146: ◆zvY2y1UzWw 2014/05/25(日) 22:25:11.23 ID:qLytG6T/0


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ


 テロ時系列で投下します

147: 2014/05/25(日) 22:26:21.17 ID:qLytG6T/0
サクライとエージェントが眼下のテロを見下ろすビルの屋上。

大蜥蜴を消滅させた後は同じような脅威に襲われることも無く、何事も無いのではないかと思われていた。

…そう、思われていたのだ。それは油断ではない。本当にカースも殆ど襲ってこない状況だったのだ。

だか確かに異変は起こっていた。

『もし私から♪』『動くのならば♪』『すべて変えるのなら♪』『黒にする!』

黒い人の様なモノが蜥蜴型カースを捕え、嫉妬のエネルギーを暴走させることなく飲み込み、生まれ変わらせる。

自爆能力を持つ狂信のカースが同じく自爆能力を持つ嫉妬のカースの核を黒く染め上げ、変形させる。

『メガネ、メガネハアカン…』『メガネナンテキエチャエ!』

燃え上がるのは狂信の炎。AMCの体内で命を落とし、生まれ変わった蜥蜴型カースが口々にメガネへの嫌悪の言葉を吐いていた。

紗南「…あれ、嫉妬じゃない属性のカースが湧いてきてる?」

ふと調べた個体の属性の表記が『狂信・AM(アンチメガネ)』となっているカースがいるのを紗南は見つけてしまった。

紗南(狂信…どうしてここに?)

サクライ達にこの事を報告しようとした矢先に、周囲の状況を知らせる画面に異変が起きた。
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それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。



148: 2014/05/25(日) 22:27:21.48 ID:qLytG6T/0
紗南「…!サクライさん、何か来てる!」

画面に表示されたアイコンは、高速でこちらへ向かってきていた。

サクライP「情報は?」

紗南「ちょっと待って、今調べ…」

コマンドを入力しようとして悪寒が走った。調べてはいけない…きっとこの感覚は…

紗南「っ…!!」

ブツリと、思い切りゲームの電源を落とした。

サクライP「ん?」

さくら「あれ、電源を切ったら調べられないんじゃ…」

さくらの言葉が終わるよりも早く、紗南のポケットの通信機から白い泥が溢れ出す。その通信機を投げ捨て、全力で距離を取った。

紗南「やっぱり…!」

屋上の端まで投げ捨てられた通信機から溢れる白い泥は、球体の形をとりながらどんどん溢れてくる。

さくら「えっ?えっ?な、なんですかぁ!?」

紗南の悪寒は、あの秋に出会ったあの白い怪物とのファーストコンタクトの時のデジャヴのような物だった。

情報を調べようとすれば、また暫く使用不能になっていただろう。通信機から出て来る可能性も考えていたので対処も早めにできた。

竜面「『愚かなる汝の影は、大いなる我が力に従い暗黒の呪縛へと縛られん…シャドウバインド!』」

白い泥を見てすぐに異常事態と判断した竜面の男が束縛式を放つ。

ドロドロと溢れ続ける白い泥の足元から黒い腕が溢れ、溢れないように、動かないように…その白い泥を拘束した。

149: 2014/05/25(日) 22:27:59.59 ID:qLytG6T/0
竜面「…これは、カース…なのか?」

紗南「わかんない、前に調べようとしたら能力が使えなくなっちゃったから…」

さくら「つ、通信機からお出ましなんて…まるで貞子ですねぇ!」

サクライ(…情報獲得能力が使えなくなるほどの力を…?それにしてはやけに容易に拘束された…)

その白い泥を見つめる4人の後ろで、声が響く。

『メガネナシ!問題無シ!』『メガネ進化ハ許センゾキサマ!』

『メガネは居ないけどメガネを売ってる人はいるよね』『ジャアおしおきしなきゃねー』『メガネ無き世界のためー!』

竜面「…なるほど、囮か」

AMC…アンチメガネカース人間模倣体。嫉妬の蜥蜴が変化したメガネ嫌いの蜥蜴を引きつれて、音も無く屋上に現れていた。

『メガネぶっコロなんだ!』『メガネある世界に幸福ない!』

しかもAMCは全員どこか不気味な白い剣を装備し、赤い目をしていた。今までの目撃情報にこの状態になった個体は居ない。

それは狂信が正義の呪いによってより過激な思想を持つように進化したAMCだった。

150: 2014/05/25(日) 22:29:31.87 ID:qLytG6T/0
『さっくらい!』『パッってはじけて!』『裸眼世界にこーせー!』『こーせー☆』

赤い目をぎらぎらさせながら、剣を持ったAMCとメガネ嫌いの蜥蜴がじりじりと近づいてくる。

竜面「…今、自分は拘束しいている。攻撃はさくらがやるんだ。良いな」

さくら「ええっ!?はい…」

サクライP「そうだな、そうするしかない」

少なくとも現在の数では先程の大蜥蜴程の脅威にはならないだろう。さくらが詠唱を始めようとしたまさにその瞬間、声が響いた。

「止まれ」

ピタリと、その声の通りにAMCは動きを止める。

「久しぶりが1人、初めましてが3人か。まったく…面倒だな」

その声の持ち主は、黒い腕に拘束された白い泥。

「これが魔術による拘束か、拘束は結構慣れたつもりだったけどこういうのは初めてだな…結構ヘンな感じ。これが魔術なのか?」

そう言い終わるや否や泥が急激に膨張し、拘束の腕が千切れて消滅した。

飛び散った白い泥が紗南の足元に渦巻き巨大な触手となって足を捕まえ、宙吊りにする。

紗南「!?」

サクライP「この触手は…」

竜面「間違いなくイカだろう」

さくら「イカでもタコでもどっちでもいいですよぉ!!」

そして本体と思わしき白い泥が渦巻き、やがて首の無い白い男の姿になった。

その顔の部分に一匹の黒い蜥蜴がサクライ達の足元を潜り抜けて乗り、黒いミミズクの姿になる。その姿はまるでミミズク頭の男のようだった。

151: 2014/05/25(日) 22:31:11.00 ID:qLytG6T/0
その男…白兎が宙吊りになった紗南を真横に持ってくると、頬を思い切り抓った。

白兎「キシャシャ、紗南…また会う事になるなんてな。しかも学習していて驚いたよ。ちょっとだけ感心してやってもいいかな」

紗南「お前なんかに感心されても嬉しくないし!」

正直震えが止まらない。紗南は目の前の存在が聖來を追い詰めた事を知っている。そして奴が少しずつ近づいて来た時の恐怖も覚えている。

だが、だからこそ自分が奴に屈することを許せなかった。

白兎「無駄な強がりを言って…。はぁ、聖來は居ないのか。…どこにいるか知ってるよなぁ?」

複数の触手がヌチャヌチャと音を立てて絡みつき、紗南に恐怖を与える。さらに鋭い爪が紗南の首筋に傷をつけ、指に付いたはずの血は飲み込まれるように消えた。

痛みと濡れた服が不快になるが、それを表情に出さないように紗南は必氏になる。

紗南「い…言う訳ないじゃん!」

白兎「チッ…まぁ今回の目的は別だし、無理には聞かないでおいてやるよ。エージェントで最初に頃すか服従させるのはなるべく聖來が良いし」

紗南の頬から手を離し、サクライに向き合う。首の上の真っ赤なミミズクの瞳が見つめていた。

152: 2014/05/25(日) 22:33:26.16 ID:qLytG6T/0
白兎「やぁやぁ、櫻井財閥のお偉いさんがこんなところで何しているのかなぁ?物騒な現場にわざわざ来るとは御苦労な事で。理由があるんだろ?」

サクライP「話す必要は無い…君の事を話せば考えてもいいけれどね」

白兎「お生憎様、その『おう、考えておいてやるよ』っていうのは信じない主義なんで。…何が知りたいか程度なら聞いてやってもいいが」

サクライP「…その姿、見覚えがあってね」

白兎「そうそう、アンタの部下だった奴らしいな?不用心な事に首なしで放置されてたから貰っちゃったんだけどさ!」

腹の探り合いだ。だが、そういうのはきっとサクライの方が上手だと悟った白兎は中断した。

白兎「まあ、来た目的ぐらい言わなきゃ意味ないな。…えーっとなんだっけ。あ、そうそう『イロカニ』の命令でここまで来たんだけどさ…」

命令で動くのが相当不本意なのか、不機嫌そうに白兎は地面を蹴った。ぴちゃぴちゃと水が跳ねる。

『イロカニ』は単純に仁加という漢字を分解し並び替えた言葉だ。仁加という名前も珍しいと言う訳ではないし、ただ単に錯乱目的でこの名前を言った。

…その言葉から適当な組織の一員だとでも思ってくれれば万々歳と言う訳である。もちろんそんな事期待していないが。

実の所は加蓮の友人宅にいる仁加に、買い出し組の加蓮を見守っておいてと指示され、不満はあったが仕方なく追跡してこのテロに遭遇したのだ。

白兎はそのこと自体はどうでもよかったが、加蓮が戦っている近くにサクライ達が居る事が動く原因だった。

湧き上がったのは紗南に久々に顔を見せておこうという好奇心と、サクライや他のエージェントの実力を見ておこうという余裕。

まだ、白兎は弱い。だからこそ様々な人間の戦闘技術をラーニングしようとしている。

サクライのエージェントに売られたケンカだ、またいつ何度でも買ってもいいだろう。身勝手にそう思っている。

ついでに加蓮の泥の蛇での捕食行為が目立つ事が、自分たちといつか繋がり不都合になる可能性も考えてはいるが…基本的に自分の為だ。

153: 2014/05/25(日) 22:35:40.86 ID:qLytG6T/0
竜面(イロカニ…何者なんだ…)

白兎「まぁ、ちょっとした監視命令って奴?つまりさぁ…ちょっとここから消えてくれない?ここが結構見晴らしが良い場所だしさ」

ここからサクライ達を追い払えば加蓮を見守ることも楽になるし、戦う理由になる。白兎は存在しない顔で笑っていた。

サクライP「…後から来ておいてその言いぐさは無礼にも程があるんじゃないかな?」

さくら「そうですよぉ!私達が頑張って守った場所でもあるんですよぉ!!」

白兎「ふーん…身の程知らずの人間共はそうするよなぁ。じゃあ当初の予定通り、無理やりにでもここから退いてもらおう」

『ヒャアッッハアアアアアア!』

腕を高く掲げれば、動きを止めていたAMCはその剣で、蜥蜴はその狂信の炎で…4人を追い詰めようと動き出した。

白兎は背中に白い翼を生み出し、空から適当に観戦しようという態度だ。

サクライP「…なら、こちらも武力交渉となるのかな」

そう言って彼は剣を取り出す。

サクライP「水よ、僕に従え」

足元で輝く鎮火の祝福を受けた水が剣に纏われ、輝く。

白兎「ふぅん、そういうことが出来るんだ」

水を纏った神秘の剣が、紗南を宙吊りにしていた巨大なイカの触手を破壊した。

154: 2014/05/25(日) 22:36:46.30 ID:qLytG6T/0
そこまで高く吊られていなかった事も幸いし、紗南は何とか無傷で着地する。

紗南「と、とりあえず助かったぁ…」

サクライP「紗南君、君は先に逃げておいた方がいい」

紗南「うん…でもサクライさん達を置いてなんて…」

サクライP「ふっ、僕を誰だと思ってる。簡単に負けたりはしないさ。それにその靴なら大体の相手には逃げ切れるだろう」

紗南「あっ、そういえばそうだった」

紗南は自分の装備しているエアロシューズの存在を思いだした。

憤怒の街でもカースから逃げる時に使った靴だ、その速度は身をもって知っている。地上に降りて一般人のフリをして保護してもらうのもありだろう。

サクライP「なあに、無理をするつもりはないよ。だから安心してくれ、君の元へカースは行かせないつもりだ」

紗南「わ、わかった!」

情報獲得は使えない。使った瞬間に画面から白兎が出てくるのは間違いない事だからだ。

ただでさえ非戦闘要員であるのに、唯一の能力も封じられてはただの一般人に過ぎない。だから紗南は…逃げ出した。

白兎「生意気な、アタシから逃げる気か…」

竜面「…さくら!」

さくら「はぁい!」

紗南「ごめんなさいっ!あとはお願い!」

足元の水がカッターのようになってカースを切り裂いたのを確認するが、散っても散っても次の援軍が湧いてくる。

なるべく邪魔にならないように、紗南は屋上の階段を駆け下りて逃げ出した。

155: 2014/05/25(日) 22:38:37.56 ID:qLytG6T/0
白兎「…追え」

『天元突破ラガンラガン!!』『マジラガン1000パーセント!!』

『まってまって!』『ゲームのアバターにサングラスつかってそうだなぁ!!』『きゃはー!』

階段へ向かって黒いカース達が殺到する。

サクライP「行かせないと言ったはずだ」

『『あ…?』』

追いかけようと動いた蜥蜴やAMCを、サクライは再び剣に鎮火の水を纏わせ、容易に切り裂いた。

『レェェェェザァァァァァッ!』『ビビビビィムッ!』

サクライP「隙だらけだ」

『ウォ…』『ヅギィ…』

他の個体が放ったレーザーも軽く躱し、逆にその個体に接近して瞳を真っ二つにした。

156: 2014/05/25(日) 22:40:56.83 ID:qLytG6T/0
サクライP「幼い子供の姿をしたカース…趣味が悪いと思うよ?」

白兎「そんなに躊躇なく斬っておいてよく言うよ。…それにしても面白い剣だな」

サクライP「欲しくなってもどうせ手に入らないさ」

白兎「奪ってしまえばいい。お前の腕を切り裂いて、お前の腕ごとな。まぁそこまでアタシもオッサンのお古なんて欲しいわけじゃないけど」

サクライP「オッサン…」

「ホー!」

バカにするように首の上のミミズクが大きく翼を広げた。

白兎「…とりあえず、そろそろ自分も戦おうかな?やっぱり見てるだけってのはどうも性に合わない。オッサン、相手してよ」

そう言って着地すると同時に白兎は自身の右手を切り落とした。呪いと生命の生への執着の象徴である血液が、屋上を流れる水を汚してしまう。

切り落とした右手を右腕の切断面から伸びた触手が回収するが、何故かその手をくっつけようとしなかった。

白兎「これでいいか…さてさて、遊ぼうか」

157: 2014/05/25(日) 22:42:28.64 ID:qLytG6T/0
左腕が白い剣…正義の剣に変化し、サクライの剣と正義の剣がぶつかり合う。

サクライP「剣の技術は無いようだね…!」

白兎「ああ、無いさ!でもお前もさっきより攻撃力大幅にダウンしてるなぁ…?大蜥蜴の時よりも!」

サクライP「…見ていたのか」

白兎「見ていたよ、だからお前たちは面白いと確信したね!あの女が所属してるだけの事はある…!」

彼の剣『セイヴザプリンセス』は、英雄的行為によって力を発揮する。

誰か…女の子を守る時、相手が己より強い時、相手が人類の敵の時…

だが大蜥蜴の時よりも、今の状況は英雄的とは言えない。

確かに強いが、今の白兎はサクライだけを狙っているのだから。今の彼は誰も守っていないのだ。

そして鎮火の水も汚されて使えなくなり、白兎の正体は知らずとも、確かに先程よりも苦戦する状況なのはサクライもよく知っていた。

バチバチと正義の剣が電気を纏う。そんな状況にあるにも関わらず、サクライはにやりと笑っていた。

158: 2014/05/25(日) 22:44:26.61 ID:qLytG6T/0
白兎の振り下ろした剣を躱し、電流が流れバチバチと音を出す水たまりから飛び上がる。

技術の差は覆せない。あまりにも適当な攻撃なのだ、容易く避けることが出来る。そして彼は迷いなくその肉体に剣を突き刺そうと構えた。

だが白兎の足元から泥が溢れ…地面を這う泥から大量の正義の剣が生まれ、それが柵のようになって彼を妨害してしまう。

白兎「危ない危ない、やっぱりオッサンは剣の扱いの技術あるんだな。これが慣れって奴か」

サクライP「オッサンと言っている君も首から下は成人男性じゃないか」

白兎「これは仕方なくだからな。心は乙女だったりするのよぉ❤…なんてな。あー気持ち悪い」

サクライP「確かに…とても気色悪い」

白兎から放たれた電撃を神秘の剣が受け流し、サクライの剣を白兎がステップのように躱す。

そして回避した白兎の足を、サクライは着地と同時に足払いした。

白兎「……!」

サクライP「消えてしまえ」

頭部のミミズクが飛び上がるが…転んでバランスを崩した白兎を、神秘の剣が真っ二つにしてしまった。

159: 2014/05/25(日) 22:46:49.65 ID:qLytG6T/0
神秘の剣がその体を崩壊させ…いや、崩壊と同時に泥のようなその肉体が動き出した。

どんな神秘でも、どんな法則でも、どんな力でも、それを頃すことはできない。

サクライP「…神秘の剣でも氏なない…不氏の怪物か」

ぐちゃぐちゃと足元に滴る血を白い泥が回収しながらその怪物は復活する。

白兎「痛ぇな畜生…はぁ、やっぱり技術の差があるとこうなっちゃうか。あとで真似するか…あ、そっちも構ってやるよ」

そして思いだしたように切り落とした右手を思い切りさくらと竜面の男へと投げつけた。

さくら「ひぇぇ!?」

竜面「さくら!前を見ろ!」

さくら「えっ?」

しゃがんで腕を回避した次の瞬間、目の前にさっきまで首の上に居たミミズクが目の前まで迫っていた。

ミミズクは泥のように溶けて黒い人型に変形し、さくらを押し倒すとその首筋に吸血鬼の牙が傷をつけた。

その傷を舌で舐め、味わう様にその血を吸う。頭の中に訳の分からない感覚が叩き付けられさくらは混乱した。

サクライP「さくら君!」

竜面「さくらぁ!!」

さくら「あっ…血…血が…!やだっ…!」

白兎「キシシシシシシ!今のうちに追え、狂信兵!」

『ラガン!』『ラガン!』『ゲーム娘は将来的にメガネ娘になる可能性が高い!』

その隙に狂信兵と呼ばれたAMC数体が、屋上から飛び降りて紗南を追った。

160: 2014/05/25(日) 22:48:11.58 ID:qLytG6T/0
さくら「たすけ、ひぃっ…!」

竜面「…」

「あら、オ怒りのようで」

竜面の男が何か呪文を唱えようとしたのを察すると、すぐにその泥はさくらから離れた。

「甘くておいしいO型の血をありがとネ、サクラちゃん?ずっと黙ってた甲斐があったヨ」

血を吸った目の前の人型がニタァと口が裂けるように笑うと、明確な人の姿に変形する。

真っ赤なリボン、黒い魔女の様な服を着て、黒い肌に真っ赤な瞳。そんなさくらの姿になった。

サクライ「…コピーしたのか」

さくら「わ、わたし…?」

黒兎「キシシ、どう?どう?」

白兎「性能が良ければ見た目はどうでもいい」

黒いさくらが白い首なしの男にニコニコ笑うが軽くスルーされてしまう。

黒兎「…はいはい。じゃあ、やルことやっちゃおっか♪」

161: 2014/05/25(日) 22:50:06.52 ID:qLytG6T/0
ちょっとしょんぼりしつつ黒いさくらの格好のまま泥から取り出した巨大な骨の様な杖を持つと、足元から大量の泥が溢れ出す。

泥は無数の口の形となって、彼女の背後に大量に生み出される。

異形の者だからできる事。それは体のパーツをいくらでも生み出せる事。

その瞳を赤く輝かせながら、楽しげにステップをしながら無数の口達と共に詠唱を始めた。

「「「「大いなる我が力を用いて、星空・宇宙の理を読み解き、星々の輝きよ我が敵を貫け!スターライトスピアー!」」」」

無数の口が一斉に一つの呪文を唱え、口の数だけ現れた輝く光の矢が現れた。

162: 2014/05/25(日) 22:50:41.55 ID:qLytG6T/0
その呪文はたった一つだけ知っている、氏神が邪悪な影を討ち取った時の呪文をラーニングしたもの。

黒兎はたった一人で何人もの魔術師が唱えたような状況を引き起こしたのだ。

さくら「ええええええ!?こんなのありですかぁ!?」

竜面「これは…!不味い、『我が影よ!大いなる我が力に従い、光すら防ぐ暗黒の盾となれ…シャドウシールド!』」

竜面の男の足元から拘束式を応用した大量の黒い腕が出現し、今度はその腕は無数の光の矢から3人を守る為に動き出す。

黒兎「いっケえ!」

放たれた矢は黒い腕に食い込み、今にも千切れそうになる。

竜面「…『より固く』『破られるな』!」

だがさらに詠唱を加えたことにより、光の矢は突き刺さるが貫けずに終わってしまう。

竜面「この程度か…どうやら碌に魔術を使用した経験は無いようだな。量で何とかできると思ったのか…!」

黒兎「むえー、頑張ったのに防がれタ!まだまだレベルは低イっぽいよ白ぉ!」

163: 2014/05/25(日) 22:52:51.31 ID:qLytG6T/0
だが、その空気を無視した音が響く。コインが空高く弾かれた音だった。

白兎「仕方ない奴…手伝ってやる、ありがたく思え」

黒兎「あ、イケる?じゃあ頑張る」

白兎「…頃すなよ」

黒兎「あイあいサー」

白兎が左腕に電撃を纏わせ、黒兎も無数の口を竜の口へと変形させる。

白兎「残念ながら『参考にした記憶』程の威力にはならないんだがなぁ…」

白兎が落ちてきたコインに電撃を纏わせ弾けば、それが弾丸のように黒い腕の防壁を打ち砕いた。

竜面「なんだと…!」

サクライ(疑似レールガン…のようなものか)

そして先程投げた右手が動き出し、背後から白兎に引き寄せられる途中で殴りつけ、竜面の男の詠唱を邪魔する。

竜面「ぐ…っ」

さくら「師匠!」

腕が元通りになると同時に足元の血で汚れた水を残さないように完全に吸収してしまう。

白兎「慣れればインパクトと火力はあるから結構好きだな。ほら、片付けもしたしさっさと終わらせてしまえ」

小さな白い兎の姿になり、黒いさくらの腕の中に納まった。

黒兎「あいよー!発動、ドラゴンマジック!オラァ、ぶっ飛びなァッ!!」

『『『『『~~~~~!!』』』』』

サクライP「…っ!」

竜面「これは竜族の…!さくら、離れるな!」

白兎「やっぱりテメェら人間共のそういう顔は良いなぁ!!ゾクゾクする…最高の気分だ…!」

その言葉と同時に、ビルの屋上に恐ろしい衝撃が襲い掛かった。

164: 2014/05/25(日) 22:55:23.41 ID:qLytG6T/0
計り知れないほどの暴風が何重にもなって襲い掛かり、黒兎自身も吹き飛ばされそうになるがスカートの裾をいくつもの角に変化させ突き刺し耐える。

風が止み、黒兎は生物の広範囲の生命の気配を探る。何度確かめても屋上にいたのは二つの狂気だけだった。

白兎「どうだ?…氏んでないよな?」

さくらに化けた黒兎の腕から飛び出た白兎が、紗南の姿に化けて着地する。

白い髪に赤い瞳の紗南が、サクライ達が吹き飛ばされたであろう、駅とは逆の方向を見つめた。

黒兎「この程度で氏んでたら、とっくに殺されてると思ウよ?キシシ♪」

白兎「それもそうか…キシッ、キシシ…」

「「キシシ、キシャシャシャシャシャシャ…!!!」」

白兎「よくやった黒、褒めてやるよ」

黒兎「その上から目線をやめて欲しいんダけど…とりあえずここを陣取っておこうか。ここからはいろいろとよく見えるし」

白兎「だな。紗南は狂信兵が追いかけているし、運が良ければ聖來が見つかるかもなぁ?」

黒兎「ナんとも執念深い…まぁ、防戦くらい一人で出来るモン。安心していいよ、入口は部下に守らせて、上からぶっ飛ばすだけのお仕事だし?」

白兎「そういえば、結構このテロで血も肉体もゲットできたんじゃないか?配下も増えただろ」

黒兎「だね、狂信は乗っ取ルことでしか生まレないから。食べた人間は…能力者はさすがに居ナかったけど、魔力の最大値もどんどんおっきくなってルぞ」

そこまで言うと思いだしたように腕を組みながら黒兎は少し困った顔をした。

黒兎「あ、でも問題は魔術の呪文が殆どわからないわ…ってコトだね。魔法やドラゴンマジックは割とノリで使えるけど」

テロに紛れて黒兎は蜥蜴の姿で血を吸い、裏では焼けた氏体を喰らっていた。究極生命体は血を吸えば姿を手に入れ、氏にたての肉は喰らえば血と共にその者の力を得る。

かつて喰らった吸血鬼の魔眼の力も使って逃げ惑う人間を操って案内させてしまえば、容易に氏体を集めて喰らうことが出来た。

氏体を喰らう事に躊躇いはない。むしろそれが当然であると二つの狂気は考える。そして、魂の無い氏体は白兎にとっても都合が良い。

…自分たち以外の魂は取り込んでも悪影響を与えるだけだと、加蓮の件で身をもって知ったのだから。

白兎「呪文か…そこは後々考える。今のアタシは電子の海さえ庭のようなものだし、そこからどうにかなるかもな」

黒兎(やっぱり白って時々イタイ子…『正義』は『傲慢』と違って妙なところが純粋だから…そういうトコがこういうコトなのかナ?)

白兎「なーに考えてやがる…碌な事じゃないな」

黒兎「碌な事じゃなくてゴメんね!」

白兎はお気楽そうに笑う黒兎を思い切り殴った後に溜息を吐き、その後は静かに事が起きることを待った。

165: 2014/05/25(日) 22:58:06.79 ID:qLytG6T/0
・狂信兵
AMCに正義の剣を装備させた状態。
装備時間が長くなれば長くなるほど正義の力が強まり、白い泥の鎧を纏う様な姿になっていく。救世兵とは違い物理耐性は無い。
目が赤く、身体能力も上昇し過激で暴力的になっている。
この状態だと白兎、黒兎両方の命令を聞くようになる。

・『ラーニング』
究極生命体が周囲に適応したり、敵を凌駕し頂点に立ちそして生き続ける為の力。
周囲の言動や映像の内容を僅かな時間で把握・記憶・学習し、自身に応用することが出来る…後天的な才能のようなモノ。
奈緒は浄化され記憶を失った後、この能力を周囲の環境に適応する為に無意識に使っており、一年未満の期間で現在の人格と言葉遣いと知能を得ている。
白兎と黒兎は主に戦闘能力にこの能力を活用しており、戦闘経験を積めば積むほど強くなっていく。
ちなみに白兎黒兎のアニメ等の知識が多すぎるのは主人格の影響が大きい。

また、白兎・黒兎が姿などを擬態・模写できるものは『肉を喰らった生物』『血を吸った生物』『封印されたモノを含む、奈緒の記憶の中の強いイメージ』となっている。
擬態しても色は模写できない。

166: 2014/05/25(日) 22:59:43.52 ID:qLytG6T/0
以上です
サクライ達を追い払っていいと聞いて書いてしまった話。サクライP書くの難しい…
プランAが潰れた白兎はプランB(未完成)の為に経験値を貯める方向性で行く模様。
掲示板の雑談スレpart6から一部サクライPのセリフお借りしました

ちなみに超電磁砲やっておいてとあるシリーズはあまり詳しくなかったりする(小声)

情報
・紗南が狂信兵からエアロシューズで逃走中。
・サクライP・竜面の男・さくらが吹き飛ばされました。十中八九無事。
・黒兎(さくら擬態)&白兎(紗南擬態)が屋上を占拠して観戦中。(追い払ってもいいのよ)

167: 2014/05/25(日) 23:10:46.97 ID:FwcwDAE/O
乙ー

やだ…二人とも強い
そして、少し面白いこと思いついた
書き途中の加蓮vsインちゃんにつけくわえよう



【次回に続く・・・】




引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」 part10