513: ◆6osdZ663So 2014/06/28(土) 17:41:03.51 ID:LyRTQnBBo



モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ


 
役者も出揃ってきた感のある2日目ですが
続けて投下させていただきますよー

514: 2014/06/28(土) 17:42:08.02 ID:LyRTQnBBo


――

――

515: 2014/06/28(土) 17:42:33.13 ID:LyRTQnBBo




シロクマP『心配だとは思うけど』

シロクマP『今回の件に関して、ひなたん星人ちゃんは……』

シロクマP『あまり首を突っ込まないでいてくれるといいかなぁ』


美穂「えっ」


まさかの戦力外通告でしょうか。

いえ、確かに私は空を飛べたりはしないのですが……


窓の外、大雨を降らす雨雲の方向に、今回の事件を引き起こした首謀者たる人物が居るそうです。

その人のせいで学園の傍には大きな穴が開くことになり、

何より私がとーっても楽しみにしていたRISAのライブがなくなっちゃったりして…

(このライブには菜々さんも参加する予定だったと知って、本当に泣きたくなりました。ぐすん)

……それはともかく…………おかげでたくさんの人たちが困っています。
----------------------------------------



それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。



516: 2014/06/28(土) 17:43:12.08 ID:LyRTQnBBo


いえ、困っているなんてレベルではなく……

電話の向こうのシロクマさんからお話を聞く限りだと、私たち自身それなりに身の危険に晒されてはいるはずなのですが……

あのアイドルヒーロー同盟がすぐ傍で守ってくれているので、あんまり実感はなかったりして……


と、とにかくですね!

こう言う場合……曲りなりにもヒーローを名乗っているならば、

何かお手伝いできることはないのかな。と思い名乗りをあげることにしたのですが……


シロクマP『事件の解決は、アイドルヒーロー達に任せてくれればいいからね?』

美穂「で、でも……」


…………どうやら丁重にお断りされているようなのです。


今回は、その経緯を詳しくお話したく思います。

517: 2014/06/28(土) 17:44:14.25 ID:LyRTQnBBo


――

――


美穂「前回までのあらすじです」

美穂「肇ちゃんと学園祭を回っていたら」

美穂「いきなり凄い音と地響きが起きて」

美穂「それどころじゃなくなりました」

Pくん「マッ!」

肇「簡単なあらすじですね」

518: 2014/06/28(土) 17:44:43.00 ID:LyRTQnBBo


――

――


そう、始まりの合図はお祭り騒ぎには相応しくないほど大きな……突然の爆音でした。

前触れは無く、ドーン!とまるでアクション映画みたいな爆発音がして、地面が揺れて、

びっくりして目を瞑って……

次に目を開けたときには、学園から見える景色の一部が変わっていました。


美穂「えっ!!」

肇「えっ!?」

Pくん「マっ?!」


まあ、なんと言う事でしょう。

教習棟の窓から見えていた緑の山は、匠の手によってとっても見晴らしの良い巨大なクレーターに……


美穂「ってなりませんよっ!?!」


あまりに突然すぎるビフォーアフターに周りの人達も吃驚仰天だったようです。


519: 2014/06/28(土) 17:45:25.31 ID:LyRTQnBBo



周囲はざわつき始め、最初はみな好き好きに突然起きた怪現象について話し合っていました。

やれ、学園祭運営によるサプライズイベントだ。やれ、学院内にある秘密研究室の実験だ。

やれ、謎の地球外生命体の飛来だ。やれ、伝説のモンスターXの爆誕だ。

などなど、様々な突拍子のない憶測が飛び交っていました。


肇「いきなり山が爆発するなんて……なにが起きたんでしょう……?」

美穂「爆発しそうな物なんて見えてなかったよね?うーん、隕石が落ちてきたとか……?」

Pくん「……もぐもぐ」

美穂「あ、プロデューサーくん、その和菓子どこから……もしかして菜帆ちゃんのところから持ってきてたの?」

Pくん「マッ!」


今思えば、緊張感なさすぎでしたね……。

とは言え、その時は本当に何が起きたのかさっぱりで……

山が消し飛んでも、あまりに現実味がなかったし…事態の大きさには中々気づけないものでした。


その事態の深刻さに気づいたのは……


『ワルイコハイネーカ!!』


美穂「!!」

肇「!!」

何処からか、紛れ込んできた1匹のカースが私たちの前に現れた頃です。

520: 2014/06/28(土) 17:46:18.76 ID:LyRTQnBBo


―省略します。―


『チ、チクショー!』


美穂「ふっ、またつまらない物を斬ってしまったナリ……」

Pくん「マっ♪」

現れたカースは、ひなたん星人となって問題なく対応できたのですが、

流石におかしな事態が起こってることには気づきます。


美穂「カースが現れるなんて、いったいどう言う事ひなた?」

肇「……もしかすると……先ほどの爆発と何か関係があるのかもしれませんね」

肇「何が起きたのか把握するためにも……ここは一つ、アイドルヒーロー同盟に連絡してみてはどうでしょう?」

美穂「なるほどっ!それは名案ナリっ!」

Pくん「マっ!」


と言う訳で、貰っていた名刺からシロクマさんへと電話を掛けて、

事態のだいたいの全容を聞かされて、冒頭の会話へと続くと言った感じです。

521: 2014/06/28(土) 17:47:42.06 ID:LyRTQnBBo



――

――


美穂「……」

シロクマP『いやいや、気持ちは嬉しいんだよ。本当に』

シロクマP『事態を解決する為に、わたし達と一緒に動きたい』

シロクマP『そう言ってもらえて、助かるのは確かなんだけどさ』


学院の上空に滞在している将軍と呼ばれている吸血鬼。

そして地上に蔓延るのは何処からか現れたカース。

これらの問題を解決する為に、学院ではアイドルヒーロー同盟の皆さんが動いてくれています。

Liveをする予定だったRISAはもちろん、菜々ちゃんや夕美ちゃん、それに爛ちゃん。

そしてカミカゼに、期待の新人アイドルヒーローまで。

プロデューサーさん達も集まって、上空の敵を倒すための作戦を練っているようなのです。


シロクマP『でも、その現場に美穂ちゃんが居るのは少し困る結果になりそうかな』

美穂「……どうしてでしょう?」

お話を聞いて、大変な事態であるのは私にもわかりました。

だからこそ、少しでもお役に立てるならば共闘できたらいいなと思っていたのですが……。

シロクマP『……』

美穂「……」

シロクマP『ふぅ……美穂ちゃんにはぶっちゃけトークしちゃうけどさ』

シロクマP『同盟のメンツのためだよ』

美穂「!」

シロクマさんから、返ってきたのは驚きの返答でした。

522: 2014/06/28(土) 17:48:32.84 ID:LyRTQnBBo


シロクマP『今回の一件、同盟は既に失態を犯してるんだよね』

シロクマP『人の集まる場所だから仕方ない……とは言え』

シロクマP『同盟のヒーローが滞在していながら、2日も続けて学園に集まる民間人を危険に晒してるんだからさ』

シロクマP『……にも関わらず、フリーのヒーローの手をほいほい借りちゃったら、これはもうアイドルヒーロー同盟の沽券にさえ関わるよ』

シロクマP『まあ、そう言うじじょーもあって……少なくとも上空の敵を退治するのは、できればアイドルヒーローであって欲しいかな』

シロクマP『下世話な話なんだけどね』

美穂「……」

美穂「えっと…………つまり…………」

美穂「もし下手に私が前に出ちゃうと…………アイドルヒーローが活躍できなくなるからって事ですか……」

シロクマP『だね。飾らずに言ってしまえば』


すみません。たぶん……今私、とっても怒ってます。

なんでしょうそれ。困っている人たちがたくさん居るんですよ。

そう言う……大人の事情を挟んでいい問題なんでしょうか。

523: 2014/06/28(土) 17:49:18.47 ID:LyRTQnBBo


シロクマP『”名誉挽回のための手柄を横取りされるわけにはいかない”』

シロクマP『上はそう判断するだろうね』

美穂「だからって」

シロクマP『美穂ちゃんの言いたい事はよくわかるし、申し訳なくも思うよ』

シロクマP『でも……もしひなたん星人ちゃんが前に出てくれば、美穂ちゃん自身も困ることになるかもしれない』

美穂「……えっ」


私が……困ることに……?

……確かに、前線に向かえば私の身にも危険が及ぶのは明らかです。

ですが、シロクマさんの言う”困ることになる”は、

直接的に、また物理的に、私の身に及ぶ危険とは少しニュアンスが異なるように聞こえました。

524: 2014/06/28(土) 17:49:47.64 ID:LyRTQnBBo


シロクマP『いいかな?美穂ちゃん、君は今はまだフリーのヒーローだね?』

シロクマP『これまでの活躍で、地域での人気があるのは間違いなく認めるところだけれど……』

シロクマP『それでもアイドルヒーロー達とは』

シロクマP『そうだねえ……例えば、菜々ちゃんやカミカゼやRISAに比べて』

シロクマP『美穂ちゃんの知名度は決して高くないのはわかってくれてるよね?』

美穂「それは…………はい」

テレビに出る頻度はもちろん、活躍が知られる範囲もアイドルヒーロー達とは全然違います。

私がせいぜい地域に名前を知られている程度ならば、アイドルヒーローは全国区です。


シロクマP『だから、今は見逃されてる部分はあるんだよ』

美穂「見逃されてる……ですか?」

……不穏な言葉でした。

……私は、誰に何を見逃されているのでしょう?

525: 2014/06/28(土) 17:50:32.46 ID:LyRTQnBBo


シロクマP『同盟の内部にはね』

シロクマP『どんな手段を使ってでも、同盟が手柄を立てさえすれば良し。とする過激派が少なからず居る』

シロクマP『そのためには、同盟以外のヒーローをあの手この手で潰そうと考えるような困ったさん達もね』

美穂「……」

アイドルヒーロー同盟が、あまり在野のヒーローの事をよくは思っていない話は時々耳にします。

だからフリーのヒーローとして活動する間は、

アイドルヒーロー同盟の活動は出来るだけ邪魔しないようにセイラさんには注意されてたっけ……。


美穂「……あの手この手で?」

シロクマP『分かりやすいところでは、そのヒーローについてある事ない事書いたゴシップを飛ばす』

美穂「!」

シロクマP『氏神と呼ばれてヒーローに追われる事になった魔法使いの女の子の話は記憶に新しいでしょ?』

シロクマP『あんな風に、民衆の興味や関心は、時には凶器になるからね』

美穂「……」

氏神さん。もとい魔法使いの女の子の柚ちゃん。

櫻井財閥に付き纏う黒い噂について調べた時、彼女の名前はよく見かけました。

彼女が冤罪によって追われる事となったのは、一般的には人に化ける怪人の仕業と言う事になっています。

しかし、原因は怪人だけではなく……ネットで実しやかに囁かれる噂によれば

彼女の周りにはとてつもない悪意が渦巻いていたようです。

あの時……アイドルヒーロー同盟でさえその情報の真偽を疑わず、彼女を追う側になっていたのは……

同盟が在野のヒーローをあまり良い風には見ておらず、信用していなかった事が少なからず関わっていたのではないかと思います。


526: 2014/06/28(土) 17:52:12.20 ID:LyRTQnBBo


シロクマP『同盟もマスメディア関係には強いからねえ……』

シロクマP『それを使って商売敵の都合の悪い噂を広めようとするのも珍しい話じゃない』

シロクマP『…………特に、一時期のネバーディスペアに対してなんかは酷かったよ』

シロクマP『まあ、彼女達は広い地域で活動していたから、民間から強く信頼されていたし、』

シロクマP『何より後ろ盾のおかげで、そんな風評被害も早々に打ち消したんだけどねえ』

シロクマP『……そう。彼女達みたいに”広い地域での信頼”や”後ろ盾”があるならこんな事問題にもならないよ』

シロクマP『例えば、同盟と協力関係にあるような組織の後ろ盾があるとかならね』

シロクマP『でも、美穂ちゃん。美穂ちゃんには……』

美穂「はい……どっちもないです」


どこにでもいる普通の女子高生。

そんな私がある日、力を手に入れて……憧れのヒーローへと転身しました!


よく考えると……それって、ぽっと出ですよね……。

ぽっと出に対する世間の風当りは厳しいと聞きます。

そんな時に守ってくれるのは、所属しているプロダクションだったりの組織するのですが……。

あくまで普通の女子高生として個人的にヒーローをしている私に、それはありません。


シロクマP『今回の事件はね、美穂ちゃんが活躍するとどうしてもアイドルヒーローと比べられる』

シロクマP『比べられると疎まれて、疎まれると潰されることになる……かもしれない』

美穂「……」

527: 2014/06/28(土) 17:53:04.76 ID:LyRTQnBBo

シロクマP『これは美穂ちゃん個人で立ち向かうには大きすぎる壁だよ』

シロクマP『わたしは、できるだけ助けたいけれど……君が同盟の外に居る間は、あんまり庇うこともできないかな』

美穂「あのっ、だったら私がアイドルヒーローになれば……」


話を聞く限りでは、私が今すぐアイドルヒーローになってしまえば問題ないはずです。

もし疎まれるとすれば、それは同盟の手柄を奪うヒーローなのですから。


シロクマP『……美穂ちゃん。君の進む道の選択はよく考えてからして欲しいって…わたし、言ったよね?』

美穂「っ……考えていない訳じゃなくって……そのっ!」

シロクマP『選択肢に”自分”がある時は、”自分”を選んでほしいとも言ったよ』

シロクマP『それは本当に、美穂ちゃん自身のための選択なのかな?』

美穂「…………あ、アイドルヒーローは私の憧れですからっ!」

シロクマP『……』

美穂「だから……」

シロクマP『……』

美穂「……」

なんだか苦し紛れでした。まるで自分の夢を、考え無しに選択しようとした言い訳に使っているようで、

自分でも「これはないな」と思いなおしたほどです。


美穂「……私……焦りすぎてます……か?」

シロクマP『それがわかってるなら、充分だよ』

シロクマさんは優しい声で返事を返してくれました。

528: 2014/06/28(土) 17:53:49.73 ID:LyRTQnBBo


シロクマP『事件解決のために手を貸してくれようとする美穂ちゃんの心意気は間違いなく優しくて正しいよ』

シロクマP『1人のヒーローとしてはとても立派だね』

シロクマP『だけど、わたし達としては信頼もしてほしいかな』

シロクマP『菜々ちゃん達の実力は、美穂ちゃんもよく知るところでしょ?』

美穂「……はい」

シロクマP『なら、今はアイドルヒーロー達を信じてあげてほしい。同盟は必ず、これを解決するから』

美穂「…………でも、なんだか人任せになっちゃうみたいです」

戦える力があるのに、自分を守る為に前に出ない。

それは正しい事なのでしょうか……。


シロクマP『悪いことじゃないよ。今はまだ君はそんな責任を負ったりする時期じゃあない』

シロクマP『それに、気に病むことでもないね。力の有る無しに関わらず、君たちを守る為にわたし達同盟はここに居るんだから』

美穂「…………はい」

でも……一応、ヒーローを名乗っている限りは……気に掛かってしまいます。

私の憧れのヒーローなら……こう言うとき……


美穂「……もし……もしセイラさんならどうしたでしょう?」

シロクマP『わたしの忠告を無視して前線に飛び出して行っただろうねえ、そして後でわたしに怒られるかな』

美穂「…………えへへっ、想像できちゃいます」

529: 2014/06/28(土) 17:54:38.35 ID:LyRTQnBBo


シロクマP『ふふっ、まあ……あの子の場合はその辺りの事情にも上手く折り合いをつけられるだろうけど』

シロクマP『美穂ちゃんはまだ、セイラちゃんほどには経験も信頼も積んではいない。でしょ?』

美穂「はい……まだまだ……本当にまだまだ経験不足なんだと思います……」

美穂「なんだか難しいですね……」

美穂「アイドルヒーローになったらそう言う事情も考えて行動しないといけませんか……?」

シロクマP『いや。こう言うやらしい事考えるのは、わたし達プロデューサーの仕事だよ』

シロクマP『君たちヒーローには、みんなの笑顔を守る為にも笑顔で居て欲しいからね』

美穂「……」


……シロクマさんは、本当に私の事を考えて正直な事情を話し、意見をくれたのだと思います。

私が焦って前に出て、そしてもし同盟内の過激派に邪魔に思われる様な事があれば、庇えなくなってしまうかもしれない。

だから、忠告してくれました。……それは、私を守るための忠告です。


( 「だけど、覚えておくといい。君自身も誰かの大切なんだからね?」 )


美穂「……」

美穂「…………わかりました」

530: 2014/06/28(土) 17:55:30.07 ID:LyRTQnBBo


美穂「私は、憧れのアイドルヒーロー達を信じて……事件が解決するのを待ってます」

美穂「周りの人たちを守りながら……」

シロクマP『うん、そうしてくれると助かるかな』

シロクマP『偉そうな事は言ったけど、広い学園に現れたカースの全部に対応するのは難しいから』

シロクマP『結局、地上のカースの討伐には、学院や同盟外のヒーロー達、能力者たちの力も借りざるを得ない状況だしね』

シロクマP『前線には出てもらいたくないけれど、その場の人たちは守っていて欲しい』

シロクマP『つまり美味しい所は持っていってほしくないって身勝手な理由なのは、謝るけれどね』

美穂「い、いえっ!そのっ、シロクマさんが私の事考えて言ってくれているのはわかりますからっ!」

美穂「だから……安心してくださいっ!周りに居る人たちは精一杯守ってみせます!」


今回は……その方がいいはずです!

後ろの心配がちょっとでも少なくなれば……それだけアイドルヒーロー達もフルパフォーマンスで活躍できるはずですからっ!

531: 2014/06/28(土) 17:56:11.19 ID:LyRTQnBBo


シロクマP『あはは、頼もしいね。けれど、絶対に無理はしちゃダメだよ』

シロクマP『万が一の時の避難の段取りも、同盟は学院側と話し合ってる』

シロクマP『その時は、美穂ちゃん達も迷わずに避難してほしいかな』

美穂「……はいっ、でもそうなる前に解決してくれるって信じてます」

シロクマP『ふふっ、プレッシャーだね』

美穂「あっ!いえっ、そうではなくっ!」

し、信用している事を伝える言葉のつもりだったのですが、

プレッシャーになっていたなら…その…悪いです。


シロクマP『あはは、わかってるよ。美穂ちゃんがわたし達に期待して言ってくれてたのは』

シロクマP『だから、アイドルヒーロー達がその期待に答えられるように』

シロクマP『わたし達プロデューサーもしっかりサポートしなきゃね』

美穂「…………あのっ、アイドルヒーローの皆さんにも伝えておいて貰えませんか?」

シロクマP『伝言だね、わかった。何て言っておけばいいかな?』



美穂「『皆さんを信じて応援してます!』って……1人のファンからですっ!」


私たちを守ってくれるアイドルヒーロー達に……

いえ、アイドルヒーロー達だけでなくみんなを守ろうとしてくれる全てのヒーロー達に、

信じる思いが伝わればいいな。

532: 2014/06/28(土) 17:57:09.19 ID:LyRTQnBBo

―――――

―――――

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美穂「あ、ところでこんな時になんですけれど……」

シロクマP『ん?どしたのかな?聞きたい事かい?』

美穂「はい。実は……シロクマさんと別れてから迷子の小熊さんに出会って……」

Pくん「マッ!」

私の背中に器用にしがみ付いている小熊さんは、元気よく挨拶(?)します。

話している事が分かるのかな?

シロクマP『……わたしが言うのも難だけど、熊が学院内で迷子になってるの?』

美穂「はい。えっと……その子はぬいぐるみみたいなサイズで……腕や脚のところに少し金属みたいな光沢が見えるんです」

Pくん「マぁ?」

私の肩に乗っかっている小さな白い手のその間接部分には、金属質のパーツらしき何かが覗いています。

これがプロデューサーくんが生き物ではない?と思ってしまう理由なのですが……

……様子を見ているとよくお菓子を食べているのでロボットだとも思えないんですよね……うーん、どちらでもないのかな?

シロクマP『ん……うんん?』

美穂「獣人さんでも普通の小熊さんでも無いだろうとは思うんですけれど……」

美穂「シロクマさん、この子の事何か分かりませんか?」

シロクマP『一度電話を切って、名刺のメアドに写真送ってもらえるかな?ちょっと判断してみるよ』

美穂「あ、それなら…お願いしますね」

ピッと電話を切って、ポケットに仕舞うと背中の小熊さんを廊下の床に下ろします。

533: 2014/06/28(土) 17:58:11.27 ID:LyRTQnBBo


――


美穂「プロデューサーくん、写真取るよー」

Pくん「マっ…!」 キメポーズ


ピロリ~ン☆


――

534: 2014/06/28(土) 17:58:40.17 ID:LyRTQnBBo



……

……


シロクマP『エクス・マキナだね』

美穂「えくす…まきな?」

聴きなれない言葉でした。

シロクマP『正体不明の機械仕掛けの兵器と言ったところかな』

美穂「えっ…」


美穂「ええっ!?!」

お、驚きの情報ですっ!!

ま、まさかプロデューサーくんが機械仕掛けの兵器だったなんて!?

言われて見直してみると確かに……

Pくん「マ?」

美穂「……」


美穂「もおっ、シロクマさんっ!」

美穂「そんなジョーク、流石の私でも信じませんよっ!」

シロクマP『いやいや……確かに信じ難いかもしれないけれどさ』

Pくん「マぁ?」

どうして目が合ったのか分からず、小首を傾げるこの子が、

実は兵器なんて言われてもまったくピンと来ないのでした。

535: 2014/06/28(土) 17:59:14.51 ID:LyRTQnBBo


シロクマP『RISAの相棒のコアさんは知ってるでしょ?』

美穂「はい、可愛くて頼もしいコアラさんですよねっ」

美穂「実はグッズも持ってたりしますよ」

小さくて可愛くて、でも頼もしいアイドルヒーローRISA。

そのすぐ隣にはいつだって、もっと小さな相棒が居ます。

それがコアさんっ。ダンスがとても得意でRISAと同じくとっても頼もしいコアラさんです。


シロクマP『そのコアさんと一緒の……うーん…まあ種族とでも言えばいいかなぁ』

美穂「……なるほど?」

そう言われて見ると、どことなーくコアさんと似たような雰囲気が……

Pくん「マっ!」 キリッ

美穂「…………」

美穂「シロクマさん、やっぱりどう見てもただ可愛いだけですよっ!?」

シロクマP『う、うん……まあ……うん。』

とてもじゃないですけど……

RISAの相棒のコアさんのように頼もしい感じはありませんよね。

536: 2014/06/28(土) 18:00:01.27 ID:LyRTQnBBo


シロクマP『そこまでぬいぐるみチックなのは初めて見るけれど……』

シロクマP『エクスマキナなのはたぶん間違いじゃないとは思うけどね』

美穂「うーん?」

Pくん「まぁー?」

兵器、と言われてもなんとなくそんな気がしないのですが……

じゃあ他に何か説明できるかと言えば……私には出来ないので、

たぶん、シロクマさんの言うとおり……なのでしょうか。


美穂「えっと、とりあえず……シロクマさん、有力な情報ありがとうございます!」

美穂「もしこの子が機械兵器なんだとしたら、元の持ち主さんが居るって事ですよね?」


懐かれちゃって、プロデューサーくんと名前まで付けちゃいまいましたが……

私はこの子が1人で居るところにたまたま出会って、

もしかすると迷子なのかも?と思って、この子の事を知っている人を探していただけですから。

この子に元の持ち主さんが居るのなら、きちんと帰してあげるべきなのでしょう。


Pくん「マ……?」

美穂「うっ……」

こちらを見つめるどこか不安そうな目に、少し気持ちが揺らいでしまいますが……が、我慢です。

537: 2014/06/28(土) 18:00:56.43 ID:LyRTQnBBo


シロクマP『………ふふっ』

シロクマP『面白いこと言うね、美穂ちゃん』

美穂「えっ?」

シロクマP『エクス・マキナの元の持ち主か……ふふっ、確かに居る事はわかってるんだけどね』

美穂「??」


シロクマさんは、何だか変な物言いです。

居る事はわかってる……?うーん、それってどう言う……?


シロクマP『謎に包まれていて何処から現れたかもわからない正体不明の機械兵器エクス・マキナ』

シロクマP『彼らには本来の持ち主である”マスター”の存在がインプットされてるみたいなんだけれど』

シロクマP『残念ながらそれが何者なのかは、わたし達にもわからないんだよ』


美穂「……」

なんだか、背筋が寒くなりそうなお話です。

お話を整理して、まとめてみましょう。

538: 2014/06/28(土) 18:01:47.35 ID:LyRTQnBBo



――この子は、謎に包まれた


Pくん「マっ?」


――何処から現れたかもわからない


Pくん「マぁ♪」


――正体不明の……機械兵器……


Pくん「もぐもぐ」


――本来の使役者たる”マスター”の存在がインプットされてるが……


Pくん「zzz…」


――その存在の事は……誰にも分からない……


Pくん「マッ!!」



美穂「すっごく胡散臭いですよっ!?!」

シロクマP『わたしに言われてもねえ……』

539: 2014/06/28(土) 18:02:17.01 ID:LyRTQnBBo


美穂「えっと……プロデューサーくんには、本来の持ち主さんは居るには居るけれど……」

美穂「それが何処の誰なのかは、誰にも分からないって事でいいんでしょうか?」

シロクマP『そんな感じの認識でいいよ』

シロクマP『……と言うかプロデューサーくんって?』

美穂「あっ、い、いえ!し、シロクマさんに似ていたので…………と、とりあえずの名前としてですね……」

シロクマP『ははは、確かにそっくりかもね』


うーん、でもそうなると……プロデューサーくんを元の持ち主さんに返す事はできないのでしょうか。


シロクマP『彼らは機械だけど、何かに命令されて動いてるって訳じゃなさそうで、どの子もマイペースで自由気ままだね』

シロクマP『自分の意思で考えて、気に入った人に勝手について行って、その人の為に行動しようとする事で知られているよ』

シロクマP『美穂ちゃんは、きっとその子に気に入られたんだと思うんだ』

美穂「……懐かれていると思います」

たぶん初対面でお菓子をあげたので、そのおかげかと思います。

…………お菓子で人に懐く機械兵器って?

540: 2014/06/28(土) 18:03:08.49 ID:LyRTQnBBo


シロクマP『まあ簡単に言っちゃえば、元の持ち主なんて居て居ない様なもので』

シロクマP『その子自身は美穂ちゃんの事が好きみたいだから』

シロクマP『美穂ちゃんが貰っちゃってもいいと思うよ』

シロクマP『もちろん、美穂ちゃんが嫌じゃなければだけどね』

美穂「えっ!えっと……」

どうやらプロデューサーくんは、このまま私が連れ帰っちゃってもいいみたいです。

ほ、本当にいいんでしょうか?このまま飼い主(?)になっちゃっても……

Pくん「マぁ……」

美穂「……」

足元の小熊さんは、私の脚にギュッと捕まっています。

まるで離れたくないみたいに……シロクマさんと私が何を話していたのか、やっぱりわかっていたのでしょうか?

こちらを見上げる目は少し潤んでるようにも見えます。うぅ……そんな風に見つめられたら……。


美穂「よいしょ」

私は手で持っていた携帯を首を傾け固定して、開いた両手で小さな熊さんを抱えあげました。

小さいその体は見た目以上に軽く、簡単に腕の中へと収まりました。


美穂「……それじゃあ、この子は私が連れて行くことにしますね」

Pくん「マっ♪」

今更放り出して1人になんてできませんよね。

けれど……家に連れ帰ってお母さん許してくれるかなあ……。まあ何とかなるよね……?

541: 2014/06/28(土) 18:04:02.21 ID:LyRTQnBBo


シロクマP『ふふっ、そうしてあげてよ』

シロクマP『エクス・マキナについて聞きたい事があったら連絡してくれればいいからね』

シロクマP『彼らについて知ってそうな同僚にも色々と話を聞いておくしさ』

美穂「はいっ、そうさせていただきます」

シロクマP『それじゃあ、悪いけどそろそろ連絡切るね』


シロクマP『もうすぐ作戦会議もあるだろうしさ』


美穂「…………あっ」


お恥ずかしい話ですが……

”作戦会議”と聞いて現在の状況をようやく思い出しました。

私の顔から一気に血の気が引いていきます。

542: 2014/06/28(土) 18:04:41.00 ID:LyRTQnBBo


……い、言い訳をさせて貰います……。

現在、私の居る教習棟の廊下は先ほど見かけたカースを退治して以降、

廊下に居た人達はみんな教習棟の室内に籠っちゃって出てくることもなく、新たにカースがやってくることもなくてですね……

つ、つまり私以外にはプロデューサーくんしか居なくって……

(肇ちゃんは、私が電話している間にエトランゼの皆さんの様子を見に行くと言っていました)

だから電話している間は……ずっとプロデューサーくんのことを眺めていたのですが……

そ、その仕種を見てると……つい緊迫してる状況であることを……忘れちゃったと言いますか……

だ、だから……そ、その……


美穂「す、すすすすみませんっ!!ほっ、本当こんな時にっ!!!」

シロクマP『ははは、まあタイミングは悪かったけれど』

シロクマP『こっちはやる事やりながらだったから気にしなくっていいよ』

シロクマP『美穂ちゃんと話してて、わたしもだいぶリラックスできた気がするしさ』

美穂「う、うぅ……本当すみません……」


電話の向こうはきっと忙しいのに……私の都合でシロクマさんの手を止めちゃってました……。

こんな調子じゃあ、本当にヒーロー失格かも……うぅ……もっと考えて行動しないといけませんね……。

543: 2014/06/28(土) 18:05:49.12 ID:LyRTQnBBo



シロクマP『ま、とりあえず……そっちは大丈夫そうだってわかったしね』

シロクマP『何かあったら、また連絡してよ』

シロクマP『そっちの状況が変化すれば、こっちでも判断して対応できるからさ』

美穂「シロクマさん……色々とありがとうございますっ!!!」

シロクマP『うん、美穂ちゃん。それじゃあ、またね。気をつけて。』

美穂「はいっ、シロクマさんもお気をつけて」


数秒後にプツッと音がして、通話が切れました。

忙しいところ、私の為に時間を割いてもらって……シロクマさんには感謝しなきゃ。


美穂「……とりあえず」

私は足元の小熊さんに目を合わせる為に屈みました。

Pくん「……」

こちらの言葉を待っているのか、プロデューサーくんは静かに私を見つめています。

美穂「プロデューサーくん、これからもよろしくね」

Pくん「マッ!!」

美穂「ふふっ」

任せてと言わないばかりに、両手を振り上げる小熊さんはやっぱり可愛かったです。

544: 2014/06/28(土) 18:06:44.00 ID:LyRTQnBBo


美穂「それじゃあ、この後は肇ちゃんが帰ってくるのを待ってそれから……どうしようかな」

美穂「……周りの人たちを守るってシロクマさんには言ったけど……」

美穂「……そのためにも状況を整理して、考えて行動しなきゃ」


先ほどと変わらず、学院の晒されている状況に反して今も私の周囲は静かなものです。

それだけ、この場所は安全と言う事でそれは良い事なのだと思いますが……。


京華学院には、それ自体に備えられたセキュリティーとして、窓や扉に変わった細工がされているらしく、

教習棟は、締め切ってしまえば外部からのカースの侵入はとても難しくなるそうです。

だから棟外にはたくさんのカースが沸いていながら、屋内は比較的安全なんですね。


美穂「ってあれ?」

……それじゃあ、先ほど見かけたカースは何なのでしょう。

545: 2014/06/28(土) 18:07:32.72 ID:LyRTQnBBo


教習棟内で出会ったたった1体だけのカース……

教習棟に幾つかある入り口は、屋外からの避難者を受け入れる為に開いては居ますが、

そこにはシロクマさんの言っていた学院や同盟外のヒーロー達や能力者たちが待機しているはずで、

一匹だってカースの侵入を許したりはしないはずです。


美穂「……私も教習棟の入り口を守る為に、そちらに向かうべきなのかもしれないけど……」

やはり、先ほど屋内で見かけたカースが気がかりです。


美穂「まさか……入り口とは別の……どこかから侵入してきた……?」

もしかするとセキュリティのどこかに穴があって……そこから侵入して来たのではないでしょうか……?

もしそれに……誰も気づいていないのだとしたら……?


美穂「た、大変ですっ!!」


『ミツケタミツケタゾ!!!』
『フヒヒヒヒヒ!!!』
『クックック、クッテヤル!!』


美穂「!!」

まるで、私の仮説を証明するかのように目の前に再びカースが現れました。今度は3体もですっ!

546: 2014/06/28(土) 18:08:37.69 ID:LyRTQnBBo


美穂「ヒヨちゃんっ!!」

私はすぐに腰の提げた『小春日和』を抜いて応戦します!

『小春日和』を抜くと、私の中に何かが流れ込んできて……


美穂「……は~はっはっはっはっは~!!」


誰も居ない廊下には、私自身の発した高笑いがよく響きます。

うぅ……恥ずかしい……この性格どうにかならないのでしょうか……。


美穂「愛と正義のはにかみ侵略者!ひなたん星人!久方ぶりに惨状ナリっ☆」 キュピーン

Pくん「マっ♪マッ♪」

そう言えばなんとなくこれ久しぶりな気がします。

そんなに久しぶりじゃないはずなんですけれどね?


美穂「とにかくここは早く片付けて、肇ちゃんと合流するひなたっ」

美穂「そしてカースの侵入してきてる穴をきっちり塞いでしまうナリっ!!」


そうです、今は周りの人たちを守るためにも、

そして、私たちを守ってくれるヒーロー達の心配を少しでも和らげるためにも、

焦らずに考えて、私に出来る事をやるのみです!


美穂「でこぽぉおおん!」



おしまい

547: 2014/06/28(土) 18:09:28.97 ID:LyRTQnBBo


◆イベ情報◆

・カースがばら撒かれているのは屋外であるため、棟内は比較的安全っぽいですよ
・教習棟のどこかからわずかな数のカースが侵入してきてる?美穂達が捜索中。


と言う訳で、美穂ちゃんが前線に出過ぎないためのブレーキのお話、あとプロデューサーくんの話。
なお、危険な状況のはずなのにどこか緊張感ない模様
カースがばら撒かれ発生しているのは屋外なので、
現在、屋内に居る美穂の周囲は意外と静かだったりするみたいです。

時系列的に菜々ちゃんとカミカゼには会えないので、ひなたん星人はひたすら後方支援です
先の時系列で会わせておくとこう言う事考えなきゃだから困るぜ、いや正直すまんかった。

ちなみにシロクマさんのお話は、美穂ちゃんの安全と今後を考えて、
現場から遠ざけるための方便じみたところがあるのであしからずー。
現在ごく普通の女子高生でしか無いひなたん星人は、政治的な駆け引きには弱いので心配なのでしょう。

548: 2014/06/28(土) 19:37:27.35 ID:tLBM7dyBO
乙ー

同盟も上層部に過激派がいるといろいろ厄介だな
そして、プロデューサーくんマジ癒し!

なんか、飛鳥が協力持ち込みにいくのは難しそうですね

549: 2014/06/28(土) 21:24:30.27 ID:1XhbL2IL0
乙です

同盟も難儀な商売をしてるからねぇ…大人の事情は怖いねぇ
Pくん可愛すぎるね、兵器に見えないのも当然だネ



【次回に続く・・・】




引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」 part10