784: ◆lhyaSqoHV6 2014/08/04(月) 03:57:46.55 ID:ZvpkelKXo


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ


 秋炎絢爛祭に向かう前のむつみさん投下します

この逃げ文句何度目か分からないけど…茶番長いですごめんなさい

785: 2014/08/04(月) 03:59:07.76 ID:ZvpkelKXo

──龍崎邸──


『先生! 大変です!』

ある日の昼下がり、書斎で書き物をしていた龍崎博士の元へ一本の電話が入った。

博士「助手君? 久しいな」

通話相手は龍崎博士の元教え子にして一番弟子──現在はとある国際的な研究機関の構成員を務めている人間だった。

博士「どうしたね? そんなに慌てて、君らしくも無い」

電話口のその人物は酷く狼狽している様子だ。
博士は諭しつつも、次の言葉を待つ。

助手『"バベルストーン"が……! 何者かに盗まれました!』

博士「何だって!?」

助手の言葉を聞いた博士は、手にした万年筆を思わず取り落とした。

どうやら、助手の所属する研究機関が保管していた何某かが、これまた何者かに盗み出されたようだ。
助手のただならぬ様子に身構えていたものの、しかし彼から聞かされた内容は博士も予想だにしないものだった。


博士「詳しく聞かせてくれ」

助手『……昨晩、バベルストーン保管部屋の防犯センサーに反応があったんです』

助手『それで、警備が駆け付けた時には既に……』

助手『あの区画は厳重に管理されていたというのに……』

助手は状況を伝えると、口惜しげに呟いた。


博士「うーむ……犯人の目星は?」

助手『分かりません……あの区画への入出パスを持っている人間は全員シロでした』

博士「だとすると、外部の人間の犯行か」

助手『とりあえず、今は地元当局が現場検証中です』

助手『それと、国際刑事警察機構にも捜査協力を要請しました』

博士「なるほど、な……」
----------------------------------------



それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。



786: 2014/08/04(月) 03:59:52.30 ID:ZvpkelKXo

博士「しかしまあ、手掛かりが無い以上は、あれこれ騒いでも仕方あるまい」

助手から事のあらましを聞き終えた博士は、戒めるかの様な調子で話し始める。

博士「警察組織も捜査をしてくれているのならば、彼らに任せた方が良かろう」

助手『そ、そうですね……私が慌てたところで、何が出来るわけでもないですし』

助手も博士と話をして、幾分落ち着きを取り戻したようだ。

博士「この件について、進展があればまた教えてくれたまえ」

助手『わかりました、それでは失礼します』

助手は伝えるべき内容を話し終えたのだろう、受話器を置く音の後に通話は途切れた。



博士「バベルストーンが盗まれるとはな……」

助手との電話を終えた博士は、座した社長椅子に深くもたれ掛かると大きな溜息をついた。

博士「(アレは、知識の無い人間にとっては、"少し綺麗な石"とでもいう程度の物だが──)」

博士「(それなりの警備もある研究施設に忍び込んでまで欲するという事は、盗み出した者はあれがどういった性質の物かを知っているという事か)」

博士は立ち上がると、部屋の隅に据えられたキャビネットへと向かう。
そして、そこに仕舞われている分厚いプラスチック製リングファイルのうちの一つを手に取った。
その背表紙には「報告書」「バベルストーン」「研究結果及び考察」といった文字が並んでいる。

博士「(バベルストーン……その存在自体、長らく忘却の彼方にあったが……)」

博士はファイルを机に置くと、中の書類に目を通し始める。

787: 2014/08/04(月) 04:01:30.76 ID:ZvpkelKXo


博士と助手の話題の中心にあった、バベルストーンと呼ばれる存在──
それが一体どういったものであるのかを知るためには、今から数百年ほど時間を遡ることになる。

時は中世期の終わり頃、さる探検家が某大陸の奥地にて現地の部族の集落に立ち寄った際、眩い光を湛え輝く神秘的な石を発見する。
その探検家は、集落において御神体として祀られていたその石に大いに興味をそそりたてられたという。
それこそが件の『バベルストーン』なのだが、当時その探検家が残した手記には「ただの綺麗な石」とする以上の記述は無かった。

ともかく、これが現在知られているバベルストーンの存在が最初に人類の歴史(あくまで有史以降のではあるが)に登場する出来事である。



博士「(太古の昔……神の頂に臨まんと、人類の叡智を結集し建造された巨塔……『バベル』……か)」

博士は丁寧にファイリングされた書類を読みふけりつつ、頭の片隅で思案する。

博士「(その正体は、古代メソポタミア文明の建立した神殿が神話化した物であるとする説が有力だが──)」

博士「(地球上に四大文明が興るより遥か昔に存在していた何らかの文明が建てた塔であると)」

博士「(言うなれば、"真のバベルの塔"とでも呼ぶべきものが実際に存在していたとする説も、学会の中には根強くある)」

博士「(そして、その説の根拠となるのが『バベルストーン』……)」



話はバベルストーンの祀られていた集落へと戻る。

探検家の来訪より数百年の時が過ぎ、世界の文明は目覚ましい発展を続けてゆく中で、
外界から隔絶されていたその集落にもやがて近代化の波が押し寄せる事となる。

当時、その集落においては、先祖伝来のしきたりや因習などはカビ臭い悪弊として軽視されており、
かつては御神体として崇められたバベルストーンも、ふらりと現れた何処ぞの国の好事家に二束三文で売り払われてしまうのだった。
しかし、バベルストーンが世界的に認知されるようになった要因として、この好事家に買い取られたことが実際大きく関わっている。

バベルストーンを買い取った好事家は、その正体を探るべく専門家に調査を依頼。
その結果、それは外宇宙からやって来たものであると判明する。
当時の学界では、俄かにセンセーションが巻き起こったと、とある資料は伝えている。

788: 2014/08/04(月) 04:02:25.43 ID:ZvpkelKXo

その後、バベルストーンについての本格的な研究が始まり、つい十数年ほど前にとある学者が大きな発見をする。
その学者に曰く
「バベルストーンは情報記憶媒体としての性質を持っており、その小さな石ころ然とした中には膨大な情報が記録されている」
というものだった。


博士「(バベルストーンからほんの僅か引き出された記録を分析した結果)」

博士「(有史以前の地球上に、天を衝くほどの超高層建造物が存在し、バベルストーンはその頂上に安置されていた物であるとする内容があった)」

博士「(──すなわち、『バベルの塔』が実在したとする説の根拠と『バベルストーン』の名前の由来だ)」


「バベルストーンには多くの情報が詰まっている」とする発見を受けて、その中に残された全ての記録を引き出すべく、
バベルストーンの研究プロジェクトに対し、世界中から途方もない資金と人材が投入されることとなる。
しかし、ついにその中身を引き出すことは叶わなかった。

多くのリソースを費やしたものの目立った成果は得られず、世界の関心は次第に冷めてゆき、
そしてさらに研究の第一人者──バベルストーンが情報記憶媒体であると導き出した考古学者『氏家博士』が謎の失踪を遂げた事によって、
バベルストーン研究プロジェクトは凍結されることとなる。
そして現在まで、龍崎博士の助手が勤める研究機関の施設に保管されていたのだ。


博士「(氏家博士が失踪してからというもの、バベルストーンの研究は遅々として進んでいなかったが……)」

博士「(しかし、よもや盗まれるとはな)」

博士「(盗んだ者の意図は分からんが……早く見つかる事を祈ろう)」


博士は再び大きな溜息をつくと、盗まれたバベルストーンのその行方を案じるのだった。

789: 2014/08/04(月) 04:04:11.46 ID:ZvpkelKXo

──所変わって、"冒険大好きっ子"氏家むつみの部屋──


むつみ「アストラルクォーツ?」

クォーツ『そうだ』

怠惰のカース集団との戦闘後、自宅に戻ったむつみは、クォーツと話し込んでいた。
話し込むというよりは、クォーツが一方的に語る話をただただ聞いているといった方が適切かもしれない。

クォーツ『とある恒星系で産出される特殊な宇宙鉱物に、フォトニック・ラミネート・デポシジョン加工を施し、情報記憶媒体としての性質を持たせた物──』

クォーツ『それが、アストラルクォーツだ』

むつみ「……じょーほーきおくばいたい?」

宇宙からやってきたクォーツの語る内容は、やはり宇宙レベルの話になる。
理解の追い付かないむつみの頭上には絶えずインタロゲーションマークが浮かんでいた。


クォーツ『地球人も、円盤にレーザーを照射して情報の読み書きを行っているだろう? あれと同じような物だ』

むつみ「(……? 光ディスクのことかな?)」

クォーツ『あるいは、もっと広義に捉えれば、"紙"も情報記憶媒体と言えよう』

クォーツ『ふむ、そうだな……太古の地球人の行動を考えれば"壁面"や"地面"もそれに含まれるな』

クォーツはむつみを意に介さず一人(?)で何事かを呟き、そして一人で勝手に納得している。

むつみ「そ、そうなんですか…」

その様子にむつみの表情は少しばかり引きつっていた。

クォーツ『……話が逸れたな』


クォーツは間を置き仕切りなおすと、話の続きを語り始める。

クォーツ『そのアストラルクォーツだが、製造方法やら加工技術やらが、太古の昔にこの宇宙から失われてしまってな』

クォーツ『今はもう、新たに作り出すことが出来ないのだ』

むつみ「はぁ……」

地球の外の──ましてや、太陽系の外の話などをされても、むつみの思考力の及びもつかない世界だ。
実際、クォーツの語る内容に関してむつみの反応といえば、適当に相槌を打つ程度だった。


クォーツ『だが、どういうわけか、この地球にはかつてアストラルクォーツの一塊──』

クォーツ『宇宙的に見ても希少な、かなり大きな塊が存在していたとする話があってな……地球人からは『バベルストーン』だとか呼ばれていたか』

クォーツ『ある時期を境にそれは無数に分かたれ、世界各地に散らばったらしいが……』

クォーツ『今でも地球上にいくらか残っているであろうそれを、むつみ……お前に集めてもらいたいのだ』

むつみ「えっ……私?」

どういった内容の話かもよく分からずに聞いていたが、突如として自分の名前が出てきた事でむつみは僅かに面食らう。
しかし、クォーツからの──自らを非日常へと導いた張本人からの頼みである。
内容を理解出来てはいないが、今までの話の流れからすると、今後の行動の指針となるものだろう。

790: 2014/08/04(月) 04:05:45.59 ID:ZvpkelKXo

むつみ「それを集めると、どうなるんですか?」

クォーツの要請を受けるにあたり、むつみは純粋な疑問をぶつけた。
目標が自らの理解を超えた存在であったとしても、それがもたらすものを少なからず知っておく必要はあるだろう。

それに対し、クォーツは『アストラルクォーツ』についての説明を続ける。


クォーツ『先にも話した通り、アストラルクォーツは大容量の情報記憶媒体なのだ』

クォーツ『この星で作り出すことが出来ない以上──何者が、何の目的で、どのような手段を用いたのかは分からんが、宇宙の何処かしらから運びこまれたものだろう』

クォーツ『そしてその中には、この宇宙に関するありとあらゆる情報が大量に記録されている可能性が高い』

むつみ「情報って……なんか、漠然としていますね」

クォーツ『そうだな……目当ての内容としては、勇者の記憶──』

クォーツ『ステージ衣装の情報であったり、あとは、私の求める情報も含まれているであろうことが考えられる』

ステージ衣装の情報──実際にカースと渡りあう為に重要なものであるが、それ以上にむつみの気を引いたのはその後の言葉だった。

むつみ「その、クォーツの求める情報って?」

クォーツ『……すなわち、"宇宙の法則"だ』

クォーツは静かに、呟くように語る。


クォーツ『私はこれまで、世界に安定をもたらすための手段を求め、気の遠くなるような時間をかけて宇宙の深淵を旅してきた』

クォーツ『その旅の最中、アストラルクォーツに出会ったのだ』

クォーツ『アストラルクォーツに内在するあらゆる情報は、その多くが私にとって有益なものだった』

クォーツ『故に、それを集める事が目的を達する早道だと考えるに至ったのだ』

むつみ「クォーツの目的……世界の安定……」


むつみの呟きを聞き取ったクォーツは、それに答えるように話を続ける。

クォーツ『確かに私は、世界に安定をもたらすために……むつみよ、お前に協力を願った』

クォーツ『だが、何もこの世に存在するカースの全てをお前に駆逐させようなどと、そのような事を考えている訳では無い』

むつみ「えっ?」

クォーツの発言を聞いたむつみは、思わず素っ頓狂な声を上げた。

むつみ「でも前は、私にカースをやっつけるよう言ってましたよね?」

しかし、クォーツは気にした素振りを見せず話を続ける。


クォーツ『実際のところ、この世の混沌を収める為の手段を、私は既に持ち合わせているのだ』

むつみ「確かに……私一人で世界中のカースをやっつけるなんて、出来ないです……けど」

むつみ「クォーツなら、それが出来るんですか?」

クォーツ『理論上はな……だが、その方策は未だ完全ではなくてな』

クォーツ『それを完成させるために、アストラルクォーツの情報が必要となるのだ』

むつみ「そういう事だったんですね」

世界を安定させるという最終目的に関しては、いずれクォーツが(詳細は不明だが)どうにかこうにかするということらしい。
むつみの目下の役割は、カースを初めとする混沌の原因を退治しつつ、クォーツの欲する宇宙鉱石を集めるということになる。

791: 2014/08/04(月) 04:06:47.92 ID:ZvpkelKXo

むつみ「ところで、そのなんとかいう石……どんな形をしているんですか?」

クォーツ『うむ、私を形作るこの水晶体とほぼ同じ物と考えていい』

むつみ「クォーツと……? あれ、ちょっと待って……」

クォーツに目標となる石の外見的特徴を尋ね、その答えを聞かされたむつみは眉を八の字に寄せ、思案を巡らせる。


むつみ「(アストラルクォーツって石は、クォーツそのものとほとんど同じ見た目だって事だけど)」

むつみ「(そういえば、クォーツと初めて会った時は、今みたいに光ってなかったよね)」

むつみは首から下げた輝く石を観察しつつ、自らの記憶の中のその姿を比べる。

むつみ「(あの時の、光ってないクォーツと同じような石……透明の、水晶みたいな石……)」

むつみ「(何処かで……見かけた気が……)」

むつみは、クォーツと出会う以前の記憶を探っていた。
いつぞやの出来事かも定かではないが、むつみの人生の中で、かつてクォーツに酷似した石を見かけた事があるのだ。


むつみ「(そうだ!お父さんから渡された、あの石!)」

心当たりを突き止めたむつみの脳裏には、数年前の記憶が蘇っていた。


──────────────────────────────


「むつみ……むつみ!起きなさい」

ベッドで寝ていたむつみは、何者かに揺り動かされ、目を覚ました。
正確な時刻は定かではないが、寝入りばなの最後の記憶が遠い昔の様に感じられるため、深夜と呼ぶべき時間帯なのは確かだ。
そのような時間帯に突然誰かに起こされた経験など、今までに無かった。

むつみ「ん……うん?」

むつみは寝ぼけまなこをこすりながら周囲を見渡す。

部屋の照明は付いておらず、開け放たれた部屋の扉の向こうから差し込む僅かな明かりが唯一の光源だ。
起き抜けで、さらに部屋自体暗いため、傍らに誰か立っているのは確かだがその姿は判然としない。

むつみ「……おとうさん? どうしたの?」

だが、むつみにはその人物──頭に被った大仰なカウボーイハットのシルエットが特徴的なその男性が自らの父親だと、瞬時に分かるのだった。


父「むつみ、聞いてくれ」

父「父さんはこれから急いで仕事に出なければならない」

父「そこでだ、これを預かって欲しい」

父が握っていた手のひらをむつみの眼前で開く。
そこには、一欠片のガラス玉めいた物体があった。
暗くてそれが何なのか、形状なども含めはっきりとは分からない。

むつみ「これ……なあに?」

父「とっても大事な物なんだ」

父「いいか、これは誰にも渡してはいけないよ、いいね」

父はそのガラス玉をむつみの手に握らせる。
そして、どういった意図があるのかは不明だが、それを大切に保管しておくよう念を押した。

792: 2014/08/04(月) 04:07:45.60 ID:ZvpkelKXo

むつみ「……また、出かけちゃうの?」

むつみはガラス玉を握ったまま、訝し気な目線で父を見上げ、口を開く。
その声色には、何処か諦めにも似た感情が篭っていた。

「ああ……今度は長くなりそうなんだ」

それを受けた父は、ばつが悪そうに目を伏せ答える。

むつみ「そっか……」

半ば分かっていた答えとはいえ、父の言葉を聞いたむつみの顔には、寂寞の色が浮かぶ。

むつみの年の頃は、未だ初等教育を受け始める以前といったところだ。
そのような幼子が、なるべく親と共に時間を過ごしたいと考えるのは当然の事だろう。

だが、むつみは父の仕事──『超古代考古学者』という職業がどういったものなのか、幼いながらに理解していた。
あるいは、物心ついた頃から父は家を空けがちだった為か、それに慣れてしまったのかも知れない。

ただ一言

むつみ「なるべく……はやく帰ってきてね」

と、遠慮がちに、ささやかな要望をつたえるのだった。


父「……わかったよ」

娘の健気さを前に、父は泣き笑いのような表情でその頭を撫でる。

父「むつみも、母さんの言うことをよく聞いて、良い子にしているんだぞ」

しばらくそうしていた父だったが、やがてその手を止めると意を決したように立ち上がる。
そして、部屋の窓を開け放つと、軽い身のこなしで夜の闇へと飛び出していった。

むつみ「(なんでおとうさんって、いつも窓から出ていくんだろう……?)」


──────────────────────────────


むつみは思い出したかのように目の前の勉強机の引き出しを勢いよく開けると、中から小さな巾着袋を取り出した。

むつみ「あの、これってもしかして、そのアストラルクォーツっていう石ですか?」

その巾着の口を開き、逆さにして何度か振るうと、中から直径1センチに満たない透明の水晶のような固形物が転がり出た。

クォーツ『これは……!!』

クォーツ『まさしく、アストラルクォーツ!』

その姿を認めたクォーツは驚愕を隠し切れない様子だ。


クォーツ『……だが、アクティベートされていないようだな』

クォーツ『むつみよ、私をそれに近づけてくれ』

むつみ「はい」

むつみは首の後ろのペンダントの留め金を外し、クォーツを無色透明の水晶のような物体に近づける
すると、突如としてその物体は眩い光を放ち、その光は勢い良くクォーツへと吸い込まれていった。

クォーツ『ほう……これは……ふむ……ふむふむ……なるほど』

むつみ「(なんか納得してる……)」

793: 2014/08/04(月) 04:09:35.35 ID:ZvpkelKXo

クォーツ『むつみよ、これは一体何処で……?』

むつみが持ち出したアストラルクォーツの欠片の情報を読み取り終えたクォーツが問いかける。

むつみ「えっと……私の、お父さんから渡されたんです……保管しておくようにって」

それを受けたむつみは、"仕事"へ出たまま未だ帰らぬ父の姿を思い起こし、ぽつぽつと言葉を紡ぐ。

クォーツ『なるほど……そうか……』

むつみのその憫然たる表情を読み取ったクォーツは深入りはせず、無難な相槌の後に話題を切り替えた。


クォーツ『今調べて分かったことだが、このアストラルクォーツの欠片にも、ステージ衣装の情報が含まれているようだ』

むつみ「えっ? それはなんというか、ラッキーですね」

クォーツ『(事実、僥倖だ……早速欠片の一つが見つかるとは、幸先が良い)』


クォーツ『そうだな……試しに、変身してみるといい』

クォーツの言葉の後に、むつみの頭の中にまたもや"衣装"のイメージが流れ込んでくる。

むつみ「(よしっ……衣装チェンジ!)」

イメージを固め念じると、その姿は眩い光に包まれた。
一瞬の後、光が晴れ視界が戻ったむつみは、変身後の自らの姿を確認する。


むつみ「(これは……)」

サンドベージュのサファリハットとサファリシャツを基調とし、首元に赤いスカーフのワンポイント。
いかにも冒険家然とした衣装だった。

むつみ「(私が、探検する時の服装に……近い?)」

むつみの自前の服に比べると、その衣装は細部に至るまで遥かに精巧に出来ている。

クォーツ『なるほど……このステージ衣装はむつみよ、お前の服が元になっているようだ』

だが、その元となった物はやはりむつみが冒険時に着ている服装に間違いないようだ。


むつみ「私の服が、ステージ衣装の元になった……ということは?」

クォーツ『うむ、どうやらお前には勇者としての素質があるらしい』

むつみ「えぇ!? そ、そんな……特に自覚無いですよ!?」

突然の出来事に色めき立つむつみだったが、

クォーツ『それはそうだ、お前はまだまだヒヨッコに過ぎん、他の勇者と呼ばれる者達とは比ぶべくも無い』

クォーツ『故に、このステージ衣装自体、まだ大した能力を持ってはいないようだ』

対するクォーツの反応はシビアなものだった。

むつみ「う……そうですか……」

クォーツの、ともすれば辛辣にも感じられる指摘を受けたむつみは、目に見えて落ち込む様子をみせる。


クォーツ『まあそう腐るんじゃない……"今は"まだ力を持たないという事だ、精進を重ねるのだ』

クォーツ『お前が勇者としての素質を伸ばすことが出来れば、この衣装にも相応の力が宿るだろう』

むつみ「はい……頑張ります……」

むつみはクォーツのフォロー(?)に力無く答えると、試しの変身を解くのだった。

794: 2014/08/04(月) 04:11:03.53 ID:ZvpkelKXo

クォーツ『ふむ……色々とあったが、とりあえず話を整理しよう』

クォーツは改まって話を切り出す。

クォーツ『まずは大目的として、アストラルクォーツを集めるのだ』

クォーツ『アストラルクォーツを追い求める事で、あるいはお前の父親の足跡を掴むことも出来るやも知れん』

むつみ「そっか、お父さんの最後のお仕事って、この石の研究をしてたんだよね……多分」

むつみ「……うまくいけば、お父さんが見つかるかも知れない……」

諸々の状況証拠からすれば父がアストラルクォーツの研究に携わっていた可能性は高く、
クォーツの言う通り、それを追っていく事で行方の知れぬ父の所在なり、現在の状況なりが分かるかも知れない。
思いがけずクォーツとむつみの利害が一致する形となった。


クォーツ『それと合わせて、勇者の意志を継ぐ者を探し、ステージ衣装を集める』

続いてクォーツは、副次的な目標を確認する。

クォーツ『カースをはじめとする、敵性存在に負けぬよう、力を付けるのだ』

すなわち、アストラルクォーツの捜索を有利に進めるための、むつみの戦力増強だ。


むつみ「……でも、その"勇者"って人は、何処に居るか分かるものなんですか?」

クォーツ『いいや、分からん』

むつみ「えぇ……分からないんですか……」

クォーツ曰く、ステージ衣装を所持しているとされる"勇者"を探し、
その衣装を授かることがむつみの戦力増強の手っ取り早い手段とのことではあるが、
しかし、その勇者の所在はクォーツでも分からないらしい。

クォーツ『分からんが、どういった場所へ赴けば出会えるか、予測を立てることは可能だ』

しかし、そのクォーツは事もなげに言い放つ。


クォーツ『そうだな……直近での狙い目は『京華学園』だな』

むつみ「京華学園……秋炎絢爛祭ですか……どうして?」

クォーツ『うむ、人が多く集まる場所であれば、"勇者"に遭遇出来る確率も高まるというものだ』

むつみ「それって……根拠が薄くないですか……?」

むつみはクォーツへと懐疑的な視線を向ける。

クォーツ『まあそう言ってくれるな』


クォーツ『聞くところによると、秋炎絢爛祭には多種多様な人種が集まるとのことだ』

クォーツ『そういった場では、およそ一般の社会ではまみえる事の無い存在も出張ってくることがあろう』

クォーツ『つまり、勇者と呼ばれる連中も参加している可能性は十分に考えられる』

クォーツ『……そして、仮に収穫が無かったとしても、単に祭りを楽しめばいい……違うか?』

クォーツの弁解じみた説明を聞いたむつみは力強く頷いた。

むつみ「……分かりました、それじゃ差し当たりの目的地は、京華学園の秋炎絢爛祭ということですね」

むつみは部屋の壁に掛けられたカレンダーを見やると、
秋炎絢爛祭の日程を確認し(あまりにも大規模なイベントの為、学園の近隣地域の市販カレンダーには日程が記載されている)出立の準備を始めるのだった。


むつみ「お小遣い、沢山持って行かなきゃ!」

クォーツ『(……存外楽しみにしているじゃないか)』


果たして、秋炎絢爛祭において、むつみとクォーツの前にはどのような冒険が待ち受けているのだろうか。

795: 2014/08/04(月) 04:14:56.42 ID:ZvpkelKXo

※バベルストーン/アストラルクォーツ

宇宙の何処かで生産されていた情報記憶媒体。
その保存容量は凄まじく、1ミリメートル四方のそれに約1ペタバイトのデータが保存できる。
地球においては『バベルストーン』の名で知られている。
ちなみに、クォーツ自体を構成している物質でもある(あくまでハード面)。

クォーツの目的はアストラルクォーツと、その中に記録されている情報を集めることらしい。


※ステージ衣装への変身メカニズム

基本的にはクォーツがアストラルクォーツ内部の情報を読み取る事でステージ衣装(のレプリカ)を具現化出来るようになるが、
情報が断片化されていたりデータ保護等のロックがかかっていたりで出来ない場合もある。
その際はステージ衣装の持ち主である"勇者"に所縁のある者との接触を経て"フラグ"を立てる事で解放することが可能。
大和亜季からセクシーカモフラージュを受け取った(?)時みたいな感じ。


父が幼むつみに渡した石は父が独自に見つけてきた物で、今回研究施設から盗まれた石とは無関係

796: 2014/08/04(月) 04:17:26.88 ID:ZvpkelKXo
終わりです
メタネタスレからネタ頂戴しました

・イ◯ディージョー◯ズとかア◯チャーテッドっぽい流れにしてみたかった
・説得力やらなんやらを求めるあまり説明だらけで冗長になってしまった
・反省はしている

むつみちゃんのセクシーカモフラージュとか鼻血噴出レベル
もっと着せ替えさせよう

797: 2014/08/04(月) 10:37:34.87 ID:/uqrO0nT0
乙です
研究所から盗まれたバベルストーンも気になる所
やっぱりステージ衣装はおいしい設定、もっと衣装集めていこう



【次回に続く・・・】




引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」 part10