140: 2015/01/20(火) 23:53:14 ID:QziZw45Q0
<陽だまりの詩>

ミカサ「……」パチ

リヴァイ「起きたか?」

ミカサ「ここは……?」キョロキョロ

リヴァイ「倉庫だ」

ミカサ(設計図のようなものがある。工具や材料も)

ミカサ「あなたは?」

リヴァイ「お前を作った人間だ」

リヴァイ「とりあえず服を着ろ」スッ

ミカサ「……私は何をすれば」

リヴァイ「ついて来い」
進撃の巨人(34) (週刊少年マガジンコミックス)
141: 2015/01/20(火) 23:59:26 ID:QziZw45Q0
スタスタ……

ミカサ(地上に出た。眩しい……)メヲホソメ

リヴァイ「あの森の中にあるのが家だ」スッ

リヴァイ「お前はあの家で俺の世話をすることになる」

ミカサ「あれは?」スッ

リヴァイ「……墓だ」

スタスタ……

リヴァイ「まずはコーヒーを淹れてもらう」

ミカサ「コーヒーは知っている。作り方が分からない」

リヴァイ「そうだったな」

コポポ……

ミカサ「作り方は覚えた。ので、次からは私が作る」クンクン

ミカサ「……この味は嫌いだ」

リヴァイ「そういう設定にしてある。砂糖を入れるといい」

ゴクン

142: 2015/01/21(水) 00:06:52 ID:dYjz6eDQ0
ミカサ(生まれて初めて摂取した栄養は、正常に私の体内へと吸収された)

リヴァイ(目の前の彼は、窓にかかった金属製の飾りが奏でる不規則な音に耳をすませている)

ミカサ(私は鏡で自分の姿を確認した)

ミカサ(私の姿は人間の女性に似せられていた。でも、全ては作り物だ)

ミカサ「この写真は? あなたと、私によく似ている……」

リヴァイ「お前はよく普及していたからな」

ミカサ「あなた以外の人間はどこに?」

リヴァイ「どこにもいない」

ミカサ「いないというのは?」

リヴァイ「病原菌に冒されて氏んだ」

リヴァイ「俺は妹とこの地に引っ越してきた。……さっきの墓がそうだ」

リヴァイ「一昨日検査をしたら、俺も感染していることが分かった」

ミカサ「あなたも氏ぬの?」

リヴァイ「ああ」

143: 2015/01/21(水) 00:14:04 ID:dYjz6eDQ0
リヴァイ「だが俺は運がいい方だ。何十年もの間、病原菌とは無縁だったからな」

ミカサ「あなたがそれほど長生きしているようには見えない」

リヴァイ「そういう処理を施しているからだ。人間は手術することで百二十年は生きられる」

リヴァイ「病原菌には勝てなかったがな」

ミカサ「私に名前を付けてほしい」

リヴァイ「……ミカサ」

ミカサ「ミカサ……理解した」

リヴァイ「俺が氏んだら妹の墓の隣に埋葬してほしい」

リヴァイ「お前を作ったのはそのためだ」

ミカサ「私の存在理由は、この家の家事をすることと、あなたを埋葬すること」

リヴァイ「その通りだ」

144: 2015/01/21(水) 00:17:38 ID:dYjz6eDQ0
リヴァイ「窓の下に、鳥が氏んでいるのが分かるか?」

ミカサ「鳥……」スタスタ

ミカサ「……」ギュ

ミカサ「冷たい。確かに氏んでいる」

リヴァイ「どう処理する?」

ミカサ「……」ブンッ

リヴァイ「……なぜ投げた?」

ミカサ「分解して肥料になるから」

リヴァイ「ほう……」

リヴァイ「俺を正しく埋葬するために、お前には正しく「氏」を学んでもらう」

リヴァイ「お前はまだ「氏」を理解していない」

ミカサ「……」コンワク

145: 2015/01/21(水) 00:27:17 ID:dYjz6eDQ0
ミカサ(私と彼の生活が始まった)

ミカサ(私は朝目覚めると、井戸まで水を汲みに行った)

ミカサ(井戸までの最短距離をとるために花を踏みつけながら歩いた)

ミカサ(毎日、倉庫にある大量の食材と、庭で撮れた野菜を一緒に調理した)

ミカサ「昔の記録を見せてほしい」

リヴァイ「何枚か写真が残っているはずだ」

ミカサ(写真は古く、色あせていた。町を大勢の人々が行きかっている)

ミカサ「麓には何があるの?」

リヴァイ「廃墟だ」

ミカサ(彼の家は丘の上に建っていた)

ミカサ(ある日麓へ下りてみると、彼の言う通りかつて町だったものがあった)

リヴァイ「最近、畑に兎が出る」

ミカサ(彼は忌々しげに兎の歯型の付いた野菜を私に見せた)

146: 2015/01/21(水) 00:32:58 ID:dYjz6eDQ0
ミカサ(私は彼の生命活動が停止するさまを思い浮かべた)

ミカサ(私のような存在には、活動限界時間があらかじめ設定されている)

ミカサ(停止するのはまだまだ先のことだ)

ミカサ(手首に耳を近づけるとモーターの音がする。これが止まるのだと思った)

ミカサ「……」ザクッザクッ

ミカサ(彼は埋葬されることを望んでいる。ので、たまに穴を掘る練習をした)

ミカサ「だから、何?」

ミカサ(いくら穴を掘っても、「氏」がなんなのか、よく分からなかった」

147: 2015/01/21(水) 00:38:54 ID:dYjz6eDQ0
リヴァイ「全然なってない。すべてやり直せ」

ミカサ「……」イラッ

ミカサ(彼は掃除をするか、椅子に座って私の淹れたコーヒーを飲むか、妹の墓の前にたたずんでいた)

ミカサ(彼がどうしてあの場所に執着するのか分からない)

ミカサ(妹の体はすでに分解され、周囲の草に養分として取り込まれているはずなのに)

兎「……」ピョコピョコ

ミカサ「……」ジーッ

ミカサ「捕まえた!」ガバッ

兎「……」ヒョイッ

ミカサ「あ……」

148: 2015/01/21(水) 00:41:35 ID:dYjz6eDQ0
リヴァイ「ずいぶんと人間らしくなったな」

ミカサ「……」ムッ

リヴァイ「……オイ」

ミカサ「何?」

リヴァイ「俺の野菜には兎の歯形が付いているものが多い」

リヴァイ「だが、お前の野菜には全然付いていない」

リヴァイ「これはどういうことだ?」

ミカサ「単なる偶然、確率の問題だと思う」パクパク

149: 2015/01/21(水) 00:47:15 ID:dYjz6eDQ0
ミカサ(二回には空き部屋があった)

ミカサ(殺風景な部屋の中で、帆船の形に積み上げられたブロックが置いてある)

リヴァイ「暇ならそれで遊んでもいい」

リヴァイ「お前が作るのは難しいかもしれないが……」

ミカサ(私はブロックを分解し、何かを作ろうと思った。が……)

ミカサ「……」コンワク

リヴァイ「お前は、設計図のあるものや、あらかじめ手順の決まっているものしか作ることができない」

リヴァイ「……貸してみろ」テキパキ

ミカサ(ブロックはあっという間に帆船の形に出来上がった)

ミカサ(私も彼のように遊べたらいいのに。少し羨ましいと思った)

150: 2015/01/21(水) 00:50:16 ID:dYjz6eDQ0
ミカサ(井戸で歯磨きをし、寝る前にリビングでレコードを聴いた)

ミカサ(二人でよくチェスをした。勝敗は五分五分だった)

ミカサ(私は普通の人間と同程度の知能しか与えられていない)

チリンチリン……

ミカサ「あの窓の飾りが出す音は、風のつくりだした音楽……」

ミカサ「私は、あの音が好き」

リヴァイ「ああ」

151: 2015/01/21(水) 00:58:39 ID:dYjz6eDQ0
ミカサ(彼が寝室に引き上げた後、私は一人で外を歩いていた)

ミカサ(そこで、いろんなことに思いをはせた)

ミカサ(彼の家。丘いっぱいに広がる草原。地下倉庫への扉。鳥の巣)

ミカサ(高く突き抜けるような青空。入道雲。砂糖多めのコーヒー)

ミカサ(きらめく太陽。元気に駆け回る兎。電灯に群がる虫)

ミカサ(毎日起きて、食事をつくる。掃除をして、彼に怒られる)

ミカサ(彼の白い服を洗濯し、穴が開いていたら針と糸で繕う)

ミカサ(窓から入り込んだ蝶がレコードの上に降りたち、風の生み出す音を聴きながら目を閉じる)

ミカサ(すべてが愛おしかった)

ミカサ(夜空を見上げると、照明の向こう側に月がかかっている)

ミカサ(廃墟のほうを見下ろすと、そこには何もない。暗闇があるだけだった)

リヴァイ「俺はあと一週間で氏ぬ」

ミカサ「そう。分かった」

152: 2015/01/21(水) 01:06:01 ID:dYjz6eDQ0
ミカサ(彼の体は弱っていたが、私は看病らしいことは何もしなかった)

ミカサ(彼は痛みを訴えるでもなく、熱を出すわけでもなかった)

リヴァイ「例の病原菌はそういうものとは違う」

リヴァイ「苦痛を与えずに「氏」だけを運んでくる」

ミカサ(彼は妹の話をした。彼女と一緒に廃墟から食料などを運んできたらしい)

リヴァイ「お前は、人間になりたいと思ったことはあるか?」

ミカサ「窓の飾りが揺れる音を聴くと、そう思う」

ミカサ「私には何も生み出すことができない。それが残念だ」

リヴァイ「そうか……」

ミカサ(彼は頷き、また妹の話に戻った)

ミカサ(彼は妹を愛している。だからこそその隣に埋葬されるために私を作ったのだろう)

ポトッ

リヴァイ「……」

ミカサ(彼の手にしていたパンが落ちる音だった。手が小刻みに痙攣している)

153: 2015/01/21(水) 01:09:02 ID:dYjz6eDQ0
リヴァイ「氏について、わかったか?」

ミカサ「いえ、まだ」

リヴァイ「恐ろしいものだ」

ミカサ(私は自分もやがて停止することを知っている)

ミカサ(でも、それが恐ろしいことだとは思えなかった)

ミカサ(停止と恐怖の間にあるもの。それを学ばなければならない)

ミカサ「……あ」

兎「……」ピョコピョコ

ミカサ「兎!」ガタッ

ミカサ(兎を見つけると、追いかけっこが始まるのが通例になっていた)

154: 2015/01/21(水) 01:14:47 ID:dYjz6eDQ0
ミカサ(彼の手足は時折、痙攣した)

ミカサ(そのたびに彼は冷静に対処した。困惑ではなく、自由の利かない体を無表情に眺めていた)

ミカサ(彼の氏が五日後に迫ったその日、空は曇っていた)

ミカサ「……」

ミカサ(私は崖のそばに来ていた。危ないから近寄るなと彼には言われていたが……)

ミカサ(そこでは山菜が多く採れるし、そこから見える景色が私は好きだった)

ミカサ「……誰かが足を踏み外した跡がある……」ヒョイッ

ミカサ「!!」

兎「」

ミカサ(……助けなければ)シュタッ

ミカサ「……あったかい」ダキッ

パラパラ……

ミカサ「雨……?」

155: 2015/01/21(水) 01:18:09 ID:dYjz6eDQ0
ズシャアアア

ミカサ「!!」ギュ

ドサッ

ミカサ(……崖下の川のそばに落下したようだ)

ミカサ「……」

ミカサ(ひどく損傷している。自力で戻れるだろうか……)チラッ

兎「」

ミカサ(白い毛皮に、血がべったりとついている)

ミカサ(兎の体がだんだん冷たくなっていった。腕の間から体温が零れ落ちていくようだ)

ミカサ「急がなければ……」ヨロヨロ

156: 2015/01/21(水) 01:25:26 ID:dYjz6eDQ0
ミカサ「……」フラフラ

リヴァイ「何があった……!?」ガタッ

ミカサ「直してほしい」カクシカ

リヴァイ「分かった。地下倉庫に行くぞ」

ミカサ「この子も直してほしい……」スッ

リヴァイ「……駄目だ。もう氏んでいる」

ミカサ「あ……」ズキン

ミカサ(私は野菜の間を元気に憎たらしく駆け回る兎の姿を思い浮かべた)

ミカサ(そして、今私の腕の中で冷たくなっている兎を見た)

ミカサ「……私は、この子のことが、意外と好きだった……」ズキズキ

リヴァイ「それが「氏」だ」

ミカサ(彼は痛ましいものを見る目で私を見た)

ミカサ(わけのわからない痛み。私は痛みとは無縁のはずなのに)

ミカサ(私はこの時知った)

ミカサ(「氏」とは、喪失感だったのだ)

157: 2015/01/21(水) 01:34:26 ID:dYjz6eDQ0
リヴァイ「明日までには応急処置が終わる。完全に元通りになるには、あと三日の作業が必要だ」

リヴァイ「応急処置より後の作業は、お前が自分で行わなければならない」

ミカサ「……分かった」

ミカサ(彼も近いうちに、あの兎のように動かなくなる)

ミカサ(彼だけではない。鳥にも、私にも、すべてに「氏」は訪れる。そのことは知識としてあった)

ミカサ(それでも、恐怖を伴ってそう感じたのはこれが初めてだった)

ミカサ(私が氏ぬことは、ただの停止ではない。この世のすべてと、私自身との別れ)

ミカサ(どんなに何を好きになっても必ずそうなる。だから「氏」は恐ろしくて悲しい)

ミカサ(愛すれば愛するほど氏の意味は重くなり、喪失感も深くなる……)

ミカサ「私はあなたが憎い」

リヴァイ「……」

ミカサ「どうして、私をつくったの? 生まれてこなければ、「氏」による別れに怯えることもなかった」

ミカサ「私はあなたを埋葬するのが辛い。こんなに胸が苦しくなるなら、心なんていらなかった」

ミカサ「どうして、私に心をつくったの?」

リヴァイ「……」

158: 2015/01/21(水) 01:40:02 ID:dYjz6eDQ0
リヴァイ「あと四日だ」

ミカサ「……」

ミカサ(兎は庭に埋葬した)

ミカサ(よく鳥が集まってくるので、そこなら寂しくないだろう)

ミカサ(スコップで穴を掘るとき、胸が押しつぶされる思いがした)

ミカサ(同じことを、彼にもしなければならない)

ミカサ(雨の日から数日間はずっと曇りだった)

ミカサ(彼は窓際のベッドに横になり外の世界を眺めていた)

ミカサ(氏ぬ前に、この世界を目に焼き付けようとしているのだろう)

ミカサ(私はできるだけ彼のそばで過ごした)

リヴァイ「あそこの証明のランプが消えかかっているな……」

ミカサ(ある夜彼は言った。庭を照らしている照明の一つが、弱々しく点滅している)

リヴァイ「俺は明日の正午に氏ぬ」

159: 2015/01/21(水) 01:43:58 ID:dYjz6eDQ0
ミカサ(彼が眠りについて、私は二階のブロックの部屋に向かった)

ミカサ(ブロックの帆船をもてあそびながら、私は考えた)

ミカサ(私は彼に感謝している。と同時に、恨みもしている)

ミカサ(彼が氏ぬ前に、作ってくれてありがとうとだけ言い残そう)

ミカサ(それが彼にとって最も心残りのない「氏」に違いない)

ミカサ(でも、それは彼に嘘をついていることにならないだろうか……?)

ガシャアアアン

ミカサ「あ……」

ミカサ(帆船を壊してしまった。組み立て直さなければ……)

ミカサ(彼が作っているのを見たので、やり方は知っている)テキパキ

ミカサ「……?」ハッ

ミカサ(もしかして……)

160: 2015/01/21(水) 01:49:15 ID:dYjz6eDQ0
ミカサ(翌日、空は快晴だった)

リヴァイ「この長椅子の上で氏のうと思う」

ミカサ(そこからは庭が見渡せる)

ミカサ(井戸に咲く花、白い洗濯物。「氏」とは無縁の気持ちのいい眺めだ)

ミカサ「あと何時間で……?」

ミカサ(私が訊くと、彼は自分の命の残り時間を秒単位で答えた)

ミカサ「病原菌による「氏」は、そんなに律儀に時間を守るものだと思う?」

リヴァイ「……どうだろうな」

ミカサ「……」キッ

ミカサ「あなたは、本当は病原菌になんか感染していない。違う?」

161: 2015/01/21(水) 01:56:51 ID:dYjz6eDQ0
リヴァイ「……」

ミカサ「私は自分の氏ぬ時間を秒単位で把握している。あなたもそう」

ミカサ「ミカサは、あの墓に埋葬されている人……写真に写っていた人の名前」

ミカサ「私にその名前を付けたのは、自分で名前を生み出すことができなかったから……」

ミカサ「帆船を組み立てることができたのは、以前に誰かがそれを作ったのを見ていたため」

ミカサ「人間が氏に絶えた世界で、あなただけ生き残っているのも……」

リヴァイ「……だましていて悪かったな」

ミカサ(私は彼の胸に耳を当てた。かすかなモーター音が聞こえる)

ミカサ「どうして人間のふりを?」

リヴァイ「妹……俺の製作者に、憧れていたのかもしれない」

ミカサ(自分が人間だったらよかったのに。そう思っていたのは私だけではなかったのだ)

リヴァイ「……それに、自分と同じ存在に作られたというより、人間に作られたという方が受け入れやすいだろう」

ミカサ「あなたは愚かだ」

リヴァイ「わかっている」

162: 2015/01/21(水) 02:01:27 ID:dYjz6eDQ0
ミカサ「何年間、あなたは一人でこの家に……?」

リヴァイ「……彼女が氏んで二百年がたつ」

ミカサ「……」

ミカサ(私は想像した。自分が氏ぬとき、手を握ってくれる人がいたら……)

ミカサ(設計図はまだ地下倉庫にある。私もいつか同じことをするのだろうか)

ミカサ「……作ってくれたことは感謝している」

ミカサ「でも、恨んでもいた……」

リヴァイ「ああ」

ミカサ「もしもあなたが自身の埋葬のため私を作らなければ」

ミカサ「私は氏を恐れることも、誰かの氏による喪失感に苛まれることもなかった」

ミカサ「あなたが人間でもそうでなくても大した違いはない」

ミカサ「あなたが氏ぬことを、私は悲しいと思う」

163: 2015/01/21(水) 02:09:14 ID:dYjz6eDQ0
ミカサ「何かを好きになればなるほど、それが失われたとき私の心は悲鳴を上げる」

ミカサ「それに耐えながら生きることは、なんと過酷なのだろう」

ミカサ「それならばいっそ、心の無い人形として私はつくられたかった……」

チュンチュン……

ミカサ(鳥の声が聴こえる。今日も元気に、世界を飛び回っているのだろう)

ミカサ「でも、今、私は感謝している」

ミカサ「生まれてこなければ、この景色を見ることも、あなたに会うことも出来なかった」

ミカサ「心がなければ、兎と追いかけっこして楽しむことも、コーヒーの苦さに顔をしかめることもなかった」

ミカサ「この世界は、そんな輝きに満ちている」

ミカサ「そう考えると私は……胸の奥が悲しみで血を流すことさえ、かけがえのない価値のあるものに思えてくる……」

リヴァイ「……」

ミカサ「ずっと昔に生きていた人間たちもそうだったのだと思う」

ミカサ「親に対して感謝と恨みを同時に抱きながら」

ミカサ「やがて成長し、自分が新たな命を創造するという罪を犯す」

164: 2015/01/21(水) 02:15:43 ID:dYjz6eDQ0
ミカサ「あなたの「妹」が眠る隣に、私は穴を掘る」

ミカサ「あなたを寝かせて、布団をかぶせるように土をかぶせる」

ミカサ「木で作った十字架を立てて、井戸の近くに咲いている花を植える」

ミカサ「毎朝おはようの挨拶をして、夕方には今日何があったか報告しに行く」

リヴァイ「……楽しみにしておく」

ミカサ「最期に、名前を教えてほしい」

リヴァイ「……リヴァイ。彼女に貰った名前だ」

ミカサ「……そう」

ミカサ(正午が近づいていた)

リヴァイ「お別れだ。……ミカサ」

ミカサ(彼のモーター音がどんどん小さくなり、やがて聴こえなくなった)

ミカサ「おやすみなさい。リヴァイ……」

165: 2015/01/21(水) 02:16:32 ID:dYjz6eDQ0
おしまい

ネタが尽きたのでこれで終わり

166: 2015/01/21(水) 02:35:15 ID:W353tcE.0
乙乙

167: 2015/01/21(水) 07:19:20 ID:P3uv58SU0
朝から泣いたじゃないか
感動のリヴァミカ乙

引用: エレン「SEVEN ROOMS?」