816: ◆zvY2y1UzWw 2014/08/15(金) 01:49:42.87 ID:Wlg5+QCQ0


モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」シリーズです


前回はコチラ


 学園祭時系列で投下でごぜーます

817: 2014/08/15(金) 01:52:10.65 ID:Wlg5+QCQ0
ユズ「…」

ぷちユズ「みぃ?」

両腕で一匹のぷちユズを抱きかかえながら、建物の陰で雨に濡れながらユズは困っていた。

『デアエデアエ!デデデアエ!!』

『ゾイゾイゾーイ!!』

ユズ「ぷち、お願い」

ぷちユズ「みみみっ!」「みー!!」

『グオオオオオオ!?』

『チッコイノニマケタ!!』

黒いコートも出さず、鎌も杖もバッヂにしたまま、抱きかかえていない方の二匹のぷちユズに近づいてきたカースを倒させている姿は少々異様であった。

膨大な魔力を感じたと思ったら学園の裏の山に巨大なクレーターが発生していたのだ。大罪の悪魔の仕業かと思いきや、感じたものはまるで別の力だった。

ユズ「強欲の力を感じたけどすぐに消えた…多分だけど、身を守る為とかだったのかな。それもすぐに見失っちゃったし…」

強力な力を感じて飛び出したはいいものの、どうすればいいのか全く思いつかないという状況だ。

ユズ「姫様達はクラスメイトと教習棟に避難中だと思うし…建物の中は安全なんだよね、ぷち?」

ぷちユズ「みみぃ!」

ユズ「…数匹見かけた?…だ、大丈夫…だよね?…蘭子様も一緒だし、戦えるから大丈夫かな…」

ユズ「それに…傲慢の力を感じるね。そして昨日みたいに雨が原因じゃないなら、悪魔か何かが生み出したとしか思えないカースの量…アザエルが近くにいるのかも」

初代大罪の悪魔の存在など知らないユズは、心当たりは一人しかいなかった。そしてその予感は間違いなく的中している。
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それは、なんでもないようなとある日のこと。
その日、とある遺跡から謎の石が発掘されました。
時を同じくしてはるか昔に封印された邪悪なる意思が解放されてしまいました。

~中略~

「アイドルマスターシンデレラガールズ」を元ネタにしたシェアワールドです。
・ざっくり言えば『超能力使えたり人間じゃなかったりしたら』の参加型スレ。



818: 2014/08/15(金) 01:55:24.95 ID:Wlg5+QCQ0
ユズ「…でも、空から感じるのは七つの罪の気配じゃないんだよねー。つまり、これは少なくとも犯人は二人いるって事で…」

ユズ「強欲の悪魔もいたっぽけど…もう力を使う事は無い気がするね、身を隠してるっぽいもん」

アイドルヒーローのライブは中止になった。詳しい情報は伝わっていないが、あのクレーターの犯人の目的を阻止するのが目的なのだろう。

ならばアザエルの存在を把握していない可能性が非常に高い。だからここはアザエルの存在を予測しているユズが少しは動くべきなのだろうが…

アザエルは一度も攻撃を与えることは愚か、魔力を逆に操作されるという屈辱を与えられた、あまりにも強い堕天使だ。

ユズはまだ彼女に勝つ方法を見出していない。だから今向かうのは無謀だ。

かといってあの空の敵とアイドルヒーロー達と共に戦う…のも、ユズの精神的に無理だった。

目立つのは嫌だし、何より自分のような者が今いきなりアイドルヒーローと共闘すると言っても拒否される気がする。

何をすればいいのか分からない。避難している人たちとずっと一緒にいるのすら、ユズの潜在意識が拒否していた。

大罪の悪魔狩りすら満足に進んでいない。既に二人倒している時点で大金星ではあるものの、進んでいないというのは結構つらい。

憤怒の街で黒幕から奪われたサタンの魔力を全てではないが側近のマナミが取り戻し、サタンの呪いに対抗する力もある程度戻ってきている。

だからこそ、今こそユズはアザエルすら超えなくてはいけないという使命感に燃えているのだが…一種のスランプに陥っているのだった。

819: 2014/08/15(金) 01:56:52.78 ID:Wlg5+QCQ0
―ガサガサッ

ユズ「ん?」

そこに何か妙な気配を感じ、思わずそちらを見た。

それは木の上から降りてきた一匹の白い鳥だった。木の下で雨宿りをしているように見える。

ぷちユズ「…みぃ~?」

ユズ「あ、ちょっと…もう」

興味を持ったのか、ユズの腕からぷちユズが飛び出し、その白い鳥に近づく。

ぷちユズ「みみぃ♪」

白い鳥を撫でようと、ぷちユズが手を伸ばす。

だが触れる直前にその白い鳥は逃げるように飛んでしまい、建物の角を曲がって見えなくなってしまった。

ぷちユズ「みぃ…みー!」

そしてぷちユズもそれを追いかけて飛び出してしまった。

820: 2014/08/15(金) 01:58:13.68 ID:Wlg5+QCQ0
ユズ「コラ!どこにいくのー!?」

ぷちユズ「みみー?」「みぃ?」

ユズ「二人もついてきて!」

ぷちユズ「「みー!」」

あまり遠くに行かないように、ユズは慌てて飛び出した白い鎌のぷちユズを追いかけた。

ユズ「ぷちー!遠くにいっちゃ……」

しかし、ユズが建物の角を曲がった瞬間、言葉が思わず途切れた。

その視界に映ったのは異様な光景だった。

…白い鳥の体がパックリと裂けていたのだ。

そしてそこから触手や牙が飛び出しており、ぷちユズは触手に捕えられ今にも食べられそうになっていたのだ。

821: 2014/08/15(金) 02:00:49.84 ID:Wlg5+QCQ0
ぷちユズ「み!みぃぃぃ~!!」

ユズ「ぷ、ぷち!?今助けるから…!」

ユズはバッヂを杖の姿に戻し黒いコートを纏い、その白い怪物に杖を向けた。

「うるさいな…」

ユズ「しゃ、しゃべった!?」

その白い怪物…白兎が喋ったことに思わずユズは驚いてしまう。魔界にもこんな生き物はいなかったし、それにこの白い怪物からはカースの気配を感じる。

正直に言って、カースの気配を持つこの白い怪物がまさか意思疎通が可能だとは思ってなかったのだ。

白兎「黙って聞いておけば…助けるだって?何故だ、アタシがコイツを喰らって何が悪い。ウザいよ」

ユズ「う、うるさい!ぷちを離して!」

ぷちユズ「みみみー!」

ユズの背後から緑の鎌のぷちユズが飛び出して鎌鼬を放った。

触手を切り裂きぷちユズを開放するも、再生した触手に再び掴まってしまう。

ぷちユズ「みぃぃ!?」

白兎「そっちもウザいよ」

さらに緑の鎌のぷちユズに触手が突き刺る。そしてぷちユズの核であるクリスタルが砕け、消滅する。

ぷちユズ「み…?」

ユズ「ぷちっ!?」

魔力がクリスタルから溢れると同時に自動的に先程の様な鎌鼬が再び白兎に襲い掛かるが、今度は甲羅の様なものを泥で構成して防いでしまう。

822: 2014/08/15(金) 02:04:02.62 ID:Wlg5+QCQ0
ユズ「…黒、一回塔に帰って」

ぷちユズ「みぃー」

ユズはまだ生きている黒い鎌のぷちユズを、一度塔へと帰らせる。白い鎌のぷちユズはまだ逃げられない。

白兎「なるほど。このちっこいのは魔法で作った生物っぽいな…ちょっと傷つけても血が出ないのはそういう訳ね」

ユズ「…何者なの、キミ?…カース?それとも生き物なの?敵なら容赦しないよ」

魂から感じられるのは、目の前の存在が人間ではないという事。ならば戦っても問題はない。

白兎「この程度の事で驚いたのか、魔法使い。動揺が隠せてないぞ?手が震えてるじゃないか」

ユズ「…そっちこそ、さっきから偉そうだね。カースとその力は関連しているっぽいけど、どうなのさ」

白兎「偉そう?…お前が生まれつきこっちより格下だというだけの話だ。そしてこの力も永遠に理解できないだろうさ」

ユズ「そっちこそ、ただの魔法使いだなんて思ってたら痛い目に合うよ」

白兎「ふぅん…じゃあ、やってみろよ」

ユズ「…その高慢な態度、壊してあげるよっ!」

杖を持っていない方の手に缶バッヂを取り、鎌の形へと戻す。

同時に杖に魔力で構成した鎌の刃を付与し、氏神の鎌と魔力の鎌の二刀流の形をとった。

823: 2014/08/15(金) 02:06:25.70 ID:Wlg5+QCQ0
白兎「…ああ、思いだした。『氏神』って呼ばれた魔法使いの…柚、だっけ。なるほどね、指名手配されながら逃げ延びることが出来たあの…!」

ユズ「…うるさいな!」

ユズが二つの鎌を器用に振り回すが、白兎は赤い瞳に真っ白な体の二足歩行の人のような姿に変わりぷちユズを掴んだまま華麗なステップで踊るように躱していく。

白兎「ダメだなぁ、さっきより動揺してるじゃないか。それじゃあこのちっこいのがアタシに食われるのが先かもなぁ?」

ぷちユズ「みぃぃぃぃぃ!?」

白兎「キシャシャシャ!魔法生物の癖に食われることにビビってやがる!」

白兎は完全にこの状況を楽しんでいる。ユズを煽り、動揺させ、その顔を見るだけで楽しい。

ぷちユズを喰らう事も考えたが、それはこの人質の役割を終わらせてから…そう考えてほくそ笑む。

ユズの振りおろした魔法の刃が白兎の躱した背後にあった木に突き刺さる。

刺さった瞬間に魔法の刃を一旦消すと、ユズは杖を真横の白兎に向けた。

ユズ『大いなる我が力を用いて、星空・宇宙の理を読み解き、星々の輝きよ我が敵を貫け!スターライトスピアー!』

星の力で構成された光の矢が、白兎に放たれる。

824: 2014/08/15(金) 02:12:12.78 ID:Wlg5+QCQ0
白兎「ダメだね」

だが白兎は変形して体に穴を開けて矢を回避すると、思い切りユズに駆け寄る。

ユズ「しまっ…!」

白兎「はい、残念でした♪」

そのまま懐に潜り込み、ぷちユズでユズの腹部を思い切り殴った。

ぷちユズ「みー!?」

ユズ「っ!」

殴られたユズはそのまま地面に倒れ、そこを白兎は追撃とばかりに蹴った。

白兎「ほんっと、分かりやすかったよ!バーカ!」

ユズ「あぐっ…うぅ…」

水たまりのせいで泥まみれになってしまった。殴られ蹴られ。とにかく体が痛い。

白兎「…こんな雨の中、泥水に突っ込んで…惨めだなぁ」

ユズ「ゴホッ、ゲホッ、ううう…」

ぷちユズ「みぃぃ…」

杖と鎌を支えに立ち上がり、口の中の泥を咳をしながら吐いた。

白兎「さっきの攻撃でまた思いだした。目の前でお前を見たことあったなぁ…あ、まだ戦うんだ…キシャシャシャ、バカめ」

触手で捕えたぷちユズをぶら下げ、ユズに見せつけるようにニヤニヤ笑う。

825: 2014/08/15(金) 02:13:40.47 ID:Wlg5+QCQ0
白兎「このちっこいの、結構丈夫だな…あーあ、目を回して気絶してる。さすがに反動はあったのか」

ユズ「…」

挑発だ。分かり易いくらいに、白兎はユズを煽っている。

それを自分に言い聞かせ、ユズは自身に冷静な判断を取り戻させた。

ユズ(…強い…ううん、今のはアタシの焦りも酷かった…ぷちが食べられるかもしれないっていうのと、アイツにあの時の事を思い出させられたから…)

ユズ(落ち着かなきゃ、落ち着かなきゃ…コイツも越えなきゃ、アザエルも越えられない…!)

ユズ(最悪、ぷちには自壊って手段もある…でも、あの子は回復…自壊してもアイツを回復させちゃうかも…どう動けば…ううん、やれることは…ある!)

ユズは白兎から距離を取り、再び同じ呪文を唱える。

ユズ『大いなる我が力を用いて、星空・宇宙の理を読み解き、星々の輝きよ我が敵を貫け!スターライトスピアー!』

白兎「またそれか!もっとでかい炎の魔術とか使えるんじゃなかったか?」

白兎が再び矢が当たる直前に穴を開けて変形して矢を回避する。

ユズ「…ううん、これでいいんだ!『風よ!』」

魔法の風に乗って急加速しながら、体に穴を開けたままの白兎に二つの鎌を振り下ろす。

ユズ「同じ攻撃なら、同じ避け方をする可能性がある…予想通りだったね!!」

白兎「っと!?」

振り下ろされた鎌を白兎は再び変形して固い腕で受け止めるが、さすがに少し驚いたようだ。

826: 2014/08/15(金) 02:14:51.89 ID:Wlg5+QCQ0
ユズ「まだまだっ!『水よ!』」

鎌の刃を付与している杖から水流の束が白兎の赤い瞳に向けて噴射され、思わず白兎は目をつぶる。

白兎「うぐっ…!」

そしてそれと同時にユズが鎌と杖をバッヂに戻し、素早く真後ろに回り込んでバッヂを元に戻す。

しかし、その気配は白兎がしっかり察していた。白兎は真後ろに鋭い触手を這わせ、ユズの足を切り、さらに転ばせる。

ユズ「…!」

足の傷が痛む。だがユズは転びながらも鎌を投げた。

白兎はそれを躱すが、なんと回転する鎌がブーメランのように戻ってくる。

白兎「!…なんて動きするんだよ、この鎌…」

振り返って戻ってくる鎌も余裕で回避しようとした白兎の視界に映ったのは今にも鎌に当たりそうな半透明のカード、そしてパリンと…ガラスが割れるような音が聞こえた。

白兎「…は?」

827: 2014/08/15(金) 02:17:05.63 ID:Wlg5+QCQ0
黒い鎌のぷちユズが、再び現れた。ユズが直接召喚しないことで意表を突くことに成功したのだ。

だからユズは急いで命令を下す。

ユズ「…黒!!あいつの動きを!!」

ぷちユズ「みーみみ!」

現れた黒い鎌のぷちユズが現れ白兎の動きを封じ、そして消える。

白兎「なっ…バカなっ…!」

それはユズが生み出した特殊な召喚魔法だ。カードを生み出し、破壊と同時に召喚し、すぐに還す。

水で目を攻撃した時に、同時にセットしていたのだ。真後ろに回り込んだのもカードに意識を向けさせない為。

動きを魔法で封じられた白兎は接近する鎌を回避することはできない。

回転する鎌が白兎を真っ二つに切り裂き、上半身と下半身から血を吹きだしながら倒れた。

828: 2014/08/15(金) 02:20:56.58 ID:Wlg5+QCQ0
真っ赤な血にユズは思わず驚く。

ユズ「あ、あれ?カースは血なんてないのになんで血が…いや、そんな事より今はぷちを…!」

だが驚きよりも救出が先だ。気絶していたぷちユズをユズが血だまりから救出する。

ぷちユズ「………みっ!…みぃぃぃ~!!」

目を覚ましたぷちユズが、ユズに抱きつき、泣きながら傷を治すために回復させる。

ユズ「ゴメンね、怖かったよね…でももう勝手に一人になっちゃダメだからね?」

ぷちユズ「みみ、みみみぃ…!」

腕の中でぷちユズは首を激しく上下に振った。

ユズ「はぁ、アタシは泥まみれだし、ぷちも血まみれだし…ちょっと掃除したら塔に行って体洗おっか?」

ぷちユズ「みぃ!」

そうぷちユズが返事をした次の瞬間、足元の白い泥が血と共にうねりながら再び動き出す。

ユズ「うわぁっ!?」

足元をすくわれユズは転び、転んだユズに白い泥が覆いかぶさってきた。

829: 2014/08/15(金) 02:23:38.86 ID:Wlg5+QCQ0
ユズ「!?…やめっ、離せっ!離してっ!!」

ぷちユズ「みー!?みっみ!」

白兎「…はいはい、邪魔だから遠くでカースとでも遊んでな」

白い泥はどんどん大きくなってユズの動きを封じていく。ユズの腕の中で暴れるぷちユズは、遠くにぶん投げられてしまった。

ぷちユズ「みぃぃぃ…ぃぃぃ…ぃぃぃ!」

ぷちユズの中でも白い鎌…回復魔法のぷちユズは戦闘が苦手だ。カースと出会ってしまえばたちまちピンチになるだろう。

ユズ「ぷちーっ!?…うそ、なんで生きて…」

白兎「遊びは終わりだ…頃してやるよ、アタシを頃したんだから文句はないな?」

次の瞬間、電流がユズの体を駆け巡った。

ユズ「…っああああああ!?」

白兎「キシャシャシャシャシャシャ!!悲鳴は肯定と受け取ってやるよ!」

不機嫌がMAXに達した白兎の赤い瞳がユズを睨み付けていた。

そして、その姿は先ほどまでの『人間に近い不定形』ではなく、完全に人に似た姿。

その姿は…白い髪に白い肌、赤い瞳のユズだった。

830: 2014/08/15(金) 02:26:53.48 ID:Wlg5+QCQ0
押し倒された状態で、何度も何度も電流を流される。いくら人より丈夫で体力がある氏神のユズでも、意識が朦朧とし始める。

ユズ(…やだ、意識が…これ…じゃあ、まほうも…)

白兎「…ダメダメダメダメ、もっと苦しそうにしてみろよ。アタシに刃向ったことを泣きながら懺悔してみろよ…なぁ?」

ニヤニヤ笑う白兎によって足首から少しずつ上に登るように、鋭い爪で深い傷をつけられていく。どんどん血が流れ、目の前が真っ暗になりそうだ。

ユズ(誰か、だれか…たすけ、て…)

???「…懺悔は、別の場所…もっと相応しい場所でやるべきよ」

ユズ「こ、この声…まさか…」

その声が聞こえた瞬間、ユズは意識を無理やりたたき起こす。

白兎に大量の刃物が襲いかかり、白兎はそれをユズの上から飛び退いて回避する。

ユズに当たるかと思われたその刃物も、当たる直前にまるで幻のように消えてしまった。

白兎「ッチ、誰だ!」

???「私はキヨラ。その子の味方よ」

白兎が声の方向を見ると、メイド服のキヨラが両手に大量のメスを構えて立っていた。

ちなみにユズはうつ伏せのままで姿は見えていない。

ユズ「ほんとうに…キヨラさんだった…どうして?」

キヨラ「ユズちゃん、助けが遅くなってごめんなさいね。その質問は後で答えるわ。あとちょっと、我慢してね?」

ユズ「…わかり、ました」

そう返事をするとユズは力尽きて完全に地に伏した。

831: 2014/08/15(金) 02:30:20.40 ID:Wlg5+QCQ0
白兎「なんでだよ…アタシの敵なんだから、あのまま氏んでしまえばよかったのにさぁ…」

白いユズの姿の白兎は、怒りを隠す気はないようだ。

キヨラ「いけない子ね、いつか神様の罰が下されるわよ?」

白兎「…はぁ、神の罰?…バカかお前。子ども扱いするんじゃねぇよ。全ての人を見守っている『とってもやさしい神様』なんて…いないのに」

キヨラ「…そう、貴方はそう思うのね」

白兎は深い溜息をして、赤い瞳でキヨラを見た。可哀想なものを見るように。

それはキヨラも同じだった。白兎の言葉に、何かを感じたのだろうか。その視線は怒りだけではない感情を宿していた。

白兎「もういい…カルト信者は嫌いだ。顔も見たくないね。ストレスはソイツボコって発散したし。別の所に行かせてもらうよ」

キヨラ「そこまで言われて…逃がすと思っているの?」

白兎「逆に言ってやるよ、アタシを捕えられるとでも思っていたのか?って。出てこい救世兵」

骨、肉、羽…流れるように白い翼を背中に作った白兎は、手に4つの核を生み出して救世兵と呼ぶ兵士型カースを放ち、飛び去る。

白いユズの姿はたちまち白い鳥の姿になり、すぐに見えなくなってしまった。

832: 2014/08/15(金) 02:34:42.88 ID:Wlg5+QCQ0
キヨラ「これもカースね…」

左右から二人ずつ、救世兵がキヨラに剣を振り下ろす。だがキヨラはそれを二つの医療用鋸で受け止め、押し返してしまう。

キヨラ「鎧…面倒ねぇ…」

??「キヨラさん!こいつらの属性は正義!物理は無効!弱点は炎!…です」

キヨラ「物理無効で…炎が弱点?それは良い情報ね…」

バッグの中から、何かの声がキヨラに情報を伝える。

次の瞬間、救世兵だけが天聖気の炎に包まれていた。

??「え…?早すぎて見えなかった…」

キヨラ「炎が弱点なんでしょう?これが一番早かったのよ…あまり、簡単に使う物でもないけれどね」

キヨラはすぐにユズに駆け寄り、ボロボロになったその体を魔術で癒した。

キヨラ「…出て行ってしまったあの『お嬢様』を探していたら…まさかユズちゃんに会うなんてね。とにかく、助けられてよかったわ」

彼女は涼宮星花捜索隊長が飛び出した後、みくには中を探してもらいって自分は外へ探しに来ていたのだ。

キヨラがここに来たのは本当に偶然であり、キヨラは今その偶然に感謝した。

キヨラ(多分、体の動かし方から見て…あのお嬢様は腕に自信があるはず。そこまで心配しなくても大丈夫…よね)

気を失ったままのユズを背負い、キヨラは一旦エトランゼに帰ることを決める。

バッグの中のぬいぐるみが嫌がっている気がしたが、バッグを軽く振ったらリアクションが無くなったので問題ない。

833: 2014/08/15(金) 02:38:25.89 ID:Wlg5+QCQ0
キヨラ「…本当に、よく眠ってるわね。気絶とはいえ、目を覚ましてもいいはずよ?」

返事は無い。落ち着いたような寝息だけが背中から聞こえる。

正直言えば背負うのが楽な身長差ではないのだが、そこは仕方ない。

??「…ねぇ、どうしてこんなに眠っているの?…もっと強いはずじゃない、私達を倒したのよ?」

??「疲労状態だからじゃないの?」

キヨラ「…疲労、いえ…心労ね。体よりも心が弱っているみたい。…ベルフェゴールちゃん、後であの白いモノの説明を聞くからよろしくね」

ベルフェゴール「…はーい。もう情報は手に入れたから整理しておきます…」

中のぬいぐるみに命令をして、チャックをしたバッグに防音の魔法をかける。

いつのまにか氏神の黒コートの姿から人間の時のパーカーになったユズは、キヨラに完全に体重を預けている。

キヨラ(…最初から調子が良すぎたのが、逆に負担になっているのかしら。それとも、誰かに負けたことがあったのかも…)

雨の中、キヨラはユズを背負って店へ向かう。

キヨラ(誰かの為にもっと強くなりたい。そう願うのはとても素敵な事よ…でも、体を壊したら元も子もないの)

キヨラ(サタン様の指示が間違っていると言う訳ではないわ…人に憑依した七罪の悪魔を狩るには氏神という種族…ユズちゃんが必要)

キヨラ(目立つわけにはいかない任務、単独でもおかしくはない。でも…狂ったのよね『氏神事件』で…いろいろと有名になっちゃって)

キヨラ「もう既に二人…貴方は頑張ったわ、ユズちゃん。だから、少しだけ休みましょう…サタン様の体調も良くなったのだし…ね?」

返事は無い。当たり前だ、ユズは気を失っているのだから。

キヨラ「…体調が万全になったら、私も少し手伝ってあげるからね」

キヨラ(…店のスペースを借りて寝かせるのはキツイかしら…目が覚めないままなら、保健室に行きましょう)

834: 2014/08/15(金) 02:41:37.34 ID:Wlg5+QCQ0
――


教習棟の廊下に、仁加と加蓮は避難してきていた。

殆どの人は教室に避難しているらしく、二人は人気のない廊下で雨で濡れた体を拭いていた。

仁加「…むぅ」

加蓮「仕方ないよ、あんなすごいことが起きたらアイドルヒーローはみんなを守らなきゃいけないでしょ?」

仁加「わかるけど…んー!雨も降っちゃうしカースは出るしリサお姉ちゃんのライブ見れなかったし!なんなのなの!」

『ウルセェ!』

仁加「?」

仁加が苛立ちを吐き出したその時、背後からカースが飛びかかってきた。

とても小さく、地を這うようにしていたため、気付くのが遅れた。

加蓮「仁加ちゃんっ!」

『ガボボボ!?』

仁加「うわっ!びっくりした…」

仁加に襲い掛かったカースは、加蓮の槍によって貫かれ消えた。

加蓮「…建物の中にもカースがいるし、やっぱりただ事じゃないみたいだね…教室とかに避難してる人たちは大丈夫かな?」

教室にカースが入ってしまえば無力な人が多い教室では大変なことになってしまうだろう。

実際は扉に細工がされてあるため大丈夫なのだが、やはり心配してしまう。

835: 2014/08/15(金) 02:44:12.79 ID:Wlg5+QCQ0
仁加「あれれ?…ねぇねぇお姉ちゃん、玄関はもうカースが来ないように守ってる人がいたの。全部そうでしょ?」

加蓮「多分そうだと思うけど…あれ?じゃあ今のカースはどこから?…まさか守ってる人がやられた…ってわけじゃないよね?」

仁加「わかんない…窓とかから入ってきたのかな?」

加蓮「うーん…でも仁加ちゃん、この窓…隙間が殆ど無いみたいだよ」

仁加「ほんと?…あ、ほんとだ、アタシでもこれじゃあ通れないかも。カースも多分同じだよ」

仁加が髪の毛を泥のようにして窓の隙間を探しても、少しも通せる気がしない。

加蓮「…中から外にカースを産み出しているからって考えても、それにしては数が少ない気もするし…ちょっと変だね?」

仁加「うん。ちょっと変なの」

加蓮「どういう事なんだろうね…」

836: 2014/08/15(金) 02:48:14.36 ID:Wlg5+QCQ0
『ロォォォリィィィィィ!!』『ジェェェケェェェッッ!』

色々と考える二人の前に、二体のカースが現れる。

加蓮「また来た!ど、どこから!?」

仁加「とりあえず戦わなきゃ!」

黒兎(奈緒が来てるけど…この状況じゃ仁加と話ス事も難しいカな、狂信のカースを産み出すことも難シそうだ…黙るしかないカ)

黒兎(…さっきノ攻撃で山のがすごく減ったンだよなぁ、生き残りもいるみタいだから後デこっそり仁加から離れて情報収集しますかネ)

黒兎(まテよ、このカースがどこから入ってきてるか分かれバうちの子達の役に立つナ?…もう少シ様子を見るか…)

黒兎は仁加のポシェットの中で適当に思考する。

加蓮は槍を構え、仁加は髪を触手のようにうねらせ、戦闘態勢に入った。

――

837: 2014/08/15(金) 02:51:19.05 ID:Wlg5+QCQ0
見た目より少し大きいキヨラのバッグの中、ベルフェゴールはゲーム画面を見ていた。



白兎の情報は、確かにベルフェゴールが拾っていた。紗南の時のように故障することも無く、画面には情報が映る…はずだった。

ベルフェゴール「…うーん、なんじゃこりゃ…バグってる?」

情報のところどころの文字が赤いバグのようなものによって隠されてしまっていたのだ。

怠惰の人形師が奈緒を調べた時のように強制中断までは起こさないものの、その身はやはり調べることが難しいらしい。

ルシファー「あら?貴方の能力で調べきれなかったってこと?」

ベルフェゴール「こんな事、滅多にないんだけどね…相手があまりにも多くの情報を持ちすぎているか、それとも『そういう存在』だからなのか…」

ルシファー「そういう存在?どういうことぉ?」

ベルフェゴール「生まれつきのスキルとして【解析無効】持ちか…存在自体がバグかってところかなぁ。解析先がバグってたらそりゃ結果もバグるよ」

ルシファー「よく分からないけどぉ…もしかしたらその両方だったり?」

ベルフェゴール「…ありえるんだよねぇ…不明って描写されている所とバグの両方があるように見えるし…キヨラさんにありのままの情報を伝えるしかないかぁ」

いろいろ不明な点が多すぎる。だが、つまり『そういう存在』ということが分かればそれもやがて役に立つだろう。

ベルフェゴールは怒られないように情報を整理し始めた。


838: 2014/08/15(金) 02:54:33.88 ID:Wlg5+QCQ0
― ―

≪Information≫(バグが発生した部分は「*」で表記する)
名前・****(*称・白兎)
年齢・不明
性別・♀(変化可能)
種族・**生命*
属性・正*
能力・*義の**スの使*、**、電*化、*氏
備考・**の崩**た**の*つであり、自覚は無いが***よって選**想を***け**た。
****を忘れ、**が***変*て統*す**であると疑う事**く確*して*る。
本来は封じ***記*の一*であったが、そ**憶が*つの**と変**、**から離***たことによ**体の一つとして零れ落ちた。
非常に傲**あるが、同時***に子**よう**粋。戦***それほ**くはない。
世界**乱させる存在であ*、その目的は『**********』。

― ―

839: 2014/08/15(金) 02:57:43.62 ID:Wlg5+QCQ0
情報
・白兎がどこかに飛び立ちました。帰宅するのか誰かを襲うのか…
・隊長を探しに行っていたキヨラさんですが、ユズの保護を優先しました。
・ベルフェゴールが白兎のバグった情報を獲得しました。
・白い鎌(回復魔法)のぷちユズが敷地内のどこかに投げ飛ばされました。
・ナニカと加蓮が教習棟に避難しました。屋内にカースが湧いている事に気付いています。

840: 2014/08/15(金) 02:59:06.30 ID:Wlg5+QCQ0
以上です。
久々に書けた…

Q・戦闘すると白兎がほぼ毎回血をまき散らしてるのはなんで?
A・カウンタータイプのバトルスタイルだからさ…(震え声)

841: 2014/08/15(金) 13:35:02.71 ID:XjK1qNUrO
乙ー

ユズちゃん危機一髪
白兎はやっぱり強いなー

いったい屋内のカースはどこから来てるのやら



【次回に続く・・・】




引用: モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」 part10