1:◆E9ISW1p5PY 2011/03/21(月) 21:54:30.19 ID:ttCbVaun0
モンスターハンターの創作小説です
今迄は2chで投稿していましたが、移動してきました
カプコン モンスターハンター カプコンフィギュアビルダー 本体 クリエイターズモデル 雷狼竜 ジンオウガ 復刻版 約H180×W220×D120mm
イャンクック 「旧沼地で人間を拾ったんだが」 シリーズ

イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第一章
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第二章
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第三章
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第四章
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第五章
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第六章
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」最終章

イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第2部【その1】
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第2部【その2】
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第2部【その3】
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」第2部【最終話】


イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」外伝~砦ドラゴンと少女~【その1】
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」外伝~砦ドラゴンと少女~【その2】

イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」外伝~砦ドラゴンと少女~【その3】
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」外伝~砦ドラゴンと少女~【その4】
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」外伝~砦ドラゴンと少女~【その5】
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」外伝~砦ドラゴンと少女~【その6】
イャンクック「旧沼地で人間を拾ったんだが」外伝~砦ドラゴンと少女~【最終話】

ジンオウガ 「ほう……未来を見通せるお守りか……」第1話.~縄張りに侵入するべからず~
ジンオウガ 「ほう……未来を見通せるお守りか……」第2話.~轟竜迎撃戦~
ジンオウガ 「ほう……未来を見通せるお守りか……」第3話.戦慄の進軍
ジンオウガ「ほう……未来を見通せるお守りか……」第4話.今そこにある恐怖

2: 2011/03/21(月) 22:03:07.75 ID:ttCbVaun0
第三部 あらすじ

第1話:縄張りに近づくべからず
 →人間とモンスターの間に不穏な空気が流れているユクモ村
  ハンターの、ハンマーと太刀は、そんな中、渓流に現れたジンオウガの討伐を頼まれます
  しかし、そのジンオウガには妻と子供がいました
  ジンオウガは、ハンターから分捕った、「未来を見通せるお守り」でドスジャギィの暴挙を予知しますが……

第2話:轟竜迎撃戦
 →妻と子供の安否を知るため、お守りをなくしてしまったジンオウガは、火山のウラガンキンの元に向かいます
  そこに、彼を知るティガレックス亜種が攻め込んできます
  火山で対峙するジンオウガとティガレックス亜種
  そこに、ハンマーとオトモアイルーの小鉄も参戦しますが……

第3話:戦慄の進軍
 →シュレイド地方の金リオレイア、銀リオレウスに拾われたジンオウガ妻と仔ジンオウガ
  仔ジンオウガは、「未来を見通せるお守り」を飲み込んでしまっていました
  一方、ティガレックス亜種との戦いで大怪我を負った小鉄の治療のために、ポッケ村に戻ることを提案するハンマー
  そんな彼らに、夜中、奇妙なハプルボッカが襲い掛かります

第4話:今そこにある恐怖
 →ジンオウガ妻の協力をすることになった少女達
  続々とシュレイド地方のモンスター達が集まってきます
  その最中、彼女達を、氏んだはずのティガレックス亜種、そしてデュラガウア達が襲います
  迎撃するモンスター達でしたが、ジンオウガ妻が犠牲になってしまい……

以下続刊です

3: 2011/03/21(月) 22:11:46.51 ID:ttCbVaun0
5.フラッシュフラッド

天国なんて存在するのか?
地獄なんて存在するのか?
氏んだらどうなってしまうのか
残された彼には、それは分からないことだった

4: 2011/03/21(月) 22:12:20.92 ID:ttCbVaun0
大雨の中、彼は立ち尽くしていた
突然の土砂降りの中、彼はただ呆然とそこに立ったまま、動けないでいた
目の前には、無残に切り裂かれた、見慣れた父と母の姿しかなかったから
だから、彼は動くことが出来なかった

5: 2011/03/21(月) 22:13:07.10 ID:ttCbVaun0
目の前のそれを、現実と認識することが出来なかったから
いつもの通り、家に帰って、いつもの通り、家族で食事をして、一緒に寝て
そしてまた、いつもの明日が来ると、彼はそう信じていたから
雨が血を流していくのにも気づかず、彼は漫然と立ち尽くしていた

その日、彼は生まれて初めて一人になった

6: 2011/03/21(月) 22:14:05.21 ID:ttCbVaun0
―樹海、イャンクックの巣<朝>―

弓 「ちょ……小鉄、何してるの……?」
小鉄 「あ、旦那さん。紹介するニャ。今日からオイラの義弟になった、迅雷ニャ」
迅雷 「グォウ」
ハンマー 「小鉄が……ジンオウガに乗っている……」
太刀 「油断も隙もない猫ね……いつの間に手なづけたのかしら……」

7: 2011/03/21(月) 22:15:23.33 ID:ttCbVaun0
小鉄 「手なづけたとか、不穏なことを言わないで欲しいニャ」
小鉄 「オイラは、身寄りのないこいつを引き取ってやったんだニャ」
小鉄 「二匹で黒いティガレックスに復讐することを誓った仲だニャ!!」
小鉄 「迅雷も何とか言うニャ」
迅雷 「ゴゥウ」
ハンマー 「その……大丈夫、なのか? 流石に一概には信じられんが……」

8: 2011/03/21(月) 22:22:37.92 ID:ttCbVaun0
太刀 「オトモアイルーのくせにジンオウガの義兄になったつもりなわけ?」
小鉄 「どこまでも失礼な奴らだニャ! オイラとこいつはもはや兄弟ニャ!」
小鉄 「てゆうか『くせに』って何だニャ! オトモ軽視の発言は聞き逃せんニャ!!」
弓 「…………」
迅雷 「グォウ」
少女 「本当のことだよ。この子の名前は迅雷。小鉄ちゃんの弟だって言ってる」

9: 2011/03/21(月) 22:23:03.15 ID:ttCbVaun0
ハンマー 「そうなのか……小鉄、どんな卑劣な手段を使って騙した?」
小鉄 「やかましいニャ! どうして話をそういう方向に持っていこうとするニャ!」
小鉄 「迅雷、あの馬鹿をかみ頃してしまえニャ!!」
迅雷 「ゴウ!」
ハンマー 「何だ? やる気か?(ガシャコン)」

10: 2011/03/21(月) 22:23:40.22 ID:ttCbVaun0
ティガレックス弟 「あの猫、どっか兄者に似てるな……」
ティガレックス兄 「グガァァアアアア!!! Zzz……!!!!」
少女 「ちょっと、やめて、小鉄ちゃん、迅雷。こんなところで喧嘩しないで」
迅雷 「兄貴の言うことは聞かなきゃ。お前は関係ないから見逃してやるぞ!」
小鉄 「ダッハッハだニャ! そうだニャ! オイラたちコンビに勝てる奴などいないニャ! 邪魔をするでないニャ!!」
テオ・テスカトル 「…………(ズン、ズン……)」

11: 2011/03/21(月) 22:24:12.17 ID:ttCbVaun0
小鉄 (ビクッ)
迅雷 (ビクッ)
テオ・テスカトル 「ふむ………………」
テオ・テスカトル 「まず構えがなっておらぬ。ここを、こうだ(グイ)」
迅雷 「な…………何だよ……?」
テオ・テスカトル 「口の利き方もなっていない。点数もつけられんな」

12: 2011/03/21(月) 22:24:49.82 ID:ttCbVaun0
小鉄 「な……何だニャ! 何か文句があるのかニャ!?」
ナナ・テスカトリ 「まぁまぁ、小鉄さんとやら。少しは朝ですから、静かにしたらいかがですか?(ズイッ)」
小鉄 (ビクビクゥッ!)
ナルガクルガ 「何だ? 喧嘩か?」
紫ガミザミ 「いや、馬鹿猫が、何故かジンオウガにまたがって阿呆言ってるだけじゃ」
小鉄 「そこの蟹! しっかり聞こえてるニャ!!」

13: 2011/03/21(月) 22:25:15.27 ID:ttCbVaun0
ナナ・テスカトリ 「戦うと言っても、戦い方も知らないでしょう? ジンオウガさん」
小鉄 「迅雷だニャ。こいつには由緒正しき英猫、小鉄がつけたカッコいい名前があるニャ」
ナナ・テスカトリ 「まぁ……モンスターに名前ですって……?」
テオ・テスカトル 「奇特なことだな」
イャンクック 「面白いことを考える。今まで、そんなことは考えたこともなかった」
少女 「そうだねぇ」
イャンガルルガ 「まぁ……いいんじゃねぇのか。本人が満足してればな……」

14: 2011/03/21(月) 22:26:32.51 ID:ttCbVaun0
迅雷 (ビクビク)
ナナ・テスカトリ 「私達を怖がるようでは、お父上とお母様の仇をとることなどできませんよ」
テオ・テスカトル 「左様。迅雷……とか言ったか? お前は、まだ戦う術も何もない。まずはそれを『勉強』しなければ」
迅雷 「勉強……?」
テオ・テスカトル 「ああ、そうだ」
小鉄 「迅雷にはオイラが全てを教えるニャ! 余計なことを吹き込むなニャ!!」

15: 2011/03/21(月) 22:27:08.04 ID:ttCbVaun0
ナルガクルガ 「本当だな……あの猫、ジンオウガに乗ったら急に態度が大きくなったぞ……」
ティガレックス弟 「猫のクセに中々面白いじゃねーか」
小鉄 「そこのナルガクルガにティガレックスも、陰口は全部聞こえてるニャ!!」
小鉄 「無敵の小鉄様に対して猫軽視の発言は許せんニャ!!」
イャンガルルガ 「増徴しすぎだぞお前……」

16: 2011/03/21(月) 22:27:38.86 ID:ttCbVaun0
ハンマー 「と……とりあえず、少女。小鉄は何を言っているんだ?」
少女 「よく分かんない……」
弓 「小鉄、降りてきなさい! 危ないわ!!」
小鉄 「旦那さん!! オイラはこいつを手に入れたから無敵になったニャ!!」
弓 「馬鹿なこといってないで!! それに、手に入れたって言っても、まだ子供のジンオウガじゃない!」
弓 「それ以上、このモンスターたちを刺激すると、私達もどうなるか分からないわ!!!!」

17: 2011/03/21(月) 22:28:59.15 ID:ttCbVaun0
小鉄 「………………」
テオ・テスカトル 「………………」
ナナ・テスカトリ 「………………」
ナルガクルガ 「………………」
ティガレックス兄 「グガアアアアアアアアア!!! Zzzzz!!!!!!」
ティガレックス弟 「………………」
紫ガミザミ 「………………」
イャンクック 「………………」
キリン 「………………」
イャンガルルガ 「………………」

18: 2011/03/21(月) 22:29:35.25 ID:ttCbVaun0
ハンマー 「………………」
小鉄 「お前なんでそっちサイドにいるニャ!?」
ハンマー 「まぁ……落ち着けよ小鉄。お前、ここで氏にたいのか?」
小鉄 「そんな古典的な脅しに屈する小鉄様だとでも思ってるのかニャ!(フンス)」
ハンマー 「俺はいいんだ。でもこのモンスター達を止めることは出来んぞ」
小鉄 「………………」

20: 2011/03/21(月) 22:33:25.92 ID:ttCbVaun0
>>19
はじめまして。これからよろしくお願いしますm(_ _)m
ずっとこのスタイルでやってきたので、ご了承ください……
なるべく見やすくなるよう、努力させていただきます

お時間がありましたら、サイトの方もご一読くださいね
お話が長いので、あらすじがカオスになってしまい申し訳ありません(汗)

21: 2011/03/21(月) 22:34:43.51 ID:ttCbVaun0
小鉄 「(よじよじ)と……とりあえず降りるニャ」
ハンマー 「それがいい」
迅雷 「あ……兄貴……?」
小鉄 「じ……迅雷。とりあえず今はこいつらの言うことを聞いておくニャ。隙を見て逃げ出せば済む話ニャ」
イャンガルルガ 「丸聞こえだぞ」

22: 2011/03/21(月) 22:35:49.14 ID:ttCbVaun0
テオ・テスカトル 「……迅雷、お前の母上のことは、守れなかった私達にも責任がある」
テオ・テスカトル 「それはすなわち、お前を私達の仲間に迎え入れたいということだ」
オテ・テスカトル 「お前の心を重視するが、どうだろうか。私達の元で勉強するつもりはないか?」
迅雷 「仲間……あんた達が?」
迅雷 「(キッ)母さんを助けられなかった奴らの仲間になんて、なりたくないね!!」
小鉄 「ようし、よく言ったニャ迅雷」

23: 2011/03/21(月) 22:36:21.66 ID:ttCbVaun0
ナナ・テスカトリ 「…………」
テオ・テスカトル 「ふむ……まぁ、お前の言うことも一理ある」
小鉄 「一理どころじゃないニャ。全理あるニャ」
小鉄 「こんだけ頭数がそろっていながら、何で迅雷の母ちゃんを助けられなかったニャ?」
小鉄 「それすなわち! お前達が弱いからだニャ!!」
俊足ガーグァ(物陰) (駄目だ……旦那、氏んだな…………)

24: 2011/03/21(月) 22:36:54.83 ID:ttCbVaun0
小鉄 「だから迅雷はオイラが育てるニャ。そもそもお前達は胡散臭くて信用できんニャ」
小鉄 「ティガレックスはいびきうるさいし」
ティガレックス弟 「あンだとォ?(ズイッ)」
小鉄 「ひぃ! 迅雷、雷を落とすニャ!!」
迅雷 「まだ落とし方が分からないよ!!」
ナルガクルガ 「よくもまぁ、命の恩人達に対してそこまで増徴できるものだ」
ナルガクルガ 「猫にしてはよくやる。もはや才能のひとつだな」

25: 2011/03/21(月) 22:37:26.84 ID:ttCbVaun0
小鉄 「そこのナルガクルガ! 猫軽視の発言は一切認めないニャ!!!」
キリン 「どうしたものでしょう……説得に応じる気配がありませんが……」
イャンガルルガ 「ケケ……好きにさせときゃいいんだよ」
キリン 「そんな……」
イャンガルルガ 「それで氏んだとしても、こいつらの本望なんだろ。だったらむざむざ氏なせてやれよ」
ティガレックス弟 「全くだぜ」
ナナ・テスカトリ 「コラ、貴方達。なんてことを言うんです」

26: 2011/03/21(月) 22:38:48.55 ID:ttCbVaun0
テオ・テスカトル 「分かった。ならば仲間になれとは言わぬ」
テオ・テスカトル 「しかし少なくとも、お前は戦い方の技術、生き抜く術くらいは学ばねばならぬ」
小鉄 「オイラを無視して話を進めるなニャ!!」
テオ・テスカトル 「猫、お前もだ」
小鉄 「ニャ!?」
テオ・テスカトル 「何かを育てるというのは、お前が思っている以上に大変なことだ」
テオ・テスカトル 「迅雷のためを思うならば、お前も色々と学ぶべきものがあるはずだ」

27: 2011/03/21(月) 22:40:57.10 ID:ttCbVaun0
小鉄 「ぬぬ……」
迅雷 「あ……兄貴、どうするの?」
小鉄 「完全に包囲されてるニャ。卑劣な奴らだニャ」
ティガレックス弟 「丸聞こえだぜ」
ハンマー 「いい加減にしろ小鉄(ガシッ)」
小鉄 「頭を掴むなニャ…………!!!」
ハンマー 「少女、炎帝は何と言っているんだ?」

28: 2011/03/21(月) 22:41:46.77 ID:ttCbVaun0
少女 「迅雷と小鉄ちゃんに、勉強の必要があるって。戦い方とか、生活の知恵とか……」
太刀 「勉強?」
少女 「そうだよ。テオ先生達は、私達の『学校』の先生なの」
弓 「プッ……学校? モンスターが……?」
弓 「この子、本当に頭大丈夫?」
少女 「………………でも……本当だもん…………」
ハンマー 「少女の言うことは本当だ。この炎帝は、他の若いモンスターを教育している」
小鉄 「頭を離せニャ……!!(ジタバタ)」

29: 2011/03/21(月) 22:44:01.47 ID:ttCbVaun0
ハンマー 「まずは小鉄。お前、炎帝にきちんとお礼を言ったのか?」
小鉄 「ニャ!? お礼?」
ハンマー 「お前に古龍の血を与えて、傷を治してくれたのはこのモンスターなんだぞ」
小鉄 「傷? そういえば全然痛くないニャ!」
ハンマー 「今まで全く気が付かなかったのか……」
ハンマー (というか、あの傷で動けていたのもおかしい……)
ハンマー (こいつが首から下げている、あのお守りのせいか?)
ハンマー (スキを見て奪い取った方がいいかもしれないな……)

30: 2011/03/21(月) 22:45:43.95 ID:ttCbVaun0
小鉄 「そうだったのかニャ……オイラは古龍の血でここまで回復したのかニャ……」
小鉄 「だ……だとしたらあんたさんがたは命の恩人、いや、恩モンスターだニャ……」
ティガレックス弟 「やっと分かったか」
イャンガルルガ 「てめーは何もしてねーだろうが」
小鉄 「だけど、それとこれとは別問題だニャ!」
ナナ・テスカトリ 「……そうですね」
小鉄 「オイラの命を救ってくれたことには感謝するニャ。でも、それならなんで迅雷の母ちゃんを助けられなかったニャ!?」
迅雷 「……! そうだ! そんなに強いなら……!!」

31: 2011/03/21(月) 22:46:42.33 ID:ttCbVaun0
テオ・テスカトル 「すまない。古龍の血も万能ではないのだ」
小鉄 「所詮その程度だニャ! 親を亡くした子供の気持ちが、お前たちにわかるのかニャ!!」
小鉄 「仲間になれとか、笑わせるニャ! 親だニャ!? 親が氏んだんだニャ!!」
小鉄 「ちょっとは迅雷の気持ちも考えるニャ!!」
迅雷 「あ……兄貴……」
テオ・テスカトル 「ふむ……」
テオ・テスカトル 「確かにお前の言うとおりだ、猫よ」

32: 2011/03/21(月) 22:47:18.22 ID:ttCbVaun0
テオ・テスカトル 「ならば、我々はこれからどうすれば良い?」
小鉄 「ニャ!?」
テオ・テスカトル 「お前の言うとおりだが、感情論で物事が運ぶほど、世界は甘くはないぞ」
テオ・テスカトル 「そこまで言うからには、お前にも解決策があるのだろう?」
テオ・テスカトル 「それとも、二匹で黒いティガレックス達……に挑んで、返り討ちに遭うつもりか?」
テオ・テスカトル 「冷静になれ。お前の火照った頭では、迅雷をさらに危険にさらすだけだ」

33: 2011/03/21(月) 22:48:00.39 ID:ttCbVaun0
小鉄 「ぐぬぬ……」
テオ・テスカトル 「今のところは我々と行動するのが一番良い。少なくとも……迅雷がきちんとした力を身に着けるまでな」
キリン 「雷の落とし方なら教えてあげますよ」
ティガレックス弟 (ビクッ)
ナナ・テスカトリ 「戦い方も教えてあげましょう」
迅雷 「雷……」
迅雷 「兄貴、僕、雷を落としてみたい」
迅雷 「もっと強くなりたいよ」

34: 2011/03/21(月) 22:48:41.32 ID:ttCbVaun0
小鉄 「迅雷……」
小鉄 「ええい仕方ないニャ。あんた達の世話になってやるニャ!!」
ナルガクルガ 「何故こいつはこんなに態度がでかいんだ?」
紫ガミザミ 「分からぬ。並々ならぬ猫じゃな……」
キリン 「ふふ……元気があって良いではないですか」
小鉄 「てゆうか頭を離すニャ!! いい加減にするニャ!!(ジタバタ)」
ハンマー 「話はついたのか?」

35: 2011/03/21(月) 22:50:40.86 ID:ttCbVaun0
小鉄 「こいつらの世話になることにしたニャ。偉大な小鉄様がここまで譲歩してやったんだから、頭を話すニャ!!」
少女 「ハンマーさん、離してあげないと頭がもげそうだよ」
弓 「小鉄を離して……!」
ハンマー 「ああ。まぁ話がついたんならいいだろう(パッ)」
小鉄 「(ドサッ)ギニャ!」
弓 「小鉄!」
迅雷 「グルルル!!!」
弓 「!!」

36: 2011/03/21(月) 22:52:00.15 ID:ttCbVaun0
小鉄 「やめるニャ迅雷! あの人間だけは襲っちゃいかんニャ」
少女 (他はいいんだ……)
迅雷 「でもハンターの格好をしてるよ!」
小鉄 「あの人間は、オイラのご主人様だニャ。お前も旦那さんと呼ぶニャ」
迅雷 「うん……分かった!」
弓 「小鉄……大丈夫? 近づいても……」

37: 2011/03/21(月) 22:53:02.15 ID:ttCbVaun0
小鉄 「大丈夫だニャ。旦那さん、迅雷は分かる子だニャ」
迅雷 「グル……」
弓 「本当……ジンオウガが私の手を舐めてる……」
ハンマー 「驚いたな。本当にてなづけたようだ」
太刀 「いずれ騙されてることに気付くわよ、あのジンオウガ」
小鉄 「迅雷、あの人間二匹は襲っていいニャ。隙あらばヤレニャ」

38: 2011/03/21(月) 22:55:20.92 ID:ttCbVaun0
少女 「………………っていうことを小鉄ちゃんは言ってるよ」
小鉄 「頭を離せニャ!!!(ジタバタ)」
太刀 「あんたには恩を感じる脳みそもないわけ?(ギギギ)」
小鉄 「ず……頭蓋骨が割れる…………ニャ…………」
弓 「小鉄をいじめないで!!」
太刀 「うるっさいわね! こういう傲慢なオトモには初期教育段階でヤキを入れとかなきゃいけないのよ!!」
太刀 「あんた、監督不行き届きなんじゃないの!?」
弓 「何ですって……!!!?」

39: 2011/03/21(月) 22:56:07.89 ID:ttCbVaun0
ハンマー 「おい太刀、やめろ。ジンオウガが動き出した」
太刀 「え? 何何?」
迅雷 「兄貴を離せ! 人間!!(バッ!!)」
太刀 「!!」
ハンマー 「(ガシッ)ふん……子供のジンオウガなら、武器を使うこともあるまい……!!」
迅雷 「(グググ)……な……何だよ、この人間……」
太刀 「ジンオウガを手で抑え込んでる……赤ん坊だけど……」

40: 2011/03/21(月) 22:57:13.91 ID:ttCbVaun0
テオ・テスカトル 「ほう……ナナ、あれは本当に人間か?」
ナナ・テスカトリ 「だと思いますが……」
小鉄 「拘束が緩んだニャ!!(バッ)」
太刀 「あ! コラ馬鹿猫!!」
小鉄 「(ゲシッゲシッ!!)迅雷を離すニャ!!!」
ハンマー 「仕掛けたのはお前だろ!!」
迅雷 「兄貴! 痛いよ!!!」
小鉄 「待ってるニャ迅雷! 今こいつにビッグブーメランを……」

41: 2011/03/21(月) 22:58:12.71 ID:ttCbVaun0
少女 「小鉄ちゃん、仲良くしようよ……」
小鉄 「! お前は、モンスター語を話す変な人間!!」
少女 「誰も怖い人はいないよ。だから、仲良くしようよ」
少女 「迅雷のお母さんのことは、あなたも悲しいし、私も悲しいよ」
少女 「だから、一緒に生きていこうよ」
小鉄 「………………」
小鉄 (この人間、見ず知らずの他モンスターのために泣いてるニャ)
小鉄 (ぐぬぬ……)

42: 2011/03/21(月) 22:59:26.92 ID:ttCbVaun0
小鉄 「……迅雷、とりあえず今のところはやめておくニャ」
迅雷 「兄貴?」
小鉄 「とりあえずオイラ達が譲歩しないと話が進まないっぽいニャ」
小鉄 「少し大人になるニャ」
迅雷 「う、うん、分かった……」
イャンガルルガ (よく言うぜ……)
ハンマー 「! ジンオウガが下がった!」

43: 2011/03/21(月) 23:00:24.37 ID:ttCbVaun0
小鉄 「てゆうか俊足ガーグァとモンジロウ、そんな隅っこで何してるニャ」
俊足ガーグァ 「旦那……生きてるのが不思議ですぜ……」
モンジロウ 「こてっちゃん……あんたは猫の中の猫、いや、雄の中の雄だニャ……!!」
小鉄 「??」
小鉄 「いいからこっちにくるニャ」
俊足ガーグァ 「あんた……炎帝を前にしてなんて不遜ぶりだ……」
モンジロウ 「しかもジンオウガまで味方につけちまった……! これは世界中に広めるべき大ニュースだニャ!」

44: 2011/03/21(月) 23:01:11.98 ID:ttCbVaun0
ハンマー 「とりあえず小鉄は落ち着いたのか?」
少女 「そうみたい。もう大丈夫みたいだよ」
ハンマー 「泣くな。どんな生き物にも天が定めた時間というものがある。迅雷の母親が氏んだのは、お前たちのせいではない」
少女 「うん……」
テオ・テスカトル 「少女。この人間達と少し話をしてくるといいだろう」
イャンクック 「!!」
ナナ・テスカトリ 「イャンクック様、ここは……」

45: 2011/03/21(月) 23:01:53.99 ID:ttCbVaun0
少女 「分かった。おじさん、ちょっと行ってくるね」
イャンクック 「う……うむ。気を付けて行きなさい……」
少女 「? うん」
ハンマー 「何だ?」
少女 「テオ先生が、みんなと少し話をしてきなさいって言ってる」
弓 (本当にモンスターと会話してるのね……最初はからかってるのかと思ってたけど…………)
ハンマー 「それでは雪山の俺のテントに行くか。弓も太刀も、ここでは落ち着かないだろう」

46: 2011/03/21(月) 23:02:23.91 ID:ttCbVaun0
太刀 「あはは……そうね。ティガレックスとナルガクルガが一緒にいることでさえ悪夢だわ」
太刀 「しかも寝てる方のティガレックス、洞窟からはみ出てない?」
少女 「あれは太ってるだけだよ」
太刀 「そうなんだ……」
ハンマー 「とりあえず、炎帝には世話になったと伝えてくれ。それと、小鉄はどうするんだ?」
少女 「小鉄ちゃんは、迅雷と一緒にここに残れって」
ハンマー 「そうか。じゃあな小鉄。短い間だったが、お前みたいな馬鹿なオトモにはもう二度と出会わないだろうな」

47: 2011/03/21(月) 23:04:24.74 ID:ttCbVaun0
小鉄 「お前のケツに、いつかビッグブーメランを突き刺してくれるニャ……」
弓 「小鉄が残るなら、私も……」
ハンマー 「やめておいた方がいい」
弓 「!」
ハンマー 「ここはモンスター達の縄張りだ。一晩は過ごしたが、本来俺たちがいていい場所ではない」
少女 「大丈夫だよ。雪山とここはあんまり離れてないから」
弓 「小鉄……一人で大丈夫?」
小鉄 「すぐに勉強とやらを終わらせて、迅雷と一緒に行くニャ」
小鉄 「心配無用だニャ!」

48: 2011/03/21(月) 23:04:50.58 ID:ttCbVaun0
弓 「小鉄がそう言うなら……」
ハンマー 「まぁ、氏んでも氏なないような猫だ。こんな地獄のような環境でも、当たり前のように生き残るさ」
小鉄 「今更褒めても何も出ないニャ」
太刀 「褒めたの?」
ハンマー 「もういい。行くぞ(ガチャリ)」
キリン 「少女ちゃん、行くの? 私が乗せて行ってあげるわ」
少女 「お姉ちゃん、ありがとう!!」

49: 2011/03/21(月) 23:05:53.75 ID:ttCbVaun0
太刀 「何? もしかしてキリンも一緒に来んの!?」
テオ・テスカトル 「待ちなさい、キリン……」
ナナ・テスカトリ 「あなた様、もう少女ちゃんはキリンちゃんに乗ってしまいましたわ……」
テオ・テスカトル 「少女が人間と単独で接触できる機会を作りたかったのだが……」
イャンクック 「キリンちゃんは心得ていると思います。それに、あの異様なモンスター群も気になる……」
イャンクック 「あの子を守るためにも、多少の戦力は必要なのでは……」
テオ・テスカトル 「ふむ……確かにそうだな……」

50: 2011/03/21(月) 23:07:19.18 ID:ttCbVaun0
ティガレックス弟 「じゃあ俺が……」
イャンガルルガ 「馬鹿かお前は」
ティガレックス弟 「何ィ!? 馬鹿って言った奴が馬鹿なんだぜ!!!」
ナルガクルガ 「俺が行こう。隠密行動ならお手の物だ」
イャンガルルガ (……チィ)
紫ガミザミ 「尾行じゃな。楽しそうじゃ。わしも行くぞえ」
ナルガクルガ 「そうか。頭に乗れ」
テオ・テスカトル 「分かった。ならばお前たちに任せよう。さりげなく少女を守ってやってくれ」
ナルガクルガ 「了解した」
紫ガミザミ 「うむ」

51: 2011/03/21(月) 23:07:58.68 ID:ttCbVaun0
弓 「小鉄……」
小鉄 「旦那さんはゆっくり怪我を治すニャ!」
弓 「うん、分かった。小鉄も気をつけてね……」
ハンマー (弓の怪我は、ついでに炎帝から拝借した血で治っているのだが、言わない方がよさそうだな……)
ハンマー (それにしても、小鉄があそこまで怒るとは……あいつも、もしかして過去に……)
弓 「…………」
少女 「どうしたの? ハンマーさん」
ハンマー 「いや、なんでもない。行こう」

52: 2011/03/21(月) 23:09:36.72 ID:ttCbVaun0
―5年前、人里離れたアイルーの村<夜>―

子アイルー (ふら……ふら……)
子アイルー (ドサッ)
子アイルー 「…………」
子アイルー (体中から力が抜けていくニャ……)
子アイルー (父ちゃん、母ちゃん…………)
子アイルー (待ってるニャ……今、オイラが行くニャ…………)

53: 2011/03/21(月) 23:10:10.05 ID:ttCbVaun0
子アイルー (………………)
 >ザァァァァァァ―ッ!!
子アイルー (ハッ!!)
子アイルー (うう……雨が冷たいニャ……)
子アイルー 「!! 父ちゃん! 母ちゃん!!」
子アイルー 「か……体が動かんニャ…………」
子アイルー 「頑張るニャおいら……もうすぐ村だニャ……」

54: 2011/03/21(月) 23:10:52.91 ID:ttCbVaun0
子アイルー 「………………」
子アイルー 「な……何だニャ……これは…………」

彼が見たのは、ボロボロに壊れた、自分が育った村だった
すべてが粉々に砕け散っていた
そして散乱する、猫だったもの
隣の家族。村長さん
知っている顔がたくさんいた

たくさんいた

誰も、もう動かなかった

55: 2011/03/21(月) 23:11:57.96 ID:ttCbVaun0
子アイルー 「父ちゃん!! 母ちゃん!!」
父アイルー 「…………」
母アイルー 「…………」
子アイルー 「しっかりするニャ! 今薬草をつけるニャ!!」
子アイルー 「…………血が……血が止まらんニャ!!!」
子アイルー 「誰かー!!! 誰かいないかニャ!!!!」
子アイルー 「父ちゃんが!! 母ちゃんが!!!」
子アイルー 「おいらの父ちゃんと母ちゃんだニャ!! 助けてくれニャー!!!」

56: 2011/03/21(月) 23:12:39.40 ID:ttCbVaun0
子アイルー 「誰か―!!!!!!!」
 >グルルルルルルル……
子アイルー (ビクッ)
子アイルー (な……何か村の奥にいるニャ……)
子アイルー (でっかい何かが…………)
子アイルー (こっちを見てるニャ…………)
××××××× 「グルルルルルルルルル…………」

57: 2011/03/21(月) 23:13:19.37 ID:ttCbVaun0
子アイルー 「だ……誰でもいいニャ!! 父ちゃんと母ちゃんが……」
子アイルー 「い……い、息をしてないんだニャ!!!!!!」
子アイルー 「見てないで助けてくれニャ!!!」
子アイルー 「お願いだから助けてくれニャ!!!!」
××××××× 『クク…………カカ…………』
子アイルー 「!! 何がおかしいんだニャ!!!! 助け……」
××××××× 『カカカカカカカカカ!!! クク……ハハハハハハハハハハ!!!!!!』
子アイルー (ビクッ!!!)

58: 2011/03/21(月) 23:13:48.18 ID:ttCbVaun0
××××××× 『息がない? 助けろ? 何故?』
××××××× 『お前に、そこまでのリスクを背負うだけの覚悟はあるのか?』
子アイルー 「お……お前……お前が…………!!!」
××××××× 『猫ごときにお前呼ばわりされる筋合いはない』
子アイルー 「な……何でだニャ!? オイラ達が何か悪いことをしたかニャ!!」
子アイルー 「何でこんなこと……こんなひどいこと……」
子アイルー 「お前には心がないのかニャー!!!!!!!」

59: 2011/03/21(月) 23:14:43.12 ID:ttCbVaun0
××××××× 『心……?』
××××××× 『ほう……面白いことを言う猫だ』
××××××× 『ならば問おう。心とは何だ?』
子アイルー 「ごちゃごちゃうるさいニャ!!! お前を倒して、父ちゃんと母ちゃんの手当てをするニャ!!」
子アイルー (ふら……ふら……)
子アイルー 「ここから出ていくニャー!!!!」
××××××× 『ふん……答えを期待した我が馬鹿だったか……』
 >ヒュバッ!!!
子アイルー 「ギニャアアアアア!!!」
 >ドゴッ!!!!

60: 2011/03/21(月) 23:16:32.78 ID:ttCbVaun0
子アイルー (ズルズル……)
子アイルー (ドサッ……)
子アイルー (か……風……?)
子アイルー (すんげぇ突風が……オイラを吹っ飛ばして…………)
子アイルー 「父ちゃん……」
子アイルー 「母ちゃん…………」
父アイルー 「…………」
母アイルー 「…………」
子アイルー 「うおおおおお!!!!!」

61: 2011/03/21(月) 23:17:19.38 ID:ttCbVaun0
××××××× 『ほう……まだ立ち上がるか』
子アイルー 「やかましいニャこの外道!!!」
子アイルー 「オイラは……オイラは絶対にお前を許さないニャ!!!!」
××××××× 『クク……カカカカカカッ!!!』
××××××× 『すぐに頃してやろうかと思ったが、なかなかどうして、良い憎しみを持っている』
××××××× 『生かしてやろう』
××××××× 『我を憎め。憎みつくせ。それが我の力となり糧となる』
子アイルー 「どうして……どうしてみんなを……」
子アイルー 「みんなを……頃したニャー!!!!!!!!」
子アイルー 「答えろぉぉぉぉおお!!!!!」

62: 2011/03/21(月) 23:18:04.09 ID:ttCbVaun0
××××××× 『どうして?』
××××××× 『ふむ……どうしてだろうな……』
××××××× 『暇つぶし……か?』
子アイルー 「暇つぶし…………?」
子アイルー 「…………暇つぶし…………?」
子アイルー 「暇つぶし……!!!!!!!?」
子アイルー 「く……ぐ……(ギリギリ)」
子アイルー 「うおおおおおお!!!!!!(バッ!!!)」

63: 2011/03/21(月) 23:18:32.66 ID:ttCbVaun0
××××××× 『良い目だ。憎しみで張り裂けそうになっている』
××××××× 『我を憎め、猫よ。お前の友人と、家族を頃した我を憎め』
××××××× 『我の声を、忘れるな』
××××××× 『さすれば、いつかまた会いまみえる時が来る』
子アイルー 「やかましいニャアアア!!!!」
 >ビュゥゥゥゥッ!!!!
子アイルー 「ギャアアア!!!!」
××××××× 『そのまま海まで飛んで行け……』
××××××× 『運が良ければ助かるだろう』
××××××× 『運が良ければ……な』
××××××× 『クククク……カーハッハハハハハハハハハハ!!!!!!』

64: 2011/03/21(月) 23:19:10.29 ID:ttCbVaun0
どれだけ海を漂っていたのか分からない
彼は、もう自分は氏んでしまうのだと思った

それも、またいいのかもしれないと彼は思った
父や母、そして仲間達がいる場所にいけるのであれば、それもまたいいのではないか
彼はそう思った

しかし、彼の体は意思に反して水面を目指していた
どうして水面を目指すのか、それは彼にも分からなかった
それは、憎しみから来るものだったのか
それとも、ただ単に生きたい、それ一念だったのか
彼には、よく分からなかった

65: 2011/03/21(月) 23:19:36.96 ID:ttCbVaun0
意識が段々と下に落ちていく中、彼の体は上を目指していた
上に
もっと上に
沈み行く体は、意に反して動き続けていた

脆弱な猫の体で、彼は、何故か必氏に生きようとしていた

何時間……いや、何日経った頃だか、彼にはよく分からなかった
気づいた時、彼は見知らぬ人間に抱えられていた

97: 2011/04/12(火) 21:24:46.19 ID:oINlOJ7X0
第5話 フラッシュフラッド 中編

子アイルー 「………………」
ハンター 「……目が覚めた……」
子アイルー 「……!! お前は……!!(ズキッ) ギニャ……!!」
ハンター 「…………動かない方がいいよ。足が、折れてる…………」
子アイルー 「(ズキズキ)う……うぅ……」
子アイルー 「な……何だニャ……ここは……」

彼が見たのは、見慣れぬ高い天井
そして、暖かい火がともっている暖炉
何もかもがのサイズが大きい、まるで別世界の家の中だった

98: 2011/04/12(火) 21:25:21.73 ID:oINlOJ7X0
ハンター 「今、スープを温めるから……」
子アイルー 「何なんだニャお前……! 人間……!!?」
ハンター 「人間の言葉が分かるのね……どこから来たの……?」
子アイルー 「や……やかましいニャ! おいらを早く……村のところに……」
ハンター 「?」
子アイルー 「父ちゃんと、母ちゃんが……氏んじまうニャ!!!!」

99: 2011/04/12(火) 21:25:58.21 ID:oINlOJ7X0
ハンター 「どういうこと?」
子アイルー 「おいらは……行かなきゃならんニャ…………(ドサッ)」
ハンター 「ちょっと……動かない方が……」
子アイルー 「触るんじゃないニャ!!(バシッ!)」
ハンター 「!!」
子アイルー 「おいらが行かなきゃ……行かなきゃいかんのニャ…………」
子アイルー 「父ちゃんは厳しいけど、本当は優しくて……」
子アイルー 「母ちゃんはおっちょこちょいだけど、お人よしで……いい猫で……」
子アイルー 「でも、おいらがいないとダメな……家族なんだニャ!!」

100: 2011/04/12(火) 21:26:29.50 ID:oINlOJ7X0
子アイルー 「父ちゃんと母ちゃんは、おいらを守ってくれたニャ……」
子アイルー 「だからおいらは……今度はおいらが……」
子アイルー 「父ちゃんと母ちゃんを、守らなきゃいけないんだニャ!!!」
ハンター 「…………」
ハンター 「そう……お父さんと、お母さんを……」
ハンター 「あなた、亡くしたのね」
子アイルー 「!!!!!!」
ハンター 「…………」

101: 2011/04/12(火) 21:26:59.72 ID:oINlOJ7X0
子アイルー 「な……何を言ってるニャ…………」
子アイルー 「おいらは家に帰るニャ……」
子アイルー 「家に帰ったら、父ちゃんと母ちゃんがいて……」
子アイルー 「村長さんや、情報屋もいて……」
子アイルー 「長屋も、大きくなって、村のみんなも増えてきて……」
子アイルー 「だから……だから……」
子アイルー 「村は、まだこれからだニャ……」
子アイルー 「これから、村は………………」
子アイルー 「………………村は………………」

102: 2011/04/12(火) 21:27:27.09 ID:oINlOJ7X0
ハンター 「………………」
子アイルー 「そうだニャ! これからだニャ!!!」
子アイルー 「あんな化け物にやられるおいら達じゃないニャ!!」
子アイルー 「父ちゃんは強いんだニャ! 村の中でも一、二を争う豪腕なんだニャ!!!」
子アイルー 「母ちゃんの料理は世界一なんだニャ!!」
子アイルー 「みんな、みんな一生懸命生きてたニャ!!!」
ハンター 「………………」
子アイルー 「だから……」
子アイルー 「だから、みんなが…………」
子アイルー 「みんなが………………」

103: 2011/04/12(火) 21:28:27.52 ID:oINlOJ7X0
子アイルー 「みんなが氏んだなんて、そんなの嘘だニャ!!!!」
子アイルー 「嘘だニャ!!!」
子アイルー 「嘘だニャー!!!!!」
ハンター 「………………」
子アイルー 「はぁ……はぁ…………(ズキズキ)」
ハンター 「うん……そうだね……」
子アイルー 「!!!」
ハンター 「よく分からないけど……きっとそうだよ……」
ハンター 「大丈夫だよ……」
ハンター 「大丈夫だから……」

104: 2011/04/12(火) 21:29:13.47 ID:oINlOJ7X0
子アイルー 「お……お前に……お前なんかに、何が分かるニャ!!!」
子アイルー 「お前に、おいらの気持ちが分かるわけがないニャ!!!」
子アイルー 「そもそもお前は何だニャ!!!」
ハンター 「私は弓。このあたりを中心に狩りをしているハンターよ……」
子アイルー 「ハンター…………」
子アイルー 「お、お願いがあるニャ!!!」
子アイルー 「おいらを村まで連れてってくれニャ!!」
子アイルー 「父ちゃんと、母ちゃんが待ってるニャ!!!!!」

105: 2011/04/12(火) 21:29:48.16 ID:oINlOJ7X0
弓 「………………」
弓 「…………そうだね…………うん、分かった」
子アイルー 「!! 本当かニャ!?」
弓 「いいよ……それで、君の気持ちがおさまるなら」
子アイルー 「今すぐ行くニャ!! グズグズするなニャ!!!!!」
弓 「………………」
弓 「…………うん」

106: 2011/04/12(火) 21:30:23.67 ID:oINlOJ7X0
 >ザァァァァァ――ッ!!!
子アイルー 「す……すんげぇ土砂降りの雨だニャ…………」
弓 「私の装備を体に巻いていきなさい。冷えると、傷に触るわ……」
子アイルー 「父ちゃん……母ちゃん……!!!」
弓 「………………」
弓 「スープと食料を持ったから……大丈夫。行くよ……ちゃんと背中に乗ってて」
子アイルー 「やかましいニャ!! さっさと行くニャ!!!!」
弓 「………………うん」

107: 2011/04/12(火) 21:31:01.98 ID:oINlOJ7X0
数時間進んだ先
そこには、何もなかった

倒れた家屋も
猫だったモノも

父も、母も
誰もいなかった

ただ、巨大な竜巻になぎ払われたかのように
地面がえぐれ、木々が薙ぎ倒され
全てが、なくなってしまっていた

108: 2011/04/12(火) 21:31:34.04 ID:oINlOJ7X0
子アイルー 「……………………」
弓 「…………君が目を覚ますまで、一週間かかったわ」
弓 「その間、この地方では頻繁に竜巻が起こってた」
弓 「近くの村もいくつか、やられたわ……」
弓 「人間の村でさえ、跡形もなくなっているの……」
弓 「………………」
子アイルー (ドシャ)
弓 「あなた、足が…………」

109: 2011/04/12(火) 21:32:13.93 ID:oINlOJ7X0
子アイルー (ふらふら)
子アイルー 「父ちゃん……母ちゃん…………」
子アイルー 「村長さん…………情報屋………………」
子アイルー 「みんなどこに行ったニャー!!!!!!」
子アイルー 「みんなー!!!!」
子アイルー 「みん……(ズキッ)…………うっ!! ゲホッ…………ゲホッ…………」
弓 「…………これ以上雨に当たると、傷に良くないわ…………」
子アイルー 「……………………」

110: 2011/04/12(火) 21:33:12.38 ID:oINlOJ7X0
子アイルー 「どうしてだニャ…………」
弓 「………………」
子アイルー 「おいらたちが何か悪いことをしたかニャ…………」
子アイルー 「おいらたちが…………何かをしたのかニャ………………」
子アイルー 「…………おいらたちは……ただ、一生懸命村を発展させようとして…………」
子アイルー 「一生懸命………………」

 >×××××××『ククク……ハハハ………………カーハッハッハッハッハッハ!!!!』

子アイルー 「何がおかしいニャ!!! うわああああ!!! 何がおかしいニャー!!!!」
子アイルー 「村を返せニャー!!! おいらたちの村を!!! 返せニャー!!!!!」

111: 2011/04/12(火) 21:33:48.00 ID:oINlOJ7X0
弓 「………………」
弓 「あなた、大きな……本当に大きな、白い竜を、見たことがある……?」
子アイルー 「!!!」
弓 「その白い竜に、何かを言われた……?」
子アイルー 「お前……」
子アイルー 「お前、あいつの…………!!!!」
弓 「違うわ」
子アイルー 「……!」
弓 「私も……あの竜を、憎む者の一人なの…………」

112: 2011/04/12(火) 21:34:15.62 ID:oINlOJ7X0
弓 「随分前の話になるけど……私の村も、ここと同じように消えたわ……」
弓 「あなたと、丁度同じように……」
子アイルー 「………………」
弓 「だから、私……あなたの気持ちが何となく……分かる」
子アイルー 「………………」
弓 「つらいよね……苦しいよね…………」
弓 「憎いよね……」
弓 「あの竜が……憎いよね…………」

113: 2011/04/12(火) 21:35:03.79 ID:oINlOJ7X0
子アイルー 「…………あの日は…………」
子アイルー 「母ちゃんの、誕生日だったんだニャ…………」
子アイルー 「おいらは…………母ちゃんの好きな、ドスビスカスを取りに行って……」
子アイルー 「そこで、竜巻に、吹っ飛ばされたニャ…………」
子アイルー 「……………………」
子アイルー 「おいらは…………」
子アイルー 「おいらは強くなりたいニャ…………」
子アイルー 「おいらは…………もっともっと強くなりたいニャ…………!!!!」

114: 2011/04/12(火) 21:35:33.85 ID:oINlOJ7X0
子アイルー 「もっともっと強くなって……」
子アイルー 「おいらは……あの白い竜に……」
子アイルー 「復讐するんだニャ!!!!!!!!」
弓 「……………………」
弓 「うん……そうだね……」
弓 「じゃあ、約束しようか……」
子アイルー 「約束……?」
弓 「それまで、私と一緒にいよう」
弓 「あなたが強くなって、復讐できるまで、私があなたの家族になってあげるよ……」

115: 2011/04/12(火) 21:36:02.45 ID:oINlOJ7X0
子アイルー 「何でおいらがお前なんかの家族に…………」
弓 「だから、約束……」
子アイルー 「…………?」
弓 「男の子は、もう泣かない……」
子アイルー 「!!!」
弓 「泣かないで……(ぎゅ)」
子アイルー 「………………」
弓 「今だけは許してあげるから……」
弓 「これからは泣かない……」
弓 「私と約束……できる?」

116: 2011/04/12(火) 21:36:37.43 ID:oINlOJ7X0
子アイルー 「う……う…………(ボロボロ)」
弓 (ぎゅ…………)
子アイルー 「うわあぁあああ!!!! うわぁああああああん!!!!」
弓 「いい子だから……泣かないで…………」

降りしきる雨の中、彼の鳴き声はどこまでも、ずっと遠くまで響いていた
その日、彼はかけがえのないものを失い、そして、かけがえのないものを得た

117: 2011/04/12(火) 21:37:24.45 ID:oINlOJ7X0
―樹海、イャンクックの巣<夜>―

小鉄 「……………………(ハッ)」
小鉄 「…………」
小鉄 (嫌な夢を見ちまったニャ…………)
迅雷 「グゥ…………グゥ…………」
小鉄 (こいつのせいだニャ…………)
小鉄 (こいつがあまりにも弱そうで…………)
小鉄 (あまりにもかわいそうで…………)
小鉄 (………………)

118: 2011/04/12(火) 21:37:58.64 ID:oINlOJ7X0
イャンクック 「どうした、小鉄さんとやら。寝付けないのか?」
小鉄 「お前は……変な鳥!!」
イャンクック 「はは。いや、いろいろな者にそう言われるよ」
小鉄 「何だニャ。おいらを叩いても何も出ないニャ」
イャンクック 「何もとって食べようというわけじゃない。少し話をしようとしただけだよ」
小鉄 「ふぅむ……」
小鉄 「あのでっかい古龍夫婦と、ティガレックス二匹が帰ってくれたおかげで大分広くはなったニャ」
小鉄 「何より、ティガレックスのいびきがないせいで、やっと住める環境になったニャ」

119: 2011/04/12(火) 21:38:29.78 ID:oINlOJ7X0
イャンガルルガ 「先生達を悪く言うことは許さねぇ。小鉄、お前はこれから、先生達に教わることが沢山あるんだぜ」
小鉄 「ふんッ! オイラが教わることなどもう何もないニャ」
イャンクック 「まぁ、そう意固地になることもあるまい。明日から授業に出てみるといい」
小鉄 「うるさいニャ。てゆうか黒い鳥。何でお前がここにいるニャ」
イャンガルルガ 「どこにいようが俺の勝手だろうが」
小鉄 「それもそうだけど、ここはイャンクックとやらの巣じゃないのかニャ」
イャンクック 「ああ、そうだ」
小鉄 「ひょっとして、あのちっこい人間にくっついていきそびれたのかニャ」
イャンガルルガ (ピクッ)

120: 2011/04/12(火) 21:39:02.00 ID:oINlOJ7X0
小鉄 「モンスターのくせに人間と仲良くしてるなんて変だニャ」
イャンガルルガ 「やかましい(ギギギ)」
小鉄 「あ……頭を噛むなニャ……頭蓋骨が……割れるニャ…………」
イャンクック 「まぁいいじゃないか。ガルルガ君も乱暴はやめたまえ」
イャンガルルガ 「ケッ(パッ)」
モンジロウ (ガクガクブルブル)
俊足ガーグァ (ガクガクブルブル)
小鉄 「てゆうか二人とも何してんだニャ」

121: 2011/04/12(火) 21:39:42.23 ID:oINlOJ7X0
モンジロウ 「すげぇ……頭をかじられてもビクとも動じてねぇニャ……」
俊足ガーグァ 「旦那は神とやらの加護に守られてるとしか考えられねぇ……」
イャンクック 「もっとこっちに来たらどうだ? そこでは隙間風が入ってくるだろう?」
モンジロウ 「い、いや、あっしはここで……」
俊足ガーヴァ 「俺も……」
小鉄 「いいから来るニャ」
イャンガルルガ 「……………………」
モンジロウ 「…………」
俊足ガーグァ 「…………」

122: 2011/04/12(火) 21:40:29.70 ID:oINlOJ7X0
モンジロウ 「じゃ……じゃあお邪魔するニャ…………(モゾモゾ)」
俊足ガーグァ 「俺はもうおしまいだ……ここで食われるんだ…………(モゾモゾ)」
イャンガルルガ 「てめーみてぇな得体の知れねぇ鳥を食うか。てゆうか共食いじゃねぇか」
俊足ガーグァ 「言われてみれば……って、得体の知れないのはお互い様ですぜ……」
イャンクック 「ガルルガ君は、本当に少女についていなくていいのか?」
イャンガルルガ 「ビッグボスの野郎がいやがるからな……俺はどうも、あいつと馬があわねぇ」
イャンガルルガ 「それに……」
迅雷 「…………」
イャンガルルガ 「少し、気になることがある」

123: 2011/04/12(火) 21:40:58.91 ID:oINlOJ7X0
イャンクック 「(にこり)そうか……」
小鉄 「何だニャ。オイラを無視して話を進めるなニャ」
イャンガルルガ 「だから、何でてめーはそんなに態度がでけえんだよ」
小鉄 「体の大きさで力を決めるのは馬鹿のすることだって父ちゃんが言ってたニャ」
小鉄 「だいたい、お前らを怖がるようじゃ、由緒正しきオトモアイルーは勤まらんニャ」
イャンガルルガ 「よく言うぜ。人間の使いッ走りのくせによ」
小鉄 「今の発言は聞き逃せられんニャ。オトモ軽視の発言は許せんニャ!!」
イャンガルルガ 「あーはいはい」

124: 2011/04/12(火) 21:41:45.92 ID:oINlOJ7X0
イャンクック 「とにかくまぁ、寝れないようなら、落ち着いて話でもしないか?」
小鉄 「ふんッ。迅雷の母ちゃんを助けられなかった連中と話すことなど何もないニャ」
イャンクック 「皆、何かしらの理由で家族を亡くしている。迅雷の気持ちを分かってやれると思うがな」
小鉄 「…………」
モンジロウ 「それにしても、その黒いティガレックスは何だったんでしょうかニャ」
俊足ガーグァ 「俺も気になってたんですがね。聞いたことねぇな」
小鉄 「モンジロウも俊足ガーグァも知らないのかニャ」
イャンクック 「ここの地方のティガレックス君達と顔かたちがそっくりだったが……かなり巨大なモンスターだったな」
イャンクック 「それに、土に溶けたようにも見えた。いずれにせよ、尋常なモンスターではないだろう」

125: 2011/04/12(火) 21:42:15.37 ID:oINlOJ7X0
小鉄 「あの黒いティガレックスは……確かに倒したはずだニャ」
イャンガルルガ 「お前が? カカ……ハハハハハ!! 変な冗談を言う猫だぜ!!」
小鉄 「わ、笑うなニャ! 確かに倒したのはオイラじゃないけど……」
迅雷 「……グゥ……グゥ……」
小鉄 「………………あのティガレックスは、迅雷の親父さんが倒したはずなんだニャ」
モンジロウ 「こてっちゃんが倒したんじゃないのかニャ?」
小鉄 「オイラの頑張りは五割ってとこだニャ」
イャンガルルガ 「よく言うぜ」
イャンクック 「と、すると……迅雷のお父さんは、その黒いティガレックスと相討ちに?」
小鉄 「…………」

126: 2011/04/12(火) 21:42:46.71 ID:oINlOJ7X0
小鉄 「………………(ぎゅ)」
小鉄 (あの時ジンオウガにもらったこのお守り……)
小鉄 (あのジンオウガは、オイラに迅雷を頼むって言ったのとほぼ同じだニャ)
小鉄 (だから、オイラには迅雷を守って、立派なジンオウガにする義務があるニャ……)
小鉄 (おいらを助けてくれた、あのジンオウガみたいに……!!!)
イャンクック 「………………」
イャンクック 「よく分からないが、並々ならぬ事情があるようだな」
小鉄 「お前達には関係ないことだニャ」

127: 2011/04/12(火) 21:50:25.83 ID:oINlOJ7X0
イャンガルルガ 「ふん、気にくわねぇな」
小鉄 「な……何だニャ」
イャンガルルガ 「いや……てめぇを見てると、どうも昔を思い出してな」
イャンガルルガ 「安心しろ。てめぇのようなアホな猫は嫌いじゃねぇ」
小鉄 「アホとは何だニャ。アホとは!」
モンジロウ 「さて……と。こてっちゃんも復活したことだし、あっしは仕事があるから、これで失礼させていただきやすぜ」
小鉄 「モンジロウは忙しいからニャ。でも、あのハプルボッカみたいに変なモンスターにまた襲われたらどうするつもりだニャ」
モンジロウ 「ぐ……そういえば……」
俊足ガーグァ 「俺が送っていきますぜ。樽よりは速い自信がある」
モンジロウ 「そいつはありがてぇニャ。世界にこてっちゃんの勇姿を広めなきゃいかんニャ」
小鉄 「とりあえず伝えて欲しいことはいろいろあるニャ。今から要点を言うニャ」

128: 2011/04/12(火) 21:50:52.72 ID:oINlOJ7X0
小鉄 「………………という、オイラの武勇伝を託すニャ」
モンジロウ 「任せてくれニャ」
イャンガルルガ 「こうやっていらねぇ伝説ってのが作られてくんだな……」
イャンクック 「はは。まぁ、どこまでが本当か分からないが、面白い猫だ。小鉄君」
小鉄 「オイラの話は全て真実だニャ! 面白くない鳥達だニャ」
イャンガルルガ 「あーはいはい」
小鉄 「~~!!」
モンジロウ 「それじゃ、こてっちゃん、くれぐれも気をつけてユクモ村に戻ってくるんだニャ!(シュバッ)」
俊足ガーグァ 「あんたのことは忘れねぇよ!」

129: 2011/04/12(火) 21:51:38.96 ID:oINlOJ7X0
小鉄 「任せるニャ。旦那さんと迅雷がひと段落着いたらすぐに戻るニャー!!」
モンジロウ 「………………!! …………!!!」
俊足ガーグァ (ドドドドドドドドドドドド)
イャンガルルガ 「速ェな……」
イャンクック 「もう姿が見えないとは。モンジロウ君が何を言っていたのか、全く聞き取れなかったぞ」
イャンガルルガ 「…………さて、猫。お前一匹になったわけだが」
小鉄 「猫と言うなニャ。オイラには由緒正しき小鉄という名前があるニャ」
イャンガルルガ 「ふてぶてしさは変わらずか……」
イャンクック 「しかし、先ほど小鉄君が話していたことが本当だとすると、あの黒いティガレックスは、一度氏んでいるということになる……」
小鉄 「確かにあれは、溶岩に落ちたティガレックスだニャ。オイラの目に狂いはないニャ」

130: 2011/04/12(火) 21:52:13.65 ID:oINlOJ7X0
イャンガルルガ 「信用できるかよ。第一、一度氏んだ者はもう二度と生き返らねぇんだ」
イャンガルルガ 「二度とな」
イャンクック 「………………」
小鉄 「そ、そんなの、言われなくてもおいらも分かってるニャ」
小鉄 (でもあの黒いティガレックスは……)
小鉄 「うーん…………」
イャンクック 「分からないな……もしかしたら、砦ドラゴンのような力を持つ存在がいるのかもしれない」
イャンガルルガ 「そんなのがいたら、世界が破滅だぜ。やりたい放題じゃねぇか」

131: 2011/04/12(火) 21:52:46.52 ID:oINlOJ7X0
小鉄 (あの……あの笑い声……)
小鉄 (あの白い竜…………)

 >助けろ? 何故? お前にそこまでのリスクを背負う覚悟があるのか?

小鉄 (ギリ……)
イャンガルルガ 「………………?」
小鉄 「と……とにかく、氏んだ者が生き返らないことぐらい言われなくても知ってるニャ」
イャンガルルガ 「でもさっきは自信満々に、溶岩に落ちたティガレックスだって断言したじゃねぇか」
小鉄 「それは……そうなんだけどもニャ……」
イャンクック 「もしかしたら、溶岩の中からティガレックスだけ脱出したのかもしれないな……」
イャンクック 「彼らは鱗が厚い。少しならば溶岩に耐えられるはずだ」
イャンガルルガ 「それはいいが、あの妙なモンスター達も気になる……」
イャンガルルガ 「倒した途端土くれになりやがった。まるで化け物だぜ」

132: 2011/04/12(火) 21:53:18.55 ID:oINlOJ7X0
イャンクック 「ふむ……」
イャンクック 「とりあえず、今日のところは休むことにしようか。小鉄君も疲れているだろう? 気は少し紛れたかい?」
イャンクック 「寝る前に君達二人に、とっておきのこれを飲ませてあげよう」
イャンガルルガ 「それは……ツチハチノコの酒か?」
イャンクック 「ああ。だが、十年物だ。少女がいるときは強すぎるので出さないようにしていたのだが、君達ならいいだろう」
イャンクック 「キングがこのまえこれをくれてね。何、寝る前に一杯やるといい夢が見れるんだ」
イャンガルルガ 「ほう(グビッ) ……ン、これは美味いな」
小鉄 「オ、オイラにも寄越すニャ(ゴクゴク)……プハァアア~~!!」
小鉄 「こりゃたまらんニャ!!」

133: 2011/04/12(火) 21:53:51.59 ID:oINlOJ7X0
イャンクック 「はは、気に入ってもらえてよかったよ」
小鉄 「も、もっと寄越すニャ」
イャンクック 「これは強すぎるからね。また明日、飲ませてあげよう」
小鉄 「ケチだニャ」
イャンガルルガ 「体が温まってきた。確かにこりゃ、いい夢見れそうだぜ」
イャンクック 「そうだろう。ガルルガ君は傷を受けている。古龍の血で治ったといえ、今日はあまり動かない方がいい」
イャンクック (古龍の血か…………)
イャンクック (今日も、ナナ様が少女に血を分け与えてしまった)
イャンクック (これで少女が、益々人間から遠ざかってしまわなければいいが……)

134: 2011/04/12(火) 21:54:19.27 ID:oINlOJ7X0
―ユクモ地方、火山<朝>―

アオアシラ弟 「ふぅぅぅ~~……あっついなぁココは…………」
ウラガンキン 「まぁそう言わずに。ほら、水を持ってきた。飲むといい」
アオアシラ弟 「ヒィィィッフゥ! いただくぜ!(ゴクゴクゴクゴクゴク)」
アオアシラ弟 「フゥゥゥ!! 生き返ったァ!!!」
ウラガンキン (………………火山の中から、ジンオウガさんの遺体は引き上げることができたが……)
ウラガンキン (ティガレックス亜種の氏骸だけがどうしても上がらない……)
ウロコトル達(親衛隊) 「殿下、下のエリアにも潜ってまいりましたが、やはり……」
ウラガンキン 「そうか……」

135: 2011/04/12(火) 21:55:05.56 ID:oINlOJ7X0
ウラガンキン 「それと、亜種……弟は……?」
ウロコトル達(親衛隊) 「溶岩の中に、完全に身を隠してしまわれているようです。追跡してはいるのですが……」
ウラガンキン 「ふむ…………」
ウラガンキン (あの地震を引き起こしたのは、確かに、弟……亜種の顎によるものだ)
ウラガンキン (事件以来、弟は逃げまわって僕と顔をあわせようとしない……)
ウラガンキン (………………)
ウラガンキン (それよりもティガレックス亜種……どうにも気になる……)
ウラガンキン (奴はやはり、まだ生きているのか……? )

136: 2011/04/12(火) 21:55:38.76 ID:oINlOJ7X0
アオアシラ兄 「おぉぉぉ~~い、王様~~~~!!」
アオアシラ兄 「連れてきたぞ~~~!!!」
ウラガンキン 「! 来たか!」
アオアシラ弟 「ンン? 熱気でよく見えねぇ。兄ちゃんか? 本当に兄ちゃんかァ?」
アオアシラ兄 「兄ちゃんだ! お前の兄ちゃんだぞ!!」
アオアシラ弟 「本当の兄ちゃんならこれが言えるはずだぜ! ハチミツがないなら!!」
アオアシラ兄 「ロイヤルハニーを食べればいいじゃない!!」
アオアシラ弟 「うわっはぁ! 超傲慢!! 兄ちゃんだー!!!! やっぱり兄ちゃんだー!!」

137: 2011/04/12(火) 21:56:29.62 ID:oINlOJ7X0
ウラガンキン 「………………」
ウラガンキン 「ええと……良く来てくれた。ナルガクルガ三兄弟」
ナルガクルガA 「いやぁねぇ。こんなあっついところに呼び出して」
ナルガクルガB 「あたしたちの魅力的なウ・ロ・コがとろけちゃうじゃないの」
ナルガクルガC 「でもあたしたちの心は、既にあなたに」
ナルガクルガ三兄弟 「「「く・ぎ・づ・け」」」
ナルガクルガ三兄弟 「「「とろけちゃってるのぉ」」」
ウラガンキン 「………………」
ウラガンキン 「うん、そうだな」
ウラガンキン 「で、話なんだが」

138: 2011/04/12(火) 21:57:04.39 ID:oINlOJ7X0
ナルガクルガA 「なぁに、いきなり仕事の話? つれないわねぇ」
ナルガクルガB 「あたし達と、これから旧密林でランデブーしない?」
ナルガクルガC 「今ならお姉ちゃんもいないしぃ」
ウラガンキン 「ああ、それはまた今度」
ウラガンキン 「今回君達を呼び出したのは、他でもない、先日の一件に関しての事なんだ」
ナルガクルガA 「先日の一件って……ジンオウガちゃんがアレしてこうなっちゃったって件?」
ナルガクルガB 「全く、男ってホント野蛮で嫌だわぁ」
ナルガクルガC 「あ、でもウラちゃんだけは別。あなたはあたし達の」
ナルガクルガ三兄弟 「「「と・く・べ・つ・な・の・よ」」」
ウラガンキン 「ああ、そうだな」
ウラガンキン 「で、話を戻すけど……」

139: 2011/04/12(火) 21:57:40.05 ID:oINlOJ7X0
ウラガンキン 「孤島の、ドボルベルク様のところに行って欲しいんだ」
アオアシラ兄 「孤島! 魅力的な単語だぜ!!」
アオアシラ弟 「ロイヤルハニーあるかなぁ」
ナルガクルガA 「お爺ちゃんのところにぃ?」
ナルガクルガB 「あんなクサレポンチのところに行ってどうするっていうの?」
ナルガクルガC 「それよりあたし達と旧密林でランデブーしましょうよ」
ウラガンキン 「これは重要な話なんだ。聞いてくれたら、君達の言うことを何でもひとつ、約束してあげるよ」
ナルガクルガA 「きゃっ! 約束ですって!」
ナルガクルガB 「どうするお兄ちゃん? 約束ですってよ」
ナルガクルガC 「困ったわぁ。ウラちゃんが約束してくれるって言うなら、話を聞くしかないじゃない」

140: 2011/04/12(火) 21:58:28.57 ID:oINlOJ7X0
ウラガンキン 「時は一刻を争うかもしれない。君達の迅速な足があれば、非常に助かる」
アオアシラ兄 「迅速だなんて照れるぜェ」
アオアシラ弟 「兄ちゃんスゲー! じんそくって何だ?」
ナルガクルガA 「分かったわ。じゃ、ちゃんと約束しましょ。仕事が終わったらあたし達と旧密林でランデブー。いいわね?」
ナルガクルガB 「あんなことやこんなこともしましょうね!」
ナルガクルガC 「夢が広がるわ! あぁあ! ムズムズが止まらないぃ!」
ウラガンキン 「いいよ、よく分からないけど分かった」
ナルガクルガ三兄弟 「「「ヒャッハァァァァアア!!」」」
ウラガンキン 「仕事の話に戻そう。すぐにドボルベルク様のところに行って、起こったことをお伝えしてきて欲しいんだ」
ウラガンキン 「実は、僕の持っている古代のお守りがひとつ、なくなっている」
ウラガンキン 「ずっと昔だけど、ドボルベルク様は、お守りのことを感じ取ることができるという話を聞いたことがあるんだ」

141: 2011/04/12(火) 21:59:13.12 ID:oINlOJ7X0
ウラガンキン 「そして、もしドボルベルク様が、僕のお守りを感じ取ることができたら……」
ウラガンキン 「君達の足で、そのお守りの後を追って欲しいんだ」
ウラガンキン 「僕は今、火山を離れるわけにはいかない。お願いできるね?」
ナルガクルガA 「お願いも何も、ウラちゃんとのランデブーのためなら、あたし達は何でもやるわよぉ」
ナルガクルガB 「そこの馬鹿二人! ちゃんと聞いてたわね!?」
アオアシラ兄 「ああ! ちゃんと聞いてたぜ! 何を?」
アオアシラ弟 「聞いてたよ!! で、何が?」
ナルガクルガC 「この通り証人もいるわ。あたし達との約束、ぜぇぇったい守ってね!」
ウラガンキン 「心配しなくても約束は守るよ。すぐ出発して欲しい」
ナルガクルガ三兄弟 「「「ヒャッハァ! おまかせあれ!!(シュバババ!!)」」」

142: 2011/04/12(火) 21:59:42.91 ID:oINlOJ7X0
アオアシラ兄 「あっ! ちょ、置いてくなよ!!!」
アオアシラ弟 「どこに行くんだっけ? 兄ちゃん」
アオアシラ兄 「とりあえず腹が減ったなぁ」
ウラガンキン 「ご苦労だったね。こっちに火山イチゴがある。沢山食べていくといいだろう」
アオアシラ兄 「ヒィィィッフゥ! 火山イチゴ!!」
アオアシラ弟 「イチゴ! イチゴ!!」
ウラガンキン 「………………」
ウラガンキン (ナルガクルガ三兄弟……上手くやってくれるだろうか……)
ウラガンキン (僕は、亜種のこともあるからここを離れるわけにはいかない……)
ウラガンキン (最悪の事態だけは避けられるといいんだが…………)

201: 2011/10/27(木) 01:04:15.40 ID:9XGikTup0
―孤島<朝>―

ドボルベルク翁 「ぬ」
ドボルベルク嫗 「じいさんや~……どうかしたんかいのぉ~」
ドボルベルク翁 「……また邪悪の気配じゃ……(ズシン……ズシン……)」
ドボルベルク嫗 「どこへ行くとな? じいさんや」
ドボルベルク翁 「ラヴィエンテ様のところじゃ。ばあさんも来るとええ」
ドボルベルク嫗 「んっとこしょ。じいさんはいつも突然じゃからのぉ。しゃぁねぇ、行くとすっかのぉ」

202: 2011/10/27(木) 01:04:49.05 ID:9XGikTup0
ドボルベルク嫗 「邪悪の気配っつったってなぁ、この世はいつも邪悪にまみれておるからのぉ」
        「あっしはいつの頃からか、何が邪悪で、何が邪悪じゃないのか分からんくなってのぉ」
ドボルベルク翁 「……少なくともいいものではないのぉ」
ドボルベルク嫗 「どんなもんだいのぉ?」
ドボルベルク翁 「生きていてはならんものじゃ……」
ドボルベルク嫗 「ほう。それは興味深い……」

203: 2011/10/27(木) 01:05:41.21 ID:9XGikTup0
ドボルベルク翁 「それと、深海の主が何かを拾い上げた……」
ドボルベルク嫗 「ふむ……奴がのぉ」
ドボルベルク翁 「わしの感じられる範疇の外まで運んでいきよった……よほど重要な何かなのじゃろう」
ドボルベルク嫗 「それで、ラヴィエンテ様に相談というわけじゃなぁ」
ドボルベルク翁 「んじゃ……それに……」
ドボルベルク嫗 「それに?」
ドボルベルク翁 「ジンオウガが氏んだ」
ドボルベルク嫗 「! ……そうかえ。いい子じゃったがな……」

204: 2011/10/27(木) 01:06:12.22 ID:9XGikTup0
ドボルベルク翁 「そういうさだめじゃったと考えるほかはあるまい……」
ドボルベルク嫗 「そうじゃなぁ」
ドボルベルク翁 「何か、起こってはならぬことが起こっておる……わしらの、考えもつかぬようなことが、起こっておるのかもしれぬ」
        「妙な胸騒ぎもしてなぁ……」
ドボルベルク嫗 「よいよい。ラヴィエンテ様に相談してみるとええ」
ドボルベルク翁 「ばあさんは余計な心配はせんでええ……気にするなやぁ」
ドボルベルク嫗 「うむ……」

205: 2011/10/27(木) 01:06:42.43 ID:9XGikTup0
ドボルベルク翁 「……ここじゃ……」
ドボルベルク嫗 「ラヴィエンテ様の気を察知できたかぇ?」
ドボルベルク翁 「うむ……少し待っておれ……」
ドボルベルク嫗 「む。確かに大地の気が集中しておる。爺さんはよう見つけるのぉ」
ドボルベルク翁 「恐れながらご相談したいことがございます、我らが主よ……」
ドボルベルク嫗 「どうぞ我らの声をお聞きくださいまし……」
ドボルベルク翁 「我らが主よ……」

206: 2011/10/27(木) 01:07:16.40 ID:9XGikTup0
―シュレイド地方、雪山、ハンマーのキャンプ―

少女 「そうだったんだ。大変だったんだね」
ハンマー 「ああ。あの黒いティガレックスは、俺たちと戦った奴に非常に良く似ていた」
太刀 「少女ちゃんは何か感じなかったの?」
少女 「うん、何だろう……」
   「何だか、変な胸騒ぎがしたの」
ハンマー 「胸騒ぎ?」
少女 「うん。これ、ということはないんだけれど」
   「何ていうのかな……凄く深い違和感みたいなのを感じたよ」
ハンマー 「違和感か……確かに、あのモンスター達は、普通ではなかったからな……」

207: 2011/10/27(木) 01:07:42.23 ID:9XGikTup0
弓 「…………」
キリン 「…………」
少女 「弓さん、お姉ちゃんに乗りたいの?」
弓 「……お姉ちゃん?」
  「モンスターのことを姉扱いするなんて、あなた変よ」
少女 「でも……お姉ちゃんはお姉ちゃんだもん……」
弓 「あなた人間なの? それともモンスターなの?」
少女 「…………」
ハンマー 「おい弓……」

208: 2011/10/27(木) 01:08:17.30 ID:9XGikTup0
キリン 「クルルル……」
少女 「うん、分かる。分かってる」
ハンマー 「どうした? キリンは何と?」
少女 「もう休んだ方がいいって。今日は私、お姉ちゃんと寝るよ」
ハンマー 「ああ。キリンに入り口にいてもらえると、テントの中に雪風が入らずにすむ」
太刀 「はい、もうこの話はお仕舞い。寝ましょう」
弓 「…………」
  「モンスターの近くで寝るなんて、考えたこともなかった」
  「ユクモ村のみんなが見たら、腰を抜かすわ」

209: 2011/10/27(木) 01:08:56.86 ID:9XGikTup0
ハンマー 「ははっ、だろうな」
     「だが、ここにいるモンスター達は皆、悪いもの達ではない。それは俺が保障しよう」
     「かつて俺は、何度もこいつらと一緒に戦ったことがある。同じ敵を討つ、同志としてな」
     「だからこそ言える。モンスターにも人間と同じ心がある。同じように苦しみや悲しみも感じる心がな」
     「小鉄だってそうだろう?」
弓 「小鉄はモンスターじゃないわ」
ハンマー 「モンスターなのか、モンスターじゃないのか、そんな些細なことはどうでもいいんだ」
     「大事なのはその者が持つ心だと俺は思うがね」
太刀 「もう、そんな話はやめようって言ったじゃん」
   「少女ちゃん、はいこれ」
少女 「何これ?」
太刀 「ユクモ村から持ってきたの」
弓 「それは……ユクモミルクコーヒー……!」

210: 2011/10/27(木) 01:09:24.71 ID:9XGikTup0
太刀 「あっためておいたからみんなで飲みましょう」
ハンマー 「ありがたい(グビッ)うむ。あの村独特の風味だ」
弓 「どういう意味よ」
ハンマー 「美味いという意味だ(グビッ)」
少女 「(コクッ)あ、美味しい……」
弓 「…………」
  (笑ってる顔は人間なのね……)
キリン 「クルルル……」

211: 2011/10/27(木) 01:09:54.04 ID:9XGikTup0
少女 「……どうしたの?」
キリン 「少女ちゃん、何かに見張られている気がするわ」
少女 「何かって?」
キリン 「分からない……でも、何か良くないものであることは確かよ。何か感じない?」
少女 「うーん……(コクリ、コクリ)」
キリン 「少女ちゃん?」
ハンマー 「何だ、少女、キリンが何か言っているのか?」
少女 「……(コクリ)スゥ……」
太刀 「あら寝ちゃった」
ハンマー 「お前、ミルクコーヒーに酒でも混ぜたんじゃないだろうな」
太刀 「そんなことしてないって。あったまったからじゃない?」

212: 2011/10/27(木) 01:10:21.30 ID:9XGikTup0
キリン 「…………」
キリン (少女ちゃんは少し無理をしすぎているわ)
キリン (疲れを起こしてもおかしくない……)
キリン (私がこの人間達……いえ、少女ちゃんを守らなきゃ)
キリン (スクッ)
太刀 「わ、キリンが立った!」
弓 「何? やる気?」
ハンマー 「いや、待つんだ。古龍の大宝玉が反応している。何か来る!」
 >ドドドドドドドドドド

213: 2011/10/27(木) 01:10:55.71 ID:9XGikTup0
太刀 「な、何!?」
ハンマー 「外に出るんだ!」
弓 (ガシャコン)
  「またモンスターの襲撃!?」
ハンマー 「そのようだ。だが、この振動は俺の知らない振動だぞ!!」
太刀 「わ、私は?」
ハンマー 「弓も太刀も、少女を連れて横の穴の中に入っていてくれ。そこなら安全だ」
太刀 「分かった!」
少女 「すぅ……すぅ……」
弓 「…………」
  「私も戦う……!!(キッ)」

214: 2011/10/27(木) 01:11:25.19 ID:9XGikTup0
ハンマー 「無茶だ、こんな夜に……キリンの光で周りがやっと見えるくらいなんだぞ。その武器では不利だ」
弓 「話している暇はないんじゃないかしら。来るわよ!」
 >ドッォォォォォォォォンッ!!!
キリン 「……くっ!(ドガァァァァッ!!!)」
太刀 「キリンが、突進してきた何かを受け止めた……!!」
キリン 「誰ですか!? こんな夜中に、この場所で暴れるとは……ここはあなたの縄張りじゃないでしょう!!」
ボルボロス亜種 「コヒュ、コヒュ、コヒュ!!」
キリン 「……ボルボロスさん!?」

215: 2011/10/27(木) 01:11:59.57 ID:9XGikTup0
ボルボロス亜種 「シャアアアアアア!!!」
 >ドドドドドドドドドド!!!
ハンマー 「くっ……何だこのスピードは!!」
     「ボルボロスじゃないか!!」
弓 「違うわ、これは亜種、凍土にしかいないはずなのに、どうしてこんなところに……!!!」
 >ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ハンマー 「キリン、下がれ! また何か来るぞ!!」
キリン 「!!!!
 >ドッゴォォォォォォォォォ!!!
キリン 「きゃあああああ!!!」

216: 2011/10/27(木) 01:12:31.92 ID:9XGikTup0
ハンマー 「キリンが吹き飛ばされた!!」
アグナコトル亜種 「シャ、シャ、シャ、シャ!!!」
太刀 「な……何なのあのモンスター達。見たことない!!」
弓 「今度はアグナコトル亜種まで……!! どうして!?」
ハンマー 「あのモンスターも、ユクモ地方のモンスターなのか!?」
弓 「ええ! しかもあれは……私達が昔、協力して倒したはずの……」
ボルボロス亜種 「シャアアアア!!」
アグナコトル亜種 「キシャアアアア!!!!」

217: 2011/10/27(木) 01:13:16.71 ID:9XGikTup0
キリン 「く……ぅうう……!!(よろよろ)」
    「何を……するのですか。ボルボロスさんではないのですか……?」
    「あちらは……アグナコトルさん……?」
    「どういうこと……?」
ナルガクルガ 「(シュバッ!!)ボヤボヤするな!!」
紫ガミザミ 「キリン何をしておる!!」
キリン 「お二方!! 助けに来てくださったのですか!!」
ナルガクルガ 「あの咆哮だ。直に地獄兄弟も起きてくる」
       「だが、その前に始末するぞ!」
キリン 「でもあれは……」
ナルガクルガ 「姿は似ているが全くの別物だ! 来るぞ!!」

218: 2011/10/27(木) 01:13:55.56 ID:9XGikTup0
アグナコトル亜種 「シャアアアアア!!!(ズズズズズズズ)」
キリン 「潜った……!!」
ハンマー 「ナルガクルガか! 助太刀する!!(バッ!!)」
弓 「私も……きゃあああ!!!!」
ハンマー 「弓!!」
 >ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
弓 「くっ! 足元……から……」
キリン 「……!!!(シュバッ)」
  >ドッゴォォォォォォォン!!!!

219: 2011/10/27(木) 01:14:23.90 ID:9XGikTup0
ハンマー 「弓ー!!!!」
太刀 「凄い雪……何も見えない……!!」
少女 「え……な、何……?」
太刀 「少女ちゃん! 何か変なモンスター達がまた襲ってきたんだよ!!」
少女 「!! お姉ちゃん!!」
キリン 「…………はぁ……はぁ…………」
弓 「…………!!!!」
弓 「私……生きてる……!!!」
キリン (私……今、一瞬であの距離を跳んだ……)
キリン (私、何をしたの……?)
弓 「モンスター……キリン……」
  「キリンが、私を助けた……?」

220: 2011/10/27(木) 01:14:54.30 ID:9XGikTup0
ハンマー 「うおらあああああ!!(バッ)」
ナルガクルガ 「キシャアアアア!!!(バッ)」
ボルボロス亜種 「!!!!」
ハンマー 「喰らえええええ!!(ブゥゥゥゥゥン!!!)」
ナルガクルガ 「フン! 相変わらずいい動きをする!(シュンシュン)」
ハンマー 「とぉりゃああ!(ズンッ!!!)」
ナルガクルガ 「カァ!(ドッォオオオン!!!)」
ボルボロス亜種 「ガ……ガアアアアアア!!!!(ふら……ふら……)」
 >ズゥゥゥゥゥン……!!!

221: 2011/10/27(木) 01:15:22.79 ID:9XGikTup0
ハンマー 「次は!!」
ナルガクルガ 「人間……! 後ろだ!!」
ハンマー 「……!!!」
ハンマー (古龍の大宝玉が反応した! くっ……だが間に合わない……!!!)
 >ドッォォォォォォン!!!!!
ハンマー 「ぐぅおおおおおお!!!」
紫ガミザミ 「あの馬鹿人間、真下から出てきた奴に吹っ飛ばされよった!!」
ナルガクルガ 「お前も吹き飛ばされないように、しっかりつかまっていろ!(シュンッ!)」
アグナコトル亜種 「!!!」
ハンマー (この落下の衝撃を利用して……)
ハンマー 「ふんっ!! うおおおおお!!!!! (グググググググ!!!)」
ナルガクルガ 「ほう……いい根性だ」

222: 2011/10/27(木) 01:16:57.67 ID:9XGikTup0
ハンマー 「はぁ……はぁ……(ごろり)」
少女 「ハンマーさん!(ダッ)」
太刀 「あ、少女ちゃん、危ないよ!!!」
ナルガクルガ 「……少女、来るな!!!」
アグナコトル亜種 (ググググググ……)
 >ゴォォォォォォォォォォッ!!!!!
キリン 「少女ちゃんー!!!!」
紫ガミザミ 「氷の水鉄砲が、少女に……!!! 逃げるのじゃー!!!」
少女 「……(キッ!!)」
   「ここから……出て行けえええ!!!」
 >ゴォォォォォォォォォッ!!!!

223: 2011/10/27(木) 01:17:26.69 ID:9XGikTup0
ハンマー 「しょ、少女の体が白く光って……」
弓 「竜のブレスを……跳ね返している……!!?」
少女 「あなたたちはここにいてはいけない! 元の世界に戻りなさい!!」
   「戻りなさい!!!!」
ボルボロス亜種 「……!!!!!!」
アグナコトル亜種 「……!!!!!!」
キリン 「そんな……睨んだだけで、モンスターがひるんでる……」
紫ガミザミ 「しょ、少女……?」
ナルガクルガ (古龍の力の発現か……!? だがまだ早すぎる!!)

224: 2011/10/27(木) 01:17:53.65 ID:9XGikTup0
ボルボロス亜種 「グオォォォ……(ボロボロボロボロ)」
アグナコトル亜種 「オオオオオオ……(ボロボロボロボロ)」
太刀 「二匹が砂になって消えてく……」
ハンマー 「少女、もういい、もうやめるんだ!(ガシッ!!)」
少女 「駄目! 今やめたら、あの二人、ずっと元に戻れない!!」
   「そんな気がするの!!」
ハンマー 「だがこのままではお前は……」
ハンマー 「お前は人間ではなくなってしまうぞ!!!」
少女 「…………(ギリ……)」

225: 2011/10/27(木) 01:18:20.07 ID:9XGikTup0
ボルボロス亜種 「………………(ボロ……サラサラサラ……)」
アグナコトル亜種 「………………(サァァァァァァ……)」
少女 「…………はぁ! はぁ……はぁ……」
太刀 「少女ちゃんの体から……光が消えていく……」
弓 「…………」
ハンマー 「あのモンスター達も消滅した……」
     「何だったんだ……」
弓 「(キッ!!)……!!(ガシャコン)」
ハンマー 「弓、何をする!!」
弓 「その子から手を離しなさい! その子は人間じゃない、モンスターよ!!」

226: 2011/10/27(木) 01:18:48.06 ID:9XGikTup0
ナルガクルガ 「シャッ!!(シュバッ!)」
キリン 「クルル!(シュッ!!)」
紫ガミザミ 「……キシャ!!」
太刀 「モンスター達が……少女ちゃんを守るように……」
弓 「どうして……? どうしてみんなその子を庇うの……?」
  「どうしてよ!!!」
ハンマー 「落ち着くんだ弓。気が動転しているのは分かるが……」
弓 「どうして……そんな特別な力を持っている子が……この世にいるのよ……(ボ口リ……)」
 >ドサッ
太刀 「武器を落とした……」

227: 2011/10/27(木) 01:19:16.56 ID:9XGikTup0
少女 「弓さん……」
弓 「何も出来なかった……私……何も……」
太刀 「気にすることないって。ハンマーと少女がちょっと人間離れしすぎてるだけだからさ……」
ハンマー 「…………」
     「弓、お前にはお前の思うところがあるのかもしれない」
     「だが、少女にも、思うところは沢山あるんだ。同じ人間だ」
少女 「…………」
ハンマー 「だから、分かってやろうじゃないか。俺たちが分かってやらなければ、誰がわかってやるというんだ」
弓 「そんな風に割り切れない……」
  「割り切れないよ……」

228: 2011/10/27(木) 01:19:56.16 ID:9XGikTup0
ティガレックス兄 「何だ何だァ? どでっかい音と光がしたぞ」
ティガレックス弟 「カチ混みか? いいぜ相手になるぜェ!」
ティガレックス兄 「その前にションベン……」
ティガレックス弟 「俺も……」
ナルガクルガ 「貴様ら、テオ先生達を呼んでこい!」
ティガレックス兄 「あぁァん!? ンだコラァ!!」
ティガレックス弟 「ヤんのかコルァ!! ……ってナルガクルガか」
キリン 「おふたりとも、いいところに!」
ティガレックス兄 「……ってキリン、何かお前でかくね?」
ティガレックス弟 「ほんとだ。お前ちょっとでかいぞ」

229: 2011/10/27(木) 01:20:27.78 ID:9XGikTup0
キリン 「あ……あら。本当。私、ちょっと成長したみたいです」
ナルガクルガ 「そんなことはどうでもいい。すぐに先生達をここに呼んでくるんだ」
ティガレックス兄 「何でンなことテメーに命令されなきゃいけんのだよ」
ティガレックス弟 「自分で行け自分で。お、少女じゃねーか!!」
少女 「はぁ……はぁ……(ぐったり)」
   「……(ドサッ)」
ティガレックス弟 「少女!?」
キリン 「少女ちゃん!!」
ナルガクルガ 「古龍の力の使いすぎだ。俺は少女の護衛を任されてる。とっとと行ってこい!」
ティガレックス兄 「わ、分かったよ(バサッ)」
ティガレックス弟 「チィ(バサッ)」

230: 2011/10/27(木) 01:20:56.50 ID:9XGikTup0
キリン 「私も……何だか力が抜けて……(ドサッ)」
ナルガクルガ 「急に成長したせいだろう。しばらくはその虚脱状態が続く」
キリン (私の……新しい力……)
紫ガミザミ 「少女! おい、少女!!」
少女 「(ブルブル)…………」
ハンマー 「どけ蟹。太刀、少女をテントの中で暖めるぞ。迅竜、それで構わないか?」
弓 「モンスターに話しかけて……通じるわけが……」
ナルガクルガ 「…………グルルル」
弓 「…………!!」
ハンマー 「ありがとう」

231: 2011/10/27(木) 01:21:23.46 ID:9XGikTup0
ハンマー 「…………」
     (少女のあの力……)
     (古龍の大宝玉が強く反応していた)
     (少なくとも、人間が持っていていい力ではない……)
     (だが少女は……)
     (…………)
     (俺は……)
     (どうすればいい……)

232: 2011/10/27(木) 01:25:53.58 ID:9XGikTup0
お疲れ様でした。
第6話に続きます。

だいぶ長いことお待たせしてしまいまして、重ねて申し訳ありませんでしたm(_ _)m
不快な思いをされた方もいらっしゃると思います。
深くお詫びを申し上げます。

これから、書けた分から不定期に投稿させていただきます。
気長に見ていただければ嬉しいです。

何かありましたら、BBSでもMixiでもツイッターでも、お好きな媒体でご接触ください。

かなり寒くなってまいりました。
皆様も、お体などを壊しませんよう(-人-)

今日は温かくして眠ってくださいね。
おやすみなさい。

234: 2011/10/27(木) 07:57:53.03 ID:hO6cYWLDO
おつー
次も楽しみにしてます

引用: ジンオウガ 「ほう……未来を見通せるお守りか……」