439: ◆zvY2y1UzWw 2014/03/20(木) 23:50:58.20 ID:P2AalGg60


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ



学園祭時系列で投下しますですよ

440: 2014/03/20(木) 23:52:15.72 ID:P2AalGg60
「ふふんふんふんふっふ~ん♪」

街が学園祭一色になっている。道行く人たちは殆どが学園祭目当てだ。

『国内最大規模の学園祭』という事もあり、わざわざ地方から来る人もかなりいるらしい。

しかも、あのアイドルヒーロー同盟のアイドルまで出演するのだ。マスコミも注目するし、ファンは大喜びで集まってくる。

秋炎絢爛祭は一種の経済効果まで起こしている学園祭なのだ。

「ふふんふふんふんふんふふ~ん♪」

そんな中、カフェ・マルメターノは出張店も出すことなく通常通りの営業である。

きらりは開店前に鼻歌交じりでご機嫌そうに店の周囲の掃き掃除をしていた。

奈緒はまだ寝ているが取りあえず無事に帰ってきた。それが嬉しい。

「ふふんふふんふん♪」

「あっ…きらりさん?」

「にょ?…あーっ!千枝ちゃーん!お久しぶりだにぃ☆あいさつ代わりのはぐはぐー☆」

「わわわ…は、はい、お久しぶりです…きらりさん、あの…箒落としてますよ」

「あっ、お掃除しなきゃいけなかったにぃ!ごめんね箒さーん」

(び、びっくりしたぁ…)

きらりのいきなりのハグに驚きつつ、すぐに解放されて落ち着いたようだ。
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それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。



441: 2014/03/20(木) 23:54:10.57 ID:P2AalGg60
「んーと、千枝ちゃんは…お祭に行く途中かな?」

「そうですよ、きらりさんはこのお店で働いていたんですか?」

「そーなの!ぱふぇがとーってもおいしーから、千枝ちゃんもいつか食べに来てー!あ!そーだ、これ邪魔にならないならどーぞぉ!」

きらりが制服であるエプロンのポケットから小さなチラシを取り出して千枝に渡した。

店の説明や地図に加えて『このチラシ一枚で1つのグループにドリンク一杯無料サービス』と書いてある。

「ええっと…このお店のチラシですか?」

「そーなの!し・か・も!サービス券にもなっちゃう☆これをねぇ、学園祭に行ったり~学園祭から帰ってきた人たちに配るんだゆ!」

「カフェ・マルメターノ…このお店って学園祭にお店は出さないんですか?」

「それがね、きらりはお店出したいんだけどぉ…もう結構お店あるみたいだから、出さない方がいいってリーダーちゃんがぁ…」

「あ、そう言われると確かにカフェって結構あったような気がします…」

「けど!お店に人が来てくれるとやっぱりうれしーから、こーやってチラシを配るんだにぃ☆」

出張店として開いたり、学生が開いている店…それぞれ趣は違うがカフェ自体はそれなりにある。

それだけではなく、食べ物や飲み物を販売している店も考慮すると、比較的普通なカフェ・マルメターノは集客が望めないと考えられた。

それでも学園祭に集まる人の量は膨大で、なんとしても呼び込みたいのが本音である。

このチラシは主にこの店の前を通る人々が、学園祭の帰りに騒がしくない、落ち着ける空間を求めて入店するのを狙っているのだ。

「千枝ちゃんも、お友達とか、ご近所さんとか…いろんな人と一緒に来て来て!」

「ご近所…あっ、もう行かなきゃ!きらりさん、チラシ貰っておきますね!」

「うん!きらり、頑張るから、千枝ちゃんも頑張ってー☆」

「はい!」

ブンブンと手を振って、きらりは千枝を見送ると、再び鼻歌と共に掃除を再開した。

442: 2014/03/20(木) 23:55:10.37 ID:P2AalGg60


学園祭のスタンプラリーは、難易度が高い程スタンプの量が多い。

だが、逆に言えばポイントが少ないが難易度が低い場所も結構あるのだ。

時間がない人達は高ポイントを狙い、そうでなくても個性的な物が多い高難易度の物はそれなりに人気がある。

だが、時間に余裕もあり、それほどチャレンジャー精神や野次馬根性もない人々は、コツコツ低ポイントをこなしていたりもする。

そんな人がここにも…スタンプラリーの1ポイントのスタンプが押される場所で、3人の少女が1人を待っていた。

内容はあっち向いてホイ。簡単なはずなのだが先ほどからずっと終わる気配がない。

何故なら番人はジャンケンでずっと勝っているのだが、挑戦者があっち向いてホイの時に粘りに粘って決着がついていないのである。

挑戦者は金髪で猫耳の獣人の少女。待っている3人のうち、一人は緑色の少し大きな袋を持っていてた。

そう、彼女達はハリケーンガールズだ。

443: 2014/03/20(木) 23:56:58.73 ID:P2AalGg60
「ケイー、まだ終わんないのかよー」

「……スタンプと言えばマリパ3のストーリーモードよね」

「ケイー!マーサが変な事言いだしたから早くぅー!」

「ほんとゴメン!まだ負けてないから、諦められない!」

急かす後ろの3人に謝罪し、ケイは再び番人と向かい合う。

「じゃあいきますよー」

「はいはい!」

「「じゃんけんポン!」」

「「あっちむいてホイ!」」

「あー負けました~」

「よっし!やっと勝てた~ほら、スタンプちょーだい」

「はいどうぞ、1ポイントです」

「よーし、これで3ポイント!あと6ポイント!」

「ケイ…1ポイントで時間使いすぎよ」

「番人の男の子も少し困っていたみたいだよ?勝ってホッとしてたし」

「だってさぁ、ジャンケンで勝てないんだよ!あっち向いてホイの時に粘るしかないじゃん!?ジャンケンで勝てばあっち向いてホイでは勝てるし!」

「ケイは動体視力良いよな、だからか?」

「そう!本気出せばテレビがコマ送りに見えるの!…目が疲れるけどね」

猫の獣人であるケイは、動体視力にそれなりの自信があるようだ。

444: 2014/03/20(木) 23:59:55.59 ID:P2AalGg60
「…でも動体視力が良い割にはジャンケンには勝てないのね」

「いや、あれはどうしようもなくない?下手すると後出しになるし」

「そもそも、十数連敗くらいする方がすごいと思うよ」

「確率どこ行ったって感じだったよな」

「あのね…ジャンケンの時、ジャンケンをしない方の腕は宙に浮いている場合はパーとチョキの時、微妙に動くの。個人差はあるけど」

「え、何それ知らなかった!」

「おーマジだ、右腕でパーとかチョキを出すと微妙に左手が動くな」

「…次からは、ジャンケンでも無双が出来そう!」

「いや、腕隠されたらどうするんだよ」

「がんばる」

「獣人の動体視力の無駄遣い…かも」

「そういえば猫耳の女の子がメイドカフェにいたねー。あのメイドカフェ、噂だと種類豊富みたいだよ」

「メイドの種類が豊富なメイドカフェ…なんかすごいな。何がって言われても答えられそうにないけど」

「アタシは『にゃあにゃあ、にゃんにゃん❤』な~んてしたくないけどね」

ケイが冗談交じりに上目遣いで猫のようにポーズしてみるも、すぐに本人が嫌そうな顔をして止めてしまった。

「うん、お前はそういう路線じゃないな。よーくわかる」

「ロックな猫と、メイドな猫、あなたはどっち?みたいな?セクシーなのキュートなのどっちが好きなの?なんちゃって~」

「…ちょっと古いわね」

「え~このネタ、アタシ達が小学校の…一年生ぐらいの時のでしょ?」

「十一年前じゃねーか!!」

「十分古いわね」

「えっ、古かった?」

不意に出てきた懐かしいネタに、4人は盛り上がる。

445: 2014/03/21(金) 00:01:28.10 ID:i+XDo28B0
「…じゅ、じゅういちねん、ですか」

「…ナナちゃーん?」

「なんでもないですよー、ほらなんでもなーい…」

「あっ…ほ、ほら、もうすぐ楽屋戻っておかないといけない時間だよ!落ち込んでないで行こっ?」

「そうでした!いけませんね、楽屋代わりの教室にもどりましょう…!」

その声に変装して通りかかった某ウサミン星人が反応したが、幸いにもそれはあまり注目を集めなかったようだ。

446: 2014/03/21(金) 00:03:03.88 ID:i+XDo28B0
今日のハリケーンガールズは…というか、メンバーのケイがスタンプ集めを楽しんでいた。

高得点の番人は、大抵は勝てる気がしないと判断し、地味にポイントを集める方針だ。

「あと6ポイントー…長いのか短いのかわかんないね」

「ケイの動体視力なら、あのカミカゼのコイントスもクリアできないか?3ポイントだしやってもいいと思うけど」

「いやー…できるかもしれないけどさ、あの女の子とカミカゼの激闘をちらっと見ちゃったら自信なくて」

あの激闘は、ハリケーンガールズも目撃していたのだ。…通り過ぎただけなので、結果は知らない。

「…あれは多分例外だろ。いけるって」

「そ、そうだよね!イケるよね!じゃあカミカゼがいたところまでいってみよー!」

「ねぇ、あそこ…5ポイントらしいけど…興味ない?」

「5ポイント!?」

「ほら、あそこ…人がいっぱい集まってるでしょ」

マーサが指で示した場所には、多くの見物人がいた。

「ああ、あそこか。人がやけに集まってるなぁと思ったらスタンプの番人だったのかよ」

「…見るだけ見て見ない?あれ観客の方が多いみたいだし」

「そーだね、見るだけ見て見よっか!」

447: 2014/03/21(金) 00:03:58.21 ID:i+XDo28B0
人ごみに近づいていくと、それはどうやら早食い大会のようだ。

挑戦者はだんだんペースが落ちていくと言うのに、番人の山盛りのお菓子はヒョイヒョイ消えていく。

「なにあれ…あの女の子一人で早食い大会?」

「…まさか、さすがに数回ごとに交代してるだろ…?」

涼のその言葉に、ギャラリーの一人が話しかけてきた。

「…お嬢ちゃん達、俺はさっきからずっと見てるけどよ、この子…ずっーと交代せずに食いまくってるんだよ」

「え、えー…」

「…それで、勝った人はいるのか?」

「今の所いねえな。大食いに自信があった男たちが挑んでも、勝ったやつは一人も見ていない。とにかく、挑もうなんて思わない方がいいぞ」

「うん、言われなくても挑む気になれないから…」

「だよな~!」

そんなギャラリーの声を押しのけるように、一つの声が響いた。

「ふゥーハハハハハー!」

その声に、何故かギャラリーが道を開けるようにサーッと引いていく。

「アタシがこの5ポインんとに挑戦してやんよ!」

ドヤ顔で言い放ったのは黒髪に黒い肌、赤い瞳と太い眉。そして口元まで隠れる大きな黒いコート…怪しげな印象の少女だった。

448: 2014/03/21(金) 00:05:23.52 ID:i+XDo28B0
「ふふん。大食い、早食い…アタシも自信ある系女子なンだよね♪」

妙なイントネーションでそう言い放ったのは黒兎の人間体…外見年齢は奈緒に近い姿だ。

ふわふわとしたツインテールを兎の耳のように揺らしながら、コートを脱いで椅子に掛け、彼女は席に座った。

「あら~次の挑戦者さんですか~?女の子は珍しいですね~」

『ちょっと待ってくださいね~このソーセージを食べたらお相手しますので~』

そう言いながら、小悪魔な衣装の少女と本格的に全身真っ黒な衣装の少女が皿に和菓子が盛られていくのをジッと見ている。

それが暴食の悪魔と狂信の長だというのは、殆どの者が知ることも無いだろう。

―…おい、大丈夫なのかあの子

―いやいや、止める暇が無かったんだよ!

―…意外と門番の子並に食える子なのかもしれん

―いやいや、そんなまさかぁ…

「…ルールの確認だけど、この和菓子を先に食べつくした方の勝ち…で、いいンだな?」

「そうですよ~大食いじゃなくて早食いですから~」

「おっけおっけ!こレくらい余裕だ♪」

『結構な自信がおありのようですね~ワクワクします~』

絶妙なバランスで山のように積まれた和菓子にキラキラギラギラと目を光らせる。

449: 2014/03/21(金) 00:06:02.39 ID:i+XDo28B0
そして開始のコールが響いた。

「「いただきまーす!」」

目撃者は証言した。『始まった瞬間、そこに居たのは二人の少女ではなく悪魔と魔獣だった。…怖かった。自分まで食われると思った。』と。

450: 2014/03/21(金) 00:08:10.23 ID:i+XDo28B0


5ポイントのスタンプが押された紙をポシェットに入れ、右手には白兎、左手には黒兎を持ち、ナニカがとてとて歩いていた。

「黒ちゃん頑張ったね、勝ったの嬉しいよ!」

「…もう一回やってイイ?」

「止めろ、これ以上目立つな。それにギリギリの勝利だったし…」

「ヘッ、判定勝ちでも最終的に勝てばよかろうなのダ!」

ドヤァ…とポーズを決めるが、ぬいぐるみなのでよく分からない。

「アタシも食べたかったなぁ、おまんじゅうとか…あっ、シュークリームが一番たべたい!」

「お前くらい小さいのがアレに勝てたら不自然だろ…そもそも黒が出るのすら反対だったんだ」

「なんでー?」

「目立つと後々支障が出るし、そもそも顔がアイツと同じだし…それにお前は加蓮に見つかってもいいのか?」

「!」

「あっ、その質問卑怯だゾ」

「アタシにだってやりたいことはあるんだ、そこんとこはっきりしてくれないと困る」

(アタシ的には消えてくれれば楽なんだけど、まだアタシはきっとナニカより弱いから)

言葉を選び、なるべくナニカが白兎の行動や言葉を気にしないように意思を伝える。

451: 2014/03/21(金) 00:10:04.15 ID:i+XDo28B0
「お姉ちゃんは…見つけてくれるなら、アタシはそれでいいよ。見つけてくれなくても、アタシはそれでいいよ。それが、一番だと思うの」

ナニカはもう、会うか会わないか決断できない。会いたい思いと、会ったら起きるかもしれない悲劇への恐れが拮抗しているから。

「もうアイツはどうでもいいと?」

「違う!違うの…」

「ハいはイ、やメヤめ!人生に必要なのはC調と遊ビ心だって誰かが言ってたと思うぞ!」

「誰だよそれ言ったの。どう考えてもただの遊び人じゃないか」

「まぁまァ、白はやりたいことあるなラ単独行動してればいいじゃん。仁加はアタシにまかせて、好きにしてればいいだろ」

「…そうさせてもらおうかな」

「白ちゃんまた行っちゃうの?」

「アイツは一人が好きなの、ほっといていいヨ」

白兎は黒兎の発言を肯定したが、心の中では計画の崩壊を心配している。

黒兎もそれを察しつつ、自分は特に計画なんて立ててない、基本その場のノリなので自分が楽しければそれでいいかと思っている。

452: 2014/03/21(金) 00:12:12.43 ID:i+XDo28B0
一日目同様に、一人になった白兎は思考する。

(不確定要素は排除するか訂正しなくてはならない。なら、アタシはどう動くべきか。力もまだ未完成なのだから、考えなくてはならない)

ライトによる浸食が思ったよりも進んでいない光、ナニカに『悪影響』を与える可能性がある加蓮。

両方とも下手に扱えばさらに状況が悪化する可能性すらある。

(気に食わないなぁ。どうしてこうも上手く事が運ばないのか…)

襲撃したアイドルヒーロー同盟に、そのきっかけとなった聖來。それらもある意味不確定要素だ。

(…不安定な世界は、こうも我々を苦しめる。それも悲しみ。規律に守られていない世界だから)

どれを利用し、どれを排除するか。そして今日も大なり小なり何か起きるであろうこの学園祭という混沌。

(今はまだ、全てを理解し観察しないといけない。参考にできそうな情報が少なすぎる。まずは…そうだな、ライトもいる事だし光からにしようか)

まるで機械の様に、あくまで冷静なつもりで白兎は判断する。

(あの女の周囲には、嫌な奴がいる気がする)

求めるのは知識と情報。足りないものはそれだけだと思っているから。

453: 2014/03/21(金) 00:14:48.70 ID:i+XDo28B0
知識と情報で己が満たされた時、完成すると白兎は確信している。

だが、そうなっても彼女が永遠に理解できない事がある。

『誰かを好きになる必要があるのか?誰かと友情を育む必要があるのか?誰かを尊敬する必要があるのか?』

白兎は理解できない。ありとあらゆる人格を含めた『自ら』を唯一の頂点に立つ者として造られたと確信しているから。

生殖行為をする必要も、群れを作る必要も無い存在。だから理解できない。他の命が『アイ』という物を持っている事を。

『憎しみ』や『怒り』、『妬み』や『欲』は持っていても、『アイ』だけは理解できない。まるで最初から欠けて造られたように。

多くの色が混じりあった黒の中に生まれた唯一の白は他と混じりあう事を知らない。

混じりあう事を知らない白は、ただ他の色を塗りつぶす。白は白としか交わることが出来ないから。

それは誰かによって生命の頂点に立つ為に造られた人格であり、永久に『少女』として幸せになることの無い欠陥人格である。

454: 2014/03/21(金) 00:17:26.45 ID:i+XDo28B0
以上です
ちょっとしたカフェの宣伝と悪魔VS野獣を衝動的に書いていた
彼女が黒の中の唯一の白である理由の話も今のうちに

情報
・カフェ・マルメターノ前では通行人にチラシを配っています。サービス券の期限は無いのでご自由にどうぞ。
・ナニカはもう彼女から隠れないし、逃げる気は無いようです。
・白兎単独行動中。光の周囲を観察する模様。

455: 2014/03/21(金) 01:04:16.11 ID:IquySTB10
乙ー

ナナさん!?何反応しちゃってるん!?

悪魔対魔獣はクロちゃんに軍杯が上がったかー
次は誰が挑戦に来るかな?

ヤバイ…書きたいネタがまた増えた。加蓮を早くナニカの元へ行かせないと(使命感

そして、シロちゃん…果たしてどうなるやら



【次回に続く・・・】



引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」 part9