139: ◆zvY2y1UzWw 2013/12/02(月) 00:03:53.03 ID:k4fsdAQJ0


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


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連続投稿になっちゃうけど投下スルヨー

140: 2013/12/02(月) 00:05:32.68 ID:k4fsdAQJ0
死神は、神様に使える農夫。魂を刈り取って世界を循環させる。

母親のお腹から生まれるわけじゃない。卵から生まれるわけじゃない。

神様が選んだ魂に、黒い衣と鎌と死神としての姿を与えられた存在。

選ぶ基準?分からないけど…前世が悪人だとか、善人だとか、そういうのは多分関係ないんじゃない?

ただ、誰の祝福も受けずにいつの間にか死神の塔の中で生まれている。与えられる名前も単純なモノ。

その名前は死神の名簿にいつの間にか記されている。生まれる瞬間を誰かが目撃したわけでもないのに。

お母さんも、お父さんもいない。誰もその名を呼ばない。

『名』は存在を確立させる。姿と心を結びつける。

だから、死神は冷酷だと…たまに話に聞くんだ。信憑性は知らないけど。

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それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。




141: 2013/12/02(月) 00:06:45.61 ID:k4fsdAQJ0
もちろん、明るい死神もいる。それは生まれながらの性格だったり、転生が上手くいかずに前世の影響が残った魂だったり…?

でも、自分は…からっぽだったと思う。ただひたすら、皆と同じことをして、皆と同じようにいつの間にか消えると思って生きていた。

『先輩』『後輩』『上司』『部下』…それだけで成り立つ関係。友達なんていないし、名前よりも関係や仕事名や役職名で呼ばれるような…

名前は呼ばれるものじゃない。それが当たり前で、これからも変わることなくそうだと思っていた。

口数少なく、しっかり仕事をこなし、魔術も覚えて、ただひたすら静かに生きていた。

あの日、名を呼ばれるまでは。

142: 2013/12/02(月) 00:08:48.36 ID:k4fsdAQJ0
その日もいつもと同じように魂を刈り取っていた。一段落して魔界へ帰ろうとした時だった。

魔界へつながるゲートの向こう側から…『ユズ』と、雪が舞う夜の寒空の中…呼ぶ声がした。

一瞬、誰を呼んだのかわからず、それが自分と気付いたのはワンテンポ遅れて。

そしてその遅れた思考を置き去りにして、ゲートの向こうから一筋の光が飛び込み、手に収まっていたのは杖だった。

輝く水晶の中を雪のように舞う星の光に、瞳を奪われた。

「…綺麗」

それが、自分の初めて自分の意思で、自分から能動的に発した言葉だったと思う。

世界が塗り替えられる感覚が、頭の中でスパークして弾ける。

意味がある空気の振動でしかなかった言葉を、音を、初めて感情を伴って理解した気がした。

灰色だった世界に輝くような色が加わった気がした。

これが、『ユズ』の生まれた日なのだろう。少なくとも自分はそう信じている。

この『ユズ』が選ばれた日。死神から魔力管理人になった日。それがアタシの誕生日。

143: 2013/12/02(月) 00:09:57.23 ID:k4fsdAQJ0
「ん…う~ん…あ、寝てたのかぁ…って、汚い!」

目覚めたのは塔3階。机に本やメモを散乱させたまま眠っていたことに気付いて慌てて綺麗に片づける。誰かが来るわけでもないのだけれど、やっぱり綺麗な方がいい。

「はぁ…」

魔術開発は相変わらず進展がない。自分としては『アレ』を完成させたいけど…まだ初期段階。

サタン様と戦った時の…あの、呪文も無く、ただ『負けたくない』気持ちだけで生み出した結界。

凍てつかせる雪の様な光が降り注ぐ、誰も知らない魔術。

あれこそアタシの魔術。そう、信じている。雪がアタシに味方してくれたあの魔術…あれはどうしても完成させたかった。

アタシは雪が好き。夜が好き。生まれた日の事を思い出すから。

144: 2013/12/02(月) 00:10:56.69 ID:k4fsdAQJ0
大罪の悪魔たちは姿すら見かけない。力を蓄えているのだろうか、何か企んでいるのだろうか…。

嫉妬・強欲・色欲…その大罪相手に、アタシは勝たなくてはならない。

切り札として用意してある…体に刻んだ魔術を完全に制御し展開する『無詠唱魔術』…あれもまだ練習中だ。

どんな相手が来ても、どんなに強くても…アタシはアイツらの魂を狩りとる。姫様も守る。…絶対に。サタン様の依頼なのだから。

「みみ~」

下の階から前回の実験の試験体の一体、ぷちユズメイドがアタシが起きた気配を察したのか来てくれた。

「あ、おはよー…眠気覚ましくれる?」

「み!」

すぐに二階へ飛んでいくと、常備してある釜から赤い液体をマグカップに注いでくれた。

その赤さに似合わない無臭が異常ではあるのだけれど、この液体の効能を身をもって知っているから飲んでしまう。

「…うん、久々に飲むと…舌が悲鳴を上げる不味さだよ」

これは人間界で言うスタミナドリンクとかエナジードリンクとか、そんな感じの魔法薬。

薬草、花の蜜、純粋な水、新鮮な牛の血、毒草数種、毒キノコ数種…それらを上手く調合すると、毒草や毒キノコの毒がいい感じに変化して薬になる…らしい。

味は不味いけど…何故か無臭。最初に作った薬屋はどうしてコレを生み出せたのカナ…?

でも意識はバリバリ覚醒する。眠気が吹き飛ぶ。体に力がみなぎる。

「さて、今日はいつもより張り切って行きますか!」

世界の狭間から、人間界へ。

145: 2013/12/02(月) 00:15:25.97 ID:k4fsdAQJ0
空を飛びながら、登り始めた朝日に目をちらりとやる。…ユズの朝は、早い。

オレンジ色の空を横切って、神崎家にたどり着く。

窓の鍵を内側に待機させているぷちユズに開けてもらえば、簡単に神崎家がアタシに貸してくれた部屋に入れる。

けど、ベッドから二つの影が…!

「ユズ!お前は早すぎる…!明けの黄昏とほぼ同時とは何事だ…」

…姫様と蘭子様だった。眠そうな目をしながら…ずっと待っていたのかな。

「ふぁ…あ、おはようございますユズさん…ほら、一緒に…!」

「うむ」

「「ハッピーバースデー!」」

「姫様、蘭子様…!!」

差し出されたのは小さな箱。

「ユズさん、いつも夜はこっそり抜け出して、朝になると帰ってくるから…昼子ちゃん、こうすればいいって」

「なっ……く、ククク…一番目に祝うのは我だ!父上等よりも早く!」

「もう、姫様ったら…城じゃこんな事しなかったのに…あはは、本当にありがとう…ございます」

「なっ…それはユズが誕生日を言わぬから…!」

「人間界くらいですよ、書類に誕生日が必要なのって」

「あ、やっぱりそうなんですかー」

照れ隠しをする姫様の成長が教育係として嬉しくて…あの人の優しさを思い出して。

呪いを受けているサタン様。最近は大罪も狩って無いから…気まずくてあまり会いたくないけど…今日は会ってもいいのかな、そう思ってしまう。

「ユズ。…ちょっと立っていろ」

意識がそれた間に顔の赤みが薄れた姫様が、神妙な顔付きでアタシの目の前に立った。

146: 2013/12/02(月) 00:16:06.72 ID:k4fsdAQJ0
…そういえば身長同じだったっけ。…真っ赤で綺麗な瞳が、アタシを見つめる。

「…時が授ける運命の小箱を開けよ。このサタンの娘…・悪姫ブリュンヒルデが祝福してやろう」

いつもより言葉遣いを意識していて、まるで儀式の様だ。

蘭子様を見ると…邪魔しないようにか、少し下がっていた。

言われるがままに小箱を開ける。中に入っていたのは小さな金と銀の翼の飾りがついたネックレス。

「我が友であり、我が師である魔術管理人ユズよ。この翼は我らが祈りを込めた物…汝に幸運と安らぎと成功があらんことを…」

小箱からそれを取り出し、ゆっくりと首の後ろに手をまわして、ネックレスを付けようとする。

緊張しているのが指の震えでよく分かる。

147: 2013/12/02(月) 00:16:46.41 ID:k4fsdAQJ0
……

「…クッ」

…時間かかりすぎです姫様。ちょっとイラってしてますよね?

…ちょっと不安になったけど、姫様はちゃんとネックレスをつけてくれた。

「ふぅ…これで、よし」

「よかったーちゃんと付けれた…」

「余計な事を言うな…!」

そりゃ蘭子様もホッとするよね、あれちょっと不安になるよね…

首から下げられているネックレス。確かに二人の魔力を感じ取ることが出来た。…なんだか、あたたかい。

「姫様、アタシ、本当にうれしい…」

「ユズ、これからも…我と、蘭子と共に」

「…はい」

「…世界征服!その為に我の世界を征服しようとする輩を全て退治せねばなるまい!…勝手な願いだがそれまで、我が教書となってくれるか?」

…まだ世界征服諦めてないんですか姫様。

でも、よく考えれば…その言葉は『人間界を姫様が手に入れるまで侵略者から守るから教育係でいろ』という意味…なんだよね?

「仰せのままに、ブリュンヒルデ様。全ては我が主とその血族の為に」

儀式でも契約でもなんでもない、ただの口約束。でもアタシ、そして姫様達には意味のある約束。

148: 2013/12/02(月) 00:17:56.11 ID:k4fsdAQJ0
「…ずっと一緒。貴方が立派になっても…でしょう?」

薄暗い部屋、登る朝日。

アタシが生まれた日は、約束の日にもなった。

「ふぁ…ゲフンゲフン…」

そこで、ほっとしたのか姫様が欠伸をする。

「眠いね、さすがに…」

「あはは、慣れない事するから…ほらお二人ともお部屋に戻って寝ないと…。月曜日ですよ?」

「やーめーろー!月の日がこれほど忌々しいとは思ってなかった!」

二人を部屋に戻して、ネックレスを改めて見てみる。

マジックアイテムでもなんでもないネックレスは、二人の祈りが込められた翼。

似合ってるカナ、なんて鏡を見る。

雪は降っていないけど…今日はいつもより素敵な日になりそう。

…そう思ってもいいよね?

149: 2013/12/02(月) 00:19:29.65 ID:k4fsdAQJ0
以上です
柚ー!誕生日おめでとー!
誕生日のセリフが愛らしいぞー!

・二翼のネックレス
蘭子と昼子がお金を貯めて買ったネックレス。マジックアイテムではないが二人の祈りが込められている。
金と銀の翼は、それぞれ幸運と安らぎを意味するらしい。

150: 2013/12/02(月) 00:43:18.02 ID:bv1Dxcr/0
乙ー

柚ちゃん誕生日おめでとう!

151: 2013/12/02(月) 09:23:21.70 ID:bLh6qBSpo
柚ちゃんおめでとー

152: 2013/12/02(月) 12:28:24.40 ID:VEW4ymtDO
未央「私の誕生日過ぎたんだけど…」

黒川さん「出番無しよりはマシでしょ?」




【次回に続く・・・】


引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part8