735: ◆BPxI0ldYJ. 2014/07/19(土) 07:15:53.36 ID:NXL1nG2+0



モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ


  手持ちキャラの将軍に対するスタンス、投下しま

736: 2014/07/19(土) 07:16:38.76 ID:NXL1nG2+0
 異様な雰囲気だ。

 真っ白い壁で囲われた、ソファーぐらいしか目の見張る物がない部屋においては、あまりにも。
 ソファーの端っこで、線の細そうな若者が身を縮ませる。存在を出さぬように、物置のように。
 不自然なほどに当たり障りのない佇まいで、脇と股を閉めるのは、自分をこの空間から切り離し、喰い潰されてしまわないようにするためだ。

 所在のない瞳を伏せて、ただ時間の過ぎるのを待つ。
 握った拳は手汗で湿り、圧力のかかった心臓が早鐘を打つ。

 彼は若かった。
 大学を卒業してから早々に、自らの高学歴を武器にして、アイドルヒーロー同盟という優良企業に就職することができたのは僅か数ヶ月前の出来事である。

 卒業間際でありがちに今後の進路について語り合う最中、内心他人の言葉を嘲りながら、それを態度に隠しきれずにいた彼の、高慢な態度はどこへやら。
 もしここに彼の友人が居たならば、鼻で笑われても文句は言えまい。
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それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。



737: 2014/07/19(土) 07:17:50.26 ID:NXL1nG2+0
 ただ、彼には全くの非もない。

 それが疑いようのない事実であるのも、また。

 だがそれでも、でっぷりとした肉の中に荘厳な迫力を秘める男は。
 紙袋を頭から被り、二つ空いた覗き穴の奥で深い瞳を揺らめかせる少女は。

 気に留めようともしなかった。
 その程度、取るに足らないことだった。

 少なくとも、今この場所に於いては。


 男の腹に置かれたネームプレートには、黒木宗雄の名が記され、少女の名前が二宮飛鳥であるということを知る者はごく僅かだ。

 宗雄は、人差し指でテーブルを叩き、遊びのない時計を一瞥した一瞬の後、視線を少女に向け直して口を開いた。

「…あー…我々に協力してもらえるという話だったな?」
「そうだね」
「敵の情報も提供すると」
「そうだね」

 ただ二つ、確かめるように、それ以上に推し量る意を含めて言葉を交わすと、視線を合わせたまま複雑な胸中より鼻息を吐いた。
 時計の秒針がぎこちなく時を刻み、立場ある人間である彼は、場を早める必要を改める。

 切れ味の鋭い眼孔で相手の瞳を覗き、その中に相手の底を探りながら、「単身で乗り込んだんだとは、殊勝じゃないか」と沈黙を押しのけるように言葉を続けた。

 そして、一泊置いた後「善良なる一市民として、最善をしたまでさ」と切り返された直前、その瞳が愉悦の色を映し出したのを、宗雄は見逃さない。

 太い眉が僅かに跳ねて、辛うじてなりを潜めていた剣呑な空気が徐々に顔を見せ始める。

738: 2014/07/19(土) 07:20:02.85 ID:NXL1nG2+0
 若者の目には、宗雄の僅かな動作でさえ──たったの一呼吸でさえ、殺意の兆候のように見えた。
 対する少女は、たまに足を組み替える程度で一切の隙を晒さず、その視線がこちらに向けられただけで、自分が泥に飲まれてしまうのではないかとも。

 剥き出しの警戒心と、底の知れぬ不気味さがテーブルを挟んで向かい合う。その脇で息を押し頃す若者は、観葉植物に等しかった。

 耐えかねた若者が顎を僅かに上げて、伺う視線を上司へ向ける。瞳だけを動かしてそれを受け取った宗雄は、人差し指で顎を撫でながら、体重を背もたれに預けて次の言葉を探る。

 一点を見据えた視界の端で、少女が足を組み替えるのがちらついた。すると、足の上で拳を組んだかと思えば、そのまま自分を追うように身を乗り出す。

「……何か問題があるかな?」
「ボクとしては、わざわざこんな面接をする必要さえ無いように思えるけどね」

「…ウチのアイドルを襲った不審者のこともあるでな、大人の事情だと理解してほしい」

 お前も有力な容疑者の一人だ。と口外に付け加え、見合わせた瞳をすっと細めて睨みつける。
 暗い瞳の奥で、何かが揺れたように見えた。

「うんうん、しがらみは煩わしいけれど、なればこその世の中ってね」
「理解ってるつもりさ」

 敵意を受け流すように悠々と語り、その口元が嗤っているのは被り物の上からでも明白だった。

739: 2014/07/19(土) 07:21:14.44 ID:NXL1nG2+0
 状況だけを整理すれば、彼女の協力を受けることにデメリットは無く、むしろ大きなメリットに成りうるのは分かる。

 目の前の彼女は、今し方相手の戦力と交戦をしてきたと語り、その情報を提供すると語る。
 つまるところ、ヒーローの突入に際して何かしらの対策を講じる事が可能である。

 彼等は戦力であると同時に商品。
 そめそも、人間が命を張る様子を見世物にしようなどと歪な商売をしているのだ。
 その多くが見た目年端の行かぬ少女であるという事実も手伝い、傷か付くような自体は極力避けたかった。

 よしんば彼女が敵の手の物だとして、こちらを攪乱する目的があったとしよう。しかしその場合、確かめる手段はいくらでもある。
 多少の手間を無視すれば、同盟の人材に精神の内を覗いてもらえば済む話。

 それでなくとも、彼女は単独飛行が可能である。

 人間が空を飛ぶという物は、非常識が現実になった今であってもなかなかどうして難しいものだ。
 被り物の下が麗しくあったら、スカウトしているやも知れない。

 そういう点では貴重な人材だった。

 彼女はこれを、協力の承諾を条件に引き渡そうと言う。

 なる程デメリットなど見られない。

 ──しかし、だからこそ不気味だった。

 彼女の要求はこちらへの協力。
 そこに何かしらの目的を見いだしているのは確実だった。
 よしんば彼女が善意の人であるならば、このようなアプローチをとるとは考えにくい。
 それにより同盟に──アイドル達に危害があるようならば、対応を考えなければならない。

740: 2014/07/19(土) 07:22:09.21 ID:NXL1nG2+0
 そして何よりも彼女を不気味たらしめるのは、その佇まいであり、口調であり、被り物であり、目だ。

 どす黒い思惟がこちらを絡め取ろうとしているのが、無能力者の彼でさえわかった。
 時折相手の視線が体を撫でる度、ぞわりとした、おぞましい何かが体内を蛇の如く這い回る。

 剥き出しの敵意でそれをすり潰さなければ、次の瞬間には神経を食い散らかされてしまうのではないかという錯覚を覚えるほどに。

 似たような手合いは知らないわけでは無い、それこそ、逆に食い潰した経験すらあるが、こと不気味さにおいて彼女は一級品だ。

 理屈ではない第六感が、脳内でけたたましく警鐘を打ち鳴らす。

 これは間違いなく取引だ。
 そこにおいて腹の底が読めぬというのは、どれほど───

741: 2014/07/19(土) 07:30:43.24 ID:NXL1nG2+0
 瞼を閉じ、体をソファーに沈ませながら、暫し押し黙る。

 承諾か拒否。
 重量の分からない二択に思案を巡らせながら、脳裏に去来するのは同僚やアイドル達の顔ぶれ。

 或いは作戦を成功させた喜びの顔であり、体を千々に引き裂かれる光景であったり。

 彼女を受け入れることで生まれる無数の可能性。
 突き放すのは簡単だが────

 そして数秒の後、分針が頂点を示したのを合図に、よりいっそうの意志を湛えたと分かる瞳が開けられる。

 一言一言の重みを確かめながら、結われていた唇をゆっくりと開いた。

「…いいだろう、考えておく」
「えっ」

 返ってきた素っ頓狂な声に、眉をひそませたのも一瞬、この場で許可が貰えると思っていたのだろうと当たりをつけると、「これも大人の事情だ」と、取り付く島もなく言った。

742: 2014/07/19(土) 07:33:10.01 ID:NXL1nG2+0




「…まあいいさ、これで──」
「ただし」

「二つ、言っておくことがある」

 足を崩しながら紡ぎかけた言葉を強い言葉で遮り、ソファーに委ねていた体を起こしながら、指を二つ突き出す。

 目の前の少女は不意を突かれたというように、浮かしかけた腰を硬直させながら、目を白黒させこちらを覗き込んだ。
 その目を睨み付けながら、有無を言わさぬ言葉で先を続ける。

「一つ、こちらも商売でやっているという事」

 それはつまり、あまり出過ぎたマネをするなと言うこと。それはお互いの為であり、おそらくは暗黙の了解ですらある。

「ふふ、少しの手助けでもできれば、それでいいさ」

「二つ」

 言いかけて、鼻から深く息を吸うと、一旦の間をおいた後───

「おまえの後ろにいるのがヒーローだということを忘れるな」

 ───鼻先をずいと寄せて、全身から今日一番の殺気を放ちながら、めいっぱいのドスを利かせた声音で吐き付けた。

「……肝に銘じておくよ」

 二宮飛鳥が押しかけた迫力を物ともせず、おどけたような口調で切り返したのも気に留めず、宗雄は「こちらも忙しいでな」とにべもなく言い残すと、そそくさと部屋を後にする。

 少し遅れて若者が腰を浮かせ、タイミングを逃し、自分がどうするべきなのかを見失っていると、ソファーに沈んだ飛鳥に「キミは行かなくて良いのかい?」と突かれる。

 はっとした顔を飛鳥と突き合わせた直後、見てはいけない物を見てしまったとでも言うように青ざめた後、まるで助けを求めるように宗雄の背中を追いかけていった。

743: 2014/07/19(土) 07:34:25.84 ID:NXL1nG2+0




 最終的に宗雄を動かしたのは、信頼だった。

 彼の知る仲間ならば、あの気持ちの悪い存在を受け入れたとて、そう揺らぐことはないであろうという。

 屈することなく、逆に食いつぶしてさえ見せるだろうという。メリットだけを取り出せるだろうという。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 時を同じくして。

 京華学院へ向けて疾駆する装甲車が一つ。

 その獣の如きエンジン音はそれの持つパワーを聞く物に伝え、それが支えるボディもそれに足る重厚さを備えている。

 他よりも一回り大きい無骨な車体が街中に異様な存在感を放ち、GDF軍のエンブレムがそれをより引き立たせる。

 ある程度軍事に詳しいものであれば、その装甲車に多少のカスタムが施されている事が、更に詳しいものならばそれがシンデレラ1によるものだと判るだろう。

「目的地まで、後数分もありませんよ」

 運転手を務める男が、背後へ横顔を向けながら投げかける。
 するとすぐさま三者三様の返答が返され、男は顔を正面へ向け直す。──その頬が僅かに弛んでいるのは気のせいではないだろう。

744: 2014/07/19(土) 07:35:18.00 ID:NXL1nG2+0
 軍という組織は、どうしても男臭くなるものだ。

 そんな組織にあって年若い女性で構成されるシンデレラ1が、一種の羨望の的となるのは、当然のことなのかも知れない。

 特殊なパワードスーツを着込むことによってヒーローに匹敵する戦闘力を発揮するというのもそれを助長させている。

 特殊部隊という言葉の響きも良い。
 何かと秘密の多い部隊だというのもそうだ。

 男という生き物はいつまで経っても、格好良い物と強い物とロマンのある物が大好きなのだ。

 そんな訳あって、特設遊撃部隊シンデレラ1は、GDF軍内部においてどこかアイドル的人気を獲得していた。

 そんな彼女等を乗せてハンドルを握ることができるのだ。鼻の下が延びるのも、不可抗力と言うものだろう。

 有浦柑奈の奏でるギターを聞きながらの運転は、何時もより数段気分の良いものだ。
 いささか聞き慣れぬメロディーではあったが、くぐもったラジオ回線よりは遥かに良い。

 後ろに乗せるのは噂の美少女。
 片手でハンドルを切りながら、今夜の酒の肴はこれで決まりだな、と内心一人ごちた

「しっかしね……」
「なんでしょう?」

 しかしこのまま運転手だけで終わるのも勿体ないと思いた男は、顔を正面に向けたまま不意に口を開く。
 何を話すかは決めていない。話題など、話しながらでも作ればいい。
 男にはその心得があった。

745: 2014/07/19(土) 07:36:14.55 ID:NXL1nG2+0
「吸血鬼退治に行くんでしょう?せっかくのお祭りだってのに、迷惑な奴ですね?」

 と、少しおどけたように言う。

 将軍の発した声明──宣戦布告、と言うべきか。は、主に能力者を扱う集団に向けて発信された。

 アイドルヒーロー同盟に始まり、ネバーディスペア、その他諸々………

 さて、GDFへ発信されることは遂に無かったのであるが───互いの仕事を食い合う関係といえども、それほどの情報を開示しないというのは、あまりにも不自然だ。

 故に当然の如くGDFもこの情報を掴んでいる。

 男の所属する基地では、GDFも舐められた、などと多くの隊員が憤って居たものだが────

「──いえ、私達は警備に当たるだけですよ?」
「ほ?」

 返された返答は、彼の認識に反するものであった。
 きょとんとした顔を思わず後ろに向けると、物々しい棒状の武器を点検する響子の顔が正面にあった。

 運転手の性から直ぐに正面へ向き直したが、それでも意識を後ろから離すことができない。

「そいつぁ、一体?」

 シンデレラ1などという大きな戦力を派遣しておきながら、やることはただの警備だと。
 疑問を投げかけずにはいられなかった。

「…ああ、なんでも───」

 一瞬の間を置いた後、ギターを弾く柑奈と財布とにらめっこをする美羽を後目に、響子は説明を始めた。


 時は少し遡る。

────…………

───────………………

746: 2014/07/19(土) 07:37:30.81 ID:NXL1nG2+0



「五十嵐響子、以下二名到着いたしました」

 司令室で横並びなった三人。右端で響子が敬礼を作ると、隣の二人がそれに続く。

「よし、楽にしてよろしい」

 参謀が厳かな態度を崩さないままそう告げると、腰に手を提げた三人は次に大佐の言葉を待った。

「……いつも急で済まないな」

 司令室の真ん中で、咳払いをした後、三人の顔を眺めてから大佐が言う。

「命令は、京華学院の警備だ」

 間を置かずに言い放った時には、一瞬だけ見せた後ろめたさは消え失せ、老練の司令官として彼女等を見つめていた。

「警備?」

 目をぱちくりとまばたき、意を外されたようにこぼしたのは柑奈だ。

 彼女が言わんとしていることはその場の誰もが理解していた。

 こんな大胆たる事件に対して、GDFが手をこまねいている訳がない。それこそ、機甲部隊を出撃させてもおかしくは無さそうだ。

 ことフットワークに対する戦力比の高いこの部隊のこと。当然直接事態に当たる事とばかり思われていたが───

「そう、警備」
「GDFとしては分からないけれど……少なくともシンデレラ1としてはそこまで」

「…はぁ」

「ヒーロー同盟との兼ね合いよ……」

 様々な物を含んでいるような言葉だ。
 彼女が詳しくを語ることは無かったが、どこか悩ましげな表情は、事態の複雑さを推し量るには充分であった。

「まあ、休暇代わりだと思って気楽にしてくれたまえ、ははは…」

 大差の作るぎこちない笑いは、参謀の苦悩を打ち消そうとしているようにも見える。

 彼等の表情の裏に何があるのか、シンデレラ1の三人は知る由もない。ただ、彼女らなりに心配だったのは確かだ。

747: 2014/07/19(土) 07:38:30.05 ID:NXL1nG2+0

「あと…これ」

 先程よりも陰を増したと見える参謀が、どこか投げやりに端末を操作する。すると最寄りの液晶に、武器の物であるらしい図面が映し出された。

「試作型プラズマ・ランス…今回、重火器を扱うわけにはいかないわ」
「だから響子。あなたはこっちを持って頂戴」

「試作型…」

「ええ、ヘファイストス・アーマリーのね。」
「純地上性の技術でプラズマ兵器を造ろうって魂胆らしいのだけど…」

「…わかるわね?」

「……はい」

 データ収集をしてこい。そういうことなのだろう。

「それと、技術部が美羽の装備を改良したそうよ、そっちもお願いするわ」

「はいっ」

「私からは以上、…司令」

 無愛想に切り上げると、半歩後ろに下がりつつ大佐へ伺う視線をくべる。

 視線を受け取った大佐が無言でうなずくと、場を改めるように咳払いをし、凛と引き締め直した顔を正面へ向けた

「よし……作戦は、今し方参謀君が話してくれた通りだ」
「先程休暇代わりとは言ったが、誇りあるGDFの一員として恥ずかしいことの無いようにしてほしい」

748: 2014/07/19(土) 07:39:20.61 ID:NXL1nG2+0

「…それでは………」

 一旦もったいぶって一つ息を吸い、目を閉じる。

 一秒の後、開眼。

「シンデレラ1ッ!出撃ィッ!!」

「「「了解っ!」」」

 四人分の気合いが、司令室を揺さぶった。





「………貴方達も大概ノリがいいわね…」


───────……………

─────…………

749: 2014/07/19(土) 07:40:08.11 ID:NXL1nG2+0
「なるほどね……」

「俺の見立てじゃあ、大方同盟のケツを持てって所かな……」

 前方を眺めながら、少し気取った声音を吐き出す。

 アイドルヒーロー同盟が事に当たると言うことは、それまでそこに居たヒーロー達が出払ってしまうと言うことでもある。

 聞けば学園祭二日目にして、既に何度か民間人を危険に晒しているのだそう。
 敵の打倒が目的とは言え、そんな状況で警備を緩めたりなどすれば────最悪の状況を考えなければならない。

 そこで、彼女等に留守を任せる事で万全を期す。それが彼の大方の予想であった。

 フリーの能力者も居るだろうが、分かり易いネームバリューによる抑止力という物は存外に馬鹿にできないものだ。
 その点で、GDFというバックを有する彼女等には、充分な力があるだろう。

 おそらくは、もっと多くの事象が裏で複雑に絡み合っているのかも知れないが───もっと言えば、この予想自体大はずれの可能性も有り得るが───ただの一兵士でしかない彼には関係のない話だ。

「けつ………」

「おっと、下品な表現だったかな?」

「えっ……あ、はは……」
「これは失礼」

750: 2014/07/19(土) 07:41:12.06 ID:NXL1nG2+0


 見れば、京華学院のでかい校舎の輪郭を、しっかりと捉えることができていた。
 もう一分となく到着することだろう。

「…柑奈ちゃん、美羽ちゃん、そろそろだよっ」

「あれっ、もう?」
「む、…もうちょっと弾きたかった気も…」
「俺は充分楽しんださ」

 自分の肩越しにピースサインを作ってみせると、ルームミラーに柑奈の笑顔が咲く。
 やはり少女の笑顔はいつ見ても良いものだ。

 通りを右手に曲がると、遂に学院の塀さえ認めることができた。同時、ちょっとした物悲しさが胸を突き上げる。

「さ、下りな」

 表情を読み取らせぬよう、余計な心配をさせぬように目を伏せて、ぶっきらぼうに言い放つ。

 後部扉の金音が重く響くと、開いた扉の隙間から外気がすっと入り込んできた。

 直接見えずとも、彼女等が遠ざかっていくのが不思議と分かる。

「ありがとうごさいましたっ!」
「また会いましょう!!」
「あでゅー!」

 三人目が言い終わると、金属の軋む音と共に少女の気配が完全に消え失せる。

「……礼を言いたいのは、こっちさ」

 苦笑して呟きながら、懐から煙草を取り出そうとして………止めた。

 車内に残っているのは、明るい声の残響と───

751: 2014/07/19(土) 07:42:00.23 ID:NXL1nG2+0
 ────残り香。




 敢えて記そう。

 彼はGDF陸軍の一員であり、運転に自信があり、パッションチームの一員である。

 だが、彼はそれ以上に。

 それ以前に───



 ────男だった。





「スゥーッ!ハァーッ!スゥーッ!ハァーッ!………」



752: 2014/07/19(土) 07:43:17.01 ID:NXL1nG2+0
・紙袋

 飛鳥が買い食いのに際して手に入れた物。
 あまり素顔を見られたくない飛鳥は、目の辺りをくり抜き、額に油性ペンで『正義』の文字を書いて被り物にした。


・試作型プラズマ・ランス
 現在まで存在していたプラズマ兵器の数々は外来の技術に由来する存在であった。
 そしてその技術を取り込み、科学力の飛躍した現在、それを自分達で作り出そうとした計画の産物。

 見た目は機械的な大槍。
 長い持ち手にグリップとトリガーが装着されており、それを引き絞ることにより穂先からプラズマの奔流を放出する。
 オリジナルは小型核融合炉から電力を確保するが、こちらはカートリッジ型バッテリーでそれを賄う。

 威力だけは高いが、装填弾数に対する割合が悲惨で、かさばるために取り回しも劣悪。射程も短いが、これは周囲に被害を出しにくいという点に於いては長所たりうる。
 総合すると『どうせ試作品』といった感じ。

 奈緒、ランスの名を関してはいるが、格闘武器として扱えるかは未知数。
 一応、金属の塊である。


・フレキシブル・リボルバー・ロケットver.1.2

 改良型らしいのだが、大きな変更点は、それこそ運用する面では見られない。
 曰わく、目に見えないところが変わっているらしいのだが……

753: 2014/07/19(土) 07:45:30.27 ID:NXL1nG2+0
※飛鳥「ぼくわるい能力者じゃないよ」
 飛鳥「なかよくしようよ!」(ゲス顔)
 宗雄「おう考えといてやるよ」

※シンデレラ1がブラム攻略作戦の間留守を預かるようです
※響子の装備が変更されています。


以上。

腹の探り合いも、面接も、モブに名前を付けたのもただの趣味。大した意味はない。

754: 2014/07/19(土) 10:27:25.66 ID:gBMdEP0w0
乙ー

飛鳥w完全に怪しいんですが。それは?
普通ならお断りなのに……モブェ…

GDFまできたか
そして、最後w



【次回に続く・・・】




引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」 part10