128: ◆6osdZ663So 2014/02/06(木) 23:46:53.17 ID:DZPl2Mnfo

129: 2014/02/06(木) 23:47:30.58 ID:DZPl2Mnfo


前回までのあらすじ


桃華「それじゃあ、わたくしはフェイフェイさんと出かけてきますので」

扉 ガチャ バタン


UB「やれやれ、お嬢様は本気で君の力を利用するつもりで居るらしい
   しかしそれは私たちにとって僥倖。君の力の有用性は私もよくわかって…

裏切り「今眠いからちょっと黙ってて」

UB「……(´・ω・`)」


桃華と『裏切り』の核

----------------------------------------



それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。




130: 2014/02/06(木) 23:48:07.79 ID:DZPl2Mnfo


賑わう人々に華やぐ祭典。

その裏側で暗躍する者達がいる。



その内1人は、日の光も届かない真っ暗な影の中にて。



クールP「頼まれていた資料はこれでいいかい?」

チナミ「ええ、一通り目を通したけどなかなかね」

チナミ「流石は、同盟のプロデューサーヒーローと言ったところかしら」


悪業渦巻く魔界において、

さらに策謀の交錯する吸血鬼の大派閥”利用派”に属する二人の男女。

チナミとクールP、彼女達はとある資料の受け渡しをしていた。

131: 2014/02/06(木) 23:49:13.28 ID:DZPl2Mnfo

チナミ「手間を取らせたわね」

クールP「僕自身が動いたわけではないですから構いませんよ」

チナミ「あら、そうだったの?」

クールP「スカウト活動の一環のためだと言えば、」

クールP「その程度の資料は割と簡単に取り寄せられますから」

チナミ「ふーん」

チナミ「まあ、あなたの手で作られてないって言うのなら逆に信用できそうかしら」

クールP「おっと、随分と辛辣な評価だね。僕はそんなに信頼されてないのかな?」

お互いに言いあって、そしてクツクツと笑い合う。

チナミ「ふふっ、信頼ね」

クールP「ええ、信頼ですよ」

裏切り裏切られが日常茶飯事の魔界の出身。

それもお互いに”利用派”吸血鬼。

チナミ(そんなもの、存在するはずなんてないのにね)

吸血鬼の仲間。”利用派”の仲間。

仲間と言うのは彼女にとって、ただの利害の一致でしかなく、

お互いに利用し利用される関係の事を言う。

だから、彼女は目の前の男の能力は信用していても、

その内面を”信頼”などはしていない。

きっと目の前の男もそうなのだろうと、考えているし。

そもそもこの世界には、真の意味での”信頼関係”などは存在していないのだろうとチナミは考えるのだった。

132: 2014/02/06(木) 23:50:04.38 ID:DZPl2Mnfo


クールP「とりあえず、その資料の分のお代の請求はそのうちにさせていただきますよ」

チナミ「あら、エージェントと言う部隊の存在と、あの子がエージェントに所属してるって事を教えてあげたじゃない」

チナミ「その分でチャラでしょう?」

クールP「……相変らず図太いね」

チナミ「ふふん、お褒めの言葉ありがとう」

チナミ「だけど、あなたが動いて集めた情報って訳でもないんでしょ?」

チナミ「これで、チャラにしてあげるって言ってるんだから感謝して欲しいわよね」

クールP「……わかりました、ではそれはサービスと言う事にしておきましょう」

チナミ「うふふっ、助かるわ♪」

クールP「『秋炎絢爛祭』に集まる能力者たちの資料。せいぜい有効に使ってください」

チナミ「ええ、私の目的の為に利用させて貰うわよ」

クールP「それでは僕はこれで」

クールP「貴女のように美しい方と一緒に居て、誰かに誤解されてはいけませんから」

チナミ「その口の上手さが人気アイドルヒーローの秘訣なのかしらね。その甘い言葉に何人のファンが騙されたのかしら」

クールP「ふふっ、どうかな。せっかくですから貴女もアイドルはじめてみますか?」

チナミ「輝く舞台に立つのも悪くないかもね」

クールP「その時は、特別に僕がプロデュースしますよ」

チナミ「冗談」

それが最後と、女性が背中を向けると、

クールP「おや、残念」

男性もまた背を向けて、互いに光の射さない影の世界へと消えていくのだった。

133: 2014/02/06(木) 23:51:02.61 ID:DZPl2Mnfo

――


アイドルヒーロー同盟はいつでも人材を求めている。

その人材とは、侵略者にも打ち勝つ事の出来る強く正しく美しい者。

同盟のプロデューサーたちはそんな人材捜し求めているのだ。

それは当然、たくさんの人々の集まるこの学園祭においても。


チナミ「つまりこのリストに載る人間は、何か特別な力をはっきりと持つ人間」

チナミ「同盟のプロデューサーのお眼鏡にもかなう優れた能力者なんかよね」

チナミ「つまり、私の眷族に新しく迎える優れた人間を探すのにも、」

チナミ「このリストは役立ってくれるということ」

チナミ「そうねぇ、とりあえずこの中で私が今一番気に入ってるのはこの子かしら」


Name: 新田美波
Sex: 女性
Age: 19
Birth: 7月27日
Job: 学生
Height: 165cm
Weight: 45kg
……
……


チナミ「……なんだかやたら詳しいプロフィールね」

チナミ「同盟ってこんな事まで調べてるのかしら……ストーカーじみてるじゃない…こわっ」

チナミ「おほん……ま、そんな事よりもこの子について……」

チナミ「容姿端麗、頭脳明晰、文武両道、温和勤勉」

チナミ「なるほど、アイドルに仕立て上げるにはこれ以上ないってくらい逸材じゃない」

チナミ「ただこの子自身が能力者と言う訳では無いみたい、戦うところを目撃されてる訳でもなし」

134: 2014/02/06(木) 23:52:04.83 ID:DZPl2Mnfo


チナミ「だけど、そんなことより気になるのは彼女が連れているって言う銀色の蠍」

チナミ「・・・・・・クールの連れてるアラクネ・・・・・・だったかしら」

チナミ「と同じタイプの機械兵器か何かよね」

チナミ「なんだったかしら・・・・・・デウ?エク?」

チナミ「そう!エクス・マキナ!」


チナミが興味を持ったのは、ここ最近急激に増え始めた機械仕掛けの兵器たち。

いつ、だれが、どのような目的で作り出したのかもわかっていない正体不明の機械生命。


チナミ「派閥もサクライも『エクス・マキナ』の詳しい情報をほとんど持っていなかったはず」

チナミ「つまりこの子を操れたなら、彼らとの取引の材料にも使えると言う事」

チナミ「目撃情報から言えばこの子自身は戦いにはなれていない。与するのも容易なはずよね」

チナミ「……ふふふ、まず一人目は決まりね♪」

上機嫌に呟くと、手に持っていた紙束を魔法の炎で燃やし尽くす。

資料の内容はすべて覚えた。情報は頭の中に残っていればそれでいい。


「あっれ~、お姉さん1人ぃ?こんな所でなにしてるの~?」

チナミ「あら?」

135: 2014/02/06(木) 23:52:56.66 ID:DZPl2Mnfo

丁度その時、数人の奇抜なファッションをした若者達がチナミに声を掛けてきた。

「こんな人通りのない日陰で真っ黒な傘なんか差しちゃってさぁ?かわってるねぇ」

「……よく見たらさぁ、お姉さんすっごく美人じゃん?やっば!激マブっしょ?!」

「ねぇねぇ、良かったら俺らと遊んじゃわない?1人で居るよりきっと楽しいよ?」

どうやら、俗に言うところのナンパのようだ。

チナミ(……それにしたってなんだか時代に取り残されちゃってる感じの子達よね)

チナミ「まあ、丁度良かったわ」

「ん?あれれ?お姉さん意外とノリ気?」

「いいよいいよ!俺たち実はここの学生なんだよねぇ」

「案内なら任せなよ、イイトコ連れっててあげるからサッ」


チナミ「ええ、道案内よろしく頼むわね」

彼女の瞳が妖しく光った。

 

136: 2014/02/06(木) 23:53:50.49 ID:DZPl2Mnfo

―――

―――

―――


ドンッ

美波「きゃっ」

紗南「あっ、ごめんなさい……前ちゃんと見てなくて」

美波「ううん、いいのよ。そっちこそ怪我はないかな?」

紗南(綺麗な人)

紗南「え、えっと大丈夫です」

美波「そう?良かった!えっと…中学生の子かな?1人?もしかして迷子だったりとか?」

紗南「い、いえ!違います!そ、その……あ、あたしの事はお構いなく!」

美波「あっ、ちょっと」

紗南「ごめんなさいっ」


逃げるように紗南は、その場から足早に離れるのだった。

137: 2014/02/06(木) 23:54:54.83 ID:DZPl2Mnfo

紗南「……」

紗南「……はぁ」

廊下を歩きながら三好紗南は溜息をつく。


紗南「やっぱり簡単には馴染めないよね……」


教習棟の廊下を歩きながら、紗南は呟く。

紗南のクラスが学園祭で催すヒーローショーまでの僅かな休憩時間。

今頃、クラスメイト達は思い思いに友達と過ごしているのだろう。


一方で、紗南は1人であった。


その原因は、学校のサボりすぎである。

三好紗南には色々な事情があって、学校に登校できなかった期間が長い。

そしてその間に、紗南を置いてクラスのコミュニティは固く結束力のあるものとなっていたらしく……

何事も無かったかのように彼らの絆の間に割り込むことなど、簡単にはできないのだった。


紗南「うわぁ、もう!見事なまでにぼっちだー!」

大きな声で愚痴る少女の姿に奇異の目を向ける者も居たが、一瞬ちらりと目を向けただけでただ通り過ぎていく。

紗南「友達も、勉強も置いてけぼりなんて!それもこれも『怠惰』と『強欲』のせいだっ!くそーっ!」

確かに彼女が学校に通えなかった原因のほとんどは『怠惰』と『強欲』の悪魔のせいだが、

勉強をサボりがちなのは元からである。

138: 2014/02/06(木) 23:55:47.20 ID:DZPl2Mnfo


紗南「……はぁ」

紗南「……これが学園が舞台のゲームとかだったら」

紗南「クラスのまとめ役ーみたいな子が居て、なんとかしてくれたりするんだろうけど」

紗南のクラスにも、まとめ役と呼べるような、いつもクラスの中心となる人物はいる。

彼女は、まるでゲームに出てくる主人公のような少女。


紗南「南条光ちゃん……」

持ち前の明るさで周囲を照らしだす、光そのもののようなクラスメイト。


紗南「……なんか雰囲気変わってたよね」

紗南「前まであんなに、怖い目をしてたかな?」

紗南「あたし殺されるかと思っちゃったくらい……あはは、なんてね。そんな事あるわけないし」

冗談っぽく言ってみたが、疑念は晴れない。

やはりあの目は……何かが引っ掛かる。

今朝もクラスで顔を付き合わせたときに見せた、彼女の目。

その心の内に何か”よくないもの”を秘めているかのような目。


紗南「……敵意……なのかな」

139: 2014/02/06(木) 23:56:34.74 ID:DZPl2Mnfo

紗南「……ありえない……って言い切れないところが辛いところなんだよね」

紗南「学園祭、みんな頑張ってるのに1日目はあたし完全にサボっちゃったし」


学園祭1日目。

三好紗南は、サボった。


いや、「サボった」と言ったが、決してそれは『怠惰』の気持ちからではなく、

とある元ヒーローの活動の手伝いをしたかったために、1日目の参加を諦める事に決めたのだが。


紗南「それでも光ちゃんは”正義感”が強いから、やっぱりそう言うの許さない系ヒーローかなぁ」

紗南「まあ、それに関しては自業自得であたしが全面的に悪いんだけどね、うん……」


一応は、昨日の欠席も病欠と言うことになっている。

おかげで本日もまだ調子悪いような演技をする事になってしまい、それはそれで大変なのだが仕方ない。


紗南「だとしてもあんな目ができちゃう光ちゃんじゃなかったと思うけど……」


しかし、やはり引っ掛かる。

どうしても気になって、考え込んでしまうのだった。



ドンッ!

「きゃっ」

紗南「あっ!ごめんなさいっ」

考え事をしていた為に、また誰かにぶつかってしまった。

140: 2014/02/06(木) 23:57:38.40 ID:DZPl2Mnfo

「もう……」

ぶつかった相手は、紗南よりも小さく、綺麗な金髪で、お人形さんのような服を着ているが、

どこか印象が薄い眼鏡をかけた少女であった。


「……考え事もよろしいですけれど、歩くときはきちんと前を向くことですわ」

紗南「ご、ごめんなさい……」

「うふふっ、わかっていただければ結構ですわよ」

紗南(自分より年の低そうな子に説教されてしまった……)

紗南(て言うか……この声どこかで聞いたことがあるような?)


気のせいだろうか。記憶の片隅にこの少女の姿があるような気がした。


「どうかしましたの?」

紗南「う、ううんっ!なんでも!ほんとごめんね!それじゃあっ!」

なんとなく居たたまれなくなり、急いでその場を立ち去ることにする。


紗南「あ、そうだ。眼鏡はずした方がいいと思うよ」

紗南「ほら、眼鏡ってあまりいい印象無いからね!」

それだけ言い残して、紗南はその場を後にするのだった。

141: 2014/02/06(木) 23:58:29.97 ID:DZPl2Mnfo

――

――

――


桃華「……」

桃華「……まったく、あの程度の洗脳を受け入れてしまうなんて信じられませんわね」

マジックアイテムである『眼鏡』を掛けた事によって、その存在の印象が薄くなった少女が呟く。

世界に名だたる櫻井財閥のご令嬢にして、『強欲』を司る悪魔マンモンである少女は、

その正体を隠してこの学園祭に紛れていた。


桃華「紗南さんにはわたくしの所有物である自覚が足りないのかしら?」

菲菲「んー、しょうがないんじゃないカナー」

『眼鏡』を掛けた美しいお人形さんのような少女のその傍らには、

同じく『眼鏡』を掛けた中華風衣装に身を包む少女が1人。

傍から見れば、ちぐはぐでへんてこな2人であったが、

しかし幸いと言うべきか通りがかる人々は、彼女達の容姿を気にしない。

マジックアイテムの効果のおかげもあるが、何より学園祭の空気がそれを許している。

多少見てくれが変わっていても、コスプレだと思われる範囲であろう。

142: 2014/02/06(木) 23:59:37.27 ID:DZPl2Mnfo

菲菲「マンモンちゃんの”所有権の主張”なら、」

菲菲「確かにマンモンちゃんの所有物が、他の誰かの意のままに操られるのを防ぐことができるケド」

菲菲「眼鏡をよくないものと思わせるために蔓延してる風潮は、人から意志を奪うものとはちょっと違うからネー!」

計り知れぬ魔神は、容易く世間に浸透しつつある認識操作の性質を読み取り、

その暗示が三好紗南に通じてしまった訳を、事も無げに語る。

桃華「認識の付加は、意識の所有権云々以前の問題と言う事でしょうね。」

桃華「そんなことより……」

桃華「……」

そこまで言いかけて少女は急に、押し黙る。

桃華『……フェイフェイさん。わたくしの事はその名前で呼ばないでいただけますか』

そして口を開かないままに言葉を続けた。

『強欲の証』を通した、テレパシー。

初代『強欲』の悪魔と当代『強欲』の悪魔の間でのみ通じる脳内会話。


桃華『何度も言うようですけれど……本日はわたくし、お忍びで来てますから』

桃華『目立つような真似はしたくはありませんの』

余計な事は口に出すな。と言う事らしい。

菲菲『?……それじゃあなんて?』

桃華『桃華でよろしいですわ。櫻井桃華の名前も有名ではありますが、』

桃華『ありふれた名前でもありますから、どなたも気にも留めませんわよ』

桃華『少なくとも悪魔としての名前を出されるよりはずっとマシですから』

菲菲「桃華ちゃんだネっ!わかったヨっ!」

その事の重大さなどはどうでもいいのか、魔神はただ無邪気に答えた。

143: 2014/02/07(金) 00:00:29.13 ID:+fHfSRVso



菲菲「それにしても桃華ちゃんが、外出に付いて来てくれる気になってくれたのは意外だったヨー」

桃華「あら、わたくしだってお散歩は好きですのよ?」


人々が行き交う中、廊下を歩きながら2人の会話は続く。

正体を隠すための『眼鏡』を掛けているおかげで、2人の存在に対して気に留める者はほとんどいない。

時々、”植えつけられた『眼鏡』に対する憎悪”故か、訝しげな視線を向けるものも居たが、

それくらいの注目は、2人にとっては取るに足らないものだ。


菲菲「でも、最近はずっと部屋に籠りきりだったよネ?」

桃華「好きで籠ってるわけではありませんわよ」

桃華『ただ…神の目を避ける為には仕方ないのですわ』

桃華『それに当代大罪の悪魔であるわたくしは、現魔王の定めた制度によって指名手配に近い状態ではありますし……』

桃華「……本当に窮屈なことですわね」

菲菲『それについてはふぇいふぇいも同意するヨー、悪魔なのに悪魔の自由を縛るなんて魔王は変な事考えるネ?』

菲菲「まあ、奪われた自由は勝ち取ればいいんじゃないカナ?」

にやりと魔神は力強く笑う。

桃華「うふふふっ、元よりそのつもりですわ♪」

答えるように、『強欲』なる少女もご機嫌に笑った。

144: 2014/02/07(金) 00:02:38.53 ID:+fHfSRVso

菲菲「まあ、そんな事より今はお祭りダヨー!!」

菲菲「まずはどこに行こうカナ!どこに行こうカナ!?」

桃華「まったく……はしゃぎ過ぎではありませんの?」

菲菲「そんな事言っちゃってるけど、桃華ちゃんもうずうずしてるヨ?」

桃華「し、してませんわっ!」

菲菲「えぇ?そうカナー?」

桃華「……」

菲菲「?」

桃華(……まあ、久しぶりのお出かけですもの。少しくらい楽しんでも罰は当たりませんわよね?)

菲菲「桃華ちゃん?」

桃華「……うふっ♪フェイフェイさんも楽しむのは結構ですが、」

桃華『ちゃんと人間らしく振舞うのはお忘れなく』

菲菲「もちろん、わかってるヨ!」

桃華『力を行使するのは極力避けるようにするのもお願いしておきますわ』

菲菲「わかってるヨー!」

桃華『あと氏神ちゃまも来ているようですから、関わらないようにお気をつけくださいね』

桃華『バレる事もないとは思いますが、その他の魔界関係者の存在にも気を配ってくださいまし』

桃華『それと財閥は敵が多いですから、不用意にお話に出すのも避けていただけるかしら』

桃華『同盟から来たヒーローが多く配置されているようですわね。彼らに怪しまれる行動も慎むよう頼んでおきますわ』

桃華『そうそう、眼鏡が嫌いなカースと言う妙な存在に絡まれることもあると思いますが、お気になさらないように』

桃華『それからそれから……』

菲菲「ちゅ、注文多くないカナ……?なんだかふぇいふぇいも自由を奪われてる気になってきたヨー……」

145: 2014/02/07(金) 00:03:35.44 ID:+fHfSRVso

――


菲菲「うーん、焼きそば美味いネー!」

桃華「そうやって食べる物なんですの……?でもこれでは下品では……」

菲菲「でも美味しいヨ?何事も挑戦してみるものダヨ!」

菲菲「ただ、ふぇいふぇいならもっと上手く作る自信が……ってアレ?」

菲菲『そう言えば、どうして桃華ちゃんは、氏神ちゃんがこの学園祭に来てるってわかったのカナ?』

菲菲『……と言うか、さっき来たばかりなのに学園全体の事を把握しすぎじゃ?』

ベンチに座り、屋台で買った焼きそばを食べながら、

魔神はなんとなく気になったことを、隣で焼きそば相手に悪戦苦闘している相方に尋ねる。

桃華『あら、お忘れですの?』

桃華『わたくしの能力は”所有権の主張”ですわよ』

桃華『道行く方々の”記憶”すらもわたくしの”所有物”ですわ』

『強欲』の悪魔である彼女は、あらゆる物事の”所有権”を主張できる。

命であれ、物であれ、『記憶』であっても全てが彼女の支配下。

桃華『ここに居る方々は、1日目も参加されていた方が多いようですから』

桃華『彼らの記憶が把握する限りの1日目の様子であれば、わたくしもまた知る事ができますのよ』

菲菲「そう言えばそんな能力もあった気がするネ?」

桃華「その忘れっぽい性格はどうにかなりませんの……?」

菲菲「取るに足りない事はあんまり記憶してないヨ!」

桃華「自慢げに言うことではありませんわっ!」

桃華(いえ、仮にも大罪の悪魔の能力を取るに足りない事と言ってしまえるのは自慢になるのでしょうが……)

146: 2014/02/07(金) 00:04:30.12 ID:+fHfSRVso

――


桃華『記憶の所有権』

菲菲「もぐもぐ」

魔神はたこ焼きを頬張りながら、

隣で同じくたこ焼きを頬張る少女の話に耳を傾ける。

桃華『”他人の”記憶を、”わたくしの”記憶でもあると主張するだけの能力ですわ』

他人の記憶でありながら、それは彼女の記憶。

つまり彼女は好きな相手の記憶を閲覧することができる。

桃華『もちろん、真にわたくしのものとするならば、』

桃華『相手に向けて、”主張する”と言う手順を踏まなければいけませんけれど』

菲菲『”それはわたくしのものデスワ!”って感じダネ!』

桃華『……似てませんわ』

桃華『まあ、その手順も本当に力を持たない相手に対してはとことん省くことができますの』

桃華『それに今回は奪うわけではなく、横から閲覧させて頂いている程度』

桃華『これくらいならば、少し触れ合うだけでも充分に力を発揮できますのよ』

菲菲『そう言えば、さりげなくすれ違い様に通りすがりの人間に触ったりしてた気がするネ?』

桃華『うふ♪袖振り合うも多少の縁と言ったところですわね♪』

菲菲『……でもそれは力を持たない相手に対してだよネ?じゃあ例えばふぇいふぇいに対して力を使おうとしたら手順の省略はできないんダ?』

桃華『あら、フェイフェイさんが相手では、仮にどんな手順を踏んだとしても記憶を横から見させていただく事さえ不可能ですわよ』

147: 2014/02/07(金) 00:05:32.34 ID:+fHfSRVso

桃華『わたくしの能力は”魂の大きさ”…言わばレベルに左右されるものですから』

桃華『引力に例えるとわかりやすいかもしれませんわ』

桃華『月が地球に引っ張られるように、地球が太陽に引っ張られるように』

桃華『あらゆる所有権は大きいものにこそ追従するもの』

桃華『ですからわたくしは自分より大きいものからは、その所有権を奪えませんの』

菲菲『ふーん、この辺りを歩いてる取るに足りない人間の所有物は簡単に奪えても』

菲菲『悪魔クラスが相手になると難しくなるのカナ?』

桃華『そう言うことですわね、人間の能力者クラスが相手でも』

桃華『今の様にすれ違っただけで、と言う訳にもいきませんわ』


菲菲「なるほどー、弱いものいじめな能力ダネっ!」

桃華「うふふふっ、お褒めの言葉と受け取っておきますわ♪」

彼女の力は弱いもの相手には一方的な蹂躙を可能とする能力。

しかし、裏を返せば強いものに対しては為す術がない。

148: 2014/02/07(金) 00:06:39.90 ID:+fHfSRVso

――


そして、彼女の能力にはもう一つ弱点がある。


菲菲『それじゃあ、カース相手にはどうなのかな?』

桃華「……」

チュロスを片手に、何気なく尋ねた魔神の言葉、

同じくチュロスを手にもつ桃華の表情が一瞬強張る。

菲菲『やっぱりカースからは何も奪えないんダ?ううん、奪いたくないのカナ?』

桃華『……意外に核心を突きますわね』

桃華『ええ、その通りですわよ』


桃華『だって、”カースの穢れ”が”わたくしの穢れ”になるなんて耐えられませんもの♪』


彼女は、マイナスの所有権は主張しない。

149: 2014/02/07(金) 00:07:15.99 ID:+fHfSRVso

――

――


桃華「とにかく、今回のわたくしの目的を果たすために、この能力は鍵になりますわ」

先ほど購入したアイスクリームを食べ終えた、悪魔の少女は語る。

菲菲「えっ……?」

桃華「どうしましたの?とぼけた顔をしまして?」

菲菲「ううん、ちゃんと目的があったんダネ?」

桃華「当然ですわ!目的をなくしてわたくしが動くことなんてありえませんのよっ!」

少女は大仰な身振りも合わせて、華麗に言い放つ。

彼女は『強欲』を司る悪魔。ただ遊んでいるような振る舞いは見せつつも、

その心のうちはいつでも欲望に忠実かつ強かである。


桃華『例の失敗作の監視に付けていたエージェントが一人。この学園祭での連絡を最後に居なくなっていますの』

櫻井財閥の当主が飼う”エージェント”と呼ばれる特殊能力者機関の人員が1人、

この学園祭の中で任務遂行中に失踪した。

その任務は、財閥が行った実験で生まれたカースの監視任務であったが、

どうやら彼は、その任務を最後までやり遂げる事はできなかったようだ。

また、監視していたカースも何者かに倒されてしまっている。


菲菲『その失敗作のついでにヒーローに倒されたんじゃないのかな?』

桃華『どなたに負けたとしても……そして氏んだにしても』

桃華『エージェントの中でも優秀な方が、ここまで何も無かったかのように消息を絶つなんてありえませんわ…』

桃華『何よりあの方は、戦線からの離脱に特化した能力を持っていましたもの』

桃華『そんな方が跡形も無く消されてしまう?一体どうやって?』

桃華『わたくしは、彼の所有者として、彼の最後を調べなくてはいけませんわ』

150: 2014/02/07(金) 00:08:32.44 ID:+fHfSRVso


菲菲『なるほど、つまり桃華ちゃんはその人がどこに行ったのかを探りたいんダネ?』

桃華『ええ、彼はともかく消失したカースの方に関しては必ず目撃者が居るはずですもの……』

桃華『今回、わたくしが来た目的はその目撃者達の記憶を探ること』

桃華「わたくしの所有物を奪った方々から……」

桃華「すべてを奪い返すためにですわよっ!」 ズバッ

菲菲「わあ!桃華ちゃんカッコイイヨー!」 パチパチ

桃華「うふっ♪」

桃華「さて、フェイフェイさん」

桃華「目撃者を探すためにも、わたくし達はこの学園をぐるりと回らなくてはいけませんわ」

桃華「こんなところでうかうかしてる場合ではありませんのよっ!」

菲菲「そうダネ!」

桃華「ふふっ、それでは次のお店に急ぎますわよっ!」

菲菲「ん?あれれ?」

桃華「どうしましたの?早くしませんとこの学園を回りきれませんわ」

菲菲(……やっぱり桃華ちゃんはしゃいでないカナ……?)


桃華「次はチョコバナナですのよー!うふふー♪」

菲菲「あ、待ってヨー!」


かくして、櫻井財閥は学園祭の裏側にて暗躍をはじめるのであった。


……暗躍するのだろうか?


おしまい

151: 2014/02/07(金) 00:09:39.21 ID:+fHfSRVso

◆方針

桃華 … 通りすがる人々の記憶を探りながら学園祭を満喫中
菲菲 … とりあえず学園祭を満喫中
チナミ … 眷族候補探し中
紗南 … 不憫

財閥が学園祭で動き始めたお話
ちゃまは久しぶりの外出で超はしゃいでます
ただ自分の欲望を満たすために一生懸命です

152: 2014/02/07(金) 00:32:17.79 ID:Aop/KJR+O
乙ー

チャラ男南無……

フェイフェイが他の旧七罪にあったときポロッと名前呼びしそうだなw



【次回に続く・・・】



引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」 part9