59.92 ID:aW0bUEmd0

仁美「ポン」

久「……」

洋榎「そういや、お前もおったな。ただ、慣れんことはするもんやないで?」

セーラ「どんな風の吹き回しや? 新道寺の」

仁美「うちはシードやけん、二回戦で消える気はなか。それだけね」

洋榎「お前、鳴いたことほとんどないやろ? そんな悪あがきが通じる相手か?」

セーラ「せやせや、慣れんことせんで俺らに任しとけ」

仁美「……指図は受けん」チュー

久「……リーチ」


久手牌

123p456s222m北北西西


セーラ(……ここでリーチか。知らんわ、こっちは跳満張っとるんや!! 俺が止めんで誰が止めんねん!?)

セーラ「んじゃ、俺もリーチ」


セーラ手牌

1234赤566789m西西中 ツモ:7m

打:中


洋榎(竹井のリーチか……ま、鳴きが弱点とか言われとる奴が悪あがきで鳴いたぐらいでどうにかなる相手とちゃうやろ。やっぱ、うちが何とかせなアカン)

洋榎「ほんなら、うちもリーチや」

洋榎手牌

34赤5s3456m34赤5p北北中 ツモ:7m

打:中

18: 2015/03/29(日) 22:25:58.79 ID:aW0bUEmd0

竜華「オリたらそのうち振り込んどったな」

怜「せやな。洋榎さんもセーラもオリる気ないみたいで助かったわ」

泉「二人で竹井の和了り牌を握りつぶしてますね」

浩子「せやな。二人がオリん限り、竹井の手は氏んどる。二人がリーチかけたんやから、もう竹井の上がり目はない」

雅恵「……妙やな、あんなリーチをかける奴には思えんけど」

泉「オリると思ったんやないですか? 見込み違いがあったとか」

浩子「江崎が鳴いた直後です。押さえつけてオリさせるためのリーチってことはあり得ますけど……違和感がありますね」

竜華「字牌どっちか落としてたら、今のでツモ和了りやな。リーチかけてから一面子ミスっとる。さっきまでやったらああいうのは和了ってる気がする」

怜「……ま、私はなんとなく理由が分かるけどな」

竜華「分かるん?」

怜「ここに居る人間で理由が分かるのは、私だけやと思うで。なんだかんだで、みんな最初から『持ってる』側の人間やから」

竜華「なんやそれ?」

19: 2015/03/29(日) 22:26:25.37 ID:aW0bUEmd0

哩「どんな奴でもミスはあるってことやね。あの二人の性格を読み間違えよった」

姫子「江崎先輩が鳴きを入れてまで次につなごうとしとっと、あれば見てもまだヒヨるような奴には名門のエースは務まらん」

美子「力の差ば見せつけてビビらすつもりが裏目に出とーと! 大阪の二人の待ちも薄か、チャンスばい仁美!」

煌「……ミス、ですかね? オリないことも、計算済みのように思えますが」

哩「あいつらがオリんかったらあの手は和了りようがなかろーが」

煌「そう……ですね。いえ、おそらく私の気のせいです、失礼しました」

20: 2015/03/29(日) 22:27:01.08 ID:aW0bUEmd0

恭子「竹井は和了れん、江口と主将は和了り牌が残り一枚の8萬だけの実質地獄待ち。和了るとしたらおそらく江崎やな」

由子「なのよー」

漫「しかし、竹井はなんであのリーチかけたんでしょうね? 江崎さんが意地を見せたあのタイミングでリーチかけたら、主将と江口さんならますます押しそうなもんですけど」

絹恵「江崎が動いたのを無駄やって言うようなリーチやからな。あの二人なら『連荘止めるなら自分が行かなアカン』って思って前に出ますわ」

恭子「……だからやろ」

由子「のよー?」

恭子「いや、なんでもない」

21: 2015/03/29(日) 22:29:29.53 ID:aW0bUEmd0

仁美「ツモ、700・1000」

セーラ「あー!? 俺の跳満がそんな安手でー!」

洋榎「うっさいわ! 跳満ごときで文句言うなや! うちなんか跳満蹴られてんねんで!?」

セーラ「お前も跳満やんか!?」

久「」クスクス

洋榎「先制リーチ蹴られた奴が笑うなや! 次や次! セーラに親かぶり食らわしたる!」

セーラ「親番一回あれば十分や! 俺がここからお前ら全員飛ばしたるわ!」

洋榎「さっさと蹴られてうちにラス親寄越せや」

セーラ「俺の連荘でお前が飛んだら次の半荘の東パツで親やらせたるわ」

洋榎(……江崎を押さえつけるようなタイミングの竹井のリーチやったけど、結果は江崎が和了った)

セーラ(てことは、この化けもんにも隙はあるってことや)

久(まったく、急に元気になっちゃって……ま、後は咲と和がなんとかするでしょ)

洋榎「ちなみに、何で待ってたん?」

久「出和了りの出来ないリーチよ。ビビった?」

セーラ「おまえ、あのタイミングでフリテンリーチとかいい性格しとんなあ……」

洋榎「そんなこけおどしにビビるうちと思ったか!? 見込み違いやで」

久「……後で録画でも見ておいて。もう一度言うけど、『出和了りの出来ないリーチ』だから」

22: 2015/03/29(日) 22:29:59.32 ID:aW0bUEmd0

中堅戦終了


新道寺  35700(- 7100)
清澄  183000(+60200)
姫松   77000(-49600)
千里山 104300(- 3500)

23: 2015/03/29(日) 22:30:31.70 ID:aW0bUEmd0

セーラ「帰ったでー」

怜「お疲れ―」

竜華「お疲れさん」

泉「あ、先輩、お疲れ様です」

セーラ「一応、二位に浮上したでー」

怜「洋榎さんが役満振り込んですっ転んだだけやけどな」

セーラ「振り込む奴が悪いんや! ところで、南二局の江崎が和了った局の牌譜あるか?」

浩子「ありますけど、どうしたんですか?」

セーラ「竹井のやつが後で見とけとか言うとったから、今見ようかと思ってな。後回しとかすると忘れそうやし」

怜「せやな、セーラは見といた方がええかもな」

セーラ「フリテンリーチかけたらしいな」

竜華「……は?」

セーラ「え? なんやその反応? 竹井が言うとったで、『出和了り出来んリーチ』やって」

怜「うわ……マジか」

泉「見込み違いとかじゃなく、先輩らの手牌も、そこから先輩らがどう打つかも読み切って、あのリーチをかけたってことですか……」

雅恵「そうなると、何のためにやったのかが気になるな」

浩子「まあ、手加減した理由は大将に回すためでしょうけど……あのリーチは不可解ですわ」

怜「セーラと洋榎さんにしっかり打ってほしかったんやろ」

竜華「……怜?」

怜「私は、今でもセーラと竜華に勝つのは抵抗がある。竜華とセーラには私に勝って欲しいって今でも思ってる。あの人も、多分同じなんやろ」

セーラ「ああ、そういうことか」

怜「セーラは分かってくれるか」

セーラ「怜が三軍だった頃にその手の愚痴は散々聞かされたからな」

怜「愚痴やないって」

24: 2015/03/29(日) 22:30:58.98 ID:aW0bUEmd0

洋榎「いや、強いんやから勝ったらええやん?」

恭子「まあ、主将が理解できるとは思ってませんし、主将は理解できないままでいいです。漫ちゃん、分かるか?」

漫「分かりません」

絹恵「……うち、分かりますわ。お姉ちゃんに勝ちそうになると嬉しいような歯がゆいような、微妙な気分になります」

由子「私はそういうのはないのよー」

恭子「まあ、由子はそうやろな」

郁乃「うちはわかるで~、三対三やな~」

恭子「まあ、理解できないならそれでええ。で、説明を続けますけど、竹井は主将か江口、あるいは両方に憧れや尊敬の念を抱いていたと考えられます」

洋榎「ま、それはいい心がけやな」

絹恵「で、きっちり打つように発破かけたってことですか?」

恭子「私から見ても、あの役満から二人とも完全に腰が引けてたからな。そらファンなら尻も叩くわ」

漫「そんなもんですかね?」

恭子「絹ちゃんは分かるやろ。主将が腑抜けた打牌して絹ちゃんに飛ばされそうになってたらどうする?」

絹恵「……ちゃんと打って、うちなんかに負けんでほしいって思いますわ。どう打つかは分かりませんけど」

25: 2015/03/29(日) 22:31:45.89 ID:aW0bUEmd0

久「鶴賀では妹尾さんが一番私と気が合うと思うのよね」

照「どう見ても加治木さんと一番仲がいいように見えるけど。というか話を逸らさないで」

咲「なんであんなリーチかけたんですか? 別に大勢に影響はないですけど」

和「いえ、待ちも四枚残ってましたし、そこまで妙なリーチでは……」

咲・照「待ちが相手の手の中にあることぐらい分かってたはず」

和「見えてない牌の位置が分かることを前提にしないでください。玄さんのドラならまだしも」


京太郎「久しぶりに和がまともだ……」

優希「待て京太郎、まだ安心するのは早い」


咲「いや、部長は大体見えるから」

和「む……まあ、咲さんがいうなら信じましょうか」

照「牌の在処が見えてなきゃ、三面張を捨てて単騎にしてリーチ一発ツモなんかできない」

和「たしかに照さんの言うとおりです……では今回は何故?」


優希「ほらな」

京太郎「いやまあ、実際部長は見えてると思うけど」

久「見えてないわよ、あの二人と一緒にしないで。勘よ勘、勘が当たりやすいだけ」

まこ「当たりやすいって言葉で済ませられる確率じゃないがの」

26: 2015/03/29(日) 22:32:22.07 ID:aW0bUEmd0

咲「説明を要求します」

久「いや、大した理由じゃないわよ? 次に当たる時にあんまり縮こまられると逆に打ちにくいから空振りして見せただけ」

照「む……それっぽい理由」

久「特に、あのタイミングで私が自信満々にリーチして、それを掻い潜ったとなれば?」

咲「部長のリーチだってブラフの可能性があると思わせることが出来る。十分なリードを生かして、次の準決勝への布石を打ったわけですね?」

久「そういうこと。打ち筋は十分見せてもらったし、次に打つ時には駒として動かすことも出来るでしょ。二回戦での余分な点棒より準決以降の方が大事」

和「私たちに回すために手を抜いていても、次への種はしっかり蒔いていたわけですか」

久「真似はしなくていいわよ。あなたは普通に打って普通に勝ちなさい。新道寺が飛ぶことは、多分ないから」

和「北部九州の王、新道寺女子。そこで三年間エースを務める、全国屈指のエース……でしたか?」

まこ「白水哩。今の高校生で麻雀を打つ人間なら、誰でも名前ぐらいはしっとる強豪じゃ」

久「去年も、臨海の辻垣内智葉なんかと並んで個人戦の優勝候補に上げられてた怪物よ。実際には荒川さんが全部持って行ったけど」

和「全力で打っても咲さんの出番が無くなることはないわけですね」

久「そういうこと。思う存分、インターミドルチャンプの力を見せつけて来なさい」

和「はいっ!」

27: 2015/03/29(日) 22:32:51.61 ID:aW0bUEmd0

久「それにしても……照の勧誘に必氏で気づかなかったけど、私って強かったのね」

照「プロの中でも上位の藤田プロとまともに渡り合える人がなにを今更」

久「ちょっと思っただけよ」

咲「お姉ちゃんを基準にしちゃダメですよ。お姉ちゃんに勝てる人とか世界中探してもいませんから」

照「またそうやって過大評価を……」

久「過大評価というのは事実より過大に見積もった場合に使う言葉よ?」

咲「そうだよお姉ちゃん、私は事実しか言ってない」

照「ダメだこいつら……やはり最大の敵は身内に居る」

28: 2015/03/29(日) 22:34:16.00 ID:aW0bUEmd0

【白糸台高校】


監督「……照を表舞台に引っ張り出しただけのことはあるわね」

淡「まあ、ケイの次ぐらいには手ごわそうかなー」

憩「小蒔ちゃんとどっちが厄介かわからんなー。安定して強い分だけ、こっちの方が厄介かもしれませんわ」

菫「とは言ってもお前らとは当らんがな、どうだ尭深?」

尭深「そうですね……連荘を伸ばしてくれるならオーラスは確実に役満を仕込めそうですけど、それで凌ぎ切れるかどうか……」

菫「そうか……さて、そうなると厳しいな。戦力的にはうちより上かもしれない」

憩「いやいや菫さん、多分やけど、うちとこの人は当たりますよーぅ?」

誠子「は? だって憩は先鋒……ああ、そうか、個人戦か」

淡「そう! そして、最大の敵は味方の中に居るんだよー!」

憩「ん? 最大の敵が見当たらんのやけど、味方の中にそんな人おったかなー?」

淡「そうやって余裕かましてられるのも今のうちだけだから! 絶対ケイに勝って優勝してやるんだから!」

憩「頑張ってなー」ナデナデ

淡「なでるなー!!」ムキー

29: 2015/03/29(日) 22:35:50.06 ID:aW0bUEmd0

菫「なんにしても、監督の言っていた通り、清澄が優勝の最大の障害になりそうだ」

監督「最大の敵は身内ってわけね……」

誠子(このひと、宮永姉妹が身内なの隠してるんじゃなかったっけ?)ヒソヒソ

尭深(誠子ちゃん、監督の天然にいちいち突っ込んでたら身が持たないよ?)ヒソヒソ

菫「ここまででも十分脅威だが、インターミドルチャンプの原村と天江に勝った宮永咲も非常に危険だ、しっかりと見極めるぞ」

憩「永水対策と阿知賀の対策も本腰入れんと不味そうですけどね」

誠子「と言っても、永水は嫌というほど見たし、阿知賀は憩がどうにかするだろ」

憩「誠子ちゃんはすぐにそうやってうちに押し付けるんやから」

尭深「でも、憩ちゃんは実際なんとかしてくれるから」

菫「正面からぶつかればこの五人で押し負けるということもまずないだろう、やはり問題は清澄になるな」

監督「その通りよ。阿知賀についてはデータがないから今の時点では対策のしようもないし、とにかく清澄の情報を一つも見逃さないこと」

57: 2015/04/05(日) 19:00:36.39 ID:ixNyrYQ30

洋榎「すまんな、絹。キツいやろうけど……」

絹恵「大丈夫やって、うちはお姉ちゃんの妹やで? 蹴散らして来たるわ」

恭子「頼むでー、うちの相手は化けもんしかおらんから、絹ちゃんが何とかしてくれんとお手上げや」

漫「またそんなことを……末原先輩ならどうにかなりますって」

郁乃「頑張ってな~」

由子「この副将戦は癖のある打ち方をする人が居ないから、純粋なデジタルでの勝負なのよー」

58: 2015/04/05(日) 19:01:18.93 ID:ixNyrYQ30

浩子「ま、確率の偏りのない純粋な平場ならうちの独壇場です。一切のミスのない完全なデジタルというものをお見せしましょう」

怜「完璧な氏亡フラグや、ええぞフナQ」

竜華「いや、それアカンやつやん」

セーラ「いやー、ここでフナQをぶつけんのはもったいないなー」

泉「癖のある打ち方のやつを徹底的に研究してハメるのが船久保先輩の十八番ですからね」

雅恵「それしか出来ん能無しやったらレギュラーにはしとらん。ノータイムというわけにはいかんが、浩子はノーミスの完全なデジタルぐらいは習得しとる」

怜「つまり、時間が使えるなら理論上は原村と五分に打てるわけやな」

泉「完全なデジタルをベースに、相手の打牌の研究も完璧、わずかな隙も見逃しません。千里山のレギュラーはそこらの県代表エースに勝ります」

セーラ「泉が言うと説得力ないなー」

泉「言わんで下さいよ、これでも気にしとるんですから」

竜華「ま、最悪うちが何とかするわ。気楽にな」

浩子「ええ、頼りにしてます。では」

バタン

怜「点差もあるし、緊張もしとらんようやな」

雅恵「ところで、お前はいつまで清水谷のモモに頭乗せとるんや?」

怜「大将戦が始まるまでや」キッパリ

セーラ「言い切りおった」

怜「大将戦の最中も、休憩中は膝枕をしてもらうつもりや」キリッ

セーラ「ダメやこいつ、早く何とかせんと……」

竜華「あはは、怜は面白いなー」

59: 2015/04/05(日) 19:01:46.86 ID:ixNyrYQ30

起家 和「よろしくお願いします」

南家 哩「よろしくお願いします」

西家 浩子「よろしくお願いします」

北家 絹恵「よろしくお願いします」

60: 2015/04/05(日) 19:03:50.95 ID:ixNyrYQ30

照「さて、どうなるかな?」

咲「原村さんが負けるはずないとは思うんだけど……」

久「白水哩は、ただ運が良いだけの相手なんかいくらでも薙ぎ倒して来たわ。相手は個人戦の優勝候補に名が挙げられる選手よ、こればっかりはやってみないとね」

まこ「純粋な運比べでも、高校トップクラスってことはインハイチャンプクラスってことじゃから、インターミドルチャンプの和と比べてもそう大きな差はないじゃろうしな」

久「白水哩の打ち方は、特に癖のないデジタル打ち。団体戦に限れば決め打ちの傾向があるけどね」

京太郎「特殊な能力とかはないんですか?」

優希「必ず役満を和了るとか、特定の牌を独占するとか、風牌が集まるとか、優勝候補ならそれぐらいありそうなもんだじぇ」

久「白水哩の牌譜を見る限りではなにもないわ。少なくとも本人に有利になるものはね」

優希「それでどうやって優勝候補になるんだじょ?」

咲「どうやってと言われても、それは優希ちゃんが一番よく知ってるんじゃないかな?」

照「そうだね、まあ、あのレベルだと能力と言えなくもないけど」

優希「じょ?」

京太郎「えっと、まさか?」

久「そのまさか。驚くようなことじゃないわよね、私たちの仲間にその実例が居るわけだし」

61: 2015/04/05(日) 19:04:21.57 ID:ixNyrYQ30

透華「さて、注目の一戦ですわね」

智紀「……透華は原村和に注目しているだけでは?」

純「うっげ、あの卓には入りたくねえな。流れを変えられる気がしねえ」

一「純くんが本気で嫌そうな顔してる」

智紀「純が言うならそうなのかもしれないけど、私たちには分からない」

ゆみ「打ち方は全員が非常に精度の高いデジタル。そんなオカルト話とは無縁に思える卓だが……」

美穂子「いえ、おそらく、この大会でもっとも『オカルト』と呼ぶのに相応しい卓があそこです」

智美「そりゃまたなんでだ?」

美穂子「他のオカルトじみた打ち手は、少なくともどのような偏り方をするのか分析できます。これはもはや能力やシステムと言って差し支えない」

睦月「うむ」

純「けど、あそこにあるのは、『流れ』だ。和了りを呼ぶ不思議な力。運の偏り。勝利の女神が誰の方を向くか迷って風見鶏みたいにクルクル回ってやがる」

ゆみ「……なるほどな、それは確かにオカルトだ。完全デジタルの場で起こる異常な勝敗の偏り、それこそが真のオカルトというわけか」

星夏「皮肉なものですね……デジタルじゃなければシステム化された能力で、デジタルだとオカルトになってしまうわけですか」

睦月「うむ」

桃子「てゆうか、その理屈で行くとノッポさんが一番のオカルトってことっすよね?」

純「いや、お前にだけは言われたくねえよ、あと、お前の先輩にとんでもねえのが居るだろうが」

62: 2015/04/05(日) 19:05:08.54 ID:ixNyrYQ30

和(……思うようにツモが伸びません。確率的には特に異常なことではありませんが)

哩(龍門渕との試合を見る限り、こいつも相当底の知れん打ち手ばい。油断は出来んね)

絹恵(手の進みも河の具合も普通の場やな、これは行けるかもしれん)

浩子(さて、原村和と白水哩……強運を振りかざす高レベルのデジタル、デジタルゆえに突っつくような癖もほとんどない。厄介やな)

和(起家というのも調子が狂いますね。普段は優希が起家で東一局に大暴れしようとするので、それを抑えてからというのが馴染んだリズムですし)

哩(張った……が、この流れじゃ無茶は出来ん、ダマで様子見やね)

浩子(アカンな、10巡目でまだ二向聴。そろそろ店じまいか)

絹恵(来た! 先制リーチが出来る! 二位をまくらんといかんのやから、ここは行くしかない!)

絹恵「リーチや!」


222赤56s34567m334p ツモ:8m

打:4p


浩子(絹ちゃんが動いたか。しかし、この面子で10巡目のリーチが先制やと思ったら大間違いやで)


哩「ロン、2600」


4488p234789m東東東 ロン:4p ドラ:8m


絹恵(うわっと! やってもうた……手変わりないならリーチせえや)

哩(様子見のつもりやったからね。出たなら和了らせてもらうが)

浩子(三位の姫松との差を広げながら場を進められるなら望むところや、とはいえ、新道寺に和了らせるのは別の問題があるんやけどな)

63: 2015/04/05(日) 19:05:34.61 ID:ixNyrYQ30

咲「……せーの」


照・久・咲「「「縛ってない」」」


咲「だよね」

照「そもそも、初見の面子で東一局から縛るのはどうかと思う」

久「ドラ面子も後から偶然ツモった面子だし、その割に東以外の役をつけようとした形跡もないしね。1翻で縛ったということもないでしょう」


まこ「三人で答え合わせして、コンボが成立しとるかどうか検証しとるんじゃな」

京太郎「大将戦で生きて来ますからね。成立してたら100%和了るんでしたっけ?」

優希「咲ちゃんなら止められそうだけど、万が一もあるし、どこが危険な局か把握するのは大事だじぇ」


咲「失敗したことが確認できた場合に鶴田さんをほぼノーマークにしていいっていうメリットもあるよ」

照「ただ和了らなかっただけだと、鶴田さんが自力で打つことになる。牌譜を見る限りでは彼女自身も地力が高いから、本来ならそれも警戒しないといけない」

久「けど、コンボに失敗した場合はほぼ絶対に和了れないから話が違う。だから、コンボを仕掛けて来てるかどうかの把握は大事よ」

咲「で、縛ってないから大将戦前半の東一局は鶴田さんが自力で打つんだね」

照「うん、そのはず」

64: 2015/04/05(日) 19:06:01.70 ID:ixNyrYQ30

怜「これ、縛りかけてたら4翻確定かー」

セーラ「どうなんやろ、縛ってたんかな?」

雅恵「……ここは多分しばっとらんな、決め打ちした打ち方には見えん」

竜華「白水が和了らなかった時でも、コンボに失敗してへん限り、鶴田自身が普通に強い高火力型やからな」

泉「縛りかけとるかどうかわからんのが厄介ですね」

竜華「コンボが成立してないなら自分が和了るチャンスやから、白水が和了った局は全部捨てるってわけにもいかん。何とか見極めんとな」

65: 2015/04/05(日) 19:06:30.25 ID:ixNyrYQ30

恭子「代行、どう見ます?」

郁乃「うちは~、今のはしばっとらんと思うんやけど~、末原ちゃんは~?」

恭子「同意します。東一局は真っ向勝負ですわ」

洋榎「コンボが成立しとる局はホンマにどうにもならんのか?」

漫「末原先輩、うちが爆発しとっても隙をついて和了ったりしてますやん? そんな感じで何とかならんのですか?」

由子「データを見る限り、コンボが成立して鶴田に好配牌が来た局の和了率は100%らしいから、流石の恭子でも多分無理なのよー」

恭子「次鋒がエースというチームは未だにお目にかかったことがないんで、全国区の大エースが本気でコンボを破りに行くなら分かりませんけどね」

洋榎「つまり、うちなら何とかなるかもしれんってことか?」

恭子「とはいえ、今年の福岡予選は大将で出ていて、かなり打てる人間相手にやはり100%ですし、去年も白糸台の弘世が破れてないんで望み薄です」

郁乃「知り合いのプロが新道寺の練習相手で行ったらしいんやけど~、あのコンボ破るのは一人じゃ厳しいって~」

恭子「代行の知り合いって言うと、あの辺ですか。それで厳しいなら私には不可能と考えてええな」

66: 2015/04/05(日) 19:07:00.87 ID:ixNyrYQ30
 
東三局 ドラ:北


浩子(親やし、ツモでもダメージがでかい。ここは和了りに行っとくか)

絹恵(浩子、調子良さげやな……このまま進むと不味いかもしれん)

哩(和了らるっ気のせん配牌やったけど、少しは形になってきよった)

和「リーチ」ヒュン


和手牌

122267s888999p北 ツモ:北

打:1s


哩(と、形になって来たぐらいでリーチ相手に勝負は出来んね。縛りもかけとらんし、ベタオリ)

浩子(親やから行く気満々なんやけど、これどうやろな?)


浩子手牌

5678s23456m6777p ツモ:6p


浩子(安手、好形、後手……で、一発目に無筋の5索か8索を切らなアカン、この点差を考えるとオリがベターやな)

打:2m

絹恵(うーん、一向聴やしなあ……浩子もオリたみたいやし、オリや)

67: 2015/04/05(日) 19:07:42.53 ID:ixNyrYQ30

『全員オリたー!! 原村和、そのリーチは圧倒的な存在感――!!!』

『いや、リーチに対してオリるのは普通だよ。中でも千里山の船久保選手はよく止めましたね』

『良く止めたって評価なんだ? 行ったら振り込んでたみたいな結果論じゃなく?』

『結果的に振り込むかどうかは別として、止まるべきところだと思います。親というのも、リードを守って局数を進めたいこの状況ならむしろ止まる理由の一つですね』

『親だからツモられても親かぶりするし、好形ならリードがあっても連荘目当てで押すんじゃないの?』

『二位まで通過出来る団体戦で、比較的安全圏の二位ですから。リーチをかけたのがトップの清澄ですし、3900の振り込みより満貫の親かぶりの方がダメージが小さくなります』

『あ、そうか。満貫ツモの親かぶりなら3位との差は2000しか縮まらないけど、3900の直撃喰らうとそれより差が詰まるんだ』

『そういうことです。結果の是非はともかく、個人的にはここはオリを正解としたいですね』

68: 2015/04/05(日) 19:08:09.20 ID:ixNyrYQ30

和「聴牌」

哩・浩子・絹恵「ノーテン」


絹恵(全員オリて一人聴牌の流局とか、地味な展開やな。お姉ちゃんたちとは大違いや)

浩子(リーチ三暗刻ドラドラ……あの時押してたら一発がついて跳満か。結果としてはオリて大正解やったな)

哩(あれぐらいの手では表情をピクリとも変えんか。流れたのを惜しむそぶりも見せん)

和(大将戦のことを考えれば、白水哩が和了らずに試合が進むだけでも価値があります。地味ですが、大きい成果と言えますね)

69: 2015/04/05(日) 19:08:34.59 ID:ixNyrYQ30

咲「そう言えば、あのコンボって流れ一本場はどういう扱いなんだろう?」

照「わからない。一応一本場としてカウントする?」

久「とりあえずさっきの縛ってたかどうか確認しましょ」

照「押してない時点で確認する必要すらない」

咲「同感」

久「ま、それもそうか」

70: 2015/04/05(日) 19:09:08.34 ID:ixNyrYQ30

怜「で、実際のところどうなんや? 一本場の扱い」

泉「いや、うちに聞かんで下さい。船久保せんぱーい!」

セーラ「呼んでも無駄や! 今モニターに映ってるのは誰やねん!?」

怜「フナQならあるいは……」

セーラ「なっ……対局中でも俺らの疑問に的確に答えてくれるとでも言うんか……?」ゴクリ

怜「いついかなる時でもその智謀で主君を支える、それが、参謀や」

竜華「フナQ……そこまでうちらのことを……」


?「おそらくやけど、流れ一本場も通常の一本場同様に扱われると思われます。となると0本場がなくなりますから、コンボを決めて差を詰めたい新道寺にとっては出来れば避けたい事態なんやないかと」


セーラ・怜・竜華・泉「!!!!???」


雅恵「……似てたか?」

怜「か、監督……ホンマにフナQかと思いましたわ」

セーラ「ついに分身まで出来るようになったかと……」

泉「び、びっくりしましたわホンマ……」

71: 2015/04/05(日) 19:09:41.79 ID:ixNyrYQ30

哩(流れ一本場……使えるかどうかわからん鍵やけど、この配牌で縛らんのはもったいない)

哩(リザベーションフォー!!!)


ガシンガシンガシンガシン!!


絹恵(親やから積極的に行きたい。とにかく、うちが多少は盛り返さんと厳しい)

浩子(なんか妙な話されとる気がするなあ……こんな時でもボケ倒しとるんか先輩らは。まさかおばちゃんまでのっかっとらんやろうな?)

和(一本場、流してしまえば危険は解消されるので、先ほどまでより白水哩の和了りの価値を低く見積もるべきですね)

哩(こいば4翻に仕上ぐ!!)


哩手牌

334赤5p24669m中中東北 ドラ:中

72: 2015/04/05(日) 19:10:59.71 ID:ixNyrYQ30

咲「ドラの翻牌が対子で、赤入りの面子が出来てる三向聴か……」

照「普通に進めたとして、リーチをかけるか、もし出るようなら中を鳴くだけで4翻確定。縛るならそれ以上」

久「これは縛るでしょうね。和了られたら倍満確定だけど……」

咲「うーん……原村さんの調子がイマイチだけど、止められるかなあ?」

久「あの子、完全なデジタルの卓だとあまり強運を発揮しないのよね」

優希「へ? そうなのか?」

咲「うん。まあ、優希ちゃんは東場がある限り常にオカルトだから自分で打って確認するのは不可能だけど、間違いないよ」

久「うちの部員じゃどうやっても変なのが混じるからわからなかったけど、合宿で確認できたわ」

照「だから個人戦ではデジタルの卓が多くて竹井さんに競り負けた。もちろん、デジタルでも弱くはないけど」

まこ「弱くないどころか、プロでもひれ伏すネト麻界最強の天使様じゃろ。おんしらを基準にするもんじゃない」

京太郎「てことは、和は対オカルトの方が強いってことですか?」

咲「正直、お姉ちゃんのプラマイゼロを崩したり龍門渕さんのアレに半荘で勝ったり、やりたい放題だよね。オカルトと対峙してる時は人間かどうかすら疑わしいよ」

照「原村さんはデジタルの神様の加護を受けてるんじゃないかと疑っている」

咲「ああ、なるほど、だからオカルトに対してめっぽう強くて、デジタル同士だと素の実力なんだね。神様の仕業なら納得だよ」

照「いや、冗談だからね? 本気にしないで咲」

京太郎「長野予選の一回戦は?」

咲「居たよ、オカルト。あの役満は偶然じゃないと思う」

73: 2015/04/05(日) 19:11:29.32 ID:ixNyrYQ30

哩「ツモ。リーチ面前ツモドラ3、2100・4100」

3334赤56p45666m中中 ツモ:3m


和(くっ……止められませんでしたか)

浩子(ドラ対子は最初から手の内にあった牌、あと、そこまで手出しをしっかり見てたわけでもないけど多分赤5筒も最初からあったはず。これはコンボ決まったやろな)

絹恵(あの手は多分コンボやろな……ドラ三枚でリーチかけたってことは4翻縛り、つまり鶴田が和了るのは倍満。 すみません、末原先輩……)

哩(しかし、こいは東四局一本場の鍵、使われん見込みが強い。まだまだ稼がんと二位通過もままならん)


和(この卓はほぼ完全なデジタルで、彼女の和了りの期待値のみ異常がある)

和(白水さんが常にコンボを仕掛けているわけでもないので、彼女が高目を狙っていることが判明するまでは完全なデジタル)

和(彼女がコンボを仕掛けている場合は彼女の和了りを阻止することの期待値が高まりますので、その場合は用意した計算式を採用)

和(……ここまでの観察では特にイレギュラーはなさそうです)

74: 2015/04/05(日) 19:11:55.60 ID:ixNyrYQ30

透華「……来ますわ」

純「なにがだよ?」

透華「この状況で来るものと言ったら真打! のどっちに決まっているでしょう!!」

ゆみ「……期待値の計算が終わったか」

一「計算出来るものなのかな? 卓上の特定の一人が和了ると後半で倍の翻数で和了るってものすごく計算しにくそうだけど」

美穂子「その人の和了りの期待値が上がりますけど、原村さんは基本的に自分の得点の期待値を計算しているはず……」

透華「問題ナッシング! 私に出来て原村和に出来ない道理がありませんわ!!」

一「え? 透華、計算したの!?」

ゆみ「正しいかどうか自信はないが、観戦するにあたって私も計算したぞ」

智紀「白水を先鋒に置いて次鋒に鶴田が出てくるオーダーを想定していた。哩姫の対策は昨年のうちに完成している」

智美「我々の身内はどいつもこいつもとんでもないなー」ワハハ

純「ところで、透華、さっきの発言なんだが……」

透華「わたくし、なにかおかしいことを言いまして?」

星夏「『私に出来て原村和に出来ないわけがない』ってやつですよね?」

透華「あ……」

美穂子「ふふ、随分と原村さんを買っているのね?」

一「」クスッ

透華「こ、言葉のあやですわー!! こら、はじめ! 笑うんじゃありません!!」

75: 2015/04/05(日) 19:12:23.79 ID:ixNyrYQ30

南1局 ドラ:4s


哩(原村の様子が変わった……こいは、あれかね? 長野予選で龍門渕を抑えた……)

和「」ポー

浩子(やっとこさおでましか、「のどっち」。あんたのデータはデジタルの勉強で腐るほど見たわ)

絹恵(なんやこいつ、顔赤らめおって……)

哩(さて、こん手、高く縛るのは危険か?)

24577s456p1367m西

哩(タンピンは自然につくはず、ドラ1もある、あとリーチで4翻は行かるが、安全策の様子見でリーチとドラ1のみの2翻で縛っとくか……?)

哩(リザベーションツー!!)

76: 2015/04/05(日) 19:12:51.96 ID:ixNyrYQ30

姫子「んっ!」ビクン

仁美「……あの手なら四翻は狙えっけど、姫子の反応が小さかね」

美子「哩、弱気になっとーと?」

煌「姫子、部長は何翻で縛ったのですか?」

姫子「ん……多分、2翻」

煌「ふむ、それでも姫子は5200以上になりますから十分ではありますが……」

仁美「哩にしてはひよtt……堅実な狙いやね」

77: 2015/04/05(日) 19:13:18.96 ID:ixNyrYQ30

哩「ツモ、タンヤオドラ3。2000・4000」


23444567s456p67m ツモ:8m ドラ:4s


和「……」

浩子(4翻……また倍満確定……)

絹恵(これは流石に……い、いや、これが清水谷を直撃すれば逆にチャンスや! 末原先輩なら上手く立ち回ってくれるはず……とはいえ、これ以上はマズい
  千里山を追いかけるつもりが、新道寺がうちと千里山をまとめて抜いてくって展開が現実的になってきおった)

78: 2015/04/05(日) 19:13:48.64 ID:ixNyrYQ30

咲「せーの」


咲・照「2翻」

久「3翻」


咲「あれ? 割れたね」

照「竹井さんの意見を聞こう」

久「いや、自信ないんだけどね。ドラ重ねるまでタンピン狙いっぽかったから、ドラとリーチだけじゃ届かない、つまり三翻狙いかなって思っただけ」

咲「二翻狙いでも三翻以上で和了るのは可能だから、それは普通に高目を狙っただけだと思います」

照「実際に高い翻数で和了れる場合に縛りが低いのは勿体ないけど、だからって高くできる手をわざわざ安手で終わらせるのはもっと勿体ない」

久「んー、それもそうね」

照「いずれにしても、コンボは成立してる」

咲「あの状態の原村さんでも止められないのか……これは予想外だよ」

照「というか、オカルトじみた人が居ないとあの状態でも普段とあんまり変わらない気がする」

79: 2015/04/05(日) 19:14:15.70 ID:ixNyrYQ30

怜「さて、そろそろ私が竜華の膝枕にこだわる理由を話しておこうかと思うんやけど」

セーラ「何度も聞かされたわ、適度な肉付きやろ?」

怜「そうそう、セーラや泉やフナQは細っこくて固い……ってちゃうわ! 真面目な理由があんねん!」

泉「長年愛用した膝枕ゆえの相性とかですか?」

怜「それも大きいな、もう竜華の膝枕が最高だと感じるようになってもうたから、竜華に近い感触を好むようになっとる」

竜華「なんやこそばゆいな……」

怜「って、ちゃうねん! 真面目な理由やって言うとるやろ!」

セーラ「うーんと、それ以外やと……」

怜「もうボケはええわ! ガチでマジな理由があんねん!」

竜華「ん? ガチでマジな理由……どっかで聞いたような?」

怜「あ、覚えててくれたんか?」

竜華「あ、いや、思い出したけど、あれ本気やったん?」

怜「マジやでー。大将戦をお楽しみになー」

竜華「いや、流石にナニソレなんやけど……」

怜「すぐに分かるでー」ゴロゴロ

80: 2015/04/05(日) 19:14:45.40 ID:ixNyrYQ30

『よそ見しすぎとちゃいますか、九州最強さん。ロンや、3900』


雅恵「ふむ、流石浩子やな」

泉「全国区のエース、しかも三年相手に普通に渡り合えるんですね」

セーラ「我らがフナQやからな」

怜「千里山のエースはうちやない、セーラでもない、真のエース……それは――」

セーラ「――船久保浩子、千里山の打牌すべてを陰で操る支配者や」

竜華「」ゾクッ

雅恵「アホいうな、お前ら全員エースや。私は、お前たちはどこの大会で誰に当てても全員トップで帰って来ると信じてる」

泉「か、監督……」ウルッ

セーラ「監督、この流れでいいこと言わんで下さいよ」

怜「膝枕でゴロゴロしとる奴が居る絵面でそれ言っても締まりませんわ」

雅恵「やかましいわボケども!! 特に園城寺、お前が言うな!」

怜「エースに向かってなんてこと言うんですか監督!」

雅恵「前言撤回や、今から千里山のエースは浩子にする!」

竜華「ちょっ!? セーラと怜はアカンとしても、せめてうちに……」

雅恵「お前が園城寺を甘やかすからつけあがるんや! 反省せえ!」

怜「せやで、竜華。反省しや」

セーラ「せやせや」

雅恵「お前らが言うんかい!?」

怜「せやかて、フナQおらんとボケ役が私らしかおらんし」

セーラ「泉はクソ真面目やし、竜華は天然やし」

雅恵「そういう時に浩子が絶妙なボケや完璧なツッコミをするから場が締まる……やはり、浩子をエースに抜擢して正解やったな」

泉「いや、そういう問題じゃ……」

81: 2015/04/05(日) 19:15:13.44 ID:ixNyrYQ30

南3局


和「ツモです、1000・2000」

哩(こん局は未達……原村、やはり手ごわか)

浩子(まあ、千点なら差が詰まっても許容範囲やろ。トップをとるのが千里山の目標やけど、副将でこの点差は流石に二位抜けを目指す場面や)

絹(……ダメや、和了らんと。オーラスの親をあっさり流されて終わったら話にならん!)

82: 2015/04/05(日) 19:15:41.71 ID:ixNyrYQ30

南4局


和「リーチ」

絹恵(なっ!?)

哩(この局は縛っちょらんからね、親でもなかやし、ツモやうち以外からのロンで和了って清澄が走る分には二位通過に影響せん、大人しくオリばい)

浩子(四巡目、手はまだバラバラ……押せるわけないやろこんなの、オリや)

絹恵(二人ともベタオリ……けど、親のうちがオリたら前半が終わってしまう、ベタオリは出来ん)

和(親が押してきましたか……それを把握したところで、リーチをかけているのでどうしようもありませんが)

83: 2015/04/05(日) 19:16:10.23 ID:ixNyrYQ30

和・絹恵「テンパイ」

浩子・哩「ノーテン」

和(一本場なら咲さんが親でない限り簡単に流せるはず、出来れば白水哩の和了る機会は減らしたかったのですが、問題ないでしょう)

絹恵(意地でもこの親で稼いだる、二位にならんと準決には進めんのや、無茶させてもらうで)

浩子(絹ちゃん無茶するなあ……関西トップクラスの一人である清水谷先輩が控えてる千里山に対して、姫松は実績的にそこまででもない末原さんやから大将戦が不利、ここで二位になりたいってことかいな?)

和(白水哩と鶴田姫子のコンボは、一本場以降は危険度が下がる。親が連荘しなければ対応する局自体が訪れない以上、コンボに対応する局が来ない可能性が高いからです)

84: 2015/04/05(日) 19:16:36.20 ID:ixNyrYQ30

南四局 一本場


哩(……この一本場は、来ない可能性が高い。なら、思いっきり無理しても姫子の負担にならん可能性が高いっちゅーことでもある)

哩(やけん、思いっきり無茶させてもらう)

113478s37p南南白発中

哩(さあ、この手は何翻になる? 混一色、役牌、チャンタか一気通貫、リーチにツモ……理想の最終形なら8翻まで行かる)

哩(11123789s南南南白白 123456789s南南白白あたりを狙う。一本場やけん、未達なら未達で構わん!!)

哩(行くぞ姫子!! リザベーションセブン!!!!)

85: 2015/04/05(日) 19:17:02.62 ID:ixNyrYQ30

姫子「ふきゅ!?」ビビクン

美子「姫子? おっきか縛りはいっとーと?」

煌「声を出すほどとなると、6~7翻クラスでしょうか?」

仁美「哩の奴、無茶しよっと」

姫子「う……うう……多分、7翻で縛っとる」

煌「……一本場、訪れないかもしれない一局ですが、成功すれば役満」

美子「一気に形勢逆転、哩の跳満か倍満の点数も合わせて、直撃ならトップまでみえったい」

仁美「達成したら、何が何でも一本場に持ち込むのが姫子の仕事やね」

姫子「う、うん……ぶちょーの鍵、絶対無駄にせん」

煌「さて、大博打ですが、上手く行くのでしょうか?」

86: 2015/04/05(日) 19:18:19.55 ID:ixNyrYQ30

和(……この手は間に合いそうにないですね。下家は既に聴牌気配、親も連荘狙いで早上がりに徹するようです)

哩(まだ足りん……巡目が残ってないならともかく、ツモ、一発、裏なんかは出来れば当てにせんで和了りたい)

浩子(白水が聴牌気配……索子染めやな、索子と字牌以外は行けるとこまで行ってみるか)

絹恵(浩子……押しとるんか?)

浩子(絹ちゃんはオリれんやろ、どうしても二位になりたいんやから遮二無二来るしかない。高目狙いの大振りと全ツッパ、美味しくいただいたるわ)

和「」ヒュン

哩(来た……これで出和了りでも7翻)

1345678s南南南中中中 ツモ:9s

哩「リーチ」

打:南

浩子(明らかな染め手でリーチ、面前混一色とリーチで最低4翻……いや、多分7翻以上やな、怖い怖い。現物以外の字牌と索子ツモったらオリさせてもらいますわ)

絹恵(染め手やろ? 索子以外全部押したるわ! 索子は回し打ちで聴牌復帰を狙う、とにかくこの親で稼ぐんや!)

和(……ベタオリですが、少し考えましょう。聴牌気配だったところから役牌を切ったということは、役牌より大きい、二翻以上の役が確定したということ)

和(混一色、リーチは確定、あと、混一色と複合する二翻役……三暗刻もありますが、それなら役牌を切らない。チャンタか一気通貫でしょう)

和(もう一つ役が……たとえば赤5索があれば7翻……コンボが成立すれば役満。ここは差し込みで流した方が良いのではないでしょうか?)

和(……いえ、私たちの大将は咲さんです。危険だと判断すれば一本場を迎えさせないことは造作もない)

和(であれば、染め手に対して押している人間が二人いる状況でわざわざ失点を確定させる必要はありません。ここはやはりオリに徹するところ)

87: 2015/04/05(日) 19:18:58.79 ID:ixNyrYQ30

咲「原村さんが私に過剰な期待をしてる気がするよ」

照「ここで手が止まるということは、白水さんの手が7翻縛りということに気付いたはず」

久「で、差し込んででも止めるべきかどうかを計算しているのね」

京太郎「『なんで和は手を止めたんだ?』と聞く前に全部答えられた」

優希「安牌が無かったら字牌、それもなければ端に近い方、のどちゃんがベタオリ中に手を止めるなんて、普通はありえないじぇ」

まこ「で、結局ベタオリを選択したわけじゃが、その心は?」

咲「私ならコンボを破れる、破れないにしても一本場なんか迎えさせないのは造作もない、かな?」

照「過大な期待をされて、咲も少しは私の気持ちを理解してくれると嬉しい」

咲「お姉ちゃんならまだしも、私にそこまで期待されても困るよ」

照「いや、私でも困るんだけど」

久「ちなみに、出来そう?」

咲「まあ、一本場を迎えさせないのは難しくないと思います。ただ、コンボを破るのはやってみないと……ちょうどオーラスだから、プラマイゼロでどうなるかですね」

まこ「言うだけ言っといて結局出来るんかい!?」

咲「お姉ちゃんなら当然潰せるでしょうけど、私だとちょっと……衣ちゃんにも藤田プロにも破られましたし」

照「お姉ちゃんなら出来るっていう決めつけはよろしくないって、照さん思うな」

久「ま、コンボは途中で二回成立してるから事前に試せるわ。その手ごたえを見て安全策を取るかどうか決めて頂戴」

咲「わかりました」

照「……でも、どうやら杞憂に終わりそう」

88: 2015/04/05(日) 19:19:27.24 ID:ixNyrYQ30

浩子「白水に目が行ってうちを忘れとらんか? それや、ロン。タンヤオドラドラ、3900」

絹恵「~~~っ!!!」

34赤5s22666p34567m ロン:8m ドラ:3m

浩子「……お疲れ様でした」

和「お疲れ様でした、また後半で」

哩「(和了れんかったか……)お疲れ様でした」

絹恵「あ……ああ……」ガクッ

89: 2015/04/05(日) 19:19:56.23 ID:ixNyrYQ30

『前半終了――――!!』

『姫松は苦しいですね。点差を考慮すれば攻めるしかないですが、それが振り込みを呼んで更に苦しくなる、悪循環です』

『前半は新道寺のエース白水哩が制しました!! 原村和はインターミドルチャンプの意地を見せられるのか―!? 後半も目が離せません!!!』

『全中王者と高校のトップクラスなら、普通は高校トップクラスが格上です。ここまで渡り合えるだけでも原村選手の非凡さを感じますね』

『更に更に、混迷を極める二位争い!! ダブルエースを投入した新道寺は二位を捕まえられるのかー!?』

『新道寺の追い上げは予想通りですが、千里山の船久保選手は点差を生かして上手く立ち回っています、大将の清水谷選手も大阪トップクラスの選手ですし、二位争いは読めませんね』

90: 2015/04/05(日) 19:20:25.47 ID:ixNyrYQ30

副将戦前半終了


新道寺  45600(+ 9900)
清澄  188600(+ 5600)
姫松   62600(-14400)
千里山 103200(- 1100)

104: 2015/04/12(日) 17:04:30.17 ID:epnM8ozT0

和「すみません、予想以上に手ごわい相手のようです」

久「あの白水哩をプラス一万以下に抑えて、更に自分がプラスで折り返した。この結果なら文句ないわよ」

咲「最後はヒヤヒヤしたけどね」

優希「結局、前半でコンボが成立してるのはどの局なんだじぇ?」

照「東四局一本場と南一局、失敗したのが南二局と南三局と南四局一本場」

京太郎「それ以外はコンボを仕掛けてないから、鶴田さんが自力で打つんですね?」

咲「うん、そのはずだよ」

まこ「意外とコンボが少ないのう」

照「これ相手にそんなにポンポンとコンボを決められても困る」

和「これとはなんですか、失敬な」

咲「それに、船久保さんが良いところで白水さんを止めてたね。南二局の満貫手とオーラスの倍満手」

和「私は勝負できる手ではなかったので、あれは助かりましたね」

105: 2015/04/12(日) 17:05:05.67 ID:epnM8ozT0

やえ「……姫松は終わったな」

紀子「まだわからない、とはいえ、厳しい」

日菜「清澄は確定として、大将は鶴田さんと清水谷さんと末原さん……末原さんが弱いわけではないけど、正直、この全国区の二人と比べるとね」

由華「となると、姫松はそもそも中堅を二位以上で終えられないと厳しいわけですよね」

やえ「船久保と愛宕妹は本来なら五分の手合いだろうが、四万点の点差があってそれを埋めないといけない状況では相手にならんだろうな」

良子「そうなのか?」

紀子「隙が出来たら、そこを突かれる。千里山のあれは、そういうタイプ」

やえ「逆転のために無理をすれば隙が出来る。それを見逃すやつじゃない。愛宕妹どころか白水ですら噛みつかれている」

由華「うーん……大分落ち込んじゃってるし、気持ちの面でも辛いでしょうね。気持ちが弱れば牌勢も弱まる。先輩の言うとおり、姫松は厳しそうです」

106: 2015/04/12(日) 17:05:39.41 ID:epnM8ozT0

浩子「……なんですかこれは?」


【掛け軸】「エースは副将! 目指すは一位! 常勝不敗の千里山」


雅恵「おお、ちょうどいいところに」

セーラ「フナQ! 助けてくれ、監督が乱心した!!」

怜「お前らにエースは任せられんって、そんでこんなもんを……」

竜華「こいつらがふがいないのは部長のうちがしっかりせんからやって、一番しっかりしてるフナQをエースにするって……」

浩子「……」ビリビリ

雅恵「ああっ!? 千里山伝統の訓示を書いた掛け軸が!? 何をするんや浩子!」

浩子「やかましいわ!! しばくぞ!!」

泉「ほら、船久保先輩マジギレですやん……だからやめましょうて言うたんですよ」


浩子「泉以外のエースがどこにおんねん!? お前ら全員節穴か!?」


怜「はっ!?」

セーラ「そ、そうや……俺たちは何を考えとったんや、エースと言ったら泉以外におらんのに……」

泉「えっ!? そう来るんですか!?」

雅恵「くくく……だがしかし、エースを決めるのは監督の私や、自分の息のかかったお前をエースにすることで、なんやかんやの悪だくみをさせてもらう」

怜「なんやかんやってなんやねん!? そこちゃんと言えや!」

雅恵「んなもん急に思いつくわけないやろ!」

セーラ「思いつきって言うてもうたやん」

浩子「もうええわ、なんやねんこの流れ」

107: 2015/04/12(日) 17:06:11.89 ID:epnM8ozT0

雅恵「じゃあ改めて……浩子、お疲れさん、後半もこの調子で頼む」

浩子「了解。しっかし、随分と控室の空気がゆるんでますね。流石に面食らいましたわ。こんな小道具まで仕込んで……」

怜「そんだけ安心して見ていられたってわけや、流石フナQ」

セーラ「それ俺が書いたんやでー」

浩子「すぐばれる嘘はやめましょう、江口先輩の字とかミミズのダンスやないですか。かなり綺麗な字でしたし、園城寺先輩か監督でしょう」

雅恵「これも二秒で看破したか……さすが我が姪……」

浩子「いつまでボケるつもりやあんたら」

怜「いや、これには割とマジな理由があってな?」

雅恵「……絹にトドメ刺したあとじゃ、私に顔合わせにくいやろと思ってな」

浩子「ま、そんなことやろとは思いましたけどね。けど、洋榎や絹ちゃん本人ならともかくおばちゃんは平気や」

雅恵「お前ならそう言うやろ、気い遣わせてすまんな」

浩子「まだ副将戦の後半も大将戦も残ってます。勝った気になるのは早いんと違いますか?」

雅恵「……そうやな」

108: 2015/04/12(日) 17:06:57.77 ID:epnM8ozT0

浩子「てゆうか、おばちゃんがこっちに居るのが意外やったな」

雅恵「ん? 席を外しといた方が良かったか?」

浩子「まあ、変な芝居仕込むよりはそっちの方が手っ取り早いし、それもそうなんやけど……あっちに行かんでええの?」

雅恵「……あっちはあっちで赤坂が何とかするやろ」

浩子「そうだとええんやけど、洋榎に聞いたら赤坂さんって信頼薄いみたいやし、そもそも経験の浅い新米監督やし、てゆうか代行やし」

雅恵「……うっ。い、いや、私は千里山の監督や。敵に塩は送れん」

怜「この大事な試合で従姉妹にトドメ刺されてめっちゃへこんでるやろな。私らはこの大会で引退やからええけど、浩子は次の練習試合でどんな顔して会ったらええんやろな?」

雅恵「ぐっ、園城寺、お前……」

泉「……そういえば、アホな芝居の練習してたから喉乾きましたね」

怜「せやな」

セーラ「疲れとる選手をねぎらうために飲み物を買ってくれる優しい監督はどっかにおらんかな~?」

竜華「へ? 飲み物ならそこの冷蔵庫に……痛っ!? 怜、なにすんねん!?」

雅恵「お前ら……」

怜「あー、うち病弱やから喉乾いて氏んでまうかも~」

セーラ「なんやて!? くっ……俺は竹井にやられた傷のせいで動けんし、このままじゃ怜が……どうすればええんや!?」

竜華「えっ!? セーラ、怪我してたん!?」

雅恵「あー! 分かった分かった、飲みもんぐらい買うて来たるわ! 大人しく待ってろ!」

109: 2015/04/12(日) 17:07:41.58 ID:epnM8ozT0

【姫松控室】


絹恵「……すみません」

恭子「ま、私が何とかするから落ち込まんといてや」

洋榎「せやで、恭子に任せてのびのび打ったらええねん。浩子には勝ち越してるはずやろ?」

由子「落ち込んでるのは絹ちゃんらしくないのよー」

漫「いっつもうちが取られてる点棒に比べたら大したことないやん、気にしたらダメやで」

郁乃「……なあみんな~、うち思うんやけど~」

恭子「……なんですか?」

郁乃「絹ちゃんは頭もええし~、責任感も強いやろ~?」

洋榎「そうやけど、何が言いたいんや? 下らんことやったらマジでしばくで?」

郁乃「お姉ちゃん怖いな~……あのな~、大したことやないんやけど~」

由子「だから何なのよー?」

郁乃「絹ちゃんの場合~、下手な慰めは~、余計に追い詰めるんやないかってうちは思うんやけど~、どうなん~?」

恭子「!?」

絹恵「う……ぐすっ」

郁乃「あ、漫ちゃんはちょっと外でうちとおしゃべりしよか~」

漫「ちょっ!? 代行、なにを……」

郁乃「つべこべ言わずについてくる~。あと任せたで『先輩』たち~、特に末原ちゃん~」

バタン

110: 2015/04/12(日) 17:08:09.97 ID:epnM8ozT0

恭子「絹ちゃん……」

絹恵「お姉ちゃん! ごめん! うちが弱いせいで! ごめんなさい!」ウルウル

洋榎「き、絹!? あ、あのな、そもそもうちが負けたのが悪いんやから絹が泣くこと……」

絹恵「うええええん!!」

洋榎「ほ、ほら、副将戦もまだ終わったわけやないし、恭子だっておるし」

絹恵「そんなん言うたって、ホントはお姉ちゃんだってわかっとるんやろ!? もうアカンって!」グスッ

洋榎「うっ……」

絹恵「お姉ちゃん、嘘つくのド下手やもん……」

由子「否定したいけど……実際、ここからうちが逆転する可能性は……」

洋榎「……うちが負けてもうたからな。正直、どんだけ贔屓目に見てもここから逆転の目は……」


――――――ある


絹恵「……へ?」

恭子「鶴田は、白水とのコンボが決まってない時でも高火力型。しかし、その分守りが薄い。コンボが成立してない局でこいつから直撃をとるのは難しくない」

洋榎「恭子?」

恭子「清水谷も攻めっ気が強い、鶴田がコンボを決めていてもそう簡単にベタオリなんかせんはずや。コンボが決まってる時でも攻めに行く可能性は高い」

由子「きょ、恭子?」

恭子「私は、コンボが成立している局は序盤から鶴田の安牌の確保をしてベタオリする。絶対に振り込まん。宮永も振り込むような奴ではないはずや」

恭子「とすれば、鶴田のコンボの和了りは千里山に直撃食らわすかツモるかになる。ツモは仕方ないとして、いくつかは清水谷を直撃する」

恭子「そうなれば、大物手をいくつか食らって千里山は勝手に落ちてくる。二位争いはうちと新道寺の一騎打ち、コンボが成立してない局で新道寺を徹底的に狙えば勝算はある。
  私が和了らんでも、宮永が白黒つけるために鶴田を狙うかもしれん。鶴田が清水谷から、宮永が鶴田から点棒を持ってってくれれば、焼き鳥で二位浮上なんてこともあるかもしれん」

絹恵「せ、先輩……それは、気休めじゃなく?」

恭子「……本気や。絹ちゃんは、新道寺より上の順位で私に繋いでくれ。余所からのロン和了りで稼ぐ新道寺に対して、新道寺から直撃をとるなら半分の点数で逃げ切れる。
  そこまで上手くいかんにしても、順位が上でスタートすれば見込みはあるはずや」

絹恵「まだ、勝てる……」

恭子「そうや、まだ終わってない。だから、絹ちゃんの仕事は新道寺より上で私に繋ぐことや」

絹恵「……はい!」

111: 2015/04/12(日) 17:08:41.89 ID:epnM8ozT0

洋榎「……そっか、恭子ならまだ勝てるんやな」

恭子「まあ、勝てる保証はありませんけどね。むしろ、勝ち目は薄いです」

由子「ぶっちゃけたのよー」

洋榎「……うちが勝つってよりは、千里山と新道寺が負ける可能性を考えたんやろ?」

恭子「はい。相手のミス待ちです。というか、主将が三位で帰って来た時点で今回の相手に対して普通に勝つのは不可能です」

洋榎「うちは勝つことしか考えてない。けど、恭子はいっつも負けることばっかり考えとる」

由子「ただし、考えるのは自分が負ける可能性だけじゃないのよー」

絹恵「相手が負ける可能性……」

恭子「そう、相手が三人とも負ければ自分が勝つんや。その可能性を引き出し、自分が負ける可能性を極力減らす。それが私の麻雀や」

洋榎「正直、負けることばっか考えてて楽しいのかって思うけどな」

恭子「勝つことしか考えてないノーテンキが負けた時よりは楽しめてますよ」

洋榎「言っとけ」

由子「……というわけなのよー。絹ちゃんは、恭子の注文通りに新道寺にまくられないで恭子に繋いでくれればいいのー」

恭子「ちなみに、部内で一番主将に対する勝率が高いのは私や。むしろ直対では勝ち越しとる」

洋榎「いっつもゆーことか漫を使ってうちを蹴落としとるだけやないかい!?」

恭子「洋榎は勝手にマークされるから他家が使いやす……じゃなくて、勝ちは勝ちや」

洋榎「正々堂々正面から来れんのか!?」

恭子「それで勝てるならそうするわ」

112: 2015/04/12(日) 17:09:10.63 ID:epnM8ozT0

恭子「……というわけや。今回は全国トップクラスの宮永と鶴田を使えるから、漫ちゃん使って主将に勝つよりは楽なはずや」

洋榎「それより先にうちとのケリつけろや! 今から二人麻雀や!!」

恭子「勝ち越しやから、ケリはとっくについとると思いましたけど?」

由子「どうどう、洋榎、落ち着くのよー」

洋榎「なんでうちだけ止めんねん!?」

絹恵「……」

恭子「一応、これでも洋榎に勝ち越しとるんや、信用してくれんか? 私を信用して、諦めずに自分の役目を果たしてもらえんか?」

絹恵「お姉ちゃんより、強い……」

恭子「そや、後ろに洋榎が控えてると思ってくれてええ。それでも、勝ち目があると思えんか?」

絹恵「いえ……取り乱してすみませんでした」

洋榎「それでこそうちの妹や! 気張れよ絹!」

絹恵「ところで、新道寺より上で折り返せって話ですけど……」

恭子「ん?」

絹恵「リードは作れるだけ作った方が良いんですよね?」

由子「やる気満々ねー、その意気よー」

恭子「出来るなら頼む。新道寺より上ってのはあくまでもギリギリのラインやからな。余裕があればそれだけ勝率は上がるで」

絹恵「……行ってきます!」

113: 2015/04/12(日) 17:09:49.66 ID:epnM8ozT0

雅恵「戻った」

怜「あっちはどんな感じでした?」

雅恵「赤坂は氏ぬほど役立たずやったな。末原は、私が引退したら後任の監督にしてもええと思う。善野さんに話つけにいかんとな」

セーラ「なにやったんや赤坂さん……」

怜「末原さんもなにやったんや……」

雅恵「浩子はもう対局室か?」

竜華「あ、はい。ここに居たら余計疲れる言うて」

泉「監督が出て行ってからも先輩らがボケ倒すから……」

怜「いや、流石に今回は竜華の天然が一番罪深いやろ」

セーラ「今回ばかりは俺らのせいにされたら納得いかん」

泉「だから、先輩『ら』っていうてますやん」

雅恵「それ、二人と三人の区別出来とらんやろ」

竜華「え? てゆうか、うちのせいなん?」

怜「ちょっと真面目に試合の話を始めたあのタイミングで『そう言えば!! ……監督、みんなが何飲むか聞かんで飲み物買いに行ってもうたけど、ええの?』は反則やろ」

セーラ「あのフナQがマジで崩れ落ちとったからな」

竜華「あ、そうや! 監督、飲み物は? うちアイスティーが良かったんやけど」

セーラ「まだ言うんかそれ!? 飲み物なら冷蔵庫にあるやろ!!」

114: 2015/04/12(日) 17:10:39.59 ID:epnM8ozT0

郁乃「あー怖かった~……愛宕さん~、『教え子のケアもせんとこんなところでなに油売っとんねん』って~、目がマジやったであのひと~」

漫「三割ぐらい自業自得なような……」

郁乃「漫ちゃん~? 舐めた口きくのはこのデコか~?」キュポ

漫「デコが口きくってどういうことですか!? ちょっ、油性ですやんそれ!?」

郁乃「中身は水性やから安心やで~?」

漫「絶対嘘でしょ!? 油性って書いてあって中身水性やったら詐欺ですやん!」

郁乃「あ~、絹ちゃんや~」カキカキ

漫「へ? あっ……」(額に落書き)

絹恵「ぶふっ!? ちょっ、漫ちゃん、こっち向くのやめて! 気が抜けてまう!」

漫「え? ちょっと代行、いつ書いたんですか!?」

郁乃「うんうん~、これ見て笑えるなら大丈夫そうやな~、さっすが末原ちゃん~」

絹恵「御心配おかけしました、行ってきます」

郁乃「あっ、まってまって~」

絹恵「はい?」

郁乃「これ~、気休めやけど~」

絹恵「……【必勝祈願】? お守りですか? なんか素人っぽい字ですけど」

漫「あ、あの、さっきおk……むぐっ!?」

郁乃「さっきそこで拾ったんよ~」

絹恵「拾ったお守りて……」

郁乃「冗談や~、ちゃんとした御利益付きのお守りやから安心してな~」

絹恵「ならいいですけど……じゃあ、行ってきます」

郁乃「頑張ってな~」

絹恵(……代行、作ってくれたんかな? ええとこあるやん)

115: 2015/04/12(日) 17:11:15.05 ID:epnM8ozT0

起家 哩「随分早かね?」

北家 浩子「監督が姫松の副将の身内なもんで」

哩「ああ、控室に居づらいってことか。難儀やね」

南家 和「お待たせしました」

浩子「まだ時間前やで」

哩「……姫松の副将、大分まいっとったな。来れると思うか?」

浩子「大丈夫やと思いますよ。そんなに弱い子やないんで」

和「……時間ちょうどですね」

バタン

西家 絹恵「お待たせしました」

哩「なるほど、心配するだけ無駄か。何があったかわからんが、前半とは別人みたいやね」

浩子(おばちゃん、敵に塩送りすぎやろ。そら、おばちゃんからしたら身内やけど……てゆうか何やったら前半より元気になるんや?)

和「よろしくお願いします」

116: 2015/04/12(日) 17:11:44.46 ID:epnM8ozT0

やえ「……ほう? 愛宕妹の雰囲気が変わったな」

良子「前半終わった時はダメそうだったんだけどな」

日菜「監督さんが優秀なのかな?」

やえ「だが、気の持ちようだけで勝てるほど麻雀は甘くない」

紀子「……けど、強い意志には牌が応える」

由華「これは、まだわかりませんかね?」

やえ「いや、私や江口あたりならともかく、ニワカが気合を入れ直したところで白水には通じんさ。ただ……」

良子「ただ?」

やえ「……ニワカが何をしようと通用しないだろうが、あれも愛宕の妹だからな。少しは意識しておかないと万が一がある」

日菜「やえは愛宕さんとか白水さんを買いかぶるよね」

紀子「三年間鎬を削ったライバルを高く評価するのは自然なこと。それに、白水や愛宕に関しては買いかぶりではなく正当な評価だと思う」

117: 2015/04/12(日) 17:12:11.54 ID:epnM8ozT0

東一局 ドラ:東


哩(後半やけん、東一局で様子見する必要はなか。そしてこの配牌……)

1235799m7s25p東東東 ツモ:4m

哩(配牌でダブ東ドラ3確定、リーチで6翻は確実に行かる。手頃な鳴き混一色でも7翻……前半のオーラスに続いて、最初から山場が来たっちゃね)

哩(こいは絶対にものにする……リザベーションセブン!!!)

打:7s

浩子(絹ちゃんも気合入れなおしたみたいやし、ここは様子見しとこか)

絹恵(私の役目は、新道寺より上で折り返すこと……意地でもそれだけはやり通す!!)

和(……新道寺、一打目で7索ですか。嫌な感じですね)

118: 2015/04/12(日) 17:13:09.85 ID:epnM8ozT0

姫子「ふきゅうっ!?」ビビクン

煌「……あの手なら、間違いなく7翻で縛っているでしょう。最高形でダブ東・一気通貫・混一色・ドラ3……裏ドラ次第では数え役満まで見える大物手です」

仁美「そうなれば、親の倍満以上の和了りに加えて姫子の役満が確定、二位抜けどころか二発とも清澄に直撃ならトップが見えったい」

美子「ツモも悪くなか、他の三人の手も間に合いそうになかやし、こいは……」

煌「和了るまでは気が抜けませんが……」

『チー』

姫子「……原村っ!?」

煌「和、やはり簡単には和了らせてくれませんか」

仁美「うげ……嫌な鳴きたい」

美子「あんたは鳴きみたら全部嫌な顔すっけん、当てにならん」

姫子「ぶちょー……信じてます」

119: 2015/04/12(日) 17:14:24.19 ID:epnM8ozT0

純「あいつも流れってもんが分かって来たんじゃねえか?」

智紀「原村さんに限ってそれはない。デジタル的にはあれを鳴くのは自然なこと」

一「そうだけど……純くんが言うなら、流れが変わる鳴きなのかな?」

ゆみ「自然に打って流れを変えるキーポイントで鳴けるようになっているとは……やはり強運だな」

純「あのままだったら、白水が大物をツモる流れだったぜ。今は五分って感じだな」

透華「聴牌ですが、一気通貫にならない形ですわね。それでも面前混一色ダブ東ドラ3の倍満ですが」

美穂子「姫松と千里山も新道寺を警戒し始めましたね。白水さんが明らかな染め手に進んでいる状況なら当然の反応です」

睦月「うむ」

智美「それでもリーチはかけないんだなー? 三人に警戒されてるんだからツモるしかないと思うんだけどなー」

智紀「8翻だから、リーチしても一発でツモるか裏が乗るかしなければ倍満のまま。6索引きで一気通貫がつけばリーチすると思う」

120: 2015/04/12(日) 17:14:51.41 ID:epnM8ozT0

咲「……三対一、手の進みは五分、普通に考えたら総合的には原村さんが有利なんだけど」

照「これは卑怯だと思う」

久「三対一は卑怯じゃないわよ、麻雀は四人で打つゲームだもの。大物手を聴牌してる人間がいるなら三人がかりで流すのは普通よ」

照「そっちじゃない」

まこ「3対1で1の方が卑怯っちゅうのもおかしな話じゃと思うが……」

咲「コンボでパートナーの和了りが約束されるだけでも十分強力なのに……」

照「これは非常にインチキくさい」

京太郎「えっと、どういうことです?」

久「たまについて行けなくなるわね、この子たちには」

優希「部長も分かってないみたいだじょ」

咲「お姉ちゃん、私たちもアレ出来ない? お姉ちゃんが白水さん役やれば無敵だと思うんだけど」

照「流石に無理だと思う。てゆうかオーダー離れてるし」

咲「じゃあ、前半で和了った倍の翻数で後半に和了るとか……お姉ちゃん一人で」

照「前半で数え役満和了った局の後半に何が来るのか興味はあるけど、そもそも無理だから。てゆうかそれ今の話と全然関係ない」

121: 2015/04/12(日) 17:15:32.20 ID:epnM8ozT0

(ぶちょー……信じてます)


哩(姫子の力を感じる。任しとけ、この手、絶対に和了っちゃるばい!!)

哩「……ツモ!」


1233457999m東東東 ツモ:8m


和「……っ!!」

浩子「あっちゃー……こら流石にまずいかもしれんな」

絹恵「なっ……そんな……」

哩「面前ツモ、混一色、ダブ東、ドラ3……8000オール」

和「……」

122: 2015/04/12(日) 17:16:20.96 ID:epnM8ozT0

咲「というわけで、鶴田さんが白水さんの和了りをサポートすることがあるみたいです」

照「これは完全にインチキ」

久「やりたい放題ね……なにか副作用とかないの?」

咲「うーん……もしかしたらコンボの効力が弱くなるとかあるかもしれませんけど、とりあえず見当たりません」

照「たとえサポートしたらコンボにならないとしても倍満をサポートできるなら十分すぎる。というか、多分ちゃんとコンボになる。とても卑怯」

まこ「いや、相手の点数を自在に調節できるほうが卑怯じゃと思うが……」

京太郎「卓外からサポートとか……オカルトすぎでしょ」

優希「県予選で咲ちゃんと照さんが鶴賀の次鋒を止めるためにやろうとしてたじょ」

まこ「そんなことやっとったんかおんしら?」

照「実行はしてない。セーフ」

咲「それにしても、誰かさんがおとなし過ぎるよね」

久「そうね。親倍ツモられて黙ってるような子じゃないはずだけど」

優希「のどちゃんはこんなもんじゃないはずだじょ」

照「……って、言ってるそばからこれか」

123: 2015/04/12(日) 17:16:52.77 ID:epnM8ozT0

東一局 一本場 ドラ:北

和配牌

123s123m12233p北北

和(三色・平和・ドラドラが確定、高目ならチャンタと一盃口がついて倍満。地和も狙えます。配牌でこれは運が良いですね)

哩(私が和了って一本場やけん、姫子がタチ親じゃなかったら無駄になっけど……25%の確率でダメ押しが出来る)


哩配牌

1456p3457s45678m ツモ:7m


哩(配牌から既に一向聴、流れが来とーね。ばってん、役満が確定した後で無理することもなか。タンヤオかピンフ、それにリーチとツモの3翻で確実に和了る。リザベーションスリー!!)

打:1p

和「ロン」

哩「……は?」

和「16300」パタン

浩子「は?」

絹恵「は?」

124: 2015/04/12(日) 17:17:32.99 ID:epnM8ozT0

『第一打を直撃――――!!!! インターミドルチャンピオン原村和、勝利の女神は彼女の勝利を望んでいるのか―!!!?』

『これは酷い事故ですね……プロでもあの振り込みを避けられるのは片手で数えられる程度しかいないでしょう』

『え゛……トッププロってあの手で1筒止まるの?』

『あ、はい……トッププロの中でもほんの一握りだと思いますけど。一応、私は止められると思います』

『すこやんパネー……』

『そ、そんなことないよ、あれが止まるからってそれだけで強いわけじゃないし。振り込んでもそれ以上に稼げばいいってスタンスの人もいるから。
  まあ、ツモ和了りまで止められるならそれだけで強いと言えなくもないけど』

『ちなみにすこやんは?』

『えっと……原村選手に関してはやってみないとわかりませんのでノーコメントで』

『普通の相手なら相手のツモまで止められるってこと!? え? 流石に冗談だよね!?』

125: 2015/04/12(日) 17:18:35.50 ID:epnM8ozT0

純「……反則だろあれは」

透華「たまたま来てしまったものは仕方ありませんわ。運も実力のうち、私のライバルに相応しい強運ですわ」

一「あの手、振らなくても支出は200点しか変わらなかったかもね」

智紀「その冗談が冗談ですまなそうだからタチが悪い」

ゆみ「合宿でも確認したが、デジタルの面子では原村の強運は常識の範囲内だ。あの面子では流石にそれはないだろう」

一「いや、原村さんに配牌であの手が来たということは、オカルトな何かがあったのかもしれない」

透華「むー……そういうのは衣がいませんと分かりかねますわ」

美穂子「いずれにしても、清澄はただでさえ大差のところにダメ押しを決めましたね」

126: 2015/04/12(日) 17:19:20.20 ID:epnM8ozT0

咲「せーの」

咲・照「「縛ってる」」

久「分かるわけないでしょあんなの」

咲「じゃあ、縛ってるということで」

照「うん、多分間違いない」

まこ「あんな事故の後でも一応チェックするんじゃな?」

咲「むしろ、あの事故の後だからこそですね。一本場が来るかどうかわかりませんけど、他がチェックし忘れてれば大きなアドバンテージですから」

久「ちなみに、縛ってるという根拠は?」

咲「勘と、一本場なので気軽に縛れるということ、配牌が悪くなかったことですかね」

照「勘」

久「じゃあ信じますか」

京太郎「照さんは勘としか言ってないですけど……」

久「私、道以外で照の勘が外れた事例を一つも知らないの」

照「失敬な。道でも私の勘は当たる」

久「なんでそこだけ自信満々なのよ。道だけは素直に私に従っときなさいって」

まこ「そもそも、道は勘で進むもんじゃなかろうが」

咲・照「「……えっ?」」

127: 2015/04/12(日) 17:19:51.41 ID:epnM8ozT0

怜「まあ、新道寺を削ってくれる分にはラッキーやけど……」

竜華「さっきの和了りで役満確定やからな、削ってもらえると助かるわ」

セーラ「しっかし、トラウマになるであんなもん。メンピン狙いましょう言うとる手牌で一枚だけプカプカ浮いとる1筒切ったら一巡目で倍満ズドンて……」

泉「さすがの船久保先輩も目え丸くしてますね」

雅恵「『配牌でそれってどういうことやねん、サマか?』と、目で訴えとるな」

128: 2015/04/12(日) 17:20:58.17 ID:epnM8ozT0

東二局 親:和


和「ロン。一気通貫・平和・ドラドラ。12000」


234赤56789p4赤5666s ロン:1p


哩「ぐっ、五巡目で!? しかも、そん捨て牌で!?」

絹恵(……新道寺をへこませてくれる分には助かる。正直、一位通過は無理や。なら、清澄はもういくら走らせたってええ。末原先輩もそのつもりやろ)

浩子(千里山の目標は常に一位……やけど、流石にこの状況はうちも二位狙いすべきやろうな。しっかし、字牌四枚切ってその聴牌かい? 急にバカヅキしはじめおってからに……)

和「一本場」

129: 2015/04/12(日) 17:26:23.22 ID:epnM8ozT0

咲「これはあれだね、原村さんに憑いてるデジタル神が白水さんの悪質なオカルトに激怒してるんだね」

照「冗談だったけど、本気でそう思えてくる。私の照魔鏡にすら映らないとは、さすが神様……」

まこ「いやいや、それじゃったらおんしらのオカルトが真っ先にやられるはずじゃろ」

久「いや、私のは悪質じゃないし」

照「わたしも色々制約があって困ってるし。あんな卓外からサポートするやりたい放題と一緒にしないでほしい」

咲「え、えっと……私、オカルト的なことしてないし」


京太郎「いや、絶対嘘だろ。特に咲、二人に合わせるために適当言っただろお前」

咲「ぎくっ」

優希「あれが普通だったら麻雀やめるじぇ……」

130: 2015/04/12(日) 17:27:36.26 ID:epnM8ozT0

東二局 一本場


和(流石に普通の配牌ですね。当然です、照さんじゃあるまいし、バカヅキなど長くは続きません。だからこそデジタルで最善の打牌をして勝率を底上げしなくてはいけません)

哩(一本場やけん気軽に縛れる……が、今の原村相手に縛って押すのは危険ばい。悪い手やなかけど、ここは一旦様子見さしてもらう)

浩子(……偶然か、それとも、何かしらのきっかけでバカヅキを呼び込む力があるのか? 上手いこと準決に進んだら原村の牌譜を総ざらいせな)

絹恵(原村のおかげで新道寺は沈んだけど……これでギリギリ上回って繋いでええんか? 大将戦で役満確定してもうたから、最低ラインは上がっとるんと違うか?)


絹恵配牌

7899p5799s178m東北


絹恵(爆発しとる時の漫ちゃんみたいな配牌やな。漫ちゃんならここから上に寄せて倍満とかになるんやろうけど)

絹恵(うちにはそんな都合のいいことは起こらん。三色やチャンタはおろか、この手でピンフすらつかんことだって普通にある。理想形のジュンチャン三色で和了れるのは20回打って一回あるかどうかぐらいや)

絹恵(それでもな、今回は絶対勝つって決めとるんや! 20回に1回和了れるなら、ここで和了らんでどうする!!)


7899p5799s178m東北 ツモ:8s


絹恵「は、ははっ……」

浩子「……絹ちゃん?」

絹恵(行ける、行けるで……ツキが向いて来てくれた)

打:5s

131: 2015/04/12(日) 17:28:39.13 ID:epnM8ozT0

洋榎「よっしゃ、いきなりカンチャンずっぽしや!」

恭子「ん~……宮永に期待しすぎるのもアレやし、役満前提で、新道寺に対して二万のリードは欲しいな。ここは決めてや、絹ちゃん」

由子「白水も普通に手を進めてるのよー」

漫「速度でどっちが勝つか……」


郁乃「絹ちゃんや」


洋榎「代行、漫、いつの間……ぶふっ!?」

恭子「代行、真面目な空気をぶち壊さんでくれます?」

由子「ぷ……くく……漫、ちゃん……こっち向くのやめてほしいのよー……ぷくく……」プルプル


郁乃「信じてあげよ? この局は、絶対に絹ちゃんが勝つって、そしたら、きっと勝つで~」

恭子「……そうかもしれませんね。ま、信じるのはタダですし、いくらでも信じますわ」


洋榎「ぶははははっ!! 無理、無理や! なんでお前らこの状況でシリアスな会話出来んねん!?」

由子「こひゅー、こひゅー……ひ、洋榎、笑っちゃダメなのよー……ぷくくくく……」ガクガク

漫「もういっそ笑って下さい真瀬先輩! 顔真っ赤やないですか!?」

洋榎「とりあえずウェットティッシュあるから拭け! 水性なら落ちる! ゆーこを頃す気がないならすぐ拭け!」

漫「せやけど、これ油性なんですよー。一応拭きますけど……」


郁乃「大丈夫、絹ちゃんは、きっと勝つ」

恭子「語尾伸ばして下さい、代行が普通にしゃべると気持ち悪いです」

郁乃「末原ちゃん、ひどい~……」


漫「あ、落ちた。これホンマに水性だったんや……」フキフキ

132: 2015/04/12(日) 17:29:31.79 ID:epnM8ozT0

絹恵「ツモ!リーチ、ツモ、純チャン、三色、一盃口。裏はめくっても変わらんな、4100・8100」


789p778899s1789m ツモ:1m


浩子(どいつもこいつも馬鹿でかい手ばっかポンポン和了りおってからに……)

和(全国でも指折りの名門三校が相手、楽な手合いはいないようですね)

哩(……原村が倍満で親かぶりしたか、バカヅキは止まったようやね)

133: 2015/04/12(日) 17:29:58.73 ID:epnM8ozT0

東三局 ドラ:8m


絹恵手牌(8巡目)

3456s356m345p発発発 ツモ:6s


絹恵(三色確定、さっきの和了りで流れが来とるんやないか? イケイケや!)

絹恵「リーチや!」

打:6m


浩子「リー棒要らんで。ロン、3900」


赤567s78m23477p ポン:白白白 ロン:6m


絹恵(欲張らんで両面聴牌に取ってたら振り込んでなかった? いや、そんなの結果論や。期待値的にもこっちの方が高い、うちは間違ってない)

浩子(絹ちゃんはツイてると欲張る傾向がある。うちの待ちは萬子の上やって露骨に言っとるんやけど、乗ってる絹ちゃんなら構わず来ると思ったわ)

浩子「じゃ、次いきましょか」

134: 2015/04/12(日) 17:30:30.04 ID:epnM8ozT0

東四局


浩子(今の和了りでツキが向いて……来るわけないわな。親かぶりは勘弁やで)

哩(ドラ対子と翻牌の対子……4翻行っとくか)

和「」ヒュン

絹恵(ツキ逃してもうたかな……? 四向聴、ちょいとキツイな)

135: 2015/04/12(日) 17:30:58.43 ID:epnM8ozT0

哩「ツモ、2000・4000」


34赤5m5688p123s中中中 ツモ:4p ドラ:8p


浩子(親かぶりは勘弁って言うたやろが。てゆうかうちが3900とかささやかな和了りしとんのにこいつらは……この8000がうち以外の最低点かい!?)

絹恵(5翻やけど、リーチかけとらんからコンボは4翻以下。とはいえ倍満まではありえる……いよいよ苦しくなってきた)

136: 2015/04/12(日) 17:31:34.65 ID:epnM8ozT0

南1局


和「聴牌」

絹恵・浩子・哩「ノーテン」


和(先ほど照さんが言っていた通りなら流れ一本場は通常の一本場として扱うはず。これで二局進めたも同然ですね)

絹恵(……オリがデジタル的には正解の局面やった。とはいえ、この状況で稼がんで場を進めてええんやろか?)

浩子(ま、オリて場が進むならこっちは大歓迎。このまま最後まで行ってほしいくらいや)

哩(……この局は縛っとらんからオリは自然。とはいえ、流れるぐらいならまだ原村が和了った方がマシかもしれん。ばってん、流石に差し込みまでは出来ん)

137: 2015/04/12(日) 17:32:10.04 ID:epnM8ozT0

咲「なんだかあっさり流れたね」

久「縛ってる気配もなかったし、和が二つ鳴いてたからね」

照「鳴いたのは翻牌の発と赤5筒とドラの6筒を含んだ順子だから、見えてる範囲で最低3900。 みんな安手だったし、オリるのは普通」

京太郎「むしろ、和がツモらなかったのが珍しいな、全部止められてた」

優希「オリてるんだから和了り牌を止めるのはよくあることだじぇ」

咲「この状況だと、事実上二局進む聴牌流局が一番ツイてると言えなくもないからね」

京太郎「あ、そうか。コンボの成立を防ぐ方が期待値が高いのか」

照「期待値はわからないけど、あの手を和了れなかったのは必ずしも不運ではない」

138: 2015/04/12(日) 17:32:38.49 ID:epnM8ozT0

南二局一本場


哩(はあ……さっきから一本場に良い配牌がよう来よるね。鳴き混一色でも翻牌三つとドラ1つで5翻は固そうばい)

24赤567s17p南南白白発中中

哩(使わん鍵かもしれんが、出来る限り稼ぐ! リザベーションファイブ!)

139: 2015/04/12(日) 17:33:55.70 ID:epnM8ozT0

怜「まーたデカそうな手やなー、あの人どんだけツイとんねん?」

セーラ「まあ、うちらの世代の四天王やからな」

竜華「初耳やけど……」

セーラ「水の白水、火の江口、土の愛宕、奈良の小走の四天王言うたら有名やん」

泉「絶対今考えましたよねそれ? 奈良だけ浮いてますし」

雅恵「なんで洋榎が土やねん?」

怜「せめて理由とか考えずに小走さんを風にしとけば騙されたかもしれんのに……」

竜華「うちは? うちは四天王に入ってへんの? てゆうか辻垣内どこ行ったんや?」

セーラ「……騙されとる奴おるで?」

怜「竜華は純粋やから」

泉「てゆうか余裕そうですね、先輩がた。白水がデカい手作ってんやから少しは焦りましょうよ? あ、ほら、リーチかけました」

怜「いやいや、フナQの手見ろや。白と中の対子持ってるやろ?」

泉「あ、ホンマや」

セーラ「持ち持ちやと見切って七対子に移行しとる。流石の安定感やな」

怜「脇の二人は白水さんのリーチに対してオリる、待ち牌を握りつぶされた白水さんと、オリた二人」

雅恵「あとは、浩子がツモるかリーチをかけた白水が振るか……後者やったな」


『ロン、6700』


竜華「ええぞー、浩子ー!!」

140: 2015/04/12(日) 17:34:52.86 ID:epnM8ozT0

姫子「ぶちょー……」

煌「姫子がここまで受け取った鍵は何本でしたっけ?」

姫子「うん、よんほ……ひうっ!?」ビビクン

仁美「四本……前半の東一局一本場の倍満キーと、南一局の満貫キー」

美子「それから、後半の東一局の役満キー、東四局の倍満キーやね」

煌「一本場の鍵は計算に入れない方が良いでしょう。そうすると、満貫、倍満、役満が一本ずつ」

仁美「二位までの点差は6万近くありよるけん、相手が清水谷だということも考えると少し心もとなか」

煌「そうですね、ここでもう一本鍵を頂きたいところです」

姫子「た、多分、さっきの感じだと今回の縛りは四翻やけん、この手を和了れば倍満キー」

煌「四翻ですか、翻数は余裕でクリアできそうですね」

仁美「配牌で対子やったドラが暗刻になった、裏が乗れば倍満も見えよる」

『ツモ! リーチ・ツモ・西・ドラ3・赤1……裏は乗らず、3000・6000!』

姫子「きゃああああ!! ぶちょー!! 流石とですー!!!」

141: 2015/04/12(日) 17:35:22.95 ID:epnM8ozT0

南四局 ドラ:6s


哩(さて、ダメ押し行っとくか。リザベーションセブン!!)


1134556789s18p北


絹恵(……さっきの跳満、最悪の場合あれでも役満確定。ツモは偶然やからそれはないとしても、リーチをかけてたっちゅうことは6翻までは十分あり得る)

浩子(いくら清水谷先輩とはいえ、そろそろ射程圏に入ってもうたやろな。どないしよ?)

打:7m

絹恵「(とはいえ、ここは和了らんと話にならん!)ポンや!」

ポン:777m

浩子(一鳴き……この点差でまさかのタンヤオのみってか? まあ、なんか白水が嫌な感じやし、安くても和了られるよりましってことか)

142: 2015/04/12(日) 17:36:18.33 ID:epnM8ozT0

哩「」タン

打:9s

浩子(……白水が字牌まで落として索子に染め始めた、清一色狙うなら縛りはおそらく7翻。索子が出て来たってことはそろそろ聴牌や、役満二発は流石にアカン)

和「」ヒュン

打:4m

絹恵「チー」

チー:234m

浩子(絹ちゃんは序盤に索子の234も鳴いとる、露骨やな。流すだけじゃなく、少しは点数も欲しいってことか……背に腹は代えられんが、後で覚えとけよ)

浩子(普通ならこの鳴きをしてここで待ってたらド素人やけど、うちの差し込み前提ならあり得る待ちやろな。どうや?)

打:3p

絹恵「ロン、タンヤオ三色ドラドラ。7700」

24p66s チー:234m 234s ポン:777m ロン:3p ドラ:6s


浩子(って、ドラ対子持っとんのかい!? マジで覚えとけよ絹ちゃん……とりあえず全部読み切りを装ったポーカーフェイスや)

浩子「終了ですね、お疲れ様でした」

143: 2015/04/12(日) 17:36:44.40 ID:epnM8ozT0


副将戦終了


新道寺  48800(+ 3200)
清澄  198500(+ 9900)
姫松   65700(+ 3100)
千里山  87000(-16200)


144: 2015/04/12(日) 17:37:23.21 ID:epnM8ozT0

浩子「……戻りました」ウツムキ

雅恵「あんなヌルイ3筒切っておいて、どの面下げて戻った?」

セーラ「監督の姪っこやからって足引っ張って許されるとでも思っとるんか? 何であの見え見えの三色に振り込んだんや?」

怜「まあまあ、誰にだって失敗はあるやろ。それがたまたま、絶対にしてはいけない局面での、素人でもやらん大失敗だっただけや。なあ、そうやろ?」

浩子「ううっ……す、すみません……監督の顔に、泥を……」グスッ

泉「ちょっ!? 船久保先輩泣いてますやん!?」

竜華「そ、そうやで、流石に悪ノリが……」

浩子「いえ、目薬です。てゆうかあの三筒差し込みですし」ケロッ

怜「せやろな。けど、泣いたのはちょっと焦ったわ」

セーラ「ここまで読まれとったとは……流石フナQ」

浩子「へこまされたからこういうネタで来るのは読めますからね、目薬仕込んどけば大体のネタに対応できると踏んだわけです」

雅恵「浩子、末恐ろしい子やな」

145: 2015/04/12(日) 17:38:27.33 ID:epnM8ozT0

浩子「しかし、真面目な話、大分差を詰められてしまいました。ドラ対子は計算外です」

怜「大丈夫やろ。何のためにうちが先鋒戦終わってからずっと竜華の膝枕に頭乗せてたと思っとるんや?」

セーラ「お前の欲望のためやろ」

怜「くくく……わが欲望が満たされしとき、卓上全てを支配する力が生まれ……って何やらすねん!?」

雅恵「まあ、効果のほどはこれから見せてもらえるらしいからな。行けるか、清水谷?」

竜華「どうにかしますわ。北大阪の個人一位にお任せあれ」

怜「いや、竜華は氏亡フラグいらんから。フナQと違って天然やし」

セーラ「最終戦の前まで一位やったのに、怜が俺ばっか狙うから俺が三位に……」

怜「私がリーチしてんのにズラさんセーラが悪いんやろ」

セーラ「鳴いたら安くなるやん」

怜「ツモられたら点棒減るやん」

セーラ「安く和了るぐらいなら点棒取られてから高い手和了って取り返した方がええやん」

泉「なんですかそれ?」

怜「安手の後に高い手和了って二回和了る方がええに決まっとるやろ」

浩子「園城寺先輩が全面的に正しいですね」

竜華「あはは、ほな、行って来るでー」

206: 2015/04/20(月) 20:09:10.36 ID:Kepx0/M90

絹恵「すみません、新道寺にコンボを許してしまいました」

恭子「言いつけどおり新道寺より上で帰ってきてくれたし、上出来や。あとは任しとき」

洋榎「良かったで、白水とバカヅキしてた原村相手にプラスで帰って来たんやから文句ないわ」

漫「派手な試合やったな、主将が打ってるんかと思ったわ」

絹恵「お姉ちゃんみたいって言われんのが一番うれしいな」

由子「千里山も大分落ちて来たし、二位争いは混沌としてきたのよー」

郁乃「そんでもって~、複雑な展開は~、末原ちゃんの十八番やんな~?」

恭子「そういうことやな、任しとき。私らの最後の夏、こんなとこで終わる気はあらへん」

207: 2015/04/20(月) 20:09:52.38 ID:Kepx0/M90

咲「……さて、私のやることは決まってるよね」

照「もう試合は大体決まったし、親番をわざと流しつつ、連続和了で速攻で終わらればいいんじゃないかな」

久「地区大会の20万点プレイヤー、相手に不足はないでしょう。ここで勝てば、『長野のレベルが下がった』なんて話は、言った人間が馬鹿にされる妄言になるわ」

まこ「止める気はせんな、思いっきり暴れて来い」

優希「ぶちかましてやれ! 咲ちゃん!」

京太郎「じゃ、行こうか、お姫様」

咲「うん。いつもありがとう」


照「……軽くながして……うん、いいや、諦めよう。どうせ注目されるのは咲だし」

久「さて、それはそれとして、実際のところ、あのコンボって破れるの?」

照「難しい。二人とも地力が高くて、厳しい条件を達成しないとコンボにならないから能力自体の強度も高い、一人で破れる人はプロでもほとんどいないんじゃないかな?」

久「高校生だと一人で破れるのは照ぐらいってこと?」

照「なんで今の話で私には破れることになるのか理解できない」

久「不可能じゃないならあんたは出来るでしょ」

照「その前提はおかしい」


ガチャ


和「戻りました」

まこ「お疲れさん、後半は見事なトップじゃったな」

優希「さっすがのどちゃんだじぇ!」

和「東場で幸運に恵まれましたね。先輩方が作って下さったリードのおかげで楽に打てました」


照「むー……どうしたらこの過大評価を改めさせることが出来るのか」

久「いい加減に認めなさいって、天江衣と宮永咲と竹井久の三人がかりで挑んで来たのを返り討ちに出来るのは全国でもあんたぐらいよ」

照「そのうち二人は本気で勝つ気があるのかどうか疑わしい、証拠として採用することは出来ない」

208: 2015/04/20(月) 20:10:19.30 ID:Kepx0/M90

西家 恭子「……来たか」

北家 姫子「よろしく(北家か……ツイとーね)」

起家 咲「よろしくお願いします」

南家 竜華「よろしくお願いします」

209: 2015/04/20(月) 20:11:51.42 ID:Kepx0/M90

恭子(鶴田が北家……コンボが決まっとる東四局一本場は自力で早和了りすれば親を引ける。『勝つ』思考の人間はツイとるって考えるやろな)

恭子(せやけどな、『負ける』思考からすると、それはツイとらんことになる。なにせ、親の和了りを三人全員が邪魔するんやからな)

恭子(たとえば、北家は宮永が望ましい。トップの清澄なら、和了らせてくれるなら和了って連荘するやろ。化け物二人がかりで一本場を呼び込めるわけや)

恭子(宮永を味方につけるのと、宮永を敵に回して自力で一本場を引き寄せるの、えらい違いやで?)

恭子(あるいは、私なら親で和了りを見逃す余裕なんてない。鳴けるとこくれたらホイホイ釣られて一本場をくれたるわ)

恭子(まあ、私とコンボが成立してない素の鶴田の急造コンビが宮永の連続和了に対抗できるかは怪しいけどな)

恭子(清水谷が北家が最悪のパターンやろな。手が入ったとしても局を進めるために和了り放棄まである、コンボを意識しとればなおさらや。最悪は避けたことになるな)

恭子(私の『負ける』思考では、考えられる四通りの北家の中で、新道寺にとって下から二番目の展開)

恭子(ついでに、私の西家。これは悪くない。悪いのは起家と北家や。新道寺のコンボ絡みで親かぶりやら全力で流されるやらのリスクがあるからな)

恭子(四つあるうちで上二つの片方を引いた私と、四つのうち下から二番目の場所を引いた鶴田。ツイてるのはどっちやろな?)

恭子(鶴田もこの局は実力で打つはず。流れが私にあるなら、ここで速攻かけて逃げ切ったる)

210: 2015/04/20(月) 20:12:50.76 ID:Kepx0/M90

東一局


竜華(ずっと膝枕しとったから、なんかまだ怜が居るみたいやな)

怜ちゃん「おるでー」

竜華(……は?)

怜ちゃん「どうもー、【あなたの膝の枕神】怜ちゃんでーす!」

竜華(……ん~、疲れとるんかなあ、大事な大将戦やのに)

怜ちゃん「さーて、んじゃ、サクッと和了りへのルートを見せたるわー」


竜華手牌

24赤59s66788p東東西北


怜ちゃん「9s、7p、2s、赤5s、8m、4s、1mの順で切れば、2668899p東東西西北北で2pをツモって和了れるでー」

竜華(なんかやけにリアルやから一応信じるけど、それ、切り順変えたらアカンの?)

怜ちゃん「二巡目の7筒と四巡目の赤5索を末原さんが鳴くことでツモが変わるの前提の和了りやから、変えたらアカンよー」

竜華(いや、しかし、二巡目でその7筒を切るのは……赤5索と4索で赤から切るのも……)

怜ちゃん(お試しの一回目でこんな手持って来る竜華が悪いんや)

咲「……切りましたよ?」

竜華「あ、すまん……」

ツモ:北

竜華(早速四つ目の対子。まあ、まだ一打目は自然や、でも、さっきのが本当に怜の力なら……)

打:9s

竜華(信じてみるか。無理気味やけど、混一色七対子って狙い自体はそこまでおかしくもない。鶴田のコンボも決まってるかもしれんし、安牌抱えて進めるのもわるくないやろ)

211: 2015/04/20(月) 20:15:20.05 ID:Kepx0/M90

セーラ「おいおい、竜華のやつ、なんであの7筒切ったんや?」

怜「ん~、わからんな。何巡先が見えてもアレは切らんと思う。順子が普通に伸びそうな手やし、四対子から七対子の決め打ちってのもなあ……」

泉「清水谷先輩はあんな切り方せんから、なんかあるとしたら園城寺先輩の力でしょう? なんでわからんのですか」

浩子「しかし、末原さんが鳴きましたね。鳴かせたのかもしれんとなると……まさか……」

雅枝「分かるんか?」

浩子「……たとえばですけど、うちの二軍に哩姫のコンボみたいな力が宿ったとしたら、どうなると思いますか?」

怜「……そのままやろ? 先に出る方が和了ったら倍の翻数で和了る、制約とかも同じになる。ただ、地力で劣る分だけあの二人よりは弱くなるやろな」

浩子「うちはそうは考えとらんのですよ。能力にもよるでしょうけど、今のコンボの例なら、おそらく和了った翻数分のドラが入るとか同じ翻数で和了るとか、そんな感じで弱体化すると思います」

セーラ「使う奴が弱いと能力が弱くなるってことか?」

怜「……なるほど、私の能力でも、使い手のレベルによって効果が変わるってわけやな?」

浩子「はい。そして、いま、清水谷先輩が園城寺先輩の能力を使っているとすると……」

セーラ「すると……どうなるんや?」

浩子「その前に確認しますけど、園城寺先輩の地力は、今でも三軍クラスなんですよね?」

怜「せやな。大会で揉まれて多少は成長しとるかもしれんけど、一巡先が見えんかったらいいとこ二軍の下の方やと思う」

浩子「つまり、園城寺先輩の力は、三軍が使っても千里山のレギュラー全員を倒せるぐらい強力な力です。それを、もともと一軍、北大阪個人戦一位の清水谷先輩が使ったら?」

雅枝「……さっき言ったように実力に応じて能力の効果も変わるとすると、相当強力な能力になるな」

浩子「それこそ、一巡先を見るどころか、和了りへの最善の手順を見せる……なんて能力が出てきてもおかしくないですよね?」

泉「そんなん反則やないですか」

浩子「……でも、どうやらそれっぽいで? 7筒に続いて赤5索の先切り、いずれも切った牌が鳴かれた。ツモ順がズレて、出来たのがあの形や」

雅枝「あの巡目以外に切った場合は、こうはなってないな。萬子をツモって赤5索を切った時は何をしているのかと思ったが」


『ツモ。面前ツモ・混一色・七対子。3000・6000』


212: 2015/04/20(月) 20:16:31.71 ID:Kepx0/M90

照「……は?」

久「随分妙な切り順だったわね。まるで未来が見えてるみたいな」

照「いやいやいや、それは無し。反則」

和「えっと、照さん?」

まこ「あんたに反則とまで言われるとか、相当酷いんじゃろうな」

優希「で、一体何やらかしたんだじぇ?」

京太郎「照さん以上の反則とかそうそうないと思うんだが」

照「須賀君にまで不当な評価を受けだした……それはさておき、心の準備をして聞いてほしい」

久「なによ、もったいぶって」

照「彼女の能力を発表します」

まこ「本当にもったいぶるのう」

照「彼女の能力は『その局で実現可能な最高打点の和了への手順を視る』能力です」


久・まこ・和・優希・京太郎「「「「「……は?」」」」」


久「いやいや、手順を視るっておかしいでしょ!?」

まこ「ちゅうか、『和了までの手順を視る』って、和了る可能性が無い手牌以外は必ず和了るってことじゃろそれ!?」

優希「照さんが反則だって言うぐらいだから相当ひどいと思ってはいたけど……予想以上だったじぇ」

京太郎「どうやって勝つんだよそれ……」

照「勝ち方はある。相手が和了る可能性が無ければいい。つまり、どうしようもない手……たとえば天和とかを持って来れば勝てる」

久「まあ、天和まで行かなくても5巡以内とか鳴きが発生しないとかならどうしようもないでしょうけど、それでもその対策が実現できそうな人間が数人しか思いつかないわね」

まこ「妹尾の奴は出来そうじゃな。三人がかりでもどうしようもないことが度々あったからのう」

和「龍門渕さんなんかは能力がそのまま対策ですね。それにしても酷い……」

213: 2015/04/20(月) 20:17:08.57 ID:Kepx0/M90

洋榎「なんやあの切り順? 清水谷、あんな打ち方する奴ちゃうやろ?」

由子「普通のデジタルだったはずなのよー」

郁乃「ちょっと~、これは~、アカンかも~……使用回数とかに制限があるとええんやけど~」

漫「なんの話ですか?」

絹恵「なんかの能力やってことですか?」

郁乃「多分~、能力で間違いない~。内容は~、現時点では不明~。せやけど~、あの手順であの手~、相当おかしな能力なんは間違いない~」

洋榎「能力なんかに頼らんで実力でこいや! お前は普通に打ってもうちと勝負になるはずやろ!」

214: 2015/04/20(月) 20:17:52.84 ID:Kepx0/M90

東二局


竜華(すごいすごい! 怜はやれば出来る子やって、うち信じとったよ!)

怜ちゃん「せやろせやろ~、これからは私に感謝の気持ちを込めて膝枕するんやで~」

竜華(で、次は?)

怜ちゃん「その前にチュートリアルの続きやな。枕神怜ちゃんやけど、これは対局中いつでも使える。基本的には配牌時が一番ええけどな」

竜華(手が進んでもうたらその分だけ最善を逃すからな、そらそうやろ)

怜ちゃん「いや、例えば、ラスト三巡だと先を視るのに使う力が少ないから、一回分の力で三回ぐらい使えたりするんや」

竜華(あ、なるほど……けど、ラスト三巡で大した足しにならん力を三回使うよりは配牌で使う方が良さそうやな)

怜ちゃん「あと、枕神怜ちゃんの使用回数はフルチャージで基本五回。もう二回使ってもうてるから、竜華が今回使えるのは三回だけや」

竜華(え? こういうチュートリアルって使用回数減らんもんやないの?)

怜ちゃん「現実はゲームみたいに都合よく出来とらんからな、この世界は非情なんや」

竜華(辛いなあ……なら、残り三回を前半後半で上手く振り分けんとな)

怜ちゃん「休憩中に本体がチャージしてくれるやろから、前半で使い切ってしもうても後半で一回は使えるで。本体が無事なら一試合に使えるのは合計六回やな」

竜華(膝枕でチャージできるんやな。了解)

怜ちゃん「ほな、用法用量を守って怜ちゃんを使ってな~。ここぞという大事な場面で呼んでや~」ヒューン

215: 2015/04/20(月) 20:18:23.72 ID:Kepx0/M90

竜華(ちょい待ち! 手順! この局の最善!)


怜ちゃん「……竜華、現実って非情やな?」ピタッ


竜華(チュートリアルでも使用回数が減る鬼畜仕様の話はもうええわ)

怜「いや、ちゃうねん。ないねん」

竜華(……は?)

怜「この局、竜華が和了る手順は存在せん。ごめんな」

竜華(……マジで?)

怜「まあ、和了れんことが分かるだけでも無駄やないで~、振り込まんように気を付けてな~」

竜華(怜の役立たず――!!!!)

216: 2015/04/20(月) 20:18:57.77 ID:Kepx0/M90

咲(……あまりのチートに驚いてる間に親が流れちゃったけど、清水谷さんの方は力押しでどうにかなるよね?)

咲「ツモ。400、700」


111234s999p78m南南 ツモ:6m


竜華(三巡目……鳴くチャンスもなかった。まあ、これは止めようがあらへんわな。役立たずとか言ってごめんな怜)

恭子(始まったか、連続和了。県予選の一回戦、個人戦でも基本的にはこの打ち方やった。脅威の和了率と徐々に上昇する打点、個人戦では東場のこいつの親番を超えられた対局はほとんどなかった)

姫子(ちゅうても、今回はこいつの親番、南一局に鍵ばもらっちょる、連続和了自体は止められるっちゃね)

恭子(さて、鶴田、これは具合が悪いんやないか? 東四局一本場、来るとは思えんで?)

恭子(そして、さっきの清水谷の和了り、手順が妙やった。データの少ない宮永と、今までのデータにない打ち方の清水谷……不確定要素だらけやな)

恭子(新道寺が千里山を削ってくれんとうちも困る。さて、どう動くべきやろな?)

217: 2015/04/20(月) 20:19:58.26 ID:Kepx0/M90

照「まあ、咲なら力づくで行けるよね」

久「『行けるよね』じゃないわよ。やっぱりあんたらの方が酷いチートじゃない!?」

照「竹井さんも出来るでしょ、強行突破」

まこ「否定できんの。こいつはこいつで異常じゃけえ」

和「心配して損しました。照さんが大げさに騒ぐから……」


『ツモ、3000・6000』


京太郎「大げさに騒ぐに値する酷いチートだったはずなんだが……ご覧の有様か」

優希「あっという間に二連続和了、しかも二回目で跳満……あそこに座ってるのが誰かを忘れてたじぇ」

久「全国MVPの天江衣を大差で下した我らが長野のナンバー2、個人戦一位の宮永咲よ。並大抵どころかよっぽどのことでも崩れやしないわ」

照「ちょっと待って、竹井さんの中のナンバー1が個人戦12位止まりの人間な気がするんだけど?」

久「他に誰が居るのよ?」

照「咲がナンバー1でいいんじゃないかな。個人戦一位だし」

久「個人戦に出てない衣とかもいるから、個人戦の順位で決めるのはちょっとね……」

照「個人戦に出てて12位の人間をナンバー1にする理由にはならない」

久「いや、あなた個人戦の一・二位と全国MVPを三人まとめて返り討ちにしてるし」

照「それはそれ。返り討ちって言っても順位は二位だし」

久「10回打って全部ね。平均着順でも平均素点でも四人の中でトップだったわね」

照「半荘一回で見れば一度も勝ってない、やはりその時トップ率が一位だった咲をナンバーワンとすべき」

219: 2015/04/20(月) 20:21:27.87 ID:Kepx0/M90

恭子(ダメやな、千里山が負ける可能性を上げるために、鶴田に何とかしてもらわんと……)

恭子(宮永は連続和了中は打点を下げない。さっき一気に上げて跳満やったから今度は倍満以上の和了りになるはず、なら、手作りに時間がかかる)

恭子(ここは鶴田をサポートして東四局一本場を……と言いたいが、また清水谷がおかしい)

恭子(第一打でドラの6萬……私は配牌にあった5萬と一巡目にツモった7萬で6萬を鳴けるようになった、つまり、私が鳴くことができない唯一のタイミングでドラを処理された)

恭子(清水谷、一体どうなっとるんや?)


竜華「ツモ」パタン


112233s7899m789p ツモ:9m


竜華「面前ツモ、純チャン・平和・一盃口。3000・6000」

咲(さっきの東三局、例の力を使った気配がなかった。多分使用回数に制限があるんだね)

咲(制限があるなら、使うのはどこか? 当然、鶴田さんに和了らせたくないからこの東四局は使うよね)

姫子「あ……」

姫子(部長にもらった鍵が……そんな……)

恭子(コンボが決まってない状態の鶴田は並の県代表エース程度、私と組んだところで宮永に対抗できるかと言えば、それは怪しい。だから鶴田が和了れんかったこと自体は仕方ない)

恭子(せやけど、これは話が違うで。清水谷が明らかにヤバイ。倍満で手作りに手間取るとはいえ、単独で宮永の連続和了を止めおった。一体どうなっとるんや?) 

220: 2015/04/20(月) 20:22:31.82 ID:Kepx0/M90

久「流石に倍満を作りながらじゃ速度で勝つのは無理か」

照「どうかな? やろうと思えば勝負にはなったんじゃないかと思う」

まこ「……それだと、やろうと思わなかったっちゅうことになるが?」

照「うん。次の一局を考えれば当然の選択」

京太郎「次の一局……あ、そうか。東四局の一本場ばっかり意識してたけど」

優希「次の南一局もコンボが決まってたはずだじぇ」

久「東三局で跳満まで上げたのも、この展開を読み切ってのことかしら?」

照「だろうね。千里山は東四局で例の力を使うだろうから、その前に出来るだけ点数を上げて稼いだ」

久「そして、連続和了をリセットして、最速の和了りを狙って南一局に挑む」

照「狙いは一点」

和「白水哩と鶴田姫子のコンボを崩すこと、ですね?」

久「打点の縛りのない最速の和了と、和了率100%の最強コンボ。全国区の魔物の切り札同士の激突よ。どうなるかしらね?」

照「今の咲が一人で使えるカードとしては、プラマイゼロ狙いの時のマイナスで迎えたオーラスの和了りを除けば最強の手札」

京太郎「今回はオーラスで白水さんが和了ってないので、コンボにぶつけられる中では最強の手札なんですね」

照「そう。そして、咲の本気度はご覧のとおり」

まこ「あの卓には入りたくないのう……心臓が止まるかもしれん」

221: 2015/04/20(月) 20:23:22.13 ID:Kepx0/M90

南一局 ドラ:白


咲「」ゴゴゴゴゴゴ

姫子「」ゴゴゴゴゴゴ

恭子(……冗談やろ? 私でもわかるで、こいつらなんかヤバいことしとる)

竜華(盛り上がっとるなあ、ほな、三つ巴といこか? と言いたいとこやけど、連続和了の一回目に怜パワーが効かんのは検証済みやしな。安牌抱えて逃げ回っとくか)

咲(配牌で聴牌。ここまで来るなら天和が来てほしいんだけどね。それなら絶対勝てるから)


23456s33344p西西西 ツモ:4p


咲(無駄に高そうな手だけど、どーしよっかなあ、これ)

222: 2015/04/20(月) 20:24:19.89 ID:Kepx0/M90

【白糸台高校】


淡「うーちーたーいー!! あそこの卓に入りたいー!! めっちゃ楽しそうじゃんあれー!!」

憩「あれは楽しそうやなー。けど、勝てるかどうかわからんから団体戦ではやりとうないですわ」

菫「清水谷が東一局と東四局で妙な切り順……いや、切る牌自体がおかしかったな。あれはなんだ?」

憩「知りませんよーぅ、奈良の誰かさんじゃあるまいし、なんでもうちに聞けば分かると思ったら大間違いです」

誠子「憩にわからないんじゃお手上げだな」

尭深「デジタルでないのだけは確かですね」

淡「なんかの能力だよ! じゃなきゃ説明つかないね! 山が見えてる……ううん、鳴きまで計算してるみたいだから卓上全ての牌が見えてるのかも!?」

菫「だとしたらお手上げだな」

憩「いえいえ、単に牌が見えとるだけやったら、鳴くと思ったところで鳴かんとか、計算違いを起こす方法はあります。見えてもどうしようもないこともありますし」

尭深「それに、計算が緻密なほど、一つずれたら全部ズレちゃう。牌が見えてるだけなら、東一局の七筒切りとかは危なすぎる橋だよね」

誠子「だな、あそこで姫松が鳴かなかったら滅茶苦茶になる、赤5索の先切りだってそうだ。末原さんは速攻をかけたが、鳴かない選択肢も十分有力だった」

菫「山と手牌が完全に見えているにしても、相手の出方も分からない東一局でやるにはリスクが高すぎる、か。なら、あれはなんだ?」

憩「せやから分からんって言ってます。山や手牌が見えとるってだけでは説明がつかんので、いくつか仮説立てて検証中ですわ」

菫「ちなみに、その仮説というのは?」

憩「今生きとるのは、『最善の手順が見える』『麻雀の神様が一時的に代走してくれる』『一翻役が出来る可能性を捨てることで、捨てた翻数分だけ望んだ牌をツモる』です」

淡「なにそれ!? ずっこい!」

223: 2015/04/20(月) 20:25:31.25 ID:Kepx0/M90

菫「最後のを除いて酷い仮説ばかりだな」

憩「酷い打牌で最高形の和了りですから、仮説も酷くなりますわ」

菫「あの手順の混一色七対子とドラ切りの純チャンフリテンツモか……確かにそうだな」

誠子「ピンフの可能性やドラを捨ててチートイや三暗刻とかの縦に伸ばした手、あるいは純チャン・混一色なんかを確定させる……けど、それにしてはちょっと違和感があるな」

憩「それやと思いたいから可能性を捨ててないだけで、有力なのは前の二個の方です。上手いタイミングで鳴かせとるのはその能力じゃ説明できません」

尭深「前の二個だと、毎回使われたらお手上げだよね」

憩「毎回使うわけでもないので、使用できるかどうかは神様の気まぐれなのかもしれませんし、強い力やから回数制限があるのかもしれません」

誠子「だとすると、東四局で使っていたからランダムよりは回数制限が有力かな?」

憩「有力やけど、ランダムがたまたま大事なとこで来ただけかもしれんし、その判断は保留やな。……今分かるのはこんなとこです」

菫「十分だ。お前が居てくれて本当に助かる」

憩「褒めても何も出ませんよーぅ?」

淡「って、またケイに美味しいとこもってかれた!?」

誠子「いや、お前的外れなこと言っただけだろ」

尭深「淡ちゃん、打つと強いんだけどね。普段の言動は全く強そうに見えないよね」

淡「えへへー、タカミーに褒められたー」テレテレ

憩「ま、うちらがおるうちは頭使うのはうちらやからな……うちらが卒業した再来年のこと考えると頭が痛いけど」

誠子「そんな先のこと考えても仕方ないだろ、監督だっているし、何とかなるさ」

淡「あれ? そういえば監督は?」

菫「さっきお手洗いに行ったきり戻ってない。どうせ迷子だ、ほっとけ」

憩「なんでこの距離で迷子になるんやあの人……いつものことやけど」

尭深「この前は、『蝶々が飛んできたから眺めてたら自分が今いる場所がわからなくなった』って言ってたよ」

224: 2015/04/20(月) 20:26:39.09 ID:Kepx0/M90

姫子(宮永は6索切り……さて、どうすっか?)


11449s3388m赤5p西発発 ツモ:9s


姫子(チートイドラ1、三翻の手ばい。部長のくれた鍵は四翻キー……ここから一翻足す必要がある)

姫子(出やすか牌は西ばい。やけど、それやったらリーチしてツモらんと四翻にならん。ツモるなら出やすさは関係ない)

姫子(ドラへの待ち替え、あるいはリーチして5筒の出を待つ? ダマで5筒をツモる? わからん、どのルートで四翻になっと?)

姫子(こがんわからんことは珍しか。いつもはリーチしてツモるしかなかったり、翻牌を鳴いたりしてて迷わん手が来とった。これは、こいつのせいか?)

咲「」ゴゴゴゴゴ

姫子(……分かる、多分、これはあいつの手の中で暗刻や。これを抱えていたら和了り目はなか……やけん、切る牌はこっちばい!)

打:西

咲「それ、槓」

姫子(やっぱり暗刻か、まずは正解。問題はこっからやね)

225: 2015/04/20(月) 20:27:31.12 ID:Kepx0/M90

照「和了る道があるとしたらそっち。鶴田さんの選択は、自分たちのコンボを信じるなら正しい」

久「けど、咲の槓材でもある」

照「だからこそ、切らないと、少なくとも七対子の和了り目はない」

久「全面戦争って感じね。自分たちはコンボで必ず和了るはずだから、咲に槓させても咲が和了れるはずがないってか」

まこ「しかし、咲も嶺上開花だけは譲らんじゃろ」

和「嶺上開花は、譲る譲らないの話ではないはずなんですけどね」

京太郎「今更過ぎるな、咲だぞ?」


『もう一個、槓』


優希「一個目の嶺上牌は4筒だじぇ!」

久「三面張を崩したのはこれを槓するためね。さあ、どうなるのかしら?」

照「……」

226: 2015/04/20(月) 20:28:18.68 ID:Kepx0/M90

透華「そこですわ、やっておしまいなさい、咲!」

純「いや、簡単に言うけどな、アレ化けもんだぞ? 見た感じだと衣の海底よりヤバイ」

一「え、嘘でしょ? 彼女がそこまで強いようには見えないけど」

純「嘘ついてどうする。そりゃ地力は衣に及ばねえだろうけど、条件が厳しくて発動も相方任せな分、発動した時の強度は衣以上なんじゃねえか?」

智紀「となると、咲が槓をしても決まったとは言えないと? 咲の槓と言えば衣をハメた大技だけど」

ゆみ「それで倒せないとなるとたいそうな化け物だな。とはいえ、咲ならコンボが発動してないときに親が回れば連荘して飛ばすことも出来る」

美穂子「それはどうでしょう? 清水谷さんも妙な打ち方をしています、少なくとも、私の知っている清水谷さんはあんな打ち方はしません」

智美「清水谷もへんな能力を身に着けたかもしれない、それを使って、咲の連荘が伸びて手が重くなったところで清水谷が止めるってことかー?」ワハハ

睦月「うむ」

透華「御託はいりません! わたくしたちを退けた長野代表に求められるのはただ一つ、完全なる勝利! それだけですわー!!」

星夏「……大丈夫でしょうか?」

純代「……」

桃子「照さんや衣ちゃん相手じゃあるまいし、咲ちゃんが本気だして和了れないってのは想像つかないっすね」

純「話聞いてたかお前? コンボが決まってる局に限れば衣以上だって言ってんだろ。とはいえ、咲なら行けると思いたいな、何せ、衣に勝ってるんだ」

227: 2015/04/20(月) 20:29:12.58 ID:Kepx0/M90

咲「もいっこ、槓」

恭子(三連続槓!? いや、こいつにも槓があるのは知っとったけど、実際目の当たりにすると異常やな。二連槓ですら実戦では滅多にお目にかかれんちゅうのに)

竜華(槓材持ってたわけでもなく、ツモった嶺上牌で槓しての三連やろ? もうこれだけで奇跡みたいなもんや)

姫子(奇跡とかそんなもん関係なか、こいつは和了れん、私と部長の絆が切れるはずがなか!!)


咲(……見えなかったから三回目の槓にかけてみたけど、ダメか。ツモったのは向こうの和了り牌……これはちょっと厳しそうだなあ)


2345s 暗槓:3333p 4444p 明槓:西西西西 嶺上ツモ:赤5p

打:5s


姫子(そうたい、和了れるはずがなか! この勝負、もらった!)

竜華(和了らんのか……とはいえ、あれで親の70符二翻以上が確定やからな。手出しで両面塔子崩して聴牌してないってこともないやろ)

打:5s


恭子(オリたか、賢明やな。てゆうか、私が一打も打っとらんうちから大暴れすんなや)

恭子(河に出とるのは槓された西と5索二枚。どないせえOちゅうねん!?)

恭子(どうなっても知るか! とりあえず字牌や!)

打:北


姫子「ツモ」


114499s3388m赤5p発発 ツモ:5p


姫子「面前ツモ、七対子、赤1。1600・3200」

咲(ツモで1翻上乗せしたけど、私がツモ切りしても赤だから4翻か。ん~……上を行かれた感じがするね)

228: 2015/04/20(月) 20:30:17.91 ID:Kepx0/M90

南二局


姫子(……和了れたのはよか、ばってん、今のは一番小さか四翻のキー。それに、二位との点差は開始前より開きよったと。清水谷が予想以上に強か)

姫子(後半でもらった鍵だけで届くとは限らん、リザベーションを使っとらん局でんしっかり稼いでいかんと……とはいえ、ここと次の南三局は未達の局やけん我慢ばい)

咲(……うーん、どうしようかなあ。ちょっと私の力じゃアレは破れそうにない。一本場は飛ばしちゃえばいいけど、あいにく役満は東一局なんだよね)

咲(そこまでに飛ばすっていうのは親番が残ってないから無理。さて、次に打つ手は……)

恭子(さて、これは不味いな。化けもんしかおらんやないか。特に清水谷、いつからそっち側に行ったんやお前?)

竜華(あと二回。休憩中にチャージするのも含めて三回……どこで使うかって言ったら、まずは親番やろ?)

竜華(この配牌なら、宮永の連続和了一回目相手でも勝負になるんと違うか?)


竜華手牌

1236667p7s発発南南南


咲(回数制限があるにしても、親番のここは多分使って来るよね? )

竜華(ものは試しや、やってみんと分からん。ときー!!)

229: 2015/04/20(月) 20:30:55.04 ID:Kepx0/M90

怜ちゃん「はいはーい! あなたの膝のm……」

竜華(口上はええから、どうなん? 和了れそうか?)

怜ちゃん「あー、それなんやけどな、せめて向こうが満貫ぐらいまで伸びとったらええんやけど、宮永さんの連続和了一回目やから……あれ?」

竜華(どした?)

怜ちゃん「竜華、喜べ、和了れるで! 満貫や!」

竜華(マジか!?)

怜ちゃん「配牌が良かったからやろな、宮永さんの連続和了の一回目相手でも勝負になるで!」

竜華(よっしゃ! ありがとー怜!)

怜ちゃん「西ツモって7s、5mツモ切り、発鳴いて西切り、北ツモ切り、その次でツモ和了りやでー! 順番変えると鳴かれるから気を付けてなー」

230: 2015/04/20(月) 20:31:29.48 ID:Kepx0/M90

『ツモ、混一色、発、南。4000オール』


煌「これは非常にすばらくない……」

仁美「千里山の背中がどんどん遠くなっていきよる」

美子「……まだ、役満と倍満二回のこっちょる、宮永でも哩たちのコンボば破られんってのが分かったとこやけん、どれか一発千里山にぶち込めば行かる」

哩「前半は鍵ば二本しか渡せんかった、しかも一本は使えん鍵。前半は仕方なか」

231: 2015/04/20(月) 20:32:01.62 ID:Kepx0/M90

南四局


咲「ツモ、嶺上開花。70符2翻は1200・2300」


2345m234s111p 暗槓:西西西西 ツモ:5m


恭子(宮永の3連続和了であっさり終了……アカンな、焼き鳥や。しかし、和了れる局なんかあったか? 全部私にはどうしようもない局やったんと違うか?)

竜華(一本場は安く流れたし、後の二局は姫松と新道寺の親かぶり。前半は上々の出来や、問題は……)

姫子(……まだ、おわっとらん。後半、絶対にまくる! シード校が二回戦で消えるわけにはいかん!)

咲「前半終了ですね、お疲れ様でした」


232: 2015/04/20(月) 20:35:23.17 ID:Kepx0/M90


大将戦前半終了


新道寺  35600(-13200)
清澄  203900(+ 5400)
姫松   45100(-20600)
千里山 115400(+28400)



『清澄高校が持ち点20万点を突破――――!!!!! 全国屈指の名門三校を相手に圧倒的な強さを見せている―――!!!』

『しかし、この大将戦に限れば千里山の清水谷選手の活躍が素晴らしいですね。普通ならこの前半で勝負をほぼ決めたと言えるところです』

『おっと、「普通なら」ってことはまだ決まりじゃない? 7万点以上の差を逆転する手段が姫松と新道寺に残されているということか――!!?』

『新道寺の鶴田選手は役満級の火力を持っていますから、親ならば直撃一回で逆転します。役満ツモで最低4万詰まりますから、倍満直撃での逆転圏内です』

『そうは言うけど、前半は正直パッとしなかったような……』

『それにも理由があるんですが、おそらく後半はその火力を存分に発揮してくれると思います』

『まだまだ勝負のアヤがあるー!! 諦めずに頑張ってほしい! むしろ頑張れー!! うちの視聴率のために―!』

『なにその利己的な理由での応援!?』


259: 2015/04/23(木) 23:24:38.63 ID:pRGhAnTc0

怜「おお、これやこれ、この太ももがええねん」ゴロゴロ

雅枝「……実際に結果が出とるからなんも言えんな」

セーラ「なあなあ竜華、アレどうなっとるんや?」

竜華「ん~、なんかな、怜が出てきて、正しい手順を教えてくれるんや」

浩子「効果は大体分かってます。使用する際の条件は?」

竜華「うちが使いたいと思って呼べば出てきてくれる。ただ、回数制限があって、五回や。一局の終盤とかなら消耗が少なくてもっと呼べるらしいけどな」

セーラ「なら、後二回か?」

怜「今チャージしとるから三回行けるんと違うか?」

竜華「あ、いや、一回不発で終わっとるんや。だから、後一回。チャージして二回」

浩子「不発?」

竜華「東二局で、どうやっても和了れんって言って怜が帰ってしもうたんよ」

泉「役立たずやないですか」

怜「言っていいことと悪いことがあるやろ! ……しかし役立たずやな」

雅枝「となると、宮永の連続和了の一回目や新道寺のコンボにはぶつけにくいな。どうやっても和了れんと言うとその辺や、実際、東二局はそれやしな」

竜華「けど、親やった南二局、配牌が良かったらそこでも和了れたんです。どうしましょう?」

浩子「宮永の連続和了を確実に止める切り札として使う、あるいは、今回は危険な東一局にぶつけてみる手もあります。
  役満さえ凌げば逃げ切りはほぼ確定、好配牌なら切り札一枚切る価値は十分にあります」

竜華「役満直撃だけは洒落にならん。もしダメでも和了れんことが分かれば守り重視で打てるし、悪くないかもしれんな」

セーラ「俺なら自分の親番で全部使うけどな。最初の親番で二回とも使う」

浩子「単細胞は黙っててください」

怜「せやせや」ゴロン

泉「最終的には清水谷先輩の判断ですけど、東一局にぶつけてみて、もう一回はどこかで切り札に使う感じですかね?」

雅枝「配牌次第で新道寺のコンボにぶつけられる切り札やっちゅうんなら、臨海や白糸台や永水、もちろん清澄相手にも有効に使える。試してみたいな」

竜華「分かりました。配牌見てからですけど、一回目は東一局、二回目はとりあえず温存して親番か宮永の連続和了を止める時に使います」

怜「その前に、二回目をしっかりチャージしていくんやでー」ゴロン

260: 2015/04/23(木) 23:25:35.53 ID:pRGhAnTc0

恭子「お手上げやな、あんなん聞いとらんわ」

洋榎「諦めんなや!? なんかあるやろ!」

由子「恭子がサジ投げるって相当なのよー」

恭子「……代行」

郁乃「人にもの頼むときは~、ちゃんと~、監督って呼んでほしいな~?」

恭子「……『代行』、清水谷の能力、何かしら見当はついてますか?」

郁乃「む~……末原ちゃんのいけず~。ちなみに~、大体見当つけたけど~、聞いてよけいに絶望する可能性もあるで~?」

恭子「そんなにヤバイ能力ですか?」

郁乃「喋るの疲れるから~、これ読んで~」

漫「メモ? ……いつの間にそんなもん書いとったんですか?」

郁乃「え~? 考えをまとめるのにメモとか取るやん~?」

恭子「つまり、改めて書いたものじゃなくて書き殴りのメモってことですね」

郁乃「うち几帳面やから~、書き殴りでも後で見やすいようにはしてあるんよ~?」

261: 2015/04/23(木) 23:28:02.97 ID:pRGhAnTc0

恭子「えーっと、時間も押してるんで一行目に『末原ちゃんLOVE』とか書いてあるのはスルーしますね」

洋榎「んなもん時間あってもスルーやろ」

恭子「……いくつかの仮説らしきものに×印がつけられとるな。×がついてないのは……【和了りへの手順を知る能力】?」

恭子「……ふむ。ほう。……確かに。……せやな。ああ、あの時のアレはそういう……」

洋榎「×印の横になんか書いてあるな? なんやこれ?」

郁乃「仮説を否定した理由やん~、見て分からんの~?」

漫「んなもん、見ただけで分かるんは末原先輩ぐらいですわ」

恭子「まあ、能力の内容自体はどう転んでも相当酷いものやっちゅうのはわかっとったからええとして……」

郁乃「ポイントは~、清水谷さんの表情~。ノート見て~」

恭子「東二局の三巡での和了りを見て『納得したような表情を浮かべた』……ですか」

郁乃「そうなんよ~」

恭子「考えられる理由は『力を使っても和了りへの手順が見えなかった理由が分かったから』……あいつ自身も能力が正確に分かってないっちゅうことですか?」

郁乃「あと~、東一局で七筒切る時の表情が~、意を決するような感じやったんよ~。 一か八かみたいな感じやったんちゃうかな~って」

恭子「この試合で使えるようになった能力やからぶっつけ本番。 で、東二局にも使ったけど手順が見えなくて不発やったと」

郁乃「そそ、神様が打つとか~、ドラなんかを望む牌と交換する能力やと~、東二局の表情が説明できん~。可能性はゼロやないけど~、細かく検証しとる場合やないから~、一番それっぽいのに決め打ち~」

恭子「……表情とかまで辻褄合わせるなら、能力の内容はこれしかない。相変わらず良く見てますね」

郁乃「それほどでも~」

恭子「となると、南二局の和了りから考えて、能力の発動は配牌を見た後で決められる可能性が高い」

郁乃「ん~? ああ~、なるほど~、さっすが末原ちゃん~、うち気付かんかったわ~」

恭子「東二局でダメだったのを、好配牌を見て勝負に行ったってことやからな。なら、能力の発動は配牌を見た後、しかも任意や」

恭子「配牌を見てから決められるなら、回数制限があるとしたら大物手を確実に成就させるために使うのが自然やろな」

郁乃「そんでもって~、和了りへの手順を視るってことは~、変な切り方始めたら止められんってことやから要警戒~」

恭子「……あいつが妙な打ち方を始めたら、それは和了りへの道のりをなぞり始めとるっちゅうことやから手遅れ。大物手がほぼ確実に成就する」

恭子「せやけど、それが分かってて私が振り込むことはない。宮永も相手のアタリ牌が見えとる節があるから多分振らん。鶴田が振るかツモるかやな」

恭子「能力自体をどうにかする手段は現時点ではなんもないけど、千里山と新道寺で撃ちあってもらえれば少しは楽になるな」

262: 2015/04/23(木) 23:28:56.40 ID:pRGhAnTc0

起家 竜華「よろしゅう(……起家、役満の親かぶりを喰らう席やな。最悪と言えば最悪、けど、どうせ怜の力を使うなら親番の方がええ。最高と言えば最高やな)」

南家 恭子「よろしくお願いします(少なくとも、新道寺のコンボの親かぶりだけはない席やな。まだ運はあるらしい)」

西家 姫子「……よろしく(南三局で部長から鍵ばもらっちょる、千里山に役満も被せられっし、終盤で親倍があるのもありがたか)」

北家 咲「よろしくお願いします(理想的な席順。これでダメなら方針転換するしかないかな)」

263: 2015/04/23(木) 23:30:37.25 ID:pRGhAnTc0


照「咲は真正面から力比べをしたら天江さんに勝てない」


久「どうしたのよ急に?」

まこ「……前半の南一局以上に本気の面じゃな。咲が何かする気みたいじゃぞ」

和「なにかとは?」

照「それを今から説明する」

京太郎「ああ、説明の前フリだったんですね」

久「咲は真っ向勝負だと衣に勝てない……けど、実際には大差で下してるわよね?」

照「そう、咲の本当の強さは、能力のぶつけあいとか互いにリーチしてのめくりあいとかの真っ向勝負での強さじゃない」

優希「はい先生! 真っ向勝負でも歯が立たないじょ!」

照「……それは知らない。話を進めていい?」

和「はい、どうぞ」

照「ここに居るみんなは分かってると思うけど、咲が天江さんに勝てたのは、他の二人を最大限に使って天江さんを三人がかりで止めたから」

久「……なるほど、そういうことか」

照「ここで問題。咲は真っ向勝負でコンボを破ることに失敗した。次に咲が取る行動は?」

和「コンボは破れないということを前提に、コンボが成立していない局で徹底的に叩くのが合理的ですね。今回はラス親がありますし」

照「不正解」

まこ「あそこに、照さんが反則と言い放ったほどの能力を使う打ち手がおるの」

照「さすが染谷さん、分かってる」

京太郎「えっと……もしかして?」

照「当然、使えるものは使う。多分、前半南二局の千里山の手、咲は止めるどころかサポートしてた」

久「そういえば発を鳴かせてたわね。サポートしてたとなると、長野の決勝で照が津山さんに国士を和了らせた時みたいに好配牌を送り込んだ可能性まである」

照「多分その通り。すべては、この東一局のため。清水谷さんのあの力を条件次第で新道寺にぶつけられると思わせるため。それを利用して新道寺のコンボを破るため」

京太郎「そこまでするのか……」

照「咲はアレだし、千里山も地力が高い。咲が千里山をサポートすれば、あのコンボともかなりいい勝負……いや、多分普通に勝てるレベルになる」

264: 2015/04/23(木) 23:39:39.20 ID:pRGhAnTc0

竜華手牌


3457s78p3455m発発発 ツモ:6s 


竜華(配牌は上々。とにかく速さが欲しい局面やから翻牌の暗刻はありがたい。ときー!!!)


怜ちゃん「えー? いま呼ぶんか? 無理やと思うんやけどなあ……」


竜華(休憩中に話したの聞いてなかったんか? 役満回避出来たら儲けもんやし、てゆうか親やし、ここで使わんでいつ使うんや?)

怜ちゃん「卓の外のことはノータッチやで~。 にしても、上手く行けば儲けもんや言うてもこれは無理やと思……おおおおおおおお!?」

竜華(どうした!?)

怜「あ、和了れるで! 嘘やろ!? いや、マジや、和了れる! なんでや!?」


竜華「っしゃあああ!!!」


咲「」ビクッ

恭子「お、おい、清水谷……どうした?」

竜華「あ……声出とった?」

咲「え、ええ……」

竜華「すまんな、ええ配牌やったからつい声出てもうた」

姫子(配牌が良かったぐらい関係なか。私と部長のコンボはプロでも半荘一回丸ごと仕込みに使ってようやく破れるっちゅーとった。高校生が破れるはずなか)


怜ちゃん「最終形は 345s78p55m ポン:発発発 チー:345m で9pツモやでー」

竜華(三面張をあっさり崩して、しかも暗刻の発をわざわざ鳴くんか……これは怜がおらんかったら和了れんな)

怜ちゃん「ふふん、もっと感謝してええで。ほんで手順は―――――」

265: 2015/04/23(木) 23:40:49.56 ID:pRGhAnTc0

竜華「ポン!」

ポン:発発発 打:6s

恭子(おい、ちょっと待て……第一打が7索、二巡目で手出しの6索ってことは初っ端から両面落とし。配牌が良かっただけかもしれんが、もしかしてそれ……)


恭子手牌

1257s4889p114m西北 ツモ:北


恭子(とはいえ、この手じゃどうにもならんしなあ……)

打:西


咲「ポン」

ポン:西西西 打:5m


姫子(!!?)


恭子(宮永がオタ風をポン、私から鳴いたから鶴田のツモが飛ばされる。これは鶴田への妨害……まさか、そういうことなんか?)


竜華「チー!!」

チー:345m 打:発


恭子(手出しでさっき鳴いた発……暗刻からわざわざ鳴いたことになる。間違いない、例の能力や)

恭子(なんかの間違いやと思いたいけど、清水谷の能力の見立ては間違ってると思えん。となると、このままやと清水谷が和了るんやな)

恭子(現状、千里山が遠すぎる。新道寺には千里山を削ってもらいたいとこなんやけど……清水谷が能力使い始めてからどうにか出来るんかな?)


ツモ:6s 打:4p


咲「それもポン」

ポン:444p 打:8m


姫子(あ、ああ……ダメ……ぶちょーが、感じられん……和了りが遠のいてく……)

恭子(役満ツモられるんも痛いけど、七万差のこの状況、千里山が無傷でこの局を乗り越えたらしまいや。なんとかせな……)

姫子(嫌……ダメ、その牌を取らないで……部長との絆を、切らないで……っ!)


竜華「ツモや!! 発のみ。500オール!」


姫子(いやあああああああああ!!!!!!!)

266: 2015/04/23(木) 23:41:17.03 ID:pRGhAnTc0

哩「……なっ!?」 

仁美「なにが、どうなって……」

美子「こ、こげなことあるはずがなか!! なんかの間違いばい!!」

煌「姫子……」

仁美「不味い、かなり動揺しとーと」

美子「こ、これどうなって……? プロ相手でも破られたことはなかやったのに……」

哩「ひ、姫子おおおおおお!!」

267: 2015/04/23(木) 23:41:45.70 ID:pRGhAnTc0

セーラ「よっしゃああああああ!!! 役満止めよった!!」

怜「あのコンボって鶴田さんの段階でも止まるんやなー。凄いなー」

泉「公式戦だと初めてやないですかね? というか、鶴田の様子見る限り、ガチで初めてなのかも」


浩子「まさに  初  体  験  !! やな」


怜「なんでそこ強調した?」

雅枝「宮永が清水谷のサポートに回っとったな。園城寺の力と清水谷の力、それに全国区の怪物の一人である宮永、流石の哩姫もこの面子相手に三対二では分が悪いか」

浩子「……新道寺のコンボが破られた。これであの卓で宮永に対抗する手段が無くなったな」

泉「へ? 清水谷先輩がおりますやん。今さっき、前半で宮永にも破れなかった新道寺のコンボを破ったんやから対抗できるんと違いますか?」

浩子「さっきの話聞いとらんかったんか? 前半の東二局で不発に終わった。既に一回潰されとるんや、宮永が本気なら、清水谷先輩の方はどうにか出来るってことやろ」

セーラ「いや、南二局で親満和了ったやん?」

浩子「今にして思えば、それさえも、この役満潰しに向けた仕込み……一人でダメなら二人、清水谷先輩と園城寺先輩の力をコンボ潰しに利用するためにわざと和了らせたんやないかと思えてきます」

泉「そういえば、あの時も宮永から鳴いとりましたね……けど、あいつでも牌が全部見えとるわけやないでしょうし、偶然じゃないですか?」

浩子「清澄の連中が、やることなすこと偶然で済ませていいような相手なら、この点差はついとらんやろな」

泉「うっ……」

雅枝「……新道寺のコンボは清水谷と二人がかりで抑え込む、これは利害が一致しとる。それ以外で清水谷が暴れようとすればあいつが直々に清水谷を抑え込む」

浩子「一か八かでコンボ潰しを仕掛けようと思わせるために、餌を撒いて誘導した。考えれば考えるほどそうとしか思えません、全部あいつの掌の上ってことですわ」

怜「新道寺のコンボを防いでも、宮永を倒すってことを考えたらかえって状況は悪化しとるんやな。喜んでもおれんってことか?」

浩子「はい、自分に利益があるように見えても、その実、宮永の勝利を盤石にするために利用されとるわけです。とはいえ、自分にも利があるのは事実ですけど」

雅枝「元々化け物みたいに強い宮永が、他家が『そう動かざるを得ない状況』を意図して作り出し、自分に有利な打牌を強いる。盤石やな」

浩子「この状況、打つ手なしですわ。残り半荘一回で三位に大差の二位ですから、一位を狙わんのやったら手を打つ必要もないですけど」

怜「今はええけど、この先……少なくとも決勝ではそういうわけにもいかんやろな。なんとか手を打たんと」

浩子「次の準決やって、今の新道寺や姫松みたいな状況にこっちがならんとも限りませんしね」

セーラ「ダメ元でガンガン行ったらええやん。麻雀は確率の影響を受けるゲーム、何回かやれば一回ぐらい通るやろ?」

浩子「清水谷先輩のアレは弾数に限りがあるので無理ですね」

泉「弾数に限りがあるからコンボ封じもこれっきりですし、今回の新道寺の立場ならそれでもええと思いますけどね」

雅枝「いや、この状況では流石に二位狙いや。使えば止まると分かったんやから、もう一回の使い道は南三局、新道寺の親倍潰しや。宮永の対策は決勝までになんとかするとして、今回は二位に甘んじる」

泉「勝負に辛いんですね」

雅枝「【常に一位を目指して】が部訓やけど、流石にな。判断するのは清水谷やけど、あいつもそういうとこでは抜け目ない」

268: 2015/04/23(木) 23:42:14.86 ID:pRGhAnTc0

『清水谷選手が幸先よく起家で連荘です! 三位との差を更に広げにかかるー!!!』

『うそ……あれ破るの、私でも難しいと思ってたのに……』

『小鍛治プロ―?』

『これは予想以上だね……これが今の高校生のレベルだって言うなら、藤田プロがプロアマ戦で負けたのもまぐれじゃなさそう』

『すこやーん? 解説とツッコミしてよー? 私一人だとまたクレーム来ちゃうよー?』

『今度、プロアマ戦出てみようかな……』

『ていっ!!』ビシッ

『痛っ!? 何するのこーこちゃん!?』

『オンエア中だってば!! むしろなにボーっとしてんのすこやん!?』

『え? ああっ!? ご、ごめんなさあああい!!』

269: 2015/04/23(木) 23:43:31.66 ID:pRGhAnTc0

東四局


恭子(さて、おなじみの連続和了であっさり一本場と東二・三局を流されて東四局。ここは新道寺のコンボが決まっとるから親は流せるはずやけど……)

姫子(こ、ここは部長から鍵ばもらっとる……連続和了なら止められるはずばい。問題は、あっち……さっき役満を止められた清水谷……)

竜華(ん~……ここも倍満が来るけど、後で親倍もあるし、ここでは使えんな。配牌もいまいちやし、鶴田に振り込まんように気を付けて……)チラッ

姫子「ひっ!?」ビクッ


咲「サイコロ回しますね」ポチッ


竜華(部訓には背くけど、この状況ではトップの連荘止めるよりは新道寺の親倍潰した方がええやろな)

竜華「大事な切り札はよう考えて切らんとなあ……」ボソッ

姫子「っ~~!?」カタカタ

竜華(ここで止めてもオーラスの親もあるしな。無理に連荘止めるために使わんでええやろ)

竜華「宮永止めるよりは、コンボを止めるんがこの状況の正着やろなあ……」ブツブツ

姫子「ううっ……(だ、ダメばい……狙われとーと。また、コンボが破られる……部長との絆が断ち切られる……あんな思いはもう嫌ばい)」ビクビク

恭子「清水谷、考えが口から洩れとるで」

竜華「へっ!? こ、声出とった!? 恥ずかしい……」

咲(……鶴田さん、コンボ発動させなくていいのかなあ? サイコロの目、出ちゃったけど。あれって、いつまでに撃てば有効なんだろ?)

咲「9ですね、配牌取ります」カチャカチャ

270: 2015/04/23(木) 23:44:06.08 ID:pRGhAnTc0

東四局 三本場


咲「ツモ、4300オール」

竜華(おっかしいなあ、東四局で連荘止まるはずやったんやけど)チラッ

姫子「ひっ」カタカタ

恭子(鶴田……こら自力で立ち直るのは無理そうやな。役満潰されたのは点数的に痛いやろうけど、それ以上にコンボを破られた精神的なダメージがでかい)

竜華(宮永がツモる分には点差は詰まらん。ここまで全部ツモやし、無理して止める必要もないな)

271: 2015/04/23(木) 23:45:46.54 ID:pRGhAnTc0

恭子(さて、東四局はコンボが成立しとるはずやったけど、鶴田に何の動きもなくあっさり宮永が連荘始めて、これで7連続和了)

恭子(鶴田がさっきから涙目やけど、泣きたいのはこっちやっちゅうねん。お前がしっかりせんとこのまま清澄と千里山で決まってまうやないか)

恭子(って、本来は自分でどうにかせなアカンもんやから、鶴田を責めるのは筋違いやな。しかし、ホンマにどうしたもんか)

恭子(残念ながら、宮永の連続和了、こういうどうしようもないのは私には止められん、止められないこと前提で上手く立ち回るしかない)

恭子(それを前提としたときになにより不味いのは、立ち回りの最大の鍵だった新道寺がコンボを潰されて再起不能になったこと)

恭子(整理しよか。まず、宮永は予想よりはるかに上、規格外の化け物や。そもそも、こいつが居る卓でこいつ以外が和了るのがほぼ不可能やった。計算外その一)

恭子(その中でも和了れるはずだった新道寺……実際、前半では和了ってたんやけどな。これが真正面からコンボを潰された。計算外その二)

恭子(で、最大の誤算は清水谷やな。私より格上とはいえ、手におえんレベルではなかったはずなんやけど、単独で宮永の連続和了を止め、果ては新道寺のコンボを潰すほどの化け物になってた。計算外その三)

恭子(最初に想定した状況は、普通に打ったら基本的に宮永が和了り続ける。それは清水谷も同じで、鶴田だけが労せず抜け出せるというもの)

恭子(宮永と鶴田の争いの中で上手く立ち回って自分の失点を抑えつつ千里山に沈んでもらって、連続和了が伸びたあたりで出し抜いて和了り、何とか二位になって逃げ切るのが唯一の勝ち筋)

恭子(白水が逆転圏内までコンボを積み上げよったからな、清水谷が攻めに回って直撃を受ける見込みは結構あったんやけど……)

恭子(ところが、蓋を開けたらこれや。連続和了が満貫あたりまで来ても手も足も出ん)

恭子(正直、こうなってしまうと宮永が気まぐれで清水谷を集中砲火するぐらいしか千里山が負ける可能性がない)

恭子(清水谷も関西トップクラスや。守りに入ると決めたら、たとえ宮永でも崩すのは容易やない……)

恭子(というか、清水谷が動かん理由がアレの使用回数制限だとしたら、連続和了が倍満あたりまで行って普通に止められる速度になるまで、宮永以外に今この卓で和了れるやつがおらんことになる)

恭子(目の前で跳満を和了られるのすら、指をくわえて見てるしかできんとはな……)


咲「ロン、19200」


姫子「はい……」

恭子(デカいこと言って出て来たんやけどなあ……結果はこれか)

恭子(すまんな絹ちゃん、せっかく頑張ってくれたのに……)


咲「終了ですね。ありがとうございました」

272: 2015/04/23(木) 23:46:26.55 ID:pRGhAnTc0

試合終了


新道寺   -200(-35800)
清澄  268100(+64200)
姫松   29800(-15300)
千里山 102300(-13100)



咲「お疲れ様でした。失礼します」ペコリ

竜華「お疲れさん」スクッ

恭子「……お疲れ様でした。後は任せたで、清水谷」

竜華「ん? 何の話や?」

恭子「姫松に勝ったんやから、今年の大阪最強はお前ら千里山や……優勝旗、ちゃんとうちの地元に持って来い」

竜華「……そうやな、善処するわ」


バタン

273: 2015/04/23(木) 23:47:25.02 ID:pRGhAnTc0


恭子(終わってもうたか……なんやろなあ、麻雀打った気がせんわ)

恭子(やってるゲームは麻雀のはずなんやけどな。この面子やと『絶対に和了る』連中ばっかで運の要素ほぼ皆無やん、どないせえOちゅうねん?)

恭子「……はあ、戻りにくいなあ」


バタン


恭子「なんや、忘れ物でもしたか?」

?「デカいこと言って出てったアホが焼き鳥で終わって帰りにくいやろうからこっちから迎えに来たったんや、感謝せえ」

恭子「洋榎やったか。余計なお世話や……ありがとな」

洋榎「ん? あれ、恭子?」

恭子「なんや、洋榎」

洋榎「あ、いや、呼び方と口調が……」

恭子「ええやろ、もうインハイは終わったんやし。出来れば、もう少し洋榎を主将って呼んでいたかったけどな」

洋榎「そっか……終わってもうたんやな」

恭子「……そろそろ鶴田の方の客も来るやろ、私らは戻っとくか」

洋榎「……すまんな、うちが負けたから」

恭子「あそこで二位で繋いでも私が全部毟られて大負けしとるわ、こっちこそすまんな、わたしの力不足や」


バタン

274: 2015/04/23(木) 23:47:50.51 ID:pRGhAnTc0

咲「試合終わったあと鶴田さんが全くしゃべらないから居づらくて出て来ちゃったけど、ここ、どこ?」キョロキョロ

京太郎「……何やってんだお前は、探したぞ」

咲「あ、京ちゃん。迎えに来てくれたんだ? ありがとう」

京太郎「迎えに行くだけのミッションが迷子さがしになったけどな」

咲「うっ……ごめんなさい」

京太郎「ま、慣れてるからいいってことよ。大将戦お疲れ様、咲」

咲「うん、ありがとう」

京太郎「じゃ、戻るか」

咲「うん」

275: 2015/04/23(木) 23:48:24.83 ID:pRGhAnTc0

久「うーん、須賀君を待たないで対局室出たから予想通りとはいえ、咲の迷子にも困ったものね」

照「……鶴田さん、大丈夫かな?」

久「割とダメそうね。立ち直れるといいのだけど……まあ、白水哩がいるんだからどうにかするでしょう」

照「……どうしよう?」

久「どうしようもないわよ。私たちが行っても何にもならないし」

和「冷たいようですが、私たちが彼女達に何かするのは逆効果かと……花田先輩相手なら私と優希が何かしらできるでしょうが、鶴田さんとなると……」

久「うちが慰めに行くとかは逆効果よね」

照「……でも……」

276: 2015/04/23(木) 23:49:02.26 ID:pRGhAnTc0

久「さて、流石に迷子たちもそろそろ戻って来るでしょ。辛気臭い話は終わり、25万点超えの大勝利よ、準決勝への景気づけにスイーツバイキングにでも行きましょう!」

照「スイーツバイキング!? なにその素敵な響き?」キラキラ

久「(この子、ちょろい……)ふふふ……東京には、甘いものを一定時間食べ放題の素敵なお店があるのよ」

照「て、天国……?」ジュルリ

まこ「まあ、女子にとっては天国みたいなもんじゃな」

照「はっ!? お金は? 学校からは宿泊費ぐらいしか出てないはず」

和「OB会やら地元の商店街やらが今回の遠征にカンパを集めてるみたいですから、少し高めの食事程度なら大丈夫ではないかと思いますが……」

久「それどころか回らない寿司屋に行けって言われたわよ。そんなとこ場違いすぎて女子高生だけでいけないけど、好意を無駄にするのも悪いし……」


バタン


咲「戻りました」

京太郎「すみません、迷子さがしに手間取りました」

優希「お帰りだじょ」

久「咲、スイーツ食べ放題なんだけど、どこに行きたい?」

咲「はい? スイーツ?」


バタン


透華「でしたら、良いお店がありますわ。代金は気になさらなくてよくってよ」


清澄一同「「「「「「「!?」」」」」」」


一「あはは、お疲れ様」

純「試合終わった瞬間に警備を強行突破しやがった……」

桃子「強行突破なんかしなくても私なら忍び込めたんすけどね」

智美「と言っても、この勝ちっぷり。相手も相手だし、さっさと連れ出さないとマスコミに囲まれてしまうからなー」

睦月「うむ」

一「あれ? 加治木さんと風越の三人は?」

智美「警備員に事情を説明してるぞー。ゆみちんなら上手く言いくるめてくれるだろー」

久「……急ににぎやかになったわね」

咲「あはは……強行突破って」

277: 2015/04/23(木) 23:49:28.64 ID:pRGhAnTc0

【対局室】


姫子「……」

煌「姫子、大丈夫ですか?」

哩「姫子……」

姫子「ぶちょー……ごめんなさい、せっかく鍵ばもらったんに……和了れませんでした」

哩「よか。たかが麻雀、私と姫子の絆が消えたわけでもなか」

姫子「……けど、和了られたとき、部長との絆が消えよった感じがして……」

哩「気のせいやろ、今も私らは繋がっとろーが」

仁美「それに、負けたんは姫子だけのせいじゃなか、美子も同罪ばい」

美子「なんで自分ば棚に上げっと!? 仁美こそいくら削られよった!?」

哩「姫子……お疲れさん」

姫子「ううっ……ぶちょー、ぶちょー……」ギュ

哩「姫子はよく打った、相手が悪かっただけばい」ギュ

278: 2015/04/23(木) 23:50:17.97 ID:pRGhAnTc0


雅枝「……清澄との差は16万点か」

竜華「いやー……洒落にならんな。末原さんに優勝旗を大阪に持って来い言われたけど、厳しそうや」

怜「うーん、竜華の方の私の力で優勝への最善の道とか見えんか?」

浩子「便利ですねそれ。試しましょう」

竜華「いや、麻雀以外では多分呼べんよ。うちらが休憩中に話してた内容も聞いとらん感じやったし」

セーラ「怜はものぐさやな。呼ばれたらちゃんと出てこなアカンで?」

怜「反省します」

浩子「そっちに反省されてもな」

雅枝「麻雀は一日二日で強くなるもんやない、厳しいが、今の戦力でどうにかせんとな。早速戻って準決以降の対策の練り直しや」


泉「……いえ、おりますよ? 一日二日で見違えるように強くなった人。知り合いに二人」


セーラ「せやな、なんか膝枕してるやつと、膝枕で寝てるやつ。一日二日で見違えるように強くなったな」

雅枝「……なら、全員で園城寺を膝枕するか?」

怜「アカン、泉とフナQは細っこくて気持ち良くないし、セーラはなんか固い! うちは竜華以外の膝枕は拒否する!!」

セーラ「固いってなんやねん!? ちょっとマジで傷つくからやめえ!」

怜「いや、固いし」

セーラ「がーん」

279: 2015/04/23(木) 23:51:03.34 ID:pRGhAnTc0

泉「まあ、うちもそんな手段で強くなるつもりはありません。真っ当に強くなります」

竜華「それだとうちらが真っ当じゃないみたいやん?」

怜「せやせや、こっちは命張ってんねんで?」

セーラ「怜はそうやけど、竜華は膝枕しとっただけやろ!?」

怜「竜華がこのむっちむちのフトモモ維持すんのにドンだけ努力しとると思っとんねん!!! 固い奴は黙れや!!」

セーラ「固い言うのやめえ!! 割とマジでへこむ!」

怜「……ごめん」


雅枝「……で、今から特打ちがしたいと? 一日二日で本当に強くなれると思っとるんか?」

浩子「ええ、少なくとも、園城寺先輩はその可能性があります」

怜「……せやな。フナQ理論によると、うちが竜華と同じぐらい強ければ竜華と同じ未来視が使えるわけやろ?」

セーラ「しかも、本家やから使用回数も制限なしやろうしな」

泉「常に最高打点の和了りへの最善の道が見える。最強やないですか」

怜「まあ、竜華と同じぐらい強くなるってのは無理やろけど、強くなればそれに見合った強力な未来視が使えるはず」

浩子「園城寺先輩の地力は今でもせいぜい二軍下位、伸びしろも多い」

セーラ「俺らは一巡先が見えることを前提にした効果的な打ち方を考えとったけど、それは怜の地力を上げるのを妨げてたんやな」

竜華「なあ、フナQ理論っていうの、うち聞いとらんけど?」

雅枝「と言われても準決は明後日、決勝はその翌日、今日声をかけて明日までに捕まるような腕利きがそうそう居るわけが……」

?「おるよ~」

雅枝「……赤坂!? なんでここに?」

郁乃「大事な教え子たちから~、お願いされもうて~。大阪最強が負けたら~、ライバルのうちらも舐められる~、って~」

怜「……えっと、どういうことですか?」

郁乃「平たく言うとな~、園城寺さん~、いくのんのスペシャルレッスン~、受ける~? ってこと~」

350: 2015/04/28(火) 21:58:12.70 ID:PRW68qpp0

穏乃「和ー! こっちこっち! このケーキおいしそう!!」

和「穏乃、お店の中ではしゃがないでください」

透華「構いませんわよ、貸切にしましたもの」

穏乃「ありがとうございます!! ほら和、こっちこっち!」

和「もう、穏乃! 分かりましたからもう少し落ち着いて下さい」

優希「タコスはないのか!?」

京太郎「あるわけねえだろ。スイーツだぞ」

?「クリームタコスをご用意いたしました」

優希「でかした、褒めて遣わすじょ、執事の人!」

京太郎「クリームタコスって……なんでそんなピンポイントなものが普通に出てきて……」

ハギヨシ「透華お嬢様からこちらの厨房を手伝って皆さまをおもてなししろとの御命令でしたので。片岡さまはタコスをご所望になると思い、ご用意いたしました」

351: 2015/04/28(火) 21:59:13.95 ID:PRW68qpp0

憧「……清澄の二回戦通過はめでたいんだけどさ、なんであたし達まで?」

咲「え、えっと……なんでだろ?」

純「そりゃ、俺たちが衣抜きで飯食うわけねえからな」

ゆみ「どうせなら大勢の方がいい。和と知り合いだと言うし、ちょうどいいかと思って天江と妹尾を迎えに行くついでに誘った」

憧「シズの奴が二つ返事で『行く!』とか言うの分かってて聞くんだから」

ゆみ「おや、迷惑だったかな?」

玄「いえ、とんでもない!」

憧「ただ、決勝で打つ予定の相手と仲よくスイーツってのがねえ……気が抜けるというか」

照「ふふ、私たちが決勝に行くとも限らないし、そんなに身構えないで」

久「決勝で打つ予定ってのも随分大きく出たわね、そっちは大丈夫なの? 白糸台と永水が居るし、宮守だって楽な相手じゃなさそうに見えるけど」

純「今日一日衣と妹尾相手に打ってたからな。その手ごたえ次第じゃ普通に行けるんじゃねえか?」

玄「昨日よりは勝負になって来ました。と言っても、半荘一回耐えるのが精いっぱいですけど」

純「いや、あいつら相手に25000持ちで半荘一回打ち切るだけで大したもんだぜ? 衣は遊びで生かしたりするが、妹尾は容赦ねえからな」

憧「そうね、最初は全然歯が立たないかとおもったけど、段々コツがつかめて来たっていうか……」

咲「……衣ちゃんと妹尾さん相手に? ちょっと、どういうことですか加治木さん?」

ゆみ「成り行きでな。コーチ料はラーメン6杯で手を打った」

咲「安っ!?」

照「それは打つのが楽しみね。お互い頑張りましょう」

純「ところで、照さんのキャラが……」

咲「気にしないでください。本来は猫かぶってるのがデフォなので」

美穂子「おかわりどうですか?」

照「あら、いただこうかしら」

久「美穂子も一緒に食べればいいのに。欲しけりゃみんな自分で取りに行くわよ?」

美穂子「ふふ、こうして世話を焼いてる方が性に合ってるんですよ」

久「まあ、あなたらしいと言えばらしいわね」

352: 2015/04/28(火) 21:59:57.36 ID:PRW68qpp0

星夏「……」

睦月「……」

灼「……」

モモ「……」

一「いや、なんか喋ろうよ」

モモ「ここは空気を呼んで沈黙してほしかったっすね」

灼「なんでこの五人を集めたのか聞きた……」

睦月「うむ」

星夏「意図というか、共通点は分かりますが……沢村さんが居れば完璧ですね」

一「黒髪ってこと? まあいいけど、この面子だと明らかにボクが浮くじゃない、なんというか、服装が」

モモ「国広さんが私服着て浮かないのは龍門渕だけだと思うっす。いや、龍門渕でも浮いてるっす」

睦月「うむ」

一「……ちょっとモモちゃん使ってタネなしで人体切断マジックやっていいかな? 多分、痛くはないと思うよ」ニコッ

モモ「人体消失マジックならタネなしで出来るっすよ? そして、痛みを感じる暇も与えず絶命させるって、国広さんどんな修羅場くぐってるんすか?」

灼「冗談か本気かわからな……こわ……」

354: 2015/04/28(火) 22:00:37.70 ID:PRW68qpp0

衣「さとみー、プリンがたくさんあるぞー!」

智美「ワハハ、いくら食べてもいいんだぞー」

衣「わーい!」

智紀「……なぜか面倒事の予感がする、目が離せない」

宥「あの二人、あったかいねー」ホクホク

智紀「……このテーブル付近だけ異常に暑い。何故あの二人は好き好んでこのテーブルに……お目付け役の身にもなってほしい」

355: 2015/04/28(火) 22:01:27.55 ID:PRW68qpp0

憧「あははははは! で、迷子になって竹井さんが迎えに行くまで二人でその場で立ち尽くしてたの?」

照「そのような事実はない、捏造はよくない」

咲「事実だけど、そんなのわざわざ話さなくても……私のイメージが……」

久「……あら? 合宿中に迷子になった話の方が良かったかしら?」

憧「まだあるの!? どんだけ迷ってるのよ?」

玄「宮永さん、イメージしてたより面白い人ですね」

咲「うう……面白いって褒め言葉に聞こえないです。あと、宮永だとどっちかわからないから、下の名前で良いですよ」

玄「じゃあ咲ちゃんで」

咲「はい、私も玄さんって呼ばせて頂きますね」

玄「天江さんに大差で勝ったとか妹尾さんが一度も勝てないとか長野の個人戦一位とか色々聞いてたので、すごく怖い人かと……」

久「全部事実だけど……実物は、今言った通りのポンコツ姉妹よ」

照「ポンコツではない。訂正を要求する」

憧「いやいや、そのセリフが既にポンコツだって」

照「酷い……」

咲「猫かぶってる時ならともかく、流石に素のお姉ちゃんと一緒にはされたくないんですけど」

京太郎「いや、俺から見たら同レベルだ。そういうセリフは校内で迷わなくなってから言え」

憧「さすがハーレム王、鋭いツッコミ」

京太郎「ただの雑用だっての。定着したら困るからそれマジでやめて。部長と照さん相手の二股とか噂立てられたら校内で軽く氏ねる」

憧「女子六人の中に男一人でなんもない方がおかしいでしょ、実際のとこ誰が本命なの? やっぱり和?」

京太郎「んなっ!?」

憧「ほう……その反応、誰かしら本命がいると見た!」

優希「じょっ!?」

咲「なっ!?」

久「新子さんストップ、それ爆弾っぽいからそれ以上触らないでね」

憧「はーい」

356: 2015/04/28(火) 22:02:23.53 ID:PRW68qpp0

一「このテーブルは、ボク以外の全員が部長または次期部長なのかな?」

星夏「そうですね……一年レギュラーですし、順当に行けば二年後にはキャプテンだと思います」

睦月「うちは、既に引継ぎが終わっている」

灼「現役部長」

モモ「一年は私だけっすから、むっきー先輩の次は私が部長っすね。部員一人、しかも誰にも見えないなんて展開もあり得るっすけど」

一「それは……冗談で済むといいね」

モモ「もしそうなったら見えないせいで勧誘も出来ないっすからねえ……」

星夏「勧誘と言えば、私がキャプテンになる頃だと有望な打ち手も清澄に行きそうなんですよね」

灼「そうなの? 長野の事情はわからな……」

一「風越と清澄は結構近いんだよ。だから、清澄の近くで麻雀を打てる人はみんな名門の風越に行く、それで竹井さんと照さんは今まで部員が居なくて大会に出てなかったわけさ」

モモ「でも、清澄には一年生の二枚看板が居るっすからねえ。全中王者と全国MVPに圧勝した長野の個人一位。全国でも大活躍中っす」

星夏「コーチとも話したんですが、今までうちに流れていたのと逆に、少なくとも向こう二年間は彼女達に惹かれて清澄に有望な新人が流れるだろうと」

一「その間に名門の意地を見せないとその後も、ってことか。大変そうだねえ……うちは五人とも同じ代だからそういう悩みはないかな」

灼「奈良は晩成が一強だから大分事情が違……」

一「でも、全国でこれだけ活躍したら、来年は阿知賀に人が来るんじゃない?」

灼「うち、中高一貫……」

モモ「あちゃー……それはやっちまってるっすねえ」

灼「憧みたいに高校からの転入組もいることはいるけど……高校からの転入だと試験が厳し……」

一「それにパスしたってことは、新子さん頭いいんだ? 話してて頭の切れる子だなとは思ったけど」

灼「こないだの模試でも偏差値70超えてたと思……行こうと思えば晩成にも行けたらし……」

357: 2015/04/28(火) 22:03:08.31 ID:PRW68qpp0

衣「さとみー! あんみつを一気飲みするぞー!」

智美「わははー、のどに詰まらせるなよー」

智紀「衣、お行儀が悪い。ちゃんとスプーンで食べなさい」

衣「智紀! 衣の方がおねーさんなんだぞ! 口答えするな!」

智紀「以前言ったはず、衣は妹だから姉である私の言うことを聞くこと」

衣「うっ……あ、あの時は勢いに流されたが、やっぱり衣はおねーさんだぞ!!」

智紀(蒲原さん、あなたからも注意してほしい)

智美(そうは言うけどな先生、たまには好きにさせてやればいいじゃないかー)

智紀(要求が飲まれないなら、課題を倍に増やすしかない)

智美(……これ本気で言ってるなー、逆らったら帰った時に机の上に分厚い問題集が置いてあるパターンだー)ゾクッ

智美「衣ー、お行儀よくしないとだめだぞー」ワハハ

衣「むむ、智美まで……仕方あるまい。ハギヨシ! 食器を持て!」

ハギヨシ「はい、こちらに」スッ

衣「うむ、大義」

宥「えへへ、みんなあったかいねー」

智美「あったかいかー? 私は先生のセリフで寒気がしたぞー」ワハハ

358: 2015/04/28(火) 22:04:26.24 ID:PRW68qpp0

ゆみ「そういえば、晩成の先鋒だが……」

玄「小走さんですか?」

ゆみ「私が知らなかっただけで、相当な有名人らしいな」

憧「あー、知る人ぞ知るみたいなとこあるよね、あの人。上位に入らないけど上位陣からの評価が高い的な」

咲「お姉ちゃんみたいですね、それ」

久「県内ですら全部一人で調べるのは無理があるからね。うちも余所のこと言えないけど、鶴賀は全国の強豪なんて調べてる余裕なかったでしょ」

ゆみ「恥ずかしい話だが、県予選突破どころか部員の確保で手一杯だったからな。全国の話は全国行きを決めてからと考えていた」

咲「うちは部長が大体調べてくれましたからね」

京太郎「おい、俺も結構手伝ったんだぞ」

咲「知ってるよ、ありがと、京ちゃん」


玄「小走さんはミドル時代の実績が知られてるから、加治木さんなら知ってそうですけど……?」

久「いや、ゆみが麻雀始めたのって高校入ってからよ? ミドルの頃の話なんて知るわけないでしょ」

ゆみ「蒲原に誘われてカード麻雀をやったのが始まりだったな」

憧「うげっ!? てことは、麻雀歴二年そこらで玄を焼き鳥にしたの!?」

玄「絶対子供の頃から打ってる人だと思ってたのに……ショックだあ……」

憧「あたしも麻雀歴二年にボコられたことになるんだけど……」

純「ま、世の中こういうのもいるんだよ。天才ってやつがな」

ゆみ「おだてないでくれ。昔から悪知恵が働くだけだよ。それがうまく麻雀に応用できた、それだけさ」


照「もぐもぐ」

美穂子「照さん、おかわりどうですか?」

照「ほへはい(おねがい)」

美穂子「わかりました、少し待っていてくださいね」

359: 2015/04/28(火) 22:05:03.38 ID:PRW68qpp0

和「穏乃、その場で食べるのではなくテーブルに持ち帰ってですね……」

穏乃「あ、あっちも美味しそう! ほら、和! あれ見てあれ!」グイグイ

和「さっき見たじゃないですか……三歩あるいたら忘れるなんてギャグは要りません。って、ちょっと穏乃!? まさか本気で言って……」

穏乃「うん! 美味しい! ほら和! 食べてみて!」モグモグ

和「あのですね穏乃、そろそろ入店して30分経つんですからいい加減に落ち着いて……」

穏乃「あーん」

和「むぐっ」モゴモゴ

透華「せわしないですわね、高鴨さんは」

純代「」モグモグ

美穂子「照さんのおかわりと……このあたりはまだ持っていってないわね。ふふ、どれもおいしそう」

透華「せわしないと言えばあなたもですわね。ホストは私なのですから、客人はもてなされていればよろしくてよ」

美穂子「こういう性分でして、お気持ちだけ頂きます」

360: 2015/04/28(火) 22:05:41.19 ID:PRW68qpp0

憧「にしても、和、テーブルの方に来ないわね?」

玄「さっきからずっと穏乃ちゃんに引っ張りまわされてるね」

咲「原村さんも相当強引だと思うんだけど……まさか上がいるとはね」

照「世の中、上には上がいるもの」

ゆみ「しかし、彼女と一緒にいるのは疲れそうだな。モモも最近は割と積極的なんだが、あそこまでではない」

憧「ん~、小学生のころはよくアレに合わせられたなって思うわね。慣れのおかげか、今でもなんだかんだでついて行けてるけど」

久「友人としてアレに合わせて行動してたら強引にもなるわよね、和の変なところの強引さも納得だわ」

優希「ん? あれ、もしかして、最初に会った時に言ってた、私に似てる奈良に居た頃の友人って……」

玄「あ、誰かに似てると思ったら、小っちゃい頃の憧ちゃんか」

憧「あー、似てる似てる。あの頃こんな髪型だったしねー」

優希「半分ずつ似てるって……見た目がこっち(憧を指差す)に似てるとしたら、あと半分は何が似てるんだじょ!?」

咲「騒がしいとこじゃないかな?」

京太郎「タコスが絡むと割と強引だぞこいつ」

久「話聞かないで行動するときの姿とか、今の高鴨さんとダブるわね」

優希「心外だじょ! 私はあんなんじゃないじょ!」

京太郎「まあまあ、大人しくタコスでも食ってろ」サシダス

優希「はむはむ」クイツク

憧「あー、なんかシズっぽいね、その反応。食べ物与えるとすぐ大人しくなるとこ」

玄「うんうん」

久「どうやら満場一致ね。諦めなさい優希」

優希「はむはむ」

憧「……食べてる間に人の話聞かないのも似てるわ」

361: 2015/04/28(火) 22:06:19.66 ID:PRW68qpp0

まこ「……なんでわしらは二人でこのテーブルにおるんかのう?」

佳織「えっと……わ、わかりません!」

まこ「分からんじゃなかろ!? おんしが麻雀教えて下さいとか言って無理やり引っ張って来たんじゃろうが!!」バンッ

佳織「あっ! そうでした! 麻雀教えてください!」

まこ「おんしに教えることなんかないわい!! 一度だってわしに負けたことないじゃろうが!?」

佳織「でも、染谷さんの牌譜見るとすごく的確なタイミングで鳴いたり、一点で読んで差し込んだりしてるじゃないですか。ああいうの出来るようになりたいんです」

まこ「それはおんしのところの先輩に聞けって前にも言ったじゃろ!」

佳織「加治木先輩も、そういう技術は染谷さん独特のものだって言ってました。自分には同じことは出来ないって」

まこ「ぐっ……わしを売りおったんか……」

佳織「どうやったらあれが出来るようになるんですか?」

362: 2015/04/28(火) 22:07:10.47 ID:PRW68qpp0

まこ「……そうじゃな。最低、10万局」


佳織「えっ!?」

まこ「自分で打つだけじゃなく、お客さんが打ってるのも眺めるんじゃ、むしろそれがメイン。10卓立ってるなら10卓全部の全ての局に目を通す」

佳織「……」

まこ「実家が雀荘じゃからな、一日何十という卓が立つ。半荘一回で10局弱、手伝いしとる間だけでも一日100局は見る、それを一年続けりゃ一万二万にはなる」

まこ「それを何年か繰り返して、どんな状況でどう打てばどんな結果になるか、イメージとして記憶する」

佳織「それは……」

まこ「一年二年で出来るもんじゃあない。コツを聞かれても、気付いたら出来るようになっとったとしか答えられん」

佳織「……」

まこ「おんしには真似できん。わかったら、もうわしに付きまとうのは……」


佳織「凄いです!!!」


まこ「……は?」

佳織「やっぱり染谷さんは凄い人です! じゃあじゃあ、これとかどうなりますか!?」

まこ「なんじゃこれ? ……ネト麻の牌譜、途中図か。こりゃ、北家が調子良さそうじゃのう。ほっとけばリーチが飛んで来るじゃろ」

佳織「凄い凄い!! なんで分かるんですか!?」

まこ「さっき言ったじゃろ、イメージじゃ。細かい理由はわしにもわからん」

佳織「じゃあじゃあ、これは……」

まこ「何枚持ち歩いとるんじゃおんしは!?」

363: 2015/04/28(火) 22:07:53.90 ID:PRW68qpp0

【千里山宿舎】


竜華「怜、浩子、泉……みんな、姫松に連れてかれてしもうた」

セーラ「残ってるのは俺らだけ……くそっ、みんな、無事でおってくれよ」

雅枝「いや、流石に無事やろ。浩子は定期報告寄越すことになっとるし」

竜華「怜がひざまくらに飢えてると思ってたけど、怜を膝枕してないとアカンのは私の方だったみたいやな……」

セーラ「泉……浩子……怜……俺は、誰も守れんかった」

雅枝「いや、もうそれはええから。臨海の試合の録画ちゃんと見ろや。まあ、どいつもこいつも流して打っとるから気が入らんのも分からんでもないが」

セーラ「うっす」

竜華「怜をのっけとらんと落ち着かんなあ……」

雅枝「こいつは……ネタじゃなく本気やったんか」

364: 2015/04/28(火) 22:08:38.40 ID:PRW68qpp0

プルルルルル ピッ

雅枝「浩子か? どんな感じや?」

『いやあ、赤坂さんの人脈、とんでもないわ。今日の今日、ほんの数時間前に声かけてこの面子とか、今から姫松に転校も視野やな』

雅枝「人脈が無くて悪かったな。で、園城寺を鍛える面子は?」

『戒能プロ、赤坂監督代行本人、もう一人はお忍びらしいから伏せるとして……まあ、文句のつけようがない豪華メンバーですわ』

雅枝「泉はどうしてる?」

『地獄見せて這い上がらせろってオーダー通り、みっちりしごかれてますよ。流石は四天王、手も足も出んって感じやな』

雅枝「四天王?」

『泉が言うてましたよ、人の試合中に下らん話をしとったって。そっちに居る火の江口に嫌味の一つも伝えといてください』

雅枝「ああ、洋榎が土になってたあれか。あのなかの誰かってことだと……まず火の江口はここにおるから除外して……いや、泉と同卓出来る時点であいつしかおらんか」

セーラ「ん? 団体戦で全国出た奴とはインハイが完全に終わるまで打てんはずやろ? その時言った四天王やと洋榎も白水も……まさか、小走が来とるんか!?」

雅枝「晩成は個人戦の代表が三人おるからな。今日で大会6日目やし、おっても不思議やない」

『以上、一回目の定期報告終わります。奈良の王者のデータ、生で観察してしゃぶりつくしたるでー!』

雅枝「おい浩子!? くそっ、切りおった。あいつに与えた役目は園城寺のサポートなんやけどな、仕方ないか」

365: 2015/04/28(火) 22:11:48.31 ID:PRW68qpp0

怜「いや……赤坂さん、この面子、よく今日の今日で呼びましたね?」

郁乃「一人呼んでないお方がおるんやけど~、本来の三人目は~、今~、あっちで二条さんと打ってるほう~」

?「はややっ☆ 清澄の子達の対策ならはやりクラスが居なきゃダメでしょ☆ むしろなんで呼ばないのかわかんなーい☆」

良子「ソーリー……赤坂さんとの会話を盗み聞きしていたようで、つけられました」

はやり「いーじゃん、減るもんじゃないし☆ むしろ感謝されるとこじゃないかな☆」

郁乃「ありがたいんやけど~、ちょっと~、いきなり瑞原さんは~、きついんちゃうかって~……」

浩子「レベルが違いすぎると参考にもならんし、お手柔らかにお願いします」

はやり「指導ならお手の物っ☆ 牌のお姉さんに任せなさい☆」

366: 2015/04/28(火) 22:13:33.93 ID:PRW68qpp0

泉(丸瀬さんがリーチかけとるし、ここはオリやろ。現物っと……)

打:3m

やえ「ロン。中ドラ1、2600」パタン


123888s34赤56m中中中


泉「うえっ! そっち!?」

紀子「……コンビプレー」

由華「奈良県個人代表三人相手にヌルい牌打ったら簡単にトビますよ。頑張ってくださいね、一年生」

やえ「おいそこ、なにがコンビプレーだ、ただの偶然だろうが」

紀子「……ちょっとしたおふざけ。でも、やえはさっき手出しで7索を切ってる、6ー7ー9索の三面張にも出来たはず」

やえ「どうせ聴牌に取るならこっちさ、お前がリーチすれば二条がオリて振り込むからな」

紀子「つまりコンビプレー」

やえ「いい加減にしろ。ほら、次行くぞ次」


ガラガラガラ

367: 2015/04/28(火) 22:14:43.58 ID:PRW68qpp0

泉(ここまで焼き鳥な上にこの余裕……完全に遊ばれとる。うちかて千里山の一年レギュラーやのに、本当の個人上位クラスとはここまで差があるんか?)

日菜「その卓には江口さんが三人居ると思ってもらいたいな」

上田「想像しにくかったら、江口と園城寺と清水谷でもいいぞ」

泉「……大した自信ですね。北大阪のトップ3ですよ、それ」

やえ「ここに居るのは名目上の奈良の個人トップ3でな、少なくとも私個人はあいつらに劣っているつもりはない」

やえ「むしろ、生意気な一年を焼き鳥にしろという話なら、あの三人が束になるより私一人の方が優れているだろうな」

紀子「やえ、一回和了るまで発言禁止にしよう。この一年は口ばかり達者」

由華「それ、下手すると帰るまで一言もしゃべれませんよ? かわいそうです」

紀子「と言いつつ一切手を抜かない見せかけの優しさ」

由華「うぐっ……じ、自力で和了れるようになるまで手を抜かないのが真の優しさなんです!」

やえ「まあ、発言を禁止する気はない。ただし、『叩いて伸ばす方針だから徹底的にへこませてくれ』と言われているからな、和了らせてやるつもりはないぞ」


泉(言いたい放題言いおって……しかし、歯が立たんのも事実や。一体、何が違うんや? うちとこの人らで、何が……)


浩子(実際この人らは強い……特に小走さんは千里山におっても確実にエース格や。その小走さんが、打ち方を良く知る二人を手足として使って場を完全に制圧しとる)

浩子(冗談抜きで、この卓で和了る難易度は園城寺先輩たちに囲まれて打つより高いやろな。そもそも、狙いが泉を沈めることやから、三人とも他の二人をいくらでもサポート出来る)

浩子(あの三人の打ち方をデータで把握しとるうちなら運次第でどうにかなるが、今の泉にはどうしても厳しい。けど、次の相手はアジア大会銀メダリストのハオやからな)

浩子(清澄の次鋒も、今日のあれは実力やろ。個人の県代表クラスはゆうにある。力ずくでも策をこらしてもええから、ここでなんとか勝負できるようにならんと次以降の相手には勝てん)

浩子(一年の泉なら伸び白も大きい。強い相手に不利な状況をどうにか出来る『何か』を掴めればって話で園城寺先輩のついでに特訓につき合わせたけど……叩かれ過ぎる懸念もある)

浩子(さっきの切り方で掛け直して来んっちゅうことは、泉についとれってことや。泉が再起不能にならんように見張らんといかんな)

368: 2015/04/28(火) 22:16:18.91 ID:PRW68qpp0

怜「ツモ、1000、2000」

はやり「いい感じだよ☆」

郁乃「……どうなるかと思ったけど~、普通に指導してくれるんやな~」

はやり「あははっ、どういう意味かな~☆」

良子「ヤングな芽を潰しに来たと思われたんでしょ」

はやり「そんな勿体ないことしないよっ☆」

怜「勿体ない、ですか?」

はやり「こんなに面白そうなインハイなんだから、麻雀界全体のためにも盛り上げないとね☆」

怜「……ま、理由は何でもええわ、強くなれるならそれでええ。瑞原はやりの特別コーチなんか、これを逃したら一生受ける機会ないやろうしな」

郁乃「基本の牌効率は~、身についとるみたい~」

怜「次のツモが見えるから変な打ち方してた部分はありますけど、ベースはデジタルなんで」

洋榎「恭子の見立ては?」

恭子「次の一手テストの結果を見ると漫ちゃんぐらい、千里山ならいいとこ二軍レベルやな。三軍レベルって話やったけど、それよりかは成長しとるみたいや」

はやり「デジタルなんて大して重要じゃないけどね、あなたみたいな子は」

郁乃(普通にしゃべった……)

洋榎(普通にしゃべった……)

恭子(普通にしゃべった……)

怜「瑞原プロが普通に……じゃなくて、デジタルが要らんってどういうことですか?」

はやり「……あれ? そこ説明いるとこ?」

怜「あ、はい。出来ればお願いします」

369: 2015/04/28(火) 22:17:07.58 ID:PRW68qpp0

はやり「えっと、清水谷さんの大将戦は見てたよね?」

怜「はい」

はやり「前半の東一局と、東四局、見てたよね?」

怜「はい……あ、そっか」

はやり「そういうこと。あなたみたいな子には、デジタルは重要じゃない。もちろん、あれが自在に使えるって前提だけどね」


洋榎「えっと、どういうことや恭子?」

恭子「……清水谷は、あのデジタルも牌効率もクソもないデタラメな打牌で、普通にデジタルで打ったら到底辿りつけん高目を最短でツモったやろ?」

洋榎「そうやったな」

恭子「あれを使う気なら、デジタルなんてのは打牌を鈍らせ、手を止めさせるだけのゴミや。捨ててしまった方がええ」

洋榎「あー、確かに、常識で考えたらあの手順は踏めんな。足かせになる常識なんか要らん、つまりデジタルが要らんと、そういうことか」


はやり「捨ててしまえとまでは言わないけど、あなたみたいな特殊な子はただのデジタルじゃその力を引き出せない。別の理論が必要になる」

怜「別の理論、ですか?」

はやり「そ、あなたが従うべきあなたの理論。あなたの打牌の基礎になる理論」

怜「えっと……」

はやり「まあ、園城寺さんはツモる牌が偏るわけじゃないから、基本はデジタルで良いんだけどね。一つ上のステージに行きたいなら、何か自分だけの理論を持つべきだよ」

370: 2015/04/28(火) 22:18:12.25 ID:PRW68qpp0

怜「自分だけの、理論?」

はやり「デジタルでも多かれ少なかれ誰もが持ってるものだけどね。牌効率重視だったり、打点重視だったり、守備重視だったり」

怜「ああ、セーラの火力重視みたいなもんですか」

恭子「面前派、鳴き主体、出和了り重視、ドラ重視、翻牌信者とかもおるな」

洋榎「翻牌信者?」

恭子「翻牌鳴けば何でも出来る。暗刻やったら無敵。翻牌の刻子が出来たら全鳴き全ツッパする翻牌様のしもべ達や」

洋榎「それただの初心者やろ!?」

恭子「他には、逆の進化の道を辿ったタンヤオ信者とか……彼らは公九牌への憎悪に染まったタンヤオの使徒や」

郁乃「役なしの洗礼を受けて~、どっちかの教義に染まるんやな~」

恭子「タンヤオ教でも翻牌だけは許されるみたいな教えの流派もあるで。あとはトイトイ教徒とか、異端の七対教もあるな」

洋榎「だから、そいつらただの初心者やろ!?」

恭子「冗談はさておき、デジタルの中でもそれだけ幅がある。特殊なオカルトを持ってれば更に広がる」

はやり「私は牌効率……ってわけでもないんだけど、速度、つまり和了率重視のスタイルだよ」

怜「私は……なんやろ?」

洋榎「うちはトップ取るためになんでもするけど、セーラなら打点重視、清水谷なら順位無視でその局の期待値、小走はなんやようわからんけど奴なりのなんかがあるらしい」

はやり「強い打ち手は自分の中にしっかりした基準がある。だから、同じ状況なら何回やっても同じ打牌をする」

怜「……私は押し引きもふわふわしとるし、同じ数字で萬子と筒子が変わっただけでも切る牌が変わったりするわ」

はやり「ま、二軍でも下位ならそんなもんでしょ。あなたはデジタルより直感で打つタイプだろうし」

371: 2015/04/28(火) 22:20:18.31 ID:PRW68qpp0

郁乃「んで~、結論としては~、怜ちゃんに~、しっかりした方針と~、打牌の基準を~、作らせるんやな~?」

良子「ザッツライト。能力の進化は、それに対応した形で訪れると思われます」

怜「対応した形?」

はやり「速度重視なら、その時点での自分の有効牌が光って視える。火力重視なら実現可能な最高形が視える。守備重視だったら相手の和了り牌とか鳴ける牌が光って視える、とかだね」

浩子「えらく具体的ですね?」

はやり「……そういうの、知り合いに居るから。同じ系統って発想はなかったけどね」

浩子「これだからプロは……園城寺先輩の進化形が既におるんかい」

はやり「ただ、素で打って私の知り合いのその辺の人より清水谷さんが強いかって言われると疑問だから、実力に応じて強い能力になるっていう船久保さんの仮説には修正を求めたいところだけどね」

良子「しかし、船久保さんの話を聞く限りでは、園城寺さんの力を利用した清水谷さんが園城寺さんと違う力を使ったのは事実」

郁乃「少なくとも~、同じ『未来を視る』力で~、使う人間次第で効果が変わるってことは~、間違いない~」

はやり「で、『園城寺さんの力を使って』別の力になったっていうのがポイント。園城寺さんの力は、他の力に変わりうるってことだからね」

良子「なら、清水谷さんの使った能力から考えて、先ほどはやりさんが挙げたような能力には変すると考えられるです」

372: 2015/04/28(火) 22:21:07.21 ID:PRW68qpp0

怜「……ちなみに、その能力持った人らは誰か、聞いてもいいですか?」

はやり「一般には知られてないことだからどれが誰かは伏せるけど、全員が日本代表になったこともあるトッププロだよ」

恭子「……瑞原プロ、有効牌が光って見えるんですか?」

はやり「はややっ!? な、なんのことかな!?」ギクッ

郁乃「三尋木さん、最高形視えとるんか……道理で怒涛の高火力とか言っとる割に倍満狙えそうな手で満貫で満足してたりするわけや」

はやり「はややっ!? う、咏ちゃんだとは一言も……ちなみに、手順は分からないらしいから、あれで視えた通りの最高形作るのって結構すごいんだよ?」

怜「守備重視はわからんな。誰やろ?」

はやり「それは置いといて、園城寺さんは日本代表クラスの能力を発現するかもしれない貴重な原石なわけ。だからはやりがわざわざ来てるの。分かった?」

怜「それは分かりましたけど、守備重視の人誰ですか?」

恭子「守備言うたら大沼プロやろか? あの人、鳴きとかも封じてる節があるし」

郁乃「ああ~、男子か~、盲点やな~」

373: 2015/04/28(火) 22:21:48.66 ID:PRW68qpp0

はやり「で、園城寺さんはどんな選手になりたいのかな? はやりのおすすめはスピード重視だよ。もう実績からして最強間違いなし」

怜「どんな、か……選べるんですか?」

はやり「それはあなた次第。なりたいものになれるわけじゃないし、そもそも進化できる保証もない。他人が使った時に能力が変わるだけって可能性もある」

郁乃「でも~、変わるとしたら~、漫然と今のまま打ってても変わるとは思えんから~、なんか方針決めんとアカンよ~」

怜「……すぐには思いつきません、ちょっと考えさせて下さい」

はやり「うん、はやりはいつまでも待つ気だよっ☆ インハイが終わったって園城寺さんの世話は焼いてあげる☆」

恭子「ま、それやと私らは骨折り損やけどな。大阪代表に勝ってもらわんと話にならんし」

洋榎「今のままでも清水谷が強うなったから二位までは狙えるんちゃうか? 別に責めたりはせんで、うちらは負けたわけやしな」

374: 2015/04/28(火) 22:22:43.27 ID:PRW68qpp0

やえ「瑞原プロの口調が戻ったな。そっちの話は済んだか?」

はやり「大体済んだよ☆」

怜「小走さん……泉は?」

やえ「流石にやりすぎた、頭を冷やさせている」

紀子「まさか本当に5半荘の間ずっと焼き鳥にするとは思わなかった。最後は飛ばしたし」

由華「えっと……ごめんなさい」

やえ「お前らを使ってあの卓を支配していたのは私だ。責任は私にある」

紀子「それはそれで納得いかない」

由華「と言っても事実ですし」

日菜「二条さんには、今、船久保さんがついてます」

恭子「容赦ないですね。一年相手に」

やえ「徹底的に叩けとの依頼だったからな。とはいえ流石にやりすぎたかもしれん」

洋榎「相変わらず格下には容赦ないなお前」

やえ「人聞きの悪いことを言うな、格上には勝てないだけだ。私は誰が相手でも平等に全力で応対している」

375: 2015/04/28(火) 22:23:50.78 ID:PRW68qpp0

怜「……あの、小走さん、支配ってどういうことですか? 小走さんは妙な能力は持ってないって聞いてますけど」

やえ「ん? ああ、説明が必要か。そうだな、どこから説明したものか……」


紀子「そういう話なら私たちにお任せ」

由華「先輩の話なら日が暮れるまででも語れますよ」

やえ「お前らは誇張が激しいから却下だ。あと、日はとっくに暮れている」

紀子「誇張などしていない、全て事実」

由華「ですです」

やえ「お前らはほっとくと私を荒川あたりと同格まで持ち上げるだろ。まったく……」


恭子「小走さんの支配やけど、まず、小走さんは対戦相手の打ち方をほぼ完璧に分析します。それも短時間で」


やえ「おいこら末原……まあいいか、自分で言うのも恥ずかしいし、こいつらは論外だし。適任が他にいない」

怜「分析か……難しいけど、それなら努力次第で出来るようにはなりそうやな。ほぼ完璧に、しかも短時間ってのはアレやけど」


恭子「その上で、相手の得意な形にさせないように全体をコントロールします」


怜「いきなり無理難題に飛んだ!?」

やえ「いや、そこまで無理な話でもない。鳴きが得意なら鳴けないように絞る、面前で手を進めたいなら鳴きを多発させるように切る。自分の手を崩してでもな」

怜「それはそれで鳴きたいところとか読み切れんとダメそうやけど……」

やえ「それすら出来ずに、凡人が愛宕や江口みたいな化け物と渡り合えるものか。運がないなら技術で補うしかない。そして私には運がない」

恭子「同感です、他人の力でもなんでも使えるものは全部使う。そうしないと話になりません」

やえ「そうやってリズムを崩せば隙が出来る。そこを突く」

怜「隙を突く……フナQとかはそれが得意やな」

やえ「ま、私は末原と船久保を足して二で割らない程度の打ち手と考えてくれればいい。あ、運は三で割っていいぞ」

恭子「大体合ってますね。ただ、実績から小走さん自身も化け物にカウントされるから、私みたいに簡単に三対一を作れないのが難点ですか」

紀子「関係ない。本人が警戒しているつもりでも、気付いたらやえの策にハマっている」

やえ「そういうのも出来なくはないが、本人に気付かれんように誘導しなきゃならんから効果は薄いし、なにより面倒だ。警戒されないならその方が楽だな」

恭子「ま、そんな感じで気づいたら小走さんに有利になるように卓上の四人全員が動いてる。それが小走さんが支配する卓や」

怜「卓を、支配する……」


376: 2015/04/28(火) 22:25:23.92 ID:PRW68qpp0

やえ「運もない、強い想いで結ばれた相手もいない、生まれ持った特異もない、そんな凡人が辿り着いた、化け物どもの中で生き残る術だな」

恭子「卓を支配して有利になっても、化け物ども相手やと、もともとの運が違いすぎて五分なんですよね……単純やから勝ててますけど」チラッ

やえ「その通りだ。まったく、あの化け物どもは……単純な馬鹿はまだ楽だが、それでも私は負け越しているしな」チラッ

洋榎「こっち見て言うなや! なんやねん二人して人を化け物扱いして!! もっとおかしいのが今日の相手におったやろ!! それに麻雀ではそんな単純な打ち方しとらんし」

やえ「こっちの工夫とお前の工夫を同列に語るな! 結局最後は運でゴリ押ししてくるだろうがお前は!!」

恭子「ホントにな、こっちは一点で読んで脇をサポートしたりアタリ牌止めたりしとんのに、ラスト一枚をあっさりツモられた時のあの脱力感と来たら……」


怜「運のない凡人が辿り着いた先……私みたいな凡人が、セーラや竜華と渡り合う術……」


はやり「どうやら、園城寺さんは一番キツいルートがお好みらしいねっ☆ いいんじゃないかな?☆」

やえ「……ああ、そうか。例の話の後にペラペラと話すものじゃなかったな。茨の道に引き込んでしまったか」

怜「……私にも、出来るやろか?」

やえ「……お前が天才だとしても五年はかかる。私が何歳から麻雀を打って身に着けた技術だと思ってるんだ。末原や船久保ですら真似できん技術だぞ?」

怜「けど、努力と練習で身につくんですよね?」

やえ「本気か。しかも、清水谷から聞いた話だと、お前、意地っ張りで頑固者で実は負けず嫌いだろ?」

怜「よくわかっておられるようでなによりです」

恭子「ま、凡人の行きつく先はそっちしかないしな。非凡な能力を持っとる奴がわざわざ選ぶ道でもないとは思うが」

はやり「そうでもないよっ☆ 最高形を視る力があっても咏ちゃんみたいな豪運がなければ5200や満貫あたりをちまちま作るのが精いっぱい。てゆうか、見えた最高形にたどり着けない☆」

恭子「……清水谷なんかは最高形への手順まで見えても宮永相手にはダメだったみたいやしな」

はやり「有効牌が見えても、聴牌した時に全部相手が持ってるのが視えて絶望するのが関の山☆ あ、ちなみに有効牌なら山だけじゃなくて相手が持ってるのも光って見えるよ☆」

恭子「相手の手恰好とかもなんとなく見えて守備とかサポートにも使えるわけですね。流石、自信を持って勧める能力なだけはあります」

郁乃「守備重視も~、漫然と打ったらいつの間にか手牌全部アタリみたいな地獄が見えてまうだけかもしれん~」

377: 2015/04/28(火) 22:26:22.64 ID:PRW68qpp0

怜「……そうや。結局、そっちに行くしかないんや。最高形が視えてもセーラみたいにはなれん。和了りへの手順が視えても竜華に敵わん。私はあの二人と同じ道じゃどうやっても二人に並ばれへん」

やえ「やれやれ、言っとくが、冗談抜きで一朝一夕に身につく技術じゃないからな?」

紀子「そこしか行くべき道がないのに、たどり着けるものはごくわずか。茨の道」

恭子「半端に出来るだけでも、姫松や千里山のレギュラー。上手く使いこなせば才能あふれる千里山の一年レギュラー相手でもご覧のとおり」

やえ「ま、同志が増えるのは歓迎するよ。ようこそ地獄の一丁目、持たざるものの墓場へ。歓迎するぞ、園城寺怜」

怜「……よろしくお願いします」

378: 2015/04/28(火) 22:27:15.08 ID:PRW68qpp0

泉「うっぐ……ひっく……」

浩子「あー……まあ、あれや。あの三人は相手が悪い。千里山でもあの包囲網を力ずくで破れるのは清水谷先輩と江口先輩だけや。関西全体でもあとは洋榎ぐらいやで」

泉「そんなんっ!! なんの言い訳にもならんですよ!! ……だって、うちは……うちは……千里山の歴史でも数少ない一年レギュラーで……」

浩子「……ま、半端に持ってる側やからそうなるか。そこそこの強運と下手くそなデジタルでここまで来れてもうたからな」

泉「……へ?」グスッ

浩子「泉、はっきり言うで、お前のデジタルは穴だらけや。牌効率でも期待値でもちょくちょくミスっとる、押し引きの基準もブレブレや」

泉「そ、そんなん、このへこんでる時に言わんでも……」グスッ

浩子「ミスっても、お前は中途半端に強運やから結果オーライでほとんどのミスをごまかしてきた。うちならやった時点で負けるようなミスでも誤魔化して勝ってきた」

泉「ううっ……」ウルウル

浩子「ただ、強運や言うても江口先輩や原村和ほどやない。ミスだらけのデジタルをフォローするだけの中途半端な強運や」

泉「……何ですかそれ、うち、なんも取り柄無いやないですか」ポロポロ

浩子「ああ、なんもない。強いて言えば下手くそなデジタルと中途半端な強運だけや。それが通じん相手にぶち当たった。それだけや」

泉「……そんな……そんなん言われても、うち、どうすれば……」グスン

浩子「知るか。普通に考えたらその下手くそなデジタルを鍛え直すか、やけくそで強運頼みの素人みたいな打ち方覚えるかやろ。そんなんであの人らに通じるとも思えんが」

泉「……ひっく、うえっ……ぐすっ」

浩子「……そろそろ、お前なりの道を見つける頃合いや」

379: 2015/04/28(火) 22:28:16.28 ID:PRW68qpp0

泉「うちなりの……道?」グスッ

浩子「泉、お前は自分で何が得意やと思う? もちろん麻雀の話やで? 料理とか言ったら張っ倒す」

泉「デジタル……の範囲内で、状況に合わせて押し引きを判断して柔軟に打ちまわすのが、得意やと思ってます」

浩子「……そうか。またえらくしんどい道が好きやなお前も」

泉「けど、あの人らには、何やっても通じんかったし……」

浩子「それは引き出しが足りんのや。相手に合わせて色々変えなアカンのに、お前の引き出しには押す、引く、様子見のせいぜい三通りの変化しかない。そんなもんが小走さんに通じるわけないやろ」

泉「そ、そんなん言うたって……」ジワッ

浩子「……ったく、手のかかるガキやでホンマに。一番めんどいルートやないか! 『ミスのないデジタル』とか『ここ一番の引きの強さ』とか言わんかいボケェ!!!」ガー

泉「さっきそれ自分で否定しましたよね!? 穴だらけのデジタルだの中途半端な強運だの!?」

浩子「それでも『自分ではノーミスやと思ってます』とか、『めくりあいで江口先輩に勝ったことあるんで』とか言えんのか!?」

泉「そら多少の自信はありますけど、県予選抜けられんかった人たちにボッコボコにされた後でそんなん言えるほどメンタル強くないですよ……」

浩子「はあ……とりあえず新道寺の安河内さんのデータやな。まあ、あの人でも清澄には通じんかったからもっと広い幅で変化つけんと話にならんやろうけど」

泉「先輩……何言って……?」

浩子「てゆうかな、さっきお前が打った相手、それをとことん極めた果てにおるお方やで。いくら強運に物言わせたところで、今のお前が勝てる相手やない」

泉「あ、えっと……?」

浩子「持ってる側のくせに持たざる者の道を進むとか、かっこええやないか。ま、うちらは商売上がったりやけどな」

380: 2015/04/28(火) 22:31:39.65 ID:PRW68qpp0
ごめんフナQ、よく見たら分身してた……

はやりんと話してるとこに出てきたフナQは末原さんあたりで補完してください。

451: 2015/05/06(水) 06:26:24.37 ID:T8GcM3fm0

やえ「……で、なんだこの卓は?」

はやり「はややっ☆ 手加減しなくて良さそうな面子だね☆」

やえ「高校生相手にプロが本気を出さないでもらいたいものだが」

良子「小走さんならノープロブレム。私も全力でやらせてもらいます」

やえ「問題大有りだぞ!? そもそもなんだこの卓は?」

郁乃「二人の足~、引っ張らんようにせんとな~」

やえ「そっちの二人の足なら全力で引っ張ってもらわんと困るんだが……いい加減誰か説明しろ、なんだこれは?」

浩子「いえ、お手本を見せていただこうかと」

怜「習うより慣れろってのは持ってるもんのセリフやと思うんです、やっぱりうちら凡人は学ぶのが基本ですわ」

泉「らしいです。勉強させてもらいます」

恭子「この役が務まるのは小走さんしかおらんので」

洋榎「いや~、きつそうな面子やな~」

やえ「お前ら……覚えておけよ、個人の代表じゃない奴はこれが終わった後、代表にはインハイが終わった後……いや、大会中にでも一人ずつ地獄を見せてやるからな」

怜「さっき地獄の一丁目に招待されたばっかなんで、望むところですわ」

452: 2015/05/06(水) 06:27:26.06 ID:T8GcM3fm0

やえ「……気が進まんが、やらんわけにもいかなそうだ。しかし、いくらなんでもトップを取れとは言わんだろう? それをお望みなら三尋木咏か小鍛治健夜、野依理沙あたりに頼め」

はやり「はやりはその三人相手でもトップ取らせる気はないよっ☆」

良子「ウェイト……そうだね、このメンバーなら半荘一回打ち切れれば上出来」

郁乃「三人は~、それぞれトップを目指して普通に打つ~、小走さんは~、なんとか生き延びて~」

やえ「……全員がトップを目指す条件で、この席順。半荘一回、連荘を考慮して10局程度か」

はやり「あれれ?☆ もしかして10局で済むと思ってるのかな?☆ はやりってば舐められてるっ☆」

郁乃「瑞原さーん? 何本積めるつもりでおるんですか~? うちらはトップ目指して普通に打つって言いましたよ~?」

良子「ノー、はやりさんはよくわかってるんじゃないですかね。私も二本場や三本場で済ますつもりはないんで」

はやり「あ? 調子乗んなよガキが、誰相手に何本積むって?」ピキッ


やえ(さて、本当に10局ですまない可能性も高いな。揃いも揃って過度な期待をしてくれる)

やえ(こいつら相手、並の打ち手どころか、プロでも下位なら東場で飛ぶだろう、まして私は小細工が得意なだけの雑兵だぞ?)


恭子(どうにもならん化け物三人相手……小走さんならどう立ち回るやろか?)

恭子(ほっとけば頭一つ抜けた奴が和了り続ける、それに条件付きで単独で対抗できるのが一人と、そいつらには劣るものの少なくとも自分ではどうしようもないのが一人)

恭子(私の打った大将戦と同じかそれよりキツいかもしれん状況。それでも、小走さんならなんとかできるんやないか?)


やえ(……そんな熱いまなざし向けられても困るな。一番過度な期待をしてるのがお前だとは思わなかったぞ、末原)

453: 2015/05/06(水) 06:28:32.16 ID:T8GcM3fm0

東一局 親:はやり


やえ(……化け物どもの格付けは既に済んでいる。瑞原プロが最も危険、条件次第で戒能プロ、赤坂監督代行はこいつら相手だと明確に一段落ちる)

やえ(となると、ここは赤坂代行をサポートして瑞原プロの親を流すところだな)

良子(さて、啖呵は切ったものの、はやりさんに真正面から挑むのは流石に分が悪い。ここは手ごろな赤坂さんを使って二人で協力して流さないと)

やえ(おそらく、この段階では戒能プロも赤坂代行を使って親を流そうとするはずだ)

郁乃(ん~、まあ、ぶっちゃけまともにやってうちが勝つのはほぼ無理~。けど~、あの二人がお互いへの牽制としてうちを駒として使うはずなんよ~)

郁乃(それを上手く利用すれば~、一時的にトップにしてもらえる~。そこまで確定やろ~、そっから~、どうやって出し抜くかが~、いくのんの腕のみせどころ~)

やえ(……赤坂代行の思惑はそんなところだろう、起家が瑞原プロということもあって、ここは分かりやすく三人の利害が一致する)

はやり(とか思ってるんだろうけどさ、はやりとしては当然、三人がかりだろうとぶっちぎっちゃうつもり満々なわけ☆)

はやり(そもそも、はやりの速攻はニワカ仕込みの連携プレーで止まるようなヌルいスピードじゃないんだって教えてあげないとね☆)

454: 2015/05/06(水) 06:29:18.32 ID:T8GcM3fm0

郁乃「ツモ、500・1000」

23456p北北 ポン:発発発 チー:4赤56s ツモ:1p


はやり「……はやっ?」

やえ「とりあえず、一局凌いだな」

良子(グレイト、お見事です)

郁乃(戒能ちゃん、鳴けるとこ切ってくれんと困るで~? 小走さんが切ってくれたからええけど~)

良子(いやあ、そういうの苦手でして)

はやり「……ふーん、なるほど、ニワカ仕込みの連携じゃないってか。プロやトップアマの牌譜も研究してるんだ?」

やえ「有名どころの牌譜ぐらいは、たしなみとして」

はやり「たしなみでこのレベルとか☆ プロでも初見でここまで合わせられるほど研究してる人は滅多にいないよ☆」

455: 2015/05/06(水) 06:30:35.80 ID:T8GcM3fm0

恭子(……東一局でもう状況を見切った。この対応の速さ、普段の研究量が桁違いなのが生きとる)

恭子(敵わんなあ……これ、阿知賀はホンマに一回戦で当たれたことを感謝した方がええで? 半荘一回分の牌譜があったら、戦う前に研究され尽くしとるはずや)

恭子(例えば、あの良くわからん哩姫のコンボの分析も、この人はミドル時代に既に済ました。それが漏れて私らも対策が出来とる)

恭子(奴らと打った後のインタビューで、小走さんがうっかり『白水の和了りと鶴田の和了りが倍の翻数でリンクしとる』って事実を話してしもうたから一気に研究が進んだんや)

恭子(出所が小走やえなら間違っとるはずがないからな。それを手掛かりに名門強豪が総がかりで奴らのコンボの研究を始めた)

恭子(今でも白水には顔合わせにくいみたいやけどな、小走さん。しかし、中学生二年生が大人の記者にあの手この手で誘導されてうっかり話してもうたのは仕方ないと思うで)

恭子(ちゅうか、聞き出したにしても伏せるべきやろ。将来ある中学生の能力をそこそこの部数がある雑誌にほいほい載せた馬鹿記者が非難されるべきや)

恭子(まあ、経過はどうあれ出た情報は利用する。名門や強豪がその発言をヒントに情報交換なんかもしながら一年以上かけて研究して辿り着いた結論、それでも不確定要素はごまんとある)

恭子(なのに、この人は、たった一人で、ノーヒントで、鶴田の登場から半年もしない間に、四年以上経っても未だにどこも辿りついてないであろうほぼ正確な結論に辿りついて、哩姫を退けた)

恭子(研究の質と量が、ホンマに桁違いなんや。それで普通の学業も偏差値70オーバー、頭の出来がそもそも違うんやろな)

恭子(……改めて考えるとやっぱすごいなあ)


やえ(おい、その熱いまなざしで見るのをやめろ。お前が私の信奉者というのは初耳だぞ? それに、私なんかよりよっぽど華のある奴が隣に居るだろうが)

やえ(……とはいえ、今の私の状況は今日こいつが置かれた状況と重なる。こいつも見たいんだろうな、自分が進むべき道……いや、進むべきだった道か)

やえ(仕方ないな。期待に応えることが出来るかは甚だ怪しいが……お見せしよう、王者の打ち筋を)

456: 2015/05/06(水) 06:32:35.60 ID:T8GcM3fm0

東二局 親:やえ


やえ(引き続き警戒対象は瑞原はやり。親でないぶんだけ危険度が下がったものの、それでも先ほどと状況は変わらない)

郁乃(つまり~、うちが和了らせてもらえるってわけや~)

良子(ただし、欲張ればはやりさんに追い抜かれますよ?)

郁乃(わかっとる~、今はちょっとでも点棒もらって~、出し抜くのは終盤~。一か八かの賭けに出るにはまだ早すぎる~)

はやり(ん~……さっきの感じだと勢力は四:六ってとこかな? 三回やれば一回は強引に和了れると思う)

はやり(で、私はこの中じゃ最強だから誰も私のサポートはしない。つまり、自力で強引に行くしかないってことだね。ま、それはいつものことか)

はやり(自分が格上ってのは慣れてるけどさ、たまには同レベルの相手と結果の見えないめくり合いとかもしたい)

はやり(……けど、同レベルの相手と真っ向勝負っていうの、私クラスだとなかなか出来ないんだよね)

はやり(私と同レベルってなると世界中探してもほとんど全員が顔見知りだから、どっちに転ぶか見当もつかない相手……初見の相手を探すのはもう絶望的)

はやり(だから、あの年の準決勝は本当に楽しかったな……初見で同格の人間三人が相手とか、生まれて初めてだったかも)

はやり(やっぱり、インハイだけは特別に感じちゃうな。目いっぱい楽しみなよ、若者たち。今年みたいに無名の猛者がワラワラ出てくるのは十年に一度ぐらいしかないから)

はやり(って、はやりも十分若いんだけどねっ☆)

457: 2015/05/06(水) 06:33:15.74 ID:T8GcM3fm0

はやり「ツモ☆ 700・1300☆」


123s4赤567p678m西西西 ツモ:4p


郁乃(ちょっと~、小走さん~? 差し込んでくれんと困る~)

やえ(2000に差し込むぐらいなら1300で親かぶりした方がマシだ。赤坂代行を走らせて私にメリットがあるわけでもない)

良子(はやりさんの手が安いとみて、親でなければ和了らせても構わないと踏んだ。彼女の目的は半荘一回耐え凌ぐこと、おそらくこれが最善の選択)

やえ(名目上の局数の八分の二を消化、23200点残してここまで来れたか。まずは上出来だな)

良子(二局使って仕込みは上々、さて、誰を呼びましょうか?)ゴゴゴゴゴ

はやり「」ゾクッ

郁乃「」ビクッ

やえ(……二人の反応を見るに、警戒対象が変わるな。さて、予定通り行くか)

良子「では、私の親番ですね」

458: 2015/05/06(水) 06:34:00.18 ID:T8GcM3fm0

東三局 親:良子


良子(二局の仕込みでソロモン王は呼べない。さて、この三人相手……どうしたものか)

はやり(相変わらず、へんなもん降ろすねこの子は……イタコの血筋だっけ?)

郁乃(ほら~、ここで瑞原さんに差し込まなアカンのやから~、さっきうちに走らせとかんとダメやろ~?)

やえ(……ここでは戒能プロを警戒して瑞原プロをサポートするのがセオリー)

恭子(それが当然の判断や。戒能プロの親番の火力は新道寺のコンボに相当する、これは卓上の三人が協力して止めるしかない)

はやり(人に手伝ってもらって和了るのも癪なんだけどね。可能なら真っ向勝負でぶち抜きたいな、こういうのは)

459: 2015/05/06(水) 06:36:35.72 ID:T8GcM3fm0

やえ「……」

打:7s

良子「……チー」

チー:789s 打:8s

郁乃「なっ!?」

はやり(……この子そういうことするんだ? てことは、その手牌の中で光ってるの、あたしの和了り牌を止めてるってことだよね?)


恭子(……なんや? 小走さんがこの巡目で止めたい相手の手を読めずにうっかり鳴かせた? そんなことあるんか?)


やえ(……末原、教えてやる。目先の損得だけでは、この状況は切り抜けられん。もちろん、トバずに生き残ることぐらいは出来るだろうがな)

やえ(しかし、貴様が見たいものは違うだろう? お前が見たいのは、私がこいつら相手に勝つ道、姫松が準決に進んでいた可能性だ)

やえ(ま、分の悪い賭けだがな。やらんと四位確定。三位の可能性すらない……どうせ、負けても私にリスクはない。なら、賭けてみようじゃないか)

郁乃(あ~、そっか~、トンだ場合の罰ゲーム~、用意しとらんかったな~。やりたい放題出来てしまうんか~)

良子(グッド、あなたは飛びを回避するだけでは満足しない、偏った状況を作るためにそうするはずだと信じてたよ。もし予想が外れて三対一なら確実に流されてたね)

やえ(二局使って仕込みをした場合の戒能良子の和了りは三通り。ほぼ確実に和了る三翻、よほどのことがなければ和了る満貫、普通に打つのと和了率の変わらない倍満だ)

やえ(明らかな索子染めだが、役牌暗刻の満貫が本線。三翻ならさっきの私の7索を鳴くことはないだろう)

良子「ツモ」パタン


112233赤5789s チー:789s ツモ:5s ドラ:7s


やえ(……っ、私がそちらにつくと踏んで援護頼みで倍満を仕込んだか……食えない人だ、これは厳しいか?)

良子「清一色ドラ3。8000オール」 

はやり(……満貫の方だと思って、速度で出し抜くために小走さんの手にある牌で待ったのが裏目に出たね。普通に打ってりゃ倍満は余裕で潰せたのに)

郁乃(あ、あれれ~、これ~、うちの一位って~、既に絶望的やないの~? 流してくれんと困るのに~)クスン

460: 2015/05/06(水) 06:37:45.18 ID:T8GcM3fm0

恭子(分からん、何を考えとるんや小走さんは? 今の8000オールで残りは15200、親の和了りで局数も消化出来とらん。状況が悪くなっただけと違うんか?)

洋榎「……ようやるわ、あいつ、飛ばずに終わるだけじゃ満足できんで上狙うつもりや」

恭子「へ?」

洋榎「恭子仕込みの『負ける』思考。要するに、卓上でそいつに働くマイナスの要素を数えるってことやろ?」

恭子「……大雑把に言うとそうやな。そして、洋榎は大雑把にしか理解できんからそれで説明終わりやな」

洋榎「三人から警戒されるぶっちぎりのトップと、そのトップが居ても全員に警戒される怪物、そいつら二人に動かれたら簡単に止められてまう代行。対して完全フリーの小走」

恭子「いや、普通に考えて小走さんが飛ぶやろ。流石に相手が悪い。実力差っちゅうマイナスが大きすぎる」

洋榎「でも、小走やで?」

恭子「……そもそも、飛ばずに生き延びるってテーマで二位を狙う意味がないやろ。何のためや?」

洋榎「いや、別にそれ達成してなんか出るわけでもなし、出来んでもなにかやらされるわけでもなし。だったら力試しで上狙うやろ? あんな面子で打つ機会、そうそうないで?」

恭子「あ、そっか、漫ちゃんの特訓と違ってなんもペナルティないんやな。確かに小走さんがあの巡目でミスで鳴かせるはずがない。なら、もしかすると……」

461: 2015/05/06(水) 06:39:09.46 ID:T8GcM3fm0

やえ「……」タン

はやり「ポン☆」

良子(はやりさんへの援護? 二位狙いなら、トップの私を援護してはやりさんを削らなきゃいけないはずじゃ? まさかトップ狙い? それにしても理解不能ですけど)

はやり(……ん~? ちょっとわかんないな。とりあえず和了って不利になることはないから援護はありがたく受け取るけど)

郁乃(ちょっとちょっと~、なにやっとるん~? 二位をサポートしたら~、自分の首~、絞めるだけやないん~?)

良子(……はやりさんと小走さんが手を組んでるなら、それを相手に真っ向勝負をしたくもない、オリ一択です)

やえ「……」

はやり「ツモ☆ 1100・2100☆」

462: 2015/05/06(水) 06:40:19.89 ID:T8GcM3fm0

怜「バランスとらせて上三人が平たい状況を作ってしもうて、そのまま自分だけが沈んで行ったら四位にしかならん。戒能プロの切り札を援護して偏った状況を作ったのはわかるで?」

泉「せやけど、あれ、どうするんですか? ほっといたら瑞原プロがガンガン稼いで二位を盤石にしてまうやないですか? むしろ援護してるふうですし」

浩子「わからんな。あの人にはっきり見えてるもんでも、うちレベルやと遠くの米粒ぐらいにしか見えん」

怜「フナQにさっぱり分からんもんが視えるって、あのひとも大概やな」

浩子「伊達に化けもんぞろいの今の三年の代で上位に居るわけやないですよ。あの人は、運さえあればプロでもトップクラスにおるはずの人です」

洋榎「むしろ、あいつ、運は悪いほうやな。去年の個人戦とか、多分あいつにとって考え得る限り最低最悪の組み合わせを引いとったで」

紀子「本人も、『いくらなんでもアレはないだろう、前世の私は何をやって現世でこんな業を背負ったんだ?』と愚痴っていた。愛宕の見立ては正しい」

由華「あの初見頃しの能力者集団に完全初見の一回戦で当ったのも、間違いなく先輩のハードラックのせいですよね。七代前の先祖が神頃しでもしたんじゃないですか?」

良子「あの先鋒の初見頃しっぷりは特に酷いからな。七代経って薄まった呪いじゃねえ、多分親か祖父あたりが何かやらかしてる」

日菜「今だって事情も説明されずにあの卓に放り込まれてるしね。もうここまで来ると、本人が子供の頃にご神体に悪戯でもしたんじゃないかと思うよ」

浩子「みんなして言いたい放題やな。まあ、あの人のくじ運が絶望的に悪いのは事実やけど」

紀子「だから団体戦の抽選だけは私に任せるべきだと言ったのに……やえを部長にしたのが今年最大の失敗だった」

463: 2015/05/06(水) 06:40:50.88 ID:T8GcM3fm0

南一局 5本場 親:はやり ドラ:6p

はやり 53500
良子  35600
やえ   4000
郁乃   6600

464: 2015/05/06(水) 06:43:47.25 ID:T8GcM3fm0

怜「なあ、フナQ?」

浩子「何でしょう?」

怜「こっからどうやって二位以上になるんや? まず二位と31600差って時点で相手が並以下の打ち手だとしても無理やん?」

浩子「黙って見てて下さい。小走さんの考えることはうちにはさっぱりです」

泉「いつもみたいに『おそらくやけど……』とかもなしですか?」

浩子「なしや。ホンマにわからん」

洋榎「恭子ならあるいは……」

恭子「アホ、あの人の考えてることが分かるようなら私は二年前に個人戦で優勝しとるわ。あの人の腕と人並みの運があれば荒川以外はどうにでもなるしな」

浩子「少なくとも決勝卓には座ってるでしょうね。人外の不運を味方につけん限り、あの人が決勝に行けんってことはないでしょう」

紀子「暗に人外の不運に見舞われてることを肯定する辺り、船久保もなかなか……」

浩子「データは裏切りません。あの人のくじ運は本物です」

465: 2015/05/06(水) 06:44:40.08 ID:T8GcM3fm0

やえ(あの外野ども、言いたい放題言ってくれる……私にだって10局も打てば人並みの配牌が来るんだ)

やえ(で、ようやく待望のそいつのお出ましだ……ドラ暗刻で染め手にも行ける、高目が望める配牌。出来ればもう一局待ってほしかったが、来てしまったら仕方ない)


13666p379s西東白白発


やえ(バラバラなのが玉に瑕だが、この面子でこれだけ恵まれた配牌は私にはもう来ないだろう)

やえ(さて、分かってるな貴様ら? 私はもう援護などしないぞ)

はやり(ふふふ~、やえちゃんが助けてくれたおかげで楽々トップ奪還。けど、良子ちゃんには切り札があるよね~? この子とあたし、実は相性最悪なの、はやり知ってるよ)

良子(クレイジー……私じゃなく、はやりさんをトップにして二位に滑り込もうって? どうやって二位になるつもりですか?)

郁乃(あー、一万切ってもうた~……うちが飛ぶ展開は考えとらんよ~)

466: 2015/05/06(水) 06:45:20.57 ID:T8GcM3fm0

やえ(さて、この時点ではこの卓の勝者は瑞原プロでほぼ確定している。逆転の可能性があるのは、切り札を持つ戒能プロだけだ)

やえ(……親番で切り札がある戒能プロは、何としても親番にこぎつけたい。この時点で、東四局から南二局まで8局使って仕込めることが確定しているからな)

やえ(瑞原プロも、この状況なら私の思惑に乗るだろう……出来るなら私を勝たせて園城寺に道を示したいという彼女の思惑を利用させてもらう)

やえ(そして、赤坂代行は氏に体、末原のことを考えれば無駄なあがきはせずにおとなしくしていてくれるはずだ)

やえ(さあ、分かるな戒能良子? トップを取るために貴様が取るべき行動が)

467: 2015/05/06(水) 06:46:38.35 ID:T8GcM3fm0

やえ「ポン」


1366678p3s白白 ポン:発発発

ポン:白白白 打:3s


はやり「ポン」

ポン:333s 打:9s


やえ「……」

ツモ:赤5p 打:1p


良子(中は二枚見えているので大三元はない、ただの筒子染め。しかし、はやりさんも2副露。このままでは、はやりさんの親連荘で小走さんと赤坂さんが飛ぶ……)

良子(南三局、私には切り札がある。8局かけて仕込むなら、半荘一回丸ごと使うのと同等、ソロモン王クラスの霊を呼べる)

良子(そうか、私がソロモン王の力で親役満をはやりさんに直撃すれば、ここで満貫程度を稼いで赤坂さんを抜いた小走さんはオーラスを凌げば二位で終われる)

良子(トップを狙うなら、親の残っていないはやりさんが役満を許すわけにはいかない。勝ち目は薄くとも向かってくる、それなら直撃はありえない話ではない)

良子(東三局の私への援護は、このはやりさんが連荘する南一局の何本場かで、自分にチャンス手が来た際に差し込む余裕を持たせるため)

良子(はやりさんの連荘で私の仕込みが増えるのも計算ずく……まさか、席順を見た時点でここまでの展開を思い描いていた?)

良子(小走さんはおそらく、この局で和了りを逃しても次のチャンスを待ってはやりさんの援護を続けるはず。そうなれば、ほぼ確実に南三局の前に飛び終了)

良子(今回、我々三人はトップを目指して打つことになっている。私がここからはやりさんをまくるには南三局を迎える必要がある)

良子(ここで差し込まなければ南三局は来ない。私はトップを目指すならここで小走さんに差し込むしかない……全て彼女の掌の上)

良子(……仕方ないね、どうぞ和了ってくださいっと)タン

打:4p

やえ「ロン」パタン

良子(染め手に振り込むのは痛いけど、背に腹は代えられない……って、ドラ暗刻!?)

やえ「白、発、混一色、ドラ4。17500」

良子(ここで二位浮上……まさか!?)

468: 2015/05/06(水) 06:47:38.30 ID:T8GcM3fm0

恭子「おおおおおっ!?」

洋榎「……白発鳴いて混一色、見える範囲だけで少なくとも満貫はある。なんであの手に差し込んだんやろな、戒能プロは?」

恭子「そうか、南三局の前に二人が飛んだらしまいや、戒能プロは差し込むしかない。この連荘で仕込みは十分、南三局で逆転出来ると思っとるから、当然差し込む」

洋榎「いや、なんで南三局で逆転出来るって分かるんや?」

恭子「そこは普段の研究の賜物や。対局前に持っとる情報量が他と桁違い、それが小走さんが実力以上に上手く立ち回れる秘訣でもある」

洋榎「……まあ、恭子を信じて南三局で戒能プロが大物手を張るのを前提にするとして、瑞原プロがそれに振り込むっちゅうんか?」

恭子「は? 小鍛治健夜が相手でもあるまいし、あの瑞原プロが振り込むわけないやろ」

洋榎「いや、そんなん言うても、それ以外に逆転しようがないやろ? 戒能プロが大物張るなら和了られたら三位転落や、そのあとで瑞原プロを抜けるはずもないし……」

恭子「いやいや、点数見ろや、今二位は誰や?」

洋榎「……小走やな」

恭子「この一局の結末もほぼ必然……どこまで視えとるんやあのひと?」

洋榎「……は?」


『ロン☆ 今回は珍しく大きいよっ、なんと8000っ☆』


『あいたたた~……トンでしもうた~』クスン

469: 2015/05/06(水) 06:49:09.19 ID:T8GcM3fm0

良子「……マイガッ……まさかそう来るとは……」

やえ「マイナスだが、二位だな。さすが瑞原プロ、南三局に回さず仕留めてくれると思っていたぞ」

郁乃「6000点しか残ってないうちは~、親に~、役満をツモられたら~、あっさり飛んでまう~。せやからここで~、跳満以上を稼ぐしかない~」

はやり「私が役満直撃喰らうとかありえないからね☆ 良子ちゃんが和了るなら当然ツモだよ☆」

やえ「一方、親番の残っていない瑞原プロは親役満の和了を防ぎたい。その手段は、私が浮上した状況では赤坂代行を飛ばすことにほぼ限られる」

はやり「誰かを飛ばして終わらせたい状況で、飛ばせる相手が遮二無二向かってくるっていうなら、当然、飛ばせる手を作って撃ち落す☆」

良子「……完全に裏をかかれました、完敗です」

郁乃「そんでもって~、この半荘で~、新道寺役の戒能ちゃんを抑えて~、千里山役のうちに二万差つけての~、二位やな~」

やえ「……さて、なんのことだか? 私はそこまでお人よしじゃない、自分が上の順位で終われる展開を作っただけだ」

はやり「ツンデレかな☆ ちゃんと倍満張るあたり、いい仕事してるよね☆」

やえ「望外だったな。跳満が限界のつもりだったし、東三局も満貫だと読んでいた」

良子「なるほど……たしかに、このメンバーの特徴と力関係は今日の大将戦を彷彿とさせますね。まさか、そこまで考えて展開を作っていたとは……」

やえ「誰かさんが倍満を仕込んだせいで目論見が崩壊したが、諦めずに打ってみるものだな」

470: 2015/05/06(水) 06:51:08.74 ID:T8GcM3fm0

恭子「小走さん、見せて頂きました。私が進むべきだった道……」

やえ「……25000持ちだから出来たことだし、全員がトップを目指すという条件での勝負だ、団体戦で二位狙いの奴が居る状況でそのまま使えるわけじゃない」

恭子「せやけど、小走さんは、私の時より厳しい状況で二位になってくれました。私にも、道はあったはずです。あれはどうしようもない勝負なんかやなかった」

やえ「正直、東三局の倍満で諦めかけていたがな。私ですらあんな手が入ることもある、たまには自分が勝つことを信じてみてもいいんじゃないか?」

恭子「……はい。勉強させてもらいました」

郁乃「小走さん呼んで大正解~、これで~、末原ちゃんはもっと強くなるで~」

恭子「はい、本当にすごい人です、小走さんは……私なんかとは比べもんにならんくらい、すごい……」

やえ「おい、同い年だろ。自分を私より下に置くのをやめろ。お前は私が負け越してる化け物に勝ち越してるんだぞ」

洋榎「だから化け物言うな!! 恭子がお前より下やないってのは同意やけど!!」

やえ「私が不運なのを差し引いても、お前は明らかに化け物だろうが!?」

洋榎「だから、もっとヤバい奴おったやろ!?」

やえ「江口とお前なら私と同じ程度に上手く立ち回れば勝てん相手じゃなかっただろうが!! あんなポッと出の無名に負けてくれやがって、何やってるんだ貴様は!?」

洋榎「立ち回りだけでプロの新人王に勝つ奴の真似なんか出来るか! てゆうか恭子にも言ったけど実力で挑めや! こそこそ他人使いよってからに!!」

やえ「それで勝てるならそうする!! ミドルから六年間かけて世代の頂点を争った大阪のツートップが二人揃って負けてくれたおかげで私の格まで下がるというものだ!! 反省しろ!!」

洋榎「恭子と同じ回答ありがとさん!! そんでもって、団体の県予選で落ちた奴がほざくな!! 格が下がるっちゅうならむしろこっちが被害者やろ!! そのくじ運どうにかならんのかお前は!?」

やえ「それを言うなああああああ!!!!」

471: 2015/05/06(水) 06:53:25.52 ID:T8GcM3fm0

紀子「おかしい、やえにあんな幸運が……」

日菜「……やえは、信者フラグ立てる時だけは人外レベルの幸運を引いてくるから」

由華「あー、あれってそういうことなんですかー。ちなみに今回は誰のフラグですか?」

日菜「分かりやすい行動を見ると末原さんっぽいけど、あれは元からやえ信者だから違うね」

紀子「ということはまさか……あいつは本当に見境がない……」

上田「あいつのハードラック、フラグの反動なんじゃねえか? 今まで何人ひっかけた?」

日菜「良子ちゃんのその説は検証に値するね。私が把握してるだけでも、二進法使っても片手じゃ足りない」

紀子「この場に居るだけでも末原、由華、日菜、何気に愛宕も怪しい。あとは個人戦の強豪……寺崎とか藤原、百鬼、霜崎あたり」

日菜「うちの一年の岡橋とかもやえ信者だよ。てゆうかサラッと自分を除外してるけど、紀子ちゃんもだからね?」

473: 2015/05/06(水) 06:56:10.81 ID:T8GcM3fm0

怜「……急転直下って感じやな。たった二局で別世界や」

浩子「これ、小走さんのことやからほとんど計算通りなんでしょうね。東一局からずっと」

泉「これが、清水谷先輩や江口先輩がおる世界の打ち手ですか……」

怜「……一巡先を視る力で勝負になるようになったけど、やっぱ、とんでもなく遠いところにおったんやな、竜華たちは」

浩子「ま、清水谷先輩や江口先輩がこの卓に入ったらボッコボコやと思いますけどね。あの代同士で直接打てば五分でしょうけど、あの人は先輩らと強さの質が違います」

怜「自分自身が和了る強さやなくて、卓上全部を使う強さ……だから相手が強くてもその分だけ小走さんの影響力も強くなる。どんな相手でも上位に入れるんやな」

浩子「どんな相手でも、ではないですね。三対一でも楽勝するような飛びぬけたのが卓に一人だけ居たりすると、あの人でもどうしようもないみたいです」

はやり「いやー、完全に掌の上って感じ☆ 勝ちはしたけど参ったね☆ あの子ホントに高校生なのっ☆」

良子「参りました、実力的には二段も三段も私が上のはずですが、格上の相手に弄ばれたような感覚です。彼女がプロの世界に来たらリベンジですね」

やえ「そこまで行けるものならそうするが……私はプロに行っても二軍止まりだろうから、打つ機会はないだろうな」

はやり「あー、大丈夫大丈夫、うちに来ればレギュラーぐらい私がねじ込むから。一位指名させるからプロ志望だけ出してくれればオッケー」

やえ「おい!? それはそれで困るぞ、身の丈に合わない立場にはつきたくない!」

良子「ぬぐぐ……そう来るとは……私の発言力はそこまで強くないですし、ドラフトの一巡目で確保されては絶望的……」

やえ「そっちはなぜ悔しそうにしてるんだ!? リベンジしたいんじゃないのか!?」

紀子「くっ……瑞原プロが本気ならハートビーツ大宮のスカウトにアピールしないと……」

やえ「お前はお前で正気に戻れ! 奈良から出る気はないと常日頃から言ってただろ!?」

474: 2015/05/06(水) 06:57:18.23 ID:T8GcM3fm0

怜「……さて、今度は私が頑張らんとな、あそこに、一歩でも近づくんや」

はやり「うん、頑張って☆ あなたは、私たちの時の晴絵ちゃんみたいにならないでね☆」

怜「……はい?」


はやり(全国最強と言われる、昨年度優勝校の絶対的エース。それの対抗馬として全国に名を轟かすスター選手。初出場の無名校のエース。突如抜擢された名門校の無名のエース)

はやり(内容は色々違うにしても、これだけ既視感のある肩書きを並べられたら思うところはあるわけで……)

はやり(もし実現しちゃったら、一番危ういのはこの子。晴絵ちゃんのケースを見てる人間としては放っておけないよね)


はやり「何でもない☆ さ、特訓開始だよっ☆」

476: 2015/05/06(水) 07:11:35.65 ID:T8GcM3fm0
戒能プロは時間(局数)をかけてイタコの力で霊的な存在を呼び、かけた局数が多いほど強力な存在が出てくる設定(発動は親番のみ)です。

本文中では小走先輩がそれを完全に知ってること自体がすでに異常ということを表現するために一切解説せずにそれを前提として話を進めてます。

478: 2015/05/06(水) 07:24:41.43 ID:IG0ObqsEo

水どうなんじゃねえかって思うぐらいの旅ね…

480: 2015/05/06(水) 11:18:02.52 ID:LSdUj2dN0

引用: 【咲-Saki-】咲「お姉ちゃんまでプラマイゼロをやりだした」 2