1: 2016/08/10(水) 22:12:45.541 ID:9oYrBOdN0.net
カツオ「やっべー!遅刻遅刻―!」

先生「イソノ、また遅刻か!」

カツオ「サーセン!」

チャイム「~♪」

いつもと同じ平和な日々が始まる・・・そのはずだった。
サザエさん おやすみタマS

3: 2016/08/10(水) 22:14:42.582 ID:9oYrBOdN0.net
カツオ「ふう!お弁当の時間だ!」

花沢「イソノくん、一緒に食べましょう~!」

中島「磯野―!早く食べて野球やろうぜー!」

カツオ「よーしグラウンド行こうぜー!」

昼休みの野球では3点をいれて、上機嫌のカツオだった。

5: 2016/08/10(水) 22:16:41.403 ID:9oYrBOdN0.net
チャイム「~♪」

中島「磯野ー!帰ろうぜー!」

カツオ「おうー!」

花沢「磯野くんいっしょに帰りましょう~!」

カツオ「家に帰っておやつ食べたら空き地に集合な!」

堀川「・・・」

その様子をじっと見ていたのは堀川君だった。

6: 2016/08/10(水) 22:18:53.777 ID:9oYrBOdN0.net
堀川「あの少年に果たして荷が重すぎはしないのか」

死神「大丈夫だ。俺の目に狂いはない」

堀川「ふむ」

~磯野家~

タラオ「おやつはケーキです☆」

ワカメ「うふふ!おいしそう」

堀川「にゃーん」

ワカメ「タマかしら?」

タラオ「行ってみるです☆」

こうして二人は堀川君の下僕となった。

8: 2016/08/10(水) 22:20:42.166 ID:9oYrBOdN0.net
タラオ「うゎ!」

ワカメ「きゃっ!」

堀川「目覚めるのだ。お前たちはこの世界を切り裂く光と闇」

死神「・・・」

ワカメとタラオの額には黒と白の稲妻の印が刻印された。

9: 2016/08/10(水) 22:22:29.034 ID:9oYrBOdN0.net
ワカメ「いたた・・・」

タラオ「いたいです☆」

ワカメ「タラちゃん、おでこに黒い稲妻みたいな印があるわ!」

タラオ「ワカメおねえちゃんのおでこには白い稲妻の印があるです☆」

堀川「お前たちがこの世界を分裂させる神となったのだ」

その時、カツオが学校から帰ってきた。

10: 2016/08/10(水) 22:23:44.986 ID:9oYrBOdN0.net
タラオ「カツオにいちゃーん」

ワカメ「おにいちゃーん」

カツオ「どうした二人とも・・・あれ?」

カツオには一瞬、堀川くんと死神の姿が見えたような気がしたが、一瞬で消えてしまった。

11: 2016/08/10(水) 22:26:52.458 ID:9oYrBOdN0.net
中島「磯野ー!」

カツオ「いま行くー!」

タラオ「ボクの目を見るです☆」

カツオ「あれ・・・なんだかおかしいな」

カツオ「僕はだめな子だ・・・勉強もできないし家族の中でもお調子者。一生小学生のままで結婚もできない」

タラオ「ナンバーワンもオンリーワンも無理です☆」

カツオ「うう・・・」

タラオ「カツオお兄ちゃんにはすべてを捨ててもらうです☆」

タラオの目があやしく光り、カツオは操り人形となった。

12: 2016/08/10(水) 22:28:58.597 ID:9oYrBOdN0.net
カツオ「みんな捨てよう」

カツオ「この本も野球道具もみんないらない」

カツオ「友達もいらない」

カツオ「学校になんか行かない」

タラオ「みんな捨てて無になるです☆」

死神「その調子だ」

カツオはすべての持ち物と人脈を捨て、孤独な一文無しになった。

15: 2016/08/10(水) 22:33:23.476 ID:9oYrBOdN0.net
死神「思ったより早かったな」

堀川「人間を洗脳するには自己愛を徹底的につぶすのが一番なんだ」

ワカメ「あたしの出番はないのかしら」

堀川「ワカメちゃん・・・僕は君のために君の弟を使ったといっても過言ではない」

ワカメ「さぁ、あたしの力を見せてあげる」

死神「ほう・・・」

ワカメは自宅にひきこもり、何もしない兄の部屋に入り、話し始めた。

16: 2016/08/10(水) 22:35:09.187 ID:9oYrBOdN0.net
ワカメ「お兄ちゃん、入るわよ」

カツオ「・・・」

ワカメ「おにいちゃんはなんだってできるヒーローだった」

ワカメ「あたしにとってかけがえのないたった一人のお兄ちゃん・・・そうでしょう?」

ワカメ「クラスで一番の人気者。磯野家の一番のムードメーカー。」

カツオ「そんな僕はもう必要ないんだ」

ワカメはカツオに話し続けた。

19: 2016/08/10(水) 22:37:51.838 ID:9oYrBOdN0.net
ワカメ「ナンバーワンでオンリーワンのおにいちゃんが好き」

カツオ「ワカメ・・・」

カツオは布団から起き上がり、長く伸びた髭を触りながらワカメを見た。

カツオ「俺・・・もう一回学校に行こうかな」

ワカメ「お兄ちゃんなら絶対に大丈夫だよ!」

カツオ「うん・・・ありがとう」

カツオは長く伸びた髪をバリカンで剃り、冷えた水で顔を洗った。

22: 2016/08/10(水) 22:40:52.829 ID:9oYrBOdN0.net
サザエ「いってらっしゃい!」

ワカメ「いってきます!」

タラオ「・・・」

カツオが元気に登校するのは、実に半年ぶりのことだった。

中島「磯野!」

カツオ「中島!」

中島「待ってたぜ!」

花沢「また痩せてイケメンになったわね~!」

カツオ「ははは!今日は遅刻しないですみそうだ!」

堀川「・・・」

その様子を見守る堀川くんの目は遠い一点を見つめているようだった。

23: 2016/08/10(水) 22:43:28.061 ID:9oYrBOdN0.net
堀川「・・・俺がお前に初めて会った日のことを覚えているか?」

死神「あぁ・・・」

堀川「あれは俺が初めて精通した時のことだった」

堀川君は堤防の橋の下で地面に五芒星を書きながら死神と話す。

堀川「パンツに精液がついて、お母さんに言いに行った」

死神「それで殴られた」

堀川「そう。それ以来、俺はこの世界に価値があるのかどうかをずっと考えていた」

死神「価値はあるのか?」

堀川「そんなもの、あるわけがない」

そのころ、カツオはクラスのみんなと笑いながらお弁当を食べていた。

25: 2016/08/10(水) 22:46:23.518 ID:9oYrBOdN0.net
中島「磯野ー!野球やろうぜ!」

カツオ「おう!空き地に15時に集合な!」

ワカメ「よかった」

花沢「磯野君、大丈夫なのかしら」

ワカメ「もう大丈夫よ」

花沢「だといいんだけど」

ワカメ「なに?」

花沢「ちょっとね」

堀川「さぁ、世界の反転だ」

タラオ「やるです☆」

カツオが家に帰ると、タラオがカツオにそっと近づいた。

26: 2016/08/10(水) 22:49:37.284 ID:9oYrBOdN0.net
タラオ「この世界に価値はないです☆」

カツオ「俺には野球が・・・友達が・・・家族が・・・」

タラオ「甲子園に行けるとでも思ってるですか?」

カツオ「いや・・・」

タラオ「みんな心から信頼できる友達なんですか?」

カツオ「それは・・・」

タラオ「うわべだけの家族なんじゃないんですか?」

カツオ「うう・・・」

タラオ「この世界に価値なんてないです☆」

カツオ「俺は・・・なにも目指さないし・・・何もしない・・・」

堀川「ワカメちゃん、君の出番だよ」

死神「カツオが崩壊するのは時間の問題だな」

27: 2016/08/10(水) 22:52:20.546 ID:9oYrBOdN0.net
ワカメ「お兄ちゃんはあたしのかけがえのないお兄ちゃんよ」

カツオ「そう・・・かな・・・」

ワカメ「クラスでも人気者だし、先生にも好かれてる」

カツオ「それにどんな意味が?」

ワカメ「何気ない日常が大切なのよ。普通に生活して、笑っていられること」

カツオ「うん・・・」

タラオ「この世界に価値なんてないです☆」

カツオ「うう・・」

死神「さぁ、どうするかな」

堀川「精神エネルギーの限界時に発生するブラックホール。それが俺たちの狙いなんだ」

28: 2016/08/10(水) 22:54:15.180 ID:9oYrBOdN0.net
カツオ「俺は・・・」

ワカメ「ナンバーワンでオンリーワンのお兄ちゃん」

タラオ「この世界に価値なんてないです☆」

堀川「ブラックホールのエネルギーが生まれようとしている・・・!」

死神「ククク・・・その調子だ。よくやったぞ堀川」

カツオの精神が限界に達し、ブラックホールが生まれようとしていた。

31: 2016/08/10(水) 22:59:02.096 ID:9oYrBOdN0.net
死神「ご苦労だったな」

堀川「おい・・・まさかお前・・・」

死神「全と無が対消滅するときに生じるエネルギー。これが宇宙の進化に必要だったのだよ」

堀川「死神じゃない・・・お前はいったい・・・?」

?「私はすべてをつかさどる存在。神でも死神でもない。」

ワカメ「」

タラオ「」

カツオ「うう・・・」

堀川「ワカメちゃん!」

堀川「くそっ・・・!俺はなんてことをしてしまったんだ・・・!」

?「さぁ、来るのです」

カツオ「はい」

堀川「だめだ!」

カツオ「フフ・・・」

堀川「まさか!」

?「そう、彼も私と同じ存在になるのです」

堀川「そんな・・・!」

まばゆい光が磯野家を包み、気が付くとそこにいた者はみな気を失っていた。

33: 2016/08/10(水) 23:05:37.610 ID:9oYrBOdN0.net
堀川「ここは・・・」

ワカメ「うう・・・」

タラオ「まぶしいです☆」

?「気が付いたようですね」

カツオ「・・・」

タラオ「おにいちゃん☆」

ワカメ「カツオお兄ちゃん、羽が生えてる!」

?「彼はもう人間ではありません」

堀川「まさか・・・」

?「エネルギー体となった彼は、光です。周波数にすぎません」

カツオ「(ワカメ・・・)」

ワカメ「頭の中で声が聞こえる・・・!」

カツオ「(俺は今日からここで地球を見守っているよ)」

タラオ「なんだかへんなかんじです☆」

堀川「・・・あんたはいったい・・・」

?「対消滅した光と闇のエネルギー。それは一生分のネガティビティとポジティビティをぶつけた一瞬のできごとです」

堀川「いったいなにが目的なんだ・・・」

?「この世界は周波数にすぎないのですよ」

堀川「・・・」

?「すべての人たちの記憶からこの少年の記憶が消滅します」

カツオ「さようなら」

ワカメ「おにいちゃん!」

タラオ「いやです☆」

再びまばゆい光があたりを包み込み、3人は気が付くと磯野家の和室に倒れていた。

34: 2016/08/10(水) 23:08:03.224 ID:9oYrBOdN0.net
堀川「いてて・・・」

ワカメ「堀川君!なにしてるの?!」

タラオ「いたいです☆」

気が付くとすでに日は暮れ、夏の終わりを告げるセミの鳴き声が遠くで聞こえていた。

堀川「長い夢を見ていたような気がする」

ワカメ「でも、なんだったのかしら」

タラオ「おもいだせないです☆」

そして3人は大人になり、とある喫茶店で偶然再会したのだった。

35: 2016/08/10(水) 23:12:13.332 ID:9oYrBOdN0.net
堀川「やぁ、ワカメちゃん、結婚したんだって?おめでとう」

ワカメ「ありがとう!」

堀川「Facebookで見て俺もうれしくなってさ、まさかこんなところで会えるなんて」

タラオ「あれ?ワカメ姉ちゃん?」

堀川「タラちゃん!」

ワカメ「なんだか懐かしいわね!」

タラオ「この3人があつまると、誰かのことを思い出しそうになるんだ」

堀川「俺も、なにかを思い出しそうになる」

ワカメ「あら、あたしも」

タラオ「でも、全然思い出せないんだよね」

堀川「俺たち、記憶を消されてたりしてな!」

ワカメ「やだー!なんだか漫画の世界みたい!」

こうして今日も平和な日々が続く。

たった一人の少年の消滅を知るものは誰もいない。

空のずっと上のほうで、カツオがそっと微笑んだような気配がした。

おわり

36: 2016/08/10(水) 23:13:10.078 ID:9go9e2l7d.net
>>1乙!

引用: タラオ「ボクは無の神」ワカメ「あたしは全の神」